08/12/22 22:22:13 xDrp4X6w
「思う存分、打ってきて下さい」
真九郎は焦った。今回は本気だと。
こちらに全力を要求するということは、あちらが全力を出したいということだ。
つまり、格下の自分はもはや為すすべもない。ならばあとは遅いか早いかだ。
精一杯しごかれよう。真九郎は、床板を踏みしめ、夕乃へと跳んだ。
(来た・・・!)
こちらの思い通りに真九郎は真正面から向かってきた。
真九郎の右手が上がる。こちらの顔を狙った掌底だ。
夕乃は腰を低く落とし、重心を前に傾ける。
至近距離でのタックルを成功させるのは、足腰の瞬発力ではない。
重力を利用した重心移動と、それを可能とする関節の柔らかさだ。
真九郎の掌底は夕乃の頭上を空振り、夕乃は腰に組みつこうとする。
だがそれは真九郎も読んでいた。奥足である右膝を振り上げ、カウンターを狙う。
しかし膝は空を切る。
(もっと低く・・・)
夕乃の顔は真九郎の膝と同じ高さにあった。当然、振り上げる膝が当たるはずがない。
しかも、夕乃は真九郎に向かって右、左足を取りに行っていたため、左足が邪魔で夕乃を狙えないのだ。
結果として真九郎の膝は空振り、全体重を支えた左足を夕乃は掴んだ。
真九郎にわかったのは、膝蹴りを空振ってしまったことと、自分が今床に倒れているということだけだった。
反射的に自分の状況を確かめる真九郎。これも崩月での修業の成果だ。
現状は、夕乃がいわゆるハーフガード、真九郎の腰に覆いかぶさるような形になっていた。
崩月流では、相手に倒されることを良しとしない。何故なら一対多数を主軸に置いているからだ。
なので倒された時点で負け。一度離れて夕乃の説教をもらい、仕切り直しで続行なのだが・・・夕乃は動かない。
「・・・夕乃さん?」
夕乃は組みついたまま顔を伏せて言った。
「今日は寝技の稽古をしましょう」
「え?でも崩月流に寝技なんてないはずじゃ」
「実はあったんです」
「・・・崩月流は力の制御、それを生かせない寝技なんて習うだけ無駄だ、っていったのは夕乃さんじゃ」
「方針が変わったんです」
「・・・どういう方針に?」
力尽きた。それと>>515の流れを使わせてもらった。
そしてこのまま>>613のネタに・・・行きたかったが筆が止まった。スマソ。