09/05/06 20:56:58 Qol5p+gg
しかし、女性はその思いつきを伝えながら、言葉を濁してしまった。それが意味する
ことをわたしは察して、あえて聞いてみた。
「だけど…何?…やっぱり難しそうなの?」
女性は悲しそうな顔をして答えた。
「簡単でないことは、認めなければならないわ。日に日に体だけではなく心まで変わり
つつあるのが分かる。わたしの前にここにいた女性と、全く同じ道を歩んでいるのが
分かる。自分は違う、自分だけはそうなるものか、と気を張っても、抵抗しようのない
強い力がわたしをどこかへ連れて行こうとする…」
そこまで言ってから、何かに気づいたように、女性の顔はきりっとした様子を取り戻した。
「…でも、まだ希望はある気がするの。聞いて。さっきあなたがわたしに必死で呼びかけて
くれた。そのおかげでいつもより早く正気をとりもどせたわ。そして、目の前のあなたを、
あなただけでも、なんとか助けてあげなきゃ、という強い決意が生まれた。だから、
お願いがあるの。これからも、あんな風にわたしを励まして、声をかけて!あなたは
まだ大丈夫のはず。そうしてわたしを励ましてくれることが、わたしのためであり、
あなたのためでもあるの。お願い」
強い決意に満ちた顔はとてもきれいだった。わたしは、今のきりっとした顔こそ、
この人の本来の顔なのだろう、と気づいた。つらい現実を突きつけられるごとに、
あの悲しい絶望の表情が浮かぶようになってしまったのだろう。そんな顔ではなく、
このきりっとした顔をもっと見たい、とわたしも強く思った。
「わかったわ。できる限りやってみます」
「ありがとう」
735:人面鳥(11/20)
09/05/06 20:57:18 Qol5p+gg
人面鳥は夕方まで帰ってこないらしい。わたしたちはぽつぽつとお互いの身の上を話した。
といっても、近所の村の普通の娘であるわたしに大した話はできなかったのだが、
彼女の方は色々と興味深い話をしてくれた。
「わたしの故郷はここからずっと離れた都市。ずっと神様に仕えるお仕事をしていたのだけど、
色々とあって今は教会の付属の大学に通っている。動物についての研究が専門で、
この辺には調査のために来たの。古文書には出てこないような生物はたくさんいる。
大昔に起きたあの大異変以来、色々とこの世界は変わってしまったらしい。昔には
いなかったはずの生き物もたくさん生まれている。それでちゃんと調べる必要を感じたの。
…そのあげく、うかつにも調査対象に捕まってしまったということ」
そしてその女性、わたしは「お姉さん」と呼ぶことにしたのだが、お姉さんは、
あの人面鳥についてもある程度の推測を行っていた。
「あの森によく行くなら、自分よりも大きなヒナにエサをあげている鳥を見たことが
あるでしょう?『托卵』といって、別の鳥がもとの卵を捨てて自分の卵を産みつけ、
ヒナを育てさせるの。そしてあの人面鳥は、そういう托卵鳥の餌食にされた鳥の仲間。
押しつけられたよその鳥のヒナに自分の遺伝子を組み込むように進化したのよ。
わたしたちは逆托卵鳥と呼んでいる。そしてこの逆托卵鳥からさらに、積極的に他の
生き物をさらってきて、自分の仲間に作りかえる種が出てきた。正確に言うと、
もともとの逆托卵鳥の遺伝子と、さらわれてきた種との混合生物ね。そんな混合生物が、
さらわれる動物の種の数だけいる。そして同じ種の犠牲者は同じ種の仲間をさらってきて、
同族を増やす。人面鳥はその一種ということ。若いグループらしくて、まだ数は少ない
けど、これから飛躍的に増える可能性もあるわ」
736:人面鳥(12/20)
09/05/06 20:57:38 Qol5p+gg
イデンシとかシンカとかよく分からない単語も多かったが、あの鳥が悪魔や魔物の類では
ないこと、元々は托卵鳥の餌食にされたかわいそうな鳥だったということ、そして、
どの人面鳥も半分は人間なのだということはよく分かった。それとは別に、こういう話を
しているお姉さんはとても生き生きとしていて、とても好感がもてた。
いつのまにか夕闇が迫っていた。ばさばさと人面鳥が帰ってきてうずくまり眠り始めた。
「さあ、もう寝た方がいいわ。夜明けと共にこの人面鳥が目覚め、またあれが始まる。
そして睡眠不足の状態であれをされると、危険なことにもなりかねない。今は無理にでも
眠りなさい」
異常な状況だが、疲労が溜まっていたのと、あの液体の作用もあるのだろう。わたしは
目をつむると同時に熟睡してしまったようだ。
朝、のどに違和感を感じて目覚めると、すでに人面鳥が口の中に「エサ」を流し込んで
いるところだった。やはり嘔吐感は起きてくれず、わたしのお腹の中には、肉体を変形
させる物質がたっぷり残されてしまった。
やがて体が熱くなり、変形が始まった。四肢の比率が変わり、手の指は短く、足の爪は
固く鋭くなり、足や肩の皮膚はぽつぽつとした「鳥肌」に変わり始め、足は脂肪が落ち
ごつごつとし始めた。さらに、昨日にはなかった変化も始まった。女性のあそこと
お尻の穴周辺が落ちくぼみ始めたのだ。いずれも、思っていたよりも急速で、この分では、
明後日ぐらいには昨日のお姉さんに追いついてしまいそうだった。
お姉さんをふと見ると、目覚めてはいるようだが、呆然と中空を見つめている。
寝ぼけているのではなく、心を冒されかけているのではないかと思われた。わたしは
ぞっとしてお姉さんに声をかけた。
「お姉さん!目を覚まして!目を覚まして!」
737:人面鳥(13/20)
09/05/06 20:57:58 Qol5p+gg
あらん限りの声を発して呼びかけているうち、お姉さんは我に返ったようだった。
やがてお姉さんへの「給餌」と、あの怪しげな下半身への操作が始まっても、わたしは
お姉さんへの声かけを続けた。
声をかけ続けたのが功を奏したか、お姉さんはその後ずっと眉間にしわを寄せ心を
冒されることに抵抗を続けられた様子だった。人面鳥が飛び立つと二人は目を合わせ、
深いため息をついた。二人とも涙ぐんでいた。
「ありがとう!」
「ううん。よかった。お姉さん。よかったよ!」
その後また二人は色々と話をした。午後の「給餌」のときもお姉さんは耐え抜いた様子
だった。その後また会話を交わし、その日は眠りについた。
三日目の朝の「給餌」後、昨晩から続いていた股の辺りの違和感がとても強くなった。
どうも、お尻の穴と前の穴が一つの穴にまとまってしまったようだった。
そのショックのせいで声が小さくなってしまったのか、それともお姉さんの変形が
否応なく進んでしまっているせいなのか、今回、わたしの声かけにもかかわらず、
お姉さんは意識を飛ばしてしまった。
呆然と中空を見つめるお姉さんを見ると、お姉さんの変形も着実に進んでいるのが
わかった。全身に羽毛が生え始め、腕は小さな翼になっていた。足もほとんど鳥の足と
いっていいものになっていた。
お姉さんを何とか呼び戻すと、お姉さんはわたしの姿を見て、久しぶりにあの
暗い表情を浮かべた。
「…あなたにも、総排泄控ができてしまったみたいね。明日か、早ければ今夜あたりから、
あれが始まってしまうわね」
お姉さんの発音は不明瞭になっていた。くちばしがだいぶ伸びたし、多分、舌も細く
固く変形しつつあるのだ。
738:人面鳥(14/20)
09/05/06 20:58:20 Qol5p+gg
わたしはなんとか聞き取れた知らない単語について尋ねる。
「ソウハイセツコウ?」
「そう。鳥はおしっこの穴とフンをする穴と生殖器の穴がひとつだけなの。あなたも
そういう体に変えられてしまっている。そしてそれが完成すると、その総排泄控から
あの物質を流し込む作業が始まる。…ああ、そして、それが始まると、心の変化が急速に
進むの…」
お姉さんの声には強い恥じらいのトーンがあった。しばらく何か言いよどんでいた
お姉さんは、しかし意を決した様子で先を続けた。
「やっぱりあらかじめ知っておいてもらわないといけないわ…」
どう話せばいいかをしばし思案したらしいお姉さんは、動物学の講義を始めた。
「哺乳類、つまりケモノの場合、交尾は膣に突起物を挿入して、その先から精子を注入する。
…修道女だったので人間の男性のそれをちゃんと見たことはないのだけど、人間も
そういう風にできているわ」
わたしの方が恥ずかしいような気まずいような感じをおぼえた。わたしと言えば、
すでに詳しく経験したことがあったからだ。
「だけど鳥の場合、交尾はお互いの総排泄控を密着させるだけ。そういう風にできているのよ。
そして、人面鳥は人間の女性しか襲わない。だからもともと女性同士なのだけど、
生殖器からのあの物質の注入は、鳥の本物の交尾とほとんど同じ行為なのよ。…そして、
あのときの感じは、まさにそれなの…いえ!いえ!それかどうか、確言はできないけれど、
そうであると考えられるのよ」
お姉さんは話しながら真っ赤になっていた。わたしは修道女や修道士という人種が
そういうものを過度にタブー視するものだ、という話を思い出して、妙に合点がいった。
お姉さんは自分が性的快感を感じているという事実をできればわたしに隠したかったの
だろう。それに、多分お姉さんはここに来る前に性的快感の何たるかを知っていた。
しかしそれを認めることもしたくはなかったのだろう。
739:人面鳥(15/20)
09/05/06 20:58:37 Qol5p+gg
それで、お姉さんのためらいの理由が分かったし、ひょっとすると感じなくてもいい
過度のプレッシャーを感じていたのかもしれない、と気づいた。それでわたしは、
変な言い方にならないように注意しながら、言った。
「要するに、あそこからあの物質を注入されると、セックスの快感を感じちゃうのね。
そしてそれが頭の調子をおかしくしちゃう、という仕組みなのね。わかったわ。でも
大丈夫。ちょっと怖いけど、セックスは経験があるから。それに、自分で慰めたこと
だっていっぱいある。だから、少なくともそれがどういうものかは知っている。だから、
負けずにがんばってみるわ」
お姉さんは目を丸くしている。多分、まったく予想外のリアクションだったのだ。
むしろ、もっと色々と言いにくいことを聞かれるだろうと覚悟していたのではないか。
わたしは畳みかけるように言った。
「お姉さん。セックスを特別視して、そのせいで余計な気力をすり減らしたら負けちゃうわ。
ケモノだって鳥だって、普通にやっていることでしょ?お姉さんも、普通のものとして
つきあっていかなきゃだめだよ!」
お姉さんはしばらく呆然としていた。わたしの言葉を反芻しているようだった。
それから、あのきりっとした表情が帰ってきた。
「ありがとう!振り返ってみると、自分は、何かとても狭い見方に囚われていたみたいな
気がする。これからは、わたしも協力するわ。『交尾』が始まったらわたしからも声を
かける。そうして、二人で力を合わせて乗り切りましょう!」
とても頼もしい言葉だった。
…だが、結局それが、お姉さんと交わすことができた最後の会話になってしまった。
740:人面鳥(16/20)
09/05/06 20:58:55 Qol5p+gg
その日の二回目の給餌のときまでは、お姉さんはちゃんと人間の言葉を発音できた。
力強い励ましの言葉を受けたわたしは、予想以上の強烈な快感に、何度も意識を飛ばされ
そうになりながらも、持ちこたえることができた。そしてわたしはわたしでお姉さんに
声援を送り、お姉さんもそれを切り抜けた。
だがその後、お姉さんのくちばしはこれまで以上に急激に成長を始めた。舌の形も
変形してしまったようだった。何かを喋ろうとする意志ははっきりあるのに、ろれつが
回らないどころか、音声を区切ることすらままならないようで、「クエッ、クエッ」
という鳴き声しか出せなくなってしまったのだった。
体の羽毛はほぼ完全に生え揃い、足の形もどこから見ても立派な鳥だった。なのに、
翼の骨格と羽毛だけはまだ未熟で、しかも貼り付いた手足はいまだにいくらあがいても
引きはがせなかった。
わたしはわたしで、一段と鳥に近づいてしまった。もう指はほとんど人差し指一本しか
なく、両側に親指と中指が小さないぼのように張り出しているだけだ。全身を綿毛が覆い、
羽毛らしいものも生え始めている。それに体の内側も変わりつつあるらしく、排泄物は
尿と便の区別がなくなり、ピンク色のどろっとした液体が出るようになっていた。
少し前からお姉さんを見て気づいていたことだったが、それがこの巣の壁を形成している
物質なのだった。そして囚われた日はちょうど生理が始まった日だったのに、すぐに
止まってしまっていた。多分、もう、人間の赤ちゃんを作る能力はなくなってしまった
のだろうと思えた。
―どうしても子供が欲しければ…人間をさらって同族に作り変えるしかない。ならば…。
ふと生じたそんな考えにわたしは慄然とする。これはわたしの考えじゃない!人面鳥の!
…わたしはうろたえ、おびえた。
741:人面鳥(17/20)
09/05/06 20:59:13 Qol5p+gg
その夕方は二人とも沈みがちだった。わたしはこのままではいけない、と無理にでも
明るく振る舞い、イエス・ノーで答えられる質問を使ってお姉さんと会話をした。
お姉さんも、ここでくじけたら終わりだという判断があったのだろう。気分を切り替え、
恐らく無理をしてとても明るく振る舞ってくれた。痛々しかったが、何だか楽しかった
のも事実だった。
…しかし、やはりそれは空元気だったのだろう。翌朝の「給餌」はとても惨めな
結末になった。
まずわたしが、昨日よりも強烈になった快楽の果て、人ならざるものに心を乗っ取られて
しまった。心を奪われる経験は、とても甘美な経験だったことを告白せねばならない。
よく覚えていないが、安らぎや解放感といったものに満たされていた気がする。
それでも、遠くで聞こえる「クエッ、クエッ」というお姉さんの声がわたしを励まし、
なんとか戻ろうという気力を与えてくれた。わたしは泥沼からはい出すように、
一歩一歩生ぬるい忘我の沼から這い出そうとした。
どうにか帰ってきたときは昼過ぎで、お姉さんへの処理はとうに終わっていた。
その姿はもうほとんど完全な人面鳥で、ただ翼だけがまだすこし小さく、羽根も揃って
いなかった。
わたしが声をかけられなかったせいもあるのだろう。お姉さんは人面鳥そのものの
無表情な顔で呆然と中空を見上げていた。わたしは泣きながら、必死でお姉さんを
呼び戻そうとした。だが。声をからして呼びかけてもお姉さんは帰って来ず、そのまま
午後の給餌が始まった。わたしはまた快楽と忘我の沼に溺れ、気がつくともう夜中だった。
その翌朝、例によって人面鳥の給餌で起こされたわたしは、何とか気を張り、心を
冒されるのを防いだ。人面鳥が離れると、お姉さんの姿が目に入った。お姉さんはまだ
眠っていたが、一晩の内に完全な成熟を遂げたらしく、大きく見事な翼が揃っていた。
742:人面鳥(18/20)
09/05/06 20:59:32 Qol5p+gg
人面鳥は給餌ではない、見慣れない動作を始めた。口から何かの液体を吐き出しながら、
お姉さんの腕や背中をつつき始めたのだ。壁からお姉さんを引きはがしているのだと
すぐにわかった。
壁から外されている内にお姉さんは目を覚ましたようだ。翼をばさばさとうち下ろし、
両足でぴょんぴょんと飛び跳ねた。それから「母親」である人面鳥とキスのような仕方で
くちばしを合わせた。無表情なきょとんとしたその顔からは、もう人間の感情は
読み取れなかった。
わたしはそんなお姉さんの顔をじっと見つめた。そしてお姉さんの目がわたしと
合ったとき、お姉さんの顔にあのきりっとした勇ましい表情が戻った。
お姉さんは「母」ののど笛にその鋭いくちばしで食いついた。ぶしゅっと鮮血が
噴き出し、お姉さんと巣の中を赤く染めた。そしてお姉さんは先ほど自分がされたように、
わたしの腕や背中に何かの液体をかけながら、わたしを壁から引きはがした。それから、
「母」がわたしをこの巣へ連れてきたときのように、わたしを抱え、空に羽ばたいた。
晴れ渡る空に一羽の人面鳥と、人面鳥のなり損ないが飛翔していた。
お姉さんはどうやら、わたしの故郷を目指して飛んでくれているようだった。わたしは、
つい数日前まで普通に暮らしていた故郷の光景や家族、友人たちの顔を、とても懐かしいが、
しかし、何かとても遠い世界のことのように思い浮かべた。それからわたしは、
自分の体を改めて見回した。
わたしの体は、最初に会ったときのお姉さんよりも変形が進んでいた。羽毛が生え始め、
くちばしも形成され始めていた。足の表面も人の足よりは鳥の足にずっと近く、蹴爪も
伸びていた。そしてひなどりのような未熟な翼を両肩から伸ばしていた。
743:人面鳥(19/20)
09/05/06 20:59:50 Qol5p+gg
わたしは目をつぶった。いつの間にかまぶたはなくなっていて、下から広がる瞬膜が
目を覆った。そしてしばらくの間、もう一度、故郷の懐かしい人々の顔を順に思い浮かべた。
それから、わたしはお姉さんに声をかけた。
「ねえ、お姉さん。引き返して!わたしたちの巣に帰ろうよ。お母さんは死んじゃったけど、
お姉さんが新しいお母さんになって、続きをやってちょうだい」
お姉さんは動揺しつつもコースを変えようとしなかった。わたしは言葉を続けた。
「村のみんなは優しいわ。わたしがこんな姿になっても、迫害なんかしないで迎え
入れてくれそうな気はする。…でも、もうわたしが変わってしまったの。こうやって
連れ出されてみて、ようやく気づいたの。
ねえ。お姉さんはもう人間界には戻れないよね。最後の意志の力でわたしを故郷に
送り届けたら、あとは完全な人面鳥として暮らすんでしょ?…わたしは、故郷のみんなよりも、
お姉さんと一緒にいたい。ううん、一緒に暮らしたいということじゃない―人面鳥は
孤立して暮らすんだよね。そうじゃなくて、わたしは、お姉さんや、死んじゃった
お母さんや、お姉さんのお姉さんになった人たちと同じ世界で生きたいの。そういう風に
なっちゃったの。わかるでしょ?
聞いて!お姉さんもずっと勘違いしていたんだよ。お姉さんが頑張って人間の心を失う
まいとしてきたのは、わたしを救うため。でも、その気持ちがもともと人面鳥の気持ち
なんだよ。お姉さんを『お姉さん』と呼んで慕ってくるわたしを、お姉ちゃんは同じ巣で
育つ姉として思い、姉として何とかしてあげようと思った。その気持ちは人面鳥の
気持ちだよ。ただ、それを形にする仕方が間違っていただけなんだよ!」
お姉さんは向きを変え、再び巣を目指し始めた。言葉はしゃべれなくなっていたが、
その仕草からはこんなお姉さんの言葉が聞こえてきそうだった。
―まったく、あなたの言葉にはいつも目を開かされるわ。
744:人面鳥(20/20)
09/05/06 21:00:12 Qol5p+gg
巣に帰るとわたしたちは早速食事をした。お姉さんがお母さんの死体をついばみ、
飲み込んで変化させたものをわたしに与えてくれた。お母さんの死は正直悲しいが、
人面鳥に死骸をいたわる感受性はないのだった。むしろ、遠くまでエサを採りに行かなくとも、
こうして近くに新鮮なお肉があるのは好都合といえた。
食事が終わったら、お姉さんは総排泄控をわたしのそれに重ね合わせてくれた。柔らかな
丸い開口部が重ね合わされ、温かな至福が流れ込んできた。お姉さんであり、新しい
お母さんの情愛のすべてを注ぎ込まれているような気がした。
間もなく訪れる、大空を羽ばたける日を夢見ながら、わたしはその心地よい流れに
身を委ねた。
<了>
745:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/06 21:01:58 Qol5p+gg
…以上、お粗末でした。
残り496KBで、何とか収まりました。
次スレをもう一度貼っておくと下記です。
何か誤記がないことを祈ります。
【異形化】人外への変身スレ第四話【蟲化】
スレリンク(eroparo板)
746:名無しさん@ピンキー
09/05/06 21:15:37 0piIT306
長文投下乙
747:名無しさん@ピンキー
09/05/06 22:08:34 yWRNP9UI
GJ
鳥の醍醐味は羽と鱗と排泄口!猛禽のたくましい脚とかたまらんよなー
好いものをご馳走になりました
748:名無しさん@ピンキー
09/05/06 23:56:44 MwKdK4U2
これはGJ!ご馳走様です
749:名無しさん@ピンキー
09/05/07 03:20:30 PPS03S0X
>>745
新スレおよび短編投下、お疲れさまです。
人面鳥、最後の気持ちの切り替わり方(解釈の変更)が逆転の発想という感じで
面白かったです。
口がくちばしになるのも、見た目に異形化の度合いが増すし、口が利けなくなることで
精神変容にも説得力が加わるしで、見事なアイデアですね。
埋め立て用の短い話を私も書きかけていて、数日前に冒頭だけでも投下するつもり
だったのですが、アクセス規制を食らっておりました。
新スレの方で始めてみますね。即死回避の一助になればと思います。
750:名無しさん@ピンキー
09/05/07 03:39:36 fhNAvEm+
>>724-745
これはGJ!
751:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/07 16:14:14 NivxC1ei
>>レス頂いた皆様、ご好評頂けて感謝です
>>747様
鳥はファンが多そうなので、分かる範囲で解剖図を見たりなどしてみたのですが、
お気に召して頂けたようでよかったです。もうちょっとウロコを強調してもよかったですね。
そういえば鳥の交尾は"cloacal kiss"というのだそうです。なんか素敵ですね
(cloacaは(総)排出腔のことだそうです。ちなみに、作中、
「腔」の字を全部間違えて控除の控にしてたのに気づきました。お恥ずかしい)
>>749様(◆eJPIfaQmes様)
丁寧なご感想ありがとうございます。
たしかにハルピュイアにくちばしはないんですが、おっしゃるとおり、そのままでは
異形化度がちょっと足りない気がしたのと、あとは手がないので、くちばしがあると
色々と手の代わりに使わせられて便利、というのがありました。そう考えると
自然の生き物はよくできていますよね。
新作の感想は次スレの方でさせて頂きます。
そろそろ埋まりそうですね。
752:名無しさん@ピンキー
09/05/07 19:22:54 3cfsnAmp
埋めついでに次スレ誘導
スレリンク(eroparo板)
753:名無しさん@ピンキー
09/05/08 03:21:40 fv2Cbzue
この神スレまとめサイトないの?
754:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/08 04:00:10 T0/JLwMZ
>>753様
お返事と、埋めるどさくさで、自分のサイトの宣伝しておきます。
いわゆるまとめサイトではないのですが、
いくつかのSSは当方のサイトにアップしてあります
URLリンク(book.geocities.jp)
過去ログも保管してあります。
URLリンク(book.geocities.jp)
上記にアップしていない、
「【】の人」様、◆eJPIfaQmes様のSSについては、
各々の方個人のサイト(またはブログ)にSSが再録されてます。
(リンク集URLリンク(book.geocities.jp)をご覧下さい)
あ、自分のSSも同様です。
いずれにしても、このスレだけのまとめということになっていないのはご容赦下さい。
…埋まったかな?