09/02/14 23:36:14 INgmGf7j
「……ふぁぁ……んぁぁ……ひぁぁ……ん」
でも、しばらくゆっくり動かしていたら、段々となれてきたみたい♪でも、いったい何を動かしてるんだろうって、鏡を見てみたら……?
「……わぁ……」
それは、わたしで間違いなかったけど、同時にわたしじゃなかった。
顔や腕、胴体や脚の形は基本的に変わってないし、顔にもわたしの面影はあった。でも―わたしの肌はこんなに白くないし、顔つきもこんなに綺麗じゃない。
髪の色もこんな、チョコレート色するわけ無いし、腕も、脚も、もうちょっとすらっとして無かった。
胴体なんか、全体的にむっちりして、特に胸は、アルファベットが一つくらい後ろになってるんじゃないかな?お尻も肉付きがよくなってるし……。
そして何よりの問題が、尾てい骨からは紫色の尻尾が、背中からは二対のコウモリみたいな羽が、そして頭からは山羊のようなツノが、可愛らしいサイズで生えていたことで……。
「……ん、んっ、んしょ、これ?ん?あん」
鏡の前でいろんなポーズをとるわたし。鏡の中の悪魔も、それに合わせて同じポーズをとる。
間違いなく、目の前の悪魔―サキュバスは、わたしでした♪
「…………」
さっきまでの快楽の余波で、ろくに考えることの出来ないわたしの頭に、何かがわたしの声で響くのだった。
―オトコ……モット……キモチイイ―
「……男……もっと……気持ちいい……」
その声を復唱するにつれて、わたしの子宮からは愛液がこぼれ落ち、布団をさらに甘く染める。
体の中からも発情臭が沸き立ち、部屋が霞んで見えるほどの濃度になる。もしこの部屋に男の子が入ったら……♪
「……にひひっ♪」
その事を考えるだけで、なんか楽しくなってきた。きっときっと、気持ちよいことになるんだろうね……♪
まてよ?もし今この部屋を開けたら……!?
「……そりゃさすがに不味いね」
あまりにも大規模すぎるし~、みんな来られてもわたし一人じゃ相手できないし~。
………はぁ~あ。流石に一人ずつか~。できればみんなで楽しみたいんだけどなぁ♪にひひ……。
意地の悪い笑みを浮かべながら、わたしは部屋の窓を開けて外に出て、すぐに閉めた。鍵はしてないよ。もし泥棒さんが入っても、逝き狂いになるだけだしね♪
「ひははっ♪夜は初めてのさくまんちぇ~っく!」
さぁ!目指す先は繁華街!カップルを避けて独り身の人を狙うのだ!そうしてあの甘い部屋で……二人して……にひひはははっ♪
626:『変身菓子2』
09/02/14 23:37:31 INgmGf7j
「じゃあ、いってきま~す♪」
誰もいない甘い空間に挨拶をしたわたしは、翼を大きく広げ、月の夜に一人舞ったのでした♪
fin?
プチおまけ
「もりりん、甘い蜜ちょうだ~い♪」
「あのねぇ佐久間、アンタ三日前にも飲んだばっか―ひゃっ!」
「ぺろぺろぺろ~♪―うん!やっぱりここの蜜が一番美味しいよっ!」
「きゃっ!ひゃうっ!んはぁっ!こら佐久間!やめてっ!やめなさいって!」
こちらはfin.
627:ドリアード書いた人
09/02/14 23:39:22 INgmGf7j
以上です。
変身シーンが……失敗したorz
まぁ、バレンタインのチョコ話と言うことで一つお許しを。
―では、失礼いたしました。
628:名無しさん@ピンキー
09/02/15 02:08:16 N+Vfl0KX
>>627
GJ!エロさとかわいさを持ったサキュバスにハァハァしっぱなしでした!
ふわふわした世界感がかわいかったです!
629:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:13:58 N+Vfl0KX
空気読まず>>614の続き投下しますすみません
扉を開けた先に広がってたのは、闇。今は、夜?
澄んだ空気が心地よく頬を掠める。
私はただ、衣をはおることも靴を履くこともなく、全裸のまま足を踏み出す。
むしろ、これが当たり前のような気がした。なぜだかわからないけど。
裸で外に出るってなんて気持ちいいんだろう。
木々がざわざわと音を立てる。
人の気配はまるでない。どうやらここは人里離れた林の中のようだ。
あてもなく少し歩くと、さっきの建物の明かりも届かなくなり、
完全な闇へと辿り着く。
でも闇が深くなればなるほど、私の目は周りの景色をはっきりと写し出した。
木の位置や足元の石ころは勿論、地を這う虫の動きや
風に舞う木の葉の起動まで、まるで手に取るようにわかる。
「うふふ~ふふ~♪」
思わず鼻歌まで飛び出す。以前の私なら、こんな暗闇のど真ん中で
ひとりきりにされたら泣きわめいてたところだ。それがどう?
信じられる?こんな怖い場所が最高に気持ちいいなんて!
裸足で歩き回っているというのに足の裏は全く痛くない。
寒空の下裸でいても全然寒くない。なんて強靭な身体なんだろう!
もう怖いものなんてない!私、すごい身体になったんだ!
630:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:14:42 N+Vfl0KX
ガサ・・・ふいに後ろで何かが動いた。これって、コレって!!
何故か本能的にわかる。生き物、動物の気配だ!
私は全力で気配のする方へ走っていく。走っても走っても全然疲れない。
でも息が苦しくなるほどドキドキしてる。期待と喜びが入り交じった興奮からだ。
少しずつ臭いがしてくる。いい匂い、欲しい、食べたい!
ついに視界に黒い塊のような影を捕らえた。
「みつけたぁ・・・」
無防備に後ろを向いている、あれは子熊?
キョロキョロしているのは親とはぐれたから?そんなことはどうでもいい。
身体の中にあるタービンがゴウンゴウンと音を立てて回り始め、
体中の血が、筋肉が喜びにうち震えてる・・!
その快感に背筋がゾクゾクして、思わず目頭がじんわり熱くなる。
膝もガクガクと震える。これって武者震い?
ああ、わかるわ、もう我慢できないのね?じゃあせーのでいくよ?せーのっ!!
「うわあああああああああああああああ!!!!」
631:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:18:29 N+Vfl0KX
私は目標から一ミリも目を逸らさず、電光石火のごとく獲物に飛び掛かった。
小熊が振り返ろうとしたとき、すでに私の鋭い爪は獲物の喉をかっ切っていた。
声を上げる間もなく獲物はその場にどしんと倒れた。
血のシャワーが闇に降り注ぐ。
私はそのシャワーを浴びながら呆然と立ち尽くす。
やった・・・やった・・!やったんだ!私が!私が自分で殺ったんだ!
肉を裂く感覚がまだ手の中に残ってる。感覚が蘇るたび背筋がゾクゾクする。
目から温かい涙が次々溢れる。胸いっぱいに感動が広がる。
これだ!これが私の求めてた・・・!こんなの、今まで味わったことない!
これだ、これだったんだ・・。
あははは・・
「あはははははははははははは!!あーっははははははははは!!
やばい!やばいよコレ!気付いちゃった!!全部わかっちゃった!!
いいっひひひひひひひ!悪魔ってこういうことなんだ!!これだったんだ!!」
まるで頭の中でパズルが組み上がって、完成した絵は気持ちのいい
青空の絵だったような、そんな気分だった。
私はしばらくその場で馬鹿みたいに笑い続け、
落ち着いたらお腹が空いてたことを思い出したので、
地面に転がってた肉を食べた。
632:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:19:06 N+Vfl0KX
食事を終えたあと、とりあえずさっきの小屋に戻ることにした。
小屋の臭いは覚えていたので、さっきの小屋には簡単に戻れた。
扉を開けて鏡を見る。鏡に映る私は、自信に満ち溢れていた。
初めて獲物を狩った誇らしさに胸を張り、鼻を膨らませ、
満足感に目をほころばせ、口からため息を吐く。
そしてこの悪魔になった自分の姿を、正直悪くないと思った。
むしろ少しイケてるような気さえする。この筋肉、素敵。
肌の色、綺麗かも・・。
爪も。牙も。角も。生を支えるために必要なもの。
ピアスも指輪も、似合ってるわ。
顔もなかなか。もう人間だった頃の顔がよく思い出せないけど、
今の顔は嫌いじゃない。牙も綺麗に生えそろってる。
633:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:25:16 N+Vfl0KX
ただこの髪の毛は正直頂けない。さっき走るときも邪魔だった。
これをセットするのに何時間も費やしていたなんて信じられない。
人間ってこうやって考えると馬鹿なことばかりしてるのね。
コテで巻いてたふわふわの茶色い髪。醜い。この悪魔になった私には余りに醜い。
あつらえたようにバリカンが置いてある。あの悪魔が用意したのかしら。
なかなか気が利くじゃない?
私は忌ま忌ましい髪を一気にバリカンで剃りあげた。
バリバリと音を立て、髪がどんどん床に落ちてゆく。
髪の毛が落ちるとともに、自分の人間への未練や思いも
同時に落ちて消えてゆくような気がする。
お坊さんが雑念を捨てるときってこんな感じなんだろうか。
あっという間に私の頭はスキンヘッドになった。
紫の頭皮が剥き出しになり、所々太い血管が浮き出ている。
やはり今の私には間違いなくこっちの方が似合う。顔も凛々しく見える。
スキンになった私の顔つきは更に邪悪さが強調され、
人間らしさが無くなったように思えて誇らしかった。
卑屈になることはない。今の姿を誰に見られても恥ずかしくなんかない。
私は、正真正銘の悪魔なんだから。
634:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:28:04 N+Vfl0KX
ふとお尻の方に違和感を覚え、手を当ててみた。小さな突起が手に当たる。
「生えてきた♪」
すぐにわかった。これは尻尾だ。早く立派な尾を生やしたい。。
早く完全な悪魔になりたい。人間であったことなど、一刻も早く忘れ去りたい・・・。
完結です!もう続きはありません!
読んでくださってありがとうございました!
635:名無しさん@ピンキー
09/02/16 15:55:04 2C6EPC0A
お疲れ様です
636:名無しさん@ピンキー
09/02/16 19:25:44 NqArs2/8
GJだ。安らかに眠れ……
637:名無しさん@ピンキー
09/02/19 13:21:56 BTuYOey+
人やん…めっちゃ人やん…
638:名無しさん@ピンキー
09/02/24 11:36:38 utl71YYk
ワーウルフなら、やっぱりガロンみたいな感じで顔も狼にするべきなのかな?このスレでは。
639:名無しさん@ピンキー
09/02/24 18:43:48 ec3fEgdg
???
640:名無しさん@ピンキー
09/02/24 23:50:35 YcO/x5IX
・・・人面犬・・・というわけではないよな
世間の萌えキャラであるような耳尻尾だけの奴はこのスレではあまり受けは良くないと思うよ
内面描写に力を入れる等して異形化っぷりをよっぽど濃く描かない限りは
過去ログ、過去作品読んで方向性を掴むといい
641:名無しさん@ピンキー
09/02/28 08:51:57 2yya0GT5
なんかすごいんだけど、コレってなにかの作品かな?
URLリンク(www.youtube.com)
642:名無しさん@ピンキー
09/02/28 09:53:46 ahCa5EcU
今は亡き大御所じゃん
643:名無しさん@ピンキー
09/03/01 11:51:24 GVS7HLog
くそぅ そろそろ獣化SS読みたいな
最近 大型SSサイトはブログしか更新しないし……
644:名無しさん@ピンキー
09/03/01 12:47:25 KjVmLVlH
二強SSサイトは最近獣化少ないよね
片方はブログ片方は需要の違うSS
他のところも休止が大半で外国に頼るしかない
645:名無しさん@ピンキー
09/03/01 21:41:20 ZhIsbV1M
新参の俺のためにリンク集貼ってくれないか(´・ω・`)
646:名無しさん@ピンキー
09/03/01 23:22:30 wdGWaNCg
>645
URLリンク(www.kantei.go.jp)
647:名無しさん@ピンキー
09/03/02 00:06:12 pJxzmE5c
確かにリンク集だな
648:名無しさん@ピンキー
09/03/02 01:44:24 GFKNMktD
ひどいよー。・゚・(ノД`)・゚・。
649:名無しさん@ピンキー
09/03/02 07:26:10 YfM4gvBi
新参が免罪符になると思ったら大間違いだぞ
650:名無しさん@ピンキー
09/03/02 09:21:54 iawM8BTe
正直探そうと思えばその手のリンクからすぐに飛べるし……
片やマイナー所を刺激する?SSだったり
片や未完な作品が多かったりするがね
651:名無しさん@ピンキー
09/03/03 19:27:13 1pE3U5xX
でもリンク集のテンプレを作ればスレの活性化にもつながると思う
652:名無しさん@ピンキー
09/03/03 23:46:12 sX3Eaxi8
個人サイトを晒すなんて鬼畜の所業
653:名無しさん@ピンキー
09/03/04 16:24:52 NtyfioV8
俺だったらそっとサイト休止するレベル
654:名無しさん@ピンキー
09/03/06 00:34:00 YHjun1vy
風祭でググれ
655:名無しさん@ピンキー
09/03/11 03:07:51 M8o5ACmb
保守
656:名無しさん@ピンキー
09/03/15 19:04:05 A3VWOM68
「……保守、か」
そう呟きながら私は空を眺める。素敵な満月が広がっている……と言いたいところだけど、満月はあまり好きじゃない。月の表面が……ギーグのように見えて。
窓際に置いた机の上にあるのは、まんまるなチーズケーキ。しかもレモンの酸味が効いたレアチーズケーキだ。
『受験を終えた妹への労い兼ホワイトデー』
として兄が買ってきたものだ。兄は店で食べたらしく、「これは旨いぜ!」と妙な墨を私に与えてきた。専門家でもないくせに。
まぁいい。確かに美味しい。今まで食べたどの洋菓子よりも美味しい。あっさりペロリと一個平らげてしまった。
「……ん~」
その後、今日の日記をつけ終わった後、私は軽く伸びをして―外の満月が目に入った。
―瞬間、体の中に大量の熱が生まれた!
その熱は私を内側から焼き尽くすのではないかと言うほどに熱く、そして激しい。どっ、と汗が出る。脱がなくちゃ、脱がなくちゃ。
すべて服を脱ぎ終わった私は、あまりの熱さに立つことすら出来ず、そのまま床に四つん這いになる。
―その手が、腕が、狼のそれへと変じていく。銀の毛が全体を覆うように生え、指がスパイク状のそれに変化する。脚も同等の変化を遂げていた。
体全体がぞわぞわとすると同時に、首回りを含めた全身から銀色の毛が生え揃う。尾てい骨からは皮膚が延び、尻尾が形成されていく。
変化の度に、私は熱から解放されていく感覚を味わっていた。やがてそれは、理性までもを侵食にしていく。
鼻先や口が前に突き出て、歯が牙に変化する。まるで狼のようになった私の顔にも毛は生え揃っていく。
やがて、頭から尖った耳が二本突き出て―!
「―ウォォォォォォォォォォォォォォォンッ!」
私は、巨大な狼に変化していた。
657:名無しさん@ピンキー
09/03/15 19:37:39 CD02WGvG
保守関係ねえwww
658:名無しさん@ピンキー
09/03/16 00:07:20 oX/5B+AH
三回くらい読み直してどこがどう繋がってるのか考えてみたが結局何がどうなっているのかわからなかった
659:名無しさん@ピンキー
09/03/16 00:16:14 wMBCNert
>>656様
ワラタ
ここの住人の方は何でも異形化ネタにしてしまえるのが素敵ですね
660:名無しさん@ピンキー
09/03/16 00:48:34 Yh8HETG9
なるほど 縦読みすると保守が浮き出てくる仕組みか 凝ってるね!
661:656
09/03/16 07:40:46 SRzDhG5W
保守ネタを書くつもりが、普通にプチ変身菓子になってしまったのは秘密orz.
このくらいの人外度がこのスレでは恐らく良いのでしょうが、どうでしょう?
662:名無しさん@ピンキー
09/03/16 23:31:16 9Fcf12U8
俺はもっと激しいのがいいな
663:名無しさん@ピンキー
09/03/17 00:52:17 lURS+X5I
>>355です。以前はどうも失礼致しました。>>545の続きです。
すると黒ドレスの女性は幾重もの螺旋状に湾曲した杖を持ち上げ、月照らす闇夜にかざした。
杖の先端に嵌められた卵大の宝石が幾色もの光を灯し、微かな夜風が吹く。杖を戻し光が治まる
と、彼女の身体に異変が起きる。ドレスの下から背中が静かに隆起すると、皮膚の下からドレス
を貫通して漆黒の光沢を放つ一対の突起物が現れた。現れた突起物は中程で下向きに折れ曲がると、
いずれも彼女の身長を優に超すまでに伸びていく。やがてそれは羽毛に覆われた巨大な烏の翼と
なった。蛹から蝶が孵る様という表現の合う、激しくも静かな変化が完了する。月明かりを反射した
彼女の翼が妖しくも神秘的な様相を呈していた。翼を生やした女性は一呼吸置くと2度、3度それを
羽ばたかせた。周囲に静かな旋風を起こしながら、彼女の身体は宙に浮かんだ。まるで滑空する
鷹が野兎を仕留めんとするかの如く、彼女の狙う「獲物」が走る道路目掛けて降下して行った。
同輩が闇夜の彼方へ舞い行くのを見届けると、和服の女性は向きを変えると誰にとも無く呟いた。
「祖国も変わったのですね・・・」
変わり果てた祖国の風景を見回して和服の女性は、溜息とも感嘆とも、あるいは恍惚とも取れる
声で漏らす。彼女は悠久の昔に想いを馳せる。かつてこの地で強大なる二つの武家勢力が、全国で
抗争を繰り広げていた時代を思い出す。強く焼き付いたその記憶は彼女の脳裏に走馬灯の如く蘇った。
かつて鎌倉武士の青年と恋に落ちた事を、その彼はクーデターを起こした朝廷軍との戦で命を落と
した。その怒りから、気付いた時には朝廷軍の侍勢を吹雪で襲い全滅させていたのだった。深い悲
しみと犯した行為に対する自責の念から、茫然自失とした彼女は飛騨国の白山に身を隠そうとした。
深い絶望感から、生き甲斐を失った彼女はいつしか山頂へと向かっていた。頂にある火口へと身を
投げ、そこで消滅するつもりだった。ふもとに辿り着いた時、山頂から強大な妖気を感じたのを想
い出す。ふもとからも感じられるほどの異様な妖気の持ち主は何者なのか、恐怖と好奇心の入り混
じった自然と彼女の足は向かっていた。想い返せばそれが全ての始まりだった。山頂で東洋へと赴
いていた強大なる蝿の魔神との、運命的な出会いが脳裏に蘇る。見た事も無い衣類に身を包み、この
国の者とは明らかに異なる髪や肌の色をしていた、何よりもそれは彼女がそれまで感じた事も無い
ほどの強大な妖力を放っていた。戦わずとも知れていたその力は、彼女を畏怖させるに十分だった。
敗北感や劣等感といった陰湿なものは微塵も無かった。心に極限の驚嘆と感動が満ち溢れる中、
それの存在そのものに対して歓喜し敬服していた。気付いた時にはまるで魅かれるかの様に彼女は平伏し、その組織の軍門へと下っていたのだ。
―あれから凡そ800年もの月日が流れた。
664:名無しさん@ピンキー
09/03/17 00:57:27 lURS+X5I
魔王の軍門へと下りし後も、組織の任務で祖国へは幾度と無く赴いていた。しかし今彼女は
その変容ぶりを改めて感じていた。彼ら人間は僅か1000年足らずで祖国を、世界を、これほど
までに進展―否、変質させたのだ。妖力を持たぬとはいえ、彼らの力は決して侮ったものでは
なかった。その高度な文明によって自然を搾取し、民を洗脳し、他国家及び他民族を攻撃し、
富を奪い合い、そして何よりも世界中をその手中に収めんとする彼らの支配欲はもはや脅威の域
にすら達している―魔界の海軍提督にして軍部大臣を兼任しているリヴァイアサン御将軍の
お言葉を思い出す。彼が言う様に、人間と妖怪はもはや、本当に共存できないのだろうか。
すると急に、思考がそれていた事にはっとする。もう一つの獲物が走り去っていった方向に視線を
やる。人間をむやみに傷つける事は好まなかったが、今は一つの任務を遂行するのみだった。
女性の輪郭が崩れると彼女の爪先が、脛が、腰が、指先が、腕が、儚く散っていくと無数の白い
雪片となりながら夜風に舞っていった。
夜風に身体を漂わせていく女性は冷たい冬の風に身を舞いながら思いを巡らせていた。アスファ
ルトで舗装された道路を走るワゴン車へと照準を合わせながら、無数の雪片と化した彼女はその文明
の進歩の速さに感嘆する。雪片を飛ばす白い霧は溜息の様にも見える。やがて、彼女は車上に降り立
った。降り立った者の重量によってではなく、その異様な冷気によって凄まじい音と共にワゴン車の
天井は軽く収縮した。
665:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:01:18 lURS+X5I
ワゴン車に乗っていた男達は異変に気づき上を見上げた。たった今、彼らの頭上で鉄板が軋む様な
激しい音がしたのだ。強盗3人はいずれも黒い覆面で顔を覆い、黒いジャージにチョッキ、手には厚手
の手袋を嵌めている。車の運転席に座っていた男一人と、後部座席に座っていた男二人は不審に思い、
バックミラー越しに顔を見合わせる。何かが勢いよく車上に落下したのだろうか。後部座席の1人が様子
を確認すべきか、運転席の男に訊ねた。
「なあに、大した事はない。」
運転していた男は首を横に振る。周辺には高いビルが沢山建てられている。恐らく、どこかで工事を
行っていたビルかどっかから工事具材か何かでも落下したのだろう。頭上に落ちなくて良かったな、と。
仲間達は納得した様だったが、どこか怪訝な表情だった。言ってる本人である彼にもどこか引っかかる
ものがあった。そういえば何故だか急に冷え込んだ―と思って角を曲がろうとした瞬間、路上に移し
出された車の影を見て男は息を呑む。街灯の蛍光によってワゴン車の影がゆっくりとアスファルトの路面
に映し出される―そこで信じられない現象が起きていた。ちょうど今彼らが座っている場所の真上に、
得体の知れぬ物体が形成されていく。それは次第に一本の柱の様な形を取り、まるで粘土の様に一つの姿
を形作った。車の影の上に不気味な1本の柱の様な物体が映し出されていた。始めは樹氷の様にも見えたが、
街灯に近付くに連れ、次第に輪郭をはっきりさせた。それを見て男は目を剥いた。それは一体の人影だった。
得体の知れない何者かが車上に乗っている。こんなことは有り得ない―!!
運転席の男は後部座席の男2人にシートベルトを装着するよう指示を出すと、車体を乱暴に振り回す様に
して急カーブを切った。2つの内輪が路上と擦れ、外輪2つが軽く路上から持ち上がるのが分かった。シート
ベルトはしていたが、まるでカーブする方角に吸引される様に三人の身体は大きく傾いていた。路上を見降
ろすと、得体の知れぬ人影は消えていた。バランスを崩して路上に転落でもしたのだろうか、安堵の息を漏
らそうとしたその時―瞬間、瞬く様に何かがガラス越しに映る。女の白く長い脚の様にも見えたそれが一瞬
だけ視界に入る。刹那、凄まじい衝撃と共にフロントガラスが突き破られた。
666:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:08:38 lURS+X5I
「―!!?」
車内には無数のガラス片が飛散し、運転席の男も含めた3人は身を屈めた。鋭利なガラス片が、合成繊維の
手袋の上から素手を切る痛みも忘れ男はハンドルから手を離すまいと必死で堅く握る。危うく視線を逸らし
ハンドルを切り損ねそうになる。状況が掴めぬままどうにかハンドルを切り、電柱への正面衝突を回避した
所で、後部座席の男2人の叫びと共にバックミラーに映った姿を見て男は息を失った。冷気で結露したミラー
にその姿が朧げながら映し出されて行く。雪の様な純白の地に淡い水色の結晶模様が散りばめられた和服姿、
透き通る様に美しい水色の瞳と長髪、幻想世界の住人とも思える幻想的な風貌だった。こいつが今しがた
フロントガラスを蹴破って侵入してきた何者かに違いなかった。戦慄を覚えながら運転席の男は後部座席の
2人に指示を送る。戦慄に震えている運転席の男の指示で、後部座席の男2人は女目掛けて一斉射撃をする。
無数の弾丸がまるで殺到するかの如く、次口に女の頭部へと命中する。弾丸は女の顔を削り、吹き飛ばした。
崩れゆく女の頭部は無数の肉片となって車内に散乱する。一体どれだけ撃っただろうか、気付いた時には
彼女の首から上は無残にも破壊され、すでにそれは人の頭部としての原型を留めてはいなかった。首から上
が吹き飛ばされた女性はまるで頭部だけ破壊された彫像の様に、直立したまま動かない。取り乱し冷静な
判断力が鈍っていたとは云え、今更の様に男は自分が支持した行為の残虐性に動揺していた。極度の興奮状態
の中、3人とも身体の震えが止まらなかった。身体が標的を外した弾丸は助手席の背もたれに幾つもの醜い穴
を空けていた。死んだのだろうか、生きている筈がない。が、しかし何かがおかしい。そういえばあれだけ
狙撃したにも関わらず、返り血を全く浴びていない。どころか出血がまるで見られない。ふと視線を落とすと、
床に落下していった肉片がは無数の雪の欠片となって崩れて行った。その光景に驚愕する。車内の空気が急速
に乾燥していくと、空気中の水滴がダイヤモンドダストとなって宙に舞い上がる。車の中と外から大気中の水分
が凍りつき、無数の結晶となっていく。それら無数の結晶は宙を漂い、吹き飛ばされた首の断面へと集結して
いった。
667:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:11:56 lURS+X5I
↑ミス
9行目 ×次口→次々○
14行目 ×身体を標的を→標的を○
668:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:21:24 lURS+X5I
「――なっ!?」
何が、起こっている!?状況を理解できぬ男達はただ黙ってその光景を見つめる他無かった。早急には
事態を理解できなかった男達はその光景に息を呑む。凍った水滴は雪となって女の頭部を形作る。それは
まるで木材から木彫りの人形が浮かび上がる様に、顔の細部が復元されて行く。目が、鼻が、唇が、頬が、
次々と形を顕にし、修復されて行く様相は不気味さを通り越していた。幻想の造形という有り得ない不思議
は、不気味であると同時に美しく、神秘的ですらあった。3人は暫しの間、置かれていた状況と恐怖を忘れ、
その奇観に見惚れる。雪の造形だったには生気が注し、やがて人肌の様な生気が注す。澄んだ瞳は青を灯し、
肩から腰にかけて流れ落ちる様に長髪がなびく。やがて全体が修復された彼女は静かに手を口に当てると、
何かを取り出す様な仕草を見せる。か細い指を静かに開くと、掌からばらばらと落ちたのは凍った銃弾だった。
その乾いた音が、夢から覚ます様に状況を思い出させる。忘れていた現状を思い出し、恐怖に震え、取り乱す。
再び女目掛けて発砲――しようとするが、弾が出ない。弾は切れているにしては変だった。筈だが、弾丸が
発射されない事態に焦りを抱き、手元に視線を降ろすよりも先に男は手に凄まじい寒気を覚える。ようやく
視線を降ろすと、銃口に、引き金に、銃身全体に、白い霜が降りて凍結していた。かじかんで自由の利かない
両手は内なる焦りに対して、余りにも緩慢でもどかしい動きをするだけだった。味わった事の無い恐怖と、
異様な冷気から発狂しそうになる。叫び、暴れ様とするが恐怖と寒気で声を出す事も、身体を動かすことも
ままならなかった。そこで男達はさらなる不思議を目にした。女の手首から先を冷気の湯気が取り巻くと、
それは瞬時に形状を変化させた。霧が、冷気の湯気が晴れる、そこには鉤爪状に変形した女の右手が姿を顕わ
にした。白く透き通った爪の一本一本が長く鋭利な刃物と化し、5本の刃は刀身をぎらつかせていた。女は
右手を氷でできた巨大な鉤爪へと変形させていた。めきめきとまるで氷に亀裂が入る様な音をたてながら、
小さかった女の口は倍ほどの幅に裂けると、左右の口端からは頬の肉を内側から突き破る様にして、2本の
短刀状の牙が上顎から下へと伸びる。つららと呼ぶには余りにも鋭利で美しく、凶悪に過ぎる氷の牙が生え揃う。
寒気と恐怖から男達3人は股間に何やら生暖かいものが溢れ出るのを感じた。しかしそれも束の間、刀剣の様な
指で女は後部座席の男2人の胸部を一閃した。純白の生地に返り血が撥ねるよりも前に、凍った血飛沫は真紅
の花弁となって彼女の足元に散る。斬られた男達からは生気が失せると、重なる様にして女の足元に力無く
倒れた。運転席から身を起こした男は戦慄に打ち震えた。思考よりも先に男の身体が動いていた。
「死ねぇ!!」
我が身の危険を感じた男は本能的にサイバルナイフを抜くと、全体重をかけて女に飛び掛っていた。
が、身体が前に進まない。目に映る像に再び驚愕する。
「なっ―!?」
刃物の尖端を、棒を握る様に横からではなく、前に在るものを掴み取る様に正面から、今度は左の掌が
受け止めていた。まだ人の掌としての形状を保っている柔らかな女性の手が、先鋭な刃物を押さえ込む。
その場から毛ほども動かない女性は指先を微かに動かし、ナイフの重心をそっとずらした。力をいれた様
には見えなかったが、合金製の鋭利な刃物があたかも麦わらの様に、根元からぽきりと折れた。女性の持
っていたナイフの先端と男の持っていた取っ手が同時に床に落ち、喧しい金属音を立てる。その音に平静
を掻き回された男は、まるで教会の鐘の音に悶え苦しむ悪魔の様だった。擾乱した軍隊の様にまとまりを
失う意識の内から、膨大な恐怖が溢れ出す。
669:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:25:02 lURS+X5I
「あぁぁあ、ああっ・・・!!」
意味をなさない奇声をあげようとするが、声が出なくなる。無意識のうちに男はよろめきながら立ち上がり、
再び崩れ落ちる。歩きを覚える赤ん坊の如くそれを繰り返しながら、よたよたと後ずさる。そんな彼を彼女は
何も言わずに一歩、また一歩と踏み出し、距離を詰めていく。彼女の仕草や表情は―まるで太古の猛獣の様
に上顎から下に伸びる一対の氷の剣歯を除けば―穏やかそのものだったが、彼にとってこれ以上の恐怖は無い。
先程から起きている有り得ない現象に、次は確実に自分が標的という恐怖が男を追い詰める。一歩、また一歩と
後ずさる彼を嘲笑するかの様に、今は城壁の様にも見える後部座席が彼の逃げ道を阻む。今や男にとって刑務所
に行く事はもはや極楽の様にさえ思えた。死刑宣告を言い渡される囚人の持ちがした。ゆっくりと、しかし確実
な破滅が迫る。そんな彼を余所に、女は静かに男の頭部を撫でるかの様に軽く触れた。同時に顔には激痛が走り、
屈強な男はまるで赤ん坊みたいな悲鳴を挙げる。それは華奢で可憐な女性ものではなく、明らかに人間のもの
ではない―もはや彼女が人外の怪物だという事は彼にも分かっていたが―凄まじい怪力と冷気だった。頭部を
巨大な万力で押し潰されるかの様な感覚だった。眼球が飛び出し頭蓋が割れてしまうのではないか、というほど
の激痛を感じたが恐怖と疲労の為からなのか、それも直ちに引いていく。覆面越しに遠のく意識の中、男は掴ま
れた箇所の感覚が無くなっていくのを感じた。
「うっ・・・ぐああ、あ・・・っ!?」
身体中の感覚が無くなっていく男はおぼろげながら見た、様な気がした。彼に対する同情とも、憐れみとも取れる
女性の悲しげな表情が曇り行く視界の中に映った。それが疲労と恐怖による幻覚なのか、現実のものなのか、状況も
理解できぬまま―彼の視界は真っ暗になり、意識は深い深い闇の底へと、落ちて行った。
670:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:36:10 lURS+X5I
床に崩れかかる寸前で彼女は彼を左手で抱きかかえた。母親が子供をさとす様に、そっと優しく席に
寝かせてやる。強盗達を片付けると、車の前に向き直り、運転席へと進む。変形していた左手の輪郭が
崩れると、それはまた元の形状を取り戻した。唇の幅は元の大きさに戻り、両端から伸びた牙は小さな
口の内側に収まる。運転席に腰を降ろすと、妙に慣れた手つきアクセルを踏み車のハンドルを操作する。
少ししてから車は疲れた様に走り出した。魔力や呪術も使わずに鉄の塊が動くというのは何度やっても
不思議な心地がした。バックミラーに目を移し、まるで死体の様に青ざめて意識を失い、横たわっている
三人の哀れな男達を一瞥した。恐怖で気を失っており、すっかり衰弱していたが、見た目ほど酷くはない。
いずれも凍傷を負ってはいたが脈はある。見た限り命に別状が無い事は見て取れた。しかしながら明らか
に手加減が不十分だった。任務遂行の為とは云え、無暗に人を脅かし傷つけるのはとても気持ちの良いもの
ではなかった。か弱き人間共を相手にする時、彼女がいつも、いかに殺してしまわない様に倒すかという点
にいつも苦心していた。長らく人間の相手をしていなかった為か、加減が感覚的に鈍っていた。彼女たち
妖怪の中には戦闘や殺戮を好き好んで行う者も少なくはなかったが、かつて人間と交流した事もある彼女
には人間に共感する部分も無い訳ではなかった。何よりそうした彼女の配慮は、過去に感情的な理由から
大殺戮を犯してしてしまった彼女自身による反省の表れである。
671:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:49:25 lURS+X5I
彼女が事前に計算した事とは云え、先の運転手が車両を目立たぬ位置に停車してくれていたのは幸い
だった。ただでさえ目立たない位置に停車してくれた上、彼女が冷気で窓を結露させた為に外部からの
視界は殆んど遮られている筈だ。ただ、ガラスが割れて半ば損壊した車はいくら何でも不自然過ぎる。
なるべく人目に着き難い場所に、なるだけ「自然」な形に、車を停車させて、使えそうな金品を持ち去
らねばならない。先程から彼女達がいる通りは幸いにも人通りが少なかった。銃声はした筈だったが、
他の建物は以前として静まり返っている。所狭しと立ち並ぶ安アパートには人が住んでいるとは思えない
ほどに閑散としていた。深夜にも営業する居酒屋やラーメン屋から微かな人気が感じられる程度だ。
狭い路地裏の電柱横にワゴン車を駐車する。エンジンを切り、運転席から這い出す様に後部座席へと移動
する。荷台に無造作に積まれたボストンバッグの南京錠を叩くと、豆腐の様に簡単に捻じ曲げられ、壊れた。
すぐさま中身を確認する。ゆっくり数えている余裕はなかったが、大目に見積もってもせいぜい1000万円
程度と思われた。かつてロシアのマフィアから一度に5億ルブール近い巨額の資金を奪った事もある彼女
にしてみればこれでも雀の涙だったが、収穫があるだけでも充分だった。多少の不便を我慢すればしばらく
はこれで生活できる筈だ。仲間の「収入」も合わせれば何とか食い繋げそうだった。出ようとした所で、
余りにも不自然に荒らされた車内を見渡す。操作技術が年々向上しつつあるとは云え、さすがに彼らの証言
を現代の警察が信用するとも思えなかった。この3者以外の介入には気付くだろうが、まさかそれが妖怪の
仕業だなどと誰が思うだろう。万が一にも特定されたとして、彼女達にしてみれば少々面倒な程度で別に怖く
はない。彼女の同僚である先程の魔女や上位の悪魔ともなればCIAの捜査でさえも煙に巻けるのだという。
思慮ある大人が、馬鹿馬鹿しい子供騙しの遊びに付き合おうとする様な表情になると、想い出した様に彼女
は運転席に座った。数メートルほど車を交代させると車体をずらし、先ほど彼女が停めた脇の電柱に勢いよく
衝突させた。車全体に大きな衝撃が走り、潰れた。エアバッグが飛び出すよりも前に彼女は身を翻し、後部座席
へと飛びのいた。気絶して横たわっている男の一人を両手で抱えあげると、エアバッグと座席との間に押し
込むようにして、彼を窒息死させない様に運転席へと座らせる。やっているのが実に馬鹿馬鹿しかった。
一時しのぎの稚拙な演出だという事は分かっていた。さすがにこの程度の罠に警察が騙されるとも思えないが、
わざわざ不自然なまま放置しておく必要もない。ある事故を演出して彼女は車を後にする。現金の入った鞄を
片手に持つと女性は静かに運転席のドアを閉めて出て行った。
672:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:54:48 MP/Vgbu2
とりあえずGJついでに言っておく
いい加減sageと改行をおぼえてくれorz
673:名無しさん@ピンキー
09/03/17 01:59:31 lURS+X5I
ドアの閉まる音を背後に女性は車から数歩動いた所で、立ち止まる。まるで舞う様な美しい身のこなしで、
身体を宙で反転させると。何かを背後に投げつけた。女性の背後に立つ2階建ての屋上向けて、鎌状の氷の刃
が勢いよく横回転しながら飛んでいく。腹部に氷の刃物が刺さった男が、背後で悲痛な呻き声を挙げながら屋根
の上で倒れた。彼の腕から離れたガラス瓶は空中で見事な放物線を描き、彼女の横に落下する。その横で乾いた
音を立ててアスファルトの路上に落ちて割れる。入っていた中の液体は幾つもの水滴となって傍らに零れる―
―途中で、凍りついて八方に散らばる。幾つもの氷片となった瓶の内容物は彼女の足元にぱらぱらと落ちる。
そこでガソリンの様な不快な臭気が鼻を突く。車内の誰かが援助を呼んだのだろう、彼らの仲間がまだ潜んでいた
のだった。全く油断も隙も無い。偶然かもしれないが、今の男が投擲してきた物体は彼女に唯一ダメージを与える
事のできる武器だった。ふと耳を澄ますと遠くからサイレンの音が聞こえてくる。もはや時間は残されていない。
先の3人と今の1人、いずれも急所は外してあり、早急な医療処置を受ければ十分に助かる事を最後にもう一度だけ
確認すると、逃げる様にして彼女は現場を去っていった。
やがて狭く静かだった路地裏は湧いた様に少し、また少しと人気が射す。やがてそこは人で溢れかえり、嘘の様な
ざわめきが沈黙を破る。死んだ様な夜の街が束の間の活気に満ち溢れた。
「マジで、超すごぉ~い!ねぇ兼ちゃーん♪写メ取ろうよ!!写メ!」
「事件発生時の状況とかどうでした。」
「ごめんなさい。通りかかっただけなので・・・」
「おい、何がどうなっている?見えねーよ。」
「これは大したスクープ映像だ。」
「どいてくれ!通行の邪魔なんだよ。」
「はい、捜査の邪魔になりますので見物はどうかご遠慮下さい。」
居酒屋から見物しようと身を乗り出す酔っ払い、携帯のカメラで現場を撮影する若者、興味深げに殺到する
野次馬、現場に殺到するカメラマン、通りがかりの学生、情報を聞きつけて来たカメラマン、事件の聞き込み
調査を行うリポーター、押し寄せる人だかりを阻止する警官隊―それらがひしめき合い一つの祭りが生まれる。
その中の誰一人として、旅行鞄を提げた和服の女性が冷たい雪風となって散らばり、ビルの屋上へと舞っていく
異観に気付く者はいなかった。
現場から少し離れた地点で黒塗りのメルセデスが無残にも転覆し炎上している。その横では柄の悪い男達が車から
投げ出され、生気を失った様に倒れている。彼らは体中に刺青をしているが、それらも火傷のせいで何か分からない
ものになっていた。もはや生きているのか死んでいるのかも怪しい様にみえた。そんな彼らに構うそぶりも見せず、
黒灰色のドレスを着た女が宙に浮かべた水晶珠を確認していた。彼女の左手には杖が握られている、そして反対側の
手には何やら意味有りげなジュラルミンケースを提げられていた。車の横でいずれも体中に酷い火傷を負ったやくざ
と思わしき男達を尻目に彼女は同輩と合流するべく、再び翼を生やすと闇夜の彼方に飛翔した。その現場へかけつけた
一人のカメラマン風の男が、頭上に気配を感じて闇夜を見上げる。先とは対照的に静まり返る闇には、空高く満月が
昇っているだけだった。不気味だが、同時に美しい冬の夜空だ。
電線に止まった数羽の烏が嘲る様に彼を見下した。
674:名無しさん@ピンキー
09/03/17 02:02:21 lURS+X5I
>>672気付かずに書き込んでしまった。すみません。まだ1章はもう少しだけ続く予定ですが、
今日は遅いのでこの辺で、明日にでも1章完結させます。
675:名無しさん@ピンキー
09/03/17 05:42:24 MiUn/QzO
>>197->>209ってどうなったの?
676:名無しさん@ピンキー
09/03/17 10:54:14 tlE+OSNT
>>674
「sageとは」 でググレ
これ以上無視して投下し続けると、さすがに荒らしor春の人認定されそうだぞ
677:名無しさん@ピンキー
09/03/17 17:39:01 KIuzlN4g
>>661
俺はストライクだな
外面好みが多い(と思う)が一応内面の変化が強ければ好まれる事もあるぞ
678:名無しさん@ピンキー
09/03/18 00:55:37 o7Eih+OU
いつになれば異形化するんだ?
679:名無しさん@ピンキー
09/03/18 09:54:11 4YDtJQDM
そういや 天使とかに変身するスレあったよな
まぁどうでもいいか
680:変身!ホッケー仮面少女☆じぇいさん
09/03/18 18:15:43 bvflphhd
性転換要素ありの小ネタ。
駄目な人は名前欄でNGしてね。
681:変身!ホッケー仮面少女☆じぇいさん
09/03/18 18:16:17 bvflphhd
西日の差し込む放課後の静かな教室に、彼女の姿はあった。
両サイドでまとめられた、いわゆるツインテール。
くりっとした瞳は、美しさより可愛さを印象付ける。
同じ年頃の女の子に比べて、やや発育が遅れた体。
彼女─壱尾あやめは、藍色のブレザーとプリーツスカートという、つまりこの学校の制服姿で、何かを決意したような表情で、自身の手に握られていたものを見つめていた。
「今日も、頑張らなきゃ…」
己を奮い立たせるようにこわばったその手には、お面。
あの有名なホラー映画の殺人鬼が被っていたものを髣髴とさせる、ホッケーマスク。
色こそ可愛らしいピンク色だが、形はそのものだ。
「悪い人達をやっつけちゃう!クリスタルレイクパワー!ビルドアップ!」
謎の呪文を叫びながら、あやめはそのマスクを顔に近づけていく。
「きゃっ」
すると、ある程度その童顔に近づいたところで、仮面は彼女の手を離れ、吸い寄せられた磁石の如く、顔にぴたりとくっついた。
「はあっ」
その瞬間、どくりと心臓が跳ねた。
「はあ、はあ、はああ…っ」
自身でも分かるくらい、顔が火照っている。それは顔だけでなく、瞬時に全身へ広がっていく。
「は、くはあっ!」
乱れた息の合間から、艶かしい色を帯びた少女の喘ぎが漏れる。全身を作り変えていく未知の力に苦痛とそれを上回る快楽に、あやめは頭を抱えて全身を震わせた。
「ひぃ、ふああっ!」
変化が始まる。
頭を抱える両手の指先が、太く醜くなっていく。その指が押さえつける栗色の髪が、はらりと抜け落ちていった。
「きひぃ、むうぅぅっ!」
肥大化は指だけに留まらず、手全体を侵食していく。同時に、細い腕を包むブレザーの内側が、ぼこぼこ蠢きながら膨らんでいく。同時に足も大きくなり始め、ローファーがはちきれそうになった。
髪の毛は抜け落ちると同時に、栗色を濃くした色のものが新たに生えるも、その長さは足りず、ツインテールをまとめていた髪留めのゴムバンドが床に落ちた。
やがて耐え切れず、履いていた革靴はソックスごとはじけた。
「ひやあっ」
外気に晒された足も足首も、少女のものとは思えないほど大きく、太く、逞しい。白い素肌は肥大化したことろから色を濃くし、黒ずんでいた。
「う、うあああああっ……」
足首までの変化がついに脹脛にまで広がったところで、あやめは呻きに似た嬌声を上げながら、不釣合いなほどに大きくなった両腕で、ブレザーとブラウスを掴み、びりびりと引き裂いた。
同時に耐え切れなくなったブレザーとブラウスの腕部分も、引きちぎられた生地が足元へはらはらと広がった。
682:名無しさん@ピンキー
09/03/18 18:17:28 aJSAhla1
先に言っておこう
GJ!
683:変身!ホッケー仮面少女☆じぇいさん
09/03/18 18:17:31 bvflphhd
その姿は、いびつだった。
肥大化、筋肉質になった足の変化はすでに太腿の付け根にまで及び、それに押し上げられた身長はすでに170センチを越え、同じように二周りかそれ以上に大きくなった両腕が、袖が破けてノースリーブの格好となった肩口から伸びている。
しかし体はか細い少女のままで、破かれたブラウスの合間から見えるお腹や、水色のスポーツブラに包まれた慎ましい膨らみも、素肌の色もあやめのままだ。
だが、すこしづつ腰周りが成長し、悲鳴を上げ始めたスカートの下、ブラと同色のショーツのさらにその下では、この中学2年生の少女を完膚なきまでに変質させる大きな変貌が始まっていた。
「ああ、あんっ!」
ボディビルダー真っ青なムキムキの太腿をもじもじとすり合わせながら、来たるべき性感に喘ぐあやめ。
「はえ、ちゃうっ!はえ、ちゃう、よおぉぉ…」
それは幼い、薄い茂りの秘裂を割って、大量の愛液に塗れながらその顔を覗かせ、次の瞬間、その身を一気に露出させた。
「あああああああああああああっ」
視界が白く塗りつぶされるほどの快楽が甘い痺れを伴って全身を駆け巡り、絶叫をあげる彼女。ぐしょぐしょのショーツからはみ出し、スカートを盛り上げるそれは、平均サイズを軽く上回る男根だった。
子宮の中で肉付き、変質させ、膣や周囲の細胞を取り込んでその身をさらした起立は、赤黒くあやめ自身の分泌でぬめっていた。
「うああ、うはあ、ひぎいっ」
少女から、男へ転換を遂げた際の絶頂で、手放してしまった意識や思考が急速に、体に適した形へ組みかえられていく。その変化は肉体にも返され、残ったあやめとしての体が飲み込まれ、作り変えられていく。
「あう、ああ、あお、おう、うおっ…」
声が太く、低くなっていく。腰周りも大きくなり、尻肉は筋肉質に引き締まる。腹筋が割れながら広がって、彼女、いや、彼の体が膨らんでいく。
「ぬおお、おおおっ」
熊のような唸りを上げて、変化の気持ちよさに酔いしれる元・少女。控えめな双丘は瞬く間に固くなって広がり、大胸筋と化した。ブラジャーも耐え切れず千切れる。
肉棒を吐き出した恥丘が急速に膨らんで、睾丸に成り代わる。首周りも急速に肉付いて、変身が完了した。
「おおおおおおおおっ!魔法少女ジェイさん、爆☆誕っっ!」
小柄な少女あやめの面影は完膚なきまでに無かった。どこを見ても筋肉、筋肉、筋肉!小さな女子中学生は、制服の残滓を素肌に纏った大男に生まれ変わった。
その顔はホッケーマスクに隠されたままで、うかがい知ることはできない。パッと見変態である。
しかし男─魔法少女☆ジェイさんは気にした様子も無く、汗を撒き散らしながらタックルの構えを取った。
「街に蔓延る悪を!己のそそり立つ鉈で突きまくる!ジェイさん、行っきまあああああああすううううううう!!」
鉈は突くものではなく叩き切るものだが、本人は一向に気にしていなかった。そのまま窓ガラスをやぶり、彼は夜の街へ駆けて行った。
~面倒になったので以下戦闘をダイジェストでお送りします~
「き、貴様、何者だ!」
「キノコ堀りの男、ジェイさんっ!」
「布団敷こう、な!?」
「オンドォルルラギッタンディスカァ!」
「小早川大尉殿……愛しておりました……」
「そこまで情けないなんて、男として自殺するべきじゃない?さっさとこれ脱いで、目の前で死になさいよ、ほら」
「こいつをどう思う?」
「すごく……大きいです」
「へ ヴ ン 状 態 !」
「ひぎいぃぃっ!にんっ!しんっ!しちゃうぅっ!らめええええええええっ!!!」
こうして、街の悪はまた一つ潰えた。
しかし、この世に、呪いと憎悪がある限り、世にも不思議な出来事は途絶えることは無い。
ジェイさんは一人静かに、幸せが来る日の事を、思っていた─。
684:名無しさん@ピンキー
09/03/18 18:20:15 bvflphhd
終わりました。ジェイ○ン全く関係ないですね、すいません。
融合ものを性懲りも無く書いていたのですが詰まったので、息抜きに書きなぐったものです。すいません。
すいませんほんとすいません
685:名無しさん@ピンキー
09/03/18 19:49:37 97rb4Mri
スレチじゃね?
686:名無しさん@ピンキー
09/03/18 20:12:15 M/qrq6TM
どちらかと言えばすれ違いだがGJ
ただあっちは変身そのものよりも変身後の葛藤とか戸惑いをメインにしてるしなあ
687:名無しさん@ピンキー
09/03/18 20:14:43 bvflphhd
スレチでしたか、申し訳ない
688:名無しさん@ピンキー
09/03/18 23:50:34 oxoDWtUv
なあに、いいってことよ
689:名無しさん@ピンキー
09/03/19 13:07:57 ObJh3btT
TSもOKだ!
690:名無しさん@ピンキー
09/03/19 17:40:32 K+XDZU+Y
>>687
ジェイ○ンは、ハルクみたいな物だと思えば一応人外なのかな。
外見的に人間だから獣化とか好きな人には物足りなかったんだと思うが、
ギリギリスレ違いじゃないと思うよ。
GJ!
逆に、TSは性別変わった所で人間には違いないから微妙な所だな…
一応ここは人外への変身スレだし。
次スレはTSや固体化とかも含めて、変身全体を楽しめるスレにするか?
勿論、本家TSスレとかとは被らない様に、あくまでも変身そのもので。
691:名無しさん@ピンキー
09/03/20 22:15:21 U6dbgo0g
>>656
こことは兄弟スレである獣化スレにも投稿してあげてください(っていうか、こっちの住民だけでいただくのはもったい無さすぎです)。向こうの方々も喜ぶと思いますよ。
【獣人】亜人の少年少女の絡み8【獣化】
URLリンク(yomi.bbspink.com)
>>690
そう言えば、アメリカには「シーハルク」というのもあるそうですよ。
おとなしい弁護士の女性が命を狙われて重症を負って、従兄弟であるハルクの中の人の輸血で助かるんだけど代償として女性版ハルクになってしまうとか。
URLリンク(en.wikipedia.org)
692:名無しさん@ピンキー
09/03/21 01:20:55 0auNW/GD
>>691様
シーハルクかこいい!
693:名無しさん@ピンキー
09/03/30 03:36:58 AQdEunue
ほしゅはーぴー
694:名無しさん@ピンキー
09/04/04 15:41:44 hTseQRO3
今更なんだが
読み方っていけいか?いぎょうか?
695:名無しさん@ピンキー
09/04/04 18:31:22 L2Hu/ss+
いけいでもいぎょうでも変換できるからどっちでもいいんじゃない?
696:名無しさん@ピンキー
09/04/07 01:37:59 ACWS4Qg9
『型』じゃなくて、あえて『形』のほうを使うなら『いぎょう』じゃないか?
ネット辞書にも人外への変化は『異形(いぎょう)となる』とあるし。
あと個人的には『いけい』は文学よりも科学で見るほうが多い読みじゃないかな。
異型上皮とか。
『形』は姿とかの表面的なものを指し、『型』は性質とか内面を表すんじゃないかと。
『異形』が細胞を鉄に変えること、『異型』が細胞を癌化させることというか、
ようは人外化と洗脳の違いみたいなもんだと思う。
まぁ、どっちでもいいとも思うけど。
697:名無しさん@ピンキー
09/04/07 10:11:01 Irjla9rV
typeとshapeじゃね。
698:名無しさん@ピンキー
09/04/07 13:43:34 UNV5RN8I
書いて読み返したらどうもこのスレ向きでないことに気付いた。
スーパーヒロイン総合スレの行方分かる人いる?中身的に明らかにそっちの方が近いんだけど…
699:名無しさん@ピンキー
09/04/09 09:11:15 o/GMP28g
行方不明だよな
700:名無しさん@ピンキー
09/04/13 22:44:33 4gC9Z8kQ
保守
701:名無しさん@ピンキー
09/04/14 00:10:29 kwoZC/rc
戦隊モノで人外化に目覚めた俺
702:名無しさん@ピンキー
09/04/15 00:03:46 EovjNNQG
怪人の変身とか
703:名無しさん@ピンキー
09/04/16 18:57:55 Gn2RiIco
そんなあなたに
おにゃのこが改造されるシーン素体13人目
スレリンク(sfx板)
おにゃのこ改造 BYアダルト14
スレリンク(eroparo板)
704:名無しさん@ピンキー
09/04/21 01:01:23 DCObZ/N/
このスレだめかもしれんね
705:名無しさん@ピンキー
09/04/22 06:57:02 0d31oaQe
なぁに、昔のペースに戻っただけでしょ。
706:名無しさん@ピンキー
09/04/22 13:21:03 oFVTNUZq
毎日覗く虚しさ
707:名無しさん@ピンキー
09/04/26 16:52:13 hbL8FJJ1
にゃり~ん
708:名無しさん@ピンキー
09/04/28 13:31:46 wn2dBac9
変身シーンはグロイ方がいい・・・よね?(´・ω・`)
709:名無しさん@ピンキー
09/04/28 15:49:16 yppe/VSj
あまり気にはしないよ
710:名無しさん@ピンキー
09/04/29 00:00:25 GmnWKA5q
汝のなしたいように為すが良い
711:名無しさん@ピンキー
09/04/29 08:48:46 8R2xsLzE
魔法少女の変身シーのごとくメルヘンちっくだけど、
できあがりは……というのもいとをかし
712:名無しさん@ピンキー
09/04/29 12:06:55 12FFFQEY
拝啓
このスレにある悪魔化みたいに価値観が変わる展開があればヨロシ
敬具
713:名無しさん@ピンキー
09/04/29 15:06:25 FxZjIfSy
精神の変化はいるよね
714:名無しさん@ピンキー
09/04/29 15:33:04 8R2xsLzE
無くても良いと思う。個人的には異形と化した肉体ともとのままの精神の
ギャップが良いというか、心身ともに変わり終わったらただの怪物だろうと
思うが、クトウルー神話みたいに自分の精神が少しずつ人外になっていくという
恐怖を描くというのもまた良きかな。
715:名無しさん@ピンキー
09/04/29 16:36:05 12FFFQEY
肉体の変化は遅くても早くても良いけど、精神の変化はゆっくりだよね
716:名無しさん@ピンキー
09/04/29 19:09:45 os3ZG5e8
まぁ、好みは人それぞれだから。
話題の流れぶった切る訳じゃなくて、
好みは人それぞれだからこそ面白いって事で。
717:名無しさん@ピンキー
09/04/29 19:10:04 2N2oBALr
そういえばプレステ1で
人魚の烙印とかいうのあったな
718:名無しさん@ピンキー
09/04/29 19:13:04 c6fYpqHE
「こ、怖ぇ!鋭い変化がゆっくりとやってくるッ!うおああああああああ」
「どうやら異形化している人間にイギョウカ・エクスペリエンスで さらに過剰に異形化を与えると・・・
『暴走』しちまうらしいな・・・『感覚』だけが・・・せいぜい利用させてもらうかな・・・」
719:名無しさん@ピンキー
09/04/30 00:50:47 k0z15z6s
イタリアに帰って下さい
720:名無しさん@ピンキー
09/04/30 14:05:26 Qx/74eWt
ウェザーさんの蝸牛は良かったよ
721:名無しさん@ピンキー
09/04/30 15:25:00 t4hsfyQZ
Dio様に一生ついていきたい
722:名無しさん@ピンキー
09/05/02 01:35:00 QwlFw4ge
age
723:名無しさん@ピンキー
09/05/04 21:46:42 xroLgME0
>>715
精神はゆっくりがいいな
変身してすぐ「ククク・・・」は萎える
724:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/06 20:53:25 Qol5p+gg
ご無沙汰しております。
20レスの中くらいの長さのを書けたんですが、現在残り464KBという微妙な容量です。
まず次スレを立て、リンクを貼ってから投下し、
もし終わらなければ次スレに続く、というやり方で投下したいと思います。
これだと、スレ内で終わるにせよ終わらないにせよ、
埋め立てに長い時間かけなくてすむのではないかと思います。
で、先に次スレ立ててしまいました。下記です。
【異形化】人外への変身スレ第四話【蟲化】
スレリンク(eroparo板)
勝手に進めすぎたかもしれませんが、どうかご容赦下さい。
以下のSSの内容ですが、
実は>>693のカキコの代わりに投下したかった内容だったりします(w。
ただ、本物のハルピュイアとは色々違うのでその名は使いませんでした。
あ、あと百合と、ごく微弱なスカ表現がありますので一応注意です。
725:人面鳥(1/20)
09/05/06 20:53:56 Qol5p+gg
「あぶないな。あぶない、あぶない…」
たしかに、ごつごつした岩場は足を滑らせるとかなり危ないが、そればかり
ではない。このあたりは怪物が出てきて人間をさらっていくという噂があり、
村人は決して寄りつかない場所なのだ。実はわたしも、道に迷わなければ、
こんな恐ろしいところに近づく気はなかった。
だが、人が寄りつかないせいなのだろう。薬草として珍重されるトリコゴケが
岩の隙間に密生している。別のハーブを採りに来たわたしが、急遽予定変更して
コケの採集に夢中になってしまったのは、軽率ではあるが抗しがたいことだった。
これを売ればハーブなどよりずっとましなお金になる。
欲に目がくらんでいなかった、と言えば嘘になる。でもこれは、親に迷惑ばかり
かけている親不孝娘の、せめてもの罪滅ぼしなんだ。…そんな言い訳を自分に
しながら、わたしはせっせと貴重な地衣類を採取し続けた。採り放題とは言っても、
ハーブとは違い、一度に採取できる分量はわずかなもので、採っても採っても
バスケットは一杯にならず、そのため、この、危険な場所を立ち去る踏ん切りが
なかなかつかずにいた。
不意に、背後からばさばさっという音がした。振り向く間もなく、わたしは
うつぶせに押し倒され、脇腹の部分にがっちりとした腕が回されたのを感じた。
そして次の瞬間、再びばさばさっという音がしたと思うと、体が地面から
持ち上げられるのを感じた。それで、自分が大きな鳥のようなものに捕えられて
しまったのを知った。大事なバスケットを置き去りに、わたしは遠ざかる地上を
唖然として見つめていた。
726:人面鳥(2/20)
09/05/06 20:54:16 Qol5p+gg
胸元を見ると、脇の下から差し入れられた太いごつごつとした鳥の足が、
どちらかといえばまだ小振りな乳房の下で、お祈りでもするようにがっちりと
組まれていた。振り払うのは難しそうだったし、万一振り払ったら、はるか下の
地面まで真っ逆さまである。たとえ、もうじきこの怪物に食べられてしまうの
だとしても、少なくとも今は、この怪物の腕にしがみついていないといけない
のだった。
あまりに急な出来事は、人の恐怖を麻痺させてしまうようだ。それに、
怪物からは、できかけのワインのような甘い香りが漂っていて、それが
本物のワインのように、全身の筋と頭の中を奇妙に弛緩させていた。それで
わたしは、かなり長い間、悲鳴を上げるのも忘れ、非現実的な空の旅に目を
見張りながら体を委ねていた。
長い飛行が続き、目的地らしきところが見えてきて始めて、わたしの中の
現実感が戻ってきた。目に入ったのは、とても人の近づけない険しい山岳地帯、
切り立った崖の途上の棚のような張り出しにある、「鳥の巣」らしき場所だった。
崖は上も下も果てしなく広がり、空を飛ぶ以外の仕方でこの場所に近づくことも、
出ていくこともできなさそうだった。その意味では、とても安全な巣であり、
そして牢獄であった。
―怪物はこんなふうに孤絶した安全な「巣」に獲物を運び込み、ゆっくりと
解体して食べるに違いない。それはつまり、もうすぐ先の自分の運命なのだ―
そんな冷静な推理を行ってしまった後で、ようやく現実感と恐怖が生まれた。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
目前に迫る巨大な鳥の巣を前に、わたしはかなりテンポのずれた恐怖の叫びを
絞り出していた。
727:人面鳥(3/20)
09/05/06 20:54:40 Qol5p+gg
「巣」はちょっとした小屋ほどの大きさの工作物だった。巨大な崖の中央部の、
広く張り出した棚の中央部に、人間の背丈の倍はあるしっかりした土壁のような
ものが、円柱状の囲いを形成している。
鳥はなぜかわたしを巣に運び込まず、壁の外側の地面の上に押しつけた。そして、
うつぶせにされたわたしの背中とお尻に、固いくちばしが当てられた。
「ぎゃあ!やめて!やめてよ!!」
無我夢中で無駄な叫びをあげるわたしの肉を怪物が食べることは、しかし、
なかった。怪物はわたしの衣類だけを破り、噛み裂き、ひきちぎっていった。
背中とお尻が外気にさらされ、その頼りない感覚がわたしの不安をさらに煽り立てた。
後半身を丸裸にした怪物はわたしをごろんと転がした。あおむけにされた
わたしは、そのとき始めて怪物の姿を目にした。その姿のあまりの異様さに、
わたしは思わず息を呑んだ。
わたしの両ももを文字通りわし掴みにしているかぎ爪は、紛れもなく猛禽類の
それだった。それに、かぎ爪が生えているごつごつした足、後ろの尾羽、その上に
広げられた、ワシなどよりはるかに巨大な翼は、やはりどう見ても鳥だった。
…しかし、その翼を生やしている胴体の中央部に羽毛はなく、代わりに、
鳥にあるはずのない二つの半球、人間そっくりの乳房があった。そしてその
乳房の上には、やはりどうみても人間、それも若い女性の頭部であると
ほぼ言ってよいものが続いていた。抜けるような白い肌、細い首、ほっそりとした
面立ち、ぱっちり開かれた青い目、豊かな金色の髪。たしかに、鼻から口に
かけてだけ、わたしの服をついばんだ猛禽類のようなくちばしに変形している。
しかしそれ以外はとても美しい女性の顔であった。その全体の姿は、まるで、
巨大な猛禽の上半身に、若い女性の裸像をレリーフとして彫り込んだような姿だった。
728:人面鳥(4/20)
09/05/06 20:54:58 Qol5p+gg
「レリーフを彫り込んだような」というのはまた、その顔から受ける印象でも
あった。その美しい顔は、感情の移入をまったく拒む、無機的な無表情さに支配
されていたのである。きょとんと見開かれた目は瞬きをすることもなく、ただ
ときどき、目の下側から伸びる薄い膜に覆われるだけだ。そしてその青い瞳の奥に、
人間らしい感情を読み取ることはできない。
そんな無表情な美しい怪物は、わたしの両足に爪を立てながら、わたしの胸と
お腹になお残っていた布をむしり取る作業を開始した。その不気味さと、
まだはっきり正体のつかめない漠然とした不安が、静かな戦慄となって
わたしの全身を覆った。
やがてわたしはやがて糸くず一つない完全な裸身に剥かれてしまった。そして人面鳥は
わたしを再び抱き上げ、軽く羽ばたきをして壁を乗り越え、わたしを巣の中へ運んだ。
巣の中は床も壁も一面薄桃色だった。人面鳥はわたしを支えながら、わたしを壁に
寄りかかるようにして座らせた。そして器用に羽ばたきながら、わたしを壁に
押しつけた。壁の感触は粘土のように柔らかく、ねとねととしていて、わたしの背中と
腕はそこに軽くめり込んだ。両足は八の字に開かれた状態で、やはり床に押しつけられた。
わたしはすぐ、薄桃色の壁と床が、強力な糊のようにわたしの胴体と手足を固定して
しまったことに気づいた。それはたしかにぐにゃぐにゃと柔らかいが、貼り付いた
手足や胴体を、思うように動かすことはできなかった。
人面鳥は床に立ち、あいかわらずきょとんとした無表情な顔で、体を動かそうともがく
わたしをしばらく観察していた。やがて、わたしが動けないのを確認したのか、ばさばさと
音をたててどこかへ飛び去っていった。人面鳥の足は床に貼り付かない作りのようだった。
729:人面鳥(5/20)
09/05/06 20:55:17 Qol5p+gg
視界から人面鳥がいなくなってようやく、巣の中にわたしと人面鳥以外の住人がいた
ことに気づいた。わたしの斜め前の壁に、わたしと同じような姿勢で囚われている
女性の姿が目に入ったのだ。わたし同様、怪物にさらわれてきた犠牲者だろう、と思えた。
悲しげな顔でわたしを見つめている女性はとても美しかった。そしてわたしの目は
つい、わたしなどが今後いくら成長しても追いつけないであろう、その豊満な乳房に
釘付けになってしまった。
だが、落ち着いて見ると、目の前の女性にはどことなく違和感があった。日陰の
せいで始めはっきり見えなかった姿が、暗さに目が慣れるにつれ徐々に鮮明になり、
それと共に違和感の正体が明らかになった。
まず、女性の足は、関節の比率やその他の様子がおかしかった。指が長く、爪の先が
鋭くとがっていた。かかとも長く、その代わり、太ももが短かかった。そして全体に、
ごつごつとしたうろこのようなものができかけていた。腕も奇妙に短く、太くなり、
手も変な風に変形していた。小指と薬指がほとんどなくなりかけ、他の三本もとても
短くなり、その代わりに、手首の上のあたりが細長く伸びていた。そして、
よく見ると腕や肩には、ごく細かい毛が密生していた。
それに気づいたわたしの顔には、反射的に恐怖と嫌悪感が浮かんだはずだった。
それを見た女性の顔に、さらに深い悲しみの表情が浮かんだのが目に入った。
わたしは直観的に、この女性はあの無表情な人面鳥の仲間ではなく、ちゃんと人間の心を
もっているのだということが分かり、あんな顔をしてしまったことに対し、申し訳ない気持ち
が浮かんだ。だが同時に、まだ形をなさない大きな恐怖と不安が心に広がり始めていた。
女性がわたしの体を見つめ、悲しそうな顔のまま口を開いた。
「ちゃんとした人間の体を久しぶりに見たわ。そんな風だったのよね…。でも、とても
悲しいことだけれど、あなたもすぐ…」
730:人面鳥(6/20)
09/05/06 20:55:37 Qol5p+gg
その言葉が、わたしの形のない不安を一気に結晶化させた。わたしは取り乱して
女性に聞き返した。
「…わたしもすぐ!?わたしもすぐ、何なの!?そんな風になっちゃうの?
化け物にされちゃうの!!??」
口に出してから自分のデリカシーのなさに気づき、わたしはうろたえながら付け加える。
「…あ、ごめんなさい。違うの。あなたが化け物だと言ったんじゃありません。すみません…」
女性は、しかし、悲しそうな顔をやめ、きりっと眉を引き締めて返事した。
「いえ。いいの。わたしの方こそ気弱になってごめんなさい。むしろ、化け物に
なるのはいやだ、という、今のその強い気持ちを忘れないでいて」
それからしばらく、わたしは衝撃的な事実を頭の中で整理していた。
この女性はわたし同様、あの人面鳥に捕まってここに連れてこられたのだろう。
そして、人間と人面鳥の中間のような姿をしている。ということは、この女性は…
人面鳥とわたしが呼んでいる生き物は…そして、わたし自身は…。
「教えて下さい。…わたしも、これから、そんな風に姿を変えられてしまうんですか?
…そして、最後は、あの人面鳥になっちゃうんですか?」
女性は答えた。
「そうよ。わたしも、ここに来る前はちゃんとした人間だった。それに、わたしの前にも
『先客』がいた。彼女はわたしの見ている前で、徐々に身も心も完全な人面鳥に
変えられていき、やがてどこかへ『巣立って』いった。普通にいけば、わたしも、
あなたも、そうなるのは間違いないわ」
女性はそういって眉を曇らせた。激しい恐怖と絶望がわたしの心を覆った。せめて、
ぱくぱくとついばまれ、苦しみながら食べられてしまうのよりはましだと思うべきだろうか?
…いや、恐らく一瞬で終わる死の苦しみより、何日もかけて徐々に人間でなくなっていく
恐怖の方がずっとおぞましいのではないか?少なくともそのときのわたしにはそう思えた。
731:人面鳥(7/20)
09/05/06 20:55:58 Qol5p+gg
女性は再び毅然とした表情を取り戻し、言葉を続けた。
「わたしの体は、多分このまま完全な人面鳥に変えられてしまう。それは防ぎようが
ないわ。だけど、あなたをどうにかして助けることはできるかも」
女性はまた眉を少し曇らせつつも、やはり決然とした口調で先を続けた。
「…残念だけど、あなたをまったく今のままで帰してあげることも無理。だけど、
あなたが本物の人面鳥になってしまう前に、ここを出してあげることなら、できる
かもしれない。してみせる。信じれば、神様はきっと見捨てないわ」
わたしが質問を返そうとしたとき、ばさばさとあの音が聞こえてきた。そして人面鳥が
いきなりわたしに覆い被さった。
人面鳥はわたしの足の上に乗り、くちばしでわたしの口を強引に押し開けた。そして、
円筒状の固い舌をわたしののどに押し入れた。そして、ゲエッという汚い音と共に、
わたしののどの奥に何かどろりとしたものを吐き出した。
吐き出された液体は、ほのかな酸味のある以外に味はなく、ただしあの濃厚なワインの
ような甘い香りがしていた。人面鳥はゲエッ、ゲエッと何度かそれを繰り返し、
それからわたしから離れ、少し離れたところからわたしをじっと見ていた。
わたしは人面鳥が離れたとたん、激しく嘔吐した。そして嘔吐の発作は、目の前の
女性を意識してずっと我慢していた、排泄の欲求も解放した。胸一面にたった今
注ぎ込まれた生温かい液体が広がり、お尻の下には糞尿が散乱した。
人面鳥が次にとった行動はさらに嘔吐を掻き立てるものだった。あの円筒形の舌を
出して、わたしの下にまき散らされた排泄物を丁寧に吸い取り始めたのだ。それが終わると、
次は胸の上に広がった吐瀉物をやはり丁寧に吸い取り、あるいは舐め取った。そして、
その同じ舌を再びわたしののどに差し入れてきたのだ。
先ほど以上の激しい抵抗もむなしく、のどの奥にどろりとした液体が差し入れられた。
先ほどの排泄物もたしかに混じっているはずなのだが、ほのかに甘い味に変わっている
だけで、決していやな味はしなかった。
732:人面鳥(8/20)
09/05/06 20:56:19 Qol5p+gg
鳥が離れると、わたしは再度嘔吐を試みた。だが、先ほどのような勢いのある嘔吐の
発作は起きなかった。そして多少漏れ出た吐瀉物を人面鳥がまた舐め取り、わたしの
のどの奥に入れて後は、どんなに試みても、嘔吐の発作はもう起きてはくれなかった。
やがて腹の中のものが全身に広がっていくのがわかった。全身が火照り、
軽く酔ったようなほんわりした感覚が生じた。
わたしはそのままとろとろと眠ってしまいそうになったが、その欲求をどうにか
こらえたのは、人面鳥がわたしの前の女性の方に移動したからである。
人面鳥の作業は一見わたしに対してと似ていた。だが、どうもただのどの奥に液体を
流し込んでいるだけでもないようだった。人面鳥は彼女の足の上に立つのではなく、
自分自身も足を開き、その中央部を彼女の両足の中央部に押し当てている感じだった。
そして、のどに液体を流し込む作業が終わり、人面鳥が口を離しても、その下半身での
作業は続いた。女性は中空を見つめ、眉間にしわを寄せながら、切ない声を漏らした。
「あ、あ、あふ…はあん…ぁん……」
やがて人面鳥が体を引き離し、どこかへ飛び去った後も、女性の切なそうな様子は
続いた。しばらくすると眉間のしわは消え、女性は無表情な、やはりうつろな顔で、
何も言わずに中空を眺めていた。
わたしは不安になり、声をかけた。
「ねえ!お姉さん!しっかりして!ねえ!ねえ!お姉さん!!」
わたしの必死の呼びかけが届いたのか、女性は再び眉間にしわを寄せ、とても険しい
顔つきで首を振り、目をしばたたかせた。そして深く息をすると、わたしの方を見て言った。
「…ありがとう」
女性はそれきり黙りこくってしまった。わたしの方は、眠気は幾分ひいてきたものの、
体の熱はさらに強まっていた。全身の骨と関節に、まるできしんでいるような鈍い痛みを
感じた。体の形が変わり始めたのだと思った。
733:人面鳥(9/20)
09/05/06 20:56:34 Qol5p+gg
実際、変形は思っていたよりもずっと早く進むようだった。目の前の女性に比べると
まだまだ微々たる変化ではあるが、小指と薬指が短くなり、足の指とかかとが伸び、
太ももが縮む様子など、目で追えるほどだった。ただ変形はいつまでも続くのではなく、
徐々に収まっていった。
目の前の女性もまた、その肉体がまた一歩鳥に近づいたのがわかった。骨格の変化も
そうだが、全身を覆う綿毛が一段と濃くなったのが目に見えて分かった。そして、
とうとう唇の形が変わり始めたようだった。
女性がようやく口を開いた。まだしゃべり方は普通だった。
「注入された直後が、一番急激に変形するの。だけどその後もゆっくりだけど変形は続くわ」
それから悲しそうな顔でわたしを見て、先を続ける。
「あなたももう変形が始まってしまったのね。仕方のないことだけど、あまり進まない
うちに何とかしてあげたい」
その言葉を聞いて、わたしはさっき聞きたかったことを改めて聞いた。
「あなた、わたしを助けてくれる、と言っていたけど、どういうことなの?神様が
助けてくれるから、というのは無しよ。神様は信じていないこともないけど、
わたしなんかのためにそこまでしてくれるとは、とても信じられないわ」
女性は考えながら答えた。
「わたしはもともと、神に仕える仕事をしていたけど、文字通りの奇跡を起こして
くれるとは思っていないわ。問題は心。つまり、体をいくら化け物に変えられても、
心まで奪われなければいい。わたしはそれに精一杯抵抗する。そして、自由に空を
飛べるようになったら、あなたをここから連れ出す。そういうことだったんだけど…」
それを聞いて、一応女性の言いたいことは納得できた。たしかに、この人がこの人の
心を守ったまま空を飛べるようになれば、わたしをここから連れ出し、帰してくれる
ことも可能だろう。
734:人面鳥(10/20)
09/05/06 20:56:58 Qol5p+gg
しかし、女性はその思いつきを伝えながら、言葉を濁してしまった。それが意味する
ことをわたしは察して、あえて聞いてみた。
「だけど…何?…やっぱり難しそうなの?」
女性は悲しそうな顔をして答えた。
「簡単でないことは、認めなければならないわ。日に日に体だけではなく心まで変わり
つつあるのが分かる。わたしの前にここにいた女性と、全く同じ道を歩んでいるのが
分かる。自分は違う、自分だけはそうなるものか、と気を張っても、抵抗しようのない
強い力がわたしをどこかへ連れて行こうとする…」
そこまで言ってから、何かに気づいたように、女性の顔はきりっとした様子を取り戻した。
「…でも、まだ希望はある気がするの。聞いて。さっきあなたがわたしに必死で呼びかけて
くれた。そのおかげでいつもより早く正気をとりもどせたわ。そして、目の前のあなたを、
あなただけでも、なんとか助けてあげなきゃ、という強い決意が生まれた。だから、
お願いがあるの。これからも、あんな風にわたしを励まして、声をかけて!あなたは
まだ大丈夫のはず。そうしてわたしを励ましてくれることが、わたしのためであり、
あなたのためでもあるの。お願い」
強い決意に満ちた顔はとてもきれいだった。わたしは、今のきりっとした顔こそ、
この人の本来の顔なのだろう、と気づいた。つらい現実を突きつけられるごとに、
あの悲しい絶望の表情が浮かぶようになってしまったのだろう。そんな顔ではなく、
このきりっとした顔をもっと見たい、とわたしも強く思った。
「わかったわ。できる限りやってみます」
「ありがとう」
735:人面鳥(11/20)
09/05/06 20:57:18 Qol5p+gg
人面鳥は夕方まで帰ってこないらしい。わたしたちはぽつぽつとお互いの身の上を話した。
といっても、近所の村の普通の娘であるわたしに大した話はできなかったのだが、
彼女の方は色々と興味深い話をしてくれた。
「わたしの故郷はここからずっと離れた都市。ずっと神様に仕えるお仕事をしていたのだけど、
色々とあって今は教会の付属の大学に通っている。動物についての研究が専門で、
この辺には調査のために来たの。古文書には出てこないような生物はたくさんいる。
大昔に起きたあの大異変以来、色々とこの世界は変わってしまったらしい。昔には
いなかったはずの生き物もたくさん生まれている。それでちゃんと調べる必要を感じたの。
…そのあげく、うかつにも調査対象に捕まってしまったということ」
そしてその女性、わたしは「お姉さん」と呼ぶことにしたのだが、お姉さんは、
あの人面鳥についてもある程度の推測を行っていた。
「あの森によく行くなら、自分よりも大きなヒナにエサをあげている鳥を見たことが
あるでしょう?『托卵』といって、別の鳥がもとの卵を捨てて自分の卵を産みつけ、
ヒナを育てさせるの。そしてあの人面鳥は、そういう托卵鳥の餌食にされた鳥の仲間。
押しつけられたよその鳥のヒナに自分の遺伝子を組み込むように進化したのよ。
わたしたちは逆托卵鳥と呼んでいる。そしてこの逆托卵鳥からさらに、積極的に他の
生き物をさらってきて、自分の仲間に作りかえる種が出てきた。正確に言うと、
もともとの逆托卵鳥の遺伝子と、さらわれてきた種との混合生物ね。そんな混合生物が、
さらわれる動物の種の数だけいる。そして同じ種の犠牲者は同じ種の仲間をさらってきて、
同族を増やす。人面鳥はその一種ということ。若いグループらしくて、まだ数は少ない
けど、これから飛躍的に増える可能性もあるわ」
736:人面鳥(12/20)
09/05/06 20:57:38 Qol5p+gg
イデンシとかシンカとかよく分からない単語も多かったが、あの鳥が悪魔や魔物の類では
ないこと、元々は托卵鳥の餌食にされたかわいそうな鳥だったということ、そして、
どの人面鳥も半分は人間なのだということはよく分かった。それとは別に、こういう話を
しているお姉さんはとても生き生きとしていて、とても好感がもてた。
いつのまにか夕闇が迫っていた。ばさばさと人面鳥が帰ってきてうずくまり眠り始めた。
「さあ、もう寝た方がいいわ。夜明けと共にこの人面鳥が目覚め、またあれが始まる。
そして睡眠不足の状態であれをされると、危険なことにもなりかねない。今は無理にでも
眠りなさい」
異常な状況だが、疲労が溜まっていたのと、あの液体の作用もあるのだろう。わたしは
目をつむると同時に熟睡してしまったようだ。
朝、のどに違和感を感じて目覚めると、すでに人面鳥が口の中に「エサ」を流し込んで
いるところだった。やはり嘔吐感は起きてくれず、わたしのお腹の中には、肉体を変形
させる物質がたっぷり残されてしまった。
やがて体が熱くなり、変形が始まった。四肢の比率が変わり、手の指は短く、足の爪は
固く鋭くなり、足や肩の皮膚はぽつぽつとした「鳥肌」に変わり始め、足は脂肪が落ち
ごつごつとし始めた。さらに、昨日にはなかった変化も始まった。女性のあそこと
お尻の穴周辺が落ちくぼみ始めたのだ。いずれも、思っていたよりも急速で、この分では、
明後日ぐらいには昨日のお姉さんに追いついてしまいそうだった。
お姉さんをふと見ると、目覚めてはいるようだが、呆然と中空を見つめている。
寝ぼけているのではなく、心を冒されかけているのではないかと思われた。わたしは
ぞっとしてお姉さんに声をかけた。
「お姉さん!目を覚まして!目を覚まして!」
737:人面鳥(13/20)
09/05/06 20:57:58 Qol5p+gg
あらん限りの声を発して呼びかけているうち、お姉さんは我に返ったようだった。
やがてお姉さんへの「給餌」と、あの怪しげな下半身への操作が始まっても、わたしは
お姉さんへの声かけを続けた。
声をかけ続けたのが功を奏したか、お姉さんはその後ずっと眉間にしわを寄せ心を
冒されることに抵抗を続けられた様子だった。人面鳥が飛び立つと二人は目を合わせ、
深いため息をついた。二人とも涙ぐんでいた。
「ありがとう!」
「ううん。よかった。お姉さん。よかったよ!」
その後また二人は色々と話をした。午後の「給餌」のときもお姉さんは耐え抜いた様子
だった。その後また会話を交わし、その日は眠りについた。
三日目の朝の「給餌」後、昨晩から続いていた股の辺りの違和感がとても強くなった。
どうも、お尻の穴と前の穴が一つの穴にまとまってしまったようだった。
そのショックのせいで声が小さくなってしまったのか、それともお姉さんの変形が
否応なく進んでしまっているせいなのか、今回、わたしの声かけにもかかわらず、
お姉さんは意識を飛ばしてしまった。
呆然と中空を見つめるお姉さんを見ると、お姉さんの変形も着実に進んでいるのが
わかった。全身に羽毛が生え始め、腕は小さな翼になっていた。足もほとんど鳥の足と
いっていいものになっていた。
お姉さんを何とか呼び戻すと、お姉さんはわたしの姿を見て、久しぶりにあの
暗い表情を浮かべた。
「…あなたにも、総排泄控ができてしまったみたいね。明日か、早ければ今夜あたりから、
あれが始まってしまうわね」
お姉さんの発音は不明瞭になっていた。くちばしがだいぶ伸びたし、多分、舌も細く
固く変形しつつあるのだ。
738:人面鳥(14/20)
09/05/06 20:58:20 Qol5p+gg
わたしはなんとか聞き取れた知らない単語について尋ねる。
「ソウハイセツコウ?」
「そう。鳥はおしっこの穴とフンをする穴と生殖器の穴がひとつだけなの。あなたも
そういう体に変えられてしまっている。そしてそれが完成すると、その総排泄控から
あの物質を流し込む作業が始まる。…ああ、そして、それが始まると、心の変化が急速に
進むの…」
お姉さんの声には強い恥じらいのトーンがあった。しばらく何か言いよどんでいた
お姉さんは、しかし意を決した様子で先を続けた。
「やっぱりあらかじめ知っておいてもらわないといけないわ…」
どう話せばいいかをしばし思案したらしいお姉さんは、動物学の講義を始めた。
「哺乳類、つまりケモノの場合、交尾は膣に突起物を挿入して、その先から精子を注入する。
…修道女だったので人間の男性のそれをちゃんと見たことはないのだけど、人間も
そういう風にできているわ」
わたしの方が恥ずかしいような気まずいような感じをおぼえた。わたしと言えば、
すでに詳しく経験したことがあったからだ。
「だけど鳥の場合、交尾はお互いの総排泄控を密着させるだけ。そういう風にできているのよ。
そして、人面鳥は人間の女性しか襲わない。だからもともと女性同士なのだけど、
生殖器からのあの物質の注入は、鳥の本物の交尾とほとんど同じ行為なのよ。…そして、
あのときの感じは、まさにそれなの…いえ!いえ!それかどうか、確言はできないけれど、
そうであると考えられるのよ」
お姉さんは話しながら真っ赤になっていた。わたしは修道女や修道士という人種が
そういうものを過度にタブー視するものだ、という話を思い出して、妙に合点がいった。
お姉さんは自分が性的快感を感じているという事実をできればわたしに隠したかったの
だろう。それに、多分お姉さんはここに来る前に性的快感の何たるかを知っていた。
しかしそれを認めることもしたくはなかったのだろう。
739:人面鳥(15/20)
09/05/06 20:58:37 Qol5p+gg
それで、お姉さんのためらいの理由が分かったし、ひょっとすると感じなくてもいい
過度のプレッシャーを感じていたのかもしれない、と気づいた。それでわたしは、
変な言い方にならないように注意しながら、言った。
「要するに、あそこからあの物質を注入されると、セックスの快感を感じちゃうのね。
そしてそれが頭の調子をおかしくしちゃう、という仕組みなのね。わかったわ。でも
大丈夫。ちょっと怖いけど、セックスは経験があるから。それに、自分で慰めたこと
だっていっぱいある。だから、少なくともそれがどういうものかは知っている。だから、
負けずにがんばってみるわ」
お姉さんは目を丸くしている。多分、まったく予想外のリアクションだったのだ。
むしろ、もっと色々と言いにくいことを聞かれるだろうと覚悟していたのではないか。
わたしは畳みかけるように言った。
「お姉さん。セックスを特別視して、そのせいで余計な気力をすり減らしたら負けちゃうわ。
ケモノだって鳥だって、普通にやっていることでしょ?お姉さんも、普通のものとして
つきあっていかなきゃだめだよ!」
お姉さんはしばらく呆然としていた。わたしの言葉を反芻しているようだった。
それから、あのきりっとした表情が帰ってきた。
「ありがとう!振り返ってみると、自分は、何かとても狭い見方に囚われていたみたいな
気がする。これからは、わたしも協力するわ。『交尾』が始まったらわたしからも声を
かける。そうして、二人で力を合わせて乗り切りましょう!」
とても頼もしい言葉だった。
…だが、結局それが、お姉さんと交わすことができた最後の会話になってしまった。
740:人面鳥(16/20)
09/05/06 20:58:55 Qol5p+gg
その日の二回目の給餌のときまでは、お姉さんはちゃんと人間の言葉を発音できた。
力強い励ましの言葉を受けたわたしは、予想以上の強烈な快感に、何度も意識を飛ばされ
そうになりながらも、持ちこたえることができた。そしてわたしはわたしでお姉さんに
声援を送り、お姉さんもそれを切り抜けた。
だがその後、お姉さんのくちばしはこれまで以上に急激に成長を始めた。舌の形も
変形してしまったようだった。何かを喋ろうとする意志ははっきりあるのに、ろれつが
回らないどころか、音声を区切ることすらままならないようで、「クエッ、クエッ」
という鳴き声しか出せなくなってしまったのだった。
体の羽毛はほぼ完全に生え揃い、足の形もどこから見ても立派な鳥だった。なのに、
翼の骨格と羽毛だけはまだ未熟で、しかも貼り付いた手足はいまだにいくらあがいても
引きはがせなかった。
わたしはわたしで、一段と鳥に近づいてしまった。もう指はほとんど人差し指一本しか
なく、両側に親指と中指が小さないぼのように張り出しているだけだ。全身を綿毛が覆い、
羽毛らしいものも生え始めている。それに体の内側も変わりつつあるらしく、排泄物は
尿と便の区別がなくなり、ピンク色のどろっとした液体が出るようになっていた。
少し前からお姉さんを見て気づいていたことだったが、それがこの巣の壁を形成している
物質なのだった。そして囚われた日はちょうど生理が始まった日だったのに、すぐに
止まってしまっていた。多分、もう、人間の赤ちゃんを作る能力はなくなってしまった
のだろうと思えた。
―どうしても子供が欲しければ…人間をさらって同族に作り変えるしかない。ならば…。
ふと生じたそんな考えにわたしは慄然とする。これはわたしの考えじゃない!人面鳥の!
…わたしはうろたえ、おびえた。
741:人面鳥(17/20)
09/05/06 20:59:13 Qol5p+gg
その夕方は二人とも沈みがちだった。わたしはこのままではいけない、と無理にでも
明るく振る舞い、イエス・ノーで答えられる質問を使ってお姉さんと会話をした。
お姉さんも、ここでくじけたら終わりだという判断があったのだろう。気分を切り替え、
恐らく無理をしてとても明るく振る舞ってくれた。痛々しかったが、何だか楽しかった
のも事実だった。
…しかし、やはりそれは空元気だったのだろう。翌朝の「給餌」はとても惨めな
結末になった。
まずわたしが、昨日よりも強烈になった快楽の果て、人ならざるものに心を乗っ取られて
しまった。心を奪われる経験は、とても甘美な経験だったことを告白せねばならない。
よく覚えていないが、安らぎや解放感といったものに満たされていた気がする。
それでも、遠くで聞こえる「クエッ、クエッ」というお姉さんの声がわたしを励まし、
なんとか戻ろうという気力を与えてくれた。わたしは泥沼からはい出すように、
一歩一歩生ぬるい忘我の沼から這い出そうとした。
どうにか帰ってきたときは昼過ぎで、お姉さんへの処理はとうに終わっていた。
その姿はもうほとんど完全な人面鳥で、ただ翼だけがまだすこし小さく、羽根も揃って
いなかった。
わたしが声をかけられなかったせいもあるのだろう。お姉さんは人面鳥そのものの
無表情な顔で呆然と中空を見上げていた。わたしは泣きながら、必死でお姉さんを
呼び戻そうとした。だが。声をからして呼びかけてもお姉さんは帰って来ず、そのまま
午後の給餌が始まった。わたしはまた快楽と忘我の沼に溺れ、気がつくともう夜中だった。
その翌朝、例によって人面鳥の給餌で起こされたわたしは、何とか気を張り、心を
冒されるのを防いだ。人面鳥が離れると、お姉さんの姿が目に入った。お姉さんはまだ
眠っていたが、一晩の内に完全な成熟を遂げたらしく、大きく見事な翼が揃っていた。
742:人面鳥(18/20)
09/05/06 20:59:32 Qol5p+gg
人面鳥は給餌ではない、見慣れない動作を始めた。口から何かの液体を吐き出しながら、
お姉さんの腕や背中をつつき始めたのだ。壁からお姉さんを引きはがしているのだと
すぐにわかった。
壁から外されている内にお姉さんは目を覚ましたようだ。翼をばさばさとうち下ろし、
両足でぴょんぴょんと飛び跳ねた。それから「母親」である人面鳥とキスのような仕方で
くちばしを合わせた。無表情なきょとんとしたその顔からは、もう人間の感情は
読み取れなかった。
わたしはそんなお姉さんの顔をじっと見つめた。そしてお姉さんの目がわたしと
合ったとき、お姉さんの顔にあのきりっとした勇ましい表情が戻った。
お姉さんは「母」ののど笛にその鋭いくちばしで食いついた。ぶしゅっと鮮血が
噴き出し、お姉さんと巣の中を赤く染めた。そしてお姉さんは先ほど自分がされたように、
わたしの腕や背中に何かの液体をかけながら、わたしを壁から引きはがした。それから、
「母」がわたしをこの巣へ連れてきたときのように、わたしを抱え、空に羽ばたいた。
晴れ渡る空に一羽の人面鳥と、人面鳥のなり損ないが飛翔していた。
お姉さんはどうやら、わたしの故郷を目指して飛んでくれているようだった。わたしは、
つい数日前まで普通に暮らしていた故郷の光景や家族、友人たちの顔を、とても懐かしいが、
しかし、何かとても遠い世界のことのように思い浮かべた。それからわたしは、
自分の体を改めて見回した。
わたしの体は、最初に会ったときのお姉さんよりも変形が進んでいた。羽毛が生え始め、
くちばしも形成され始めていた。足の表面も人の足よりは鳥の足にずっと近く、蹴爪も
伸びていた。そしてひなどりのような未熟な翼を両肩から伸ばしていた。
743:人面鳥(19/20)
09/05/06 20:59:50 Qol5p+gg
わたしは目をつぶった。いつの間にかまぶたはなくなっていて、下から広がる瞬膜が
目を覆った。そしてしばらくの間、もう一度、故郷の懐かしい人々の顔を順に思い浮かべた。
それから、わたしはお姉さんに声をかけた。
「ねえ、お姉さん。引き返して!わたしたちの巣に帰ろうよ。お母さんは死んじゃったけど、
お姉さんが新しいお母さんになって、続きをやってちょうだい」
お姉さんは動揺しつつもコースを変えようとしなかった。わたしは言葉を続けた。
「村のみんなは優しいわ。わたしがこんな姿になっても、迫害なんかしないで迎え
入れてくれそうな気はする。…でも、もうわたしが変わってしまったの。こうやって
連れ出されてみて、ようやく気づいたの。
ねえ。お姉さんはもう人間界には戻れないよね。最後の意志の力でわたしを故郷に
送り届けたら、あとは完全な人面鳥として暮らすんでしょ?…わたしは、故郷のみんなよりも、
お姉さんと一緒にいたい。ううん、一緒に暮らしたいということじゃない―人面鳥は
孤立して暮らすんだよね。そうじゃなくて、わたしは、お姉さんや、死んじゃった
お母さんや、お姉さんのお姉さんになった人たちと同じ世界で生きたいの。そういう風に
なっちゃったの。わかるでしょ?
聞いて!お姉さんもずっと勘違いしていたんだよ。お姉さんが頑張って人間の心を失う
まいとしてきたのは、わたしを救うため。でも、その気持ちがもともと人面鳥の気持ち
なんだよ。お姉さんを『お姉さん』と呼んで慕ってくるわたしを、お姉ちゃんは同じ巣で
育つ姉として思い、姉として何とかしてあげようと思った。その気持ちは人面鳥の
気持ちだよ。ただ、それを形にする仕方が間違っていただけなんだよ!」
お姉さんは向きを変え、再び巣を目指し始めた。言葉はしゃべれなくなっていたが、
その仕草からはこんなお姉さんの言葉が聞こえてきそうだった。
―まったく、あなたの言葉にはいつも目を開かされるわ。
744:人面鳥(20/20)
09/05/06 21:00:12 Qol5p+gg
巣に帰るとわたしたちは早速食事をした。お姉さんがお母さんの死体をついばみ、
飲み込んで変化させたものをわたしに与えてくれた。お母さんの死は正直悲しいが、
人面鳥に死骸をいたわる感受性はないのだった。むしろ、遠くまでエサを採りに行かなくとも、
こうして近くに新鮮なお肉があるのは好都合といえた。
食事が終わったら、お姉さんは総排泄控をわたしのそれに重ね合わせてくれた。柔らかな
丸い開口部が重ね合わされ、温かな至福が流れ込んできた。お姉さんであり、新しい
お母さんの情愛のすべてを注ぎ込まれているような気がした。
間もなく訪れる、大空を羽ばたける日を夢見ながら、わたしはその心地よい流れに
身を委ねた。
<了>
745:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/06 21:01:58 Qol5p+gg
…以上、お粗末でした。
残り496KBで、何とか収まりました。
次スレをもう一度貼っておくと下記です。
何か誤記がないことを祈ります。
【異形化】人外への変身スレ第四話【蟲化】
スレリンク(eroparo板)
746:名無しさん@ピンキー
09/05/06 21:15:37 0piIT306
長文投下乙
747:名無しさん@ピンキー
09/05/06 22:08:34 yWRNP9UI
GJ
鳥の醍醐味は羽と鱗と排泄口!猛禽のたくましい脚とかたまらんよなー
好いものをご馳走になりました
748:名無しさん@ピンキー
09/05/06 23:56:44 MwKdK4U2
これはGJ!ご馳走様です
749:名無しさん@ピンキー
09/05/07 03:20:30 PPS03S0X
>>745
新スレおよび短編投下、お疲れさまです。
人面鳥、最後の気持ちの切り替わり方(解釈の変更)が逆転の発想という感じで
面白かったです。
口がくちばしになるのも、見た目に異形化の度合いが増すし、口が利けなくなることで
精神変容にも説得力が加わるしで、見事なアイデアですね。
埋め立て用の短い話を私も書きかけていて、数日前に冒頭だけでも投下するつもり
だったのですが、アクセス規制を食らっておりました。
新スレの方で始めてみますね。即死回避の一助になればと思います。
750:名無しさん@ピンキー
09/05/07 03:39:36 fhNAvEm+
>>724-745
これはGJ!
751:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/07 16:14:14 NivxC1ei
>>レス頂いた皆様、ご好評頂けて感謝です
>>747様
鳥はファンが多そうなので、分かる範囲で解剖図を見たりなどしてみたのですが、
お気に召して頂けたようでよかったです。もうちょっとウロコを強調してもよかったですね。
そういえば鳥の交尾は"cloacal kiss"というのだそうです。なんか素敵ですね
(cloacaは(総)排出腔のことだそうです。ちなみに、作中、
「腔」の字を全部間違えて控除の控にしてたのに気づきました。お恥ずかしい)
>>749様(◆eJPIfaQmes様)
丁寧なご感想ありがとうございます。
たしかにハルピュイアにくちばしはないんですが、おっしゃるとおり、そのままでは
異形化度がちょっと足りない気がしたのと、あとは手がないので、くちばしがあると
色々と手の代わりに使わせられて便利、というのがありました。そう考えると
自然の生き物はよくできていますよね。
新作の感想は次スレの方でさせて頂きます。
そろそろ埋まりそうですね。
752:名無しさん@ピンキー
09/05/07 19:22:54 3cfsnAmp
埋めついでに次スレ誘導
スレリンク(eroparo板)
753:名無しさん@ピンキー
09/05/08 03:21:40 fv2Cbzue
この神スレまとめサイトないの?
754:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/08 04:00:10 T0/JLwMZ
>>753様
お返事と、埋めるどさくさで、自分のサイトの宣伝しておきます。
いわゆるまとめサイトではないのですが、
いくつかのSSは当方のサイトにアップしてあります
URLリンク(book.geocities.jp)
過去ログも保管してあります。
URLリンク(book.geocities.jp)
上記にアップしていない、
「【】の人」様、◆eJPIfaQmes様のSSについては、
各々の方個人のサイト(またはブログ)にSSが再録されてます。
(リンク集URLリンク(book.geocities.jp)をご覧下さい)
あ、自分のSSも同様です。
いずれにしても、このスレだけのまとめということになっていないのはご容赦下さい。
…埋まったかな?