08/04/21 05:14:08 dBKv2VFe
「じゃあ今日から新しいとこに入ります。それじゃあ最初は成瀬さんに読んでもらおうかな。成瀬さん」
「は、はい!」
突然指されて留美は思わずびくっとした。やばい授業に集中しないと。
留美は教科書を持ってゆっくりと立ち上がる。
「103ページの頭からね」
こんな日に限って・・・。留美は渋々教科書を読み始めた。
「ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると」
読み始めたものの口の中がねちゃねちゃするため、声といっしょにぴちゃぴちゃという音が漏れてしまう。
それになんだかすごくしゃべりにくい・・・。
「ベ、ベッドの中で自分のひゅ、ひゅがたが、一匹のとてつもなく大きな毒虫に変わってひまっているのにひがついた」
「はい、そこまででいいですよ。この冒頭はね、非常に有名で・・・」
よかった、思った以上に短くて。留美はホッと肩を撫で下ろした。
しかし、なんだかすごく読みづらかった。まるで舌が長くなってしまったような、そんな感覚・・・。
「(まさかね・・・)」
留美は自分の馬鹿な考えを否定したくて、口の中で舌を動かしてみた。