08/08/18 20:21:47 YMQToTXy
楽しみにしてますよ
258:maledict(宣伝) ◆sOlCVh8kZw
08/08/19 02:16:45 T6exQYiG
>>253-255様第二章乙です!
流れぶったぎってすみませんが、自サイトで2スレ目までのSSを抽出してみました。
URLリンク(book.geocities.jp)
ただし、ベルゼブブの娘他の一連の作品と、「蟲」シリーズについては
著者の方自身のサイトにアップされているのを確認したので(当方のサイトの
リンク集から跳べます)、割愛させて頂きました。
お気づきの点等あったらご指摘下さい。
259:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:19:51 TEgs3DgG
>>257-258どうも有難うございます!もうじき第Ⅲ章ウプしますので、待ってて下さいね。
>>187にも書いたのですが、このワイバーン娘は当初のシナリオだと本編の終盤で敵組織
(8名からなり、うち2名が第2章に登場済)との交戦中に死亡する予定です。ただ、もし
このキャラの人気が高そうであれば死亡しない様にシナリオを少し変更してみようかとも
考えています。まだ全部書き終わっては無いのですが、現在までの読書の意見を頂けたら
幸いですm(_ _)m
260:名無しさん@ピンキー
08/08/19 23:37:38 10eEHcTg
とりあえず、sageた方がいいと思うんだ。
作品は非常にGJ
261:名無しさん@ピンキー
08/08/26 12:17:32 KiYebg8g
保守蛇
262:名無しさん@ピンキー
08/08/27 13:01:13 +2yZV2g4
死亡する物語でもいいんじゃないかな?
263:名無しさん@ピンキー
08/08/28 01:15:37 Cc2bEkVs
――第Ⅲ章「出遭い」――
初夏の暖かな陽射しを背に受けて巨竜と化した少女は双翼で風を切りながら晴天の上空を駆けていた。
心地良い風が壮大な身体を擽っていく。少女のもう一つの姿がそこにはあった。これこそが少女に強さを、
勇気を、力を与えてくれる掛け替えの無い力なのだ。少女は自分がまだ幼かった時の事を思い出す。当時
自分は人間社会に混じって暮らすには不要なものでしかないこの力が嫌いだった。変身して自分の姿が人
外の異形へと変貌する事にもとてつもない不快感を覚えていたが、のみならずこの力は彼女が人間から差別
され、疎外される原因でもあったのだ。
よく父は言っていた。人間程血統に拘泥する種族は他にいないのだ、と。血統主義の人間は自分達に直接
の危害を加えるオーガやオークは愚か、こちらから危害を加えなければ全くの無害であろう筈のエルフやド
ワーフ等も含めた多種族との共存を酷く疎むのだった。そして彼女ら竜人族達もその例外では無かった。父
が何よりも理解出来なかったのは、時として同じ種族同士である人間内でも身分や人種の違いというだけの
理由から差別や迫害を起こす事だった。亡き母の様に、人間の中にも一部血統主義に疑問を持つ者もいたが、
そういった者達は変人として悉く敬遠されたのだった。人間を嫌っていた父は家族にこう言ったものだった。
「私は人間を愛したのではない。ただセイレを愛しただけなのだ。」
と。彼が生涯愛したたった一人の女性は皮肉にも人間だった。しかし父には人間だという嫌悪よりも母の
持つ魅力の方が最期まで勝っていた。死際にも父は溜息とも、感嘆とも、あるいは恍惚とも取れる声で母の
名を口にしていたのを思い出す。妻が人間である事などから人間達に危害を加える事こそ無かったが、同時
に救う事もしない。今のティアマトーとは違い、目の前で人間が死に喘いでいても、父にとってはどうでも
良かった。父は最期まで種族としての人間を愛してなどいなかった。
少女は母と同様に、父の事も今なお愛して止まない。しかし昔から疑問を持たずにはいられない点もある。
昔から少女は信じ続けていたのだ。人間の中にもきっと彼女たち多種族を受け入れてくれる者がいる。それ
は母以外の人間でも同じであり、いつかその理解が人間内に広まった時、彼女らが人間と共存する事もきっ
と実現し得るのだと。それは今も変わらなかった。
今自分はこの力を愛していた。それは通常無力でしかない自分に想像を超えた力を与えてくれる力だった。
彼女はその力をむやみな殺生や悪事、私利私欲に使うことは決して無い。そんな少女は自分が持つ力で種族
の違いは関係無く、困っている者達を救う生き方を選ぶ。今はこの力で故郷の森を、動物達を、苦難に喘ぐ
者達を救う事、それこそ力を与えられた自分への使命、彼女自身の存在意義である、と考えていた。そこに
は人間という一種族も含まれている。父以上に人間を嫌っていた姉はその生き方を理解できず、遂に妹は気
が痴れたのだと嘆き窟を飛び出して行った。必死で説明し止めようとしたが耳は貸さず、姉妹の縁を切ると
だけ言い残し去って行って以来、会っていない。他にも意見が合わない事の多い姉だったが、両親の死と
同程度かそれ以上に辛い出来事だった。しかしそれでも少女にはどうしても自分の信念が間違っているとは
思えなかった。姉にも同じ行動を取る事は決して要求しなかったが、せめて理解はして欲しかった。確かに
救ってあげたにも関わらず、大部分の人間は依然として彼女を敬遠し続けていた。救ってあげた当の人間か
ら怖がられる事も幾度あっただろう。しかし少女にとってそんな事はどうでも良かった。人に愛され、平和
な時間が訪れれば喜ぶ。他者から疎外され、脅威に晒され、家族を失えば悲しむ。そういった感情に種族間
の違いは存在しない。竜人族であれ人間であれ望むものは皆一緒。自分が味わった苦痛は絶対他者に受けて
貰いたくはない。苦しむ者がいれば救いの手を差し出せずにはいられなかった。他者の痛み、それは誰より
も苦節を味わった彼女が誰よりもよく知っていた。そして困っている人々が苦難から解放され、再び平穏な
時を生きる。それだけで充分嬉しかった。平穏な時間、それは大戦に運命を翻弄された彼女が何よりも尊び
愛するものだった・・・
264:clown
08/08/29 01:47:00 sM9VoMMf
お久しぶりです、作品を投下します。
265:『震える血』
08/08/29 01:47:54 sM9VoMMf
寒い。
ここはどこだろう。
暗くて、視界のほとんどは黒。
全身の倦怠感、寒気。
頭が痛い。
手足は痺れている。しばらくすれば動かせるかもしれないが、今は無理だ。
服が濡れているようだ。
よく目をこらすと、赤い波状の線が壁の輪郭をなぞっている。
火が焚かれていて、それが濡れた壁面に照っているらしい。
ふぅ、とため息。
そして目を閉じる。眠ったら死んでしまいそうだけれど、頭痛が酷い。
ひたひた、と足音が聞こえても、私は目を開けなかった。
残された体力では、いかなる危機にも対処出来そうになさそうだ。
気力だって、既に生に縋り付くことを忘れてる。
畜生本能め、何してるんだ。
「起きているのか、人間」
聞き覚えのない女性の声。
思ってもいない幸運を予期して、少しは体が起動した。
私は指先を軽く、ほんの軽く動かして、それを合図とした。
「そうか」
足跡は、薄く濡れた地面を蹴る。
「だが、死にそうだ。それでは困る」
そう言って彼女は、私の腰に手を回したかと思うと、一気に担ぎ上げた。
がくん、と頭に響いて―
体に温度を取り戻すと、体は健全な眠気を携えて目を開ける。
寒いと布団から出たくなくなる。いつの間にか手に持つ毛布を、ぎゅっと締めた。
目を開ける―しかし、視界は開かれない。
頭まで毛布を被っているつもりはなかったが、依然として暗いまま。
たき火に薪が爆ぜる音がパチパチ聞こえているのに、明るくすらならない。
私は毛布から手を離して、目元に手をやった。
「待て」
その手がそっと押さえられる。
「訳があって、お前には目隠しをしている」
彼女の声だ。淡々としているが、敵意は感じられない。とりあえず、手を引っ込めた。
「悪いな」
そのまま彼女は黙って、しばらく経った。
質問したいことは沢山あったが、頭が呆けてその気になれない。
「スープがある。飲むか?」
彼女の声に、ほとんど沈みかけた思考は再浮上。
確かに、良い匂いがする。お腹もすいている。
「飲むつもりなら、まず体を起こせ。毛布にこぼさないで欲しい」
言われたとおりにする。肩に掛かった毛布がずり落ちて、それを盲目のままに手探りで探すも、要領は得ない。すると、それを肩に掛けてくれた。
「あ、ありがとう……ございます」
「ほら、スープだ。手をそのままにしておけよ」
そう言って、大振りのカップを持たせてくれた。
「いただきます」
口に運ぶと、よく煮込まれたオニオン。美味しかった。
266:『震える血』
08/08/29 01:50:56 sM9VoMMf
目隠しは外されないままに、時間は経つ。
そろそろ目は冴えてきて、再度身を起こした。
私は覚悟して、口を開こうとするが、それに覆い被すように彼女の声。鍋に蓋でもするよ
うな、さも冷静な手順で。そこに彼女の思惑を、想像するのは難しい。
「悪いが、何故お前が目隠ししなくちゃならないかは、教えられない」
発しようとした言葉を飲み込んだ。必然的に、耳に入るのは息づかい。
「そもそも、お前は何でここにいるか、分かっているのか?」
そう言われて、しばし逡巡する。目を隠されていても、彼女の視線を感じた。
私は冒険者だ。そこそこの魔法の才能があったから、それを駆使してその日暮しの身銭を
稼いでいる。最近は貯金も出来るくらいで、始めてから数年、ようやく板についてきたと
ころだった。
基点としている街から、依頼で遠くの村に出て、少し大きめの仕事の帰りに森を抜けてい
た所だった。街道の一部で、危険は少ないとされている森であるのに、あろう事かリザー
ドマンの群れに遭遇した。
一人でリザードマン一体を討つことさえ困難であり、群れている奴らを打ちのめすことな
ど到底出来るはずもなく、私は逃げに逃げた。発見は向こうの方が早かったが、幸いこち
らからは離れていた為、すぐに囲まれることはなく、闇雲に森を駆けた。
さながら狩りのような事態に私は焦燥しきって視界が狭窄していたし、よく知った森でも
なかった。しまった、と思ったときには、既に崖から身を投げ出していた。
そこから、細かい記憶はない。崖の下に川は見えたが、果たして川に落ちたのかも分から
ない。落下の途中に酷く頭をぶつけて、それで事切れた気がする。
ここはどこだろう。音が籠もって聞こえるから、きっと洞窟の中だ。とすると、近くの村
の人間に拾われたわけではないらしい。隠者にでも拾われたのだろうか、もしくは、盗賊
だろうか。
「崖から落ちたおまえを、私の仲間が拾ってきた。幸い大した怪我じゃなかったが、うち
のバカがお前を洞窟の冷えたところに放り込んでな、危ないところだった」
「そう……なんですか」
現状は把握しきれない。何故目隠ししているのか、そして―
「あなたたちは、どなたですか」
その言葉に、すべての震えは止まる。
震えはそのまま冷めたまま、ゆるやかに醒めて、言葉を伝える。しめやかに。
「それには、まだ答えられない。ただ、お前に悪意があるわけではない、それだけだ」
空に放たれた一本の矢のように、何事もなく消滅した。
体はとうに温まって、先ほどの話が本当ならば、私がここにいる理由はなくなった。
実際に倦怠感や頭痛といった不調は解消されて、むしろ村を出たときよりも精力的ですら
ある。今なら魔法の一つや二つなら、咄嗟にでも使えるだろう。
「私はここから出ることは出来ないのですか」
と、その呼び戻された活力を依り代に、いちいち静まりかえる空気を攪拌する。
「しばらくな。お前が目隠ししないといけない理由と、同じだ」
「もう動けるほど元気なんです。これ以上、ここで迷惑を掛けるわけにはいきません!」
つい大きくなる声。対照的に、私の言葉に返答する彼女の声は押し込められたように小さ
くて、聞き取りづらかった。姿形などまるで分からないが、彼女が目を伏しているのは容
易に察することが出来た。
「……すまない。迷惑を掛けているのは、私なんだ」
「何を言っているのか、よく分かりません!」
無性に体が熱くて、言葉が自然と吐かれる。私は立ち上がって毛布を払い、目隠しを取ろ
うと手を掛けた。今ならどんな相手でも勝てる気がして、自分でも気が立っているのが分
かる。
「今までありがとうございました、でも、もう出て行きます!」
そして思いっきり、その目隠しを取り払う―
「……許してくれ」
目に光が飛び込むか否かに、足下は不明瞭、視界はぐらついて消失した。
彼女が何かしらの魔法を唱えたのだ、と気付くのは、地に伏せて今にも落ちる寸前だった。
267:『震える血』
08/08/29 01:51:33 sM9VoMMf
寒い。
何も見えない。
目隠しはされていないが、明かりがないようだ。
体を動かす気にはなれなくて、俯せになっている。
先ほどの洞窟に、戻されているようだ。
きっと私が暴れたからだろう。
大変なことをしてしまったな、と思ったが、それを反省に繋げるほど、思考の余地もなく。
眠い。
このまま目を閉じてしまいたい。
お腹が空いているけど、何も食べたくない。
また振り出し。
こんな状態じゃ、魔法も使えないのは相変わらずで。
這ってでも出る気力を出そうと、しばらくそれだけに集中する。
右手を、少し前に出す。
きっと立ち上がったら危ないだろう。
左足を前に。
力が入らなくて、少し休憩してから。
岩肌に擦れる体。
冷めていて、冷たいし、全身が擦り切れて痛い。
あれ、裸?
いやだ、なんで?
ひた、という足音。
雷光のように、危機感だけが錯綜する。
やめて、助けて……!
誰かが私の肩に手を触れる。
私の口は悲鳴を上げようとしたが、小さな音がしょうもなくひねり出されるだけ。
手は滑らかで、温かかった。
私のすぐ近くにしゃがんでるみたい。
手が離されると、今度は目に何かを宛がわれる。包帯みたいな。
また目隠しされるんだ、という恐怖に、体は咄嗟に動こうとするけれど、巻かれる包帯に
翻弄されたかのように首が軽く揺れるだけ。
自分の体はもう寝てしまったかのように怠惰だし、頭もこぼれた刃物みたいに鈍くて、何
も切れやしない。
ただ何となく、その目隠しをする手は優しくて、温かくて。
あれ、何か良い匂いがする、と思ったら、
「温かいスープがある。飲むか?」
と彼女の声。
私は小さく頷いた。
わあ、と湯気の雲が、顔をくるむように撫でて、今目と鼻の先に器が突き出されてるのに
気付く。
両手を掴まれて、器とスプーンか何かに手を移されたから、そのまま寝そべって食べ始め
る。
煮込まれたオニオンと、何か肉が入っている。
少し固かったが、温かいし美味しいしで、スープを度々啜りながら咀嚼した。
きっと床を汚してしまっている。首をこぼれたスープがなぞっているのに気付いていたし、
平らでない床に上手く器を置くことは出来なかった。毛布が無いのを幸いとして、私は不
作法な食事を続ける。
気力が戻ってきて、彼女が私を見て吐いたであろうため息は、安堵と、例の申し訳なさそ
うにしている理由が入り交じっていることを、察した。
器を空にすると、彼女は
「元気になったか?」
と私に尋ねた。
「はい」
小さい声しか出せなかったが、ちゃんと喋れたし、頷けた。
268:『震える血』
08/08/29 01:52:38 sM9VoMMf
彼女に起こされて手を引かれ、再度たき火の部屋に。
暖かい、体はそれに火を灯されたかのように巡り初めて、一気に活動状態へと移ろう。
「……暖かい」
体が再起しようとも、反抗の意志はもうなかった。何を言っていいかも、何をすべきなの
かも分からないままに、ただ彼女に従ってたき火に当たっていた。懲罰的に凍てつく部屋
に放り込まれたことが原因ではない。彼女の振るまいに対して、乱暴に振る舞えないだけ、
それだけ。
聞こえる音は少ない。会話はないし、体が元気になっても、目隠しをされては動き回れな
い。かといって彼女の存在感は決して希薄ではなく、常に見守るような目線を感じる。突
然彼女が口を開くと、意識はまるっきり、それへと向けられる。
「……なあ、名前を教えてもらないか」
「ターチカ=マトラス。あなたは?」
少し間を置いて、
「グラムベルタ」
と答えると、もう一度口を閉ざしたが、しかし何か言いたげな空気は、腰を持ち上げたま
ま待機していた。
「ターチカ。一つ聞いていいか」
彼女は深く空気を飲み込んだ。
「もし私が人間でない、としたら、どうする?」
杞憂だったらいいなと、頭のどこかに中途半端な形で放っておかれたままの連想が、不意
に発熱していた。私は一呼吸を置き忘れて、彼女に習うかにしてそれを深く取り込み直す。
無駄なことだと分かっていた。そんな風に尋ねられたら、正直に真意を突きつけているも
同然だと、知っている。
「でも、あなたは喋っているし、私を食べてたりしない」
「そんなことは些末なことだ。お前は―」
「いや、あなたは人間ですよ」
私の言葉が、空気の振動を止める。
何度目の沈黙だろう。夕立のように降ったり止んだりという会話は、しかし確実に形とな
っていく。
雷光のように、強烈なストローク。
「私は、リザードマンだ」
遅れて轟くのは、雷鳴。
「―そして、お前もだ」
「まあ、落ち着いてくれ」
言葉を理解しきれない私に、グラムベルタはスープを手渡した。
例の、よく分からない肉とオニオンのスープだ。良い匂いがする。とりあえず一口啜る。
「私が喋れる理由。お前をここから出さない理由。それは後に教える」
彼女はそう言ってから、「だが」と付け加えた。
「だが、私の言葉を覚えていて欲しい。それだけでいい」
それを最後に、会話は潰えた。
彼女もスープを注いで、それを食べ始めた。
私は固い肉を咀嚼しながら、言葉の意味を分解していく。
彼女がリザードマンであるのは、もしや、と思っていた。ここが洞窟であり、どこかの村
でないこと。目隠しをさせて、姿を隠していること。私が崖から落ちたのを知っているの
は彼らだし、それを回収されたと考えるのは容易だ。
ただ、彼女が私と会話し、そしてこんな待遇を受けていることは、まるで理解が出来なか
った。肝心なところが一つ二つ抜けて、考えがバラバラになっている。
適当な仮説でその穴を埋めるならば、彼女はリザードマンの変種で、高い知能を有する個
体であり、人の言葉を話せるようになる魔法を使える、といったところで、私を生かして
おくにも何か利用価値を見いだしているから、と考えるのが普通だ。
私の利用価値、と思考を巡らすと、私がリザードマンだという話に行き当たる。それがど
ういう意味なのかは、まるで分かりやしない。私がリザードマン?人として生を受けて、
長いことそのつもりでやってきた。冗談だ、と笑い飛ばしたいけれど、しかし彼女が一つ
でも冗談をいったのだろうか?
勿論、言葉の通りに受け止めることなんて出来ない。でも、その言葉を確かめたかった。
今一度、この目隠しを解いて、自分がそうでないと確かめたかった。自分が人間だと、人
の姿を留めていることを。
途端にこみ上げる恐怖に、何となく口へと運んでいた器を止める。あと一口分だけのスー
プは、飲まれることなく、ただ揺れている。
269:『震える血』
08/08/29 01:53:44 sM9VoMMf
「ターチカ。お前は冒険者だったのか?」
不意打ちの切り出し。グラムベルタも相変わらず緊張しているようで、声は固い。
「そうです」
それ以外に加える言葉は見あたらないが、彼女が続けた。
「そうか。あの森を抜けようとしていたのも、依頼か何かなのか?」
「いや、依頼が済んでの帰り道でした」
少し間を置いて、
「冒険者なら、リザードマンの一人や二人、殺したことがあるだろう?」
「……そうだけれど。でも、あなただって、人間を?」
「まあ、な」
飲み残して、既に冷めたスープをグッと飲む。
「体調はどうだ?」
「元気です。許してくれるなら、すぐにでもここを発てるくらいに」
彼女は私の返答に、意味深なため息を返してから、言葉を繋げた。
「お前がもっとむかつく奴だと良かったよ」
その言葉に返事をする前に、彼女は立ち上がってどこかへと行ってしまった。
一人取り残された。
今なら目隠しを取るチャンスだということに気付く。
空いた器を地面に置いて、一呼吸して目隠しに手を当てる。一端の結び目を見つけ出すと、
それが引っ張るだけで取れるものだと知る。
しかし、無様な覚悟がその結び目を固くしていた。彼女に信用を覚えるにつれて、彼女の
言葉を拒みたくなる。拒みたい言葉が現実ならば、現実を拒まなければならない。下唇を
噛む。
足音が聞こえてきて、焦って勢いに任せて引っ張ったが、結び目は中途半端に解けただけ
で、まだ目を覆ったままにぶら下がっていた。
「ターチカ。立て」
彼女は目隠しの結び目を見て、どう思うだろう、そんな思考などあまりに些細であるのを
知るのは、すぐのことだった。
270:『震える血』
08/08/29 01:54:29 sM9VoMMf
彼女に手を―彼女の確かに異形の手に引かれて連れられた部屋は、熱に滾る部屋だった。
轟々と火が燃え盛り、芯から私を焚きつける。
そして微かに聞こえるのは、シュー、シュー、という空気の擦れる音。
「ターチカ。私を恨んでいい。好きなだけ恨んでくれ……」
グラムベルタの声。
そうして私に触れるのは、彼女でもない、別の誰か。
私の一糸纏わぬ体。その肩口に柔らかく手を、撫でるように載せるのは、誰か。
「いやっ、グラムベルタ……?」
恐怖に捕らわれて、私は咄嗟に身を逸らし、悲鳴を上げていた。
「グラムベルタ!」
声はない。
その代わりに、ゆっくりと、しかし力強く私を押す。
得体の知れない何かが。
私はよろめいて、壁面に手をつく。もう一方の手でその何かの腕を掴んだ。
滑らか、そしてその表面を複雑に走る溝。鱗に覆われたそれは、人間の腕ではない。
腕は折り曲げられて、その異形の存在が感じられるほどに近づいているのが分かる。魔法
を唱えようと思っても、もう遅い。こいつが私を殺そうとしたら、呪文を紡ぎ終える前に、
首から涙を流してるだろう。
肩口に宛がわれた手は、肌の上を這って背中へと。まるで蛇のように。
もう一方の手はあろうことか、私の胸に。
恐ろしくて、気持ち悪くて、私は悲鳴さえ上げられない。痙攣を起こしたかのように短く
刻まれた呼吸を繰り返していた。
心臓が、胸を突き破ってでもその手を払いのけたいかのように暴れている。体は、燃えて
しまいそうなくらいに熱くて、それは戦闘を予期させる、破壊的な熱さ―いや、違う。
違う、けれど、それを認めたくはなかった。
心臓が、その手に直接撫でられて歓喜しているかのように跳ね回っていて、体は、とろけ
てしまいそうなくらいに熱くて、これからされることを迎合するような、過激な熱さだと
いうことを。
私の、熱でどうかしてしまったであろう体は、その愛撫により熱くなろうとしていた。こ
んなにおぞましく、不快なのに。
乱れた呼吸は正せない。あまりにも脳が熱を帯びすぎて、触れる水の全てが蒸発していく
せいで、頭と体がしっかりと繋がっていないみたい。シューシュー、という音は、きっと
その蒸発する音だろう。
不本意な脱力は、体が遂に融解し始めるのを模して、私をゆるやかに座らせた。
胸から離れた手は、それを妨げるように山となって折られている足を伸ばしてから背へと
回り込み、もう一方の手は肩に添えるように小さく抱いた。
呼気が、私の乳房をひと撫でした後に、分厚い舌が、不器用に舐め回す。
沸騰して鍋の蓋がぐらつくように、視界思考は不安定になる。おぼつかないのに、私の血
潮は巡る、巡る。私は拒む手立てさえなくて、されるがままになっていた。いかなる言葉、
呪文さえ、口にしようとすれば喘ぎ声に変わってしまう。
舌が離れたかと思うと、相変わらず舐るような手つきで私の体を通過して、今度は私の両
腿に手が掛かる。緩慢だが強引に引っ張られ、両足を開く。股を無理矢理晒されて、され
ることなどたかが知れている。
私が汚される、汚されていく。その目、その手、その行為に……その血に。
グラムベルタ―!
卑猥な感覚に、私は嬌声を上げる。心に楔が打ち込まれる。
火照る体は単純な前後運動によがり、心はその度に擦り切れる。
耐え難い快感と、迸る嘆きに、私は声にならない声を上げていた。
目隠しが濡れている。
揺さぶられるがままに。
性的な興奮が高まるにつれて、意識は高すぎて空気が薄いところにあるみたい。
頭を苛むように、私にくい込んでくる。
空の雲がいっぺんに吹き飛ぶような、痛烈な性の衝撃。
一気に地へと落下する。
混濁した思考から這い出るさなかに、私の中に得体の知れない何かの、体液が注がれてい
く―
271:『震える血』
08/08/29 01:55:01 sM9VoMMf
目が覚めて、体が冷めて。
私は横たわっていた。
「ターチカ」
グラムベルタの呼ぶ声は、今更私に届く。
「ターチカ、起きているか?」
彼女は全て知っていて、私をあそこに置いてけぼりにしたのだ。
慰み者にされるのを、彼女は知っていたのだ。
「……起きています」
だから彼女は「私を恨め」と言った。その上で、私の求める助けを無視した。
私の絶望を知っていて、あえて私を救わなかったのだ。
「そうか」
「はい」
……恨めっこなかった。私には、グラムベルタを恨めやしない。
「何だ……その……」
こうやって、吐く言葉一つにさえ躊躇う彼女を、恨む事なんて出来ない。
「別に、恨んでなんかいませんよ」
その後は、スープを飲んで、二、三の言葉を交わして、緩やかな眠りについた。
何事もなかったかのように。自らガラス片を反芻するなんて、そんな真似は出来なかった。
起きがけに、腹部に違和感を覚えた。圧迫感がある。
食事を初めとした世話は、全てグラムベルタがやってくれていたから、その事を話すべき
か話さないでおくべきかは悩んだ。下手に心配させても、付きっきりで私の世話をしてく
れる彼女の負担になるだけだと思った。
実のところ、私は彼女に憚る必要などないのだ。きっと私は、彼女の都合でここにいるし、
ただ生死を握っているのが彼女、というだけなのだ。だけれども、私は彼女の厚意を無下
にするなんて出来ない。良いように利用されているだけかも知れないのに……。
どうすればいいのだろう。ここにいることが私にとって危険なのは熟知している。きっと、
このままここにいては取り返しのつかないことになる。いや、既に遅いかもしれない。私
の冒険者としての警戒心は、初めっからずっと、警笛を鳴らし続けていた。
「どうかしたのか?」
私は首を振る。
そうすれば頭について回る何かが振り払えると思った。
「具合でも悪いなら、言ってくれ」
「……お腹の調子が悪いんです」
「そうか。後で薬でも取らそう。我慢できるか?」
「そんなに気遣わないで下さい。大した不調じゃありません」
彼女が何を考えていているのか、私には分からなかった。目隠しを外して、問いただして、
全てを明らかにすれば、私はどうすれば良いか分かるのだろうか?
「無理するなよ」
時間は過ぎていく。
腹部に感じた異変は、日に日に強くなっていったし、私の中での彼女に対する親しみと、
それに反目するものは葛藤を強めていった。心が震えている。
「お腹が苦しい……」
鎮痛剤として、薬草を噛まされていた。効果はあったが、それで全てがどうにかなるわけ
じゃない。
「ああ……」
腹部に触れると、そこが膨らんでいる。中に何か詰められているみたいに。それに気付い
たのは大分前だった。膨らんでいくそれは、私に恐怖と閉鎖をもたらした。何も考えたく
ない、何も知りたくないと、睡眠かグラムベルタとの雑談に逃避した。
彼女は何も教えてくれなかったが、私の冒険譚を楽しそうに聞いてくれた。まるで母みた
いに。
でも、この痛みの度に、私は現実へと引き戻される。この痛みに訳があり、それはグラム
ベルタも知っているし、むしろ彼女が仕組んだことだと。いや、私だって、その原因や、
痛みの正体だって知っている。ただそれを、食わず嫌いするみたいに、フォークで端っこ
に集めるみたいに、直視せずにいるだけ。事実を隠そうとする彼女の優しさにあやかって、
そして優しさを否定したくないから、心地良いから、私は束の間の安息に浸ることしか出
来なかった。
安息を引き裂くように、痛みは度々訪れる。この腫れ上がったお腹は、破裂せんばかりに、
終局が近いことを示すかのように。
272:『震える血』
08/08/29 01:57:02 sM9VoMMf
あまりの痛みに、器を落とした。
食いしばった口から漏れる苦痛の音、膨れた腹を抱えてうずくまると、すぐにグラムベル
タの声が飛ぶ。
「ターチカ!」
返事する余裕はない。彼女は私を抱いて、何度も私の名前を呼んだ。
「待ってろ、すぐ楽にしてやる」
彼女は呪文を詠唱する。それを子守歌に、私は不意に眠りの淵へと突き落とされる―
自我を取り戻すと、まるで時間を切り取られたかのように空白を感じる間もなく、私はベ
ッドに横たわっていた。
「痛みは和らげてある」
グラムベルタの呼気は乱れて、シューシューと音が聞こえる。力量以上の術で私の痛みを
制御しているようだ。あの鋭い痛みは、今や鈍く横たわっていた。
「後は―分かるな?」
押さえられた痛みは、しかし確かに残っていた。私を現実に取り留めんとするかの如く。
分かってる。私がどうしなきゃいけないなんて。そうしなければ、この現実も何もかも、
ずっとこの場に付きまとうというなら、やるしかなかった。
鉄片が未来永劫私の体にくい込んだままでいるくらいなら、一度だけ果物ナイフを突き立
てる方がマシってこと。
要は、最悪な妥協。
私は頷いて、そして然るべき行為で答える。グラムベルタの固い声援が、気休めに私を解
した。
乱れがちの呼吸を一緒くたにするようしてに、思いっきり息を吸って、腹に力をいれる。
何度も。
身体をこじ開けるようなリアルな感覚を、吐き気に似た拒絶で応える。
ズル、と身体から抜け出る。それでも、腹部にはまだ圧迫感がある。
終わらない、終わってくれない。
ふやけて、輪郭の曖昧な逃避は、目隠し一つの暗闇の中にあったが、今や痛覚でズタズタ
だ。自ずと目隠しが引き裂かれて、その向こうの真実が目に飛び込んできそうで、私は目
をつぶっていた。妥協をとっても、開き直ることは出来なかった。
現実を噛み締めつつも、その身全てを現実の中に投じることなんて出来やしない。
矛盾の中に身を置き、拒絶と悟りの間を、震えるように行ったり来たりしていた。終わり
をただ、堪え忍びながら。
事後、私は再度眠りへと落ちた。再度目を開いたときには暗闇の中、まだベッドの中で横
になっていた。火は焚かれていないようだったが、十分に暖められている部屋の中、私の
活力は徐々に高まっていく。疲弊しきった身体だから、それでも身を起こすことさえ出来
なかったけれど。
下半身は痛むが、身体の中に異物を詰められたという違和感は失せていた。口の中に突っ
込まれた薬草に気付いて、私はそれを噛んだ。
しばらく、何もない世界に浸っていた。自分の手さえ見えない暗闇は、自然と私を安心さ
せた。グラムベルタさえこの場にいなくて、もしかしたら、私すらいないのかもしれない。
目隠しはされていない。
ひたひた、と湿った足音。
「ターチカ。大丈夫か?」
暗闇の奥から声が近づいてくる。遠い。
「大丈夫です」
私が吐いた声は弱く、小さい。
遠く、蝋燭の小さな光が灯る。ずっと闇の底にいた私にはそれですら暴力的な光で、しば
らくはそれを直視出来なかった。
二つ目の炎。より刺激的な光だが、しかし一つ目のそれよりはすんなりと受け入れられる。
この程度の明かりでは、まだグラムベルタの輪郭を映すことさえままならない。
三つ目にして、彼女がそこにいることを明らかにした。暗闇に目の感度は高まるが、長い
時間目を使わなかったせいで、大分視力が鈍っているようだ。しばらくすれば元に戻るだ
ろうか。
次の光、彼女の姿は顕わになる。赤い光に照らされた表皮は、鱗に覆われていたし、太い
尻尾は床へ優雅に降りていた。肉を食いちぎるのに適した口吻は、それが私に言葉を吐い
ていたとは思えないほどに、凶悪に見えた。もしかしたらグラムベルタは別人で、闇に隠
れて話しているかも、と思わせる。服を纏っていて、女性めいた装飾品だけが、それに反
して彼女はグラムベルタなのだと肯定していた。
273:『震える血』
08/08/29 01:57:35 sM9VoMMf
「ターチカ。私の姿は受け入れられるか?」
リザードマン。彼女の言葉に嘘はなかった。目の前のリザードマンが、確かに喋っていた。
いつもの、強ばったしゃべり方で、私を暖めようとしていた。
「あなたが嘘つきだなんて、思ったことはありません」
「そうか」
もう一つ明かりが点く。幻影を晴らすかのように、現実が広がっていく。霞の向こうから
私を撫でていた逃避の使者は、今や現実の使者として、事実を携えてやってきた。
しかし今一度、彼女はその役割を捨て置く。蝋燭の明かりをそのままにして、彼女は私へ
と歩み寄った。艶めかしい姿。光を背から浴びて、まるで夕日から降り立った天使のよう
に、不思議な静けさを帯びている。
グラムベルタはベッドのすぐそばに佇み、私の額に掛かった髪を払うようにして撫でた。
異形の手。しかし、そこには慈しみを感じられた。
「本当に、申し訳ないと思っている。もう一度言うが、恨むなら、私を恨んでくれ。殺し
てしまったって、構わないんだ」
私には、彼女を恨むことは出来ない。今や、非現実の被膜と、私の心を引き裂く剣を手に
していても。
蝋燭の炎はふっ、と消えて、再度暗闇の中。
「あのとき言ったろう?私はリザードマンだって。そして、お前もそうだと」
分かってる、気付いていた。それを直視したくないから、私は目を反らしていた。ちょう
ど良く目隠しをしていたから、その過保護な隠蔽に甘えて、私は見て見ぬ振りをしていた。
蝋燭の炎が、一つ、二つ。
再度グラムベルタを取り囲むように明かりが灯り、そしてそれらは、私の姿を照らしてい
た。
三つ、四つ。
身体の表面には鱗が走り、柔らかだった人の面影はない。
五つ、六つ。
鱗は大小で複雑に構成されていて、関節付近の鱗は小さく、それ以外は刺々しく私を覆っ
ている。
七つ、八つ。
肉を引き裂く為に、爪は鋭利に尖っている。
九つ、十。
そこには、人間の私なんていなかった。
堰を切ったように流れ落ちる涙。
分かってはいた。だけれど、全ては優しい被膜に覆われて、私を傷付けはしなかったのだ。
涙となって逃避は流れ落ちて、事実はぎらついた刃となって、私の目へと入っていく。
こんな醜い姿にされてしまったら、ここから抜け出したって、私には居場所なんてない。
こんな恥ずかしい姿で人前になんて出られないし、どうせ人間としては扱って貰えない。
知っている。私がグラムベルタに与えられていた肉は、人間の肉だということに。人間に
とっては食べられたものじゃない、って聞いたことがあるけれど、私はそれが人だと気付
くまで、美味しい美味しいと食べていた。それが意味することは、再認識するまでもない。
声を上げて泣いた。グラムベルタはずっとそこで見守ってくれていたが、今ではもう私を
甘い闇に覆ってはくれない。
知っている。私が寒い部屋に押し込められれば身体は虚脱し、熱い部屋に入れられれば身
体は活動状態になるのは、変温動物としてのリザードマンの性質だ。今や私には、人間の
ような温かい血は流れていない。そう、だから、同士だった人間の肉だって、平気で食べ
れたんだ。
「だが、まだお前は、『完全には』リザードマンじゃないんだ」
知っている。私の歯はもう牙みたいになってしまっているけれど、まだ言葉は喋れるし口
は迫り出していない。尻尾もない。鱗だって、まだ私の全てを覆ってしまったわけではな
い。
だけれど、ターチカ=マトラスという魔法使いの冒険者は、もういない。
術か薬かは分からないけれど、私の身体は勝手にこんな化け物に作り換えられて、リザー
ドマンの雄に犯されて、挙げ句の果てに卵まで産まされた。攻撃、警戒の対象だった、モ
ンスターとしてのリザードマン。それがここに二匹、いるだけ。
274:『震える血』
08/08/29 01:58:22 sM9VoMMf
「……殺して、ください」
泣き声は嗚咽に変わって、下唇の浅いところを深く噛み、毛布をうちにして身を抱えた。
こんな変わってしまった身体なのに、忌み嫌っている姿なのに、さもそれを大事そうにし
ていた。
「それは出来ない。ターチカがそうしようとしたら、私は死んでも止める」
人の子を産んだこともないのに、私は化け物の子を孕まされて。
そんな化け物に生きている価値なんてないんだ。
「思い詰めるな。言ったろう、お前はリザードマンだと」
「うるさい!勝手にこんなにして、偉そうなことを言わないで下さい!」
リザードマンだから、リザードマンとしての考えを持てと。そう言いたいのだろう。むし
ろ中途半端に人間であることを忌み、同胞の子を産み落としたことに歓喜せよと、そう言
いたいのだろう。
「私は人間でいたかった!リザードマンになんてなりたくはなかった!」
グラムベルタは言葉を返さない。
ただ黙って、私のことを抱きしめた。
私が暴れても、それさえ愛おしむかのように。
「どうしても死にたいのなら、私を殺してから死ね。隣の部屋にいるからな」
そう言って、この部屋から出て行った。
しばらく、私はうずくまったまま。
ずっと逃避していた現実は、私を埋めて逃さない。
現実を側に携えてからも、時間は過ぎていく。
憂鬱に振舞っても、私の身体は元に戻らないし、それどころか変化を続けていた。鱗が私
を覆う面積は広がっていったし、最近では尾骨の成長が著しくて、仰向けでは寝られない。
気持ちの悪い自分の身体を見たくなくて、毛布を羽織るようにしていた。
ますます人外染みていく自分の身体に、私は鱗を剥がして自傷することが何度もあった。
その度にグラムベルタに叱責され、しまいには私が鱗を剥ぐと、グラムベルタも同じだけ
自身の鱗を剥いで見せた。
衣食住の世話は相変わらず彼女がやってくれていた。私の為にと服を新調してくれたり、
また今でも良き話し相手になってくれた。目隠しのない今、私の視界にはリザードマンと
しての彼女しか映らない。それでも気休めには、十分だった。
私の生活範囲には、グラムベルタ以外立ち入らないようにしているみたいだったが、何度
か他のリザードマンも見かけた。かなり大きな集落であるらしく、こんな寒い洞窟によく
暮らせるものだと思ったが、暖房設備がしっかりと整っているらしかった。
「ターチカ」
振り返ると、グラムベルタ。何時にも増して真剣そうで、威圧感さえ覚えた。
「お前には、本当に感謝している」
「いきなり、どうしたんですか」
分かっている。本当は耳を塞ぎたかったが、心に覚悟を決めていた。
どうせまた、私を苛む物だと、分かっている。
「お前の子供が、無事孵化した」
「……そうですか」
トカゲの子。その母親は人間?トカゲ?
「私の母も昔、人間だった」
「え?」
275:『震える血』
08/08/29 01:59:49 sM9VoMMf
グラムベルタは私の横に座り、目を細めて焚火を見つめ、喋り始めた。
「街道も通っている人の出入りの多い、小さな森であるのに、ここの集落はそこらの人間
の村くらいに発展している。その理由は分かるか?」
「その存在を人に知られてないからですか?」
私が通ったときだって、リザードマンなんて出るとは思わなかった。だからさほど警戒せ
ずに気を抜いて帰路についていたのだし、それが当たり前だった。
「それも理由の一つだな。……ここの集落を治める者は、私を初めとして、通常のリザー
ドマン以上の知能があるんだ」
「それは……あなたのお母さんが、私と同じだからですか?」
ようやく分かってきた。私がここにいる理由。こんな目に遭っている理由。そして、グラ
ムベルタが人の言葉を喋れる理由。
「そうだ。元人間だったリザードマンの子は、人としての知能を有する。それにより統治
にも、魔術にも長けた個体が生まれるんだ。それによって、こんな寒い洞窟にも暖房設備
を取り入れられるし、隠蔽魔法で入り口を隠すことだって出来る」
「私は、この集落の次の世代の長を生むために、こんな目に遭ってるんですか?私には、
そんな義理なんてないのに?」
その為に、ターチカ=マトラスは人の道からはみ出て、モンスターとして惨めに生きなけ
ればならないの?
「……私の母も、そう言って最後は絶食し、死んでいった。私を娘だとは認めてはくれな
かったし、私の妹は、母の手によって殺された」
「そんな……私に同情を求めないで下さい」
グラムベルタの、火の中に何かを見いだす表情に、心が揺すぶられるのは確かだった。
「別にそんなつもりはない。ただ、考えてみろ。ここの統治が取れなくなったとしたら、
ここの奴らはどうやって食っていくんだ?近隣の、人間の村々に、攻め込まないはずがな
いだろう」
「だから、私は彼らを助けるつもりで、諦めろと言うんですか?私はもう、産みたくもな
いのに、卵を……人間なのに卵を産まされました。人の姿に戻して、元の世界に戻しては
くれないんですか?」
グラムベルタのため息は、シュー、と細く長く、掠れて聞こえた。
「お前を人に戻してやりたいとは思っている。私だって必死に書庫を探った。だがなかっ
た。伝えられてきた人を変身させる呪法だけ、体系だった知識から独立して残っているん
だ」
「そんな、酷いです……。私は人間でいたかったのに、こんな……こんな……」
途端に悲しみが押さえられなくなって、涙が溢れる。グラムベルタは、他に方法が知らな
いみたいに、私をあやすように抱きしめた。
彼女にはもしかして、温かい血が流れているのかもしれないと、混乱の片隅に思った。
その日から、私の日課に魔法の勉強が組み込まれた。
彼女が言うに、頸部まで皮膚が鱗を覆い始める頃になると、会話に支障を来すため、それ
を補うための魔法が必要らしい。怪我や、生まれ持って喋れない人間の為に開発された、
口にせずに言葉を発する魔法の存在は確かに知っていたが、自由に繰るには難しいと聞い
ていた。
習得に苦しむ傍ら、変化は私を蝕んでいく。今や太い尻尾が私のお尻に生えている。鱗だ
って、もう首のほとんどを覆っている。幸いリザードマンは雑食だが、一度グラムベルタ
が生肉を食しているのを見て、それ以来血の臭いが頭にこびり付いて離れない。
無情に時は過ぎていく。ある日を境に、発声するにも声が上手く出なくなっていく。
「グラ……グラム、ベルタ……」
掠れ声を絞り出し、彼女の名前を呼ぶ。私を心配そうに見つめる目。
「無理して話さない方が良い。術が完成すれば、また話せるんだ」
彼女はそう言い聞かすも、一向に使えるようにはならないし、喋れなくなる一方。
いくら話そうとしても、シュー、シューと、空気が擦れる音しか出ず、時折音が出るくら
いにまでになったときには、もう顎の骨は変形して、頭部に鱗が生えると共に、髪の毛が
抜け落ち始めていた。
とっくに戻れないところまで来てしまった。人としての痕跡さえ、もう跡形もなくなって
いく。声を取り戻した時に、私は言葉を覚えているか不安になる。グラムベルタは私が喋
れなくなってから、より積極的に会話をしようと努めているのがよく分かった。
276:『震える血』
08/08/29 02:01:34 sM9VoMMf
それでも、私はこの身体を受け入れることなんて、到底出来やしなかったし、常に突きつ
けられている現実からは、逃げ切れる筈もなかった。
「もう、嫌だ」
筆談用の木炭で、木の板に文字を殴り書く。
ギチギチ、と締め付けるような音が聞こえる。それが自分の歯ぎしりの音だと気付く。
鋭い爪の手を強く握りしめると、掌に突き刺さって血が溢れる。
「ターチカ、落ち着け!」
シュー、シュー。
無慈悲に、私の叫びは解けていく。
頭を抱える。鱗質の硬い肌。もう、微塵も人間らしさなんてない。
鱗と鱗の隙間に爪を立てて、思いっきり引きはがす。その下に私の本当の顔があって、そ
れが出てきやしないかと思った。けれど、それは鋭い痛みを私にもたらす。おかしいよね、
あれだけそのリアリティを嫌ったのに、今度はそこに逃避を見いだしてる。
「ターチカ!そんなに、自分の身体を嫌わないでくれ!恨むなら、その身体ではなく、私
を―!」
もう、どれくらい経ったろう。
私はもう、自分が人間だったことを記憶でしか確かめられなくなった。
私には適正が無いことを思い知って、魔法による発声は諦めた。
生の肉を喰らうようになった。初めて口にした時は、身体の欲求と精神が相反して、何度
も戻そうとしたが吐けなかった。消化した後、何度も嘔吐いて、胃酸ばかりを嘔吐した。
グラムベルタ以外のリザードマンとも会った。私を犯したリザードマンとも、子供にも会
った。五人の子供らは、純血のリザードマンと、一見何ら変わらなかったが、確かに知性
の光をその相貌に見た。まだ発声魔法を覚えてはいなかったが、驚くほど早く言葉を覚え
て、
「こんにちは、お母様」
と書いてみせた。乳母と、他に元人間の母を持つリザードマンらが、彼らを躾けているら
しい。
私は彼らを拒めなかった。グラムベルタが自分の母を語るとき、時折涙を滲ませているの
に気付いて、同じ思いをさせたくなかったし、きっとそうしたなら、グラムベルタが悲し
むだろうと思い、やめた。
そして、もう一度子供を産んだ。
私に発情期という名の春が訪れて、身体が酷く疼くようになった。すれ違う、リザードマ
ンの雄に心を惹かれている自分が嫌になって、女性器に尖った爪を突き立てようとしたと
ころ、グラムベルタに無理やり止められ、そして裸にされた後、男と同じ部屋に投じられ
た。初めて私の相手になった男と同じで、また火が轟々と焚かれた部屋の中、卑しい自分
に逆らえなくて、交わった。
そうして生み出された自分の卵は、私の望んだ結果だ、という冷たい事実をありのままに
見せ付けた。もう、どこが人間なのだろうと、人であった過去さえ疑わしくて、目の前の
卵さえなければ、そんな疑問や恐怖から逃れられるだろう、そんな思い込みが私を突き動
かしたが、疲弊した体、グラムベルタの目線、そしてまたそれらとは別の何かが私を絆し
て、それらは割られることなく、しばらく日を経て孵った。私の目の前で。
「ターチカ。お前はもう、人間じゃないんだ。こいつらの、母親だよ」
「私がその言葉に頷いたなら、あなたは幸せですか?」
赤子の泣き声だけが、私と彼女を埋めていた。
「その言葉だけで、私は幸せだ」
暑くとも、寒くともない。ただ、私は震えていた。
277:clown
08/08/29 02:04:06 sM9VoMMf
以上、お粗末様でした。
宣伝になりますが、過去作品の修正保管を行うサイトを開きましたので、アドレスを付記しておきます。
URLリンク(n-ap.com)
278:名無しさん@ピンキー
08/08/30 23:51:37 OYsKfFAT
リザードマンGJ!
279:名無しさん@ピンキー
08/09/01 04:46:23 YGNZB61h
リザードマンGJ!
最後まさかの鬱ENDw
でも理性を取り戻して人間らしい終わりになるよりずっとイイ!
280:名無しさん@ピンキー
08/09/01 09:57:52 29qB9VVh
孕みGJ
はらむ時期が短い気がするけど
やっぱり王道エロチックはいいね
281:名無しさん@ピンキー
08/09/01 12:15:28 b6oQ/oFl
し
282:名無しさん@ピンキー
08/09/05 23:48:32 MzXtV1M0
そろそろワイバーン娘第Ⅲ章の続きウプします。遅くて何度もすみません。
283:名無しさん@ピンキー
08/09/06 00:44:02 XtQQqn5t
>>282
メール欄に「sage」って入れようぜ
284:名無しさん@ピンキー
08/09/07 01:13:20 zDMl8wXB
上げてくれるのは嬉しいんだが
出来ればメモ帳とかに下書きしていっぺんに上げてくれると助かる
285:名無しさん@ピンキー
08/09/07 11:31:23 yqDNwdo9
いったん死亡シナリオで完結させて
ifシナリオで続編かくとかね
286:名無しさん@ピンキー
08/09/08 08:48:53 A1ZWjlH3
>>285いいですね、考えて見ます。スミマセンsageました・・・orz
外伝の2作目を考えてます。非常にぶっ飛んだ内容なのと、変身シーンが出せそうかどうかが微妙
なのでまだ書くかは未定ですが、大まかなストーリーは以下の様な感じです。
物語の時間軸で夏頃、ファンタジーの世界に次元の穴(違う時代の違う場所にワープする)が開き、
主人公達が吸い込まれる。移動した先は現代の日本(メンバーに魔法使いがいるので、言語の障壁は
魔法で解消)。子供が不良集団に絡まれてるのを目撃し、主人公達はこれを撃退して、子供を救う。
子供は不登校になってる高校生で、主人公をしばらく自分の家に泊める(こっちでは偶然夏休みなので、
親には志望大学の先輩などといってごまかす)。高校生に街を案内してもらい、何もかもが違う世界
に戸惑いながらも、現代世界に満喫する。カラオケで歌う、ゲーセンで遊ぶ、ファストフード店での飲食
シーンなどがある。現代での生活に慣れ始めた頃、敵集団も主人公を追って現代の日本に来てしまう。
主人公達によって被害は最小限に留められるも、ビルを倒壊させたり、駆けつけたパトカーを蹴散らす
などの騒ぎを起こし、自衛隊が出動する事態に。主人公と異様な敵集団の話はニュースで取り上げられ、
こうなるともはや滞在できなくなる、と高校生から説明を受ける。
狙いは自分達なので、自分たちがファンタジー世界に帰れば敵達も帰り、現代人は安心して暮らせる
と決意し、別れを惜しみながらも主人公達は帰る事を決める。帰る間際に再び敵達が襲来するが、逃れ
主人公に別れを告げながら時空の穴へ、高校生は楽しかった事を告げる。後を追うようにして敵達も
時空の穴へ。夏休みが終わる頃、心開いた高校生は再び登校を決める。
287:名無しさん@ピンキー
08/09/08 10:20:58 CVA5ceen
・・・大まかなストーリーって言うか、全部だよねコレ・・・
・・・経験上だが、フルあらすじなんてものを先に表に出した人は実際には完結まで書き上げないことが多いんだよな。
気が抜けると言うか言霊が漏れると言うかそれだけでなんか書いた気になっちゃったりするのか。
つーか読む側としても、実際の作品を見せてもらう前に割と細かくネタバレされてしまってどうしろと。
288:名無しさん@ピンキー
08/09/08 20:02:12 A1ZWjlH3
良く見たらおおまかじゃ無かったですね(´;ω;`)本当に色々と申し訳ありません;
自粛します・・・orz 今度からマジで気をつけます;;
289:名無しさん@ピンキー
08/09/09 13:39:28 NxVAkvga
空回りしちゃう熱意はわかるよ~俺なんてシチュだけしかできないから文章力ないの承知で
SS一生懸命書いたらシチュはいいが文章が駄目とか何度も言われてやめちゃったぜ
290:名無しさん@ピンキー
08/09/10 18:57:41 pF58wZom
>>289
正直文章書きは慣れですからね……。気持ちはよく分かります。
私もよく下手と言われます。あとは『ラノベっぽい』とか。
あとはこのスレ目的で書き始めた筈の作品が、いつの間にかこのスレの対象外となってしまったりとか。
291:名無しさん@ピンキー
08/09/10 21:07:54 8yovKmpG
文章力の辛いところは絵と違って、ただ書けば上手くなる訳じゃないってところだろうね。
書きまくってても伸びない人は伸びない。でも伸びる人はすごく伸びる。なぜだろう?
しかし、下手と言われるのは理解できるが『ラノベっぽい』のはなぜいけないのかが分からん。
みんながみんな芥川龍之介みたいなおどろおどろしい【純文学】を求めているとは思えんのだが。
292:名無しさん@ピンキー
08/09/11 18:27:13 3pkWeW8C
むしろ文章が硬くなりがちで、『ラノベっぽく』書きたいくらいなんだけれど。
板的には読みやすい文章の方が軍配があがると思うよ。
293:名無しさん@ピンキー
08/09/13 01:26:30 4znBVHq/
文章が幼かろうが、その文章の中に熱意と変身要素が有れば私は満足じゃ
294:名無しさん@ピンキー
08/09/13 18:27:53 3tzbRmPm
でもスイーツ(笑)は勘弁な
…まあ、熱意とキャラへの愛情が有るなら、
普通あんな文章にはならないけどな。いくら下手でも
295:名無しさん@ピンキー
08/09/13 18:41:29 Z6SEH2iW
>>294
どうするんだモテカワスリムで恋愛体質の愛されガールが
男にスピリチュアルな感覚を感じていたら連れていかれて
薬打たれて「ガッシ!ボカッ!」という音と共に
変身する小説が投下されたら。
296:名無しさん@ピンキー
08/09/14 12:25:54 wbZ53HPg
ここで聞くのもアレだけど、冬風さんところ閉鎖したの?
久々に見たらページ削除されてたんだけど。
297:名無しさん@ピンキー
08/09/14 14:09:23 GL0Qm/vl
>>296
閉鎖してないぞ。どうやら移転しただけの模様
298:名無しさん@ピンキー
08/09/15 00:20:18 83F/6KJP
>>296
URLリンク(fuyukaze.sakura.ne.jp)
299:名無しさん@ピンキー
08/09/15 01:11:19 DUEB+qv8
冬風さんとこ 最近ブログしか更新しないねぇ
流石に人間あれだけの量書いたらネタ切れになると思うけどさ 未完結の作品を完結して貰いたかったり
300:296
08/09/15 10:00:31 HiGQnQvF
>>297-268
ありが㌧。移転だったのか。
301:名無しさん@ピンキー
08/09/15 17:19:26 g5K2VYtt
可愛くて優しい女の子が、人外に変身して戦うのがぃぃよね。ワイバーンの続きが早く読みたいお。
302:名無しさん@ピンキー
08/09/18 17:58:27 at1ep/tp
過疎ってるな、このスレもオワタ\(^o^)/
303:名無しさん@ピンキー
08/09/18 19:03:46 8UXr5ElH
????? ?? ??? ???????? ??? ??
???? ??????? ???????:????? ??
304:名無しさん@ピンキー
08/09/19 19:39:32 E/WlBcvX
作品が中々仕上がらない作家さんもいるわけで、オワタ発言はまだ早いかと。
ま、気長に待ちましょうよ。
と言うわけで保守。
305:名無しさん@ピンキー
08/09/20 15:14:52 tACT2CmZ
ただ待ってるだけじゃなくてネタ出ししようぜ
306:名無しさん@ピンキー
08/09/20 16:14:24 fOBMcWAa
>>305
ネタ出しはなぜか半虹のスレで活発
こっち向きのネタなんだがなぁ
307:名無しさん@ピンキー
08/09/21 01:34:09 qCQRdj4i
まだ続きが未完成な作品について今後の展開をみんなで予測し合うのはどうかな。
ただ飽くまで予測の範囲に留める事にして、「こうゆう展開にして欲しい」と作者
にお願い・強制するのは無しって事でさ。ほんの一例だけど、例えばワイバーン
がどんな風にして死ぬのかとかさ。
308:名無しさん@ピンキー
08/09/21 02:53:39 LiNzOhTy
いや、それでガツンと大当たりだったら出しづらくなるだろ
309:名無しさん@ピンキー
08/09/23 08:53:09 f477662I
産卵萌え保守
310:名無しさん@ピンキー
08/09/26 11:20:36 NsixNOcR
女王蜂ってエロいよな
元々はただの働き蜂だけど、特別な食べ物を食べると女王蜂になるんだって
311:名無しさん@ピンキー
08/09/29 15:10:48 bBZuH68A
何かを食べることで変化するっていうシチュエーションは萌えますね
312:名無しさん@ピンキー
08/09/29 23:40:57 YRdGtBlf
ピンクのアイツですね、わかりますwww
313:名無しさん@ピンキー
08/09/30 00:11:46 SD0u5CIv
レイ・ブラッドベリの短編だったと思うけど、養蜂家が生まれてきた娘にローヤルゼリーを与え続けるというのがあった。
栄養豊富なローヤルゼリーで太って行く娘を、まるでハチの子のようだと感じ、
娘にかいがいしくローヤルゼリーを与える黄色っぽい茶色のひげの夫が、まるで働き蜂のようだと奥さんは感じるようになっていた。
最後のページの夫の言葉が、「おお、かわいそうに。われらのちっちゃな女王様が風邪を引いてしまうよ」だった。
いろいろと妄想したものだ。
314:名無しさん@ピンキー
08/09/30 08:24:54 o17kIM+g
>>313
それは確かに妄想の余地はありますねwww
蜂変身の話と言うと、どうしても風祭文庫が浮かんでしまう件。
315:名無しさん@ピンキー
08/09/30 09:55:51 SD0u5CIv
あそこにはずいぶんお世話になっていますよ。
316:名無しさん@ピンキー
08/09/30 12:09:34 wa/WXRiE
マサイ変身とか斬新だったw
317:名無しさん@ピンキー
08/10/01 00:48:34 uAHDBbwK
マサイ族に変身するの?
318:名無しさん@ピンキー
08/10/01 14:52:55 QBSls7lq
あそこは最近獣変身と蟲変身が更新されなくて寂しいですよ
319:名無しさん@ピンキー
08/10/01 22:20:57 k++1bLHk
>>317
するよ。でも男体化がセットなのが個人的には・・・
あと挿絵がちょっと苦手だ
ナメクジ妻の挿絵はちょっと気持ち悪くなった
320:名無しさん@ピンキー
08/10/01 23:09:19 ShvuIrr7
おっとこれ以上は
321:名無しさん@ピンキー
08/10/02 01:06:29 uclqroTV
ここは某天気予報のOPのあれについて語るんだ
322:名無しさん@ピンキー
08/10/02 12:38:18 qWDGiF7E
二十世紀少年の敵か?
323:名無しさん@ピンキー
08/10/02 15:48:50 KzaTtlHO
>>321
別のと勘違いしてたらスマンが、あれは関東や関西じゃやってないらしい。
324:牧島みにむ改め初ヶ瀬マキナ
08/10/03 00:13:27 jY7I4Sip
いきなりすいません。
流れをぶったぎらせて一作置かせていただきます。
短いですが、どうぞご容赦を。
325:『無題』
08/10/03 00:15:19 jY7I4Sip
「う……く……っ」
背中が……痛む。脚に……力が入らない……。
「く……あぁ……っ」
城塞都市近くの森を根城とする人型の魔物、魔蜂。その駆除を申し付けられたのが数日前の事。兵数名を具して討伐に向かったのが数時間前。
「うぅぅ……ぅぁっ」
兵士数名の負傷というアクシデントがあったものの、何とか顔が全て瓜二つの兵隊蜂を薙ぎ倒しながら女王蜂の元へ辿り着き、
空気が黄金色に染まるほど過剰なフェロモンを撒き散らされる劣悪な環境の中で気が遠くなりそうになりながらも、何とか女王蜂を仕留めたのが数分前。
だが―!
「あぁ……がぁっ!」
女王の体を、私の剣が貫いた瞬間、女王の針もまた、私の背中を貫いていたのだ。激痛が体力と命を根こそぎ奪い切る前に、残りの兵士を先に城へと帰るように命令した。
あと、私は女王蜂と痛み分けだ、私の死体は回収するな、とも。
兵士が私以外の負傷者を抱えて退却するのを見届けながら、私も安全な場所へと移動しようとした。
しかし、針を刺された背中からは止めどなく血が流れ、熱と共に体力までもを奪い取っていく。女王に何か毒でも注入されたのだろう……血が止まる気配もなく、傷口が塞がる気配もない。
そしてついに……私の足は地面に囚われてしまった……。
「ぐぅぅ……っ」
兵士にああ伝えたのは、私を探すことにより、森の他の魔物たちに兵達が無駄な犠牲を強いられることがないようにするための、私なりの心遣いだった。
だが……いざ地面に倒れ、体温が薄れていく私の中を巡ったのは―孤独なる死への恐怖だった。
「……く……あぅぁ……っ」
あれだけ散々覚悟して、女神像に幾度となく誓いを立て、いつ死んでも悔いはないと自分に言い聞かせ―そのくせにこれだ。
私は心の片隅で、自分に対して呆れ返っていた。所詮、部下にあぁ告げたのも自らを悲劇のヒロインのように考えて酔っていただけに過ぎない。
その事を今、襲い来る大量の恐怖によって思い知らされた。
「ぅぅ……ぅぁぅ……っ」
目尻から放たれた涙が、頬を伝い地面へと染み込んでいく。同時に、涙を放つ眼の瞳から光が薄れ、地面を掴もうと伸ばした腕が、手が、力を地面へと明け渡している……。
「ぅぁ……」
やがて、舌や喉からも力が薄れていき……意識すら、闇へと堕ちていった……。
326:『無題』
08/10/03 00:17:14 jY7I4Sip
―――――――
(………ん?)
次に意識を取り戻したとき、私は自分の体が、不可解な状況に置かれていることを朧気ながら感じていた。
どうやら私は、膝を抱えたまま丸くなって眠っているらしい。
体のあちこちに何かの管が繋がって、そこから私の肌に暖かい液体がゆっくりと流し込まれているようだ。
踞った体の回りは、柔らかくて弾力性のある物質で取り囲まれ、管はそこから発生しているらしく、私が身じろぎする度に連動してうねうねと蠢いていた。
(………)
意識が覚醒と睡眠の狭間で固定され、ぼんやりとしか物事を考えられないようになっている。
一体ここは何処なのか、どうして私は踞っているのか、繋がれているのか―抱いてもいい筈の疑問すら容易には浮かばなかった。
暫しの時の経過を経て、最初に浮かんだ疑問。それは……。
(……あれ?わたしって……)
……自分が何であるか、と言うことだった。自分という存在、名前、アイデンティティ、鏡で見ていたであろうその姿すら、全く思い出せなかったのだ。
すっぽり記憶から抜け落ちてしまったかのように……。
(……んと……えぇと……)
霞の中にある像を、必死で探ろうとするわたし。
平泳ぎをするように意識の中で霞を掻き分けて、霧の向こうに幽かに光るもの―私の存在をこの目に見ようとしていた。
と―。
(はれ……?)
背中から、わたしのすぐ後ろから風が吹いた。音が耳に届くほどに強烈な風は、光とわたしの間に横たわる大量の霞を一気に吹き飛ばすほどに強烈なものだった。
―視界の端に、葉脈のような模様が走った、昆虫の羽根らしきものを捉えるほどに。そう言えば、背中が少し引っ張られているような。
ひょっとして……と、意識の中で背中に手を伸ばす。果たして、件の羽根はわたしの背中から生えているようだ。
どうしてだろう……と片隅で思いつつ視界を前に開くと―。
私は、その理由はおろか、自分の存在まで、はっきりと理解した。
蜜で織られたヴェールの向こう、女王様の謁見の間で、一匹の魔蜂が女王様に頭を垂れていた。女王様は頭を垂れている蜂をそのまま抱き寄せて、自らの胸にその顔を当て、乳首を唇に差し込んだ。
327:『無題』
08/10/03 00:20:42 jY7I4Sip
まるで別の生き物のように蠕動する女王様の胸からは、仄かに苦く、そして甘い蜜がゆっくりと溢れ出していく。
蜂はその一滴すら逃さないように、顔を一生懸命女王の胸に押し付け、口を動かして粘度の高い液体を飲み干していく。
ちゅぶちゅばと、舌で女王様の乳を舐めているらしく、女王様は頬を微かに熱らせ、ピクピクと震えていた。
女王様は夢中で蜜を飲む蜂の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと羽を震わせた。その風に乗せて、刷り込むように蜂に向けて言葉を放つ。
『貴女は、次の女王になるの。私がもし亡くなったら、その時は―よろしくね』
―気付けば、わたしの手や腕は、蜜を飲んでいた魔蜂と同じように固い甲殻のようなもので覆われ、胸は張り出して谷間が作られるほどになっていた。
胸元から黄金色の香りが沸き立ち、私の体を包み込むように辺りを満たしていく。
下半身や背中は見えない。背中の羽根は先程目で見たし、尾てい骨から先に神経が通っているのを感じる事から蜂の腹部も有るのだろう。
とくん、とくん、とくん……。
わたしの心臓の鼓動とは違う、もっと暖かくて、聞くだけで心が安らかになる、そんな音が、私のお腹の中から響いてくる……。
その音を耳にしているだけで、わたしは心からの喜びを感じる。だって……子供の存在を喜ばない母親が何処にいるのか。
(この子達を無事に生むために、まずは栄養を摂らなきゃ……それも新鮮な栄養を……)
両手でお腹を擦りながら、わたしははっきりと、これからの行動について考えていた。
328:『無題』
08/10/03 00:24:22 jY7I4Sip
―――――――
「……ん……」
わたしがぼんやりと目を開くと、そこは真っ暗闇だった。ただ、わたしの背中からは、月明かりのようにぼんやりとした光が降り注いでいたけど。
「……ん……く……」
窮屈な場所に、私は押し込められているようだった。スポンジのように柔らかい何かが、まるでわたしを庇うように包み込んでいるようだった。
(……食べなさい)
「………ん?」
ふと、頭の中で声が響いた。わたしが……聞いたことある声。それが何なんだろうと考えながら前を向くと―!
「……わぁ……♪」
わたしを包むその物体が、何故だろう、非常に美味しそうに見えた。
微かな光に照らされた場所は仄かに紅く光り、黄色くぶよぶよしたものが張り付いている場所は、ミートソーススパゲティにトッピングされたパルメザンチーズのように食欲をそそる彩りを持たせていた。
お腹の中にいる子供達が、早く、早くと叫んでいる。わたしも……知らず我慢の限界を迎えていた。
顔を突き出し、それに食らいつくわたし。ぶちん、と鈍い音がして切り取られたそれを、咀嚼して舌に乗せる。
「!!!!!!」
味蕾に雷が落ちたような衝撃が走った。
最高級の霜降肉か、あるいはそれ以上の良質な肉を、最大限旨味を引き立たせる調理法をして食したとしても、ここまで美味なものは無かっただろう。
ほんのりと沸き立つ獣臭さ、噛めば溢れる肉汁、生特有の弾力―全てが美味に感じた。
早く―はやく―ハヤクタベタイ。
本能が身体を動かした。
「んむぉんっ!」
ぶしゅっ、と両方の脇の下か腰の上辺りで音がした。
まるで閉じ込められていたものが勢いよく溢れだしたような感覚に、わたしは思わず口内の肉を気管支に詰まらせそうになった。
軽く咳き込んだ後、ありったけの解放感が巡る。皮膚を突き破って現れたものに、神経が少しずつ走っていく。
徐々に、纏っている粘液の感触が肌に伝わってくる……。やがて完全に繋がると、それはわたしの思い通りに動く―両腕両手になった。ただし、両手は完全に甲殻そのもので、敵に対して使う武器用のそれだったけど。
「んむむっ……」
私はそれを伸ばして―背中を包む肉を斬りつけた。
ぶしゅうんっ……
「―――!!!!」
それはまるで誕生を祝福するかのような光だった。
329:『無題』
08/10/03 00:26:44 jY7I4Sip
微かに緑がかかった、木々の隙間から漏れる太陽の光。まるで星屑とオーロラを交えたような輝きは、全身を粘液で彩られた私に虹色のアクセサリを身に付けさせていく。
眩しさに目を瞑ったのも一瞬。すぐに辺りの風景を目にすることが出来るようになった。前の女王が治めていた―この森を。
とくん、とくん。
お腹が跳ねる。貪欲な子供達だと思わず微笑んでしまう。かく言うわたしも、口の端から涎が出ちゃっているんだけどね。
(タベタイタベタイタベタイタベタイタベタイタベタイ)
頭の中を何度も何度も駆け巡るわたしの声に、体は素直に従った。切り裂くことに特化した二本の手を抜け出してきた物体に向けて構え、目を細めて呟く。
「―いただきます♪」
それからしばらくの時間、わたしは我を忘れて抜け出してきた物体を口に入れ続けた。
皮を切り、肉を裂いて団子にして、口の中で思うままに味わってから飲み込んでいた。
あまりの美味しさにわたしの頬は綻び、羽根はぴくぴくと震え心地よい風を起こし、粘液まみれの胸からは黄金色の香りが辺りに撒き散らされていた。
纏っていた粘液は、赤色と黄金色が混ざり合うことなく存在していて、一緒に飲み込むと甘さと苦味が絶妙なバランスでブレンドされて美味しかった。
それだけでなく、飲めば飲む程に少しずつ、胸とハチの腹部がぐむぐむと大きくなっていく……。
呼吸も知らず貪っていたわたしだけれど、不思議と息苦しいなんて事は起こらなかった。どうも、腰の辺りから空気が取り入れられているらしい。
森の香りは、まるで清流のようにわたしの体から―心から不純なものを洗い流してくれる……。
「……ごちそうさま♪」
自我を取り戻したとき、わたしの目の前にあったのは、固くてとても食べれそうにないプレートだけであった。
そのプレートに、わたしはどこか見覚えがあった気がした。けれど―。
とくん、とくん。お腹がまた震えた。子供達がまだ欲しがっているみたい。腹が一回り膨らんだとはいえ、わたしもまだ、満足とは言えない段階だ。
『栄養』が……まだ『栄養』が足りなかった。
(エモノホシイエモノホシイタベタイタベタイタベタイ)
心の声に突き動かされながら、わたしは辺りを見回した。既に、わたしが発するフェロモンで周囲は黄金色に染まっている。そして当然―。
「―あ♪」
330:『無題』
08/10/03 00:31:34 jY7I4Sip
体長7mを遥か超える大きさの熊―キンググリズリーが、生まれたてのわたしの体へとのそり、のそりと近付いてくる。既に目は血走り、その息は荒い。
(―オイシソウ)
恐怖心など、全くありはしなかった。
ただ、目の前の熊のそのがっちりした腕が、引き締まっていそうな胴体が、太い脚が、たまらなく美味しそうな、『栄養』たっぷりの肉に見えたのだ。
羽根が、自然と震える。同時に、お尻の辺りで、何かむずむずするような感覚が走った。正確には、お尻の上に生えた、巨大な蜂の腹部の、その先端から―!
ぶしゅうっ、と湿った音が響くと同時に、先端から現れたもの、それは巨大な―針。
先端には穴が開いているらしく、粘液に混じって何か透明な液体が地面に漏れだしている。
「あ……あは……あは♪」
(タベタイタベタイタベタイタベタイタベタイタベタイ)
口からはだらしなく涎を垂らし、食欲に支配された本能に主導権を奪われているわたしは―次の瞬間には、相手の心臓と思われる場所を、針の一撃でうち貫いていた……。
―――――――
前の女王様の巣は、そこまで時間が経っていないせいか、また襲いかかってきた人間の兵士がここまで辿り着かなかったからか傷みは少なかった。
わたしがそのまま使っても何ら問題の無い様子だったので、そのまま使うことにした。
その中でも一際大きな空間を誇る女王様の部屋だった場所で……。
「んっ……あぐ……むむ」
わたしは仕留めた獲物を食らっていた。先程の熊の他にも、大蜥蜴、大蛇、など大型の生物を、他に三つほど。骨まで含め全て噛み砕いて飲み込んでいった。
全ての獲物を平らげたわたしのお腹は二回りも三回りも膨らんでいて、蜂の腹部に至っては、下手をしたらわたしの体よりも大きくなっているんじゃ無いかとすら思えた。
中にいるわたしの子供達は、今は眠っているらしい。春の日溜まりにいるような、心地よい波動がわたしに伝わってくる。
このまま微睡んでしまいそうな空気に身を委ね、素直に夢の住人になろうと、素直に目を瞑った。
そのまま、巨大化した蜂の腹部に身を任せて、眠り始めた……。
とくん……とくん……。
子供達の音に誘われるように、夢の世界へ誘われて―暫く経ったときだった。
どくんっ!
「!?」
突然、全身を揺らすような衝撃がわたしを襲った。夢を見ていた私を完全に叩き起こすほどのそれは―!?
どくんっ!
「!?あはぁっ!」
331:『無題』
08/10/03 00:32:40 jY7I4Sip
わたしのお腹の中から蜂の腹部全体にかけて、子供達が一気に蠢き始めた。
方向も勢いも全く定まることの無いその動きは、わたしの敏感な場所を頻繁に刺激することになり、処理できなくなった脳がオーバーヒートを起こしそうな膨大な快感が全身を痙攣させた!
そんな中、蜂の腹部の先端がくぱくぱと開き始め、何やら管状のものがむくむくと盛り上がり伸び始めている。
それに気付いたのか、子供達は我先にとその穴に群がろうとしているようだった。
「あ、あ、あ、ああ、あっ、あ!あぁっ、あん、あぁっ!」
今やわたしの体が二体くらい入ってもおかしくないほどに巨大化した蜂の腹部は風船のように膨れ、管は女王様の部屋の奥―卵の部屋へと一直線に向かっていった。
その間にも子供達はどんどん出口の方に向かっていく。はち切れそうな痛みを感じてはいたが、それと同時に、母性愛に満ちた喜びも感じていた。
そして、管の先端が卵の部屋の最奥へと行き着いた刹那―!?
にゅるぽぽぽぽぼぽぽぼぽぽぼぼぼ………!
「あぁいあああああぁあいいああああああああんっ♪♪」
濁流もかくもやらという勢いで、膨れた腹に集った子供達が出口を押し広げて、まるでウォータースライダーのように管の中を一気に滑り降り、そして卵部屋に産み出されていく。
管の中もまるで内臓のように神経が全体に通っており、擦れると気持ちいい。それが子供達が通り過ぎる間にずっと続くので―!
「あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………♪」
わたしは蕩けきった笑みを浮かべ、体をがくがくと震わせながら、ただ両胸と秘部から蜜を垂れ流していた……。
全て産み終え、蜂の腹部が元に戻る頃には、わたしは正気に戻っていた。
生まれてきた子供達が孵化するまでには時間があまりない。その間に、沢山の餌を作らないといけなかった。
そう、子供達もまた、お腹の中に居るときと変わらず貪欲なのだ。だから―。
「―ふふふっ♪」
わたしはフェロモンを全身から撒き散らしながら、すっかり日の暮れた森の中を縦横無尽に飛び回るのだった……。
―――――――
数ヵ月後、城塞都市は再び魔蜂討伐の命を下した。だが、新たな女王蜂の前に部隊は全滅。
その勢いに乗って、大量の魔蜂が都市に攻め込んだ。結果として―都市は滅んだ。
だが、不思議なことに死者は一人として見られなかったという……。
fin.
332:初ヶ瀬マキナ
08/10/03 00:35:28 jY7I4Sip
以上です。
スレ違いだったら済みません。
では。
333:名無しさん@ピンキー
08/10/03 00:42:59 kSQfCMLl
GJ!
蜂はなかなか外れのない題材だよな
334:名無しさん@ピンキー
08/10/03 00:43:42 kSQfCMLl
sage忘れOTL
ちょっと近所の森行ってくる
335:名無しさん@ピンキー
08/10/03 00:56:24 TVaAt8AN
マキナさんキター!!
いつも貴方のSSは大変楽しませていただいています
336:名無しさん@ピンキー
08/10/03 22:36:25 ikV6ik9r
GJイイ!(・∀・)
ところでワイバーン娘って「絹の様な肌」とか「天使の微笑み」とかの表現から可愛い感じは
伝わってくるけど、ここまでだと優しい性格って感じは余りしないよね。
337:名無しさん@ピンキー
08/10/04 01:02:12 RmnPznh0
蜂化ってエロいね、ってか~化って全部エロいんじゃねとか思ってしまうオレ
338:名無しさん@ピンキー
08/10/05 23:56:26 Xrorn822
よくある話ね
339:名無しさん@ピンキー
08/10/06 01:41:13 qdeh4Yfy
普通のエロでも全然ならないけど、他のものに変身するのはエロでなくてもすぐたってしまう...
340:名無しさん@ピンキー
08/10/06 10:18:23 XG+AK//e
俺も変身描写さえあればエロはいらん
341:名無しさん@ピンキー
08/10/06 13:01:15 2crrNzAY
変身だけで十分だと板違いじゃね?
342:名無しさん@ピンキー
08/10/06 17:51:47 o2Ni87zw
非エロの変身ものって該当スレあったっけ?まぁエロパロでも時たま非エロの物が混じったりはするけど。
もし無かったとしてここでの非エロ投下は、一言断りを入れたときの住人の反応次第だろうね。
343:名無しさん@ピンキー
08/10/07 09:06:06 VljBNi6m
エロ無しでも充分エロかったしね
確かに変身だけでエロく感じる私は末期
344:名無しさん@ピンキー
08/10/07 16:35:33 3gFvSsjs
変身という部分があるからこそこのスレが存在するんだけどな
人によってエロ要素を感じるとこは違うけど確かにここは飛びぬけて異端だ
345:名無しさん@ピンキー
08/10/08 05:05:07 qnd5Vd6A
ここは人型からかけ離れた変身のほうがいいのかな
346:名無しさん@ピンキー
08/10/08 07:01:43 DiTSYphx
人型でも問題ないと思う。いくつかそういう作品あるし。
347:名無しさん@ピンキー
08/10/08 07:02:54 DiTSYphx
……悪い、あげちまった。
348:名無しさん@ピンキー
08/10/08 11:51:36 qnd5Vd6A
レスありがとん
申し訳ないけど、他のスレに落としてしまったのです。
見かけたら、鼻で笑ってやってください
349:名無しさん@ピンキー
08/10/08 16:51:02 MoCV2fR3
どこどこ?
350:名無しさん@ピンキー
08/10/08 21:17:24 tWWVMDpd
成長スレかな
でもあれならこっちでもいいんじゃね?
351:名無しさん@ピンキー
08/10/08 22:37:23 FgnmMwSY
どなたかよかったらここと似た嗜好のスレをいくつか貼って欲しいです
ここのスレは楽しいけどこの手のスレッドで他にどんなのがあるのか知りたいです
352:名無しさん@ピンキー
08/10/09 00:01:47 tWWVMDpd
成長、改造、獣化スレくらいか。
二次創作はわかんね
353:名無しさん@ピンキー
08/10/09 00:41:34 r9HI8Hyv
擬物化も入るね
354:名無しさん@ピンキー
08/10/09 10:08:24 ZRrZoHOQ
寄生スレにもたまに体が変化するのが載るな
355:名無しさん@ピンキー
08/10/10 01:23:19 3bl8wq8x
人から獣化するのは需要有りそうだけど、人間形態から別の人間形態に変身するのは需要低いのかな。
魔界の女王ルシファーから人間界を乗っ取るべく魔界から派遣された7人の妖怪娘 (そろぞれ
ヴァンパイア、魔女、ウェアウルフ、雪女、サキュバス、デュラハン、 フランケン)が最初は
使命に従い人間界の乗っ取りを企てるんだけど、ひょんな事から人間の家に泊まりこむ事に。
人間と交流するうちに自分達のやる事が間違い だと言う事に気づき、そろぞれの能力を使い人間
を救ったりして共存する。背いた少女達を始末するべくルシファーは『七つの大罪』と呼ばれる
自身も含んだ7体の強力な悪魔達を従えて娘達の討伐と人間界の支配に乗り出し、双方の世界を
巻き込んで壮絶な戦いが展開される事に・・・
っていう小説考えたけど、どうやろ。妖怪娘達は普段は普通の人間なんだけど戦闘になると正体を
現わし、その際人間から人間(ウェアウルフだけ人間から獣人)に変化し、変化する事で戦闘能力
が上昇する。7体の悪魔達も、そのうちのベルゼブブ(人間→昆虫)ってやつとリヴァイアサン
(人間→海竜)ってやつら以外は基本的に同じ。こんな小説考えたけどやっぱ要らないか・・・
356:名無しさん@ピンキー
08/10/10 01:30:15 xCX9AdEA
設定だけ見せられても判らないから
SS投下して下さいなw
357:名無しさん@ピンキー
08/10/10 02:18:16 ziGm+Nj/
>>355
ストーリーはすごく面白い!コメディーっぽくても成立しそうだ
でもフェチ的な観点からだとイマイチだ
なぜならその娘達は正体が妖怪なんだから変身とはいえないのでは
その娘達が暗躍して普通の人間の子を妖怪に変えるのなら話は別だが
358:名無しさん@ピンキー
08/10/10 05:35:42 qW2OLFo6
いいんじゃね?
ただどうしてもっていうならその娘たちは元は人間で、魔王に力を植え付けられて軍門に下るも、心までは失ってなかったとか
359:名無しさん@ピンキー
08/10/10 07:53:02 0Nw+QKUL
デビルマン(アニメ版)設定ならどうか。
360:名無しさん@ピンキー
08/10/10 12:36:24 EWuStmW1
変身といえば風祭文庫
URLリンク(www2u.biglobe.ne.jp)
361:名無しさん@ピンキー
08/10/10 13:02:29 brBgkxrA
個人のサイト晒すとかマジキチ
362:名無しさん@ピンキー
08/10/10 13:29:25 /AaJeELd
>>360 馬鹿なの?
363:名無しさん@ピンキー
08/10/10 15:19:59 FDMcLjlw
懐かしいところだ
そういえばココだったか忘れたけど若者の間で変なドラッグが流行って
それをやると蜂になってしまう話が面白かったな
364:名無しさん@ピンキー
08/10/10 16:02:53 KLKIxEQN
>>357もともとの正体が妖怪だから、人間から妖怪になるのは変身って呼べないのでは
変身前も変身後も同じ妖怪なんだけど、変身する事で服装や身体の一部が変化して、
能力が強力な形態になるとかにするのはどう。「本気モード発揮」みたいな。
概念としてはちょうど戦隊物のヒーローが変身するような感じ。どうかな?
普通の人間の子を妖怪に変えるのは悪役がやろうとしてる「人間界の乗っ取り」
みたいだから微妙。
365:名無しさん@ピンキー
08/10/10 18:30:49 5rRSi/j8
366:名無しさん@ピンキー
08/10/11 01:31:13 BAwaJIrs
他人に趣味の押し付けマジでキモイ
367:名無しさん@ピンキー
08/10/11 02:03:02 Xvbq1m7B
>>355
そういうネタ(擬態/普段は普通の人間なんだけど~)は好きだけど、
スレの趣旨にあっているかはわからんなぁ
むしろ戦隊モノっぽいような
368:名無しさん@ピンキー
08/10/11 02:46:06 1pXGxT7K
>>364
あなたの書こうとしてるものは確実にスレ違いです
迷える子羊をどなたか誘導して差し上げて
369:名無しさん@ピンキー
08/10/12 05:14:56 W6hI1VcD
どうしよう書いちゃった・・・(´;ω;`)スレ違なら投稿しないでおきます。
ちなみに>>364は僕じゃないよ。
370:名無しさん@ピンキー
08/10/12 06:10:01 vtzzKjnS
落としてみるがよろし
371:名無しさん@ピンキー
08/10/12 11:08:11 jdSNPzs6
んだんだ
372:名無しさん@ピンキー
08/10/12 12:34:31 koCvs78W
ライブオン、ゲーム外でもカード使えば変身できるのがいいな
373:名無しさん@ピンキー
08/10/12 15:58:07 ZZ791Zru
>>369 マダー?
374:名無しさん@ピンキー
08/10/13 00:10:41 Rsk3uk6N
とりあえず落としてみてから判断したら?
375:名無しさん@ピンキー
08/10/14 03:18:51 n2L5bnZU
ここは投下してから判断するインターネッツですよ
376:名無しさん@ピンキー
08/10/14 08:47:04 hGNfYwtF
餌をみた鯉のような住人ですね
無論私もw
377:名無しさん@ピンキー
08/10/15 11:27:19 WvRGpzN9
性転換要素はやっぱりスレチガイだろうか
ショタ男→人外の人型女戦士というのを今書いてるんだけども
378:名無しさん@ピンキー
08/10/15 13:02:26 MGds5KI1
スレ違いかどうかは判らないが、その内容には興味ある
379:名無しさん@ピンキー
08/10/15 19:45:10 bByxGyrJ
かまわん、やれ!
380:名無しさん@ピンキー
08/10/15 21:41:10 iINo32iX
おまいらなんでもいいんだな
381:名無しさん@ピンキー
08/10/15 23:42:33 4URUacNm
>>377
TS(性転換)自体は含まれててもOKだと思う、注意書きありなら尚更。
そういう要素のある作品数本上がってるし。
382:名無しさん@ピンキー
08/10/18 09:21:48 Cb4t/Atl
悪堕ちスレにいったか?
383:名無しさん@ピンキー
08/10/18 17:34:29 b37atFn/
いえ、まだどこにも落としてないです。今手直し中ですので。
しかし変身後の人外要素が薄いので、別スレ向きかなと思案中です
384:名無しさん@ピンキー
08/10/18 17:50:12 Cb4t/Atl
もし別スレいきなら告知ヨロ。
385:名無しさん@ピンキー
08/10/18 20:11:01 b37atFn/
一応こちらに落としてみます。性転換注意です(少年→天使というか戦乙女?)
NGは「湖畔の守護者」でお願いします
386:名無しさん@ピンキー
08/10/18 20:12:23 b37atFn/
その街は、湖の畔にあった。
規模こそあまり大きくないものの、肥沃な土地のおかげで作物は実りやすく、
また王の都へ向かう街道の宿場としても良い位置にあり、国すべてを見渡しても
なかなかに豊かな街であった。
しかし、その街は同時に、人ならざる魔性の者たちが引き寄せられる街でもあった。
湖が魔の力を帯びており、それに惹かれるのではと噂されていたが、真偽のほどは分からなかった。
歴代の領主は騎士団を増強し、民衆からも兵を募るなどするものの、度重なる魔物の襲撃に頭を痛めていた。
そんな時、北からやってきたという一人の旅人が領主にこう言ったのだ。
ここに住まう事を許していただければ、魔物から街を守りましょうと。
領主と旅人は契約し、それ以来、魔物は姿をみせなくなった。
「ボルスト湖の旅人の伝説」より
387:湖畔の守護者
08/10/18 20:14:29 b37atFn/
少年はいつものように、書物に囲まれながら、一冊の本を開いていた。
年季の入った本棚が壁を覆い、革表紙の厚い書物がぎっしりと並べられている。
天井から吊り下げられた、電球タイプのシャンデリアが、部屋全体を黄白色に
染めていた。
ぺら、とページをめくる音が、書斎の空気に溶けていった。シャンデリアの
明かりだけでは文字を追うには少々足りないが、机の上の読書灯がしっかりと
照らしてくれるので、さほど問題はなかった。
突然響く、ノックの音。少年は本から顔をあげ、どうぞ、と声を上げた。
「やはり、こちらでしたか」
これまたアンティークな雰囲気の扉を開けて、純白のドレスを纏った一人の少女が姿を見せた。
色白の肌に、美しい金糸の長髪。十代半ばといった雰囲気には少々不釣合いな、しっかりと存在を
主張する胸。そして─背中から生えた、純白の一対の羽。人のものとは思えないような美しい造詣の
顔立ちと相まって、伝説にある天使のようだった。
「どうしたの?」
問いかける少年は、机の前に立つ天使の少女よりさらに若い。ようやく二桁に届いたかのような
幼い顔立ちに、少女ほどではないがやはり白い肌。対照的な真っ黒いローブを纏い、魔法使いという
言葉が似合うような雰囲気だった。
「…現れました」
はあ、と少年はため息をつく。
「今夜は、ゆっくり過ごせるかと思ったんだけど」
ぱたりと本を閉じて、席を立つ。
「今日は、シーナだったね」
「はい、私です。<融合>を済ませてから行きますか?」
「その方がいいかな。人に見せるものでもないしね」
「エリウス様の仰せのままに」
少女─シーナが一礼する。少年─エリウスは彼女の前に立つと、二人は向かい合う。
すると突然、二人を中心に風が吹き始めた。
388:湖畔の守護者
08/10/18 20:16:35 b37atFn/
閉じた本の表紙が開き、ぱらぱらとページがめくれる。エリウスのローブとシーナのドレスがばさばさとはためく。
二人は気にもせず、軽く目をつぶったまま、エリウスが口を開いた。
「盟約を基に乞う、魂ひとつになりて、我に力を貸さん」
歌うような、独特の符丁。最早使うものも無くて久しい、古の言葉。
シーナが右手を、彼に差し出す。エリウスはその手を取ると、甲に軽く口付けを落とした。
迸る閃光。
直視も難しい、眩い光にシーナが包まれて。そのまま一歩、また一歩とエリウスに近づく。そして未だに目を開かない彼を、
ぎゅっと抱きしめる。
先ほどとは比較にならない光が溢れ、爆発する。次の瞬間には風がやみ、書斎は元の薄暗さを取り戻した。
そして、あの風の中心にいた二人は、エリウス一人になっていた。着ていたローブは光に溶けてしまったのか、肉付きの
薄い裸身を露にして、肩で息をしながら立ち尽くしていた。
思春期直前の、ほっそりとした体つき。体毛もほとんど生えておらず、肌は男女の性差をそれほど意識させない。
しかし下腹部の彼自身は、歳相応とはとても呼べないほどに大きくいきり立ち、顔つきとのギャップを感じさせた。
「う、うああ…」
顔を歪めて、肩を握り潰さんばかりで抱くエリウス。体の中で何かが燃えているような熱さが、全身に広がっていく。
彼はこれが自身の魂がシーナのそれとひとつになり、作り変えられていく熱さだと知っている。
「かはああっ、くう」
怒張した男根がわずかに震えると、白濁液を放出しはじめた。数度の放出でも収まることはなく、びくびくと蠢きながら、
尽きることなく湧き出していく。それは自身から睾丸を伝い、真紅のカーペットに落ちてゆく。
「あがああああっ!」
突如襲った甘い痺れ。ついに耐え切れなくなった彼は、床に膝をつくと、体を弓なりに反らして震えさせた。本格的な
変身、いや<融合>が始まったことを知る。
389:湖畔の守護者
08/10/18 20:18:50 b37atFn/
ぶら下がる睾丸の付け根がざわざわと波打つと、周囲の皮膚が、その下の肉が蠢いて形を変えていく。うっすらと窪みが
出来上がると、それは深くなり、隙間へと変化していく。
「はあっ!んああああっ!」
低めのエリウスの嬌声は、少し高くなる。色素の薄いプラチナ・ブロンドの髪がざわめくと、僅かにボリュームを増していく。
歪んだ表情はすでに、苦痛以外の色で染まっていた。
「ひぁ、あ、ああ、あああ…」
目じりに浮かんだ歓喜の涙が、頬を滑り落ちていく。すっかり成長した股間の「隙間」は妖しく震えると、睾丸の片方を
吸い込むようにして飲み込み始めた。性器を歪にゆがめられていく痛みと、それを上回る快楽に、エリウスはさらに
高くなった声を上げた。
「あつ、い、いい!くはあっ!」
片方は完全に飲み込まれ、もう片方も半分以上が埋没している。やがてそれも完全に埋まってしまうと同時に、男根がまるで
それを祝うかのように盛大に精を吐き出した。
睾丸を飲み込んだ「隙間」はひくひくと震え、白に薄く色づいた液を滴らせる。体の中に飲み込まれた睾丸が、左右に分かれて
移動しながら、少年、いや男性にはありえない器官へと形を変えていくのをエリウスは感じた。
「ひき、かあ、ひゃ、あっ」
すっかり、少女のものと化した喘ぎ。肩幅が少し広がって、腰周りが質量を増していく。髪はすでに肩までになり、色が明るさを
増していった。
肉棒が急速に縮み始めると、両脚の変化が始まった。凶悪さを失いながら、歳相応のものへ、さらにその下になっていくのと対照的に、
肉付きの薄かった太腿が太りはじめ、成長していく。足がすらりと伸びていき、それに合わせるように、上体も伸び始めた。
「うあ、はあ、ああん!」
男根はもう小指の先程にまでになり、精を吐き出すこともできなくなっていた。そのまま隙間へ飲み込まれると、陰核に成り果てる。
その周囲が再び蠢いて─
少女の秘裂が、完成した。
390:湖畔の守護者
08/10/18 20:20:18 b37atFn/
少年から少女へ。思考、理性、記憶、魂そのものが混ざり合い、溶け合う。そして、エリウスでもシーナでもない、全く新しい人格が形作られる。
二人の中に内包されていた魔力が漏れ、再び旋風が生まれた。彼、いや、彼女を中心に渦巻くそれは先程よりも威力を増し、書斎を倒壊させるほどに
なっていたが、どういう原理なのか、それは彼女の周囲にのみ限定され、机の上の手紙などが吹き飛ばされることはなかった。
強大なその力は、それを行使しやすいように、彼女の体をさらに適した形へと作り変えていく。
「んぁ!ひう、ひゃあああっ!」
薄い胸板が少しづつ盛り上がり、膨らみを形作りはじめた。その先端も少年のものから少女のものへ、そして大人の女性のものへと膨らんでいく。
頭髪はゆるやかなウェーブを描き、腰に届く直前で止まる。色が明るさを増し、シーナのような美しいブロンドに染まる。
腰が引き締まり、くびれとなって現れると、臀部の肉付きが増し始めた。繊手の指も伸び、女性的な細さを匂わせる。幼い顔つきは、その中性な印象を
上塗りしながら、整った女の顔に変わっていく。見開かれた濃緑の瞳は、わずかな間に底の見えない澄んだ青に変わった。
少し前まで、思春期前の男の子だったと誰が信じられるだろう。彼の外見はすっかり、10代後半の女性へと変わり果てていた。
それでもなお、変化は止まらない。
「ひぃ、ひぁ、はぅ、んひ、くは」
両足はすっかり伸びて、細くも力強い、相反する雰囲気を纏っていた。太腿は魅惑的な柔らかさを持ち、ようやく変化が止まる。未だ尻の柔肉は成長を
止めず、さらに豊かになっていく。それは胸も変わらず、すでに彼女の両手では納まりきらないほどに溢れながらも、垂れ下がることはなく、ますます
瑞々しく成長していく。男の象徴はすっかり女の象徴に成り代わっていたが、花開くことはなく幼く閉じられたまま、彼女が変身の快感に喘ぐたび、
秘蜜を吐き出していた。
腰周りは美しい凹のラインを描き、神が手がけた彫刻のような神々しささえ漂う。両耳は先端がわずかに尖り、人ならざるものへ変わり果てつつある
ことを物語る。
391:名無しさん@ピンキー
08/10/18 20:24:22 b37atFn/
「はぁ、ああ、ぼ、ぼく、は…」
突如声が、エリウスのものに戻った。麗しい大人の女になったその顔は、体が変容する、常人ではとっくに
崩壊しているほどの凄まじい快楽に悦び、溶けきっていた。
「わ、わたぁ、しぃ、は、ぁ…」
次に口から漏れたのは、熱に浮かされたようなシーナの声。溶け残った二人の人格が入れ替わりながら、
完全に境目を無くして行く。
背中の一部、腕の付け根あたりの白い肌の下で何かが生まれた。それはもぞもぞと蠢きながら、背中を
破らん勢いで盛り上がっていく。耐え切れなくなりつつある肌が異様なほどに張り詰め、すこし裂けた。
しかし鮮血が溢れ出ることはなく、代わりに姿を覗かせたのは、純白の羽根。体の内側から出てきたにも
関わらず、一片も赤に染まっていない、シーナのもののような羽根。
「「あああああああああああああ!」
両の二の腕をきつく抱いて、背中を弓そらせる。二人の声が同時に吐き出されながら混じり合い、ハスキーな
印象の女性の叫びとなる。二人が完全に融合を終えた瞬間だった。背中の裂け目は広がっていき、大きな羽が
一対、ばさりと勢いをつけて広がった。
そこで魔力の風はやみ、書斎に再び静けさが戻った。風の中心には、エリウスでもシーナでもない、別の存在が
膝をつき、深く息を吐いていた。
緩やかに流れる髪は、人のものとは思えないほどに綺麗な金色で。女性的な曲線を豊かに描くその裸身は
成熟した若さと神聖さに溢れ。
人間味を感じられない、恐ろしい程に整った顔は上気し、背中を破った白翼の幅は、長身な彼女の身長をも
超えるほどに大きい。
「ふぅ…」
息を吐いて立ち上がった彼女は、軽く背伸びをしたあとに、何事かを呟いた。それは人間には理解できない、
天に住まう者たちのものだった。
392:湖畔の守護者
08/10/18 20:26:59 b37atFn/
「くぁぁ…」
力の奔流が、彼女を包む。強大な力を帯びて性質が変わり、絨毯に染み込まないまま足元に広がっていた、
粘ついた白濁の水溜り─彼と彼女が散々放出したものだ─が震えると、まるで意思をもったかのように
白い素足に纏わりつき、登っていく。指先から膝へ、無毛の秘所へ、ふくよかな尻へ、腰へ、胸へ、腕へ。要所を
覆いながら取り付くと、姿を変えていく。
「完了、か」
わずかな時間で、彼女の言葉通り、全ては終わった。
足先と脛は鎧のようなもので覆われ、脛の半ばまである長めのスカートがはためいた。臍から胸はプレートに守られ、
豊かな双丘を覆い隠す。手袋の上に篭手のようなものをつけている。その手にはいつの間にか、彼女の身長と
同じくらいの大剣が握られていた。そのすべてが純白と純銀を基調に彩られ、それはまるで天より舞い降りた天使、
いや─
「行くか。封印されし戦乙女の力、たっぷり刻み付けてやる」
机の後ろ、両開きの窓が、見えない力で押し開けられた。背中の羽を羽ばたかせると、彼女─戦乙女はふわりと宙に浮く。
「赤い月か。奴らにうってつけだな」
呟きを残して、夜の闇を白銀の一閃が飛び去った。ふわりと舞う一枚の羽根。
それは不気味に紅い月に照らされてなお、白く輝いていた。
遥か昔、この地を訪れた旅人は、3人の僕を従えて、安住の地とする代わりに、人に仇なす魔性のものを切り捨てる。
領主は市長に、共に戦う騎士は警察や州兵に変わった現代でも、契約に基づき、街を守っているという。
393:名無しさん@ピンキー
08/10/18 20:30:25 b37atFn/
終わりました。いろいろな意味で\(^o^)/オワタ
中二病丸出しで、いろいろ切り捨て過ぎて分かりづらくてすいません。
しかもぜんぜん異形じゃないですし…時々題名入れ忘れましたし。
スレ違いのようでしたら謝罪します。すみません。
394:名無しさん@ピンキー
08/10/18 20:59:31 96+46Fhd
TS、若返り成長スレの住人でもある俺には何の問題ない。
GJ!
次はNTRもまぜてください。
395:名無しさん@ピンキー
08/10/18 21:01:35 Cb4t/Atl
続きが気になるぞい!
396:名無しさん@ピンキー
08/10/19 10:53:32 /fudhpVP
ふぅ・・・
397:名無しさん@ピンキー
08/10/21 18:54:40 sd5xV8MZ
まぁ・・・
398:名無しさん@ピンキー
08/10/22 12:59:33 7YqAmnQH
はん………♪
399:名無しさん@ピンキー
08/10/22 20:05:33 +y0iodXh
アッー!!
400:名無しさん@ピンキー
08/10/23 12:12:44 uhc/Gtar
>>393
GJ!丁寧な視覚的描写でかなりイメージしやすかった。あんまり濃すぎなくて読みやすいし。
神格化も確かに人外化だなぁ。面白かった。
401:名無しさん@ピンキー
08/10/25 20:19:32 VUW9WkF2
保守
402:名無しさん@ピンキー
08/10/28 20:38:23 7/Dc40aH
>>393
面白かったのでそれでいい
403:名無しさん@ピンキー
08/11/01 16:36:32 uY/OqW38
過疎
404:名無しさん@ピンキー
08/11/01 22:40:39 TW4xarnh
いつものことさ~♪
405:名無しさん@ピンキー
08/11/04 22:15:10 glDYAJkV
過疎~ ライバルの連載してるきつねの嫁入りってマンガが設定気に入ってたり
406:名無しさん@ピンキー
08/11/05 23:34:27 csqE0MC3
ここって変化のみはNGなのかね
407:名無しさん@ピンキー
08/11/05 23:35:50 XcF+qGFG
H抜きってことか?全然おkじゃね?
408:名無しさん@ピンキー
08/11/07 12:26:50 3WH+jn2F
ただ、ネタが秀逸・ツボであるほど
変身後のストーリーを聞きたくなる罠。
つまり
ツヅキマダー?
である。
409:名無しさん@ピンキー
08/11/12 07:26:14 lrd2Lvyk
保守
410:名無しさん@ピンキー
08/11/13 01:32:52 Me89SItE
マリベルがくさったしたいに転職して3日が経った。
まるで資格ゲッターのごとくモンスター職を極める彼女にとっては
モンスター職の職歴はコレクションのようなものだった。
しかしくさったしたいだけは別だったようだ。
まず転職したその日の夜に身体から今まで嗅いだことのないような
異臭がするようになった。
風呂に入ってもすぐに臭いは復活してしまう。
これは問題だと次の日ダーマ神殿に行きすぐに転職したいと申し出たが、
どうやら今回使ったくさったしたいの心は呪われており、
すぐには転職できないらしい。しかも呪われている心は非常に私怨が強く、
使用者の身体にも影響を与えるとのこと。マリベルは怒り狂ったが、
どうにもできない事実を知らされ、その場で泣き崩れた。
マリベルの身体は徐々に変色し始め、白い健康的な肌は少しずつ灰色がかってきた。
身体の腐敗を止めるすべはなく、ただその変化に身を任せるしかない。
3日目を迎え、マリベルの腐敗はさらにひどくなった。
身体から発する異臭はもはや激臭であり、
他のメンバーも近くに来てくれなくなってしまった。
皮膚は灰色に変色し、紫色の血管が身体中に浮き出ている。
顔の筋肉も弛緩しているため、表情を作ることができず、
口を閉じることができない。口の端からは絶えず唾液を垂れ流してしまう。
頭の周りにはつねに蝿が飛び回り、最初は気にしていたが、
今となってはまったく気にならなくなってしまった。
このまま私はどうなってしまうのかしらなどと考えながら、
マリベルははるか先を行くパーティーの背中を見つめていた。
411:名無しさん@ピンキー
08/11/13 02:17:59 EhNSI45I
ワンレスで終わりかな?変身後の悲惨さがいいね、GJ!!
ドラクエかぁ。魔物の心のドロップ率がもう少し高ければもっと良かったと思うんだ。
確かマスターするとグラフィックがそのモンスターになるんだよね。
モンスター職かつ転職出来ない、という要素で、
戦わないといけないのだけれど、戦えば戦うことに職を極め、人間らしさを失っていく、
なんていう設定が思いついた。
412:名無しさん@ピンキー
08/11/13 02:46:21 GxSL+ln0
マリベル「かゆ・・・うま・・・。」
413:名無しさん@ピンキー
08/11/13 05:18:56 Me89SItE
「マリベル、あのさ、言いづらいんだけど、このままじゃ、その、なんていうか・・」
パーティーを代表して主人公がマリベルに戦力外通告を告げようとしている。
もう今となっては怒る気力もない。
「い、イイわ、、こっチかラぬ、ぬけて、アげル・・」
わざと意気がって言った台詞だったが前のようにうまくしゃべれず、
パーティーは憐れむような目でマリベルを見た。
「ごめん・・」
そう言い残して主人公達は去って行った。いいわ。許してあげる。
私だってあんたの立場だったら、迷わずその場に置いて行くし。
それにこれ以上こんな姿、見られたくないしね・・。
マリベルは涙が出そうになるのを必死にこらえたが、
一粒の涙が感情を決壊させてしまった。
でも、これってひどいよ。私の辛さもわかってよ!好きでなったわけじゃないのに。
みんなと楽しく旅したかっただけなのに・・。
このままじゃ家にだって帰れないじゃん・・!
もう、人間には戻れない・・。もう・・このまま・・。
マリベルは道の真ん中でむせび泣いた。
この・・まま・・。
泣き疲れ、マリベルはその場で眠ってしまった。
ぐぎゅるぎゅる。
お腹空いた。そういえば私、何も食べてない。死んでもお腹空くなんて、変ね。
あれ、なんかおいしそうな匂い、こノにおイ、おいしソう・・。
ふいに鼻をついた匂いが、マリベルの頭を支配した。
コッちカらすル・・たべたイ、こレ、タべたイ!
マリベルは無意識のうちに音を立てないよう匂いのする方に
四つん這いで駆け寄っていた。
森を抜け、100メートル程先の泉に、一人の女性がいた。
あれダ!アのニンゲン!
マリベルの口から生温かいよだれがだらだらと滝のように流れ出す。
目がギラギラと輝き、身体は獲物を見つけた喜びで力が満ち溢れてくるようだ。
音を立てないよう、女性の背後に少しずつ回り込む。ゆっくり、ゆっくり・・。
いまダ
マリベルは一瞬のうちにじょせいの背中に飛び付いた。
414:名無しさん@ピンキー
08/11/13 05:35:15 Me89SItE
続き書こうと思ったけどもう無理だ・・。ごめんなさい
415:名無しさん@ピンキー
08/11/13 08:17:29 SYznt1RU
いやいや、短いながらも中々の冴えでした。GJ.
416:名無しさん@ピンキー
08/11/13 22:31:37 JSpzAI1N
堕ちっぷりがなかなか……
ギガミュータントとか魔人ぶどぅとかぶよぶよ醜いモンスターでもありだな
417:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:50:56 qkyqp4mD
>>414
たつんだ、ジョー!
凄絶なオチをどうか頼む!
418:名無しさん@ピンキー
08/11/15 03:32:53 1hqYXOcq
>>355の自分が帰ってきました。プロローグだけ書けたのでウプします。このスレの需要に
合わせて変身シーンを入れてみましたが、この後しばらくは無いかもですm(_ _)m
―「序章」―
人間達が平和に暮らす世界の裏。誰もが気付かなぬ場所で、彼らが記憶し得るよりも遥か以前の
昔から、別の世界が動いていた。陽の光が決して届く事の無い闇の世界。辺り一面が闇に包まれた
漆黒の世界。この地に陽が登ることは無い。それはこの地に棲まう者誰もが記憶に留めている限り
の大昔からそうだった。一説にそれは、背いた魔軍達を追放した神が彼らに与えた罰の一つである
とも言われていたが、異世界の住人にとってそんな事はどうでも良かった。この地に人間なる者は
いない。人ならざる者――魑魅魍魎達の跋扈する世界。人間がこの地へ出向く事は無くとも、そ
の逆は昔から行われていた。彼らは時に、出現した地域と時代に拠って時に悪魔として恐れ、時に
幻獣として、時に妖怪として――世界の各地で語り継がれてきた。
ある者は彼らを仇なす存在として恐れ、陰陽道や魔女狩り等の手段を用い、古来より東西各地で
駆除を行った。また、ある者はそれを戯言だと笑い一笑に吹かした。そしてまたある者は彼らを神
格化し、崇拝の対象としたりもした。しかし人類の歴史で「産業革命」と呼ばれる時期を境に彼ら
の実在を信じる者は次第に減っていった。しかし人間の崇拝対象が、霊物から科学へと移行した今
もなお、「人ならざる彼ら」は時に人の形を取り、人間の日常へと紛れながら、昔と変わる事無く
この世へと渡り歩いていた。そんな中、未知なる異界と人間界との交わりが、双方の世界に棲まう
誰もが予想だにしない場所で、密かに起きようとしていた。
―そんな二つの世界の交わりを描いた物語―
どこまでも広がる闇夜という余りにも漠然とした世界に、見渡す限りの広大な大地が広がる。どこ
までも広がるブナやオークの原生林を進んでいくと、ようやく開けた地が現れる。その地には剣や盾
を持った無数の骸骨達が散らばっていた。どれも頭蓋や肋骨を粉々に砕かれており、その中で完全な
姿を留めている者は無かった。その様子は禿鷹が兵士達の死肉を啄ばんだ後の戦場跡とでも言うに相
応しかった。その遥か上空には、まるで中世の城塞都市を髣髴とさせる建造物が、それが立つ周りの
土地ごと地面から切り離された様な形で空中に浮遊していた。その中で、一つの重大な儀式が行われ
ようとしていた。
419:名無しさん@ピンキー
08/11/15 03:44:32 1hqYXOcq
神殿の外側へとせり出した縁からは、暗くも晴れ渡った闇夜と下界を一望できた。頭上に広がる漆黒の
闇には満天の星が散りばめられていたが、これは夜でも無ければ昼でも無い。常に陽の昇らぬこの地に昼
と夜の概念は無かった。とそこへ、空気の振動と共に鳴り響く、重く低い振動音が静寂を壊した。不気味
な羽音を立てながら舞い降りたのは、象ほどの大きさはある巨大な蝿だった。
翡翠を灯す複眼、細長く毛の生えた三対の脚は腕の様に組まれ、黒光りする甲殻に包まれ、空中で煽動
する一対の羽には髑髏が浮かび上がっていた。見る者に怖気を誘うその異形は神殿の縁へと静かに足をつ
けた。降り立った大重量に反して小さな振動が沸き起こると、その巨大な蟲の輪郭が崩れ無数の小さな蝿
の大群となった。蝿の大群は神殿の迫り出した空間に群がり黒い柱を作る。それは見る間に人の輪郭を形
作り、一瞬にして女性の形を作ると残った蝿達は風に吹かれた砂塵の様にしていなくなった。蝿の降り立
ったその場所にはスーツとスカートに身を包み、首には蝿の群と同じ漆黒のスカーフを巻き、プラチナの
混じった淡い金髪、透き通るような翠眼を持った、妙齢の美女が現れた。前の異形とは対照的な、抜群の
容姿と美貌を持つその美女の白く細長い左脚の太腿には奇怪な黒い紋様が入れられていた。蝿の群が去っ
ていった後で女は待っていた先客へ口を開いた。
「不在がちなあなたが自ら魔王宮に出向くとは・・・奇妙な事もあるものだねぇ。」
妙な抑揚の効いた女の声が静寂を破った。女性が声をかけた方角にはダークスーツに身を包み、プラチナ
ブロンドの髪をした長身の男が、闇夜を見渡す神殿の縁に屹立していた。着崩した群青のシャツの肌蹴た胸
元の右側にはやはり、刺青された黒い紋様が浮かび上がった。口元に浮かべた凄みの効いた笑みや、鋭過ぎ
る視線はこの男に只者ならぬ風格を与えていた。何よりも不思議な事に、皺一つ無いこの男のスーツは綺麗
なまでに乾いていたが、まるで今まで海に潜っていたかの様に全身から強い海水の匂いが漂っていた。皮肉
が入り混じった女の声に、グラサンの男はふんと鼻を鳴らし、どこからかタバコを取り出すと、低く太い声
で苦笑しながら女の声に答えた。
「久々に、我らが盟主様直々のご命令が下った。たまには我らが盟主にごまをすらねば、『七つの大罪
(セヴン・デッドリー・スィンズ)』としての地位も危うくなるからもしれんからな。会合が近いという
のに、貴様こそ何をしていた。」
言い終えると男は持っていたタバコを口に咥える。それと同時に、ライターも使わずそれは不気味な
深い蒼色の火を灯した。闇夜に揺らめく炎は深い蒼色をしている。その不気味な色は暗く冷たい深海か
何かを彷彿とさせた。一息吸うと、男は吐いた。潮の香りと混じった煙の匂いが漂う。
420:名無しさん@ピンキー
08/11/15 03:50:11 1hqYXOcq
「他の連中を呼びにやったのだけれど。他の任務に精を出してる熱心な仕事馬鹿と、相も変わらず
実験室に籠もってばかりの研究に命かけてる奴との二人は来ないみたいだねぇ。」
男の問いに女は応えた。
「ふん。お堅い生真面目主義者と、頭がいいだけの変わり者とがか。まあ良い、いずれにしても
七柱全員が揃っての活動などここ数百年無い事だからな。七大魔王が揃わぬとて、会議に不備が
生じるという訳でもあるまい。とにかく、揃ってる連中だけで事を片付けるとするか・・・」
男は誰にともなく呟く。傍らに佇む美女は、それまで指を伸ばしたまま組んでいた腕を解くと、
左手で金髪を掻きあげた。しなやかな細い指が女性の金髪の髪に沈むと、それは幾筋もの細い流
れを作った。
「そうね、始めましょう。」
星の散りばめられた静粛な夜空を一瞥すると女は闇夜に背を向け、神殿の内部へと踵を返すと、
緩慢な、しかし屹然とした足取りで神殿の奥に向かう通路へと消えていった。苦笑する様に銀髪
の男は肩をすくめると、咥えていたタバコを指で挟み、下へと放り投げた。それは燃え尽きた花
火の様に、幾つもの蒼い火粉となりながら、吸い込まれる様にして闇へと消えていった。男はそ
の方向に視線を落ろし、闇の奥底に散らばる白骨群を一瞬満足げに鑑賞すると、女が消えていっ
た神殿の内部へと続いた。
静かな神殿の内部に二人の足取りだけが響く。漆黒の水晶の様な床にその姿を正反対に写し出さ
れながら、異様な雰囲気を放つ二人は、神殿深部の一室へと向かっていった。
静かな夜――ならざる、魔界の一時であった。
To be continued...?
421:名無しさん@ピンキー
08/11/15 03:55:33 1hqYXOcq
プロローグ以上です。良く見たら誤字脱字や文法的におかしい所がありますね。
恐縮ですがそこは脳内変換して読んで下さい。
酷い文章で恥ずかしいですが、試験的にここまで書きました。今のところ世界各地
の神話・伝説に出てくる悪魔や精霊、妖怪、幻獣やUMAなどのモンスターを登場させ
る予定。『七つの大罪』以外のモンスターでは他に死神、メドゥーサ、ミイラ女、
ヒドラ、ケルベロス、ドッペルゲンガーなどが・・・登場予定だったけど続けていく
自信がないorz もし書き続けるとしたら、世界観がシャナでキャラがロザバンみた
いな感じのお話になると思います。シャナ読んだ事ある人は見覚えある表現とかあるかも;
422:名無しさん@ピンキー
08/11/16 04:23:33 KrIeSDH9
>>413の続き
やめるとか言ってこうして続けたりするのよくないと思うけど、
すみません書けるとこまで書いてしまいました
マリベルと別れて一ヶ月が経った。
旅を続けていた主人公一行であったが、
やはり完全にマリベルのことを忘れることはできなかった。
仕方なくマリベルと別れた場所の最寄りの町までルーラで戻ってみると、
そこはまるでひと気の無い廃墟の町と化していた。
村には魔物が溢れかえり、旅で鍛えた主人公達も苦戦するほどの強力な魔物ばかり。
町の中央には以前無かったはずの穴が開いており、中は深い洞窟になっていた。
暗闇を進むにつれ、闇の気配が強くなっていく。
それと共に、思わず鼻を覆いたくなる程の、強力な異臭が強くなっていく。
辿りついた最奥部は広い空間になっており、中央に玉座のようなものが。
そしてその玉座に座る者こそ・・。
「遅かったじゃないの」
よく通る声。昔よく聞いた声。懐かしい声。でも、全く違う声・・。
主人公は目の前にバッとたいまつをかざした。そこにいたのは、
「マリベル・・」
「おかえり」