08/08/11 19:22:05 7RH1453v
泉から出た少女は身体を振り、身体に付いた水滴を跳ばすと服を纏った。息を整えると少し離れた、
開けた地へ向かって静かに、と同時に力強く歩んで行く。目的の場所へ付くと、しばらくそこに立ち、
身体に陽射しを受けながら天を仰ぐ。直立したままの姿勢で二対大きく息を吸うと、少女は全身に
力を込めた。晴れた空には風が湧き起こり、周辺の木々が微かにざわめいた。次第にそれは強くなり、
穏やかに靡いていた少女の美しい桜色の髪は風に吹き上げられて逆立つ。少女は自分の中に眠ってい
る強大な“力”が全身へと解き放たれていくのを感じた。それは余りにも強力で、そして時に危険で
ある故、普段は少女の姿の中に封印してある力だった。それは非力でしかない少女に無限の強さを・・・
この森で生き抜く為の強さを、そして弱者を救うための強さを少女に付与してくれる力だった。
やがて全身に熱いものが走り内なる力を覚醒を終えたの感じると、少女の服は透け始めて肌と一体
になり、身体は明るい桜色の光に包まれた。光の中で少女の姿は静かな、しかし大きな変貌を遂げて
いった。華奢で丸みを帯びていたか弱い少女の輪郭が次第に角ばり、身体の筋肉は急速な増大を始めた。
白く柔らかだった肌には鋼の様に硬く、少女の髪と同じ桜色の鱗が生え揃う。太くなった腕の後方に
膜が生じると、それは大きく広がり翼を作った。尻のあった場所には巨大な剣とも取れる長く鋭い尾
が現れそれは鞭の様にしなった。小さかった口は耳のあった辺りまで裂け、内側にナイフの様な牙が
無数に並んだ。
変化が完了すると、少女を包んでいた光は消え、現れた巨体が地に両脚を付けた。可憐でか弱かった
少女の姿はそこにはなく、代わりに美しくも荘厳な森の女王と呼ぶに相応しい姿があった。大鍋ほどの
大きさになった眼の奥にある碧い瞳だけは少女の頃の面影をまだ残していた。巨大な異形へと変貌を遂
げて周囲を圧倒する存在感を放ちながらも、瞳にはどこか少女の頃の優しさや暖かさがあった。そこに
は力を得ても奢らず、弱者の為に使おうとする少女の真っ直ぐな心や正義感が現れている様でもあった。
再び静まり返る陽溜りの中、一呼吸置くと女王は一際大きな咆哮を揚げ、少女のか細い腕だった双翼を
羽ばたかせた。森の秩序を乱す者から今日も動物や樹々を救う為に・・・
瞬間、巨竜と化した少女の身体は晴天の宙へと舞っていた。
酷い文才でつくづく申し訳無いorz