08/06/23 01:39:19 o2ovRTKB
俺の拙い文才でとりあえずここまで書いてみたorz
※以下の作品は連載物です。
その少女は夢を見ていた、少女の幼い頃の記憶を映し出した夢。しかし、それは幼少時の微笑ましく
楽しい思い出などでは決して無かった。炎に包まれる街と身体に吹きつける熱風、死体の海に腐り焦げ
た匂い、叫び声を挙げながら逃げ惑う人々。全てが阿鼻叫喚の地獄の様相を呈していた。降り注ぐ炎や
砲弾に矢の嵐の中を、少女は父と共に飛んで逃げる。一頭の巨竜と、一頭の子竜となりながら・・・
「夢、か・・・」
少女は定期的にこの夢を繰り返し見る。あれが少女から両親を、全てを奪い去った大戦だった。
忘れたいが、しかし少女の脳裏に刺青の様に掘り込まれ、決して忘れ得ぬ記憶。年端もゆかぬ少女が
背負い出すには余りにも残酷な記憶。この記憶が以来、少女を苦しめて止まなかった。
「引きずっても仕方無いよね。」
洞窟の暗闇の中から少女は、日差しを求めて伸びる花の様に外へと這い出していった。外の陽射しが
それまで闇に隠されていた少女の全貌がゆっくりと照らし出されていく。年の端二十そこそこの若い娘
だった。白くきめ細やかな肌に、美しく整った桜色の髪、全てを透かしてしまいそうな碧眼に、果実の
様に柔らかな肉体、その優しく清楚な全貌は天使の様だった。深い森の中に独り佇むその少女は、どこか
神々しくさえあった。
洞窟の外にはサヨナキドリの歌声が響き渡り、少女の大好きなスイカズラの香りが当たり一面にたち
こめていた。平和そのものの光景である。この森での暮らしこそが、辛い過去を背負い、孤独に苛まれる
少女を救ってくれる存在だった。
「水浴びでもして、少し冷やして来よっかな。」
言いながら、少女は彼女のお気に入りの泉へと足を運んでいった。