08/05/26 00:57:49 WzqdZqYP
「まあ、それでもにわか仕込みの王女様が勝てるほど、甘い相手ばかりではないという
ことでございます」
アガレスは軽く笑う。わたしは返す言葉もない。
今、こうして夢を見ているわたしは、現実では頑丈な檻の中に閉じ込められている。
洞窟の近くにある村の一角に設置された檻の中に。
アガレスが以前語った存在。アガレスが力を貸し与えている自称魔王に立ち向かえる、
数少ない冒険者。今日、そのうちの一人が、わたしの寝ぐらであった洞窟を襲ったのだ。
今日、目を覚ましたわたしは、とりあえず目の前を這っていた五匹のメバを平らげて
朝食とした。
空腹を癒すと、毎朝毎夕の日課になった作業を始める。
『私はエルスバーグ王女のリネットです。魔王により竜と魂を入れ替えられましたが、
あなたがたと敵対する意思はありません』
と、前肢の爪を使って洞窟のあちこちの壁に彫りつけていくのだ。
洞窟全体には魔王による維持魔法がかかっており、朝と夕方になると洞窟のあらゆる
損傷が自動的に修復されてしまう。おかげで激しい戦闘が起きても洞窟はまず崩落しない
わけだが、そのたびにわたしの爪痕は空しく消し去られる。
それでもわたしは毎日二回、修復された直後の傷一つない壁に文字を刻む。無益で
恐ろしい戦闘を避け、自らが救われる可能性にすがって。同時に、自身が単に本能しか
持ち合わせない竜ではないことを確認するために。
作業の順番としては洞窟入り口近くから始めるのが基本だが、その日の気分で適当な
ところから始めることも珍しくない。今朝は起き抜けに、牢屋前の最も広々とした一角
―わたしと入れ替わる前からブラックドラゴンが寝起きしていた場所でもある―から
書き始めることとした。
121: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 00:59:03 WzqdZqYP
と、書き終えた直後、洞窟入り口の方向から奇妙な物音を聞き取る。
ブラックドラゴンの聴覚は、モンスターの中では大したことはないが、それでも普通の
人間よりははるかに鋭敏だ。そんな今のわたしの耳は、金属の鎧をガシャガシャと
騒々しく鳴らしてこちらへ歩み来る何者かの足音を聞き分けていた。
最初わたしはいよいよ人間がやって来たかと思って緊張した。『リネット』の身柄は
魔王が押さえている。それを魔王が広く宣言していれば、ここにリネットはいないと
して問答無用に攻撃が始まるだろうが、そうでなければ人質を警戒して慎重な行動を
取るはず。わたしにも自分の事情を説明して理解してもらう余地はある。
だが足音を聞くうちに、疑念が生じ始めてきた。
わたしがドラゴンになってから、洞窟内に人間が入って来たことはない。それでも、
鎧を着た近衛兵や騎士の足音は昔から聞き慣れている。その記憶に照らし合わせると、
足音の主はあまりに無警戒なのだ。
よほど腕前に自信のある練達の武人ならば、敢えて示威行動の一環として聞こえよがしに
音を立てるようなこともあるかもしれない。しかしその足運びたるやどうにも不器用、
まるで床を出たばかりの病人のようによろめき、時に壁に手をつくのか一際盛大な
金属音を響かせている。だが足取り自体は一定に保たれていた。
―魔物?
鎧を着るのは人間ばかりではない。オークやゴブリン、コボルドなどの亜人が、襲った
人間から剥ぎ取った大きさの合わない鎧を着飾ることもあれば、妖術によって
生み出された骸骨剣士などの不死生物が武具で身を固めることもある。
―骸骨は食べられないけれど、亜人なら。
わたしは涎を垂らし、舌なめずりをした。亜人は弱くて仕留めやすい絶好の食料なのだ。
ことに豚と人を混ぜ合わせたような姿のオークは、肉が多くて美味である。
わたしは素早く洞窟の構造を頭に思い描き、待ち伏せにうってつけの地点まで忍び足で
移動した。四本肢の巨体を動かすことにもすでに熟達し、角や尻尾を壁にぶつける
ような無様な真似ももうしない。
122: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:01:10 WzqdZqYP
相手の不意を突ける場所に陣取り、息を殺して待つ。
来た。
わたしは飛びかかり、前肢でなぎ払う。高熱の炎を吐けば一番強力な攻撃になるが、
その場合は炭化してしまって食べられないので、よほど危険と判断した時以外は
使わないようにしている。
壁に叩きつけられた敵は、だが、即座に体勢を立て直すと剣を構えてわたしに
斬りかかってきた。
その姿は、鎧の中に腐肉をまとい、時折ぼろぼろと床にこぼしさえする、亡者。
―ゾンビ?
だが普通の―わたしの知識は王宮で魔道師に教わっただけの、通り一遍のものに
過ぎないが―ゾンビであれば、こうも機敏な動きはできない。先刻までの、音でのみ
聞いていた遅々とした動きと、この姿とはぴたりと一致する。なのに今現在のこの
俊敏な動きは明白に異常であった。
とっさに身をかわしたわたしの前肢を、人型のものが持つには長大な剣が払う。一本の
爪を斬り落とし、届いた切っ先は鱗を斬り裂いて足首からもどす黒い血を流させた。
痛みはさほど感じない。竜の身体は繊細ではない。
しかしもちろん、わたしはただの低能な竜とは違い、それなりの知性を有している。
目の前の敵は剣呑な存在であると判断する。どこか別の遺跡や洞窟から這い出て来た
古代の魔物だろうか。それとも魔王が生み出して性能を試すためにわたしにけしかけた
新型のモンスターだろうか。いずれにせよ、倒すしかない。
だけど、炎を吐くのは躊躇してしまった。
一つには、わたしは炎を吐くと直後に大きな隙ができるため。生まれながらのドラゴン
ならこんなこともないのかもしれないが、わたしはそうなってしまう。もしこの
ゾンビが焼かれても動けるほど強力な呪力で動いているなら、骨だけの姿でも剣を
振るえるかもしれない。そうなったら隙の生じたわたしは格好の標的だ。
123: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:02:06 WzqdZqYP
そしてもう一つは……説明もできない、ただのためらい。
相貌も腐れ果て、今のわたし以上におぞましい汚れたモンスター。なのに、何となく、
見覚えがあるような気がしてしまう。もしかしたら、かつてこの洞窟で命を落とした
者の成れの果てかもしれない。わたしを救うためにここへやって来て、わたしの
この身体によって命を奪われた兵士かもしれない。
―倒した後に身元の確認をし、わたし自身が元に戻った後で遺族へ報告をする。
実現可能かどうかは定かでないがそれを目標として、わたしは行動することにした。
戦いは熾烈を極めた。
ゾンビの特徴としては、痛覚の欠落が挙げられる。ゆえにこちらの打撃は相手の肉体を
破壊するほど強烈なものでなければ意味がなく、他のモンスターであれば簡単に気絶
させられるような衝撃を与えても、それだけではしかたがない。わたしは後の先を
取られて何度となく全身を斬り刻まれた。
そしてまた、最初からわたしを翻弄した高い反応速度。殴っても応えないわけだが、
そもそもなかなか当たらない。
さらにこのゾンビは、なぜかいくつかの魔法も使うのだ。ブラックドラゴンの身体は
魔法への耐性もそれなりにあり大きな傷を負うほどではないが、火球や氷の矢を
目の前で放たれると目くらましの効果まで発揮するからたちが悪い。
それでも元々の耐久力の違いが大きかったためだろう。わたしはどうにかゾンビ剣士の
両腕両脚を解体することに成功した。
124: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:03:49 WzqdZqYP
立ち上がれず、それでもなおじたばたと動き回る、生ける屍。
その様子を見ているうちに、わたしはここしばらく考えないようにしていたことを
つい考えてしまった。
醜いドラゴンの巨体で洞窟を蠢き、モンスターを襲っては喰らう、今のわたし。
美しい靴を履き王宮の磨きこまれた床の上でダンスを踊る代わりに、裸足の四つん這いで
岩と泥と苔が混ざり合った上を歩く。
柔らかなフリルで飾られたドレスを身にまとう代わりに、鉱物のような鱗で全身を
覆われている。正確にはそれこそが今のわたしの皮膚。
毎朝侍女にくしけずってもらっていた長い蜂蜜色の髪の毛はどこにもなく、二本の鋭く
まっすぐな角が前に突き出ている頭。
歌を歌い詩を口ずさんだかつての口とはまるで形の違う、獣や爬虫類のごとく前に
突き出た口。その上顎と下顎には牙がびっしりと生え揃っていて、モンスターの
甲羅だろうが骨だろうがお構いなしに噛み砕く。
その口の中に収まるのは、料理人が丹念に調理した食べ物ではない。仕留めたばかりの、
あるいは生きたままの、味つけもされてないモンスターの肉。それだけ。
ただただ必死に、生き延びることだけを意識している今のわたしだが、そんなわたしは
果たしてまだ『リネット』を名乗るに値する存在なのだろうか? もうわたしは
ブラックドラゴンであることに馴染みすぎてしまっているのではなかろうか?
そんなことを考えてしまっていたせいだろう。ゾンビの着ていた鎧の端に彫り込まれて
いた文字を見て、わたしは完全に凍りついた。
『ロビン』
この腐りきった、腐汁を撒き散らす、眼窩から眼球の垂れ下がった動く死体が、ロビン。
わたしがうっすらと好意を抱いていた青年。
わたしは、自分が好きだったはずの相手を気づきもせずにバラバラに引き裂いていた。
ドラゴンの本能に衝き動かされるように。
慙愧の念など即座に湧くはずもなく、ただ瞬時の衝撃と混乱がわたしの動きを止める。
そして、敵にはそれで充分だった。
125: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:06:54 WzqdZqYP
地面に倒れてもがいていたロビンの亡骸が、突如背中から羽を生やして宙に舞う。
―!
距離を取ろうとしたわたしだが、反応が間に合わない。
そしてロビンの死体は、今度は腹から無数の触手を、そして口からは紫色に濁りきった
ガスを、わたしに向かって吐き出した。
どちらか片方だけならば、それでもまだ対処できたかもしれない。しかし触手は
わたしの四肢を封じ、ガスはブラックドラゴンであるわたしの頑健な肉体さえも
一時麻痺させるほどの毒性を有していた。
―よし、よくやったぞ、ロビン。
そう言いながら、洞窟入り口の方向から新たな人影が歩み寄って来た。
わたしやロビンと同年代の、一見平凡な、しかし数多の修羅場を潜り抜けた風格を
漂わせる青年だった。
―炎を吐かなかったのはロビンがスケルトンとして動き続ける二段構えを警戒したから
なのか? ブラックドラゴンにしちゃ知恵が働く戦いぶりだったな。さすがは王女様の
番兵を任されるだけのことはある。殺すのは止めだ。
青年はそう言うと、ロープを取り出してわたしを縛り上げる。よほど強力な魔力が
込められているのか、わたしはかすかな身動きも声を上げることさえもできなくなった。
どうやら彼が、かつてロビンだったゾンビを操っていたらしい。と言うことは、彼こそは
魔王を倒す実力を持った冒険者なのだろうか。そう言えば冒険者には魔物使いを生業と
する者もいると聞いたことがあった。
それなら彼に、さっき洞窟奥に刻みつけた文を見てもらえれば。『リネット』の救出も
彼の任務のようなのだし、これから奥へ進んでもらえれば。
―ま、ロビンもぼろぼろだし、今日のところは一旦帰るか。明日朝一番で強化した後、
改めて奥に挑むとしよう。
冒険者はそう言うと、わたしをロビンと二人がかりで引きずりながら洞窟の外へ出て
行ってしまった。
126: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:10:58 WzqdZqYP
「リネット様の破滅は、最終段階に達しました」
アガレスは、飄々とした声音でわたしに宣告する。
「肉体的な苦痛。精神的な恥辱。この五十日で王女はそれらを存分に体験し、しかも
今後もそこから抜け出す見込みは皆無に等しい」
たぶんアガレスが言うからには、そうなのだろう。
よしんば仮に『リネット』の身体と生活を取り戻せたとしても―
「もし万々が一、元に戻ることができたとしても、この苦痛と恥辱は魂にまで焼きつき、
王女は決してまっとうな幸福など得ることができない。そうお思いになりませんか、
オクタヴィア様?」
突如アガレスが背後に呼びかけると、闇の奥からポートスパンの伯爵令嬢が姿を見せた。
深い眠りにでも陥っていたところだったのか、夢の中でもネグリジェを着ていて、
だらしなく着崩している。
オクタヴィアは、急の出現に戸惑うわたしを一瞥して言った。高慢がすべての美点を
台無しにする、古い家柄の愚かな貴族にありがちの醜さには、一層磨きがかかっていた。
「まだこの女、夢の中では人間の姿じゃないの。実際はどんな浅ましい化け物になって
いるのか、はっきり見せて欲しいわね」
「かしこまりました」
オクタヴィアの要求に、アガレスは唯々諾々と従う。そしてわたしに指を向けた。
「アガレス、あなた、何を……」
「悪魔は夢の中では力が激減します。しかし何もできないわけじゃありません。
夢魔なんて連中もいるわけですしね」
そして変化の公爵は、わたしに一条の光を発射する。
それに射抜かれたわたしは、夢の中なのに激しい熱に襲われた。光の当たった部分から
身体全体へと、耐え難い熱さが広がっていく。
目眩を感じ、立っていられなくなって、わたしは両手を下に突いてしまう。
すると。
人間であった―夢の中では人間のままでいられた―わたしの身体が、次第に変化
し始めた。
127: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:12:35 WzqdZqYP
長く伸ばした髪の毛が抜け落ちていく。
白く滑らかな腕が黒みを帯びた硬い皮膚へと変わりながら太く大きくなっていき、
五本ある小さな指は鉄をも両断する長く凶悪な爪を備えた四本の指へと形を変えていく。
顎の形が変わっていく。鼻を伴って前方へ長く伸びていく。その内側では歯が牙へと
変化していく。
全身が巨大化していき、最近の夢の中でわたしがずっと着ていたドレスは簡単に破れ、
虚空の中に散り散りになってしまった。
身体の中で内臓まで変わっていくようだ。ドラゴンには炎を生み出す器官があるようで、
呼吸器と入り混じるそれの影響により、吐く息は火山地帯のごとき腐臭を漂わせるように
なっていく。
髪のすべて抜け落ちた頭部には二本の角が、尻からは体長に匹敵する長さの尾が、
圧倒的な存在感とともに生え揃う。まるでわたしに、今の自分が人でないと常に
言い聞かせるためのように。
熱さが全身から引いていった時、わたしは完全なブラックドラゴンに成り果てていた。
「これにてリネット王女は夢の中でもドラゴンの姿で生きていくこととなりました。
いかがでしょう、オクタヴィア様?」
「この先一生? 本当に?」
喜色満面に、オクタヴィアが確認する。
「これまでアガレスが言を違えたことがありますか? 契約が続く限り、アガレスは
貴女様の忠実なしもべです」
アガレスの言葉は真実だとわたしにはわかった。
全身を―ここは夢なのだから、つまりはわたしの魂を―何かが縛りつけている。
これが解かれない限り、わたしは今後人の姿をとることができそうにないと肌身に
感じられてならなかった。
128: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:14:09 WzqdZqYP
身悶えする。声を上げようにも、軋むような声しか出せない。
そんなわたしを見て、オクタヴィアはさらに笑みを深くした。
「あはははは! それが今の王女様? まあ怖い、何ておぞましいお姿かしら!」
そう言いながらも、弾むような足取りでわたしの足元に近寄って来る。夢の中で
ある限り自分がわたしに危害を加えられたりはしないとよく知っているのだろう。
「ご機嫌はいかが? 気位の高い高慢ちきで取り澄ましたお姫様! あの時はあたしに
恥をかかせてさぞよいご気分だったことでしょうけど、こうなっちゃみじめなもの
よね! ざまあみなさい、邪悪なドラゴン!」
幼い言葉を稚拙に連ねてわたしを罵る。どうやらあの一件は、本当に彼女にとって
屈辱的だったらしい。
言いたいことはあるが、口を開いても単にオクタヴィアを喜ばせるだけだ。そう認識
したわたしは、じっとその場に佇んだ。
「ねえアガレス、こいつが何を考えているかがわかんないとつまんないわ」
「では元に戻しましょうか?」
「なんでそんなことすんのよ! 姿も声もそのままで、ただ思っていることはこちらに
伝わるようにしなさいよ!」
「かしこまりました」
その瞬間、わたしの中で何かが外に開くような感覚があった。泳いだ後に耳に入っていた
水が抜けていく時のような雰囲気。
―……アガレス。
「聞こえておりますよ、リネット様」
「こんな奴に様をつける必要なんかないってば! ……でも、ほんとにアガレスは
何でもできるのね」
わたしはオクタヴィアを見下ろした。
―ポートスパンのオクタヴィア。
「な、何よ」
129: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:16:06 WzqdZqYP
―わたしを逆恨みするのは構いません。このような姿に身をやつしたことも、わたし
一人の問題であれば、まだ耐えられます。
「はん、何殊勝なこと言っちゃってんのよ。どうせ建前のくせに」
いかにもその通り、建前だ。こんな目に遭わされて耐えられるわけがない。でも、
建前を押し通すべき場面というものはある。
―ですが、あなたの私怨がエルスバーグの罪なき民を多く死に至らしめた。そのことに
ついては、今、どのようにお考えか。
「そんなの、あたしのせいじゃないわよ。アガレスがまどろっこしいことしたのが
悪いんじゃない」
―今、と問うている。すでに事は起こり、結果が生じた。それに対してあなたは
いかように考えるのか。
重ねて訊ねると、オクタヴィアはそっぽを向いた。
「別に知らないわよ。よその国の兵隊なんかが何人死んだって、あたしにはこれっぽっち
も関係ない話だもの」
―……わたしは、あなたを許しません。決して。
「許さなければどうだっての? 何かできるものならしてみなさいよ!」
貴族の家に生まれた下賤な娘は、わたしを挑発するように手をひらひらと振った。
「ところでオクタヴィア様。明日の成り行きですが……」
アガレスが、娘に耳打ちした。
「あはははっ! それいいわね! こいつってば、今よりまだ酷いことになるんだ!」
手を打って、わたしを指差し、これ見よがしに笑う。
わたしはただそれを見つめる。その程度の言葉で動じたくないという気持ちが強かった
が、これ以上どう状況が悪くなるのか見当がつかないせいでもあった。
130: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:17:20 WzqdZqYP
「気に入っていただけましたか?」
「そうね、大満足!」
かりそめの主従による会話が続く。
「わたくしからはこれ以上するべきことが思いつかないのですが、オクタヴィア様には
何か案がございますか?」
「何よそれ。考えて手を打つのがあんたの仕事でしょ」
「ですから、これまでわたくしは色々考えて様々に手を打ってきたわけです。リネット
王女をここからさらに虐げる方法は、当面思いつきません。オクタヴィア様には何か
考えつくことはございませんか?」
重ねてアガレスが問いかける。
「んー、別にないわ」
「そうですか。何か思いついていただければ、それの実現に向けて努力いたしますが?」
もう一度問われしばらくは考え込んでいたが、結局大したことを思いつかなかったのか、
首を横に振る。
「しつこいわねー、もういいわよこれで」
「はあ。もういい、ですか」
わたしと話す時と違ってそれまで無表情に振る舞っていたアガレスが、初めて
オクタヴィアに向けて笑みを浮かべた。
ひどく邪悪な笑みに見えた。
「それはすなわち契約の完了ということでよろしいですね?」
「さっきからうるさいわよ! そろそろこのつまんない場所から元のベッドに戻しなさい
ってば!」
幼児のように手足をばたつかせる娘を、アガレスは冷ややかに見つめた。
「契約完了。ゆえに今後、わたくしは貴女に従ういわれはございません。そして
わたくしは、貴女に代償を要求いたします」
131: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:18:40 WzqdZqYP
「……代償?」
「貴女が作動させた杖には注意書きがついていたはずなんですがね。まあ、貴女バカ
ですし、ろくに読まずにでたらめに動かしたみたいですから、気づいてなかったとしても
不思議はないんですが」
「アガレス! 何よその失敬な口の利き方は!」
「言ったでやんしょ? 契約は終わったって。正直この六十日間、苦痛で苦痛で
たまりませんでしたよ、貴女みたいなバカ娘の醜い願いを叶えるために東奔西走する
のはね」
すっかりわたしの知るいつもの調子を取り戻したアガレスは、肩をすくめると
オクタヴィアを見下して言った。
「で、あなたが知らずに契約まで済ませた『代償』なんですがね。貴女の魂そのもの
ですよ。ちゃっちゃと渡していただきます」
「……え?」
「え、じゃないですよ。魂。心。悪魔がそれを要求するなんて、砂漠で喉の渇いた
人間が水を求めるのと同じくらいありふれた話だと思いますがねえ」
「あ、ちょ、ちょっと、待ちなさいよ」
「待ちません。貴女の願いは叶った。リネット王女はこれ以上はなかなかないってくらい
完全に破滅した。貴女自身が契約完了を否定しなかった。なら、こちらはこちらで最後の
清算を済ませても、何ら問題はないでしょう?」
「だ、だって、あたし、そんなの知らなくて―」
わたしもすでに知っていたし、たとえ聞かされていなくても推測は容易だった話なの
だが、オクタヴィアには本当に寝耳に水だったらしい。
「無知は罪ですよ。人生最後にいい教訓を得ましたね、お嬢さん」
132: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:19:31 WzqdZqYP
アガレスは、掌をオクタヴィアに突き出す。
するとそこへ引かれるように、娘の身体から光る玉が飛び出して、掌の中に収まった。
―死んだのですか?
「正確にはまだですね。魂がしばらく抜けてても肉体は動いてるものです。リネット様の
魂をそちらに宛がってしまえばちょうどいいのかもしれませんが、わたくしの立場上
それはできないので悪しからず」
―それは、わたしからもごめんこうむります。
人間の、それも同年代でそれなりに身分の高い、少女の身体。今の身体に比べれば
もちろん魅力的だが、それでも我慢できることとできないことはある。
「まあ、そう言うだろうと思ってました。かと言って腐らせるのももったいないので、
適当に見繕っておくとしましょうかね」
―当人の魂はどうするのです?
平然と悪魔とそんな会話ができる自分が不思議だ。やはりわたしは魔物として生きる
うちに、すでに人の道を踏み外しているのかもしれない。
「そうですね。食べ応えがあるなら別の身体に移植したりしてじっくり感情をしゃぶり
尽くすところなんですが、あいにくこの娘は虫みたいなものですからちっとも美味じゃ
ない。まあ、相応しいところへ落ち着くんじゃないかと思いますよ」
光る玉を無造作に弄びながらアガレスは言った。
「ところで王女様」
―何ですか?
「明日、貴女様に何が起きるか教えて差し上げましょう」
そう切り出すと、アガレスはわたしに待ち受ける事態について話し始めた。
「では、さらばです」
わたしとの会話を終えると、アガレスは闇の中に消え失せた。
133: ◆eJPIfaQmes
08/05/26 01:27:32 WzqdZqYP
今夜はここまでです。短い話ですので、次回の投下で完結となります。
134:名無しさん@ピンキー
08/05/26 01:28:41 SCPd3vuH
GJ!目が離せないぜwktk
135:名無しさん@ピンキー
08/05/26 02:20:17 CwRrMd4v
これは期待してしまうぜ。GJ!
136:名無しさん@ピンキー
08/05/26 06:37:41 8bKGdplf
GJ!入れ替わり式のTFに加えて、肉体変化のTFもあるなんてかなり美味しいな。
登場人物一人一人のキャラ付けが決まってて面白い。
137:名無しさん@ピンキー
08/05/26 10:01:05 oWA1jSj8
保守だけで進むだけだったスレにこんな大作が投下されるなんて!
次が気になるぜ!
138:名無しさん@ピンキー
08/05/27 22:47:41 6xoh9xIw
続きが気になるのぉ~
139:名無しさん@ピンキー
08/05/28 03:40:13 mNzhcqXO
ちょっと前まで過疎ってたのにこんな良スレになるとは
140:名無しさん@ピンキー
08/05/28 21:25:41 KJoiayoa
ベルゼブブの作者様ですよね
満を持してという感じでとてもうれしいです!
141: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:45:29 pmQNeIlZ
終章……六十一日目
「さあて、機嫌はどうだ? 楽にしてろよ」
冒険者は昨日と同じようにゾンビのロビンと二人がかりで、縛り上げられたわたしを
檻からずるずると引きずっていく。その行く手には、借りきったらしい村の倉庫。
広々とした床に描かれているのは魔法陣。
「あの冒険者は魔物使いです。それも、ちょっと外法に手を染めていましてね」
昨晩の夢の中でアガレスは言った。
―魔物使いの外法とは?
魔物を手なずけ使役する冒険者。そこにどのような禁忌があるというのか。
「あのゾンビ、不自然でしたでしょ? いえゾンビそのものが不自然と言えば不自然
なんですけど」
わたしは魔法陣の上に転がされた。少し離れたところにもう二つの魔法陣があり、
三つで正三角形を構成している。その片方に、ゾンビが足を踏み入れた。
―確かにそうでしたね。背中に翼を生やし、触手も備え、呪文を使った上に、戦闘と
なると異様に素早くなりました。
「つまりあれが、あの冒険者の研究の成果ですよ」
―魔法か何かで、魔物に特殊な能力を付加するということですか?
「惜しい。もう少し強引な手です」
142: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:46:20 pmQNeIlZ
わたしとロビンがそれぞれの魔法陣に完全に入っていることを確認すると、冒険者は
呪文を唱え出した。西部では耳慣れない、恐らくは東方の言葉。
それと同時に足元の魔法陣が光り輝く。床に描かれていたはずの紋様が回り始め、
わたしの身体を飲み込んでいく。
目を転じればゾンビのロビンも同様に、魔法陣の中に吸い込まれていくところだった。
「モンスター同士を合成させるんですよ」
アガレスの言葉にわたしの理解が追いつかない。
「呪法の一種で二体のモンスターを溶かし、粘土細工のようにぐちゃぐちゃにして
一体化し、それぞれの持つ長所や特性は生かしたまま新たなモンスターを作り出す。
無理矢理一つにされる当事者の意思を除けば、実に合理的で優れた手口ですな」
自分で料理をした経験はないが、料理しているのを眺めるのは好きで、しばしば城の
調理場へ足を運んだことがある。
今のわたしの身体は、たぶんその時に見た一塊のバターのようになっていることだろう。
熱せられた鍋に放り込まれ、あっという間に溶け出して、他の材料と混ざり合っていく。
熱こそ感じないものの、わたしは間違いなく身体が溶けていくのを、また他の存在と
混じり合っていくのを、感じていた。
143: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:48:07 pmQNeIlZ
昨晩そう聞かされて、わたしは直前にオクタヴィアが手を叩いて喜んでいたのを
思い出した。たぶんあの娘はわたしが何と合成させられるのかも聞いたのだろう。
一方わたしは自分で推測した。最も強い手駒とその次に強い手駒。より困難な局面に
挑む上では、この二つを足すのが最善の選択のはず。
つまりわたしは、ただの醜いドラゴンよりもなお無惨な存在になるわけだ。
―心は、どうなるのです?
身体に関しては諦めもつく。どの道、今の身体に未練などない。むしろ強化されれば
生き残る確率が高まるのだから、容貌などどうでもいい。
それでも、心が変わってしまうのは恐ろしかった。
アガレスは、おもむろに口を開いた。
魔法陣の中で肉体が混ぜ合わされているわたしのすぐ傍に、誰かがいる。
―姫様姫様リネット姫様
わたしを呼んでいるわけではない。その声は、ただひたすらに一途である。
死者は生前の妄執に支配されると聞く。ゾンビの中に宿っている魂のかけらは、死ぬ
間際に心を占めていた意志のかけらに衝き動かされて、骸となった後も動き続けようと
したのであろうか。
―食べ物食べ物
―食べる寝る交わる産む食べる寝る交わる産む
周囲には他の思念も屯していたが、いずれもより単純な衝動しか持ち合わせて
いなかった。色々足し合わされてはいても、あのゾンビの中心にはロビンがいたと
いうことか。
―ロビン。
わたしは、ロビンの思念に寄り添った。
「心も混ざり合う模様ですね。流されるがままにいれば」
―それはつまり、流されまいとすれば、わたしはわたしで在り続けられるということ
ですか?
「はい、おそらく」
144: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:49:18 pmQNeIlZ
モンスターを合成するのにかかる時間はほんの一瞬。つまりその間に触れ合った
わたしとロビンの心の逢瀬もほんの刹那。
しかしわたしにとっては、一生忘れられないほどの濃密な瞬間だった。
―姫様、ご無事でしたか!
―ええ。あなたたちが助けに来てくれたのですもの。
―よかった。本当によかった。
―ありがとう。あなたたちのような家臣を持てたことを誇りに思います。……いえ、
あなたという人に出会えたことを。
心が重なり溶け合っていくがごとき、恍惚の一瞬。
そのまま一つになってしまえれば、あるいは最も幸福だったのかもしれない。
でも。
―さようなら、ロビン。
わたしはロビンの心のかけらを己から引き剥がした。この精神世界で強力な意志を
発揮できるわたしは、他の魂を次から次へと押し潰し、粉々に砕き、無に帰していく。
―姫様
―あなたの魂に誓って、わたしは人間に戻ります。あなたが敬愛したリネットに戻り、
あなたの墓前に改めて伺います。だから、今はひとまずお別れです。
ああ、これもまた建前だ。
わたしは単に怖いのだ。ゾンビや触手と混じった結果、自分がリネットでなくなるのが
恐ろしいのだ。それをこんな言葉で飾り、自分の選択を美化しようとしている。
―姫様、どうかご無事で。
なのにロビンは、無垢な声音でわたしに言うと、おとなしく粉々に砕かれていった。
―ロビン。
わたしは、ひとしずくだけ涙をこぼした。
145: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:49:48 pmQNeIlZ
「今も述べたように、精神世界では心の力がものを言います。他者を強く拒絶し消し去る
くらいの意気込みで望めば、合成されても心まで変容させられることはないでしょう」
アガレスはわたしに明日の心得を説くと、座っている鰐の上で足を組み替えた。
「もっともその場合、魔物使いに不審がられる危険性はありますね。忠実な魔物と
足し合わせたはずなのに反抗的な態度を取ったりしたら、怪しまれること請け合い
でしょう」
―モンスターの身体に慣れた次は、猟犬としての生活に慣れる必要があるわけですね。
わたしがドラゴンの身体でため息をつくと、アガレスは慰めるように笑いかける。
「まあ、今は辛抱していれば、そのうち言葉をしゃべれるモンスターになれるかも
しれませんよ。その時にうまくやれば、『リネット王女』の身体を取り戻すことだって
ありえない話じゃありません」
妖しくもどこか人の良さそうなその笑顔を見ているうちに思い出した言葉を、ふと
話題に出した。
―あなたに関して『慈悲深い』とする評がありますね。
「そうですね。とんでもない勘違いだとは思いますが」
―けれど今回、わたしは何度かあなたの慈悲に助けられてきたように思います。
先ほどの助言もそうですが、この身体にされる直前直後の警告、や、励まし……
言いかけて、改めて意識した。
この出来事のほぼすべてを仕組んだのはアガレスであることを。発端であるオクタヴィア
と末端で直接わたしを虐げた自称魔王の間に位置してはいるが、オクタヴィアの漠とした
恨みに具体的な形を与え、ダークエンペラーに予言という形で詳細な示唆を与え続けた
のはこの悪魔であることを。
そして思い出す、初めて出会った時に聞かされた魔族の糧。
「おわかりになったようですね。わたくしの『慈悲』の意味が」
―ええ。
146: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:51:05 pmQNeIlZ
気がつくと、わたしはそれまで立っていたのとは別の魔法陣の上に立っていた。全身を
縛っていた鎖も存在しない。
自分の身体を見下ろし、覚悟していたにも関わらず、その新たなおぞましさにやはり
愕然としてしまう。
爛れ、腐れ、いくらかは骨まで剥き出しになったドラゴンの死体。それが妖力によって
動いている。
ドラゴンゾンビ。それが今度のわたしの身体だった。
「ちょっと身体を動かしてみな」
魔物使いは気軽に声をかけてきた。
腐汁を垂らし今にももげ落ちそうな前肢を、試しに持ち上げ振るってみる。と、それは
生きたブラックドラゴンだった時を大きく上回る速さと勢いを有していた。危うく床を
壊してしまいそうになる。炎も問題なく吐けた。
「後は、背中の翼の具合も見たいな」
言われて初めて翼の存在を意識する。ドラゴンの巨体を持ち上げるに足る大きな翼―
もちろんそれも腐りかけだけど―が生えていて、羽ばたかせるとふわりと宙に浮いた。
「それと、魔法」
生まれてから一度も習ったことがないにも関わらず、わたしは特段意識するまでもなく、
昨日ゾンビのロビンが用いたのと同じ魔法を一通り発動させることができた。この腐った
脳のどこに記憶されているのやら、つくづく不思議に思う。
「で、隠し武器の麻痺毒ガスと触手」
喉の奥に炎を生む器官とは別の存在を感じる。そちらへ意識を切り替えて吐き出すと、
紫色に濁り果てた煙が猛烈な勢いで発生した。
最後に腹に力を入れると、メバのそれによく似た触手が飛び出し、わたしの意思に従って
ぬらぬらと蠢いた。
エルスバーグ王女リネットが、つくづく化け物に成り果てたものである。
147: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:51:55 pmQNeIlZ
「さ、行くぜ。昨日の洞窟を隅から隅まで探索して、王女様を見つけ出す。それさえ
済めば後は魔王の居城に乗り込んで成敗するだけだ」
自分がすでに王女を見つけているとも知らない冒険者に連れられ、わたしは倉庫の外へ
歩み出た。
すると、倉庫の屋根からふらふらと飛んで来たものが、わたしの皮膚にたかる。今の
わたしにとっては小さな、でも人の掌くらいは大きな、蜂や虻を連想させる不気味な虫。
「へえ、デビルワスプか」
魔物使いはわたしにへばりついているそれを見て言った。
「なかなか珍しい魔物じゃないか。基本的に人間を強く警戒するはずなんだがなあ……」
そんなことを言ってる間にも、虫はわたしの身体を這いずり回る。
そして、首筋から顎を回り込んで鼻先に出たところで、わたしと目が合う。
それだけで、閃くものがあった。
「自分から寄って来るモンスターなんてそうそういないし、とりあえず連れて行くか。
何と合成すればいいかはよくわからんけど」
わたしが前肢で叩き潰すよりわずかに早く魔物使いが言い、今のところは『ご主人様』
に逆らうのもためらわれるわたしとしては、この虫を殺すわけにもいかなくなった。
矮小な虻は、わたしの身体を好き勝手に歩き回り、時折腐った皮膚をぺちゃぺちゃと
さも美味そうに舐め上げていく。
こんな姿になってまで、オクタヴィアはとことんわたしに嫌がらせをしたいようだ。
それでも極力こちらの前肢や尾や翼に打たれなさそうなところを選んで飛び回る辺りが
実に浅ましい。
もっとも、浅ましさではわたしも大差ないことに思い至り、内心で苦笑する。
ならば、浅ましかろうがとにかく生きると決めた以上、つまらぬ虫に煩わされるくらいは
甘受しよう。これしきのことも辛抱できないようでは、王女の姿を取り戻すなんて
夢のまた夢だ。
不快な感覚に耐えながら、わたしは昨夜アガレスと交わした最後の会話を思い出して
いた。
148: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:53:25 pmQNeIlZ
―あなたの『慈悲』の意味。それは、例えば今回なら、わたしを簡単に絶望させて
しまわないため。無気力で空虚な、感情に乏しい存在にしてしまわないため。
なぜなら魔族は、生物の感情を食するから。とりわけ激しい感情を好むから。
―明日起こることを今告げたのも、そのため。わたしが魂まで変わり果てることを
恐れると期待して。あのロビンみたいにわたしが薄ぼんやりした存在になっては、餌が
まずくなると考えたからでは?
「まったくもって仰せの通りです。アモンは今の貴女の心の有りようがずいぶん
お気に入りのようでしてね。わたくしとしてもあれに恩を売っておくのは得策という
わけで」
アガレスは、悪びれもせずおどけた一礼をよこした。
まさに、悪魔。
どれほど憎んでも憎みたりない悪魔。
そうした憎いという気持ちすらもこの者にとっては滋養となるのだろう。
だから嫌がらせに、というわけでもないが、わたしは敢えて首を垂れた。
―……ですが、それでもわたしはあなたの慈悲に感謝します、アガレス。
「え?」
戸惑った顔。もしかしたらこのぺらぺらとしゃべり無意味なまでによく笑う悪魔が
わたしに初めて見せたかもしれない種類の顔。
―あなたが教えてくれなければ、明日わたしはわけもわからずロビンと一つになり、
鈍重な魔物になっていたことでしょう。それを運良く免れたとしても、ロビンの心と
触れ合う機会を虚しく逸したことを悔やみ続けたことでしょう。いえ、それ以前、
王宮から洞窟にさらわれた時や、ロビンが人としての命を落とした時、あるいは
ブラックドラゴンと身体を入れ替えられた時、絶望に陥ってとうに狂い果てていた
かもしれません。だから、それらのことに関しては、感謝いたします、アガレス。
と、アガレスは明後日の方向を向いて、珍しくも激しい口調で言い返してきた。
「貴女をここまで破滅させた相手に向かって何を言っているのですか? そんなつまらぬ
言葉を吐くのは、おやめいただきたい!」
149: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:54:22 pmQNeIlZ
―?
なぜここでアガレスが怒りを顕わにするのかわからない。まさか好意に類する感情を
向けられたら害毒になるというわけでもないだろう。これまでわたしたちは、お互いに
表面的なものに過ぎないと承知した上ではあったが、穏やかな、一種の敬意に近いものを
示しながら、こうして夢の中で会話し続けてきたのだから。
……あるいは。
ひょっとしてアガレスは、自らの為した行為が感謝などに値しないと認識していれば
こそ、こうしてわたしの謝意を拒絶するのだろうか。
もちろん、これは人としての―少なくとも精神的にはまだ人としての―わたしが
勝手に想像した感傷に他ならないのだろう。しかし、己が振る舞いの罪深さを自覚し、
それがゆえに被害者から忌み嫌われることを望みこそすれ感謝などされたがらない、
されたら拒んでみせる。……そんな姿は、魔族としてはひどく露悪的な気がする。
それではまるで、むしろ潔癖すぎるがゆえに自らの悪行を誰より自らが許せないという
ような……。
―魔族は、
「何です?」
―人の喜怒哀楽を糧とするならば、そしてもはや死を無闇に撒き散らさないつもりで
あるならば……魔族は、人を喜ばせ楽しませることでも生きていけるのではありません
か?
「…………今さら、遅いですよ」
アガレスは、いつものへらへらとしながらも整った顔を醜く歪め、吐き捨てるように
言った。
「我々は貴女方を利用し、食い物にする。それが定められた関係です。今さらどの面
下げて、殺した者たちの子孫相手に愉快な道化を演じろと?」
アガレスのその言葉は、わたしの推測を否定するものではない。「今さら」。「殺した
者たち」。それらが、この悪魔の抱える罪の意識を物語っているように思えてならない
のだ。
150: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:55:02 pmQNeIlZ
もっとも、これはすべて今しがたわたしが思いついたことに過ぎない。確認しようにも、
嘘つきかもしれない人に「あなたは嘘つきじゃありませんよね」と訊ねるようなもの
だろう。
「そんなことはどうでもよろしい。どうせ貴女は人でなくなったのだから、余計なこと
など考えることもない。元に戻れれば別ですがね」
だからわたしは、それ以上真偽定かならぬ魔族の心情に分け入ることはせず、ただ
アガレスの言葉に乗ることにした。
―そうですね。わたしは元に戻ってみせます。
魔物使いの道具となり魔王に挑み倒れるか。その前に他のモンスターと合成されて
自我を失い愚かになるか。首尾よく魔王を倒せても、自分が『リネット』だと納得
させることができずに終わるか。はたまたそれをわからせたとしても、元に戻る手段が
得られないまま、おぞましい姿の元姫君として未来永劫王宮の地下牢にでも監禁される
か。
わたしが元に戻れる見込みなどどれほどあることだろう。それでも、諦めることだけは
したくなかった。
―要求を、一つ。その暁には、夢の中でのこの姿も元に戻していただけませんか?
「いいでしょう。その時にはもう一度貴女の夢を訪れると約束しましょう」
わたしに視線を戻し、完全に平静を取り戻したアガレスが言う。
―待っていますわ。
「これっきり二度と会うことはないでしょうがね」
アガレスが唇の端を吊り上げる。わたしはドラゴンの顔なので笑えなかったが、
心の中で笑みを返してみせた。
この悪魔ともう一度会いたい。言葉を交わしたい。そう強く願った。
「では、さらばです」
アガレスは一礼すると、闇の中に消え失せた。
151: ◆eJPIfaQmes
08/05/30 00:58:27 pmQNeIlZ
これにて『アガレスは慈悲深く、なれど尊厳を破壊する』は終了です。
読んでくださった方々に感謝いたします。
好意的なご感想の数々もありがとうございました。
152:名無しさん@ピンキー
08/05/30 01:40:22 8cFbxhJ/
GJ!アガレスと王女の格好いいこと格好いいこと!
次の作品にも期待してます。
153:名無しさん@ピンキー
08/05/30 01:45:08 Xp97NDDn
GJ!
あなたがいる限りこのスレは不滅だ!
154:名無しさん@ピンキー
08/05/30 17:05:05 e7hJZUtN
すばらしい、姫様にほれました。
彼女にならやられてもいいw
155:名無しさん@ピンキー
08/06/07 07:47:51 f3GYAFBL
保守
156:名無しさん@ピンキー
08/06/07 11:53:52 dVyXBrU6
強制TFと上位者たる悪魔ってのは相性がいいよな。
157:名無しさん@ピンキー
08/06/08 08:49:28 1dTUgv25
アガレスの解釈がおかしいな。ちゃんと文献読んで書いてる?
幾ら自分風にアレンジといってもそこらへんしっかりしてないとうすっぺらいぜ・・・
158:拾った(アニメサロンで)
08/06/08 13:29:48 dTYL1SCO
479 名前: メロン名無しさん 投稿日: 2008/06/06(金) 22:20:38 ID:U12izmRZ0
少女の体のまま、体つきだけがボディビルの全国大会女性チャンピォン並みの筋肉質になる
482 名前: メロン名無しさん 投稿日: 2008/06/08(日) 10:44:19 ID:BBryzBs90
>>479
そして、全身の皮膚が真赤に変色して剛毛に覆われ、額から2本角を生やして、犬歯が全部牙に変わって、瞳の色が金色に染まり、更に虎の毛皮製の晒と褌を身にまとって、とどめに金棒を握り締めさせれば……
そりゃ、鬼じゃないか!
159:名無しさん@ピンキー
08/06/08 13:30:42 dTYL1SCO
整理後
少女の体のまま、体つきだけがボディビルの全国大会女性チャンピォン並みの筋肉質になる
そして、全身の皮膚が真赤に変色して剛毛に覆われ、額から2本角を生やして、犬歯が全部牙に変わって、瞳の色が金色に染まり、更に虎の毛皮製の晒と褌を身にまとって、とどめに金棒を握り締めさせれば……
そりゃ、鬼じゃないか!
160:名無しさん@ピンキー
08/06/08 15:40:45 ItR3adeu
>>157
設定なんてただのフレーバーじゃないの?
ただ文献にしたがってるだけのほうがよっぽど薄っぺらいだけだと思うけどな。
161:名無しさん@ピンキー
08/06/08 16:29:02 lkq1Hp60
と言うか「アガレス」という名を持っているからって
こちらの神話のそれと同一であるなんて保証は何も無いわけだし。
「バハムート」という名のドラゴンに対して
「バハムートって形状的にはカバじゃね? それにベヒーモスと別扱いっておかしくね?」
と突っ込むのも逆に無粋だしな。
162:名無しさん@ピンキー
08/06/08 18:30:55 lLlOCrgd
>>99-150 ◆eJPIfaQmes様
時間がとれずなかなか読めなかったのですが、ようやく読めました。
>>136様も書いてますがTFの見せ方が凝っていますね。
しかも、唯一人間のままでいられた場所でTFに追い込まれる、というかなり残酷なシチュで。
以前別の方の作品で話題になっていた話ですが、自分はTFの主体になる
ヒロインは気丈で聡明なタイプの方が萌えるので、姫はとても魅力的でした
>>148のアガレスのためらいも、心理の奥行きを感じさせてよかったです
美女の姿を借りた悪魔というだけで最高なのに、言動がいちいち素敵でした
163:名無しさん@ピンキー
08/06/10 19:28:35 5jvFt8uK
ほしゅドラゴン
164:名無しさん@ピンキー
08/06/11 18:31:05 FV/J2YgJ
前スレとうとう(やっと?)落ちた
終盤は埋めも兼ねて結構話し合いが盛んだったようだが
あの流れはこっちには持ってこれないものだろうか
165:名無しさん@ピンキー
08/06/11 20:00:47 reIWUDMB
積極的にネタ振りしたんだけれど、殊更降りなおす話題もなく……
166:名無しさん@ピンキー
08/06/12 12:17:18 vS9to7Rx
>>31
の追加ムービーがニコニコかyouTUBEに出ないかな…。
167:名無しさん@ピンキー
08/06/12 16:41:27 HDHUJDDl
>>166
なかったっけ?
前に過去スレに貼られてて見た様な気がするが
168:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/06/12 17:18:20 oZeSvxCr
前スレ、自サイトの倉庫に保管させて頂きました。
ところで、DAT2HTMLというソフトで変換してるんですが、
できあがったHTMLファイルは専ブラでは開けないみたいなんです
以前別のdatを手に入れたとき、それを自サイト(今のところではない)に
保存した上で何かやったら専ブラで見られるようになったのですが、
どうやったのかよく思い出せません。
パソコン詳しくないので、いい方法があったら教えて下さい。すみません
169:名無しさん@ピンキー
08/06/12 18:32:23 asQM+/4z
保管してくれただけでも激しく乙
170:名無しさん@ピンキー
08/06/12 19:51:30 E9O6mbLB
>>168
保管乙。
お世話になってるスレだから自分ももっと貢献したいが、筆は進まず…。
171:名無しさん@ピンキー
08/06/14 12:52:45 0CNhAwuo
高校の頃1人で考えてたファンタジー系のラノべに竜に変身する竜神族の少女が
1人味方キャラとして登場してた。
【外見】普段は外見が10代後半の美少女、でも戦闘時に竜(ワイバーン)に化ける。
人間時の戦闘力は低いが、変身時は反則的な強さを誇る。変身後の姿はモンスター
ハンターのリオレイア亜種(ピンク)みたいな感じ。変身使うと戦力が上昇するが
その姿を(特に男性に)見られるのを嫌っている。
ファイヤーエムブレムのキャラをそのまんま使ったみたいな感じだけどね。
普段は可愛いくて、変身すると強くなるものの異形になるせいで変身を嫌ってる
キャラとか可愛くて萌える。BDZのザーボン見たいに変身後が極端に醜いのは嫌だけど。
172:名無しさん@ピンキー
08/06/14 21:57:40 6PN/TGPa
よし、書いて投下するんだ。
モンハンのモンスターならフルフルが可愛くて好きだな。
173:名無しさん@ピンキー
08/06/14 22:36:37 0CNhAwuo
そのラノベは実を言うと設定を考えただけで自分に文才&根性が無い、のと話が長くなりそう
なのとで書くのを断念したまま放置してある。それに上の娘はメインヒロインでは無いし・・・
欲しければ物語全体の大まかな設定と、上の娘だけの細かい設定だけでも良ければ投稿するけど。
需要があるなら、この娘を主人公にした外伝的な短編でも作ってみようかな。
【名前】ティアマトー
【外見】人間年齢18,9歳位の美少女。ピンクの髪に青い眼を持つ。変身時は桜色の鱗と翼に、
澄んだ蒼い眼を持つワイバーン。
【家族構成】竜人族の父親(黒い鱗に赤い眼)と、人間の母親とのハーフ。両親は共に大きな戦で
命を落としている。彼女の姉が今でも生きているが、優しい性格の妹とは異なり、冷酷非常な性格で
物語の敵役の中の一人として登場する。姉(蒼い鱗に金の眼)とは物語終盤で壮大な決戦を繰り広げる。
【性格】明るく優しく前向きで普段大人しい。変身後は森一つを焼き尽くせるほどの強大な力を持って
はいるが、基本的に平和好きで極力戦いを避けようとする。竜人族を始め、ドワーフやエルフ等の多種族
(これも物語りに味方キャラとして登場する)が人間と共存できる社会を望んでいる。男性に少なからず
興味はあるが、不器用で想いを伝えるのは苦手。
【生活】竜人族は人間から差別されるため、産まれた時から両親と森の洞窟で隠れる様に暮らしていた。
生後わずか数年で両親が亡くなる。洞窟を訪れる人間は少ない為、友達は森の動物ぐらいしかいないが、
彼らの事を非常に可愛がっており、また動物側からも慕われている。人間里で暮らした経験は無いが、
幼い頃に母親から人間の生活について聞かされているため、少しは人間の生活に関する知識がある。
森が人間やモンスターに襲われると、動物を守るために戦う事がある。ヒロイン達と出会い、森を去る事に
戸惑いながらも、途中から人間の街に滞在する事になる。
長くてスマソ。
174:名無しさん@ピンキー
08/06/14 23:01:25 0CNhAwuo
あと良ければ、物語の登場キャラ(上みたいなのを全員分書いてると10レス以上は使い
そうなのでここでは省略)
【味方側(初期はヒロインⅠⅡのみ、他の3人は後から加わる)】
ヒロインⅠ(人間の剣士)
ヒロインⅡ(人間の魔法使い)
ヒロインⅢ(この娘が上のやつ)
ヒーローⅠ(エルフの美形戦士)
ヒーローⅡ(ドワーフの巨漢)
【敵側】
ヴィランⅠ(敵軍リーダーでⅡ~Ⅶを統率、最強の敵で物語のラスボス。大剣と魔法を
共に用いる人間の青年。)
ヴィランⅡ(敵軍副将、ダークエルフの女性。弓に短剣と回復魔法を用いる。)
ヴィランⅢ(頭の切れる錬金術師の男。火薬や毒等の化学兵器で戦う。機械に強い。)
ヴィランⅣ(神職にも関わらず殺生を行う邪悪な武装修道士。鎖鎌で戦う。)
ヴィランⅤ(長剣2本を手に持ち、1本を口に咥える3刀流の剣士。柄の悪い青年。)
ヴィランⅥ(戦闘で無残に負傷した身体をⅢに改造して貰ったサイボーグ、主に銃器で戦う。)
ヴィランⅦ(デカいオーガの大男。力はあるが脳と素早さがない。鉄球や棍棒などで力任せに戦う。)
ヴィランⅧ(上に書いたティアマトーの姉。悪役集団であるⅠ~Ⅶに協力し力を貸す。強さはⅡ~Ⅶ
よりは上で、Ⅰよりは弱い。)
175:名無しさん@ピンキー
08/06/15 00:46:32 xBpTc41i
設定を考えて後は脳内補完、よくあることです
176:名無しさん@ピンキー
08/06/15 01:07:53 7V7f027T
ゲームなり小説なり漫画なり、設定を考えるのって面白いよな。
その娘を主人公にした外伝的な短編、読んでみたい。
177:名無しさん@ピンキー
08/06/19 20:53:50 /6AurfoB
ほしゅワイバーン
178:名無しさん@ピンキー
08/06/20 03:14:13 YFNXv8cf
ワイバーンといえば海原みなもちゃんが変身してましたね
179:名無しさん@ピンキー
08/06/21 00:12:37 I3h+E6OJ
>>178
探そうとしたら多すぎて頭がパンクした
180:待ち切れず俺が書いちゃったお(^ω^)
08/06/22 01:23:07 atu4Kb8G
初夏の森に静かな夜が訪れた。獣も鳥も寝静まり、満月の綺麗なよく晴れた穏やかな夜だった。
その外れにある岩山にいる者達を除いて・・・。
そのブナの原生林を見渡す荒涼とした岩山の上に巨大な一つの青黒い影が上空から舞い降りた。
岩山の上には既に先客と思わしき六つの影があったが、その風貌からして彼らが異様な一団である
事は誰の目にも明らかだった。
「御救援の程、感謝致します。」
その不気味な集団のうち、薄紫の長髪を左右に結び、鋭い眼に尖った耳を持った年の頃20代半ば
と思われる女性が影の舞い降りた場所に向かって丁寧に一礼をした。
「そういう依頼だからさねぇ。」
謎の影が降りた場所には、もう一人の女性の姿が現れた。こちらは蒼い眼に金色の長髪を靡かせた
年の頃20代前半と思われる長身の女性だった。彼女は先に来ていた六人の存在を確認するかの如く彼
らをゆっくりと見回していった。
「総大将様は、どこへ。」
「はっ、重大な仕事があるとの事で留守に。敵の討伐は我らのみに任されると。」
尖った耳を持つ方の女性が主の留守を説明した。
「ひゃーっひゃっひゃっ!小難しい理屈は構わねぇから、早くぶっ潰そうぜぇ。殺し屋として血が
うずうずしてしょうがねぇや!」
六人の中で一番の巨躯を持つ大男が耐え兼ね、声を張り上げた。
「そうは行きませんね。これは私共にとって厄介な敵となるであろう者の早期討伐という重要なる
任務。安易な感情で動かれては計画の遂行にも不備が生じましょう。折角強力な外部協力者を見つけ
たというのに・・・計画が失敗に終ってしまっては元も子もありません。」
「ぶっ殺せる・・・俺も楽しみいい事。でも計画失敗・・・よくない。」
六人の中で薬品の様な異様な匂いを放つ男と、鋼鉄の義手や武器を身体に仕込んだ異様な風貌の男
とが静かにその大男を制した。
「ちっ、ああがったよぉ・・・黙ってりゃあいいんだろぉ?」
「まあ待て、もう少ししたら嫌というほど殺れるぜ。クククッ・・・」
口に長剣を咥えた明らかに柄の悪そうな青年がそれをなだめた。
先の六人に新たな一人を加えたその一団は獲物を狙う猛獣のともつかない獰猛な笑みを浮かべ、
目下に広がるブナ林へと視線を降ろした。
181:名無しさん@ピンキー
08/06/22 15:36:59 ggJ3xD1d
ええと、連載形式?だったらその旨を明示しておいた方が良心的かも。
メインディッシュが楽しみ。
182:名無しさん@ピンキー
08/06/23 01:39:19 o2ovRTKB
俺の拙い文才でとりあえずここまで書いてみたorz
※以下の作品は連載物です。
その少女は夢を見ていた、少女の幼い頃の記憶を映し出した夢。しかし、それは幼少時の微笑ましく
楽しい思い出などでは決して無かった。炎に包まれる街と身体に吹きつける熱風、死体の海に腐り焦げ
た匂い、叫び声を挙げながら逃げ惑う人々。全てが阿鼻叫喚の地獄の様相を呈していた。降り注ぐ炎や
砲弾に矢の嵐の中を、少女は父と共に飛んで逃げる。一頭の巨竜と、一頭の子竜となりながら・・・
「夢、か・・・」
少女は定期的にこの夢を繰り返し見る。あれが少女から両親を、全てを奪い去った大戦だった。
忘れたいが、しかし少女の脳裏に刺青の様に掘り込まれ、決して忘れ得ぬ記憶。年端もゆかぬ少女が
背負い出すには余りにも残酷な記憶。この記憶が以来、少女を苦しめて止まなかった。
「引きずっても仕方無いよね。」
洞窟の暗闇の中から少女は、日差しを求めて伸びる花の様に外へと這い出していった。外の陽射しが
それまで闇に隠されていた少女の全貌がゆっくりと照らし出されていく。年の端二十そこそこの若い娘
だった。白くきめ細やかな肌に、美しく整った桜色の髪、全てを透かしてしまいそうな碧眼に、果実の
様に柔らかな肉体、その優しく清楚な全貌は天使の様だった。深い森の中に独り佇むその少女は、どこか
神々しくさえあった。
洞窟の外にはサヨナキドリの歌声が響き渡り、少女の大好きなスイカズラの香りが当たり一面にたち
こめていた。平和そのものの光景である。この森での暮らしこそが、辛い過去を背負い、孤独に苛まれる
少女を救ってくれる存在だった。
「水浴びでもして、少し冷やして来よっかな。」
言いながら、少女は彼女のお気に入りの泉へと足を運んでいった。
183:名無しさん@ピンキー
08/06/27 00:48:38 /bgJyDIC
保守わーうるふ
184:名無しさん@ピンキー
08/07/01 06:06:27 W0nq8IPh
保守らいかんすろーぷ
185:名無しさん@ピンキー
08/07/01 15:28:39 wtPa4OES
保守d e a r
186:名無しさん@ピンキー
08/07/01 19:44:13 S1O1TneS
つづきまだー?
187:名無しさん@ピンキー
08/07/03 19:06:28 Cys6bH2A
>>186♀ワイバーンまだです。ごめんなさい・・・orz 忙しくて、中々時間が取れないもので。
ちなみに当初は、主要登場人物(5名)の何人かが敵軍(8名)との決戦のさなかに死亡するという
設定で、♀ワイバーンもその中の一人だったのですが。もう少し書いてみて、小説&ワイバーン娘
の人気が高そうであれば、「死亡する」から「重傷は負うも一命を取り止める」とかにあらすじを
少し変更してみようかとも考えてます。
188:名無しさん@ピンキー
08/07/04 23:59:07 b9O8mraG
変身ネタでもないあらすじだけじゃリアクションのとりようがないよ。
種族の被差別と、変身後の容姿がコンプレックス、ってのは王道で良いよね。
楽しみにしてる。
189:名無しさん@ピンキー
08/07/07 08:29:11 EBS3U4HK
ほっしゅ
190:名無しさん@ピンキー
08/07/10 08:48:22 /Q9jDj8G
保守
191:名無しさん@ピンキー
08/07/16 00:11:08 SgEw6ITp
保守蜘蛛女たんイートミー
192:名無しさん@ピンキー
08/07/17 02:05:52 JOS/k89q
嘗て無い停滞に
俺の胸は爆発寸前!
193:名無しさん@ピンキー
08/07/17 02:59:07 4b5OQ94c
>>192
正味な話、小説を書くこと自体が趣味じゃないと、胸が爆発寸前じゃなきゃ書けないよ
だからまあ、期待してる
194:名無しさん@ピンキー
08/07/20 11:30:28 OtN386sr
もうこのスレオワタ
195:名無しさん@ピンキー
08/07/21 01:05:34 8bexLpE6
近いうち何か投下します。だから保守
196:名無しさん@ピンキー
08/07/21 10:12:22 tUwnHF0B
期待保守
197:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:27:33 9NjRkB7D
「佐織~、ご飯の時間だ」
研究室の一角、しかしそこは独房と呼ぶに相応しい場所だった。
佐織はいつものように暗闇から前足だけを覗かせる。
「今日は佐織の大好きな毒蜘蛛だよ。
なんとオーストラリア産~!高かったんだぜ、コレ」
俺は手に持った皿を佐織に見えるように傾けてみせた。
皿の上では色鮮やかな巨大な蜘蛛が手足をもぞもぞ動かしている。
「入るよ・・・」
俺はごくりと生唾を飲んで、鉄の格子に手をかけた。
ギギギギギ・・と派手な音を立てながら、重い扉が横にすべる。
「ほーら、佐織、うまそうだろう?」
なるべくおどけてしゃべってみたが、やはり声は震えていた。
そう、今日はいつもと違う。
普段は食事を与えるとき中になんか入らない。今日は特例中の特例。
独房に足を踏み入れると、空気が一変したのがわかった。
そして同時に悟ってしまったんだ。
今日俺は佐織に殺されるんだって。
198:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:29:41 9NjRkB7D
付き合うってほど大袈裟なもんじゃない。ただ彼女が俺に惚れてただけ。
仕方ないから一緒に遊びに行って一緒に住んでセックスして。
別に楽しくなんかなかった。
でも、彼女は、佐織はいつも心の底から楽しそうに笑っていた。
佐織には悪いけど、俺はそんときの佐織の顔をよく思い出せない。
だってあのときの俺は、どうかしてたんだ。
自己紹介が遅れたけど、俺はある研究室で助手をしている。
なんかわけのわからない大きな団体で、どんな活動をしてるかもよくわからない。
でも俺はそこで自分にわかることを自分のできる範囲でやってる。
仕事ってそういうもんだろ?
とにかく俺はわけわからないなりにもちゃんと仕事をして女とも遊んでたわけだ。
199:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:31:02 9NjRkB7D
しかし運命は突然狂ってしまった。俺のついてる教授の一言で。
「今度の実験には被験者が必要だ」
ふーん。それで?
「来栖君(俺の名字ね)にお願いしたいのだが」
ちょ、待てよ。
「お、俺ですか?あの、実験てどんな・・」
「まあ今度のはちょっと大掛かりなものになりそうでね、
私の知り合いといえば、君ぐらいしかいないだろう?だから君にお願いしたまでだ」
「はあ、まあそれはわかりますが、実験って・・」
「内容は君に言っても到底わからんよ。イエスかノーかだけ聞かせてくれ」
まあこの業界ネジが一本や二本足りない人間は多いからな。珍しいことじゃない。
「まあ断るようであれば?私もクビ、当然君も」
「あ、ああ待って!います!一人、俺の知り合いに調度いいのが!そいつに頼んでみますよ」
頭の中にあいつの顔が真っ先に思い浮かんだ。
「本当か、よかった。じゃあうまいこと頼んでくれよ」
教授はまるでこうなることを予想してたみたいに軽い足どりで立ち去っていった。
200:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:41:36 9NjRkB7D
「な?そんな怪しい実験じゃないんだ。ほんとだって!頼むよ」
佐織はなかなか首を縦に振らなかった。まあ当然だけど。
「シンちゃん(俺の名前ね)の言うことは聞いてあげたいけど、やっぱり怖いよ・・」
「わかる!佐織の不安は痛い程わかる!けど、俺は
一緒に経過を見届けなきゃならないからさ、頼むよ、俺には佐織しかいないんだ」
口からデマカセ、まったくヘドが出る。
「ほんとに?」
しかし佐織はというと顔を赤くして満更でもない様子。もう一押し。
「当たり前だろ、それに俺がそんな危険なこと、佐織にさせると思うか?」
「ううん?」
「じゃあ決まりな」
「うん!」
「サンキュ」
俺は佐織の唇にキスしてやった。
佐織は待ってましたといわんばかりにキスに夢中になる。
これだから女は嫌いだ。
こんな普通な女どうなったって構わない。
このとき俺は、快く実験を引き受けてくれたにも関わらず、沙織のことを内心嘲笑っていた。
201:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:42:16 9NjRkB7D
実験はさっそく翌日から行われることになった。
「まさか女を連れてくるとは思わなかったよ」
教授もご満悦。そりゃ男よりはやりがいがあるだろう。
「じゃあさっそくだが来栖君、これをあの子に」
教授に渡されたのは注射器だった。中には青紫色の見たこともないような色の薬品。
さすがに俺も躊躇した。
「こ、こんなの射って佐織は大丈夫なんでしょうね」
「わからん。実は私も何も知らないのだよ。
噂ではどこかの国の政府が作った薬品で、極秘に日本に持ち込まれたとかなんとか」
噂かよ・・・。話は聞かれてないものの、佐織も不安そうにしている。
俺もどうしていいかわからずもたついていると、耳元で教授が囁いた。
「これはね、もうクビとかそういう次元の話じゃない。
君も関わった以上ここでやめるのは危険だ。もちろん彼女も。
もう後戻りはできないんだよ・・」
教授の声はまるで楽しんでいるように聞こえますけど・・。
まあたしかにここまで来たらやるしかない。俺は腹を決めて佐織に近づいた。
202:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:42:59 9NjRkB7D
「シンちゃんひょっとしてこの注射、私に射すの?」
「そうだよ、なに、ビビっちゃってる?」
「当たり前じゃん!こんな気持ち悪いの!私帰る!」
佐織はクルッと向きを変え、カツカツと靴を響かせながら出口へ向かう。
こうなりゃ力づくでも!
「待てよ!」
俺は佐織の腕をぐっと掴んだ。
「いったあい!」
佐織が振り返ると同時に俺は素早く佐織の二の腕の付け根にプスッと注射を差し込んだ。
「あっ!」
注射の中の液体は少しずつ、確実に減っていき、
佐織の腕に注ぎ込まれていく。
まるで時間が止まったように数秒が過ぎ、注射の中は空っぽになった。
俺は注射針を抜き取る。
佐織は目に涙を一杯ためて、
「バカ!」
と言い残し実験室を出て行った。
放心状態の俺。教授が俺の肩をポンと叩いて言った。
「楽しみだな」
203:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:49:47 9NjRkB7D
その後三日間、俺達は泊まり込みで佐織を観察した。
しかし様々な検査をしても、なにひとつ変化は見られなかった。
やっぱりあれはただの色水だったのだろうか。
教授もおもしろくないといった様子で、ついに実験は終了することになり、
俺と佐織は帰宅することを許された。
佐織は金一封をもらい、かなり浮かれていた。
ま、結果オーライか。これで俺も肩の荷が降りるってもんだ。
家に着くと佐織はすぐにキスしてきた。やることにしか興味がないのかこの女は。
しかし俺の頭の中にはあの液体の青紫色が鮮明にこびりついていて、
どうしても佐織とセックスする気にはなれなかった。
佐織ははぶててふて寝。俺が潔癖すぎるのかそれとも。
しかしその日の夜、俺の勘が間違っていなかったことが証明されることになる。
204:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:50:30 9NjRkB7D
「ぐぎゅるるるる~」
「ぐぎゅるるるる~」
寝静まった夜の空間に異音が響く。
まったくなんの音だ。思わず目が覚めてしまった。
横を見ると佐織も寝返りをうってよく眠れないようだ。
不思議に思い佐織に聞いてみた。
「なあ、これ、なんの音だろう?」
すると佐織も起きているようでこっちを向いた。
しかし俺は佐織の顔を見て思わずのけぞった。
目が赤く血走って、ギラギラしている。
「おい、ちょっと、どうしたんだよ」
「お、お・・」
かすれた声を振り絞るように佐織は口を開く。
「お、お腹が、空いて、眠れないの・・」
「へ?」
俺は思わず間の抜けた返事をしてしまった。
「お腹が空いて眠れないのよぉ・・!」
暗闇なのでよく見えないが佐織は涙を流していた。
「じゃあ、なんか食えよ」
「食べたよ!実はさっき起きてカップ麺食べたの。でも全然満たされない・・」
ぐぎゅるるるるる!その音はむしろ腹の音だと思えないほど大きな音だ。
「それ、佐織の腹の音か」
「うん、恥ずかしいけど、止まらない・・」
今頃になって変化が現れたってことなのか。俺は起きて携帯を手にとった。
205:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:52:11 9NjRkB7D
その後俺達は研究所に向かい、教授にいきさつを話した。話してる間も佐織の腹の音は鳴り続けてかなりうるさい。
「じゃあこういうことか。この三日間見えないところで佐織君の身体は変化していた。
そして今日になって初めて見えるところに変化が現れるようになったと」
「そうなんですかね」
「そうだとも!」
教授は目を輝かせた。
「そしてカップ麺を食べても腹がふくれない、つまり今の彼女の身体が欲しているのは
人間の食物ではないということだ。違うかね?」
「まあ、そういうことになりますかね・・」
「私に心あたりがある。ちょっと待っていてくれ」
そう言うと教授は研究所の奥へと駆けて行った。
206:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:53:19 9NjRkB7D
「シンちゃん、もうお腹が空いて頭がおかしくなりそうだよ・・!」
佐織はもう半泣き状態だ。腹の音は更に大きくなっていく。
「大丈夫だ。今教授がなんとかしてくれるって」
「そんなの信じられないよ・・」
俺もだよ・・。早く帰って眠りたいよ、全く。
「おおい、すまんな遅くなって」
しばらくして教授が戻ってくる。手に何か持ってるが?
「佐織君、いま君が欲しがっているのはスバリこれだろう」
教授は手に持っていた容器を机の上にどんと置いた。
それは虫かごだった。中を覗いてみると、そこにいたのは見たこともないような大きな蜘蛛。
全身が茶色い毛で覆われていて見るからにグロテスクだ。
「きゃあ!なにこれ!」
佐織は一目見ただけで悲鳴をあげた。
教授はニヤニヤしながら佐織に言い放った。
「これが君の食料だよ」
207:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:54:06 9NjRkB7D
「こんなの食べるわけないじゃない!あたし虫とかダメなんだから」
「そんなことはない、よく見てごらん」
教授は必死で目を逸らす佐織の目の前にかごを持って行き
しつこく佐織の顔に近づける。
「ちょっとやだ、やめてよ!」
「いいからちゃんと見て!」
教授はぐいっと佐織の顔を両手でつかみ、虫かごの方を向かせた。
「あ、あ、気持ち悪い・・」
佐織の声が震える。
「気持ち・・・悪いよぉ」
しかし少し様子がおかしい。佐織の目は真っすぐに蜘蛛を見つめていた。
やがて教授がゆっくり佐織の顔から手を離しても、
佐織の目は蜘蛛から離れない。むしろ凝視している。
ぐぎゅるるるるる!
佐織の腹がけたたましく鳴り響く。まるで蜘蛛に反応しているようだ。
やがて、じっと見つめていた佐織の口の端からてらてらと光るものが見えた。
佐織はだらしなくよだれを垂らしていたのだ。
208:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:54:51 9NjRkB7D
「教授・・」
佐織が静かに口を開く。
「ちょっと、この蜘蛛触ってもいい?」
呂律の回らない喋り方。
「ああいいとも」
教授はゆっくりと蓋をあけ蜘蛛を取り出し、佐織の手に乗せた。
佐織は蜘蛛をとろんとした目で眺めている。数分前まで暴れていたのが嘘のようだ。
口からはとめどなくよだれがどぷどぷ溢れている。
しかし本人はまったく気付いていない様子だった。
なんだか異常なシチュエーションだが、俺は今まで見た佐織の中で一番綺麗だと思ってしまっていた。
しばらくして佐織は小さな声でこう言った。
「いただきます」
そう言うと佐織は大きく口を開け、ばくりと蜘蛛を一口で食べた。
209:名無しさん@ピンキー
08/07/22 17:55:49 9NjRkB7D
ぼり・・・ぼり・・・ぼり・・
蜘蛛を租借する音。思わず鳥肌が立ってしまう。
しかし当の佐織はというと、うっとりとした表情を浮かべ、
味わうようにゆっくりと口を動かしている。
佐織の唇の端から蜘蛛の脚がぴょんと飛び出していて、
咀嚼する度に少しずつ中に入っていく。
佐織は本当に蜘蛛を食べたんだ。俺は改めて目の前で起きたことを実感した。
やがて蜘蛛をごくんと飲み込み、佐織はぷはあと息をついた。
しかし数秒後、自分が何をしたかに気付いたようで
サーッと血の気が引いたように顔が青くなった。
「いやああああああああ!」
研究室中に佐織の声が反響した。
「食べちゃったあああ私、虫たべちゃったよおお・・」
佐織が泣くのも当然だ。俺は佐織の肩を優しく抱き寄せた。
「ううう苦いぃ後味が苦いぃ・・」
うぇ。勘弁しろよ・・。
蜘蛛を食ってから佐織の腹の虫はすっかりおさまっていた。
210:名無しさん@ピンキー
08/07/22 18:13:56 jifykBx7
連投支援
211:名無しさん@ピンキー
08/07/22 18:16:04 9NjRkB7D
いまんとこここまでしか書けていません・・・
支援サンクスでした
212:名無しさん@ピンキー
08/07/22 18:27:07 tV2qbfUH
GJ!蜘蛛を食べるシーンがすごい好き。本人の意志に反して、って最高だよね!
213:名無しさん@ピンキー
08/07/23 03:06:25 qGqmANPm
GJです。すごくいいですね。
さて、佐織は何になりつつあるのか。続きが楽しみです。
214:名無しさん@ピンキー
08/07/25 12:52:08 45/Obcyq
近いうちにワイバーン娘うpします。文才には期待しないで下さい。
215:名無しさん@ピンキー
08/07/27 03:44:28 MMByZ5JL
まだー?
216:195
08/07/28 16:13:54 h7nUauJC
>>197-209様乙です!続き楽しみです!
実を言うと近いうち投下すると言いつつ、まだだったりします。
(流れからすると当然195=197に見えそうですが)
…すみません
217:名無しさん@ピンキー
08/07/28 21:04:01 /tC3OS5S
分かった早く投下するんだ!いいか、絶対だぞ!!約束だからな。
218:195
08/07/30 22:45:59 Ua7xUukr
来週…来週には…
219:名無しさん@ピンキー
08/08/01 20:32:34 s8z2RCGI
>>218
そういってどうせ書かないんだろ。書く書く詐欺Uzeeeeeeeee
220:名無しさん@ピンキー
08/08/01 20:37:45 360Tb+Kr
____________
ヾミ || || || || || || || ,l,,l,,l 川〃彡|
V~~''-山┴''''""~ ヾニニ彡| 書く・・・・・・!
/ 二ー―''二 ヾニニ┤ 書くが・・・
<'-.,  ̄ ̄ _,,,..-‐、 〉ニニ| 今回 まだ その時と場所の
/"''-ニ,‐l l`__ニ-‐'''""` /ニ二| 指定まではしていない
| ===、! `=====、 l =lべ=|
. | `ー゚‐'/ `ー‐゚―' l.=lへ|~| そのことを
|`ー‐/ `ー― H<,〉|=| どうか諸君らも
| / 、 l|__ノー| 思い出していただきたい
. | /`ー ~ ′ \ .|ヾ.ニ|ヽ
|l 下王l王l王l王lヲ| | ヾ_,| \ つまり・・・・
. | ≡ | `l \__ 我々がその気になれば
!、 _,,..-'′ /l | ~''' 小説のうpは
‐''" ̄| `iー-..,,,_,,,,,....-‐'''" / | | 10年後 20年後ということも
-―| |\ / | | 可能だろう・・・・・・・・・・ということ・・・・!
| | \ / | |
221:名無しさん@ピンキー
08/08/01 21:02:43 s8z2RCGI
>>220
Warota。
222:名無しさん@ピンキー
08/08/03 02:26:36 D40/2hh8
>>182ワイバーン娘の続き。
小鳥の囀りを聞き早朝の涼しく湿った風を麗しい身体に受けながら、少女は泉へと辿り
着いた。少女の向かいには、小高く聳えた黒い岩壁の上から、湧き出た水が小さな一筋の滝
となって流れ落ち、それが下に広がる岩盤に流れ落ちて作られた、浅く広い天然の浴場が有
った。壁面から生えるシダや年季を感じさせる苔、更にそれを包む万緑を讃えた周囲の木々
が無機質な岩にまで生命感を与えていた。
少女は暫く泉の前に立つと、腕を頭上に伸ばし大きく深呼吸した。木々の香りやそれを
縫って降り注ぐ太陽の暖かさを少女は吸い込む、やがてそれは体の中に広がり、嫌な夢の
記憶を浄化していった。
やがて少女は羽織っていた足首ほどまでもある薄茶色のケープを外すとそれを綺麗に畳み、
泉のほとりの平たい岩の上へと載せた。同じ様にして膝下まである波打った薄手の黒いスカート、
レースで飾られた白い長袖のブラウス、純白のスリップ、そして清楚なパンティーを順番に
ゆっくりと脱いで行く。一糸纏わぬ姿となった少女の胸がたわみ震えた。
223:名無しさん@ピンキー
08/08/03 05:49:41 +qn6aV6Y
…1レス分だけ?
224:名無しさん@ピンキー
08/08/04 08:01:01 qzUKQH8m
みんなの不満が爆発寸前~♪
225:名無しさん@ピンキー
08/08/06 10:34:36 iepDNMO+
>>222の続きです。本当遅くて申し訳無い(´;ω;`)
絹の様に柔らかく艶やかな白い肌を晒した少女は、泉の前に立つとゆっくりと一歩ずつ泉の中
へ足を踏み入れていった。水流で洗われた黒い玄武岩の感触を足の裏に受けながら、少女は一歩、
また一歩足を踏み入れていく。腰の深さまである場所に着くと少女はそこへしゃがみ込み、胸の
辺りまで身体を浸した。そこへ座り眼を瞑りながら少女は悪夢の穢れを落としていった。まだ両親
が生きていた頃からの習慣である。少女は母と来た事もあるこの泉が好きだった。何か嫌な事が
あった時もこの泉に浸って癒されると気分が良くなるものだった。
髪の毛に何か柔らかく軽い物が落ちるのを感じて、少女はそっと眼を開け空を仰ぐ。岸壁の上
に生えた木蓮が、満開になった純白の花を無数に讃えていた。水面に落ちた花を拾うと少女はそれ
を髪に飾り、水面に映った自分の顔を見る。十数年前のちょうどこの時期、母と最初に泉を訪れた
時にも木蓮の花が咲いていたのを思い出す。水面に落ちた花を母は拾い上げ、まだ小さかった少女
の髪に飾ろうとしていた。まだ小さかった顔に花が大き過ぎて似合わないのを母は面白おかしく笑
いながら自分の髪に飾ったのだった。ただでさえ常人離れした美貌を持っていたその時の母は、
その時の少女にはまるでおとぎ話に出てくる女神の様にさえ見えた。その美しさに見惚れながらも、
花の似合う事を羨んだ少女は母に尋ねたのだった。
「ティアも・・・いつか花の似合う女になれる?」
幼い少女の無邪気そのものの質問を、母は笑いながらも優しく応えてくれた。
「ええ、なれるわ。そのうちすぐにね。きっとお母さんなんかよりももっと似合う素敵な女の子に
なってると思うわ。」
「本当!?」
「ええ本当よ。」
少女は悦びに胸を躍らせてさらに訪ねた。
「本当!!どれぐらい?どれくらいでなれるの?」
「そうね・・・あと十年もすればとっても綺麗な女性になってると思うわ。」
十年、当時の少女にとってそれは果てしなく長い年月の様に思えた。少女は堪えきれなくなって叫んだ。
「十年・・・?ティアそんなに待てない!ティアもっと早く大きくなるの!早くおっきくなってお花
の似合う顔、ママンにも見せてあげる!」
「うふふ、そうね。お母さんも見てみたいわ。」
そんな風に焦れる少女を母は優しく宥めてくれたのだった。
「うん絶対見せるの!待っててね!」
「ええ、楽しみだわ。」
「約束する!絶対見せるって!」
「じゃあ、お母さんも必ず見るって約束するわ。」
「本当?破ったらティア許さないの!おっきなドラゴンに変身しちゃうの!」
母は笑いながらも、そんな娘とのやり取りに真面目に応える。
「ええ、必ず守るわ。必ずね。」
遠く懐かしい記憶だった。
―そんな遠い母との会話の記憶―
226:名無しさん@ピンキー
08/08/07 00:26:44 Cc7MkJ5e
待つのがじれったいんで全部書ききってから投稿しては貰えないだろうか
227:名無しさん@ピンキー
08/08/07 02:23:52 Ks5CtJAb
>>225は忙しいんだよね
わかるよ
228:maledict(195) ◆sOlCVh8kZw
08/08/08 00:30:45 VK5x++qn
>>217様、>>219様
お待たせしました。
2スレ目に投下した「猿神退治異聞」の続編です。↓自サイトに転載してあります
URLリンク(book.geocities.jp)
続編、というか、以下は実はもともと美少女が活躍し異形化するという続編の
導入部だったのですが、本編が長くなりそうなのとで、独立させました。
短いはずだからすぐ投下できると思っていたのですが、
書き始めると色々出てきて思ったより長くなり投下遅くなりました。
また、そういう経緯の作品なので、「おっさんの異形化」という
あまり美しくないシーンが中心になっています。ご容赦下さい
(一応女性の異形化も入れましたが)
229:続猿神退治異聞・幕間(1/12)
08/08/08 00:32:38 VK5x++qn
にたにた笑いながら山道を歩く男が一人。背にはとれたての山芋の束を
背負っている。
結婚十年目にして、早くも男は精力の減退を感じ始めていた。ある日
思い立った男は、農作業を妻に任せ、精が付くと評判の自然薯を、
穴場で大量に収穫してきたのだ。
やがて小川にさしかかった男は、喉を潤そうと川に向かう。渇きが
癒えると空腹を感じ、収穫した山芋を一本、川の水でざぶざぶと洗い、
しゃくしゃくとかぶりつく。濃厚な味と共に滋養が体に染みわたる。
芋を洗う内、男は自分の体のひどい汚れに気が付き、水浴びをしようと
思い立ち、服を脱ぎ、川に入る。
そのときだった。山側の林の生い茂った葉がかさこそと鳴る。熊でも
出たかと男は緊張し、川から出る。だが、葉陰から顔を出したのは熊では
なく、若い女だった。しかも、あろうことか、一糸まとわぬ全裸の女だ。
男に襲われかけて逃げ出したといったような、取り乱した様子はない。
きりっとすました顔のまま、しっかりした足どりで林から歩み出てくる。
そのいでたちと釣り合わぬ超然とした様子が、男の心に妙に非現実的な
印象を与える。やがて男は女の顔に見覚えがあることに気付く。
「…お、おめえは、まさか…」
女の方も男に気付いた様子で、妖艶としか言いようのない笑みを浮かべ、
男に声をかける。
「あら、おまえさん。久しぶりね。結婚したって聞いたけど、こんな
ところで何を?あら、山芋とり?そんなに精をつけて、何する気なの
かしら。うふふ…」
「…お、おめえ、生きていたのか?…そうか!猿神のやつが死んで、
それで逃げ出してきたんだな!」
230:続猿神退治異聞・幕間(2/12)
08/08/08 00:33:07 VK5x++qn
男の村では最近、長きにわたって村を支配してきた因習が幕を下ろした。
猿神信仰。年に一人、村の美しい生娘を獰猛な猿神に生け贄として捧げる
という野蛮な因習。その悪習が、しばらく前に村に住みついた勇敢な
若侍の手で終止符を打たれた。侍は「神」を騙っていた猿の化け物を
討ち果たしたのである。
目の前にいる女は、十年前、他でもないこの男の許婚であった。だが
二人の結婚は果たされずに終わった。女の家に「白羽の矢」が立ち、
女は泣く泣く生け贄となり、村から姿を消したのである。男は美しい
許婚への未練を引きずりながらも、半年後、さほど別嬪ではないが、
傷心の男の面倒をかいがいしく見てくれた今の妻を娶ったのだった。
「それにしても、おめえ、どうしたわけだ?全然あの頃と…」
男の顔や手には、安閑とは言えない野良仕事による、十年分の風雨の
跡がくっきりと刻まれている。それは妻も同じだ。だが目の前にいる
かつての許婚は、まるで生け贄として村を去ったあの日そのままの、
みずみずしい肌と若々しい肢体をとどめている。いつしか男の目は
本能的にその裸身をなめるように眺め回していた。
女が男の肉体の一部に目を留めてぽつりと言った。
「…抱いて下さらない?」
言いながら女は男の元に歩み寄ってくる。男は自分自身が水浴びした
まま衣類をまとっていなかったこと、そしていつの間にか下半身の一部が
固く屹立していたことに気が付く。口の中には山芋の粘つく濃厚な風味が
残っていて、それは村人の信じるところでは男の精の源そのものである。
その俗説は、滋養が肉体に与える活力以上に、男の脳に強力な暗示効果を
もたらしていたのであった。
231:続猿神退治異聞・幕間(3/12)
08/08/08 00:33:43 VK5x++qn
女はついに男にしがみつく。妻の骨張った肉体とはまるで違う、
柔らかな肉が男の体を覆う。男は、おう、とうつろなうめきを漏らす。
頭の芯が痺れ、全身に行き渡った精が下半身に集中するのを男は感じる。
十年前、一度も結ばれることなく去った女が自分にしがみついている。
男は若い頃何度なくその肉体の感触を夢想し、数限りなく精を独り
摺り掻いては空しく垂れ流していた。いや、結婚後、妻を抱いている
最中でさえ、男の脳裏からその夢想が完全に消えたことはなかったかも
しれない。そして今やそれが現実となり、あるいはかつての夢想をはるかに
超える強烈な性感的魅力を帯び、男を優しく包んでいるのである。
「…ねえ、早く」
女が耳元で、熱い吐息と共にそうささやく。男は半ば夢心地のまま、
河原に女を押し倒し、その乳房にむしゃぶりつく。そしてすでに激しく
湿潤している女の秘部に、己のいきり立つものを貫き入れる。あやうく
その瞬間に洩れそうになる精を、男の脳髄に残ったわずかな理性が引き
戻し、濃厚な快楽のときを少しでも引き延ばそうと狡猾に腰の動きを調整
する。そうして、この十年で身につけた様々な手管を駆使し、快楽を
少しでも長く深く貪ろうと試みる。
だが、ふと男は、腹や手に感じる女の肉体の感触の異質さに気付く。
抱き始めたときには柔らかで滑らかだった皮膚が、いつのまにかごつごつと
骨張り、さらに厚い毛皮に覆われているような手触りになっている。
女の肩と腰は急にその幅と厚みを増し、秘部の圧迫が急激に
弱まったような感覚も覚える。我に返った男は目を開き、自分の下に
横たわる女を目で確認し、叫び声をあげる。
「う、うわあああ!化け物!」
232:続猿神退治異聞・幕間(4/12)
08/08/08 00:34:26 VK5x++qn
男が抱いていたのはすでに柔肌の若い娘ではなかった。それは、
男よりもはるかに高い背丈の、毛むくじゃらの猿の化け物だった。
男の一物は急激に萎え、男は慌てて身を引き離そうと試みる。だが、
男の腰の後ろには化け猿のたくましい腕が回され、男がいくら力を込めて
脱出しようとしてもびくともせず、萎縮を始めた男の魔羅をその秘部の
中にくわえ込み続けるのをやめない。
猿の化け物の顔は、増えた毛と、鋭い犬歯と頑丈な顎以外は、おおむね
かつての美しい女の顔つきをとどめていた。だが、その目には禍々しい
狂気が宿っている。化け物はぞっとする口調で男に語りかける。
「人身御供の夜、あたしはあの忌々しい古猿の力で猿に生まれ変わった。
そしてこの十年、あの古猿に虐げられて生きてきた。我が子を愛でることも
許されず、そして、こうやって気ままに人間を襲うこともできない、
みじめな生活。…だけど、我らが新しい親方様が古猿を殺し、あたしたちを
解きはなってくれた。もう何の我慢も遠慮も要らない。あたしたちは
子を生み、人間を襲い、まずはこの村を、そしてやがてはこの国を、
さらには他国を征服する!」
狂気に満ちたその言葉を男は完璧に理解したとは言い難い。だが、
自らに、いや自分の住む里にただならぬ危機が迫りつつあることだけは
直感的に悟った。男は抗い、自分の萎えたものを引き抜いて怪物から
身をもぎ放そうと渾身の力を込める。だが怪物の腕はびくともしない。
「そろそろ再開しましょう。あんたはもうじきあたしの放つ『勢液』の
力であたしの眷属に生まれ変わる。眷属となったあんたは奥さんや子供や
他の村人を襲って仲間を増やす。そうやって村全体をあたしたちのものに
していくの。それがあんたの使命。あたしの使命」
233:続猿神退治異聞・幕間(5/12)
08/08/08 00:35:02 VK5x++qn
そう言いながら女は腰を淫猥に動かし始めた。同時に、緩んでいた
膣圧が最初と同じほどに、いや、それ以上の弾力で男を締め付ける。
男のものは見る間にその硬度を取り戻す。怪物の潤んだ瞳が男の目を
射抜く。男は、美しい女の目と、獰猛な獣の顎を持つ怪物に奇怪な魅力を
感じ始めた自分に気付き、うろたえる。
「うふふ、あんたもだんだんよさが分かってくるはずよ」
再度その頑丈な腕に抱きしめられた男は、そのしなやかな筋肉の圧迫と
表皮をこする剛毛に、えもいわれぬ快感を感じつつある自分に気付く。
「うおう…おぉ…おぉ」
男の魔羅はこれ以上ない硬度に達し、強い弾力で己を囲む膣壁に、いまや
自らの意志で前後運動を開始している。
「ふふ。その調子。もうじきよ。達したとき、あんたの人間としての
生は終わりを告げる」
おぞましい宣告に、しかし男の本能はもはや抵抗できず、男の腰はさらに
速く、さらに大きく動くのをやめられない。やがて男の全身がびくんと
脈動し、結婚前激しく焦がれた場所へ、とうとう精がほとばしる。
「おほーーーーーーーーーーーっ」
射精の快楽と同時に、怪物の膣内から、男の性器を通じて男の体内に、
呪われた物質、人を人でないモノへと変じる「勢液」が注ぎ込まれる。
234:続猿神退治異聞・幕間(6/12)
08/08/08 00:35:50 VK5x++qn
「あうは!うは!をうは!わうひはほはほははははは!」
男の脳に強烈な刺激が達し、男は意味不明のうめき声を発する。脳に
達した「勢気」は、このがさつな男の中にもかろうじて残っていた繊細な
情感や良心のカケラを跡形もなく消し去り、その空隙にどす黒い欲望と、
それに従属する、人間をはるかに凌ぐ怜悧な知性を植え付ける。同時に
股間から全身に熱い塊が広がり、男の全身を満たしていく。力尽き
ぐったりと怪物の腹の上に伏している男の肉体はぶるぶると震え出し、
やがてがくんと痙攣を起こす。痙攣は続けざまに男を襲い、そのたびに
その身の丈は増し、手足は太くなる。そしてざわざわと全身に濃い体毛が
伸び始め、顎は厚く大きく変形し、太い犬歯が生える。
全身を貫く熱い「勢気」をもてあますように男は跳ね起き、痛がゆい
快感と共に変貌していく己の肉体をまじまじと見つめる。その目には
自分の下に横たわる怪物と同じ狂気が宿り、その口元からは、かつて
愛した女と同じ存在に変容しつつあることへの歪んだ歓喜がこぼれ
落ちている。
「むわはははは!わしは生まれ変わった!生まれ変わったぞ!」
喜び勇む怪物の魔羅は、つい今しがた達したばかりであるにもかかわらず、
すでに猛々しく屹立している。その赤黒い器官は、先ほどまでとは
比べものにならない長さと硬度を呈している。
「もう一度ぉ!もう一度ぉ!!」
いきり立つ一物をもてあましたオスの怪物は、そう狂おしい声で
言いながら、横たわるメスに覆い被さろうとする。だが、メスは冷めた
目でオスを見上げ、ぴしゃりと言い放つ。
「だめ」
235:続猿神退治異聞・幕間(7/12)
08/08/08 00:36:53 VK5x++qn
メスの声には有無を言わさぬ威圧感が込められており、オス猿は
困った顔で動作を停止するしかなくなる。その強制力は、かつて猿神と
呼ばれた老猿がメス猿たちを支配したのと同じ性質のものであった。
メス猿は立ち上がり、再び人間の女への化身を始めながら、毅然とした
口調で男に宣告する。
「あんたの『勢液』には別の大事な使い道があるわ。村の女たちを
あたしたちの眷属に変えていってもらわないと。まずはあんたの可愛い
奥さんに、たっぷりとそれを注ぎ込んでもらうわ」
その言葉は、オス猿の中に植え付けられた新たな本能に火をつけた。
人間の女どもに勢液を注ぎ込み、猿神の眷属へと造り変える!―解放
される勢液。怯える犠牲者の顔。変貌する肉体。やがて犠牲者は狂気と
どす黒い欲望に染め上げられてゆく…―その映像がありありと脳裏に
浮かび、オス猿は快楽の予感に身をよじる。
…だが、オス猿の前には、再び完全に人間の女に化身し終えた女が
立っていた。オス猿は新たな本能に突き動かされる一方、かつて愛した、
否、現在ますます狂愛の募る女の裸身から目を逸らすことができなかった。
勢液の力もぬぐい去ることのなかった、男の心の深い傷跡に、その白い
裸身は突き刺さり、かき回し、情欲を掻き立てた。しかし、勢液の無駄
遣いはしてはならない!その禁令が男を縛り、束縛がますます女への
情欲を煽る。二つの欲望が怪物の心を引き裂く。
236:続猿神退治異聞・幕間(8/13)〔←レス数訂正〕
08/08/08 00:38:03 VK5x++qn
そんなオス猿の様子をじっと観察していた女―否、女の外見を装った
メス猿―は、面白そうにオス猿を見上げて言う。
「ずっと将来、この星がすっかりあたしたちのものになったら、その
ときはあんたと子作りをしてあげるわ。でもそれまではおあずけ!
いいわね?…さあ、あんたも人間に化身なさい。そして種族のつとめを
果たすのよ」
「…『ほし』?」
猿神と呼ばれた老猿は、いにしえよりの知恵と自らの高度の知性に
よって自らの住まう世界の実相を驚くほど正確に把握していた。メス猿の
言葉はそれを受け継いだものであった。だが、発達した脳髄の使用法を
未だ十分に習得していないオス猿は、耳慣れぬ言い回しに首を傾げる
しかない。しかし、そんなオス猿も、女の語る「将来」というのが、
多分途方もなく先のことであろうことだけは直感する。その認識はこの
哀れなオスに絶望を与え、おあずけをくらった情けない顔のまま、
オス猿は人間への化身を始めた。
人間に化身したオス猿の外見は以前の男とほぼ同じであったが、その
肌はかつてよりずっとつややかでみずみずしく、透明感があった。骨格や
肉付きに微妙な修正が加わり、それらが一介の百姓に過ぎないはずの
この男に、まるで高貴な生まれの者のような気品と性的魅力を与えている
のだった。そして太さと長さを増した魔羅は、人間に化身した後も天空を
指すのをやめなかった。
「いい感じよ。人間の女どもは誰しもその姿にいちころ。あんたのどこが
どう変わったのかよく分からないまま、気がつくとあんたの虜になって
いるはず」
237:続猿神退治異聞・幕間(9/13)
08/08/08 00:38:37 VK5x++qn
人間の男であれば大喜びしそうな状況に男はにこりともせず、もくもくと
脱ぎ捨ててあった野良着を着込み、山芋を背負う。股間のいきり立った
ものは、引き裂かれた男の心中の満たされぬ欲望の表れであった。
この先男はその器官を駆使し、本能の赴くまま、自分の妻を筆頭に、
村中の、否、この国中の女を化け猿の眷属へと引き入れていくことになる。
だがこの哀れな男のもう一つの欲望が満たされる日は、多分彼が生きて
いる内には決して来ないのだった。
山芋掘りを終え帰宅した夫を迎えた妻は、夫の姿を見るなり、ただならぬ
危険を直感した。今朝までの夫と、目の前の男は、どこがどうとは
言えないが、何かが違う。目の前の夫のようなモノは、何やら禍々しい
存在に変じてしまっている。妻の直観がそう告げていた。
だが、その本能の警告に妻は従わなかった。目の前のモノがあまりに
魅力的であり、そして今夜、そのモノと自分は交わるのだという期待と
欲望が、健全な自然の警戒信号を抑止してしまったのである。―夫は
噂の強壮作用があるというあの芋を早くも食べたに違いない。夫から
発されるこの濃厚な色香、潤んだその瞳、長く伸びたまつげ、みずみずしく
透明でつるりとした皮膚などはその作用に違いない。何よりも、夫の
野良着を突き破らんばかりに盛り上がる股間がその証拠だ―妻は夫の
変化をそう解釈し、無理矢理に納得した。
238:続猿神退治異聞・幕間(10/13)
08/08/08 00:39:12 VK5x++qn
その晩、ごちそうにありついたその家の子供たちは、しかし両親の
異様な様子をひどくいぶかしんでいた。妙につやつやして気持ちの悪い
父が憮然とした顔で山芋を食べている。その股間は、何を入れているのか、
はち切れんばかりだ。そして母は父の一挙一動に見とれ、目を潤ませ
ながら、しなしな、くねくねと不気味な仕草を見せる。二人とも、
いつもなら何より気にかけるはずの子供たちには見向きもせず、末っ子の
赤子が泣き出したのも放置したままだ。幼い姉と弟は顔を見合わせる
しかなかった。
子供たちが寝静まり、夫は妻を家の外へと誘う。狭いあばら屋の中で
巨大化すると家を壊す恐れがあったからだが、思いきり声を上げて快楽を
堪能できる期待に、妻は喜んで夫の誘いに応じる。
239:続猿神退治異聞・幕間(11/13)
08/08/08 00:39:53 VK5x++qn
満月に照らされた二つの裸身。永年の野良仕事の労苦が刻み込まれ
骨張った妻の裸身は、しかしそれでも青白い光に照らされることで、
幻想的な輝きを得ていた。横たわるその上に、月光に照らされ、この世の
ものとは思われぬ男性美を放つ男の裸身が覆い被さり、妻の中に入る。
昨日までとは比較にならない濃厚で強烈な快楽に貫かれ、歓喜の声を
あげる妻。だが、その声はたちまち悲鳴に変ずる。自分に覆い被さって
いる生きものがいつの間にか人に非ざる異形へと変じていたことに
気付いたのだ。冷ややかな笑いを浮かべ、相手の身心に間もなく生じる、
恐ろしい変容を宣告する怪物。恐怖に囚われ、身をもぎはなそうと必死に
なる妻。だがその秘部に穿たれた肉の杭を引き抜くことはどうあっても
できない。それは化け猿の怪力のためばかりではない。妻自身の内で
火のついた激しい情欲が、激しい恐怖に抗い、もっともっともっと
この快楽に浸りたい、とその腰をつなぎ止めているのである。―だめだ。
このまま媾わいを続けたら、自分も夫と同じ、猿の化け物になってしまう。
今すぐやめなければ!ああ、でも気持ちいい!やめたくない!だめ!
やめなきゃ!だめだ、やめなきゃと思えば思うほど気持ちよくなる。
猿になっちゃうのに!猿になっちゃうのに!やめないと!やめられない!
やめなきゃ!でも……
「あ゛あ゛あ゛!ぎもぢい!でも、猿になっちゃう!猿になっちゃう!」
恐怖と興奮が相乗し合いながら頂点に向かい、女はいつしか自ら腰を
振っていた。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁ!やめないと!でもやめられない!やめなきゃ!
やめられない!猿になっちゃう!猿になっちゃうぅぅぅ」
240:続猿神退治異聞・幕間(12/13)
08/08/08 00:40:29 VK5x++qn
女の腰の動きはオス猿の最後のタガを外し、オス猿は絶頂に達した。
その瞬間オス猿は自分の心が破けるのを感じた。そして破けた心の外側
から、この世のものとは思えないどす黒い塊が自分の内側に流れ込んで
くるのを確かに見た。それこそが「勢液」だった。この世の外側に位置
する、禍々しい欲望の塊。それが心の裂け目を通じてこの世に流れ込み、
性器を通じて外部へ放出される。それが勢液なのだと男は知った。世界の
外側の黒い粘液が男の気脈を流れ、激しい欲望と快楽が肉体を貫き、
やがて妻の胎内へと放出された。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!あぐぅふぅぅぅぅん」
人類の誰もが聞いたことのない嬌声を上げ、女は狂乱に包まれる。真っ赤な
快楽が女の全身を満たす。その目はまん丸く開かれ、全身はありえない
カーブを描いてのけぞり、がくんがくんと何度も痙攣する。痙攣するたびに
その肉体は大きさを増し、筋肉と骨格は頑健になり、体毛は急激に密度を
増し始める。顎は厚く大きくなり、急激に犬歯が伸びる。
女はそのすべての変化をはっきり自覚し、自分の身に生じつつある
ありえない変貌に怯え、恐怖し、絶望する。だがすぐに、「勢液」と共に
注ぎ込まれた狂気が急激に女の心を満たし、それら怯えや絶望を、さらに、
優しさや情愛のような人間らしい感情を、女の中から消し去っていく。
そして新たに生まれた優位種族としての自覚が、自らと、そして自分の
夫に生じた変貌に、嫌悪ではなく美と誇りの感覚を与える。怯えと絶望が
覆っていたメス猿の顔に、徐々に歓喜と驕慢な誇りの歪んだ笑みが
浮かび上がる。
241:続猿神退治異聞・幕間(13/13)
08/08/08 00:41:46 VK5x++qn
「わほほほほほほほほほほ」
狂気の歓声を発し、生まれ変わった喜びに満たされ、妻は夫を抱きしめる。
夫の心が本当には自分には向かっておらず、夫にとって自分は種族繁栄の
手段であり「獲物」の一つに過ぎなかった、という真実は今の妻には
知られていない―実は、彼らのこの感情の行き違いがはるか将来、
この優越種族全体をまっぷたつに分かつ陰惨な戦争の引き金になるのであるが、
今の彼らはそんな運命を知る由もない。
二体の異形はしばし絡まり合い、快楽の余韻をひとしきり貪ってから、
どちらともなく立ち上がり、顔を見合わせ、うなずき合う。
「さて…」
「…仲間を増やさねば」
二体の目は彼らが住まうあばら屋に注がれる。
「手始めはやはり…」
「…ええ。身近なところから始めましょう」
鬼畜と化した夫婦はいそいそと家路を急ぐ。彼らの子供たちの幼い
性器にたっぷりと勢液を注ぎ込む、そのめくるめく快楽の予感に身を
焦がしながら。
<了>
242:maledict(195) ◆sOlCVh8kZw
08/08/08 00:48:05 VK5x++qn
…以上、お粗末でした。急いで書いたのと、もともとあっさり過ぎる話に
起伏をつけようとして、かえって変なことになったかもしれません
なんだか時間がとれないので本編の方はいつ投下できるか分かりません。
忘れた頃に投下することになりそうな気がします。
ついでに、前スレ末にアイデアだけ書いた異世界に行く話は
細部が固まっておらず、さらにいつになるかわかりません。
…投下予定の定まらない作品の話はしない方がいいですね。すみません。
243:名無しさん@ピンキー
08/08/09 02:00:32 607NufFk
くっ、散々じらされた揚句にそのコテハンを見られるとは思わなかったぜ・・!
今日はもう寝るけど明日読ませてもらうね
244:名無しさん@ピンキー
08/08/10 10:30:22 3vgmxPrQ
久しぶりに覗いてみたら投下乙ですw
シチュエーション的にはドツボなんですが
如何せん猿って人間に毛が生えただけな気がしてならない……
245:名無しさん@ピンキー
08/08/11 13:54:30 GQwqzYfV
GJ!悪堕ちは苦手だけど過程、文章として読ませるなあ。面白かったです。
246:maledict(195) ◆sOlCVh8kZw
08/08/11 16:02:17 HSjjZ6Us
>>243様
なんか恐縮です(汗
>>244様
たしかに猿って異形化ネタとして微妙なんですが、もともと「猿神退治」をモチーフに
妄想を広げた作品なので、そこは変えにくいのです。(猿ネタが多いとはいえ、
猿じゃなきゃだめ、というほどでもないのですが…)
一応、別種としての猿(や類人猿)に変形するというより、ヒトという種が獣性と
技術的な知性のみを極度に肥大化させた、いびつな怪物、というイメージです。
また、ある人から「猿」ではなくて「狒狒」の方が原典に忠実だしおどろおどろしくないか、
と言われました。「狒狒」となるとこれは架空の怪物の一種と言ってよくて
(ビールのラベルの「麒麟」がアフリカのキリンではないのと同じく、
「狒狒」もアフリカのマントヒヒならざる幻獣と考えていいでしょう)、
実在の猿やヒヒとはずっと異形じみたデザインであってもいいでしょう。
(皮膚に鱗が生えているとか、目が金色とか、そんな感じ)
改稿するかどうかは未定ですが、行間を補って読んで下さっても構いません。
>>245様
悪堕ち苦手、という方からお褒め頂けるのはうれしいです。ありがとうございます。
以上、長レスすみません。
247:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:13:28 7RH1453v
>>225の続きです。きりの良い変身シーンまでいったので取りあえずウプしますね。
その母はもうここにはいなかった。それから間も無く大戦が勃発して両親を失う事など、年端も
行かぬ幼い少女には分かる筈も無かった。両親を失い、姉まで失踪して天涯孤独の身になってから
の少女にとって、年月は早く流れるものへと変わった。いつの間にか十数年という歳月はあっと言う
間に過ぎ去り、一人の無邪気な一幼女でしかなかった少女は、十数年という歳月のうちに可憐さや
優しさの中にも強かさを備えた立派な女性へと成長を遂げていた。この歳になって少女はようやく
気づく。あの時の母の言葉、そこにはやがて訪れる大戦を娘の為に生き延びて見せるという意味が
込められていたのではないかと。嫌な記憶を紛らわしに来た筈だったが、思い出した所でまた胸が
苦しくなった。時に厳しく自分を叱りながらもいつも暖かく見守ってくれた母。その母が永久に還る
事が無い事実を感じて切なさがこみ上げ、また胸が疼き出す。もう母が戻らぬ事は分かっていたが、
亡き母がそこに居る様な気がして、少女は誰にとも無く呟いた。
「お母さん、約束・・・守れなくてごめんね。あたし・・・お母さんほどじゃないかもしれないけど・・・
昔お母さんが云ってたお花の似合う女の子に・・・なれました・・・。見せてあげる事が出来無いのは
残念だけど・・・でも毎日元気に過ごしてるし、動物達とも仲良く暮らせています。お父さんとの天国
での暮らしはどうですか。こっちの生活は相変わらず大変です。色々心配も掛けるかもしれないけど、
これからも天国であたしの事、見守っていて・・・ね・・・・・・」
言い終えた後、胸に溜まった切なさが一気にこみ上げて思わず涙ぐむ。しかし、それを堪えて精一杯の
優しい笑顔を作る。涙ながらも可愛く無理の無いその顔は天使の微笑みそのものだった。可憐さと同時
に強さも備えた少女は微笑んだ。天国で見守ってくれている両親、それを悲しませぬ為に、そして明日
への希望を見い出す為に。
最後に少女は大きく息を吸うと、顔まで水中に沈めた。冷たい水の流れが顔も含めた全身に広がり、
少女の涙を、辛い記憶を、一気に洗い流していった。少女は息が持つまで冷たい清流に全身を浸す。
緩やかな流れに洗われた少女の髪は水中で幾筋もの細く美しい束となって靡いた。汚れが浄化されて
いくのを肌で感じながら少女は少し、また少し息を吐いていく。それは空気の泡となって少女の頬を伝い
肌をくすぐりながら水面に昇っていった。やがて息が続かなくなった少女は水面から顔を出すと、そっと
立ち上がり、岸辺へと向かう。早朝だったが既に陽は高く昇り、泉の前の草を暖かく照らしていた。
248:名無しさん@ピンキー
08/08/11 19:22:05 7RH1453v
泉から出た少女は身体を振り、身体に付いた水滴を跳ばすと服を纏った。息を整えると少し離れた、
開けた地へ向かって静かに、と同時に力強く歩んで行く。目的の場所へ付くと、しばらくそこに立ち、
身体に陽射しを受けながら天を仰ぐ。直立したままの姿勢で二対大きく息を吸うと、少女は全身に
力を込めた。晴れた空には風が湧き起こり、周辺の木々が微かにざわめいた。次第にそれは強くなり、
穏やかに靡いていた少女の美しい桜色の髪は風に吹き上げられて逆立つ。少女は自分の中に眠ってい
る強大な“力”が全身へと解き放たれていくのを感じた。それは余りにも強力で、そして時に危険で
ある故、普段は少女の姿の中に封印してある力だった。それは非力でしかない少女に無限の強さを・・・
この森で生き抜く為の強さを、そして弱者を救うための強さを少女に付与してくれる力だった。
やがて全身に熱いものが走り内なる力を覚醒を終えたの感じると、少女の服は透け始めて肌と一体
になり、身体は明るい桜色の光に包まれた。光の中で少女の姿は静かな、しかし大きな変貌を遂げて
いった。華奢で丸みを帯びていたか弱い少女の輪郭が次第に角ばり、身体の筋肉は急速な増大を始めた。
白く柔らかだった肌には鋼の様に硬く、少女の髪と同じ桜色の鱗が生え揃う。太くなった腕の後方に
膜が生じると、それは大きく広がり翼を作った。尻のあった場所には巨大な剣とも取れる長く鋭い尾
が現れそれは鞭の様にしなった。小さかった口は耳のあった辺りまで裂け、内側にナイフの様な牙が
無数に並んだ。
変化が完了すると、少女を包んでいた光は消え、現れた巨体が地に両脚を付けた。可憐でか弱かった
少女の姿はそこにはなく、代わりに美しくも荘厳な森の女王と呼ぶに相応しい姿があった。大鍋ほどの
大きさになった眼の奥にある碧い瞳だけは少女の頃の面影をまだ残していた。巨大な異形へと変貌を遂
げて周囲を圧倒する存在感を放ちながらも、瞳にはどこか少女の頃の優しさや暖かさがあった。そこに
は力を得ても奢らず、弱者の為に使おうとする少女の真っ直ぐな心や正義感が現れている様でもあった。
再び静まり返る陽溜りの中、一呼吸置くと女王は一際大きな咆哮を揚げ、少女のか細い腕だった双翼を
羽ばたかせた。森の秩序を乱す者から今日も動物や樹々を救う為に・・・
瞬間、巨竜と化した少女の身体は晴天の宙へと舞っていた。
酷い文才でつくづく申し訳無いorz
249:名無しさん@ピンキー
08/08/12 02:39:28 gAbKXQ/H
>>247-248様
変身完了乙です!か弱い少女とのギャップと、あと、特に「皮膜」がよかったです
…ピンポイントですみません(汗
250:名無しさん@ピンキー
08/08/12 18:09:50 U1oZ4FcQ
変身GJ!自発変身も勿論そうなんだけれど、服が消失する変身ってここじゃ初で新鮮だ。
251:名無しさん@ピンキー
08/08/13 09:07:39 JNVJo8zZ
>>247>>248様、御言葉どうも有り難うございます。ここまでお褒め頂くとは思って
いませんでした。喜んで貰えると書いた方としても本当に嬉しいです(>_<)
それと、一応この娘を主人公にした外伝編はまだ続く予定なのですが、かなり長い&
このスレで需要の高い肝心な変身シーンが全体と比べると短くなりそうなの
とでどうしようかと考えている所です。
252:maledict(宣伝) ◆sOlCVh8kZw
08/08/14 02:22:06 u9rQJcDk
>>251様
宣伝で恐縮ですが、自分が借りてる下記したらばの掲示板に、スレを一つ立てて
投下し(一作家一スレ使えます)、リンクをここに貼る(直リンOK)、という手も
あるかと思います
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
のびのび書ける代わり、ここみたいに多くの人が見てくれるわけではないのが
微妙です。あくまで選択肢の一つとしてご検討くださればいいです。
ここに投下できればそっちがいいでしょうし、ご自分のブログ等の用意があれば
そちらの方がやりやすいかと思います。
それでも、もしご関心あれば上記掲示板の下記スレにでもお返事下さい
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
253:名無しさん@ピンキー
08/08/14 23:28:44 meC0U3tO
>>252どうも有難うございます!!余り使い慣れては無いのですが考えてみます。(^-^)
>>182~>>248まで連載した第1章に続く第2章が書きあがったのでとりあえず載せておきます。
書き忘れましたが、第1章には「記憶」という章名を付けてみました。以下第2章です(>_<)
――第2章 「変容」――
少女が泉で水浴びをしていた頃、時を同じくして遥か離れた別の場所では商人の一団が長い馬車の
列を作って深い森の中を移動していた。年の端十過ぎの少女はその馬車の一つの荷台に乗り、長旅に
疲れた身体を馬車後方の荷台に横たえていた。普段父は出稼ぎ、村の店で母と暮らしていた少女に
とって遠へ旅をするのは実に久しぶりだった。始めのうちこそ始まる冒険に胸を躍らせわくわくしな
がら荷台に乗ったものだったが、やがてそれも長い時間の退屈や疲労の中で色あせて行った。いつの
間にか少女にとってこの旅は、長い苦痛へと変わった。次第には堪えかね、目的地までの到着を今か
と待ち望みながら、馬車を動かしている父に幾度と無く後どれくらいで到着するのかを訪ねる様に
なっていた。
と突然、先頭の馬車を操縦していた長老が不審な顔をして馬車を停める。何か変わった面白いもの
でもあるのかな。興奮に飢えていた少女は間も無く訪れる惨劇に気づく筈も無く、微かな期待と好奇心
を胸に外を見やる。馬車の荷台から首を伸ばし、外を覗いた少女は自分が見たものに絶句した。小山一
つ分程の大きさはあるであろう、悪夢の住人とでも呼ぶべき姿の大男が隊列の先頭に向かって前方から
歩いて来たのだ。大木ほどもある太い腕には巨大な棍棒が握られており猪の顔が崩れた様な醜悪な顔、
腰には何匹分もの大熊の毛皮と太い鎖が巻かれている。女達は悲鳴を上げて取り乱し、中には失神した
者もいた。そうでない女達は、外の様子が気になってその姿を見ようとした子供達を辛うじて止める。
254:名無しさん@ピンキー
08/08/14 23:38:57 meC0U3tO
先頭の馬車を動かしていた一団の長老は固唾を呑んだ。眼前に現れた異形、それは紛れも無いオーガ
であった。知能こそ低いものの、強靭な肉体と怪力を誇り、無差別に人畜を襲って喰らうという非常に
獰猛かつ危険な種族である。長老も若い青年の頃に何度か見た事はあった。40年以上も前に、当事「山
の主」と呼ばれて畏れられ、多額の賞金が賭けられていた個体を友人達が倒し、彼らにその死体を見せて
貰ったのを思い出す。並のオーガよりも遥かに巨大で家屋ほどはある醜悪なその巨体は、死体になりな
がら尚も見た者を恐怖させる何かがあった。しかし今目の前にいる者は、それよりも更に一二周りは巨
大であった。そして40年以上も前に見た個体よりも遥かに凶悪で危険な何かを醸し出していた。こんな
大きなオーガは長い事生きていた老人でも見た事が無かった。
老人の長年に渡る経験が彼に告げていた、「何かがおかしい」と。若い頃から旅の経験豊富な長老は
その度に細かい下見を欠かした事は無かったのだ。今回の旅の経路も彼が以前に何度か旅した事のある
道筋だったにも関わらず、旅の直前に現地の木こりや狩人等に新しい情報を聞いて行く事は決して欠か
さなかった。彼らの話によれば森のこの部分はオーガの生息域ではないので安心して旅が出来る筈だっ
たのだ。入念な下見は充分にした筈である。とは言え、現地に住む人々だって間違える事はある筈だ。
運の悪い事も時にはあるだろうと考え直し、なんとかこの場の打開策を練る。いざという状況に備えて
戦える準備はしたあるが、急な攻撃を仕掛けるのはとても賢い行動とは言え無いのでまずは黙って大男
の脇を通り抜けようと試みる。しかし大男は棍棒を勢いよく振り降ろしそれを阻んだ。二頭の馬車馬が
驚いて立ち上がり、狂った様に鳴き声を揚げたのを老人は鞭で叩いて鎮める。やはりただでは通してく
れないようだった。止むを得ないので長老は異形の大男を相手に交渉を求める。さすがにこれだけの数
の武芸に秀でた男達が集まればオーガの一頭位であればまだ倒せる様な気もしたが、そうだとしても仲
間内に無駄な犠牲者を出したくは無かった。戦わずに澄む方法があればそれに越した道は無いのだ。
通るので道を空けて欲しいと要求する。ただで空けないと言うのなら、代わりに家畜や食糧など望むもの
は分け与えるので、人や馬を襲わずに通して欲しいとも申し出る。がやはり返事は無い。
「オーガ相手に交渉してもなぁ。あの知能だと、何言ってのかも分からなんかもしれないぜ。」
と仲間の男達が後の方で小声でひそひそ話をするのが、遠い老人の耳にも聞こえた。しかし老人には
どうも返事をしない理由が少し違っている様な気がした。知識と経験が豊富なこの老人にもそれが何か
は説明出来なかったが、先程から目の前のオーガの放っている異様な雰囲気といい、ここにある不自然
さといい、何かが明らかにおかしかった。このオーガが返事をしない理由は知能とはもっと別の所にある
様に思え、そして何かもっと凶悪なものを醸し出していた。