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勝手知ったると言ってもいいほど、よく通った玄英宮は、まるで知らない宮殿のように陽子と景麒の目には写った。
「よくきたな、陽子、景麒」
宮殿の主人は、今までとなんら変わりはないというのに。
「・・・延王君。延台補のお加減は」
尋ねる景麒の顔色は悪かった。玄英宮の禁門に着く前から、彼は死臭が澱んでいると、不調を訴えていた。
「見舞いにきたのか。景台補はおやさしい。この宮に来るのはさぞつらかっただろうに。」
延王は飄々と嘯き、手を叩いた。
「誰か!六太の部屋に軽食と茶を用意しろ」
なるべく距離をとろうとしているかのように部屋の隅に控えていた女御が、無言で一礼して部屋を出た。
「あいつはもう起きれんのだ。今は正寝の一室を与えて寝かせている。あいつはあんなになっても王のそばにいたいらしい。」
淡々と延王は言った。