08/04/12 01:44:47 fs0t72jw
だが、光の巫女に任じられたリアナの心は、強い意志でその声に抵抗した。
「ああっ…駄目!闇の者の声に、屈してはいけない…」
魔力の支配から逃げることは諦める。ただ、心を売らず、動こうとしない。それだけに集中する。
闇の魔力に抵抗する最も有効な手段を、リアナは無意識のうちに身に着けていたのだ。
ボーゼル一人ではこの抵抗を崩すことはできない。そう、一人なら。
「ダークプリンセス」
ボーゼルの声を聞くや、ダークプリンセス=ラーナがリアナの顔をくっと右手の指で持つ。彼女の眼を覗き込みやすいように。
「私の眼を見なさい、リアナ」
「あ…ね…姉さん…」
慕っていた姉の声。
無意識の心の盾は、無意識の安心感によって取り除かれる。
そして宝石のように澄んで美しく、吸い込まれそうなルビー色の瞳。
冷ややかで落ち着いていて、何の迷いもなくて。
姉の声と眼によって心の障壁を溶かされたリアナの耳に、再度ボーゼルの甘い声が響く。
「さあ、光の巫女、闇の巫女よ。今からお前達は巫女の像となる…。魔法陣の上に立ち、両手を掲げ、そのまま立ち尽くすのだ」
その命令は、すんなりとリアナの頭の中に吸い込まれていった。
そう、私は巫女の像になる。魔法陣の上に立ち、両手を掲げなければ…。
全くぶれのない足取りで魔法陣へと歩むラーナと、うつろな眼とおぼつかない足取りでゆっくり魔法陣の中に入るリアナ。
だが魔法陣の中に入ると、二人は同時に背筋を伸ばし、すっと両腕を天に掲げた。
眼は開かれたまま、しかし何も見ようとしていない。
全く身じろぎをせず、まるで本当の像になったかのように。
その意識は、たったひとつのことに集約されている。
私は、巫女の像。両腕を掲げ立ち尽くす、そのために存在する。
中途半端なところですみません
(前半終)って2回も書いてしまうし…orz
待たせてしまってすみませんが、闇に仕えるのは後編をお待ちください