08/03/23 02:25:21 V3RPYxrZ
そいや最近フリーのエロRPGが無いねえ
淫魔ハンタとかサキュバスクエストみたいなのとか
26:名無しさん@ピンキー
08/03/23 09:59:40 nwJqxrNJ
>>25
無限ダンジョン系じゃだめか?
27:名無しさん@ピンキー
08/03/23 10:03:46 XTYTPEi4
>>26
それどこの無限ダンジョン?
28:名無しさん@ピンキー
08/03/23 14:20:41 YXVr9Icz
本格的に二次が規制される前にやる事やっておくかと思ってる。
今回の法案では二次まで規制されないと思うが、数年後はどうか分からんし。
波風が激しい今は自重するが、落ち着いたら比較的小さい娘の悪堕ちネタを大放出して
後悔しない様にしようって思うのだが、どうだろう?って某所の管理人が言ってた。
29:名無しさん@ピンキー
08/03/23 14:30:49 8Uxsw+cO
>>28
さくらたんの悪堕ちを拝んでから死にたい
30:名無しさん@ピンキー
08/03/23 18:03:21 Nd3+ob8Y
テレビ作品のコミカライズばかり載った幼児向け漫画誌(コロコロやボンボンみたいな)読んだら
ボウケンジャーvsゲキレンジャーのボウケンピンクが宇宙生物に憑依されてて虚ろ目だったんだが
本編DVDもそんな内容なの?
31:名無しさん@ピンキー
08/03/23 19:04:35 3cJnkMnM
>>28
ちびうさを、ちびのままブラックレディ化
32:名無しさん@ピンキー
08/03/23 19:44:41 /dURb71t
>>31
ほたるをほたるのまま(ry
33:名無しさん@ピンキー
08/03/23 19:50:59 a0poaEio
>>30
本のタイトル何?是非とも読みたい。
本編もおそらくそんな内容。
レンタルされてて確認はできてないけどな…。
34:名無しさん@ピンキー
08/03/23 20:40:58 G5dXToH0
>>33
「テレまんがヒーローズ」だな
コロコロとかボンボンと同じサイズで同じ場所に並んでるはず
35:名無しさん@ピンキー
08/03/23 22:16:57 4ylgz+oG
>>30
本編DVDでもそんな内容でしたよ。
ちなみにゲキレンジャーの○○も操られます。
36:名無しさん@ピンキー
08/03/24 03:24:34 +iLWmej4
>>26
絵と舞台さえ整ってりゃ、脳内シアターでいけますぜ旦那
37:名無しさん@ピンキー
08/03/24 09:37:52 kHnzUTt8
>>27
淫魔ハンター系と同じBFスレの作品だよ
ツクールじゃなくてSRCだけど、いじれば好きなように出来るし
38:名無しさん@ピンキー
08/03/24 10:33:50 7Cp7Bqw3
>>37
kwsk
39:名無しさん@ピンキー
08/03/24 10:51:47 KwMb71l6
>>38
ggrks
40:名無しさん@ピンキー
08/03/24 12:20:34 RRZOH0kk
女性によっては媚薬などの薬漬けにしてやっと堕ちる程に強い女性も居るけど
割とこのパターンは経験済みの非処女でセックス大好きの男好きの場合が多い
41:名無しさん@ピンキー
08/03/24 20:32:54 pJqT+G7G
ばるさみこすぅ~洗脳
42:名無しさん@ピンキー
08/03/24 20:57:24 BnGei3P4
>>37
やっぱりあれのことかw
あれだけの作品なのに作者は黙々と作って
しかも毎週のように更新してるからいいよね
43:名無しさん@ピンキー
08/03/25 01:45:48 p5Sgg69n
最近うたわれるものというゲームを遣り始めたんだけど
カミュ→ムツミ変化に興奮してしまったぜ。
44:名無しさん@ピンキー
08/03/25 02:34:45 qHQAk+P9
>>42
なんてタイトルか教えてくれ。
45:名無しさん@ピンキー
08/03/25 09:46:47 xnhXEVz7
>>44
>>26
46:名無しさん@ピンキー
08/03/25 14:02:34 pZ7XvpDP
>>37
感謝m( )m
阿久女イクという名前を聞いてwkwkして裏切られたのは俺だけでいい
47:名無しさん@ピンキー
08/03/25 20:49:43 /MrzAlot
.hackで悪堕ちがあったという話を聞いたんだが
48:名無しさん@ピンキー
08/03/25 23:36:33 ZwuLDKxb
>>47
アトリ→アバター憑依な
他にもいるけど
49:名無しさん@ピンキー
08/03/25 23:48:57 r/Z3729p
>29
これでどうだ
URLリンク(jun.2chan.net)
50:名無しさん@ピンキー
08/03/26 00:01:55 rRFPtkgP
>>49
GJ!
51:名無しさん@ピンキー
08/03/26 00:10:41 m6pqLYjy
女王騎士物語の最終巻を購入。
雑誌掲載時、悪堕ちしたアルマ姫が登場したところで終わりました。
コミックス化に際しその後の描写はカバーを外した所に展開が文で書かれているだけです。一応ハッピーエンドみたいです。
でも雑誌最終回掲載時は大幅加筆して発売と書いていた気がします。
こういう某シャーマン漫画みたいな終わり方は勘弁して欲しいです。
納得した読者いるのでしょうか?
52:名無しさん@ピンキー
08/03/26 00:59:21 XnEkRBHV
アルマって誰?F.E.A.R.か?
53:名無しさん@ピンキー
08/03/26 02:53:20 zi4zIJFA
>>51
スレリンク(eroparo板)
54:名無しさん@ピンキー
08/03/26 12:01:37 rG8q1UYB
ソードマスターヤマト2に出てくる女王様だよ
55:名無しさん@ピンキー
08/03/26 12:24:47 KXBpaKQk
マナケミアの新作っぽいもののサブタイトルに一瞬ドキッとした
56:名無しさん@ピンキー
08/03/26 13:45:59 KVuTiCpK
>カバー外した所
ソードマスターヤマト2だと思っていたら武士沢レシーブ2だったのか
57:名無しさん@ピンキー
08/03/26 15:04:41 rpKSU8Dk
神羅万象か
58:名無しさん@ピンキー
08/03/26 20:57:16 R/4jB+A4
>>55
マナケミアの新作は学園悪堕ちものになります
59:名無しさん@ピンキー
08/03/27 00:46:26 E6OGwjr6
最近ViiのVCをやってみようと思ったんだが、今ある中で洗脳とか操りネタあるソフトあるかな?
あったら教えてちょ
60:名無しさん@ピンキー
08/03/27 02:19:23 GIAmEPnk
戦乙女ヴァルキリーかなりいいな。
このスレの趣向とは若干違うかもしれないが。
61:名無しさん@ピンキー
08/03/27 02:23:59 i6tK7p1X
ブラックルナより良いなら今すぐ買うんだが
62:名無しさん@ピンキー
08/03/27 04:29:27 wPY4EDRD
久々にニコ動でぬ~べ~の映画見てた。
あれも結構悪堕ち色強いよな。
二次元オチだけんども。
63:名無しさん@ピンキー
08/03/27 11:01:37 auPuRHLq
初歩的な質問で申し訳ないのですが、二次元オチって具体的にどんなオチなんですかね?
基本的に避けた方が良いオチだと思うので、教えて頂きたいなぁと思ってます。
1:堕ちていたヒロインが最後の数ページでいきなり正気に戻ってハッピーエンド
2:エロシーンばかりに比重が置かれ、堕ちた後の描写がおざなり(堕ちた姿は1カットで終了とか)
二次元といえば某社刊行の作品群だと思うのですが、思いつくのはこのあたり。
作品作りの参考にしたいのでよろしくお願い致します。
64:名無しさん@ピンキー
08/03/27 11:07:54 1rk+Qpt/
1.かな。
二次元エンドは何の脈絡もなくラスト数ページで逆転して何の後遺症もなく終わる、と自分は定義しています
65:名無しさん@ピンキー
08/03/27 11:32:25 3ROue/Ak
基本的に二次元ENDは1のこと2のパターンだと(悪堕ち好きとって)描写不足とか
それさえあれば完璧だとかになる。
66:名無しさん@ピンキー
08/03/27 14:13:15 L5nWnV4y
1のことだと思います。
出版社的にはハッピーエンドでも、悪堕ち好きにはバッドエンドだよね。
67:名無しさん@ピンキー
08/03/27 14:36:04 wzQ5SHoF
数百ページの後の残り3ページ位で逆転終了とかだもんな
萎えるどころの話じゃないよね
68:名無しさん@ピンキー
08/03/27 15:00:04 uM3troAb
「実はフリだったんだよ!」というのはまあ、ね・・・
69:名無しさん@ピンキー
08/03/27 15:02:55 jcMZUo2D
犯されてパワー充電とかいい加減にしてほしい
70:63
08/03/27 15:18:42 auPuRHLq
返答ありがとうございます!!
皆様の御意見を見るとかなりのタブーだというのが分かりました。
というか、自分としても何の脈絡も無く突然ハッピーエンドで締めくくられるのは
確かに萎えるので改めてそのタブー性を再認識できました。
本来ならお礼にSS1本でも上げるべきですが、残念ながら自分はSSが得意ではないので
別の形(例えば漫画)で尽力したいと思っています。
御意見ありがとうございました!!
71:名無しさん@ピンキー
08/03/27 17:07:25 DkTczGwz
>2次元エンド
続編作成のための複線だと思うが、萎えたものの続編なんかいらないし。
逆に堕としまくった上で更に続編を書きたがる作家には好感がもてる。
>63
健闘を祈る。
72:名無しさん@ピンキー
08/03/27 18:07:58 9/obmhy0
>>59
ひとつだけツッコミしたい
中国製の威力棒にVCなんて高度な技術が搭載されてるのか?
73:名無しさん@ピンキー
08/03/27 19:45:22 2QUYOyo0
中に人がいるんだよ
74:名無しさん@ピンキー
08/03/27 22:30:27 NtS3Myho
ブラックヴァルキリー良かった
本スレだと引いてる奴も多いがこのスレ向きだと思う
75:名無しさん@ピンキー
08/03/28 02:52:36 P1L/17jg
ブラックサンドラとか、ブラックワルキューレとか……
76:名無しさん@ピンキー
08/03/28 04:42:07 b8C8OXhU
ブラックサンドラは一部の人のトラウマかと思われw
77:名無しさん@ピンキー
08/03/28 07:33:04 j6YF7dX8
現在連載中の漫画でも大活躍だぜ!>ブラックサンドラ
……つか、ブラックワルキューレは黒いだけで別に悪じゃないよな
78:名無しさん@ピンキー
08/03/28 13:17:28 bRy3fLVT
虐襲3もかなりいいな。
今週は豊作過ぎて枯れちまうぜ
79:名無しさん@ピンキー
08/03/28 19:23:56 5OWT4Kik
ブラックアリエスは?
80:名無しさん@ピンキー
08/03/28 19:34:20 l6emPBMV
>>78
2で痛手を負ったんで敬遠してたんだが、今回はちゃんと堕ちてくれるのかな?
81:名無しさん@ピンキー
08/03/28 22:11:23 sgOOnZyg
>>80
2のゲーム自体は酷かったけど
巫女の悪堕ちは割と良くなかったっけ?
82:名無しさん@ピンキー
08/03/28 22:38:17 Jv6o8cQu
戦乙女ヴァルキリー2購入。
ブラックヴァルキリーも出せました。現在CG80パーセント程度クリア済み。
内容的にはまぁ満足でした。前作ヒロインはやっぱり良かったです。ティアナの中の人と一緒です。
セイクリを購入された人はいますか?どのような感じか知りたいです。
83:名無しさん@ピンキー
08/03/28 23:20:00 l6emPBMV
>>81
そのまま脇役で終わったのがなぁ…エンディングに一切絡まないとか
悪堕ちエンドが無いとか、贅沢な所存かもしれんが
84:名無しさん@ピンキー
08/03/28 23:36:50 huFdyrWJ
虐襲2は1のキャラの扱いが悲惨、というかそもそも2である必要があったのかとか
二次ドリも真っ青な超展開エンドとか色々不満は出てたが、堕ちた後の黒い巫女服姿は良かった
まぁ上のレスのとおりだからこそ勿体無いんだが
85:名無しさん@ピンキー
08/03/28 23:50:58 5OWT4Kik
ジブリール3体験版やってみた
黒アリはヤンデレっぽくなりそうな感じでしたぜw
86:名無しさん@ピンキー
08/03/29 00:41:18 O8gCEhpJ
病んでるのはちょっとうっとうしくて困るな。
87:名無しさん@ピンキー
08/03/29 04:56:24 c5czrxQ0
アリアハンの夜。西の外れにある一軒家。
ランプの薄明かりが照らす深夜の台所で、一組の男女が激しく交わっている。
テーブルに手をついた女は、背後から男の怒張を叩き込まれ、獣のような声を上げて快感を訴える。
女は妊娠三ヶ月程度だろうか、新たな生命を孕んだ腹部はうっすらと膨らんでいる。
そして男、ある瞬間には10歳の少年にも見え、またある瞬間には70歳の老人にも見える。
そして唯一その眼だけが毒々しいほど真っ赤な光を放っており、薄闇の中で不気味に存在感を主張している。
全く掴み所の無い、いや、人知の及ぶものでない存在である事は、この男を見た者なら誰でも理解できる。
そしてこの男はこの家の正当な住人でない。
この家の主は、二ヶ月程前から魔王バラモスを倒すための旅に出ているからだ。
そして女も、その主の貞淑な妻として評判であり、間男を家に引き入れるような性格ではない。
しかし、現に女は喜んで夫以外の男に対して尻を振り、快感を貪っている。
おそらく女自身でさえ何故この様な行為をしているか理解していないだろう。
とにかくその日、不実の情事は夜明け前まで続けられ、
夜が白む頃に忽然と男は姿を消し、白濁液にまみれ、陶然とした女だけが一人残された。
―これが16年前の出来事である
88:名無しさん@ピンキー
08/03/29 04:56:45 c5czrxQ0
「起きなさい。起きなさい私の可愛いアルスや……おはよう、もう朝ですよ。」
「うん、母さん……でも後五分……」
ベッドの上で布団に包まった少女、その声はいかにもおてんば盛りといった感じで、
起こしに掛かる母親の苦労も推して知るべしといったところだ。
「何を言ってるの!今日はとても大切な日、お城に行く日だったでしょ?
いいこと?お母さんはね、この日のために貴女を勇敢な男の子として育てたつもりです。」
「あははっ、男の子?何言ってるのお母さん、僕女だよ?」
「そういうことじゃありません!確かに貴女は女の子だけど……」
「違うよ、お母さん……」
いきなり少女の声のトーンが変わったかと思うと、布団を跳ね除けて起き上がり、母親の顔をまっすぐ見据えた。
「私は女よ、お母さん。もう女の子じゃなくてオンナなのよ。」
母親は少女の豹変振りに驚き、一言も発する事が出来なかった。
少女の体つきは昨日までと全く変わる所が無い。
16歳という年齢に相応しい控えめな胸、鍛錬の走りこみで鍛えられたやや肉感的な太もも、
剣を握るには繊細すぎると心配されていたしなやかな指。
身体のパーツは何も変わったいないはずである。
しかし、昨日までの健康的な魅力は消え失せ、退廃的ともいえる色香を纏っている。
立居振る舞い、しぐさなどがそうさせているのであろう。
そして何よりも―
「フフッ、お母さんったらそんな顔しちゃって……思い出しちゃった?」
栗色だった少女の瞳は、真っ赤に染まっていた。
こーゆーのもこのスレでいいかな?
89:名無しさん@ピンキー
08/03/29 06:42:30 5bFtVqdi
展開次第じゃなかろうか
個人的には、普通に続きが読みたいが
90:名無しさん@ピンキー
08/03/29 08:10:02 pj5xcDjA
悪かどうかは微妙だけど昨日のドラえもんスペシャルを見て
迷いがあるリーレ姫を完全に決断させる為に
陵辱し調教し迷いも疑いも何もかも消し去り非情になれる様にリーレ姫を改造する何てシチュを連想してしまった
91:名無しさん@ピンキー
08/03/29 12:54:59 Ow8mDanI
戦乙女2と闇の声0買ったけど
ここ的には微妙かもしれないね
というかどちらとも結構笑えるところが多いからエロくかんじないんだよね
92:名無しさん@ピンキー
08/03/29 16:11:05 us9Oq11m
ジブリール3は全然期待してなかったんだけど体験版よかった
アリエスがまだ完全に悪堕ちしてないんだけど衣装だけ黒に変わって
そのまま悪に調教されてくという話みたいで楽しそうだ
悪と正義の間で葛藤しつつエロ有っていうのを期待したいな
93:名無しさん@ピンキー
08/03/29 23:56:50 G85KttHM
今日のガンダム00で洗脳っぽいシーンあったな
94:名無しさん@ピンキー
08/03/30 00:00:19 ptJPMcY5
あったっけ?
95:名無しさん@ピンキー
08/03/30 00:01:37 CvXjy6DU
>93
ねーよwww
96:178 猟血の狩人 第三回前編
08/03/30 01:34:41 Pa0Bh4Ic
お待たせしました。深夜にこっそり投下の猟血の狩人三回目です。
『猟血の狩人』 第三回
「先輩?先輩じゃないですか!!」
不意に、後ろからどこかで聞いた事がある声が聞こえ、はっとしたティオは思わず振り向いてしまった。
そこには、普段ティオが着ている法衣と全く同じものを身につけている二人の人間がいた。
一人は、ティオより背が低くて細面でやや幼い印象を与え、肩より少し伸ばした髪を赤い紐で結わき、
背中に自身の身長ほどもある大剣を背負っている少年。
もう一人は、少年より肉付きがよく髪を無造作に短く切り揃え、地面に届きそうなほどの長い外套を羽織った物静かな女性。
そのうち、少年の方が手をぶんぶんと振り回してティオに向って声をかけていた。
「えっ、リオン…。アンナぁ?!」
自分の目に飛び込んできた二人の顔を見て、ティオはギョッと目を見開いた。
半年前に教会を辞めたティオだが、その時身につけていた狩人(ハンター)の制服ともいえる法衣は
機能性に優れ頑丈で、多少だが退魔の効果もあるので今でも変わらず身に付けている。
その法衣を纏っている前の二人は、当然ながら教会の人間であり、ティオの知り合いでもある。
リオンもアンナも自分が狩人に入ってから2年ぐらい後に入ってきた後輩で、リオンは下手をすると少年としか思えないような面差しを
しており、また狩人志願とは思えないような大人しい性格をしていたので、ニースとは別の意味で狩人に向いていないのではとティオを不安がらせていた。
が、生来の真面目さと熱心さからかめきめきと頭角をあらわし、同期の中では1、2を争うほどの腕前となっていった。
逆にアンナは普段から人付き合いが悪く、口下手なのか滅多に他人と言葉を交わす機会が無いので周囲から少し浮いた存在
だったが、いざ戦闘となると闘志を剥き出しにして襲い掛かり、吸血鬼のみならず周りにも甚大な被害が発生することがままにあった。
そして、その後始末に追われたパートナーが過労でぶっ倒れたことも一回や二回ではきかない。
それ故、教会は暴走しがちなアンナを抑える役目としてリオンをパートナーとして組ませる措置を取っていた。
実際これは成功しており、それ以降にアンナ絡みの被害報告を聞いたことはない。
そのかわり、そこまで事態を至らせないようにしているリオンの気苦労は想像を絶するものだろうが…
そして、ティオはリオンの実技研修や戦闘訓練を指導した事があり、教会にいた頃から先輩先輩と慕われていた存在だった。
それだけに、ティオが教会を辞めると聞いた時は顔をくしゃくしゃにして泣き出し、考え直してくださいと
裾を引っ張ってまで懇願してきたものだった。
そのリオンとアンナが目の前にいる。その時ティオは思わぬ場所で旧知の人間に再会できた喜びよりも先に
警戒感から無意識に身を強張らせてしまった。
ティオは教会を辞める際に、倉庫から教会の封印物である降闇を拝借したという少々まずい経歴がある。
倉庫の奥の奥にしまわれており、ほとんど人目に晒されることも無かった代物なのでそうそうばれることは
ないはずなのだが、万万が一ということも無くはない。
それを知った教会がリオンとアンナを差し向け、降闇の奪還とティオの確保を命じられていたら…
いや、それ以前にティオは本来狩るべき対象である吸血鬼と行動を共にしている。
いくら人を襲わないと盟約を立て、それを実行していたとしても教会にとってはそんなことは関係ない。
教会にとって吸血鬼とは排除すべき存在であり、いかなる理由があったとしても考慮にすら入れられない。
ティオが死んだと報告しているニースが吸血鬼となってティオの傍にいることを教会が知れば、教会は
吸血鬼であるニースも、それを庇おうとしたティオにも容赦はしないだろう。間違いなくニースは狩られ
ティオも捕縛され、教会に連れて行かれ審判を受ける身となってしまう。
別に自分の身がどうなろうと知ったことではない。
が、自分の失敗から図らずも吸血鬼になってしまったニースを再び死の淵に追いやるわけには絶対にいかない。
(ここにリオンとアンナがいる。これは偶然なのか、それとも…)
ティオは無意識に腰を落し、警戒されないレベルで二人の一挙手一投足も見逃さないよう気を張り詰めた。
そんなティオに対し、リオンは全く無警戒にティオに近づいてきた。その顔には無邪気な喜色が満面に溢れかえっている。
「やっぱり先輩だ!こんな所で会えるなんて思いませんでしたよ!」
「え、ええ…。私も…」
毒気を抜かれそうな笑顔にふっと気が緩んだティオの手を、リオンの手ががっしりと掴んだ。
97:猟血の狩人
08/03/30 01:35:42 Pa0Bh4Ic
(!!しまった!)
これではろくな抵抗も出来ない。自分の迂闊さにティオは唇をギリッと噛んだ。
だが、リオンは嬉しそうに手をぶんぶん揺するだけで別にティオを押さえ込んだりとかはしてこない。
リオンの後方にいるアンナもリオンのさせるがままにしており、ティオを捉えようとしてきたりはしてこない。
「あ、あなたたち…、どうしてここにいるの?」
もしかしたら、この二人は本当に自分たちとは関係が無いのかもしれない。薮蛇になる可能性はあったが
ティオはリオンにここにいる理由を尋ねてみた。
「ええ。実はこの町の近くにいる侯爵を名乗る吸血鬼の討滅命令が出たんです。それで、アンナと二人で
この町まで来たら、前の方に先輩によく似た人を見かけて、声をかけてみたら本当に先輩だったわけで。
いや、本当にビックリしましたよ!」
リオンの声には屈託が無く、ティオと再開したことを本当に心から喜んでいるように見える。
(元々素直でウソがつけない子だったし…。どうやら、取り越し苦労だったみたいね…)
ここで、ようやくティオは心に余裕を取り戻し、対峙する後輩に対する緊張を解き放った。
「そうだったの…。それはご苦労様。
でも、ちょっと遅かったわね。その吸血鬼は…、!」
と、そこまで口に出してティオはハッと口を噤んだ。
吸血鬼は討滅した。なんて言ったらいくらなんでも二人は自分に疑いを持ってくるだろう。
なんで狩人を辞めたのに吸血鬼を狩っているのか。
どうやって一人で吸血鬼を狩ったのか。
もしかして、誰か協力者がいるのか。
まさか吸血鬼になったニースと一緒に吸血鬼を狩っているなんて言えるわけがない。それこそ藪を突付いて蛇を出してしまう。
「え?先輩…。吸血鬼が、どうかしましたか?」
(ま、まずい!)
ティオが変なところで言葉を止めたためきょとんとしているリオンに対し、何とかごまかそうと考えたティオは短絡的な発想に思い至った。
(ち、ちょっと恥ずかしいけれど…、背に腹は変えられない!)
とにかくリオンの気をそらせるために、ティオはいきなりリオンをぎゅっと抱きしめた。
「わぁっ!せ、先輩?!」
「あ、あはは!びっくりしたのは私のほうよ!まさかこんな所であなたたちに会えるなんて思いもしなかったものね!」
腹芸などほとんど出来ないため、かなりわざとらしい気がしないでもないが、リオンにはそんなことを考える余裕はない。
身長がティオより頭半分小さいリオンにとって、ぎゅむっと抱きしめられたリオンの頭は、まさにティオの胸の真上。
ぷよぷよとした柔らかい感触が、頭に浮かんでいたもやもやとした感じを一瞬にして吹き飛ばし、脳内を真っ白に染め上げてしまった。
「せ、せ、先輩!いきなり何を…」
突然のことに顔を真っ赤にしてあたふたするリオンに、どうやらごまかすことができたとティオは胸を
撫で下ろしたが、それと同時に別の感情がまたこみ上げてきた。
(あっ…。やっぱこの子かわいいわ…)
ちょっとのことでも、表情をくるくると変えて反応するリオンは昔から見ていて楽しい存在だった。
こんなあからさまで稚拙でバレバレな色仕掛けにも真っ赤になるリオンを見て、ティオの心に悪戯心が芽生える。
(もう少し…、からかってみますか)
「なにって、可愛い後輩のための実演指導よ。抱きつかれただけで泡くっていたらこの先大変よ。
相手をする吸血鬼だって、男ばっかりとは限らないんだから…」
少し声に艶っぽさを込め、リオンを抱える腕にぎゅっと力をこめる。さらに胸に頭が食い込んだリオンは、漫画のように手をばたばたと振るわせた。
「い、いや。別に、ダメってわけではなくて、せ、先輩のむ、胸……」
「口答えしているんじゃな・い・の・よ!」
しどろもどろになって受け答えするリオンのこめかみを、ティオはいきなり両拳でぐりぐりとこねくり回した。
「ああっ!い、痛い!やめて先輩!!」
涙目になって悲鳴を上げているリオンを見て、ティオは背筋をゾクゾクと震わせていた。
かつて指導していた時も、リオンのおどおどした態度を見ているとティオは少しだけ嗜虐心をそそられて
ついいらぬちょっかいを与えていたことがままにあった。
98:猟血の狩人
08/03/30 01:36:42 Pa0Bh4Ic
しかも今回は久しぶりに会ったからか、リオンの様子に今まで以上に嗜虐心をそそられている自分を感じている。
「やめてくださいよぉ…、先輩…」
「ウソ言わないの。私に会えて嬉しいんでしょ?私に触れられて嬉しいんでしょ?そうじゃないの?」
実際、リオンは口では嫌がっていつつも本気でティオを振り放そうとはしていない。傍から見ても久しぶりに
会った知り合いがじゃれあっているようにしか見えていないのもまた事実だ。
そんなリオンを眺めていると、ティオの心にもっともっとリオンを嬲ってみたいという邪な想いがこんこんと湧き上がってくる。
自分でも知らないうちに、ティオの顔には獲物を嬲って悦ぶ狩猟者の笑みが浮かび上がっていた。
(私…、こんなにサドッ気があったかしら…?リオンの困り顔を見るのがこんなに楽しいなんて…
まあいいわ。こんなにも面白いんだし…)
リオンを見下ろすティオの瞳には、僅かではあるが赤い光が宿っていた。
このままリオンをいじめ抜きたい。どこかに閉じ込め、一日中その肉体を責めさいなみたい。
少女みたいな初々しい顔を、羞恥に歪めてみたい。リオンの心を、私だけに染めてみたい。
そして、欲しい。その、瑞々しい体に流れるものが。ほら、こんなに無防備に晒している。今すぐ埋めて…
「先輩、ここは往来の中です。ご自重を」
妄想が暴走しかけたティオの耳に、一歩引いていたアンナの声が飛び込んできた。
「!!」
その声にはっとティオは我に帰った。
(わ、私ったらまたとんでもないことを考えて!)
「~~~~~!!」
顔が昇ってきた血で真っ赤に染まり、心臓が飛び出さんばかりにばくばくと鐘打っている。
最近どうもおかしい。さっきのニースの時もだったが、今まで禁忌と思っていたことに妙に心が震え
触れてみたい衝動に駆られることがある。
どうしてそうなったのかはわからない。ただ、ニースが吸血鬼になったあの時から、自分を取り巻く歯車が
少しづつ狂い始めている様な感じがする。
それに、最後に感じた衝動。なにかとは明確にいえない。が、確かに私は、リオンの何かを求めていた。
一体、何…
「あの…先輩、そろそろ、許して……」
「あっ!ご、ごめんリオン!」
リオンの消え入りそうな声に、ティオは慌ててリオンのこめかみに押し付けていた拳を放した。
「あいたたた…。先輩、相変わらずですね。ちょっと、安心しましたよ」
自分のこめかみを手でさすりながら、リオンはティオに微笑みかけてきた。
「そう言われると…、嬉しいのか情けないのか……」
ぐうぅ
ティオの声を遮るように、どこからか非常に間の抜けた音が響いた。
「 」
声を出そうとしたままの形でティオの全身がかちりと固まり、非常に緩慢な速度でその視線が自身の下半身へと移動する。
ぐうぅぅ
再び謎の音が発せられた。
その音は、明らかにティオの下腹から発せられていた。
99:猟血の狩人
08/03/30 01:37:42 Pa0Bh4Ic
(そういえば私、とってもお腹がすいていたんだっけ)
ティオの心の中で、非常に冷静な自分が現在の状況に明確な答えを出している。
はしたなくも、人前で腹を鳴らしてしまった自分のことを。
「あ……」
ただでさえ赤くなっていた顔が、お湯でも涌かせるのではと思えるくらいに真っ赤に染まっていっている。
恐らく、頭のてっぺんからは湯気が噴き出ていたことだろう。
「あ、あの。あのあのこれは…」
なにか体のいい言い訳を取り繕うとあたふたしているティオに、何と返していいのか思い浮かばずリオンもアンナもただあんぐりと口を開けていた。
が、何も言えずただ手をばたばた動かすティオに、さすがに可哀相になってきたのかリオンが助け舟を出してきた。
「せ、先輩。もう日も暮れてきましたし、よろしければどっかで夕食をご一緒しませんか?」
「う、うんうん。そ、そうさせていただくわ…」
リオンの誘いに、ティオはただただ頷くしかなかった。
「じ、じゃあ早速どっかに……」
「先輩、ちょ、ちょっと待って…!」
照れ隠しなのか、ティオは走るような速さで人込みを掻き分けて先へ進み始め、それを見たりオンが慌ててティオの後を追っていった。
その光景を、アンナは表情を変えずじっと見ていた。
ただ、外套に隠れている拳は、力強くきゅっと握り締められていた。
「どうぞ、先輩」
恥ずかしさのあまりろくに選びもせず適当に選んだ食堂に入り、テーブルに座っていたティオの前へリオンが食事を運んできた。
目の前に並べられた食事を目にして、はしたないことではあるがティオの瞳はぱっと輝いた。それほどお腹がすいていたのだ。
「じゃあ、ありがたくいただかせてもらうわ」
食事代は全額持つとリオンがティオに話し掛けてきた時、ティオには後輩に奢られる気恥ずかしさとお金が浮くという喜びが葛藤していた。
教会を辞めたティオにははっきり言って安定した収入はない。別に吸血鬼を狩ったとしても誰かが褒美に
賞金を出してくれるはずも無く、吸血鬼が貯蔵している金目の物を売り払って生計を立てているありさまであった。
それだけに、余計な出費を抑えられることはなによりも嬉しい。
が、後輩にお金を出してもらうのも先輩としての甲斐性の無さを示してしまうことになりかねないので気が引ける。
「………」
ほんの少しの葛藤の末、ティオは相伴に預かることにした。今のプライドより明日の資金難である。
ぱくぱくぱくぱくもぐぱくぱくぱくぱくばくばくもく
何も声を発することなく、ティオはさらに並べられた食事を見る見るうちに腹の中へと詰め込んでいく。
リオンとアンナがあっけに取られる中、山盛りと積まれた肉も野菜もあっと言う間にに消え去っていった。
「先輩、お茶はどうでしょうか?」
アンナが木のコップに注がれた熱い茶をすっと差し出してきた。一気にいっぱいに詰め込みすぎて多少胸焼けを起こしていた
ティオは喜んで受け取ると、ぐーっと一気に飲み乾してしまった。
「いやー、ご馳走様でした。満足満足」
まだちょっと足りないけれど。とはさすがに口に出してはいえなかった。それくらいのプライドは残している。
「ど、どうも……」
リオンが引きつった笑みを浮かべている。まあ、目の前の壮絶な光景を見せられればそうもなろう。
「本当に助かったわ。正直今手持ちのお金がやばくてね。久しぶりに思いっきり食べられたわ」
あははと笑うティオに相槌を打っていたリオンだったが、不意に真面目な顔になりティオに話し掛けてきた。
「先輩…。そんなにお金に困っているんなら、なんで教会を辞めたんですか?
狩人を辞めても教会に残ることは出来たはずですよ。そうすれば、そんなお金に困るようなことも無かったんですし…」
「うっ…」
リオンの問いかけにティオは言葉に詰まってしまった。
「正直、僕たちは先輩に教会に戻って貰いたいんです。狩人としていたくないなら僕たちの指導に当たる
教官でもいいんです。先輩、どうか教会に戻ってはもらえませんか?先輩がいなくなって、改めて先輩の凄さが理解できたんです」
「先輩、私からもお願いします」
二人の後輩がジッとティオを見つめてくる。子猫が親を見るような視線に、ティオの心がズキンと疼いてくる。
が、暫くの沈黙の後、ティオはその首を横にぷるぷると振った。
100:猟血の狩人
08/03/30 01:38:42 Pa0Bh4Ic
「ごめんなさい…。今の私は、教会にはいられない…」
その顔には申し訳なさに満ち満ちている。可愛い後輩を放り出して教会を辞めたのは未だに引け目がある。
しかし、今のティオには教会にいられない明白な理由がある。
「…やっぱり、ニース先輩のことが。なんですか……」
「!」
リオンの言葉に、ティオは心臓が飛び出しそうな衝撃を受けた。そこで、ニースの名前が出てくるとは思いもよらなかったからだ。
(まさか…、やっぱりこの二人は私とニースのことを…)
先ほど打ち消した警戒心がまたぞろ頭をもたげてくる。が、
「ニース先輩をあんな形で失ってしまったショックが、忘れられないんですか……」
リオンが続けた言葉に、どうやらリオンはニースが吸血鬼に襲われ命を落してしまったことをティオが
悔やみ続け、そのため教会を去ったと勘違いしているようだとティオは悟った。
まさか吸血鬼になったニースを庇い、そのためには教会にいるのは都合が悪すぎるという理由から教会を辞めたなどとは絶対に言えない。
(ならば、そう思っていてくれたほうが得策か…)
ティオは暫く沈黙を続けた後、こくりと無言で頷いた。
「あれは避けられない不幸な事故だった。と言われても先輩は納得なさらないのでしょうね」
アンナの言葉にもティオは沈黙を守り続けた。下手なことを言ってぼろを出すわけにはいかない。
「…今日は二人にあえて嬉しかったわ。これからも、仕事を頑張って……」
潮時か、と思い椅子から立ち上がったティオだが、その時不意に頭にズキン!と痛みが走った。
「えっ……?!」
慌ててテーブルに手をついたが、それでも体を支えきることは出来ずティオはそのまま床にずるずると突っ伏してしまった。
「「せ、先輩?!」」
リオンとアンナが慌てて体を支えてくるが、どうにも体に力が入らない。
「あ、あれぇ…。どうしたの、かな……」
「先輩、ちょっと無茶しすぎなんじゃないですか?!すぐに休まなきゃダメですよ!」
「私、横になれるところがあるか店主に相談してきます!」
アンナは飛ぶような速さで店の奥へと消えていった。
(ちょっと…、疲れが出ちゃったのかもな……)
がんがんと響く頭痛の中、ティオの意識はすーっと薄れていった。
食堂の店主が好意で貸してくれた従業員用の仮眠室。そのベッドの上でティオはすーすーと軽い寝息をたてていた。
その横では、リオンが厳しい顔をして立ち、アンナがティオの首筋に軽く手を当てている。
「アンナ…、どうだい?」
リオンの声に、アンナはすっとティオの首から手を離し、沈痛な顔で振り向いた。
「やっぱり…、わずかながら吸血鬼の力を感じる。
先輩は間違いなく、吸血鬼に魅入られているわ」
「そうか……」
この町でティオを見つけたのは本当に偶然だった。最初は市井に戻ったティオに遠慮して声をかけるのを
躊躇ったリオンだったが、アンナがティオの体から発せられる人とは違った気配を感じ、嫌な予感がしたリオンは
ティオに声をかけて誘い、お茶に仕込んだ眠り薬で意識を失わせここに運び込んだという寸法だ。
「………」
リオンは首から下げた十字架に僅かばかりだが自らの理力を込め、ティオの傍にそろりと下ろしてみた。
101:猟血の狩人
08/03/30 01:39:53 Pa0Bh4Ic
「ぅ……ぅぅん…」
意識が無いはずのティオは、顔の近くに掲げられた十字架にピクリと反応し、顔を反らして十字架から離れようとしていた。
顔から脂汗が滲み出てきて、首筋にある小さな傷が赤く充血してきており、半開きになった瞳は鈍い赤光を放っている。
携帯していた聖水をティオの首の傷口に一滴垂らすと、シュウゥと音を立てて傷口から煙が吹き、ティオは苦痛から顔を歪めた。
そのどれもが、ティオの吸血鬼化が侵攻している何よりの証拠だ。
「先輩っ……
アンナ、一刻も早く先輩を捕らえている吸血鬼を見つけ出して討滅し、先輩を救い出そう!」
「待って…。今日はもう日が暮れようとしている。ここは先輩をまず吸血鬼が入ってこれない教会に移し、明日の日中に…」
そう。もう日は完全に傾き地平線へ沈もうとしている。夜は吸血鬼の時間だ。
「それに、おそらくティオ先輩を絡め取っている吸血鬼は…」
「そんなの関係ないよ!
例え夜だろうが、例えニース先輩が相手だろうが、先輩を酷い目にあわせている者は許せない!」
リオンの目には厳然たる決意が見て取れた。そこには自分の道を遮る物は、例え何者であろうと排除するという意思が感じられる。
「僕は絶対に、ティオ先輩を取り戻し、先輩にまた教会に戻ってもらうんだ!」
「わ、私は、夜は危ないと思うから…」
あくまでもリオンを止めようとするアンナを、リオンは普段の幼げな外見からは想像も出来ないような凄みのある目で睨みつけた。
「だったら僕一人で行くよ!アンナは先輩をしっかり看て守っていてくれ」
アンナの態度に業を煮やしたリオンは、アンナを残したまま部屋を出て行こうとした。
その行動に慌てたアンナは、ぱっと立ち上がってリオンの裾を掴んだ。
「ま、待って!わかったわ。私も行く!」
アンナの言葉に、リオンはにっこりと子どものような笑みを浮かべた。
「わがままを言ってごめんね、アンナ…
行こう。先輩を蝕む吸血鬼を滅ぼし、先輩を助けてあげるんだ!」
「え、ええ…」
決意を新たに、リオンとアンナは眠っているティオを残して部屋を後にした。
その際、仮眠室のドアを閉める時にアンナはちらりとベッドに横たわるティオに視線を移した。
ティオを見つめるその瞳は、凍りつきそうなほどに冷たかった。
第三回前編終
102:名無しさん@ピンキー
08/03/30 01:44:53 Pa0Bh4Ic
また寸止めっぽいですが、この先はもう1~2日待ってください。それまでは後輩二人が
どうなるか妄想を膨らませて…
べ、べつにわざと寸止めにして焦らしプレイをしているわけではありませんからね。
103:名無しさん@ピンキー
08/03/30 02:09:58 ESDVGs1E
GJ
wktkして待ってる
104:名無しさん@ピンキー
08/03/30 02:24:57 eB/ezRO3
待ってたぜぇええええええ!
GJGJGJ。
またwktkして待ってますよ。
105:名無しさん@ピンキー
08/03/30 04:29:33 0IpEPCY0
>>94>>95
ラストに出てきたニーナが中華おっぱいに洗脳されてるように見えたんだけど違ったか…
106:名無しさん@ピンキー
08/03/30 04:48:41 tcxNtS4U
私もそう見えたから無問題。
てか違うとしてもどう見ても脳内補完余裕レベル。
で、ティオちゃんシリーズ大好きだからがんばって下さい><
107:名無しさん@ピンキー
08/03/30 05:24:03 Jn6j2cPN
>>88
遅レスだけどGJ!
>>89と同じく続きが気になってしまった…。
108:名無しさん@ピンキー
08/03/30 10:05:11 PF4EG44a
>>102
なんという寸止め
続きお待ちしてます。
109:名無しさん@ピンキー
08/03/30 18:58:44 PF4EG44a
しかしリオン君は少し迂闊ですな。プロなのに
大切な先輩を助けるためだからしょうがないのか
110:名無しさん@ピンキー
08/03/31 00:12:03 KnyavZ5a
リオン君
ガーリオン君
バレリオン君
111:名無しさん@ピンキー
08/03/31 00:27:22 ECnEi8gl
>>102
超GJ!後半がうpされるまで
wktkしながら待ってるよ!
112:名無しさん@ピンキー
08/03/31 00:41:06 AWD2fuff
久しぶりにバイオ4やってるんだがアシュリーがサドラーに操られるムービーでおっきしたわ。
113:名無しさん@ピンキー
08/03/31 00:44:31 AWD2fuff
すまん・・。sage忘れた・・。
ちょっとROMってくるorz
114:猟血の狩人 第三話後編
08/03/31 02:12:09 qF5M5kKG
出来ました!いよいよ堕ちシーン満載の後編です。
「ん………」
日が暮れ、夜の帳が街を多い隠さんとしている時、窓の隙間から入ってくる闇の気配に当てられたのか
ベッドの中に包まって寝ていたニースは、ゆっくりとその目を見開いた。
「あぁ…、そっか。満腹になって寝ちゃったんだっけ…」
いくら吸血鬼になって身体能力が増したといっても、動けば消耗するし疲れる。そして、満腹になれば眠りもする。
ベッドからむくりと起き上がったニースは、ぐるりとあたりを見回してみる。忌々しい太陽の気配はほとんど
なくなっており、自分の時間が来たことを体が感じている。
そして、一緒に向かいのベッドに眠っていたはずのティオの気配もまた、この部屋からなくなっていた。
「ティオちゃん……、はいないか。
多分ご飯を食べにいったんだろうね。あ~あ、ひどいな。自分ひとりだけで食べに行くなんてさ」
ニースはちょっとだけ頬を膨らませ、どさりとベッドに寝転んだ。
「そりゃ私は吸血鬼だから普通の食事なんかいらないけどさ…。いつでも一緒にいたいじゃないのさ普通」
暫くの間、ニースは寝転んだままぶちぶちとグチを垂れていたが、そんなことをしていても何も解決する物ではない。
「…ちょっと外、出てみるか」
もう殆ど日の光は無いので、振闇を羽織っていれば何も問題はない。あとはティオの気配を辿っていけば
見つけることはそうは難しくは無いはずだ。先ほど血の交換を済ませたばかりだから、ティオとの繋がりも問題はない。
ニースは壁に掛けてあった裏地に小瓶をいっぱい仕込んである振闇を手に取って、肩からかけようとした時、
旅館の階段を上ってくる足音に気がついた。
最初は気にも留めてはいなかった。が、その足の運び方を察した時、ニースの警戒心がピクリと反応した。
「これって…、狩人が獲物を追い詰める時の歩行法だ…」
この歩行法はもちろんニースもティオも心得ている。が、ティオがニースに対してこの歩行法をする道理はない。
(となると、近づいてきているのは敵!)
ニースが扉から離れようと一歩足を引いたその瞬間、目の前のドアがバタン!と大きな音とたてて開き、二人の狩人が部屋へ乱入してきた。
「あ…、や、やっぱり……、ニース先輩…」
「先輩、生きていた…、とは言い難いんでしょうね。今の先輩は」
大剣を構えたリオンはわかってはいたがそれでも信じられないといった驚愕の、外套に腕を入れたままの
アンナはあくまでも予想内のことといった冷静な表情をニースへと向けていた。
「あ、リオンにアンナじゃない。久しぶりね。元気してた?」
緊張した面持ちでニースへ対峙している二人に、ニースは以前のニースと全く変わらない表情、言葉づかいで
声をかけてきた。その姿は、リオンとアンナが知っているニースそのものだった。
が、その態度は二人はニースへ向ける警戒をさらに色濃く変えていった。
なるほど、外見は以前のニースとなんら変わりはしない。が、その内から発せられる気配は目で見えるほどに真っ黒な物だった。
「リオン、騙されちゃダメ。あれはもう、ニース先輩じゃない」
「うん…。この物凄い鬼気…、外からでも感じられるくらいだったもの」
実際、ここまでニースが簡単に見つかるとはリオンにもアンナも思ってはいなかった。が、日が暮れるにしたがって
膨れていく巨大な吸血鬼の気配が感じ取れるようになり、労せずしてニースの居場所を特定することが出来たのだ。
「二人共、すっかり狩人の顔になったわね。でも、普段からそんな顔していると疲れちゃうよ」
ニースはあくまで昔と変わらない態度で二人に接してきている。それが何を意図しているのかいまいち測りかね
リオンもアンナも踏み込んだはいいが次の一手が打てずにいた。
「もう、どうしちゃったのよ二人とも。まるで私を吸血鬼を見るみたいな目で見てさ」
「先輩…。ごまかしてもダメです。今の先輩は、吸血鬼そのものじゃないですか」
リオンの言葉に、笑顔を浮かべているニースの顔がピクリと動いた。その赤い瞳に、邪悪な光がちらつき始める。
「ふ~~ん。じゃあリオン君は、吸血鬼の私をどうしたいの?
私の体にそのぶっといモノを突き刺して、オスの征服欲に浸りたいのかしら?」
「な?!」
ニースはリオンの持っている剣を指差しながらも、ニヤニヤと笑いながらわざと卑猥な表現でリオンに食って掛かってきた。
頭では違うと分かってはいるのだが、予想もしていなかった言葉にリオンの顔がボッと赤く染まる。
115:猟血の狩人
08/03/31 02:13:11 qF5M5kKG
「それとも、私に血を吸って貰いたいのかしら?
いいわよぉ。血を吸われるのってとっても気持ちいいの。すぐになぁんにも考えられなくなって、私に
血を吸われることばっかり願うようになるの。そして、幸せな気分のまま永遠の命と若さを手に入れられるのよ。
どう?なんならアンナから吸ってあげようか?リオンの血、最初に吸わせてあげるから、さ」
ニースは、時折扇情的な仕草も交え、リオンとアンナの心の平静をわざと失わせるかのように振舞っていた。
実際リオンは羞恥と怒りで顔を真っ赤にし、アンナもニースに凍りつきそうな冷たい視線を投げつけている。
(こんな簡単に挑発に乗るなんて…、まだまだね)
ニースにしてみれば、リオンとアンナは懐かしい後輩でもなんでもなく鬱陶しい闖入者でしかない。
本来ならとっとと切り裂くか血を吸い尽くしてしもべにでもしてしまいたい。
が、人目がつく旅館でそんなことをしてしまっては間違いなくティオの耳に入ってしまう。それだけは避けたい。
(後は冷静さを失った心に魔眼で暗示をかければ問題ないわ)
魔眼で『吸血鬼はここにいなかった』とでも暗示をかければ、騒ぎを起こさずにこの場を収めることが出来る。
二人とも心の動揺で、吸血鬼と退治した時は魔眼を防ぐために真正面から向き合うなという原則すら忘れ自分を睨みつけている。
(さあ、二人ともとっととこの町から出て行きなさい!)
謀が成功したことを確信したニースは、二人の脳髄を焼き尽くさんばかりに魅了の魔眼を投げつけた。
が、ニースは少しばかり二人を甘く見ていた。
ニースが魔眼を投げつけるより早く、外套に隠れたアンナの腕がブン!という音を立てて飛び出してきた。
「!!」
唸りをあげ、顔面目掛けて飛んできた物体をニースはすんでのところで顔を捻ってかわした。
後ろの壁にドカカ!と三本の小刀が突き刺さる。
(そうだった!アンナは投剣使いだった!)
危なかった。と、思う間もなく立て続けにリオンが大剣を振りかぶって襲い掛かってきた。
「うわああぁっ!」
「きゃっ!」
ニースの体を掠めて振り下ろされた剣は、ニースが座っていたベッドを真っ二つに切り裂いた。
「ち、ちょっと!人が寝るベッドを壊すなんて。それでも聖職者なの?!」
「安心してください先輩!もう先輩は寝る必要なんてありません!だって先輩はこの場で討滅されるんですから!」
リオンは重い大剣に振り回されること無く、ニース目掛けて必殺の斬撃を打ち込んでくる。別にそれそのものは
かわすのはわけないが、その隙をフォローするかのように投げられてくるアンナの小刀が非常に鬱陶しい。
(これは…、狭いところにいるのは不利だ!)
形勢がまずいことを悟ったニースは、まだ完全に日が暮れていないにも拘らず振闇を適当に羽織ってから窓を蹴破って旅館の屋根の方へと逃げ出した。
「「逃がすものか!!」」
もちろんリオンとアンナもそれを追っかけ、外へと飛び出していった。
夕闇が次第に濃くなっていく空が屋根伝いに追いかけっこを繰り広げる三人を覆い隠し、いつしか三人は
人気のない廃屋の屋根の上で対峙していた。この広い空間ではアンナの投剣はそれほど効果的ではなく、リオンも不安定な足場で大剣を
思うようには振るえない。が、ニースにしても僅かながら日が顔を覗かせている屋外では力を揮いにくく双方決め手に欠ける展開になっていた。
「いい腕になったのね、二人とも。先輩として鼻が高いわ」
「そうやって日没までの時間を稼ごうとしても無駄ですよ、先輩」
リオンとアンナはニースとの間合いをじりっじりっと詰めてきている。日没になればニースはその力を
全開発揮できるため、リオンたちにとって甚だ不利になる。なんとしても日没までに討滅しなければならない。
「さっさと先輩を討滅して…、ティオ先輩を助け出してみせる!」
リオンの口から出たこの言葉。その言葉にニースはピクリと反応した。
「ティオちゃんを…、救うですって?」
「そうです!ニース先輩に魅入られているティオ先輩を救うには、それしか手が無いのは先輩も承知のはずでしょう!
ティオ先輩のためにも、ニース先輩!あなたはここで滅ぼさせてさしあげま…」
リオンの言葉は最後まで続かなかった。目の前にいるニースの表情がみるみる険しく、鋭くなっていく。
116:猟血の狩人
08/03/31 02:14:11 qF5M5kKG
髪の毛がざわざわと蠢き、両手の爪が急激に伸び始めている。瞳の光は赤を通り越して金色に輝き、伸びきった牙ががちがちと音をたてている。
「ふざけたことを言っているんじゃないわよ…。私からティオちゃんを取り上げる腹積もりなの…?!」
ニースが憎悪に塗れた目でリオンとアンナを睨みつけた。
「うっ…、な、なんて威圧感なんだ…」
「これが、先輩の本性なの…」
魔眼が発動していないにも拘らず、その瞳が放つ薄ら寒さに思わずリオンとアンナは一歩後じさってしまった。
「魔眼で暗示を与えて穏やかに追い出そうとしたけれど…、気が変わった。お前達には死よりも辛い屈辱を与えてやる…」
二人を睨みつけたまま、ニースは懐を手でごそごそといじりまわすと、一個の小瓶を取り出した。
それは、あのニースがコレクションしていたと自称していた、吸血鬼の灰が入った小瓶だ。
「普通、灰になった吸血鬼は、ある程度の量の纏まった灰がないと肉体を再構成しきれない。
もちろん、こんな小瓶に入る量では、通常では復活なんか到底覚束ないわ」
そう言いながらもニースは小瓶の蓋を開けて、ぽいと下へと投げ捨てた。
「でもね」
ニィッと笑ったニースは親指をガリッと噛み、滴り落ちる血を一滴、小瓶の中へと垂らした。
すると、その瞬間小瓶から一筋の煙が吹き始め、高々と天へ登り始めた。
「強大な魔力を持った血があれば、充分に復活させることが出来るのよ!!」
派手に煙が吹き始めた小瓶を前へと投げると、小瓶はパン!と音を立てて弾け、次の瞬間には一体の吸血鬼がその場に立っていた。
その吸血鬼の姿を見て、リオンとアンナは思わず息を飲んだ。
「ア、アンナ…。あれって…、もしかしてヴァンダール、じゃ……」
「なんで…。私達が討滅するよう言われた吸血鬼が、いきなり…」
そう、ニースが復活させた吸血鬼は、先日仕留めたばかりのヴァンダールだった。
「あら、お前達こいつを討滅しに来たわけなの?残念でした。こいつはもう私とティオちゃんの手で仕留めちゃったの。
そして今は殆どの魔力を私に吸い取られ、私の血で忠実なしもべになってしまったのよ。そうよね、ヴァンダール?」
「はっ…」
ニースの声に、ヴァンダールは虚ろな顔でこっくりと頷いた。
リオンとアンナは声も出ない。
侯爵を名乗るほどの強大な吸血鬼をしもべに出来る力とはいったいどれほどのものか。
たったあれだけの量の灰を、ただ一滴の血で吸血鬼にまで再構成できる魔力は一体どれほどの物なのか。
目の前にいるかつて先輩だったものは、間違いなく今までに目にしてきたどの吸血鬼よりも強大な存在だった。
「おまけに、吸血鬼の灰はこいつだけじゃないわよ。ほら!!」
ニースが振闇をばさっとめくると、そこには10ではきかない数の小瓶がぞろっと縫い付けられていた。
「こいつらを全部復活させて、この町を吸血鬼だらけに変えて見せましょうか?アハハハハ!!」
声高らかに笑うニースの顔には、人間の命など気にも止めない残忍な吸血鬼の本性が色濃く張り付いていた。
「さあいけヴァンダール!私が町中にしもべをばら撒くまでこいつらの相手をしておくのよ!」
「御意!」
ニースの命令を受け、ヴァンダールはリオンとアンナ目掛けて轟然と突撃してきた。それと同時にニースは踵を翻し、町の奥へと走り出した。
「まずいアンナ!先輩を行かせてはダメだ!ヴァンダールは僕が何とかする。アンナは先輩を止めてくれ!」
さっきのニースの言動からすると、ヴァンダールはかなりの力をニースに取られているらしい。それなら
自分ひとりでも何とか倒せるかもしれないと踏み、リオンはアンナを一人で向わせることを決断した。
「でもアンナ、決して無茶はしないで!危ないと思ったらすぐに戻ってくるんだ!」
「わかったわ、リオン!」
ヴァンダールの相手をリオンに任せ、アンナはすぐさまニースの後を追いかけ始めた。
が、この時アンナには、また別の思惑が生まれつつあった。
うまい具合にリオンと別行動を取ることができた。
これは、好機だ。と。
117:猟血の狩人
08/03/31 02:15:11 qF5M5kKG
屋根伝いに町の奥へと走っているニースは、自分を後ろから追ってくる気配が一つあることを感じてほくそ笑んでいた。
「バカな奴。私がこの町を吸血鬼だらけにするわけないじゃない。クフフフ…」
そんなことをしたら、ティオの不興を買うだけではなく自分にも収拾がつかない事態になってしまう。
リオンとアンナの強さは二身一体のコンビ攻撃にあるので、この二人を分断できればニースにとっては敵ではない。
思惑通りに二人を離れ離れに出来たことで、ニースは込み上げてくる笑いを抑えることが出来なかった。
「来ているのは…、アンナか。このまま誰にも邪魔できないところまで誘い込んで、ゆっくりと血を吸って吸血鬼にしてあげる。
そして、リオンと仲良く殺しあうがいいわ。ティオちゃんを私から獲ろうとした報いよ」
ティオと交わした『人間を襲ってはダメ』などという約束も最早関係ない。
ティオを自分から奪おうとする輩を、ニースは絶対に許すわけにはいかなかったのだ。
「さあ、追っかけてきなさい。すぐにその頭をリオンの血のことしか考えられないように…って、えっ…?!」
おかしい。アンナの気配がどんどん自分から離れていっている。だからといって、リオンの方へ戻ってもいない。
まるで他に何か重要な目的でもあるみたいに見当違いのほうへと進んでいる。
「どういうこと……」
ニースは動きを止め、アンナが向う方へ意識を集中させる。一体アンナに、何の思惑があるのか探るために。
そして、程なくニースが捉えた気配は、いま自分と一番繋がっている存在のものだった。
「これは…、ティオちゃん?!ティオちゃんの所に、行こうとしているの?でも、なんで…」
背中がゾワゾワと悪寒で震える。なにか、とてつもなく嫌な予感がしてきた。
「っ!」
矢も盾もたまらず、ニースは逆にアンナを追っかけ始めた。何故かは分からない。だが、そうしないと絶対に後悔すると吸血鬼の感覚が教えていた。
アンナの目の前で、ティオがすやすやと寝息を立てている。
眠り薬はまだ十分に効いている。あと二時間は目は醒めないだろう。
仮眠室全体を不可視の結界で封印した。ここで何が起こっても誰も何も関心は持たない。
纏っていた掛け布団は捲っておいた。これで布団に穴は開かない。
眠っているティオの体の向きを変えた。これでこちらに正対する形になる。
全く表情を変えずに、アンナは懐から小刀を三本取り出した。大きく振りかぶり、その狙いを定める。
「………っ」
ピュッと放たれた小刀は、寸分狂わずティオの胸へと吸い込まれていった。そして、それが突き刺さろうとする瞬間
バンッ!!
「だめええぇっ!!」
閉ざされていた雨戸が破り壊され、矢のように飛び込んできたニースがティオの前へと立ちはだかった。
ドドドッ!
懸命に伸ばした左腕に小刀が次々と突き刺さり、小刀に篭められた浄化の力がニースの腕を焼き、ジュウジュウと嫌な音を立てた。
「うわあぁぁっ!!」
苦痛の余りニースは左腕を押さえながら大きな悲鳴を上げた。その様をアンナは苦々しげに眺めていた。
「や、やるじゃないアンナ…。わたしがティオちゃんに固執しているのを見て、まさかティオちゃんを狙うなんてね……
動けないティオちゃんを狙われたら、さすがに私も、こうするしかない…、痛ぅぅっ!!」
ニースの左腕は焼け爛れ、血と肉が焦げた匂いを発しながらボタボタと床に垂れている。動かそうとしても全く反応しない。
(このまま、ティオちゃんを狙われ続けたら、体が持たない…っ!)
だからと言って、この状況で盾代わりに小瓶からしもべを解放しようとすれば、即座にアンナは右腕を封じにかかるだろう。
追い詰めたと思った獲物が思わぬ形で牙をむき、いまや形勢は逆転しようとしていた。
が、そんな好転した状況にも拘らず、アンナの顔は未だに憮然としたままだった。
「この部屋には不可視の結界を張っていたのに、なんで…」
「おあいにく様…。私とティオちゃんは互いの血で繋がっているわ。言ってみれば自分がもう一人いるのと同じ。
自分の居場所がわからなくなるバカなんていないわよ…」
118:猟血の狩人
08/03/31 02:16:11 qF5M5kKG
と、そこまで言ってからニースは不可解なことに気がついた。
「って、ちょっとまって!不可視の結界?!なんで、ティオちゃんを隠すような真似をしたの?」
ティオを餌にしてニースを釣り出すつもりならば結界などは不要だ。ティオを隠す意図があるなら、それは
ニースからティオを遠ざけるのが目的であって、ティオを狙う意味はない。
そして、アンナの口から紡がれた言葉はニースにとって予想外の物だった。
「余計な、ことを…」
「え…?」
ニースは最初、アンナが何をいっているのか理解できなかった。自分がティオを庇うのが、なんで余計なことなのか。
「…。せっかくその女を殺すチャンスだったのに、よくも邪魔をしてくれた」
アンナの表情はいつにも増して重く、暗い。闇に生きる存在になったニースすらぞっとするほどの冷気が漂ってきている。
「ち、ちょっと待ちなさい!あなた、ティオちゃんを殺す気?!
もしかして、それって教会の命令なの?!だったら、そんなこと絶対にさせな…」
「教会は、関係ないわ。これは私自身の意思」
かちり、という音と共にアンナの両手に小刀が何本も迫り出してくる。それで狙う目標の目線は、明らかにニースの後方を指している。
「その女がいると…、リオンが命の危機に晒される。だから、殺す」
その表情には、かつての先輩を敬うとか憧れとかいう感情は全くない。獲物を狙う狩人の瞳でもない。
邪魔者を目の前から排除する、冷徹な執行人の顔をしていた。
「ふざけるな!ティオちゃんを…、お前なんかに殺させはしない!」
「ならば防いでみろ!」
アンナは横っ飛びに跳ね、ティオの体の真正面から小刀を打ち放った。直接受けるわけにはいかないニースは
動く右手で小刀を払おうとしたが、全てを弾き飛ばすことは出来ず一本右腕にもらってしまった。
「うあっ!」
「そうやって私の刀を受け続ければ、いつかお前も力尽きて倒れる。そうすれば、ゆっくりとそいつを殺せるというもの。
リオンには、先輩はお前に操られて盾にされたって言っておくわ。私が殺したっていうわけにはいかないからね!」
アンナの瞳に次第に狂気がちらつき始める。いつも感情を表に出さず冷静沈着なアンナが、ニース(というかティオ)に感情剥き出しにして襲い掛かってきている。
投げ放たれる小刀はあくまでニースではなくティオを標的としている。動かないティオは小刀を避けようがないので、
自然ニースが受け流す羽目になるからニースを狙っていると言えなくもないが。
ニースにはそこまでティオの殺害に執着するアンナが理解できなかった。
「なんで…、そんなにティオちゃんを殺そうとするのよ!そんなにティオちゃんに近くにいて欲しくないなら
とっととここから出て行けばいいじゃないの!ティオちゃんはもう教会と何の関係もないのよ。会う可能性なんて、殆どないじゃない!!」
「…!」
その言葉を聞いた時、アンナはぴたりと動きを止めた。
「関係ない…?いいえ、その女がいる限り…、この大地のどこかにいる限り関係はある…」
狂気の色に包まれていたアンナの表情が、見る見るうちに鎮まっていく。
代わりに、伏せがちの顔に浮かんできたのは悔恨とも怒りとも取れないものだった。
「その女がこの世界のどこかで息をしている限り、リオンはそいつのことをどこかで気にかける。
今日だって、日が沈むから明日にしようといった私の言葉を無視し、『先輩を助ける』とか言ってわざわざ
夜に吸血鬼と対決するような無謀な行為を選んだ。普段のリオンなら、こんなことを絶対にしはしない。
私と一緒の時はこんなことはしない!そいつが絡んでいるから、リオンは無茶な真似をした!!」
「アンナ…」
次第に激高していくアンナの感情を、ニースはようやっと理解することが出来た。
これは、嫉妬だ。
「そいつがいる限り、リオンは私のものになってくれない!私と一緒にいても、リオンの心はそいつに向っている!
リオンが好きな私の心に、リオンは絶対振り向いてくれない!!
だから殺す!!そいつを殺して、リオンの心を私のものにしてみせるんだぁ!!」
これが、物静かでクールな印象をもたれているアンナなのだろうか?嫉妬の炎を撒き散らしながら大声を
張り上げるその姿は、普段の彼女からは想像も出来ない。いや、普段の戦闘時での周りの被害を顧みない苛烈さ
を考えると、この姿こそがアンナの本質で普段は巧みにそれを隠していたとしか考えられない。
119:猟血の狩人
08/03/31 02:17:11 qF5M5kKG
「なんて、奴なの…」
そのあまりに自分勝手な言動に、あっけにとられたニースの心にふつふつを怒りが湧き上がってきた。
「どこまでバカなのあなた…。普段ろくに自分の気持ちも喋らないくせにリオンが振り向いてくれない、ですって?!
そんなにリオンのことを想っているんだったらちゃんと口にしていいなさいよ!黙っていてもいつか相手が
自分の気持ちを理解してくれる。空気を読んでくれ。なんて、現実にあるわけないじゃない!
自分の気持ちはきちんと相手に言わないと、永遠に理解してもらえないのよ!!
どうせ、度胸が無くて告白も何もしていないんでしょ!この意気地なし!!」
「ぐっ!」
図星を突かれたからか、アンナの顔が一瞬引きつり血の気がサッと引いた。
「だ…、黙れ黙れぇ!とにかくお前とそいつを殺せばリオンは私のほうを向いてくれる!
その女は特製の眠り薬であと数時間は目が醒めない。この部屋には結界を張ってあるから誰も何が起こっているのかわからない!
誰にも知られず苦しまずに殺してあげるのがせめてもの慈悲だと思えぇ!!」
が、自分の弱さを認めることが出来ないアンナはムキになって否定し、両手にもてるだけの小刀を持ち構えた。
さすがにあれだけの数の小刀を防ぐ手立てはニースにはない。
(クッ…、せめてティオちゃんが起きていれば……っ?!
寝ている?意識がない?!そうだ!!)
ニースがあることに思い至ったと同時に、アンナは怨念が篭められまくった小刀を持つ手を振り上げた。
「死ねええぇっ!!」
「ティオちゃん、アンナの動きを止めて!!」
「!!」
それと同時にニースが放った声。その直後、薬によって眠らされたティオの双眸がカッと開き、人外の速さで飛び起きた。
「えっ?!!」
予想外の事態に小刀を投げる手が一瞬止まった隙を見逃さず、ティオはアンナの後ろに回りこみ、後方からはがい締めにしてしまった。
「なっ!せ、先輩起きてたの?!」
アンナは驚愕に目を見開き、なんとかティオを引き剥がそうとするが、元々無理な体勢に加えティオの
人間離れした膂力に組み伏せられ全くびくともしない。
「そんなバカな。少なくとも、後一時間は絶対に起きてこないはずなのに…!」
「起きていないわよ。ティオちゃんの意識はまだ、ぐっすりと眠っているの」
再びの形勢逆転に、ニースの顔に勝ち誇った笑みが浮かんだ。
「今の私は、眠っているティオちゃんに限って意のままにすることができるの。状況が状況なんですっかり忘れていたわ」
「なんですって?!」
アンナは比較的自由になる首を何とか動かして、後方のティオの表情を覗いて見た。
「………」
その顔は全く表情が無く虚ろなままで、瞳は吸血鬼のように紅く輝いていた。
「ウフフ、うまく私を使って思いを遂げようとしたけれど、その浅知恵が命取りになったわね」
ニースがアンナの方へじりっじりっと近づいてくる。体中傷だらけで満身創痍だが、その目だけはギラギラと赤光を放っている。
「あ、あ…」
アンナは、ニースが何をしようとしているのか理解できた。ニースは自分の血で傷を癒すつもりなのだ
「い、いやあぁっ!ティオ先輩、離して。離してぇっ!!」
が、もとより意識がないティオは、アンナの懇願にも眉一つ動かさない。
「誰か、誰か助けてぇっ!!」
しかし、結界を張っている部屋からは外へ声が漏れることもない。
自業自得だった。アンナは数々の策を張り巡らせたが、その全てが自分への代償として跳ね返ってきたのだ。
ニースの血まみれの手がアンナの顎をつぅっと撫で上げた。
「ひいぃぃっ!!」
血を吸われる。血を吸われる!いやだ、いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだいやだぁっ!!!
120:猟血の狩人
08/03/31 02:18:11 qF5M5kKG
「そんなに恐がらないの…。私はあなたの血を貰うけど、私からもあなたにあげるものがあるんだから」
ニースの言葉にアンナはさらに震え上がった。吸血鬼が人間にあげるものといえば、あれしかない!
「いらないいらない!永遠の命なんていらない!不老不死なんていらない!いやいやいやいやぁぁ!!」
アンナは大粒の涙を流しながら、かろうじて自由になる頭をぶんぶん振って抵抗した。
「そんなものじゃないわ。私があなたにあげるのは『勇気』よ」
「ゆ、ゆう、き……?」
ニースのあやすような優しい声に、アンナはピクリと反応した。勇気とは、一体何か。
「そう、勇気。リオンに告白することが出来る勇気と力を、あなたにあげるわ…」
そこまで言ってから、ニースは瞳を愉しげに歪めて口をガッと開いた。鋭い牙が部屋の灯りに反射して輝いている。
「リオンを自分の物にすることが出来る、吸血鬼の力をね!!」
ガシュッ!!
「きゃあああぁぁーーーっ!!」
深々と穿たれた牙の衝撃に、アンナは魂を振り絞るような悲鳴を上げた。が、勿論その声は外には届かない。
「ああっ、あがぁ……」
頚動脈を深々と貫いた部分がカァァッ!と熱もってくる。まるで、体中の体温を集められているようだ。
『どう?牙を挿された感触は…?とっても気持ちいいでしょ』
アンナの頭の中にニースの声が直接響いてきている。
『でも、吸われる快感はこんなものじゃないわよ…』
チュッ
ほんのちょっと、傷口から溢れ出てきた血を啜られただけだった。
「ひあぁっ!」
だが、その瞬間アンナの体内に腰が痺れそうな快感が走った。
(な、なに、これ……。これが吸血の快感…?!)
たちまちアンナの瞳には薄い霞みがかかり、口元は知らずのうちに悦楽の笑みが浮き出ている。
頭の中は気持ちいいで塗りつぶされていき、思考するのも億劫になってきている。
それだけに、消えかけている理性はこの状況に危機を発していた。
この快感は危険だ。これに溺れてしまったら、二度と浮き上がることは出来なくなってしまう。
考えられる理性があるうちに、なんとしても引き剥がさないと!!
が、それを実行に移す間もなくニースによる本格的な吸血が始まった。
『さあ、狂わせてあげるわ』
チュッ、チュッ、チュゥ…
「ああぁっ………!」
ニースの喉がこくり、こくりと動くたびに、アンナの目の前に雷が落ちたかのようなフラッシュが走る。
ニースの牙がアンナの血を啜るたびに、自分の命もニースの中に獲られている実感が湧く。
でも、そんなの関係ない。
(凄い!吸われるの気持ちいい!とっても、とっても気持ちいい!)
吸血には快感が伴うことは聞いたことはあるが、これほどとは思わなかった。リオンのことを想って自慰をしたことも度々あったが
その時もこれほどの快感を得たことは無かった。
吸血鬼の犠牲者が盲目的に吸血されることを求めるという気持ちも今ならわかる。
こんな快感を知ってしまったら、もうこれがない世界に戻ることなんてできっこない!
「ああぁっ!凄い!血を吸われるの気持ちいい!もっと、もっともっともっと吸ってぇぇっ!!」
とうとうアンナは口に出してまで吸血を求めてしまった。
が、それを聞いたニースはつぷっと牙をアンナから引き抜いてしまった。
121:猟血の狩人
08/03/31 02:19:11 qF5M5kKG
「あああああっ!!なんでぇ?!なんで抜くのぉ?!吸って。吸ってぇ!吸ってくださぁい!お願いしますぅ!!」
恥も外聞も無く喚き散らすアンナを、ニースは面白そうに眺めていた。
血塗れだった左腕は白煙を上げ、物凄い速さで再生していっている。もう傷口は塞がっており、怪我する前となんら変わりはない。
「フフッ、ご馳走様。見ての通りあなたにやられた傷は完全に元に戻ったわ。もう血を貰う必要もないの。
それに、これ以上血を吸ったらあなたも吸血鬼になってしまうわ。そうしたら、リオンも悲しむでしょ?」
もちろんここで吸血を終わらす気など全くないのだが、ニースは意地悪くアンナに語りかけてきた。
「え…」
それを聞き、アンナの顔からざっと血が引いた。
もう自分の血は必要ない。もうこれ以上自分の血を吸ってくれない。もうあの快感を味わうことが出来ない!
それは、今のアンナにとって死ぬよりも辛いことだった。
「いやあぁっ!もっと、もっと吸ってくれないといやぁっ!吸って!私の血、吸い尽くしてくださぁい!!」
アンナは光をなくした瞳に涙を浮かべて懇願してきた。しかし、それでもニースは動かない。
「いいの?これ以上吸ったら、あなた本当に吸血鬼になってしまうわよ?」
「いいの!吸血鬼になってもいいの!だから、吸って!吸って!!」
もうアンナの頭には血を吸われる快感を味わうことしか浮かんでこない。
「もう何もかもどうなってもいい!私の血をすべて吸われたいんです!お願いします!ニース様ぁぁっ!」
「…ククッ」
完全に堕ちた。それを確信したニースはようやっとその牙をアンナの喉元へと近づけていく。
「そこまで言われてはもう私も遠慮する必要はないわね…
じゃあ、あなたも連れてってあげるわ。猟血の輩の世界にね!」
ガッ!とニースの牙が突き刺さった瞬間、アンナの顔が満足げに歪んだ。
「うあはあぁっ!いいっ!気持ちいいよおぉっ!」
ニースとティオに挟まれながら、アンナは腰を大きくひくつかせて快感に喚いた。
その瞳には紅い光が次第に大きく輝き始め、だらしなく舌が零れ涎を流している口からは鋭く牙が伸びてきている。
その様を、ティオは意識が無いまま紅い瞳でじっと見つめていた。
「アンナ…、どこに行ってしまったんだ?」
あの後、ヴァンダールを何とかしとめたリオンは、アンナを探して街中を彷徨っていた。
無茶はしないでとは言っておいたものの戦闘になったら何が起こるかわからない。ましてや相手は強大な魔力を持ち、
自分達のことをよく知っているあのニースなのだ。
(もしかしたら…、僕はとんでもないミスをしたのかもしれない…)
リオンは今更ながら、アンナと離れ離れになってしまったことを悔いはじめていた。ティオを助けるために
夜に吸血鬼と戦う危険さを承知していながらも強行してしまい、怒ったニースに街中に吸血鬼をばら撒かれる
ような事態を作ってしまった。これは戦闘を日中に行うようにしていれば容易に防げたことだ。
幸い、今まで街中に吸血鬼が出没したという話は聞こえてこない。アンナがうまくニースを防いでいると
思いたいが、もし、もしも実はニースがアンナを手にかけるのに夢中で他に手が回っていないのだったら…
(お願い、アンナ!無事でいて!!)
焦る気持ちを必死に押さえ、リオンはニースとアンナが消えていった方角を必死に駆け抜けていった。
そして、薄暗い角を曲がった時、リオンの目の前にふらりと一人の人影が現れた。
「う……、リ、リオン……」
「!!あ、あ……」
その服はボロボロに引きちぎれ、胸を抑えて蹲っている。日がすっかり暮れてしまった上に明かりも指さない
路地裏なのでおぼろげにしか全身像を見ることは出来ないが、その姿は見間違えもしない…
「ア、アンナ!!」
「リオン……、ようやっと、会えた……」
リオンの耳に届くアンナの声は今にも消えそうなほどに小さい。酷い怪我でもしているのか苦しそうにゼェゼェと息を吐いている。
「アンナ!あれほど無茶はしないでって言ったのに…」
これは自分のミスだ。アンナを一人にしてしまったためにこんなに酷い目にあわせてしまった。
リオンは悔しさに臍を噛みながらも、アンナの状態が心配なので無防備にアンナへと近づいていった。
122:猟血の狩人
08/03/31 02:20:12 qF5M5kKG
「でも…無事でよかった。とにかく、今は状態を立て直して……っ?!」
蹲るアンナの手を優しく握った時、リオンの体に戦慄が走った。
アンナの手から体温を全く感じない。いくら夜になって冷えてきたとはいえ、ここまで体温がないなんて人間ではありえない。
「ア、アン…!」
リオンが思わず手を離そうとした時、アンナがもう片方の手でリオンの肩をがっしりと掴んだ。
「リオン……、もう離さない…。フフフ…」
ゆっくりとリオンのほうを向いたアンナ。その瞳は、燃えるように紅い血の色をしていた。
「そんなっ!アンナ…」
驚愕から思わずアンナの瞳を覗いてしまった時、アンナの瞳から発せられた赤光がリオンの瞳に飛び込んできた。
「あうっ…!」
その瞬間、たちまちリオンの全身から力が抜け、くたっとアンナにもたれかかるように倒れてしまった。
「アハハハ…。さあリオン、二人でゆっくりできるところに行こうね。そこで、たっぷりと可愛がってあげる…」
リオンを抱えたまま、アンナは路地の闇へと消えていった。
「うあっ、おああっ!!」
人気のない納屋の中で、決して外には漏れないリオンの絶叫がこだましていた。
敷き詰められた藁の上で、裸に剥かれたリオンがアンナに組み伏せられたまま蛇のようにのたうっている。
アンナはリオンの太腿にその牙を埋め、ジュルジュルと音を立ててリオンの血を吸い取っていた。
『ウフフ、どうリオン?血を吸われるのって気持ちいいでしょ?
私もついさっき、ニース様からこの快感を味あわせてもらったの。だから、リオンにも体験して貰いたくて、ね…』
リオンをよく見ると、もう片方の太腿にも、首筋にも胸板にも生殖器にもアンナの牙の噛み跡が見える。
猫がネズミを弄ぶかのように、アンナはリオンの体のあらゆる部分からじわり、じわりと血を搾取していた。
「ア、アンナぁ…、や、やめて……」
が、吸血の快感に溺れそうになりつつも、リオンは必死に理性を奮い起こし抵抗しようとしていた。
それがアンナには気にくわない。
自分がニースに吸われた時は一瞬にしてその牙の虜になってしまった。なぜ、自分はニースと同じように出来ないのか。
何故すぐに、リオンは自分の物になってくれないのか。
太腿から牙を引き抜いたアンナは、リオンのがちがちに勃っているペニスに目を向けた。
「やっぱり、ここから吸うのが一番いいのかしらね…」
アンナは両手でリオンのペニスを握り締めると、その先にがぶりと噛み付いた。鋭い牙の感触が海綿体を
ずぐずぐと抉り、溜まりに溜まった血を吸い上げていく。
「うわあああああぁっ!!!」
その魂までも吸い上げようとするアンナの吸引に、快楽中枢を直撃されたリオンはたちまち射精し、アンナの口の中に精液を迸ってしまった。
「んっ!んんぅ……」
紅い生命のエキスと共に飛び込んできた白い生命の種を、アンナは一滴のこぼすことなく飲み乾した。
「ぷぅ……。どうだったリオン。気持ちよかった?」
射精が収まってからアンナは口を離し、リオンの顔を覗き込んでみる。
「あぁ…、ふわあぁ……。きもち、いぃ……」
放出の魔悦にリオンの顔は今までにないほど蕩けきり、口元にはだらしない笑みが浮かんでいる。
無意識に腰をビクッビクッと動かすリオンを見て、アンナはクスリと微笑んだ。
「ようやっと吸血の気持ちよさが分かってくれたみたいね。どう?もっと私に吸ってもらいたい?」
「あぅ…。そ、それは……」
まだ僅かに理性を残しているのか、なおも躊躇うリオンにアンナはぼそっと呟いた。
「今より、もっともっと気持ちよくしてあげるわ。おちんちんから精液、びゅーびゅーって出させてあげる」
「び、びゅーびゅーっ、て……」
たった今体験した腰も抜けそうな快感。アンナの口へ自らの血液と精液が吸い取られていく快感。
わかっていた。それがどれほど気持ちよいことなのか。それに浸るのが、どれほど心地良いのか。
しかし、それに溺れるのが恐かった。今までの自分が目茶目茶に壊れ、全く違うものになってしまう恐怖があった。
が、もう引き返すことは出来ない。アンナという毒蜘蛛の巣に捕らえられてしまっている以上、ここから逃げ出すことはもう出来ない。
なら、我慢したところでそれが何になるというんだ。
123:猟血の狩人
08/03/31 02:21:11 qF5M5kKG
「お願い…。私、リオンに気持ちよくなってもらいたい…」
アンナが悲しそうな目でリオンを見つめている。吸血鬼になってしまっても自分のことをこんなにも想ってくれている。
(二人で堕ちるのも…、悪くないか……)
「アンナ…、吸って。僕の血、たっぷりと吸って!!」
リオンの言葉に、アンナはピクッと反応した。
「いいの?本当にいいの?リオンの血、吸っちゃってもいいの?!」
「いいよ!吸って!もっともっと僕を、気持ちよくさせて!!僕の血、全部吸い取っちゃってぇぇ!!」
リオンの堕ちた声に、アンナはニタァと欲望を剥き出しにした笑みを浮かべた。
ようやっとリオンが私の物になってくれた。これでリオンは私だけの物。私だけを見て、私のためだけに存在してくれる。
もう絶対に手放さない!永遠に私のしもべになる!!
「アハハハハッ!じゃあリオンは私のしもべよ!他の誰も見ない。永遠に私の物になるのよ!いいわね!!」
「わかった…、いや、わかりました!僕は永遠に、永劫にアンナ様のものです!
だから、だから早く吸ってぇ!」
「わかったわ!!リオンの血も精液も、全て吸い尽くしてあげるわ!!」
勝ち誇った笑みを浮かべたアンナは、リオンの真っ赤に腫れたペニスに勢いよく牙を打ち込んだ。
「あーーーーーっ!!」
壊れた笑みを浮かべたリオンは、血と精液を放出し続けながら人外の快感に身を委ね続けた。
そして、その鼓動がしだいに小さくなるにつれ、虚ろな瞳に邪悪な光が宿り始めていった。
ニースが二人がいる納屋に入ってきた時、リオンとアンナは人間では絶対に経験できない情交を交わしていた。
「ふわぁっ…、アンナ様の血、凄くおいしい……」
「リオン、リオンゥ…。あなたは私のもの……」
リオンとアンナはお互いの首筋に顔を埋め、互いの血を貪りあっていた。吸血する快楽と吸血される快楽が
双方を燃え上がらせ、行為をエスカレートさせていた。
「あらあら、二人ともすっかり立派な吸血鬼になっちゃって。ついさっきまで聖職者だったってのが嘘みたいね」
後ろから聞こえたニースの声に、アンナは血塗れの口をそのままに後ろに振り返った。
「だぁって…、吸血鬼の体と快感を与えてくれたのはニース様ですよ…。
こんな素晴らしいことを知ってしまった以上、過去の自分なんて省みる気にもなりませんよぉ…」
「僕もアンナ様に吸血鬼にしてもらって、今まで人間をやっていたことがすっごくバカバカしい気分になってきましたよ。
吸血鬼がこんなに素晴らしいものだって分かっていたら、以前に討滅した吸血鬼のどれかにさっさと
吸血鬼にされていれば良かった。って気になってきましたからね…」
リオンの方も、生えたての牙を惜しげもなく見せびらかしながら、以前のリオンからは想像も出来ない言葉を口走っていた。
「あぁ…、アンナ様の血もおいしいけれど、早く人間の血を思いっきり啜りたいよぉ…」
「すぐに吸えるわよ。そうしたら、一匹の人間を二人で一緒に啜りましょ!こんなふうに!!」
アンナは、再びリオンの首筋にガブリと勢いよく噛み付いた。
「う、うん!こんなふうにね!!」
吸血される快感に頤を仰け反らせたりオンは、我慢できないといった顔をしてアンナの首筋に噛み付いた。
「「んんーーーっ!!」」
うっとりと目を細めて吸血の快感に浸り始めた二人に、ニースはゆっくりと近づいていった。
その手には、リオンが持っていた大剣が握り締められているが、吸血に夢中な二人は気づく由もない。
「二人とも立派な吸血鬼になってくれて嬉しいわ。でもね…
後先考えず人間の血を吸われるようになったら、こっちとしてもまずいのよね」
互いに血を貪りあうリオンとアンナの胸板目掛け、ニースは大剣を勢いよく振り下ろした。
124:猟血の狩人
08/03/31 02:22:11 qF5M5kKG
「ん…?」
ティオが重い瞼をゆっくりと開け放った時、部屋の中にはティオ一人しかいなかった。
「あれ…、リオンとアンナは…?」
身支度を整えて部屋を出てレストランの店員に話し掛けると、『仕事がある』とかいって二人は出て行ったと聞かされた。
「そっか…。あの二人、ヴァンダールの城へ行ったんだ…」
といっても、城の中はもぬけの空のはずだから、行ったらさぞビックリするでしょうね。と、ティオは軽く微笑んだ。
「せめて別れの挨拶でもしたかったな…」
少し寂しい気分になりつつ、ティオはレストランを後にした。ニースを一人残しているのが少し気がかりだったからだ。
(あの子のことだから二人に気づかれることはないだろうけれど…)
夜とはいえ人通りが多い大通りをとことこと歩いていると、前の方から見慣れた姿がちょこちょこと近づいてきた。
「やっほー。ティオちゃーん!」
「ニ、ニース?!」
その姿に、ティオはぎょっとした。もし二人がまだこの近くを歩いていたら、間違いなくニースに攻撃を仕掛けてくる!!
「どうしたの?ティオちゃ……、きゃっ!!」
呑気に手を振りながら近づいてくるニースの手をティオはガシッと掴み、近くの路地へと物凄い速さでカッ飛んでいった。
「な、なにがおこったのティオちゃん!」
「何が起こったのじゃないわよ!あなた、何一人で勝手に歩いているのよ!!」
ティオの凄い剣幕にニースはちょっと引きながらも、手に持っていた紙袋をおずおずと差し出した。
「なにこれ……?ああっ!!」
そこには、例の小瓶が一ダース入っていた。
「この前、空の小瓶が全部なくなっちゃって、買いに行っていたの…」
ニースが振闇をぱっとめくってみる。なるほど、裏に縫い付けられた小瓶にはすべて灰が詰まっている。
「まったく……。さっき、リオンとアンナに出会ったのよ。私」
「えっ……!それって、あのリオンとアンナ?!」
ニースはまるで初めて聞いたふうにギョッとした表情を浮かべた。
「そうよ。もし会っていたらこんな街中で大立ち回りをするはめになったじゃないの。ちょっとは自重しなさい」
「ごめんなさ~い」
ニースはしゅんと頭を下げ反省したそぶりをした。意外に素直に謝ったことで、ティオも怒りの気分がスッと抜けていった。
「まあいいわ。二人はもう町を離れていったみたいだし、気をつけていれば大丈夫でしょう。わかったわね」
「うん。でも私も、久しぶりに二人に会いたかったな~」
「冗談はほどほどにしなさい!!!」
調子に乗りすぎだ。と、ティオはニースの頭に拳骨を一発見舞った。
「痛った~~~い!」
「知らないわよ!!」
頭を抑えて痛がるニースを省みることなく、ティオは表通りへ一人でずかずか出て行った。それを見たニースが慌てて後を追いかける。
「ま、私も別れの挨拶くらいはしておきたかったけれどね…」
ニースのほうを振り返ることなく、ティオはぼそりと呟いた。
(大丈夫だよティオちゃん…。会おうと思えば二人にはいつでも会えるんだ…)
それを耳にしたニースは心の中で呟き、小瓶が縫い付けられている部分にそっと手を触れた。
そこには、ヴァンダール戦の後2つ残っていた空瓶に詰めたリオンとアンナの灰がある小瓶がある。
(ティオちゃんが吸血鬼になってくれたら、一人づつしもべにして暮らそうね。それはとてもとても面白い生活になるよ…)
吸血鬼になったティオに二人が甲斐甲斐しく付き従う姿を夢想し、ニースはほんの少し唇をゆがめて微笑んだ。
終
125:猟血の狩人
08/03/31 02:28:00 qF5M5kKG
以上です。投下を待っていると言ってくださった方、有難うございました。励ましは
なによりも制作意欲の原動力になります。
猟血の次回はどういう感じにするかは未定ですが、また気を長くしてお待ちください。
126:名無しさん@ピンキー
08/03/31 02:39:10 YpkxDdDQ
GJ!!
こんな時間まで粘って起きてた甲斐があったぜ。
次回までwktkして待ってますよm(_ _)m
127:名無しさん@ピンキー
08/03/31 03:18:14 p0xqbHiYi
GJ!!
かなり良かった。
128:名無しさん@ピンキー
08/03/31 07:03:41 qmutdmIp
>>125
うぉぉ、後編ktkr!
前編より多目の量で十分に見応えあった!
次回も楽しみにしてるよ!
129:名無しさん@ピンキー
08/03/31 08:18:05 kyMaTKc7
>>125 GJ!!
次回も期待しています!!
130:名無しさん@ピンキー
08/03/31 21:21:22 lfIyzI6V
>>125
なるほど、アンナが最後に見せた表情にはこんな理由があったのですか。
しかしティオはモテモテなんですねw
131:名無しさん@ピンキー
08/04/01 00:14:14 f5wLNLf2
>>125
GJでした
最後の方のニースの台詞で「ティオに甲斐甲斐しく付き従うアンナ」の姿が想像できて
何か凄く良かったです。殺したいと思ってた女性への気持ちまで、しもべ化で捻じ曲げられるんですね
132:名無しさん@ピンキー
08/04/01 01:09:11 LcrSdi4e
>>125
これはwktkせざるを得ない
GJ!!!!1
133:名無しさん@ピンキー
08/04/01 01:44:38 1MVKLNfL
GJ!!!
書き方上手くて泣くwww
134:名無しさん@ピンキー
08/04/01 12:42:40 th0r85vb
念のためブラックサイク見たら案の定エイプリルフールネタがw
135:名無しさん@ピンキー
08/04/01 13:07:52 USCxi2kd
俺も見たがこれはひどいwww
だが逆に見たいwww
136:名無しさん@ピンキー
08/04/01 16:49:48 vURczdGi
黒岩よしひろ先生って昔からマンドコントロール系のネタを描く人だと思ってたけど
悪堕ちイラストとかも描いてるんですね
某萌○連に魔法戦隊マジレンジャーのヒロイン二人の悪堕ちイラストが詳細希望で出されてた
137:名無しさん@ピンキー
08/04/01 17:26:17 LZ38wHMN
どー見てもコラだろw
138:名無しさん@ピンキー
08/04/01 19:05:48 SgT2rhZx
っていうかルクシオン買えば?
139:名無しさん@ピンキー
08/04/01 20:17:39 f+RD0Pkt
おおおきく絵柄変わってたね
140:名無しさん@ピンキー
08/04/02 01:09:14 maULWxQn
「さあ、行こうかお母さん」
「いっ、行くって……お、お城によね?」不安そうに母が尋ねる。
「いいから行くのよ」そういうのと同時にアルスの赤い瞳が怪しく輝いた。
「は……い……」すると母親はまるで意思を失った抜け殻のように棒立ちになり、瞳はどんよりと濁る。
フラフラと歩く母を導いて、アルスはお城とは逆の方向、町の東の井戸へと向かって行った。
辿り着いた井戸は魔物が出るとの噂で、この頃は近付く人も無く、ツタが絡まり荒れ果てた様子だった。
「さっ、行くわよ」アルスはそういうと母親を井戸の中に突き落とし、後を追うように自らも飛び込んだ。
思いのほか井戸の底は浅く、水が衝撃を和らげたこともあって、母親もアルスも全くダメージを受けない。
そして驚くべきことに井戸の底にさらなる横穴が掘ってあって、その向こうにはかなりの空間があり、宿屋のような体裁になっていた。
「おや、お客さんかね……おお、これはこれは……」
その空間の奥のカウンターには好色そうな顔をした商人風の男、そして手前の机に二人のチンピラとその兄貴分らしい荒くれ者がいた。
「へへっ、お嬢ちゃん若いくせに色っぽいねぇ!小貨六枚でどうだい?」チンピラの一人が舌なめずりをしながら近寄ってくる。
「なあ、いいだろ?」馴れ馴れしく肩に手を掛けてくる。
「ばっ、馬鹿野郎っ!この方を誰だと…っ!すっ、すいやせん……」荒くれ者があわててチンピラを制し、アルスに頭を下げる。
どうやらここは裏の売春窟で、アルスはそれなりの顔らしかった。
「……ねぇ親父、この女を働かせてやって欲しいんだけど?」
アルスは荒くれ者を不愉快そうに一瞥した後、奥の男に向かって母親を乱暴に押しやった。
「ふうむ、少々年は食っておりますが、中々の上玉ですなぁ。これなら一回あたり……そうですな、仲介料を引いて小貨三枚でどうかな?」
「百十枚でどうかしら?」「ひゃくじゅ……ご冗談を……どんな上物でも十枚が限度、ましてこのような……」
「誰も一回辺りなんていってないわ。そんなセコイ事言わないで一括でって事よ。最初の支払い以外は一切無し。
この女の稼ぎは全部そっちが持って言って良いわ。」
「なるほど、そういうことですか……少々お待ちくだされ……」
そういうと男はソロバンを取り出し損得について計算を始めた。
「うむ、良いでしょう。しかし途中でこの女性に逃げられては困ります。一筆いただきたいのですが……」
「あら、しっかりしてるのね。まっ、お安い御用よ。」
そういうと紙を二枚とペンを男から借り受け、母親に渡す。
「まずは契約書。」母親はアルスが耳元で囁く通り、自身の身柄を売り払う旨の契約書を作成し、男に渡した。
「そしてこっちは」アルスは一際邪悪な笑みを浮かべると、何やらもう一通文書を書かせ、それは自分の懐に納めた。
「これで用は済んだわ。ああそうそう、その女ケツはまだ新品だから。あんた達ラッキーだよ。」
勇者の一族とは思えない卑猥な言葉をチンピラ達に投げかけると、アルスは早々に売春窟を後にする。
背後ではチンピラ達が歓声をあげ、待ちきれないといった具合で早速親父と値段について話し合いを始めていた。
141:名無しさん@ピンキー
08/04/02 01:11:06 maULWxQn
「う…んんっ……あれ、もう朝ぁ?……えっ!?」
愛くるしい栗色の瞳を持つ寝ぼけ眼擦りながらカーテンを開けたアルスは、文字通り飛び起きた。
今日は王様に会いに行く大切な日、それなのにもう日は高く上り、町は真昼の喧騒に包まれているのである。
「たっ、大変っ!遅刻っ、大遅刻っ!お母さんっ、お母さんっ!」
慌てて旅人の服に着替え、階段を駆け下りる。
「あっ、あれ?お母さ~ん?」
いつもは台所で家事をしている母の姿は見えず、その代わりにテーブルの上に一枚の手紙があった。
『私の可愛いアルスへ、今日はいよいよお前の旅立ちの日。
しかし母が一人でこの家に居たのではお前も安心して冒険が出来ないでしょう。
ですからしばらくテドンの実家に身を寄せることにします。
しばしの事とはいえ、やはり別れは辛いもの。黙って出て行くことを許してください。
お前が平和な世界を作り上げた後、また共に暮らしましょう。
お前ももう十六歳、母の助けが無くても立派にやっていけると信じています。』
「おっ、お母さん……僕っ、僕頑張るからねっ!」
アルスの胸には、母が旅立った寂しさ、その思いやりへの感謝、一人前と認められた喜びなど、
様々な思いが出来し、思わず手紙を握り締めたまま涙ぐんでしまった。
「おっ!おごっ!おおおおおっ!」
その頃町外れの井戸では、猿轡をかまされ、目隠しをされた母親が、
四つん這いのような格好でテーブルの四脚にそれぞれ手足を縛られ、
五六人の男達に変わる変わるその肢体を貪られ、獣のようなうめき声を上げていた。
それにしても……と、売春窟の主人は思う。
自らサインをしておきながら、事に及ぼうとした途端抵抗するとは、肝の据わった女だ。
「持ってきやしたぜ親父!」
背むしで出っ歯のいかにも下卑た男が、一本の針を持ってやってきた。
闇ルートで手に入れた毒針に細工をしたもので、致死毒の代わりに精神に作用する神経毒が縫ってある。
「ご婦人、貴女が悪いんですよ……こちらだって高い支払いをしてるんですから……」
針を受け取った主人は、ゆっくりと白濁液に塗れた女のほうに歩み寄り、
肛門に汚い性器を突き入れていたチンピラを押しのける。
「うっ、うぐっ!?んんっ!んおおおっ!」
異変を察知した母親は、わずかに動かせる首を必死に振り、抵抗の意を示す。
「静かにしていただけますか?すぐ天国に連れて行ってあげますから……ねっ!」
主人は暴れる首根っこを押さえつけ、背筋と首の中間点にあるツボを狙ってチクリと一刺しした。
「んおおおおおおおっ!!!!」
途端にくくり付けられたままのテーブルがズリズリと移動する程狂ったように暴れだし、
先ほどまで身体を貪っていた男達は『大丈夫か?』といった具合に顔を見合わせる。
「心配要りませんよ旦那方、少し利口になるような処置をしただけでして。」
好色そうな顔に邪悪な笑みを浮かべて、主人が穏やかに言った。
「なぁに、ものの五分で喜んで旦那達に奉仕する色情狂になりますよ……」
暴れまわる母親の頭の中では思考がショートにショートを重ね、
瞬く間に色欲だけしか考えられないような精神構造と変容を重ねていく。
最後にチラりと愛しい娘の笑顔が浮かんだかと思うと、
そこで思考の糸はプッツリと断ち切られてしまった。
142:名無しさん@ピンキー
08/04/02 01:12:03 maULWxQn
「おっ、お初にお目にかかりますっ!僕……じゃなかった、ワタクシはオルテガの娘でっ!」
「ハッハッハ!よいよいそう硬くなるな。お主は客人じゃ、楽にしてよいぞ。」
謁見の間で、アルスと王の会見が行われていた。
王の後ろには十人ばかりの完全武装の近衛兵が控え、王の傍らには大臣が侍っている。
初めて見る威厳に満ちた光景に、お転婆なアルスといえどカチカチに固まってしまっていた。
緊張してところどころ声が裏返るアルスを、王は孫の成長を見守る祖父のように優しく語り掛ける。
「お前ぐらいの年頃の頃のオルテガに比べれば、中々どうして立派な礼儀作法じゃ。」
「あっ、ありがとうございます。あの、ごめんなさい。実は僕、その……寝坊しちゃって……」
「ハッハッハ!正直な事じゃ!ますます気に入ったわい!ところで、早速だが時間が無い、本題に入ろう。」
「はい、魔王バラモスの事ですね!」
一時の談笑の後、一転して王もアルスも引き締まった顔になる。
「そうじゃ、しかし勇者オルテガは旅の途中で……お主の様な若者にこのような過酷な使命を与えるのは心苦しい……」
「そんなっ、とんでもない!父さんの仇でもあるんです!気にしないで下さい、僕が必ず打ち倒します!」
苦悶の表情を浮かべる王に対して、アルスは胸を張って自らの固い決意を打ち明ける。
「うむ、そういってくれるとワシも幾分気が楽になる……大臣、武器をこれへ。アルス、大した物ではないが、受け取ってくれ。」
そういうと大臣は前もって用意してあったひのきの棒や棍棒といった武器を近衛兵に運ばせる。
「へぇ、ひのきの棒……ですか。」
それを目にした瞬間、アルスの瞳がボウッと赤く染まる。
「凄い……硬くて……太いんですね……」
そういいながらひのきの棒を両手で持ち、擦り、撫でて質感を確かめる。
しかしその行為は実に艶かしく、行為を連想させるものであった。
「ふうん、こんなになってるんだ……」
いつしか場に居る全てのものが固唾をのんでひのきの棒を弄る手を注視し、一言も言葉を発しなくなっていた。
「あっ!痛いっ!トゲ刺さっちゃった……んんっ……」
ガッシャーン!
アルスがトゲの刺さった指を舐めると、王の背後で大きな音が響いた。見とれた近衛兵が思わず得物を取り落としたのだ。
しかし誰一人としてそれをたしなめはしない。皆、それほど夢中になっていたのだ。
「それで王様、軍資金はいかほどいただけますか?」
それだけで射精してしまいそうな微笑を浮かべ、すっかり呆けた顔になった王に尋ねた。
「う~ん、こんなに貰って良いのかなぁ?」
城からの帰り道、アルスは金貨がぎっしりと詰まった袋を不安そうに見つた。
「まっ、いっか!仲間を雇うお金も要るみたいだし。酒場かぁ、なんだかドキドキするなぁ!」
持ち前の天真爛漫さで悩みをどこかへやってしまうと、ウキウキした気持ちで酒場のドアを叩いた。
GJ過ぎるSSの後で気後れしますが一応>>87続編のようなものを……
意見なんかありました頂けると幸いです
143:名無しさん@ピンキー
08/04/02 01:45:48 1rELUqTo
キティの人です。
最終回もキャプカードの不具合で乙りますたOTL
・・・ひとまずこれからもあの番組はヲチするとしますが。
これまでご利用ありがとうございました。
144:名無しさん@ピンキー
08/04/02 02:45:06 6GC+FSSU
DQはエロゲー
1は姫さんが洞窟内に囚われてたり、宿屋でハアハア
2は犬姫が色々とハアハア
3は女勇者、女戦士、女賢者、女僧侶、女商人などが生まれ、ハアハア
4は姫やモンバーラ姉妹で、トルネコが奴隷商人とかハアハア
5はビアンカとフローネでハアハア
6はテリーの姉貴とダーマの幼女
7は忘れた。
8はゼシカでハアハア
145:名無しさん@ピンキー
08/04/02 03:59:57 kY1FJEo4
7は踊り子のポリゴン音頭……
じゃなかった、石版世界のダーマ神殿
フォズタソ ハァハァ(児ポル)
おまけにふきだまりの町にて悪堕ち有り。
146:名無しさん@ピンキー
08/04/02 08:19:39 5j5rFbdm
>>144
6と7がごっちゃになってるな、
ダーマの幼女のフォズは7だな、あとビッチな風の精霊とか・・・
6にはここで何度も話題になったシスターとかいるしなぁ
147:名無しさん@ピンキー
08/04/02 08:29:05 3iXqeyqU
>>142
表と裏の人格があるわけか
で、敵を倒すごとに相手の力を吸収しつつ表の人格を悪に、淫らに染め
最終的には裏の人格と同じ悪の存在に変えるってとこかしら
なんにせよ先が気になるね、GJ
148:名無しさん@ピンキー
08/04/02 10:07:13 9B9SaoA9
フローネって誰だよ…
149:名無しさん@ピンキー
08/04/02 11:01:12 YCBWPzK4
DQ6だったっけ?
あの牢獄の町にいるシスターが魔物にされそうになったのって。
あのまま魔物にされちゃうような話って誰か書かないの?
150:名無しさん@ピンキー
08/04/02 11:34:44 dOoXOp9S
>>149
それ確か舞方さんとこにあったかと・・・
151:名無しさん@ピンキー
08/04/02 12:28:43 6GC+FSSU
>>148
ぶっ!……名前変更でもしてたかも知れない。
押し入れに全部あるんだけど、あえて記憶に任せてみたら色々と馬鹿だった。
そういや7にはライラとかが居た気がする。
152:名無しさん@ピンキー
08/04/02 13:45:49 dzUNfbfy
>誰か書かないの?
つかなんでこんな上から目線なんだYO
153:名無しさん@ピンキー
08/04/02 14:56:39 +ZR7Mi1y
悪の帝王だからだよ。
154:名無しさん@ピンキー
08/04/02 15:01:25 La/0uygU
>>144
8は呪われた馬姫調教日記でハアハア
155:名無しさん@ピンキー
08/04/02 16:04:06 5j5rFbdm
DQMはさらわれた姉がラスボス・・・
156:名無しさん@ピンキー
08/04/02 17:05:29 pZos6ga7
>142
GJ、二重人格なのはわかるけどもしかしてとっくにモンスターに操られてる?
157:名無しさん@ピンキー
08/04/02 20:21:10 LaViyXAp
>>156
おそらく>>87に答えが。
まだ胎児である勇者は母が謎の侵入者に陵辱された時に注がれた精の影響で…
そして、勇者アルスには元々の人格の他に裏の人格として…
158:名無しさん@ピンキー
08/04/02 21:05:45 Bh4NyD20
ルパン3世 天使の策略
URLリンク(jp.youtube.com)
五右衛門に挑んだ女がいいね。
妖艶+妖刀「桜吹雪」の切れ味に虜。
159:名無しさん@ピンキー
08/04/02 23:46:44 DHvtrZ80
「結界師」にて脳洗い場なるものが登場。まだ使用されず
「妖怪のお医者さん」にて二口女がヴァンパイアに吸血される。
今週はフラグが立つな。
160:名無しさん@ピンキー
08/04/03 00:22:56 RhXs1s/O
ソルディバンが今期の既出該当ゲーの中じゃ、一番使える出来。
希望もあるが、バリエーションもボリュームもあるので何げに満足した。
161:名無しさん@ピンキー
08/04/03 00:37:38 ChJLlCuD
DVDを整理していたら「ジャックと悪魔の国」が出て来たので久し振りに鑑賞。
劇中、魔王が儀式で清純なエレーン姫を魔女化、魔女化した姫は自ら志願して
勇者ジャックを騙す…という感じで萌え萌えなんですが、普通のファンタジー
なのでエロ度は低いし、あっさり魔女化が解けちゃうのが残念無念。
ジャックに甘言を並べてキスを誘い、睡眠薬を飲ませるシーンを見て「そこで
エロ技で落とせば」とか、魔女化が解けた時は「魔王が精を使って同族化して
おけば」とか、そもそも魔女姿がもちっとエロければ…等々、思った次第で。
このエレーン姫の魔女化悪堕ちをエロパロ化して下さる神様はいらっしゃい
ませんでしょうかね。
そりゃ自分で書けよ、って話だとは思うんですが。昔ちょっと書いたことは
あるものの文才無いし、すっかり力尽きてしまって…。
姫の魔女化姿は↓で見られます。
URLリンク(www.youtube.com) (魔女化儀式フル)
URLリンク(www.youtube.com) (魔女姿のピックアップ)
162:名無しさん@ピンキー
08/04/03 01:14:02 N3NDzYv/
まあ結界師は寸止めにすらならなさそうだが
163:名無しさん@ピンキー
08/04/03 01:26:21 6+8BYu4K
結界師だからなぁ
164:名無しさん@ピンキー
08/04/03 01:31:22 RhXs1s/O
この展開だと少しはやられそうな印象もあるが・・・。
そうでない場合、すでにこれ使って誰か人格変えられたという伏線かも。
母親だったたら楽しいが、多分そういう流れじゃないんだろうなぁ。
165:名無しさん@ピンキー
08/04/03 02:35:18 kIPe0u2V
結界師は悪堕ちどころかやられシーンもないもんな
ほんとがっかりだよ
166:名無しさん@ピンキー
08/04/03 03:14:22 6+8BYu4K
いいじゃないか、
サンデーには他に某洗○漫画もあることだし。
俺は読んでないが。
167:名無しさん@ピンキー
08/04/03 05:31:12 UnW6+KPK
>160
…………
なんで、まだ出ても居ないゲームを褒めちぎった挙げ句今期一番とか言いきれるんだオマエ
168:名無しさん@ピンキー
08/04/03 07:06:20 Q0LzeecR
フラゲしたんじゃね?
169:名無しさん@ピンキー
08/04/03 07:12:35 dtNhHbRZ
だろうな、もうメーカー・作品別スレにはフラゲ報告きてるし
前のペルソナみたいに一通り正義ルートを終わらせてから悪堕ルートに入る流れらしい
ペルソナ好きな俺はwktkしてるぜ
170:名無しさん@ピンキー
08/04/03 09:26:41 4fpISz0q
アリスのあれはまあ別格として、個人的にこのスレ的には今期一番満足できる方向の
作りで量もバリエーションもあると思うぞ。
俺の個人的判断だけど、ハルカは基本的に和姦ゲーだから負けてないところも多いし。
171:名無しさん@ピンキー
08/04/03 15:08:58 Jnn9AcWA
他のゲームとか、まあ
172:名無しさん@ピンキー
08/04/03 17:25:31 JlL1XdRa
社員乙、と言ってあげましょうよ・・・
173:名無しさん@ピンキー
08/04/03 17:41:48 4fpISz0q
単純によかったから、同好の士に薦めてるだけなんだが。
何でそんなにネガティブなんだ。虚しい・・・。
174:名無しさん@ピンキー
08/04/03 17:59:47 URbfr/FU
社員乙は2chの華よ
たまに本来の意味で使われてるスレがあって和む
175:名無しさん@ピンキー
08/04/03 18:19:54 sxyOj8z/
こんな所で温もりなんぞに期待しないほうがいいぞ
176:名無しさん@ピンキー
08/04/03 18:39:11 Idq1TIjl
あまり気にしなさんな
FG出来てないやつにとっちゃ羨ましくて妬ましいんだよ
漏れも含めてなw
177:名無しさん@ピンキー
08/04/03 18:52:15 4fpISz0q
確かにそういう増長はあったかもしれんorz
もうやっちゃったから何でも聞いてくれ!みたいな。
178:名無しさん@ピンキー
08/04/03 19:31:23 m8e/NQ2A
ほかの職人方に追随してSS投下。
内容は、一人の魔法使い族の女の子が怪しげな繭に入れられ、
中でしばらくモゴモゴした後……というもの。
苦手な人はスルー推奨。
あと遊戯王に深い思い入りを抱いている方は、
不快と感じるかもしれないのでご注意。
179:進化の繭(1/14) by PNY
08/04/03 19:33:44 m8e/NQ2A
「俺のターン!ドロー!クリボーを生贄に、ブラック・マジシャン・ガールを召喚!」
マスターの呼び声と共に、私は彼の手札からフィールドへ召喚された。
ゆっくり目を開き、魔法の杖を一周振り回して、私は凛々しくポーズを決める。
魔導帽の下にある金髪は風になびき、青とピンクの魔女服が華奢な体にぴったりくっつく。
ミニスカートがひらひらと翻り、敵味方問わず心をくすぐる。
スカートとブーツの間に、健康的な太ももが露呈している。
私はデュエルモンスターズ界の魔法少女、みんなのアイドルマジシャンガール。
今日も元気よく可愛く、見参なのだ。
私は状況確認に、あたりを見回す。
味方の場には私しかいなく、対する相手の場に二体の昆虫族モンスターがいた。
一体はゴキボール。攻撃力1200の下級モンスター。
その外見も名前のとおり、でかくて丸いゴキブリだ。
そしてもう一体はインセクトクイーン。攻撃力2200で、
場の昆虫族モンスター一体につき100ポイント強くなる上級モンスター。
上級モンスターらしい巨体を持ち、毒々しい触覚や羽を展開している。
彼女の胸部から二つの乳房が垂れ下がり、下腹部は女王アリの卵巣のように膨らんでいる。
(はっ……それは!?)
私はふと、二体のモンスターの瞳が凶暴の赤色になって、額に禍々しい紋様が輝いているのに気付く。
それはまさにモンスターズ界を脅かし、世界を滅ぼそうとする邪神オレイカルコスの紋様だった。
そしてすぐに、私はフィールドのまわりにオレイカルコスの結界が張られたことを発見する。
よく見れば、マスターに立ち向かう相手のデュエリストも目を赤く光らせ、
額にあの邪悪な紋様が輝いていた。
オレイカルコスの結界を使用した者は、心の闇が最大限に引き出される。
その配下のモンスターも邪悪な力に支配され、パワーアップされてしまう。
私は気を引き締めて、敵の決闘者を見据えた。
マスターと対峙しているのは、眼鏡をかけて、
虫の絵柄が描かれた服を身に着け、目つきの悪そうな少年だった。
彼は私を見下ろし、
「ヒョーヒョヒョヒョ……そんなザコの五つ星モンスター出したところじゃ、何ができる」
うっ……いきなりすごく馬鹿にされた。
私はぷんぷんとピンク色のほっぺたを膨らませた。
あの変てこな格好と悪趣味の笑い声。
間違いない、彼はモンスターズ界で昆虫族使いと噂される決闘者、インセクター羽蛾である。
確かに昆虫族使いとしては凄腕らしい。
しかし、対戦者のカードを海に捨てたり、不利になるようにカードを事前に仕組んだりするなど、
卑怯な手を使う決闘者としても悪名高い。
過去において、彼は私のマスターに敗れたことがあるらしいが、
まさかまた懲りずに挑戦してくるとは。
私は少し不安げに私のマスターを見つめた。
彼は非常に不幸な事を経験したばかりで、その顔に憔悴の色が現われている。
そして、彼はまだ自分を強く責めているためか、
モンスターの精霊である私と心を通わすことができなくなっている。
(マスター……)
私は杖をぎゅっと握り締め、なんとかマスターを助けたい気持ちで一杯になった。
いつかマスターとの絆が復活することを信じ、今はマスターを助け、目の前の敵を倒すのみだ。
180:進化の繭(2/14) by PNY
08/04/03 19:34:40 m8e/NQ2A
「だまれ、この蟲野郎!いけ、ブラック・マジシャン・ガール!ゴキボールに攻撃だ!」
「はーっ!」
私は魔法のステッキに魔力を集中させた。
ステッキの先端はまぶしく輝き、それが魔力弾に凝縮する。
「ブラック・バーニング!」
私が魔力弾を敵に向けて飛ばした。
激しい轟音と共に、ゴキボールは粉々に爆殺された。
「俺はカードを一枚伏せ、このターンを終了するぜ」
「ウィーン」と機械が作動する音が鳴ると、私の背後のゾーンにカードが一枚伏せられる。
目の前は私よりも攻撃力の高いインセクター女王がいる。
もし、マスターが伏せたカードは私を守る力が無ければ、
次のターン私が撃破されてしまうだろう。
それに対して、相手マスターは不愉快な大声で笑った。
「ヒョーヒョヒョ!その伏せカードはどうせ仕様も無い罠カードだろ?
そんなんで俺を倒せると思ってんのか?」
「くっ……」
「今までお前からの恨みを、じっくり返してもらうよ!装備魔法、『進化の繭』!」
「なにっ!?そのカードは、昆虫族モンスターを進化させるレアカード……!」
「そうさ。今まで散々負かされた屈辱を、このカードで返すぜ!」
「ふん、だが羽蛾。お前の場には、それを装備させる専用モンスターがいないみたいだぜ」
「なーに言ってんだ。俺が装備させるのは、お前の場のモンスターだ!」
「なんだと?」
「このオレイカルコスの結界の効果により、俺の魔法効果は増幅されるのだピョー!
さあ、お前の場の小娘をいただくぜ!」
「えっ?」
私はステッキを構えて、緊張しながら相手の動きを見た。
突然、私の足元にあの禍々しいな魔方陣が刻まれた。
次の瞬間、邪悪なオーラが私の体を締め付ける。
(きゃー!う、動けない……)
次の瞬間、相手の場に気持ち悪い巨大繭が現われた。
繭は不気味な白とピンク色を呈し、その下辺に生える多数の糸でがっしりと地面につながれている。
そして、繭の表面から一筋の触手が伸びて、私の足首を絡めた。
「ひゃっ!」
私は思わずバランスを失い、地面に倒れる。
そのまま、ずるずると相手側のフィールドに引き込まれる。
繭は表面に気色悪い膜が網目状に突起して、私を待っていた。
「マスター!」
私はマスターに助けの手を求めた。
しかし、彼はただ悔しそうに私を見送っていた。
その冷ややかな目線を見て、私の心が冷え切った。
(そんな……マスター……)
以前のマスターなら、どんな困難だろうと私達モンスターとの絆を信じ、颯爽と相手を倒せたのである。
しかし、闘気を失った今、マスターはただ情けない表情を浮かべて立ち尽くしていた。
私の心は絶望へと沈んだ。
181:進化の繭(3/14) by PNY
08/04/03 19:35:24 m8e/NQ2A
ついに、私の片足繭の中へ引き込まれた。
「ひゃっ!」
私は悲鳴を上げた。
ぷにぷにした柔らかい肉に含まれたような、気持ち悪い感触だった。
私はあがこうと、杖で地面を突いた。
しかし、繭に近づくに連れ、
そこからもっと多くの糸や触手が私の腕や胴体を絡み、中へと引き込む。
繭の表面がドロドロに溶け、その汁が私の太ももを覆い、同化しはじめる。
露出した肌に、ねっとりとした粘液が付着し、まるでガムのように貼りついて取れない。
ついに、腰までが繭の中へ溶け込んだ。
スカートの奥の下着から、べとべとした粘液が秘所やお尻へと流れ込む。
「きゃっ!」
私は顔を真っ赤にさせた。
恐怖の気持ちと共に、どことなくいやらしい気分になった。
「離してよ……このっ!」
私は繭の表面に両手を張り、繭から脱出しようとした。
しかし、力をかけた瞬間、手をかけた部分もドロドロに溶け、私の両腕を肘まで飲み込む。
ここまで来たら、後はもう中へ引きずられるのみだった。
繭全体は蠕動運動をはじめ、私の体を確実に中へ中へと押し込んでいく。
またたく間に、私の臍、胸、肩、鎖骨までが飲み込まれた。
「いやだ……こんなの、いやだよ!」
私は首を左右に動かし、最後の抵抗を試みた。
しかし、それもわずかな時間の無駄。
ついに頭が完全に繭の中へくい込まれ、視界を失った。
「うっ……」
繭の中はまるでべとべとしたジャムのように、私の体にねっとりと付着して包みこむ。
不思議なことに、息苦しいと感じることは無かった。
その代わりに、意識は段々と朦朧とする。
「ヒョーヒョヒョヒョ、遊戯、このカードの効果はな、五ターン後に装着したモンスターを、
俺の可愛いインセクトモンスターに変化させるのだ。
お前はそこでじっくりと、しもべが変わり果てる姿をたのしむがよい!」
私が……インセクトに?
なに、言ってるの……
朦朧の中、私は目を瞑ったまま、体を蠢かせた。
周囲のべっとりとした粘液は、私の服を溶解しはじめ、私の肌に直接触れるようになる。
粘液は段々と肉感のある感触に変化し、私の体を絡める。
邪悪なエネルギーが肌を通して、私の中を染める。
「あぅん……」
私は自然と口を開けた。
どろどろの肉汁は、いくつかの太い筋が捻り合い、密度の高い触手へ合成する。
その触手のうちの一本が私の口内へ侵入した。
訳も分からず、私はそれを口の中にくわえこんでしまった。
触手の先端から濃密な甘蜜が分泌され、それを私の体内へ送り込む。
「むん、うぅんっ!」
私はそれを吐き出そうとした。
しかし、弾力を帯びた触手に勝てず、ついついそれを飲み込んでしまった。
最初は不快でしかなかった。
だが、そのうち甘美な味が口の中へ広がり、違和感が無くなりかける。