【友達≦】幼馴染み萌えスレ15章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ15章【<恋人】 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@ピンキー
08/06/20 03:09:47 8l5kL+l/
幼馴染カーチャンを読んで、近年稀にみる絶望感を味わったオレが来ましたよ。
ここの甘い話しを読まないと、オレはダメになるかもしれん。

401:名無しさん@ピンキー
08/06/22 11:27:26 qURG1FAe
401

402:名無しさん@ピンキー
08/06/22 17:44:15 9QzIcGFE
どんなひどい腹痛も一回下痢出せば治る俺は勝ち組

403:名無しさん@ピンキー
08/06/23 21:11:59 iCSJEDLF
>>402
即回復することによって、幼馴染みから看護して貰えないお前は負け組

404:名無しさん@ピンキー
08/06/23 22:32:09 aKnf529L
腹痛がすぐに治らないうえに、看病してくれる幼馴染みがいない俺は・・・orz

405:241
08/06/25 01:21:02 LJqFvwnO
>>241で干し柿の話を書いた者です。
登場人物は彼らってことでお願いします。

『お見舞いの言葉』

「なんだ、お前か」
 もっと可愛い娘が見舞いに来てくれたらいいのに。
とベッドの上から生意気な言葉を投げてきたのは隣の男子中学生。
昔から隣同士で同年齢ということもあり、よく一緒に遊んで(いじめられて?)いた。
ところが、こいつときたら中学生になってからは
会話はおろか挨拶すらまともにしなくなった。
まー、半月ばかりお姉さんの私からすれば、
異性と中学生にもなって仲良くしてたら恥ずかしいっていう男の子の気持ちもわからなくはない。
でも、同じ陸上部なのだし、腐れ縁と言ってもいいくらいの仲なのだから、
もうちょっと、おしゃべりするぐらい良いじゃない。と思う。
今だって、私が一方的に話して向こうは、
「ああ」とか「へえ」とか聞いてるのかどうか疑わしい返事しかしないし。
ちなみに話題は今私のお気に入りのドラマの話。
主演の俳優さんがかっこよくてついつい見てしまう。
だけど、この馬鹿にはいかに彼が魅力的なのかを語っても理解できないらしい。
ずっと難しい顔をしている。困ったもんだ。

「ああ、そうそう。先生が、来週の日曜は記録会だから調子を整えておくように。って」
 先生からの言伝を思い出した。記録会と聞くと目の色を変えるのがいつものこいつだ。が、
「ふーん」
 せっかく人が伝えてやったのに、ぶすっとした表情で返事をしてから、
「それじゃ寝るわ」
 そう言って、ゴソゴソと布団に潜り込んでいった。
これには私も呆然とする。本気で体調が悪いのかと思ったけど、
私が語りだすまではもう元気そうだった。
ってことは、私と会話するのが嫌って事なのか!?
そう思うとなんだか今まで溜まっていたフラストレーションが一気に

「なっっっんなのよ!あんたは!?」
「へっ!?」 

 爆発した。

 突然キレた私に驚いてがばっと跳ね起きたところにずいっと近づいて、
「人が折角来たのに開口一番『なんだ、お前か』だし、可愛い娘に来て欲しかったとか言うし、
 記録会のこと教えたのに感謝の言葉もないし、私に連絡なく休むから心配したし、
 最近は朝会っても『よぉ』ってだけだし、休み時間に話そうとしたら既に友達と話してるし、
 理科で同じ班の女の子とはしゃべってるし、ようやく話したと思ったら話すことは部活のことばっかりだし、
 だいたい、学校の中じゃ、絶対、あんた私のこと避けてるわよね!?なんなのよ!?」

 言った。言ってしまった。今まで散々積もり積もった鬱憤を全部ぶちまけた気分。
スッキリしたが、あれ?私何を言ったっけ?
と自分の行動を思い出せなくなるぐらい熱くなっていた。
その後、自分が何を言ったか思い出して、かぁっと顔が赤くなるのを感じた。 
目をまん丸に見開いて吃驚している彼から、
逃げるようにカバンを引っ掴んで部屋から飛び出すまで十秒とかからなかっただろう。
『今なら自己ベストが出せそうだわ』
 彼の家から出て少し冷静になった私はそう思った。


406:241
08/06/25 01:21:58 LJqFvwnO
「あの時は訳わかんなくて驚くことしかできなかったなー」
 入院中のベッドの上で笑いながら話す夫に、
バツの悪い顔でいることしかできない。
入院と言っても盲腸の手術だからそれほど
心配しなくてもいいのかもしれないが、やはり不安は不安だ。
 それにしても、何度目の話だろうか。
夫は風邪やらなんやらで寝込むとすぐこの話をしたがる。
 いじめっこなのは小学生の時と変わらない。
「でも、まさかあの後お前が体調悪くするとは思わなかったよ」
 そうなのだ。帰ってからも私はずっとあの発言を気に病み続け、
お布団の中でも寝られなかったのだ。
その結果、熱を出し学校を休んだのだが、
「私も、まさかあなたがお見舞いに来るとは思わなかったわ」
 一番顔を会わせたくなかったのに。
小声で呟いたのだが、彼にはしっかりと聞こえていたようだ。
「はははっ、そりゃ気の毒だったな。でも俺が行ったら元気になったじゃないか」
 そう言われると何も言い返せない。事実であるし、あの時彼は言ってくれたのだ。
私が元気になる魔法のような言葉を。これ以上ないほど正確に。
今回も、きっと不安な私の心を察してこんな昔話で私をからかって、
元気付けようとしてるのだろう。
中学生のときから、いや、小学生のときから、彼は私にすごく甘いのだ。
それは今でも変わらない。だから、
「ゆっくり休んで早く良くなってね」
「当然だろう。ずっと一緒だって言ったんだから」
やっぱり、今回も言ってくれる。あの時と同じ魔法の言葉。


以上です。
お目汚し失礼しました。

407:名無しさん@ピンキー
08/06/25 03:27:25 3IE3llxw
>>406
GJ!
とてもよかったです
携帯から失礼します。おやすみなさい

408:名無しさん@ピンキー
08/06/25 03:31:19 oayKKH2E
>>406
GJ!!! 今回も過去+現在の構成なんだな。
そういう自作内でのパターンや約束事の踏襲は大好きだw

このまま二人の関係がゆっくり深まっていく様子を是非。

409:名無しさん@ピンキー
08/06/30 07:21:53 QfbWm91F
モーニング保守染み

410:名無しさん@ピンキー
08/06/30 22:37:56 qLLVDUk4
染みと幼馴染み

付いて困るのは前者、付いて有り難いのは後者

411:名無しさん@ピンキー
08/07/01 00:33:56 PrwHpXhx
後から付けられるのは前者、今更どうしようもないのは後者orz

412:名無しさん@ピンキー
08/07/01 03:59:23 f60PbhMq
幼なじみと再会した。
小学校の頃は1番の仲良しで、毎日遊んでた。
中学に入って俺が意識しだして、ちょっと疎遠になった。
でも先日ばったり再会して、遊ぶことになった。
手料理をごちそうになる予定wktk

…緊張と興奮で眠れないorz

413:名無しさん@ピンキー
08/07/01 05:31:37 iCBUlhQI
>>412
寝ろ

414:名無しさん@ピンキー
08/07/01 12:42:04 coEdQROM
>>412
うらやましい……
楽しんでこいよー

415:名無しさん@ピンキー
08/07/01 14:09:42 eWvv/UMf
お前だけに良いおもいさせてたまるかぁーッ!
────‐──────-── ─-
─‐──────‐────‐∧_∧
───‐∧ ∧,~ ──────‐(; ´Д`)
─-─‐( (⌒ ̄ `ヽ──_ ────‐ /    /─―/
─―──‐\  \ `ー'"´, -'⌒ヽ───‐| |  /‐─‐/ | | >>412
―‐―─‐ /∠_,ノ    _/_──‐―─―─‐| |  /─―/ | |
───‐ /( ノ ヽ、_/´  \―──‐─‐∪ ./─,イ ∪
──‐ 、( 'ノ(     く     `ヽ、 ―──―‐| /-─/|| |
──‐‐/` ―\____>\___ノ ───‐|/─/ || |
──/──―‐/__〉.──`、__>.―‐―──‐─―‐| || |
─/─‐───────―-──‐(_)_)
─/────-──────‐───

お幸せに。

416:名無しさん@ピンキー
08/07/01 16:48:02 cPaeZ3is
>>412
宗教勧誘か子ねずみ勧誘のどちらかだな。
412逃げて逃げて~

417:名無しさん@ピンキー
08/07/01 17:34:07 Xk/iqMqJ
残念既婚者でした!

418:名無しさん@ピンキー
08/07/01 18:11:05 9gw6tuXK
男同士というオチですよね分かります

419:名無しさん@ピンキー
08/07/01 20:30:49 h0JWs4ZD
>>412

壺買ったらアップしてね

420:名無しさん@ピンキー
08/07/01 21:32:33 0syJ7rDW
伸びてるなーと思って来てみたらwww

421:412
08/07/01 23:19:10 f60PbhMq
ただいま。

進展はなかったww
でも、迎えに来てくれて、帰りも送ってくれた。
あと、頭撫でられた。


…これフラグ?

422:名無しさん@ピンキー
08/07/01 23:37:21 mCF09diM
弟扱いしてるな

423:名無しさん@ピンキー
08/07/02 00:55:28 V5WsWdeX
もううんざり
そんなに私生活自慢したいのか?
VTPで安価でもしてこいよ

424:名無しさん@ピンキー
08/07/02 01:20:23 njaBDiXO
>>412が実は………

『第一人称が俺』というボーイッシュ少女というオチでは?

で男に料理を作って貰う代わりに、自分が料理され(ry

425:名無しさん@ピンキー
08/07/02 11:36:31 aJiOJK7s
幼馴染みスレって、某所でもそうだけど、リアル自慢したがりが沸くよね。
なんか変なオーラでも発してるのかな?

426:名無しさん@ピンキー
08/07/02 21:41:26 I9HPnE32
>>425
そりゃあ、望んでも得られないわけだし、
羨ましく思う人間も多いだろうからな。

程ほどにしておいて欲しいが、まあSSの形にして
投下してくえっるなら何の文句も無いし、
是非リアル体験者達には頑張っていただきたい。

427:名無しさん@ピンキー
08/07/02 23:53:48 0F3cAcec
むしろ某所含めリアル自慢叩きたがりが湧いてる気がする。
こっちの奴はマシだけど某所の方は自分の意見を住民の総意みたいに言ってるから腹立つ。
つまらないんだったらスルーするかSSに直して面白くしてくれよ。

428:名無しさん@ピンキー
08/07/03 00:25:24 H8m/00ls
かといってスレ違いどころか、板違いの報告行為をされても困る

429:名無しさん@ピンキー
08/07/03 00:37:21 M6xZaqTN
SSスレでそういう事されても反応に困る。

430:名無しさん@ピンキー
08/07/03 15:16:57 MBi+lP2d
ならその経験をネタにしてSS書こうぜ!

431:名無しさん@ピンキー
08/07/03 15:19:00 1OdAMkup
で、次に来るコメントは、

「ごめん、俺、文才無いんだわ」

432:名無しさん@ピンキー
08/07/03 20:38:54 8fp4wLlw
「ごめん、俺、文才無いんだわ・・・っと」
「なにしてんの?」
「おわわわわっ、な、な、な、なんだよっ!?」
「ん? なにこれ……エロパロ板……幼馴染萌え……?」
「あっ、見るなっ! 見たら駄目っ!」
「……へへー、ふーん」
「な、なんだよそのにやけ面はっ!?」
「いえいえ、べつにー」
「……どうせ、俺はこんなエロい板を独りで見て悦に入ってる
 根暗なオタクですよ……ぐすぐす……」
「あ、ちょ、泣かなくてもいいじゃん……嬉しかったのに」
「ぐすぐす……へ?」
「あんたがむっつりスケベな事くらい知ってるわ。何年の付き合いだと思ってんの」
「……酷い事を言われた気がする」
「あはは、酷い事言ってんのよ」
「ひでぶ」
「……でも、ちゃんとあんたの中身まではわかってなかったのかもね」
「……え?」
「だって、興味ないのかと思ってたもん」
「何に」
「私に」
「………………」
「お・さ・な・な・じ・み・の・わ・た・し・に」
「……べ、別に興味なんか……」
「じゃあ、それ何?」
「ぐっ……」
「……あ、やっぱり私の事書いてるじゃん」
「あ、だから読むなって!」
「もう読んじゃったー」
「………………」
「……嬉しいよ、私……だって、私、ずっと……あんたの事……」
「待った!」
「へ?」
「……先に、俺に言わせてよ。じゃなきゃ立場が無さすぎる」
「……うん」
「……ふぅ……言うぞ?」
「……うん」
「…………言うからな?」
「……うん?」
「………………言うったら言うぞ!?」
「……さっさと言えっ!」
「はいぃっ! ……えっと、だな……俺、ずっとお前の事……好きだった。
 そんで、今も……その、好きだ」
「………………」
「……なんだ?」
「私、すっごいドキドキしてる」
「お、俺だって……なんかもう、心臓止まりそう……」
「ふふふっ……。ありがとう……私も、だよ」
「………………」
「……どうしたの?」
「……ヤバイ、もう、なんか……死ぬ……」
「ちょっと大丈夫? 顔、物凄い赤いよ?」
「うぉぉぉぉぉぉ、もうだめだぁぁぁぁぁぁ! 悶え死ぬぅぅぅっぅうぅ!」
「……そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
「はずいわっ!? ……お前は恥ずかしくないのか?」
「ちょっとね……だけど、恥ずかしいついでに、お願いしてもいい?」
「なんかしおらしいお前ってぶきいたっ!? ……殴るなよなんだよ」
「……両思い記念に……キス、しよっか?」
「………………ぷしゅうぅぅぅぅぅぅぅ」
「ああっ! 潰れたっ!?」

433:名無しさん@ピンキー
08/07/03 20:40:56 8fp4wLlw
男が潰れてしまったのでここまでです。

何というか、俺文才無いとか言う人が
こういう風にいい感じになってるかと思うと、
軽く氏ねばいいのにとか思いますねはっはっは(爽

どう見ても妄想です。
本当にありがとうございました。

434:名無しさん@ピンキー
08/07/03 21:01:31 IPvT+CJx
GJ過ぎるwww

435:名無しさん@ピンキー
08/07/03 22:01:36 l7e4NlLV
ごめん、俺、幼馴染居ないんだわ

いや居るけどさ…そんなに可愛いのいねーよちくしょう(´;ω;`)

436:412
08/07/03 23:51:17 T0B01Vfd
ネタに勢いで書いた。
すまんかった。
432に感謝する。




何の刺激もない4年間だった。
女子大という女の園に通ったせいか、男性と付き合うどころか、出会うことすらなく卒業を迎える。
そして、なんとなく社会人になってしまった。

仕事から帰り、いつものようにパソコンを立ち上げた時だった。
懐かしい名前が目に飛び込んできた。
幼馴染の名前だ。

『亮』、物心ついた頃からの幼馴染だ。
小学校の頃は毎日のように遊び、姉弟のようだったらしい。
中学に上がってからはクラスも別になり、疎遠になっていった。
しかし、高校の頃、ひょんなことからまた話す機会を得る。
それはチャットという共通の趣味を持ったからだった。

『わ、久しぶり』
『あれ、あんたか。元気かい?』
『そっちこそ!』
『俺は結構元気!』
『こっちも元気だよ。』

大学に入ってからはお互いに生活が忙しくなり、出くわすことも少なくなっていた。
あまりに久しぶりで、会話は弾みに弾んだ。
お互いの近況や、小中学校の話、昔の友達の話など、会話は尽きることがなかった。

『うわぁ、4時過ぎてるwww』
『え・・・ほんとだ』
『そろそろ寝なきゃやばっw』
『明日・・・というか今日か、休みでよかったなw』
『お互いにねw』
『まったくだw』
『じゃあ、寝ようか』
『あ、待って』
『ん?なぁに?』
『今度遊びに来いよ、せっかく近いんだから』
『え、うん、じゃあ、お言葉に甘えて・・・』



437:412 その2
08/07/03 23:55:27 T0B01Vfd
数日のうちに話はまとまり、亮の家にお邪魔することになった。
彼は、この春から隣町で一人暮らしをしている。
『自炊ちゃんとできてるの?』
という私の売り言葉に、
『俺は結構料理うまいんだぞ』
という買い言葉で、料理をごちそうしてくれる約束になった。

ある日の仕事帰り、バス停まで歩く途中、1通のメールが届いた。
『今から迎えに行く。今どこ?』
慌ててメールを返すと、電話がかかってきた。

「あ、俺。すぐ近くにいるから、○○スーパーで待ち合わせよう。」

私が答えるか答えないかのうちに、電話は切れてしまった。
急いで待ち合わせ場所に向かいながら、混乱した頭で考える。
昨夜は今日の約束で緊張したのか、なかなか寝付けなかった。
おかげで、仕事中眠気をこらえるのに必死で。
具体的な待ち合わせなどしていなかったため、てっきり『勝手に来い』と言われるとばかり思っていたのに・・・。

「お、早かったな。ひさしぶり。」

遠慮がちにノックをして扉を開けると、笑顔の彼がそう言った。
息を切らして目的地にたどり着いた時、彼は既にそこにいた。
正確に言うと、車の中にいたのを、私が見つけた。
うながされるまま助手席に座り、シートベルトを締める。
2人きりなんて久しぶりすぎて、なんだか緊張する。
・・・顔が熱いのは、走ったせいだろう。

「じゃあ、我が家へ帰りますか!」

その言葉とともに、エンジンがかかった。

438:412 その3
08/07/04 00:01:39 T0B01Vfd
続けてすまん。
携帯からだとこんな細切れになるとは。
笑いどころはないから、つまらなかったらスルーで頼む。



「お、お邪魔しま~す。」
「おう。遠慮なく上がれ。」

ぎこちなく会話しているうちに、家に着いた。
想像したよりずっと近くにいたんだなぁ、と思いながら、靴を脱ぐ。
部屋にお邪魔するなんて、高校以来だ。
そして、彼について奥の部屋に入った。

「まぁ、適当に座っていいよ。パソコンもあるし。」
礼を言って、遠慮がちにパソコンの前に座る。
亮の部屋は思ったよりも広くて、思ったよりも、その、落ち着かない。
さらに奥にも他の部屋があるようだ。
ダイニングにパソコンが置いてあるし、同じ部屋にいられるだけマシだと思うことにして、起動ボタンを押した。

しばらく二人でパソコンで遊び、だんだん調子が戻ってくるのを感じた。
散々笑い合って打ち解けてきた頃、亮が切り出した。

「腹減った。飯、何食べたい?」
「え、え~と、何でも良いのだけど・・・。」

料理を作ってくれると聞いた日から、私なりにリクエストを考えてはいた。
が、結局何も思い浮かばなかったのだ。
それに、作ってくれるなら何でも美味しいだろうと思っていた。

「「う~ん・・・」」

二人して考え込んでしまい、料理に取り掛かったのは7時を回った頃だった。
下ごしらえを終え、炊飯器を覗き込むと、まだまだ炊けそうにない雰囲気だ。
肝心の御飯が炊けなくては、調理にはかかれない。
すきっ腹を我慢し、再びパソコンと向かい合った。

ようやく御飯が炊きあがり、食事にありつけた頃には、8時を過ぎていた。
空腹は最高の調味料、とはよく言ったもので、非常に美味しかった。
いや、実際彼の料理の手際は良く、本人が言うだけあって、腕もなかなか良い。
会話も弾み、楽しい夕食だった。

439:412 その4
08/07/04 00:07:09 2TwBw/v5
しかし、夕食後の片づけを済ませた私たちは、少々ぐったりしていた。
目分量で作る男の料理は、量が多かったのだ。
持参したデザートを食べるどころではなく、休憩してから、という意見で一致した。

「じゃあ、新しいゲーム見せてやるよ」
「うん!」
嬉しそうに答えた私を見た彼は、可笑しそうに笑った。
そして立ち上がると、私の横を通り、隣の部屋へと移動しようとした。
と、通りざまに何かが触れた。
彼の手が、私の頭の上にあった。

「いいこ、いいこ。」

彼はそのままくしゃくしゃと頭をなで、そして何事もなかったようにゲームの準備を始めた。

「な、な、なになに??髪ぐしゃぐしゃになったじゃないかあぁ・・・」

我に返った私は咄嗟にそう言い返し、慌てて髪をなでつける。
彼はその様子を見て、さらに笑顔を濃くした。

その後、彼がゲームをするのを横で見る私は、混乱が深まるばかりだった。
あの彼の行動を、どう解釈したら良いのか測りかねていたのだ。
幼い頃以来、久しぶりに触れた彼の手は、大きくてごつごつしていて・・・。
背なんて、とっくに抜かされている。
この人は男で、私は女だ。そんなことはわかっていたけども。
『あんたのこと、姉のように思ってた』
この間はそう言ってたのに。

そうしているうちに、夜も更けてきた。
「そろそろ帰るか?」
「あ、そうだね。遅くまでごめん。」
そう答えると、彼は笑った。
「じゃ、送るよ。また遊びに来いよ。」
そして、こともなさげに、家まで送ってくれた。

彼を見送って、お風呂の中ではたと気づいた。
そういえば、夕食のときには必ず酒を飲むと言っていたのに。
・・・私を送るため、我慢してくれたの・・・?
そう思いついてしまうと、もう収集がつかなくなった。
ヤケになって酒を飲みながら、寝てしまった。

440:412
08/07/04 00:16:03 2TwBw/v5
今回はこれで。
また書くかも。

441:名無しさん@ピンキー
08/07/04 04:42:06 LSTbBpIx
GJ!ただし 続くかもではなく続けなさい。

442:名無しさん@ピンキー
08/07/04 10:19:44 KBGCW56z
>>433
萌え死んだ

>>440
続きを書くんだ!

443:名無しさん@ピンキー
08/07/07 16:42:37 PZq2gkmS
男のヤンデレって需要ないんだろうか。
あんまりないよな。
幼なじみで男のほうがヤンデレっていう設定に萌える俺涙目。

444:名無しさん@ピンキー
08/07/07 16:43:59 dDoBKq0K
>>443
男のヤンデレはキモイだけ
つかウザイ

445:名無しさん@ピンキー
08/07/07 21:21:39 VcjVyQuN
>>443
萌える人は少ないかもしれんが、物語を盛り上げる要素にはなるかも
まあ難しい題材だと思う

446:名無しさん@ピンキー
08/07/08 02:15:38 Jd46U6uy
想像してみたが、ストーカーにしかならないな

447:名無しさん@ピンキー
08/07/08 06:58:23 OOzjyZH7
俺も過度の暴力やグロはちょっと…
男が解体されても修羅場の一言で済むのに
おにゃのこが解体されるとグロく感じる!ふしぎ!

448:名無しさん@ピンキー
08/07/08 16:38:07 qCIcTQkw
例えば幼なじみの子が自分以外の男と親しく喋ってるのを見て、その日の夜は人が変わった様にドSになる男はヤンデレ男と言うのだろうか

449:名無しさん@ピンキー
08/07/08 17:50:33 89/G+q1w
>>448
つ チラ裏

450:名無しさん@ピンキー
08/07/08 18:17:51 F46ebH2w
>>449
いや、ここはむしろ書けというべきじゃね?

451:名無しさん@ピンキー
08/07/08 23:33:00 F46ebH2w
連投になってしまった

すごーく久しぶりに投下してみる
本当なら昨日投下すべきネタだったんだけど、途中で寝落ちしてしまってたよ……
今回久しぶりに書いたから、かなり無駄が多い文になってます。よければ軽く流して下さい

昔投下したネタの続きになってしまったんで、よければまとめにある「幼なじみと四月バカ」を読んで下さいな
では投下。いけるかな……?

452:幼なじみと七夕を
08/07/08 23:35:01 F46ebH2w
今日は七夕。
天の川を隔てて生きる織姫と彦星が、年に一回出会うことができる日だという。
……天の川がどれくらいの幅かは知らないが、川くらいなら船で渡れそうな気もするんだが、どうなんだろうな。
うまく口利きしたら、船頭一人くらいは丸め込めるんじゃなかろうか。
それとも、船も漕げないくらい川の流れがすごい速いのか。……そういや雨降ったら氾濫するんだっけ。
そう考えると、本当気が長いな、あの二人は。
「まぁオレには関係ないけど」
「何だか知らないけど手を動かしなさい」
言われて、しぶしぶ視線を窓の外から手元の机に戻す。
開かれたノートの中には奇怪な数式の数々。数字は世界共通の言語とはいうが、少なくともオレには通じないぞと、恨み言の一つも言いたくなる。
思わずため息を一つ。すると目の前のこいつはそれに敏感に反応して、
「もう、今度は何がわからないの?」
と身を乗り出して聞いてくる。
「あー……、全部、かな」
素直に答えると、あきれ顔をされる。事実だから仕方ない。
「ほら、ここでは傾きが0のところが極になるんだから、微分してから値を代入して0になるところを探すのよ。わかる?」
「……えーと。極って何だっけ?」
……何だその哀れむような目は。何となく切なくなるから止めろ。こっち見んな。
今度はあっちが大きなため息。何だよ、悪かったな阿呆で。
「……あのね、極って要は山頂とか谷底みたいなもので……」
それでも、粘り強く説明してくれるこいつには、正直感謝もしてる。
天敵たる数学のテストが明日に控えているが、オレだけじゃ到底太刀打ちできないからな。

高校生のオレこと高遠 匠(たかとお たくみ)と目の前の女、木崎 優奈(きざき ゆな)に七夕なんぞは関係ない。何てったって、今はテスト週間なんだから。
そう、オレと優奈はまたしても一緒に勉強していたのだ。

453:幼なじみと七夕を
08/07/08 23:38:26 F46ebH2w
「……と。はい、範囲はここまで。ちゃんとわかった?」
「な、何とか……」
あの4月1日から3ヶ月ちょっと。
オレと優奈のクラスはやっぱり同じで、オレは何者かの作為を本気で疑ったりもした。
やはりクラス委員長となった優奈は相変わらず人気者だったが、オレの立ち位置は昨年とは少々異なっていた。
それというのも、優奈が今までより積極的にオレに関わってくるからだ。
わざわざ登校時間を合わせてきたり、昼飯にはオレを強引にグループに引き込んだり、帰りもオレを待ってみたり。
最近はこうして勉強も教えてくれたりする。本当なら委員会の用事とかで忙しいはずなのに、だ。
そのおかげで、クラスの連中に散々いじられることになるのは想像にかたくないだろう。
男子連中などはことあるごとにオレの首を絞めてくる。「うらやましいぞコンチクショー!」とか何とか。
……だがまぁ正直、この変化を悪く思ってない自分がいる。
クラスメイトは気のいい連中が多いし、自分がそんなクラスの一員として参加できることは、何だかんだで楽しいのだ。
それもこれも、やはり優奈の―
「―匠、聞いてる?」
「うぉあっ!?」
気付けば、優奈がこちらの顔を覗き込んできていた。優奈の顔が間近に迫る。
「……ちゃんと人の話は聞きなさいよね」
優奈は不機嫌そうに眉根を寄せ、こちらにきつい視線を向けている。
ちょっとこっちが前に出たら、おでこがぶつかってしまいそうだ。なぜだか、少しドキドキした。
「わかった、わかったからちょっと離れてくれ」
とりあえず優奈に提案する。距離を取らないと、よくわからないが色々まずいような気がした。
と、優奈も距離感の近さに気付いたか、ちょっと頬を赤くしつつ、さっと身を引いた。
「ま、まったく、しっかりしてよね!」
そっぽを向き、眉を吊り上げながら厳しい言葉を浴びせてくる。しかし、頬の赤さが刺々しさをなくしてしまっていた。
……つか待て、その表\情は反則だろ。こっちまで赤くなってしまうじゃないか。
しばらくそのまま沈黙が続く。気まずい間が続いたままで、優奈が立ち上がった。
「お茶、入れてきてあげる」
一言を残して、部屋から出ていった。
ちなみにここは優奈の部屋だ。昔はよくきたが、最近までは来ることも滅多になかった。
まぁ4月以降、よく勉強を教えてもらうので、再び来る回数が増えていたりするのだが。
手持ちぶさたなのでマンガの一冊でも読みたかったが、腐れ縁といえど、さすがに女の子の部屋を物色するのはまずい。
暇潰しになるものはないかと首をめぐらせ、オレはそれに初めて気付いた。

454:幼なじみと七夕を
08/07/08 23:41:20 F46ebH2w
2つのコップに麦茶を注ぐ。その間考えるのは、さっきの匠とのことについて。
最近の自分はずいぶん積極的になったと思う。匠と一緒にいる時間が、最近本当に増えている。
きっかけは、あの4月1日のことがあったから。
あのときほど自分の情けなさを実感した。結局あの日はウソの積み重ねが多くなっただけだった。
……やっぱり急ぎすぎたのだと、その日の自分は結論した。
幼なじみとは言え、いや、幼なじみだからこそ、告白なんてできなかった。匠だって、きっと困惑するにちがいない。
だから、少し距離を縮めてみようと思った。もう少しだけ、匠に近づいて、私のことを意識してもらおうと考えた。
今のところ、匠の対応にあまり変化は見られない。やっぱり私は単なる幼なじみなのかと、少し落ち込むこともある。
しかし、匠自身には変化があった。
私と一緒にいることをクラスメイトに色々問いつめられたりしているうちに、クラスにだいぶ馴染んできているのだ。
昨年はクラスから孤立していた(本人が意図的に距離を置いていた)ことを考えると、かなりの進歩と言える。
今では気さくに話せる友人もかなり増えたようで、何だか私まで嬉しくなってしまう。
自分の思惑とは外れてしまったが、匠が確実にみんなの輪に入ろうとしてくれるのは、とてもいいことだと思っている。
そこでふと、あることに気付いた。
「……私は、どうなるのかな」
昨年まで、匠はあまり人と関わろうとしなかった。
私が橋渡しをしなければ、匠は本当に孤立してしまっていたのではないだろうか。
私はそれが嫌だった。でも、匠にも悪く思われたくなかった。
私はなるべく匠が孤立しないように、そして匠が鬱陶しく思わない程度に、うまく周りとの仲を取り持った。
自然、匠の私に対する依存度は高くなる。匠にとって私は必要な人間だったのだ。
今はどうか。
匠は自分からみんなと関わろうとしている。それ自体は喜ばしいことだ。
でも、私は?私は匠にとって必要じゃなくなってしまうんじゃないだろうか。
私が匠に近づこうとすればするほど、匠は私を必要としなくなる。
「私、どうしたらいいのかな」
気付いたら、お茶を注ぎ終わっていた。少しこぼれてしまったようだ。
ため息を一つ。こぼれたお茶を布巾で拭って、お茶を持って部屋に戻った。

455:幼なじみと七夕を
08/07/08 23:45:07 F46ebH2w
「はい、お茶持ってきたわよ」
扉が開いて、優奈が戻ってきた。オレは慌てて手元のものをポケットに隠す。
「……匠、今何かした?」
気付かれたか。しかし、ここでこのことがばれるのはすごく気まずい。
「い、いや、笹なんか置いてるから、短冊見てた」
そう、なぜだか優奈の部屋には笹が置いてあり、いくつか短冊も下がっていたのだ。
「七夕なんだしいいじゃない。風流でしょ?」
などと、コップを置きながら優奈は言う。
しかしだ、ぬいぐるみなどがたくさんある(これも優奈の外でのイメージからは掴みにくい)女の子っぽい部屋に、
ぽつんと笹だけが置いてあるのは、風流というか滑稽というか。
「つか何でオレの母さんとかが書いてるんだよ」
短冊は6枚。木崎家は4人家族であり、残り2枚はわが母と父の分だった。
ちなみに母の願いは《夫婦円満》。息子のことも気に留めてほしいかな、うん。
「私が頼んだのよ。せっかくだから短冊は多いほうがいいでしょ。何なら匠も書く?」
言いつつ、ペンと短冊を渡される。
少し考えて書いたのは、《日々平穏》。最近騒がしいからな。
「……匠、若いんだからもう少し冒険しなさいよ」
うるさいな、騒がしい原因が偉そうに語るな。
「お前だって《志望校に合格》とか、絵馬と勘違いしてんじゃないか?」
「わ、悪かったわね!」
とまぁ、優奈をやり込めつつ、短冊を笹に括り付けようとして、
「あれ?」
短冊が一枚多いことに気付いた。

さっきはよく見えなかったが、なぜだか節に近い場所に一枚括ってある。こんな場所にやらなくてもいいのに。
背後ではっと息を飲む音がした気もしたが、構わず読もうとする。
「なになに、匠と……」
「だ、ダメっ!」
優奈の叫びが聞こえたかと思うと、いきなり背中に衝撃が走った。
「どわっ!?」
オレは前のめりに倒れ、背中に重さと柔らかな感触を得た。
「ゆ、優奈……いきなり突進して来るな……」
どうやら体当たりされたらしい。オレはうつぶせに倒れ、その上に優奈が覆いかぶさる形となっていた。
優奈はその姿勢でオレから笹をひったくる。
「よ、読んだ?」
「……何を」
「短冊よ短冊!」
なぜだか必死でこちらを問いつめてくる。読まれたら困るのか?
「読んでないよ」
「ほ、本当に?」
「本当だ、本当だからさっさと退いてくれ。重い」
そこでようやく自分の体勢に気付いたか、優奈はオレの上から退いた。
オレも上体を起こし、背中をさする。痛いんだから、こういうのは勘弁してほしい、本当に。
優奈はこちらに背を向けて、
「重いは余計よ!」
とか言っている。長い黒髪に隠れて見えないが、何となく耳が赤くなってる気がした。

456:幼なじみと七夕を
08/07/08 23:46:50 F46ebH2w
それからちょっとの間があって、匠は家に帰った。
さっきのことを考え、私はすごく恥ずかしかった。あれでは何かあると確実に思われるじゃないか。
先ほどの短冊を見る。ピンク色の紙に書いてあるのは、私の本当の願いだった。
《匠とずっと一緒にいられますように》
「叶うかな、本当に」
窓の外を見る。今日は天気もよく、天の川もきれいに見えた。
織姫と彦星は、遠いからこそ互いを思い慕うのだ。
近すぎる私たちは、あるいは彼らより遠い関係にあるのかもしれない。

部屋に戻り、さっき隠したものを取り出す。
それは水色の紙切れだった。優奈の部屋から取った短冊だ。
あの時、本当は短冊に願い事を書いていた。
七夕なんぞは関係ないと思っていたが、あの時はたまたま暇だったからな。本当だぞ。
しかし、思いつきで書いたはずの願いは、なぜだか特定人物に関することになっていた。
《ずっと優奈と一緒にいられますように》
「さすがにこれは気持ち悪いな」
ついつい苦笑いをしてしまう。たかが幼なじみにこんなことを願われても、優奈だって困るだろうしな。
机の中に短冊をしまう。捨てる気には、何故かならなかった。

457:名無しさん@ピンキー
08/07/08 23:50:06 F46ebH2w
以上。

……んー、やっぱりうまくない。エロもなければ萌えもない
読みにくいところだらけなんで、何かありましたらぜひご指導下さい

……一本投げっぱなしジャーマンになっているのは忘れ……いや、内緒にしとこうか
さて逃げるか

458:名無しさん@ピンキー
08/07/08 23:52:13 45xjfP/9
リアル投下ウヒョー! 今日青春トークしてきたせいか悶えちまうZe!!
2chの都合上若干つまって見えるが、読みにくくはないよ。
……ウチの七夕は幸い八月なんだが、こんなイベント、あるわけねぇよなぁ……orz

大丈夫 実は俺も なげっぱ(ry

459:名無しさん@ピンキー
08/07/10 01:35:29 TY5F4Ty6
>>457
乙ですー

>>458
仙台とか旧暦7月7日に開催するところの人乙ですー
さあさあ書くべし、書くべし。

460:458
08/07/10 01:52:24 TiE8uWJm
>>459
七夕のじゃないけどもうすぐ投下するよ。
まあ、変なのだけど……

461: ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 01:55:40 TiE8uWJm
鳥うろ覚えなんでテスト&自分を追い込む予告

462:名無しさん@ピンキー
08/07/10 01:56:10 TiE8uWJm
よしあってた。
今日中に投下するぜ

463:名無しさん@ピンキー
08/07/10 02:32:58 ou1e4ksS
保管庫のを読んできた。
ちょっと期待

464: ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:11:52 TiE8uWJm
それじゃ予告どおり投下しますよ、と。
今回もまたごめんなさいと言うかまあアレですよお前たまにはマトモなの書け。
エロなし。15レスくらい?
コンセプトは『90年代ロボットもの』ってことで一つ。

465: ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:12:21 TiE8uWJm
/0.

 二〇〇Ⅹ年、五月二十七日。地球は宇宙人に侵略された。
 なんだかんだ言って質・量ともに世界最高級らしいアメリカ軍が、真っ向からぶつかり合って、惨敗。超惨敗。
 最高級がそんなざまなんだから、他の国の軍隊なんて、末路を語るまでもない。
 私の住む日本においても同じ、……かと、思いきや。
 まったく馬鹿らしいことに、日本―主に北海道―はわりと平気だった。
 ―何故ならば。巨大なロボットが、この街を守っているからなのだった。

466:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:14:10 TiE8uWJm
/1.

 失礼します、と一声。返事を待たず、自衛隊の駐屯地になった母校、その保健室に入る。
 そこにいたのは、侵略される前― 一月前と変わらぬ保健室の白衣・眼鏡美人教師、祭中<さいなか>先生と、幼馴染、背ばかりがむやみに高い少年、樫家・洋巻<かしや・ひろまき>だった。
「やあ、よく来てくれた、前餅君。歓迎する。そこにかけてくれたまえ」
 彼女はポットからお湯を出してコーヒーを淹れて、教室から持って来たのだろうか、いつも私たちが使っていた机に一つずつ置いた。
 私―前餅・杏子<まえもち・あんず>は隣の洋巻と顔を見合わせて、お互い変な表情をしている事を確認した。
 彼の方は、幼馴染である私がなんでこんな所に呼ばれたのか、と。
 私の方は、世界で唯一あの宇宙人と戦える戦力の操縦者が、なんでこんな所にいるのか、と。
 ……あまり長い間立っているのも失礼か、と私は昔―本当に昔のように感じる―のように椅子を引いて座った。
「祭中先生、何の御用でしょうか?」
「来てもらったのは他でもない、樫家君が駆る巨大人型兵器―雷轟衛<ライゴウエ>の弱点についてだ」
 白衣を翻し、祭中先生はホワイトボードにガシガシと板書していく。
「第一に、単体であること。確かに、宇宙人―『イブマ』達に対して、雷轟衛の武装は効果的だ。しかし、雷雲形成からの雷撃―樫家君。技名は付けたかね」
「つけてませんけど」
 即答に対し、祭中先生は大げさにふらつく。
「……勿体無い。せっかくの広範囲大火力武装―つまりは必殺武器だというのにな。明日までの宿題だ。考えておくように」
 はい、と犬のように素直に頷く馬鹿。
「―それまでは仮に轟雷カッコ仮カッコ閉じとでも呼んでおこう。雷雲を生み出す最中、雷轟衛は無防備状態だ。自衛隊も部隊を出してくれるが、質も量も負けている。一時的な足止めにしかならん。昨日の戦闘のように、犠牲も多く出る」
 横目で馬鹿を見ると、少しだけ泣きそうな顔になっていた。
 ……そりゃあそうだろう、と思う。昨日だって、あの―轟雷(仮)を撃つために―
「こら。二人とも、こっちを向きなさい。追悼の意を捧げるのは悪いことじゃないが、今はこっちだ」
「……はい」
 本当、犬みたいな男だ。そんなに巨乳がいいのか。
「これについては、私達も『持ち前の根性でどうにかしろ』としか言えん。今のところはな。よって、次の問題点に移る」
 ため息を吐いて、授業―と言うのもおかしいか。とにかく、話を聞く。
「第二に、固定武装が主に近距離用であること。第三に、高機動空中戦ができないことだ」
 ホワイトボードに連ねられていく文字は、乱雑ながらもきびきびとしたものだ。右半分には三つの問題点が、左半分には雷轟衛の模式図だろうか、簡略な人が描かれる。
「固定武装は両腕に剣と、背部の雷雲/雷撃発生装置。肩に電磁ワイヤー。背、腰には加速器があるが、主に短距離加速用であり、長時間飛行や空中戦闘には向かない」
 祭中先生は、よくもまあこれで二日前は敵機編隊を落せたものだ、とため息を吐く。
 根性系だからなぁこの馬鹿。その辺もなんだか犬みたいだ。
「この二つの問題だが、―我々の方で対処可能だ」
 そう言って、先生は何かをホワイトボードに書き足し、
「敵が我々の砲弾を無効化するのは、小型機は弾道予測、大型機はその構造による衝撃吸収だ。雷轟衛の腕にそれを補う高弾速かつ大威力の武器を取り付ければいい。飛行能力についても、目処はついている」
 そして、ホワイトボードを叩く。こうすればいい、と。
 左半分に、L字型の何かと、翼らしきものが描き込まれた。銃と追加の加速器だろうか。単純な発想と言えばそうだが、それ以上と言うのも中々出しがたい。

467:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:16:00 TiE8uWJm
「レールガンを持たせ、戦闘機を背負わせる。改造に多少の時間はかかるが、肝心の動力については問題ないのが救いだな。……そんな目で睨むな、力が今すぐ必要というのはよく分かる。だが、時間も物資もない。しばらくは粗悪な試作品、改造品で我慢してくれ」
 ……もうちょっとブッ飛んでいた。戦闘機を背負わせるだなんて無茶、普通の人は考えない気がする。
「はい」
 目の前の女性に何を言っても、事態は改善されないことぐらいは分かっているらしい。さらに素直に頷いて、彼は耳を傾ける。
「そして、第四の問題だが―前餅君。きみ、ガンダムやエヴァンゲリオンだとか、ロボットアニメを見たことがあるか?」
「は、はい?」
 い、いきなり話を振られてもっ。
「その様子では見たことがないようだな。解説しよう。知っての通り、これらはロボットアニメだ。主人公は、ロボットの操縦者になる事を強いられる。
 彼ら以外では無理だ、と。そして、その重圧に耐えられず逃げ出してしまう。……もちろんそのままでは話が進まないので、戻ったり、連れ戻されたりするんだが」
「は、はぁ……それで、先生。それがなんで第四の―」
 そこで、あ、と気付く。現状とロボットアニメの共通点を。
 彼女は頷き、答え合わせをするように言葉を発する。
「第四の問題点は、操者が彼しかいないことだ。暗殺や逃亡、病気、怪我……これらの問題が、致命的な問題になる。
 体の不調なら、根性でどうにかできるかもしれない。しかし、その根性の源である心が折れてはどうしようもないんだ」
 馬鹿は黙って聞いている。
 その通りだ、と思っているのか、俺の心は折れなんかしない、と熱血しているのかはさておき。
「今のところ分かっている雷轟衛の問題点はこんなところだな。では、第四の問題点の対策を今から伝える」
「……その前に、あの。一つ聞いていいでしょうか。なんで私を呼んだんですか?」
「そう。それだ。ちょうど、今から説明するところなんだ」
 ぴっ、とマニキュアのまの字すらないきれいな指先が私に向けられる。
「物理的、身体的な対策は、我々で対策可能だ。きみのような近しい人―家族や友人にはこちらでカバーするし、怪我や病気も最優先で治療しよう。
 だが、先ほども言ったように、心までは手を出せない。君も知っているだろうが、人はテンション次第で業績が上がったり下がったりするものだ。
 そして、この仕事は常に最高の結果を求め続けねばならない」
 そこで彼女はコーヒーを一口。白い喉がコクリと動く。
「カウンセリングでは足りない。もっと直接的なものが必要なのだよ」
「……あ、あの、やな予感がするので帰っていいですか?」
「却下だ」
 祭中先生は今日初めて笑顔を見せる。とびっきりだ。とびっきりの―最悪な顔だ。
「古来から、オトコが頑張る状況というのは決まっているんだ―女を守る時さ」
 横でド馬鹿が首をかしげている。そうなのか、と。
 ああもう馬鹿は本当に単純でいい。私はいつも苦労する……!
「そういうわけだ。前餅君、協力を―」
「全力でお断りしますっ!!!!」
 立ち上がった拍子に、椅子が飛んだ。
 元々ベッドのあった位置を抜けて、色々な薬品が入っていた戸棚にぶつかって派手な音が立つ。
「おい杏子、んな怒鳴るコト―」
「うっさいこのよーかん!!!」
「よ、よーかん!? 和菓子か!?」
「黙れ!」
「あーこらきみ、そんな風に言ってはいけないよ」
「誰のせいですか、誰の!!」
「……んー……」
 指差されたのは私だった。
「きみかな?」
 ―色々とブチ切れる音が聞こえたが、そこで殴りかかるほど子供でもない。
 ……殴りかかったら、先生、その事をモトに強請ってくるかも知れないし。
「失礼します。コーヒーご馳走様でした!」
 二人を完全に無視して、扉を思いっきり開く。
 廊下を巡回していた自衛隊の人がビビるのがさらに腹立たしくて、思わず威嚇した。
 ……学校を出た後で、コーヒー飲んでないな、と、そんなくだらないことに気が付いた。

468:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:16:26 TiE8uWJm
/2.

 交通機関が麻痺しているから、基本的に移動は人力だ。
 普段はバスを使う道程を自転車で往復するには、ちょっとばかり普段の運動が足りなかったらしい。
 へとへとになりながらも家の前まで戻ってきた私は、しかし家に入らずそのまま通過した。
 ……根回しされてるかもしれないしなぁ。
 先生の言いたいことは分かる。よく分かる。なりふり構っていられないのが現状で、余裕なんて実際にはない筈なのだ。
「こうやって自転車に乗っていられるのもあいつのおかげ、かぁ……」
 ため息を吐いて、夕焼けの空を見上げた。青森と北海道の境界―津軽海峡を渡れずに亡くなった人もいるのに、と。
 雷轟衛の加速器では、日本全域どころか北海道全域のカバーすら不可能だ。
 罪悪感を抱くのは、間違いだろうか。
 ―昔。平和な日本という国にいて、地球の裏側で起こっている紛争なんて気にもしなかったのに。
「……状況が違うのは、言い訳にならないよね……」
 丘の坂道に差し掛かった。今の脚力ではとてもじゃないけれど昇りきれないので、自転車から降りて押していく。
 この丘の上には、雷轟衛が眠っていたらしい神社がある。しかし、そこまで行く気にはなれない。第一、雷轟衛が出現したときに壊してしまったと言うし。
 目指すのは、丘を蛇行しつつ登っていく坂道の途中、夕陽の見える場所だ。
 もう、六月も半ばだ。汗だくになりながら坂道を登っていく。
「…………」
 なんだって私が、と歯噛みする。
「……そんな役目。先生がやればいいじゃないですか」
 私がアイツの―
「―女になれって、言うんですか……」
 理由がない。全くない。全然ないし、存在しない。ありえない。ありえる筈がない。
 ……夕陽が妙に眩しい。
 目がくらんで、視界がにじんでしまった。
 ……最悪だ。本当に、最悪だ。
「嫌われたかな……嫌ってるって、勘違いされたかな……」
 人は人の言葉の裏を読む。
 私が逃げ出したあと、あの羊羹野郎は―『せんせーせんせー。結局第四の問題点の対策ってなんですかよ?』『ははは簡単サ。前餅君にきみの彼女にするのサ!』―などと会話するだろう。
 あんな勢いで拒否したんだ、立場が逆なら、私だって理由は一つか二つしか思いつかない。
 嫌いか、他に好きな人でもいるのか。
「……そんなわけ、ないじゃないか」
 丘の中腹くらいの場所。ちょうど木々が開けて、夕陽がキレイに見えるその場所に、到達した。
 自転車をガードレールに立てかけて、自らも腰掛ける。
「……あーあ」
 夕陽。影になり、鳥の編隊が行く。
 こんな所にくる人なんて、そうそういない。……一区切りも付いたことだし、吐き出すことにしようか。
 我慢をやめたら、編隊が光ににじんで消えた。
 へたり込んで、それをしばらく眺めていた。
 ……と、異音。
「うぅ……っ!?」
 脳を直接かき回すような不快な多重音だ。
 聞き覚えがあるどころの話じゃない。つい昨日も聞いたばかりの、悪夢の開始を告げる音。
 これは、空間が歪む音だ。
「『イブマ』が来る……!?」

469:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:16:44 TiE8uWJm
 茜色の空が砕け、銀色が滴り落ちてくる。
 どろどろとしたソレは、透明な容器に収まって行くかのように、その形を確定させていく。
『オオオオオオォォォォォォム…………!』
「……っ!」
 空間が閉じきるのと、ソレが完成するのはほぼ同時。
 その姿は、まるで昔の巨大ヒーローモノに出てくる怪獣だ。
 恐竜を模した総銀のその身体は、大量のナノマシンで構成されている。
 戦車の砲弾も、戦闘機の機銃も爆弾もほとんど通じない―そんな化物だ。
 だけど、私たちにも対抗の手はある。
 学校、その校庭で轟音がする。
 雷轟衛―全高、およそ四十五メートル。樫家・洋巻駆る、稲妻を司る機械仕掛けの巨人だ。
「洋巻……!」
 目を袖で拭い、目を凝らして、少しぎこちなく動き出す彼を見る。
 雷轟衛は、一度胸の前で腕を交叉させ、一気に振り下ろした。
『ウゥウウラァア――!!』
 咆哮。
 前腕から、収納されていた刃が飛び出す。
 同時に発生するのは、背中、展開される八本の角からの雷光だ。
 ―『イブマ』のナノマシンは、技術レベルこそ高いものの、基本的には私たちの使うコンピューターと大して変わらない。
 ブロックこそされているが、強力な電撃を受ければ、焼き切れて機能を停止する。
 それが、雷轟衛が彼らを倒せる理由だ。
『ヲォオオオオ…………ム!』
 二つの巨体が雄叫びを上げ、―戦闘が、開始される。
 先手は銀の巨獣。
 走り出し、自らの身体を砲弾に変え、雷轟衛へと投射する。
 しかし雷轟衛はそれを避けず、背からの雷撃で迎撃する。退かぬ、と。
「わっ……!」
 豪雷。
 巨獣は射抜かれ、その足を止める。
 そこに、雷轟衛は吶喊する。
『ドラァア――!!』
 雷轟衛の腰から燐光が出る。加速の光が。
 両腕から伸びるは剣、近距離戦用の、雷撃発生装置―!
 吶喊は突貫を。
 アッパーのような打ち抜きで、雷轟衛は稲妻を巨獣に叩き込んだ。
『ヌヲォオオオオオ…………!!』
 どろどろと、巨獣が溶けていく。
 しかし、解けきる前に巨獣は動いた。
 牙だ。
『ガァアアアアア――!』
 強靭な顎によって、雷轟衛の肩が砕ける。
「あ、」
 稲妻はいまだ、巨獣を貫いている。
 だが、巨獣も倒れず、雷轟衛の肩を砕き続けている。
 考えてみれば、当然だ。
 電撃に対する防御を高めてくるなんて。
 防ぎきれてはいないけれど、確実に、先日のそれより電撃の効果が薄い。
 負ける、と、弱音が来た。いつか、彼は負ける、と。

470:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:17:01 TiE8uWJm
「……ひぁ」
 視界が、再度歪む。
 その瞬間だ。
 背後から、こつ、こつとハイヒールの足音が聞こえてきた。
「……やあ。見つけたよ、前餅君」
 振り返ることができない。
 涙を見せたくないから。顔を見せたくないから。何より―あの戦いから、目をそらしたくないから。
「さっき言った、第四の問題点、その解決手段。これは、諸刃の剣でもあるんだ。たとえばきみ、小さい頃、親しい人から嫌いと言われて落ち込んだことがあるだろう? 恋人とケンカしたら、誰だって落ち込むものさ」
 そこで彼女は言葉を切る。
 代わりに聞こえたのは、きん、と火花が散る音だ。
 タバコだろうか。このご時世では結構貴重品だろうに、先生は味わう様子もなく言葉を続ける。
「しかし、きみなら―と、思ったんだがね」
「そうでしょうか」
「そうだよ。きみが去った後の彼の顔と言ったら、もう、この世の終わりのようだったね」
 くつくつ、と、祭中先生は笑う。
 にじむ視界の先では、いまだに戦闘が続いている。
 叫び、荒れ狂うように、しかし足元に気をつけながら。
 被害を出さぬように、時には地をかばうような動作をしながら、だ。
 ……そうかも、しれませんけど、と。胸にある信頼が―もうちょっと夢見がちな言い方をすれば、『絆』が―言う。
 巨獣が、その対電限界を超えたのか、盛大に溶け始める。
『ヲヲヲ……ォ……オ…………』
「……どうやら終わったようだな。今回は実験か」
 ふ、と息を吐く音が聞こえた。
「そもそもこの侵略自体が実験じみたところがあるが……まあ、次回はそれなりに戦力を用意してくるだろう」
「……大丈夫でしょうか」
「どうだろうかなと言いたいところだが、今の雷轟衛―」
 雷轟衛は、ボロボロだ。
 格闘戦の結果、左腕はほとんど機能を失い、右腕の剣は折れた。背中の雷雲発生器も、数本折れてしまっている。
「―否。樫家君では、おそらく次の戦闘では勝てん。生き残るとしても、雷轟衛はしばらく動かせなくなるだろう。……それでは、我々の負けだ。今回も自衛隊はほとんど活躍していないしな」
 祭中先生は、事実を語る。間違いのない、事実を。 
 彼女はタバコを吸い、唐突に話を変える。
「彼のカウンセリング―まあ、心理テストの類なんだが、そのテストは私が行った。……彼は正義感と言うものが薄いんだよな。その彼が逃げ出しもせずにいる。―なぜだろうね?」
 返答を待たず、彼女はこつこつと足音を立て、どこかへと歩いていく。
「早く家に帰りなさい。治安は比較的いい方だけど、何があるか分からないからね」
「…………」
 返事を返さず、私は雷轟衛を見続ける。
 街を守るためにボロボロになった―はずの、雷轟衛を。

471:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:17:20 TiE8uWJm
/3.

 ……夜。
 私は、あらゆる明かりを消して、寝転がっていた。
 発電所を壊されたりしているので、もう深夜に電気は使えないのだけど。
 それでも習慣―普段からの夜更かし―というものは恐ろしく、『イブマ』が来てからも眠れない日々が続いている。
 ……贅沢だ。すごく、贅沢だ。
 貧困な想像力でも、この国―否、北海道以外で、夜更かしできる余裕はないだろうと分かる。
 月明かりが、部屋に入ってきている。以前と変わらぬ、冷たい光が。
 このまま寝転がっていても寝れなさそうなので、立ち上がり、窓から外を見た。
 北海道だ。二階程度の中途半端な高さでも、地平線ヨユー。隣の家までの距離は、百メートルほどある。月と星の明かりでは、その家を視認できない。
「街灯もついてないしね」
 元々まばらだけど、と。わずかに笑い、窓を開ける。
 風が来る。冷たく冴えた、静かな夜気が。
「ン……」
 目を細めて、すこし、それを浴び続けた。
 最近は水ですすぐしかできない髪が流れ、さわさわと音がする。
 机の上に載ったままのプリントが、風で落ちた。
 ……モノクロに近い色彩の風景を見続けていたせいだろうか。
 その人影に気づいたのは、家まで十数メートル、といった段階だった。
「あんた―」
 呟きだ。
 この距離で聞こえるはずはないのに、彼は右手を上げて挨拶をした。手の形は自然形。だらしない、と言うのは、ちょっと乱暴だろうか。
「む」
 とりあえずこちらはズビシとばかりに勢いよく右手を上げる。窓枠にぶつかってガツンと酷い音がした。さっきとは違う理由で目が細くなる。ぶっちゃけ泣きそうだった。
「…………!」
「…………」
 HAHAHAと呵呵大笑する仕草の馬鹿が見えたので、近場にあった時計を投げた。命中した。
「…………!」
 いい気味だ。すごく。
 あっはっは、と、仕草のみ、無音で笑う。
 ひとしきり笑ってから、一階へと足音を忍ばせて降りる。
 両親は、多分眠っている。それを起こすのは―二重の意味で―寝覚めが悪い。
 何を話しに来たんだろうか、と思う。
「何を話すにしても―」
 玄関。とりあえず、サンダル代わりのゲタをつっかける。
 扉。開く前に、一呼吸を入れる。
「―あいつが来たんだったら、普段どおりにしてあげないと―」
 ……今日会ったのも、本当は久しぶりだった。
 アイツは、私に近づかないようにしているフシがある。
 洋巻は今、学校で寝起きしている。家には帰っていない。俺が狙われたらいけないから、と。
 家族を。近所の人たちを。畑を。家を。風景を。雰囲気を。未来のために、きっとある未来のために、戻れるかどうかも分からないのに、彼は必死で守っている。
 ―その背の影には、きっと、私も入っている。
 ……扉を開く。
 月光の下、樫家・洋巻が立っている。

472:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:17:42 TiE8uWJm
「……よう。手、大丈夫か?」
「大丈夫。そっちは?」
「昼、大分やられたからな。そっちの方が痛い」
 そう言って、ホレ、と時計を渡してくる。
 ……文字板のプラスチックが砕け、針が二本取れていた。残る秒針も、同じ場所を行ったり来たり、だ。
「うわ壊れてるじゃないこの石頭!」
「ここで俺のせいにするのかお前は!?」
「アンタがあんな風に笑うから!」
「適度に力抜いとけ馬鹿!」
「うっさい馬鹿!」
 ふぅふぅ、とひとしきり怒鳴った後、洋巻の表情が固まるのが、淡い光の下でもよく見えた。
「誰かいるのか? 杏子?」
 原因は背後。がろがろと窓を開く音がした。
「ひ」
 ぇ、と、何故か叫びが出そうになった。
 声は父さんのもので、別に驚きはしても―
「静かにっ」
 Gがかかる。
 強い手が、私を土手の下へと持って行く。
「んむっ……!」
「バレるだろ、静かにしろっ……!」
 手が口にかかる。鼻も押さえつけられていて、ちょっと苦しい。
 顔が近くて、草のにおいが濃くて、息ができなくて、引っ張られたせいか頭がぐらぐらとした。
 だからだろうか、素直に思考が言語になる。
 ―なんで、こんなに―恥ずかしい、とか思ってるんだろうか―
 理解すると、手の暖かさとか、タコの硬さだとか、腕の重さだとかがごっちゃになってやってくる。
 ……うわコイツ意外と男らしく―って何を私はっ。
「っ……!」
「うわ馬鹿黙れぇ……!」
 暴れたせいだろうか。
 父さんの足音が近づいて来る。窓際に置きっぱなしのサンダルの足音が。
 逃げるか。出て行くって方法もあるし、誤魔化す手もありそうな気がしないでもない。
「あ、」
 迷っているうちに、馬鹿は裏声を出した。
「あなタが落とシたのはきれいな杏子ですカ? そレともダーてィな杏子ですか?」
「何言ってやがんだ馬鹿ぁ―!」
 怒声と打撃音、夢の競演だった。正確に言えば、夢に吹っ飛ばす感じのミラクル強打撃だった。
「……ここはそんな風に人を殴るダーティ杏子ちゃんと言っておこう」
 マトモに答える馬鹿父親。むしろ今夢だよねと聞きたいところだ。
 夢に吹っ飛ばされたはずの馬鹿は、しかし裏声を崩さずしゃべり続ける。
「ざンねんキレイな杏子なんて存在しねェよ―!」
「ぬああ夢だからオーケーかと思ったんだがチクショー!」
 緩んだ腕からずざっ、と逃げる。
 土手を駆け上り、
「おお、いるじゃないかキレイな杏子が―!」
 勢いのまま飛んで、笑顔の父親を夢の世界まで蹴り飛ばした。

473:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:18:01 TiE8uWJm
/

「で」
「おう、なんだ」
「いや、アンタは何をしにこんな深夜に」
「……お前と、話にだ」
 父親の頬に残るサンダル痕と土を軽く拭いて、窓から放り込んで。
 星と月と夜の下を、ゆっくりと歩きながらの会話だ。
「誰に言われて?」
「…………」
 ああ、やっぱり誰かに言われてなんだ、と、その沈黙で理解する。
 ……足の向く方向は、神社だ。
 雷轟衛が出現し、全壊してしまった神社。昔、秘密基地を作った神社。
「今日―大丈夫だった?」
「ピンピンしてるだろうが。雷轟衛も、自己修復で戦闘はできるくらいになってる。昼言ってた飛行ユニットも、徹夜改造でもうすぐらしい」
 背中も壊れたんで、その自己修復にかみ合わせて強化するんだってよ、と。内部事情をべらべら喋って、彼は静かになる。
「ん、そうじゃなくて―その、苦戦してたじゃない」
 答える気配はない。
 だから、少し言いたくない気持ちを、続けて言葉にしていく。
「だから、ええと―大丈夫だったのかな、って。精神的に」
「……平気じゃない。正直逃げたい。あいつらだって皆殺しにしようって気はないみたいだし、裏切りでもすれば日本くらいくれるかもしれない」
 くはー、と息を吐いて、洋巻はちょっと前を歩いていく。
「けど、それじゃ駄目だろ。その状態でフツーに暮らすなんて無理だろ」
「……無理じゃないかもよ。ほら、改造手術で記憶を消すとか」
「馬鹿、そんなことできん。俺はあいつらを信用できない。お前らを人質に取るかもしれないし、俺があいつらの尖兵になるかもしれない。お前らをあいつらに預けることもできない」
 後ろ歩きになりながら、洋巻は、どこか楽しそうに言葉を続けていく。
「故に、俺たちは記憶をそのままにするしかない。そもそも言葉が通じるかって問題もあるしな。研究はしてるだろうとは思うが」
「……ああ。そりゃ、無理よね―」
 きっと考えたんだろうな、と思う。
 難しい想像じゃない。それでも、考えておかなくちゃすらすらとは出てこないと思う。
『彼は正義感と言うものが薄いんだよな―』
 先生の言葉が蘇る。ただ事実を淡々と言う、あの声が。
 割れたアスファルトを、向かい合うだなんて奇妙な様相で歩きながら、私たちは言葉を連ねていく。
「……ところでだけど、神社、壊れたんだよね」
「ああ、雷轟衛出たときに踏んじまった」
 申し訳なさそうな、悪びれるような、そんな複雑な表情をして、洋巻は肩をすくめた。
「しかし、お前も物好きだよな。そんな神社に行こうなんてさ」
「アンタも反対しなかったじゃない」
「ヒマだからな」
「ヒマねぇ……雷轟衛の近くにいなくて平気なの? 呼んだら来るの?」
「来る。俺の声である程度自律行動するから、無線で呼べば」
 そう言って、彼はポケットから小型の無線機を取り出す。
 どうやら本当らしい。
「来るんだ。……無線なんだ」
「無線なんだよ。……昔のロボットアニメみたいに、ただ呼ぶだけで来るとかするにはオーバーテクノロジーすぎるんだと」

474:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:18:27 TiE8uWJm
「そのわりには、無線なんかで……」
「ああ、無線なんかで来るんだよなぁ」
 ……そうこうしているうちに、神社が見えてくる。
 踏まれ、砕け、しかしその雰囲気を残す神社が。
「懐かしい場所」
「そうだな」
 一瞬、何を話そうか、迷った。
 けれど、その一瞬が、タイミングを逃す。
 ―急に空が暗くなる。ぎぎぎぎぎりりりりりりり、と金属を引き裂いていくような音がする。
 月食のような穴が、空に開いている。
 多い。
 今日の昼来たあの巨獣を二桁単位で作れそうな量が、空中で凝り固まっている。
「空中型……!?」
 巨大な空中戦艦が、そこに顕現する。
『樫家! 樫家・洋巻君!』
 祭中先生の声が無線機から響く。同時、穴から銀色が漏れ始めた。
『既に空中戦は可能だ。我々が食い止めている間に雷轟衛を呼べ!』
「分かった! 死ぬなよアンタら!」
「洋巻……!」
「いいか杏子、お前、ここから動くなよ!」
 洋巻は、一歩、走り出すように前に出て、……止まった。
「……確認できて、安心した」
 一言、彼が言葉を漏らす。
「実は、ずっと怖かった。けれど、今まで戦ってこれた。なんでか、分からなかった」
 それは、響き始めた戦闘機の爆音にかき消されるほどの声量だ。
「俺は、俺のままだった。変わってなんかいない、大切なもののためなら、どんな時でも、どんな敵でも、戦える―!」
 それでも、その決意は―何者にも消されはしない。
 無骨で黒い無線機に、彼は詔を叫ぶ。

「己が覇者! 意思砕けぬ我に応じよ鬼神!」

 ―空が。
 黒雲に、覆われていく。

「我が空に馳せ参じよ、覇我鬼神、雷・轟・衛―!!!」

 爆音。
 学校、その校庭に立っていた雷轟衛が、空を駆けた。

475:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:18:50 TiE8uWJm
/

 稲妻が空中戦艦を穿つ。
 耐電仕様―ではあるのだろう。しかし、ダメージは確実にある。
 主砲を、副砲を、艦橋を、打ち出される小型戦闘機を、雷撃は射抜いている。
 強い。
 銀色は、雷神の機体を捉えきれない。

/

 ……ふと、祭中先生の言葉、その続きが、蘇ってくる。
『その彼が逃げ出しもせずにいる』
 逃げ出したい、と考えているのに。
『―なぜだろうね?』
「なぜだろうね……」
 その意味が、分かる気がした。

/

 銀の空中戦艦は、その形を大幅に変える。
 前後に長く、まるで艦自身を砲身とするように。
 しかし雷轟衛は怯まない。
『ウ・ウ・ウ―』
 加速器を全開。
 稲妻をまとい、紫電を振りまいて、その右手、剣に雷撃を秘めて、雷轟衛は貫徹を行う―!
『―ラァアアアアアア―!!!』
 空中戦艦は、身悶えるように揺れ、大気の圧に砕かれていく。
 しかし、雷轟衛はその手を休めない。
 背面の雷雲発生器が唸りをあげる。五本と常よりも少ない、しかし、普段に倍する量の稲妻を束ねた角が。
 ―神雷。
 銀の戦艦を形作っていたナノマシン―それら全てが、焼き尽くされた。

/

 戦艦が溶け落ちていく。
 ―と。ざりざりと、何か砂をかむような音がした。
『―杏子』
 それは、雷轟衛を呼んだ、洋巻の無線機だ。
 持って行かなかったのは、きっと、私に何かを言うためだろう、と都合のいい思考をしてみた。
 使い方は……よく分からない。
 だから、拾って持つ。全てを聞き逃さないよう、耳を傾ける。
『―杏子。』
 呼びかけは二度。
 息を一つ吸う音が聞こえた。
『俺はきっと、お前がいるかぎり、戦っていける。俺はきっと、お前がいなくちゃ、戦っていけない』
 だから、と彼は言う。
『杏子。俺のそばにいてくれ』
 ……直球だった。
 顔を見合わせていたら、勢いで、うん、と言ってしまいそうなくらいに。
 だけど私たちは、電波を介していた。
 それは、とても大きな差だった。故に、私の返事は――。

476:覇我鬼神・雷轟衛 ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:19:19 TiE8uWJm
/4.

 ……なんてことがあったのが、一月前のことだった。
 私の返事はと言えば、無言だった。
 正確に言えば、……使い方が分からないので、発言ができなかった。
 と言うか、まあ、今考えるとしなくて良かったというべきだろうか。
 洋巻の馬鹿は、全帯域―オープンチャンネルであの恥ずかしい台詞を言ってたのだ。
 だから今―目の前にある扉の向こう。祭中先生なんかは、ことあるごとに私たちをからかいの対象にしてくれやがったりする。
「ははは面と向かって言えばいいものを慣れない策を使うから悪いのだ」
「ぬああ我が人生最大の羞恥再び―! ええいおのれこうなれば仕方ない! 己が覇者! 意思砕けそーな俺に応じよ鬼神! 我が元に馳せ参じろ、覇我鬼神、雷・g「なに雷轟衛呼んどるかーっ!」
 とりあえず扉を開けた先に後頭部があったので膝蹴りを入れておいた。
 うなじの上辺りに入って、洋巻がちょっと悶絶する。
「きみの格闘センスには目を見張るものがあるね……わざわざそんなところに入れるだなんて」
「あっはっは。先生がいいんですよ。さすがベテラン自衛官、教えるのも上手くて」
「きみのような生徒であれば、教えがいもあるだろう」
 くつくつ、と祭中先生は笑う。
「そう言えば、はっきりとした理由を聞いてなかったね。きみがこの駐屯地に住まうようになった理由も、できることを探し始めた理由も」
「予想はついてるんでしょう? 言いませんよ、白衣の胸ポケットに録音機が入ってる間は」
「はははそれは残念だ。編集して部隊内に回そうと思ってたのに」
「あっはっはいくら先生でも人間としての尊厳まで犯していいとは思いませんよ」
 目が笑ってなかった。多分私もだけど。
「それじゃあ、そろそろご飯なので、洋巻連れて行きますね」
 悶絶する洋巻の頬をぺしぺし叩きながら言う。
 ……ううむ、ちょっとキレイに入れすぎただろうか。
 仕方ないのでわきの下に頭を入れるようにして、支える。
「うん、いってらっしゃい。食事は精神的余裕の根源だからな、しっかりと食べさせなさい」
「はい」
 それでは、と一礼。
 扉を出たところで、またやったのか、とでも言いたげな警備の人の視線が来た。
 笑みを返して、私は歩いていく。
 ……鼻腔をくすぐるのは、夏の空気だ。
 梅雨なんてない北海道。今年の夏は、どうやら暑くなりそうだ。
 ―そばにいるために。
 私も、そばにいるために。
 だから、私たちは、歩いていく。

/

 二〇〇Ⅹ年五月二十七日。世界は宇宙人に侵略された。
 人類の戦力がボロボロになって、世界中で絶望が蔓延していく。
 けれど、それでも私は希望を失わない。
 ―何故ならば。頼りになる私の幼馴染が、この街を守っているからなのであった。


End.

477: ◆1Bix5YIqN6
08/07/10 22:20:48 TiE8uWJm
投下終了。ぬああ0のところタイトル入れ損ねた―!
……いいじゃないかロボットものでもっ。
ぶっちゃけロボットはただの小道具だが。
あ。
雷轟衛のイメージだけど、大雷鳳がゴッドガンダムの背中してるとかそんなイメージでどうぞ。
背負う戦闘機は、壊滅した米軍基地からガメてきたF-22ラプターってことで一つ。魔改造カマされてるが。
怪獣はレッドキング、戦艦はラーカイラム→ヤマトって感じで。
楽しんでいただけたら、本当に幸いですよ?

478:名無しさん@ピンキー
08/07/10 23:08:24 aiwknDRB
1番槍GJ
だが、ラプターでは背負うには小さいと思うぞ?w
素直にジェットスクランダーにしておけw

479:名無しさん@ピンキー
08/07/10 23:08:50 xTOuI2nJ
GJ!
なんか活字で「スーパーロボット」を読むのは新鮮だな。
大雷鳳にデモンベインにエヴァにと中二病な所を総取りだな。
自己修復機能でも真ゲッターロボ並のオーバーテクノロジーだしw

480:名無しさん@ピンキー
08/07/10 23:31:53 sckm1ZH7
GJ!
幼なじみとロボ好きのオレ歓喜。またぜひ書いてくれー

481:名無しさん@ピンキー
08/07/11 07:05:49 SuHMN9lL
三年前と別人の様になって幼なじみが帰って来た…
「俺の真後ろに立つな…命が惜しければ…」

幼なじみは傭兵?それとも暗殺者?…って感じのネタを受信した。ここに記す…
     

482:名無しさん@ピンキー
08/07/11 11:13:44 lk+7pxLp
ゴルゴ13の愛読者になったんですね、わかります

483:名無しさん@ピンキー
08/07/11 13:26:17 kawzfL6Z
厨二病乙www
しかしGJ!
退屈な講義はこれを読むためにあったのかw

>>478
ラプターて20メートルくらいだっけ?
いい感じに背負えそうな気がする…

484:名無しさん@ピンキー
08/07/12 04:47:33 RJjowiz9
引っ越す時…優しくて、涙もろい女の子。主人公に依存気味
帰還時…きつくて、気高い女王様気質に…主人公を容赦なくこき使い、振り回す。
性格 ハ●ヒ+女王様=ヒロイン の様な感じか?
そんな感じの変貌系で誰かお願いします。    

485:名無しさん@ピンキー
08/07/12 07:05:28 LCEnwiue
>>484
自分で書けば一石二鳥でんがな

486:名無しさん@ピンキー
08/07/12 07:31:46 gaNDk1Lv
 幼馴染が居た。
 何時も僕を気に掛けて、困った時には心配してくれて、けれどその云う事を聞かないで時々独りで走る僕を心配する
余りに泣き出してしまうような女の子だった。幼かった僕はその幼馴染に対して淡い恋愛感情を持っていた。毎日一緒
に遊ぶ度に心が躍るようで、お互いに家に帰らなければならに時間になってしまった時には早く明日が来ないかと心待ち
にしていた。僕の幼少期にとって、幼馴染は最も僕の世界に彩りを与えてくれていた存在だった。
 しかし、そんな僕にとって不可欠の存在だった彼女は小学校に入学してから三年、突然家庭の事情で遠くに引っ越す事に
なってしまった。僕などがどうにか出来る問題では無く、彼女は涙を流しながら、唇を噛み締めて飛行機に乗って行ってし
まった。余りにも早く感じられた時の流れの中で、僕は悲しみと云う感情ですら気付けず、暫くは茫然自失としながら
流れて行く毎日の彩りを眺めていた。僕が涙を流したのは彼女が手の届かない存在になってから一週間後の事だった。

 ―そんな幼馴染が、明日帰って来る。
 別れも突然だったら、再会も突然らしい。僕への直接的な連絡はなかったが、僕の母親がそう云う胸が綴られた手紙
を受け取ったらしく、にやにやと笑みを含みながらそれを教えてくれた。僕は最初、それが嬉しい物なのか分からなかった。
 漠然とした理解の中で、彼女が帰って来ると云う事がどう云ったものなのか分からなかったのだ。しかし、徐々に時計が
深夜の零時に迫るにつれて、僕の心臓は警鐘を打つように激しく脈打った。そうして確かな随喜が見て取れた。
 ―幼馴染が帰って来る。
 それだけが今の僕に考えられる一つ事だった。
 同じ事実を頭の中に延々と反芻しながら、僕は眠った。

 次の日、彼女は朝早くにやってきた。
 午前八時を時計が示した時、丁度玄関の呼び鈴が軽快な音色を響かせた。その途端に心臓が跳ね上がる心持ちになった
僕は到底応対に出る勇気を持つ事が出来ず、目配せで母親に応対に出てくれと頼んだ。母親は何処か困ったような笑みを
終始浮かべながら、しょうがないわね、と云って玄関の方に歩いて行った。僕の心臓は一向に落ち着きを取り戻せないでいる。
 玄関の方から客人と楽しげな会話を交わす声が聞こえる。その中で一層若々しい声が誰も物なのか、僕の頭が出す答えには
彼女以外にその声を出す人を知らなかった。久闊を叙す会話が次第に終わりに向けて進行を始めた時、突然母親が声を張り上げて、
「ちょっと出かけて来るから、沙希ちゃんと待っててね」と云った内容だった。云うまでもなく、〝沙希〟とは幼馴染の
名前だ。母親は急に僕らが二人きりになる状況を作り出して、何処かへ行ってしまったようだった。

「お邪魔しまーす」

 軽快な声が家の中に響く。今日は土曜日だ。学校は無い。父親は元より海外に単身赴任の為、家には居ない。僕と生活を
共にする母親もついさっき去ってしまった。僕は朝食に作られたコーヒーの味を感じる暇もなく、玄関から僕の居るリビング
に向かってくる足音に耳を傾けていた。心臓はともすれば破裂しそうなくらいに熾烈な勢いを以て、脈を打っている。
 そして、待ちかねたような、その逆のような、閉じられた扉が漸く開いた。
 そこから顔を出した幼馴染は幼い頃の愛らしさを微塵も損なう事なく、むしろ可愛さを研磨して研ぎ澄ましたかのような
容貌をしていた。変わり過ぎた外見に圧倒されて、彼女の瞳を見詰めるばかりの僕は茫然としながらカップを手に、
黙っていた。僕の好きだった、優しくも涙もろい彼女は、やがてこう云った。

「久し振りね! あたしのコーヒーも早く用意しなさい! 今すぐに! でないと罰として殴るから!」

 僕が思い浮かべた幼馴染の成長した姿は、音を立てて一気に崩れ、灰燼と化した。



―続……かない。

487:名無しさん@ピンキー
08/07/12 08:37:37 e+0/k3Ag
>>486
頼む、続かせてくれ!

488:名無しさん@ピンキー
08/07/12 11:19:47 xKCuuaka
>>487
これから話進めるべきだろ……
期待してる

489:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:44:04 RJjowiz9
GJ!!!!!!! 無理にとは言わないが続けてくれると嬉しいかな?

490:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:53:28 ZFMX1aA0
>>486
つ、続けるべきだ。いや続けて下さい!!!

491:蒜
08/07/12 20:39:58 1WGTIQZm
俺の小説サイトからの転載です。

今ここに投下するの書いているんでいましばらくお待ちを。

次のスレから

492:名無しさん@ピンキー
08/07/13 12:16:54 f+nhpirX
>>486
もう少しだけ書いていけよ

それにしてもアレだ。ずっと前の話になるが12人の幼馴染って話があったけど
既にそういう企画がウェブ上にあったことを誰も指摘しなかったな
雑談が盛り上がったから、それで良いけど

493:名無しさん@ピンキー
08/07/14 03:08:35 Bw9r0Rvj
次のスレからだと大分先になっちゃうよ!

494:名無しさん@ピンキー
08/07/14 21:00:01 Yy/FFlQj
>>493
大分書き終わらなそうなんじゃないか?

495:名無しさん@ピンキー
08/07/15 03:51:27 7WN79RUs
幼なじみの兄貴分と姉の恋の行方を見守る弟視点とかそういう傍観者系ってここ的にOKなのか?
幼なじみの兄貴分←恋愛→主人公の姉
主人公・片思い→クラスの女の子 

496:名無しさん@ピンキー
08/07/15 03:58:05 1nVyBQ5g
第三者視点で幼なじみカポーを語るわけか
それはそれで面白そうだな

497:蒜
08/07/15 14:17:57 Qm/Et4L5
意外と早く書き終わったんで投下します。




「ごめんなさい」

屋上には申し訳なさそうに謝る女の子の声が響いた。

「…あはは…。うん、分かったよ。ごめんね?変な事言っちゃって…、……でも最後に理由、だけ…聞いてもいいかな?」

男の子は告白を断られたのだろう。悲しそうに、絞り出すような声で問う。
その返事はとても残酷なものだった。

「あなたに興味がないんで。」

女の子は申し訳なさそうにしながらもはっきりと言った。

その瞬間男の子は悔しそうに「…分かったよ。」と言って去っていった。



498:蒜
08/07/15 14:21:31 Qm/Et4L5

タイトル忘れてました。タイトルは
「そう遠くない未来」です。 下から続き



そして男の子が去って数秒後…、


「はぁ…疲れた。全く…何でろくに話したこともないのに好きとか言うのかな…」

これがこの女の子の素なのだろう。しかし、そんな彼女を見る人物がいた。


「なにやってんだよ椿(つばき)…」

とさっきとは別の男の子が彼女に話しかけた。どうやら彼女は椿という名前らしい。

椿と呼ばれた少女はその男の子の方を見るとはぁ…と溜め息を零し口を開いた。

「覗き見とは随分悪い趣味ね、一成(いっせい)。」

そう彼女に言われると一成と呼ばれる少年は心外そうに口を開いた。




499:蒜
08/07/15 14:22:17 Qm/Et4L5


「趣味が悪い?俺が寝てる下でいきなり告白タイムが始まるのが悪いんだろ」

「でもずっと見てたでしょ。」

ズバリ言われると一成は一瞬驚いた顔をした。

「気付いてたんだな」

「あんなにチラチラ見てたら誰だって気付くでしょ…」

「いやぁ学園のマドンナと言われる女の子の椿に告白する男が気になってな」

「…ふ~ん」

「なんでOKしなかったんだ?あいつ結構モテる奴だろう?」

「さっき返事であったでしょう?興味ないんでって」

「試しに付き合ってみればいいじゃん」



500:蒜
08/07/15 14:24:04 Qm/Et4L5


その言葉に対して椿は心の中でバカっ!!と怒鳴った。それもそうであろう。椿は幼なじみにして唯一自分が素で相手が出来る相手、一成の事が好きなのだ。


「さっきも言ったでしょ?興味ないった」

するて一成はそっか…と呟いた。

「じゃあ帰ろうぜ」

「えっ?」


「えっ?じゃねぇよ。どうせ家が隣なんだし、帰るぞ」

「…うん。」

椿は思った。

まだこのままでもいいのかもしれない。

関係がただの幼なじみであっても…

今一成の一番近くにいる異性は間違いなく自分だろうから。

少し一成から離れた所で椿は呟いた。

「まっ、いつか絶対振り向かせてみせるけどね!」

「…なんか言ったか?」

「い…、いや?別に…」

「ふ~ん…まぁいっか。行くぞ」

「あっちょっと待ってよ」

そして2人は夕日の中肩を並べ歩き出す。

この2人が付き合い始めるのは


そう遠くない未来ー


終わりです。
続きは要望があれば

501:蒜
08/07/15 14:26:40 Qm/Et4L5
携帯で書いたんで誤字脱字がありますが…出来れば気にしないで下さい。

興味ないった=興味ないって

502:名無しさん@ピンキー
08/07/15 16:04:26 e7lUSx4i
>>500                                                      いいと思う

503:名無しさん@ピンキー
08/07/15 17:13:01 b4PxHgdL
改行ミス?

504:名無しさん@ピンキー
08/07/15 19:03:37 wS1GJvJC
いいな、このほのぼのした感じ

505:名無しさん@ピンキー
08/07/15 21:47:57 meGKiSvr
続き支援

506:亮と早紀
08/07/18 07:02:58 2FkkFx9Q
439の続きです。
ぼちぼち浮かんでたネタを繋げたら完成してしまった。
完徹で書いたから、誤字脱字は多めに見てくれ。
タイトルは、主人公の名前がやっと決まったからつけてみた。
じゃあ、長いけど次から投下。

507:亮と早紀 その5
08/07/18 07:06:48 2FkkFx9Q
「お邪魔しま~す」

先日から何度も訪れるようになった部屋に、私は来ていた。

『お前も知ってるヤツらで集まるんだ。』
だから来い、と誘われたのは今朝のこと。

それから数時間後…。
なぜか迎えに来てくれた亮の車で、食材の買い出しに付き合った。
行き先は、安いと評判のスーパーで、一人暮らしが板についているようだ。
あっという間に、何人集まるの?というくらい、大量の賞品が籠に積まれた。
会計を済ませ、テキパキと袋につめていくその後ろ姿は、まさに主婦のようだ。
大きい袋3袋分になった様子を見て、納得した。
こりゃ、荷物持ちがいるわ…。

私も1つ袋を持ち、並んで車へと戻る。
それにしても、これ、見た目の割に軽い。
…わざわざ1番軽いのを渡してくれたんだろうか。
そう考えると、なんだかくすぐったいような、嬉しいような。
昔は私の方が力持ちだったのに。


亮の部屋へ帰ると、今度は料理の下ごしらえが始まった。
といっても、焼き肉なので具材を切ったりする程度だが。
私は野菜を任され、焼き野菜用カットの他に、キャベツの千切りサラダと、軽いカルパッチョ風の一皿を作った。
基本不器用な亮にとっては、どちらも感動するものだったらしく、喜々として褒められてしまった。

そういえば、折り紙が壊滅的に苦手だった、この人。
何度教えても、折り鶴が折れなかった幼少時代が思い出され、笑えてきた。
変わったようで変わっていないんだなぁ、と、ぼんやり背中を見ていた。

508:亮と早紀 その6
08/07/18 07:10:02 2FkkFx9Q
夕方になってぼちぼち集まってきた友人は、懐かしい面々ばかりだった。
久しぶりの再会をみんな喜んでくれて、話も大いに盛り上がった。

「亮~、ビールこれで終わり?」

「いや、まだ冷蔵庫にあるぞー。持ってくる。」

友人の一人の問いに、亮がそう答えた。
食べていた箸を置いて席を立とうとした亮に、声をかける。

「私の方が近いし、取って来るよ?」

そう言って立ち上がると、ふわりと席に座らされた。
そして、くしゃくしゃと頭をなでられた。

「いいよ、座っとけ。ありがとな。」

優しい笑顔でそう言われ、頷いて従うしかなかった。
頬が熱い気がするのは、アルコールのせいだろう。
そう思いながらふと友人達を見ると、狐につままれたような顔をしている。

「…何かあった?」

そう尋ねるが、曖昧な返事しか返ってこなかった。

509:亮と早紀 その7
08/07/18 07:12:00 2FkkFx9Q
「あの、呼んでくれてありがとね。」

みんなが帰って、私は後片付けを手伝った。
何しろ10人近く集まっていたのだ。
食器と鉄板だけでもかなりの量の上に、ビールやらチューハイの缶がそこかしこに転がっている。
一人で片付けさせるのは、忍びなかった。

片付けが終わり、2人でソファーに座りながら、そう告げた。

「こっちこそ、手伝ってくれてありがとな。」

そしていつものように、優しくなでなでされる。
それが心地良くて、目を閉じた時だった。
亮の手が、首に触れた。

「…っ…ぁ…!」

思わずびくり、と反応してしまった。
はっとして亮を見る。
ごくり、と喉が鳴るのがわかった。
そのまま、両手は首筋を優しく愛撫し、熱い吐息が耳をくすぐる。
私は、漏れそうになる声を抑えるのに必死だった。

「はぁっ…は…っ…」

息が上がり、恐らく顔も真っ赤になっているだろう程に熱くなっていた。
不意に、首筋をはい回っていた両手が動きを止める。
そして、頬へと伸びてきた。
ぼーっと目を開けると、信じられないほど近くに、亮の顔があった。

「ふっ…ん……」

そのまま、ゆっくりと唇に熱が伝わるのを感じた。

「んん…はっ…ん…」

そのうちに、温かいものが舌を絡め取り、奥まで犯して来る。
容赦ないその攻めに、完璧に力は抜け、息つぎをするのが精一杯だった。

「っぷ…はぁっ…はぁっ…」

ようやく解放された時には、息も絶え絶え、頭は朦朧、思考回路は麻痺状態だった。
だから、囁かれた言葉の意味も、考えられなかった。

「ごめん…我慢の限界…。」

510:亮と早紀 その8
08/07/18 07:15:04 2FkkFx9Q
亮は、優しい手つきだけど焦らすように攻めてくる。
それがなんとももどかしくて、心地良くて、たまらない。
私は成す術もなく、ただ与えられる刺激に耐えていた。
敏感になりすぎて、全身のどこでも感じてしまっているみたい。

「早紀…入れたい…」

ふいに後ろから抱きすくめられて、耳元でそう囁かれた。
お尻には、熱いものを感じる。

「え…ちょっ…ダメッ…!生はっ…!」

「いいじゃん…オレの子供、産んでよ…」

優しい声色でそう囁かれ、首筋にキスをされる。
そのまま、返事もできないまま…。

「っ…ふあぁっ…!!入って…く、るっ…!」

もう頭は真っ白で、何も考えられなかった。
なけなしの理性など、優しい声に吹っ飛ばされてしまったのか。

「あっ…ぁっ…おっき……りょお…っ!」

「くっ…早紀…きつ…もうちょい力抜け…」

身体が言うことをきかない。
やっと中に入ってきたモノに歓喜したように、収縮が止まない。

「あぁっ…っめ…こんな…だめ…ぇ…」

「そ…んな、締め付けんなっ…持たねぇ…!」

「だめ…っ…あっ…はっ…」

「うっ…早紀っ…で…るっ!!」

「…!!!」

その直後、激しく奥まで突き上げられると同時に、熱いものが拡がるのを感じた。

「っ…ぁ…なか…ぁっ……」

意識が薄れゆく中、抱きしめられて、囁く声がきこえた。

「早紀…愛してる…。」


511:亮と早紀 その9ラスト
08/07/18 07:17:54 2FkkFx9Q
ぼんやりと意識が戻って来た。
なんだか温かくて…良い匂いがする。
まだ目覚めたくなくて、隣にある温もりにしがみついて擦り寄った。

…隣にある温もり…?

ぼんやりと目を開けて、一気に脳が覚醒した。
隣では、亮がすやすやと眠っていたのだ。
私は亮の腕枕で、抱かれるような状態でいる。
すなわち、身動きをとれば起こしてしまう。
混乱と恥ずかしさでこの状態から逃げ出したい衝動に駆られるが、なんとかそれを抑える。

ふと視線を上げると、亮の顔があった。
その端正な寝顔を見ながら、ぼんやり考える。
意識を手放す直前、確かに『愛してる』と聞こえた。
今まで、ちょっとしたすれ違いで、違う道を歩んできた。
しかし、今からは、そばにいても良いのだろうか。
昔のように、でも、昔とはちょっと違うポジションで。
胸に暖かいものが溢れてくる。
穏やかな寝顔を見ながら、そっと囁いた。

「私も、愛してる」

512:名無しさん@ピンキー
08/07/18 07:23:40 2FkkFx9Q
長々とすまんかった。
さて、逃げるか。













ちなみに、友人が狐につままれてた理由だが。
「あいつ、元カノにもあんな表情で頭なでてたことないぞ」
というのを考えていた。

ずっと早紀視点で進めてたから、どう組み込んだら良いのかわからなかったんだ。


えーと、初投稿だったんで、ひどい出来な自覚はある。
どなたかご指導ください。

513:名無しさん@ピンキー
08/07/18 10:18:39 9dSmj7lB
朝っぱらからGJなんだぜ
二人の会話とか距離感がいい感じだなあ

欲を言うなら片付け→行為あたりの展開がちょっと駆け足だったかも
そのあたりの掛け合いにワンクッション欲しかったかな

514:名無しさん@ピンキー
08/07/19 09:01:58 Y0H6+CCE
GJ こういう展開は嫌いじゃない

>どなたかご指導
なんというか悪いところがおれと同じだ>>513氏も言ってるように
展開が駆け足気味になるところとか
おれは描写を出来る限り多くするようにして改善してる

515:名無しさん@ピンキー
08/07/20 22:36:27 suv7Hv7+
保守

516:手紙~とある戦車兵の手紙~
08/07/21 11:56:23 IEYpqFue
君は元気だろうか?俺は今日も元気です。
朝から戦車に乗り、昼から書類を片づける。そんな生活です
演習場の花を見る度に、小学校時代を思い出します。あの時はホント悪かった。
総合火力演習のハガキは出しましたか?俺も参加します。
90式戦車(角ばってる奴)に乗ってます。
今度帰省した時、高校時代に言えなかった事を言うよ…
それじゃ、お体に気を付けて…
(ある隊員が幼なじみに宛てた手紙)



総合火力演習をネタに手紙を書いてみました。          

517:名無しさん@ピンキー
08/07/21 23:14:52 yRcyU/lq
>>516
総合火力演習が何だかわからんが、雰囲気はあっていいんじゃなかろうか

518:名無しさん@ピンキー
08/07/21 23:23:04 zZlzWT4+
>>516
ああ、これは立派な死亡フラg(ry

>>517
陸上自衛隊が富士演習場(?)で実施する1年に1度(?)の総合演習のこと
(戦車も主砲撃つ)

519:名無しさん@ピンキー
08/07/21 23:26:01 EwnlnoTj
>>516の「俺」も、幼馴染に主砲を撃つんですね、わかります

520:名無しさん@ピンキー
08/07/22 01:49:52 j4cR5kx8
>>518
演習じゃ死なないでしょw

あと最近の総火演は夏真っ盛りにやるから暑くてしんどそう…。

521:名無しさん@ピンキー
08/07/22 02:31:07 JaMeMvpq
ちょっと前にもロボSSが来たが、実はこのスレメカ好きが多いんだろうか。


いいぞもっとやれ

522:名無しさん@ピンキー
08/07/22 03:18:13 52nKRUJP
>>520
演習で死ぬ事はあるぞ。

523:名無しさん@ピンキー
08/07/22 08:13:09 bMQpGLcG
>>518
へぇ、そんなのがあるんだ。楽しそう……ってのは不謹慎か否か

幼馴染みは自衛隊、か。>>517はもちろん手紙だけじゃ終わらな(ry

524:名無しさん@ピンキー
08/07/23 01:06:16 waW78gIY
>>522
いや、不慮の事故はあるかもしれないけど死亡フラグは立たないでしょってこと。

525:名無しさん@ピンキー
08/07/23 01:44:21 v0jowlcz
そのまさかを引き寄せるのが死亡フラグだ

526:名無しさん@ピンキー
08/07/23 02:00:18 q6ks3HDK
死亡フラグ立てまくりといえばこいつ↓
<<これで戦争も終わる。おれ、基地に恋人いるんすよ。帰ったらプロポーズしようと 花束まで買ってあったりして>>
<<警告! アンノウン急速接近!! ブレイクブレイク!!>>
<<ええっ!?>>(ドカーン!)

大体、「次に会ったら、昔言えなかった事を言うよ」って台詞を送る事自体、死亡フラグそのものジャマイカ。
梶とか火事とか加持とか・・・。

527:名無しさん@ピンキー
08/07/24 00:42:17 ZjWAVNzq
とりあえずPJ自重

なんか平時で死亡フラグというのがピンと来ない件

528:名無しさん@ピンキー
08/07/24 00:44:21 QLX0jxbs
>>526
PJは登場時点から死亡フラグプンプンで何時死ぬの?まだなの?って感じだったわ

529:名無しさん@ピンキー
08/07/24 02:32:39 fphun95p
公式に死亡扱いされるまではどこかで生きていると信じていたのは俺だけでいい

530:名無しさん@ピンキー
08/07/24 21:23:52 J12h+D6v
>>529を見るまでどこかで生きていると信じていたのは俺だけでいい


531:名無しさん@ピンキー
08/07/24 21:29:53 BEC37QR2
PJって誰? ポイズン澤田ジュリー? けどそれだとPSJだよなぁ・・・
って思ってるのは俺だけでいい。

532:名無しさん@ピンキー
08/07/25 20:49:51 au+s5Wb4
URLリンク(www.vipper.net)

533:名無しさん@ピンキー
08/07/25 20:56:10 o7e/Lto5
>>532
良ければ詳細頼む

534:名無しさん@ピンキー
08/07/25 21:06:40 F+35Q1+Z
>>533
やすいひろさと 天然みるくパイ HINANO

535:名無しさん@ピンキー
08/07/25 23:11:35 o7e/Lto5
ありがとう。探してみるわ。

536:名無しさん@ピンキー
08/07/27 20:19:55 HTJf6Q4C
>>484を見て思い出したんだが「その台詞、幼馴染が照れ隠しで怒ってる感じで頼む」
と聞いた瞬間何も気にならなかったハ●ヒが可愛く見えた。
われながら単純すぎるというか「幼馴染」と付くだけで喜んでしまう性癖は卑しいな。

537:名無しさん@ピンキー
08/07/28 00:15:30 JjJVlZyx
最近このスレを発見したんだが、保管庫の作品多いね・・・
エロ、否エロ問わずオススメの作品あったら教えてくれないかな?

538:名無しさん@ピンキー
08/07/28 19:07:46 /uuJxzIr
下手に名前を挙げると作者自演乙という疑いが掛かるので
どういう幼馴染が好みなのか書いた方がオススメが出易いかと。

539:名無しさん@ピンキー
08/07/28 19:11:23 /Z6Kr/jd
>>537
俺は「Scarlet Stitch」が好き。
テンポが良くて読みやすかった。興味があったら見てみ。

540:538
08/07/28 20:39:49 /uuJxzIr
>>539
すまないことをした。

541:名無しさん@ピンキー
08/07/28 23:59:36 ivKVS1k6
537じゃないが、自分もちょっと質問。
保管庫をパッと見た感じでは中高生カップルが多いけど、
登場人物が大学生以上でお勧めの作品とかあるかな?

542:名無しさん@ピンキー
08/07/29 05:15:10 Ir8RcSmO
>>541

大学生以上というか、中高生じゃないってチョイスになるけど。
「梅子と孝二郎」はいいんじゃないかと思う。

つか、>>539で紹介されてるのも◆NVcIiajIyg氏の作品だな・・・
この人の作品は独特の味があって好きだ。

543:名無しさん@ピンキー
08/07/29 11:58:24 Ir8RcSmO
あ、ごめん、梅子と孝二郎は最初は中高生から始まるか・・・
まぁ、長いスパンで描いてるので中高生カップルの話とは違うと思うけど。

544:蒜
08/07/29 13:53:23 R/+VvZX9
続きじゃないけど投下




カチカチ・・・という音が部屋中に響く。
その部屋はどこか薄暗く、パソコンの明かりだけが部屋を怪しく照らしていた。
よく目を凝らせ見てみると部屋の壁中にオタク向けのポスターが貼られている。
そう_つまり彼はオタクなのだ。
彼の名前は益田雄二。典型的秋葉系オタクである。
しかし、彼は部屋を薄暗くしてパソコンをいじっているからと言って決してニートや
フリーターの類ではない。れっきとした高校一年生である。
さっきから彼はまじめな顔や、困った顔、そしてニヤニヤした笑顔を繰り返している。
今彼がやっているゲームは一般的に言う”エロゲー”である。
そんな彼を部屋のベッドの上から見ている少女が一人。
彼女は雄二の幼なじみの三崎奈津。さっきからモニターの画面を見てニヤニヤしている
雄二を訝しげに見つめている。いや、正確には睨んでいるのだろう。
しかし、ゲームに夢中な彼は気が付かない。
とうとう痺れを切らしたのか奈津が声を上げた。

545:蒜
08/07/29 14:01:45 GXpGIHMu




「あ~もうっ!お前はなにやってんだぁっ!!」
突如声を上げた彼女を不思議そうに見る雄二。そして彼はあくまで普通に答えた。
「・・・?なにってエロゲだけど」
「あ~もう、こんなかわいい女の子が部屋にいるってのに雄二はなんで放置して・・・、あ~なんていうの?
エロゲ?なんてプレイしてるんだよ!大体それは18禁のゲームだろうがっ!!」
「ふっ、そこ(画面上)に攻略したいキャラがいるからさ。それと、今時高校生がエロゲーをやるのはいたって普通だ。ユーザーの大半は高校生と言っていい。」
雄二は髪をいじりながら得意げに答える。
「キモいから!ものすごくキモいから!それと普通でもないから!さっきから見てればニヤニヤしたり神妙な顔したり・・・あ~もう!とりあえずキモいからやめなさい!」
奈津が怒鳴りながら言うと雄二はしぶしぶパソコンの電源を落とした。
一回またつけようとしたが奈津が恐ろしい殺気を放っていたためやめたようだ。
「で?何のようなんだよ。」




546:蒜
08/07/29 14:03:12 GXpGIHMu



「あのね?女の子が部屋に来たらお茶とか出して…話したり…いろいろあるでしょ?」
「いまさらお前と何を話すと言うんだ…」
彼はそういってふぅ・・・とタバコを吸うふりをした。
「・・・むかつくぅ~。大体あんたタバコなんて吸わないでしょうが」
「モチロンさ♪(ドナルド風に)」
やってやった。そう思っているのだろう。彼はwktkしながら奈津に期待のまなざしを送る。
しかし、彼女は素でこう言った。
「?なに?それ?」
そう奈津が言った瞬間雄二はorzの体勢を取り、ありえねぇ・・・と連呼し始めた。
「お前っ!全国的に一番有名でニコニコで恐れられている道化師を知らないのか!!!」
「知らないわよ。ニコニコ動画なんて見ないし。」
その瞬間、彼は近所中に聞こえるような声で叫んだ。
「この非国民がぁ!!!あれか?国歌も知らないだろう!!??」
「・・・?いくらなんでもそれは知ってるわよ。君が代でしょ?」
「がぁぁぁああああ!!!まったくわかってねぇ!!いいか?ニコニコの国歌といえばなぁ!!・・・コホん・・・、
消~える飛行機雲~♪僕たちはみお~くぅったぁ~♪・・・だろうが!!」
と彼は自分の胸に手を当てていきなり歌った。奈津は醜く太った豚を見るような目線を雄二に向けている。
しかし、驚く事なかれ。
これが彼らの日常なのだ。
しかし、こんな日常も・・・とある出来事をきっかけになくなってしまう。
かも? 続く?のかな?


~fin?~




547:蒜
08/07/29 14:07:31 GXpGIHMu
ネタ要素多くでスマソ。今は一成と椿の続きを執筆中です。

548:名無しさん@ピンキー
08/07/29 18:06:30 naIiis2j
GJ!期待と股間を膨らませつつ待ってる

549:蒜
08/07/30 22:55:03 Luq/fuGN
タイトル忘れた。タイトルはオタク少年と強気少女です。

550:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:03:34 QdurzpLB
ニ コ ニ コ で や れ

551:名無しさん@ピンキー
08/08/01 04:10:47 feFyf4Fi
保管庫読んでて、なんとなく量産型うに氏のサイトに飛んだら、
このスレでば公開されてない幼馴染ものがあった・・・
つか、このスレがたった頃の作品だからすでに数ヶ月前の作品なんだが、
このスレでは話題に上がったこともなかったし、なかなかよかったのでちょい紹介。

552:名無しさん@ピンキー
08/08/01 05:57:37 i3u0zF3c
>>551
すごく……イイです……

酉とかコテの人は検索するとたまにひっかかるよな。
俺もHP持ってるから検索してね、とか便乗して宣伝だぜっ

553:コロスケ丸
08/08/01 09:25:50 7iPJtR/1
初めまして。
幼馴染み物を書いたので投下します。
エロなしですので苦手な方はスルーお願いします。

554:当たりが出たらもう一本
08/08/01 09:27:41 7iPJtR/1
 教科書とノートにずらずらと踊っている数字に溜息をつきながら、俺はシャープペンをいじっていた。
 別に勉強が好きなわけじゃないし、優等生になりたいのでもない。
 それでも俺は、今日も勉強机に向かう。
 殆どポーズに過ぎないその格好は我ながら間抜けだが、そうせずにはいられないのだ。
 とんとんと軽やかに階段を駆け上がってくる足音を耳にして、俺はシャープペンをノックする手を止めた。
 足音の主は、何の躊躇いもなくドアを開ける。
「あー、また勉強してる」
 ひょい、と無造作に部屋へ入ってくる一夏に仏頂面を作り、「ノックしろよ」と注意するのはいつものこと。
 タンクトップにショートパンツという出で立ちの彼女は、セミロングの髪を揺らしながら、にひひと笑って
「だって面倒臭かったんだもーん」
 という一言で済ませる。
 幼稚園の頃から一緒の幼なじみは今更そんなこと聞きっこない。
 こっちが何をしてようが確認もせずに入って来られては、勉強でもしているしかない。
 
 たまたま向かいの家に住んでいて、たまたま二人とも鍵っ子だった。
 同い年の子供が親しくなる理由はそれで充分だろう。
 下手をすると、そこいらの兄弟よりも一緒に居る時間は長いかもしれない。
「だってクーラーあるし、部屋広いし、テレビおっきいし」
 傍若無人な幼馴染みは、そんな理由で俺の家に入り浸っている。

「それ今日の宿題?」
 背後から乗り出してノートを覗き込まれ、思わず胸元に行きかけた目をどうにか戻しながら頷く。
「後で見せて」
「却下。質問なら受け付ける」
「けちー」
 がたがたと椅子を揺すってくる一夏のおでこをぺちりと叩き、
「冷蔵庫にアイス入ってるから、それでも食べて大人しくしてろ」
 そう言うと一夏も現金なもので、きゃーっと叫びながら部屋を出て行った。
 階段を、転げ落ちてるんじゃないかと疑いたくなるような音を立てて降りていく一夏に溜息をついて、俺はシャープペンをくるりと回した。

 全ての動作が唐突で、いつまでたっても幼い一夏。
 一夏は多分、俺がどんな気持ちを抱えているかなんて気付いていない。
 だから俺は、この気持ちには気が付かないフリをして、やっていくしかないんだ。
 二人で居る時間が楽しいだけじゃなくなったのは、いつからだろう。


555:当たりが出たらもう一本
08/08/01 09:30:14 7iPJtR/1
 階下から持ってきたアイスを片手に、一夏はご満悦だった。
 一夏が好きなのはラムネ味のアイスバー。
 百円でおつりが来る割には大きくて、当たりが出たらもう一本貰えるというお得感がたまらないらしい。
 俺の部屋にあるテレビの前に陣取り、いそいそとDVDをセットし始める。
「俺、今勉強中なんですけど」
「してればいいじゃない、あたしコレ見てるから」
 お気に入りのビーズクッション、と言ってもそれも俺の物な筈なのだが、すっかり一夏の所有物になっている。
 それの中にもそもそと埋もれながら、すっかり観る姿勢に入っている。
「半額セールになってないのにそんなの借りてきて、豪勢だな」
「綾が貸してくれたの、すっごく面白いんだって。明日感想聞かせてねって言われたから、ちゃんと見ないと」
 こちらの事情を斟酌しない幼馴染みに観念してノートを閉じると、俺は椅子の向きを変え、テレビを見られるように座りなおした。
 

 映画は「新人の女優が凄く可愛い」というのが見所の、良くある恋愛物だった。
 時折二人で「ヒロイン可愛いね」「でも我が儘だ~」とか、好き勝手なことを言う。
 「映画を観る」と言うより、映画をネタに二人で話す感じだ。
 ただ、時折挟まれるラブシーンの度に少し気まずい空気が流れる。
 抱き合ったり、見つめ合ったり。
 映画の中の二人は臆面もなく恋愛に没頭していて、恋人同士の愛情確認に余念がない。

 うわ。

 思わず画面から目をそらしてしまった。
 画面いっぱいに大写しになるキスシーンに気まずさを覚えて、思わずあさっての方を見てしまう。
 随分念入りにやっているらしく、音まで聞こえてくるのが更に気まずい。
 ちらりと一夏に視線を落とすと、一夏も恥ずかしかったらしい。手に持ったアイスで目を隠していた。
それでも映画の内容は気になるらしく、アイスが時々左右に揺れている。
 心なしか一夏の頬が赤い事に気が付いて、俺は思わず息をのんだ。
今更テレビに視線を戻すことも出来ず、そのまま一夏をじっと観察してしまう。
 愛している、とか綺麗だ、とかブラウン管の中で男が囁く度に一夏は身じろぎをし、視線を泳がせている。
 現実にこんな言葉を言われたら、こんな反応をするのだろうか。
 ついそんな事を考えてしまって、余計に一夏から目が離せなくなる。
 すらりと伸びた素足がビーズクッションから覗いているのが、やけに目についた。
 もう二人の恋心だとか何だとかは頭に入ってこなかった。
 わざとらしく席を外したり、停止ボタンを押すことすら出来ずにない。
 二人とも、そのシーンが終わるまで微動だにも出来なかった。
 場面が暗転してモノローグに入ったところで、二人同時に息を吐いた。
「び、びっくりしちゃったね……」
 一夏は気まずい空気を誤魔化すようにあはは、と笑ったが、相当動揺していたらしい。
 目隠しに使っていたせいで食べることができずにいたアイスから、溶けた雫がぽたぽたと彼女の太腿に溢れ落ちた。
「ごめんっ! クッション汚れちゃう!」
 慌てて立ち上がった彼女の太腿を青い雫がつうと伝ってゆく様を見て、一瞬理性が消えかけた。
「ねえっ! ティッシュ取って、早く!」
 必死な一夏の声に我に返ると、俺はティッシュを箱ごと掴んで一夏の足下に跪いた。
「ちょっ……いいよ、自分で拭く!!」
 慌てた一夏の手元からアイスの雫が飛んで、俺の頬に掛かった。
「やだ、ごめんっ!」
「いいからじっとしてろ」
 そう言うと、一夏はぴたりと大人しくなった。
 そのまま、手に取ったティッシュで彼女の足を拭いていく。
 溶けたアイスは僅かな粘り気をもって彼女の足を汚していて、軽くなぞっただけではなかなか落ちない。
 足のすねから太腿まで、何度も往復させる。
 足が柔らかいので力加減が分からなくて一夏の表情を覗うと、一夏は困ったような恥ずかしがっているような表情でこっちを見下ろしていた。
何だか、自分が酷くいやらしいことをしているような気がする。
 そんな感覚に戸惑っていると、今度は溶けたアイスが彼女の手首を伝って床に落ちた。
「一夏、アイス食べろ、早く!」
 床を拭きながらそう言うと、一夏は慌てて手にしたアイスを舐め始めた。
 初めは上部を必死に舐めていた彼女だが、まずは下部から舐めていった方が良いと判断したらしい。
 下からアイスを舐め取ろうと、アイスを自分の顔より心持ち上に持ち上げた。


556:当たりが出たらもう一本
08/08/01 09:32:30 7iPJtR/1
 多分、状況が悪かったんだろうと思う。
 一夏は随分と焦ってたし、アイスはもう半分水だった。
 だから、アイスを上手く食べられなかったとしても一夏のせいじゃない。
 彼女がアイスを食べようとして、さっきの映画のキスシーンのような音がしたとしても、それは決して一夏のせいじゃない。
 それでもそれは、一夏の動きを止めてしまうには充分だった。
 もう一夏はどうして良いのか分からないほどに真っ赤になって、自分の鼻の少し先にある水色の塊を凝視していた。

  ぱた、ぱた。

 一夏の頬を、首筋を。
 少し蛍光色がかった色水が滑り落ちていく。
 これ、このままにしておいたら泣くな。
 長年の経験からそう判断し立ち上がると、俺はアイスごと一夏の手を掴んで引き寄せた。
 そのまま、一夏の手の中のアイスをがりがりとかじっていく。
 一夏の手には少し大ぶりなアイスも、俺の手に収まると丁度良かった。
 半分水になっていたアイスをものの十秒で完食すると、青い汁でべたついた一夏の手を放した。
「……あ、ありがとう」
 アイスの棒を握りしめながら礼を言う彼女をまともに見ることも出来ず、俺は汚れた手を洗うことを口実に部屋を出た。


557:当たりが出たらもう一本
08/08/01 09:33:25 7iPJtR/1
「どうしよう……」
一夏はへなへなとその場に座り込んだ。
 テレビの向こうでは一組の男女が、切なかったり悲しかったりする恋心をヒートアップさせている。
 足下にはラムネ味の小さな小さな水たまり。
 手にしたアイスの棒には『アタリ』と、茶色い文字で書かれていた。
 どうしよう、どうしよう。
 アイスの棒にアタリって書かれているのは嬉しいことの筈なのに、
 コレを持っていってコンビニのお兄さんに交換してくださいって言うの?とか、もう一本これと同じアイスを食べなきゃいけないの?とか。
 そんな疑問でぐるぐるして、全然喜べない。
「あたっちゃった、どうしよう」
 アイスを食べたのに身体が熱い。
 思わず火照った頬に手を当てると、ねとついた感触が指に絡み付いた。


558:名無しさん@ピンキー
08/08/01 09:38:21 7iPJtR/1
以上です。
このどさくさに紛れて押し倒して以下略な流れに持っていこうとしたけど
上手くいかなかったので未遂です。
おそまつさまでした

559:名無しさん@ピンキー
08/08/01 13:35:26 3bXsJtOA
GJ!
俺ちょっとコンビニの店員になってくるわ

560:名無しさん@ピンキー
08/08/01 17:17:47 1mm3WvVZ
エロいなぁ~

561:名無しさん@ピンキー
08/08/02 00:21:03 cxFDD3by
向かいの家もお隣さんも存在しない田舎住まいの俺涙目www

562:名無しさん@ピンキー
08/08/02 18:42:32 MgbYiQV+
未遂でも十分エロいです、はい。

ちょっとアイス買ってこよう、一人プレイだけどなw

563:名無しさん@ピンキー
08/08/02 18:47:31 QMjQdPC/
>>561
ただいま勉強中!というタイトルの4コマ漫画の
ヒロイン二人が男と女だったらどうなるか、と一瞬妄想した。

結構イケそうだった。

564:名無しさん@ピンキー
08/08/05 23:01:12 FuzoTcV5
理想の幼馴染

なじむ!実に!なじむぞ!! ……というくらい馴染んでいる幼馴染

565:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:20:45 85tGjmph
徒然なるままに打ち込んでいたらなんかできたので、
投下させていただきます。
この日本にこんな感じの幼なじみカップルがいる希望をこめて、
そして俺にはいない恨みをこめて、


「あー」
 白い天井をぼんやりと眺めて、七篠孝輔は奇声を上げた。彼はベッドに仰向けになって、
額を隠すように右腕を頭に乗せている。
枕の上には全開にされた窓がある。生ぬるい風が吹くたび、孝輔の視界上部に浮き上がった
レースのカーテンが侵入してくる。
BGMとしてセミの大合唱と時折思い出したようにガラス音を奏でる安物の風鈴があるが、
それはどちらかというと耳障りな騒音の部類に入る気がした。
「ねぇ」
 足元から声がして、孝輔は黒目だけをそちらに下げてみた。
 少女が腕を枕にして、うつぶせに彼のベッドにもたれている。うっすらと汗の膜が張った素足は
だらしなくカーペットに投げ出され、短いスカートから伸びた太ももの部分が朱を差して上気している。
声を掛けるまで読んでいたらしいティーンズ雑誌が、しわを寄せたシーツの上、乱雑に放り出されていた。
「なんだよ、茜」
 孝輔は若干不機嫌さを滲ませた声で言う。長年付き合いを続けてきた成果か、何か彼にとって
都合の悪いことを言われそうな、そんな直感めいたものを感じていた。
 高坂茜は猫が顔を洗うように、一度腕の中に顔を埋めてから、おどけた仕草でその血色のいい唇を尖らせた。
「――暇」
 彼女の予想通りの言葉に、孝輔は目線を天井に戻す。
 茜は孝輔に無視されたことを感づくと、更に唇を突き出して、目の前にあった彼の脚をゆすった。
「ねー、ひまー」
「うるさい」
「ひまー、ひまー」
「うるさいって」
「ひーーーー、まーーーー」
「だー、もうっ! わかったからっ!」
 その瞬間の茜は、まるでリードを目にした子犬だった。彼女の表情が期待でパッと輝く。
 しかし孝輔は足をばたつかせて茜の手を振り払うと、寝そべったまま彼女に背中を向けた。
「……ったく、このクソ暑いときに」
「もー、孝ちゃん!」
「はいはい」
「ねー、夏休みだよ? もう八月だよ?」
「だから?」





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