ちりとてちんでエロパロ 第三席at EROPARO
ちりとてちんでエロパロ 第三席 - 暇つぶし2ch239:名無しさん@ピンキー
08/04/05 01:48:11 wnuH/MMJ
空気読まずぶったぎり投下失礼します。
それぞれのちりとて見れない悔しさからムシャクシャして書きなぐりました。
エロなし。落ちなし。五兄妹のgdgdギャグ。です。

240:真夏の徒然五兄妹その1
08/04/05 01:49:13 wnuH/MMJ
―続いて大阪の気温です…日中の平均気温は…
徒然亭草原は片側の耳でニュースの気象情報を拾いつつ、電話口に立っていた。
『そういうわけで3、4日明けるけどな。時たまでええから様子覗いたってくれや』
師匠・草若は磯七の散髪屋組合の慰安旅行に便乗して夕日ケ浦温泉へ行っている。
ちゃっかりとした性格は昔とちっとも変わってない。苦笑しつつ草原は愛妻に声を掛けた。
「今日ちょっと師匠の家寄ってくるで、昼は颯太と適当に済ましといてな」

平成6年8月某日。
その年の最高気温を記録することになる炎天下の中、
草若邸を訪ねた草原は早速この日最初の頭痛を覚えた。

241:真夏の徒然五兄妹その2
08/04/05 01:49:45 wnuH/MMJ
「なんでおまえが指図すをねん!」
「なんやとコラ!」
このクソ暑い中、飽きもせずに二番弟子と三番弟子が掴み合いの喧嘩の真っ最中。
真っ先に皮肉を言う筈の四番弟子はというと、板の間に突っ伏している。
「ソモソモーコレーワータイラノトモモリー」
物真似上手な九官鳥の声から察するに、船弁慶の稽古の途中で暑さにぶっ倒れたらしい。
「たらいまもどりまひたあ~」
両の手から買い物袋をぶら下げて帰宅した末っ子弟子は、
今にも頭から湯気を吹きそうなほど真っ赤な顔に汗を滴らせ、へろへろと崩れ落ちた。
ほとんど日射病一歩手前である。

242:真夏の徒然五兄妹その3
08/04/05 01:50:16 wnuH/MMJ
「若狭!!大丈夫か!?」
「草々!おまえこんな昼日中に喜代美ちゃんを買い物行かせたんか!!」
「やめえっちゅうねん!!!」
またもや取っ組み合う弟たちの頭へ一発ずつ拳固をくれ、妹を助け起こす。
「若狭、後はかたしとくからさき風呂浴びてき」
幾つになっても手が掛かる弟妹たちに頭を痛めつつ、
面倒見の良い長兄は取り敢えず食材を冷蔵庫に詰め込むと、
表通りを行くキャンデー屋を呼び止めに、再び射すような陽光の中へ出て行った。

冷菓を手に門をくぐった草原はやけに静まり返っている邸内を不審に思った。
先程まで取っ組み合いをしていた次男と三男は、何故か仲良く肩をそばめて息を詰めている。
見るとくたばっていたはずの四男までむっくりと頭を上げている。
(なんや…?)
弟たちの視線を辿って漸く合点がいった。と同時にその対象に目を奪われてしまった。
ふぅっという満足げな溜め息。密やかな衣擦れの音。
洗い髪にタオルをあてて佇んでいる、湯上がりの妹弟子の姿があった。

243:真夏の徒然五兄妹その4
08/04/05 01:50:50 wnuH/MMJ
襟ぐりの大きく開いたシャツはサイズがあっていないのか
うなじから肩までの白い曲線が丸見えになっている。
下にはスポーツブラを着けているらしいが、はち切れんばかりの豊かな乳房を覆うには面積が足りず、
窮屈そうにくい込んでいるのがシャツの上にくっきりと見えてしまっている。
思いきりよく括れた腰と、形のよい尻を包んだハーフパンツの下から
真っ白な太股とふくらはぎが伸び、若々しい姿態を一層眩しいものにしていた。
(ああそうやった)
ふだん垢抜けない格好でドタバタ走り回り子供っぽさの抜けないこの末っ子は
実は小柄なわりになかなかグラマラスな身体の持ち主だったりするのだ。

とはいえ、二十歳の乙女の無防備な姿を
独身の三十男たちの前にこれ以上晒しておくのはあまりにも酷だ。
なにより草原自身の目の毒だ。
スウッと一息吸い込み些かわざとらしい大声で皆に呼び掛けてみる。
「差し入れや!アイスキャンデー買うてきたで!」

244:真夏の徒然五兄妹その5
08/04/05 01:51:32 wnuH/MMJ
「わあ!草原にいさんありがとございます」
いそいそと嬉しげに卓袱台へついた末っ子とは対照的に、弟たちはなにやら不服げな顔を揃える。
中にはあからさまに「チッ」と舌打ちを鳴らした輩もいるようだが(恐らく四男)
…まあ聞かなかった事にしよう。
ともかく弟妹全員にキャンデーを手渡した長兄は、
師の留守を無事に守りおおせた充実感でいっぱいだった。
…筈だった。

「…んっ…んくっ…ぅん…」
白く太い棒が小さな口いっぱいに押し込められる。
柔らかな頬の内側できゅっと締めつけ、滴る液を白いのどがこくんと飲み干す。
飲み込みきれず、溢れ出した白い液体を追って赤い舌がちろちろとねぶる。
伏せた睫毛が揺れ、うっとりとした目元は朱をおび、形の良い眉は悩ましげに顰められ…

(だからなんでそないややこしいキャンデーの食いようさらすんじゃ!!!!)
叫び出しそうになるのをすんでの処で堪えた草原は、
本日何度めかの頭痛を覚えつつ男兄弟たちに目をやった。

245:真夏の徒然五兄妹その6
08/04/05 01:52:14 wnuH/MMJ
案の定、そこには
自分のキャンデーが溶けるのも構わず、あんぐりと口を開けたまま固まる二男。
鼻の下を伸ばしウヒョヒョヒョ…とだらしなくにやけっぱなしの三男。
ムッツリと黙り込み、舐め回すようにジロジロ見つめている四男。
「…どねしはったんですか?にいさんらぁは?」
男四人の異常な視線にやっと気付いたのか、ふいっと顔をあげて若狭が聞いてくる。
「あ?あ、ああ、ほんまにおいそしーに食べんのやな、思てな」
動揺する弟たちの代わりに答えてはみたのだが。
「噛んでますよ草原兄さん?一体なにを考えてたんですか?」
「四草!おまえこそさっきからなに喜代美ちゃんのことジロジロ見てんねん!」
「人の事言えんのか?小草若!やらしい目ぇで若狭見てたやないか!」
「なんやと?!やらしいのはどっちやこのムッツリスケベ!!」
暑さも手伝ってか互いに互いを責め合う男たち。
誰もが妹弟子を「そういう」対象で見ていた後ろめたさを隠すため、
必要以上に声が大きくなる。
「ちょっと!やめてください!!ケンカせんといて…」
「…あ」

246:真夏の徒然五兄妹その7
08/04/05 01:52:51 wnuH/MMJ
 ぽた
わけもわからず立ち上がりかけた若狭の手から、溶けかけのキャンデーが落ちた。
よりによって胸の谷間と股間に。
掴み合ったまま硬直する男たち。
(…おい、どーする?)
(誰かなんか言うてフォローせい!)
(できるか!この状況で!)

「…ひどい…あんまりや」
若狭の顔が悲しげに歪む。
「…まだ全部食べてへんのにぃ~!」

「…また新しの買うたるから、さき着替えぇ」
脱力感に襲われながら、なんとか長兄の威厳をもって草原は命じた。
「ほんまですか?ほんまに買うてくれなるんですか?」
ぱっと顔を輝かせる若狭。色気より食い気のお子さまかおまえは。
「まだまだ子どもやな若狭は」
「身体は充分おとななんですけどね。」
「だからそーゆーやらしい言い方やめ!」
着替えに内弟子部屋へ戻る末っ子を、どこかほっとした表情で見送る兄弟子一同。
いつの間にか、日も傾きかけ、
今年一番の真夏日は漸く終わりを告げようとしていた。


『で、どや?あいつらは。仲良うやってるか?』
なんだかんだで心配性の師の電話に、苦笑しつつ一番弟子は答える。
『ええ。いろいろありますが、まあ仲良うやってますよ。』


終われ

247:名無しさん@ピンキー
08/04/05 02:02:22 aCL+OXr3
>>239->>246
あ、リアルに久々立ち会えました。
エロなしといいつつ、エロいですがな!GJ!!

248:名無しさん@ピンキー
08/04/05 02:04:18 aCL+OXr3
>>239->>246
リンクこれでおkかな

249:名無しさん@ピンキー
08/04/05 02:12:15 12CWJFH/
>>239
GJ!こういうノリ大好きだ。

250:名無しさん@ピンキー
08/04/05 02:21:17 R6AQOc7j
>>239
そうそうそうこの感じ!!!懐かしの内弟子時代!
やっぱりこの雰囲気いいね。大好きだ~!
無防備無自覚のエロ爆弾な若狭可愛い。
というわけでめっちゃGJです!!

251:名無しさん@ピンキー
08/04/05 06:51:55 K3EB7Yso
面白かった!GJです

本編が終わったことで妄想が膨らませ易くなったね
居なくなった職人さん達、帰ってこないかな

252:名無しさん@ピンキー
08/04/05 09:00:43 wnuH/MMJ
DVD発売にスピンオフとまだまだちりとてビームは続いてるんで、
そろそろ帰ってきてくださるんじゃないかなと期待。

GJありがとうございます。
自分のアホ文が、少しでも職人さんの呼び水になってくれれば嬉しいです。

253:名無しさん@ピンキー
08/04/05 09:46:38 /sSyRd39
GJ!!

凄く楽しめました。
久々の5兄妹!


254:名無しさん@ピンキー
08/04/05 10:28:08 is60i1ua
>>239
〆の『終われ』に噴いたw
こういう投げっぱなしなノリ大好きw

255:名無しさん@ピンキー
08/04/05 11:51:49 Qw4vhGxM
>>239
内弟子時代、なつかしくて楽しかった!
あのクールな飼い主さえぶっ倒れる暑さで平米師匠は大丈夫なのか心配になったw

256:名無しさん@ピンキー
08/04/05 12:40:57 SSUH1FeS
>>239さんGJです!
ほのぼのエロ、ぐっときましたw

続いて投下させてください。
以前小草若×若狭を投下し、鼻毛を書くとか抜かしてた者です。
鼻毛が予想以上に書きにくかったため、痴漢ものに変更しました。

痴漢×若狭(年季開けして間もない、タレントの仕事が入り出す前)です。
あんまりエロくないですが。




257:痴漢×若狭 メトロに乗って 1
08/04/05 12:41:50 SSUH1FeS
若狭は京都に向かっていた。
小さな会場で催される半年に一度の反物市での営業の仕事が入ったからだ。
有り難いことに女性落語家はこういうとき重宝される。

マネージャーは今日は不在で、勿論車など用意されていないため、若狭はひとりで快速急行に乗り込んだ。
土曜日の朝とあって、なかなか車内は混合っていた。

(うわぁ…ぎゅうぎゅうやなあ…)

小さな体は人込みに流されて、車内の端っこに追いやられた。
ほぼ身動きのとれない状態も仕方ないと高を括り、目的地まで我慢することにした。
暫く電車に揺られながら今日の高座の内容を確認していた若狭だが、急に腰あたりに人の手が触れた。

(え…?)

驚いて身を堅くした若狭の腰を、何者かがゆるゆると撫でまわす。

(ち、痴漢!?いや…どねしよ…)

周りに助けを求めようとも、恐怖で声が出ない。
しかも次の停車駅まではまだだいぶ時間がある。

(助けて…誰か助けて!)

心の叫びは誰にも届かない。
腰を撫でていた手は段々下へ伸び、若狭の柔らかな尻を揉みしだきだした。
ジーンズ越しとはいえ、男の手のひらの熱さが伝わってくるのがなんとも気持ち悪い。
耳元にも熱い吐息がとぎれとぎれにかかる。

258:痴漢×若狭 メトロに乗って 2
08/04/05 12:42:30 SSUH1FeS
(どねしよ…気持ち悪いし、恥ずかしい)

恐怖で抵抗出来ない若狭に気を良くしたのか、男は体制を変えて若狭にぴったりくっついた。
後ろから抱きすくめられる形になり、今度は腹部を撫でられる。
腰には男の熱を帯びた肉棒が布越しに擦り付けられている。
するりと男の手が服の中に侵入し、直に若狭の弾力のある肌に触れた。
汗でしっとり濡れた手のひらが腹部をくすぐるように這い回る。

(もういや…誰か、誰か気付いて!)

助けを求めるように目を見開くが、目の前は壁。
誰も気付きはしなかった。
そうこうしているうちに、男の手がゆっくりとショーツの中へと進んできた。
そしてすぐさま指がクリトリスに触れる。
恐怖とは裏腹に先程からの見知らぬ男からの愛撫にそこはすでに膨れはじめていた。
男は鼻で笑い、若狭のそこを中指でコリコリと刺激した。

「ん……っ!」

突然の刺激に、若狭は思わず声を漏らしそうになった。
唇を噛み締めてなんとか堪えたが、涙は今にも溢れ出しそうだった。

(知らん人に触られて感じるやなんて…私、変態や…)

そんな若狭に、男は構わず刺激を与え続けた。
膝はガクガク震え、立っているのがやっとの状態だった。

259:痴漢×若狭 メトロに乗って 2
08/04/05 12:43:39 SSUH1FeS
男は指を更に下へと進め、すでに濡れている秘部に辿り着いた。
柔らかな肉が付いたそこに指を滑らすと、濡れそぼったそこは難なく男の指を受け入れた。

「ひ…っん…!」

くちくちと淫らな音をたてながら男の太い指が中を掻き混ぜる。
気がつけば3本もの指が立て続けに動いて若狭の中を犯していた。
もう片方の手で胸を揉みしだかれ、時たま耳や首筋を舐められる。

「あ…っん…ふ…」

若狭はただ、堪えて声を押さえるしか術がなかった。
気が遠くなりそうなぐらい長い時間がすぎていた。

『次は北大路、北大路です』

車内アナウンスが流れた瞬間、男は身を引いた。
そしてそそくさと電車を降りていった。
―助かった。
そう思い、溜め息を付いた矢先。

「ネェちゃん、俺も頼むわ」

若い男が体をぴったりと寄せ、耳元で囁いた。

260:名無しさん@ピンキー
08/04/05 12:45:20 SSUH1FeS
以上です。
最後、タイトルミスりましたorz
あんまり長いとアレかな~と思いましたが…ちょw短すぎだろこれww
楽しんで頂けたら幸いです。

261:名無しさん@ピンキー
08/04/06 06:45:46 pVRVe4EJ
乙!
御堂筋線とか阪急神戸線とか身近な「痴漢頻発線」を
想像してもたよ

262:名無しさん@ピンキー
08/04/06 10:27:51 XsQs9E3C
>>256
GJ!GJ!GJ!GJ!がっつり痴漢えろktkr
オチがブラックすぎて良いね!
鼻毛も底抜けに期待してます。

263:名無しさん@ピンキー
08/04/06 19:25:11 WaoNaiyz
>>260
痴漢電車イイヨイイヨ~!GJ!
ああいう背の低いむっちり系おとなし顔の娘は狙われやすいらしいしw
これからは兄弟子の誰かに護衛してもらわんとね。

264:名無しさん@ピンキー
08/04/06 20:15:17 3nWDIfPj
痴漢から守るために密着した兄弟子がだんだんハアハアしてきて……
援護のはずが痴漢に早変わりw

265:名無しさん@ピンキー
08/04/06 22:23:54 fASQF4uk
えー、流れぶった切らせて頂きます、すいません。創作は初投稿です。
四草×若狭+小草若(共犯)、みたいな感じ。
時期的には24~25週。本編深読み。

若狭→草々が好きな方には、拷問以外の何物でもありません(陳謝)。

関係は持ちますが、エロ描写は皆無と言っていいでしょう。
書けませんでした。申し訳ないが、各自で脳内補完して下さい(ぇ)。

266:夕陽の国  1 予兆
08/04/06 22:25:42 fASQF4uk
高座に復帰した小草若は、若狭とともに大阪に戻ることになった。
電車に座ると、不思議に思ったことを尋ねてみた。
「若狭。いっこ聞いてええか」
何だろう、と若狭に緊張が走る。
見開いた目がおかしくて、小草若は思わず笑った。
「大したことちゃうねん。ただな、何でかなー思ただけで」
「何で、若狭は、俺が『草々にだけは継いで欲しない』思てる、て
 そない考えたんかな、て……ちょっと気になっただけや」
「え?!」
若狭は、ちょっとしたパニック状態になった。
それを説明しようとすると、草原が草々に襲名を勧めたとか、
草々が一度は襲名を受け入れたとか、もろもろを話さないといけない。
「いやいやいや、何やようわからんけど、細かいことはええねん。
 ただ、草々が何か思てたんかな、て……気ぃ遣わせたかな、て思たんや」
「草々兄さんは、そんな細かいこと考えとらんでぇ。
 小草若兄さんに継ぐのが一番や、とは、いっつも言うてますけど」
「そしたら、何で、『草々があかん』なんて思たんや」
「いえ、四草兄さんが……」
若狭の口から、意外な人物の名前が漏れ、小草若は目を丸くした。
小草若の反応に気付かず、若狭は、独り言のように続けた。
「四草兄さんが、あんなこと言いなったの何でやろ? 考えてたら、
 もしかして、そんな風に思とんなるんやないやろか、て気付いて……」
ここまで言って、小草若の視線に気付いた若狭は、慌てて手を振った。
「ああああの、気にせんで下さい! 別に、草々兄さんが草若襲名することに
 なりかけたとか、そういうわけやないですさけ!!」
言うてるがな、と突っ込むのはやめておいた。
小草若が気になったのは、そんなことではない。
常に草々のことで頭がいっぱいで、草々の立場からしか物事を見て
いなかったような若狭が、四草の言動について考えた。それが意外だった。

今思うと、それは予兆だった。

267:夕陽の国  2 隙間
08/04/06 22:27:29 fASQF4uk
大阪に帰って、ひとしきり再会の喜びに浸った後、一門は「寝床」で飲んだ。
「若狭、ウーロン茶」
四草が言うと同時に、若狭はウーロン茶を四草のグラスに注いでいた。
「何や……珍しいな」
「四草兄さんにも……いっぱい迷惑かけたでぇ」
若狭の言葉に、小さく笑って首を振る四草。
が、次の瞬間、つまみの追加を言いつけていた。
自分の注文のためにぱたぱたと動き回る若狭への眼差しに気付いた者が
いようとは、四草にしては迂闊にも気付いていなかった。

(……思た通りや)
弟弟子と妹弟子の様子を見て、小草若は確信に至った。
そもそも、四草が若狭を思っているのではないか、という疑いはあった。
算段も笑顔も優しさも苛立ちも……四草が全ての感情を見せた唯一の女。
それが若狭だった。四草自身は、長らく自分の感情に気付いていなかったが。
年越しそばを奢ってくれたときに、さり気なく聞いてみたが、四草は
「何でそんなことを思いついた」と言わんばかりの顔をするだけだった。
草々を思い続けている若狭を愛するなど、リターンのない行動には
無縁でいようとするのが、四草のやり方だ。しかし
(もったいないなぁ……)
と、小草若は思う。どんなに自分が頑張っても、決して入り込めなかった
若狭の心の隙間に、四草はいつしか根を伸ばしていた。
それに気付かず、四草は、自分の心に生まれた愛情だけに気付いて、
穏やかな目で若狭を追っていた。

268:夕陽の国  3 発端
08/04/06 22:30:10 fASQF4uk
翌日、草々と若狭が暮らす草若邸を訪ねた小草若は、
久々にためらいなく居間に上がった。
草々と小草々は留守で、若狭は料理をしていた。
「ほんまは、二人とも今日は要らんのですけど、私がおらんときもあるさけ、
 こうやって時間あるときに作り置きしとるんです」
「そうか。……ちょっと頼んでええかな」
このとき、小草若は、我ながら名案が浮かんだ、という思いしかなかった。
「俺の夕飯の当番、たまに代わってくれへんかな。
 四草と交代で作ってんねんけど、俺、バイト入れながら落語稽古せんと
 あかんし……そら、みんなそうやねんけど、とにかく……
 四草のメシ、頼むわ。出来たら今日、早速」
若狭は、きょとんとした顔をし、それから笑って言った。
「ほしたら、今からこれ、持って行きましょか」

小草若が若狭を伴って四草の部屋に戻ると、四草はちょうど、
高座が終わって帰宅したところのようだった。
若狭は、さっと部屋に上がりこみ、持って来た煮物を広げた。
四草のとがめるような視線を気にも留めず、小草若は明るく
「ほな、若狭、あとよろしゅう頼むな。
 俺はバイト行って、その後、袖から高座見てくるし、遅なるわ」
「小草若兄さ……」
四草の呼び止める声を気にも留めず、小草若は笑って出て行った。

269:夕陽の国  4 崩壊
08/04/06 22:32:24 fASQF4uk
(……余計なことを)
四草は内心で舌打ちをした。
小草若が、若狭への思いを見抜いているのは、何となく感じていた。
だからこそ、歯止めになると安心していたのに、
まさか、部屋に若狭と二人きりにさせるとは思ってもみなかった。
(無理強いは、しとない。そやけど……止まらへん)
「あ! お味噌汁、お味噌汁でも作りましょうかね?」
明るい声が、四草の理性を失わせた。
若狭の背中に、腕を伸ばす。
「四草兄さん?」
そのまま、若狭の全体を腕の中に収めてしまった。

若狭は身動きをしない。
自分で行動を起こしておきながら、そんな若狭に四草は苛立った。
「何で抵抗せえへんねん……どないなっても知らんぞ」
掠れ声で言った瞬間、若狭の腕が、そっと四草の腕を抱きしめた。

270:夕陽の国  5 応答
08/04/06 22:35:11 fASQF4uk
小草若から、「草々兄さんにだけは襲名して欲しない」という結論に
辿り着いた理由を聞かれたあの時、若狭は、夕方であることに感謝した。
四草の名前を出し、四草のことを考えることで、小草若の感情に気付いた。
その過程を振り返った時の、自分の感情を思い出して、顔が熱を持った。
(四草兄さんは、小草々君が言うような、悪い人やない、優しい人や。
 草々兄さんが破門になったときかて心配しとんなったし、私が落語で
 悩んで相談に行ったら、お手本を見せてくれなるし……。
 その四草兄さんが、何で? 何で自分が襲名したいなんて……)
入門順が近いために稽古を見てもらうことも多かっただけに、
若狭にとって、いつしか四草は身近な存在になっていた。
だから、自分一人で考えた時は気付かなかった。

四草のことを、一生懸命に思っていた自分に。

今、後ろから回された腕に、記憶が蘇る。
結婚当初、草々と喧嘩して落ち込む自分を抱きしめた腕。
戸惑ったものの、決して嫌ではなかった。
そんな自分に余計戸惑って、草々を必死に追いかけた。
ずっと私が好きやったのは、草々兄さんなんやから。
だけど……

四草の唇が、首筋に触れた。回された腕の力は、決して強くない。
逃れようと思えば、いくらでも可能なのに。
「何や……動けへんのか?」
耳元で聞こえる四草の声。違う。動けないのではなく、動かないのだ。
自分の中にある思わぬ感情に、声が出ない。
若狭は、返事の代わりに、振り返って潤んだ瞳を四草に向け、
それから黙って彼にもたれかかった。

271:夕陽の国  6 流転
08/04/06 22:37:04 fASQF4uk
こんなにも優しく女を扱った記憶が、四草にはない。
そのくせ、こんなにも相手を求めた記憶もなかった。
若狭の全てを自分のものにできた。
求めても無駄だと諦めていた存在だったものを。

そして、若狭もまた、四草の温もりに、ずっと自分が求めていたものが、
これだったのだと知った。間近にある四草の顔を見て、若狭に笑顔が浮かぶ。

その時だった。

覆い被さっている四草が、突然乱暴になった。
若狭の腕を押さえつける力が強くなり、乳房を摘む指がきつくなり、
脚を強引に広げさせるようになった。
「し……四草兄さん……?」
呼びかけても、四草は若狭と目を合わせない。若狭は混乱した。
二人、同じ思いを抱いたと言うのは錯覚だったのだろうか。
関係を持つに及んだのは、ただの四草の気まぐれなのか。
一度、そんな疑いが生まれると、咄嗟に抵抗してしまう。
だが、力で敵うわけもなく。
「……いや……っ!」
若狭の悲鳴にも、四草は耳を貸さない。
ただ、無言で、淡々と若狭を支配した。
四草の豹変振りについて行けないまま、若狭は、その指に翻弄された。

272:夕陽の国  7 視線
08/04/06 22:40:11 fASQF4uk
いつしか、意識を手放していたらしい。
若狭が気付いた時には、四草はこちらに背を向けて座っていた。
四草の背中を、窓から差し込む西日が照らしている。
若狭は、自分の頬が濡れていることに気付き、そっと手の甲で拭った。
四草のものらしきモノトーンの布団が、若狭の体を覆っている。
その温かさは、確かに、四草が優しく触れた時のものだった。
「……四草兄さん」
四草の意図がわからぬまま、若狭は静かに呼びかける。表情が見えない。
若狭は、起き上がると四草に近付いた。が
「寄るな……!」
激しい叫びに、伸ばした手が止まる。四草は、相変わらず若狭の顔を見ない。
「四草兄さん、何で……」
「ええか、若狭」
押し殺した声に、若狭は目を見開く。
「お前は、夕飯の準備しに来ただけや」
え、と息だけが若狭の口から漏れた。四草は、静かに続ける。
「夕飯作りに来たったのに、このどうしようもない兄弟子に、
 無理やり迫られて、犯されたんや。
 女の力では……ろくに抵抗も出来んかったんやな」
「何で!」
若狭は思わず叫ぶ。
「何でそんなこと言うとんですか!」
掛け布団だけを身に纏い、四草の正面に座り込む。
四草の強い目が、若狭を捉えた。その目を知っている、と若狭は気付いた。
あの時と、同じ……。

273:夕陽の国  8 刹那
08/04/06 22:42:29 fASQF4uk
「何で四草兄さんはそうなんですか!
 自分で抱え込んで、自分だけが悪う言われるようなこと言うて……!
 襲名問題の時かて、みんなに酷い責められて……何で、四草兄さん……」
若狭は次第に涙声になる。
草々に責められても黙ったままの四草を、見ているのがつらかった。
今回もまた、悪役を一人で引き受けようと言うのか。
「けど若狭。お前に、草々兄さんの家族幻想、壊せんのか」
四草の言葉に、若狭は草々の顔を思い浮かべる。
その昔、恋しくて恋しくて仕方なかった存在。
いつしか、恋い慕う相手ではなく、「家族」らしくなり、そして……
小草々がやって来て「師匠とおかみさん」の関係になった。
草々はむしろ、その関係に満足しているように見えた。
「おかみさん」を求め続けた、家族が欲しいと願い続けた草々……。
若狭は、ぶるんと頭を振って、思考を止めた。
「……今更、何言うとんなるんですか」
若狭の言葉に、四草は小さく笑う。
「そやな。でも、お前は草々兄さんをほっとけへん……やろ?」
どこまでも深く見通した四草の言葉に、若狭の目から涙が溢れる。
自分が四草を求め、四草を満たしてやりたくても……
「家族」の情としては、「草々一門」を壊せない。
「……ごめんなさい……」
「布団で涙を拭いたり、鼻をかんだりはやめろ」
若狭は慌てて布団を手放した。拍子に、白い体が露わになる。
今更ながら戸惑い所在なさげな様子を見せる若狭に、
四草は思わず笑みを漏らした。
そういうところは、初めて惹かれたときから、少しも変わらない。
手を伸ばし、指の腹で涙を拭ってやる。
「……泣くな喜代美」
言うと、喜代美の目から、さらに涙が溢れた。
次の瞬間、彼女は四草の胸にかじりついてきた。
震える体を抱きしめてやる。温かく、柔らかく、心地いい。
離れがたく思いながらも、この温度が刹那的であることを、
四草は自らに言い聞かせていた。

274:夕陽の国  9 陽光
08/04/06 22:47:19 fASQF4uk
夜、小草若が帰宅した時には、四草は夕飯を食べ終えたところだった。
室内には、四草の布団が出ている。
それを見ると、日頃、四草から「頭悪い」と言われている小草若だったが、
留守の間に何が起きたかわかる。そもそも、そのつもりで外出した。
だが、逆に四草は憔悴していた。
彼の出生を思えば、実の親と同じ行為に及んだというのは、
思いを秘めたままでいたより苦しいのかもしれない。
常に自分を励ましてくれた弟弟子と、自分を迎えに来てくれた愛しい妹弟子。
二人のために、とこの場を離れたことが、かえって残酷だったかもしれない。
「……四草」
小草若は呼びかける。
「すまんかったな。その……メシ当番サボって、長いこと外おって……」
四草は、静かに小草若を見据えた。
この洞察力に長けた男は、小草若の侘びの真実を、確実に理解している。
「小草若兄さんが、謝る必要はありません」
起こった出来事を見抜かれていると悟ってか、四草は誤魔化しを言わない。
「出て行った後で何が起ころうと……
 小草若兄さんの知ったこっちゃないでしょう」
「そうか」
小草若は、それ以上追求しなかった。
「そやけど、一人で何でも抱え込むんとちゃうで。
 しんどなったら、俺に言え、な?」
四草は小さく笑った。どこまでも、若狭と小草若は似ている。
そんな陽の光のような性格を翳らせたくないものだと、四草は思った。


【終】

275:265-274
08/04/06 22:51:57 fASQF4uk
すいません、初投稿なので、文章の加減がわからず……(汗)。
確認画面が出ると思って安心してたら、連続投稿の時は出ないんですね。
おかげで、1記事辺りの分量が多くてすいません。
しかも前振りが長かった……(大汗)。

四草×若狭が好きなのもあったんですが、第一席の時から「小草若×若狭」を
見守る四草が出て来る話は結構あって好きだったので、
ふと「小草若と四草のポジションを入れ替えたら?」
と思ってしまったのが運の尽き。四草と若狭が二人でいるシーンより、
小草若の出番が多いではないですかorz。

お目汚し失礼しました。

276:名無しさん@ピンキー
08/04/06 23:49:04 9U9x4j3v
なんぞこれ!!GJすぐる!!

277:名無しさん@ピンキー
08/04/06 23:49:46 s2LbFDpr
GJ!おもしろかったです

ちょっと聞いてみたいんだけど、ここの書き手さん達ってみんなサイトもってるの?

278:名無しさん@ピンキー
08/04/06 23:54:16 8FUls1vO
>>256です。
皆さん感想ありがとうございました。

>>264さんのアイデアをいただいて、今度こそ鼻毛を書きたいのですが…よろしいですか?
そして今度こそがっつりなエロを書きたいorz
挿入なしのほうがエロい気がするのは俺だけでしょうか。

279:名無しさん@ピンキー
08/04/07 00:18:36 FYNg7yPq
>>275 GJです!切ないねえ。四草は苦悩がよく似合う
>>278 鼻毛バッチ来い!

280:名無しさん@ピンキー
08/04/07 00:19:46 FYNg7yPq
>>275 GJです!切ないねえ。四草は苦悩がよく似合う
>>278 鼻毛バッチ来い!

281:名無しさん@ピンキー
08/04/07 01:16:29 Bdd6d9sB
>>275 泣くな喜代美、がGJ!!

282:名無しさん@ピンキー
08/04/07 01:29:43 +ZNTlmwB
>>275 GJ!
四草はギャグならムッツリスケベ、シリアスなら鬼畜か苦悩がぴったし。
やつは普通に女と幸せになれんのか・・・涙

>>278
>>264のアイディアで鼻毛ってwww 楽しみにしてます

283:名無しさん@ピンキー
08/04/07 07:16:54 sk6YJUH+
すみません痴漢電車、自分も>>264さんから妄想です。
微妙に被り気味でほんますんません。
小草若→喜代美内弟子時代バージョン。エロくないです。しかも冗長。

284:小草若→喜代美 1
08/04/07 07:18:53 sk6YJUH+
それは暑い暑いある夏の日のこと。

小草若は、天神近くの懐かしの我が家へと足を向けていた。
仏壇屋のおばはんにちょいと顔を見せて、いつもの最高級線香を買う。
「なんや仁志、今日は朝からめずらしいやん。仕事は?」
「ああ、今日は久しぶりに休みなんや。売れっ子はつらいでえ、ホンマ」
「ホンマこの子は…言うとり。家帰るんか?」
「休みの日くらいおかんに線香あげたらなな」
師匠が復帰するまでは、こそこそと隠れて線香をあげるしかなかったから、
おおっぴらに線香をあげられるようになったのは本当に嬉しい。
それに…あの可愛い笑顔も見られると思えば、心が浮き立つのも仕方ない。
「なんやの嬉しそうににやけて。気色わるいなあ。」
おばはんのいつもの軽口に見送られて、足取りも軽く仏壇屋を出た。

師匠に挨拶をして、仏壇に線香をあげる。
(なんや…今日は喜代美ちゃん、おらんのかいな?)
おかんに線香をあげられればそれで良いはずが、やっぱりがっかりしてしまう。
居間でぼんやりしていると、師匠に稽古をつけてもらった後らしい四草がやって来た。
「小草若兄さんやないですか。珍しい」
「やかましわい。それよりおい四草…今日は喜代美ちゃんはおらんのか?」
ああ、と四草は涼しげな顔で頷く。
「今日は珍しく仕事が入る言うて、今自分の部屋で用意しとると思いますよ」
「さよか」
「ただ」
ほくほくと立ち上がろうとした小草若は、その一言に四草を振り返る。
「喜代美、なんや仕事行くのためらっとるみたいでした。」
「おいこら喜代美ちゃんを呼び捨てすな!…ってなんでためたっとるねん?」
「そこまで聞いてませんけど。悩みでも聞いたって点数上げたらどないですか?」
「ホンマお前は…まあええわ。ほなな」
軽く四草に手を振って、内弟子部屋に向かう。喜代美ちゃんが悩んどると聞いて、ほっておける訳がない。
四草も、四草なりに喜代美を心配しているのだろう。屈折しているからわかりにくいが。
内弟子期間中の仕事は、ちょっとしたものでも自分が認められたみたいで嬉しく思うはず。
(喜代美ちゃんも、前に仕事入った時はめっちゃ嬉しそうやったのに…)


285:小草若→喜代美 2
08/04/07 07:20:00 sk6YJUH+
内弟子部屋へ向かいかけたところに、向こうから小柄な姿が歩いてくるのが見えた。
お~喜代美ちゃん!と声をかけようとしたところで、小草若はふとその表情に気づいた。
どこか思いつめたような暗い顔。足取りも重い。
(あかん…これは落ち込みバージョンの喜代美ちゃんや…可愛い顔が台無しやん)
そうこうしているうちに、喜代美のほうが小草若に気づいて頭をぺこりと下げる。
「あ、小草若兄さんやないですか。今日はお休みですか?」
声まで暗い。これはただごとではない。
「お、おう…喜代美ちゃんはこれから仕事やって?内弟子のうちは仕事なんてほとんどないさかい、
ちょっとしたことでも頼まれたら嬉しいもんやろ?俺も初めての仕事は嬉しかったで~」
あかん。取り繕おうとして、やけに饒舌になってまう。
「仕事は…ホンマ嬉しいんです。けど…」
「けど、って…どないしたんや喜代美ちゃん!?何や嫌なことされたんか!!?」
「いいええ!仕事では良うしてもろてます。私なんか不器用やのに丁寧に色々教えてもろて」
「ほな、どないしたんや?」
しばらくうつむいて、喜代美は何か言いにくそうな顔をしている。
「俺で良かったら、、悩み、話してくれたらええで。底抜けに相談にのるで。
喜代美ちゃんが困った時にはいつでも俺が助けに行くよって。話して…ほしい」
途中からいつになく真面目な口調になってしまって自分でも慌てたけれど、喜代美は
その言葉に背中を押されたように顔を上げる。
「小草若兄さん…、ホンマありがとうございます」
喜代美は決心したように、でも口ごもりながら、とつとつと語り始めた。


286:小草若→喜代美 3
08/04/07 07:20:57 sk6YJUH+
「なに~っ!?痴漢!!!!!???」
小草若は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。痴漢、って…。
「はい…」
うつむく喜代美。
聞けば、以前仕事で電車に乗った際、満員電車の中で痴漢に会い、怖くて声も出せないまま
体中を触られて、のみならず目的駅に着くまで何人もの男に順繰りに痴漢行為を受けたらしい。
周り中男ばかりで、助けを求めようにも声は出ないは満車で動くことはできないはで、あまりにも怖くて
それ以来電車に乗るのも怖くなり、電車での移動を伴う仕事が来るのが恐ろしかったという。
「その電車に、今日は乗っていかなあかんのです…」
「なんで早よ言わんねん!!!師匠や草々やったかて、それ聞いたらほっとかんかったはずやで!」
「こないなこと…恥ずかしゅうて言えませんよって…」
震える小さな声で答えてうつむいてしまう喜代美。この子がどんなに怖い恥ずかしい思いをしたかと思うと、
胸がつぶれそうで、何とかしてやりたくて。それと同時にに怒りがふつふつと沸いてくる。
(俺の喜代美ちゃんに何さらすねん…!!!)
小柄でグラマーな、しかも声をあげそうにないタイプの喜代美は、確かに痴漢の絶好の的だろう。
この子を守るには…どないしたらええんや?
「そや!今日は俺のスー!パー!カー!で…って車検中やった」
ほな今日はタクシーで…と考えたその時、四草の言葉が頭の中にフラッシュバックした。
(悩みでも聞いたって点数上げたらどないですか?)
点数…という何とはなしに算段めいた響きは微妙に嫌だが、喜代美を助けることができて、
しかもええとこも見せられたら…正直、言うことはない。
決めた。
「喜代美ちゃん、今日は俺が一緒に電車乗ってボディーガードするよって!」
「えええっ!?そそそそんな!小草若兄さんにそんなことさせる訳には…」
「ええねんええねん。今日は仕事休みやし、可愛い妹弟子がそんな目にあっとるのを
ハイそうですか言うてほっとかれるわけないやろ。痴漢とっ捕まえてガツン言わしたろやないかい!」
「で、でも…小草若兄さんみたいな有名人が電車乗ったりして大丈夫なんですか?」
「サングラスかけとったら意外と大丈夫なもんやで。問題あったら途中で降りてタクシー乗ったらええがな!」
「ほんま…ほんまありがとうございます、小草若兄さん」
恐縮しつつも安心したようにほわりと微笑んで、喜代美は頭を下げる。
今日初めてのその笑顔に、小草若は思わずふにゃふにゃとなってしまいそうになり、慌てて表情を取り繕った。
(あかん…やっぱり世界で一番底抜けに可愛いで…)


287:小草若→喜代美 4
08/04/07 07:21:38 sk6YJUH+
(ほんま、こんな混んどる思えへんかったわ)
久しぶりに乗った快速電車は恐ろしいほど混んでいて、小草若と喜代美は瞬く間に奥の方へと押しやられる。
まわりより頭1つ高い小草若でさえ、周りから押されて言いようのない圧迫感を覚える。
ましてや喜代美は…。
目を落とすと、案の定喜代美は頭まで埋まって苦しそうにもがいている。かなり厳しい状況だ。
(こらやっぱりタクシーで行っとくべきやったで…)
そっとため息をつきつつ回りを見回すと、通勤時間帯からはずれているもののサラリーマンの姿や、
大学生らしき男の姿が目立つ。男7割、女3割と言ったところか。
そのとき電車ががくんと揺れた。
「ひゃっ!」
軽い悲鳴とともに、喜代美の体が小草若の方に傾いた。あわてて支えようとするが、
思うようには行かず喜代美の体が小草若の胸に倒れこむような格好になった。
そのままの体勢で、喜代美は動くこともできす小草若に押し付けられている。
(すみません、兄さん)
喜代美は口の形だけでそう言って、申し訳なさそうにしていたけれど。
小草若は、、、それどころではなかった。
(うわ…めっちゃやらかい…)
腹のあたりと腕に感じるのは…柔らかい二つのふくらみ。喜代美の胸が大きいのは、普段の
ゆったりした服からでもそれと判っていたけれど、それは想像以上で。
そしてその柔らかいふくらみは、夏の薄い服をとおして、電車が揺れるたびに
小草若の体にぽわんぽわんと押し付けられる。
しかも…見下ろすと小草若の胸のあたりに押し付けられ、苦しげにあえぐ喜代美の顔。
息を少しでも吸おうと、少し上を向いて唇を少し開いたその顔は、小草若をそそるのに十分で。
汗で少し髪がうなじにはりついて、言いようもなく色っぽい。
これほど近くに喜代美を感じることは初めてで。その髪からは何ともいえないいい香りがして。
(あかん…このままやったら俺が耐えられへん)
思春期の高校生でもあるまいし、と必死で理性を総動員する。
痴漢の味方をするわけでは決してないが、これは痴漢にあっても…仕方ないような気もする。
少し痴漢の気持ちをわかりかけて…いかんいかんと首をぶんぶんと振る。
(アホか俺!喜代美ちゃんの気持ち考えんかい!ミイラ取りがミイラになりかけてどないすんねん!)
そや。これは可愛い妹弟子を守るためなんやと気を引き締めたところで。


288:小草若→喜代美 5
08/04/07 07:22:25 sk6YJUH+
また、大きく電車が揺れた。
今度は不埒なことを考えて注意がそれていたせいか、小草若までよろめいてしまう。
慌てて体勢を戻そうと、足をがっと開いたところに、ちょうど喜代美がよろめいてきて。
(すすすすみません兄さん!)
肩幅程度に開いた小草若の脚の間に喜代美の片脚が入り込んで、そしてそのまま押し付けられた。
やばい。これは非常にやばい。
先ほど以上の密着感。喜代美の脚が小草若の右足を挟み込む形になり、右足を動かせない。
膝も曲がっており非常に窮屈な体勢なので、小草若はむりやり右足を少しだけ動かそうとした。
「!」
その瞬間、喜代美が少し震えた。
(兄さん、脚が…その)
下を見て、言わんとすることを察した。ちょうど喜代美の股間辺りがぎゅっと小草若の腿あたりに
押し付けられて、小草若が脚を動かせばそこを…直撃してしまうということなのだろう。
とにかく次の駅に着くまでは、脚を動かせそうにない。
けれど電車が時々揺れるのはいかんともしがたく。揺れるたびに喜代美の股間が少し曲がった脚に
押し付けられて、その度に喜代美は小草若の胸の中でぴくんと震えて声をかみ殺す。
そして、先ほどとは位置を変えて押し付けられる喜代美の胸。
この状況は、、小草若にとってはすでに拷問に等しい。
そしてその当然の結果として、男の生理現象が起こってしまうわけで。
必死で関係のないことを考えようと窓の外に目を向けて、関係のないことを考えようとする。
(寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る所に住む所…ってアカン!)
必死の努力にもかかわらず、意思とは関係のない所でむくむくとそれは形を変えて、
みるみる大きく固くなるのをどうすることも出来ない。
固くなったそれは当然、喜代美の腹から腰の辺りに押し付けられるわけで。
突然の異物の感触に驚いたように小草若を見上げる喜代美と目をあわせることができない。
口の形だけで(ごめん)と呟き、ついと目をそらすことしか、出来なかった。
(喜代美ちゃんを守るはずが…俺、ホンマ最悪や…)
ええとこ見せるつもりが、喜代美を守るつもりが。痴漢と変わらないではないか。
ホンマに好きな子に、痴漢と同列やと思われると思うと…やりきれなかった。


289:小草若→喜代美 6
08/04/07 07:23:20 sk6YJUH+
その時。
喜代美の体がびくっと動く。先ほどまでとは違う、どこか緊張したような動き。
はっと喜代美の方を見ると、怯えたようなそそけだったような表情をしている。
( ち か ん )
と喜代美の唇が動く。目で後ろのほうをちらと見る。
少し緊張して辺りに目をやる。喜代美の後ろのサラリーマン風の男が…あやしい。
人違いのないように、慎重に見定める。その男は喜代美の後ろから体をいやに押し付けるようにして
その手は…間違いなく喜代美の尻をまさぐっていた。
その瞬間。何かが頭の中でぷちんと切れた。
「おいコラおんどれは何さらしとるんじゃあ!!!!」
落語仕込みの大音量の声は、それはそれはよく車内に響きわたり。
そいつの腕をひねり上げたはずみで、サングラスはどこかへふっとんで。
「つ、徒然亭、小草若?」
腕をつかみあげられ声もなく青ざめる男の後ろのほうで、誰かがぽつりとつぶやいた。
やばい。
「うわ!小草若ちゃんや!」
「マジ!?うそあれ本物!!?」
「うっそ~めっちゃカッコイイ!!!」
「ていうかマジ細!」
「あれ彼女やろか?」
そこここでひそひそ声が聞こえる。一度起こったざわめきは、加速度的に大きくなっていって。
あんばいよくちょうどその時次の駅についたものだから、小草若は喜代美と痴漢の手をつかんだまま
電車から飛び降りたのだった。


290:小草若→喜代美 7
08/04/07 07:24:20 sk6YJUH+
ごめんな。こんなことになるんやったら最初からタクシーで行ったらよかったな。」
タクシーの中で、小草若は申し訳なさそうに喜代美の顔を見る。
すっかりしおれた痴漢を降りた駅の駅員に引き渡して、いろいろと話を聞かれて駅を出たのは30分後。
時間には余裕をもって出てきていたから、喜代美の仕事にはタクシーで行けば間に合う範囲内だった。
「そんな。小草若兄さんのおかげで、ほんまに助かりました。一人やったらどねしようもなかったです…」
微笑んで頭を下げた後、喜代美は小さく身震いする。
「でも、しばらく電車には…。でもあの痴漢の人、どねなるんでしょう…?あんな青ざめとりなって、
きっと出来心やと思うのに…」
どうやら痴漢の男性が警察に連れていかれるのを心配しているらしいとわかり、小草若は少し呆れる。
「喜代美ちゃんはほんま甘いな。あれ、十中八九常習やで。」
「え、なんでですか?」
「男の勘。まあ日本は痴漢には甘いさかい、せいぜい叱られて出てくるくらいやろ。気にせんとき。」
そんなことはよく知らないが、喜代美を安心させるために適当にでっち上げる。
「ほんまですか。」
喜代美はそれを聞いて素直に安心したらしく、ほっと表情を緩める。
(ほんまこの子は放っておけんな。守ったらなあかん)
できたら俺が。
このほんわりとした真っ白な子を、優しい微笑を。
「そんなことより、もうしばらく電車は乗らんほうがええ。あの痴漢が逆恨みするかもしれんし、
前も何人かに痴漢されたんやろ?注意するに越したことない。師匠には俺から話しとくで。」
「え、でも」
「でも、やない。これは兄弟子としての命令でもあるって思うとき」
普段はこんな風に喜代美に強い口調で話すことはないけれど、あえて厳しい顔で告げる。
「いっつも俺か、草原兄さんや草々や四草がついておったれるんやったらええ。けど、それはいつも
できるわけやない。そやったら…身を守ることを考え。心配なことがあったら、みんなを、俺を
頼ってちゃんと相談してくれ。師匠や兄さん達は、喜代美ちゃんをこき使うためにおるんやないんやで。」
「小草若兄さん…」
「みんな、喜代美ちゃんを底抜けに心配しとるんや。それが」
にっこり笑って小草若は言う。
「家族やろ?」
喜代美は、それはそれは嬉しそうににっこりと最高級の微笑を見せた。
「心配せんとき。もしどうしても仕事で出なあかん時は、俺に相談してくれたらええから。
今日は仕事終わるの2時間後?適当に待っとるから、帰り、タクシーで帰ろな。」
「ほんま、ほんまに…ありがとうございます。いっつも…小草若兄さんはホンマ、優しい…」

291:小草若→喜代美 8
08/04/07 07:27:48 sk6YJUH+
喜代美と別れたあと、小草若は思う。
「家族やろ」とは言ったものの、本当は正直な気持ちではない。
喜代美は忘れているようだが、電車の中で喜代美に抱いた自分の思いは…痴漢のそれと大差ないのかもしれない。
家族?妹にそんな気持ちを覚えるわけがない。自分にとって喜代美は誰よりも…女だ。
本当は、自分だけが喜代美を守りたい。自分のものにして、自分だけを見つめさせたい。
けれど自分はいつも、冗談めかしてしか思いを伝えることが出来ない。

「ほんまに、底抜けに好きなんやけどな…」

夏の夜は長く寝苦しい。特に今夜の小草若にとっては。
きっと電車での喜代美を思い出してもんもんとするであろう今夜の自分の情けなさを思い、
小草若は小さなため息をついたのだった。



292:名無しさん@ピンキー
08/04/07 07:30:03 sk6YJUH+
以上です。一気書きなんで穴だらけかも。
そして微妙に>>24と台詞つながり。

ほんまにお粗末さまでした。

293:名無しさん@ピンキー
08/04/07 07:49:35 w7WPXttK
>>283
GJ!!
小草若ちゃんキタ―――!!!そして底抜けに切ね―――!!!
痴漢モノなのに純愛…朝から凄いもの読ませていただき感動です!

294:名無しさん@ピンキー
08/04/07 07:58:50 FSt/aG+P
GJ!!
月曜日の朝から良いもの読ませて頂きました。
小草若と若狭、不器用同士で好きだ~。

小草若が切ないままなのもツボだ~。

295:名無しさん@ピンキー
08/04/07 08:29:09 NwokGfrS
>>283さんGJ!
書き手さんは女性かな?
小草若×若狭好きとしてかなりハアハアしました。

ただ、構想練ってた鼻毛×若狭と丸かぶりだ…orz
みんなゴメン、鼻毛もうちょっと待って下さい…
誰か俺にネタをくれ!
とびきりエロいのを書きたいお(´・ω・`)


>>277
俺は持ってないです。

296:名無しさん@ピンキー
08/04/07 09:33:18 kh0+cSMq
>>283
GJ!!!!
売れっ子小草若ちゃんの喜代美呼びが懐かしいっ!
途中ハラハラしたけど、嫌われなくてよかったー
四草の算段もいい味になってる!

297:名無しさん@ピンキー
08/04/07 11:38:48 FYNg7yPq
>>283 GJです!小草若兄さん大好きだ!
>>295 鼻毛難しいよね、自分も挫折した orz
創作落語を手ほどきしていて
バレ噺の方に話が進んで…てのはどう?

298:名無しさん@ピンキー
08/04/07 12:12:39 /swHGSlv
年季あけの喜代美がどうしても欲しいモノがあってキャバクラでバイトしようとするのをとめる鼻毛。
夜銭湯帰り、男数人にナンパされて集団●●プされかけたとこを助ける鼻毛。

299:名無しさん@ピンキー
08/04/07 12:15:44 h+7lYuOw
四代目草若×清海って需要あるかね?

300:名無しさん@ピンキー
08/04/07 13:44:13 3vRvZXVJ
ある!

301:275
08/04/07 22:21:28 rAflz6GK
GJ下さった方、ありがとうございました。
頭の中であるイメージを、文字に起こすって難しいですね。
特に官能シーン(汗)。映像はあるのに、文章の短いこと。

続き考えてあるんで、また投下させて頂きます。


>>277 エロなしなら一応あり。

302:名無しさん@ピンキー
08/04/07 22:38:31 uYjzAv8w
>>297
自分は、初めて聞いたのが「食べ物粗末にしちゃいけません!」的なヤツだったんで、エロというより下世話なイメージが強いんだが…>バレ噺
普通に艶っぽい噺も有るんだろうが…

303:名無しさん@ピンキー
08/04/07 22:51:00 rDqPgKlE
>>277
自分も持ってない。

304:283
08/04/07 23:20:48 sk6YJUH+
GJ感謝です!
一気書きのことで、誤字ありますねすみません。
>>284 ラストから7行目 ためたっとるねん?→ためらっとるねん?
>>290 冒頭カギカッコ忘れ。
そんなんなのに読んで頂いてありがたや。

>>295
本当にすみません。>>264さん見た後一気書きしたので、>>278には
投稿直前まで気づかんかって。
キャラ違うからまあえっかと思ったんですが、ネタ丸被りとは申し訳ないです…
でも自分の全くエロくないんで、もしお嫌でなければエロい鼻毛バージョン
痴漢電車、お待ちしております。

305:名無しさん@ピンキー
08/04/07 23:29:43 sk6YJUH+
>>295
あ、一応思いついたのを。

内弟子修行明けてすぐ、TVに出始めた若狭にはあれよあれよという間に
熱狂的なファンが…。のみならずストーカー行為に及ぶ不埒者も現れる始末。
師匠や兄弟子の目の届かないテレビ局で、若狭に魔の手がせまる!

みたいな系はいかがでしょ?テレビ局なんで鼻毛はからめやすい?
罪滅ぼしにもなりませんね。連投すんませんでした。

306:275
08/04/08 01:08:49 /gxtFHil
>>265-274の続きです。

本編拡大解釈、最終回まで(ちょっと後日談)。
基本的に四草×若狭、かつ草々→志保前提の草々×若狭が少々。
多分、前作よりは官能的。

本編ラストシーンに感動した方は、読まない方がいいです。

307:空中楼閣  1 秘密
08/04/08 01:11:51 /gxtFHil
常打ち小屋建設を巡って、一門の中で意見が割れてしまった。
それ自体は、仕方がない。
自分だって今は駄目だと考えているのだから。
しかし……
「若狭」
草原は妹弟子に声をかけた。
「……えっと……草々とは、どないなんや」
聞かれて、喜代美は首を傾げる。
「いや、ちょっと気になったんや。
 前のお前やったら、絶対に草々の意見に賛成したやろ。
 干される言うのかて、小草々の心配ばっかりしとったし。
 そやから、上手く行ってんのかいな、思てな」
「え? そりゃ……私はおかみさんなんやでぇ」
喜代美は、草原の目を見た。
「草々兄さんの気持ちはわかるんですけど、いろんなこと考えんならんし」
「そうか」
優しい長兄は、にっこりと微笑んだ。
「大人になったな、若狭。この調子で、草々のこと頼むで」
はい、と素直な返事をして、喜代美は草原を送り出す。
兄弟子の姿が見えなくなると、小さな小さな溜め息をついた。
そういえば……うっかりしていた、と思う。
感情の赴くままに、感嘆してしまった。
もしも、胸の中の秘密を知ったなら……草原は、決して自分を許さないだろう。

308:空中楼閣  2 裏側
08/04/08 01:12:45 /gxtFHil
最近、喜代美は時折四草の部屋を訪ねる。
表向きの理由は、男所帯の四草と小草若のために、妹弟子として料理するため。
「すまんな、若狭。ほな、俺バイト行くわ」
小草若は、そ知らぬ顔で部屋を後にする。
「……また脅しに屈して、のこのこと」
後に残った四草は、射抜くような目で若狭を見る。
続いて、腕を掴まれて引き寄せられる。
「この部屋でのお前の様子……兄さんらは、信じられんやろな」
ゆっくりと、四草の指が若狭の体をなぞる。
喜代美の丸い唇から、息が漏れた。
「兄さんらにバラされとなかったら……言う通りにせえ」
この部屋に来る裏の理由は、四草に関係を迫られ、されるがままになったと、
草々達に黙っている代わりに、と何度も関係を強要されているから。
しかし、それですら真実ではない。
喜代美もまた、四草を求めているのだから。

309:空中楼閣  3 脅迫
08/04/08 01:13:22 /gxtFHil
初めて関係を持った数日後、草々の留守に訪ねて来た四草は、耳元で囁いた。
「こないだの様子……誰にも言われとないやろ」
喜代美は、四草の意図がわからない。
忘れるつもりでいた。
自分を突き放したのは、四草の方だったのだから。
「言われとなかったら……また俺の部屋に来い」
喜代美の目が見開かれる。
それを見て、四草は薄っすらと笑みを浮かべた。
「わからへんか。脅してんのや。
 犯されたの、バラされとなかったら、これからも部屋に来い」
「四草兄さん……」
「ええな」
言うだけ言うと、四草は立ち上がって帰ってしまった。
(またや……)
喜代美は悲しくなる。
四草は、決意してしまったのだ。
自分達の関係を続ける代わりに、全ての罪は自分が引き受けると。
悪役を演じることを厭わない四草の姿は、愛しくもあり、
見ていて胸が締め付けられるものでもあった。

310:空中楼閣  4 虚像
08/04/08 01:13:58 /gxtFHil
それでも、四草のために何の解決策も浮かばぬまま、月日は流れた。
もし、草々が昔のように怒鳴ることがあったら、すぐに家を飛び出しただろう。
しかし、草々は、信じがたいほどに穏やかになっていた。
理由は簡単だった。
草々の理想の女性像である「おかみさん」の姿に、喜代美は年々近付いていた。
どうやら、それは日常の言動だけではなく。
「ほんまに……おかみさんみたいやな……」
ある日、布団の中で、草々は呟いた。
愛しげに喜代美の髪を撫でながら微笑んで言う。
「今のお前は、師匠といはった時のおかみさんそっくりや……」
昔は、草々の口から「おかみさん」が漏れるたびに悲しかった。
今は、何も感じない。
だって、「おかみさん似の若狭」ではない自分になれる場所があるのだから。
草々の心が、草若夫妻の営みを覗き見していた思春期のままであることには、
何の苦痛も感じなかった。
「……若狭……『師匠』て呼んでくれへんか」
ただ、この要求だけは、大変だった。
うっかりすると、今、愛しい人の名を呼びそうになってしまうから。
「し……しょ……う」
喜代美の小さな声に、草々は、若き日の志保を想像した。
いつか、自分が破門になったとき、この妹弟子が探しに来てくれた日のこと。
振り返った喜代美が、あまりにも志保を思わせ、心臓が高鳴ったのを思い出す。
いざ結婚してみると、志保と掛け離れた部分もあって気落ちしたが、
歳月を重ねると、あのときの自分の見立ては間違っていなかった……。
草々は心地よく喜代美を胸に抱いた。
最後の最後では、喜代美が自分を拒んでいるのに気付かないまま。

311:空中楼閣  5 決心
08/04/08 01:14:42 /gxtFHil
そんな日々に終止符が打たれたのは、常打ち小屋の完成も間近の日だった。
自分の中に宿った命に、喜代美は戸惑うばかりだった。
四草もまた、動揺していた。
自分の子であって欲しくもあり、またそうではないことを願った。
だが、喜代美の悪阻が収まるまで、糸子が大阪にいたこともあり、
ゆっくりと話をする機会はないままだった。

ひぐらし亭オープンからしばらくして、喜代美の具合が安定してきた。
草々も安心して地方公演に出かけるようになった。
その留守に合わせ、夜の公演も引けた後に、四草は喜代美を訪ねた。
「……四草兄さんの子供です」
喜代美は、確信を持って答えた。
四草は複雑な気分になる。
「やっぱり、血は争えん言うことなんやな。
 親と同じこと、してしもた」
「後悔……しとんなるんですか?」
不安そうな喜代美に、四草は穏やかな笑顔を返す。
「困った話やけど、してへんのや」
それから、ふと真顔になって言う。
「そやけど……子供には、俺と同じ思いは、させとない。
 温かい家庭を味わって欲しいんや……」
「私も、ずっと考えてました」
喜代美の表情もまた、真剣だった。
「ええ落語家にも、ええ奥さんにもなれへん。
 ほやけど私……ええお母ちゃんにはなりたい」
四草は微笑んだ。
二人は同じ答えに辿り着いた。それでええ。

312:空中楼閣  6 別離
08/04/08 01:15:10 /gxtFHil
これで最後……と四草は喜代美の首筋に口付けた。
慣れた手つきで、白い肌をあらわにしていく。
乳房、腕、そして……
(ここに……おるんやな)
最初で最後に、父親としての口付けを届けた。
喜代美の手が伸びてきて、四草の髪の毛を梳く。
それに応じるように、四草は再び胸元へと戻る。

やがて、四草は意を決して、喜代美から離れた。
「……四草兄さん」
潤んだ目で呼びかける喜代美に、四草は微笑む。
「もう怖がらんでええ。……絶対に、誰にも言わへん」
わかりきっていることをわざわざ言う四草が愛しくて、喜代美は微笑んだ。
その唇に、四草は自分の唇を重ねた。
互いに味わうように、その記憶を刻みつけるように、口付けを交わす。
それすらも、ついに四草は終えた。
「……ご馳走様でした……若狭姉さん」

313:空中楼閣  7 誕生
08/04/08 01:15:45 /gxtFHil
そんな出来事があったため、喜代美が突然
「私の最後の高座にお付き合いいただき、ありがとうございました」
と言い出したときも、四草は一人、その理由を察していた。
母親になるという腹をくくった喜代美は強くてまばゆくて。
四草は微笑んで、若狭の決意を見守った。

数ヵ月後。喜代美は、病院をストレッチャーで運ばれていた。
「頑張れ若狭!」
頭の上で響く草々の声に、遠い記憶が蘇る。
「ガンバレワカサ、ガンバレ、ガンバレ」
初高座で失敗した自分を励ますために、九官鳥に仕込みをしてくれた人。
「その道中の陽気なこと!」
草若の危篤の時、何かを吹っ切ったように「地獄八景」を演じた姿。
全てが四草に結びつくことに罪悪感を感じる暇もないほど、
母になるというのは苦痛を伴った。しかし、
「元気な女の子ですよ」
その声に、喜代美の顔に、心からの満足が浮かんだ。

同じ頃、大阪では、ちょっとした騒動が起きていた。

314:空中楼閣  8 衝撃
08/04/08 01:16:20 /gxtFHil
「ビーコ!おめでとう!」
情報をもたらしたのは、出産祝いに来た清海だった。
四代目草若の襲名祝いの様子を聞いていると、乱入者の話が出て来た。
「四草兄さんの……子供?」
呆然とした喜代美の顔は、単に驚きに映ったらしい。
「何やねんあいつは!責任も取らんと!」
かつて友春に説教をした草々は、すぐにでも大阪に帰って、
四草を怒鳴りつけんばかりの勢いだ。
「あ、ほやけど、小草……草若さんは、変や、て言うとんなりました。
 その子の歳が、草若さんが四草さんと同居しとんなった時を考えたら、
 四草さんの子供やてのはおかしい、て」
ほやけど四草さん、文句も言わんとその子抱き上げなって、
と清海の説明は続く。
草々の気持ちは収まったようだが、喜代美の動揺は続いた。
草若兄さんの気遣いかもしれない、という考えを消せずにいた。
不満に思うのは筋違いだ。
自分は、草々と結婚しているままなのだから。
それでも、四草が、他の女性と子を成したと考えるのは、胸が締め付けられた。

315:空中楼閣  9 算段
08/04/08 01:17:15 /gxtFHil
大阪に戻った後、ある晴れた日。
喜代美は、生まれたばかりの娘を抱いて、散歩に出かけた。
近くの公園を覗くと、四草がベンチに座っているのが見えた。
黙って隣に腰掛けると、四草は腕の中の赤ん坊に目をやった。
「……娘です」
四草は小さく笑うと、赤ん坊の手に自分の指を差し出した。
「四草兄さんとこの子は……」
「あの青い服のや」
子供達の集団の中の一人を、四草は指した。
その距離を確認して、喜代美は小声で切り出す。
「……大変やないですか、いきなり子供なんて。
 確かめたんですか、ほんまに責任取らなあかんのか……」
「迷い込んできたもんは、しゃあない」
四草は微笑んだ。
「俺も平兵衛も、師匠のところに迷い込んだ。
 どこの誰やなんてことは、大した問題やあらへん」
平然と言われた言葉に、喜代美は自分が恥ずかしくなる。
心の小ささに顔を赤らめた喜代美を見て、四草はおかしそうに囁いた。
心に描く、究極の算段を。
「それにな、ちょうどええってもんやで。
 俺達の娘にふさわしい男を、俺が自分で育てるんや」


【完】

316:307-315
08/04/08 01:22:19 /gxtFHil
草々の扱いが悪くて申し訳ない(滝汗)。

とりあえず、個人的に、草々→若狭の要素を本編から感じ取れず、
どこか根底に、草々→志保がある感じがしたもんで。
草々は、光源氏タイプの男です、自分的には。

あと、四草×若狭派としては「ご馳走様でした」を言わせたかった(爆)。

前作が、かなり四草が苦悩してしまったので、完結編として、
四草的ハッピーエンドです、一応。

さりげなく小四草×落子(笑)。

317:名無しさん@ピンキー
08/04/08 01:26:38 7uIxhcBZ
>>316
うわ!リアルタイム投下!
心からGJ!!!ほんまありがとう!
四草に泣けた。切ない、切ないよ…。
本編で若狭が落語家辞める言うた時、四草が微笑んだのが落ちんかったんですが、
これですっきり落ちた。小草若×喜代美派の自分がここまではまるとは…。

318:名無しさん@ピンキー
08/04/08 01:35:33 TU6uGDTM
>>316
前作よりも描写が丁寧で読みやすかった
説得力があった
オチもすごい GJです
これなら本編四草のラストも許せる…
(あのラストに納得いかなかったので…w)

319:名無しさん@ピンキー
08/04/08 01:45:46 CR9vE4oK
GJです!
四草×喜代美派の自分としては
嬉しい限りでございます

320:名無しさん@ピンキー
08/04/08 02:12:13 z10GZ+Hd
>>316さんGJ!

やっとのことで鼻毛を書き上げたので投下します。
鼻毛×若狭で、本編では「二人ぐせ」あたりのお話です。
若狭がただの痴女に…orz
挿入なしですがエロです。


321:鼻毛×若狭 消えた艶笑噺 1
08/04/08 02:14:26 z10GZ+Hd
天狗座での出番を終えた尊建が楽屋に戻ると、良きライバルの妻である若狭がお茶を淹れていた。
久しぶりにみた彼女は、最近タレントとして引っ張りだこになっているためか少しやつれたように思える。

「よぉ若狭!久しぶりやのぉ、来とったんか」
「はい、勉強させていただきました。
最近あんまり落語聴けてなかったさけぇ、オフの日は勉強せなアカン思うて」
「なかなか忙しいみたいやなぁ」
「お陰様で…でも本業が疎かになってしもて」
「ま、今は仕方ないやろ」

若狭は尊建の言葉に頷きつつもどこか暗い表情を見せた。
よほど疲れているのだろう、いつもの覇気が感じられない。
そんな若狭を何とかして笑顔にしようと、尊建は明るく話だした。

「よし、ほな今日は俺が落語の勉強に付き合ったろ!」
「え、ホンマですか?」
「おう!オレん家でかまへんか?」
「わあ、あの、はい、ありがとうございます!」
「ほなちょっと待ってて、着替えるわ」

若狭の嬉しそうな顔を見て少し安心した尊建は、急いで着替えを済ませた。

322:鼻毛×若狭 消えた艶笑噺 2
08/04/08 02:15:15 z10GZ+Hd
*****


「~っちゅう訳や!分かるか?」
「あぁ、そういう意味なんですねぇ!知りませんでした!」

ビールを片手に尊建は落語にまつわる色々なことを話した。
若狭は初めて聞くことが殆どらしく、その度大きなリアクションをみせる。
二人ともほんのり酔いがまわりだしたのか、時たまジョークを言ったりした。

「あはは、ふ~っ、おもしろ~」
「せやろ?これがまた堪らんわ」
「ホンマ、尊建兄さんは物知りですねぇ。
私はまだまだ知らんことだらけや」
「ほな、これは知ってるか?」
「なんですか?」
「艶笑噺ってやつ、聞いたことあるか?」
「えんしょうばなし…ですか?きいたことないです」

尊建はいたずら半分でこの話題を切り出した。
艶笑噺―またはサゲ噺ともいう―は、男女間のいやらしい話をおもしろおかしくしたものである。

323:鼻毛×若狭 消えた艶笑噺 3
08/04/08 02:15:43 z10GZ+Hd
そのことを説明すると若狭の顔はぼっと紅くなった。
それをみた尊建のいたずら心には火が付いたらしく、少し苛めてやろうと更に話を続けた。

「艶笑噺に出てくる女房はな、大体が旦那以外にも男がおんねんで」
「ふ、不倫ですか!?」

目を白黒させる若狭に、尊建はいくつか自分が知っている艶笑噺を聴かせてやった。
話終えると若狭は更に赤らめた顔を俯かせてしまった。
少しやり過ぎたかと思った尊建だったが、次の瞬間目を見張った。

「わ、若狭?」
「……っ」

若狭が、正座していた太腿をもじもじと擦り合わせていたのだ。
心なしか呼吸も荒く、半開きの唇は震えている。

「どないした若狭…大丈夫か?」
「あの…わ、私…」
「ん?」
「最近忙しいし、草々兄さんとちょっと喧嘩してて…その…ご無沙汰、なんです」
「…え!?」
「酔うてるんかな、どねしよ…
身体が…熱いんです、疼いてしもてます」
「わ、若狭、落ち着こ!な!」
「尊建兄さん…」

焦る尊建を尻目に、若狭は尊建の肩にもたれかかった。


324:鼻毛×若狭 消えた艶笑噺 4
08/04/08 02:17:40 z10GZ+Hd
腕に豊満な胸を押しつけられ、思わず股間が反応する。

「尊建兄さん…あきませんか?」
「あ、アカンて、お前は草々の嫁やし、今ゴムないし、アカンとにかくアカン!」
「お願いします、触るだけでもえぇさけ…」

そう言って若狭は尊建に跨がって手を取り、自分の胸に押し当てた。
そして自分の股間を尊建の勃起しつつあるペニスに擦りつけるように腰をゆるゆると動かす。

「若狭!やめんかい…!」
「触って…尊建兄さん、お願いです…」
「…っ」
「ん、はぁ」

切ない吐息をもらす若狭に、ギリギリのところで保っていた尊建の理性がプチンと切れた。

若狭の着ているTシャツをブラと一緒に捲りあげ、既に堅くなった乳首にむしゃぶりつく。
そして若く柔らかな白い肌を撫でまわしながらジーンズを脱がし、ショーツの上から尻を揉みしだいた。
若狭はピクピクと肩を震わせながら快感にひたり、更に腰を捩らせる。

「っあ!やぁ、もっと…兄さん…」
「はぁ、は…いやらしい女や」
「そんなこと言わんでぇ…」

布の上から中指を割れ目に沿って滑らせると、そこは既に湿っていた。
それならばとショーツを横にずらして中指を挿入する。


325:鼻毛×若狭 消えた艶笑噺 5
08/04/08 02:18:09 z10GZ+Hd
愛液が溢れ出しているそこは、尊建の長く骨張った指を勢いよく受け入れる。
指にたっぷり付いた愛液をクリトリスに塗り付け激しく動かすと、若狭は短く嬌声をあげた。

「あっあっあ…っ…きもち、い…ん」
「すごいな若狭のココ、とろっとろでぐちゃぐちゃや」
「や…ぁん!はあ、あ…っうあ…兄さ、ん!」

ショーツを脱がし、露になったそこに今度は指を二本に増やして中で掻き回すように動かしてやる。
そこはぐちゅんと音をたてて容易くそれを受け入れ、吸い付いて放さない。

「ひ、ん…あっ、もう、アカ…ンん!」
「…イってえぇで」
「っあ、あ…あああァ…!」

更に激しくピストンしてやると、若狭は絶頂を迎えたようだ。
ひくんと身体を震わした彼女の額に張り付いた髪を優しく梳いてやる。
暫くして指を引き抜くと、若狭は切ない顔で天井を仰いだ。

「はあ、は、は…ぁ」
「大丈夫か?体ツラないか?」
「だいじょ、ぶ…です、けど…兄さんこそ…」
「あ、うん…まあ…な」

先程から若狭に快感を与え続けた尊建のペニスは、既に張り裂けそうになっていた。
流石に申し訳ないと思ったのか、若狭は小さな声で謝ってからベルトに手を掛けた。

326:鼻毛×若狭 消えた艶笑噺 6
08/04/08 02:19:10 z10GZ+Hd
「そんなことせんでえぇ!」
「させて下さい…私ばっかりじゃあせこいですから」
「若狭……っ」
「…ん、むぅ、っ」

若狭は戸惑うことなく尊建の雄々しいペニスを口に咥えた。
そして右手で上下に扱きながら、亀頭を舌で丹念になぞっていく。
竿にねっとりと舌を這わせ、内腿にキスを落とし、咥えこんでじゅぶじゅぶと音をたてながら射精を促す。

「ん、ふ、ぅぷ、っは」
「アカン…出る…っく!」

尊建は絶えきれずに、熱い白濁を若狭の口内に注ぎ込んだ。


********


後日、二人はテレビ局で偶然会った。
ばつの悪そうな顔をした尊建を見て若狭はにっこり微笑んだ。

「この間はすっかり酔っ払ってしまって…兄さんゴメンなさい!
何にも覚えてないんですけど、何かありましたか?」

327:名無しさん@ピンキー
08/04/08 02:21:54 z10GZ+Hd
以上です。

何かホンマに若狭がただの変態欲求不満女に…or2
鼻毛ゴメン。ホンマゴメン。
反省している。

今作も楽しんで頂けたら幸いです~。

328:名無しさん@ピンキー
08/04/08 08:21:21 CR9vE4oK
>>327 GJです
鼻毛兄さんがジェントルマンなんでワロタ
次回作も期待してますよ!

329:名無しさん@ピンキー
08/04/08 15:15:27 VYwmWhs2
若狭ったら積極的w

330:名無しさん@ピンキー
08/04/08 17:58:57 IkAAvEtU
>>316
GJGJ!
うまいなあ、話の展開が本編とからんで無理がない。
自分の書きかけの四草×喜代美なんて
もう書きたくなくなったくらい感動した。これ以上は無理。

>>327
GJでした。若狭ってば、天然小悪魔だなあw

331:名無しさん@ピンキー
08/04/08 21:50:32 G5ZOY6CN
アナルものが読みたい。
柳眉とかってアナル好きそうw

332:名無しさん@ピンキー
08/04/08 22:28:28 cOw9Dp0H
いっそ3Pで二穴攻めはどうだろう。

333:316
08/04/08 22:29:26 /gxtFHil
皆さん、感謝です。反応良くて、こっちが泣きそうになるほど嬉しい。
四草の微笑みに、お前絶対何か知ってるな、と思い。
あの少年は、四草の子供とは限らんよな、と考え。

・・・ゴタクを並べても、四草×喜代美フィルターで本編を見たら、
こない見える・・・っちゅうだけの話でございますw

なので、自分の独断と偏見に、こんな温かいGJ頂いて感動した。


>>327
GJですよー。
タイトルに「鼻毛」入ってるから、どんなやな奴が出て来るかと
思ったら、おたおたしてる尊建かわいい。

>>330
自分は逆に、本編から独立出来ないんで、
他の職人さんに色々投下していただけるとありがたい。
ので、書きたくなくなったなんて言わず、どうかよろしく頼みます。

334:名無しさん@ピンキー
08/04/08 23:41:57 z10GZ+Hd
>>328-330、>>333
ありがとうございます!

なんか皆さん原型とどめた小説で羨ましいです。
自分のは果てしなくかけ離れてるし、ただの安いエロ小説だし…orz
女性にはすこぶる評判悪いかもですが、ヌける小説目指して頑張りますw

>>331
うはwその設定貰っていいですかww

335:名無しさん@ピンキー
08/04/09 00:03:19 7uIxhcBZ
>>334
ちょいと出遅れましたがGJです!!
鼻毛×若狭お待ちしておりましたですよ!
からかうつもりが翻弄される鼻毛がいい味ですねw若狭酒癖悪そうだもんなあ。
原型からかけ離れてるとおっしゃるが、エロエロ路線はやっぱ欠かせんですよ!
柳眉アナルものwktkしつつ楽しみにしております。

336:名無しさん@ピンキー
08/04/09 02:18:38 zdvEykfC
柳眉は変態プレイが似合う

337:名無しさん@ピンキー
08/04/09 22:04:01 m4VbAKob
>>335
ありがとうございます!
そう言っていただけると執筆しがいがあります。

今柳眉×若狭の執筆中です。
am2:00までにはうp出来る…はず。
最近連投し過ぎで申し訳ないorz
自重したほうがいいのかな?

338:名無しさん@ピンキー
08/04/09 23:07:59 J3umPUi8
小草若×喜代美の本編ベースを書きたいと思いつつ、
何かどこまでも救いがない印象になってしまうのはなぜだろう。

四草だと刹那的な結び付きでも、もっと言うと完全に一方通行でも、
そこまで痛々しく感じないんだけど。何なんだ、このキャラの違いw

つーわけで、以下に最終回後の時間軸で、無理なく本編を破壊するか考え中。
・・・今更、草々×A子はあり?

339:名無しさん@ピンキー
08/04/09 23:09:31 zdvEykfC
>>337 アナタのペースでドゾ

340:名無しさん@ピンキー
08/04/09 23:18:55 HpwnJJPt
出来たやないか…
誰でも気軽に入れて職人たちがエロパロの腕を競うスレが。

いやマジで最近また職人さんたちが脂乗ってて嬉しいです。一時期過疎ってから…
いつ来ても皆さんの作品が楽しめる常打ちスレである事を願ってます。

341:名無しさん@ピンキー
08/04/10 00:19:07 Z7ksUjzR
>>340
コテハン叩きとか出て荒れた時期もあったしねえ。


342:名無しさん@ピンキー
08/04/10 00:52:22 3yx0ZX/t
>>338 草々×A子読みたいっす
初代スレからずっとリクエストしてるんだけど、ほとんど投下なし…
いちど自分で書いてみたけど
箸にも棒にも掛からん駄作でした
是非ともお願いします!

343:名無しさん@ピンキー
08/04/10 00:59:01 byl9RvbY
案外早く書きあがったので投下します。

アナルもので柳眉×若狭。
若狭のタレントの仕事が減ってきたころのお話です。
枕営業がテーマなんですが「なんで柳眉に枕営業すんねん!鞍馬にせぇ!」というツッコミはなしでおながいしますw
そして若狭の台詞が五割喘ぎ声でスイマセンww




344:柳眉×若狭 仕事がない! 1
08/04/10 01:00:31 byl9RvbY
「若狭、ほなそろそろ」

柳眉はすっと立ち上がり奥の襖を開けた。
その部屋には布団が一組だけひいてあり、大きな姿見が置いてある。
―…そう、いわゆる枕営業というやつだ。
以前に比べてすっかり仕事が減ってしまった若狭は、なんとかして仕事を手に入れようともがき苦しんでいた。
そして泣く泣くこのような形になってしまったのだ。

「さ、こっちゃ来んかいな」
「…は、い」

いやらしい笑顔に導かれ、若狭はゆっくりとそちらに向かった。
姿見の前で胡座をかいた柳眉は足の上へ座るように促し、若狭もそれに従う。
後ろから抱きすくめられる形になり、薄い浴衣越しに相手の温度を背中で感じる。

「お前もつらいかもしれんけどな…これがこの世界では当たり前やさかいな、堪忍やで」
「分かってます…」
「ほな」
「よろしく、お願いします」

柳眉はすらりと伸びる白い脚を右手で優しく撫でた。
脚を大きく広げさせ、手は徐々に上へ上へと前をはだけさせながら内股を擦る。
そして左手は胸元をまさぐり、大きな乳房が見えるよう浴衣を両肩からずらした。

345:柳眉×若狭 仕事がない! 2
08/04/10 01:02:42 byl9RvbY
決して脱がさず、帯だけで体に纏わりついた衣はやけに官能的で、若狭は鏡に映る自分の姿に唇を噛んで目を背けた。

「これこれ、大事な商売道具の唇を噛みなさんな」
「あ…す、すいません」
「ちゃあんと鏡見とき」
「…え?」
「丸見えやろ、お前の何もかも」

命令で湯上り後は下着を付けていなかったため、鏡の中の若狭は布を纏っただけの霰もない姿だった。
ふと鏡越しに柳眉と目が合う。
それは普段の優しい柳眉とはまったく違う『男』の目だった。
目は鏡に映る若狭の肢体を隅々まで舐め回す。

「前々から思うてたけど、お前やっぱりえぇ体しとるな」
「ん…っ」
「感度もえぇし若いし、草々が羨ましいわ」
「え、っあ…」

突然出された旦那の名に、思わず体がビクリと跳ねてしまった。
罪悪感がふつふつと込み上げる。
柳眉は若狭のその表情を楽しみながら秘部に指を差し込んだ。
わざとぐちゅぐちゅと音をたてながら中をかき混ぜる。

「っひ!ん…んン…う…っ」
「若狭、そこの紙袋開けてみぃ」
「あ…っは、はい…」

鏡の横に置かれていた紙袋に手を伸ばし、言われた通り中を覗きこんだ。
するとその中には男性器を象った真っ赤なバイブが入っていた。

346:柳眉×若狭 仕事がない! 3
08/04/10 01:08:32 byl9RvbY
「あ…あの柳眉兄さん、これ…」
「分かるやろ?」
「え…?」
「鏡見ながらそれでオナニーせぇ」

若狭は驚きのあまり紙袋を落としてしまい、中からバイブが転がり出た。
柳眉はそれを拾いあげ、嫌がる若狭の唇にぐいと押しつけた。

「ほれ、舐めて濡らさんと挿れられへんやろ」
「い、いや…!」
「口開けぇ」
「ん!うぐ…むうっ」

無理矢理口をこじ開けてバイブを押し込み、唾液を飲み込む暇もないほど激しく動かし口内を犯す。
暫くして柳眉はべっとり濡れて妖しく光るバイブを若狭に手渡した。

「さ、はよぉ挿れてオナニー見せぇ」
「っ…いや、です」
「……仕事欲しいんやろ?」
「!!」


その言葉にとどめをさされた若狭は震える手でそれを受け取り、おずおずと割れ目へと近付けた。
既にぬめっているそこにゆっくりバイブを擦り付けると、先端が少しだけ中に侵入する。
暫くそうしていたが、その刺激では物足りなさを感じ始めた。

(恥ずかしい…けど、仕事のためや。
それにもっと…もっと気持ち良ぉなりたい…)

心の中で都合よく自分に言い聞かせ、バイブをゆっくりと中に埋め込んでいく。
そこはズブズブと音をたてて卑猥なそれを飲み込んだ。

347:柳眉×若狭 仕事がない! 4
08/04/10 01:12:26 byl9RvbY
すかさず柳眉がそれに手を伸ばしスイッチをいれるとブルブルと震えだし、余計に若狭を興奮させる。

「あぁあ…っあ…はぁ…ん!」
「ほぉ…えらい艶っぽい声だすんやなあ」
「ん!んん…!あ、は…っ」
「よし…ほな四つん這いになり」

刺激に飲み込まれて頭がまわらなくなった若狭は、しっかりバイブを咥え込んだまま四つん這いになった。

「お~お~、こんなとこまでやらしい汁が垂れてきとる!
これやったらローションいらんなあ」

柳眉は溢れている若狭の愛液をたっぷり指ですくいあげ、アナルに塗り付けた。

「前はバイブでいっぱいやから後ろに挿れさせてもらおか」

前に突き刺さったバイブを左手でゆるゆるとピストンしつつ、アナルを解きほぐすように右手の人差し指を徐々にめりこませていく。

「ひ!い、いた…ああっ!いたい…っ」
「こっちは初めてかいな…開発し甲斐があるな」
「っうああ!ひ…やあ、っ…ん!」
「こらこら、力ぬかな痛いでぇ…」

畳に爪を立てて痛がる若狭の姿は柳眉を更に興奮させた。

348:柳眉×若狭 仕事がない! 5
08/04/10 01:14:04 byl9RvbY
柳眉は時間をかけてアナルへ挿入する指を増やしていき、最終的には3本もの指がすっぽり収まるほどになった。
その間若狭は何度も絶頂を迎え、朦朧とした意識の中で更なる快楽を求め腰を揺らしていた。

「そろそろえぇころやな…若狭、力抜いてくれや」
「はぁ…っあん…う…りゅ、び兄さ…ください…」
「安心せぇ、仕事は鞍馬会長に言うてお前にくれたるさかい」
「違う…はよぉ兄さん…下さい…!」
「ふは!やらしいこっちゃ…
ケツは初めてのくせしてもう感じてんのか」

柳眉は若狭のしなる背中をべろりと舐めあげ、アナルに自身をあてがい一気に貫いた。
痛みと快感とが混ざり合い、若狭は悲鳴に似た嬌声をあげた。
そしてどちらからともなく腰を振り、奥へ奥へと刺激を求める。

「ちぎれるがな!もうちぃと力抜かんかい…っ」
「うぅんっあぁ!あ!ひ、やぁぁあぁ!」
「っ…く!アカン、もう出てまう…」
「あ!あ!ぁああ…!」
「中で出してもかまへんな…出すで…っ!」

349:柳眉×若狭 仕事がない! 6
08/04/10 01:17:25 byl9RvbY
一層ピストンのスピードをあげ、柳眉は若狭のアナルに全てを吐き出した。
それと同時に愛液にまみれたバイブが畳にぼとりと落ちて震え続けた。


++++++


その後、減っていた若狭の仕事は元通りとはいかないものの増えていった。
タレント業を好ましく思っていなかった草々も理解を示し、若狭の仕事が増えたことを喜んだ。
若狭はその草々の姿を見ては何とも言えない気持ちになるのだった。

350:名無しさん@ピンキー
08/04/10 01:19:16 byl9RvbY
以上です。
オチが弱くて申し訳ないw
そしてここ最近投稿しすぎww
ちょっと自重しつつ、これからもひっそり執筆します。

351:名無しさん@ピンキー
08/04/10 02:36:37 9QaYpez/
GJGJ!
柳眉変態ワロタ
こうして若狭は普通のセックスじゃ物足りなくなっていくのかw

352:名無しさん@ピンキー
08/04/10 04:11:23 3yx0ZX/t
GJです!
やっぱり変態だよね、柳眉兄さん

353:名無しさん@ピンキー
08/04/10 07:22:50 6rwBfa4B
いつの間にか
徒然亭(枕)営業担当になっている若狭

若狭の営業次第で一門の高座出演予定が決まる

354:名無しさん@ピンキー
08/04/11 00:01:20 9K8oeMQA
GJ!おもろかった!

>>352
やっぱり変態てwww柳眉変態説は思いつかんかったけど
そう言われてみると…似合うな。

355:名無しさん@ピンキー
08/04/11 01:12:29 +bbmhVIt
>>352 な、なんですと!?

356:名無しさん@ピンキー
08/04/11 02:52:38 0qLvP2H8
職人さんの変態柳眉兄さんがハマりすぎて、
ぐるっと関西お昼前のよね吉さんを直視できぬではないかw

357:名無しさん@ピンキー
08/04/11 17:04:21 baGMAJX1
>>351-356
いつも温かい感想ありがとうございます!
変態柳眉、好評で嬉しいですw

ちょっとチラ裏。
実は先日ぐる関のスタジオ観覧(外から見るだけ)に彼女と行ってきた。
どうしてもよね吉の笑顔がエロく見えてしまったw
よね吉ゴメン。
でも反省はしていない。

さぁてそろそろネタが尽きてきましたよw

358:名無しさん@ピンキー
08/04/11 17:04:33 +qA8bQ53
ドSで両刀使いで女装癖の柳眉兄さん…
言ってみただけです。すみません反省してます

359:名無しさん@ピンキー
08/04/11 17:06:33 baGMAJX1
>>358
ちょw12秒差ww

だが断る

360:名無しさん@ピンキー
08/04/11 18:06:34 dTYHiqi7
柳眉「草々お前えぇケツしとるなぁ。」
草々「な、なんやねん…!気持ち悪いな!」
柳眉「キュッと締まってて…ムフフ」

361:名無しさん@ピンキー
08/04/11 20:14:23 xU4dEUsa
アッー!

362:名無しさん@ピンキー
08/04/11 21:09:28 83v/MuJf
今日、喜代美が妹で正平が兄、という夢を見てしまった・・・。

今までアニメやドラマの夢を見たことがなかっただけに、
自分がどれだけこのドラマにやられているかを実感した。



363:名無しさん@ピンキー
08/04/11 21:12:20 +qA8bQ53
sageてね

底抜けのジングルで目覚める自分は
大概イヤな夢で目覚めるよ

364:名無しさん@ピンキー
08/04/12 19:52:42 QjKskHz7
初めてここに来たんだが、エロパロなのにwちゃんと元ネタを大事にしてるところに敬意を表して一つ情報投下。

へーべー(九官鳥)はオスですねん。

ソースはえねっちけーの携帯サイトでの四草インタビュー
Q相棒である平兵衛クンとの仲は?
A「平兵衛クンとの仲なんですが(中略)特にはないんです彼とは」

365:名無しさん@ピンキー
08/04/12 23:34:53 2KqGkoHv
いや、「平兵衛」って名前だけで、Q側もA側も「オス」と思い込んでるだけじゃ?

366:名無しさん@ピンキー
08/04/12 23:50:39 TfzU96WX
「特にはないんです彼とは」って真面目に答えてるAに吹いたw

367:名無しさん@ピンキー
08/04/12 23:56:08 Am9JsYGe
烏のオスメスの区別は難しいからね

368:名無しさん@ピンキー
08/04/13 00:57:13 NROm2EY4
賭けますか?

369:名無しさん@ピンキー
08/04/13 02:25:17 b7miz8Ov
草々×若狭書きました。
初めての投下なので、不手際ありましたらお許し下さい。
エロちょっとだけあります。

370:草々×若狭1
08/04/13 02:26:50 b7miz8Ov
京都の廃屋に辿り着いたとき、草々は、それこそまるで息も絶え絶えに弱りきった恐竜のようにぐったりとしていた。
一目で具合の悪いことが分かる。若狭はそのごつい肩をやっとの思いで抱え上げ、自分の膝の上に乗せた。
“草々兄さん、こんなになってしもて”
額や頬に手を当てて、熱があるのを確かめる。救急車を呼ぼうか、それとも近所の人に助けを求めようか。草々の首の辺りの汗を持っていたハンカチで拭いながら迷っていると、
ふいに草々の手が、若狭のその手を両手で握り締めてきた。
「おかみさん─」草々がつぶやく。
“おかみさんの夢をみてはるんや…”若狭は草々の手を握り返した。
「おかみさんから師匠に謝ってください。小草若はほんまの子供やから、きっと許してくれる…」
“草々兄さん、こんなに悲しんでる。師匠のこともおかみさんのことも、小草若兄さんのことも、本当の家族や思って大好きなんや”
頑固で、いかつくて、ぶっきらぼうで、でもこんなに家族の愛情に飢えている草々。
そのことについては草原からも聞いていたし、自分でも気が付いていたが、熱にうなされ弱った草々のうわ言が今はっきりと胸の奥に響き、若狭はたまらず声を発する。
「大丈夫。絶対1人にはせえへん…」
救急車を呼ぶのは止めた。
“私が、私が助ける。草々兄さん。必ず。”


371:草々×若狭2
08/04/13 02:29:49 b7miz8Ov
隣家へ赴き、毛布とタオルと洗面器を貸してもらった。
仰向けに横たわる草々に毛布をかけてやり、濡らしたタオルをしぼって
額に乗せるのを何度も繰り返す。
2時間ほど経ったころ、熱はまだ下がりきってはいないが息づかいが
かなり落ち着いた。草々の表情も随分穏やかに変化していた。
“良かった。明日の朝には楽になってる気がする。”
絶対に助けなきゃという緊張と意気込みが解けた若狭は、
ほうっと大きな息をついた。
安堵の気持ちで改めて草々の顔を見つめると、笑みがこぼれる。
「いっつも怖い顔してはるのに、なんか今は優しい顔してる… 
寝るときはいつもこんな顔してるんやろか、草々兄さん…」
今までこんなに近くで草々の顔を見つめたことがあっただろうか。
好きで好きで、大好きで、でも好きだと言ってはいけない兄弟子の草々の顔。
草々兄さんの恋人になれたら、こんな風にこんな直ぐそばで兄さんの顔見てていいんや…
無防備な、草々の寝顔を眺めながら若狭は思う。
好きで好きで、誰にも取られたくなかったくらい焦がれた草々の、見たことも無い無防備な寝顔。
若狭の胸が高鳴り始めた。さっきとは別の緊張が走る。


372:草々×若狭3
08/04/13 02:31:46 b7miz8Ov
草々にかけた毛布に、若狭はそっと、もぐりこんだ。
仰向けに横たわる草々の胸に静かに片手を置き、まだ身体に熱のあるのを感じ取ってから、
ゆっくりと頭を間を動かし愛しい人の顔を見上げた。
無精ひげに覆われたごつごつした顎、高い鼻、角ばった頬骨、そして今は固く閉じられている、
野生の動物のようにするどい視線を放つ大きな目。
“やっぱり好き…”心の中で若狭はつぶやく。
もうすぐ年季が明ける。明けたら好きと言ってもいいかもしれない。けれど、
この人に異性として好きではないと言われるのは怖い。だったら告白しない方がいいかもしれない。
こちら側は焦がれても焦がれても、これまで草々が自分に好意を寄せるどころか、
女としてさえ見ていないことは明確だ。
そう、ずっとずっと妹弟子のままでいれば、兄さんの傍にはずっとずっといられるんやから…
師匠の落語を伝えていく同士として!
もし、これからもそんな関係が続くなら、せめて今だけは…
せつない想いで、若狭は草々の肩に、頬をすり寄せた。
“今だけ、今夜だけ。ううん、5分でもいい。草々兄さんの恋人みたいにさせて下さい…”
熱い想いを込め目を閉じる。すると突然、草々の大きな体が覆いかぶさって来た。


373:草々×若狭4
08/04/13 02:33:33 b7miz8Ov
さっきまで、おかみさんの夢を見ていたはずだ。
小草若と派手な喧嘩をした後とか、稽古の成果が思うように出ない時なんかに、度々見るあの夢だ。
春の陽だまりのように暖かい手のひらをしたおかみさん。
優しく肩を抱いて話を聞いてくれるおかみさん。
だけど、なんでや。俺の肩に手を回して優しく微笑んでいるのは、いつの間にか若狭に変わっていた。
なんで俺、若狭の夢なんか見てんねん。
おまけに俺を抱きしめて、髪の毛触ったりほっぺたくっつけて来たり、
なんでこんなに俺を可愛がってくれてんねん。
10歳も若くていっつもふにゃふにゃと泣き言ばっかりの妹弟子のくせに…!
そやけど、気持ちええなあ。
こいつの胸、柔らかい。なんや、抱かれてたら安心するわ。
ようわからんけど、俺の体えらい重うて言う事きかへんし…
このままこいつと抱きおうとこ。どうせ夢や、ええ気持ちや…


374:草々×若狭5
08/04/13 02:37:11 b7miz8Ov
いきなり覆いかぶさってきた草々はうつろな目のまま、唇を若狭の唇に重ねた。
反対に思わず目を見開いて固まってしまう若狭。
予想もしてなかった出来事にどうしていいか分からない、頭の中はパニックだ。
身体はずっと硬直したままで、抵抗するどころか、
草々の口付けをじっと受けることしか出来なかった。
しかし草々の定まらない視線から、彼が正常な精神状態でないことはわかった。
風邪の熱のせいか、…きっと夢と現実がごっちゃになって、
自分の行動や心をコントロールできなくなっているのだろう。
どうしていいかわからず微動だにしない若狭。
けれど不思議なことに恐怖や嫌悪のようなものは少しも感じなかった。
生まれて初めてのキスなのに。
やはり自分は草々が好きなのだ。
小草若に抱きつかれた時は怖くて咄嗟に突き飛ばしてしまったけれど。

草々に抱きしめられる自分をこれまでに幾度となく妄想していた。
その妄想が現実になった今、どうして拒否ができるだろう?
草々の唇は熱く乾いていた。
視線を合わせると草々が正気に戻ってしまって、このくちづけが終わってしまうかもしれないと思った若狭は、
きゅっとまぶたを閉じた。
今夜だけ、今だけ、草々兄さんの恋人になれる…
長い長いいつまで続くか分からないキスに胸の鼓動がはちきれそうになって、
息が止まりそうになって、とうとう若狭がかすかに口を開いた。
するとねっとりとした草々の舌がその薄い小さな唇をつつ…と舐めた。
草々もまた、夢の中で、若狭の唇を舐めていた。可愛らしい唇や、と思いながら…


375:草々×若狭6
08/04/13 02:39:32 b7miz8Ov
お互いの舌をたっぷりと絡ませた後、草々が若狭のシャツをブラジャーごとたくしあげた。
あっと驚く間もなく、両手で両方の乳房を掴み、顔を埋め、舌と指先で味わう。
力任せの愛撫に快感はなく、若狭はむしろ鈍い痛みばかりを感じていたが、
愛しい草々に求められているという事実だけで幸せだった。
声をあげるとやはり草々が現実にもどってしまうかもしれないから、
そのかわりに草々の頭を両手で抱えた。
カリっと乳首に立てられる度に、そのくるくると巻いたクセのある髪の毛を掴んだ。
草々の吐き出す熱い息に肌が火照ったときは、弄って愛おしさを伝えた。
そうしているうち、抱えていた頭が少しずつ下に降りて行って、
腹を伝いわき腹を通り、
ジーパンも下着も勢い良くまとめて下ろし、若狭が今まで誰にも見せたことの無い、
その部分に辿り着いた。
草々の両手がなんの躊躇もなく若狭の両足を押し広げる。
恥ずかしさに両手を草々の髪から離し、若狭は自分の顔を覆った。
もはやもう声は出ない。条件反射的に、出さない“癖”がついてしまったようだ。
さっきまで胸や脇腹を這っていた草々の舌が、とうとう一番恥ずかしい“そこ”を舐め回す。


376:草々×若狭7
08/04/13 02:42:06 b7miz8Ov
平静な精神状態でない草々は、荒々しくまるで蹂躪するように若狭の粘膜を味わう。
舌の動きに逆らわない柔らかい肉に、甘いような生臭いようなねっとりとした液体。
そしてその奥にあるはずの、もっともっと自分を気持ちよくしてくれる場所を求めて。
そして若狭は、胸の愛撫の解きとは違うむず痒いような、
いや、例えようも無い経験したことも想像したこともない快感に打ち震えていた。
“恥ずかしい。こんなところ触られて、舐められて、気持ちよくていつまでもこうしていて欲しいなんて…!”
声が出ない代わりなのか、若狭の目尻から涙がこぼれた。
初めての交わりへの恐怖からではなく、緊張のせいでもない。
初めての快感に心も体も耐え切れなくなっていたからだった。
「草々兄さん…もっと、もっとして欲しい…!」
口に出して言わない代わりに手を伸ばしもう一度草々の髪を掴み、欲望を伝えた。
そんな心の声が聞こえたのかどうか、草々は指も中に入れて動かし始めた。
太く長い指をずっと奥まで差し込まれて、
内壁が擦り切れるようなかすかな痛みと圧迫感に襲われ、
若狭は少しだけ、今夜で最初の恐怖を感じた。
しかしそんな事に気づくはずもなく、朦朧とした意識の中で草々は
最後の瞬間へのタイミングを図っていた。
指を激しく抜き差ししながら。
“ここや、ここが若狭の中や。ここに入ってったらほんまに気持ち良さそうや…。
それにほら、若狭も気持ち良さそうな顔してる。はよう来てくださいって言うてる…”


377:草々×若狭8
08/04/13 02:44:34 b7miz8Ov
チュンチュンと小鳥の鳴き声がして、草々は目を覚ました。
あるはずのない毛布がかかっていた。
窓から差し込む光に、少しずつ頭の中がはっきりして来て、昨夜見た夢も
まざまざとよみがえる。
「若狭を抱いた…。この手で、この体で。」
夢というにはあまりにもリアルだった。若狭の肉体の感触が、
この口に、指先に、そして…に確かに残っている。
まさか、大体こんなところにあいつが居る訳もないのに、ただの夢や。
雨に打たれて昨夜ものすごい寒気がして、いつのまにか寝てもうて…
それで、こんなけったいな夢見たんや。アホか俺は…
気を取り直しクシャクシャ頭をかくと、玄関が開く音がし、誰かが入ってきた。
「…若狭?」
「良かった。熱下がったんですね。これ飲んで下さい、ホットミルクです。」
いるはずのない奴が現れて、なんのためらいもなく額に手を当てて、ニッコリと笑いかける。
いっつもおどおどしてるくせに、今日はやけに自信たっぷりの頼りがいのある顔をして。
やっぱり、昨夜から若狭はここにいたのだ。この毛布がなによりの証拠。
それじゃああの、昨夜の官能的な恥ずかしい夢は、ホンマやったんか、それともただの夢なんか…?
大阪へ帰るために荷物をまとめながら、若狭の顔をチラチラと伺う。
「おい、若狭、昨夜な…。お前の夢見た気いすんねんけど…」カマをかけて見る。
すると、毛布をたたむ手を一瞬止めて若狭は幸せそうに微笑んだ。
「私も…草々兄さんの夢、見た気いするんです。」
そう答えるとくるりと向きを変え毛布を返しに玄関を出て行った。
ということは、どっちやねん…病み上がりの恐竜頭では、答えも出ず、
そしてそれ以上何も聞けないまま、草々は大阪徒然亭へと帰っていった。


378:名無しさん@ピンキー
08/04/13 02:54:09 b7miz8Ov
以上です。
PART1読み辛くてすみません。

読んでくださった方、ありがとうございました。
長い割にあっさりしたエロですが、
喜んでくれる方がいたら嬉しいです。

379:名無しさん@ピンキー
08/04/13 04:19:44 D+qo4kWz
“草々兄さん、こんなになってしもて”

いや、死んだかと思ってびっくりしたw
楽しく読みました

380:名無しさん@ピンキー
08/04/13 08:03:29 3xOUkvde
>>369
GJ
女じゃなくて妹弟子でなきゃいけなくて、せつなくなる若狭萌え。

>>379
 _,,..,,,,_
/ ,' 3  `ヽーっ
l   ⊃ ⌒_つ
`'ー---‐'''''"
きれいな顔してるだろ。 眠ってるんだぜ、それで….

もまいのレスで、このAA思い出しちゃったじゃまいかw

381:名無しさん@ピンキー
08/04/13 09:40:15 b7miz8Ov
>>369です。

>>379>>380さん読んで頂き、ありがとうございました!
ちりとてらしく、ちょっと笑える部分も入れたかったのですが、
力不足でこの程度のものしか書けませんでした…


382:名無しさん@ピンキー
08/04/13 10:27:21 yw61qdVo
>>369
GJです!
エロいことしてるはずなのに、思春期の少年少女のような甘酸っぱさ。
この夫婦大好きだ。

383:名無しさん@ピンキー
08/04/13 14:37:19 1736SwcV
>>369
乙です!久しぶりの草々×若狭で嬉しいです!
続き楽しみに待ってます

384:名無しさん@ピンキー
08/04/13 22:47:13 b7miz8Ov
>369です。
>>382>>383さんどうもです。
続きなんて思いもしませんでした…
無邪気にエロい草々若狭の雰囲気が出てたなら嬉しいです。

385:名無しさん@ピンキー
08/04/14 07:55:52 XDFVisUJ
テレビ終わったのに全然熱が冷めず、今頃初めてこのスレに来ました。

みなさん文章力スゴいですね!
四草×若狭、小草若×若狭、をずっと心に思っていたので
テレビでは物足りなく思えていた部分を完璧に補って貰えました!
ありがとうございます。
願わくは、もっと早くこのスレを知りたかった~(>_<)

どなたか、携帯から過去ログの見方教えていただけませんか?お願いします。
ぜひ、前スレも読みたいです!

386:名無しさん@ピンキー
08/04/14 10:07:45 bpt9lTip
流れ読まずに投下させて頂きます。
喜代美→草々×A子 あとちょっと。
語り手が目まぐるしく変わるので、タイトル欄に語り手を入れています。
長くてエロ弱いです。そんなので良かったら読んだって下さい。 
時期的には、ブラックA子が徒然亭を訪ねてきたところです。

387:喜代美→草々×A子 1(清海) 
08/04/14 10:09:05 bpt9lTip
みひつ-の-こい【未必の故意】
自己の行為から、ある事実が発生するかもしれないと思いながら、
発生しても仕方がないと認めて行為する心理状態。故意の一種。

  
  ****************************


(B子がいたら、その時は帰ろう。でも、もしいなかったら。)
懐かしい界隈の近くを、和田清海は徒然亭へと向かっていた。
かつてテレビでももてはやされた美貌は、けれど今は少しすさんで見えるかもしれない。
(いなかったら…草々さんを。もう一度、草々さんと。)
でも、草々さんはもうあの子と結婚しているのに。これは…罪ではないのか?
懐かしい、かつては親友とも思った少女の笑顔を思い出しては心が痛む。その繰り返し。
迷いは清海の足取りを重くさせ、表情に影を落とさせた。
いっそのこと引き返してしまえば楽なのに、とも思う。
けれど歩みを止めて引き返すには、自分の心はあまりにも乾きすぎていて。
あの角を曲がれば、もうそこは徒然亭。あのひとのいる、徒然亭―。

「あ…」
意を決して曲がりかけたとき、ちょうど角を曲がりかけてきた一人の男の姿が清海の目に映った。
男のほうも清海の姿に気づき、ほんの少し目を見開く。もしかすると驚いた表情なのかもしれない。
あれは確か…B子のすぐ上の兄弟子の、、、
「徒然亭、四草さん?」
ほとんど、というより少しも話したことはないけれど、にぎやかな徒然亭の面々を
一歩引いて見つめていたという印象の男だった。少し苦手と感じる相手ではあったが。
「お久しぶりです。前にお会いしましたね。和田、清海です。」
「…若狭の」
どうやら自分のことは覚えていたらしい。
「大阪出てきたから、久しぶりにB子に会おう思うて。」
「へえ…」
どことなくこちらを見透かすような目。やはり苦手な相手かもしれない。
「そしたら、失礼します…」
軽く会釈して歩みはじめた時、後ろから低い声が響いた。
「今、若狭いませんよ。」
はっとして振り返る。なんとなく自分の頭の中を読まれているような落ち着かなさに襲われる。
「そ、そしたら今日は、帰ろうかな…」
「…でも草々兄さんは、いますよ。」
「え…」
「久しぶりに懐かしい顔見たら、喜ぶ思いますよ。」
言って、男は薄く笑う。
「…『次の御用日』いう落語、知ってますか?」
男の言いたいことがよくわからないままに、清海はあいまいにうなづく。
「え、ええ…。前に落語見に行ったときに…。」
確か草々さんと、何回目かのデートで行った落語会でかけられていた。「アッ!」という奇妙な
声の連発がなんとも面白くて、「あれは落語家の咽つぶしや」と苦笑する草々と微笑みあったっけ。
懐かしい、幸せな恋。思い出すだけで胸が締め付けられるような思いがした。
「あれに出てくる“とおやん”。昔からあれが草々兄さんの理想の女やったそうですよ。
 か弱あて、男が守ったらなあかんと思わせるような娘です。」
淡々と、男は語る。男の意図が読めず、清海はただ聞いていることしか出来ない。
「そのとおやんが、貴女にとても、似ていたんでしょうね。」
それだけ言うと、雷に打たれたように固まる清海を残して、徒然亭四草はきびすを返した。
だんだんと遠くなる徒然亭四草の後姿をぼんやりと見送る。心にわき上がる思いは唯一つ――
(草々さんに、会いたい――)


388:喜代美→草々×A子 2(清海) 
08/04/14 10:10:01 bpt9lTip
「A子ちゃんやないか!!ほんま久しぶりやなあ!」

懐かしい笑顔。よく響く大きな声。
久しぶりに会う草々さんは、以前と全く変わっていなかった。いや、以前よりも落ち着いて、
声に張りがあるかもしれない。弟子を取ったということだから、落語家として充実しているということなのだろう。
あたたかく自分を迎えて、嬉しそうな表情で近況を語る草々さん。もう自分とのことは、無かったことなのだろうか?
「A子ちゃんに振られた時は俺も落ち込んだけど、若狭の言うてた通り、時が解決してくれるもんやなあ」
ついでのことのようににこやかに語る。B子の高座名を口にする草々さんに、胸が焦げそうな想いがする。
(ほんまやったら。私が。このひとのそばにおったはずやのに――)
無骨で大きな手。明るい笑顔。不器用な優しさ。全部私のものだったはずなのに。
そんな清海の心中など知らぬげに、草々は続ける。
「ああ、折角きてくれたのに今日、若狭おらんねん。俺は今から落語の稽古せなあかんけど―」

(いかないで)

立ち上がりかけた草々さんを引き止めるように、思わず口を開いていた。
「あ!あの、一つお願いしてもええですか?」
草々さんは少し意外そうに、けれど優しく微笑んだ。
「ん?なに?」
「…落語、聞かせてもらえませんか?」
「ええけど、、ほな何にしょか?」

(あれに出てくる“とおやん”。あれが草々兄さんの理想の女やったそうですよ。)
徒然亭四草の低い声が、閃光のように頭にひらめく。
(そのとおやんが、貴女にとても、似ていたんでしょうね。)

思い出して。どうか、私のことを。
小さく息を吸い、呼吸を整える。奇妙に声が震えないように。

「そしたら『次の御用日』…お願いします。」

その瞬間、草々さんの明るい表情が、ひび割れたように凍りついた。



389:喜代美→草々×A子 3(草々) 
08/04/14 10:11:20 bpt9lTip
久しぶりに訪ねてきた清海の姿に、なぜか心が騒ぐのを必死で無視していたのに。

『次の御用日』――。
清海の口からその言葉が出た瞬間、草々の胸には激しく、ささくれたような痛みが走る。
無意識に、この何年間も避けていた落語。
とおやんの姿を思うたび、かつて自分に向けられたはかなげな笑顔が思い出されて、頭から離れなくなるから。
自分を一心に見つめる清海の姿に、懐かしい日々が重なる。

化石を見つけたのは自分ではなくB子だったのだと、涙ぐんで自分に告げた清海。
作った料理を食べる自分を、「おいしい?」と心配げにうかがう清海。
一緒に落語会に行って雨に降られ、濡れた瞳で自分を見上げる清海。

忘れていたはずの、時が解決してくれたはずの想いだったはずなのに。
「そ…そやな。あれやったら、はめもんなしでいけるしな。」
心とは裏腹に、口は勝手にそんな言葉を紡いでいる。
けれど心のさざなみは、予想以上に大きくて。口慣れた『次の御用日』の冒頭が出てこないくらいに。
「え、ええと…ちょっと待ってな。」
埋もれていたはずの遠い日々があふれてくるのを、止める術もなかった。
初めて会った時から、心を奪われた。
知れば知るほど、なおいっそう恋焦がれた。
この子を、自分が守りたいと思った。ただただ夢中で恋した。
今の若狭に向ける穏やかな想いではなく、それは燃やし尽くすような想い。
東京へ行って夢を叶えたいと清海が自分に告げた時の、絶望にも似た苦しみを思い出す。
行かないでくれと、声を枯らして叫びたかった。どこにも行くなと。俺の傍にいろと。
だから、清海が居なくなってどうしようもない虚無感に襲われた。
だから、想いを封印した。

なのに、どうして。どうして今になって。

「…々さん、どないしなったんですか?草々さん?」
清海の声が自分を呼んでいるのに気づいて、はっと顔を上げる。
見上げると、そこには心配そうに自分を見つめる女の顔。自分が、たまらなく恋した、女。
「なんで…」
「草々、さん?」
「なんで今になって、戻ってくるねん…」
否応無しに思い知らされる。時は全く解決の役には立たなかったことに。
「草々さんに…草々さんに会いたかったから…」
その不安に揺れる瞳。はかない表情。引き寄せられるように細い体を抱きすくめる。
「そうそう、さん…、、私、私、、…草々さんが…」
言いかける唇をふさぐように激しく口づけた。

頭のどこか奥のほうで、若狭の泣き顔が見えたような気がした。



390:喜代美→草々×A子 4(喜代美) 
08/04/14 10:12:23 bpt9lTip
買い物がすっかり遅うなってしもうた。
今日は木曽山君が用事で出とる日やから、あれやこれやとせなあかんことが重なって。
木曽山君、ウソツキなんは大問題やけど、ほんまにようてきぱき仕事する子やから、
普段ずいぶん助けてもらっとるんやなあって、こんな時に実感する。
師匠の家にやっとのことで帰り着き、ふと見ると玄関には見慣れない女物の靴があった。
誰やろ…?
お客さんが来るのは珍しくはない落語家の家だから、女の人が来ることもあるけれど。
なぜか、胸騒ぎがした。
頭をひとつ振って、奇妙な胸騒ぎを追い払う。
昔から自分には、妙に心配性なところがあるから。
勝手に妄想して、勝手にへこんで、勝手にひがんで。その結果…ドツボにはまる。
あかん、まだB子パターンが抜けきってへんのやな…。
苦笑いして、買ってきた物を片付ける。
客間からは何か物音がしている。やっぱりお客さんやったんや。お茶ださんとなあ。
そんなことを思いながら、まずはお客様に挨拶をしようと、客間を覗き込んだ。

覗き込まなければ、良かったのに。

そこでは。

草々兄さんと、女の人が、裸で。

すっかり見慣れた草々兄さんの大きな背中。そこに回された見慣れない白い腕。
草々兄さんの下でのけぞる白い首。その先に続く、快楽に紅潮した表情を見せる美しい顔は。
まぎれもなく、A子だった…。
草々兄さんが腰を大きく打ちつけるたびに、A子の口から細い喘ぎ声がもれる。
繰り返されるぐちゅぐちゅと湿った音。いやらしい、いやらしい音。
草々兄さんはA子の形のいい脚を持ち上げ、よりいっそう深くつながる体勢をとる。
大きく衝かれて甲高い悲鳴をあげて大きく体をそらし、より一層深い快感を得ようと
草々兄さんの動きにあわせるように腰を振る。あのA子が。

目が、離せなかった。
一声あげれば良かったのだろうか?
それとも黙ってその場を去れば良かったのだろうか?
そのどちらも、できなかった。多分、衝撃のあまりなのだろう。よくわからない。
せめてそのどちらかでも出来ていれば、この先を見なくて済んだのに。

草々兄さんの動きが、A子の細い体が壊れそうなほどにどんどん激しくなり。
A子の中に、草々兄さんがすべてを吐き出したその瞬間。
A子が。
こちらを見ていた。
罪悪感に震える目で。申し訳なさそうな目で。
けれど、見間違いようもなくその目の中に踊るのは、残酷な愉悦。勝利の表情。
自分を見つめたままのA子の唇の端が、わずかに笑みの形を作った瞬間。

耐え切れず、喜代美はその場を駆け去った。




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