08/11/04 02:59:42 r6eT/4Jj
「落ち着いてられるか!そもそもあんたがこんなとこで
スケベ根性だすからこんな事に!」
「先に変なちょっかいかけてきたのはおまえだろ!?」
「あーもうわかったから。あたしは筆箱とりにきただけ。
もう帰るからあとはご自由に。」
仲間割れを始めた二人をよそに、亜美は教室を出た。
限界だった、仮面を被るのなんて亜美にとっては、息をするのと同じくらい超簡単。
でも、あのまま二人の前にいたら、そんな簡単な事すらできなくなりそうだった。
「何やってんだかあのバカップルは…」
あれやこれやを経て、あの二人は正式に付き合いだした。
亜美自身もその過程で少しばかり手を貸したりもした
だから、これは当然の事。
高校生ともなった男女が付き合うならば、当然の事。
覚悟なんかとっくにできていた。
それを目の当たりにしただけで、自分はなぜこれ程ショックを受けているのか。
「ちくしょう…。」
そもそもあの二人の間に割り込む隙はほとんどなかった。
こっちにきて、初めて友人と呼べる人たちに出会えた。
そのうちの二人が、想い合う二人が一緒になるならそれは素晴らしい事だと自分に言い聞かせ続けてきた
「ちっくしょお…。」
なのに、涙が溢れて止まらない。
何を今更、納得づくの事じゃないか、
そもそもあんな鈍い男こっちから願い下げだ、と、
どれだけ考えを重ねても、止まらない。
「な、なんで…、なんでよりによってあたしがあんなとこ…!
神様なんかぜってえ信じねえ…!」
例えば、大河より実乃梨より早く、自分が竜児と出会っていたら
例えば、もっと強引に、もっとあからさまに、
あの鈍い男に自分の全てを隠さずぶつける事ができていたら
もしかしたら、こんな想いはせずに済んでいたのかもしれない
でも、現実にはそうならなかった
「だめな女だな…、あたし…。」
嘆いていても現実は変えられない、あんな事はとっとと忘れよう。
明日になれば、また仮面を被れる。大河とも、竜児とも、いつもどおりにやれる。
そうするしか、ないんだから。あたしならできる。
そう明日の覚悟を決めた亜美だが
今流れる涙を止める術は見つけられなかった。