08/04/22 19:19:23 ASHEnk8I
それでは、お言葉に甘えて。
「迷宮2」20Fのクエスト「豪傑の過去」のネタばれがありますので、ご注意ください。
1.
店、開けるのはまだいいのかい? ……そう?
まあ、あんたのまずい酒、金払って飲みに来るなんて客、それこそ酔っ払いでもなきゃいないわよね。
あはは、そんなにムキになんないの!
あんたみたいに、いろんなこと考えられる奴は、立派だと思うよ。あたしは、だめだ。
冒険者なんて、いつまでも続けられる商売でもないしさ。どっかで野垂れ死にするのがお似合いだよ。
……なんで、そこであんたが怒るのよ。よくわかんないなあ。
あたしさ、小さいころから、見たこともない、本当に誰も行ったこともないような場所、そういうところを、自分の足で
見つけてみたくてさ。
絶対自分は冒険者になって、そういう場所を探し出してやろうと思ってた。思ってたっていうか、そうなるもんだって確信してた。
家族の反対? そりゃあんた、ものすごかったに決まってるじゃない!
15,6の娘がだよ、手が血まみれになるまで剣の稽古したり、レンジャーの後ろくっついて洞窟入ったりしてるんだ。
あたしが親なら許さないね。もちろん、あたしの親も許さなかった。
家を出て、いろいろ苦労はしたさ。でも、何ていうのかな、そうやってあてどもなく旅をしているあたしが、本当のあたしなんだって、
そう感じてた。あたしの体は家の中で生まれたけど。魂はきっと、どこか遠く、風の吹く場所で……
っとと、いい年した女がしらふで話すことでもないね、こりゃ。
ねえ、お酒ないの? あはは、またそんな顔して。さっきのは冗談! あんたの酒は絶品だよ。自信持ちな。
くー、うまい! 只酒ならさらに美味い! あ? けちくさいこと言わないの! そんなんだからモテないんだよ。
ほらほら、ムッツリしちゃって。いい男がやるんなら様になっても、あんたじゃ叱られたガキ大将にしか見えないよ!
そーそー、そうやって黙っておねーさんにお酒注いでればいいの。あたしだっていい男が居ないのを我慢してんだから。
ん、どうしたの?
……へ? やだ、何企んでんのよ。あたしみたいな百戦錬磨はね、見え透いたお世辞には……
んぅ? ん……? ぷは……。
ちょ、ちょっとどうしたの。冗談にしちゃ度が過ぎてない?
本気って……え? あんた、本気で言ってるの?
……。
いやじゃ、ないよ。厭じゃないけどさ。
あたしは、ほら、店に来る他の娘らみたいに若くないし、筋肉だってついてるし、顔も威張れるようなモンはついてないし。
!!
や、やだな。あたしは馬鹿だからさ。本気に、しちまうよ?
……うん、わかった。ありがと、ね。
店、開くまで時間あるんだろ?
部屋まであんたが連れてってよ。
あたしだって、女だしさ。それくらいはいいだろう?