08/03/18 02:43:16 +8Al5i5S
ふむ、良くは解らないがそういうものなのだろう。
「あんたのほうは本当に良いのか? ウ○コ味のカレーなんだろ?」
「……まぁ、認めたくはありませんが、これでもサキュバスですからねー、
一度勢いに乗ってさえしまえば、割と平気です。という訳で―」
そして淫魔が微笑んだ。
「―よろしくお願いします」
それは。
さっきまでの道化た態度など、全てが擬態だと言わんばかりの、妖艶な笑みだった。
「……で、何で毎晩毎晩俺の夢に現れる」
「すいません、貴方の味がどうしても忘れられなくて……」
「毎日親にバレないように下着を洗濯するほうの身にもなってほしいんだが。
大体、必要なだけしか食事しないんじゃなかったのか?」
「だって、しょうがないじゃないですか!!
生まれ変わってから初めて『食事』を美味しいと思ってしまったんですよ!?」
「……そりゃー光栄な事で。で、これから二十年後まで付きまとうつもりか?」
「お望みであるなら一生涯」
「……あんた、中身は男なんじゃなかったのか?」
「所詮はサキュバスだった、という事なのでしょうかね。
それでも他の野郎どもを喰いたいとは少しも思いませんが。
でも相手が貴女であるなら、例外中の例外です」
「何故か字面が激しく気になるんだが、まぁいいか。……俺が干からびない程度で頼むぞ?」
「はい♪」
END
201:名無しさん@ピンキー
08/03/18 10:39:37 VZDObRsS
ギャグマンガを読んだ気分になりました。
202:名無しさん@ピンキー
08/03/18 11:51:11 //e/k5eI
すれたガキだなーw
203:ふう@ピンキー
08/03/20 01:32:26 dazHR4DH
こんばんわ。
遅筆でなんですが、しぃちゃんの続きの投下します。
つかまだエロまでたどりつかねぇ。。
では短いですが、まったり投下。
204:大塚志乃
08/03/20 01:34:30 dazHR4DH
5時間目が始まるまでの僅かな時間、志乃まわりにはクラスメートの人だかりができ、
質問攻めの嵐だった。
「ねーねー、大塚くん。すごい久しぶりだね! 初めてみた時はびっくりしちゃったよ~。」
「はは。。 まあね。」
「なあ志乃。こんな風になってたなんて、おれらびっくりしたんだぜ!」
「うるせーよ。おれだって最初はすげー驚いたんだって!」
最近は女性のような柔らかい口調に慣れてきた志乃だったが、
昔の男友達に話しかけられると、つい昔のような口調で話してしまっていた。
女なのに男っぽい口調でしゃべること、または女のようなしとやかにしゃべること、
交互に現れるその相反するふたつの行動は、どちらをとっても小恥ずかしさがあった。
「そういえばさ、由衣ちゃんまだ具合よくならないの・・?」
一人のクラスメートの女子が、突然、由衣のことを尋ねてきた。
一瞬、言葉につまった志乃だが、
冷静に、言葉を選ぶように、
「うん。もう身体の方はいいんだけど、でもまだ調子が悪くて、退院はしたんだけどまだ親戚に家で療養しているんだ。」
「そう。。また早くあいたいな。。」
由衣は表向き、交通事故にあったということになっている。
由衣があのレイプ事件で身も心もずたずたにされたことは、この学校では志乃だけが知ることだった。
「・・でもさ、きっと具合がよくなったら、また登校してくるよ!大丈夫さきっと!」
「そうよね・・! あーお見舞いとかいきたいけど、親戚の家ってどこだろう~。遠いのかなー。」
205:大塚志乃
08/03/20 01:36:27 dazHR4DH
そうこう話しているうちに、一人の学友がとんでもない事を言い出してきた。
「なあ大塚。ずっと気になっていたんだが、それ、マジで本物なのか。。!?」
その男の視線は、志乃のブラウスの下から盛り上がる大きなふくらみを直視しており、
なんのことをさしているのかは一目瞭然だった。
「え・・!? あ、胸のことか?」
「ああそうだよ。マジででけーじゃん。やっぱ本物か?ちょっと触らせてくれよ!」
言うが早く、その男の手は志乃の胸に掴みかかろうとしたとき、
突然、その横から平手が飛び出し、その不埒な手を払い落とした。
「いてっ!!」
「バカ男子!! なに触ろうとしてんのよ!この変態!!」
横からすごい剣幕で出てきたのは、最初に志乃に声をかけてくれたクラスメート、
宮田遥だった。
「いてーな! 別にいいだろ!?大塚は男だったんだから、胸くらい触ったっていいじゃんか!」
「いいわけないでしょ! 大塚くんは女の子なんだから、そんなコト絶対ダメ!!」
「んなこと言ってもほかにも気になることあるんだよ!
なあ大塚、オマエさ、そのスカートの中、女モンのパンツはいてんの?マジ??」
「な・・!? オマエなに言って・・。」
突然話をふられ、思わず言葉に詰まり顔を赤面する志乃。
それをみてさらに怒りの色をあらわにした遙はさらに怒鳴り始めた。
それに従うように、周りに女子も反発し始めた。
輪の中心にいる志乃は、思わず反応に困り、呆然とするだけだった。
206:大塚志乃
08/03/20 01:38:37 dazHR4DH
「うるせーよてめえら。もういいや。じゃあまたな、大塚。」
吐き捨てるように言うだけいって退散し、残った男子も徐々に散り始めていった。
そした遙は志乃の手を軽く握り、まるで言い聞かせるように喋りだす。
「大塚くんね、もう女の子なんだから、困った時は女の子同士、私たちになんでも相談してね。きっとよ!」
これが女の連帯感なのか、男たちが相容れぬ垣根なのか、
今自分が初めてそちら側に入ったとき、それをしみじみと感じてしまった。
(あ、今宮田と手を握っているよ。。)
こういう風に簡単にスキンシップがとれるのも女同士なんだよな、と志乃は思った。
その頃、教室のすみで、その姿をとおまきで眺めている男子グループがいた。
さっき、志乃の胸を触ろうとした大場と、その仲間たちだった。
「なんか大塚のやつ、すっかり女どもの仲間って感じか? なんか違う人になったみてー。」
愚痴るようにこぼすツレに対し、大場は視線を動かさないまま応えた。
「なあに。大塚は元々同じ男同士だったじゃねぇか。きっとまた仲良くやれるよ。。」
そしてまた大場のグループとは別に、
最初は一人輪の外から志乃の様子を伺っていて、そして今も遠目でみている男子が一人いた。
(大塚君。。君ならきっとボクと・・。)
その小柄な男子の目には、期待半分、不安半分が入り混じったものがあった。
207:ふう@ピンキー
08/03/20 01:40:39 dazHR4DH
短いですが、ここまでです。
とりあえずフラグはたった感じですww
でも伏線ばっかでエロまでなかなかいかねぇ。。
明日は休みなので、早めに続き書きたいです。
208:名無しさん@ピンキー
08/03/20 07:24:55 i00G45Er
>196-200
おお!おもすれぇ
相手の設定にムリがあってもキャラ立で押し切れてるよw
209:名無しさん@ピンキー
08/03/20 08:16:44 cRJI3VP/
しぃちゃんの続き待ち望む人。
210:名無しさん@ピンキー
08/03/20 09:24:21 ajjyvnWC
つ
211:ふう@ピンキー
08/03/21 00:35:32 KN8IBFq2
しぃちゃんの続きを投下します。
やべー、思ったりエロまでの道のりが長いww
今回もあまりえろくないです。←毎回いってんなこれ
212:大塚志乃3
08/03/21 00:36:44 KN8IBFq2
志乃は病院では暇を持て余していた。
特に病院でやることがなかった志乃は、なにげに勉強を自主的に行っていた。
女になったばかりでまだ女としての生活習慣がなく、
特になにかをしたい、というのがなかったのだ。
そのせいか、男の時とは別人のように勉強が出来るようになっていた。
5時間目の数学が始まり、数学の教師が試しに質問すると、難なく回答出来る志乃。
「なんだ大塚。積分法をつかったこんな計算ももう出来るのか。」
「はい。一応、やってました。」
周りからは感嘆の声があがる。
先生もまるで別人を相手にしてるような錯覚を起してしまう。
(やべ。いくら暇だからって、ちょっと先に進みすぎたか!?)
男子の頃はけして勉強が出来ないというわけではなかったが、学力は至って普通のレベルだった。
なぜかここにきて、勉学優良な女生徒、というヘンなイメージが出来てきてきそうになる。
213:大塚志乃3
08/03/21 00:37:53 KN8IBFq2
そして5時間目も終わり、志乃が急いで帰ろうとすると、帰り際に遙が声をかけてくる。
「ねえ大塚くん、帰り一緒に帰ろうよ! 同じ方向だしね!」
「ああ、そうだな。いいよ。でも宮田って、剣道部は?」
「だって3年でしょ。この前のインハイ予選でもう引退よぉ~。」
「ああそうだったんだ。てことは負けちゃったのか。。残念だったな。」
「うん。でも結構がんばった結果だし、仕方ないよ。でも、今でもたまには部活に顔だしているよ。」
遙は剣道部に所属していた。
格技場が、半分が畳、半分が板の間なので、剣道部と合気道部はよく同じ時間で稽古をすることが多かった。
遙は身長が155cmで、身長があるわけではないが、足腰のバネが強く、
遠間から一気に飛び込んでいく打ち込みを得意としていた。
志乃も男ときも遙とは結構仲がよく、刀捕りの練習相手としてよく打ち込んでもらったりしてた。
(そういえば部活の方はどうなったんだろ・・。引退はまだ先だったと思うけど、顔だしづらいなぁ。)
「ねぇねぇ、大塚くんもさ、また部活に顔だしたら?またあたしが練習相手になってあげるよ!」
などと考えていると、遙の方から部活に誘う言葉ができてきた。
考えていることをいきなり言われて、思わずうろたえる志乃。
「はは。。そうだな。そんときはまたよろしく頼むよ。」
「大塚くんって、あたしが打ち込んだ面をスルってかわしたと思うと、いつのまにか横に現れて、
気がついたらうつ伏せに押し倒されているんだもん。結構びっくりするよあれって~。」
「でも、あんなの3回に1回ぐらいしかきまんないよ。ビニール刀でなかったら頭にこぶだらけだよ。」
剣道着姿の遙が思い起こされる。
長いストレートの髪を後ろにひとつで結わき、
紺の袴に身を包んだをその凛々しい姿が記憶の底から目に浮かびだす。
竹刀を構えたその姿に相対してみると、その眼力に大抵の男だったらたじろくほどだった。
214:大塚志乃3
08/03/21 00:39:40 KN8IBFq2
「ふふふ。そうね~。 ねぇ・・大塚くん。」
「ん? なに?」
「しぃちゃんって・・、名前の方で呼んでもいいかな??」
「ん? あぁ、別にいいよ。」
「ほんと? よかった!! じゃあこれからも仲良くしようね! しぃちゃん!!」
「あぁ。よろしくな。」
それは傍からみると普通の仲の良い、女学生二人組の会話だった。
「ところでしぃちゃんって、しゃべり方がたまに変るよね?
なんか女の子ぽかったり、昔の感じでしゃべったり。。」
「んーまあな。一応、初対面の人とかにヘンに思われないように気をつけてしゃべってはいるけど、
なんか昔の友達にあうと、やっぱり昔の感覚でしゃべっちゃうよ。照れくさいしな。。ははは。」
志乃は少し頬を赤らめて、口元が軽く緩む。
「そっかー。でもいいんじゃない?しゃべりやすい方で。」
「あぁ、宮田は気兼ねなくしゃべれて楽だよ。」
「あ、宮田じゃなくて、わたしも名前でよばれたいなぁ~。」
「ん?そうか? じゃあ、はるか。 遙でいい・・?」
「うん!!いいよ!っふふ~。」
そして楽しく話していると時間がたつのが早い。二人は分かれ道にさしかかったとき、
遙が少し前にかけだすとこちらを振り向き、
「じゃあしぃちゃん、また明日ね!」
「ん、じゃまたな。」
「あと明日は体育があるから、体操着忘れないでね。」
「あぁ、そういえばそうだったな。わかったよ。」
「バイバイ!」
「ああそれじゃ。」
215:大塚志乃3
08/03/21 00:40:45 KN8IBFq2
遙は大きく手を振ると、てけてけと自分の家路に向かって歩き出した。
そして志乃もそれを見送ったあと、自分の家に向かって少し早歩きで向かう。
徐々に歩く速度が増していき、志乃は駆け込むように自分の家に飛び込んだ。
そして制服のままトイレに駆け込み、急いでショーツをおろし、便座に腰かける。
ゆっくりと尿道の力を緩めると、志乃の陰部から小水が流れ始めた。
「はぁぁ、ちょっとやばかった。。いくら昼からきたとはいえ、漏れるかと思った。」
用をたし終えると、わずかに濡れている自分のあそこを軽く拭き取り、
そのまま立ち上がりゆっくりとショーツを履きなおす。
「ふう。。なんか女の身体って、これ我慢するのキツくなった気がするな。。
でもさすがにまだ学校でする度胸は・・ない。」
志乃の新しい学校生活は、まだまだ前途多難を示していた。
216:ふう@ピンキー
08/03/21 00:44:31 KN8IBFq2
今回も短いですが、ここまでです。
ちなみに遙ちゃんは、最近はまっているドラマ「鹿男あをによし」で、
堀田イト役を演じている「多部未華子」をイメージして書いていますww
堀田も剣道部だしww
217:名無しさん@ピンキー
08/03/21 01:13:16 SbjfkJF7
投下乙です。
今回も期待して読ませていただきます
218:名無しさん@ピンキー
08/03/21 01:20:58 LAuzwHXJ
GJ!
続き待ってます
219:名無しさん@ピンキー
08/03/21 01:37:22 cMiSP8CX
しぃちゃんは俺がこのスレに常駐するきっかけになった作品なので
復活してくれて大変うれしい
220:名無しさん@ピンキー
08/03/22 03:06:35 ZjNxjIFe
少しずつ、みんなの力でこのスレに活気を取り戻そう!
221:コロコロン
08/03/23 19:23:13 qTFZLbF0
別サイトで長編を書いているのですが、ここの住人の方達に応援のお言葉などを頂きとても日々感謝しております。
質問なんですが、別サイトでの作品の外伝をこちらで書くのは皆様方的には大丈夫でしょうか?
無理でしたら、魔法系でも投下しようかと、このスレの少しでも力にでもなれればと思います。
222:名無しさん@ピンキー
08/03/23 21:28:55 bP+vawS5
どんどん投下してくれて結構。あっちもこっちも期待してますよ。
223:名無しさん@ピンキー
08/03/23 22:02:32 0ZhX1rtB
コロコロンさん投下してくれくれるのは嬉しいけど、いつもageないでsage進行でお願いします。
224:名無しさん@ピンキー
08/03/23 22:21:40 ZpUEg+ao
( ゚д゚ )
225:名無しさん@ピンキー
08/03/23 22:22:39 p5HN6Hzy
>>221
読んでやるからとりあえず投下してみろよ。
226:名無しさん@ピンキー
08/03/23 22:38:50 WsXVN0J8
とりあえずsageろよ
227:ふう@ピンキー
08/03/24 01:02:45 8Tr9d6xu
しぃちゃんの続き投下します。
短いのでなかなかエロに到達しませんがw
228:大塚志乃4
08/03/24 01:03:34 8Tr9d6xu
再び登校するようになってから二日目の朝を迎えた。
家をでる時間よりも1時間半は早起きをして、志乃は起きがけのシャワーを浴びている。
まだ朝の静かな空気の中で、志乃の家の1階ではシャワーの音だけが流れている。
元々志乃が育った実家の家には母親が戻ってくることになり、志乃も一人暮らしのアパートを引き払って戻ってきたのだ。
この前のアパートの時とは違い、静かの住宅地の中にある一戸建てのこの家は、
志乃と母親の二人で住むにはまだ少し広かった。
(はぁぁ。。気持ちいい・・・。なんでシャワーがこんなに気持ちいいんだろ・・。
多少の早起きもあまり苦にならないなんてな。。)
去年の今頃だったら、学校があってもまだ寝ているような時間だが、
初夏に入ってからだんだん寝汗をかくようになり、朝起きるとまずシャワーを浴びる習慣が出来てしまった。
寝汗が気持ち悪い、というのもあるが、朝起きてから浴びるシャワーがとても気持ちよかったのだ。
どうも女になってから、お風呂やシャワーを浴びる行為がとても気持ちよく、心地よいものに感じるようになり、
湯船の時も少しぬるめのお湯に入り、ずいぶんと長湯するようになってしまった。
229:大塚志乃4
08/03/24 01:04:30 8Tr9d6xu
流れるシャワーのお湯が、肩から胸の谷間、おなかから足の方にと、絶えることなく流れていく。
肌をつたうお湯がすごく気持ちよい。
湯気を帯びた雫を全身に浴びていくと、志乃の身体のすみずみの細胞が段々と活性化していくのが感じる。
志乃は全身が目覚めてきたのを感じると、名残惜しむようにシャワーの栓を閉じて、
お風呂場を後にする。
脱衣所で身体を丹念に拭くと、その大きめのバスタオルで胸からおしりのあたりまでを覆い隠すように巻きつけてから、
脱衣所をでて自分の部屋に戻る。
これは少し前に風呂上りで、裸のままタオルを肩にかけただけの姿で廊下を歩いていたら、
ちょうどその姿を母親にみられてしまい、
「ちょっと志乃ちゃん! なんて格好で歩いているよ!だらしない!!」
と、一喝されてからは、家の中でもタオルをまいて歩くようになったのだ。
部屋に戻ると上半身がまるまる映る大きな鏡が置いてある。母親が買っておいてくれたものだ。
志乃はタオル一枚の姿のままその前に座ると、ドライヤーで髪を乾かしはじめる。
志乃の髪は結構長いため、時間をかけてじっくりと乾かすことになる。
女性になってから芽生えた羞恥心なのか、志乃は少し見た目を気にするようになってきて、
風呂上りはちゃんとドライヤーで丹念に髪を乾かすようになっていた。
時間をかけてゆっくりと乾かした髪は、さらさらで潤おしさをもった髪となり、
鏡の中に映る自分の姿をみて、志乃は少し誇らしげな気持ちになる。
230:大塚志乃4
08/03/24 01:05:40 8Tr9d6xu
鏡の前から立ち上がると身体にまいてあるバスタオルを外し、まだ濡れている部分をよく拭き取ると、
タンスからショーツとブラジャーを取り出す。
「えーと、パンツはこれでいいとして、今日は体育があったな。。スポーツブラにしとくか。。」
志乃はその一見小さくみえるショーツをはくと、それは股間からおしりまでぴったりフィットしている。
次に胸全体をしっかりと覆うようなスポーツブラをつけた。
「よしOK。激しく動いてもあまりゆれなくていい感じだな。」
続けて壁にかけてあるブラウスとスカートを着る。
もうブラウスの右前のボタンを特に違和感なくつけれるようになってきた。
灰色に赤のチェックが入ったスカートをはき、胸元に赤いリボンタイを軽くとめる。
鏡にの前でその姿を確認し、その着こなしに満足した志乃は、
下の部屋におりて朝食の支度を始める。
母親は家でSOHOのような仕事をしており、夜も遅いことがあって起きてくる時間が不規則であった。
なのでだいたい志乃はかってにパンを焼いて紅茶をいれ、一人で朝食をとることが多い。
「おっともうこんな時間か。早起きしてもちょっとのんびりし過ぎたかなー。」
志乃は時計に気づいて慌てて身支度をし、家を飛び出すように出て行った。
231:大塚志乃4
08/03/24 01:06:29 8Tr9d6xu
----
「あ、大塚くんおはよー。」
「ああおはよ。」
「ちょっと美雪~! もう大塚さんだよね! おはよ!」
「はは。。 おはよー!」
教室につくと、クラスの女子たちが、顔があうたびに挨拶をしてくる。
男子の方は一人では声をかけてくるやつはあまりいなかった。
やはり女子の方が自然と馴染んでいくようである。
呼ばれ方も大塚くんから大塚さんに変ってきている。
そして遙もすでに教室にいて、志乃をみると声をかけてきた。
「しぃちゃんおはよー!」
「あ、えーと。遙、おはよ。」
「うん。ところで1時間目は体育だよ。ホームルームが終わったら、すぐに更衣室に移動だからね。」
「あ、そっか。更衣室ね。 うん。。わかった。」
更衣室ときいて、思わず言葉がつまりそうになる。
今まで男子の時は、女子がいなくなった教室で体操着に着替えていたが、
女子は更衣室を利用して着替えなくてはならない。
(おいおい・・。おれそこで着替えちゃっていいのか・・!?
そもそも入ってもいいのか!?)
心の中で少し焦りを感じつつも、ホームルームはあっという間に終わり、
遙に連れられ更衣室に向かうことになった。
232:ふう@ピンキー
08/03/24 01:08:01 8Tr9d6xu
今回はここまでです。
あまり話が進んでませんがww
早くしぃちゃんを犯したいなww
遙ちゃんも一緒にでもww
233:名無しさん@ピンキー
08/03/24 05:46:27 wSHV53AA
巨乳ネタや母乳ネタでオススメおしえて誰か
234:コロコロン
08/03/24 06:37:35 tuZ3M+5c
皆様、sage入れてなくてすいません(´・ω・`)
どうかお許しを。
あと、ふうさんGJです!自分もとりあえず早めに投下します。
235:名無しさん@ピンキー
08/03/24 20:53:06 6OOF7/hI
>>232
乙~
濡れ場期待してます
236:名無しさん@ピンキー
08/03/25 00:48:24 bC77+u8e
しぃちゃん投下乙です
237:名無しさん@ピンキー
08/03/25 19:39:01 FMpeVetr
イマイチだったな。
期待していたほどでもない。
238:名無しさん@ピンキー
08/03/25 21:48:02 jqR9F2Vo
じゃあひとつすごいのを頼むぞ>237
239:名無しさん@ピンキー
08/03/26 15:03:55 kpbYC78y
まだ始まってもいねーよ
240:コロコロン
08/03/26 19:51:20 IpHfY9FC
とりあえず投下。
タイトル
-神様のいたずら-
僕の名前は、結城夏樹 《ゆうきなつき》
年17才でちょっと女っぽい名前だけど、れっきとした男だ。
身長も160と小さく顔もよく女の子に間違えられるけど、れっきとした男だ。
くどいようだけど僕は男だ、喧嘩はしないけど強い自信はある。
ボクシングをしててジムのプロの人のパンチも見える、一般の人には負ける気はしない、喧嘩はしないけど。
とりあえずここで自己紹介は終わり。
今、僕はジムでトレーニングし終わって帰り道を歩いている。
時間は9時を過ぎていて、おまけにこの辺りは街灯が少なくかなり道が暗い。
変出者が出るそうだが、僕には関係ない。
普段通り歩いていると、見るからに変わっている女の子が僕の前に現れた。
ヒラヒラしてる服を着てアニメとかに出てきそうな……そう、魔法少女ってやつの格好。
へーんなの…まぁ関わらない方がよさそうだな…と僕が思って通り過ぎようとすると、
「ちょっと待ってください」
と声を掛けられ引き留められた。
「あのー、何か僕に用?」関わりたくないんだけど無視するのも悪いから、とりあえず僕はその娘に何の用なのか聞いてみた。
241:神様のいたずら
08/03/26 19:54:58 IpHfY9FC
すると、
「あのですね、今日神様が間違えをしちゃったのであなたにお伝えにきました。」
「はあ……?」
全く意味の分からない事を言ってきた。
これは新手の宗教勧誘かな…?
そんな僕の考えをよそに、その子は話を続けてくる。
「えっと、神様が地上の皆様を眺めていたらあなたを見て…そのぉ、あなたは男の性ですよね?」
その言葉に、どっから見てもそうだろ!とは言わず、
「男だけど、どうしたの?」
と答えた。
女の子は困った顔をし、何か言いにくそうにしながら話してくる。
「あのー、実は神様の間違いというか、イタズラであなたには女の性が似合うという事で今日の日付変更から性別を変えてしまうという事をしてしまったのです」
なんという妄想をしてるんだろうか、この子は。とりあえずはっきり言ってやろう、そんな事が起こる訳がないと。
「僕が?…明日から女?冗談はよしてくれよ、初めてあった名前も知らない人に神様だなんだ言われても、ワケわかんないし…そんな事起こるワケがないだろ?」
242:神様のいたずら
08/03/26 20:00:24 IpHfY9FC
「可哀想な、夏樹さん」
あれ…?
「なんで君…初めて会ったのに、僕の名前知ってるの?」
僕が不思議に思っていると、目の前の子はにっこりと笑って、
「天界からいつも見てましたから♪」
……????…天界?…
「私、メリッサって言います♪あなたとか言わずに初めから夏樹さんって呼んでおけば良かったんですね♪」
……そんな問題じゃないんだけど、意味不明な話に言葉がでない。
メリッサって子はお構いなしに一人で喋り続ける。
「はぁー、その中性的なマスクに私ファンだったんですよー」
……要するに、天界とかワケがわからない事の前にはっきりわかった事があった。
このメリッサって子はストーカーって奴だ。
そう考えれば、僕の名前を会った事がないのに知っているのもうなずける。
だから僕はその子から走って逃げる事にした。
「あっ、ちょ、ちょっとー!?」
彼女の言葉を無視して、僕は全速力で自宅まで帰った。
243:コロコロン
08/03/26 20:03:51 IpHfY9FC
とりあえず今日はここまでです。
恐ろしく中途半端で女の子にさえもまだなってなくてすいません。
244:名無しさん@ピンキー
08/03/27 00:07:17 eWT4AbXD
せめて女体化するところまで書けてから、投下してくれよ…。
245:名無しさん@ピンキー
08/03/27 01:05:59 deNvf9fh
みんな御本をよんで文章を良く勉強しましょう
良い職人さんをお手本にしましょう
そうして自分のレベルを見極めてからssを書きましょう
246:名無しさん@ピンキー
08/03/27 01:28:49 ma+SH5KE
>>243
乙です。
できれば、もう少しまとまった量で投下してくださると。
247:コロコロン
08/03/27 21:29:43 toPihEYb
中途半端すぎと文章未熟で申し訳ないです。
次はもう少し投下量多めにして、文章見直ししてから続き投下します。
では、失礼します。
248:名無しさん@ピンキー
08/03/28 18:46:01 7XPeiSsg
URLリンク(tsadult.s7.x-beat.com)
ここに書き込もうとしたら、「長すぎる行があります」の嵐だったんで、こっちに投稿してみた
エロ分、少なめ
249:名無しさん@ピンキー
08/03/28 22:06:56 mWfRC5Uw
レスを分けて書き込めばいい
250:名無しさん@ピンキー
08/03/28 22:42:17 7XPeiSsg
>>249
いや……縦方向じゃなくて、横方向でのエラーだから……訂正するのが大変そうだから、諦めましたw
251:名無しさん@ピンキー
08/03/30 02:43:06 G0uo2K+H
最近mixiでネカマしてるんだけど、ネット上ではあるけど女として暮らしてたらますます女に生まれたい気持ちが大きくなった
ネカマ続けてたら、そのうち女性化とかしないかな?
そんなミラクルありえないけどww
この気持ちをSSに託します
252:名無しさん@ピンキー
08/03/30 02:43:48 G0uo2K+H
あ、ちなみにまだ書いてません
書けたら投稿するねw
253:名無しさん@ピンキー
08/03/30 09:17:35 42O1M4uL
>>251
つモロッコ
254:名無しさん@ピンキー
08/03/30 10:00:51 Gpy/xKPZ
今はタイ
モロッコなんて
カルーセルマキの時代だろw
255:名無しさん@ピンキー
08/03/31 17:29:55 GigUeBBl
でも○○ッコってなんかいいよね
256:名無しさん@ピンキー
08/04/01 02:58:26 d1F+6VDv
エロゲーだとこんな感じか
もぎたて☆もろっ娘!
~ムリヤリ女の子にされちゃいました~
257:名無しさん@ピンキー
08/04/03 10:31:11 eh+Xd6ZE
もぎ取られるのかw
258:名無しさん@ピンキー
08/04/03 19:15:18 aKTeGlwG
>>256
後の糸井重里である
コピーライターとタイトル考える人は明らかに別の人な気がするけど気にしない
259:名無しさん@ピンキー
08/04/04 02:10:33 1VswS+p2
主題歌は MOSAIC.WAV の電波なTSソングでお願いしたいね
260:名無しさん@ピンキー
08/04/04 22:20:23 tQ5Eideh
>>256
そのキャッチコピー、何か良いねw
261:名無しさん@ピンキー
08/04/05 13:16:48 pFje5RDm
うむ…何かあくまでもハイテンションなストーリーになりそなキガス。
262:名無しさん@ピンキー
08/04/05 14:41:07 GEaDwOfv
>>256
35歳独身の妖精が頭に浮かんで離れない
263:名無しさん@ピンキー
08/04/06 03:23:02 oJCcAiBD
>>256
そのタイトルでゲーム作って欲しいw
264:名無しさん@ピンキー
08/04/06 23:48:46 1y3D/1Ug
TSF支援所が無くなってるんだけどなんかあったの?
265:名無しさん@ピンキー
08/04/06 23:57:33 JY3j3upp
あるよ
266:名無しさん@ピンキー
08/04/07 07:32:17 MaBP43oM
>>264
アク禁食ってるんじゃないのか?ww
267:名無しさん@ピンキー
08/04/07 12:34:42 yn5K2jYn
>256
それはないな。と思ってスルーしてたが、そのくだらないセンスを賞賛するレスがあって驚いた。
世の中広いな。
268:名無しさん@ピンキー
08/04/07 21:40:12 +BTEpAyB
引っ越してから見れないからプロバイダ自体が弾かれてるのか?俺オワタ…
269:名無しさん@ピンキー
08/04/09 22:08:22 LulQ4qWC
ところでだね、過去スレで
男女どっちでも通用する名前ってどんなんがある?
ってな話題出たような覚えがあるんだが
誰かその時出た名前わかんないかな?
結構色々あったような気がするんだが
「まこと」くらいしか思い出せん
270:名無しさん@ピンキー
08/04/09 22:28:18 fvCHxMe3
それの思い出し出はないが、
じゅん、けい、あきら、ゆい、ひかる
とか、結構あると思うが
271:名無しさん@ピンキー
08/04/09 23:04:06 E49E9qDQ
過去ログ漁って来た。確かに思ってた以上にあるね。
あきら
あすか
いずみ
いつき
かおる
けい
さくや
しのぶ
じゅん
たつみ
ちひろ
とも
なつお
なるみ
ひかる
ひろみ
ますみ
まこと
みこと
みさき
みずき
みなと
みゆき
むつき
めぐむ
ゆう
ゆうき
よしみ
るい
れい
272:名無しさん@ピンキー
08/04/10 00:11:27 teRCjZA/
>>270
みきというのは考えたことがあるな
……ん? 前に書いたっけ? いや、未発表の奴だったか
273:名無しさん@ピンキー
08/04/10 08:10:41 AZquPCrV
「かなた」とか「こなた」とかいうと、らき☆すたかよ! とつっこまれそうですが
274:名無しさん@ピンキー
08/04/10 09:16:18 5OAjYedl
>273
「ゆたか」「みさお」なんてのはどうだねw
あとアニメには出てないが「ふゆき」とか。
275:名無しさん@ピンキー
08/04/10 17:30:40 m9Xs+8yU
職人さん達頑張れ。
276:名無しさん@ピンキー
08/04/10 18:23:48 cNintasV
「つばさ」とか「つかさ」も
それに「しずか」。いや、いるじゃない、政治家に
277:名無しさん@ピンキー
08/04/10 22:30:17 iaJcWvLc
男で「みゆき」ってありか?
あと、一時期「せな」は男女とも結構多かった。
278:名無しさん@ピンキー
08/04/10 23:43:04 xrNSudKs
深之という奴がいた
279:名無しさん@ピンキー
08/04/11 00:48:55 LRc5oLtx
>>277
>「せな」
なんかカーブを曲がりきれなくて衝突死しそうな名前だなw
280:名無しさん@ピンキー
08/04/11 00:56:46 ZpBX++bC
>>277
仮面ライダーで聞いた覚えはある
281:【僕オマエ】作者
08/04/11 02:48:36 QaHssxYU
こんにちは。
>54でちょっと顔出しましたが「強制女性化小説ない?Part30」以来です。
そろそろ文章が溜まってきたのでぼちぼちと落として行きたいと思います。
あんまりエロくないです。
エロ回収のための下準備期間となります。
NGワードは【僕オマエ】でお願いします。
【強制女性化】【レイプ】【強制破瓜】【童顔爆乳】
282:【僕オマエ】
08/04/11 02:50:09 QaHssxYU
■■「僕はオマエを許さない」~不本意な戸惑いと哀しみに~■■
■あらすじ■(前回までを忘れた方のために)
少しだけ未来の話。
人類は、知的異星生命体「フィルコス」の来訪により、様々な医療技術の革
新的進歩を迎えていた。
そんな時、進行性の末期癌で絶望の淵にあった少年「香坂薫」は、先進国家
間プロジェクトの被験者として日本国内の余命幾ばくも無い重病患者リストか
ら政府により無作為に選出され、第一期計画候補への打診もたらされる。
その世界規模の臨床実験である国際プロジェクトは『再生計画(リヴァース・
プロジェクト)』と呼ばれ、処置の施しようが無い重病患者の、病巣に犯され
ていない健康な脳髄を取り出し、健康な部位から取った遺伝情報を元に肉体を
再構成(クローンニング)して再び頭部へと移植するという、画期的なもので
あった。
そして実験には、被験体20人の内、半数の10人がランダムに選ばれ、
「フィルコス」からもたらされた技術を転用する際に“染色体反転”されるこ
とも含まれていた。即ち、『男性(女性)体から取り出された脳を、「転体」
(女性または男性に遺伝的転位)した肉体に移植するとどうなるのか』という、
医療的性転位実験である。
男が女になり、女が男になる。
『手術により外見のみを整形する』従来の外科手術と違い、完全に性の異な
る肉体へと変化する。
それは、性同一性障害を初めとする、人類を取り巻く様々な問題に対応し得
る、まさに画期的な医療実験であった。
そうして薫は、16歳の9月に「オンナ」になったのである。
やがて彼……いや『彼女』は、父の生家がある地方の片田舎で、「女の子」
として男女共学の高校に通う事となる。
そこで出会う人々との生活、女として生きていく事への戸惑い、そして新た
な性となり初めての『恋』と『官能』に、薫の心と体は揺れ動く。
男の脳と女の体。
それは『彼女』に、一体何をもたらすのか……。
女性化が進めば進むほど、難事件は増えてくる。
たったひとつの真実に惑う、見た目は女、頭脳は男。
その名はリバーサー(再生計画被験者)薫(カオル)。
詳しくは過去ログ参照にて。
283:【僕オマエ】
08/04/11 02:51:43 QaHssxYU
「んくぅ…っ…はぁ…」
思っただけで“きゅうん”と体が啼いた。
首筋をゾクゾクとした甘い“疼き”が舐め、背筋を駆け下りて“ぬるり”と
したものがオンナの器官をじわじわと滑り降りてゆくのがわかった。
「んあっ……」
肩を竦め、目を瞑り、体の中心を走り抜けた快美感をやり過ごすために、薫
は肩をすくめ、右手の人差し指を真珠のような歯で噛んだ。
途端、近くを歩いていた中学生が顔を赤くして足早に通り過ぎ、隣の肉屋の
店先でコロッケを頬張っていた男子高校生が、まだ2口しか食べていないそれ
をアスファルトの上に落としたが、薫は体の中で吹き荒れる嵐を鎮めるのに必
死で、それにはこれっぽっちも気付かなかった。
『もう…だめ…』
そう。
もう、「だめ」だった。
我慢出来なかった。
『好き』という気持ちが胸から溢れて、朝露に濡れる大輪の花を咲かせたよ
うに、薫の全身へ歓喜の根をしっかりと下ろしてしまっていた。
直人の事を想うだけで、心も体も心地良さで“とろとろ”にとろけてしまう。
『僕……どうしたら……』
発情し、匂い立つようなフェロモンを強烈な色香としてたっぷりと周囲に振
り撒きながら、薫は涙ぐんだ瞳で赤く染まり始めた空を見上げた。
逢魔が刻の夕空は、憎らしいほど晴れ渡っていた。
『再生計画(リヴァース・プロジェクト)』の被験者は、その生体データが
常に長期的、かつ詳細に国際研究所へと随時送られてゆく。
その情報は、異なる性別の「脳」と「体」の適合性から、脳内の神経シナプ
スの機能、そして全身の代謝機能や免疫系、ホルモン分泌まで多岐に渡る。そ
して、発汗や分泌物の分泌状況、全身の血流の増減や体温まで綿密にチェック
されていると噂されていた。
それら、生体情報の送信方法には、異星の知的生命体「フィルコス」からも
たらされた医療技術の応用が使われれている。
一週間に一度、微細なナノマシンが含まれたカプセルを一錠だけ飲み下すと、
およそ3時間で血管やリンパ腺を介して全身の主要器官にナノマイクロ単位の
プラントが生成され、そこから特殊な生体波動が発信されるのだ。そしてそれ
は、昼夜を問わず町の各所に設置された政府管轄のセンサーによって受信され、
「エンコード(符号化)」されて地方自治施設を介して都道府県庁で集約され
る。その後、国家機関によって「デコード(復号化)」され、研究施設で解析・
統合される事となる。
284:【僕オマエ】
08/04/11 02:53:15 QaHssxYU
また、体内に生成されたプラントはおよそ10日間に渡り状態が保持され、
やがて腎臓を通って尿に混じり排泄された以後も、しばらくは微弱な生体波動
(環境が変わることにより、若干の変化を伴う)を発信し続けるため、時には
被験者の行動範囲の把握(犬のマーキングと同等の)にも役立っていた。
被験者にしてみればプライバシーもなにもあったものではないが、これもリ
ヴァース・プロジェクトへの参加を承認した際にサインした十数枚もの誓約書・
契約書・承諾書に盛り込まれた条件であるため、文句の言いようも無いという
のが実情だった。
『内臓に定着してるから、風呂に入ったくらいじゃあ落ちたりしないんだよな
……あんまり実感無いけど……』
食事の後、たっぷりと時間をかけて風呂に入った薫は、ホカホカの肉まんみ
たいになりながら、自室のベッドの上で黙々とバストアップ体操をしていた。
風呂上りということもあり、身に着けているのはグレーのスウェット生地のシャ
ツとパンツ、それと通気性重視のスポーツブラだけだ。立体裁断された前開き
のシャツか伸縮素材のTシャツでなければ、前に大きく張り出したおっぱいの
せいでウエストがとんでもなく太く見えるから、薫はデブだと思われたくない
ために、いつしか誰に見せるわけでもないけれど、部屋にいてもそういうシャ
ツを着る癖が付いていた。
誰に思われたくないのか。
かつて、それは不特定多数の「他人」であり、自分自身だった。
でも、今は……。
「んんっ……」
仏様に拝礼するように、両手の平を体の前で合わせ、大胸筋の動きを意識す
るようにしながら呼吸と共に力を加える。
「バストアップ」と言っても、もちろん「増量」の方ではない。
むしろ彼女は、いつか絶対に「豊胸手術」ならぬ「減胸手術」をしようとさ
え思っているくらいだ。
薫の、その華奢な体躯からは有り得ないほど豊満なおっぱいの重量は、左右
両方を合わせて、実に2キロ弱ほどもある。今は、若さゆえ重力に負けまいと
懸命に張り詰めたおっぱいは、椰子の実のような豊満さでありながら健気にも
薫の胸から前方に突出しているが、いつか必ず重過ぎる自重で垂れてしまうに
違いないと彼女自身、恐れていた。
そもそも、豊満過ぎる胸で足元が見えないというのは階段や凹凸のある道路
では危険極まりないし、両腕の間に重たく実ったその豊満な乳肉が、どんな時
でも自分がどうしようもないほどにオンナなのだという揺るがない事実を薫に
突きつけ続けていたから、彼女にしてみれば邪魔で目障りで、鬱陶しいことこ
の上なかった。
285:【僕オマエ】
08/04/11 02:54:38 QaHssxYU
そんな“ずしり”と重たい肉の塊ではあったが、せめて、みっともなく垂れ
るのだけは避けたかった。だからこうして毎晩、バストを支えるクーパー靭帯
を痛めないように気をつけながら、皮膚の張りを保つバストアップジェルを塗
り込みつつ、バストエクササイズを欠かさないでいるのだった。
確かに、21世紀初頭に比べて、人類の老化はゆるやかになったし、食べ物
や飲料水に混入されているナノマシンによって皮膚の状態も最良の状態が維持
されるようになって、紫外線などに起因するシワやシミやソバカスが目立たな
くなってきてはいる。
が、完全に老化を止める事は出来ないし、耐久重量を越えても状態を保持し
続ける事が出来るほどの強度を皮膚や筋肉や靭帯に求める事も出来ない。
「老化」とはつまり細胞分裂の回数制限であり、それを決定付けるテロメア
の数が主な原因と言われているが、だからと言ってむやみに制限を解除すれば
良いかと言えば決してそうは行かないのが難しいところだ。なぜなら細胞分裂
制限は、紫外線や薬物、活性酸素などの外的要因で遺伝子が傷付けられ異常を
起こし癌化するのを防ぐ、いわばセーフティ安全機構でもあるからだ。
「フィルコス」からもたらされた医療技術の中には遺伝子の耐久力向上もあ
るにはあったものの、それには地球上に存在しない(生成出来ない)特殊な化
学触媒を必要とするため、老化防止策も含め、未だ研究所のシャーレの外には
出ていないというのが現状だった。
薫が毎晩おっぱいに塗り込んでいるバストアップジェルは、その「フィルコ
ス」の技術から派生したタンパク質活性素材が混入されており、高校生の女子
が購入するにはまだまだ値段が高い。
おかげで、化粧品や服に、思うようにお金がかけられないのがちょっとだけ
悲しかった。
『……いや、別に綺麗にして誰かに見せようってんじゃないんだけどさ……』
胸の中で“ごにょごにょ”と言葉を濁し、薫はクローゼットの奥に押し込ん
である服の事を思う。
母が買ってきてくれたものはあまりにもフェミニンで、パステルカラーのワ
ンピースとかフリルの付いたキャミとか、いったいどこで着せるつもりだった
のだろう?と悩まずにいられないものばかりだった。
薫としては、もっと大人っぽい、カッコイイ服が欲しいのに。
……似合う似合わないはともかくとして。
「ふう……」
せっかく風呂に入ったのに、また汗をかいては意味が無い。
薫は小さく息を吐くと、適度なところで切り上げてベッドの上に寝転がった。
女は、タイヘンだ。
それを痛感する。
286:【僕オマエ】
08/04/11 02:56:16 QaHssxYU
筋肉の量が男とは絶対的に違うし、脂肪の量も違えば、皮膚の硬ささえ違う。
男の時には難なく持ち上げていたものが持てなくなり、体のどこもかしこも
ふにゃふにゃで柔らかい。
最も厄介なのは「やわらかい」というのが、「重力に対して脆弱である」と
同義であることだろうか。
『……まだ…大丈夫…だよな……』
薫はベッド上に体を起こして、“ぺろっ”とTシャツとスポーツブラを一度
に捲り上げた。
途端、子供の頭ほどは優にある椰子の実のようなおっぱいが“ぶるんっ”と
まろび出る。
女に“なって”1年と9ヶ月。
毎度の事ながら、“よくもここまで育ちやがったもんだ”と思わなくも無い。
前方に大きく張り出した、透き通るような肌の白い椰子の実おっぱいは、乳
房の上側にもたっぷりとボリュームがある。両手でおっぱいを挟むように押し
てみると、まろやかでありながら内側から意外に強い力で押し返してくるし、
きめが細かくて滑らかな肌は、親指と人差し指で摘もうとしても容易には摘め
なかった。
一応、しっとりとした肌は手に吸い付くように瑞々しいし、しっかりと若々
しい張りに満ちている、健康な状態だと、薫は思う。
ピンク色…とは言わないが、乳首も特に黒ずんだりしていないし、乳暈も変
に大きくはない。他の女子に比べれば多少大きめかもしれないが、おっぱいそ
のものが大きいため、全体のバランスとしては決して悪くないと思う。
500円玉大の乳暈に、赤ちゃんの小指の先くらいの乳首……。
ここだけ見れば、20代後半の完熟おっぱいみたいだ。
その乳首を、右手の人差し指で“ぷるっ”と撫でた。
「んっ……」
生理が近いからか、敏感になっている。
見る間に乳首が立ち上がり、乳暈が充血して“ぷくっ”と膨れた。
―ちょっと、敏感過ぎるかもしれない。
月曜日に坂東達にレイプされかける前、保健室で乳首を自分で咥えて自慰を
した事を思い出す。絆創膏を剥がした時の痛みで思わず嘗めてしまったのがきっ
かけではあったが、あれは女になってから初めての体験であり、そして初めて
体験した『イク』という感覚だった。
実は、薫はあれから、一度も自分で乳首を嘗めていない。
病み付きになってしまうのが怖いというのもあったし、その先に何があるの
か、自分がどうなってしまうのか、考えたくなかったということもある。どん
どん、インランになり、やがては誰でもいいから自分をメチャメチャにしてく
れる男を求めるようになっていってしまうのではないか?と思ってしまったのだ。
287:【僕オマエ】
08/04/11 02:58:01 QaHssxYU
けれど、あの時、坂東達がやって来た事で中断された思考……自分の乳首が
『誰に』可愛がられたいと思っているか、自分が『誰に』抱かれたいと願って
いるのか、もう、知ってしまった。
「……ナオタ……」
直人のことを思うと、むやみやたらと泣きたくなってくる。
泣きたくなるだけじゃなく、感情が飽和して胸がいっぱいになり、息苦しさ
まで感じてしまう。
『…オカマ野郎』
再会して初めて交わした言葉は、最悪だった。
頭が“カ~~~ッ”として、目の前が真っ赤になったかと思った。
『…誘ってんじゃねーよ。なんだその格好』
「誘ってる」と思ったのだろうか?
……「あの格好」なら、直人を「誘える」のだろうか?
『…へぇ…可愛くなったもんだな』
可愛いって、言った。可愛いって、言ってくれた。
『…牛みたいなチチ放り出して歩くなんて、どう見ても頭悪いだろ』
牛とか、放り出してるとか、あんまりだ。
『…うるせー巨乳。牛女。デブ』
デブじゃない。僕はデブなんかじゃない。
牛女だなんて…どうしてあんな事を言うんだろう…。
『…牛みたいなチチしてるくせにノーブラか?』
ちがうもん…。
牛じゃないもん…。
『…垂れるぞ』
垂れないように、ちゃんと努力だってしてる。
『…帰るぞカオル』
ああ……。
思えば、それは、突然だった。
組み伏せられ、弄ばれ、おっぱいもあそこも好きにいじられて、涙と絶望に
塗り込められた心に射した一筋の光。
自分でもどうしようもないくらい、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
他の誰でもない、この自分を迎えに来てくれたのだ。
助けに来てくれたのだ。
その事実が、心を覆っていた絶望の闇を一気に振り払ってくれたのだ。
今思い返せばあの瞬間、転校初日に直人が打ち込んだ「楔」が、その『真実』
を露にしてしまったのだった。
女は男を求めるもの。
生物学的に定められた種族保存の『本能』。
人生経験が圧倒的に少ない薫には、女が女を求め、男が男を求めることを否
定する事は出来ない。だが、それは知能が発達し、心と体が剥離する事態を引
き起こすほどに精神的な成熟を迎えた『人間』という種のみに起こりうる事な
のだということくらいはわかる。
あの時、薫にとって直人は、「求めるべき男」だという、そのたった一つの
真実が白日の下に晒されたのだ。
「ああっ……」
薫はむき出しのおっぱいを下から支えるようにして持ち上げると、人差し指
でぷっくりと勃起した乳首を撫でた。
「ひうんっ」
刺激が胸の中を走り抜け、脊髄を辿って尾骨まで駆けてゆく。
あっという間に“じゅわんっ”とお腹の中で女の臓器が“啼いた”。
288:【僕オマエ】
08/04/11 02:59:44 QaHssxYU
「寄越せ」と。
「アタシが求めるオスの子種を寄越せ」と。
そう、啼いた気がした。
生理前のホルモンの仕業によって体積を増した椰子の実おっぱいが、持ち上
げる事により、さらに量感を増している。
直人のことを想うだけで、考えるだけで、体が反応してしまう…。
直人のあの顔を、匂いを、厚い胸板を思い出すだけで、子宮が疼き、あそこ
がとろとろになってしまう…。
それは“悦び”だった。
今はもう女である自分にとって、それは明らかに愉悦であった。
『求めるべき相手』に巡りあえたという、“生物としての本能”と“雌とし
ての欲望”、そして“女としての恋心”が、薫を狂わせる……。
『触れたい』
『触れて欲しい』
その想いがせめぎあい、絡み合って、うねり、震え、そして体中を満たして
ゆく……。
震えるほどの幸福感と共に、死にたくなるくらいの絶望感が薫の瞳から形と
なってこぼれだす。
―それは、自分がいくら直人を恋焦がれても、彼の方は決してそうではな
いという事実。
香坂薫が、元は男だったという記憶が彼の中にある限り、きっと彼は自分を
真の意味で女だとは……恋愛の対象とは思わないだろうという、確信めいた想
像が、薫を苦しめていた。
例えば直人の前に立って潤んだ瞳で『抱いて』と言ったって、彼は絶対に
『いいよ』と言うような奴じゃない。それは小学生の時の彼を知っている薫に
は手に取るようにわかっていた。それどころか『好き』と言ったとしても、きっ
と『熱でもあるのか?』と気の毒そうに同情されるのがオチだ。最悪の場合は
『キモチワルイなお前』とか言われて翌日から避けられてしまうかもしれない。
そんな事になったら、もう二度と学校には行けなくなってしまう。
それどころか、本当に死んでしまうかもしれない。
悲しくて苦しくて切なくて、本当に死んでしまうかもしれない。
助けてくれたのだから、嫌われてはいないのだと思いたい。
けれど、好かれているか?と言われれば言葉が出なかった。
「ナオタ―」
―その日、薫は泣きながら自慰をした。
恋しくて恋しくて恋しくて。
でもその恋が絶望的に叶わないものだと、胸に刻んでしまったから。
それでも体が、『彼』を求めて震えてしまったから。
結局、去年のクリスマスの夜、涙に濡れながら自慰をした時から、自分は何
一つ変わっていない。
臆病で、自分はもう男じゃないという事実に追い立てられ、かといって自分
はもう女なのだという事実を直視出来ずに生まれようとした恋を自らの手で遠
ざけてしまった頃の自分と。
289:【僕オマエ】作者
08/04/11 03:04:13 QaHssxYU
今日はここまでに。
私は、下準備を入念にした方がエロエロになった時に感情移入度が段違いだ
と考える人間です。そのため、行為そのものの描写まで長くなる傾向にありま
す。出来るだけ早くエロエロを御届け出来るように努力しますが、私自身も書
く事を楽しみたいので、その辺、御容赦頂けますと、嬉しく思います。
また近い内に、お会い致しましょう。
290:名無しさん@ピンキー
08/04/11 06:44:03 ca8mR5fM
GJ!
薫可愛いよ薫!
291:名無しさん@ピンキー
08/04/11 10:47:14 n977ro/r
薫は永遠の処女でいてもらいたいGJ
292:名無しさん@ピンキー
08/04/11 11:20:14 Wck2nI+C
うひょおおおおおおおおおおおおおお
出がけに投稿来てテンション上がったぜ!!とりあえずGJ!
帰ってから読むぜうほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
293:名無しさん@ピンキー
08/04/11 12:47:08 QYpvkT/B
>>289
待っていた。
純真でありながらえろい薫に心からGJ!
心理描写がたまらなくツボだ
294:名無しさん@ピンキー
08/04/11 22:38:29 kpiRBw5h
相変わらずツマンネーこと書いてんのなwww
いい加減卒業しろよww
295:名無しさん@ピンキー
08/04/11 22:47:43 X4eN8ZN2
GJ!
あなたの作品はいつも楽しみにしております
296:名無しさん@ピンキー
08/04/12 21:16:24 2+qu10dE
おっぱい体操が個人的にツボ。GJ!
297:名無しさん@ピンキー
08/04/12 23:16:43 CFO9hZMN
生理ネタスキーの俺としてはそのあたりが混ざっているのが俺しい。
GJです
298:名無しさん@ピンキー
08/04/14 00:43:36 hT1D+rHx
切なくて愛しい感情のせめぎあいがたまらないです
つい過去ログから全部呼んでしまいましたよ。GJ
299:名無しさん@ピンキー
08/04/15 21:17:19 arYVy06z
久々に来たらあがってたーw
元男設定を生かしつつ、何気なくえろい描写を書く作者に乙!
300:名無しさん@ピンキー
08/04/17 10:13:47 /FbO97as
最近ラッシュが続くので
TS物のAV総合立ててみた、ヨロ!
h スレリンク(avideo板)
301:【僕オマエ】作者
08/04/18 02:29:52 V6/vedJi
約1週間ぶりです。こんばんは。
過分な御言葉、皆様ありがとうございます。励みになります。
もう少し後にするつもりでしたが、投下が無いのも寂しいので、落とさせて
頂きます。
出来るだけエロを入れようと思っているのですが、今回もあんまりエロくな
いです。……いえすみません。全然エロくないです。エロ回収のための下準備
期間となります。スレ違いと憤慨されるかもしれませんが、御許し下さい。
エロエロは、かなりエロエロとなる予定です。
お楽しみ頂けたら幸いです。
NGワードは【僕オマエ】でお願いします。
人の出会いは摩訶不思議。それより世の中謎めいて。
あなたに会えてホントに良かった!
たったひとつの真実に惑う、見た目は女、頭脳は男。
その名はリバーサー(再生計画被験者)薫(カオル)。
詳しくは過去ログ参照にて。
302:【僕オマエ】
08/04/18 02:30:59 V6/vedJi
■■【17】■■
自己嫌悪にまみれながら眠りに付いた次の朝は、大抵いつも、最悪な気分で
の目覚めとなる。
かつては毎朝、洗面所に立つたびに『もう男には戻れないんだから、素直に
女の人生を受け入れなさいよ』と、もう一人の自分に鏡の向こうから、まるで
死刑宣告の如く告げられていたが、今日の『彼女』は真っ赤に充血して腫れぼっ
たい瞼と涙袋をしたまま、いつになく気弱に見詰めてくるばかり。
こんな顔じゃ、せっかくの土曜日なのに買い物にも行けない。
―わかっている。
去年のクリスマスがトラウマになって、そのせいで一歩が踏み出せなくなっ
ているのは。
自分が女であることを心身共に認めてしまうと、直人に対しての気持ちにブ
レーキがかからなくなる。
でもブレーキの壊れた列車の末路は脱線か衝突事故で、とどのつまりは自爆
しか無いのだ。
「元男なんか好きになれるか」とか言われて涙に濡れ心が砕ける、失恋確定
しか無いのだ。
絶望的な将来像だった。
かつての薫は、“男の気持ち”のまま、女の子を好きになりかけたこともあ
る。でも、それまで女の子というものに抱いていた幻想は、去年の4月にこの
学校に転入して早々に、現実の女の子……男の視線の無い、更衣室やトイレで
の等身大の女の子―を前にしてことごとく打ち砕かれた。ようやくここ数ヶ
月で「女の子も所詮は同じ人間なんだ」という境地に達して、普通に対峙出来
るようになってきたところなのだ。
「はぁ……」
洗顔クリームをしっかり泡立てて、丁寧に顔に塗り込みながら、薫は溜息を
吐く。そして、洗面台に置いた白いチューブを、しみじみと見下ろした。
洗顔、スキンケア、歯磨き、着替え、髪セット、化粧(リップメイクでグロ
スを塗るくらい)など、いつの間にか、どんなに落ち込んでいても、たとえ半
分眠っていても、無意識にちゃんと一通り終える事が出来るようになったのは、
いつ頃のことだっただろうか?
それは、「女の子」としては喜ぶべき事なのだろうけど、「かつて男だった
者」としては、かなり微妙な線だった。
『……もう、女の習慣がすっかり体に染み付いてる……』
そう、思ってしまうのだ。
「はぁ……」
また、溜息が出た。
『溜息ばかり吐いてると、幸せが逃げちゃうよ?』
薫と同じくらい背が低くて年相応に子供っぽいクラスメイトの貞華は、よく
そう言って薫の頭をなでなでする。
胸が無い分、やもすると中学生に見られかねない少女は、精神年齢的には薫
よりずっと大人だった。
303:【僕オマエ】
08/04/18 02:33:11 V6/vedJi
「……しあわせ……か……」
自分の幸せは、どこにあるのだろう?
化粧水をパタパタと肌に塗り、乳液を塗り、更に紫外線予防と美白効果のあ
る下地クリームを塗りながら、薫はシワの寄った眉根を中指で揉み解した。
外は、呆れるくらいの快晴だった。
6月の梅雨時期で、しかも週末の土曜日、そしてこの天気は、本当に貴重だ。
それは、完全に気象コントロールされた現代でも変わらない。年間雨量や気
候変動も考慮して、梅雨そのものは無くしていないからだ。月曜からは再び雨
の降りやすい、雲の多い天気が続くとあって、町には人が溢れていた。
制服はともかく、私服でスカートを履くなんてのはまだまだ抵抗がある薫は、
溶けかけた宇治ミルクみたいな淡いグリーン色のニットと白のカーティガン、
紺のスキニーデニム、そしてスニーカーという出で立ちで、町中(まちなか)
を歩いていた。背中の中ほどまである真っ黒い髪は、天然のヘヤー素材なため、
そのまま下ろしていると背中が蒸れて暑くて仕方ない。そのため今は、軽く結っ
て頭の後ろでダンゴにし、バレッタで留めている。そして顔には、明るい色の
眼鏡をかけていた。もちろんレンズに度の入っていない伊達だが、腫れぼった
い目を隠して歩くには、これくらいは必要だった。
肩にはクリームイエローのトートバッグを掛け、背筋を伸ばして歩く。
格好だけ見ると、いかにも『活動的で快活な健康優良少女』といった感じが
した。
湿度が高いためか、6月の陽射しの中でも、少し汗ばむほどだった。襟ぐり
の深いニットから覗く、氷河に走ったクレヴァスのような胸の谷間には早くも
汗が浮き、ブラに押し込められた規格外の豊満乳肉(どデカおっぱい)の下は
じっとりと濡れていた。周囲に視線さえ無ければ、裾を持ってパタパタと服の
中に空気を送り込みたくなるほど、不快指数は高い。
『もうすっかり夏になったみたいだ……』
小さな地方都市。
さらにそのベッドタウンとして機能している片田舎の、ちょっと緑が多いか
な?と思える小さな古い町。
住宅街から少し離れれば、そこには成長著しい、青々とした稲の揺れる田ん
ぼが広がっている。もうすぐ蛙たちの恋の季節がやってきて、昼も夜も騒がし
い日々になるだろう。
片田舎の地方都市とはいえ、基本的なインフラストラクチャー(infrastruc
ture)は、驚くほど整備されている。
むしろ、自然を残すため、化石燃料による内燃機関を搭載した車両は数年前
に姿を消し、電力供給や通信関連のためのケーブルは、全て地下深くの共同溝
に埋められているなど、積極的に環境保全方面へ最新の整備を施していた。
それが今、薫が住んでいる場所だ。
そして薫は、国家規模の臨床実験被験者……日本で20人しかいない「リヴァ
ース・プロジェクト」被験者の、更に半分の『染色体反転者』10人の内の女
性化した人間である。また、同級生からは、同い年にもかかわらず「可愛い妹」、
下級生からは「手のかかるお姉ちゃん」という、甚だ不本意な扱われ方をして
いる薫は、「リヴァース・プロジェクト」被験者だという噂を抜きにしても、
近隣の高校にその名が知れ渡っていた。
304:【僕オマエ】
08/04/18 02:35:36 V6/vedJi
そのため、町を歩いていても、何かの拍子にふと視線を感じてしまう。
もちろん、カーディガンを着ていても隠し切れず、“鎧ブラ”でガッチリと
ホールドしていても揺れ動く、大き過ぎる胸がやたらと目立ってしまう事もあ
るが、それだけではないのだ。
薫に気付き、時に手を振ってくるのは圧倒的に同世代の少女が多かった。
家を出てから、この町唯一と言っていい繁華街まで歩いてくるまでに、2人
の小学生に「きょにゅうだー!」と指を指され、違う学校の生徒らしい女子高
生集団に3回も、「かわいー!」とか「スカートの方がいいのに~」とか「背、
ちっちゃー!」とか言われながら写メを5枚も6枚も撮られていた(文句は、
言いたいけど言えなかった)。
下手にサングラスを掛けると逆に目立ってしまうため伊達眼鏡しか掛けてこ
なかったが、あまりにも声を掛けられる事が多いから、陽射し避けも兼ねて帽
子くらいは被ってきた方が良かったかもしれない……と、思わなくはない。
そして最後に、色々ぐったりしたところでトドメとばかりに、買い物に来て
いた仲良し三人娘のうちの二人……松瀬志宇(しう)と大地友香(ともか)に
出会ったのだった。
「あ、カオルちゃんだ~」
薫が買い物をしようと思っていた商店街の反対側から、分厚いメガネをかけ、
肩までの髪をいつもポニーテールにしている志宇が、青いTシャツにオレンジ
色のキュロットとサンダルという、ラフにも程がある格好で歩きながら“ぶん
ぶん”と手を振っていた。
隣では、ちょっとぽっちゃりした友香(ともか)が薄緑色のワンピースを着
て、見る者に不思議と警戒心を抱かせない、妙に福々しくて人懐こい“ぽやぽ
や”とした笑みを浮かべている。
相変わらず二人とも化粧っ気とは無縁だけど、二人とも、薫からしてみれば
人生17年の、いわば『女のプロ』であり、『女である自覚』なんてしなくて
もちゃんと“女をやれている”大先輩だった。
「買い物?」
「うん。ちょっと買い過ぎたかも」
志宇は本の入った書店の袋を、友香は食料のぎっちりと詰まったスーパーの
袋をそれぞれ手にしている。友香に至っては、額に汗を浮かべながら、実に重
そうな袋を二つも提げていた。
ちなみに……2029年現在、町のスーパーでは昔と同様、商品を包むため
に無料で半透明の袋が配布されている。
化石燃料の枯渇懸念や大気汚染、炭酸ガスによる温室効果がもたらす地球温
暖化を理由に、21世紀初頭には「エコロジー」理念を基にして廃止されたス
ーパーのビニール袋だったが、「フィルコス」から提供された高分子化合物合
成技術により、下水道や工場などの排水をろ過した際に大量に発生する濾物か
ら、ビニールと同等の強度を持つ半透明フィルムが再合成出来るようになって
から、再び市井に登場を果していた。そしてその合成技術は、生体皮膜の代用
品生成にも利用されており、薫が女に『転体』する際にも、その技術は大いに
役立っていた。
「一つ持つよ。貸して」
さすがに見るに見かねた薫は、彼女が持つ袋の一つを持って、二人が利用す
るバス停まで付き合うことにした。
305:【僕オマエ】
08/04/18 02:37:34 V6/vedJi
『女の子には優しくするもの』という両親の教えは、今でも薫の中で生きて
いる。
たとえ彼女達と同じ、非力な女になったとしても、それは変わらなかった。
「悪いねー」
「いいよ。僕もこっちに用があったし」
ちっとも悪そうに見えないのに、それが少しも嫌味になってない友香に苦笑
しつつ、薫は横を歩く志宇を見た。
下げている紙袋は一つだが、中に重そうな参考書や画集などが何冊も入って
いるため、見た目よりもずっと重そうだ。
「カオルちゃんはデート?」
「……なんでそうなるんだよ?」
「だって、おめかししてるもん」
「違うよ」
「じゃあ…買い物?」
「うん、まあ…そのつもりで来たけど……なんだか気乗りしなくて、ちょっと
ブラブラしようかな……って」
「そうなんだ。もうちょっと早かったら、あたし達に付き合ってもらえたのに
なぁ」
「二人とも、何時から来てるの?」
薫の言葉に、志宇が“にやっ”と笑ってVサインを出す。
「8時くらいかな」
「はやっ……学校ある時とほとんど変わんないじゃん」
「角のヤマギヤでセールしてたからね。ここぞとばかりに買っちゃったんだよ」
友香の買い物袋の中には、1.5リットル入りのペットボトルが3本も入っ
ている。薫もそこそこ好きなメーカーのお茶だった。効果の程はともかく、飲
むだけで歯の再石灰化が促進されるという謳い文句でヒットした商品だ。
「これ?」
「これ」
掲げて見せた友香の手の袋にも、一本入っていた。
完全自動の幹線無人バスは、10分間隔、誤差30秒で、町の主要な施設を
繋いでいる。
駆動動力は主に燃料電池であり、市民であれば誰でも無料で利用する事が出
来るため、日常生活の脚として大勢の人々に愛されていた。
その情景を、20世紀後半に日本各地で走行していた路面電車と似ていると
評する者もいる。
薫は路面電車の実物を見たことは無いが、その可愛らしい車体には興味をそ
そられたものだ。
「あ、そういえば、ヤマギヤで岡島クン見たよ?」
バス停についてすぐ、志宇がそう言って薫の瞳を覗き込むようにして見た。
志宇のその綺麗な瞳は海の底のようで、視線の矢は薫の胸の奥にまでまっす
ぐに届く。何もかも見透かしているような瞳の色は、混血が進んだ日本では珍
しくないターコイズ・ブルー(トルコ石色・青緑)だった。
ドキン!と薫の鼓動が高鳴る。
動揺が手に伝わって、スーパーの袋が大きく「ガサッ」と音を立てた。
「相手は岡島くん?」
前置きも何も無かった。
いきなりだ。
いきなり志宇は、直球で投げてきた。
「好きな人いる?」とか「相手は誰?」とか、そんなものを軽くすっ飛ばし
て時速150キロで胸の中心に『ずどん』と投げてきた。
びっくりして息を呑んだ薫は、努めて平気な顔を作り、志宇から“さりげな
く”目を逸らした。
「なっ…なにが?」
そうしてようやく口を割って出た、上ずった言葉は、自分の声とはとても思
えないほど、弱々しいものだ。
306:【僕オマエ】
08/04/18 02:41:06 V6/vedJi
「やっぱりね」
「な…なにが、やっぱり!?」
「あたし、これでも女の子、17年やってるんだよ?」
―バレバレだった!
『だから、なんだ?』とは言えなかった。
自分でも抑えられないくらい、『かああぁぁ~~っ』とほっぺたが熱くなっ
ているのがわかる。きっと、トマトかイチゴかリンゴみたいに、真っ赤になっ
てるに違いなかった。
それを自覚しているから、薫は志宇の視線から逃げるように、彼女とは反対
側へとそっぽを向いた。
それで「もうこの話はおしまい」と示したつもりだったのだ。
けれど、志宇は全く持って容赦が無かった。
薫のピンク色に染まった首筋とか、ぷるぷるとした真っ赤な耳たぶとかを、
特に何を言うわけでもなく、黙ってじっと見ていたのだ。
やがてバス停にも並ぶ人が少し増え、空をひばりが飛び去って、友香が大き
く欠伸をした。
「……どうしてわかった?」
ついに根負けして、薫は小さく溜息を吐き、どうしたらいいのかわからない
まま何とも言えない顔で地面に転がる小さな石を蹴り飛ばした。
「わかるよ。だってカオルちゃん、岡島くんのこと、いつも見てるもの。みん
な、いつ告白するのかな?って思ってたんだよ?」
「べ、別に好きだから見てたわけじゃ……」
「もういいから。言い訳なんて」
まだ“うにゅうにゅ”と言う薫の言葉を、まるで“釈明しようとした犯人の
口上を手厳しく遮る百戦錬磨の女刑事”みたいに、情け容赦無く“ぴしゃり”
と封じると、志宇は一転して優しい口調で「しないの?告白」と言った。
「…………僕が元は男だって、知ってるだろ?」
「知ってるよ」
『今更何言ってんの?』と言われた気がした。
「な、なら…」
「でもそれがどうかした?今は女の子じゃない」
言外に『そんなの告白しない理由になんかならない』と言われた。
気がした……どころじゃない。
志宇だけじゃなく、友香の目まで、本当に真面目に、そう言ってた。
「今ならまだヤマギヤにいるんじゃないかな?岡島くん」
「……だから?」
「べつに?」
むくれたように唇を突き出しながら恨めしそうに見る薫に、友香はいつもと
全く変わらない口調で言った。
「で、でも、今日は別に……その、そう!こんな格好だし、その、告白、とか、
するなら、普通はお洒落とか、その、するものなんじゃないの?」
顔が熱い。
喉がひりつく。
つっかえつっかえ、薫はそう言うと、志宇は大真面目にこんな事を“言いや
がった”。
「大丈夫。エロいよ?」
「はあ?」
「似合うよ」とか「可愛いよ」とか、そういう答えじゃなかった。
よりにもよって「エロいよ」ときやがった。
そして絶句して何も言えなくなった薫に、志宇はトドメのようにこう言った。
「カオルちゃんはさ、存在自体がエロなんだから、格好なんて別にどうでもい
いんだよ」
■■【18】■■
別に、直人に逢いたくて向かってるわけじゃない。
そう。
友香が買ったお茶は、自分だって好きなのだ。
307:【僕オマエ】
08/04/18 02:43:39 V6/vedJi
だから、それを買いに行くのだ。
「これから一旦家に帰った後で図書館に行く」と言う志宇達と別れた薫は、
一心に自分へそう言い聞かせるようにしながら、町内のさして大きくも綺麗で
も新しくもない、築15年のスーパー『ヤマギヤ』へと向かっていた。
直人がいようがいまいが、別に関係ない。
そう思いながらも、鼓動はどんどん激しくなり、体はどんどん熱を帯びてく
る。ひどく喉が渇いて、唇を何度も嘗め、唾を飲み込んだ。
あと少し。
その角を曲がって、20メートルほど歩けば。
そう思うと、自然と足運びが速くなる。
重たい胸が“ぼよんぼよん”と服の下で踊るように跳ねている。
薫は、自分でもおかしいと思った。
どうして自分はこんなに急いでるんだろう?
やっぱり直人に逢いたいから?
その顔をひと目でも見たいから?
今もヤマギヤに直人がいるとは限らないのに。もう帰ったかもしれないのに。
なのに、早足になった体を止める事が出来ない。
『ちがう……』
もう誤魔化せない。
お茶なんかどうでもいい。
逢いたい。
逢って……。
『それで……どうしよ……どうする?…ナオタがいたら、僕はどうするんだ?
まさか、志宇が言ったように、告白する?本気?』
不意に、脚の間、太腿の付け根。
早足で動かす太股の、よれてこすれるパンツのクロッチ部分。
そこで『くちゅ』という音を聞いた…気がした。
『ああ…また……』
動悸が激しいのも、呼吸が浅いのも、汗が吹き出すのも、全ては足早に歩い
ているから。
そう思っていた。
今も、そう思っている。
でも本当は、自分が性的に興奮しているからか、単純に運動量が増したから
なのか、わからなかった。
ただ、子宮とか膣とかその他もろもろ…男には無くて女には有る内性器官の
デリケートな壁という壁から、とろりとした甘い蜜のような液体がにじみ出た
事を知覚した。
結論から言えば、スーパーに直人はいなかった。
なぜなら、その前に、出会ってしまったから。
「…カオルか?」
角を曲がった途端、目の前に“彼”はいた。
日に焼けた肌と野性味溢れる髪形に、無地のTシャツとジーンズが似合い過
ぎるくらいに似合っていた。左手にスーパーの袋を提げ、右手に徳用のトイレッ
トペーパーを抱えたまま、驚いたように目を見開いてこちらを見ている。今ま
での彼を見ていると、驚いたりあからさまに怒ったり、ましてや笑ったりといっ
た、激しい感情をあらわにする姿など想像出来ないが、今みたいに「ぽかん」
と口を開けてみるような間抜けな顔が見られるのも珍しかった。
もっとも、薫にはそんな余裕など、これっぽっちも無かったが。
直人の隣には、寄り添うような形で、もう一人の人物がいたからだ。
その姿を見た時、薫は頭に昇った血が“すうっ”と引いた気がした。
ぽかぽかと温かかった指先や足の先が、一気に冷えた気がした。
早鐘のように鳴っていた鼓動の音が、一気に遠くなってしまった気がした。
音が。
……商店街の様々な音が、一気に消えてしまった気がした。
308:【僕オマエ】
08/04/18 02:45:41 V6/vedJi
「…お前も買い物か?」
直人が、何か言っていた。
でも薫には、良く聞こえなかった。
声が遠かった。
肩で切り揃えてブリーチした、明るい色の髪が風に揺れている。
大人っぽい顔立ちの中、薄めの唇に引いたリップはパールピンクだ。
胸も小さくて、襟元のネックレスと耳のピアスがカッコイイと思った。
―そこには、すらっとしたスレンダー美人が、直人の腕を取って嬉しそう
に微笑んでいた。
「カオル?」
間近で聞こえた彼の声にハッとして顔を上げれば、直人が訝しげにこっちを
見下ろしていた。
『―なんだ……彼女、いるんじゃん……』
自分と違って明るい色の髪
自分と違って短いスポーティな髪型。
自分と違って大人っぽい顔立ち。
自分と違って化粧もすごく上手だ。
自分と違ってアクセサリーがすごく良く似合ってる。
自分と違って胸が小さくて、全体的にすらっとしてる。
自分と違って背丈が、直人とお似合いなくらい高い。
自分と違ってスカートをカッコ良く着こなしている。
自分と違って脚元のパンプスがカッコカワイイ。
何もかもが、自分とは反対の女の子。
正真正銘の、『本物の女の子』。
生まれた時からの性のまま成長した、
―『ニセモノじゃない女の子』。
どんな関係?と聞くまでもなかった。
女の子の瞳には直人を信頼し、全てを委ねた安心感が現れていたから。
直人の左腕に強引に腕を絡めて、小ぶりな胸をわざと押し付けるようにして
抱いていたから。
すぐに気付いた。
「ただの関係」じゃない。
近しい……他人には入り込めないほど“親密な”関係なのだと。
それだけが、すぐにわかった―。
「……別に……特に用があったわけじゃ……ない」
カラカラに乾いた喉から、自分じゃないような声が漏れた。
しゃがれて小さな、ぼそぼそとした声だった。
「ねえ、この人ダレ?」
直人の左手を抱いた女の子が、きょとんとした顔で彼に聞いた。
大人っぽい顔に似合わず、意外にも可愛らしい声だった。
この声で、この女の子は直人に囁くのだろうか?
「好き」と、まるでなんでもない事のように舌の上で転がしながら。
自分はまだ、素直に好意を向けることすら躊躇っているというのに。
「…あ?…ああ、コイツは俺の同級生だ」
「友達?」
「…まあ、そんなようなもんだ」
「へぇ~……」
309:【僕オマエ】
08/04/18 02:48:31 V6/vedJi
女の子は、直人の言葉に綺麗に揃えられた眉を上げ、そして何の前触れも無
く、両手を絡めた彼の腕をより一層“きゅっ”と抱き寄せた。
直人と女の子の体が今まで以上に密着し、小さいとはいえ、ちゃんとふくら
みのある胸に直人の腕がますます押し付けられた。
その途端、薫の全身が“ぶわっ”と熱を帯びた。
“ひうっ”と息を吸ったまま、息が止まってしまった。
『なんだこの女……!!』
たった今まで、悲しみとか、どこか裏切られたような理不尽な寂寥感に満ち
ていた心に、猛るような炎が灯る。
それは、薫が同性に対して初めて抱いた、殺意にも似た、明確な“敵意”―。
……が、
「ふうん……そうなんだぁ…」
女の子は、薫の顔を見て「くすっ」と笑った。
笑ったのだ。
その笑みはまるで、瀕死のネズミを嬲る猫の嗜虐性と残虐性がべっとりと塗
り付けられた仮面のようだった。
余裕と、高みから蔑むかのような瞳の色に、薫は思わず目を逸らした。
気付かれた…!?
薫が、直人に対して少なからぬ好意を抱いている事に。
薫の心に、確信めいたものが鋭い棘のように突き刺さる。
目の前のこの女の子は……この女は、それに敏感に気付いて、わざと体を密
着させたのだ。
薫が直人に「友達(のようなもの)」としか思われていないのに対して、自
分はこんなにも直人にくっつけて、心許してもらえて、「それが当たり前のよ
うに振舞うほど」自然な態度を崩さないでいてもらえることを、傲慢な優越感
を含んだ笑みと共に、厳然たる事実として見せ付けたのだ。
ぶるぶると脚が震え、ぎゅっと両手を握り締めた。
そうしないと、たちまち瞳に涙が溢れてきそうだった。
直人の前で、この女の前で、みっともなく泣くのだけは、どうしても嫌だった!
「……な…んだよ。デートか?謹慎中のくせに、気楽だな」
自然と乱暴な、とても女の子っぽくない蓮っ葉な言葉が唇を割って迸った。
その一瞬、薫は直人が誰のせいで、誰のために「謹慎」しなければならなく
なったのかを忘れてしまった。
その“男みたいな”口調に、女の子の顔がびっくりしたようになる。
「…いや、買い物しただけだ」
直人は、なんだかわからないけれど急に態度が硬くなった薫に戸惑ったかの
ように、目を二三度パチパチと瞬かせた。
「……そうか。でも普通、そういうのを『デート』って言うんだよ」
「…そういう…ものか?」
「そうだよ。ね、小梅庵(こうめあん)いこ?抹茶パフェたべたーい」
女が会話に割り込んで、勝手に断定し、勝手に話を進め、直人の逞しい胸に
頭を擦り付けた。
小梅庵というのは、商店街からははずれた場所にある和風喫茶の事で、もっ
ぱら恋人同士の憩いの場所となっている人気の店だった。この町において、そ
の店に男女で行くというのはつまり、自分達が付き合っていると公言するよう
なものだった。
両手が塞がっている直人は、女のされるがままだ。
薫にはそれがまさしく、じゃれあうカップルのようにしか見えなかった。
直人は女の態度に少し苛立っているように見えたが、今の薫には、それは照
れ隠しにしか見えなかったのだ。
「…ちょっと待てよ。俺は今、コイツと話」
「いいよ。行けよ」
「…カオル?」
310:【僕オマエ】
08/04/18 02:51:05 V6/vedJi
「……怒ってない」
「…怒ってるだろ?」
「…ッ……怒ってないって言ってるだろッ!?」
語気が強くなる。
薫は、こんな事で面白いくらいに心が揺らぎ、想いが折れ、泣きじゃくりた
くなってしまう自分が嫌だった。
「いいじゃない?きっとたぶんカオル…さん?も、用事があるのよ。邪魔しちゃ
悪いわ」
横合いから女が口を挟み、直人の太くて健康的に日焼けした二の腕に頬を寄
せた。
その姿に、薫は息を呑む。
言外に、「さっさと行って、私達の邪魔しないでよ」と言われた気がしたの
だ。
だから。
「…おいっ!」
薫は、身を翻して走った。
まるで逃げるように。
出番を間違えた道化がスポットライトから逃れるように。
痩せて汚れた野良猫がバケツの水を掛けられたみたいに。
直人の声を無視し、道行く人々を押し退けるようにして。
『ちくしょうっ』
鼻の奥がツンとしても、目頭が熱くなっても、ただ一心に、二人から離れる
事だけしか思わなかった。
鎧ブラで包まれていてもなお揺れ動く重たいおっぱいが痛かったけど、少な
くとも二人の視界から消えるまでは、立ち止まるつもりは無かった。
「…なんだあいつ…」
直人は不意に駆け出した幼馴染みの遠ざかる後姿を見て、小さく息を吐いた。
後から見ても細っこい体の横から少しはみ出して見える豊満な乳房が、上下
に面白いように揺れていた。
……あんなに走っては、さぞ痛いだろうに。
「あらら……なあにあの人。あたしの直人にツンツンして、カンジわるぅい」
「…由美。いい加減離れろ」
直人は、いまだべったりとくっついてくる女の子に、困ったような顔で言っ
た。甘えんぼなのは今に始まった事ではないが、今日みたいな陽気の日にくっ
つかれると、暑くてたまらない。
「なによぅ。いいじゃない」
「…離れろ」
「けちー」
由美は大人っぽい顔に似合わない声を上げ、ぷくぅとほっぺたを膨らませた。
来年には高校だというのに、すくすくと成長した体とは正反対で、心はまだ
まだ子供っぽさが抜けない少女に、直人は小さく溜息を吐いた。
「ね。今の人が、そうなんでしょ?噂には聞いてたけど、ものすごい巨乳だよ
ね。あそこまで大きいと羨ましいとか言う前に、ちょっとキモいかも。なんか
背が低いから、小学生がボールとか胸に入れて遊んでるみたい」
「……」
直人は、堰を切ったように飛び出した由美の言葉を無視して、スタスタと歩
き出した。その後を、まるで飼い主の脚元に纏わりつく子猫のように、由美が
ついてくる。
「なんてったっけ?『カオル』さんだっけ?あの人が“そう”なんでしょ?珍
しいもんね。直人が学校で目立つことするなんて」
「……」
「もうっ!黙ってちゃ、わかんないよぅ」
「…お前には関係ないだろう?」
「あるよ!だいたい、直人が女の人を助けたってだけでも珍しいのに、それが
あの」
「由美」
何かを言いかけた少女に、直人は鋭い一瞥を向けた。
311:【僕オマエ】
08/04/18 02:53:38 V6/vedJi
「……ふ、ふーんだ。でも残念ね。あの人、絶対誤解したよ?」
「…何の話だ?」
「あたしのこと、すっごい目で見てたもん」
「……?……」
由美の言葉に、直人は本気でわからないというように眉根を寄せた。
そんな直人を、少女はまるで出来の悪い生徒を見るようにして眺める。
「あの人、直人のことが好きなんだよ」
何でもない事のように言う由美の言葉が、直人の胸にナイフのように滑り込
んできて、彼は一瞬、言葉を忘れた。
「…馬鹿言え。俺はあいつに嫌われてるんだ。さっきの態度を見ればわかるだ
ろう?」
「ん~~、や~~…だからさぁ、あたしに嫉妬してるんだよ」
「…どうしてアイツがお前に嫉妬しなくちゃいけないんだ?」
「そりゃ、あの人が直人のこと……ううぅ~~ん……わかんないかなぁ……女
心ってヤツがさぁ。しょうがないかな…直人だもんねぇ」
「生意気な事を言うな。あと、名前で呼ぶな」
「いいじゃん。直人直人直人直人直人直人~~~~っ」
“いい~~~っ!”と歯を剥いて、由美は駆けてゆく。
その後を歩きながら、直人は大きく息を吸い、そして思い切り吐き出した。
『カオルが俺の事を好きだって?』
いきなり思わぬ方向から突きつけられた意外な言葉に、直人は口をへの字に
ひん曲げた。
『そんなこと、あるわけがない』
そう思いながら、直人はほんの少し前まで目の前に立っていた、旧知の友人
の姿を思い浮かべた。
遠い過去の記憶の中の友人は、優等生然とした態度が気に食わない、実にヤ
な子供だった。
…が、今のアイツは、体の線がハッキリと出た、ニットとGパンとスニーカー
という軽装の、世間的には、まあ、可愛いと言える……『女の子』だった。
なんだか記憶の中よりもずっと口は汚いわ、態度はでかいわ、極めつけはわ
けもわからず突然怒り出すという意味不明な行動に出てくれて、それにはさす
がに辟易するが。
『…なんか……ますます何考えてるかわかんねーヤツになったな……』
昔の、必死になってるこっちのことなんか歯牙にもかけないような表情も気
に食わないが、今のアイツも違う意味で苦手な感じがする。
確かに、体付きは好み……と言えなくもない。
それは認めよう。
―体だけは。
思えば、月曜日のあの保健室で、ガムテープで拘束されたカオルの手足を自
由にしながら、直人は彼女の白くて柔らかそうな、豊か過ぎるくらいに豊かな
乳房も、すっきりとした滑らかなウエストも、真っ白な太股の間の黒い翳りも、
さらにその奥の楚々とした赤い亀裂さえも、すっかり見てしまっているのだ。
見ようとして見てしまったわけではないのだが、見えてしまったものは仕方
が無い。
それについての弁解はしない。
実際、ものすごいバディだと思う。
今まで知り合った女にも、あそこまでエロティックな体付きの女はいなかっ
た。
艶やかで長い黒髪。
ほっそりとした首筋と、ちゃんと細いウエスト。
それに対する、眼を見張るほど大きい乳房と、肉付きの良い腰つきのいやら
しさは、高校生らしからぬエロさだ。
古い言葉で言えば「トランジスタグラマー」とか「コンパクトグラマー」と
でも言うのだろうか。
身長が低いのと、顔が可愛らしい部類に入るのを加味すると、どこか背徳的
な気持ちが生まれるのもマニアックだった。
312:【僕オマエ】
08/04/18 02:56:19 V6/vedJi
ただ、今のカオルが、小学生の頃の『薫』とは、もう完全に違う人間になっ
てしまったのだという、一抹の寂しさのようなものを感じたのは確かだった。
直人は、あの坂東達のように、女としては十分に魅力的な体をしたカオルを、
それでも「抱きたい」と思わなかった。
……いや、全く思わなかったと言えば嘘になるが、それと同時に「そういう
邪な思いを抱いていいような相手ではないのだ」と、膨らみかけた欲望を強引
に押し潰したのも事実だった。
なにしろカオルは、友達だと思っていたクラスメイトにレイプされかけたのだ。
男の記憶を持つ人間が、女のか弱い体を、男に暴力でレイプされかかる。
それは、想像を絶する嫌悪感、そして無力感だったろう。
しかもその場を、かつての「仇敵」とまで言える直人に助けられ、それだけ
でも十分に屈辱のはずなのに、あまつさえ乳房や股間や、とにかく体の恥ずか
しい部分まで全部見られたのだ。
そこにあるのは、友達に裏切られ、仇敵に助けられ、心も体も辱められると
いう無様さ。
直人にはカオルが、それでも平気な顔をしていられるとはとても思えなかった。
もし自分だったら、坂東だけでなく直人も一緒に二度と見たくない世界の果
てに追いやってしまいたくなるはずだ。
そんな相手を……そんなにまで傷付き、そして裸を見た自分を疎ましがって
いるだろうカオルを、直人はそれでも性の対象として見る事など出来そうにも
なかった。
『けど……そういえば、いい匂いがしたな……』
あの日、床に崩れ落ちたカオルを保健室へ連れて行くために抱き上げた時も、
あの密室に満ちた男達のすえた匂いの中に飛び込んだ時も、直人はひどく官能
的でありながら自分を優しく包み込むような、心地良い香りを感じた事を思い
出した。
その香りは、つい先ほども、カオルの方からほのかに香ってきていた。
直人でなければ、きっと“くらっ”と理性が挫けてしまっていたかもしれな
いと思わせるほどの、心地良い香りだった。
周囲は、もうカオルを完全に『女』として見ている。
だが……。
『…俺は……』
もし由美の言うようにカオルが自分の事を好きだとしても、自分の事を疎ま
しく思っていないとしても、果たして自分は、カオルを一人の「オンナ」とし
て見られるのだろうか?
『確かに、今は体だけはオンナだが……』
そう。
あの日、階段前の廊下でカオルに言った言葉は、決して嘘ではない。
『へぇ…可愛くなったもんだな』
小学校の頃の幼馴染み『香坂薫』が『リヴァース・プロジェクト』の被験者
となり、女性に『転体』した事は、事前に送られてきた資料を通して既知であっ
たし、写真でその顔も承知していた。
が、直接顔を合わせ、良く変わる表情やキラキラを輝く瞳を目にした時、不
覚にも直人は本当に「可愛い」と思い、つい思わぬ言葉が口をついて出てしまっ
たのだ。
立っているだけで男の目を引き付けずにおかない、その小柄ながらエロティッ
クな肢体。突然床に崩れ落ち、泣きじゃくり始めた「彼女」を抱き上げて、直
人はその肢体のオンナとしての成熟度に“くらっ”と来たのは、絶対に誰にも
話せない秘密だった。
313:【僕オマエ】
08/04/18 02:59:59 V6/vedJi
あの時の自分は、確かに腕の中のオンナの体に、発情してしまった。
決して“そうなってはいけない立場の人間”であるにもかかわらず。
たとえ「上」から『双方が合意の上であるならそれを止める術は無い』…と
通知されいても。
自分の『役目』を忘れるわけにはいかない。
だが、忘れてしまいそうになるくらい、効し難い性的魅力を、カオルは放っ
ている。
『カオルを……抱く?』
実のところ、自分の気持ちさえもわからない自分が、昔とはまるきり変わっ
てしまった、幼馴染みの……しかも、男の子だった女を抱けるのか?
しかも向こうは、男だった頃の記憶を持ったままなのだ。
かつての薫は、いたってノーマルだった。
男を好きになるような人間ではなかったのだ。
そんな人間が、果たして男に抱かれようとするだろうか?
『わかんないかなぁ……女心ってヤツがさぁ。しょうがないかな…直人だもん
ねぇ』
不意にさっきの由美の言葉が脳裏に蘇る。
そんな由美の、その生意気な鼻の頭を頭の中で思い切り指で弾いた。
カオルは普通の女じゃない。
そのカオルに、生まれてからずっと女として生きてきた由美が言うところの
『女心』など、あるのだろうか?
「…ふう…」
溜息が出る。
言われなくてもわかっている。
自分は、恋愛に向いていない。
だからといって、由美にまでそれを指摘されるとは思わなかった。
「…ったく…ナマイキなんだよ」
直人は前方、小梅庵の入り口で待ちくたびれたように座り込んでいる少女を
見て、小さく呟いた。
「……妹のくせに」
■■【19】■■
どこをどう走ってきたのか。
薫はいつしか、町外れの山の麓にある、小さな公園まで来ていた。
「公園」とは言っても、特に何か遊具等があるわけではない。6年ほど前の
区画整備に伴い、取り壊されたいくつかの古ビルの跡地に作られた、急ごしら
えの舗装道路と公衆トイレ、そして2つほどの東屋(あずまや)しかない、ど
ちらかと言うと「遊歩道」と言ってもいいくらいに簡素なものだった。
周囲には整備の際、造園用に移植された大きな木が何本も茂り、まだ高い陽
を遮って木陰を作っている。
人家が近くに無いせいか、商店街から近いのに、まるで山の中みたいにやた
らと静かだった。
木漏れ日が、テニスのハードコートにも似た舗装道路の表面で踊っている。
小鳥の囀りや木の葉の擦れる音、そして遠くから風に乗って町の喧騒が微かに
届いてくるのみだ。
薫は重い脚を引き摺って東屋に入り、模造木材で出来たイスに座ると、ゆっ
くりと息を整える。
涙を拭い、「すんっ」と鼻を啜った。
思い切り走ったせいで、おっぱいが痛い。おっぱいの上部……ブラで押さえ
られ急激な盛り上がりを見せる部分に両手を当て、ゆっくりとマッサージした。
上下の激しい動きでひりつく肌は、きっとたぶん内出血している。
だが今は、その奥にある小さな心の方が何十倍も痛かった。
「……彼女……いたんだ……そっか……」
小さくひとりごち、東屋の薄汚れた天井を見上げる。
片隅に、蜘蛛が大きな巣を作っていた。
それがたちまち滲んで、揺れる。
目を瞑れば、熱いものが次から次へと頬を滑り落ちた。
314:【僕オマエ】
08/04/18 03:02:41 V6/vedJi
『……こんなの……まるで、女の子みたいじゃないか……』
そう思いながら、「何を言ってるんだ僕は」とも思う。
癌で余命いくばくも無い男の体を捨て、被験者として健康な女の子の体を得
て2年近く。
女の子として生きてきて、女の子として男の子に恋をした。
その熱いときめきに、脳が男だからとか、なんだかもうそんな事すらどうで
も良くなってきていたのに、いまさら「女の子みたい」もないではないか。
自分はもう、すっかり女の子なのだ。
ちょっと男の子っぽい心を持った、女の子なのだ。
そして今日、女の子として『失恋』した。
そう。
―『失恋』したのだ。
「……うっ……くぅ……」
涙が溢れて止まらなくて、揃えたスキニージーンズの膝小僧に、頭を付ける
ように背中を丸めた。
こんなのひどい。
こんなのは無い。
1度目の恋は自覚するのが怖くて、自分から遠ざけた。
2度目の恋は自覚した途端、始まる前に壊れて消えた。
直人の隣で、可愛く笑ってた女の子を思う。
明るい色の短いスポーティな髪型に、化粧の上手な大人っぽい顔立ち。背が
高くて、ピアスやネックレス、アンクレットがすごく良く似合ってて、胸が小
さくて、全体的にすらっとしてて、スカートとパンプスが似合い過ぎるくらい
に似合ってた女の子。
それに対して自分はどうだ?
元々は正真正銘の男で、真っ黒な重たい印象の長い髪型に、化粧っ気のほと
んど全く無い子供っぽい顔立ち。背が低く、アクセサリーはちぐはぐで似合わ
ないから一つも付けていない。おまけに胸がみっともないくらい大きくて、全
体的にちまっとしてて、ズボンとスニーカーがせいぜい似合う女の子。
何もかもが、あの子とは正反対だ。
あれが直人の、好みなのか。
ああいう子が直人の好みか。
じゃあ僕はダメじゃないか。
最初から、全然ダメだったんじゃないか。
自嘲と後悔と自己嫌悪が、頭の中でぐるぐると渦を巻く。
「オカマ野郎」「牛」「牛女」「巨乳」「デブ」と言われた時の事を思い出
す。あれは半ば、からかい半分に面白がった軽口だと思っていた。でもひょっ
としたら、後の半分は本当の本気で本心から出た言葉だったのかもしれない。
「―ひんっ……」
そう思い至った途端、自分が無価値でくだらない、取るに足らないゴミみた
いな存在に思えて、嗚咽が喉の奥からせりあがってきた。
男から女に『転体』した人間は、女にも男にも恋なんて出来ないのだ。
不恰好にふくらんだおっぱいなんか持つ女は、恋なんてしてはいけないのだ。
もし身の程知らずに恋なんてしたら、こんな風に魂を引き裂かれるような痛
みを負う事になる。
いろんな男子に「可愛い」って言われた。
それがどうした。
「おっぱいが大きいのも最高」って言われた。
それがどうした。
百万、千万、数千万の人間に好かれても、たった一人に嫌われたら世界は無
価値だ。
直人に嫌われたら、自分はキモチワルイ体の、ただのキモチワルイ人間でし
かない。
315:【僕オマエ】
08/04/18 03:06:56 V6/vedJi
いっそのこと、こんな胸、切り取ってしまおうか?
そうすれば直人も少しは自分を見てくれるようになるだろうか?
ジーンズに染み込む涙さえも鬱陶しい。
自分は、香坂薫という人間は、こんなにも弱い人間だったのだ。
無価値でキモチワルイ上に弱くてゴミみたいな人間だったのだ。
ひとしきり涙を流し泣きじゃくると、心にぽっかりと大きな穴が開いてしまっ
たような気がした。
壁に背中を預け、顔を上げて天井を見上げる。
さっきの蜘蛛は、さっきと同じように巣の中心で動かずにじっとしていた。
―いったい自分は、何を期待していたのだろう?
恋心をあたためていれば、いつか直人に好きになってもらえるとでも?
昨日の夜感じた絶望的な未来ビジョンが、ちょっと早くやってきただけの事
じゃないか。
それなのに、心のどこかではやっぱり期待していたのではないか?
「好き」という気持ちさえ失わずにずっと胸に秘めていれば、いつかは応え
てくれるかもしれないとか。
確かにあの時、直人は助けてくれた。だから、嫌われてはいないのだと思う。
でも、今ならハッキリと言える。
好かれているか?と言われれば、「もともと好きでも嫌いでもなかった。む
しろ最初から女としてなんて見られてなかったのだ」と。
やはり自爆しか無かった。
志宇達にちょっと言われたからって、心のどこかでその気になって、女の子
として「直人に逢いたい」と願った結果がこれだ。
自分が女であることを心身共に認めてしまったため、直人に対しての気持ち
にブレーキがかからなくなった。
そんな自分にとって、あの女の子は線路に置かれた大きな石か頑丈な壁だ。
薫という名の“ブレーキの壊れた列車”は、石に乗り上げて脱線し、頑丈な
壁に激突して衝突事故の大惨事。救いようの無い、歴史的大事故だった。
直人には、もう好きな……付き合ってる女の子がいたのだ。
その女の子は、顔も背格好もスタイルも服のセンスも、自分とは全くの正反
対だった。
「元男なんか好きになれるか」とか言われるよりひどい。
直人の女の子の好みからてんで的外れの場所に立って、ただじっと想ってい
た自分はどこにどう出しても恥ずかしくないほどの、立派な『道化』だったわ
けだ。
ズキンと、胸が痛む。
こんな恋心なんか捨ててしまえと、誰かが囁く。
けど、どうしてだろう?
なぜだろう?
自分のことなんてこれっぽっちも関心が無いとわかった今でさえ、彼の顔を
思い浮かべると泣きたくなるくらいの幸福感と、死にたくなるくらいの絶望感
が同時に胸に満ちるのだ。
「……好き……」
そう、唇に乗せてみる。
『……ああ……どうしよう……』
まだ。
まだ、こんなにも好きなのだ。
熱い想いが、とめどなく胸の奥から溢れて止まらない。
頬が火照り、耳たぶが熱くなり、全身が汗ばんで瞳が潤み、胸が…。
316:【僕オマエ】
08/04/18 03:10:50 V6/vedJi
胸が、『きゅうん』と切なくなる。
『触れたい』
『触れて欲しい』
恋が破れて望みが無くなってしまってもなお……。
膨れ上がった想いは、止めようも無いほどに薫の心を満たしていく。
「決して手に入らないもの」だからこそ、余計に求めたいと願ってしまうの
だろうか?
直人に見てもらえるのなら、きっと自分は何でもする。
直人が触れてくれるのなら、きっと自分は何でもする。
直人に触れてもいいのなら、きっと自分は何でもする。
何だってあげる。
代わりに直人が欲しいものなんでも。
髪も、唇も、おっぱいも、あそこも、お尻だってどこだって、直人が欲しい
と思えば何だってあげる。
全部、直人のモノだった。
こんな体でよかったら、何でも好きにしてくれていい。
そうして、身も心も直人のモノにして欲しいと想った。
あの少女になりたい。
直人の隣で無邪気に笑い、こっちを牽制するように挑発してきた、あの女の子に。
そして毎日直人の腕を取り、今日みたいな天気のいい日に二人で買い物するのだ。
あの少女が直人からもらってる言葉や視線や指や唇を、全部ひとり占めするのだ。
薫はそんな想いを胸に抱き、「はぁ……」と熱い吐息を吐き出した。
317:【僕オマエ】作者
08/04/18 03:11:35 V6/vedJi
今日はここまでに。
大量&連続投下してしまいました。
すみません。でもおかげで下準備が出来ました。
次回からエロエロに出来ると思います。
またしばらく伏せます。
出来ましたら、近い内に御会い致したいと思います。
気長に御待ち頂けたら幸いです。
318:名無しさん@ピンキー
08/04/18 07:29:44 I5j32oma
くどすぎてツマラン。以上。
319:名無しさん@ピンキー
08/04/18 07:44:43 f0t5d9ia
ねっとりむっちりでいいんじゃない
俺は好きだね
320:名無しさん@ピンキー
08/04/18 10:31:31 Wf0Fv2dY
乙!
こういうじわじわ描写してからのエロは大好きなので
楽しみにしてます。
321:名無しさん@ピンキー
08/04/18 11:36:51 7XYzInQY
GJ!
薫は俺の嫁!!
322:名無しさん@ピンキー
08/04/19 00:39:42 Qp+I9/aR
更におっぱい!おっぱい!な展開が待ち遠しい
323:名無しさん@ピンキー
08/04/19 01:10:57 7tIw+wZE
>>317
乙彼~
90年代の少女小説のような展開にちとびびったw
その王道を行くならば、これまでの重いシーン→中略→濃厚なエロ→すっきりエンド?
wktkが止まらんです!
324:名無しさん@ピンキー
08/04/19 19:08:34 jbohsKY7
宮木 守の続きが見たい
325:ふう@ピンキー
08/04/20 00:52:44 IYLH9nsz
こんばんは。ちょっと間が空いちゃいましたが、
しぃちゃんの続きを投下します。
今回はいつもより長いんで、2回に分けて投下します。
2回目はまだ書いている途中なので、たぶん今夜中に投下ww
(まあいつもが短いんだけどね。)
326:大塚志乃5
08/04/20 00:56:06 IYLH9nsz
遙に案内され、更衣室に入ると、すでに何人かの女子が着替えを始めていた。
入り口で思わず立ち止まる志乃。
それをみて遙はクスッって微笑むと、志乃の手をとり、部屋の中に引いてあげた。
「しぃちゃん、もしかして女子更衣室は初めて!? だよね。。」
「うん。。こんな大勢の女性が着替えている場面に踏み込んだのは初めてだよ。。」
銭湯や、女性だけの公共施設にまだ踏み入ったことのない志乃にしてみれば、
禁断の薗と言っても過言ではないくらいだった。
「だいじょうぶ。しぃちゃんはどっからみてもフツーの女の子なんだから、
遠慮しなくてもへーきだよ。」
「そういわれても・・チョット前まで男だったやつがこんなとこにいたら・・・。」
「あれ大塚さん。早く着替えないと間に合わないよ。」
一人で危惧してる志乃の脇を、同じクラスの女子が平然と通り過ぎて行く。
それを見送ったあと、遙は平然とした表情で、
「でしょー。みんな気にしてないから早くはいろおっ!」
初めて入る更衣室の中では、クラスで知った顔の女子たちがせわしなく着替えをしていた。
なるべく視線を併せないように部屋の隅に移動して、もってきた手さげ袋から体操着をだす。
(女子はハーフパンツだったな。。)
志乃はそのままスカートをはいたままハーフパンツをはく。
そして次のスカートをホックを外して脱ぎ、続けてブラウスを脱いだところで、、
「うわーおっきぃねー!!」
「うわぁ!!」
突然、志乃は後ろから胸をつかまれた。
「ちょっ・・ちょっと!!」
「すごい・・あたしよりおっきいじゃん!!なんか屈辱~っ!!」
327:大塚志乃5
08/04/20 01:01:01 IYLH9nsz
もみもみもみもみもみもみ・・・・・。
「まっ・・・・・ちょ、ちょっと。。」
どうにか身体を捻って振り返ると、そこにいたのは同じクラスの「九条弥生」だった。
「あぁ九条か。びっくりさせるなよ。。」
「ごっめーん!! なんか大塚のおっぱい。けっこうおっきそうだったから思わず触っちゃった☆」
壁に向いた状態でこそこそと着替えていたため、背後の接近に全く気づかなかった。
弥生はごめんといいながらも、まったくわるびれた感じもない。
「大塚の胸。大きい割には形がいいよねぇー。
つーか元々女のあたしよりおっきい、ってのがちょっとくやしいけど!!」
なんてふてくされた感じで言う弥生。
そんな弥生は一見、ショートカットでボーイッシュな感じをかもし出してはいるが、
そうはいっても弥生は身長が170cm。志乃よりも10cmも高い上、スリムなモデル体系。
こんな見事なスタイルでぐちられても、志乃には「はは。。」と笑うしかなかった。
「しかもさ、なんか柔らかいのに弾力があって、女のあたしからみてもいいさわり心地だったよ♪」
「そっ、そんなこと言ったって・・・!!」
ますます返す言葉がない志乃だったが、
「しぃちゃんー。早く着替えていこーよー。」
ちょうど遙が声をかけてきたので、志乃も慌てて上着をきて更衣室をあとにすることにした。
328:大塚志乃5
08/04/20 01:04:48 IYLH9nsz
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体育はバスケの時間だった。
ここはバスケ部員である弥生の独壇場だった。
志乃と遙は弥生と同じ3人のチーム分けになり、
ガードの司令塔を弥生がつとめ、志乃と遙がフォワードで点を取りにいく。
弥生もその気になれば充分に自分で点をとりにいけるのだが、
ここはあえて同じチームメートを活かすようにゲームメイクをするところは、
さすがはバスケ部員、といったところだった。
ジャンプすると、まだ少し胸の揺れが気にはなるが、
スポーツブラを付けていることで思ってたよりは気にならず、
それに、さすがにスポーツをやってるときは、志乃もあまり「女子」を意識せずに、
バスケに没頭して楽しむことができていた。
ちょうどそのころ、誰も入れるはずのない女子更衣室に、一人の男がいた。
その男は、志乃が先日登校してきたときから、ずっと志乃をみていた。
今日も登校してから更衣室にいくまで、周りに気づかれない距離を保ちつつ、
その志乃の一挙手一投足をじっと眺めるように。
そして今日初めて、志乃をその目で追うことをやめたその男は、
どうやったのか、女子更衣室に侵入していた。
その男は見覚えのあるかばんが置いてある棚をみつけると、
そこに近づき、たたんである衣類をそっと手にとる。
へんに崩さず、しわをつけないように、丁寧に衣類をあさっていく。
中で小さなショーツをみつけると、その男はそれを手にとり、
両手で眼前にかかげ、マジマジと凝視する。
一通りの興奮を覚えた後、その男は本来の目的でを果たすため、
ブラウスのポケットに一枚の紙をしのばせた。
そして痕跡を残さぬように、衣類を綺麗にもとのように戻し、
更衣室をあとにした。
329:大塚志乃5
08/04/20 01:08:20 IYLH9nsz
授業終了のチャイムが鳴って暫くすると、大勢の女子が体育館を出て行った。
その中で遙、弥生、志乃は、試合の成果をお互いに称えあっていた。
「さっすが弥生ねー。パスとかうますぎ!!よく後ろにあたしがいるのがわかるよねー。」
興奮気味に話す遙は、弥生の見事なパス回しに感動していた。
「一応、本職はポイントガードだからねー。一応パス職人なんで、そこんとこヨロシク☆
でもさー。大塚も結構シュートうまかったよねぇ。しかも片手打ちでよく入るよね。」
「まあ昔からあの打ち方だったし。膝使えばちゃんと届くよ。」
女子の中で一人、片手打ちのシュートをしていたのは志乃だけだった。
大抵の女子はみな両手うちなので、片手打ちはめずらしがられた。
「九条こそ、わたしたち二人にマークがついていると、すきあらば3Pを決めちゃってすごかったぜ。」
「をぉ!大塚~、今、「わたし」っていったろ!?けっこう様になっているじゃん!」
「まあ、一応な。。なるべくこう、言うようにしている。。恥ずかしいからあんまいうなよ!!」
弥生の突然の冷やかしに、思わずあわてる志乃だが、
こういうやりとりがあまり苦手にならなくなってきていた。
そして3人は更衣室に戻ると、次の授業にそなえて急いで制服に着替えなおす。
このとき、ブラウスまで着おえた志乃は、胸元のポケットに入っている紙に気づく。
(なんだこれ・・・?)
あまり考えずに二つに折られた紙を広げると、中には簡潔に書かれた文章があった。
「大塚くんへ。 このあと、内緒で体育館の用具室にきてください。
大事な秘密のお願いがあります。 中嶋より」
(はぁ・・・??)
330:大塚志乃5
08/04/20 01:10:18 IYLH9nsz
一瞬、固まる志乃。
突然の文章に、その意味を理解するのに数秒。
「しぃちゃん~、どうしたの??」
「あっ、いや何でもないよ!!今着替えおえるからちょっと待ってて。」
思わず紙を握りつぶすようにして隠す。
そのまま黙々と着替えをすます。
(なんだ今の内容?? おれ宛てだよな・・??中嶋って、たしか同じクラスにいたと思うけど、
秘密のお願いっていったいなんのつもりだ!??)
「なあ、遙。中嶋ってどんなやつだっけ?」
「んー中嶋くん? どんなって言われても・・どうかしたの??」
「あっいやなんでもない。気にしないでいいよ。」
「そぉ・・?」
(まあ秘密のお願いって言ってるくらいだし、ここで話しちゃまずいよな。。
シカトしてもいいけど、大事なとかいってるしなぁ・・どうすっかなぁ。)
「なぁ遙。わたしちょっと用事があるからさ、先戻っててよ。」
「ん? 大丈夫ー? 付き合ったげよっか??」
「いや平気。すぐ戻ってくるよ。」
「そ? あんま時間ないから気をつけてね。」
「ああ。それじゃ。」
志乃は踵を返すと、急いで体育館の方に戻っていった。
331:ふう@ピンキー
08/04/20 01:12:40 IYLH9nsz
とりあえずここまで投下です。
続きは目下書いているとこです。
(あまり長くしないで120行前後で投下。が自分ルールなので)
つうか、ほんとエロまで前置きが長すぎですねww
まあ王道的な展開っていうか、ベタな展開好きなのでww
332:ふう@ピンキー
08/04/20 02:28:59 IYLH9nsz
では、続き投下しますー
。
333:大塚志乃5
08/04/20 02:31:57 IYLH9nsz
体育用具室にはまだ誰もいなかった。
この時間は体育館での授業がないせいか、一人でいる用具室は余計に静かに感じる。
(あれ?まだきてないのかな・・!?)
なにげに後ろに振り返った瞬間・・・、
「大塚君。」
「ひっ・・! あ、・・驚かすなよお・・。中嶋か。つかなんのようだよ・・。」
背後にはいつのまにか同級生の「中嶋」が立っていた。
身長は160cmの小柄で、体育の授業では余り表にでてこない印象が残っていた。
よく言えば物静か、悪く言えば暗そうなこの男は、
クラスでもあまり目立たず、あまり特技がないように見えるこの男だったが、
武道をたしなむ志乃に感ずかれずに背後に立てるということ時点で、ある意味この男の特性といえるだろう。
「来てくれて嬉しいよ。やっぱり僕ら親友だもんね。」
「え・・そうだっけ? まあいいや。突然呼び出して何のようだよ。」
いまいち中嶋の考えがわからず、怪訝な顔をする志乃だった。
中嶋はとくに意に介した感じはしていないようだ。
「優しい大塚君にしか頼めないことがあるんだ。いいかな?」
「だからその頼みってなんだよ。聞くだけ聞いてやるから、早く言ってみろよ。」
なんかとなく煮え切らないこの男の態度に、少し苛立ちを覚え始めてきた。
「 お っ ぱ い み せ て 。」
突然の言葉に、一瞬、志乃は我が耳を疑った。。
334:大塚志乃5
08/04/20 02:32:31 IYLH9nsz
「今なんて言った?? 聞き間違いかもしれないから、もっかい言ってくれ。。」
「やだなぁ大塚君、恥ずかしいからなんでも言わせないでくれよ。
その大塚君のおっきなおっぱい、みせて欲しいんだけど、どうかな?」
志乃の顔がだんだん赤くなっていく。
「てめぇ・・言うことかいてそれかよっ・・」
突然、中嶋は中に浮いたまま足を折り曲げて、空中で正座の姿勢を作ると、
重力のままに地面に落ち、着地の瞬間に土下座のポーズをとって、必死に懇願をする。
「お願いだ!大塚君。こんなこと頼めるの、君しかいないんだ!!」
一瞬、志乃はたじろきつつも、このとち狂ったことを言い出す男をなだめようとする。
「だからってなー。いきなりそれは・・。」
「僕は今まで女の子と付き合うどころか、喋ったことすらあまりないんだ!!
ここ最近だってせいぜい、消しゴム貸して、ってぐらいしか会話ないし・・
こんな僕がこの先本物の女の子に付き合えるかと思うと・・・。
だから一回でいい。ネットや雑誌じゃななくて、実物の女の子のおっぱいがみたいんだよーー!!!」
一気にまくしたてるように喋られ、志乃は口を挟む余裕すらなかった。
「でもなあ。だからっておれに頼むのは筋違いだろ・・。」
なんか必死に見えた。逆に志乃は半端呆れ気味だった。
「大塚君は八幡さんって彼女がいたから、今の僕に気持ちなんてわかんないんだよー!!!」
(はぁああああ。なんだこいつ。めんどくせーー。)
「それに大塚君って、元々男だよね?? 別に自分の胸をみせるって、そんな気にならないんじゃない!??」
「・・・・。 は!?」
突然、この男は、志乃の気持ちを揺さぶるような、志乃の心の核を突くことを言い出した。
「男同士なんだし、別にちょっとくらいいいよね!? ね!? ね!?」