08/03/02 16:08:31 qdh/wUdB
賑わいを見せる神姫センターの中央。
催し物やディスプレイ用に設けてあるオープンスペースに、『工事中』の吊り札とともに黄色と黒の
縞々ロープが張られていた。
「はい雛人形通りま~~す。雛人形が通りま~~す」
フォークリフトよろしく桐箱を担いだグラップラップの一団が、黄色い回転灯を光らせ進路を客に
譲ってもらいながら工事区画へ向かっていく。
カン、カン、カン。
ガタン、バタン。
ロープに囲まれた区画では、他の建子たちによって着々と雛壇が作られつつあった。
「それにしても、何かウチらのギャラリー多いっスね。ゲームそっちのけで人だかりになってるっス」
雛壇に被せる毛氈の用意をしながら、新人の建子が先輩に話し掛ける。
「そりゃ、あれだ。人間が雛飾り組んだって珍しかないだろ。俺たちの工事作業含めて、神姫センター
ならではのイベントって事さ」
「ナルホド。……で、でもそれにしちゃ妙なお客さんも交じってますよ! ほら、あそこの……
普段ならこんな場所に来そうも無いようなオッサン連中。ウチらの写真撮ってるし。ちょっと不気味」
「ああ、アレか。ほら、最近居るだろ。工事現場とか重機とかに萌えるマニア」
「マジっすか!? ウチら重機とちゃうし! ここ全然ちっさい現場だし! 見に来る意味あんのかな」
「どこが琴線に触れるかなんて、それこそ人それぞれだろ。口よりも手ェ動かせ新入り」
「うぃーーーっす!」
* * *
─工事完了。車座になって冷却水の入ったヤカンを回し飲みしながら休憩タイム。
「いやぁ、店舗が広いと荷物運ぶだけで一苦労だわ。かき入れ時なのは分かるけど、やっぱ掛け持ちは
しんどいよなぁ」
「根性無しめ。公式大会のセット組むのに比べりゃ楽勝だろ」
「ううぅ。ぼんぼりに傷付けちゃったよぅ。後で社長にどやされるぅ……」
「よーし、休憩終わり。次の現場に向かうぞ。全員トラックに乗り込め」
『現場監督』の腕章を着けた建子が、パンパンと手を叩いた。
「移動中に充電を忘れるなよ。これが終わったら今期のミッションはコンプリートだ!」
「「「「「「「「「「「合点承知!!」」」」」」」」」」」