08/02/07 23:32:16 8jjU2Shc
あ、あんたのせいで負けちゃったじゃない!責任とりなさいよ!とか言われてレイプされるのか
おいおい、負けるしかねーだろ
428:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:38:57 9ff2DDw6
>>426
他人のやる気を殺ぐようなことはやめろ。
429:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:43:35 sx016WpS
>>428
保管庫が無い、あっても規約違反の所に建ってる、
なんて状況の方がよほど職人のやる気を殺ぐだろうがアホ。
なに、もしかして規約を読むこともしないアホのカンリニンサマのやる気を殺ぐって言いたいのか?
430:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:44:12 gRFyCp3m
>>427
こういうことか?
負ける → ヒロイン’s総攻め サイト総受け
サイトは首輪を付けられ地下牢で徹底調教
勝つ → ルイズ御褒美攻め サイト受け
431:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:48:17 Z6ZjS7nC
もともと保管庫なんてなかったよな( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )
432:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:50:57 XYKovNfK
>>426
頼んだ
>>428
糞管理人は氏ね
433:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:54:18 ylI7H9IA
>>426
お願いします
434:名無しさん@ピンキー
08/02/08 00:04:14 AAsT/LH2
だから執拗な管理人叩きはやめろよ・・・
それはともかく、新しい保管庫は必要だけどな。
435:名無しさん@ピンキー
08/02/08 00:10:49 wsFvUmkZ
ここまで厨の作品投下無し。
職人の意見も無し。
冬だからって、猿が多いにも限度があるだろ
436:名無しさん@ピンキー
08/02/08 00:12:56 pqM16U3p
甜菜
| /| /| ./| ,イ ./ l /l ト,.|
|_≦三三≧x'| / :| / ! ./ ,∠二l |. || ■ ■ ■ ■
|.,≧厂 `>〒寸k j / }/,z≦三≧ |. | リ ■ ■ ■■■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
/ヘ { /{ 〉マム / ,≦シ、 }仄 .j. ./ ■ ■ ■ ■ ■
. V八 {l \/ : :}八 / ,イ /: :} ノ :| /| / ■ ■ ■ ■ ■
V \ V: : : : : :リ \ ./ .トイ: :/ ノ/ .}/ ■ ■ ■ ■
' ,  ̄ ̄ ̄ └‐┴' { ∧ ■ ■■ ■ ■ ■
V \ヽ\ヽ\ ヽ \ヽ\ | \. ■ ■ ■ ■ ■ ■
\ , イ▽` ‐- __ 人 \ ■■ ■ ■ ■
:∧ ∨ ∨ / ハ
::::∧ ヘ, / , イハ |
::::::∧. ミ≧ 、 ,∠, イ: : : : :.', |
::::::::::} 了`>ァ-‐ ´ } : : : : : : : : ', |
:::::::/ | ∨/\ / : : : : : : : : : } |
:::::/ レ'7 ̄{`ヽ. V/ : : : : : : : : : / .|
::/ / / V∧/: : : : : : : : : : / /
437:Lv.見習
08/02/08 01:32:17 1d4h9Mmp
さっきちらっとアルトネリコな会話してたら思いついちゃったのを投下。
その勢いのまま2時間くらいでぱっと書いちゃったんだ。反省はしてない。
全然アルトネリコな雰囲気出てないけど、元ネタ知らない人には
意味不明になりそうなところがあったからわざとずらした。
元ネタわかってる人はわらってくれ。
興味ない人はそのままスルーしてくれ。
438:ゼロトネリコ Lv? 寂寥と愛欲
08/02/08 01:33:11 1d4h9Mmp
「ん……あれ? ここどこだよ?」
ふと目をさまし、周囲を見回すと……、そこは異世界だった。
……といっても、才人がボケているわけではない。
さわさわと揺れる草原からの視界は広く、はるかに孤島のような土地が見渡せるが……、
才人はこんな土地はまるで見覚えがない。
大体、昨日は確かに普通にいつもどおりに、ルイズのベッドで眠ったはずだった。
なのに、なんでこんな野っ原で目が覚める?
はるかに見渡せば、猛る活火山に、遠く崖下に流れ落ちる滝。
点々と見えているのは王宮と、ラ・ヴァリエール邸だろうか?
幸いというべきか、見慣れた魔法学院がすぐ近くに見える。
ただ、それらはどうにも寒々とした雰囲気をかもし出して、今、才人がいる草原だけが
なぜか柔らかな光を放っていた。
「しっかし……、誰もいねえみたいだな。参ったねこりゃ」
背中に背負っているはずのデルフリンガーもいない。
ムダに長生きしてるデルフなら少しはわかるかもしれないと思ったが、残念なことに、
今回はアテにできないらしかった。
「うーん……、座っててもしかたねえし、とりあえず、あちこち回って見るか」
才人がとりあえず訪れたのは、トリステイン魔法学院だった。
見慣れた道を通っていくが、なぜか生徒たちの姿をまったく見かけない。
これだけ違和感のある世界であるのに、ルイズがいつも通りいるとも思えなかったが、
それでも才人は寮の一室、おなじみのルイズの部屋に訪れた。
「おい、ルイズ。いるか?」
ノックもなしに扉をばっとあける。
……いた。ベッドの上、シーツをかぶっているのは、間違いなくルイズだった。
「サイト……」
言って、ルイズはそっとシーツから顔だけを覗かせる。
才人はそれでようやくほっと一息ついた。
「あー、すぐ会えてよかったよ。なあルイズ、ここってどこなんだ?」
「どこって……、ここはわたしの部屋よ」
「そりゃわかってるよ。でも、なんかこの世界ヘンだろ?」
「ヘンじゃないわ。ここはわたしの部屋よ」
どうにも話が通じない。困った才人は頭をかいた。
「でも風景も妙だったし、なにより学院内のどこ行っても誰もいないし……」
「それでいいの」
「ん? 何言って……?」
予想外の言葉にうろたえる才人の目の前でルイズははらりとシーツを落とした。
その下はごく僅かな布地で要所のみを隠している、下着より全裸よりいやらしい……、
うん、これはあれだ。「あぶないビスチェ」ってヤツだ。
「……って、こ、こら! なんてもん着てんだよお前!」
「あ、こういう服じゃサイトは興ざめしちゃう? じゃあ脱ぐわね」
「ま、待てーーー! 脱ぐなっ!!」
439:ゼロトネリコ Lv? 寂寥と愛欲
08/02/08 01:33:34 1d4h9Mmp
言うなり肩紐に手をかけたルイズに慌てて駆け寄って、先程まで羽織っていたシーツを
頭からかぶらせた。そのままシーツごとベッドに押し付ける。
危ない。何が危ないって、何かヤバいものがぞくぞくと湧き上がって―……。
暴れそうになる本能から逃れようと、才人は頭をぶんぶんと大きく振った。
押さえる手が緩んだ隙に、シーツの隙間から繊手がすいと忍び出て、指先が頬に触れて、
その感触に才人はおもわずぴたりと動きを止める。
「もう……、やっぱりサイトってば、ケダモノなんだから」
潤んだ瞳。そして、いつもの声より、数段煽情的な声が才人の耳をくすぐった。
ち、ちがう。このルイズはいつものルイズじゃないんだ。ちがう……。
才人はもはや己にいい聞かすように内心でつぶやき続ける。
「ちょ、ちょっとまて。それより早く外に出てだな……、皆を探さないと」
「え……、皆の前でシタいの? そんなことさせるなんて……、サイトのいじわる」
ぽっと頬を染めて視線をはずす仕草といったら……。
才人は思わず伸ばしそうになる手をぎりぎりとつねり上げて堪える。
「ま、まあ、落ち着けって。それより皆を探そうぜ。な?」
「……イヤよ」
「イヤって……、なんでだよ」
「だって、サイトと二人きりでいたいんだもん」
あっさりすんなりと躊躇いもせずにルイズはそんなことを言った。
聞いた才人は下顎がすとんと地に落ちた気がした。
おかしい……、おかしすぎる。
仮にそう思ったとしても、ルイズがそんなことを言うはずがない。ありえない。
「お、おい……ルイズ」
「ねえ、ずっと一緒にいて。わたしのカラダ……、サイトなら、なんでもしていいの」
言いながら白い素肌に才人の手を持っていった。
鎖骨の上をつうっと滑って、才人の指先はビスチェの肩紐の内側に滑り込む。
生唾を飲み込むと、喉があまり行儀の良くない音を鳴らした。
「……お、お前……、ほんとにルイズか?」
「そうよ。わたしはわたし。……っていっても、わたし全部じゃないけど」
にこ、と微笑んだその笑顔に見覚えがあった。
「まさか……、またモンモンの惚れ薬飲んじまったのかよ?」
「飲んで無いわ。だって、薬なんて使わなくてもわたしは元々いたもの。わたしはね……、
ルイズの中の、サイトの事が大好きでしょうがない部分よ」
肌に触れた手はそのままするすると導かれて、胸当ての内側の、幼い膨らみに触れる。
細身なのにふんわり柔らかいその上、存在を主張する小さなしこりが掌をくすぐった。
ルイズが、自分を大好きだと言った……。
それもあって、才人の意識はこれまでの思いやら情欲が溢れていっぱいになる。
今、手のうちにある膨らみをもっと実感したくなって、才人は思わず手に力を込めた。
……しかし、ふと見下ろしたルイズの表情に、暴力的な熱は急速に収まった。
ルイズがどうしてこんなことをしているのかがわかってしまったのだ。
こんな行為に及ぼうとしていながらも、その瞳は熱欲ではなく不安に染まっていたから。
「……る、ルイズ。やっぱだめだ。こんなのやめよう」
「ど、どうして? わたしじゃだめ? むね、ちっちゃいから?」
「違うよ。……俺はルイズのこと大好きだけど、身体が目当てで言ってるんじゃないんだ」
440:ゼロトネリコ Lv? 寂寥と愛欲
08/02/08 01:33:55 1d4h9Mmp
「でも……、いつもちいねえさまとかティファニアとか、大きい胸ばかり見てるじゃない」
「つ、つい見ちゃうけど、それだけ。大体、俺が胸の大きさしか頭に無いようなヤツなら、
今頃見境なくあちこち言い寄ってるだろ?」
「……そうね、それはそうかもしれないけど」
「だから、こんな無理しなくていいんだ。いつものままのお前が……、お仕置きはまあ、
控えめにしては欲しいけど、それはともかく、ルイズはルイズのままで好きだ。だから、
身体で繋がらなくても、胸の大きさがそのままでも、俺はルイズが好きなままだから」
「……ホントに?」
「うん」
ルイズがほっとした顔をした瞬間、窓の外が眩く光った。
「あ……」
「な、なんだ? あの光は……、俺がさっきいた草原?」
「パラダイムシフトだわ」
「……はあ? パラダイム……なんだって?」
「行きましょ。次のわたしが待ってるわ」
「つ、次のわたしぃ??」
ごつん。
ぱちりと目を開けると、そのすぐ目の前にあったのは床だった。
窓からさわやかな朝の光が差している。
「いてて……、んー? ……なんか、妙な夢見てたような気がする」
「ぅん……? おはよ、サイト。……今日はずいぶん寝相が悪かったみたいね」
「うーん……そうみたいだな。おはよう、ルイ、ズ……」
言って才人は、あくびをして大きく伸びをするルイズを見た。
朝の光に照らし出されたその姿を視野に納めた瞬間、才人の目は点になった。
「……って、こ、こら! なんてもん着てんだよお前!」
「え?何? ……きゃああっ!」
指摘されたルイズは即座にシーツをひっかぶった。
おかしい。おかしいっつーの!
うっすらしか覚えてない夢のなかで、唯一鮮明に残っていた記憶……。
これは……、さっき夢の中でみた「あぶないビスチェ」じゃないかー!!
― ルイズのコスモスフィアLv?を完了しました。
コスチューム【せくしぃビスチェ】を手に入れました ―
441:Lv.見習
08/02/08 01:34:34 1d4h9Mmp
以上。
あ、見ての通りギャグだよ。クロスにもなってないよw
442:名無しさん@ピンキー
08/02/08 01:50:37 IduAII8v
>>441
GJ!
次のレベルは学園変身ヒロイン編でコスチュームは「メタモル委員長」なんだな?
443:名無しさん@ピンキー
08/02/08 02:47:06 ZrQRqWpg
>>441
GJ! 荒んだときはSSの投下に限りますな ありがとう
444:名無しさん@ピンキー
08/02/08 10:02:17 0nMKvvTg
ナイスタイミングでの投下だw
>>424
鬼○王ラ○スっぽく才人がアン様と結婚してガリア、アルビオン、ゲルマニアを
制圧、最後にラスボス「ロマリア」と戦って世界統一する展開が良いな。
445:名無しさん@ピンキー
08/02/08 12:34:25 86js4lzA
>444
そういえば、あのシリーズもヒロイン桃色頭だったな
446:名無しさん@ピンキー
08/02/08 13:02:34 +AfsbnwG
向こうは、ピンク髪のほうが、使い魔というか奴隷だけどな。
エルフの女王や日本の女サムライとの間に子供ができるイベントは、テファやシエスタで代用可能。
447:名無しさん@ピンキー
08/02/08 14:11:24 q2XYg1c/
>>444
それだと真のラスボスが変な鯨になっちゃうじゃないかw
鯨=ブリミルで実は世界はブリミルの見た夢でしたってオチか?w
そして最後はルイズと旅に出て終わりか…
448:名無しさん@ピンキー
08/02/08 15:43:36 0nMKvvTg
>>446
女侍は声的にはアン様のが合ってると思うけどね(笑)
>>447
ネタバレすんなwwwww
449:名無しさん@ピンキー
08/02/08 16:10:11 2E5YSYeU
いいえ
全てはノボル神の妄想です
450:名無しさん@ピンキー
08/02/08 17:51:53 7spkeKfa
ここは6割はノボル神の妄想で、残りの4割はその他の妄想でできています
451:名無しさん@ピンキー
08/02/08 20:09:20 nqbnSxDd
>>446
リセット・ウエストウッドは見てみたいな。
452:名無しさん@ピンキー
08/02/08 20:10:13 QLMuZQWX
脳内メーカー
URLリンク(seibun.nosv.org)
流石このスレだ。遊びがほとんどでも何ともないぜ
453:名無しさん@ピンキー
08/02/08 20:15:20 ktt7qOHS
>>452
URLリンク(seibun.nosv.org)
リアルで吹いた
454:名無しさん@ピンキー
08/02/08 20:42:18 vtcPnHE7
脳内メーカー(笑)
455:名無しさん@ピンキー
08/02/08 20:43:04 TlsdM4BF
最強剣士な主人公
ピンクふわふわ髪ヒロイン
喋る剣
作者に贔屓されてる青髪メガネ
主人公にべた惚れで手段を選ばないエロ女王
金髪巨乳な伏兵
456:名無しさん@ピンキー
08/02/08 21:21:42 0nMKvvTg
>>455
ツンデレ魔法使い忘れてるぞw
457:名無しさん@ピンキー
08/02/08 22:00:45 Zmgunjz9
そんなの関係ねえ!
458:名無しさん@ピンキー
08/02/08 23:54:15 pqM16U3p
>>454
言い得て妙だなwちょっと感動した
459:205
08/02/09 00:37:33 NppwrgYK
URLリンク(wikiwiki.jp) 不幸せな友人たち の続きを投下します。
サブタイトルは「キュルケ」。題名どおりこの人のお話です。
460:不幸せな友人たち
08/02/09 00:38:19 NppwrgYK
あの雨の日も遠く過去へと過ぎ去り、ティファニアがデルフリンガー男爵領に来てから、ちょうど
五年の月日が流れていた。
周囲の風景は時間と共に移り変わっていくが、ティファニアの生活にはほとんど変化がない。
三日に一度は才人のふりをして手紙を書き、訓練された梟に持たせて城に届けさせる。ルイズから
の返事がくれば、よく読んでまた返事を書く。それ以外は、本当に何もない生活だった。正確には、
それ以外は何もしようとしない生活だった。
あの雨の日以来、ティファニアは自分の気を紛らわせたり、罪の意識から目をそらす行為を一切し
なくなった。ベッドの中で悪夢にうなされようと、罪悪感で胸が引き裂かれんばかりに痛んでも、寝
入るために葡萄酒を飲んだりはせず、ただじっと痛みを受け止めて眠れぬ夜を過ごした。罪悪感は起
きている間も襲ってきたが、そういうときも手仕事をして気をそらしたりはせず、黙って椅子に座っ
たまま、胸を痛めて葛藤の渦に沈んだ。
一方、城の方でもさほど大きな変化はない。ルイズは相変わらず夫の留守を預かる妻として張り
切っている。その努力の甲斐あって、貧しい村は少しずつ活気づきつつある。さらに、貴族には珍し
いほど質素な生活を営み、無理な要求もしないため、領民からの評判も上々だということである。
変わったことといえば、シエスタが弟のジュリアンを呼びつけて、城に住まわせるようになったこ
とだ。買い付けなどの様々な雑用や、女には不向きな力仕事をさせるため、というのが表向きの理由
である。実際は、シエスタが自身の仕事を減らし、出来る限りルイズの監視に専念したいが為だった。
ジュリアンはたまに城周辺の見回りという名目で森に入り、ティファニアに日用品や食料などを届け
てくれる。そういうときに、彼女は一度問いかけたことがあった。
「あなたはきっと、これから一生今のような生活を続けていくんでしょう? 私よりもまだお若いの
に、よくそんなことを承諾できましたね」
彼は真面目な表情で答えた。
「僕は以前、サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ殿に命を救われたことがあります。あの人がいなけ
れば、僕は今生きていません。ですから、彼の願いを叶えるために生きるのは、当然のことです」
彼もまた、才人の存在によってその運命を大きく変えられた人間の一人なのだ。
(サイトは、一体どれだけの人の人生に影響を与えていたんだろう)
ティファニアの記憶に残っているのは、能天気で明るい笑顔を浮かべた黒髪の少年の姿だけだ。だ
が、彼が死んでもう五年も経つというのに、その存在は薄れるどころかますます濃く、日増しに大き
くなってくるように思える。
ルイズが封じられた記憶を取り戻したことは、あのとき以来一度もない。降りしきる雨を見たり、
あの日のことを連想させるような物品に触れても、特に変わった反応は見せないという。
「だからこそ、不思議なんですよね。どうしてあのとき、ミス・ヴァリエールは記憶を取り戻してし
まったんでしょう」
シエスタは首を傾げていたが、ティファニアにはその理由が分かる気がしていた
彼女が最初にルイズの記憶を消したとき、心の中には明らかな迷いがあった。その感情が、魔法の
効果を弱めてしまったのかもしれない。対して、あの雨の日はルイズの凄まじい怒りを目の当たりに
した直後で、心が恐怖に塗りつぶされていた。あの怒りに滾る瞳から逃れたくてたまらなかった。だ
から、自己防衛本能が全ての躊躇を消し去り、魔法を完璧な状態にしたのではないか。そんな風に思えた。
(どっちにしても、今はもうどうでもいいことね。私があのとき、自分の保身だけを考えてルイズさ
んの記憶を奪ったことに、変わりはないんだから)
ティファニアは今でもシエスタに呼びつけられて、夜半こっそりと城に忍び込むことがある。ニ、
三日中のルイズの記憶を消し、「長旅から帰ってきたサイトが少しだけ城に滞在し、また旅に出かけ
た」という作り物の思い出を植えつけるためである。この企ても、皮肉なほど上手くいっている。
ルイズに魔法をかけるたび、ティファニアの胸は罪悪感でさらに重くなっていった。その重みで、
彼女は底が見えない泥沼に、どんどん深く沈みこんでいくのだ。
だが、そこから抜け出すつもりはなかった。自分はもう、その資格を永遠に失ってしまったのだと
思っていた。
燃え立つような赤毛を翻してキュルケがやってきたのは、そんな頃のことだった。
461:不幸せな友人たち
08/02/09 00:39:00 NppwrgYK
「これはまた、ずいぶん窮屈なところに住んでるのね、あなた」
狭い小屋の中を見回して、キュルケが呆れたように呟いた。彼女の外套は、白く上質な布で織られ
ており、惜しげもなく宝石を使って飾り立てられている。こんな場所には不釣合いなほどきらびやか
である。そんな彼女に椅子を引いて勧めながら、ティファニアは答えた。
「わたしには、ここで十分ですから」
「そう? どう見たって、若い女が一人で住むような場所には見えないけど」
手に持っていた小さな鞄―これも宝石で遠慮なく飾り立てられていた―を、テーブルの上に放
り出しながら、キュルケは椅子に座る。無遠慮に小屋の中を見回して、やや不快そうに眉根を寄せた。
「私物らしきものが全く見当たらないんだけど」
「ええ、持っていませんから」
「要するにお茶すら期待できないわけね」
「ごめんなさい」
「ま、別にいいけど」
ティファニアはキュルケの向側に腰掛ける。テーブルを挟んで彼女と向き合う形だ。人が二人いる
だけだと言うのに、狭い小屋の中は既にかなり窮屈だった。そんな中で、赤毛の女はテーブルに頬杖
を突き、何か咎めるように目を細めて言った。
「あなた、変わったわね」
ティファニアは逃げるように顔を伏せて、キュルケから目を背けた。
「そうですか?」
「ええ。昔から内気で大人しい……悪く言えば暗い感じだと思ってたけど、今はもっとひどいわ。な
んかどんよりしてて、近づいただけでこっちまで気が滅入ってきそう」
遠慮というものが欠片も感じられない、うんざりとした物言いである。ティファニアは膝の上で拳
を握り締める。一方キュルケは、部屋の中に置いてある櫃に目を止めていた。ルイズから、サイトに
宛てられた手紙が入っている櫃である。
「この部屋を見た感じ、あなた、極端に自制した生活を送ってるのね。何の楽しみもなく、退屈を紛
らわせることすらせずに、ただただ日々を過ごしているだけ」
キュルケの声が少し鋭くなった。
「まるで、自分に罰を与えてるみたいに」
心臓が大きく跳ねた。握り締めた手の平に汗が滲んでくる。
「だって」
言いながら、わずかに顔を上げる。キュルケはテーブルに頬杖を突き、じっとこちらを見つめて
いた。落ち着かない気分になり、ティファニアは少し目をそらす。
「わたしがこうしている理由は、分かるでしょう?」
「まあ、大体はね」
キュルケの口元に微笑が浮かんだ。
「真面目だものね、あなたも。タバサと同じで」
居心地の悪さに身じろぎしながら、ティファニアは改めてキュルケを観察した。
白く上質な布で織られた外套の下も、やはり豪華なドレスらしかった。継ぎはぎだらけの薄汚れた
服を着ているティファニアとは、正反対の格好である。燃え立つような赤毛も以前より艶を増してい
た。少々けばけばしいほどの化粧が施された褐色の肌も非常になめらかで、健康そのものに見える。
テーブルの上には何か私物が入っているらしい小さな鞄が投げ出されているが、これも宝石が散りば
められた悪趣味な一品だった。
つまり、目の前にいる女は、富や享楽、世俗的な願望を、これでもかと言うほど凝縮したような姿
をしているのだ。服の丈だけは昔と違って非常に長くなっており、露出が極端なほど抑えられている
が、それ以外は昔のキュルケそのまま、実に陽気で享楽的な風体だった。
462:不幸せな友人たち
08/02/09 00:39:57 NppwrgYK
(話に聞いていた通りだわ)
五年前、東方から帰還したキュルケは、すぐに故郷ゲルマニアのツェルプストー家領に帰ると、か
なり強引な手段を使って当主である父を隠居に追い込み、権謀術中により家族親族を巧妙に蹴落とし
て、名実共に家の主となった。ほとんど間を置かずに師であるコルベールと結婚した彼女は、夫を説
き伏せて様々な兵器を秘密裏に開発、量産させた。ツェルプストー家の私兵は、周囲が気付かぬ内に
強化されていたのである。
当時、ゲルマニアはアルビオン戦役後間もなく勃発した内戦が激化の一途を辿っており、国内の政
情は非常に不安定な状態にあった。キュルケは強化した私兵軍を率いて、突如としてその内戦に参
戦した。様々な事前工作のおかげもあって、彼らは破竹の勢いで勝ち進んだ。他の勢力も大方はツェ
ルプストー家の軍門に下り、いつしかゲルマニア最大の勢力となった彼らは、最後まで頑強な抵抗を
続けた前皇帝アルブレヒトⅢ世の軍団すらも打ち破るに至る。
こうして、帰還してからたった三年足らずで、キュルケはゲルマニアという巨大国家の長にまで上
り詰めてしまったのである。今の彼女は神聖ゲルマニア帝国ツェルプストー王朝の祖なのだ―。
というような情報は、かなり正確な形でティファニアの耳にも入ってきていた。情報源はシエスタ
である。彼女はルイズに嘘がばれないように細心の注意を払っており、様々な手段を用いて各地の情
報を集めさせていた。
「何が原因でミス・ヴァリエールが真実を知るか、分かったものではありませんからね」
淡々とした口調で、そんな風に言っていた。
ともかくそういった理由で、今のキュルケがどんな生活を送っているのか、頭では理解しているつ
もりだった。
だが、実際にこの目で見てもなお、ティファニアはまだ信じられなかった。
常に自分の胸を締め付け、心を重くする罪悪感が、目の前のキュルケからは欠片も感じられない。
しかも、彼女はついさっき、久方ぶりにルイズと再会してきた帰りのはずだった。
(あのルイズさんを見ても、この人は何も感じなかったのかしら?)
疑問が胸の中で膨れ上がる。
「わたしはね」
と、ティファニアの内心を見透かしたように、不意にキュルケが呟いた。
「あのときの選択……ルイズからサイトの死に関する記憶を奪ったことは、間違った選択じゃなかっ
たと思ってるわ」
ティファニアは目を見開き、伏せていた顔を上げた。キュルケが大袈裟に目を瞬く。
「あら、信じられないって言いたげな顔ね」
「当たり前じゃないですか……!」
声が詰まった。何を言っていいのかよく分からない。キュルケはテーブルの上で手を組み、そこに
顎を乗せた。派手な外見には似つかわしくないほど静かな瞳が、真っ直ぐにティファニアを見据える。
「よくよく考えてご覧なさいな。あなたはあのときの選択が間違っていたと思ってるみたいだけど、
他にわたしたちが選べる選択肢は、なんだった?」
「他の選択肢、は……」
「ルイズの望みどおり、彼女にサイトの後を追わせてあげること。そうよね?」
ティファニアは再び俯いた。握り締めた拳が、膝の上で小刻みに震えている。
「あなた、あのとき、その選択肢は選ばなかったでしょう? いいえ、選べなかった。そりゃそうよ、
わたしたちみんな……最後まで反対してたタバサだって、ルイズに死んでほしくはなかったんですも
の。あなただって、そうでしょう?」
その質問には、ティファニアも迷いなく頷いた。「わたしもね」と、キュルケが吐息混じりに続ける。
「あの子には死んでほしくなかった。そりゃ、家同士は犬猿の仲だったけどね。あの子本人のことは
結構好きだったもの。見てるこっちがやきもきするぐらい不器用なあの子がね。そんな友達に、どん
な形であれ、生きていてほしかったのよ。それが、一番強い感情だった」
キュルケは小さく笑った。
「さっき、久しぶりにルイズに会ってきたけどね。凄く幸せそうだったわ。あなた最近、あの子と話した?」
ティファニアは首を横に振った。彼女がルイズを見るのは、記憶を消すために、深夜城に侵入する
ときだけだ。それでなくとも、自分にルイズと会って話をする資格があるとは思っていなかった。
463:不幸せな友人たち
08/02/09 00:40:39 NppwrgYK
「あの子、幸せそうだった。笑っちゃうぐらいベタ惚れよね。サイトのことばっかり話して……そう
そう、彼、今はわたしの頼みでゲルマニアの地方領主の反乱鎮圧に協力してることになってるんだっ
たわね。あの子があんまり自然にそう話すんだもの、ついついわたしまで信じそうになったわ。本当
に、サイトがまだ生きているんじゃないかって」
沈黙がやって来た。外から、鳥が鳴き交わす声が聞こえてくる。
「わたしは、悪くない結果だと思ってるわ」
キュルケの声の調子が変わった。ティファニアは顔を上げる。赤毛の女は、穏やかに目を閉じていた。
「ルイズは幸せに包まれながら生きて、このささやかな領地の領主として頑張ってる。前に来たとき
は比べ物にならないぐらい、領民の顔は明るかったわ。あの笑顔も、豊かさも、全てルイズが生きて
いたからこそもたらされたものよ。彼女の頑張りがなければ、死んでいた人だっていたかもしれない。
ルイズを生かした私たちの選択は、間違いなく多くの人々に幸せをもたらしたのよ」
諭すような声音を聞いたとき、ティファニアの脳裏に怒りに滾るルイズの瞳が浮かび上がった。
「やめて」とか細く呟いた声は、キュルケには届かなかった。
「仮にあのとき、ルイズを死なせていたとしたら、どう? 誰が喜んで、誰が幸せになった? わた
したちはサイトを失った上にルイズまで死なせて、心に深い傷を負っていたでしょう。そもそも、死
んだサイトだって、そんなことは望まなかったはずよ。二つの未来を天秤にかければ、どちらがより
よい結果なのかは、子供にだって分かるはず。だからね」
キュルケの声が、深い優しさを帯びた。
「あなたは、そんな風に苦しまなくたっていいのよ」
その声音は、じわりじわりとティファニアの胸に染みこみ、おぞましいほどの温かさをもたらした。
「やめて」と絞り出した声は、小刻みに震えていた。それに気付かぬように、キュルケの声はますま
す深く響き渡る。
「だって、いいことをしたんですもの。死にゆくルイズを救い、同時に多くの人を幸せにした。サイ
トの死に囚われて、引きずり込まれようとしていたルイズを助けられる、唯一の人間。それがあなた
だったの。そのことを誇ったっていいぐらいよ。だから」
「やめてください!」
とうとう耐え切れなくなり、ティファニアは悲鳴を上げた。小屋の外で、鳥の一群が枝から飛び立
った。言葉を失って呆然とするキュルケの前で、ティファニアは両手で耳を塞ぎ、大きく身をよじっ
た。胸を覆わんばかりの温かさが、吐き気となってこみ上げてくる。涙で視界が滲んだ。
「お願い、もうやめて! これ以上わたしを惑わせないで!」
「あなた……」
視界の隅で、キュルケが手を伸ばすのが見えた。その手から逃れるために、ティファニアは椅子を
蹴って立ち上がる。息を飲んで立ち上がるキュルケに向かって、声を絞り出す。
「わたしを慰めないで。あのときの選択が正しかったなんて、言い聞かせないで。今ここにある現実
が、いいものなんだと思わせないで。あなたの言葉は、気持ち悪いぐらいに温かくて、優しくて、自
分にとって都合がよくて……悪魔の囁きと同じなの。それを聞いていると、わたしはつい『これでよ
かったのかもしれない』と思いそうになる……自分がしたことの汚さを忘れて、自分を許してしまい
そうになる」
―あんたはわたしを世界で一番薄汚くて醜い、最低の女にしたのよ!
降りしきる雨の中に響き渡ったルイズの声が、今また頭の中に蘇る。
「それだけは嫌なの! それだけは、絶対にしてはいけないことなの! だからもう、これ以上わた
しに優しい声で語り掛けないで。わたしの心を折らないで。これ以上、醜い人間になりたくないんで
す……お願い、お願いします……」
涙を流して懇願しながら、床に膝を突く。視界の隅で、またキュルケの手が伸びてくるのが見えた
が、ティファニアの肩に触れるか触れないかのところで、すっと引っ込められた。
「ティファニア」
先程の優しい声音とは打って変わった、厳しい声が降ってくる。ティファニアが顔を上げると、涙
で滲んだ視界の中に、唇を引き結んだキュルケの顔が見えた。
「その生き方は、とても辛いものよ」
苦しげに細められた瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめている。
「それでも、いいのね?」
ティファニアは涙を拭い、キュルケを見つめ返しながら、しっかりと頷いた。彼女は沈痛な面持ち
で顔を伏せ、唇を噛んで一言だけ呟いた。
「不器用だわ、すごく」
ティファニアは、何も言い返さなかった。
464:不幸せな友人たち
08/02/09 00:41:33 NppwrgYK
しばらくの間沈黙と共に過ごしたあと、キュルケはぽつりと呟いた。
「帰るわ」
ティファニアも黙って立ち上がり、彼女の後に続いた。もう日暮れ時で、こんな深い森の中でさえ
も、周囲は赤く色づいている。キュルケは数歩ほどで不意に立ち止まり、ティファニアに背中を向け
たまま言った。
「さっき、あのときの選択は間違いじゃなかったって言ったけど」
数秒、躊躇うような間が続く。ため息をつく音がかすかに聞こえた。
「だからと言って、正しい選択をしたとも思ってないわ。あのとき、最良の選択肢と呼べるものは、
わたしたちの前には存在していなかった」
キュルケが振り返る。いつも陽気だった顔に、寂しげな表情が浮かんでいた。
「わたしもね、今のルイズを包む幸せは、とても歪なものだと思う。辛い現実を誤魔化して、忘れて
生きるなんて……正直、反吐が出る考え方よ。わたしだって、そんな生き方は選びたくない。それでも」
キュルケは背筋を伸ばして、力強い口調で言った。
「わたしはやっぱり、あのときの選択は間違ってなかったと思ってる。だって、大切な人が死んで、
寂しくて耐えられないから後を追う、なんて……それは、彼の願いや想いを踏みにじる行いだもの。
命を投げ出してまで愛する人を救ったサイトのためにも、ルイズは生きるべきだった。でも、彼女一
人ではその意志を取り戻すことは難しかったし、わたしたちも、サイトの代わりになるものを用意す
ることなんてとても出来なかった。だから、わたしはルイズが唯一生き延びられる手段を支持した」
そこまで言ってから、キュルケはまた、寂しげな微笑を浮かべてティファニアを見た。
「……ここまで言っても、あなたはやっぱり、罰を受けることを選ぶのね?」
ティファニアは迷いなく頷いた。キュルケは「そう」とだけ答えて少しの間俯き、また顔を上げた。
「だったらね、せめて、こう考えてちょうだい。あなたが強く感じているその罪は、あなた一人だけ
のものではないんだって。あのとき、あの場所にいたわたしたち、一人一人が背負うべきものなん
だって」
そのとき、ティファニアは不意に気がついた。キュルケが羽織っている外套の袖が少しだけ捲れ上
がって、彼女の手首が見えている。そこに、醜い傷跡が残っていた。思わず、「それ……」と指差す
と、キュルケは恥らうように、そっと外套の袖を戻した。
「戦いなんてやってると、このぐらいの傷は自然と出来るものよ。気にしなくていいわ」
―アルビオン戦役から間もなく勃発したゲルマニアの内戦は激化の一途を辿り、あと少しで他国
に飛び火する可能性があった―
以前聞いた情報がちらりと頭をかすめて、ティファニアは何も言えなくなってしまう。キュルケが
困ったように笑った。
「そんな顔されると思ったから、隠してたんだけどね。あなたにも、ルイズにも」
そう言ったあと、キュルケは表情を引き締めた。
「ティファニア。わたしは、何も後悔してないわ。自分の意志で、この道を選んだから。あなたもそ
うしなさい。自分の意志に従って、罪に苦しみ、罰を受けながら生きていきなさい。でもね」
キュルケの瞳に、切実な色が宿った。彼女はニ、三歩とティファニアに歩み寄った。
465:不幸せな友人たち
08/02/09 00:42:12 NppwrgYK
「いつか、自分を許せる日がくるかもしれないってことを、忘れないで。自分を許すという可能性を、
捨ててしまわないで。今は無理かもしれないけど、いつかは……いつかは、自分のことを許してあげて」
キュルケはティファニアの手を、自分の両手で握り締めた。また外套から手首が覗き、醜い傷跡が
露わになる。それを気にする素振りすら見せず、キュルケは必死に言い募った。
「忘れないでね、ティファニア。今日、わたしがあなたに投げかけた全ての言葉を。ここにわたしが
いたってこと……あなたの苦しみを見るのが辛いと思っている人間が、この世界のどこかに存在して
いるんだってことを」
ティファニアはどう答えるべきか迷った。だが、真っ直ぐに自分を見つめるキュルケの瞳から、目
をそらすことはできなかった。
「はい」
しっかりした声で答え、頷くと同時に、目から涙が溢れ出した。堪えようとしても、涙は止め処な
く頬を伝って流れ落ちていく。滲んだ視界の向こうで、キュルケが苦笑した。
「これ、あげるわ」
手に持っていた小さな鞄から折りたたまれたハンカチを取り出し、そっとティファニアの涙を拭う。
それから、そのハンカチを彼女の手に握らせた。
「でも、使っちゃだめよ。これは、戒めの証。いいこと、ティファニア」
キュルケは真剣な口調で言い聞かせた。
「これきり、泣くのはお止しなさい。罰を受ける覚悟を決めたのなら、泣くことで自分の心を慰めて
はいけないわ。涙を流すことなく、顔を上げて真摯に痛みを受け入れるの。それが、あなたの意志を
貫くということなんだから」
「はい」
ティファニアは、またしっかりとした声で答え、頷いた。今度は涙は出なかった。
キュルケは穏やかに笑い、大きく腕を広げてティファニアを抱きしめようとして、止めた。
「抱擁は、次に会うときまで取っておくわ。慰めや別れのためではなく、祝福のために……あなたが
自分を許せたことを喜ぶために、抱きしめてさせてちょうだい」
優しく囁き、キュルケは踵を返した。薄暗い森の中に、燃えるような赤毛が翻る。陽気な笑い声が
弾けた。
「なんだか柄にもなく湿っぽいことばっかり言っちゃったけど、今度こそ帰るわ。飛行機械のそばで
待ってる家来の頭がまた薄くなっちゃ、可哀想だものね!」
冗談めかしたその言葉に、ティファニアは久方ぶりの微笑を浮かべた。
女帝キュルケが夫作の小型飛行機械で勝手気ままに飛び回り、臣下の領地を訪れては無秩序な騒動
を巻き起こしている、というのは、何度か耳にしていたエピソードだった。ティファニアの耳に入る
情報の中で、一番キュルケらしいエピソードだった。
遠ざかるキュルケの背中に向かって、ティファニアは大きく声を張り上げた。
「コルベール先生にも、よろしく伝えてくださいね! たまには妻のわがままを聞かずに、髪の毛を
大事にしてくださいって!」
「分かったわ! また会いましょうね、ティファニア!」
キュルケが笑って手を振る。ティファニアもまた、声を上げて笑って、手を振り返した。
友達の想いに応えるために、今この瞬間だけは、自分に笑うことを許してやってもいいと思えた。
466:不幸せな友人たち
08/02/09 00:43:01 NppwrgYK
その後、ティファニアがキュルケの抱擁を受けることはなかった。
デルフリンガー男爵領を訪れてわずか数ヶ月後、彼女は行方不明になったのである。
夫コルベールが自ら設計した、新型の巨大飛行船の試運転に乗り合わせていた際、この船が原因不
明の爆発を起こして墜落、炎上したのである。燃え落ちた船の残骸から彼女と夫の亡骸が発見される
ことはなかったが、以降彼女の姿を見たものが一人もいないことから、誰もが彼女は死んだものと判
断した。
こうして、神聖ゲルマニア帝国ツェルプストー王朝は、わずか数年、一代限りでその歴史に幕を閉
じることになった。
多くの人々は、このことによりまたゲルマニアが支配権争いによる内乱に突入することを危惧した
が、そうはならなかった。
何故こうなったのかと誰もが不思議がるほど、国内の各勢力の力関係が均等に保たれ、誰もが迂闊
に動けぬ状態のまま不思議な平和が形作られることとなったのである。
その後も、覇権を握るほど飛びぬけて強い勢力が現れることはなく、神聖ゲルマニア帝国は皇帝不
在のまま自然消滅し、時代の流れそのままに、平民主体の政治を得るための革命期を迎えることにな
る。この時代、平民と貴族は武力を持って真正面からぶつかり合ったが、それはあくまでも国内のみ
の問題に留まり、それ以降長い間、他国がゲルマニアによって侵略されることはなかった。
女帝キュルケが行方不明になった事件の真相は、今も謎に包まれている。単純に飛行船の設計ミス
という説もあれば、暗殺という単語が嘘まことしやかに囁かれることもある。だが、民衆の間で最も
好まれ、信じられているのは、政治の面倒くささに嫌気が差した女帝キュルケ自らこの事故を演出し、
死んだ振りをして夫ともども他の大陸に逃亡した、という説である。そういった説が信じられるほど、
女帝キュルケは自由奔放な人間像を持って、人々に愛されていたのだ。
女帝死後のゲルマニアに不思議な平和が保たれたことすら、女帝の綿密な工作のおかげだった、と
か、彼女は無秩序に遊びまわる振りをしていたが、その実様々な手段を使って、帝国の平和を保つ努
力をしていたのだ、という説すらあったほどである。
なお、巨大だがまとまりに欠けていたゲルマニアにある程度の安定をもたらし、後の時代への布石
を築いたという点で、彼女はそのいい加減な人間像とは裏腹に、政治家としても一定以上の評価を受
けている。
こうして、ティファニアの元にはキュルケのハンカチだけが残された。だが、彼女の死を聞いたと
きですら、それを手に取ることはなかった。
彼女がそれを使うことになったのは、キュルケとの出会いからさらに5年を経て、青い髪の少女が
小屋を訪れたときのことである。
467:205
08/02/09 00:51:26 NppwrgYK
以上。読んでくださってありがとうございました! 次回はタバサです。
今回、結構筆が止まったというかどう書いていいか分からん状態だったんですが、
>>211氏の丁寧な感想を読んで、また思考が再開したような感じがします。氏のキュ
ルケへの意見に対する答えになったかどうかは分かりませんが、一応、自分なりに
必死に考えて書きました。またご意見くださるとありがたいです。
この作品、ぶっちゃけ原作に対しては冒涜に等しい代物だと思うんですが、それでも
こんな風に真剣に読んでくださって、丁寧な感想をくださる方がいるのは、SS書き
にとって非常に幸運なことだと思っています
そういう人たちがいるこのスレが大好きです。
また何か書いたら読んでくださるとありがたいです。それでは。
468:名無しさん@ピンキー
08/02/09 00:58:25 r1Q3U5yp
>>467
乙!!
相変わらずのシリアス展開に引き込まれるw
やっぱりキュルケは自由奔放が似合う
469:名無しさん@ピンキー
08/02/09 05:33:00 g5hJAKBA
>この作品、ぶっちゃけ原作に対しては冒涜に等しい代物だと思うんですが、
そんな事無いと思うよ。ルイズとサイトが戦いに身を置いてる以上、ルイズをかばって
サイトが死ぬなんて本来いつ起こってもおかしくない話しだと思う。
キャラが良く動いていて魂もこもってるので、単なるアナザーストーリー以上の想い入れで
読んでしまってる。悲しい話だから読後は原作のデレ話で気力回復は必須だけどw
470:名無しさん@ピンキー
08/02/09 05:46:11 R3mshpxH
>>467
GJ! 現実的な観点からするならキュルケの考えもアリだなと思いました
テファが自分を許す事が出来ないのも虚無という力を運用できたからですね
あれ、原作でも虚無がなければ不幸になった人の数が減ったような
471:名無しさん@ピンキー
08/02/09 10:17:54 L2PDFkq7
>>467
GJです。原作のサイトって運が良かったんだと改めて思い知らされました。
472:名無しさん@ピンキー
08/02/09 11:04:57 MpPkzyML
要するに、主人公補正のない世界か・・・
473:名無しさん@ピンキー
08/02/09 15:52:31 0CMJ9mo/
主人公補正の無い=モテない
ショボーン(´・ω・`)
474:名無しさん@ピンキー
08/02/09 17:02:58 g5hJAKBA
>>467
211です。キュルケの懐の大きさや力強い優しさが胸を打った・・・。
自分の選択や結果を受け入れて生きるって大変だよなぁ。テファの決意が凄い。
継ぎ接ぎだらけの服を想像しただけで涙モノだ(俺はこういうのに非常に弱いw)
でもキュルケがルイズの幸せを語るのはどうかなとも思った。
自分は、生きる上で大切なのは「何を選択するか」よりも「選択する」という行為そのもの
だと思ってる。選択する事でそこに責任が生まれるし、責任を自覚する事で初めて起こる結果を
己の物とする事ができ(結果の良し悪しに関わらずに)、そしてその繰り返し、積み重ねが自己を
形作っていく。選択を奪われた人間や、しない人間は自己を失っていってしまう(よくある例が新興宗教
や、何事も人のせいにして生きていく人間)。
これが今の(不幸せな友人達の中の)ルイズなのかな・・・と。サイトの死という己が
生んだ結果を奪われ、責任を奪われ。そして不都合がある度に選択の機会を奪われ、あまつさえ
偽りの結果を与えられる。
そんな行為を容認したキュルケが「ルイズの幸せ」を語る資格はあるのかな・・・と。
以前書かれた「幸せな男爵様」の中で、老ルイズがテファに感謝を述べてるけど、そのシーンを
読んだ時にゾっとしました。テファはどういう目でそんなルイズを見てたんだろうって。
あ、上に書いたのは作品批判ではなく、作中のキュルケ考です。キャラに魂が籠もってるので
色々と身に置き換えて考えたくなります。あまり気にせず思うように書いてやってください。
長文ごめん。またいつか続きを楽しみにしてます。
475:名無しさん@ピンキー
08/02/09 17:42:51 RODOFsnc
>>471
実際の話、ルーンの能力で切り抜けられるのって一対一に近い状態でさらに相手も平民と
見下してる状態で能力的にもよくて精々一流の魔法使いか傭兵にしか無いと思う。
身体能力が上がっても所詮殺し合いなんかしたことがない平和な国で暮らしてた訳だし
技術が伴わなければ獣と同じなわけで、一流の騎士が相手になったりすると
普通にやられる気がする…
ルーンに洗脳効果があったとしても殺し合いをしたことがない人間が戦場に立てる訳がないし…
まぁ、そのへんが超ご都合主義だったり主人公補正だったり宇宙意思なんだろうな~
476:名無しさん@ピンキー
08/02/09 18:08:06 qOP7aTkr
そこを恋愛補正が底上げするからなあ。
足りない分は勇気・・・もとい愛で補え!
477:名無しさん@ピンキー
08/02/09 19:04:24 T30cpRQl
ん? ルーンでベテラン並の技術とかも会得できるんじゃないのか?
ゼロ戦に乗った時の描写になかったっけ。
478:名無しさん@ピンキー
08/02/09 19:06:36 SpKK5ll3
すくなくとも、木の葉落としが出来るレベルになってたキガス
479:名無しさん@ピンキー
08/02/09 19:10:27 Ftp565Uc
身体能力が上がるだけじゃなくて、
「その武器を自在に扱う技術」も身に付く。
480:名無しさん@ピンキー
08/02/09 20:07:02 qV9R26dq
たとえスキルが身についたとしても精神的な問題(死に対する恐怖とか)もあるから常に強さを発揮できるとは限らないキガス
481:名無しさん@ピンキー
08/02/09 20:16:58 Yo4IreXN
それ言うと肩書き上はプロの軍人にもかなり当てはまる。
毎日訓練してる人間でも、生きるか死ぬかの戦いを潜った経験のある人材は希少。
自らの知識になく、想定に入れていない相手ならさらに。
482:名無しさん@ピンキー
08/02/09 20:34:11 sw3yumXW
つっこむのもヤボだと思って黙っていたが、そのへんの話は本編の早い時期に描写があるだろう?
ルーンに頼ってワルドにフルボッコにされるサイトとか、アルビオン戦役でなにもできないマリコルヌとか
そっちのゼロ魔のほうがオレはむしろ好きなんだがな
483:名無しさん@ピンキー
08/02/09 22:55:28 WBAXfLOJ
女の子とやればやるほど力が上がってくサイトとか裏設定どっかにないノボル
484:名無しさん@ピンキー
08/02/09 23:07:41 jrpzXnop
ルイズの力の源がストレスと判明した今、ガンダールヴにとってもっとも効率的な『心を震わせる』方法が何かを議論する必要がある。
何しろサイトだからな……エロイ事をするのが一番『心を震わせる』事なのは明白か。
485:名無しさん@ピンキー
08/02/09 23:09:36 +7OtkxKF
>>484
「ルイズを守る」
「ルイズラブv」
エロするだけが心を震わせることじゃないだろjk
486:名無しさん@ピンキー
08/02/09 23:24:35 AwbvewUQ
>483
知らないのか?
初稿にあったそういう部分を編集がすべて削除したのが現在発売されている「ゼロの使い魔」なんだぜ?
487:名無しさん@ピンキー
08/02/09 23:30:00 9OvaoNqG
>>484
>>もっとも効率的な『心を震わせる』方法が何か
ルイズの目の前で胸の大きな娘とエロイ事をするに一票(w
>>486
そうだったのか!?
なんか往年のRPGカオスエンジェルを連想したよ
488:名無しさん@ピンキー
08/02/10 07:36:01 Z6wlOe55
>>484
性格にはストレスというよりも激しい感情なんじゃない?虚無にも属性があると俺は見てる。
だからルイズの属性は虚無の火だと思う。ヴァリエール家は火に関連があるのは公爵も言ってるし
で効率的な方法はそんなのもう決まってるじゃん。他の女になびくとルイズは猫みたいになる
ってのは才人もわかったんだから・・・
ヒロイン全員娶ってハーレムにする→ルイズの嫉妬・対抗心を燃やす、しかない。断言できるw
ルイズに魔法使わす時はとりあえず近くにいる奴の胸を触るとかキスを見せ付けるとか。
タバサ、アン様、シエスタ、テファで実践可能だろ?
489:名無しさん@ピンキー
08/02/10 07:37:13 Z6wlOe55
性格には→正確には、か。
タイプミス、スマン。
490:名無しさん@ピンキー
08/02/10 13:21:23 UgHVtspI
どこぞのエロゲみたいな感じで、エロい事をして精神力をチャージする魔法を
ルイズが祈祷書から習得して、魔法使うためだから仕方ないよねとサイトとエロ行為に耽る
SSを誰か書いてくれ。
491:名無しさん@ピンキー
08/02/10 13:24:27 Ce26MpwD
すでに原作がそんな感じになってる気もする
492:名無し@ピンキー
08/02/10 13:32:49 /qiceQPx
ところで>>455は鬼畜王な槍さんでいいのだろうか
あの作品は無理矢理されて好きになるはずないだろとツッコミ入れつつシステムが面白いからやってたりする
493:名無しさん@ピンキー
08/02/10 14:22:17 yItrN7Jn
>492
>423
494:名無しさん@ピンキー
08/02/10 14:47:22 dLmiAdyz
いいえ ゼロの使い魔です
495:名無しさん@ピンキー
08/02/10 15:06:14 r60KsTlz
そしてピザが大好きです。
496:名無しさん@ピンキー
08/02/10 15:49:04 l/k3wj1J
ラノベ板のゼロスレでもここでもよく鬼畜王の話題が出てくるなぁ
10年以上前のゲームなのにな やはりまだ新作が発売されてるからかな
497:名無しさん@ピンキー
08/02/10 16:29:39 Z6wlOe55
才人
「がーっははは!良い女はみんな俺のもの!」
テライカス。
498:名無しさん@ピンキー
08/02/10 16:39:25 yWwOnjj6
ダーク・シュナイダーを思い出したのはオレだけでいい
槍?やってねー
499:名無しさん@ピンキー
08/02/10 18:22:28 2L1TOkDQ
こうですかよく分かりません><
URLリンク(rainbow.sakuratan.com)
500:名無しさん@ピンキー
08/02/10 20:32:20 yg1C+KCp
まぁ、サイトは女にはヘタレじゃないとなぁ。
しっとマスク3号当たりにルイズが来そうな悪寒
501:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 20:58:59 Q4IbcqWc
>>182>>350
の続き投下。皆様お待ちかねエロパート。
ぶっちゃけ魔力=心の震えなんだから、才人が死ぬほどルイズを喜ばせたらそらもうえらいことに。
だからラストはラスボスをラヴラヴ石破天驚拳でだな(ry
502:タバサは俺の○○ ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 20:59:45 Q4IbcqWc
『呪印』の抑制の解けた私の心と身体は、サイトの愛撫に過剰なほど反応していた。
それが証拠に、サイトに押し倒された時点で、私の心臓は痛いほど脈打っている。
私の唇を乱暴に塞ぐサイトの耳に、この恥ずかしい音が届いてるんじゃないだろうか。
そして、そう考えると同時に、背筋を這い回る恥辱によるたまらない悪寒…快感。
恥ずかしい…でも、キモチイイ。
羞恥の感情が快楽に繋がるなんて、絶対おかしい。
私の中の『常識』が、たまらない快感に嬌声と蜜を溢れさせる私の身体を否定する。
でも…否定するたび…否定されるたび…。
股間から、どうしようもないほどいやらしい粘液が溢れてくるのがわかる。背筋を、快感が駆け回るのが分かる。
サイトの声が、愛撫と一緒に耳元で囁く。
「シャルロット…今どんな格好してるかわかる?」
え…?
私は、今まで甘く流れ込んでくる快楽を受け止めるのに精一杯で、自分がどんな格好をしているのかなんて気にも留めていなかった。
その質問と一緒に、サイトの責めが停まる。
いつの間にか。
サイトは私の両足首を掴んで、私の身体を二つ折りにしていた。
頭の上まで足が来て…私の…あそこが…。
丸見え…!
「見える?シャルロット、こんなにべちょべちょ」
お尻の向こうで、サイトが…。
濡れた私に…!
ちゅるるるっ!
「あひぃ!」
舌で塗れた部分を舐められた私の喉が勝手に鳴る。
物凄く恥ずかしい格好をさせられて。
それでも、私の身体は歓喜に吼える。
心で否定しても、駄目。
「やだっ、こんなっ、恥ずかしっ…やだぁ!」
声にも出してみるけど…駄目。
私の身体は意思を完全に無視して、びくびくと震える。
腰の奥の器官が、サイトを、牡を欲して高鳴る心臓よりも強く脈打つ。
私の牝の顎から、牡を欲する唾液が、どんどん分泌される。
私が高まっていく。高められていく。
喉がいやらしく謳って、限界が近づいてくる。
やだ…きちゃう…きちゃう!
「やっ!らめぇ!もっ、いっ、くぅっ…!」
ヤだ!サイトがなかにいないのにぃ!なかに、ほしいのにぃ…!やだやだやだや……、
だ─────………………………………………………。
503:タバサは俺の○○ ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 21:05:24 Q4IbcqWc
タバサが絶頂の余韻から目を醒ますと、才人の上でうつ伏せになっている自分に気がついた。
「…サイトの意地悪」
乱れた半裸の状態のまま、タバサは軽く朱に染まった頬で才人を半眼で見上げ、文句を言う。
それは、恥ずかしい格好で逝かされたことに対する抗議。
しかし、身体を完全に才人に預け、胸板に頬を寄せて掌で才人の身体を撫でながら言っても説得力はない。
「…ンなこと言って、シャルロット思いっきり感じてたじゃんか」
「…しらない」
才人の言葉に、拗ねたようにぷい、とそっぽを向いてしまうタバサ。
それでも、タバサは才人の上からどこうとしない。彼の体温に肌触りに、もっと融けていたかったから。
もっと密着したくて、タバサは足を動かす。
すると。
太股の内側に、熱くて硬くてぬるぬるしたものが当たった。
それは、先ほどからタバサの欲しているもの。
タバサの腰の奥の牝の器官が、その刺激に完全に覚醒し、牡を喰らえとタバサを動かす。
潤んだ目で、タバサは才人を見上げた。
視線が絡み合う。
才人はタバサの視線の意味を汲み取り、タバサの両脇を抱え、抱き上げる。
タバサはそのまま才人をまたぎ、馬乗りになる。タバサの桜色に染まった白い臀部が、脈打ち、屹立する才人に押し当てられる。
タバサの視線が訴える。才人は軽く頷いた。
愛する人の許可を得たタバサは、膝立ちになると、腰を浮かせる。
真っ直ぐ天を衝く肉棒をまたぐと、それに指を添えて、自分の入り口に押し当てる。
牝の期待に溢れた蜜が、牡の唾液と混じりあう。
入り口に押し当てられる温度と硬さに、タバサの喉から溜息が押し出される。
もう一度、タバサは才人を見つめる。
「いいよ。シャルロットの好きにしな」
今度は、言葉で応えてくれた。
歓喜に震える心が、身体を動かす。
腰が自然に下がり、ずぶずぶと才人を飲み込んでいく。
身体を削られる快感が、タバサの喉から牝の啼き声を溢れさせた。
「あ…はぁっ…!」
それでも無意識に、タバサは声を絞る。
それは、恥ずかしいからではない。
サイトが、そうしたほうが好きだから。サイトが、そうしたほうが興奮するから。
愛する男の悦ぶことを、この青い髪の小さな少女は、完全に知り尽くしていた。
そして、その小さな体はあまりにもスムーズに、才人を奥まで咥え込んでしまった。
ごり…。
小さな少女の膣道は、男の剛直で奥を押し上げられる。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
奥を犯される快感に、荒い息をつきながら、タバサは才人の胸板に両手をつく。
そしてそのまま、奥に当たる才人の感覚を愉しむ。
504:タバサは俺の○○ ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 21:05:58 Q4IbcqWc
「シャルロット…動かないの?」
才人の言葉に、タバサは、行為の最中とは思えないほど、優しく笑って応えた。
「サイトにおくまでされてるの…キモチイイの…」
それは答えになっていなかったが、才人はそれに満足した。
そのまま動かず、動かないタバサを優しく見守る。
二人の中で、快感が静かに高まっていく。
「あっあっ…びくびくって…してるぅっ…」
「シャルロット…気持ちいいよ…」
「隙ありなーのねー!」
そんな二人の睦言を、アホ竜の声が引き裂いた。
アホ竜は青い髪をなびかせ、全裸で背後からタバサに抱きついた。
空気の読めない自分の使い魔に、振り返りながらタバサは、行為の最中とは思えないほど、冷たい視線を送る。
「引っ込め」
その声は二つ名の『雪風』のごとく、完全に冷え切っていた。
しかしアホ竜は怯まない。
「コレ見てもそんなこと言えるのかー?なのねー!」
その手には、一本の青い張形が握られていた。
それは、どこかで見た形。
「そ、それ…!」
タバサの顔が驚愕と羞恥に染まる。
シルフィードは才人に貫かれたタバサを抱き締め、その顔の横で『才人に向かって』説明を始める。
「これはねー、おねえさまがオナニー用に買ってきた張形なのねー。でねえ」
「し、シルフィ…!やめなさ…」
止めようとしたタバサの口を、左手で器用に封じてしまう。
その力は意外に強く、タバサが両手で引き剥がそうとしても、適わなかった。
そして、タバサとシルフィードの下敷きになっている才人は、その話に興味をそそられた。
腰を浮かそうとしたタバサの臀部を掴み、もう一度奥まで犯す。
「ふぅぐぅーっ!?」
「で?続き聞かせてよ」
恥辱に抵抗するタバサを腰を捻りながら快感と力で抑え込み、才人はシルフィードを促す。
シルフィードは、右手で張形を見せ付けるように、ぷらぷらと指先だけでつまんで揺らしてみせる。
そして続けた。
505:タバサは俺の○○ ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 21:06:51 Q4IbcqWc
「これね、サイトのおちんちんと同じ形なのね。
おねえさまったら、ケースに並んでるコレ見ただけでサイトのだって気付いたのね」
「ふ、ぐぅーっ?」
どうして、どうしてアナタがその事しってるのっ…!?
心の中でそう尋ねるタバサの声を、使い魔であるシルフィードは受け取った。
「ふふん。シルフィを甘く見ちゃダメなのね。
おねえさまがそわそわしながら一人で街に出かけるときはたいがいえちぃ道具を買いにいくときだから、こっそりつけてったのね。
でねえ、サイト。おねさまがコレ使ってどういうことしてるか知りたくなぁい?」
悪戯っぽく笑うシルフィード。
その心の中に、絶叫が響く。
やめて!お願いやめて!そんなこと、サイトに教えないでぇ!
涙交じりのその声に。
「もー遅いのね。
サイトも知りたいでしょぉ?」
シルフィードは拒否を示した。
そして、才人の答えがタバサの絶望を後押しする。
「うん、知りたい知りたい」
より一層強くなるタバサの力。
しかし捻りをいれて奥を犯され、力が抜ける。
もう…だめぇ…!
タバサの心が絶望と…とんでもない羞恥の快楽に塗りつぶされる。
「それはねぇ…こうしてるのね…!」
ずぶぅ!
シルフィードが張形を持ち替えてタバサに密着すると。
タバサの目が大きく開かれ、そして開放された口から嬌声が漏れた。
506:タバサは俺の○○ ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 21:07:24 Q4IbcqWc
「あっひ────────!」
才人を容赦なく締め付け、絶頂するタバサ。
そして、才人の剛直に、タバサの締め付け以外の刺激が襲ってくる。
それは、薄いタバサの肉を挟んで、感じる硬い異物。
「おねえさまったら、コレでお尻でオナニーしてるのね。
お尻で張形でオナニーで感じるなんてとんでもないへんたいさんなのね。きゅいきゅい」
言いながらシルフィードはタバサの肛門に突き刺した張形をゆっくり引き抜く。
ぶじゅじゅじゅじゅじゅ…。
肉を巻き込む音をさせ、才人の一物に張形の振動とタバサの脈動が伝わる。
感じなれた異物の排泄感と脈打つ牡の快感に、タバサの意識が強制的に覚醒する。
絶頂の嵐が、タバサを襲っていた。
「やぁ!らめぇ!こわれっ、こわれ、ちゃうっ!」
タバサの中で、乱暴な快楽が弾け、才人を締め付ける。
同時に括約筋もぎゅうぎゅうと締まり、才人そっくりの張形を締め上げる。
「ぎちぎちなのねー?おねえさまひょっとしてイきまくってるー?」
「あ、ひ、や、めぇ…はっ、あっ、もっ、らめえ…!」
「突く、たんびに、逝ってる、みたいだなっ?シャルロットっ?」
前後からの言葉責めにさらに絶頂しながら、タバサの肉体は意識を引き戻し、手放す。
そして、その責めは、才人の開放によって終焉を迎える。
「よ、よし、逝くよ、シャルロット、逝くよ────っ!」
「いいのねサイト!おねえさまの中でいっぱい出しちゃえー!きゅいきゅい!」
どくどくどくどくっ!
「き、ひ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
最奥で牡の迸りを受け止め、最後の絶頂を迎えたタバサは、ことり、と才人の上で事切れたのだった。
507:タバサは俺の○○ ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 21:08:10 Q4IbcqWc
そして才人とアホ竜のコンビは、気絶したタバサを寝巻きに着替えさせ、体を拭いて、ベッドの上に寝かせて、タバサの部屋から立ち去った。
「さーてサイト、最後の『呪印』捜しにいくのねー!」
「…なあシルフィード、シャルロットにあんな酷い事してお前」
「明日は明日の風が吹く!なーのねー!」
冷や汗ダラダラのシルフィードの中に、静かに燃えるタバサの怒りが伝わってきた。
…シルフィ。帰ってきたらお仕置きだから…。
シルフィードは心に響くその声に、後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない、と何度も自分に言い聞かせる。
そんなシルフィードの中に、もう一度、今度は少し優しい声が響いた。
…でも、ちょっとはキモチよかったから…。
やっぱり、このご主人へんたいさんなのね、と思わず考えるシルフィードだった。
…半殺しでカンベンしてあげる。
「鬼!悪魔!変態ーっ!きゅいきゅい!」
「わ、いきなりなんなんだよシルフィード?アホの子みたいだぞ!」
廊下の真ん中でいきなり叫んだアホ竜に、思わず突っ込む才人だった。
508:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
08/02/10 21:09:39 Q4IbcqWc
はい以上。
こんだけ伸ばしといてこの内容ってどんだけぇー。
期待してた皆様にはがっかりをプレゼントだ!(ぁ
んじゃアホ担当はスマブラでアホしにいってきますノシ
509:名無しさん@ピンキー
08/02/10 21:45:43 4ZZ0D7PK
ブラボー…おお、ブラボー!
510:名無しさん@ピンキー
08/02/10 22:33:01 bRW60sxF
おねえさまに、オシリで張子でおなにーさせちゃうなんて
へんたいさんはやっぱりすごいへんたいさんなのね。きゅいきゅい
そして相変わらずアホ竜の扱いには愛を感じますね。
511:名無しさん@ピンキー
08/02/11 05:42:46 7fHl2qu3
>>508家まで読むの我慢しといてよかったwwwwwww
ニヤけがとまらんwwwwwwwwwww
GJ!!
512:名無しさん@ピンキー
08/02/11 08:33:10 hq9qagSQ
>>508
ナニこの愛情表現wwwww
GJっ
513:370
08/02/11 17:18:35 XsOUDO3m
予備の作品保管庫を設営した。
URLリンク(wiki.livedoor.jp)
順次、過去の投稿作品を整理していこうと思う。
もし現行の保管庫が使用不能になった場合に、代替として使ってくれ。
何かおかしい点、問題点があれば、このスレで指摘してもらえたら、対応する。
よろしく。
514:名無しさん@ピンキー
08/02/11 17:41:08 xFHk679f
これは乙と言わざるをえない
515:名無しさん@ピンキー
08/02/11 18:29:08 NHWH9TmO
>>513
乙は乙だが・・・データほとんどからじゃん。
雛形作っただけか?
516:名無しさん@ピンキー
08/02/11 18:33:37 dt5HoGj1
>順次、過去の投稿作品を整理していこうと思う。
って書いてあるじゃん。
現行保管庫の管理人とは別人だろうから、今の場所のデータをそのまま
移せば済む、というわけでもないでしょ。
517:名無しさん@ピンキー
08/02/11 18:44:53 5S4w2DIc
一応確認しておきたいんだけど、
「消滅したら新保管庫移行」であって、
今のままで問題ないようだったら現状維持ってことでいいんだよな?
518:名無しさん@ピンキー
08/02/11 19:15:04 bB80pVwJ
>>517
しかし現保管庫は規約違反である
それが心残り
519:名無しさん@ピンキー
08/02/11 19:51:32 PM9fc+D4
現保管庫管理人氏には非常に感謝しているし使いやすいんだが、
規約違反のままほっとくのはちょっとまずいよな。
タダでさえエロパロなんだし、せめてそっちの筋は通しておきたいとこだな。
でも新保管庫にページビュー(だっけ?)がないのは寂しいな。
編集にログイン必要なのもちょっと面倒だがこれはしょうがないか。
520:名無しさん@ピンキー
08/02/11 20:02:44 bfoOt3oA
>>508
きゅいきゅいワラタw
続き楽しみにしとります
521:名無しさん@ピンキー
08/02/11 22:01:33 QIJ9p5dO
>>513
乙
いい環境づくりに努めてくだし
522:名無しさん@ピンキー
08/02/11 22:27:24 Di9gkSvs
俺間抜けなことに厨が湧いて騒ぎになるまで、現保管庫が規約違反だってこと知らなかったわ。
523:名無しさん@ピンキー
08/02/11 22:53:00 dt5HoGj1
>522
規約違反っていうことは、管理人の意向とは関係なく、ある日突然業者にアカウントを
停止されて保管庫がいきなり消える、ということもありうるわけだよな……。
524:名無しさん@ピンキー
08/02/11 23:56:36 bB80pVwJ
>>522
俺も知らなかったよ
管理人が18禁可のところ探して作ったんだと思ってたからなぁ…
525:名無しさん@ピンキー
08/02/11 23:58:31 QjoT0oTD
URLリンク(wiki.livedoor.com)
livedoor Wiki 利用規約の第5条 (禁止行為)に触れるような
過激な性描写、残酷な表現、差別表現などがなされているSSは
規約違反の言いがかりを与えるきっかけになりかねないので
保管を避けたほうがよさそうですね^^
526:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:09:41 skMBI0y3
新保管庫もダメなのかよ
どっかにエロOKなwikiってないもんか?
527:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:17:32 rWEuzj8f
そこ気にしてたらほとんどの保管庫が引っかかると思うがね。気にせず使い続けても妙な粘着に気に入られたみたいだし、気まぐれで通報されればしゅうりょー
撤収も止む無しでは?
それか、いっそあちこちに保管庫作りまくり、リスク分散?
528:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:27:06 rWEuzj8f
あ、無くも無いんだ。こことか
4:当サイトには、成人向けの内容を含んだサービスが存在する可能性があります。このようなサービスの利用は18歳以上の方に限らせていただきます。
URLリンク(www.sukiwikiweb.com)
529:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:28:55 IuNJ1HgI
どうしてもというならFC2のアダルトの方でも借りてSS投稿用掲示板設置するとかね
管理人の負担がすごそうだが・・・
つかエロSS程度で消された保管庫なんて見た事無い
何年も放置されてるところがいくつでも有る
2chにいるような人達がそこまで良い子ちゃんだとは思わなかった
530:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:29:13 u8ysRH43
むしろガイドライン的に候補を募って此処ダメなら次の候補ね みたいに
身内が重大犯罪犯して家族が国内を転々とするフィクション小説みたいな状態にしちゃえばいいんじゃね?
利用していた痕を残さず回収して、常に月一か3ヶ月に一回ペースで全datをZIP化して
ルイズスレのどこかにアップするとか。(スレ住人に迷惑がない程度に)
全体的に今何MBなんだろうか?
>526 が言うOKなサイトって、国内じゃ無理かなとか思ってる自分がいる。
過激な性描写って、どこまでを過激かなんて向こうの裁量次第だからキスもダメになるとか思うと、
今までのままでもいいとか、脳内乞食が申しております。
531:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:32:20 u8ysRH43
>529
>いいこちゃん
それは違う(自分的に)。
けされて、移転して、移転先を検索できなくて、みつからない。⇒むかつく!!!
になるから嫌がってるだけだと思うのだけど?
どこのサイトも行きつけなら報告ナシに移転されると探すの面倒ジャマイカ。つまりそういうことだと思う。
え? 俺だけ?
532:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:37:44 IuNJ1HgI
>>531
ごめんちょっと意味が分からない
移転したところでこのスレにリンクは貼られるでしょ?
俺が気になるのは規制とかでこのスレに書き込めない作者の直接投稿だけだ
究極言えばログがあれば個人でまとめられるんだから保管庫の意義って↑だと思うんだけどね
533:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:43:35 rp4psine
>>532
スレから保管庫に行く正統派だなw
たまにしかスレに来ない奴は、保管庫覗いて最新スレ見るんじゃないか?
ここ、早いから毎日追ってるとかでもないかぎり、保管庫はそういう使い方も出来る。
534:名無しさん@ピンキー
08/02/12 00:51:52 aVjvDkzX
ヒント:規約にかこつける、24時過ぎるとIDが変わる
とりあえずみんな落ち着こうか
535:205
08/02/12 00:54:09 vwJ03ORz
そんな中で投下する俺。
「不幸せな友人たち」の続きです。
536:不幸せな友人たち
08/02/12 00:55:32 vwJ03ORz
季節は移ろい、時は流れていく。
ティファニアがこの地で暮らすようになってから、ちょうど十年の月日が経過していた。
デルフリンガー男爵領の外では、何やら不穏な空気が漂い始めている。
近年、平民優遇の政策を推し進めてきたアンリエッタ女王が、その路線をますます拡大させている
とのことで、これに反対する貴族たちと日夜苛烈な闘争を繰り広げているらしい。幸いまだ武力によ
るぶつかり合いにまでは発展していないとのことで、デルフリンガー男爵領の中ではあまり話題にも
上らないらしい。
ティファニアの生活は、ほとんど変化がない。相変わらず最低限のことだけをして、後はただひた
すらじっと押し黙る生活を続けている。毎夜のように繰り返す悪夢も終わらず、日を追うごとに罪悪
感はますます深くなっていく。
変化と言えば、長櫃の中に収められた手紙の山がどんどん高く、大きくなっていくことだけだ。そ
れは、ティファニアが才人の振りをして送った手紙に対する、ルイズの返事だった。
―怪我をしたり、病気にかかったりしていませんか。
―あなたのしていることは立派だと思うけれど、あまり無理はしないで。
―お体に気をつけて。愛しています。
涙と吐き気と胸の痛みを堪えながらそれを読み、ティファニアはまた新たな手紙をしたためる。手
紙の文面は、最初に書いたときと変わりなく、ほとんど悩むこともなくすらすらと書きあがる。
ルイズは全く疑う様子を見せないという。
「ひょっとしたら、あの魔法には、教えた嘘を信じやすくさせる作用もあるのかもしれませんね」
シエスタがそんな風に推測していたが、真偽の程は分からなかった。
また、彼女の話によると、最近領民の間で「男爵様は気が狂っているのではないか」と噂されるこ
とが多くなってきたそうだ。
「仕方ありませんね。適当に理由をつけて、出来る限りミス・ヴァリエールと他人との接触は防いで
いますけど、完全にというのは逆に怪しまれますし、領民と話をすれば、真の領主……サイトさんの
ことを話したくなるというのも分かりますし」
彼女はこのことについてはあまり心配していないようだった。
「仮にミス・ヴァリエールが真実に気付いてしまったとしても、また忘れてもらえばいいだけですもの」
淡々とした口調でシエスタがそう言うのを聞いたとき、ティファニアは悪寒に身を震わせた。
(この人は、本当にサイトの願い以外はどうでもいいのね)
ルイズを、幸せに―。
才人が最後に言い残した言葉を思い返すたび、ティファニアは分からなくなる。
(才人は、こんなことを望んでいたんじゃない……でもきっと、ルイズさんが自分を追って死ぬことも、
願わなかったはず)
何が正しい選択だったのか、未だに答えは出ない。
懐かしい青髪の少女がやって来たのは、そんな頃のことだった。
537:不幸せな友人たち
08/02/12 00:56:49 vwJ03ORz
タバサが小屋に来るというのは、事前に飛んできたシルフィードの言で分かっていた。
「お姉さまはルイズと話してらっしゃいますわ。シルフィは口を滑らせたらいけないから、あなたに
言伝したらどこかに行ってろって言われましたの」
不満げにそう伝えたあと、シルフィードは言葉どおりどこかへ飛んで行った。やたらと低空飛行で
何度も木にぶつかっていたのは、万一にも見つからないようにという彼女なりの配慮だったのだろうか。
「タバサさんが、来る」
テーブルの前に座って呟くと、胸中に複雑な感情が湧き上がってきた。
十年前、ルイズの記憶を奪ったとき、明確に反対の立場に立ったのは彼女だけである。結局、
「じゃあミス・ヴァリエールが死んだ方がいいと仰るんですね」というシエスタの言葉に反論できず
に記憶の改竄を許容する結果になったが、最後まで協力はしなかった。
―こんなことが許されるはずがない。
タバサの言葉が脳裏に蘇る。
―わたしたちは、いつかこの罪にふさわしい罰を受けることになる。
彼女は、今も同じ気持ちでいるのだろうか。
そのとき、誰かが小屋のドアを控え目にノックした。ティファニアははっと顔を上げ、無言で扉に
近づく。耳障りな音を響かせながら扉を開くと、そこに小柄な人影が立っていた。
暮れ始めた日の光に、艶を失った長く青い髪が透けて見える。ほとんど手入れもしていないようで、
伸ばしていると言うよりは放っておいたら勝手に伸びたという感じである。身に纏うマントは薄汚れ
ている上に裾がボロボロになっていて、かなり長い間交換していないのが分かる。その下に隠れてい
る服も、やはり汚れたり継ぎがあてられたりしている様子だった。小さな顔は、服に比べると綺麗で
汚れていない。カサカサした唇は真一文字に引き結ばれ、眼鏡の奥の瞳は以前よりも深く、思いつめ
た色を帯びている。その手に握られている、小柄な体格にはずいぶん大きな杖のみが、ほぼ唯一変わ
らない点だった。
ティファニアは驚き、問いかける。
「タバサさん、ですか?」
女は無言で頷いた。にこりともせずに、呟くように言う。
「久しぶり、ティファニア」
彼女の変貌振りにしばし呆然としたあと、ティファニアは気を取り直して家の中を示した。
「とりあえず、入ってください。何もお出しできませんけど」
「構わない」
短く答えて、タバサが後に続く。ティファニアは彼女に椅子を勧めて、自分もテーブルを挟んで向
かい側に座った。
鎧戸の押し上げられた窓から、鳥の鳴く声や木々のざわめきが聞こえてくる。二人とも無言だった。
タバサは何も言わないし、ティファニアも何を言っていいのか分からない。
ただ、一つだけ、確信できることがあった。
(この人は、何も変わっていない……わたしと同じ気持ちを抱いて、今まで生きてきたんだわ)
人間味というものをほとんど感じさせない今のタバサを見ていると、自然とそう思える。
「ルイズさんは」
半ば沈黙に耐え切れぬ気持ちで、ティファニアは切り出した。
「どんな、様子でしたか」
タバサが瞬きもせずにこちらを見つめた。
「幸せそうだった。とても」
タバサは小さく首を巡らせて、小屋の中を見回した。
「あなたは」
ぽつりと言う。
「後悔と罪の意識を抱いて、ここにいるの」
問いかけというよりは、確認という口調だった。その静かな視線は、部屋の隅に置いてある長櫃に
じっと注がれている。ティファニアは頷き、問いかけた。
「あなたも、そうなんでしょう?」
タバサは一度口を開きかけて、ためらうように閉じた。答えはない。
そうして、また沈黙が訪れた。獣の走る足音、鳥の羽音。
「あのとき」
不意に、苦しげな呟きが漏れ出した。こんな静寂の中にあっても、その声は消え入りそうなほどに
小さい。タバサの肩は小刻みに震えていた。
「あのときの選択は、間違いだった」
急に肺が圧迫されたように、呼吸が苦しくなる。テーブルの向側で、タバサが唇を噛んだ。
「わたしたちは、ルイズを死なせてあげるべきだった」
538:不幸せな友人たち
08/02/12 00:57:49 vwJ03ORz
ティファニアは短く息を吸った。体が震えているのが分かった。
「死を選ぶことが、ルイズの意志……サイトに対する彼女の愛情の証だったのなら」
不意に、キュルケの寂しげな微笑が頭に浮かんだ。
「それを、死んだサイトが望まなかったとしても、ですか?」
自然に言葉が出る。タバサはゆっくりと頷いた。
「確かに、サイトはルイズが死ぬことを望んでいなかった。でもきっと、彼女が自分の意志で死を選
んだのなら、許してはくれたと思う」
「そうかも、しれませんね」
「でも」
タバサの声が大きく震えた。
「わたしたちは、ルイズの意志を無視した……!」
吐息と共に言葉が吐き出される。
「自分勝手な理屈を押し付けて、彼女の愛情を踏みにじって、偽物の幸せの中に押し込めてしまっ
た! わたしも、それが間違ったことだと、絶対に許してはいけないことだと知っていながら、自分
の身勝手な感情に流されてしまった……!」
絞り出すような叫びのあとで、タバサは肩を落とした。
「あの選択は、間違いだった」
「そうですね」
ティファニアも自然と頷いていた。向側のタバサは、入ってきたときよりもずっと小さく見える。一瞬、駆け寄ってその肩を抱いて慰めてやりたい衝動に駆られたが、ぎりぎりのところで堪えた。彼女がそれを望まないであろうことは、自分自身の経験からもよく分かったからだ。
(この人とわたしは、よく似ている)
改めてそう思う。
タバサの風評は、他の者たちと違ってここ数年ほとんど聞こえていなかった。シエスタは様々な手段で情報を集めていたが、それでもタバサのことはあまり聞かなかったのだ。
「たまに、ガリア辺境に現れては人に仇名す怪物なんかをほぼ無報酬で退治している、青い髪の女性のことを聞くことがありますけど……それが、彼女なんでしょうね」
一度、そんな風に聞いたぐらいである。
(きっと、そうやって進んで苦しいことばかりやってきて、楽しいことなんか少しもない生活を続けてきたのね、この人は。だからこんなにもボロボロなんだわ)
幾夜もの眠れぬ夜を戦い、厳しく自分を律してきたのだろう。聞かなくとも、ティファニアにはそのことが分かった。
そのとき、不意にタバサが顔を上げた。眼鏡の奥の瞳が、静かな光を放つ。
「わたしは今日、ある決意を抱いて、ルイズに会った」
そう言って、彼女はマントの中に腕を差し入れる。
「彼女を」
一度言葉を切り、腕を出す。細かく震える手に、一振りのナイフが握られていた。それを鞘から取り出し、テーブルの上に置く。タバサは再び声を絞り出した。
「彼女を、殺すつもりだった」
ティファニアは息を飲んだ。ナイフとタバサの顔を交互に見比べる。どちらも同じぐらい鋭い光を放っている。窓の外から獣の悲鳴が聞こえてきた。
「それは」
喉が痛いほどに乾くのを自覚しながら、ティファニアは問いかけた。
「ルイズさんの本当の願いを、叶えてあげるためですか」
タバサは俯き、小さく頷いた。
「そのつもりだった。歪み、狂った偽りの生を終わらせ、本人の意思どおり、彼女を愛しいサイトの
ところへ行かせてやろうと……彼女の意志をわたしが代行しようと、そう思っていた。それが、あの
とき間違った選択をしてしまったことへの償いになると、それが唯一残された責任の取り方なんだと、
そう思っていた」
償い、責任、という言葉は、ティファニアに大きな衝撃を与えた。頭の芯が痺れるほどに、強烈な
誘惑を持った言葉だった。間違った選択をやり直し、改めて正しい選択肢を選び直す。ルイズの、本
来の意志を、代行する。
(なんて、聞こえのいい言葉……! でも)
ティファニアはテーブルの上に目を落とす。
ナイフは冷たい光を放っている。人の手で鍛え抜かれた鋭い輝き。
血は一滴もついていない。
タバサに目を戻す。彼女は俯いていて、表情は見えなかった。
「でも、そうしなかったんですね?」
涙の雫が一粒落ちた。タバサが鼻を啜り上げる
「出来なかった。それが正しいことなんだと、いくら自分に言い聞かせても。目の前で、何も知らず
に微笑んでいるルイズを見ていると、どうしても。サイトのことを愛しているって、会えなくてもい
つでも心はそばにいるって、嬉しそうに話してくれた彼女を見ていると、自分のすることが正しいな
んて、とても思えなくなってしまった。こんなのは間違ってる、今目の前にいる彼女の幸福は偽物な
んだって、分かっていたのに。それで、気付いた」
539:不幸せな友人たち
08/02/12 01:00:00 vwJ03ORz
タバサの声はもうほとんど泣き声になっており、その上くぐもっていてかなり聞き取り辛かった。それで
も、ティファニアには、彼女が言っていることが全て理解できた。
「わたしは、また自分勝手な感情を優先しようとしていた。正しいことをしよう、責任を取ろうだな
んて、全部嘘。本当は、ただ逃げたかっただけ。ルイズが母様と同じように他人の手で心を狂わされ
たのに、その残酷さは分かっていたはずなのに、それを見過ごしてしまった自分を、なかったことに
してしまいたかっただけだった……!」
ティファニアは椅子を蹴って立ち上がり、タバサに駆け寄ってその頼りない体を抱きしめた。腕の
中で泣き続ける女は、昔よりも華奢で、今にも折れそうなほどか細く思える。
「ずっと、逃げていたの」
しゃくり上げながら、タバサは必死に言う。
「何が正しいのか知っていたのに、わたしは間違ったことを止めもせずに、ただ他人にだけ責任を押
し付けて、言い訳ばかりして……!」
「もういいです、もういいですから……!」
ティファニアは自分を責め続けるタバサの唇を塞ぐように、彼女の体をさらに強く抱きしめた。泣
き声は止まない。ここからずっと離れているにも関わらず、城にいるルイズに聞こえはしまいかと、
本気で心配になるほどに大きく、痛々しい泣き声だった。
(この人は、とても意志が強い人なんだ)
黙って彼女の体を抱きしめながら、ティファニアは強く唇を噛む。
タバサが言っていることは、あまりにも自分に厳しすぎるのではないかと思えた。彼女がこの十年
間、己の罪に向き合おうとして必死に生きてきたことは、その姿を見れば嫌でも理解できる。彼女が
自分で言うように、逃げたとか他人にだけ責任を押し付けたというようには、とても思えなかった。
彼女はちゃんと、自分の罪に責めさいなまれて、苦しんできたのだ。決して卑怯な臆病者などではない。
(もしもあの雨の日、彼女がわたしだったとしたら、ただ黙って、ルイズさんが振り下ろした剣をこ
の身に受けた。彼女の憎しみを受けるのを恐れて、もう一度記憶を消そうだなんて、思わなかったに
違いない)
そう考えると、ティファニアの胸はまた重くなる。だが、その重みを受けて沈黙し続けることは出
来なかった。腕の中で震え続ける人に、声をかけなければいけないから。
540:不幸せな友人たち
08/02/12 01:00:43 vwJ03ORz
「聞いてください、タバサさん」
ティファニアの胸の間から、タバサが顔を上げる。少しずれた眼鏡が、涙で濡れていた。
「タバサさんが言うように、わたしも、あのときの選択は間違っていたと思います。わたしたちは、
ルイズさんの意志どおり、彼女を黙って見送ってあげるべきでした」
タバサがまた顔を伏せてしまう前に、ティファニアは「でも」と言葉を続けた。
「だからと言って、あのときのタバサさんの気持ちまで間違いだったとは、思いません」
「それは」
違う、とタバサが続ける前に、ティファニアは言った。
「タバサさんは、ルイズさんに死んでほしかったんですか?」
眼鏡の奥で、タバサが目を見開く。「それは……だけど」と、次の言葉はなかなか出てこない。そ
の顔が苦しげに歪んだ。
「わたし、思うんです。あのときのタバサさんは、何が正しい道なのか、誰よりもよく知っていたっ
て。でも、その道は選ばなかった……選べるはずがなかった。だって、タバサさんは、サイトとルイ
ズさんのことが、好きだったから。たとえ何が正しくたって、好きな人の死を迷いなく選べる人なん
て、いません。出来れば生きてほしいと思うのが当然のことです」
ゆっくりと語りかけながら、ティファニアは唇を噛み締めていた。
もしもタバサが無表情な見かけどおりに冷酷で、情に薄い性格だったとしたら、ここまで悩むこと
はなかったはずだ。これほどまでに追い求め、選べなかったばかりに心を苦しめ続けている「正しい
道」を、迷いなく選ぶことができたはずだ。
(友達への好意が……愛情が、強い意志を持つこの人にすら、間違った道を選ばせてしまった)
そして、彼女は今も、体が震えるほどに苦しみ続けている。
「いいんですよ」
ティファニアは、タバサの背中をそっと撫でた。
「タバサさんは、十分苦しんだじゃないですか。もう」
脳裏に、暖かい炎のような髪が翻った。
「もう、自分を許してあげてもいいんです。あなたの中の罪悪感と同じように、あなたの中の愛情も、
大事にしてあげてください」
タバサはただじっとティファニアの言葉を聞いていた。その口が開きかけて、何も言えずに閉じた。
震える睫毛の下、青い瞳から、涙が一粒零れ落ちる。
咄嗟にポケットを探って、ハンカチを取り出した。キュルケからもらったハンカチで、タバサの涙
をそっと拭ってやった。
涙は止まらず、無言のままに流れ続ける。ティファニアはずっと無言のまま、タバサの涙を拭い続けた。
541:不幸せな友人たち
08/02/12 01:01:49 vwJ03ORz
泣き止んだタバサと共に、家の外に出る。
「ありがとう」
まだ赤い目で言いながら、タバサは少しだけ文句ありげにこちらを見た。
「息苦しかった」
その視線を辿ると、自分の胸に行き着く。こんな会話をするのは物凄く久しぶりのことだ。懐かし
さと共に気恥ずかしさを覚えて、ティファニアは「すみません」と、とりあえず謝る。タバサはほん
の少しだけ笑ったような気がしたが、暗くてよく見えなかった。
気付くと周囲は夕暮れの光で赤く染まっている。
ティファニアは目を細めて、暗い森の向こうに視線を注ぐ。
(ああ、五年前も、こんな景色を見たな)
脳裏に赤く長い髪が浮かぶ。笑って手を振りながら去っていくキュルケ。再会を約束しながら、彼
女はもう二度と戻ってこなかった。
(ひょっとして、この人も……?)
不穏な予感が、胸の中で膨れ上がる。それを見透かしたかのように、タバサが厳かに言った。
「多分、もうここには戻ってこない」
彼女を見ると、その横顔には厳しい無表情が戻っていた。乾いた風が吹いて、長く水気のない青い
髪が、かすかに揺れる。
「戻ってこられない、と言った方がいいかもしれない」
「どうしてですか」
問うと、タバサは表情を変えないまま語り出した。
「数日前、ガリア辺境にある小さな村が壊滅した」
「壊滅、って言うと」
「村の広場には、元は村人だと思われる肉片が、山のように積み重ねられていた」
背筋に悪寒が走った。
「一体、何が……?」
「……邪竜が現れたと、報告があった。村人の中で唯一生き残った男が、その竜の伝言を伝えてきた。
『私は、前王の恨みを晴らす』と」
前王、と言われても、ティファニアには誰のことだか分からなかった。すぐにそれに気付いたらし
く、タバサが説明する。
「前王というのは、ガリアの前王ジョゼフのこと。わたしの叔父で、仇だった男」
仇だった、という言葉を聞いて、ティファニアは大体の事情が分かったような気がした。タバサは
わずかに顔を俯かせる。
「邪竜は多分、ジョゼフの使い魔だったミョズニトニルン。何かのマジックアイテムで、自分の姿を
竜に変えたんだと思う。主人が死んだことで、何も影響を受けていないのかどうかは知らないけど…
…とにかく、主人を殺した人間を恨んで、復讐を果たそうとしている」
「主人を殺した人間、というのは……」
「わたしや……サイトに、ルイズ」
ティファニアは息を飲む。タバサは小さく頷いた。
「そう。このまま放っておけば、ルイズにも害が及ぶかもしれない。王宮の方からも邪竜退治の命令
が出たけれど、命令されなくても、わたしは行くつもりだった」
そう言って、タバサは悔いるように眉根を寄せた。
「だから、その前に、あのナイフで責任を取ろうと思ってた。もしかしたら、勝てないかもしれないから」
「じゃあ、今からその邪竜を倒しに行くのも、間違った選択をしてしまったことの、責任を取るつも
りだからですか?」
問いが口を突いて出る。タバサは一瞬迷うような間を置いてから、首を横に振った。
「違う、と思いたい。今は……上手く言えないけど、あなたの言葉を信じて、自分が友達を守るため
に行くんだと思いたい」
タバサは、そっと自分の胸に手を置いた。
「あなたの言うとおり、この身勝手な心の中に、少しでも暖かい感情が存在していると信じてみる」
「タバサさんの心は、身勝手なんかじゃ」
「それなら、あなたもそう」
タバサが鋭く遮った。青い瞳が、じっとこちらを見つめる。ティファニアは視線をそらした。
「わたしは、タバサさんと違って、本当に醜い人間ですから」
ルイズの怒りに滾る瞳が、頭の中に蘇る。
「わたしも、自分のことを同じように考えている」
タバサが静かにそう言って、ティファニアは何も言い返せなくなってしまった。
542:不幸せな友人たち
08/02/12 01:02:34 vwJ03ORz
そうして、また沈黙の中でわずかな時間が過ぎ去り、周囲はいよいよ暗くなってきた。そのとき、
頭上から大きな羽音が聞こえてきた。見上げると、薄闇の中を一頭の青い竜が飛んでいる。
「お姉さま、お迎えに上がりましたわ、きゅいきゅい」
シルフィードの能天気な声が降ってくる。その巨体が窮屈そうに降りてくるのをじっと見つめなが
ら、タバサは言う。
「わたしは、行かなくてはならない」
「もう会えないんですか?」
「多分」
「そう、ですか」
ティファニアは何も言えない。行くな、というのはもちろん、生きて帰ってきて、とも。
「一つだけ」
不意に、タバサが思いつめたような声で言った。
「一つだけ、あなたにお願いしたいことがある。わたしと同じ後悔を抱く、あなたに」
タバサは両手を伸ばして、ティファニアの手を握り締めた。青い瞳が、切実な光を宿して、こちら
を見上げている。ティファニアは困惑して問うた。
「お願い……わたしに出来ることですか?」
「あなたにしか出来ないこと」
「それは」
「いつか、ルイズに本当のことを教えてあげてほしい」
ティファニアは目を見開いた。「そんな」と、慌てて手を振り解こうとしたが、タバサは絶対に逃
がさないとでも言うように、両手に強い力を込める。振りほどけなかった。
「こんなこと頼む資格がないのは分かってる。無責任だ、偽善だと罵られてもいい。でも、お願い。
いつか、ルイズに本当のことを教えてあげて。いつか彼女に、自分の意志で選択させてあげて。わた
しには出来なかったことを、あなたが……」
タバサは瞬きもせずこちらを見つめ続ける。視線をそらすことが出来ない。ティファニアは迷った
末に、きつく目を閉じて言った。
「約束は、出来ません」
「それでいい」
タバサがほっと息をつくように言って、手を離した。目を開くと、彼女の口元には淡い微笑みが浮
かんでいた。
「きっとあなたは、今度こそ正しい道を選んでくれるはずだから」
何も言えないティファニアに深く頭を下げ、タバサはシルフィードに飛び乗った。以前の彼女と変
わらぬ、軽やかな跳躍だった。
「何もかも押し付けていくようで、本当にごめんなさい。もしも生きて帰れたら、必ずわたしも一緒に行く」
ティファニアは顔を上げて問いかけた。
「じゃあ、最初から死ぬつもりで行くのではないんですね?」
「それは、間違った選択だから。また逃げることだから。あなたと同じで、約束は出来ないけど、最
後まで諦めずに頑張ってみる。ああ、それと」
タバサの腕が、小屋の中を指差した。
「あれは、あなたに預けておく。愚かな女の過ちの証として。選択に迷うことがあったら、あれを手
に取って。逃げてしまいそうになったり、間違った道を選びそうになったら、あれを見てもう一度考
え直して。間違った選択を、もう二度と積み重ねないように!」
そう言って、タバサは顔を上げた。
「ありがとう。あなたがかけてくれた言葉のおかげで、わたしはきっと、最後まで頑張ることが出来
る。間違った責任の取り方ではなく、正しい想いを抱いて」
その姿は、暗闇に隠されて、少しも見えないはずだった。
だがそのとき、ティファニアの目にははっきりと見えた。
真っ直ぐに夕闇の空を見つめるタバサの顔に、力強い笑みが浮かんでいる。青い瞳が、自分の行く
べき方向を迷いなく見つめている。
その像が、脳裏に強く焼き付けられる。
そして、最後に声が響いた。
「わたしは行く。今度こそ、友達のために」
力強い羽ばたきと共に、タバサを乗せた竜が大きく空に舞い上がる。その翼が巻き起こす風に倒さ
れそうになりながら、ティファニアは彼女たちが見えなくなってしまうまで、じっとその場に立ち尽
くしていた。友人たちを見送るために。
543:不幸せな友人たち
08/02/12 01:03:20 vwJ03ORz
一人で小屋に戻り、ランプに明りを灯す。テーブルの上で何かが鋭く光った。
それは、一振りのナイフだった。タバサが残していった唯一のもの。
手に取り、眺めてみる。誰も切らなかったナイフだ。誰も切れなかったナイフだ。
―いつか、ルイズに本当のことを―
(わたしに、出来るんだろうか)
あの雨の日のことを思い出すたび、ティファニアの体は今も芯まで震えてしまう。
ナイフをぎゅっと握り締めてみても、やはりそれは変わらなかった。
タバサもまた、キュルケと同じように、ティファニアの元に帰ってくることはなかった。
赤い髪の友人がずいぶんと世間を騒がせたのに対し、青い髪の友人は、最後までひっそりと奮闘し、
ひっそりと死んでいったものらしい。
実際には、彼女が本当に死んでしまったのかどうかも分からなかった。
だが、邪竜が人里に下りて甚大な被害をもたらしたという噂を聞くことはなく、もちろん、デルフ
リンガー男爵領が、そういった怪物の襲撃におびやかされることもなかった。
かなり時間が経って……全てが終わったあとに、ティファニアはタバサの足跡を探してガリアに入った。
元王都や各都市、辺境の村々に至るまで、様々な場所を巡って、たくさんの人々に話を聞いて回っ
たが、「青い髪の騎士」のことを覚えている人間は、誰一人としていなかった。
ある村で会った老婆が、たった一人だけ、青い髪の騎士のことを覚えていた。
その人とは、村外れの雪原で会ったらしい。深く傷ついていたが、手当てされるのは拒んだ。
そのとき、ほんのニ、三言だけ、彼女と言葉を交わしたらしい。
「お姉ちゃんは、こんなところでボロボロになって、何をしているの?」
苦しげで、何か思いつめるような雰囲気を纏っていた騎士の顔が、そのときだけ不意に和らいだそうだ。
「わたしは、友達のために戦っているの」
「友達?」
「そう。大切な、友達のために」
そのとき、騎士の笑みがほんの少しだけ、自嘲めいたものに変わった。
「嘘かもしれないけど、そう信じているの。だから、まだ立てる」
それだけ言い残して、彼女は立ち上がった。服はボロボロで体は傷だらけ。それでも、その瞳は
真っ直ぐに雪原の向こうを睨み据えていた。その方向へ、彼女は一人で歩いていった。
ティファニアが友人に関して得られた、唯一の証言だった。
教えてくれた老婆は大層高齢だったが、そのときのことをはっきりと覚えていた。
周囲の白さに溶け込むことを拒むような、青く長い髪がやけに記憶に残っていて、「青い髪の騎
士」と言われたとき、すぐに彼女のことを思い出したという。
ティファニアは老婆が騎士と会ったという村外れに赴き、雪原に向かって目を凝らしてみた。
だが結局、そこに青いものを見つけることは出来なかったのである。
こうして二人目の友人も帰ることはなく、ティファニアの手には過ちの証だけが残った。
彼女は何度もそのナイフを手に取り見つめ、深い葛藤の中に沈んだが、結局ルイズに本当のことを
教えられないまま、ただ時だけが過ぎていった。
次に彼女のもとを友人が訪れたのは、タバサと別れてさらに五年の年月が過ぎてからのことである。
544:205
08/02/12 01:06:56 vwJ03ORz
以上。読んでくださってありがとうございました!
サブタイトルは「タバサ」ですと書き忘れてすみません。
途中で改行忘れてて文章がダラーッとなって読みにくくなっててすみません。
そうでなくても読みにくくてすみま(ry
……保管庫入れるときに調整します、はい。
ノボル神が「タバサ、がんばる」とか後書きに書かれてましたが、
個人的に彼女は頑張りすぎだと思います。もうちょっと力抜けよ、みたいな。
そういう根っから真面目なイメージがあった彼女を上手く書けたかどうかと言うと全く自信が(ry
ご意見いただけると大変嬉しいです……
545:名無しさん@ピンキー
08/02/12 02:48:56 43KmCE7v
アンタの書く小説はすばらしい。涙が出る、マジで。
546:名無しさん@ピンキー
08/02/12 03:28:55 GNezxB3k
大抵の保管庫はエロOKの鯖を借りて作ってる。
wikiでやりたいならエロOKの鯖に自分で設置するしかない。
自分で設置する知識が無いなら、html形式のサイトにして全部を自分で更新するしかない。
547:名無しさん@ピンキー
08/02/12 04:40:14 grrwKw8g
>>544
今回も切ないな GJ!
548:名無しさん@ピンキー
08/02/12 09:02:39 dVrzu6ZD
>>544
涙腺崩壊だ。GJ。
才人が死ぬってかなりの罪作りだなあと思った。
みんな不幸せになりすぎだ……。
>>546
つかエロOKの鯖でphp使えるとこにpukiwiki設置すればどうよ?
549:名無しさん@ピンキー
08/02/12 10:17:17 PpKHDNc3
ぐるぐると同じ場所を廻っている様で、少しずつ何かが動き始めているようですね。
毎度gjです
550:バレット
08/02/12 12:28:22 XEEmjiNc
感動に水差す感じで済まんが、続きトゥーカいきやす。
551:(4):集いし少女達(と書いてライバルと読む)
08/02/12 12:30:47 XEEmjiNc
「あー死ぬかと思った」
どこぞの煩悩霊能者みたいな事を漏らしながらベッドへダイブ。
イザベラやシャルロットやティファニア、その他の生徒同様大型竜籠(物資・人員輸送用タイプ)で宮殿から運んできたものだ。
この世界に来て以来のサイトの愛用品である。
もちろん、ジョゼフから与えられた超高級品だ。これ1つで下級貴族の1年の支給金並みとか。
金はある所には掃いて捨てるほどゴロゴロ転がっているのである。ごくごく普通の異世界の中級階級出身の才人には実感わかないけど。
マチルダに追い回され、結果入学式を兼ねた晩餐会に出れず夕食にありつけぬままぶっ倒れたサイト。
実戦や訓練でそれなり以上に鍛えられてる上に伝説の盾補正も加わってちょっとやそっとじゃバテやしない。
それでも腹を空かしたまま散々追い掛け回されれば、部屋に戻った途端ベッドに飛び込みたくなるぐらいには誰だって消耗するのだった。
「厨房行きゃ少しは分けてもらえるかな・・・」
しかし腹は文句つけても足が動いてくれない。
ガンダールヴによる身体強化は、解除後強化した分しっぺ返しが来るのである。
疲れてるししょうがないからこのまま寝るか、とサイトは瞼を落とし。
コンコン
すぐにまた開いた。
「開いてるぞー」
やや気だるげな声で扉の向こうに声を掛ける。
ゆっくりと、扉が開いた。
まず目に飛び込んできたのはランプの光を反射する金色の髪・・・
なんて在り来たりなもんではなく、こんなの在り来たりだったらこの世はパライソか!?と言いたくなる1対の超特大弾頭でした。
「お、お兄様?大丈夫?」
「あー、へーきへーき。ちょっと疲れたけどな」
心底心配そうなティファニアに、サイトは苦笑交じりに答えた。
心配性なのは相変わらずだなぁ、何て思いながら。
552:(4):集いし少女達(と書いてライバルと読む)
08/02/12 12:33:05 XEEmjiNc
サイトとティファニア・オブ・ロードとの出会いは、3年前に遡る。
サイトがガンダールヴと分かり、従ってジョゼフの系統が虚無と発覚してからしばらく経ってからの話だ。
始祖ブリミルの伝承とやらから、他国にも虚無の系統が居るかもしれないと推測したジョゼフは密かに他国の彼方此方に人を送り込んだ。
いわゆる間諜、スパイである。
別にサイトの世界のどこぞの7号さんみたいに、単独で陰謀をぶっ壊すようなド派手な物じゃない。
しかし、いつどの世界であっても正確な情報を早く手に入れた者こそが有利に経てるのはここでも常識と言えた。
その過程で偶然にも発覚したのが、アルビオン王家の一員、ロード大公の愛人のエルフとその娘、ティファニアの存在だ。
エルフは、ハルケギニアの人間にとっては天敵といえる存在。
人肉を食らうだの何だのと明らかに眉唾な―でも実際オーク鬼みたいに人を食べるような種族も居るお陰で何気に信憑性が低くなかったりするけど―
噂もあるが、それでもこの世界の大半の人間は吸血鬼と同等以上に恐れていた。
実際、平民の10倍以上の能力を持つメイジの100倍は強いと言われてるんだから、しょうがないっちゃしょうがないのかもしれない。
そんなエルフが貴族、しかも王家のかなり上位の存在の愛人でしかも間に子供も居るとなれば――その衝撃はとんでもない。
アルビオン王家にとっては核爆弾級のスキャンダル。
しかしジョゼフがむしろこの事態をチャンスだと受け止めたのは、国と政治の為なら親の敵とでも手を組まなければならない政治家の頂点に立つ者ゆえか。
人とエルフの間に子供が居る。
それはつまり、例え天敵であっても友好関係を結べる何よりの証拠といえた。
更に、よくよく調べてみるとそのハーフエルフの娘にいたっては虚無の使い手かもしれない可能性があると言うではないか。
上手くすればアルビオン王家と友好関係を結べるか、もしくは弱みを握れるか。
はたまた彼らをガリアに連れてくれば虚無の使い手をガリアの物に出来るし、更に更に愛人と娘を使えば、もしかするとあのエルフとの間でも友好関係を結べるかも・・・
どっちにしたってまずは、アルビオン王家より早く3人を確保する可能性がある。
こんなスキャンダル、漏れれば確実に3人ともども証拠を消そうとアルビオン王家が躍起になるのは間違いないからだ。
それを防ぐ為に、ガリアから密かにアルビオンへと派遣された人員の中に・・・既にガリアではジョゼフの切り札として有名なサイトも居たのだった。
とりあえず本人は当初、半ば空に浮かぶ大陸への観光旅行のノリだったり。
553:(4):集いし少女達(と書いてライバルと読む)
08/02/12 12:34:52 XEEmjiNc
「あれだよな、確か俺達がマチルダさんの屋敷に向かった時、テファのお母さんが杖向けられててギリギリ俺が飛び込んで間に合ったんだっけ」
部屋に居た10人以上のメイジを一瞬でなぎ倒したのがこの男である。
それは、無抵抗の彼女の母親の言葉を受け入れようとせずに殺そうとしたメイジ達を見て瞬時にサイトが切れた結果なのだが。
「あの時のお兄様、まるでお母様やマチルダ姉さんがよくお話してくれた勇者様そっくりだったわ」
「そ、そうか?」
謙遜した風に頭を掻く。
召喚されてからこっち、ガンダールヴといっても歴戦の兵士やメイジやとんでもない化け物相手に戦いを繰り広げてきたサイトである。
最近はともかく最初は訓練で相手(スクウェアクラスだったりたぜいに)無勢だったり)にボコボコにされるのはしょっちゅうだ。
身体能力や武器の扱いが上手くたって、長年の実戦経験にはおいそれとは敵わない。
それを文字通り心身ともに叩き込まれたお陰でこのサイト、普段はお調子者な部分が幾分抜けている。
「その後お兄様、ガリアの特使って事になって、叔父のジェームズ一世様とお話する事になって・・・」
「あー、それであいつらの言ってる事につい頭に来ちゃってケンカ売ったんだっけ、俺」
一緒に居たカステルモールがあんまり緊張しすぎてぶっ倒れたんだっけなー。
修羅場を潜り抜けたといっても、基本的にサイトの根が単純なのは変わらない。
だから納得のいかない事にはハッキリと『No!』というタイプで――
ついでに問答無用でティファニア達を罰しようとするアルビオン王族のあまりの横暴さを目の前に堪忍袋の緒が切れて、ガンダールヴ全開でその場に居た彼らに襲い掛かったのは未だに語り草だ。
『貴族が何だ!王様が何だ!こんな小さい子まで話も聞かずに殺すような奴がそんなに偉いのかよ!』
『ふざけんな!そんなんならな、問答無用でこの世界に呼び出したあの髭親父の方がよっぽどいい奴じゃねえか!』
『認めねえ、俺は絶対認めねえ!そこまであの子達を殺したいんなら、俺が相手になってやる!!』
『上等だ、王家だろうがなんだろうが――お前らは俺の敵だ!!』
とどのつまり、サイトはティファニア達を守る為にその場で王家に宣戦布告したのである。
サイト自身大国ガリアからの使いという事で国際問題に発展、下手すりゃ国家間戦争がおっぱじまるキューバ危機ノリだったわけだが、
しかしサイトの言い分もある意味正しく、しかもジョゼフ直々にガリアからあれこれ圧力―主に大陸間の補給路の封鎖―
など、3割の謝罪の7割の脅迫で結果、サイトもティファニアもお咎め無し、という事になった。
その後アルビオンとガリアが合同でティファニア達を足がかりにエルフ達との国交を結ぶプロジェクト立ち上げられ、
遂に去年、プロジェクト設立から僅か2年で、厳しい条件付ながらサハラとの貿易が始まった。
これにはティファニア達以外にも、異世界出身で魔法の使えなかったサイトと親しいお陰で階級や種族云々を気にしなくなったジョゼフの尽力がある。
ガリア=アルビオン=サハラの平和裏な3国?協定が結ばれ、エルフとの積極的な国交によりガリアとアルビオンの勢力増強は著しい。
そうしてロード大帝は投獄から一転、国王ジェームズ一世並みもしくはそれ以上の権力者となり、ティファニアとその母親も王家に認められる存在として正式な妻と子供とされ。
サイトは(表向き)平民でありつつもガリア王家と関わりの深い人間でありながら、
アルビオン王家に宣戦布告した挙句エルフとの国交に一役買った人物として、アルビオンでも有名人となった。
そしてこの事がきっかけで『シュヴァリエ』の位を与えられ、ガリアでは初の平民出身貴族となったのが3年前の顛末である。
・・・ガリアに戻った直後、あまりの心配が転じて怒り狂った妹分2人のヘクサゴンスペル+ジョゼフの虚無にぶっ飛ばされたのは置いとこう。過ぎた事だ。
554:(4):集いし少女達(と書いてライバルと読む)
08/02/12 12:36:30 XEEmjiNc
それはともかく、2人の馴れ初めはこんな感じだ。
マチルダと顔見知りなのもその関係である。宣戦布告後ほとぼりが冷めるまで、マチルダの屋敷で3人揃って軟禁状態にあったのだから。
さて、シリアスっぽいのはここまで。
文章には出てこなかったが実はサイト、ティファニアが部屋に入ってきた時から視線はある一点に固定済みだったりする。
胸。そう、胸。
学生服の白いシャツから突き出たあまりにも圧倒的な存在感に、彼女の言ってる事どころか自分の言ってる事すらもほとんど頭の中に入っちゃいない。
入学式の最中も遠巻きに彼女を見ていたギャラリー(主に男子)の視線は、尖った耳よりもその特大桃りんごに集中していたのをサイトは知らない。
ついでにお忍びで偽名を使わずわざわざアルビオン王家である事をアピールしているのも、彼女がエルフの血をひいている事への周囲の軋轢を和らげる為だ。
イザベラとシャルロットもその関係で偽名を使っていない。友好関係をアピールする為に。
自動運転で口を動かしつつ、サイトはティファニアの胸の感触ってどんな感じだろうと、妹分兼未来の正妻&側妻の2人の感触を思い出してイメージし。
ぴょこっ
・・・・・おもわず股間の相棒が先走って反応した。
ヤバイ。考えただけで反応ってどれだけ単純だよ俺!
あああ、しかもテファの見ててどんどんおっきくなってるし!何でか目離したくても離せないし!
こうなりゃ脱出だ!リジェクトリジェクト!!
「ごめん、晩飯食ってないし腹減ったからちょっと厨房行って来る!・・・・・・のわっ!?」
「きゃっ!?」
慌ててベッドから降りて走ろうとしたのがいけなかった。
酷使された膝がカクッと力を失い、前のめりのままバランスを崩した先は――
ティファニアの胸の中である。
むにょん(サイトの顔がティファニアの胸の間に埋まった)
どさっ(2人して床に倒れた)
ぷちぷちっ!(その衝撃でシャツのボタンが弾け飛んだ)
「・・・・・・・・」
「んっ、お、お兄様っ!?」
なぜ、俺は、テファの胸に、直で、埋まってるんでせうか?
A:キャミソールじゃティファニアの胸が収まりきらないので、素肌に直接シャツを着ていた為。
ハイ、息子が完全覚醒しましたありがとうございました。
全速で脱出。全力で後頭部ベッドに強打。サイト悶絶。
ダメだこりゃ。どっかのおっさんの声が聞こえた気がした。