08/10/09 20:32:08 fLmb4SC5
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「…な、なるほどくん…?」
「ご、ごめん、つい…」
「…緑茶の味がした」
「さっきまで飲んでたからね。ふたりとも」
「…今のも、キス?」
「…一応は」
あたしは困惑していた。
確かめてみる?と聞いたあの時のなるほどくんが急に男らしくて、それからオトナに見えてしまって。
あたしの知らないなるほどくんがいるのかもしれないと思うと、
知らないのが悔しいのと、怖いのと、それから好奇心という感情が湧いてくる。
あたしは何も知らないお子様なんだと身をもって知らされてる気がして、ちょっとムカつく。
「なるほどくん。あたし、今日キスするのが初めてで」
「…ごめん。反省してるよ」
「2回したじゃない?でも2回とも、違うキスだったでしょ」
「ううん…何と言えばいいのやら…」
「今のって…オトナのキス?」
「ぐっ…!」
なるほどくんの喉もとで言葉が詰まる。否定しないってことは、そうなんだよね。
「ふーん…さすが、オトナは物知りだなあ」
と、自分の動揺を隠しながらイヤミを言ってみる。
正直なところ、あんなキスが毎回続いたらきっと身が持たない。恥ずかしくて死にそう。
動揺してる時ほど人間って口が回るもので。あたしの口はまさに外郎売に出てくる透頂香を飲み干したみたいに。
なるほどくんはまだあたしの両サイドに腕を伸ばし、壁に手をついたままの体勢。
早くこの恥ずかしい構図から解放してほしい。
さっきの濃厚な口づけは、月9のあのシーンを思い出してしまって。
キスをして、それからソファベッドに倒れこむ二人のシルエットが異常に目に焼き付いてしまっている。
「そ、それもあれでしょ!あ、あ、あやめさんと付き合ってる時に覚えたんでしょ。
あーあこれだからオトナの付き合いはイヤラシイんだから!
ちょっと自分がケーケン豊富だからってさ。あたしはまだヤングだよ!ティーンだよ!」
「い、いやあのさ真宵ちゃん…」
「あたし、認めるの嫌だけど、何も知らないんだよ。
そっちはそりゃ、今まで付き合ってきた中の一部の彼女かもしんないけど…
あ、あたしは付き合うこと自体初めてなんだから…キスするだけでも精一杯で…
すでに何もかもケーケンした人にとっては、あんなキス…大したことないかもしれないけど…
う、うう…あたし、あたしはえーっとその、ま、まだ…い、いろいろ、初めてな訳で…
あ。あれ。何言ってんだろあたし…うーーー…い、今のはナシ…」
「…ま、待った」