キモ姉&キモウト小説を書こう!Part8at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part8 - 暇つぶし2ch495:名無しさん@ピンキー
08/02/01 17:12:42 jZ0aqn0P
三次の画像を萌え絵にするスレ10 より転載

535 ...φ(・ω・`c⌒っ sage 2008/02/01(金) 01:27:28 ID:GJJN9WHM
URLリンク(request.s12.dxbeat.com)
ワンパターンで申し訳ない。

496:名無しさん@ピンキー
08/02/01 17:27:51 cQgdKMLP
>>495
これが元ネタか?
URLリンク(bbs.windorz.net)

497:名無しさん@ピンキー
08/02/01 17:54:18 gDbKID6B
>>496
鬼……悪魔……!

498:名無しさん@ピンキー
08/02/01 18:02:00 tzfDQn26
なんという怪物

499:名無しさん@ピンキー
08/02/01 18:28:55 v3l7COpb
三次元怖い

500:名無しさん@ピンキー
08/02/01 19:17:11 Qi+4bwe9
>>496
うわーん(ノД`)

501:名無しさん@ピンキー
08/02/01 19:47:38 9ERqKp7K
>>496
どうあがいても、絶望

502:名無しさん@ピンキー
08/02/01 19:54:50 pmUyE0sB
>>496
これが二次元なら立派なキモ母なんだがなぁ……('A`)

503:名無しさん@ピンキー
08/02/01 19:56:25 ud1O/fj4
三次元ぐらいで動揺しすぎだバカモンどもが

504:名無しさん@ピンキー
08/02/01 19:59:47 9ERqKp7K
>>503
三次元うんぬんじゃなくて・・・・・

505:名無しさん@ピンキー
08/02/01 20:40:37 9WrSl0EW
三次元が駄目なんじゃない
容姿が大惨事だから嫌なんだ

506:名無しさん@ピンキー
08/02/01 20:53:20 QyNpSNxR
つか、これ下にいるの小学生くらいの子供じゃね?

507:名無しさん@ピンキー
08/02/01 21:19:06 Jvm70aSE
腹の肉がなあ……
この実写をよくあんな萌え絵にできたものだ

508:名無しさん@ピンキー
08/02/01 21:37:12 v6fHSYLe
おんなじ母親?でも上に乗ってるのが豚じゃなくて

竹内結子(28)
杉本彩(40)
永作博美(38)
松嶋菜々子(35)
山口智子(44)

クラスだったら歳いってても充分萌えられるんだが…
先ず三次には居ないorz

509:名無しさん@ピンキー
08/02/01 21:52:10 14kviuJg
画像ググってみたけど若い



URLリンク(imepita.jp)
URLリンク(imepita.jp)
URLリンク(imepita.jp)
URLリンク(imepita.jp)
URLリンク(imepita.jp)

てかすれ違いだな(´Д`)

510: ◆busttRe346
08/02/01 22:38:28 FXEDQWSn
杉本彩でちょっとおっきした変態が投下します。監禁トイレ五話です。

511:監禁トイレ⑤-1
08/02/01 22:39:10 FXEDQWSn
「「達哉くんは何歳なの?」」
高音のユニゾンが少年に問い掛ける。
「二人とおんなじ。八歳」
一つ屋根の下で暮らし始めて早一か月、達哉少年もようやく二人に懐き始めていた。
「「お誕生日は?」」
「八月十九日。二人より三か月遅いねぇ。僕、おとうとになるのかぁ…」
「私、ずっと弟が欲しかったの」
「私、ずっとお兄ちゃんが欲しかったのに」
「じゃあ僕、二人の間に入ろうかな」
少年は無邪気に笑い、そう言った。
双子は驚いて顔を見合わせた。達哉の時系列を無視した答えにではない。初めての意見の分裂に。



亀裂は、一度入ってしまった以上後は砕けるまで深く進行するのみだった。





512:監禁トイレ⑤-2
08/02/01 22:39:59 FXEDQWSn
――今何て言った!?

『お義父さんもお母さんも死んでますからね』

「嘘だろ…?」
「本当です」

いくら頭の中で反芻しても、実感の伴わない言葉。形を変える事なく、脳内を乱反射する言葉。
死んだ。
親父と花苗さんが。
死んだ。
何故?
決まっているだろう。
こいつだ。目の前でニタニタと笑っている、こいつだ。
「つぼみッ!!」
目の前の女に飛び掛かる。右手に強烈な反動が来る。手首の皮が少し削げたようだ。左手を伸ばしても、届かない。あの底意地の悪い笑い顔に拳を叩き込んでやりたいのに。
蕾が近付く。僕の伸ばした左手に悲しげに頬を擦り寄せる。
「義兄さん…。仕方なかったんですよ。だって二人とも邪魔するんですもの。絶対に駄目だ、って。
何度も何度も話し合いました。でも何一つ許してはくれなかった。それどころか私達は家族なんだからそんな感情を抱く事すら間違いだ、なんて言うんですよ?恋する事すら許されないなんて…それこそ間違ってるでしょう?
家族?そんなのあの人達が勝手に決めた事じゃないですか。勝手に結婚したのはあの人達じゃないですか。それなのに…。だからね、死んでもらいました」


513:監禁トイレ⑤-3
08/02/01 22:42:47 FXEDQWSn
「だから…?だからって何だよ!!それが殺して良い理由になる訳ないだろうッ!!」
「なります。少なくとも、私には」
力が抜けていく。いつかやりかねない、そんな事は分かっていた。花苗さんに容赦無しに暴力を振るう、二人の姿を見た時から。
どうしてこんな事になる…?
確かに問題はあった。長い時間をかけなければ氷解する事のない、たくさんの問題が。
でも時間をかければ解決出来た筈じゃなかったのか?
親父が僕を追いやったのは二人の娘を想って。
花苗さんが何をされても側にいようとしたのは二人を愛していたから。
けれどそれは全部、二人にとって障害以外の何者でもなかったのだ。
充満していた力が体から空中へ霧散していく。支える事すら出来なくなった足はくの字に曲がり、僕は膝をつく。涙は出ない。まだ真実と決まった訳じゃない。自分の目で見るまで絶対に信じるものか。

「義兄さん…悲しいですか?」
蕾が僕の頭を抱き締め、耳元で囁く。
「なら義兄さんと私で、家族を作りましょう。あの二人の愚行を理解している私達なら、こんな悲しい事は二度と起きません…。私が、起こさせません」


愚行。


愚行だって?心の底からお前達を心配してくれた人だぞ?それを…
不快感がミミズのように体内を這いまわり、全身を埋めていく。



514:監禁トイレ⑤-4
08/02/01 22:46:20 FXEDQWSn
「早く、帰してくれ」
「駄目です」
「放せ」
「嫌です」
「いい加減にしてくれ…!姉ちゃんにも聞こえてるんだろ!?もうこんな茶番は終わりだ!!僕は、どっちも選ばない!好きになんかならない!!」
「義兄さん…」
「今すぐこれを外せ!!扉を開けろ!!もう二度と…お前らには会わない!!」
「義兄さん…」
駄々をこねる子供をあやすように背中をさすられる。
「萌姉さんはね、今何を話しかけても答えません。何をしても起きません」

おい…まさか…死…

「これは二人で決めた事なんです。私と義兄さん、姉さんと義兄さん。互いに二人だけの時間を作って義兄さんにどちらかを選んでもらう。そういうルールなんです。
だから私と義兄さんの時間の間、姉さんはひたすら寝たフリをしなくちゃならない。逆に姉さんと義兄さんの時間の間は、私が寝たフリをするんです。」

ホッとした。また、殺した死んだの話になるのかと思ったから。

「じゃあアレは…今寝たフリしているのか?」
「さぁ…本当に寝ているかもしれませんね。何せ昨日から全く寝てませんでしたから、あの人」

本当に無駄な努力だ。不眠不休で計画したのが義弟の監禁か。

呆れると同時に冷静さを取り戻す。とにかく、なんとしてもここから逃げなければ。
蕾の手で後頭部を撫でられながら、考える。

515:監禁トイレ⑤-5
08/02/01 22:47:08 FXEDQWSn
そして、気付いた。
「うわっ!馬鹿…おま…!!」
腕で頭を抱き締められているという事は、僕の頭は彼女の胸の位置にあるわけで。
その…ふ、二つの膨らみが…。
慌てて後ろに下がる。
「何故逃げるんですか、義兄さん」
「そこに胸があるからだ」
「胸がお嫌いなんですか?何なら削ぎ落としますか…。義兄さんが貧乳好きとは思いませんでした」
恐ろしいことを言うな。
「そういう意味じゃない!喜んで義妹の胸に顔を埋める人間が何処にいる!!」
ちなみに大きいのは全く、全然、断じて、嫌いじゃない。
「今、私の目の前に」
「いや…だから…気付いたのが遅かったから…その…ごめん」
「謝っても許しません」
「…」
心の狭い義妹だ。監禁されて尚、こうやってお前と親しげに話す義兄を見習うべきだ。
「許してほしいなら…一つだけ言う事を聞いてください」
この際だから許してくれなくても良いのだが。だが蕾は萌姉ちゃんと違ってまだ話が分かる方だ。(というより姉ちゃんが極端に人の話を聞かないだけなのだが)ここで悪感情を持たせるのは得策ではあるまい。
「なんだよ…?」
蕾が俯く。
ポニーテールが微かに揺れる。
震えている?
俯く彼女の顔は見えない。
「その…ご飯を食べさせてください」




一気に脱力した。

516: ◆busttRe346
08/02/01 22:49:09 FXEDQWSn
投下終了です。投下ペース早すぎな気がしてきた・・・

517:名無しさん@ピンキー
08/02/01 22:57:58 wwg69kxK
リアルタイムGJ!
トイレでの監禁のしやすさは異常ですね

518:名無しさん@ピンキー
08/02/02 03:26:09 J7ydIpMu
ここまで監禁に固執したSSも珍しい!
GJ!あ…でも無理はせずにね

519:名無しさん@ピンキー
08/02/02 10:27:23 d3YmBMXF
>>516
もう一人の姉も期待しているんだぜ

…しかし、寒い朝はキモウトの布団に潜り込みたいものです

520:名無しさん@ピンキー
08/02/02 12:38:10 3c7xyoyU
>>519
おや、キモウトのほうが潜り込んでくるんじゃ?

521:名無しさん@ピンキー
08/02/02 12:42:37 zlmhqBhv
いつの間にかキモアネ&キモウトにサンドイッチされるように手錠でつながってるんだな

522:名無しさん@ピンキー
08/02/02 12:55:25 3c7xyoyU
よく考えたら、兄の方から潜り込んでくるようなら、妹的にはキモくなるまでもなく大願成就で
お話が始まらないじゃないか

523:名無しさん@ピンキー
08/02/02 13:03:40 vUIrUnhV
いやいや、キモウトが精神的に追い込んだからこそ正常な思考が持てずに潜り込んでしまったんじゃないか?
現実逃避のメタパニみたいに

524:名無しさん@ピンキー
08/02/02 13:09:12 3c7xyoyU
なるほど。おhなしは始まらないのではなく、既に終わった後だったのか。

525:名無しさん@ピンキー
08/02/02 13:39:22 xFWFsSSH
ただ>>519の場合は

「お姉ちゃんがいるのに……!!!」
とキモ姉にお仕置きされそう。


ところで今歴ゲー中なんだが、「姉川」って地名が気になって…

姉の川ってどんな川?
妹川はあるのか?

由来は?……(以下下品なので自粛)

妄想がノンストップエクスプレス…

526:名無しさん@ピンキー
08/02/02 14:27:34 wckFdTpi
>>525
URLリンク(www.pref.shiga.jp)

527:名無しさん@ピンキー
08/02/02 16:21:27 orhNPQFu
なんか普通にいい話でこのスレにはふさわしくないぞ!!w

528:名無しさん@ピンキー
08/02/02 16:46:28 dg07e3UA
竜になって兄や弟を連れ去っていけばこのスレっぽいのにw

529:名無しさん@ピンキー
08/02/02 20:42:46 0+bwhVvb
神スレだなw
感謝感謝

530:姉ちゃんラーメン
08/02/02 23:37:33 mLQ/V+Xz
最近俺の姉ちゃんはちょっと変だ。
姉ちゃんは普段から大人しいというかクールだし、あまり笑ったり怒ったりしないうえに口数も少ない。
なのに飯を食べるときにもの凄い笑顔で見つめてくる。特に俺の好物であるラーメンを食べてるときなんか異質な笑顔だ…。
普段は無表情なのに食事の時だけ笑顔になるのだからこっちは落ち着かない気分になる。
姉ちゃんのラーメンはうまい、そこら辺の店で食べられるラーメンなんかとは比べものにならないくらいにうまい。
なぜこんなにうまく作れるのかと聞いてみるとスープ作りにコツがあるそうだ。
姉ちゃんは料理に拘っていて何を作るにも時間と労力を使って作る。
だからラーメンを作るときとか麺は市販のを使っているが、スープは自分のオリジナルで何時間もかけて仕込みをしている。
それにスープを作ってるとき姉ちゃんはブツブツ何かを言っているみたいだ…蜜とか液とか。
そして今もまさに食事中だかやっぱり姉ちゃんは笑顔だ…っていうか軽く顔が赤くなって涎を垂らしている。変だよな?
誰かなんで姉ちゃんがこんな笑顔なのか解る人がいたら教えてくれないか。

531:名無しさん@ピンキー
08/02/03 00:53:29 4Rd9lQLc
自分が手間をかけた料理を美味しそうに食べてもらえるから嬉しいんだよ、きっと
顔が赤いのも照れで、涎もきっとあまりにも美味しそうに食べるからじゃないか
別に全然変じゃない、全国のお姉ちゃんは大体そんな感じだよ
 
 
GJ!

532:名無しさん@ピンキー
08/02/03 00:55:28 IeQcuJ+v
>>530
こう言えば、幸せになれる。



「あれ?○○(女子の名前)が食べさせてくれた玉子焼きと、後味が似てる」

533:名無しさん@ピンキー
08/02/03 09:12:06 w6ZHl1Rp
 

534:名無しさん@ピンキー
08/02/03 13:06:13 CC0OsJMq
上の空白のスレは、そういう意味でいいんだよな

535:名無しさん@ピンキー
08/02/03 13:19:58 jko7Zzq+
いやむしろ…
愛する兄にそんな物を食べさせた姉に、
対するキモウトの殺意かな

536:名無しさん@ピンキー
08/02/03 14:57:43 cBvxj0P4
翌日○○さんの座席は空白という暗示ですか

537:名無しさん@ピンキー
08/02/03 15:17:54 inzSNqA5
>>532
危険注意。

538:名無しさん@ピンキー
08/02/03 15:38:39 u6fa0nxP
>>532
おかしな話だ。姉の好感度を下げるセリフなのに、いつの間にか姉エンド直行とは…

539: ◆a.WIk69zxM
08/02/03 16:26:38 uShrGvCb
 
投下します。
非エロ。短編。7レス予定。


540:(1/7)
08/02/03 16:27:22 uShrGvCb
 
 
(九時半か……)
 俺は腕時計に目をやり、時間を確認する。
 場所は、実家近くの公園。小学生のころ、友達や妹と散々遊びまわった懐かしい場所だ。
 露出している顔や首の肌を刺す冬の朝の冷たい空気のなか。
 俺は妹と待ち合わせをしていた。
 発端は昨日の夜にさかのぼる。三日前から実家に帰省していた俺は、その夜、あろうことか妹に人生最大級の失態を演じてしまった。
 エッチなゲーム―いわゆる、エロゲ―をプレイしながらにやつくという、自分でも客観的に見たら死にたくなるような醜態を。
 社会に出てひとり暮らしを初めてから、二年。誰の目も気にせずひとりで好き放題やれる生活に慣れ、
また、久しぶりの実家ということで、大分気が緩んでいたのだろう。
 そうでも思わないと、あんな失敗をやらかすなんて、ありえない。自分があそこまで間が抜けてるなんて。迂闊だなんて。
 いや、そう思ったところでなにが解決するわけじゃないが。
 股間を露出していなかったことが不幸中の幸いだなんて、なんの慰めにもならない。
ノートパソコンのディスプレイいっぱいに映る裸の女の娘のアニメ絵と、それを見ながら気持ち悪い笑みを浮かべている己の姿を
ばっちり目撃されてしまったのだから。言い訳なんてしようもない。
 その光景を目の当たりにした妹は、一瞬固まり、それから憎い親の敵にでも向けるような視線で睨みつけ。
 無言で踵を返し、自分の部屋へと閉じこもったみたいであった。
 その後、母に「夕食よ」と呼びかけられ、おそるおそる食卓に顔を出したときには、妹はいなかった。
 あの娘は気分が悪いみたいで、きょうは夕飯いらないって。その母の言葉に、おれは、「そう」としか返事できなかった。
 そりゃ、気分が悪くなるだろう。あんなモノを目撃したのだから。妹にとっては、耐えがたい現実を突きつけられたのだから。
俺と顔をあわせるのも嫌なはずだ。
 だが、その母の台詞を聞いたとき、わずかにほっとした自分を呪いたくなった。
 ―まだ、両親に知られていない。
 妹に不快なんて言葉じゃ足りないくらいの嫌な気持ちを与えておきながら、
己の身がまだ首の皮一枚で繋がっていることに安堵している自分を。
 それから、いままで妹とは、ひと言も交わしていないどころか、会ってもいない。夜中にメールが一通きただけだ。
『明日、十時にあの公園で』

「はぁ……」
 鬱屈した気分がすこしでも一緒に逃げていけばいいという思いを込めて溜息を吐く。気が重い。
 公園に設置されたベンチに腰をかけていると、休日だからだろうか、呑気にタバコを吹かしながら犬の散歩をしているおっさんが
前を通る。
 その平和そうな顔を見ると、筋違いとは判っていても恨めしくなる。
 幸せそうな顔をしやがって。
 俺は、妹から、親から、社会から、変態の謗りを受けるかもしれないというのに。
 今朝の親の態度から、妹はまだ誰にも、少なくとも家族には昨日のことを話していないみたいだった。
 しかしそれも時間の問題であろう。
 俺の親は、そういうことには厳格なほうだ。だからこそ、その娘である妹がいまどきの女の娘にしてはありえないほど純情に
育ってしまったのだろう。
 言うなれば、俺の昨日の行為は、コウノトリを信じている女の娘に下卑た肉の接合であるポルノ写真を突きつけたようなものだ。
 と、まあ、そこまでいうのはオーバかもしれないが、俺がいままで見てきた限り、そして話に聞く限り、
妹はえらく古風な人間のようだった。
 いままで、付き合った男は何人かいるようであったが、どうもそういう性的な面に関しては。
 以前―まだ俺が実家にいた頃―妹の彼氏に相談されたことがある。
 曰く、付き合っているのにキスすら許してくれない。手を繋ぐぐらいがやっとだ、と。
 その彼氏は、軽く冗談めかして言っていたが、内心気にしていただろう。
 そいつは非常にイイヤツで、俺としても是非妹とうまくいって欲しかったから、
我が家の家風を必死で理解してもらおうと説得した。
 でも、長続きしなかったようだ。いつもそうみたいだった。誰と付き合おうとも。
 それもそうであろう。時代の風潮からして妹みたいな女の娘の方が珍しいのだ。
 キスすら許さないとなれば、付き合っている方としては本当に自分のことを好きなのか疑わしくなるだろう。

541:(2/7)
08/02/03 16:29:53 uShrGvCb
 
 だが、あの家では異質なのは俺のほうだった。
 いや、この歳まで誰とも付き合ったことすらなく、キスの経験すらない俺は、一般社会的にも異端だろう。
 妹のそれとは違う。妹は自ら機会を捨てているが、俺にはそのチャンスすらなかった。
 そんな俺がひとり暮らしを始めてから二次元の非現実へと走るのは、ある種予定調和だったのかもしれない。

 昨日の妹の、相手を射抜くような眼差しが浮かぶ。
「はは……」
 無意識に自嘲の声が洩れる。
「勘当、かな」
 客観的に見たら、それぐらいで大げさな、と思うかもしれない。でも、家の事情だったらあり得ることなのである。
あの親に知れたら。
 特に親父だ。
 男女交際はしても構わないが、結婚するまで性的な交渉は一切罷りならん、というようなことを平気で口に出すような人間だ。
 その息子が、二次元のアニメ絵で興奮して、自分を慰めてると知ったら、それこそ卒倒もんだろう。

 九時四十五分。
 ふと予感がして、面を上げる。
 来た。妹だ。
 その表情はまだ窺い知れる距離ではなかったが、笑っていないことだけは阿呆な俺でも判る。
 妹はとっくにこちらに気づいていたのであろう。被告に裁きを言い渡す裁判官のような足取りでゆっくりとその歩みを進めながら、
こちらへ向かってくる。
 なんて言うだろうか。
 もう二度と帰ってこないで。あなたみたいな変態と同じ空気を吸っているだけで我慢できない。
 そう罵るだろうか。
 それとも。
 あなたみたいな人間の妹でいることが堪えられない。いますぐ死んで。
 妹の性格上そんなことは言わないと判っていても、最悪の状況ばかりを想像する。
 妹とのいままでの思い出が浮かぶ。
 俺が家を出るまでは、近所でも比較的仲の良い兄妹として通っていた。俺はそう思っている。
 就職し家を出てからも、俺がたまに帰郷すると、決して嫌な顔はされなかった。
はっきりとそれを口にするのを聞いたわけではないが。
 料理するようになったんですよって、手料理を振舞ってくれることもあった。
 それは、多分彼氏のために勉強し身に付けたんだろうとは思ったが、それでも嬉しかった。
 そんな過去も、妹にとって、いまはもう忌まわしい消したい記憶でしかないのだろう。
 たとえ、変態の烙印を押されても、いままでの思い出すら否定されるのは辛い。
 でも、自業自得なんだ。
 
 妹が、静かに俺の前に立ちどまる。
 どちらもなにも言葉を発さず、刹那の沈黙が流れる。
「あ、あの、だな……」
 なにを喋るべきかすら思いつかないまま、口を開きかけた俺を制するかのように、妹が無言のまま、
公園脇に広がる林のほうを指さす。
 そちらに行けということか。
 そうだな。いくら変態とはいっても、まだ自分の兄だからな。遊び目的の子供たちや、
散歩などで通りがかる人のいるこの場所では、身内の恥をその人たちに晒すようなもんだろう。
 最悪の想定が実現しつつあることを感じながら、ベンチから腰を上げ、黙って指をさした方向に歩き出す妹の後を追う。
 しばらく林の中を歩み進めて、僅かに開けた場所で妹の足が止まる。
 空は快晴だったが、ここは木々の間から木漏れ日が差し込む程度で、若干薄暗い。
 断罪の場としては相応しいと思った。
 こちらに振り返る妹。それに合わせて彼女の綺麗に切り揃えられた髪が流れる。


542:(3/7)
08/02/03 16:33:15 uShrGvCb
 
 裁きの始まり、か。
「…………」
 妹は口を開くことなく、こちらをじっと見つめていた。なにか申し開きがあれば一応聞いてやるということだろうか。
「あの……だな」
 俺は、未だ言うべきことが見つけられず、先ほどと同じ台詞を吐いた。
「その、だ。おまえの言いたいことは、おおよそ……判ってる、つもりだ」
 頭の中で纏まらないまま、たどたどしく言葉を紡ぐ。
「俺としては、言い訳することも見つからないし……、
 いや、言い訳なんてすべきじゃないし。おまえがあのとき思ったままの人間なんだ。
 ……あ、いや、別に開き直ってるわけじゃなくて、おまえにはほんとに申し訳ないと
 思っているし、その、なんだ、なんていうか、ただ、ここで謝ったり言い訳したりしても、
 その事実が消えるわけじゃないし……」
 自分でもなにを言っているんだろうって思う。
 開き直ってないと言いつつ、これは、開き直りそのものじゃないのか。
「えーっと、だな。その、俺が言いたいのは、おまえの判断がどんなものであれ、
 それに従うつもりだということだから」
 そうだ。いまの俺にできる唯一の償いはそれしかないだろう。それは償いとはいえないかもしれないが、
それしか思い浮かばなかった。
「はぁーっ」
 そんな俺の言葉を聞いていた妹が、大きく溜息を吐いた。
 呆れたのだろう。それとも、こんなのが自分の兄であることを恥じているのだろうか。
「ねぇ、兄さん。私の言いたいことが判ってるっておっしゃってましたが、
 それがなんだと思っているのですか?」
 妹の口調は、極めて平静を保っていた。そして、それが妹が怒ったときのものであることを俺は知っていた。
 しかし、妹よ、それを俺の口から言わせるか。
 いや、答えねばなるまい。自らが招いた罰なのだから。
「その、だから……、あの時おまえがどう思ったか、ってことだ。
 夕食のときも来なかっただろう。つまり、俺の顔も見たくないってことじゃないのか? 
 ……あ、勘違いしないで欲しいが、それは……、おまえが俺のことを変態だと思うのは、
 当然のことだと思ってる。だから、おまえが家に二度と帰ってくるなって言うなら、
 二度と実家に顔をだすつもりはないし、兄妹の縁を切れっていうなら、
 その、法律的にはなかなか難しいと思うが、できるだけその希望に添うつもりだ」
「お父さんには、なんておっしゃるつもりですか? 
 いきなり息子が帰ってこなくなったら不審に思われるでしょう」
「それも……覚悟してる、つもりだ。おまえが、……いや、それは卑怯だな。
 そうなった場合には、俺から、ちゃんと両親に話す……ことにするよ」
 親父は言うまでもなく、お袋も親父よりは理解があるが、こんなことを知れば相当衝撃を受けるだろう。
 お袋は泣くだろうか。息子がこんな変態に育ったなんて知ったら。親父は怒り狂うだろうな。それはもう烈火のごとく。
そして二度とあの家の敷居は跨がせないであろう。
 俺がそんな考えを巡らせていると、妹が俯いて肩を震わせる。
 泣いているのか、と思って一歩踏み出したとき。面を上げた妹の表情は―。
 ―笑っていた。
「ふふふ、あはははは!」
 遂には声をあげて笑い出す。あまりのショックに気でも触れてしまったんだろうか。
 そうでも思わずにはいられないほど、眼前の妹は異常だった。
「ふふ、……あ、失礼しました、兄さん。
 ただ、両親があまりに不憫に思えてしまって」
 言っていることはこの上なく正常だ。それは俺を責めるには充分に効果的な言葉。
ただあまりの出来事に少し情緒が不安定になっているのだろうか。それがいっそう俺を苛ませる。


543:(4/7)
08/02/03 16:37:05 uShrGvCb
 
「……判ってる。それはすべて俺の所為だ。
 そして、おまえを不憫な目にあわせているのも」
 俺としては頭を下げるしかない。それが誰にもなんの救いにならないことが判っていても。
 そんな俺を無視するように妹は続ける。
「そう、あまりに不憫じゃないですか。だって―」
 そこで一度を言葉を切る妹。俺の目を見つめながら。
「―手塩にかけて大事に育てた自分の子供が二人とも変態だったなんて。ねぇ」
「わかっ……えっ?」
 なに? いま妹はなんて言った? 『二人』、とも?
「なにを……」
 言っているんだ、という台詞は続かなかった。混乱している。いまの妹の言葉の意味が理解できない。
 聞き間違いか? そうだ、そうに違いない。
 妹は精神的に動揺してるんだ。あ、いや、動揺してるのは俺か?
「え、あれ……」
 なにも言葉を発せられない。喉の奥がひりひりする。
 聞き間違いだ、必死で自分にそう言い聞かせる。
 そんな俺の内心などまったくどうでもいいかのように、妹がさらに口を開く。
「そういえば、兄さんはさっき、私の言いたいことが判るとおっしゃってましたね。
 でも、おそらく、いえ、絶対。兄さんはいまの私の気分を判っていませんよ」
 先ほどの吹っ切れたような笑いを端緒とするかのごとく、妹の顔にはいまも薄く笑みが浮かんでいる。
まるで愉快なことでも話すかのように。
「そうですね。私のいまの気持ちを例えるなら。
 いままでどうしても欲しくて欲しくて仕様がなかった、
 でも絶対に自分の手には届かないものを、自分の一番嫌いな人間に奪われたけれど、
 その人が、私の手の届くところに届けてくれたような複雑な気分です」
 なにを……? 
 妹の言っていることは繋がってない。会話の前後がおかしい。意味をなしてないじゃないか。
 俺は無意識だったのだろう、気づかないうちに後ずさっていた。
 そんな俺を逃がすまいとするかのように、妹がゆっくりと近づいてくる。
「だいぶ困惑しているようですね。兄さん。無理もないです。
 私がいままでひた隠しに隠してきたんですから。私から見れば兄さんなんて、
 余程迂闊か、隠す意志がないとしか思えませんよ」
 いつのまにか背中に林立する冷たい雑木のひとつを背負い、それ以上後退できない俺を追い詰めるかのごとく、
妹は俺の前に立ちふさがると、首にその細い腕をしなやかに回し。
 そして、接吻をした。
「!」
 思わず目を見開いた。瞳を閉じた妹の顔が視界を覆う。焦点を結ばないほど間近にある。
 それに遅れて妹の匂いが、俺の鼻をくすぐる。
 この場だけ時が止まってしまったかのように俺は動けなかった。息をすることも忘れていたかもしれない。
 どれほどの時間が流れたのか。それは一瞬だったのかもしれないし、十分も経っていたのかもしれない。
時間の感覚が失われている。
 妹はゆっくりと顔を離すと、身長差から俺を見上げる。上目遣いで。
 背伸びをしてたのか。そんなどうでもいいことが気についた。
「う……あ……」
 俺はなにかを喋ろうとしたが、未だに言葉が出てこない。動揺はさっきよりひどい。思考が纏まらない。
 夢。これは夢なのか。そう思うとともに、現実感が急速に失われていく。
 俺は夢を見てるのか。
 二次元の妄想ばかりに逃げ込んでいたから、こんな夢をみるのか。
 そんな俺の考えを否定し、現実に引き戻すかのように、妹の手が俺の頬を撫でる。
 冷たい。


544:(5/7)
08/02/03 16:40:08 uShrGvCb
 
「まだ、判りませんか? 兄さん。
 なぜ私が付き合ってる人と口付けすら交わさなかったのか。
 兄さんは、私が古風な考えを持っていると思っていらしたようですけど、
 もっと単純なんですよ。好きでもない人とは、
 手が触れるくらいは我慢できても、キスなんてできないだけです」
 ここは、なんだ?
 いまなんで俺はここにいる?
 どうしで、妹はこんなことを俺に話しているんだ?
 頬に添えられた妹の手、その親指が俺の唇に触れる。
「私が、いままでどれほどの葛藤を抱えていたか想像つきますか? 
 兄さん。あなたの何気ない仕種に私がどんな想いを抱いていたか。
 好きでもない人間と付き合うことで、必死で誤魔化してきたんですよ。
 でも、それも影から応援するような兄さんの態度が、私に苦痛を与えるだけでした。
 結局、誤魔化せたのは兄さんも含めて周りの人間だけです。
 私の感情は自分を騙すどころか、肥大していくばかりでした。
 それでも、その感情を周囲に悟られないためだけに続けていたんです」
 妹はなにか箍が外れたかのように。
「兄さんが、私なんか比べものにならないような方と付き合えば、
 諦められるかとも思いました。でも、実際に私がとった行動は、
 それに反するようなものです。常に何事も完璧にこなせるように努力して、
 兄さんに近づいてくる方にプレッシャーをかけるようなこともありました。
 あ、もちろん兄さんはそんなこと気づいてなかったでしょうけど。
 私の中では常に禁忌と倫理の葛藤でしたよ」
 そこまで一気に喋り、俺の頬から手を離し、そのままその手で自分の髪を梳いた。
 ここまできてやっと、俺の思考が追いついてきた。
 いや、まだ困惑はしているが。
 妹の紡ぐ告白が、言語として、日本語として、漸く意味のあるものとして俺の耳朶に入ってきた。
「おまえは……、自分でなにを言っているのかが判っているのか?」
「ええ、理解しています」
「なんで、いまになって、こんなこと……」
 俺には妹の吐く言葉の意味は認識できても、その感情も行動も理解不能だった。
「昨日の出来事以外に、なにか原因があると思っていらっしゃるんですか?」
 妹はさもそれが当然のこととばかりに応える。
「だったら、なんでっ!? もし、おまえがいま言ったような感情を抱いていたとしても、
 幻滅しただろうっ!? あんなことしてる奴が世間一般でどんな目で見られているか、
 いくらおまえでも判るだろうっ! 後ろ指をさされるような、
 軽蔑されるような人間なんだよっ、俺はっ! なんでそんなことをわざわざ言うんだ? 
 おまえの中で勘違いで済ませればいいじゃないかっ! 
 おまえは俺じゃない、ありもしない偶像に憧れていただけなんだってっ!」
「ありもしない偶像じゃありません。
 いま、こうして現実に私の目の前に立っていらっしゃるんですから」
「だからっ……」
 さらに反論しようとした俺に対し、妹がその人差し指を俺の口に当てて止めた。
まるで母親が、子供に静かにしましょうね、とでも合図するかのように。
「兄さんは本当の意味であの両親の息子ですね。その愚鈍なまでの純粋さ。
 私はそれが欲しくて欲しくて、手に入れたくて堪りませんでしたよ」
 俺は、妹の指を振り払う。
「あんなっ、あんな行為をする人間のどこが純粋だっ!」
 口調だけからみると、妹と俺の立場は最初と逆転したように、責める立場と責められるそれが入れ替わったかのように見えたが、
実際は最初の状況となにも変わっちゃいない。


545:(6/7)
08/02/03 16:41:58 uShrGvCb
 
「あら。自分を慰める行為ぐらい、
 する人間はいくらでもいるじゃありませんか?」
「それでも……、それでも、あんなものを使ってしたりはしない」
「性的嗜好なんて人それぞれだと思いますが。
 世の中には苦痛や不快感を快感とする人間もいるでしょう」
「そっ、それは詭弁だろう。そんなことで自分を正当化はできないはずだ」
「どうして正当化する必要があるんです? 
 殺人淫楽症や強姦魔の人間ならば社会の害悪であるということもありますが、
 兄さん程度の趣味で社会に害悪を成すならば、
 性欲そのものを否定しなければなりませんよ」
「なっ……」
 妹の言っていることはどこかおかしい。しかし、反論できなかった。
 いや、そもそもなんで俺は反駁しているんだ? 
 さっきから俺は自分が変態であることを必死で主張してるのか?
 大体、この茶番はなんなんだ。
 俺の前にいるのは、本当に俺と一緒に育ってきたあの妹か?
「その程度のことをそれほど真剣に気にしているから、
 兄さんは純粋だと言っているのです。
 まあ、兄さんが世間的にどう思われようとも私は一向に構わないのですが。
 そもそも、漫画のような絵に性的興奮を覚える程度で後ろ指をさされるのでしたら、
 その対象が兄であるような人間は、社会的にはこの上ない変態ですね」
 妹は愉悦にでも浸るかのように声のトーンを上げる。
「おまえは……、本当に俺の妹なのか? おまえは、一体なにがしたいんだ?」
「ふふ、そのひとつ目の質問。それが私と兄さんとの違いです。
 兄さんはそのままで私の望む姿でしたが、
 兄さんが接していたのは『兄さんが望むであろう妹』を演じていた私です。
 だから、いまの私と、兄さんが知っている私とに齟齬が出るのです。
 それと、ふたつ目のことですが、先ほど言ったとおりです。私は兄さんが欲しいのです」
「なんで……? 俺はおまえが判らないっ!」
「ええ、これは私自身ですら制御できるような感情ではありませんから。
 おそらく私が兄さんの趣味を許容しようとするよりも、
 私の感情を理解していただくことのほうが余程困難でしょう」


546:(7/7)
08/02/03 16:43:36 uShrGvCb
 
 ああ、それと、と妹が付け加える。
「先ほどは兄さんの趣味を擁護するような発言をしましたが、
 決して快くは思っていませんから。
 兄さんの心を奪うものはなんであれ……、そうですね、
 単純な言葉で述べるなら嫉妬というものでしょうか。
 特にあんなモノに兄さんが心を奪われていると知ったとき、
 私の中で限界まで張り詰めていたなにかが切れたような気がします。
 それで、決心したんです。なにがなんでも、どんな手段を用いてでも、
 兄さんを私のものにしてみせる、と」
「こんな―、こんなことを両親が知ったらどう思うのか、
 おまえは考えたことがあるのか?」
 思わず口をついて出た後に、こんな台詞は俺が言えた義理ではないことに気づいた。
 あんな趣向を持てば、両親がどれほどショックを受けるか理解しつつもやめなかった俺。
 もう、とっくに歯車は狂い始めていたのだ。俺も妹も。
「ええ、これ以上ないというくらい考えましたよ。
 兄妹揃って、異常な人間であることをあの両親が知ったときの苦痛や悲嘆を。
 さらに親思いの兄さんが、それをなにがなんでも避けようとするであろうことも。
 いま兄さんが言った台詞は、そのまま私が兄さんに言いたい台詞です。
 私の想いを達成するために」
 それは、つまり。
 その台詞は俺を責めるためじゃない。強迫のための台詞だということだ。
 その材料は、俺のこと、だけじゃなく、妹自身も含めて『兄妹ふたり』のこと。
 その妹の言葉を聞いてはじめて、俺は妹の決意がどれほどのものかを実感した。
『なにがなんでも、どんな手段を用いても、兄さんを私のものにしてみせる』




 その日、歯車は完全に狂った。





 


547: ◆a.WIk69zxM
08/02/03 16:46:19 uShrGvCb
 
投下終了。気分転換に昔つらつら綴った妄想を焼きなおし。


一点謝罪を。前回の投下(>356-357)にて、大失態。
葉月透夏 ⇒ 葉槻透夏
です。あまりにも数が多く申し訳ない。
あと、読みは『はづき』です(葉槻東のふりがなミス)
命名の経緯も相まって、チェックで見落としてました。
以後、注意します。


548:名無しさん@ピンキー
08/02/03 16:51:02 PbGzRab2
GJ

549:名無しさん@ピンキー
08/02/03 16:56:05 17RdeMjB
グッジョブ
非常に良い

550:名無しさん@ピンキー
08/02/03 17:23:36 8GCLqMQ0
GJ!賢いキモウトに問い詰められたい

551:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:42:08 eleE809X
GJ!
短編と言わず、長編が読みたいです。


投下します。

遥視点の過去編。
少女の性的な描写が駄目な片はスルーを。

552:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:43:29 eleE809X
 その日、珍しく遥は早くに目を覚ました。
 悪夢、を見たからだ。

 「嫌な夢…見ちゃったなー」
 あまり良くない目覚めの中、遥が呟く。

 その夢は、2年前の記憶、兄が自分の物ではなくなっていく悪夢。

 「もう…あんな思い…したくない!」
 怒りや悔しさ、恐れを吐き出すように、呟いた。


 小さい頃の遥にとって、他人は自分を追い詰めるだけの存在だった。
 妹の智佳にばかり構い、自分を見ようとしない両親。
 自分を攻撃し、虐めてくるだけの男の子達。
 そんな自分を疎外するだけで、助けようともしない他の子達。

 幼少の頃の遥は、今とは違い、陰気で表情に乏しく可愛いげのない暗い子供だった。
 そんな遥を、ただ一人だけ”愛して”くれたのが、兄である康彦だった。

 いじめっ子がいれば追い返し、遥が泣けば側にいて慰め、遥が喜べば一緒に喜んでくれた。

 そんな兄のおかげか、遥は少しづつ笑顔が増え、明るく活発な少女へと成長していった。


 「お兄ちゃん…」
 懐かしい呼び名で兄の事を呼んでみる。

 兄は自分を愛してくれている。
 それは家族愛としての愛情ではあるが、遥はそれで十分に満足していた…つもりだった。

 遥は気付いてしまった。
 兄がその愛情を向ける相手が自分だけではない事を。
 両親に対しても向けられていた。
 そして、妹の智佳にも、それは注がれていたのだ。

 遥がそれに気付いた時、胸が締め付けられるような苦しさを感じざるおえなかった。


553:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:46:14 eleE809X
 ある晩に遥は、自分の兄に対する想いが何なのかを、思い知らされる事になる。

 その日も両親の帰りは遅く、深夜になっても帰宅する気配はなかった。
 最近では珍しい事ではなく、家事全般は兄が担当していたし、兄さえいれば良いと考える遥にとって、何の問題もない。

 だが、その日に限って遥は不思議と寝付けなかった。
 その為か、遥の足は自然と兄の部屋へと向かっていた。
 何をしに行ったのか、遥自身も良く覚えていないし、当時の遥に聞いたところで答えは出ないだろう。
 漠然とした不安を取り除く為に、お喋りがしたかったし、兄のベットで添い寝して貰いたかったかもしれない。

 「お兄ちゃん、起きてる?」
 小声でそう言ってから兄の部屋のドアを開けると、遥にとって辛い光景がそこにはあった。

 兄の手を握り締めながら兄のベットで眠る智佳、そんな智佳を優しい瞳で見守りながら、智佳の頭を撫でる兄。

 それは、両親の不在に恐怖と不安を覚えた幼い妹と、その妹を慰めて寝かし付ける兄。
 ただそれだけの光景。
 それが遥には今までにない恐怖と不安を感じさせた。

 「どうした、ハル?」
 自分の存在に気付いた兄が、小声で聞いてくる。
 「ハルも眠れないのか?」
 あくまで小声で、少し茶化すように兄が言う。

 「なに…それ?」
 兄の質問には答えす、遥は智佳の方を指差す。
 「ちぃちゃんか?」
 明るい顔で、智佳を起こさないように抑えた声で兄が言う。
 「眠れなかったみたいでな、やっぱりまだ、ちっちゃいちぃちゃんが一人で寝るのは無理かな?」
 智佳の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと言った。
 それは遥にとって更に辛い光景だった。
 何故か、そこにいたくなかった。

 「おにいちゃん…」
 兄の行動に応えるような智佳の寝言を聞いた時、それが遥の我慢の限界だった。

 「どうした、ハル?」
 心配そうに問い掛ける兄に答える事も出来ずに、遥は自分の部屋に駆け戻ってしまった。


554:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:48:39 eleE809X
 部屋に戻った遥は、自分の感情を持て余していた。
 兄は智佳を、妹として可愛いがっていただけ。
 自分と同じように、妹として愛しているだけ。

 兄からしてみれば、自分も智佳も同じ妹。
 その当たり前の事実が、遥に重苦しい何かを与えてきた。

 「お兄ちゃんお兄ちゃん」
 今、ここにはいない兄を呼んでみる。
 撫でられているのが自分だったら、自分が一緒に寝れたなら、優しく手を握ってくれたら…。
 そんな想像をしているうちに、遥は自分の下半身、特に股間の部分が熱くなっているの感じた。

 遥がそれほどに性に関する知識を持っていた訳ではない。
 10歳の少女が当たり前に持っている程度のものだ。

 それでも遥は、自分の股間、膣やクリトリスを触り始めていた。
 熱さを収める為の行為だった。
 だが、それは想像していなかった快感を遥に与えた。

 この手がお兄ちゃんのだったら、
 そう考えながら、まだ発毛もしていない、その部分を激しく刺激する。
 「お…にいちゃ…ん…」
 苦しげに言ったその一言は、更に遥の快感を増大させた。
 「おにい…ちゃん…おに…いちゃん…」
 そう口にする度、自分を触ってくれる手が、兄の手のように思えてくる。
 気付けば、片方の手が、膨らみ始めたばかりの小さな胸を刺激していた。
 「おにいちゃん…そこも…もっとぉ」
 自分の言葉に従うかのように、遥の手の動きは更に激しさを増す。
 「おにいちゃん…遥も遥も…だいすきだよ!」
 その言葉を最後に、遥は少しだけ、意識を失わせた。
 始めての自慰、それで遥は絶頂したのだ。

 意識を取り戻した後、遥は自分の本音に気付いた。
 自分が兄の事を”男”として愛しているのだと。
 智佳に対するような”妹”としてではなく、兄にも自分の事を”女”として愛して欲しいのだ、という事に。

 兄妹での恋愛、それがタブーである事は、幼い遥にも薄々と分かっている。
 だから、その想いを胸の奥に秘めた。


 その秘めた想いが、ゆっくりと確実に大きく、歪んだ形へと成長していく事を知らずに。


555:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:51:59 eleE809X
 「兄貴…」
 今の呼び名で、遥が兄を呼ぶ。

 お兄ちゃんから兄貴へ、遥が呼び名を変えたのは、ある一人の女がきっかけだった。
 今日の悪夢を見せた原因にもなった女、横山楓の存在がきっかけとなったのだ。


 遥が中学2年、兄が高校3年の時に、遥はその女と出会った。

 その頃の兄は、何事も完璧にこなそうと無理し過ぎていた、少なくても遥の目にはそう写った。
 両親がほとんど家にいないせいか、兄は責任を背負い過ぎている、
 遥も、そんな兄の負担を減らそうと、せめて家事だけでも手伝おうとしたが、どうしても上手くいかず、その都度、兄に”ハルにはハルにしかない長所があるから”と、慰められていた。

 そんな兄だったが、ある日を境に、無理している雰囲気が無くなり始めていた。
 手を抜き始めた訳ではない
 良い意味で自然体になってきたのだ。
 当初は遥も、兄の変化を喜ばしく思っていたが、その変化の理由を知った時、遥はどん底に突き落とされるような感覚を味わった。

 「これがヤスの妹?可愛いじゃねぇか!」
 遥が始めて、その女、楓に会った時の、相手が言った言葉。
 「アタシの事をお姉ちゃんって呼んでいいぞ!」
 嬉しそうに言葉を続ける楓。
 その言葉に遥は顔をしかめた。
 自分にはお兄ちゃんが居てくれれば良い、
 そう思いながら、相手から距離をとる。
 「かぁー!恥ずかしがっちゃって、可愛いねえ」
 そう言いながら、楓が距離を詰める。
 その時、兄の強烈な一撃が、楓の後頭部に炸裂した。
 「何やってんだ、お前は!」
 行き過ぎた楓の行動を咎めるよう、兄が言う。
 「何すんだよ!アタシは妹ちゃんと仲良くなろうと思って…」
 「ハルがびびってんだろうが!」
 自分を助けるような兄の一言。
 遥はそれだけで嬉しくなる。
 が、それはすぐに覆される。
 「ヤスの妹なら、アタシにとっても妹になるよなあ?」
 楓が、兄に歩を詰めながら、そう言う。
 「ど…どういう…」
 「あの日、アタシを激しく抱いといて、ナンか言う?」
 楓の言葉に、兄は顔を赤くさせていく。

 二人の言葉の意味が分からない程、遥は子供ではない。
 「わ…私、やんなきゃイケない事、あるから!」
 無理な大声でそう言うと、遥は家に向かって走り出した。


556:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:53:28 eleE809X
 家に戻った遥は、自分でも分からない程に動揺していた。
 兄が自分ではない、別の女と結ばれる、
 それは当たり前の話だし、覚悟もしていたつもりだった。
 しかし、今、現実にその相手が現れると、遥の胸は大きく掻き乱された。
 何故、自分じゃ駄目なのか、血の繋がりだけで何で諦めなきゃイケないのか…!
 何にも当たれない怒りが遥を苦しめる。

 そんな自分の事を気にして、自分の部屋に入ってきた人間がいる。
 「ハル姉?」
 自分を心配して入ってきた妹がいた。

 この妹が自分と同じ目で兄を見ている事は、既に気付いていた。
 それを苦々しく思った事もあるが、今はそれを使うのが最上であるように思えた。
 だから言った。

 「ちぃちゃんはお兄ちゃんの事、愛してるかな?」
 と。

 その答えを知っていながら、
 この妹を利用する為に。


 楓が死んだのは、それから少し経ってからの事だった。


557:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:55:04 eleE809X
 横山楓、
 その存在は、康彦だけでなく、遥にも深い影響を与えている。

 その死が康彦に重い傷をもたらし、その存在が遥に兄への呼び片を変えさせた。

 あのようになれば、自分も、唯一無二になれるかもしれない、
 そう考えた遥は、兄の呼び名を、”お兄ちゃん”から、”兄貴”へと変えた。

 それから2年の月日が経つ。

 自分と兄の関係に大きな変化はない。

 楓の死が、思った以上に兄に傷を与えた為、遥も思いきった行動がとれずにいたからだ。

 それでも遥は思う。
 もう一度、兄の呼び名が変わる時が来る、と。
 それは、恋人に相応しい呼び名になる、と。

 まだ、兄は自分を妹以上に見ていないし、それ以外にも沢山の壁がある。
 だが、最後に兄の傍にいるのは、自分だけだ。
 遥には自信があった。
 自分が1番に兄を愛しているんだ、という自信が。

 決勝の相手は智佳になるだろう。
 その事にも遥は余裕を持っている。



 時計を見れば、まだ6時30分にもなっていない。
 「昨日の今日だしね」
 誰に言う訳でもなく、言い訳のように呟くと、遥の足は自然と兄の部屋に向かっていた。
 起こす時に唇が当たるのは良くあるし、舌が入っても事故だよね、
 そう考えながら。


558:ハルとちぃの夢
08/02/03 17:55:46 eleE809X
投下終了です。


559:名無しさん@ピンキー
08/02/03 19:03:19 17RdeMjB
グッジョブ
殺された恋人像を良い意味で裏切ってくれるとは

560:名無しさん@ピンキー
08/02/03 19:57:55 YbbIY23G
>>558
GJ


561:名無しさん@ピンキー
08/02/03 21:21:25 s7idImp8
なんでか知らんけど亡くなった恋人はおとなしいお嬢様みたいなイメージを勝手に持ってたww

ともあれ>>558はGJ!

562:名無しさん@ピンキー
08/02/03 23:44:22 Yts0fBWp
か、神がいっぱい来てるぅぅぅぅううう!!!!
GJ!!

563:名無しさん@ピンキー
08/02/03 23:47:03 9cG+Uejy
>555

564:名無しさん@ピンキー
08/02/03 23:47:28 9cG+Uejy
>544

565:名無しさん@ピンキー
08/02/04 00:05:13 ugaQu2xH
エ、エロゲープレイするのって、そんなに悪いことだったんだ…

そりゃ自慢できるような趣味じゃないことは分かっているけど…犯罪レベルにまで貶されようとはちょっとショック

566:名無しさん@ピンキー
08/02/04 00:51:12 L0kywe/D
>>565
お、おい……お前の後ろにいるのって確かお前のいm

567:名無しさん@ピンキー
08/02/04 02:15:41 OaLCnCla
生まれてこの方エロゲなんてやったことない俺勝ち組www






で、でもキモウトに嫉妬されるってんなら俺・・・

568:名無しさん@ピンキー
08/02/04 02:57:06 tZgIbFs9
>>568
お前人生かなり損してるぞ

569:名無しさん@ピンキー
08/02/04 02:59:50 csjxCmVx
>>569
妹がいないなんて人生の意味がないのも同然だぞ

570:名無しさん@ピンキー
08/02/04 03:01:15 tZgIbFs9
>>567だったorz
俺が俺に言ってどーするよ!いや間違ってないけどさ…確かに人生損してるけどさ……

571:名無しさん@ピンキー
08/02/04 03:39:13 T2uZTMbz
>>570がなんかもういろんな意味で可哀相だなw


572:名無しさん@ピンキー
08/02/04 08:38:57 48mqmV8/
はっはっは。俺なんて給料の1/3は毎月エロゲ購入に注ぎ込んでるゼ!



orz

573:名無しさん@ピンキー
08/02/04 09:31:45 aD6tdObE
はっはっは。俺なんて給料の3分の2は貯金してるぜ!

・・・いつニートになってもいいと思ってる俺。

574:名無しさん@ピンキー
08/02/04 10:14:50 p6fxWy8w
ニートになったら、おうちから一歩も出る必要ないね弟くん
ふふっ……

ニートになったら、おうちから一歩も出る必要ないねお兄ちゃん
くすくすくす……

575:名無しさん@ピンキー
08/02/04 11:44:05 BVOy1PL+
>>569
あのぉ、大変申し上げにくいのですが…
そこの物影で血涙流している鬼女は、もしや貴殿の姉上では…

576: ◆busttRe346
08/02/04 12:22:08 y/zCHf3z
監禁トイレ六話投下しまーす

577:監禁トイレ⑥-1
08/02/04 12:23:11 y/zCHf3z
「やめてよ!!痛いよぉ!!」
「ほら、たっくんが痛がってるでしょう!!」
「お姉ちゃんこそ放してください。最初にお兄ちゃんと遊ぶ約束したのは私です」
ぎりぎりと腕が引っ張られる。
「何してるのッ!!」
母は双子を怒鳴りつけ、少年から引き離す。少年の両腕はぶらぶらと垂れ下がる。さながら操られる事を忘れた人形のように。
少年は泣き喚く。その両手は暖簾の如く、無抵抗にただ揺れるのみ。
母親は青ざめ、すぐさま病院へ連れて行く支度をした。


結論から言って少年は両肩を脱臼していた。


少年が病院から戻ってくるまでの間、リビングでは双子が睨み合っていた。
一言も発する事なく。
けれど視線で全ての感情をぶつけあって。
亀裂は、もう修復不可能なところまで深く皹入っていた。







578:監禁トイレ⑥-2
08/02/04 12:24:21 y/zCHf3z
後悔している。
そりゃあもう、物凄く後悔している。
不用意に「良いよ」と言ってしまったのが、まずかった。

「はむっ…んっ、ぐっ、はぁ…んっ」
口からはくちゃくちゃと咀嚼音が漏れ出ている。
問題なのは「二人で一つ」の咀嚼音。

ああ本当に、心底後悔している。



それはつい30分前の事。
「…」
「……」
「…何故黙るんですか、義兄さん」
「いや、別に…」
今日で何回目の脱力だろうか。恐怖であったり悲しみであったり呆れであったり。いずれにせよネガティブな意味での脱力しかしていない。そろそろゆったりとした平和な脱力感が欲しいものだ。
「で、してくれるんですか?してくれないんですか?」
「あ…えっと…良いよ」
僕の返事を聞くと、蕾は自分の足下に置いたリュックを開く。そこから市販のおにぎりや惣菜パン、飲み物を取り出した。
それらを抱え、僕の隣に座り込むと、食糧を床に並べ始めた。
「あ、おにぎりの包装は片手じゃ無理ですよね」
そう言って蕾は梅おにぎりを手に取る。それよりせめて下に何か敷いてもらえないだろうか?床に無造作に転がる食糧。あまり食欲を掻き立てられないのだが…。


「出来ましたよ、義兄さん」
左手におにぎりを渡される。
「それじゃお願いします」
面倒臭い上に回りくどい。何故こんなやり方で食事をするのだろうか。おにぎりは思いのほか美味しそうに見えた。多分、それだけ腹が減っていたのだろう。
そういえば昨日から何も食べていなかったっけ…。
そんな事を考えながら義妹の口におにぎりを差し出す。

ぴしゃり

…痛え。

「何故手を叩く?」
「あなたは馬鹿ですか?誰がそんな食べさせ方を要求したんですか」
「お前だろう」


579:監禁トイレ⑥-3
08/02/04 12:26:31 y/zCHf3z
盛大に溜め息をつかれた。

「はぁ…。ここまで鈍いとは思いませんでした。分かりました、じゃあそのおにぎりは義兄さんが食べてください」

…。

…何なんだよ。

…本当に何なんだよ?

腹立ちを顎に込めておにぎりに食らいつく。ぱりっ、と爽快な音の後を海苔の香りが追従する。ひやりとしたご飯も、空腹を自覚した途端熱を帯びだした胃にはちょうど良く感じられた。梅の酸味が唾液を促す。
美味しい。
素直にそう思った。

「むぐっ!?」

唇を何かが塞ぐ。

まさか…またハンカチか!?
至福のあまり目を閉じていたのがいけなかった。だが、目の前には予想だにしない光景が待ち受けていた。
僕の唇を塞ぐのは、やはり唇で。当然その持ち主は、蕾だった。

「んん゛ッ…!!」

口内に生暖かい息が、涎が、舌がなだれ込んでくる。口に入れたおにぎりは舌に絡めとられ、蕾の口内に吸い込まれていく。
間近で見る蕾の顔は今まで見た事のない顔だった。目尻に涙を溜め、それは今にも零れ落ちそうだ。鼻息が頬をなぶる。くすぐる、の範疇に収まりきらない程に荒々しく。
白い肌はピンクに染まり、今にも湯気を立ち上ぼらせる様。



つまり彼女の「食べさせて」はこういう事だったのだ。一般的に口移しと呼ばれる行為。コレはそれの進化版といったところか。
…むしろ劣化か。
こんな「食べさせて」を誰が理解出来るのだろう。
鈍い?
この場合は僕が鈍いじゃないだろう。蕾、お前が凄いだけだ、色んな意味で超越してるよ。ブラボー。




580:監禁トイレ⑥-4
08/02/04 12:29:49 y/zCHf3z
口に含んだ分のおにぎりをほとんど奪い去ると、唇が離れた。二人の涎が名残惜しそうに橋をかける。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「はぁ…っんく、はぁ…ふぅ…」
互いの口から白い息がぽつ、ぽつ、とわき出る。トイレの中が冷えきっていたから、だけではないと思う。
「ふふっ…安いおにぎりも義兄さんの口で食べるとこんなにも美味しくなるんですね…」
僕はどうしたものか分からない。まず処理するべきは口に溜まった唾だ。これをさっさと吐き出してしまいたい。ただそれを見た蕾がどんなリアクションをするか…。
一瞬脳内に浮かんだのは舌を食いちぎられる図だ。監禁されている間に、僕の想像力も大分愉快な方向へ鍛えられたようだ。
手近にあった飲料水を口に含み、不純物を一気に流し込む。腹を壊さなければ良いのだが。
「義兄さん。続きを」
今度はサンドイッチを差し出してきた。



前言撤回。
これが中止になるのなら何でも良い。
早く壊れろ、僕の腹。


ツナサンドが、迫ってくる。


581: ◆busttRe346
08/02/04 12:31:58 y/zCHf3z
投下終了です

582:名無しさん@ピンキー
08/02/04 14:05:08 f3S4ly5F
>>581
乙+GJ
飯食いながらおっきしたのは俺だけでいい

583:【偏愛 第二章・里穂(前書き2)】
08/02/04 15:23:16 p6fxWy8w
>>581
口移しの生々しい表現にGJ!
溜まった唾の処理に悩む主人公の葛藤が……w

それでは第2章の続き投下します
全9レス
後半に三年生の妹のオナヌゥ描写がありますロリ苦手な人はスマソ
でもって大人気のばあちゃんは登場しません(汗


584:【偏愛 第二章・里穂(5)】
08/02/04 15:24:51 p6fxWy8w
 やがて訪れた夏休み―
 里穂は計画通り、ママに内緒でお兄ちゃんに会いに出かけた。
 でも結果としては悲しい思いをしただけだった。
 お兄ちゃんの顔は見られたけど里穂との再会を喜んでくれなかった。
 ママに怒られてばかりいた頃と変わらない、優しさのない態度だった。
「よく来てくれたね」「一人で頑張ったね」
 行きの電車の中では褒め言葉を期待して、わくわくしていたのに……
 おばあちゃんには里穂が一人で来たことをママに言いつけられてしまった。
 ひどい意地悪だった。
 お兄ちゃんが優しくないのは、こんなおばあちゃんと一緒に暮らしているからだと思った。
 二人に連れられて家に戻ると、ママはお仕事を早退して帰って来ていた。
 いままで見たことのない怖い顔で、里穂を家に引き入れるとすぐドアを閉めて鍵をかけた。
 お兄ちゃんとおばあちゃんには挨拶さえしなかった。
 きっと里穂もひどく怒られるだろうと思った。いつもお兄ちゃんが怒られてたときのように。
 ところが、里穂に向き直ったママは笑顔だった。
「ダメじゃないの里穂、知らない人について行ったらいけないといつも言ってるでしょう?」
「知らない人……?」
 何のことか里穂にはわからず首をかしげる。
 ママは里穂の頭を撫でて、
「里穂がママに黙っていなくなるわけないものね。知らない悪い人に騙されて連れて行かれたんでしょう?」
「……里穂は……」
 怒られても本当のことを言わなきゃいけないと思った。
 一人で出かけたことについては、お兄ちゃんやおばあちゃんが悪いのではない。
「……自分から出かけたんだよ……」
「そんな筈ないわ。騙されて連れて行かれたに決まってる。里穂はパパとママと一緒のおうちが一番なのに」
 ママは笑顔で里穂の頭を撫で続ける。
「そうよ、あんな泥棒のガキとか泥棒に味方する強欲ババアなんて知らない人。里穂の家族はパパとママだけ」
「……ママ……?」
 いったい何を言っているのだろう? 泥棒のガキってお兄ちゃんのこと?
「パパとママが結婚する前、嘘つき女がパパを泥棒したの。嘘をついてママを裏切ったの」
 ママは言った。
「そして生まれたのがあのガキよ。だからアレは泥棒のガキ。嘘をついてママを裏切るんだわ」
「……お兄ちゃんは嘘なんて……」
 里穂の言葉を遮り、ママは叫んだ。
「泥棒が産んだとしてもパパの子だもの! ママは本当の子供みたいに愛してたのに裏切られたのッ!」
 里穂は怖かった。お兄ちゃんに怒ってばかりいた頃のママに戻ったみたいだった。
 いや、その当時でも里穂の眼の前で、ここまで取り乱したようにわめき散らすことはなかった。
 人間は「おかしくなる」ことがあると、里穂はテレビのニュースで観て知っていた。
 通りすがりに理由もなく他人を殴ったりナイフで刺す「おかしい人」が世の中にいる。
 むやみに大声を出すのは「おかしい人」だから近づくなとニュースを観ながら教えてくれたのはママ自身だ。

585:【偏愛 第二章・里穂(6)】
08/02/04 15:28:04 p6fxWy8w
 なのに、ママも「おかしく」なっちゃったの?
 里穂が一人で出かけたから怒って? それとも心配しすぎて?
「……ごめんなさい……」
 里穂はママにすがりついた。涙があふれ出した。
「もう一人でどこにもいかないから……ママの言うこときくから……」
 だから、おかしくならないで……
「あらあら泣かないで里穂、里穂は悪くないのよ」
 ママは里穂の前でしゃがんで頭を撫でてくれた。
 笑顔に戻っていたが、その眼は泣いているみたいに赤かった。
 里穂がもう少し上級生で語彙が豊富なら「血走っている」と形容しただろう。
「悪いのはあのガキとババア。里穂は騙されただけ。怖かったわよね知らない人に連れて行かれて」
「ママ……」
 お願いだから、おかしくならないで。優しいママに戻って。
 お兄ちゃんにも優しかったママはどこに行っちゃったの……?
「さあ、そろそろ晩ごはんの支度しなきゃ。里穂の大好きなカレーにするわ。パパもママのカレーは大好物よ」
 ママが里穂の手首をつかみ、ダイニングへ引っぱっていく。
 ぐっと力を入れられて痛かったけど、怖くて振りほどけなかった。
 
 
 食事の支度をしている間にママは次第に落ち着き、食べ始める頃には普段と変わらない様子に戻っていた。
 でも里穂の心には恐怖が残った。
 いつ再びママがおかしくなってしまうかわからない。
 里穂はお兄ちゃんに会いたかっただけなのに、どうしてこんなことになるのだろう……?
 翌日、ママはいつも通り仕事に出かけて行った。
 里穂はどこにも出かける気にならず家に閉じ籠もっていた。
 ママが作り置いてくれたお昼ごはんを食べ終えた頃、千代美から電話があった。
 きのうの首尾を聞かれて言葉を濁すと、勘のいい千代美は「そっかあ……」と嘆息し、
「何かあったみたいね。きょうは千代美が里穂の家に行くよ」
「え……、でも……」
「来ちゃダメなんて言わないでね。話したくないことは話さなくていいから、千代美をそばにいさせて」
 やがて訪ねて来た千代美を、里穂は自分の部屋に通した。
 里穂の部屋はお兄ちゃんと一緒に暮らしていたときのままだった。
 二つになった机は勉強用とお絵描きやゲームなどの遊び用に使い分けるから捨てないで。
 二段ベッドは空いている上の段を、ぬいぐるみを並べる棚にするから買い換えなくていい。
 その口実でママを説得し、里穂はお兄ちゃんの机とベッドを守ることに成功していた。
 お兄ちゃんがいつでも帰って来られるように。
 でもママがおかしくなったら、その機会は限りなく遠のいてしまう……
 里穂は自分のものだった机の椅子を引き出して千代美に勧めた。里穂自身はもう一つの机の椅子に腰掛けた。
 さりげない動作のつもりだったのに千代美は微笑み、
「里穂ってホントにお兄さんが好きなんだね。そっちがお兄さんの机でしょ?」

586:【偏愛 第二章・里穂(7)】
08/02/04 15:31:11 p6fxWy8w
「え……」
 里穂は眼を丸くして、誤魔化すように笑い、
「どっちも里穂の机だよ。そっちが勉強用で、こっちが遊び用」
「でも勉強用は本がたくさん並んでるから最初から里穂ので、物が少ないそっちはお兄さんのだったでしょ?」
 里穂は、まじまじと千代美の顔を見た。
「……千代美ちゃんってすごいね、刑事とか探偵になれるよ……」
「千代美の将来は美容師だってば。それより、お兄さんに会いに行ってどうだったの?」
「……うん……」
 話すべきかどうか里穂は迷った。
 話したくないことは話さなくていいと千代美は言ってくれた。
 でも本当に話したくないのなら、里穂は千代美を家に来させなかったろう。
 押しかけて来たとしても家に入れなかったろう。
 ならば選択肢は一つだった。
 せっかく会えたのにお兄ちゃんの態度は冷たかったこと。
 そして、おばあちゃんに家に連れ帰られてしまったことを話して聞かせた。
 家に帰ってママに怒られなかったか訊かれたので「ちょっとだけ」と答えた。
 ママがおかしくなったことは、さすがに言えなかった。
「ひどいね、里穂のおばあさん。黙っててくれればいいのにね」
 千代美は自分のことのように怒ってくれた。
「それ里穂が思った通りだよ、意地悪なおばあさんと一緒にいるから、お兄さんも里穂に冷たくなったんだよ」
「うん……でも、お兄ちゃんはママと住んでた頃もあまり優しくなかったから……」
「優しくないお兄さんなら、どうして里穂はそんなに好きなの?」
 千代美が小首をかしげて訊ね、里穂は「え?」と戸惑い、
「それは……、昔は優しかったから……」
「でも優しくなくなっちゃったんだ?」
「うん……パパが亡くなってしばらくして、ママに怒られてばかりになってから……」
「里穂だけママに可愛がられてるからヤキモチかな?」
「そういうのとは違うと思う……」
 お兄ちゃんのほうもママを嫌っている。ママに向ける眼を見れば、それはわかる。
 前はそんなことなかったのに。ママはお兄ちゃんに優しくて、お兄ちゃんもママが好きだったのに……
 千代美が腕組みして「うーん」と唸った。
「お兄さんは里穂のこと、どう思ってるんだろうね?」
「え……?」
 眼をぱちくりする里穂に、にやりと千代美は笑って、
「里穂はお兄さんが好き。でも、お兄さんは?」
「……そんなこと……」
 考えもしなかった。
 里穂はお兄ちゃんが好き。ママが好き。パパが好き。優しいから。家族だから。
 それが当然と思ってた。
 でも、お兄ちゃんはママを嫌っている。優しくないから。ひどく怒るから。

587:【偏愛 第二章・里穂(8)】
08/02/04 15:34:52 p6fxWy8w
 それでは―里穂のことは?
 お兄ちゃんはどう思ってるんだろう?
 答えを考えるのが怖くて、里穂は千代美に訊ねた。
「千代美ちゃんはお兄さんのこと、どうなの? 好きなの?」
 冷たく暗い眼をした兄を、千代美はどう思っているのだろうか?
「お兄(にい)のことはねぇ……うーん……」
 千代美は何故だか苦笑いして、
「向こう次第かな千代美的には」
「向こう次第って?」
「お兄が千代美をどう思ってるか知りたいってのはあるよ。ホントに好きかどうかって」
「千代美に優しいんだとしたら好きってことじゃないの?」
 あの兄の優しいところなど想像つかないけど。
 千代美は苦笑いで首を振り、
「優しいと好きは違うよ。千代美の言ってる『好き』は、里穂と違う『好き』だけど」
「……どういうこと?」
「そのうち教えてあげるよ。それより里穂のお兄さんの話。兄妹で喧嘩したことないって言ってたよね?」
「うん……」
 里穂は幼稚園生の頃―パパがまだ生きていた頃は、よく我がままを言って家族を困らせた。
 みんながお寿司を食べに行く相談をしているときにハンバーグが食べたいと言ってみたり。
 お兄ちゃんが動物園に行きたいと言ったときに遊園地へ連れて行ってほしいとダダをこねたり。
 そうしたとき、お兄ちゃんは必ず「里穂が行きたいほうに行こうよ」とパパとママに提案してくれた。
 そう。お兄ちゃんは本当に優しかった。
「……いつも喧嘩になる前にお兄ちゃんが譲ってくれたから……」
「でもエリナとかマユとか妹や弟がいる子は、兄弟喧嘩ばかりで嫌いだって言ってるでしょ?」
「マキちゃんは弟と仲がいいみたいだけど……」
「そう、それ。つまり年上の立場で考えて、可愛くて好きだと思える妹と嫌いになっちゃう妹がいるってこと」
「嫌いになっちゃう妹……」
「好きと思ってもらえる妹に、里穂もなればいいんだよ。そしたらお兄さんも、また優しくしてくれるかも」
 
 
 でもお兄ちゃんに好きになってもらうための具体的な計画は里穂にも千代美にも思い浮かばなかった。
 遠く離れて暮らしていて、次回いつ会えるかもわからないのだ。
 やがて八月の終わりにパパの三回忌の法事があった。
 参加したのはママと里穂のほか、ママのお姉さんの世田谷のおばさん夫婦。
 それにママのお友達の水谷(みずたに)のおばさんとおじさんだった。
 お兄ちゃんとおばあちゃんはママが呼ばなかった。
 市民霊園にあるパパのお墓にみんなでお花とお線香を供えた。
 それから里穂の家に移動して、ママが前の日から用意していたごちそうを食べた。
 メインディッシュはお兄ちゃんが大好きだった唐揚げだ。
 おばあちゃんはお兄ちゃんに唐揚げを作ってくれるのだろうかと、ふと考えた。

588:【偏愛 第二章・里穂(9)】
08/02/04 15:37:59 p6fxWy8w
 二学期に入ったある日の授業中、女子生徒の一人が泣きそうな顔で手を上げた。
「先生……」
 担任の女性の先生はすぐ異変に気づき、その生徒のそばへ行って何ごとか囁きかけた。
「何だよ便所かよ」
 お調子者の男子が冷やかし、ほかの男子が笑ったのを先生が叱責する。
「静かにしなさい。みんなしばらく自習してなさい」
 先生はすすり泣く女子生徒を立ち上がらせ、肩を抱いて教室から連れ出した。
 千代美が里穂の背中を突っついてきた。二学期の席替えで後ろの席になっていたのだ。
「あの子きっと生理だよ。ジーンズのお尻ちょっとシミになってた」
「ええっ?」
 里穂は眼を丸くする。
 その翌週、授業が一時間分中止になって、三年生の女子全員が視聴覚室に集められた。
 男子は校庭で自由時間になったことを羨む女子生徒たちに、千代美が言った。
「きっとセーキョーイクだよ。こっちのほうが面白いって」
 千代美の推測通り、それは性教育の臨時授業だった。
 お母さんのおなかに赤ちゃんができる仕組み。
 生理のこと。身体の成長―オッパイが大きくなったり下の毛が生えたり―のこと。
 里穂を含めた大半の女子生徒は感心しながら話を聞いた。
 千代美だけは「三年生にできる話はこの程度か。なるほどね」と意味ありげに笑っていたけど。
 そして放課後。
 いつも通り、里穂は千代美と一緒に帰った。向かう先は千代美の家だ。
 千代美の部屋に通されて、渡されたクッションをフローリングの床に敷いて座る。
 いったん千代美は部屋を出て行き、紅茶とお菓子を用意して戻って来た。
 紅茶をひと口、飲んでから、にっこり笑って千代美は言った。
「……里穂って、オトナのエッチに興味ある?」
 
 
 ぽかんと口を開けて里穂は千代美の顔を見た。
「エッチって……きょう学校で教わったみたいな?」
「ああいう健全すぎてつまんない話じゃなくて、もっと気持ちよくなれるヤツ」
「そんなの、まだ早いよ」
 里穂は眉をしかめてみせた。
 性教育の授業を受ける前から、里穂は大人や中高生のお姉さんたちがするエッチについて漠然と知っていた。
 情報源はテレビであったり漫画であったりクラスメートとの会話だったり様々だった。
 彼氏とキスして、裸を見せ合って、オッパイに触られて……
 それが気持ちのいいものだという理解もあったけど、自分で体験したいとは思わなかった。
 だいたい彼氏なんていないし。欲しいと思ったこともないし。
 誰かを好きになるという気持ちが、まだよくわからないし。
 家族や友達や憧れの歌手を好きになるのと、どう違うのだろう?
 お兄ちゃんを好きなのと何が違うのだろう?

589:名無しさん@ピンキー
08/02/04 15:40:12 ugaQu2xH
支援

590:【偏愛 第二章・里穂(10)】
08/02/04 15:41:06 p6fxWy8w
 千代美は笑った。
「早くないよ。一人でエッチする分にはね」
「一人で……って何それ?」
「簡単だよ、あのね……」
 二人きりしか部屋にいないのに、千代美はわざと里穂の耳元に口を寄せてきた。
 吐息がこそばゆいのを我慢して里穂は耳を傾ける。
「……自分でオマンピーに触るの」
「何それ……?」
 里穂は顔を離し、呆れ気味に千代美を見た。
 にんまりと千代美は笑い、
「里穂、お風呂でオマンピー洗ったりシャワーかけたりして気持ちいいと思ったことないの?」
「ないよそんなの」
「うそぉ、恥ずかしいから感じないように自分に言い聞かせてるだけだよそれ、普通は気持ちいい筈だもん」
「もし気持ちよかったとしても、お風呂とかシャワーの何がエッチなの?」
「やっぱ気持ちいいんじゃん。認めちゃいなよ」
「気持ちよくないってば。ねえ、こんな話やめようよ」
「気持ちいいのわかってるから話したくないんでしょ、恥ずかしいから」
「もうっ、怒るよ、千代美ちゃん!」
「千代美は毎日お布団の中でしてるよ、ホントに気持ちいいんだから」
「千代美ちゃんってば……」
「お布団に潜って好きな人のこと思い浮かべてするの。そしたら抱き締められてるみたいに暖かくなるの」
「お布団に潜ってそれじゃ暑いじゃないの。まだ夏が終わったばかりだし」
「暖かいってのは心がだよ。ほかほかして、ほわわぁんって幸せになるの。里穂もやりなよ」
「べつに好きな人なんていないし……」
「誰でもいいんだよ男の人なら。ただしパパとかおじいさんはダメ。カッコイイと思う芸能人とかがいいよ」
「男の人じゃないとダメなの?」
「当たり前だよエッチだもん。それとも里穂って、そっち系の趣味?」
「そっち系って何よ。もうっ、まだ里穂は男の人にもエッチにも興味ないってばっ……!」
 
 
 その場はそれで話を終わらせたが、里穂は家に帰ってから夜のお風呂場で千代美との会話を思い出した。
 両脚の間の「大事なところ」を洗ったりシャワーをかけたりするのが怖くなってしまった。
 エッチな気分になったらどうしよう?
 ……もうっ、千代美ちゃんがヘンなこと言うからだよ!
 お風呂を出てパジャマを着込み、ベッドに潜り込む。
 余計なことを考えないように、ぎゅっと眼をつむって頭まで布団をかぶる。
 べつに……エッチとかそんなのしなくても、里穂はいつもお兄ちゃんに抱き締められてる気分だもん。
 元はお兄ちゃんが使っていた二段ベッドの下の段で寝てるんだから。
 寝よ寝よ。優しかった頃のお兄ちゃんの夢を見られることを祈りながら。
 ……でも好きな人を思い浮かべるって、お兄ちゃんでもいいのかな?

591:【偏愛 第二章・里穂(11)】
08/02/04 15:44:43 p6fxWy8w
 ……って、ダメダメ。
 お兄ちゃんとエッチしていいわけがない!
 法律でダメってことになってるし。
(本当は法律が禁じているのは結婚であり性行為そのものではないが、里穂はそこまで理解していない。)
 赤ちゃんが生まれても病気になることがあるって聞いたし……
 でも……抱き締められてる気分になりたいだけだから……
 ホントのエッチするわけじゃないし……ひとりでするんだし……
 里穂は本当はお兄ちゃんがそばにいてくれたら、それでいいいんだけど。
 抱き締めたり優しく頭を撫でてくれたら充分だけど。エッチそのものには興味ないから。
 でも、お兄ちゃんは遠くにいて頭を撫でてくれないから、代わりに自分でエッチなとこ撫でちゃうんだよ……
 パジャマのズボンに、恐る恐る右手を差し入れた。
 コットンのやわらかなショーツをなぞるように、おなかから下へ、ゆっくり手を滑らせ―
 ぴくんっと、里穂は震えた。
「……あっ……」
 女の子の大事なところに指が触れていた。
 まだ幼稚園に通っていた頃―
 里穂はお兄ちゃんとママと一緒にお風呂に入って、ママに訊ねたことがあった。
「どうしてお兄ちゃんはオチンチンがあって里穂にはないの? 座らなきゃオシッコできなくて不便なのに」
「オチンチンはパパにもあるけど、ママはないでしょう? 女の人にはないのよ」
「ママもないの? モジャモジャで隠れてるんじゃないの?」
「ないってば」
 くすくすママは笑って、
「あのね、里穂。女の人にはオチンチンはないけど、代わりのものがあるの」
「代わりのもの……?」
「大人になったとき、好きな男の人を受け入れてあげるためのもの。大人になると、それができるの」
「じゃあ、まだ里穂にはないの? ママはモジャモジャに隠れてるの?」
「そんなようなものね。里穂が大人になって好きな人ができたら、里穂にもそれができるわ」
「ボクのオチンチンを貸してあげられたらいいのにね」
 お兄ちゃんが、にこにこしながら言った。
「お外で里穂がオシッコしたくなったら、ボクのオチンチンを貸してあげれば立ちションベンできるよ」
「ダメよ立ち小便なんて。幸弘は学校のお友達とそんなことしてるの?」
 ママは笑いながらお兄ちゃんの頭を撫でた。
「でも幸弘は本当にいいお兄ちゃんね。いつも里穂に優しくて」
 お兄ちゃんは褒められて嬉しそうに笑っていた。
 優しいお兄ちゃんを里穂も大好きで、大人になったら―そう。
「受け入れる」というのがどんなことかわからないけど、でも好きな人にしてあげられることならば。
 真っ先にお兄ちゃんにしてあげようと、そのとき思ったのだ。
 いまの里穂ならわかる。
 受け入れるというのは、つまり。
 オチンチンがない代わりの大事なここに、好きな人の「それ」を入れてあげること……

592:【偏愛 第二章・里穂(12)】
08/02/04 15:47:54 p6fxWy8w
 やだ。違うよ。
 里穂は本当にお兄ちゃんとエッチしたいわけじゃないんだよ。
 でもね。どうしても切なくて。
 離れて暮らしているのが。抱き締めてもらえないのが。昔みたいな笑顔を見せてくれないのが。
 だから……こんなふうにね。
 優しかったときのお兄ちゃんのことを想って……
 ショーツの上から、その部分を指でなぞった。
 じんわりと気持ちよかった。何度も指を往復させてみた。
 どんどん気持ちよくて暖かいのが広がっていく。
 おなかの下からお尻へ、背中へ、頭まで広がって、ぽおっとしてしまう。
「……んあっ……」
 声を漏らしてしまった。本当に気持ちいい。
 エッチってすごいと思った。大人や中高生のお姉さんたちが好きな人としたくなるのがよくわかる。
 こんなに素敵な気持ちになれるなら。好きな人とそれを分け合えるなら。
「……おにぃ、ちゃん……」
 呼びかけてみた。
 お兄ちゃんとエッチなんていけないこと。そんな気持ちが吹き飛びそうだった。
 里穂がお兄ちゃんに好きだと思ってもらえる妹になれたら。
 優しいお兄ちゃんを取り戻すことができたら。
 よそのどんな女の子よりも可愛らしく里穂がなれたら。
 お兄ちゃんは里穂を恋人みたいに想ってくれるかな?
 ママやおばあちゃんに内緒でデートしたりキスしたり……エッチしたいと思ってくれるかな?
 指先に触れるショーツがいつのまにか湿り気を帯びていた。
 汗かいちゃったかな。でも気持ちいいのやめられない。
 思いきって……脱いじゃえ。
 布団の中で身体を丸め、もぞもぞとパジャマごとショーツを脱いだ。
 これで下半身は丸裸だ。
 でもエッチって裸でするんだもんね。上も脱いじゃおうかな?
 まだふくらんでない里穂のオッパイだけど、触ったらオトナみたいに気持ちよくなれるかな?
 ボタンを外してパジャマの上も脱いだ。
 もう止まらなかった。止めようという考えも浮かばなかった。
 あらためて右手を両脚の間に伸ばした。
 まだモジャモジャじゃない、すべすべの里穂のそこ。
 ワレメみたいになって変だけど大事なところに右手で触れると、指先が濡れた。
 やだ、オシッコ?
 違う……これがたぶん「濡れる」ってやつ。
 エッチのときそういう現象が起こると何で知ったんだっけ?
 千代美の部屋で読んだ中高生のお姉さん向けのファッション雑誌?
 よくわからない。
 でも自分もエッチに興味がないと言いながら、知識だけは一丁前にあるのだと呆れてしまう。

593:【偏愛 第二章・里穂(13)】
08/02/04 15:51:13 p6fxWy8w
 ワレメを指でなぞる。
「……ひぁっ……!」
 思わず声を上げてしまい、慌てて左手で口を押さえた。
 ショーツ越しよりも断然刺激的だった。
 でも、やだ。気持ちいい……
 ゆっくりと刺激しすぎないよう指を動かした。
 優しく。お兄ちゃんが里穂の頭を撫でてくれたときみたいに。
「……おにぃちゃん……」
 左手は胸に触れてみた。
 撫でてみた。単に撫でられているという感覚だった。それほど気持ちよくない。
 恐る恐るオッパイ―この場合は乳首―を指でつまんだ。
 くすぐったかった。
 でも我慢して、指で優しく転がすようにした。
「おにぃちゃん……おにぃちゃん……」
 オッパイと大事なところとを指で愛撫する。
 いま、お兄ちゃんに抱き締められているのだと想像してみると、オッパイも気持ちよくなりそうだった。
 オッパイはくすぐったいと気持ちいいの中間くらい……大事なところは……
「……ひっ……ひぁぁっ……!」
 ぴくぴくっと身体が震えてしまった。
 お布団を頭までかぶって真っ暗なのに、眼の前で何かが白く光ったように思えた。
 これがイッちゃったってこと……?
 でもまだ気持ちいい。まだ指を止められない。
 あっ……暖かいのが、また身体の芯を走って……波みたいに何度も突き上げてきて……
「……ひゃぁっ……あぁぁっ……おにぃ、ちゃんっ……!」
 その晩、里穂は疲れきって眠りに落ちるまで、何度も何度も自らの指で絶頂を味わった―
 
 
 翌朝、学校で顔を合わせた千代美に、里穂は自分から打ち明けた。
「……アレ、きのうの夜やってみちゃった……」
「ホントに? それでどうだった、気持ちよかったでしょ?」
「うん、すごいよかった……きっとクセになっちゃう……」
「いいじゃん、里穂もオトナの仲間入りってことだよ」
 千代美はにっこりとして里穂の頭を撫でてくれる。
「で……好きな人は誰のこと考えたの? 歌手? 役者さん?」
「えっ? えっと……サッカーのアントラーズの……」
 パパが好きだったサッカー選手の名前を挙げて誤魔化すと、千代美はきょとんと眼を丸くして、
「それって誰だっけ? コマーシャルとか出てる?」
 里穂にもよくわからない。パパが亡くなってサッカーは観なくなったから。
 でも本当に好きなのはお兄ちゃんとは言えず、里穂はそのサッカー選手のファンで押し通すことにした。
【終わり】

594:【偏愛 第二章・里穂(後書き)】
08/02/04 15:53:43 p6fxWy8w
支援どうもでした
次回は、ばあちゃん活躍予定
そして妹が兄をヲカスのは、もうしばらく先になりそう……

595:名無しさん@ピンキー
08/02/04 16:33:04 g7PV8xC1
エロゲやったぐらいでそこまでいわれるとか怖いわww

596:名無しさん@ピンキー
08/02/04 16:39:36 y/zCHf3z
>>594GJ!!そしてばあちゃんに期待してます!

597:名無しさん@ピンキー
08/02/04 16:45:40 f3S4ly5F
>>594
兄貴と妹がどんな風に成長するのかが楽しみだ
GJ

598:名無しさん@ピンキー
08/02/04 17:20:24 5wdXlDbU
GJ!
元ヤンばあちゃんに期待

599:名無しさん@ピンキー
08/02/04 17:51:27 aD6tdObE
>>594
GJ!

600:名無しさん@ピンキー
08/02/04 22:25:02 2U/PqRrM
>>594
超GJ

しかし早熟だなぁ・・・

601:名無しさん@ピンキー
08/02/04 22:33:43 9vBAuYZO
早熟っつーかなんつーかw

602:名無しさん@ピンキー
08/02/04 23:18:11 iUad5MOi
姉ちゃんのいない俺が寂しく焼いた冷凍ギョーザうめぇwwwwww

603:名無しさん@ピンキー
08/02/04 23:24:52 r+f2dtvE
なんつーか、描写とかが生々しいよな・・・

604:名無しさん@ピンキー
08/02/05 00:03:30 RTip4V9e
酷い目に遭っていたことが間接的な原因で兄を好きになったり
既に兄を好きになっているところから始まってるのは結構見たけど
逆に兄が酷い目に遭っていたり
好きになる過程が細かく描写されたタイプは珍しいと思う

何にせよここを覗く楽しみが増えたな
と言うかこれだけ素晴らしい話をたくさん見ても
未だに電波を受信することさえできない自分に絶望した

605:名無しさん@ピンキー
08/02/05 00:53:43 osLE2H6w
今週のスピリッツの読み切りが良質の姉萌えだった
キモさ薄めで義理だけど・・・

606:名無しさん@ピンキー
08/02/05 01:10:13 l91OgZeX
>>604
いやいや、その内素敵な電波が降りてくるよ。

しかし困った事に電波は場所時間を選ばない……

テスト中、入浴中、妹との会話中など微妙に困るときばかりなんだ。
常にメモの準備をおすすめs

607:名無しさん@ピンキー
08/02/05 06:26:38 F052kRC3
そのメモを妹に見られたらどうするんだ、お前!?

608:名無しさん@ピンキー
08/02/05 07:22:05 bVFDMqKa
フラグが立つわけだな。

609:名無しさん@ピンキー
08/02/05 07:36:47 0FOF56wq
監禁フラグですか

610:名無しさん@ピンキー
08/02/05 08:48:24 gYmEZsjP
死亡フラグなら>>602に立ってるがな

611:名無しさん@ピンキー
08/02/05 16:28:29 xUZQr5qg
キモウトモーターズ

そんな電波。

612:ハルとちぃの夢
08/02/05 18:17:34 gFkNYsmZ
短いですが、投下します。


613:ハルとちぃの夢
08/02/05 18:19:38 gFkNYsmZ
 その日の朝、遥が康彦の部屋に侵入しようとしていた。
 昨日にトラウマを発症させた兄の身体を心配して、というのが建前としている。

 「兄貴、まだ寝てるよね?」
 小声で言いながら、兄を起こさないよう、慎重にドアを開ける。

 部屋の中では、康彦が規則正しい寝息を立てて熟睡していた。
 それを見た遥は安心して、胸を撫で下ろす。
 ”これなら早起きも悪くないな”
 そう思うと、普段の自分の低血圧が妬ましく感じられる。

 遥は足音を立てないよう、慎重に兄のベットに近付く。
 そして兄の顔を覗き見ると、自然と顔が綻んできた。
 ”この寝顔…私だけが、私だけの…”
 普段に、生意気で兄の事を意識していない妹のフリをしている為か、こういう時に暴走が止まらなくなる。
 ”キスしようかな?…男の人は朝に元気だって聞いたから…”
 遥にとって幸せな妄想が頭の中を占めると、真っ赤に染まったその顔は 締まりが無くなっていた。

 そんな中、康彦の携帯が遥の目に止まった。
 そうなると、その携帯が遥にはどうしても気になり出してしまう。
 ”今は別の事をしたいんだけどな”
 そう思いながらも、遥は康彦の携帯を手にとった。

 着信アリ、256件
 「はあ?」
 画面に表示されたその文字を見た時、遥の口から間抜けな声が漏れた。

 マナーモードにしてあった為、疲れ切っていた康彦が気付かなかったのだろうが、それでも異常な着信数である。

 どんな奴がかけてきたのか、そう思った遥は、着信履歴を調べてみた。
 「はあ?」
 前の焼き回しのような溜め息が、また遥の口から漏れた。
 発信相手の名前が”?”になっていたのだ。
 そして、256件全てがその”?”からのモノだったのだ。

 女か、そうと思ったが断定は出来ない。
 この兄は時に厄介な相談相手を持つ事がある。
 以前にも、友人だという相手からの相談を一晩中受けていた事もある。


614:ハルとちぃの夢
08/02/05 18:21:45 gFkNYsmZ
 かけ直して確認したかったが、相手の性別も分からない中で、痕跡が残るような真似は裂けたかった。
 兄のプライベートである携帯を確認した、という事実をまだ、知られる訳にはいかないからだ。

 「全く兄貴は…」
 携帯を閉じ、眠る康彦の顔を見ながら、遥が苦笑とともに呟く。

 困っている相手は放っておけない、頼られれば全力を尽くす、そう言った部分は遥が兄を好きになった理由の一つだ。

 大概にして欲しい、と思う事もある。
 昨日の寝不足も、この電話相手が理由だろうし、自分の身体を考えればほどほどにしてもらいたい。
 そんな相談相手が泥棒猫に化けないとも限らないからだ。

 そんな遥の心配をよそに、康彦は安らかな寝息を立てている。
 「やっぱり兄貴には私が必要だよね?」
 兄の寝顔に顔を近付けながら、遥が呟く。

 遥がなりたいのは、かつての楓のような、唯一無二のパートナー。

 「こういった問題も、二人で力を合わせて解決していこう」
 兄の唇に自分の唇を近付けながら遥が続ける。
 「これはそんな誓いの…キス…だから…」
 自分に言うように呟き続ける。

 「兄ぃ大丈夫!」
 後一歩の距離を詰める前に、智佳の元気な声が康彦の部屋に響いた。

 その声で康彦が起きてしまった為、康彦の頭が遥の鼻に激突すると言う事故が起きてしまい、遥は悶絶する他なかった。

 「何やってんだ、お前は?」
 呆れたよう康彦の言葉に、遥は、何でもない、と涙目で答えた。



 そんな遥を、暗い瞳で見つめる智佳の姿があった事には、康彦も遥も気付かずにいた。

615:ハルとちぃの夢
08/02/05 18:22:24 gFkNYsmZ
投下終了です。


616:名無しさん@ピンキー
08/02/05 18:22:42 Pm7beOIF
遭遇支援?

617:名無しさん@ピンキー
08/02/05 18:25:00 Pm7beOIF
>>615
GJ!
誤解(?)が修羅場を生みそうな気配…。楽しみにしてます。

それから支援失敗サーセン

618:名無しさん@ピンキー
08/02/05 18:34:53 0OQ43qnm
リアルタイムktkr!

兄貴……なんて素晴らしい言葉。
本当に、こんなキモ妹が欲しい。

619: ◆busttRe346
08/02/05 20:54:16 96z8JXf5
>>615GJ!!各キャラクターそれぞれ個性あって読んでて楽しいです。精進せねば…
監禁トイレ7話投下しまっす

620:監禁トイレ⑦-1
08/02/05 20:55:56 96z8JXf5
コンコン。
母親がドアを叩く。その控え目な音を聞くだけで彼女の人当たりの良さ、物腰の柔らかさが窺える。
「達哉君、お夜食作ってきたんだけど…」
ドアが開き、花苗の頭一つ上の空間に顔が現れた。
「ありがとう、花苗さん。お、味噌汁付き!!」
成長期を迎え、溜め込んでいた分を放出するかのように伸長した達哉だ。両腕を双子に引っ張られていた頃の面影は微塵もない。味噌汁の匂いを嗅いで笑顔を浮かべる達哉。花苗はそれを嬉しそうに眺め、
「勉強頑張ってね」
と声をかける。
はぁい、と間延びした返事を外へ送り出すとドアは閉まった。

「こんな夜中に何してるの?」

微笑んだ花苗に右側から投げ掛けられる、絶対零度の言葉。

「母親のくせに…汚らしいですよ、息子に愛想振りまいて…」

左から投げ掛けられる、冷酷無比の罵倒。

廊下の奥、暗がりにひっそりと立つ双子の姉。
階段を背にして、嫌悪を顔に滲ます双子の妹。

少しずつ距離を詰め互いの手が届く範囲に至った時、母親の顔面に二つの拳が突き刺さった。
倒れ込む母。
フローリングの床には点々と血が垂れる。

髪の毛を掴み、顔面に唾とありとあらゆる罵詈雑言を浴びせかける姉。
手を踏みにじり、脇腹を蹴りあげる妹。

それでも母親は、屈しなかった。騒ぎに気付いた達哉と父親が双子を押さえ付けた後も、涙を流す事は無く。彼女は最後まで、娘達と対等に睨み合っていた。



達哉が父親から都内の進学校を受験するよう言い渡されるのは、この一週間後の事である。





621:監禁トイレ⑦-2
08/02/05 20:58:09 96z8JXf5
満腹だ。
自分で食べる分だけは意地でも蕾の介入を許さなかった為、なんとか人並みの食事をする事が出来た。
ただ、しばらくツナサンドは食べられないだろう。
窓は靄のかかった群青色に染まっている。いつの間にか陽は沈んでいたらしい。結局一度たりとも、外から人の気配を感じ取れる事は無かった。一体僕のいるトイレは何処に位置しているのだろうか。

「義兄さん」

蕾が耳元で囁く。
「っていうかお前は何で僕と腕組みしてるんだ!!囁くな!寄り掛かるな!!知らない人が見たら事後だと思われてもおかしくないぞ!!」
「落ち着いてください、義兄さん。ここには私達しかいません」
…いや、例えだよ例え。
「それに事後というのもあながち間違いではないでしょう。実際、私は軽く腰が抜けかけました」
「…キスでか」
「ええ、素晴らしい舌使いでした」
僕は使ってない。絡めてきたのも舐めあげてきたのも吸ってきたのも、全部お前だ。こっちは下半身の制御に手一杯だった。

会話しているそばからトイレ内は暗くなっていく。冷え込みも厳しくなってきて僕はダウンの前をかき寄せた。

「そろそろどちらを選ぶか決まりましたか…?」
蕾が質問してくる。薄暗い空間の中なので表情を窺い知る事は出来ない。ただ目だけは僅かな光すらも逃さず封じ込めたように、輝いている。瞳が反射する光はナイフの切っ先のように鋭い。
「全然…。というより選ぶ事自体したくない」
「なら、ずっとこのままでいますか?私と義兄さんと姉さんの三人で」
「絶対に嫌だ」
「同感です。私も義兄さんが他の女性と一緒にいるところなんて見たくありません」
僕はどちらとだって一緒にはいたくない。
「…仮に」
トイレの中が急に白く瞬いた。蛍光灯がついたのだ。どうやら水道と同様、電気も生きているらしい。


622:監禁トイレ⑦-3
08/02/05 21:01:38 96z8JXf5
「仮に、僕がお前を選んだ場合姉ちゃんはどうなるんだ?」
白い光、白い壁の中で体育座りをしている萌姉ちゃんを見る。今彼女は起きているのだろうか、それとも眠りこけているのだろうか。
「口で言って理解してくれるならそれで良いです。でも…そうはならないでしょうね」
「ならどうするんだよ?」
「殺しますよ、勿論。二人とも覚悟のうえでここにいますから」
平気で「殺す」だの何だの言わないでくれ。誰しもその言葉を口に出すだけなら経験はある。例外なく僕も。だが実行する決意を秘めて発した事など、一度もない。
「何でそこまでする必要があるんだ。殺さなくたって良いだろう?取り合うのが僕じゃなくたって良いだろう……?」
「義兄さんでなければ駄目なんです。私も、姉さんも」
「僕は命を賭けてまで好かれる程、魅力的な人間じゃない」
「義兄さんを愛するのも命を賭けるのも、私達の自発的な行動です。お気になさらず」
結局、考え方の根幹が違うのだ。二人にとっては恋も愛も一方向にしか伸びる事のないベクトル。どうやら説得すらも困難なようだ。
「義兄さんに初めて会った時」
蛍光灯を見つめながら蕾は呟いた。
「あの時は思いませんでした。まさかこんな風になるなんて」
「僕もだ」
今でも信じられないくらいだから。いっそ夢ならどんなに良いか。
「気付いた時には自分でも驚くくらい、義兄さんの事を愛していたんです。きっと一番最初に会った時から私は惹かれていたんです、義兄さんに」
あまり小さい頃の記憶は残っていないが、いつも姉さんの後ろにくっついていた貧弱な子供だったと思う。よくぞあんな情けない少年に恋心を抱けたものだ。
「最初は…庇護欲だったのかもしれませんけどね。でも、成長していくにつれて男らしくなっていく義兄さんを見て。
あの腕で折れるくらいにきつく抱き締めて欲しい、低い声で愛していると囁いて欲しい、胸板に頭を乗せて、心臓の鼓動を共有したい。そう思ってしまったんです」
途中、若干声がうわずっていたものの、ほぼ全文をきわめて冷静に語ってくれた。話だけならまさに「恋する少女」だ。最近の「恋する少女」は過激なようだ。
何せ好きな人間を監禁してしまうんだから。『本当は恐ろしい「恋する少女」』とでも改名しておくべきだ。


623:監禁トイレ⑦-4
08/02/05 21:03:15 96z8JXf5
――ブーン、ブーン、ブーン。

ああ、またこの音か。僕の眠りの時間だ。
「時間か」
蕾は携帯を開き、ディスプレイを見ながら、
「時間です」
と答える。
蕾はリュックの方へ歩いていき、中から液体の入った瓶を取り出した。ハンカチに液体を染み込ませていく。再度僕に近付くと口にハンカチを当てた。
「義兄さん、最後にアドバイスをしておきます。義兄さんの性格は良く知っています。選べと言われても選べないのでしょう?自分の選択に人の生死がかかっているんですから、当然です。だから、こう考えてください。
『ほんの少しでもどちらがどちらより好みか』。
それだけで良いんです。それだけ答えてください。後は、私達がやりますから…。さぁ、答えて…」
肉体疲労が薬の効果とあいまって眠気を呼び込む。返事をする気力も起きない。なんとか首を振って拒絶の意を示した。

「愛しています、義兄さん」

蕾の唇が、僕の額に触れる。




不思議な事に、嫌な気はしなかった。

624: ◆busttRe346
08/02/05 21:07:58 96z8JXf5
投下終了です。もう一人のキモ姉は次回登場予定なのでもうしばらくお待ちくださいノシ

625:名無しさん@ピンキー
08/02/05 21:50:47 2zVvEnp4
ぐわー駄目だ!
俺はこのキモウトを愛せねー!
むしろ殺された義母さんの方に情が!

626:名無しさん@ピンキー
08/02/05 22:16:55 Ca0vhlSr
>>615
着信256件こええw

>>624
この状況でもう1人のキモ姉とか修羅場すごいことになりそうだなw

>>624>>615お二方ともGJ!

627:名無しさん@ピンキー
08/02/06 10:36:16 K0pnYyOi
GJ!



628:名無しさん@ピンキー
08/02/06 12:47:52 iNnGIjZw
妹の手作りギョーザうめえwwwwwww

629:名無しさん@ピンキー
08/02/06 13:19:27 23FcO5Km
>>628おい、後ろで歯ぎしりしながら餃子持ってるのってお前の姉ちゃんじゃないか?

630:名無しさん@ピンキー
08/02/06 14:09:16 iPZNQ/Ks
>>628
あいやー、おにさん私の手作り餃子おいしかたアルか?
吐いたり下したりするくらい食べてもらえて妹冥利に尽きるアル。

我愛称、おにさんにはこれから毎日点心を作ってあげるアル。
新鮮なダンボールが手に入ったので明日は肉まんアルよ。

631:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:39:42 c86tcY6Q
姉妹の何かが混入しているのは、キモ姉妹持ちの食事なら基本でしょ。


投下します。

智佳の過去話になります。


632:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:41:06 c86tcY6Q
 康彦の部屋から、智佳は早足で台所に戻っていた。
 姉、遥の行動に、自分でも制御しきれないような感情を抱いてしまったからだ。

 「兄ぃは…兄ぃの側だけからは…」
 「その為にも、ハル姉は大事…必要な人…」
 智佳は、まるで呪文の様にそんな言葉を口ずさんだ。


 幼少の頃、病弱だった智佳の側には、常に両親がいた。
 その為か、智佳は両親に依存し過ぎる様になっていた。

 だが、智佳が小学校に上がる頃、智佳の体が健康に成り始めた時から、両親の不在が増え始めた。
 それは、智佳の治療費に貯えを使い果たしてしまった為、両親共に仕事を増やしたからであるが、
 智佳は、両親に捨てられたと感じてしまったのだ。
 毎日の様に泣き続ける智佳を慰め、癒してくれたのが、兄だった。
 智佳の依存する対象が、両親から兄に変わっていくのに、それほどの時間は要らなかった。

 それだけなら、兄の存在は両親の代わり、というだけだったかもしれない。
 だが、一つだけ兄と両親が智佳に接する態度で違った事がある。
 兄は智佳を一人の人間として見た。
 一緒に笑い楽しみ、悪さをすれば叱られ、時にこちらが叱り、嬉しい事があれば褒めてくれる。
 それが智佳に、自分の存在の確かさを感じさせた。

 小学生以前の病弱で病院で過ごす事も多かった智佳と、小学生以降の健康で外で遊べる智佳との違い、であったのだが、
 それらは両親が智佳には与えられなかったモノだ。

 兄の側、そこが智佳にとって、自分の存在をしっかりと確認出来る唯一の場所になっていた。

 眠れない、そう言っては兄のベットに潜り込んだ。
 兄に手を握って貰えるだけで、頭を撫でて貰うだけで幸せな気持ちになれた。

 ある日、その時に見ていたアニメの真似をして、寝ている兄にキスをしてみた。
 それが今までにない幸福感と気持ち良さを、幼い智佳に与えた。
 ”起きている時にやってもらいたい”
 そうとも思ったが、その行為がイケない事、との気持ちを智佳に与えていた為、
 それは兄が寝ている時だけの、智佳の秘密になっていった。


633:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:41:54 c86tcY6Q
 「ハル姉は必要…」
 智佳がもう一度、自分に言い聞かせる様に、小さい声で、だが、しっかりと呟く。


 「ちぃちゃんはお兄ちゃんの事、愛しているかな?」

 それは智佳が小学校6年の時の話だ。
 表情を暗くして血の気の失せた顔をした遥を心配した智佳が、遥の部屋に行った時に言われた一言。

 「うん。とっても大事な人」
 既に智佳の中で大きくなりすぎていた兄の存在を、智佳にはどう言葉にして良いか、分からなかった。
 だから、そう答えた。

 「お兄ちゃんはいま、悪い女に騙されそうになっているんだ」
 「だから、二人でお兄ちゃんを救ってあげよ!」
 遥が智佳の両目を見ながら言う。

 遥の言葉の意味は、その時の智佳には良く分からなかった。
 ただ、その時の遥が恐ろしいモノに見え、曖昧に”うん”とだけ返事すると、逃げるように、その場を後にした。

 智佳が遥の言葉の意味を理解したのは、それから数日後の事だった。



634:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:43:01 c86tcY6Q
 土曜の午後にその女は家に来た。
 「あ、気にすんな、アタシはヤスに届けもんがあっただけだから」
 一応は兄の部屋に通し、お茶でも出そうとした智佳を、その女はそう言って留めた。
 この女が、姉の言っていた”悪い女”なのだろう。

 「智佳ちゃんだっけ?」
 相手を観察するように眺めていた智佳に、相手の女が声をかけてきた。
 「はっはい?」
 その声に、完全に不意を付かれた智佳が、裏返った声をあげる。
 「ハッハハ、そんなに緊張しなくても大丈夫だぜ?」
 智佳の返事に相手が愉快そうに笑う。
 「これなら、ヤスがシスコンになるのも分かるけどな!」
 智佳の事を一通り見た相手が、そう言って一人納得していた。

 「ヤスの奴は良くあんたらの事を褒めてるからなー、良く出来た妹だってな」
 「ほんとですか!」
 智佳の顔を見ながら言葉を続ける相手に、智佳は思わず、引き込まれるように答えた。
 「ほんともほんと!アイツにアンタらのコトを聞いたら、いっつも鼻の下伸ばしてるぐらいだからな」

 その話を聞いた智佳は嬉しくなった。
 兄が自分を褒めていてくれている、その喜びは、アンタらという言葉に覚えた違和感を忘れさせるモノだった。

 それと同時に智佳は相手の女性に好意を持った。
 言い方は乱暴だが、相手を見て、相手の事を考えながら喋る姿は、智佳にとって好ましい性格だからだ。

 だから、智佳も自分では知り得ない兄の学校での様子を質問し、相手もその質問に答える形で、会話が盛り上がった。


635:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:44:20 c86tcY6Q
 「ただいまー」
 相手との会話が途切れた位に、兄が買い物から帰ってきた。

 「あ、兄ぃお帰り!」
 「ちぃ、ただいま」
 「誰か来てるのか?」
 玄関まで出迎えた智佳に、普段と見慣れない靴を見た兄が聞く。
 「よぉ、邪魔してるぜ」
 智佳が答える前に、楓と名乗ったその女性が、下に降りて来て、兄に声をかける。
 「あれ、楓?どうしたんだ?」
 楓の姿を確認した兄が不思議そうな顔をして言う。
 「わざわざ、英語のノートを返しに来てやったんじゃねぇか」
 「あ、そうか。悪い悪い!」
 「ったく、感謝しろよ、こうやって届けてやったんだから…」
 「待て!お前が英語の時間に寝ちまって、ノートをとってないって言うから貸してやったんだろう」
 「ハッハハ、まぁ、細かいコトは気にすんな!こうやって返しに来てんだから」

 兄と楓とのやり取り、
 智佳は一つだけ、疑問を抱いた。
 楓を確認してからの、兄の表情だ。
 楽しそうな、嬉しそうな、喜んでいるような表情。
 それは、智佳が今までに一度も見た事がない表情だった。

 「まぁ、ヤスが帰ってくる前に、智佳ちゃんにヤスの悪行全部を話せたからイイんだけどな!」
 「悪行って…、お前は何を話した?」
 「さぁねぇ?ネッ、智佳ちゃん!」
 「え…あ、うん」
 兄をからかう様に茶化しながら言う楓、そんな楓の言葉を笑いながら受け止めた兄、
 そして、そんな兄の様子に何とも言えない感情を抱き、戸惑う智佳。

 兄と楓の二人は、その後も、智佳には内容の分からない話を続け、
 ある程度の時間になった頃に、兄が楓を送っていった。


 楓がいる間、智佳は複雑な気持ちに襲われていた。
 兄の側にいたハズなのに、兄が側にいない感覚、その感覚からきた恐怖。
 その恐怖がそれまで好意を抱いていたハズの相手に、嫌悪感をもたらしてきていた。


636:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:46:09 c86tcY6Q
 その日の晩、智佳は兄の部屋に忍び込んだ。
 昼に感じた不安を拭い去る為、昔に覚えた秘密を実行する為だ。

 手慣れた感じで、一切の音を立てずに部屋のドアの開け閉めを済ますと、まるで足音を立てないままに兄の元に近寄る。
 何度も繰り返してきた行為なだけに、そこまでは智佳に緊張はない。
 だが、兄の寝顔を見ると、さすがに胸の高鳴りを押さえる事が出来なくなっていく。

 「兄ぃ…」
 兄の寝顔を見たまま、智佳が呟く。
 今、こうして兄は自分の側にいる。
 智佳はその事実にまず、喜んだ。

 優しく唇を合わせる。
 昔の智佳なら、それで満足していたのだが、得てきた知識と快感を知る身体が、それを許さない。

 兄の口の周りを丁寧に嘗め、少し開いた口から自分の舌を侵入させる。
 その行為が、自分と兄との一体感を味合わせてくれる。
 クチュクチュと静かに響くその音が、智佳の快感を刺激する。

 「ハァハァ…兄ぃ」
 唇を離し、恍惚とした表情で智佳が呟く。
 もっと兄と一体感を手にしたかった。
 その為の、本能か知識か、智佳の右手は自分の股間に、左手は兄の股間に触れようとした。

 しかし、その行為を行う事はなかった。

 「か…え…で」
 寝返りと共に苦しい息の中で発せられた一言。
 その一言で、智佳は我に返った。

 そして気付いた。
 兄の心は今、ここにない。
 その心は昼間の女、楓の元にある事を。

 昼間に感じた恐怖の正体。
 兄の側に自分がいられなくなる、兄の心が自分から離れる。

 「兄ぃの側にいるのは私だけ…私一人だけ…」
 兄から身を離し、何度となくそう呟く。
 智佳はその時に決意した。
 自分から兄を奪う者は全て始末しよう、と。

 その始末が終わったら、今の続きを、兄が起きてる時に。
 「私は絶対に兄ぃの側から離れないから」
 その言葉と共に、兄の頬に誓いのキスをすると、智佳は兄の部屋を後にした。



 その翌日から、智佳は遥と積極的に協力しあうようになる。


637:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:47:03 c86tcY6Q
 「ハル姉も今は大事、今は大事な人…」
 自分に言い聞かせる為に、智佳が何度も呟く。


 自分ではない、もう一人の兄の妹。
 自分にはない直感と、高い行動力を持った人。

 そして、兄の事を想う相手の一人。

 今の智佳にとって、遥の存在は必要不可欠だ。
 2年前の”事故”にしろ、遥の存在がなければ、あそこまで上手くイカなかっただろう。

 今、傷を負った兄の元には、今まで通り、二人の妹が必要なのだ。

 多少以上に厄介な相手とはいえ、今は唯一の協力者であり、秘密の共有者なのだ。


 台所に戻った智佳は、冷たい水で顔を洗った。

 今だけは、兄の部屋で遥に向けられた感情を抑えながらイケない。
 今だけは、遥のある程度の行為を黙認しなければイケない。

 最後に、兄の側に自分だけがいる為に。



 顔を洗い終わり、気持ちを落ち着けた智佳は、何時も通りの柔和な笑顔で、二人が降りて来るのを待った。

638:ハルとちぃの夢
08/02/06 19:48:19 c86tcY6Q
投下終了です。

639:名無しさん@ピンキー
08/02/06 20:13:59 23FcO5Km
>>638GJ!!最後はやはり姉妹対決になるのか!?続きをwktkして待ちます

640:名無しさん@ピンキー
08/02/06 22:45:51 rGn7WYzz
>>638
今は大事な人、ってこええw緊張感がw
超GJ!

641:名無しさん@ピンキー
08/02/07 06:09:19 UtoraM4S
((='♀'=))バブー

642:名無しさん@ピンキー
08/02/07 22:59:08 H/JZCd5R
『姉が欲しい』→妹にレイプされる
『妹が欲しい』→姉に調教される
『義理の姉妹が欲しい』→近親結婚フラグ
『俺はひとりっ子』→いとこ・はとこ強襲フラグ
『お腹が空いた』→監禁フラグ
『喉が渇いた』→媚薬フラグ

ここの雑談は難儀だな(´・ω・`)

643:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:00:15 rNmD/ONd
やべえ!! 妹にエロゲー見られた!
しかも題名は「お姉さんに命令しよ!」
これを見た瞬間の妹の目はやばかった。初めて人殺しの目を見たと思った
妹に責められること数分。まったく落ち着く様子もなくただ怒ってる
特に姉という部分が妹を怒らせているようだ。なら妹ならいいのかよ!?
お前みたいな妹が入るから姉が好きなんだよ!
って言ったら無言で部屋を出てった
自分の部屋に籠もっちゃって何度も謝ってんだけどなんにも返ってこない
これなら怒られてた方がまだいいよ・・・
あ、部屋から出てきた。話してくる!

644:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:09:12 EUbZfldl
その後>>643の姿を見た者は誰もいなかった…

645:名無しさん@ピンキー
08/02/07 23:13:15 rbBaKEFP
>>642
『俺はひとりっ子』は義理姉妹or生き別れ登場フラグでもあるから一番危険


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