キモ姉&キモウト小説を書こう!Part8at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part8 - 暇つぶし2ch50: ◆a.WIk69zxM
08/01/13 18:51:13 v8YIn6Tc
 
以上。投下終了です。
 

51:名無しさん@ピンキー
08/01/13 19:14:42 wt+6Zpcb
>>50
gj!!
妹の裏が楽しみ

52:名無しさん@ピンキー
08/01/13 19:26:30 IwIOlLe/
超GJっす!

椿の普段のクールな分、兄に対して異性としての愛情深さは正に業炎の如く熱く激しいんだろうなぁ…


それが表に現れた時を考えると…ゾクゾクするぜ!

53:名無しさん@ピンキー
08/01/13 19:51:16 c8PX/t8a
グッジョブ
キモウトぶりに期待

54:名無しさん@ピンキー
08/01/13 21:24:05 VTzBnzPs
役者がそろったとこかな?

それぞれの群像劇の中でキモウト旋風が吹き荒れる感じかな

55:名無しさん@ピンキー
08/01/13 22:19:02 2ObFWIev
GJ!
続きに期待してます。

56:名無しさん@ピンキー
08/01/13 22:26:38 YEvLOEy6
あーヤベェー
妹の「障害」っていうキーワードにニヤニヤが止まらんぜよ

57:名無しさん@ピンキー
08/01/13 23:11:22 8J4gORia
お兄ちゃん………………






障害は…取り除く…!!
チュドーン



任務…完了……!
お兄ちゃん奪還に成功…
これより帰還する…


58:名無しさん@ピンキー
08/01/13 23:53:35 f6cXn90R
なんか表立っては見えないけれど、裏ではすごい強い情が渦巻いてるって感じだなー
とりあえず続きを楽しみに待っておこうかな
GJ

59:名無しさん@ピンキー
08/01/14 21:17:08 1Xy/bgtC
裸で待機

60:名無しさん@ピンキー
08/01/15 12:15:56 ULAZOZIV
俺も裸で待機っと

61:名無しさん@ピンキー
08/01/15 12:29:06 x44duPUN
ヤンデレ娘がキモ姉妹に惚れたら…。


62:名無しさん@ピンキー
08/01/15 14:06:06 T2ktN4z9
>>61
姉妹に惚れるということは、ヤンデレ娘は百合?


63:名無しさん@ピンキー
08/01/15 14:23:03 GKmy2MC2
>>62
溺愛する弟に近づく泥棒猫を抹殺せんと、今まさに呼び出した彼女へ襲いかからんとするキモ姉。
しかしそれは泥棒猫の巧妙な罠だった。
弟の心を奪った泥棒猫の真の狙いは、キモ姉自身だったのだ!
だがそうしてカミングアウトして逆襲するも、キモ姉の弟への愛ゆえに自分を受け入れられず、次第に病んでいく泥棒猫。
彼女を忘れられないままの弟君。
そんな弟に心を痛めながら、執拗なヤンデレ百合ん娘の猛襲を受けるキモ姉の明日はどっちだ!?

という話だな? 答えは聞いてない!




64:名無しさん@ピンキー
08/01/15 14:56:29 T2ktN4z9
しかしその展開は、誰かが姉の耳元に「両手に花」という毒を流し込めば
ハッピーエンド一直線ではないか。
弟がハッピーじゃない? 弟など問題ではない。

65:名無しさん@ピンキー
08/01/15 18:42:08 xCQmHcxz
というかこのスレ的には百合はアリなのか……

66:名無しさん@ピンキー
08/01/15 18:42:29 v4FAGcWj
投下町wktk

67:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:16:52 ljfFOZGd
百合はイラネ・・・

68:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:33:34 XFqVyk9Q
うーん…俺もパスで

69:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:37:46 yMIaes/6
百合がどうこう以前に、姉が「両手に花」で喜ぶこと自体ありえない。

弟が好き、弟が全て、弟以外なにもいらないし、どうでもいい。
人はそんな女性を指差して、「キモ姉」と畏れ敬うのではないかな?
弟の心を奪った女なんぞ、属性が百合であれヤンデレであれ、姉にとってはただ邪魔なだけ。

70:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:49:09 T1mFZBPt
弟クンを支えるふりして依存してるからいいんだよな

71:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:53:33 xFGu4oee
百合は苦手だ。

72:名無しさん@ピンキー
08/01/15 21:47:08 5eRnDUho
女からセックスによる性的興奮を得るのに最低限の男とチンポは必要不可欠だ
そう考えると百合とは実に不毛なものだ

73:名無しさん@ピンキー
08/01/15 22:07:18 xsZft5eY
ユリモウトはダメですか?
実の姉を百合地獄に堕とす魔性の妹
姉に近づく男は痴漢やレイプ魔の濡れ衣をかけて排除

74:名無しさん@ピンキー
08/01/15 22:17:34 Q4qszNzT
つか百合スレあるだろ?

75:名無しさん@ピンキー
08/01/15 22:24:16 T1mFZBPt
間をとって姉弟で女装シチュあたりでどうか

76:名無しさん@ピンキー
08/01/15 23:31:04 KgNZ3/bv
百合ものは百合スレへどうぞ

77:名無しさん@ピンキー
08/01/16 00:18:34 s2+U3dfw
>>75
男みたいな姉と女みたいな弟という電波を受信した。

78:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:27:16 CcnX7+hA
投下します。

ジャンル キモウトの、ラブラブ逆レイプ
キモウト度、 低~中
修羅場 無し
糖度  虫歯に注意
変態度 低 普通のSEX 軽い緊縛プレイのみ
グロ、流血  無し

79:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:35:13 CcnX7+hA
「……兄さん……」
 金曜日の夜だった。妹の部屋の前を通りかかったとき、俺を呼ぶような声が聞こえた。
だから、扉を開けた。
ノックを忘れたのが、全てを変えるキッカケとなった。


       『キモウトより愛を込めて』


 妹は、右手を股間に、左手を胸にあてていた。
下半身は、”肌色”だった。下着も何にも、無かったのだ。
上は、上着がずらされ、けしからんほどふくらんだ胸が頂きまで丸見えになっていた。
その上着は……俺の洗っていないパジャマだった。
妹は、かつて見たことの無いようなうるんだ瞳と惚けた顔で俺を眺め、……俺は見てはいけないものをみた直感で、そっと扉を閉めた。
俺なりに配慮したつもりだった。

80:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:36:04 CcnX7+hA
 俺の妹は、美緒という。
ストレートの黒髪、知性と優しさに満ちた瞳、美しく通った鼻筋、桜色の控えめな唇、それらのパーツを絶妙に配置した小ぶりの顔で、ご近所と高校随一の美少女である。
妹を見慣れたせいで、俺はもてないくせに女への顔の評価がむやみと厳しくなってしまった。
 そして天は妹にだけは惜しみなくなんでも与えたようでスタイルも抜群だった。
160cmほどのちょうど良い身長に、良く育っているが体型を壊していない胸、引き絞られたウエストにこぶりな尻と、モデル並みに伸びた白い足が続く。
頭の方もこれまたそこそこ良く、運動もばっちりである。
美人コンテストには幼児のうちから他薦で何度も入賞し、小学校では、学校の特集をした地方局のTV番組で長々と出演していた。
中学生にもなると、男女の取り巻きができて、クラスの中心となり、男女双方からのラブレターに事欠かなかった。
それでいて性格は優しく奢らず慎ましい。
まさに、たおやかな美少女という形容がぴったりで、親も自慢の娘だった。

 俺? 俺のことはどうでもいいと思うのだが……。
わかった、手短に説明する。俺は大学生。
自分を評するなら偏って根暗な凡人というのが正しい。
男だらけの理数系の学部に入り、実験とレポート三昧で、青春を浪費している。
友人は、オタクな奴が少数なだけ。根暗で孤独癖があり、協調性は無い。
両親の俺への評価はそれなり。異性からの評価は問題外。以上。

 寄り道をした。
 そういうぱーふぇくとがーるな妹の思わぬ姿をみて、俺はちょっと驚いただけだった。
もっともこのときは、妹が俺の名を呼んでいたことと、”俺の洗っていないパジャマを着ていた”意味を見落としていたのだが。
(ま、年頃だから、オナニーのひとつもするよな)
そんな陳腐な結論で妹の痴態を振り払い、俺は部屋に戻ってゲームを再開した。
 興奮しなかったのか? と馬鹿な事を聞く奴もいるだろうからあらかじめ言っておく。
妹がいかに美少女だからって、家族なら興奮したりはしないもんだ。
それに、妹とは割と大きくなるまで一緒に風呂に入ったり、一つのベッドで寝たりしていた。
もちろん、大きくなってそういうのは良くないってわかり、妹が中学生の時に止めたのだが。
 そういう訳で、俺が童貞だからってみさかいをなくすようなことはない。
周りが思うほど、俺はけだものではない。単に底抜けの馬鹿だっただけだ。
ともかく、俺はゲームをとりあえず区切りのいいところまで進めて、速攻で爆睡に入った。

81:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:37:22 CcnX7+hA
 目が覚めると、枕元にパジャマを来た妹が立っていた。土曜の朝になっていた。
「おはようございます、兄さん」
 こいつは、家の中でも敬語を使う真面目な女だった。
俺は大きくあくびをしながらのびをしようとしたところで、手が上がらないのに気づいた。
「……あれ?」
「手と足は縛っています」
その言葉でベッドに磔になった事実を認識して、俺の頭脳は今度こそ本当に覚醒した。
手足は荷造り用のビニール紐でくくられ、俺自身はトランクス一枚の姿だった。
声を頼りに妹の顔を探すと、そこには怖いくらいに思い詰めた顔があった。
「兄さんに話があります」
「……話はともかく、なんでこんな事を」
抗議を込めて妹をにらむが、異様な迫力をたたえた妹の目が俺をにらみ返し、思わず俺は視線をそらした。
……見つめるとやばいものってのは、世の中にはいろいろあるわけで。
「兄さんには、逃げてもらいたくないのと、ちゃんと話をして欲しかったのでこうしました」
情けないことに俺はうなずくしかできなかった。
そんな俺をみながら妹がかすかに頬を染め口ごもった。
「……兄さん、昨日……その……」
さすがに鈍い俺も気がつく。
「あ、ああ。……気にするな。俺は忘れるから、おまえも気にするな、な?」
普通の妹ならこれでよかったと思う。
だが、なぜか俺の返答は妹の逆鱗を引っ掻いたようだった。
「……忘れる?」
妹の美しく細い眉毛が、剣呑な気配をはらんで逆立った。
「お、オナニーは誰でもするしさ……、どうしたんだよ?」
「忘れておしまいにする気なのですか? なかったつもりにする気なのですか?」
「へ? 何が?」
このとき俺はまったく妹の言葉がわからなかった。
 ふと妹が、俺に向かってきて、ベッドの上に乗った。
そして俺の下腹部に腰を下ろした。柔らかい感触が意外さを俺にもたらす。
くだらないことに囚われてると、妹は着ていたパジャマを脱いでいた。
とはいえ、驚くことでもない。下にもう一枚男物のパジャマを着ていたからだ。
男物?
「……それ、俺のパジャマ?」
何気なく指摘した俺自身が、違和感を感じていた。なぜ、俺のパジャマ?
 だが、妹はそれを無視して話を続けた。
「兄さん、妹が自分で慰める姿を見たなら即座にけだものになって襲うのが兄の礼儀でしょう」
「……はぁ?」
「ましてや、部屋に鍵も掛けず、その上、タイミングを見計らって兄さんを呼んだのですよ。
なのに兄さんときたら、まるで間の悪いところに出くわしたって顔して行ってしまうんだから」
「……」
「全く、スルーされた私の身にもなってください」
そういうと腕組みをし、頬をふくらませて俺を睨んだ。
 だが、このとき俺は自分の聴覚を100%で疑っていた。
普段の慎ましやかで冷静な妹が発するとは思えない言葉だったからだ。
「襲うって、誰が、誰を? スルーって?」
「……兄さんが、私をです」
「……なぜ俺がおまえを襲わなければならない?」
「私のあられもない姿で獣欲が起きませんでしたか?」
 妹は少し不安そうな顔で俺に尋ねたが、俺の脳は言葉の意味を理解せず無駄に空転していた。
そんな俺の表情を読んだらしい。妹は、やがてため息を一つついてつぶやいた。
「……そうですか。兄さんを縛ったのはやり過ぎかとも思ったのですが、これで良かったのですね」
「あのー、美緒?」
しばらく何かをぶつぶつとつぶやいた後、美緒はいきなり顔をあげた。
「……兄さん、よく聞いてください」
そして俺の目を見据えて妹は、はっきり宣言した。
「兄さん、私は、兄さんを、女として、愛しています。兄さんに抱いてもらいたいのです」

82:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:40:42 CcnX7+hA
 気がつくと妹の顔が、真っ赤になって俺に近づいていた。
腕が伸び、俺の顔が細く柔らかい手に固定される。
えっと思った時は、すでに唇が重ねられていた。
小さく柔らかいくせに、俺の口を蹂躙しつくす意志をもって、舌が口の中を這い回る。
俺の舌が絡め取られ、妹の舌にしごかれて、それだけで下半身が堅くなった。
下品な音を立てて、唾液がすすられて、ようやく俺の飛んでた意識が舞い戻ってきた。
妹が一心不乱に俺の口をむさぼっていた。
しかも目をあけて、獲物を絶対に逃さないというような光を目に映していた。
 長い時間が過ぎたと思うが、実際は数分だろう。
ようやく妹が顔を離すと、感触を楽しむかのように舌で自らの唇をなめ回して、口を開いた。
「ずっと好きでした。幼い頃からずっと。
小学校卒業するころには、既に兄さんとSEXすることを考えてました」
その言葉で俺は盛大に咳き込むこととなった。
「だから、これ……」
そういって、妹は俺のパジャマの襟をつかんだ。
「兄さんのパジャマを着て慰めると兄さんに愛されてる感じがして、それで我慢してきました」
「が、我慢ですか……」
「兄さんが悪いんです。添い寝も一緒のお風呂も禁止するから。……だからどんどん我慢できなくなって」
「……美緒、俺たちは兄妹だよ? 近親相姦はいけないんだよ?」
「近親相姦? 確かに一般的にはタブーですね」
頬を染めていた妹が、この単語で顔色を元に戻した。
そして俺はやっと、まともな返答が聞けて現実感覚を取り戻したと思った。
「そうだ。許されないことなんだ。法律で禁止されているしな」
 だが俺の言葉で、美緒がにやりと笑う。獲物が罠にかかった時の笑いだった。
「で、なんの法律で禁止されてるんですか、兄さん?」
「え?」
「近親相姦を禁ずる法律を教えてください。それと罰せられた人も」
「……ほら、三等親以内は結婚できないとか」
「別に結婚しなくても近親相姦は可能ですよ」
「……えーと、遺伝子的に悪い子供が生まれるとか」
「それ、法律ではありませんよ」
押し黙った俺の胸に、美緒は唇を寄せて、俺の乳首をなめた。
「そうです。私たちが愛し合うことを禁ずる法律なんて無いんですよ。
ただ世間一般でいけないということになっているだけ」
「……しかし美緒!」
「だから兄さんが誰にも言わなければ、問題はなにもありません。それに……」
そういうと美緒は、俺の下半身のテントを優しい手つきでなでた。
「兄さんは童貞でしょう?」
瞬時に俺の顔が熱くなる。そんな俺を美緒は上げた顔に微笑みえを浮かべて眺めていた。
「初めては大事です。なら、やはり兄さんを一番愛している私が最適なんです」
「でも……」
「兄さんの素晴らしさを知るのは私だけだから、私が兄さんの初めてになるのです。
薄汚い売春婦や、だれにでもさせるだらしない女なんかにあげては駄目です。
私も初めてだから、兄さんに……」
「よせっ、美緒! 処女ってのは本当に好きな人のためにとっとく……」
「……そうです。だから本当に大好きな兄さんにあげるのです」
「美緒っ!」
「今日は新婚初夜。これまでは単なる兄妹でしたが、これからは夫婦で兄妹なのです」
目に異様な光をたたえ恍惚とした表情で美緒はしゃべった。
まだ朝だというつっこみをしたら、殺されそうに感じたので俺は黙っていた。
「さあ、兄さん、夫婦になりましょう。紙切れ一枚でつながった凡百の夫婦ではない、血と愛でつながった本当のつがいに……」

83:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:41:39 CcnX7+hA
 そういうと美緒は顔を俺の脇の下に潜り込ませ、そして歓喜の声をあげた。
「ああっ、兄さんの……臭いが……」
毛ごと脇の下が舐められて、俺は背筋を駆け上がる快感に身をよじった。
脇の下から胸に舌をはわせていた美緒が、つぶやいた。
「……ほんと馬鹿な私。世間体に囚われて、こんな素晴らしい兄さんを我慢するなんて」
妹は胸板に舌をはわせ、乳首をまた舐めた。時折耐えかねたようにため息を漏らし、腰を揺する。
「美緒! 今ならまだ引き返せるから……ぐぅっ」
がりと音を立てて乳首をかまれ、俺は痛みにうめいた。
「引き返す? 遅すぎたくらいです。もっと早く、勇気を出して兄さんが自分で慰めているところに乗り込むべきでした」
「み、美緒?」
胸に這っていた舌がそのまま腹へ降りていく。その下で勢いよくテントを張ったものの事は考えたくもなかった。
「そういえば兄さん、あんなブスで慰めるの、これからは許しませんから。本とDVDは捨てますね」
立てられた妹の爪が俺の脇腹に軽く食い込む。罰ではなく警告の痛み。
「……」
「でも兄さん、安心してください。我慢できない時は私で処理すればいいんです」
俺はさぞ情けない顔をしてたのだろう。美緒は俺の顔をみて優しい笑顔を浮かべた。
 そして美緒の舌は、腹部を這い回って、とうとうトランクスのところにたどり着く。
「な、美緒。考え直せ」
だが、美緒は首を振った。
「もう充分考えました。タブーだと思って我慢もしました。……でも私はやっぱり兄さんが欲しいんです」
いきなり美緒は有無を言わせず俺のトランクスをずり下げた。
俺の男の印が虚空にそそり立つ。そのとき俺はトランクスの前が、やたらに濡れていたことに気付いた。
だがその疑問も美緒の行動ですぐに吹き飛ぶ。
勃起した俺の肉棒を美緒は躊躇無く手でつかみ、ほおずりしたのだ。
「兄さん、兄さん。これを……私に……ください」
普段、清楚な顔立ちで明るくほほえむ妹が、上気した顔で局部に頬ずりし、あげくに舌で舐め始める姿は強烈な倒錯感だった。
俺がもはや声すら出ず、呆然と眺めるだけなのを美緒は了承ととったようだった。
みれば、美緒の左手は自身の局所でみだらな水音を立ててうごめいている。
その左手がパジャマの下を降ろし、右手が上を取り去って、美緒は瞬く間に全裸となった。
肌は上気して桜色に染まり、目は潤んでいて、そして内股もべったりと濡れ光っていた。
美緒は恥ずかしがるそぶりを見せず、膝立ちで俺の腰まで歩み、秘所に俺の肉棒を押し当てた。
美緒の溶けそうに柔らかい膣口が、俺の先端を引き込もうとして吸い付いていた。
「兄さん……、やっと……一つに」
 このとき美緒の顔には、神々しさすら感じる喜びの表情が浮かんでいた。
その表情のままゆっくりと美緒が腰を下ろしていくと、それだけで目がくらむ快感が押し寄せた。
あっけなく俺は一回放ってしまい、それを受けた美緒が声をあげてのけぞり、腹をおさえた。
俺の肉棒は出して僅かに萎えたものの、美緒の壁が巻き付くと、すぐに堅さを取り戻した。
精液が潤滑油になったのかスムーズに腰が最後まで落ちた。
その勢いのまま、美緒の上半身が俺の胸に倒れ込む。
乱れた長い黒髪が自身と俺にからみつくように広がり、その中で美緒は荒い息をついていた。
「美緒、痛いんじゃないのか?……もういい、もうよ……んむむっ」
俺の口を、ひきつった笑みを浮かべた美緒の唇がふさぐ。
美緒の中もまた、どん欲に俺を締め付け、からみついて絞っていた。
「……兄さんが、こんなに熱い……私の中で……あぁん……出したがっている」
美緒は、俺を納めたまま動こうとせず、そのまま俺たちは荒い息の下、無言でつながっていた。
 そして当然ながら、先に俺が耐えきれなくなった。
思わず腰を動かすと、美緒が悲鳴をあげて俺にしがみついた。
「ああっ、兄さん! 私に、私にぃぃぃ」
すでに理性はとんでいて、欲望のままに腰を振って、美緒を下からむちゃくちゃについた。
そんな事をして保つはずもなく、また強烈に蜜壺もからみついたせいもあって、俺はまもなく盛大に妹の中に噴射した。
目の奥で花火が散るような感じに襲われ、そのまま俺は意識を闇に落としていった。

84:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:43:53 CcnX7+hA
 気がつくと、昼過ぎだった。
手足の拘束は解かれていたが、縛られた証としてしびれが残っている。
そしてもう一つの証もあった。全裸の美緒だった。
ベッドの中で俺に抱きついていたのだ。
 その妹の顔をみて、俺は何をしてしまったのかをはっきりと認識した。
「……妹に中出し……俺、終わった」
鬱に浸る俺に美緒は笑った。
「確かに兄さんの赤ちゃんは欲しいですけど、さすがに今は産もうとは思わないです」
「……中絶するのか?」
さすがに俺の顔が引きつるが、美緒は首を横に振った。
「まさか。ピルを飲んでますから」
「ピル?」
「ええ。でもこれから兄さんが私を避けたりしたら、……ピル飲むのを止めます。
そして兄さんの子供を産んで一人で育てますから」
そういうと美緒は自らの腹部を撫でた。
「……兄さん、これから私の事……」
そして美緒は、その顔を不安にそめ、訴えるのを我慢するかのように俺を上目遣いで眺めた。
その瞳にかすかに涙が浮かんでいるのをみて、俺は何かに負けたと感じた。
「……こんな変態妹、危なくて人にやれないよ」
 ため息を盛大について、俺は肩を落とした。
「しょうがない。俺が面倒見るしかないんだよな」
どんと押し倒されかねない勢いで美緒は俺の首に抱きついてきた。
涙と鼻水でぐじゅぐじゅに崩れた声で美緒は兄さんと何度も俺を呼んだ。
いつも済まして優等生だった妹が、本当に久々に見せた泣き顔だった。

 その後、俺は部屋にあったお気に入りのエログッズが全て無くなっているのに気がついた。
その代わりにあったのは……
「美緒、これ、おまえの水着写真……」
「はい、兄さんの定期入れにも私の写真入れましたし、コンピューターの壁紙も私にしておきました。携帯の待ち受けも私のお気に入り写真です」
「……」
「兄さん、むらむらしたときは、私がちゃんとしてあげますから、あんなものは必要ありません」
 がっくりとうなだれる俺に美緒は可愛く舌を出して笑った。
「私だけ変態ってのは悔しいです。兄さんもシスコンにしてあげます」
「……、なにかいろいろと、俺、終わった」
 そんな俺を美緒はほんとうに幸せそうな顔でみつめるのだった。

                                                end

85:キモウトより愛をこめて
08/01/16 01:44:39 CcnX7+hA
投下終了

86:名無しさん@ピンキー
08/01/16 01:47:28 MvKJ+QGx
リアルタイムGJ
なんかほのぼのした感じが出てて良かったです

87:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:37:49 rif8StXo
 思い付いたので投下しますー。

88:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:38:11 S51kFCfY
GJ!&ばちこい!

89:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:38:39 rif8StXo
「三月のライオン」という映画があるそうです。
 寡聞にして内容までは存じません。近所にお済みの方々は、映画を見る習慣がなく、話を聞くことができなかったのです。
 ただ、お屋敷で働く女中の方から、大まかな内容は伺うことができました。なんでも、事故で記憶喪失となった兄を騙して
恋人に扮する、糞にも劣る愚悪な妹の物語であるとのこと。糞ってなんでしょうね?
 兎角、それを聞いたとき、わたしは大変驚きました。
 どんな精神構造をしていれば、それを是として実行させるのでしょうか。とても理解できません。そんなことをする人がい
るだなんて、想像すらいたしませんでした。

 ―なんて素晴らしい。

 啓蒙されたわたしは、愛しの兄様で試してみることにいたします。


 必要なモノはなんでしょうか。
 機械音痴のわたしには、インターネットなんてものは縁遠い。加えて郊外にある図書館に足を向けることも稀にあるかどう
かと云う出不精っぷりを発揮しております。人を記憶喪失にするにはどうしたらいいかなんて、想像することすらできません。
 仕方なしに、一番親しい友人のこころさんに電話で相談してみることになりました。


† † †

90:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:42:19 rif8StXo
なんか投下味吸ってるっぽいのででなおしますー

91:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:44:55 rif8StXo
 もう一度チャレンジしますー

92:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:45:41 rif8StXo
「三月のライオン」という映画があるそうです。
 寡聞にして内容までは存じません。近所にお済みの方々は、映画を見る習慣がなく、話を聞くことができなかったのです。
 ただ、お屋敷で働く女中の方から、大まかな内容は伺うことができました。なんでも、事故で記憶喪失となった兄を騙して
恋人に扮する、糞にも劣る愚悪な妹の物語であるとのこと。糞ってなんでしょうね?
 兎角、それを聞いたとき、わたしは大変驚きました。
 どんな精神構造をしていれば、それを是として実行させるのでしょうか。とても理解できません。そんなことをする人がい
るだなんて、想像すらいたしませんでした。

 ―なんて素晴らしい。

 啓蒙されたわたしは、愛しの兄様で試してみることにいたします。


 必要なモノはなんでしょうか。
 機械音痴のわたしには、インターネットなんてものは縁遠い。加えて郊外にある図書館に足を向けることも稀にあるかどう
かと云う出不精っぷりを発揮しております。人を記憶喪失にするにはどうしたらいいかなんて、想像することすらできません。
 仕方なしに、一番親しい友人のこころさんに電話で相談してみることになりました。


† † †

93:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:47:26 rif8StXo
 こころさん、こころさん。人が記憶喪失になるときってどんなときですか?

「……質問の意図が分かんないんだけど」

 なにかおかしなことを訊ねたでしょうか?

「否、いい。聞かない。面倒事っぽいからね。それでなんだっけ」

 もぅ、こころさんったら。悪いのは頭と顔だけにして下さいな。
 人を記憶喪失にするにはどうしたらいいでしょうか、と質問したのです。

「……質問の内容、変わってない?」

 変わってません。呆けてないで、しっかり聞いていて下さいな。

「……相変わらず丁寧口調の癖に口癖が悪い……まぁいいけど。
 人を記憶喪失にする手段……ねぇ? そりゃ薬品を使うとか、精神的なショックを与えるとか……」

 ふむふむ。

「まぁでも一番古典的なのは、やっぱ頭を殴ることなんじゃない? オーソドックス且つシンプル。無駄がないっしょ」

 頭をなぐ……もとい叩く、ですか。それはどんな風に?

94:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:48:12 rif8StXo
「えっと、昔のアニメとかで見たことない? 都市猟師なんかだと5tって書かれたハンマーで頭ぶん殴ってたけど」

 5トン……やだなぁこころさん、それじゃあ頭なんて簡単に潰れますよ?

「……電話越しに可哀想なモノを見る目であたしを見るな。あーもう! さっきのはアニメの話だって! デフォルメされてん
の! まったくもう、そんくらい分かるでしょうに」

 生憎と日本のアニメからは縁遠い生活を送っておりますので。

「くそう、このジョンブル小娘め。丁寧なのは言葉遣いだけか」

 なんのことでしょうか。ちなみにブラックジョークの本場はブリテンですが。

「……もういい。あんたと話すと疲れる。で、もう良い」

 最後に質問を一つだけ。

「はいはい、なんざんしょ」

 どのくらいの重さのモノで叩けば、記憶って飛ぶものなんでしょうか。

「そんなの決まってるでしょう。―くらい重ければいいのです」

 なるほど。


† † †


 受話器を置きながら、わたしは親友に感謝します。やはり持つべきものは博識な親友ですね。まぁ、面と向かって親友などと
呼ぶつもりは欠片もありませんが。
 時計を確認すると、兄様がお帰りになるまでもうしばしの時間があるようでした。これは幸運。今の内に準備を進めるといた
しましょう。

95:名無しさん@ピンキー
08/01/16 02:49:17 rif8StXo
 投下終了ー。
 続くか続かないかは気分と云うことで。

96:名無しさん@ピンキー
08/01/16 03:24:24 qvhIckLb
とりあえず半年ROMれ

97:名無しさん@ピンキー
08/01/16 08:03:48 SFNzyo/T
>>85
グッジョブ!面白かったです
ほのぼのキモウトは久しぶりだ

98:名無しさん@ピンキー
08/01/16 12:45:22 5tsBnDi8
>>85
このくらいの甘さは心地いいわw
GJです

99:名無しさん@ピンキー
08/01/16 13:02:06 3p39BRCN
>>95
GJ
続きwktkして待ってます

100:名無しさん@ピンキー
08/01/16 15:05:11 UFclApx+
いいね、ほのぼの系が続くね

もっとやれ

101:名無しさん@ピンキー
08/01/16 18:32:54 bdMwI+6d
>>85
GJです
こーゆーキモウトは素晴らしいと思えた

102:名無しさん@ピンキー
08/01/16 23:03:43 kdCTXm01
>>85
これはいいw
GJだわ

103:名無しさん@ピンキー
08/01/16 23:44:09 mBQTKAAJ
>>85
GJ!
良いキモウトなのはもちろんだけど、
兄も良い味だしてるよね。
描写は少ないのに、良いお兄ちゃんなんだなと自然に思えた。

104:名無しさん@ピンキー
08/01/16 23:46:28 WVc0v4qr
>>95
とりあえずお兄さん逃げてぇ~!

105:名無しさん@ピンキー
08/01/17 08:35:06 wNnLYnx5
キモウトに「このまな板!」って言ってみたい

106:名無しさん@ピンキー
08/01/17 10:44:45 gEWF0vvU
>>105
つまり、こうですか?

「お兄ちゃん。なぜ? なぜあたしじゃダメなの? こんなに愛してるのに、何が足りないの?!」
「……色気」


107:名無しさん@ピンキー
08/01/17 11:02:56 sz2p3XC7
その後>>105の姿を見た者はいなかった…
きっとキモウトに監禁されて幸せな一生を送ったのでしょう…
めでたしめでたし。

108:名無しさん@ピンキー
08/01/17 11:38:09 VtUrPW6O
>>106
つまり、こうですか?

「お兄ちゃん。なぜ? なぜあたしじゃダメなの? こんなに愛してるのに、何が足りないの?!」
「……マンコ」








109:名無しさん@ピンキー
08/01/17 11:38:41 NFLvRSbK
>>108

ちょっと待てwww

110:名無しさん@ピンキー
08/01/17 12:30:44 MTvXnNUg
>>108
……弟なのか?

111:名無しさん@ピンキー
08/01/17 13:01:13 gGvEZQDV
キモ(オト)ウトか、あるいはボディが不完全なメカキモウトか…なんだろう?

112:名無しさん@ピンキー
08/01/17 13:24:05 IvslhLEb
フタナリキモウト

113:名無しさん@ピンキー
08/01/17 15:36:20 YX0O9YZP
ショタの弟がヤンデレだったのか。
想像すると背筋が凍った。

114:名無しさん@ピンキー
08/01/17 17:21:41 NhX8aBB4
私は一向に構わんッ!!

115:名無しさん@ピンキー
08/01/17 17:45:15 YX0O9YZP
ならどうぞ!

116:名無しさん@ピンキー
08/01/17 18:39:09 wNnLYnx5
「当たってるぞ…」
「当 て て る ん で す お 兄 様」

117:名無しさん@ピンキー
08/01/17 18:57:49 Vqp7RY+H
勘弁してくれw

118:名無しさん@ピンキー
08/01/17 19:02:15 xcj1pgTd
はい、そろそろスレ違い注意報発令です。

119:名無しさん@ピンキー
08/01/17 19:53:51 YX0O9YZP
>>116
イヤァァァァァァァァァァァァァ!!イメージが崩れるぜえええ

120:名無しさん@ピンキー
08/01/17 20:36:04 Pwg9eSkv
いいぞもっとやれwww

121:名無しさん@ピンキー
08/01/17 21:39:21 3f4xj9ay
>>119
いや、豊満なバストを持つ妹だと夢想すれば良い



と流れを引き戻そうとしてみる

122:名無しさん@ピンキー
08/01/17 22:00:59 VQsAWn7X
>>121
ええと、つまり…

今日の鍛錬を終え、Tシャツを脱ぎ捨てた俺の背に、柔らかいものがすがりつく
「お、おい。当たっているぞ…」
「当てているんです。お兄様」
ああ、背に触れる感触は布地ではなく素肌だ。服越しになら毎日見ている妹の豊かな胸が
今は何の遮蔽物も無しに俺の背に密着している。限りなく柔らかい中で固さを主張する
2つの頂点まで感じられる。なんというか、こう……想いが伝わって来るような錯覚さえ覚える。
そして俺は、この胸が何を求めているのか悟った。
そして俺は妹と共に…なすべきことを始めた。



「さあ、トレーニングだ! 豊かな胸の土台は大胸筋、このまま鈍ると垂れちまうぞ!」
「ハイ、お兄様!」

123:名無しさん@ピンキー
08/01/17 22:32:13 YFMGTcBb
ちょwお兄様www

124:名無しさん@ピンキー
08/01/18 00:05:18 s1JJoNU8
>>105に捧げる

深夜、俺は誰かに肩を揺さぶられて目を覚ました。

「だれだ・・?」
「私です、お兄様・・」

ベッドの脇には、俺の妹が一糸纏わぬ姿で立っていた。

「な、何やってんだ!?」
「その、お、お兄様私を抱いてください!!
倫理に反しているのは解ってます!!
でも我慢できないの!!」

そう言って俺を見つめる妹の眼差しはとても綺麗だった。
だから俺はこう言ってやったんだ。

「このまな板!」
「えっ?」
「俺はナイチチより微乳が好きなんだ、
お前が中学校出たら抱いてやるよ」
「は、はい・・が、がんばって微乳になります!」

そんなある日の夜の出来事でした。





125:名無しさん@ピンキー
08/01/18 11:34:31 +zd/2A05
>>122
イイオニイチャンダナー(;∀;)

126:ある母の日記
08/01/18 15:30:47 fqC3moSK
4月X日
娘の様子がおかしい。
具体的に説明することは難しいけど、娘が息子に向ける眼、見覚えのある光りが宿った眼、あれは妹が兄にするモノじゃない。

5月X日
この一ヶ月、私は慎重に娘の様子を観察した。
無邪気を装って息子に抱き着いて主張し始めた胸を押し当てる、幼さを武器に息子の布団に潜り込む‥、
それ以上に、私が息子と話している時に、私に向けられる嫉妬に狂う女の眼、昔の自分が思い起こされる。
娘はまだ小学生だ、早めに手を打たないと、

7月X日
息子の進学に全寮制の高校を奨めた。全部屋個室ということもあり、息子も乗り気なようだ。息子の独り立ちに淋しさも覚えるけど、これがいいんだ。
娘の眼の光りが本物になる前に二人を離さなければいけないのだから。

7月X日
息子の進学先を娘が知ったようだ。
様子以上に取り乱し泣き喚いたが、これも娘の為、今は心を鬼にしよう。

8月X日
息子の懸命な説得があり、娘は表では落ち着いた様子を見せている。
私に送る憤怒と憎悪の視線を除けば。
こんな時、昔の私ならどうしただろう。

8月X日
邪魔者、娘から見れば私はそう写るのだろう。
前以上にお手伝いに励む娘、殺気が隠せてない。私に向けられる笑顔、憎悪が溢れている。
おそらく娘は、かつての私と同じことをする、今はその準備段階。
何故か恐怖より歓喜を感じる。
8月X日
明日、娘に殺される。
理由は分からないが、確信していいだろう。
私が始末してきた泥棒猫達がそれを知ったら、何を言うか、因果応報、子供の教育もできない馬鹿親とでも言うか、何を言われても嘲笑いしそう。
この結果は私とあの人が遺伝子で結ばれていた証拠、永遠に一つになる為の儀式なのだから。

最後に、娘に一つだけ忠告しておかなくては。
遺体の始末には注意しなさい、と。

127:名無しさん@ピンキー
08/01/18 15:46:07 pJB0oHby
こえええええ!
蛙の子は蛙と言うか、この親にしてこの子ありと言うか。
GJ!

128:名無しさん@ピンキー
08/01/18 16:20:58 +bwf0iFl
殺戮姫のコミックス買ってきた

つづかないのかなぁ…

129:妹はいらん!
08/01/19 00:49:42 r4xrmbCy
兄「……zzZ」
兄は眠っている。
妹「…やっぱり。ンフフ…可愛い」
妹は兄を見つめている。
兄「……zzZ」
兄はまだ眠っている。
妹「あぁ……お兄ちゃん…」
妹は兄のアソコを触ってみた。
兄「…ん?……な!テメェ!」
兄は目を覚ました。
妹「え!」
妹は驚いた。
兄「出てけ!ボケェ!」
兄は妹を突き飛ばした。
妹「キャッ!」
妹は倒れた。
兄「キモいんだよ!」ペッ
兄は唾をはいた。
妹「ああ…お兄ちゃんの唾液」ペロペロ…
妹はアホっている。

ガチャッ
姉「ただいまー!」
姉が現れた。
兄「!!♪(←?)」ドタドタッ
兄の様子がおかしい…
兄「お姉ちゃーん♪」
兄は姉に抱き付いた。
姉「あん!もう!…よしよし」
姉は弟を撫でた。
兄「くぅ~ん♪」
兄は甘えている。
妹「あー!ずる~い!離れてよ~お姉ちゃん!」
妹はイラッとしている。



兄(邪魔してんじゃねぇよ!殺すぞボケェ!)end

130:名無しさん@ピンキー
08/01/19 00:56:50 1DDBVoAa
つまんね

131:名無しさん@ピンキー
08/01/19 00:59:11 ySUR/68w
大きい方に対してはシスコンで、小さい方に対してはシスコンじゃないんだな。

意味は各々で考えてくれ。

132:名無しさん@ピンキー
08/01/19 01:09:56 e5reqqTM
いやいや
ツルペタロリ姉とワールドカップ妹かもしれない

意味は自習で考える事

133:名無しさん@ピンキー
08/01/19 01:15:57 1frXGR6r
854 名無しさん@ピンキー sage 2008/01/19(土) 00:58:52 ID:1DDBVoAa
厨臭いな

134:名無しさん@ピンキー
08/01/19 07:12:42 Bkhef8Tm
兄に拒絶されたキモウト(弟)が、性転換してキモウト(妹)になるのってこのスレ的にどうよ?

135:名無しさん@ピンキー
08/01/19 08:56:55 jI06MJPf
最初に注意書きすればいいんじゃないか?

136:名無しさん@ピンキー
08/01/19 10:55:11 swbgRyOT
そうしてくれるとありがたいね

137:名無しさん@ピンキー
08/01/19 12:07:13 1frXGR6r
>>134
性転換なんておっぱいと形だけの性器つけるだけじゃん
ちゃんと子宮もつけて受精できる様にしなきゃヤダヤダ!

138:名無しさん@ピンキー
08/01/19 15:58:25 CGbX7w37
>>134
ピノキオよろしく、女神様にお願いして魔法とかなんとかで完全な女体化だと兄ちゃんうれしいな

兄に好意を表したら魔法が解けるみたいな設定にすんの。
キモウト悶々してる間に泥棒猫現れたりしてさ、最終的に兄を監禁してアッー!



大事なシーンが801になっちまう…orz

139:1/2
08/01/19 17:54:18 IOcXi95F
「兄さん、いけないことだってわかってる。でも、それでも僕は兄さんのことが・・・」

あのときの夢・・・容姿端麗で成績優秀でスポーツも万能な俺の自慢の弟の夢だ。
ある日弟から告白されたときの夢だ。

「僕は男だけど、世の中の女より誰よりも兄さんのことを愛しているんだ」

そう言って想いを伝えてきた弟だが、その弟を俺は拒絶した。

「そう・・・なんだ。やっぱり、兄さんも、女の子の方が・・・」

このことは俺の胸の内にしまっておくと言って立ち去る俺。
今思えば気不味くても落ち込んだ弟の傍に居てやればよかった。

・・・と、ここで目が覚める。
俺は目覚ましを止め学校へ行く仕度をする。

「おはよう母さん」
「おはよう・・・顔色悪いけど平気かい?まだ辛いなら学校休んだほうが・・・」
「いいよ、大丈夫。天国のあいつの分も生きるって決めたし」

弟は自殺した。
遺書はなかったけど事故でも他殺でもないと警察は断定した。
警官に話しを聞かれたけど告白されたことは黙っていた。
あいつ、俺に拒絶されたからってなにも死ぬことはないのに・・・

通学途中での信号待ち。
周りには同じ学校の生徒が何人か居るが、女生徒の何人かが俺を見てひそひそと噂している。

"最後に会ったのがあのお兄さんなんだって" "なんで悩みに気付いてあげれなかったの"
"なんであの人が居ないのにあんなのが・・・" "あの人じゃなくてお兄さんの方が死ねば良かったのに"

なんでも女生徒の弟のファンの間では弟の自殺の原因は俺にあるらしい。
あいつが俺との関係に苦しんで自殺したのならあながち間違いではないけど・・・

そう思って苦笑したとき 突然、体が 浮いた。
目の前には向かってくる10トントラック 後ろを振り向くと見知らぬ女生徒が 手を突き出していて

・・・ツキトバサレタ?
周りの叫び声と女生徒の怨嗟の声の中、俺の意識は・・・沈んで・・・

140:2/2
08/01/19 17:55:04 IOcXi95F
「兄さん、いけないことだってわかってる。でも、それでも僕は兄さんのことが・・・」

あのときの夢・・・容姿端麗で成績優秀でスポーツも万能な俺の自慢の弟の夢だ。
ある日弟から告白されたときの夢だ。

「ボクは男だったけど、世の中の女より誰よりも兄さんのことを愛しているの」

そう言って想いを伝えてきた弟だが、その弟を俺は拒絶した。

「そう・・・でもね、こうすれば私たちふたりの障害も消えるのよ・・・」

このことは俺の胸の内にしまっておくと言って立ち去る俺。
今思えば気不味くても落ち込んだ弟の傍に居てやればよかった。

・・・と、ここで目が覚める。
俺は目覚ましを止め学校へ行く仕度を      布団がなんか不自然に膨らんでる?

「おはようお兄さん」

布団をめくるとそこにいたのは見知らぬ・・・いや、見知った美少女。
そうだ。俺の自慢のおと・・・妹だ。

「お、おはよう。って、お前またひとの布団に潜り込んで!」
「だって私はお兄さんのこと愛してるんだもーん」

反省の色もなく抱きついてくる妹・・・でも、なにか違和感が・・・

「なぁ・・・」
「なぁに?」
「いや、変なこと聞くだけど、俺たち2人兄妹だよな?」
「お兄さんったらまだ寝ぼけてるの?なに、夢の中で姉か弟でも居た?」

そうだ、俺の兄弟はおと・・・いや、妹?
確か 弟は 俺に 拒絶されて 自さ・・・ でも 目の前には 妹が 妹?

「お兄さん、そんなに深く考えちゃダメだよ。
 ね?妹になれば兄さんは僕のこと愛せるんだから。
 僕はもう兄さんのこと絶対に離さないからね・・・」

141:名無しさん@ピンキー
08/01/19 17:59:19 IOcXi95F
キモ弟→キモ妹への変換と聞いて電波が沸いた。
小ネタとして書こうとしたら行数多くなって二分割になってしまった。
無駄に2レスも使ってるけどSSじゃないので俺にはここまでだ。

あとは誰か頼む。

142:名無しさん@ピンキー
08/01/19 21:49:43 WdY+WjKr
>>141
GJ!
愛の奇跡だな

143:名無しさん@ピンキー
08/01/20 10:56:48 tdiuiFSc
>>141
GJ!
一瞬陰口を言っていた女子たちに天誅が下ったのかと思った
 
このスレのキモウトは兄と同じ学校に行くためにレベル落としている娘はよくいるけど、
兄と同じ学校に行くために必死で学力上げるキモウトはいないよな

144:名無しさん@ピンキー
08/01/20 10:58:47 3JRcVCYo
>>143
必死で勉強してるとお兄ちゃんにからみつく時間が減るからなぁ
目の前いるお兄ちゃんの誘惑に耐えられなくて勉強に手がつかないのかも

145:名無しさん@ピンキー
08/01/20 11:42:26 cmuPcQ/5
兄の方のレベルを下げにかかるということも考えられる

キモウトの正体はサキュバスとか

146:名無しさん@ピンキー
08/01/20 11:54:47 aKHdFNG0
>>145
サキュバスなキモウト……

「俺たちは兄弟なんだぞ。判ってるのか?」
「淫魔にそんな道徳関係ないよ。お兄ちゃんはあたしに餓えて死ねというの。
 それとも毎日そこらの人間を吸い殺して回れって? お兄ちゃんなら吸ってもそう簡単には死なないよ…多分。
 あたしは死にたくないの。それに誰も殺したくない。だからお兄ちゃん、精をちょうだい…」

147:名無しさん@ピンキー
08/01/20 12:47:17 snnElt0n
>>144
お兄ちゃんと同じ学校に行けないならいっそ殺してしまおう・・・なんて鬼印が出てくるwww

148:名無しさん@ピンキー
08/01/20 12:52:10 GMLL8VZD
「うわあ、ジュース工場なんて始めて見た。凄いねお兄ちゃん」
「だろ?…あ、ほら、下を見てみろよ」
「わあ、大きなジューサーみたい」
「大量の果物がコンベアで運ばれて…げ!一瞬でジュースになっちまった」
「落ちたらヤバそうだよね」
「そりゃ見ろよ、あのゴツいカッター…肉も骨も即ミンチだって」
「あは、人間ジュース」
「それシュール過ぎw」
「体がバラバラになって…全部混ざっちゃうんだね…」
「おおい、あんま近寄ると落ちるぞ」
「血も内臓も脳も…ブツブツ」
「聞いてるか?危ないぞお」
「ああ…おっぱいも…オチンチンも…アソコも…」
「…引っ張るのは何故だい?」
「クスクス…子宮も…精巣も…お腹の中のウンチもオシッコも…」
「ええと…手摺りを乗り越えるのはどうかと…」
「……お兄ちゃんと混ざり合って溶け合って1つに…」
「だから何故引っ張る?…って、下でカッター回転してるんですけど」
「…………ひとつになって………お兄ちゃんと一緒にドロドロに…」
「お兄ちゃんさ、もう少しやりたいことあるんですけど」
「ああ…素敵……イキそう…」
「……できれば手だけ放してもらえると嬉しいかな?お兄ちゃんも生きたいなっ」
「あら、お兄ちゃん字が違うったらえい」
「『えい』てちょwおまw落ちうわあばべびっ」

めでたしめでたし

(注)ホントにこんな機械があるのか知りません。てか多分ないです。

149:名無しさん@ピンキー
08/01/20 13:05:25 FOqD0Co0
URLリンク(www.willitblend.com)
まぁ こういう感じだな

150:名無しさん@ピンキー
08/01/20 13:24:10 Aha4unhw
>>148
ゼノギアスの精肉工場思い出した

151: ◆a.WIk69zxM
08/01/20 13:45:29 /Y72H/+n
 
投下します。
非エロ。17レス予定。
 

152:__(仮) (1/17)
08/01/20 13:49:36 /Y72H/+n
 
 
 秋巳が柊神奈に告白を受けてから二週間。
 木々のざわめきを伴った風が新緑の薫りを伝えてくる、穏やかな空気の五月晴れの日。そんな和やかな陽気とは裏腹に、
秋巳のクラス内の雰囲気はおおよそ憂鬱なものに包まれていた。一週間後の中間考査を控えて。
 クラス内の生徒たちの会話は、試験の対策やお互いの勉強時間の確認などの話題が大半を占めていた。
中にはいつもどおり変わらない者、開き直ってる者も見受けられたが。
 その普段どおり変わらない集団の中に含まれるのが、水無都冬真であった。
「ねーねー。柊ちゃん。来週の試験に向けてさ、勉強会しない? 勉強会」
 その日のすべての授業を終え、あとは担任を迎えてのホームルームを残した空き時間。
水無都冬真は柊神奈の席に近づき、お誘いをかけていた。
 水無都冬真は、秋巳の相談を受けてから宣言したとおり、ことあるごとに柊神奈にアプローチをかけていた。
 それは、昼食の誘いだったり、放課後の遊びだったり、休日の行楽の約束だったりする。
そして、そこには大抵、秋巳と春日弥生も含まれていた。
 秋巳としては、水無都冬真に助けてもらっている以上、彼の柊神奈に対するアプローチに協力するのは当然だと思っていた。
 事実、秋巳が当初心配していたような、クラスの話題に上るといった事態は避けられている。
水無都冬真と柊神奈の話題が防波堤となって。
 試験間近であっても、異性に多大な興味をもつ高校生という時期を考えれば、男女間の色恋沙汰の話題は事欠かない。
 そんななか一番の興味の対象としてあがっていたのが、そのふたりの付き合い、であった。
 曰く、彼氏彼女の仲なのか。
 柊神奈が告白した噂があるが、その相手が水無都冬真だったのか。
 あれだけの人気者の美男美女同士がくっつくと羨む気も失せる。いや妬ましい。
 中身はそれぞれさまざまだったが、ふたりの仲を推測、あるいは邪推するものであった。
 この二週間、秋巳は春日弥生も含めてそのふたりとよく一緒にいたが、周りからの目は精々『金魚のフン』くらいの認識であり、
従来どおり秋巳自身は、かれの望む平穏な日々をおおよそ過ごせていた。
 一部にはたとえ『金魚のフン』であっても、あの柊神奈と遊びに行ったり出来るのは羨ましいと僻むものもいたが、
それでもやはり憐れみを含んだ同情の気持ちも混じり、直接秋巳を目の敵にする人間はいなかった。

「え? 勉強会?」
 水無都冬真から提案を持ちかけられた柊神奈は、少し困ったような表情を浮かべて返す。
 彼が誘いをかけるときは、大体同じような反応だった。そして、例のごとく水無都冬真が、春日も含めて四人でさ、と言うと承諾をするのである。
「うん。ほら、テスト期間中って、放課後、図書室が学習室として開放されるじゃん。
 だからさ、秋巳と春日も含めて、お互いに苦手な分野をフォローしあわない? 
 俺なら、保健体育はばっちしだしさ!」

 中間考査一週間前から各部活動は基本的に活動停止になり、図書室も普段は文芸部と本を読む人たちが優先であるが、
この期間ばかりは勉強する人たちが優先的に使えることになっている。

「う、うん。弥生がいいって言うなら、私も賛成だけど。
 でも、私は、あんまり役に立たないかもよ?」
 こちらもお決まりどおりの回答をする柊神奈。役に立たないという彼女の言葉は、あくまで謙遜であり、
実際彼女はクラスで一桁の順位をキープしているほど優秀であった。
「だいじょぶ。だいじょぶ。柊ちゃんは、そこにいて華を添えててくれるだけで良いし。
 ってか、謙遜も行き過ぎると嫌味でない?」
 ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる水無都冬真。
「ええっ!? そ、そんな……。私、べつに、そんなつもりじゃ。
 それに、教えるの下手だし。水無都くんこそ、
 周りの助けなんか要らないんじゃないの?」
 柊神奈の台詞はあながち間違いではなかった。といっても、彼は成績優秀者の常連というわけではなく、非常に大きな波があり、
学年で一桁の順位をとることもあれば、軒並み赤点というときもあった。
ある意味、それは本気になればとんでもないヤツという評価を受け、学年トップよりも派手な目立ち方ともいえた。
教師も含めて一部では不正をしてるんじゃないかという噂も立っていたが、どちらにせよ注目は受けていた。



153:__(仮) (2/17)
08/01/20 13:53:05 /Y72H/+n
 
「いやいや。この前も六教科赤点だったしね」
「ふーん。カンニングペーパーの作成にでも失敗したのかしら?」
 ふたりの会話に割って入ってくる春日弥生。
「姐さん。それは誤解っすよ。俺はやればできる子なんですよ? 
 ヤればデキる! なんて真理をついた素晴らしい言葉か」
「セクハラで訴えるわよ? それとあんまり神奈に近づかないでもらえない? 
 神奈があんたに汚染されたら損害賠償と慰謝料請求するからね」
「おやおやぁ? 嫉妬ですか、姐さん? 男の嫉妬は醜いっすよ?」
「……喧嘩売ってるわけ? 大体、最近あんたにことあるごとに付きまとわれて、
 神奈が迷惑してるの判らないの?」
「えっ? うそっ? ひょっとして、俺、迷惑かけてた?」
「う、ううん。そ、そんなことないよ!」
 柊神奈が、慌てて首を振る
「ほら。見ろ! 姐さん。柊ちゃんは、俺の子を産んでもいいって言ってるじゃんか!」
「社交辞令をそこまで極大解釈する人間はじめて見たわ。
 いっぺんあんたの頭の中の構造覗いてみたいわ。それとセクハラ禁止!」
 水無都冬真を押しのけるようにして、柊神奈の前に春日弥生が立ちはだかる。
「姐さん。すんません。姐さんの情婦(イロ)に手を出した詫びは、
 この小指で許してもらえますか?」
「なんで、私の小指を掴むのかしら?」
「自分のだと痛いし」
「そう。じゃあ、一瞬で痛くもなく楽になれる『らしい』といわれる方法でケジメ付けてもらえる? 
 本当に痛くなかったのか感想が聞けないのが残念だけど」
「うわ。やっぱ、本場のスゴミは半端ないっすね」

 そんないつものふたりのやり取りを脇目に、柊神奈は立ち上がると秋巳の席のもとに向かい話しかける。
「ね、ねえ。いま水無都くんに放課後の勉強会のこと聞いたんだけど、如月くんは大丈夫なの?」
「ああ。うん。ダメと言えばダメかな?」
 座席が近いので話だけ聞いていた秋巳が、席についたまま顔だけ向けて応える。
「え……? そ、そうなの?」
 かくんと肩を落とし、気落ちしたような態度をみせる柊神奈。
「うん。世界史とか政治経済とか社会系は、いつも赤点すれすれかドボンだしね」
「え? ……あ、ああ。そ、そうなんだ。でも、理数系は得意なんだよね。
 私、どっちかっていうと、理数系のが苦手なんだよね」
 そう言って照れたように、あはは、と声を出して笑う。
「そう。でも、春日さんって、理数系得意じゃなかった? 
 ふたりでフォローしあえば、理想的だよね」
 秋巳は淡々と柊神奈の言葉に応えるだけ。少し意味をこめて。
「……うん。そうだよ、ね」
 そう瞳を半分伏せながら呟く柊神奈を見ながら、秋巳は思う。
(できればあまり教室とかで、話しかけないでもらいたいんだけどな……)
 水無都冬真が、柊神奈に接近するようになってから、春日弥生も含めて四人一緒になることが多かったが、
そういうとき大抵、水無都冬真が柊神奈にいろいろ話し掛けはするものの、結局水無都冬真と春日弥生の言い合いになってしまい、
あぶれた柊神奈と秋巳で会話するという形になっていた。
 秋巳は勿論、柊神奈に話しかけられれば、普通に受け答えをしていたが、
それでも若干―本人すら気づかないくらい―突き放した物言いを時折した。
 普段、秋巳は、水無都冬真と妹の椿を除いて、その他の人間に対する態度は一貫していた。とくに敵意も持たず、好意も抱かず。
そして、相手にも敵意や嫌悪感を抱かせるような言動はしなかった。好意を抱かせるような振る舞いも。
『他人』に対する親切はしても、必要以上に踏み込まないし、踏み込ますこともしなかった。
 だが、柊神奈が自分に好意を持っているらしいということを意識するあまり、必要以上に距離をとろうとする感情が無意識に働いていた。
 そして、特に、教室のような場所で、柊神奈とふたりで話すという行為は、目立つことを嫌う秋巳にとって、忌避すべきことであった。
(早く冬真の方を振り向いてくれるようになればいいのに―)



154:__(仮) (3/17)
08/01/20 13:54:51 /Y72H/+n
 
 秋巳は本気で不思議だった。
 この目の前の少女が、なぜ水無都冬真でなく、自分に惚れているのか。
 おそらくなにかを『勘違い』しているのだろうが、その心当たりは自分にはない。
 恋に恋するような年頃であれば、とんでもない勘違いをしててもおかしくはないので、そこは詮索しても仕様がないのであろう。
 秋巳はそう結論づける。そして願う。
 早く『誤解』がとけて、如月秋巳という人間を知り、そして、水無都冬真の方へ、振り向くことを。
 秋巳は、一種異常であった。
 なんの罪悪感も感じることなく自分に好意を向けてくれる人を突き放すことではなく、
親友に対して厄介ごとを押し付けるような考えを抱いている自身に嫌悪感を覚えていたのだから。

「あ、そ、それでさ。如月くんは、放課後の勉強会には行くの?」
「あー。勿論行くってさ。な、秋巳」
 気を取り直したように顔をあげて訊ねる柊神奈に、いつのまにか傍に来ていた水無都冬真が返す。
「うん。そうだね。冬真じゃちょっと心細いけど、
 ひとりで勉強するよりははかどるだろうしね」
「あ、じゃ、じゃあ! 私が、社会系だったら一応得意な分野だし、教えてあげるよ!」
 先の見えない真っ暗闇の中に一筋の光明をみたかのように、提案してくる柊神奈。
「柊ちゃん、なにげにひどいね。俺が頼りないってとこは、
 否定してくんないどころか肯定しちゃうのね」
「えっ!? あ、ああっ! ち、ちがうよ! そんな意味じゃないって!」
 不満げな声をあげた水無都冬真に、柊神奈が慌てたように両手を振って否定する。
「ってかさ、それじゃ誰が俺に教えてくれるの? あと、春日しかないじゃん? 
 俺、暴対法とか、法律をぎりぎりですりぬける知識とか間に合ってるんだけどな」
「そう。じゃあ、あなたが教えてくれる? 人ひとりを社会的に完全に抹殺する方法とか」
 水無都冬真の後を追うように来た春日弥生が言う。
「姐さんだったら、いつものようにやったらいいじゃないっすか。
 キーワードは、『コンクリ』、『ドラム缶』、『東京湾』のやつっすよ」
「ええ。本当にできないところが残念ね」
「また始まったよ……」
 言い合いをはじめるふたりに苦笑する柊神奈。
 秋巳はそんなふたりをみながら、どう言ったら自然に春日弥生に教えてもらえることになるのかな、と考えていた。



155:名無しさん@ピンキー
08/01/20 13:59:11 FOqD0Co0
投下支援 てこれでいいのか

156:__(仮) (4/17)
08/01/20 14:01:10 /Y72H/+n
 
 
 そして放課後。図書室には、秋巳と柊神奈のふたりしかいなかった。
 水無都冬真は先生に呼び出しを受けたために、後から行くと秋巳に伝え。
柊神奈から伝え聞くに、春日弥生も所属する部室の整理をしてから行くので遅れるとのことであった。
(なんでこんな……)
 秋巳は正直帰りたかった。
 秋巳にとって救いだったのは、図書室を利用している生徒の少なさであった。
近くに大きな図書館もある関係で普段放課後利用しているのは文芸部ぐらいのもので、それ以外には、たまに気まぐれで利用者が訪れる程度であった。
試験期間中に勉強する生徒に開放するといってもあくまで名目上であり、普段と同じように利用する生徒は少なかった。
 それを見越して、多少喋っても構わないだろうということで、水無都冬真は勉強会を提案したのである。
実際いま利用している生徒も、秋巳と柊神奈の他に、ニ、三人生真面目そうな生徒が座って静かに勉強したり、本を読んでいるのみであった。
 要するに、図書室の広さを考えると、大声で騒がない限りふたりの会話を聞こえるような位置には誰もいないという状態。

「あ、あのさ。とりあえず、ふたりではじめてようか?」
 席につくと早速教科書やノートを広げる柊神奈。そんな彼女を見ながら、乗り気しないように秋巳が頷く。

 ふたりが勉強をはじめてから三十分。いまだに水無都冬真も春日弥生も来ていなかった。
 それまで黙々とノートと教科書をめくり、ペンを走らせているふたりであったが、
フロアにいた唯一の男子生徒が席を立って退室したタイミングを見計らったように、
柊神奈が面を上げて頬にかかった髪をいじりながら秋巳に問いかける。
「ね、ねえ……。如月くん」
「ん?」
 その呼びかけに、彼女と同じように顔を上げ、見やる秋巳。
「や、やっぱりさ。その、め、迷惑だったかな?」
 柊神奈は目的語を言わない。おそらく言わなくても通じるだろうという期待を込めて。
「迷惑って?」
「あ、そ、その、このまえの、さ」
 ああ。告白のことか。
 秋巳は得心する。
(とってもね……)
 正直なところそう応えたかった。しかし、彼女のプライドを傷つけるような言い方をすれば、憎さ百倍となり、目の敵にでもされかねない。
 そう考えた秋巳は、はっきりとは返事せずに、逆に質問で返した。
「なんで、そう思うのかな?」
 その秋巳の質問に、指先で髪をくるくると巻きながら柊神奈はとても言いにくそうに躊躇う。
「えっとね。うん。なんていうのかな、最近、よく、如月くんと一緒にいたり、話したりするよね」
「うん。冬真とか、春日さんも一緒にね」
「そのときにさ、如月くん、いつもなんか、その、ちょっと……嫌そうかなって」
「え?」
 秋巳にとって、そう言われるは心外であった。告白の返事をしたわけでもなく。
 秋巳の意識のなかでは、柊神奈に対する態度について、好悪の感情を出しているつもりはなかった。
 あえて、意図的に浮かれているような言動もしていなかったが、本心を見せているつもりもなく、
いままでと、それこそ他の人たちと同じような対応をしていると思っていた。
 それは、秋巳のなかで、他の人と柊神奈の位置付けが変わっていることを示していたのだが、本人に自覚はなかった。
 だから、秋巳は、柊神奈が彼女自身の満足するような態度を自分がとっていないから、そう思っているのだろうと結論付けた。
彼女が己の内心に気づいているのかも、とは考えずに。

157:__(仮) (5/17)
08/01/20 14:04:23 /Y72H/+n
 
「ごめん。なんで、そう思われてるのかわからないけど、嫌とかそういうのはないから。
 誤解を与えるような態度とってたら、ごめんね」
「う、ううんっ! 如月くんが謝ることじゃないし!」
 まだ図書室に人が残っていることへの配慮か、声を小さくして続ける。
「私が、勝手に好きになって、勝手に告白して。
 でも、それで好きな人に迷惑をかけてたらやだなって思ったから。
 私、如月くんと付き合えたらって望みは持ってるけど、
 でも如月くんの気持ちを無視してまで付き合って欲しいなんて思ってないから」
 秋巳は押し黙ったまま、柊神奈の言葉を聞く。まるで想定もしていなかったことでも聞くかのように。
「私もね。あの、け、決して自慢とかじゃないんだけど、男の子から告白されたことがあってね、
 それで断ったことがあるから。だから―。だから、自分の好きな人が、
 なにをしても自分を受け入れてくれないのは仕方がないとも思ってるんだ。
 私自身は、自分のことを好きになってくれた人のことを拒絶したくせに、
 自分だけ好きな人と幸せになれるとか不公平だもんね。
 でもね、私のことを好きになってもらえるよう努力するのは、いいのかな……?」
 おずおずとそう訊ねて。
 いままで私に告白してくれた男の子は、私が「ごめんなさい」っていったら、それっきりだったけどね、と付け加える柊神奈。
「…………」
(彼女はこれを本心から言っているのか?)
 秋巳には理解できなかった。
 秋巳の彼女に対する認識は、いま自分の前に座り、自分に語る彼女と全然異なるものだった。
 男の子たちにちやほやされ、プライドが高く内心は優越感を感じているが、それを表に出さない賢しい女の娘。
 自分が男の子を振るのは当たり前だが、自分が拒絶されることはありえないと思っていて。
 万一、自分が拒絶されるようなことがあれば、それは相手に非があるのだと思い込んで。
 自分のプライドを傷つけるような人間は、攻撃し、排除するような人間ではないのか。
 それともこれも演技なのだろうか。
 そういう『いじらしい』自分を演じれば、たやすく相手など手玉に取れるであろう、そう考えているのだろうか。
 だが、秋巳は腑に落ちなかった。
 彼女は、勘違いか知らないが自分の本心を大きく間違って捉えてているわけではない。秋巳自身が意図していないにしても。
 それなら、こんな人間に受け入れられないという『事実』に、彼女の矜持はいたく損なわれたはずだ。
 それにも関わらず、自分からさらに寄るというのだろうか。しかも、受け入れられないこともある程度見越して。
「あ、あのさ。前から聞きたかったんだけどさ。自分なんかのどこがいいのかな? 
 自分で言うのもなんだけどさ。そこにいてもいなくてもいい空気みたいな人間だよ? 
 柊さんに好きになってもらえるような要素が見当たらないんだけど」
「うーん。なんていうのかな。はっきりこれって言えないかもしれないけど」
 そう言って彼女は語る。自分が秋巳を気にするようになった転機から、好きになるまでを。
 

158:__(仮) (6/17)
08/01/20 14:07:13 /Y72H/+n
 
    *  *  *  *  *  *  *
 
 
 柊神奈が秋巳のことを気にするようになったのは、秋巳の柊神奈に対する態度が契機であった。
 それまでの柊神奈に対する周囲の男子の態度は、だいたい二通りに分かれていた。
普段敬遠して遠巻きに見ているだけで、たまに話す機会があるとやたらおどおどと挙動不審になる者。
そして、自分になびくのが当然とばかりに、馴れ馴れしく不躾な態度をとってくる者。
 前者に柊神奈は気づかなかったので、彼女の男の子に対する認識は、後者に対する印象が専らであった。
 そして、自分のことをステータスのための付属品ぐらいにしか見ていないそういう人間たちに対して、あまり良い印象は持たなかった。

 そんななか、たまたま委員の仕事で一緒になったのが、如月秋巳であった。
 委員決めの日に、柊神奈はなんとなく男子が先に決まっている役に立候補した。誰もやりたがらないような役。
だからこそ、男子のほうは、その日休んでいた秋巳に欠席裁判で押し付けられた委員に。
 そして、仕事をしていくなかで、秋巳の自分に対する態度が他の人間のそれとは異なっていることが、秋巳を気にするようになった契機であった。
そのときはまだ恋愛感情ではなかったが。
 普段からなにげなく秋巳のことを目で追うようになって、気づいた。彼は誰にでも態度が変わらない。自分も含めて。
 目立つわけでもなく、相手を不快にさせるわけでもなく、誰にでも一緒であった。
 一緒に仕事をしているなかで、秋巳は時折自分を卑下するような言葉を吐くことがあった。
しかし、それで卑屈になったり憂いたり、相手を妬んだりといった雰囲気がない。
ただ、淡々と客観的事実を述べるようにさらっと言い、大して気にも留めない態度なのである。
その秋巳自身の認識は、柊神奈が抱いた認識とは異なる部分が多かったが。
 そして、柊神奈の周囲が抱く彼への認識は、目立たなく、そして、空気のような存在というものであった。
 たしかに容姿は、多少目立つところがあるかもしれない。髪は茶色で色は白く、顔も良く見れば整っているし、背も平均より高い。
 でも、自己主張はしないし、言動は目立たないし、とくに面白い人でもない。
「付き合う人としてはねぇ」
 その他男子の中に埋もれる存在。それが彼女の周りの女子たちの評価であった。
 でも彼はそれを自覚して、そしてそのような生き方を望んでいる。柊神奈はそう思った。
 わざわざ秋巳が意図的に目立たないようにしているということまでは判らなかったが、
その彼の生き方は柊神奈にとって、とても自然体に見受けられた。
 無理をせず。肩肘をはらず。見栄をはらず。ある種達観したような生き方。
 そして、自分に対しても他の人と同じようになんら変わることなく接してくれる。
 柊神奈は、男子からは勿論のこと、女子からも色々な意味で特別扱いされることがあった。それは、嫉妬や嫉みを多分に含んだ。
 だから、自分にそのように接してくれる秋巳が気になった。
 そして、彼のことを気にかけ、見つめるようになり、気がついたら好きになっていた。


159:__(仮) (7/17)
08/01/20 14:09:58 /Y72H/+n
 
 しかし、柊神奈は秋巳への恋慕に気づいて困った。
 どうしたらいいのであろう。
 彼女は誰かを好きになって、その人にアプローチするといったことの経験がなかった。
 その上、相手は如月秋巳である。
 彼女の秋巳に対する認識からすれば、秋巳はあまりそういうことを望んでいないようにみえた。
 ただ、自身の想いはつのる。彼女も世間一般の女子となんら変わらない女の娘であったから。
 むしろいままでそういうことがなかった分、一度自分の感情に目覚めたら、人一倍情が強かった。
 だから、袋小路しかない迷路にまよいこんだように困り果てた。
 そして相談した。親友である春日弥生に。

「はー。あんたもついに恋愛ごとに目覚めるようになったわけねぇ」
 それが、相談をうけた春日弥生の第一声であった。
「でも、そんなヤツこの学校にいたっけ? あ。ひょっとして、この学校じゃないヤツ?」
 柊神奈は、どんな人を好きになったかは話したが、誰を好きになったかまでは触れなかった。
それは、春日弥生を信用していないからではなく、『柊神奈が如月秋巳のことを好きである』ということを
一番最初に如月秋巳に伝えたいと思ったから。
 春日弥生のアドバイスはひと言で終わった。
「告白ね」
「え?」
「こーくーはーく! それで相手が受け入れて終わりでしょ?」
「あの? 弥生? 私の話聞いてた? だから、その、すっ、好きな人は、
 そういうの多分好ましく思わないんじゃいかって……」
「なーに、そいつは、あんたの前で気取ってるのよ。オレは自然体でいますって。
 なんていうのかな、矛盾するかもしれないけど、気取らないことが、
 んで、カッコつけないことが格好良いみたいな」
 確かに一から十まで話したわけではないから、彼女がそういう印象を持ったとしても、柊神奈は否定できなかった。
 ただ、そうではないことを彼女自身は判っていた。それは惚れた弱みではない。そこに惚れたのだから。
「ま、あんたのまえでそんな態度とるくらいだから、あんたのことは意識してるって。
 なんなら、相手に気を持たせるような態度をとって、あっちから告白させちゃえば?」
 それはない。
 柊神奈は確信していた。
 私のまえだから、そんな態度をとるのではない。私のまえであっても変わらずそんな態度、なのである。
「ま、どっちにしろ。そのもやもやした気持ちを抱えたまま、このまま毎日過ごすわけ? 
 結果がどうなろうと、なにかしら動かないとなにも変わらないよ? 
 あたしに相談してきたってことは、神奈もこのままで良いとは思ってないんでしょ?」
「うん……」
 春日弥生のその指摘は正しかった。さすがに親友である柊神奈のことならば良く理解しているのだろう。その好きな人までは判らなかったが。



160:__(仮) (8/17)
08/01/20 14:13:04 /Y72H/+n
 
    *  *  *  *  *  *  *
 
 
「―それでね。あの。如月くんに、その、こ、告白したんだ」
 恥ずかしい過去を自分で暴露するかのように頬を赤らめた柊神奈の話が終わる。
 しかし、その顔には、どこか言いたいことが言えたようなすっきりした感情が見て取れた。
「…………」
 一方の秋巳はその柊神奈の告白に衝撃を受けていた。彼女が自分に本気で好意を抱いていることではない。
 柊神奈の話す『如月秋巳』と、自分とにそれほど差異がないことに。
 なぜ、彼女に気づかれているのか。
 自分の態度はそんなにあからさまだったのだろうか。
 ひょっとして、己が考えている周囲の自分に対する評価と実際のそれは大きく違うのか。
(……いや。違う)
 柊神奈の話の中で、秋巳自身に対する周囲の評価を言っていたではないか。それは自分の認識とあっている。
 ならば、彼女が特別洞察力にでも優れているのか。
 『背景』に溶け込んでると自分も周囲も思っていたのに、彼女だけが『背景』ではなく、『登場人物』として捉えていたのか。
 秋巳はおおきく動揺した。
 自分の望む生き方を知っているのは、水無都冬真と椿ぐらいだと思っていた。
 前者は特に反対することなく好意的に、そして、後者は蔑みながらも黙殺し。
 そう考えていた。
 だから、柊神奈は自分のなかに秋巳とは違う虚像の『如月秋巳』を作り上げ、それに恋愛感情を抱いているものだと。
自分を『依り代』に。
 だが、秋巳の推測は外れた。
 柊神奈は、ほぼ等身大の如月秋巳を捉え、それに恋慕の情を抱いているのだという。
「あ、あのさ―」
 秋巳が口を開こうとした瞬間。図書室のドアが開く音。
「おーす。ふたりっきりで仲良くいちゃいちゃやってるかー」
「ったく、なんでこんなとこまであんたと一緒のタイミングになるのよ」
「それは、俺と柊ちゃんが赤い糸で結ばれてるからだな」
「なんでそうなるのよ」
 一時間弱遅れて、水無都冬真と春日弥生が同時にやってきた。
 それに秋巳は言葉を紡ぐタイミングを失う。
「あ。弥生ちゃん。遅いよー」
 それまでの真剣な表情とはうってかわって、朗らかな微笑を浮かべるとふたりを迎え入れる柊神奈。
「お? 柊ちゃん。俺は? 俺は待ってなかったの?」
「ううん。そんなことないよ」
「やっぱり! 俺のプロポーズの言葉を待ってたんだね!」
「だから、あんたのその地球を七週半するような曲解はどこからくるのよ」
 呆れたように溜息を吐く春日弥生。にわかに喧騒に包まれる図書室。
 秋巳は、自分でもなにを言おうとしたかよく判らずに、言葉を口にすることは出来なかったが、秋巳の意識なかで柊神奈の位置は確実に変わった。
告白されてから、『他の人たち』とは違う場所にあったが、それとは、また別のところに。



161:__(仮) (9/17)
08/01/20 14:16:58 /Y72H/+n
 
 
   *  *  *  *  *  *  *  *
 
 
 中間考査を前日に控えたその日。朝は晴れていたにも関わらず昼過ぎから俄かに雲が出てきて、
秋巳が帰宅する頃には空一面厚い雲で覆われて、五月の陽光が完全に姿を隠した。
普段より早めに洗濯物を取り込み、明日に向けてのテスト勉強をはじめる前に一息つこうとお茶を淹れて、
居間からぼんやりと雨が降り出しそうな庭を窓越しに眺めていたとき。
 玄関の扉の開く音が、椿の帰宅を知らせた。
「おかえり。椿」
 玄関まで迎えに出た秋巳に、靴を脱ぎながら挨拶を返す椿。
「ええ。ただいま。兄さん」
「お茶、さっき入れたところだけど、椿も飲む?」
 いつものように肯定の返事をまったく期待せずに椿に問い掛ける秋巳。
 だからその返答が来たとき、秋巳は一瞬固まった。
「ええ。いただきます。兄さん。それと、ちょっとお話があるのですが、宜しいですか?」
「…………」
「兄さん?」
「あ、ああ。うん。いま、淹れるから。ちょっと待ってて」
 秋巳にしては珍しく慌しく台所に戻り、お茶を淹れる準備をする。
 その準備をしている間に、椿は二階の自室で着替えたのであろう、普段着で再びリビングに姿を現す。
「ありがとうございます。兄さん」
 ソファに腰を下ろし、秋巳からマグカップに淹れたお茶を受け取る。
「それで、兄さん。先ほども言いましたが、少しお話があるのですがいいですか?」
 お茶にひとすすり口をつけ、話を切り出す椿。
「え? 話?」
 さっき言われたことをさっぱり忘れてでもしまった、あるいは聞いていなかったかのように、口を半開きに間抜けな顔をして問い返す秋巳。
「ええ。話というより、お願いなのですが」
 秋巳は自分の耳を疑った。
 椿はいまなんと言ったのだろう。
 話? 自分に? しかも単なる話ではなく、お願い?
 信じられなかった。椿がこんな改まった形で自分を頼ってくるなんて。
 普段の生活の中で、椿が秋巳を頼ってくることなどまずなかった。なにげない日常生活の中でさえ。
家事はそれぞれ役割が決まっていて、それを一時的に代わってもらうよう頼むときでさえあくまで『交渉』であった。
それが受け入れられなければ、無理は言わない。
 秋巳がその交渉を飲まなかったことはなかったけれども。
「め、珍しいね。椿が僕に頼みごとなんて」
 だから秋巳は素直な気持ちを口にしてしまう。聞きようによっては嫌味と取れてしまう言葉を。
「すみません。普段はかわいげのない妹で。兄さんがお嫌でしたら無理にとは言いません」
「い、いや! そんなことないよ。僕で出来ることなら! 
 とりあえず、話してもらっても良いかな?」
「ええ。明々後日のことなのですが。中間試験の最終日の午後、
 兄さん時間空いてますでしょうか」
 そう言って話を切り出す椿。
「うん。空いてるけど……」
 話の中身が全く見えないが、秋巳は、妹のため出来る限りのことはしてやろうという思いを込めて返事をする。

162:__(仮) (10/17)
08/01/20 14:19:33 /Y72H/+n
 
 椿の頼みごとの中身は、要約するとこうだった。
 自分の友達に、水無都冬真のことを好きな娘がいる。
 そして自分は水無都冬真にその娘を紹介してあげたいと望んでいる。
 ただ、いきなり紹介して、はいさよなら、というわけにもいかない。
 だから、自分と兄である秋巳、それとその友人と、秋巳の友人である水無都冬真で遊びに行く形をとり、
その娘と水無都冬真が仲良くなる切っ掛けを作ってあげたい。
 兄さんにはそれに付き合って欲しい。加えて水無都冬真を誘って欲しい。
 そんな椿の頼みごとに、秋巳は二もなく頷きたかった。了承したかった。
 ただ、ひとつ気がかりなことがあった。
 水無都冬真は、いま柊神奈と付き合おうと積極的にモーションをかけている。そんなところにこんな話を持っていっても良いものか。
「兄さん。水無都冬真さんには、いま付き合っている人がいますか?」
 話の内容を理解するにつれ返事の鈍い秋巳に、椿が質問する。
「いや、いないけど」
 付き合おうとしている人はいる。
「では、好きな人は?」
「いる、かもしれない」
 それは、柊神奈かもしれないし、もしかしたら、椿かもしれない。水無都冬真は、柊神奈と付き合いたいと言っているし、
冗談っぽくはあるが、椿のことも満更ではないような気がする。椿から色よい返事がもらえないから、
そちらを諦めて柊神奈とのことを真剣に考えているのかもしれないし、元々椿のことは普段の調子でなにげなく軽口を叩いているだけで、
もとより本気で柊神奈のことを想っているのかもしれない。
 秋巳は水無都冬真と付き合いが長く、色々と彼のことを知っているつもりではあったが、
秋巳本人がそういったことに疎かったこともあり、その面に関しては水無都冬真の本心は判らなかった。
「そうですか。兄さんがどう考えていらっしゃるかまでは判りませんが、
 この話をあまり深く捉えないで下さるとありがたいです。
 確かに、私はその娘のことを大事に思っていますし、
 幸せにもなって欲しいと考えていますが、
 あくまで機会を与えてあげたいと思っているだけです。
 それ以上に手取り足取り導いてあげるつもりはありませんし、
 彼女もそれは望まないはずです」
 椿は言う。
 単に自分は、その友人と水無都冬真の知り合う機会を提供してあげたいだけだと。
 別にいまの水無都冬真の恋路をどうこうするつもりはなく、その後は、その友人と水無都冬真の問題である、と。
 もし、水無都冬真がその娘を気に入ってくれるのなら、付き合えばよいし、
水無都冬真が現在の想い人を追いかけるのであれば、それはそれで構わない。
 そう言葉を付け加える椿。
 そして、秋巳には言わなかったが、そのくらいで諦める人間ではないでしょうけど、と椿は内心付け足す。
「判った。とりあえず、冬真に話を聞いてみるよ」
 秋巳は嬉しかった。四人で遊びに行きたいと椿が言ってくれることが。その目的は、親友のため、なんだろうけれど、
それでもその為になら自分を親友に会わせても良い、くらいに思っていてくれることが。
だからこそ、できれば叶えてあげたかった。
「ええ。ありがとうございます」
「でも、こういう話なら、直接椿から冬真にお願いしても良かったんじゃない?」
「先ほども言いましたが、兄さんにも付き合って欲しいという事情がありましたから。
 それに―」
 椿は、自分の瞳を見つめる秋巳に、同じようにその赤みがかった眼を見つめ視線を交わす。
「兄さんから頼んだほうが、水無都さんも快く引き受けてくれそうだと思いましたし」
 そう言ってゆっくりと瞳を閉じた。



163:__(仮) (11/17)
08/01/20 14:22:17 /Y72H/+n
 
 
 その翌日。椿の頼みごとの話を告げた秋巳に対して、水無都冬真はこう応じた。
「は? なに? 俺と結婚して欲しいって娘がいるって? 
 いやー。もう参るね。モテル男は! んで、おまえはどうして欲しいわけよ?」
「うん。できれば椿の頼みを聞いてあげたいって思ってる。それにね。
 椿が言うには、別にその娘と付き合えとかそういうことじゃなく、
 単に切っ掛けをつくってあげたいだけだって」
「俺が断るって言ったら?」
「うーん。仕方がないかなって思うよ。冬真にはただでさえ、厄介ごと頼んでるしね」
「厄介ごとってなあ……。おまえ、俺がもし、その娘と付き合ったらどうするんよ? 
 柊ちゃんとのことは?」
「え? ああ。うん。柊さんなら、内々に断ったら、
 別に腹いせになんかするってことはないんじゃないかなとも思うけど。
 でも、冬真が柊さんと付き合いたいって気持ちを邪魔するつもりはないから」
「へえ……」
 まるで秋巳に似つかわしくない意外な反応を得たかのように、眼を見開く水無都冬真。
「やっぱり、俺に渡すのが惜しくなったか?」
 水無都冬真が声のトーンをあげて訊ねる。満足そうな顔を見せながら。
「うん? いや、そうじゃないけど。それは、冬真の気持ち次第だよ。
 あくまで僕のお願いってだけだし」
「かー! ったく、こんのシスコンだきゃあ、椿ちゃんだけには甘いんだから」
「そうかな?」
「ああ。そうだよ! おまえ、あんなに椿ちゃんに冷たくされてるってのに、
 なんでそう尽くすかねえ」
「冷たくなんてされてないよ」
「もう病気だ! 病気! おまえやばいぞ。かなり毒されてる」
 なにに、とはいわない水無都冬真。それから首を振ると秋巳の肩に手を置く。
「判った。判ったよ。ここはおまえに花を持たせてやるさ。
 椿ちゃんの好感度を上げる手伝いをしてやるよ。
 せーぜー運動と容姿のパラメタあげて、振り向かせることだな。
 ただ、いいか。柊ちゃんとのことは、俺が望んでやってることだから、
 おまえにどうこう言うつもりはないけどな。これについては、貸し一だからな。
 いつか十倍付けで返してもらうからな。たとえ、おまえが嫌がっても」
「うん。判った。ただ、椿は僕の一存では、冬真に渡せないよ。椿が了承しないと」
「いいから。もう黙れシスコン」
 珍しく水無都冬真が、呆れ声を出した。



164:名無しさん@ピンキー
08/01/20 14:23:05 AW3msTCo
>>128あれはもともと一冊分で終わる予定だったんだと
週チャンは一冊出ない内に連載終了する事も多いから、扱いとしては良い方。
作者のの名前がそこそこ知られてるからできたんたけどね

165:__(仮) (12/17)
08/01/20 14:25:49 /Y72H/+n
 
 
 そして迎えた中間考査最終日。秋巳の学年も椿の学年もその日の試験は午前中で終了のため、
校門前で四人で待ち合わせて、遊びに出るまえに一緒に昼食を摂りに行くこととなった。
 校門のところで秋巳と水無都冬真がふたり、試験終了の開放感に包まれ浮かれながら
早々に帰宅の途につく生徒たちを見送りながら待っていると、椿と萩原睦月のふたりが小走りでやってきた。
「すみません。兄さん。水無都さん。お待たせしてしまいましたか」
「いやいや。全然待ってないよ。いまにもスキップでもしそうな浮かれ気分で帰る
 女の娘たちのスカートの揺れを気にしてたら、
 時間なんてあっという間だって。……って秋巳が」
「そうだね。冬真の鼻の下がどのくらい伸びるのか観察してたらあっという間だったよ」
「それは良かったです」
「あ、あの……あっ、あたし―」
 椿の横に立ち、緊張のためだろうか体を硬くして、いつもより声のオクターブを上げて口を開こうとする萩原睦月。
だが上がっている所為だろうか言葉がうまく続かない。
「こちらは、私の親友の睦月。萩原睦月です」
 その友人に助け舟を出すように、紹介をする椿。
「はっ、はじめまして。は、萩原、睦月、です。
 きょ、今日は、……そ、その、どうも、お忙しいところ……」
「なあに。睦月。それじゃ、営業マンの挨拶みたいよ」
 椿がからかうようにそう言い、ふふ、と笑う。
さらに水無都冬真が感動したように声を続ける。
「いやいや。やっぱ一年生は初々しくていいねえ。
 どうもさ、俺の周りって擦れた女の娘が多いから、
 めちゃくちゃ新鮮だよ!」
「すみませんね。水無都さん。一年生の癖に擦り切れちゃっているような女の娘で」
「えっ! いやいや違うって! 椿ちゃんのことじゃないって!」
 慌てたように両手を振りつつ、誤解を解こうとする水無都冬真。
「まあ、確かに、椿は新入生って感じしないよね」
「兄さん! そこは、兄として妹をフォローしてあげるところだと思うんですけど?」
 そう言って、笑い声を上げた三人に、その雰囲気に飲まれたように萩原睦月もつられて笑い、
気を持ち直したように体からふっと力が抜ける。
「あはは。すみません。あたし、変に緊張しちゃって。
 改めて、挨拶しますけど、あたし、萩原睦月で、椿の親友やらせてもらってます! 
 水無都先輩、お兄さん、よろしくお願いしますね!」
「ああ。こちらこそ宜しくね。萩原ちゃん。
 ついでに俺のこともお兄ちゃんって呼んで良いよ?」
「あはは。遠慮しておきます」



166:__(仮) (13/17)
08/01/20 14:27:26 /Y72H/+n
 
「えっと、椿から聞いてるか判らないけど、僕は、椿の兄で秋巳。
 萩原さん、椿と仲良くしてくれてありがとう」
「いえいえ! とんでもないです! あたしの方こそ、
 椿にこれ以上ないくらいお世話になってますから! 
 でも、お兄さんがいることは聞いていたんですけど、
 椿って、あんまりお兄さんのお話してくれないんですよね。
 だから、今日どんな人なのか会えるの楽しみにしてました!」
「そうなんか? こいつは、ことあるごとに二言目には
 『椿が~、椿が~』って言ってるけどな。な! シスコン!」
「ちょ、ちょっと冬真! 椿の親友に変なこと吹き込まないでよ。
 誤解されるじゃないか」
「へぇー。なんだか意外です。でも、椿も椿で、実は、お兄さんのこと話さないのは、
 あたしにお兄さんのこと話すと、あたしが惚れて、
 『取られちゃう!』って思ってるからだったりして?」
 意地悪そうにチェシャ猫のような笑みを浮かべて、椿の頬をつつく萩原睦月。
「あら。ばれちゃいました?」
 そんな意地悪にも、微塵も動揺するような素振りを見せず平然と受け流す椿。
「もう。いじめ甲斐がないんだから! この娘は」
 そう言ってくすくすと声を上げる二人を見て、秋巳はものすごく幸せな気分であった。
 あの椿が楽しそうにしている。自分にはまず見せない表情をしている。親友の前だからという事情があるからだが、自分にも穏やかに接してくれる。
 秋巳の望んでいるものが、目の前にある。
 それは秋巳にとってなりより、それこそ試験終了の開放感などどうでもいいようなことであるかのごとく、幸甚の感情をもたらした。


167:__(仮) (14/17)
08/01/20 14:29:15 /Y72H/+n
 
 
 それから四人が向かった先は、よくある普通のファーストフード店。
高校生の懐事情を鑑み、それにあまり気負ったところにいくのも今日この場の集まりの趣旨にそぐわないと考え、椿と萩原睦月が提案した。
 ちょうどお昼時ということもあり、学生らしい人たちも含めて、店内は大変賑わっていた。
そんななか運良く取れた四人席に、秋巳と水無都冬真が、椿、萩原睦月の分の注文商品も携えて、やってくる。
席取りをしてくれていたふたりのもとに。
「いや。お待たせ。めちゃくちゃ混んでてさ」
 そう言って萩原睦月に右手に持っていたトレーを渡す水無都冬真。そして同じように椿の分を渡す秋巳。
 それぞれが相手にお礼を言い、ふたりが席につくと、それが合図であるかのように銘銘食事を始める。
 食事中の話題は、試験終了直後ということもあり必然的に、テストの出来具合の話になる。
「でも、水無都先輩ってすごいんですよね? 
 前に、学年で三位を取ったことがあるって聞きましたけど」
 秋巳の通う高校はそれなりの進学校ということもあり、中間や期末考査、実力試験の結果の上位は掲示板に張り出されるため、
常連は学年を通して名前を覚えられることになる。水無都冬真は常連とはいえなかったが、話題の人ではあった。
「そのおかげで、次から教師に眼をつけられることになったんだよね? 
 その前の試験で赤点五科目だったのに」
「はん。俺は本気になれば出来る男なのよ。
 教師の節穴の目をかいくぐるなんて、朝飯前だね」
「うわ。そっちの出来るですか?」
「単にそう言って、先生たちを煽って楽しんでいるだけですよね。
 血眼になった先生たちを尻目に、再び学年トップテン入りしたのは」
「さっすが。椿ちゃん。よく俺のこと判ってるよね。
 そういう萩原ちゃんはどうなの?」
「え? あ、あたしですか? うーん。あたしも頑張ってはいるんですけどね。
 それでも椿に比べると、見劣りしちゃうなぁ」
 そう言って、肩にかかる少しはねた髪を払い、はぁーと息を吐く萩原睦月。
「いやいや。その頑張れるっていうのが、凄いよ。
 俺は、努力できるってひとつの才能だと思う。
 ひとつの目的に向かって努力しつづける、ってなかなか出来ることじゃないしね。
 椿ちゃんもそう思うよね?」
「ええ。そうですね。でも、一般的に言って、
 好きだからこそ、望むからこそ頑張れるっていうのもあるのでは。
 だから、好きでもないことは、無理して頑張らなくても、とは思いますけど」
「うーわ。なんでもできる椿に言われると、説得力ないなぁ。へこむよー」
「あら。睦月。勘違いして欲しくないのだけど。
 私が言ったのは、勉強が好きだから勉強を頑張れるとか、
 そういう直接的なものではないのよ? 
 たとえば、医者になりたいって強く願っていて、
 そのためには医学部にいかなければいけない。
 だから、医学部へ入るために勉強を頑張れる、とか、そういう意味よ? 
 睦月も十分理解していると思ったけど?」
「う……。確かに」
 若干頬を染めて、ちらと一瞬だけ水無都冬真の方に視線をやる萩原睦月。


168:__(仮) (15/17)
08/01/20 14:31:13 /Y72H/+n
 
「水無都さん、睦月の親友として言わせてもらうならば、
 彼女はものすごい努力家ですよ。それこそ私が驚嘆するくらい」
「ちょ、ちょっと。やめてよ! 椿。照れるじゃない!」
 そう言って、萩原睦月は椿の背中をぱんぱんと軽く叩く。
「ほぉー。そいつは凄いね。俺にはない才能だから、正直羨ましいよ。
 な、秋巳」
「そうだね。でも、年下のふたりに圧倒されてる僕たちってちょっと情けないよね」
「おいおい! 勝手に人を加えるなよ! 俺は才覚溢れるっつーの!」
「あはは。そうだっけ。じゃあ、僕だけかな」
 そう冗談ぽっく明るく笑い飛ばす秋巳に、椿が声を被せる。
「いいえ。そんなことないですよ。兄さんは、自分であまり気づかないだけです。
 水無都さんもそのあたりは理解しているのでしょう」
「え?」
「ああ。そうだな」
 椿の言葉に軽く頷く水無都冬真。
「兄さん」
 椿のフォローがあまりに意外だったのか、ぽかんと口をあけた秋巳のその口元に、正面に座る椿が手を伸ばす。いつのまにか出していたハンカチを携えて。
「汚れがついていますよ」
 そう言って、秋巳の口元を優しく自分のハンカチで拭う。洗濯したての洗剤の香りだろうか、秋巳を安心させるような柔らかな香りが、その鼻腔をくすぐった。
「…………」
「…………」
 刹那なにが起こったのか判らず、時を刻むのを忘れてしまったかのように固まる秋巳。と水無都冬真。
 萩原睦月は、息を呑んだように、うわ、と小さく声が洩れただけであった。
「はい。きれいになりましたよ」
 椿だけがその空気の中平然と、秋巳の口を拭い去り、終えると拭いた面をなかに折りたたむようにして、再びハンカチを仕舞う。
 そして、なにごともなかったかのようにストローに口をつけウーロン茶を啜った。
 そんななかいち早く回復したのは水無都冬真であった。
 はっとしたように我に返った水無都冬真は、自分を指差し叫ぶ。
「つっ、椿ちゃん! 俺っ! 俺も! 汚れついてるよっ!」
「心は拭けませんけど?」
「うわっ! ひどっ!」
「ふふ。冗談です。睦月、水無都さんが口を拭いてくださいって」
「え? あ、あ、あたしが?」
「カモーン! 萩原ちゃん!」
 両手の甲を彼女に向け、くいくいと傾ける水無都冬真。
「あ、じゃ、じゃあ、失礼して」
 そう言って、自分のトレーの上にある紙ナフキンをニ、三枚取り上げると、おずおずと水無都冬真の口元に寄せる。
 その間も、秋巳は固まったままであった。あとで椿のこの行為は、萩原睦月に水を向けるためのものだったのだろう、
と思い立ったのだが、この瞬間にはそんな余裕がなかった。
 兄妹間のスキンシップなど、この四年間まずなかったのだから。


169:__(仮) (16/17)
08/01/20 14:34:22 /Y72H/+n
 
 
 その後、四人でウィンドウショッピングや、ゲームセンタ、休憩に入った喫茶店においても、
椿は秋巳に対して、手をつないだり、肩に触れたり、一緒にプリクラ写真をとったりと、なにくれとスキンシップを図っては、
おなじようにするよう萩原睦月と水無都冬真に水を向けていた。
 その日は秋巳にとって驚愕の連続であった。さすがに後半になってきて秋巳も大分落ち着きを取り戻し、
椿の行動の意図が読めたが、それでも心はざわついた。
 つかの間の夢、しかも椿は単に演技でやっているのだと判っていても。
どうしても秋巳の手に取り戻したくて、でもどうしても取り戻せないと諦めていたことなのだから。
 
 日も大分暮れて。夕焼けに染まる街並みを歩く四人。
 そろそろお開きという段階になって、椿と萩原睦月が別に寄りたいところがあると、ふたりと別れることになった。
水無都冬真はそれにも付き合おうかと提案したが、萩原睦月が丁重に辞退し、水無都冬真と萩原睦月が携帯のアドレスを交換したところで、二組に分かれた。
 そして、そのまま家路へと向かう秋巳と水無都冬真。
「おまえ、今日一日魂が抜けてたみたいだったぞ」
 水無都冬真が秋巳をからかう。
「ごめん。今日、僕、なんか変なこと言ったりやったりしてた?」
「いーや。逆だな。なんもしてなかった。椿ちゃんに引っ張りまわされるままだったな」
「そう」
「ま、いいんじゃないの。椿ちゃんの目的も色々達成できたみたいだし。
 俺がそれに応えるとは限らないけどね」
「萩原さんのこと、気に入らなかった?」
「いや。とってもいい娘じゃない? とても純粋だと思うよ。
 さすが椿ちゃんの友達だけあるね」
「それじゃ、付き合ってみる気になったの?」
「おいおい。昨日今日でいきなりそんな答えが出るわけないだろ。
 友達づきあいするのは吝かじゃないけどな」
「へえ」
 じゃあ、望みはあるんだ。秋巳は思った。
 水無都冬真が、柊神奈と付き合うことになるのか、それとも、萩原睦月なのか、はたまた椿であるのか。
 秋巳は判らなかったが、水無都冬真には純粋に幸せになって欲しいと願った。
 学校からとは逆方向から帰っているため、先に水無都冬真の家につき、そこで彼と別れると秋巳はひとり歩き思う。
 夢の終わり―。か。
 今日の秋巳は、まさに水無都冬真が指摘したとおり、夢見心地であった。
 椿が自分にまるで仲の良い家族のように穏やかに接してくれる。微笑みかけてくれる。そう兄思いの妹のように。
 なんど夢見ただろう。そんな光景が訪れることを。そして、なんど絶望しただろう。
 椿は演技であった。
 それは、秋巳は理解しているつもりだった。
 家に戻れば、また、あのいつもの椿が帰ってくるのであろう。
 それは判っていた。
 だがいつかは戻ってくるんではないか。今日のような日が。椿が本心からさきほどのように接してくれる日が。
 そんな希望を秋巳に抱かせるほどに、甘い夢であった。


170:__(仮) (17/17)
08/01/20 14:36:59 /Y72H/+n
 
    *  *  *  *  *  *  *
 
 秋巳と水無都冬真、そのふたりと別れた椿と萩原睦月は、喫茶店『ユートピア』に来ていた。
 かつて、椿と水無都冬真が話をしていて、そこをたまたま萩原睦月が見かけた、そのときと同じ席で。
「椿。ほんとーに、きょうはありがとうね!」
 まるで拝むかのように両手を合わせて、椿に頭を下げる萩原睦月。今日の余韻だろうか、彼女のテンションは先ほどから高いままであった。
「大げさよ。それにそんなことされたら、私がなにか、
 睦月を脅してるみたいじゃない」
「いや! もうほんと! 感謝してます」
「もういいってば。そんなにされたらこっちが恐縮するわよ。
 それに、そんなかしこまられるほど浅い仲じゃないと思っているのだけど?」
「ううん。椿のことが好きだから! だからこそだよ!」
 顔を上げて椿を見つめる。
「それに、紹介してくれるだけじゃなくて、
 今日も色々……その、チャンス作ってくれて」
 萩原睦月が言っているのは、今日の椿の秋巳に対する態度のことであろう。彼女が色々水無都冬真に接触する機会を作ってあげるための。
「いいのよ。私が望んでることだし―」
「え?」
「睦月と水無都さんが仲良くなるのは」
「あ、ああ! ほんと、椿さまさまです。もう、椿に足を向けて寝られないね。
 こんなことわざわざ敢えて言う仲じゃないって判ってるけど、
 椿になにかあったら協力は惜しまないからね!」
「だから、いいの。睦月はいてくれるだけで。私のためになってるんだから」
「あはは。ありがとう。でも、今日、お兄さんずーっと固まってたよね。
 椿の態度に。私も最初、びっくりしちゃったもん。
 あの普段は凛とした椿が、こんなにお兄ちゃんっ子だったのかーって」
「そうね。あとでフォローしておかないと。
 それと、今日のこと感謝してくるなら結果で返してね。
 貴方と水無都さんの交際報告待ってるわよ」
「うーん。まだまだ道のりは遠そうだけどね。でも、頑張るよ! 
 いままで、三年以上想ってきたんだから、焦ることないよね」
「そうよね。頑張ってね」
 椿は強く願った。うまくいくことを。
 そしてそんな自分に気づいて、存外自身に余裕がないことを悟った。


171: ◆a.WIk69zxM
08/01/20 14:37:51 /Y72H/+n
 
以上。投下終了です。
読んでくれた方は、お疲れさまです。
 

172:名無しさん@ピンキー
08/01/20 14:38:50 tdiuiFSc
>>171
リアルタイムGJ!

173:名無しさん@ピンキー
08/01/20 14:42:10 KQuQH1ys
GJ!

174:名無しさん@ピンキー
08/01/20 14:51:05 kWx5R+VX
GJ!

だがしかし、妹の腹の内が全く読めねぇ……
色々策略練ってそうなのだが俺の非凡な頭じゃあ想像つかねぇ
しかしこう色々とあれこれ予想させられるのは良質な小説の証拠
続きを一日千秋の思いで待ちます。全裸で


175:名無しさん@ピンキー
08/01/20 15:11:11 et+efKdB
GJ!!!

176:名無しさん@ピンキー
08/01/20 16:29:47 EUUrgcSa
未だ本性を見せない椿。

病む要素満載の神奈。

手駒にされそうな睦月。

一癖も二癖も隠してそうな弥生。
全取り出来そうな冬真。


展開予想が出来ません。


誰かタイムマシーンを下さい。









秋巳視点の寝取り描写があるなら、注意書きをお願いします。

177:名無しさん@ピンキー
08/01/20 18:01:35 Ifn06Gex
>>176
ていうか、秋巳が主人公でしょう。

178:名無しさん@ピンキー
08/01/20 18:26:37 04PaHR+A
>>176
ここは寝取り寝取られスレじゃないぞ?

しかしほんとに妹の目的は何なんだろね?

179:名無しさん@ピンキー
08/01/20 18:57:27 3+9J1P77
GJです!
ハンカチと紙ナプキン……この差は大きい。

180:名無しさん@ピンキー
08/01/20 19:57:51 iBBNE49h
表現とかがそこらの小説より上手いかも…


181:名無しさん@ピンキー
08/01/20 21:53:54 b0Zar3w4
超グッジョブ!
すごく続きが気になる!

182:名無しさん@ピンキー
08/01/20 22:16:03 0E8MMPlL
今のところキモウト小説らしくないのが不安。

183:名無しさん@ピンキー
08/01/20 22:53:31 fS8CO8kY
椿は睦月を冬馬に嗾けるのを理由すれば兄との過度なスキンシップも許容されるって考えてるじゃね?

184:名無しさん@ピンキー
08/01/20 23:01:04 kWx5R+VX
>>183
イヤ、そこはフツーに読み取れる


185:名無しさん@ピンキー
08/01/21 01:01:09 SU+72IKd
短いのを書いたので投下します。

186:ある朝の風景
08/01/21 01:01:59 SU+72IKd
「和也。朝よ、起きなさい」
 優しい囁き声が吐息と共に耳をくすぐる。体が緩やかに揺すられるのを感じながら、和也は薄らと
目を開けた。
 視界に映っているものは見慣れたものばかりだ。いつも通り綺麗に清掃された自分の部屋と、その
整然とした部屋を背景に柔らかい笑顔を浮かべて自分を見下ろす姉、円の姿。いつも通り、エプロン
を身につけている。和也がぼんやりと目を開けているのが分かっているはずだが、弟の体を軽く揺す
るのを止めなかった。和也が緩やかな揺れを感じるたび、円の長い黒髪がかすかに揺れてひそやかな
音を立てた。
「ほら、起きなさい、和也」
 急かすでもない、のんびりとした口調だった。表情もさして慌ててはおらず、長い睫毛に縁取られ
た両目は微笑ましげに細められているし、形のいい唇も同じような笑みを作っている。
「もう起きてるよ」
 何とか口から出た声はひどく掠れていた。起き抜けはいつもこうだ。円はさらに目を細める。和也
の体を揺するのは止めなかった。
「ダメよ。ちゃんと体を起こして部屋から出て、朝ごはんを食べて学校に行く支度を整えて……そこ
までやって、初めて『起きた』って言えるの。いつも言ってるから分かるでしょう、和也」
 ほんの小さな子供に言い聞かせるような、ゆったりとした口調である。和也は唇を尖らせた。
(いつまで経っても子ども扱いだもんな)
 「分かったよ」と答え、布団を除けながら体を起こす。すると、円が口元に手をやって、おかしそ
うにこちらを見た。
「なにさ?」
「ううん。元気だなーと思って」
 嫌な予感を覚えて円の視線を辿ってみると、股のところで寝巻きがテントを立てていた。和也は悲
鳴を上げてベッドから飛び降りた―布団で隠そうとしても引っぺがされることが分かりきっていた
からだ。そんな和也の慌てぶりを見て、円は堪えきれずに吹きだした。
「そんなに慌てなくてもいいのに。可愛い象さんじゃない」
「そういう表現は止めてくれ!」
 文句を言いながらドアノブに手をかける。焦っていたせいか、一回ノブを捻る方向を間違えた。ド
アを開いて部屋から出て行こうとしたところで、背後から呼び止められた。
「朝ごはん、テーブルの上に用意してあるから。ちゃんと食べるのよ」
「ありがと」
「どういたしまして。お姉ちゃんは、この部屋を軽く掃除してから行くから」
「分かった」
 円が和也を起こしたあとで部屋の掃除をするのは、長く続けられている慣習のようなものだった。
と言っても、部屋の掃除は毎日他の機会にも行われるので、毎朝繰り返す必要がないぐらいには綺麗
なはずだ。
(それでも絶対毎朝掃除するんだよな、円姉ちゃんは。おかげで俺の部屋は埃一つ落ちてない。あ
りゃ綺麗好きってよりは清潔好きってレベルだよなあ)
 そんなことを考えながら階段を下る。
 和也としては、円の掃除を止めるつもりはさらさらなかった。部屋が片付いているのはいいことだ
し、円は弟のプライバシーを尊重して、机の中を覗いたりはしない。要するに健全な男子諸氏なら必
要不可欠なある種の雑誌等を隠しておくのは容易ということである。彼らの家は片親で、唯一の保護
者である父は海外出張中。家に残っているのは円と和也と、妹の茜だけだ。茜は今年で中学二年。意
図的に兄を避けるような年頃なので、勝手に部屋に入ってくることもない。
 要するに、女衆に見られるのは少々恥ずかしいカラー書籍類を見られる心配はしなくてもいいということだ。
(姉さんは真面目で、その辺きっちりしてるもんな。あれだけ信頼できる人も珍しいよ、ホント)
 ダイニングのテーブルには既に茜が座っていた。ショートヘアーに伏目がちの瞳。いつも通りもう
通学する準備を済ませているようで、皺一つないセーラー服に身を包んでいる。左手に茶碗を持ち、
右手の箸を無駄なく動かして黙々と食事をしている。兄を待つ気はさらさらないらしい。「おはよ
う」と挨拶しても「ん」という返事が返ってくるだけで、実に淡白だ。
(ま、この年頃の女の子ってのはこういうもんだって言うし、別に気にすることでもないか)
 和也は特に文句も言わず椅子に座り、円が腕を振るった朝食を、妹同様黙々と食べ始めた。


187:ある朝の風景
08/01/21 01:03:03 SU+72IKd
 自分の背後でパタンとドアが閉まり、弟の足音が遠ざかっていく。それを確認して初めて、円は気
を緩めて深く息を吐き出した。全身から力が抜けて、思わず床に膝を突いてしまう。激しく高鳴る心
臓を落ち着かせるため、その場で数十秒ほども深呼吸をして待った。
 手を見ると、親指と人差し指の間の肉に、赤い歯型がついていた。先程和也の朝立ちを目撃したと
き、口元に手を当てて笑う振りをしてずっと噛んでいた跡である。そうでもしなければ、ある衝動を
抑えていることが出来なかったのだ。
(ああ、和也……あんなにたくましくなって……)
 先程の光景を思い浮かべて、円はうっとりとする。危ないところだった。咄嗟に手を噛まなければ、
我を忘れて弟を押し倒していたかもしれない。
(そんなことをしてはダメよ、円。和也はわたしのことを綺麗好きで真面目なお姉ちゃんだと思って
いるんだもの。こんなことを考えているのがばれたら、絶対に嫌われてしまうわ)
 それは円にとって、最も恐れるべき事態だった。もしも不気味がった和也が家を出てしまったりし
たら、自分は発狂して死んでしまうかもしれない。そこまで深刻に考えているし、実際それに遠くな
いことにはなるだろうと確信してもいた。
(そうよ。和也の前では自嘲するの、円。たとえあの子が我慢しきれないぐらいに愛しいとしても)
 そう念じて表情を真面目なものに変えた円だったが、和也の寝顔と先程の朝立ちが脳裏に蘇った途
端、毅然とした表情は一気に崩れ去った。自分でもそれが分かるほどだった。
「しっかりしなさい!」
 短く叫びながら、思い切り頬を叩く。乾いた音がして、なんとか理性が戻ってきた。こんなことが
必要になったのもごく最近のことである。気付けば、弟に向けられる劣情が抑えきれないほど高まっ
てしまっていた。もしかしたら、近い内に本当に抑えきれなくなるかもしれない。そう考えると、円
は胸は重くなった。
(可哀想な和也。こんな薄汚いお姉ちゃんと一緒に暮らさなくちゃいけないなんて)
 だが弟への同情と憐憫に浸っている暇はない。
 円は和也が先程まで寝ていたベッドのそばに近づいた。ベッドメイキングをするためでもあるが、
真の目的はそんなことではない。
 ベッドは和也が布団を跳ね除けたままになっており、空になった敷布団に、弟が寝ていた跡が見て
取れる。その凹みに、円は唾を飲み込みながら腕を伸ばした。腕は自覚できる程度には震えていた。
そっと敷布団に触れた手の平に弟の温もりを感じたとき、円の胸に狂おしいほどの熱が湧き上がって
きた。その熱狂的な情動の命ずるまま、床に膝をつけて敷布団の上に突っ伏す。頬擦りしながら鼻息
を一杯に吸い込むと、かすかに汗の臭いを感じ取ることができた。
(和也の臭いがする)
 目を閉じて浮き上がるような幸福感を感じたあと、円はすぐに体を起こした。掃除と偽って和也の
部屋に居残るのは、何もこれだけが目的ではなかった。むしろ、これはほとんど前準備のようなもの
である。
 円はエプロンのポケットからあるものを取り出した。ジッパーのついた小さなビニール袋と、すっ
かり使い慣れた感のあるピンセットである。それぞれを手に持ち、ベッドの隅々まで視線を走らせる。
「あった!」
 小さく歓声を上げて、円はピンセットを持った右手を敷布団の一角に伸ばした。そこに、黒い毛が
一本落ちている。髪の毛ではない。和也の髪の毛はストレートだったが、その毛はひどく縮れていた
のだ。言うまでもなく、陰毛だった。ピンセットでそれをつまみ上げ、ビニール袋の中に入れる。他
にないかと探してみたが、それ一本だけだった。残念に思うと同時に、どうしようもない自己嫌悪の
念で頭がクラクラした。
 だが、自分は一体何をやっているんだろう、と思いつつも、手は大事にそうにビニール袋のジッ
パーを閉め、エプロンのポケットの中にそれをしまいこんでいる。
 この行為を円が始めたのは、一ヶ月ほど前からだった。


188:ある朝の風景
08/01/21 01:04:38 SU+72IKd
 その晩、円はどうしても寝付けずにいた。布団の中に入っていても、自然と頭の中にあることが浮
かんでくるのだ。それは一本の竿と二つの玉を含んだ袋で、多くの縮れ毛に覆われている物体である。
 要するに、和也の股間を直に見てみたいという願望が急激に高まりつつあったのだ。
 その夜は本当に危険だった。もう少しで寝ている和也の部屋に忍び込んで彼のズボンを引っ張り下
げていただろう。弟の部屋のドアノブを握ったところで何とか踏みとどまり、何度も何度も冷水で顔
を洗ってようやく欲望を押さえ込んだのである。
 その日以来、円はこうして和也の陰毛を収集するようになった。部屋の机の引き出しの一番奥に仕
舞いこんで、たまに取り出しては眺めてうっとりして妄想に浸るのだ。たまには……というか、大体
自慰もする。
 姉がこんなことをしていると知ったら和也はどう思うだろう、と考えると、情けなさと恥ずかしさ
で死にたくなる。
 しかし円には愛する弟から離れることなど考えられないことであり、同時に弟に嫌われることも弟
を傷つけることも、絶対に避けるべき事態だった。
 つまり、彼女は自分自身の欲望から、愛しい弟を守らなければならなくなったのである。それは日
に日に高まる弟への劣情と、大切な家族と一緒にいたい、守りたいという姉としての理性との戦いだった。
 欲望と戦うために、彼女は日々こうした代替手段に励んでいるのである。洗う前のパンツの臭いを
嗅ぐこともあるし、和也が使ったあとの食器をこっそり舐めることもある。
 円は、自分がこういう状態になって、初めて男性が卑猥な本などを必要とする理由を知った。こう
いった欲望は何らかの形で発散させなければならないのだと痛感したのである。さもなければ劣情の
対象に直接叩きつけるしかないのだから。
(ごめんね、ごめんね和也。お姉ちゃん、頑張ってこの気持ちを抑えるから。だから、まだ和也のそ
ばにいさせてね)
 心の中で弟に侘びながら、円は少し泣いた。
 そうして気がついてみると、かなり時間が経っていた。そろそろ、弟が食事を終える時刻である。
円は涙を拭いて、クローゼットの中から和也の制服を取り出して部屋を出た。
 階下へ降りると、ダイニングのテーブルには妹の茜だけが座っていた。和也の席には、ほぼ全てが
空になった茶碗と食器が残されている。
「和也は?」
「トイレ」
 茜は素っ気なく答える。
 和也がトイレに入っている、と聞いて、また変な妄想が膨らみそうになるのを、円は寸でのところ
でこらえた。先程欲望を発散したせいで、いくらか理性が優勢になっている感覚がある。和也の制服
をハンガーごと壁のフックに引っ掛けながら、円は肩越しに茜を見やった。
 彼女自身も既に食事を終えていた。食器はもう片付けられていて、茜の前には何もない。その何も
ないテーブルの上に肘をつき、茜は静かにテレビのニュースを眺めていた。
 この、年の割には少々静か過ぎるぐらいに無感情な感じのする妹が、円にとっては最後の希望で
あった。いよいよ欲望を抑えきれなくなったときは、茜に全てを打ち明けて、自分を止めてもらうつ
もりである。
(自分から和也から離れるなんて、わたしには耐えられそうにないもの。万が一のときは、無理矢理
茜に追い出してもらわなくちゃ)
 自分よりもずっと冷静でまともな妹を見つめながら、円は己の情けなさにそっとため息を吐いた。
異常な姉の目から見て、この妹は実に冷静だった。何故自分はこんな風になれないのだろう、とた
まに激しい自己嫌悪に襲われるほどである。
(でも、それがわたしの助けになってくれる。茜はきっと、こんな姉を軽蔑して、和也から引き離そ
うとしてくれるわ)
 テレビを見つめる茜の横顔に、円は言いようもない安心感を感じていた。
 それからしばらく経って、和也がトイレから出てきた。その間の弟の姿を想像しないように努力し
ながら、円は笑顔を作って和也に制服を差し出す。視界の隅で、茜がトイレに向かうのが見えた。


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