08/09/29 02:16:20 dL3v5Sn0
だからこそ、
「だからこそ気をつけておけ。確かに私はそんなことをするつもりはないが、―うちに損をさせたい連中だって沢山いる」
「有難う。心配、してくれてるかな?」
シロ君いまいち表現素直じゃないけど、と笑い、
「やっぱり、効き目が一晩でも、私にその薬を飲ませちゃ駄目だよ」
「? まだ何か損になるのか?」
「うん。……だって」
いきなりの動きで、ハイディはシロジロに手を伸ばした。
顔に触れるかと思った指先は、シロジロの指越しに薬瓶に触れ、包み、
「私、素直になったら、きっとシロ君にこの薬を飲ませたくなるよ?」
それこそ一生素直になるくらい、と続けるハイディは笑っている。
冗談めかして、目を細めて瞳を見せずに、笑っている。
シロジロはその表情に一瞬迷いを得たが、ややあって、ハイディの冗談という態度に見合った応えを返した。
苦笑。
「……確かにそれは困るな。素直にさせられては商売にならん」
「そうそう。私としてもシロ君の商売の邪魔になるのは避けたいし―だから駄目」
そしてハイディは、何事もなかったかのようにシロジロの手から薬瓶を取る。
逸れた話題を呼び戻すように、それを二本の指でくるりと揺らし、
「でもどうする? 商品化。梅組なら買いそうなの結構いるけど、……自分に素直に色々壊しまくるんじゃないかな」
「……その補修をうちで担当すれば二重の儲けになるか?」
「シロ君、流石にそれ極道だと思うのね」
いつものようなやり取りに戻りながらも、シロジロは思う。
……素直になったら邪魔になると思うのなら、邪魔をしたくないというのは本心なのか?
思うだけだ。
問うたとして、いつもの笑顔で睨まれるだけだろうから。