ヤンデレの小説を書こう!Part13at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part13 - 暇つぶし2ch485:名無しさん@ピンキー
08/02/13 08:28:17 y+OucXp8
>>475
GJっす!

今後の兎のデレ分に期待したい

そして狸…死ぬなよ…

486:名無しさん@ピンキー
08/02/13 12:40:02 uK43VcgK
>>475
GJ!!

原作どおりだと狸死ぬよね……


487:名無しさん@ピンキー
08/02/13 13:00:02 ih6kSV5/
太宰のカチカチ山でも兎は悪女なんだよな
狸←兎じゃなくて狸→兎だけどw

488:名無しさん@ピンキー
08/02/13 18:37:04 wDqWFNBR
>>475
GJ!

とりあえず狸と友達になりたい

489:名無しさん@ピンキー
08/02/13 19:17:48 ih6kSV5/
今更だがヤンデレの魅力とは何なんだろう?
最近ツンデレ同様にヤンデレが俗化する傾向にあり、にわかも増えてきた
結局ヤンデレの魅力、いやさヤンデレの真髄は何なのだろう?
最近じゃ単に狂気や猟奇があればいいという風潮にあるが
だからレナもヤンデレになるんだろうな

490:名無しさん@ピンキー
08/02/13 19:21:42 YumLN2vO
そんな議論どうでもいい

491:名無しさん@ピンキー
08/02/13 19:49:38 ih6kSV5/
単なるキチガイをヤンデレにした方がわかりやすいから?

492:名無しさん@ピンキー
08/02/13 20:13:05 ekw4wFVF
相手を愛しすぎてヤンでしまうところがいいんじゃないか?
最初は普通の価値観をもつ少女でも、男君を愛しすぎてしまったが故に、男君を手に入れるためにはどんなことでも厭わないという思考を持つようになる究極の純愛だと思う
 
病むほどのデレがあってこそ初めてヤンデレと言えると思う
猟奇は大した問題じゃない、というか趣旨が違う

493:名無しさん@ピンキー
08/02/13 20:28:52 v3JoR40Q
想いが肥大して赤色巨星みたくなったあげく自重で内側に潰れていき、しまいにゃブラックホールに…。

みたいなのを書こうと思った時期が俺にもありました。

494:名無しさん@ピンキー
08/02/13 20:50:27 GsPkVf2x
>>493
まだ遅くない
ssを書くんだ

495:名無しさん@ピンキー
08/02/13 21:10:03 YHHRf9lh
明日はバレンタインか・・・
ヤンデレの女の子が、血と愛液が混じったハート型のチョコを持って来てくれないかな~
一人は辛いぜ!!ちっくしょー!!

496:名無しさん@ピンキー
08/02/13 21:24:32 l/m6yGoH
>>495
最近電柱の裏に隠れている美女がお前をジロジロ見てたんだが・・・。

497:名無しさん@ピンキー
08/02/13 21:42:46 asrnyYam
>>495に素敵なフラグが立ってるな。


ところで勢いで書いた短編を置いていく。杜撰で済まない。

498:君になら殺されてもいい
08/02/13 21:43:44 asrnyYam
屋上に2人。僕と彼女は立っていた
。突き抜けるように青い空、あおい、蒼い空を仰いだ。
空っぽの僕の心よりずっとあおい。
太陽が眩しい。

「泣いているの?」

彼女が僕に問いかける。

「空が眩しいんだ」

僕は彼女の問いに答える。
視線を空から彼女に戻した。長い黒髪はいつ見ても本当に綺麗だ。
白かったワンピースは膝までに破れてしまっている。

視線が交わった瞬間、僕と彼女の時は止まった。
止まった時の狭間でも僕は何も思わない。
悲しいも嬉しいも幸せも寂しいも。

「泣いているの?」
「君が二度も聞くってことは泣いているんだろう」
「あなたを哀しませてしまったのね」
「君が誰かを殺したことが悲しいんじゃないよ」

眉をひそめて申し訳無さそうな彼女。
白かったワンピースは返り血で赤い。
赤い紅いあかぁい血の色。
僕の父と僕の母と僕の妹の血の色。

その血を見て何も思えない僕は問題なのか。
その彼女を見て何も思えない僕は問題なのか。



499:名無しさん@ピンキー
08/02/13 21:43:52 a5Wmyhcv
俺はどうせ今年もゼロだよバーロー

500:名無しさん@ピンキー
08/02/13 21:44:02 v3JoR40Q
支援

501:君になら殺されてもいい
08/02/13 21:44:56 asrnyYam
「なにが悲しいか当ててあげるわ」

彼女は諦めたような顔で空を仰いだ。

「私が何をしてもあなたは私を好きにならないことが悲しいのでしょう?
 そして正確には悲しいというよりどうでも良いんでしょう?」
「当たりだよ、驚いたな」
「だって私はそんなあなたが好きなんだもの」

目を閉じて踊るように歩きだす。
白かったスカートが重たげに揺れ、黒く美しい髪が軽やかになびく。

空っぽの僕に近づいて来る。

「何にも執着しないあなたが好き、
 何にも捕らわれないあなたが好き、
 何も大切にしない出来ないあなたが好き」

歌うように言葉を紡ぐ。
五メートルほどあった僕と彼女の距離はゼロになった。
彼女の左手は僕の唇に触れ、彼女の右手には包丁が紅く光る。

風は無い。鳥は鳴かない。誰も来ない。

「私のことを好きになるようじゃ興醒めだわ」
「なんとも素敵な告白だね。じゃあ僕は君の望み通りじゃないか」
「そうね」

ぱっちりと目を開けしっかりと瞳を覗き込んで。

「だからあなたを私に頂戴」

僕は笑った。正確には微笑んだ。

「そうだな。君になら殺されてもいい」

――空っぽの器でいいならいくらでも君にあげよう。



502: ◆5PfWpKIZI.
08/02/13 21:46:14 asrnyYam
これしか無いんだ。済まない。
支援ありがとうございました。

色々な点で反省はしている。2月中には必ず再開する。


503:名無しさん@ピンキー
08/02/13 21:46:46 a5Wmyhcv
割り込みスマソ

504:495
08/02/13 22:36:22 YHHRf9lh
>>496
それは本当か!?
くそ!俺には空鍋様という人がいるというのに!
ちょっと、文句を言ってくるわ。人をジロジロ見るなってな

505:名無しさん@ピンキー
08/02/13 22:45:56 Wtu7Lhh+
>>502
こういう雰囲気は結構好きだ……ってか恋人作りの作者さんか
あの作品元々はバレンタインネタだったっけ、もう一年経つんだな

506:名無しさん@ピンキー
08/02/13 22:50:20 Ifwve53h
>>504
お前ちょっと表出ろ

507:名無しさん@ピンキー
08/02/13 22:53:05 wk9IXhvU
>>495!落ち着くんだ。

何故496は、495の正体を知っていたかを考えるんだ!
つまり496こそが・・・・・・

508:名無しさん@ピンキー
08/02/13 23:11:34 uZ3ICv30
>>502
彼女もヤンだが僕も相当なヤンですな
……恋人作り、全裸でお待ちしてますよ

509:名無しさん@ピンキー
08/02/14 00:11:15 ue68UZEY
>>507
俺がヤンデレ?ごめんだぜw

510:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:30:27 Eysd06wo
連日で申し訳ないですが、第三話投下します。

511:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:31:08 Eysd06wo
 
 ***

 狸は布団で横になり、唸っていた。
 まだ背中のやけどが痛むのだろうか、狸は寝返りをうつたびに少し叫んで飛び起き、
 いつものように自分の不運を嘆いていた。
 すると、扉が軽く鳴る。狸は重い腰を上げ、のそのそと扉に近づく。
 開けると、にこにこと笑っている兎の姿がいる。

 狸は肩を落とし、物憂げな表情をしてゆっくりと口を開く。

「兎さん、今日は一体なんの用事だよお……」

 兎は懐に抱えている壷を見せる。
 中には粘り気のある液体が入っている。

「いえいえ、狸さん、こないだはとても不幸な目に会いましたね。
 まだ傷も癒えていないかと思ったので、知り合いの薬師に、
 やけどに効く薬を分けて頂いたのですよ」

 狸は少し溜息をつき、弱弱しく言葉を返す。

512:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:33:13 Eysd06wo
「その薬というのも、唐辛子が入っていたりして、肌がひりひりとなったりするのだろう……
 あるいは、法外な値段を吹っかけたりするのだろう……」

 兎は表情を崩さずに笑いながら返す。

「あらあら、狸さん、私はそこまで性悪ではありませんよ。
 ちゃんとした塗り薬ですし、お金もいりませんよ。
 それに狸さんは身包みを剥がせるほど豊かでもないでしょう?」

 狸は疑うような目をしていたが、兎が急かして中へと強引に入る。
 狸も半分は諦めた様子で、穴倉の中へと案内し、一枚の座布団を差し出した。
 兎はその上に行儀良く正座をする。狸は背中を見せる。
 背中は毛が無くただれており、怪我の痛々しさを伝えている。
 兎は塗り薬を指で救うと、手のひらを使って背中全体へと伸ばしていく。
 狸は塗られると何やら肩の力が抜けるような気持ちよさを覚えたが、
 段々と体が火照り始め、気持ちが高ぶりはじめた。

 特に女性と肌を合わせたこともない狸のことであるからして、
 この状況に対して耐性の無い狸が、
 扇情的な気分になるのも仕方がないことだった。


513:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:33:59 Eysd06wo
 また、かわいらしい兎がこのように肌へと薬を塗っていくと考えることが、
 何処か狸の妄想をかきたててしまうのだろうか。

 狸の下半身が段々と反応をし始め、自分自身をますます困惑させてしまう。
 流石にこのような情けない姿を見せないためにも狸は目をつぶり、
 落ち着かせようとした。

 暫くすると、手の動きが止まったのか、液体の粘るようなぬるぬるした感触が消えた。
 もう、塗り終わったから、安心できるかなと思う。

 しかし、今度は何か背中に圧し掛かかられているように感じる。

 目を開けると、首の前で、兎が手を交差している。
 狸が後ろを振り返ると、直ぐ傍に兎の顔が見える。
 白い肌の頬をほんのりと赤らめ、うっとりしたような目付きで狸を見ている。

 しかし狸には正直それが気持ち悪いとしか思わなかったし、
 狸をより一層困惑させる原因となっていた。
 それは考えれば当然のことで、兎にあれほどまで虐められてきたのだから、
 このようにされたとしても、素直に従うほどの度胸も甲斐性も狸にはないだろう。
 だが、狸の気持ちとは裏腹に、狸は兎の身体を求めてしまいそうになっている。

514:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:34:22 Eysd06wo
 いったい、俺はどうしてしまったのだろうか、と狸は思う。
 兎は身を乗り出し、狸の肩に顔を出し、耳元で誘うような甘い声でささやく。

「ねえ……狸さん……本当にあの娘のことが好きなのですね?」

 弱弱しく息があたり、呼吸の音が聞こえる。
 狸は顔を真っ赤にしてうつむく。

「いいいいやそそそそのおれはああああのこのことがすきで」

 緊張しているのか、このような状況に慣れていないのか、
 狸はしどろもどろになっている。
 上手く舌も回らず、身体も震わせていた。

 兎は狸の頬に手の平をあてて、ゆっくりと兎のほうへ向かせる。
 兎の顔がゆっくりと近づき、唇同士が触れ合う。そして、舌と舌が絡み合う。
 何も音のしない静寂の部屋で二匹の唾液が絡む音だけが響く。
 狸は、蒸気が吹き出んとばかりになっていた。
 唇を離すと糸を引き、呼吸に合わせて、二人の肩が上下する。

「おおおおい、うさぎさんおれおれをからかうのはやめてくれよお」

515:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:35:27 Eysd06wo
 狸は兎を突き放し、壁に寄る。
 兎は少し首を傾け、潤んだ瞳をぱちくりとさせている。

「何一つからかっていませんよ。
 寧ろ狸さん、貴方こそ、女性がこのようにしているのですから、
 もう少し構っていただけないと恥をかかせることになりますよ」

 そのように喋りながら、兎は距離を詰めて行く。既に兎は上着を脱いでいた。
 何時の間に、と狸は思う。
 ゆらゆらと揺らめく蝋燭の光に照らされて、兎の膨らんだ乳房に影が出来ている。
 その姿は淫靡に感じられ、ますます狸には直視が出来なかった

「はははははじとはいっても、おれはおれはむすめにはじめてをささげるつもりで」

 兎は狸の下着へするりと手を滑らせる。
 十分に硬くなった男根の頭部分から少し粘り気のある液体の感触が、
 兎の手のひらから伝わる。
 その液体を伸ばすように手で撫で回す。

516:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:36:21 Eysd06wo
「ふふふ……狸さん……
 私ならばともかく、他の雌に貴方の"始めて"を捧げるだなんて、
 本当に純情なんですね……本当は誰にも捧げられたないのに……
 私はそんな狸さんが好きで好きで仕方がないんです……
 でも、それが私ではないのが許せないんですけどね……」

 そっと狸の首筋に手を添え撫でる。
 狸の背筋が凍る。
 それは別種の怖さであった。
 狸はそれほど女性経験もないので、ちゃんとした言葉に出来ないが、
 それでも伝わってくる冷ややかな怖さ。
 虐めるときに見せるような怖さではなく、もっと違う、何かどろどろとした怖さを、狸は感じた。

「ああ……うさぎさん……うさぎさん……こんなことはだめだ、だめだよう」

 狸は身が硬くなってしまい抵抗すること出来なかった。
 兎の撫で回す感触にただただ震えるだけであった。

「何が駄目なのですか?本当はこのようなことを望んでいたのではないですか?」

 狸の耳元で囁き、そして耳を甘噛みし、そのまま耳の周りを舐めまわす。
 耳を這う舌の音がいっそう狸の欲望を駆り立てる。
 兎は狸の物を握り、優しく動かす。兎はまた続ける。

517:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:36:51 Eysd06wo
「狸さんは私の気持ちに気が付いてくれることを信じていましたよ……
 でも、そんなことは無かったわけです……
 むしろ貴方は自分に優しくしてくれた人にだまされてほいほいとついていったわけです……」

 狸は身を震わせ、唇を噛んでいる。兎は手の動きを早くする。

「最初のうちは貴方に虐め倒し、私を見るたびに震え上がり、
 従わざるを得ないところまで追い込もうと思いましたが、やめました。
 むしろ貴方に、あの小娘なんかには到底思い浮かばないような快楽を身体に教え、
 私だけしか抱けなくしようと思ったのです……
 あんな小娘なんかに、あんな小娘なんかに、貴方を寄越してやるものですか……」

 狸は兎の腕に力なく手を置く。

 最後の抵抗。

 狸は目をきゅっと閉じ、身体を震わせた。
 兎は手の中に暖かく粘り気のある液体が強く当たる感触を覚えた。

 きっと射精したのだろう。

518:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:37:16 Eysd06wo
 兎は手のひらを見つめ、舌で救いあげるようにして舐める。
 射精したせいか、狸はぼんやりとその姿を見つめている。

 一体、目の前の兎は、いつも見る兎なのだろうか?
 あの意地悪で虐めてくるあの兎なのだろうか?狸は動かない頭で考えていた。
 しかしその考えも次なる快楽の刺激が、それを阻害した。

 兎がひくひくと動く肉棒に兎は腰を降ろしていた。

「確かに私の料理は下手だと思いますが、
 あれは本当に貴方だけに食べさせるために作ったものですよ。
 あの料理には私の"愛"が入っていたのですから……

 ねえ、狸さん、何が望みですか?娘の体ですか?
 自慢じゃないですが、私はあの娘よりもよほど良い体をしていると思いますよ……
 自惚れなしに、ですよ……

 それに娘よりも一緒にいられますしね……
 私と一緒にいたほうがいいんです……絶対に……」

519:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:37:52 Eysd06wo
 兎は腰をなまめかしく動かす。
 狸はされるがままだった。
 何も考えることも出来ず、ただ力無く兎を見るだけだった。
 そのように腰をこすり付けられることで、狸は射精感を再び覚え始めた。

「駄目ですよ、狸さん……
 先ほど背中に塗った薬は、"愛液"によって、その効果が増えるんです……
 しかも若くて美しい娘の愛液ほど効果があるのです……
 さらにいうならば、その"愛液"が"精液"と混ざることで、
 効果が活性化され、治りがよくなるのです」

 狸にはもうそれが本当かどうかを考えるほどの気力はなかった。
 兎はそのまま、自らの穴へと棒を招きよせ、そのまま繋がった。

520:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:41:18 Eysd06wo
 ***

 狸が目を覚ますと、既に兎の姿はいなくなっていた。背中の痛みは既に引いていた。
 狸はぼんやりと顔をこすりながら、自分でも変な夢を見たものだなあ、と思った。
 ふと、狸が机の上を見ると、そこには達筆な字で
 
 『他の用事があります、ごめんなさい』

 と書かれた手紙と、毒々しい色の芋の煮っ転がしが皿に添えられていた。
 狸はふと台所を見ると、乱闘か何かの跡のように悲惨な状態になっていた。
 狸は台所を掃除することと、目の前の小皿に添えられた料理のことを考えると、
 段々と頭が痛くなってきた。

521:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:43:25 Eysd06wo
 ***
 
 兎は少し離れた草むらで佇んでいた。
 暫くすると、狐の行商が鈴を鳴らしながら歩いてきた。
 兎は手を振って呼び止める。
 狐は媚びるような笑いをして近づいてくる。

「おじょうちゃん、こないだはありがとね、どうだい、効いたかい?
 あの媚薬っつーやつは?肌にひとぬりすればたちどころに体が火照り、
 快楽だけにしか身動きできなくなるという奴は」

 手を揉みながらまくし立てる狐。兎は呆れた顔をして言う。

「全く、あいかわらず口が減らないのね」

 狐はへへへ、と舌を出した。

522:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:44:39 Eysd06wo
「これも商売のうちですからね、で今日は何にしましょう?
 この穴開き包丁は切れ味抜群でどれだけ切っても野菜が包丁にへばりつかないわけで
 お手入れも簡単とこれぞ主婦の見方というわけで」

「いえ、そんなものはいりません。
 "私は別に物理的に殺したいわけではない"のですから」

 狐は殺す、という言葉を聞いて、その兎の表情を改めて見つめた。
 確かに口元は笑っている。
 しかし目は笑ってはいなかった。
 狐も数年行商をやっているから、それほど勘が無いわけでもない。
 この目をした女性はたいてい似たような商品を要求する。
 狐の手のひらから汗が滲み出る。それは……

「一口舐めただけで段々と体が衰弱し、
 何時しか死においやってしまうような毒薬が欲しいのです」

 沈黙が流れる。
 荒涼とした草むらに風がざわつき始める。
 狐は天を仰いだ。きっと嵐が来る。どろどろとした嵐が。

523:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/14 10:47:10 Eysd06wo
投下終了です。

デレ分が足りないようなので入れてみたのはいいけれど
変になっているかもしれない orz

524:名無しさん@ピンキー
08/02/14 11:49:47 VxM/ugdq
GJ!
狸がすげーかわいいw

525:名無しさん@ピンキー
08/02/14 13:28:11 h7295RH/
さて残るフラグは泥舟に乗ってNice boat.ですか。
狸の生首を抱きしめるのは兎か……。
wktkしつつ続き待ってますGJ

526:名無しさん@ピンキー
08/02/14 13:43:51 TiVqQ2b7
急にデレてきた兎かわいいよ兎。

でもまだなにか企んでるっぽいのな。

527:名無しさん@ピンキー
08/02/14 17:03:15 zujCa/Sh
人間の女はどうでるか期待
グッジョブ

528:名無しさん@ピンキー
08/02/14 19:19:58 8XdQMgiO
人間の娘さんが老婆役なら、殺して鍋にするんだよなぁ・・・

529:名無しさん@ピンキー
08/02/14 19:45:56 AtoHhA1P
!!

530:名無しさん@ピンキー
08/02/14 22:29:39 OB4soKPE
>>523
GJ!今後の展開が気になる
それにしても、今日はバレンタインだっていうのに誰からもチョコが貰えなんだわ
チョコ、欲しかったな・・・

531:名無しさん@ピンキー
08/02/14 22:44:13 15RIRsL1
>>530
「あの……ずっと好きでした」

今日のために愛を込めて作ったチョコをおそるおそる>>530に差し出す。
頬が熱い。緊張し過ぎて目がちかちかする。>>530は驚いた顔のまま固まっていた。

「え……俺に?」
「はい」

チョコをわたす瞬間、>>530の指先が軽く触れた。それだけで体が熱くなる。

「……開けて食べて良い?」
「はい、もちろん」

目の前で食べてくれる。
予想以上に都合の良い展開にめまいがした。

532:名無しさん@ピンキー
08/02/14 22:45:13 15RIRsL1
↑続かない

連投スマソ

533:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:26:22 28tXPm3E
大きくなったら>>531みたいな展開があるはずだ。
そう思っていた時期が私にもありました。

投下します。
タイトルは去年のクリスマスイブのSSと似せていますが、登場人物は違います。

534:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:29:44 28tXPm3E
 僕にとってバレンタインデイは甘くない。しかし少しも甘くない訳ではない。
 嘘は言っていないけど、いきなりこれだけ言われたら他人にはわけがわからないだろう。

 一般的に二月十四日はバレンタインデイと呼ばれている。一ヶ月後はホワイトデイだ。
 恋に夢中な女の子は十四日の一週間前からチョコレートを贈与するらしい。
 姉さんの知り合いにそんなせっかちな乙女がいるらしいのだ。
 その乙女は同棲している恋人に毎年チョコレートをあげる。
 バレンタインデイの一週間前には部屋中がチョコレートだらけ。
 なぜなら、朝食と夕食のデザートとしてチョコレートを出すから。
 うん。僕が姉さんの友達の彼氏だったら絶対にチョコレートに飽きるだろう。
 いくらお菓子が好きな僕でも限度というものがある。
 一日で食べたチョコレートの数の記録は板チョコ五枚。それ以上は無理だった。
 僕はチョコレートに飽きたくない。何事もほどほどが一番だ。

 二月十四日の朝には僕の家の中にカレーのいい匂いが立ちこめる。
 去年がそうであったように、今年ももちろんそうだった。
 僕は鼻腔をくすぐる香りに食欲を刺激されて起床した。
 睡眠欲求を喚起する布団の温もりを意識的に遠ざけてベッドから這い出し、冷たい制服を身に纏う。
 階段を下りて洗面所へ行き顔を洗う。よかった、今日は寝癖がついていない。
 リビングのドアを開けると、すでに家族全員が揃っていた。
 椅子に座っているのは父さんと母さん。キッチンに立っているのは姉さんだ。
 すれ違いざまに両親に挨拶して、キッチンへと向かう。
「おはよう、姉さん」
「おはよう、正史。今日の調子はどう?」
「別に、どこもおかしくなんかないけど」
「……昨日はちゃんと眠れたかしら?」
 僕は胃をつつかれたような気分になった。平静を装って返事する。
「うん。ちゃんと、いつも通りに寝たよ」
「あらそう。ふふ、それならいいの。今日のことでドキドキして眠れなかったんじゃないかな、
 って思って聞いてみただけよ」
「まさか、たかがこんなイベントぐらいで僕がおかしくなるわけがないよ」
 嘘。実は昨晩、すぐに眠れなかったのだ。
 それは、昨夜風呂上がりの姉さんの姿を目にしたときから僕の心が落ち着かなくなったから。
 姉さんの湯上がりのほてった顔や湿った髪の毛を見ているうちに気持ちが急いてきた。
 断じて興奮したわけではない。僕の大事な部分に変化は起こらなかった。
 ただ、姉さんを見ていることができなくなったのだ。
 だから僕はすぐに自室に籠もってベッドに飛び込んで布団をかぶって寝た。
 しかし、昨晩はそこからが辛かった。
 二月だというのに真夏の夜のように寝苦しかった。何もしなくても汗が吹き出した。
 熱を発散させるために腹筋や腕立て伏せなどをした。筋肉の痛みに意識を向けることでようやく眠れた。
 慣れないことをしたせいで今日は筋肉痛に見舞われている。
 腹に力を込めると疼く。たまに刺されるような痛みを感じる。

 昨日はいったい何が僕の身に起こったんだろう。
 ただいつものように母さんと姉さんの作った料理を食べただけなのに。
 父さんの顔を見る。目尻にしわが浮かんでいるが、精悍な顔つきをしているところは変わらない。
 父さんも筋肉痛に苛まれているんだろうか? こうして見ているだけでは判別できない。
 母さんは机に肘をつきながら姉さんの料理する後ろ姿を眺めている。
 こちらにも変わった様子は見受けられない。
 やっぱり昨晩の体の異常は僕だけに起こったものなのか?
 それならそれで構わないけど、どうして僕だけなんだ?
 ……だめだ、わからない。考えるのをやめよう。
 きっと僕ぐらいの年齢だとたまにこういうことが起こったりするんだ。そういうことにしよう。


535:名無しさん@ピンキー
08/02/14 23:31:07 28tXPm3E
 姉さんの作った朝食はカレーライスだった。付け合わせにサラダがついてきている。
「おかわりもまだまだあるから、たくさん食べて。朝食は一日の活力よ、正史」
 悪いけれど一皿だけで十分だ。それ以上食べると学校に行くのが辛くなる。
 僕は小さな声でいただきます、と言ってからカレーを食べ始めた。
「どう? どう? おいしい?」
 頷いて自分の意志を伝える。満足したのか、姉さんは自分の分の朝食を食べ出した。
 
 このように、僕がバレンタインデイに最初に口にするのはカレーライスだ。
 中辛のカレーライスとバレンタインデイは僕の脳内ではセットになっている。
 姉さんが作ったカレーライスはけちの付け所の無い出来だ。とても美味しい。
 料理上手を自負する母さんでも姉さんほど美味しく作れないらしい。
 美味しさの秘訣を聞いてみたところ、じっくり熟成させるのがポイントだという。
 どれぐらいの時間熟成させればいいのかさらに踏み込んで聞いたら、三日以上よ、と答えられた。
 それはつまり、十一日の朝には作り始めているということだ。
 しかし、ここで疑問が湧いてくる。
 昨日の夕方の時点ではキッチンのどこにもカレーの入った鍋は置かれていなかった。
 昨日、偶然昼食を食い損ねて空腹に耐えかねている状態の僕が探しても見つからなかった。
 ということは、台所には置いていない、イコール、作っていないということだ。
 どこかに隠しているとも考えられるが、わざわざカレーを隠すためだけにそんなことをするだろうか?

 ちょっと聞いてみようと思い、横に座る姉さんの方へ顔を向ける。
 姉さんの目がとろんとしている。なんだか眠そうだ。
「大丈夫? 姉さん」
 姉さんが顔を向ける。正面から見た顔はどこか血の気が薄くなっているように見えた。
「平気よ。ちょっと昨日夜更かししただけだから」
「それなら別に朝食を作らなくても……」
「いいじゃない。正史、カレー好きでしょ?」
 頷く。認めよう。僕は姉さんの作ったカレーが大好きだ。
 毎日―はさすがに飽きるから、毎週金曜日の夜に食べたい。
「だったら何も言わずに食べなさい。今年のは去年以上にたくさん……」
「たくさん?」
 何を入れたんだろう? 香辛料の種類を増やしたのか?
「……じゃなかった。いっぱい時間と手間をかけたから。残さずに食べなさいよ?
 食べ終わった後でカレーの鍋を使ってうどんを作りなさい。きっと美味しいから」
「気が向いたらそうするよ」
 久しぶりに食べる姉さんのカレーは本当に美味しい。ファンになってしまう。
 まだ残っているらしいから、今日は全部食べずに明日に残すとしよう。


536:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:32:26 28tXPm3E
 学校へ向かいながら、今日どんなことが起こるのかを想像する。
 まず、僕は一個もチョコレートをもらえない。それは確定している。
 学校に来ている女子生徒はもちろんのこと、家族からももらえないはずだ。
 姉を持つ同じクラスの友達に聞いたところ、姉からは必ずもらえる、母と姉からもらえる、
妹も姉もいるけど一個ももらえねえよちくしょうめ、という回答をいただいた。
 例外はあるが、姉からチョコレートをもらうというのはよくあることらしい。
 しかし、僕はそんなこと信じられない。
 なぜかというと、僕の姉さんはカレーは作っても、チョコレートをくれないからだ。
 小学校に通っていた頃はもらっていたように思う。しかし、今の姉さんはチョコレートなんかくれない。
 理由は知っている。姉さんは本命にしかチョコレートをあげないから。
 姉さんには心に決めた相手がいる。名前も教えてくれないけど、いい人だということはわかる。
 バレンタインの日、姉さんはずっと上機嫌だ。きっと特別なイベントだから浮かれているんだろう。
 そのおかげで僕は姉さんから美味しいカレーを振る舞ってもらえる。ありがたいことだ。

 姉さんに恋人が居ると聞くと、ちょっとだけ寂しくなる。
 シスコンだと思われるかもしれないけど、姉さんと一緒に暮らす今の生活が僕は好きだ。
 姉さんは大学二年生だから、あと二年もすれば就職して家を出るはず。
 長く付き合っている恋人がいるなら、卒業と同時に結婚するということも考えられる。
 そのことが原因というわけではないけど、僕も高校卒業と同時に家を出ようと決めている。
 自分から離れていた方が気持ちの踏ん切りがつきやすいからだ。
 就職か、進学か。どちらを選ぶかは決めていない。どちらに対しても気持ちが半分ずつ向いている。
 だけど、家を出て一人暮らしをすることは決めている。
 もちろん両親には相談済み。去年の十二月に受けた実力テストの結果を見せたら渋々ながらも了解してくれた。
 姉さんには話していない。進路がはっきり決まってから打ち明けるつもりでいる。
 でもきっと、姉さんは僕を応援してくれるはず。
 今通う進学校も、両親が反対する中で姉さんだけが味方してくれたから通うことができた。
 お礼に、僕は離れて暮らしても姉さんの味方をしようと思う。
 でも、姉さんが僕を頼りにすることはおそらく無いんだろうな。


537:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:36:03 28tXPm3E
 靴箱置き場へたどり着き、自分の上履きを取り出そうとした僕は違和感に気づいた。
 シューズの上に、箱が一つ乗っている。
「……ああ、またか」
 ため息が出た。今の僕の心に浮かぶのは怒りではなく、呆れだ。
 バレンタインデイに靴箱の中に四角形の箱を入れられる。
 そこだけ聞くといい話だ。箱の中にはチョコレートが入っているはず、なんて誰もがまず思う。
 だけど、これはフェイク。断言してもいい。
 上履きと箱を同時に取り出す。右手の上に乗った箱を開けてみて、僕は呟く。
「……ほらね」
 やっぱり空っぽだった。去年とまったく同じだ。誰かが僕をからかうために空箱を入れたのだ。
 辺りを見回して監視している人物がいないか探る。
 …………ま、いないよね。実行犯が見つかるようなヘマをするはずがない。
 きっと見えない角度から僕の悔しがる顔を見ているのだろう。
 そういう手合いは下手に構うと喜ぶ。放っておくのが正解だ。
 空箱を鞄の中へ放り込む。ゴミ箱には捨てない。家に帰ってから誰かへの恨みを込めて引き裂くことにする。

 学生鞄の口を閉じて歩き出したとき、背後から明るい声で挨拶された。
「松ちゃん、おはよう!」
「山城さんか。おはよう。珍しく早いね」
 いつも遅刻ぎりぎりでやってくるはずのクラスメイト、山城ゆずさん。愛称ゆずぽん。
 元気一杯の笑顔と明るい声で、低身長という欠陥を補っている。
 欠点があるとするなら僕を松ちゃんと呼ぶ点だ。
 こっちは松ちゃんって呼んでるんだから松ちゃんもゆずぽんって呼びなさい、なんて言われる。
 愛称を呼ぶのが嫌な訳ではない。言わされているみたいな気がするから嫌なのだ。
 そもそも他人にそこまで馴れ馴れしくするなんて僕にはできない。
 だから僕は呼び方を変えない。山城さんは山城さんだ。

「たまたま早起きしてね。松ちゃんはいつもこんな時間なの? 早すぎじゃない?」
「……授業が始まるまであと二十分しかないよ」
「まだ二十分もあるの? もったいないことしたなあ。
 今日も寒かったから一分でも長く布団の中に入ってたかったのに」
 それには同意しかねる。一分でも入っていれば再び眠ってしまうのは確実だ。
 特に山城さんみたいに授業中に必ず寝ている人はやめた方がいい。
 しかも僕の席の隣で眠っているものだから、僕にまで先生の目が向けられている。
 山城ゆずを叩き起こせ、松田まで眠るんじゃないぞ。
 そんな感じの念がこもった目で見られるからたまったものじゃない。


538:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:40:00 28tXPm3E
 山城さんは素早い動きで靴からシューズに履き替えた。
 僕が歩き出すと真横に並び、同じスピードで歩き出した。
「ねえ、チョコもらえた?」
 笑い混じりの弾んだ声。何が嬉しいんだか。ちょっとだけ僕は不愉快だ。
「もし僕がもらったと言っても、それが事実だとは限らないだろう? 信じる?」
「まず信じないよ。松ちゃんが一個もらったら、このゆずぽんのもとには十個やってくるはずだもん」
「なるほど。山城さんが十個貰ったら僕のところには一個やってくるというわけだね。ステキな説だ」
「残念。それは成り立たないよ。だって誰も松ちゃんには渡さないはずだから」
 よくわかっているじゃないか、という台詞を口から出しそうになった。
 自分から負けを認めてどうする。ここは反論するべきだろう。

「それはまだわからない。義理堅い女子生徒がくれるかも」
「へえ、誰かにお世話したことがあるの? 義理って、誰からでももらえるわけじゃないんだよ?」
「そうだね、貸しがある女の子からじゃないともらえないよね。というわけで、山城さん」
 手を差し出す。もちろんチョコレートの催促だ。
「私に貸しがあるって? いつのこと?」
「昨日僕は弁当も昼食代も持ってきていない山城さんのためにお弁当を分けてあげた」
「ああ、そんなこともあったっけ。おいしかったよ、ありがとう」
「どういたしまして。まさかジュースを買いに行っている隙に全部食べられるとは思わなかったよ」
「それは松ちゃんが悪いね。机の上に美味しそうなお弁当を置きっぱなしにされたら誰でも手を出すって」
「居直っても駄目。借りは返さないといけないよね?」
 さらに手を突き出す。山城さんの眼前を覆う形になった。
「うーん……わかった。じゃあとっておきのやつをあげる」
 手を握られた。山城さんの柔らかい両手から熱が伝わってくる。
「一瞬だけだからね?」
「はい?」
 チョコを食べるのに一瞬しかかからないという意味か?
 もしや十円でお釣りが返ってくるチョコでも渡すつもりなのか?

 山城さんは僕の正面に立ち、僕の手首を立てた。続けて腕を少し下げた。
 何をする気なんだ、と訝しんでいると、山城さんが間を詰めた。
 手の位置は山城さんの胸の高さにある。その状態で山城さんが近づいてきたらどうなるか。
 答えを出したときにはもう遅かった。
「……んっ……もう、松ちゃんの、バカァ……」
 山城さんの制服の胸ポケットに僕の手のひらが触れた。ダイレクトにいうと胸に触れた。
 手首の角度が変わる。僕の手が山城さんの制服の胸元にシワをつくった。
 小柄な山城さんは―失礼だが―胸が小さい。制服の生地の触感しかしない。
 しかし、女子生徒の胸に触れているというこの状況はたやすく僕を混乱に陥れた。
 恍惚とした目をつくるという高等な演技が目の前で行われている。
 山城さんの腰がくねくねと動いている。まるで僕の手に胸を押しつけようとしているようだ。
 急いで手を引く。山城さんに怒鳴ろうと思ったけど、台詞が見つからなかった。
 顔が火照っているのがわかる。今の僕の顔写真を撮られてバラまかれたら学校にいけなくなること受け合いだ。

「じゃね、松ちゃん! お釣りはきっちり返してねー!」
 そう言うと、山城さんは身を翻して駆けだした。
 朝一番のチャイムが鳴るまで、僕は山城さんを追いかけることができなかった。


539:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:42:22 28tXPm3E
*****

「持ち物検査をする」
 数学教師のくせに紺のジャージに身を包み頭に剣道で使う面タオルを巻いた井藤先生は、
授業が始まると同時にそんなことを言い出した。
 こころなしか、額に筋が浮き上がっているように見える。何か良くないことでもあったのだろうか。
 けっこうなことだ、なんていつもの僕なら思うのだろう。今日がバレンタインデイでなければ。

 ブーイングが教室内の至る所で沸き起こる。
 隣の席に座る山城さんも、井藤ちゃん空気読めー、と言っている。
 僕は不満を漏らさないが、井藤先生の行動は色々な問題を引き起こすからよくないと思う。
 今日持ち物検査なんかしたら、どこからかチョコレートが出てくることだろう。
 先生まで勘違いするであろう空箱を持ち歩いている僕はともかく、クラスメイト同士でくっついている
カップルにとっては迷惑この上ない。絶対に没収されてしまう。
 そして、僕を含む彼女いないグループにとってもよろしくない。
 誰かが裏切ったということが丸わかりだ。先生は生徒間の恋愛だけでなく、友情までも壊すつもりか?

「うっさいぞ、ヒヨっこども! 授業中だ!」
 井藤先生が怒鳴る。剣道部顧問の大音声。籠められた気迫が生徒を一気に静かにさせる。
 窓の向こうに見える別棟の科学室までこの怒声は響く。
 誇張ではない。なにせクラスメイト全員が聞いたのだから
「いいか? 学校って場所は勉強しに来るところだ。教科書とノートと筆箱だけ持ってくりゃいい。
 ……だが、オレは余計なものを持ってくるなとは言わない。やかましい学年主任ならともかく、な」
 おお、さすがに話がわかる。授業も厳しいしテストも難しくするが、井藤先生は頭でっかちではないのだ。
 髪を結うのがめんどくさいからという理由で面タオルを着用するような柔軟な発想の持ち主だ。
 きっと持ち物検査だって見て回るだけで、取り上げたりはしないはず。

「―だが、見つけた時は話は別だ」
 井藤先生が冷笑を浮かべる。誰かが息を呑む音がした。
「持ってくるぐらいなら、当然見つからないように気を配ってるよな?
 授業が始まったのに携帯電話をマナーモードにしてなかったり、なんてことはしないよな?」
 そんな初歩的なミスをする役は相当なドジっ子か山城さんにしか似合わない。
 仮に僕がやらかしたとしよう。そうしたらみんなは僕を冷たい目で見るはずだ。
 だがそんなことはありえない。なぜなら僕は着メロというものを一切ダウンロードしない。
 一曲まるごとダウンロードしたり、高い料金プランに入るぐらいならMP3プレーヤーを持ち歩く。
 だから、常に携帯電話はマナーモード。いつ電車に乗せられても準備はオーケーだ。


540:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:46:39 28tXPm3E
「んじゃ、かけてみるとするか。誰にすっかな……」
 井藤先生が標的を絞り込んでいる。さすがにちょっと不安になってきた。
 万が一ということもある。一応確認をしよう。

 ―――あれ、無い。

 いつもならば制服のポケットに入れているのに入っていない。どこに行ったんだろう。
「よし、こいつにするか。ほいっ、と」
 そういえば、慌てて教室に入ってきたせいで携帯電話を落っことした。
 もう落とさないように、と思って僕は安定した場所に置いた。
 平らな場所。身近なところでは床。その次は僕の鞄の中。あとは机の中かな。

「……んん?」
 その時、工事現場の近くを通りがかったときのような騒音が耳を掠めていった。
 ああもう、うるさいな。誰だマナーモードにしているやつは。もしかして山城さんか?
 隣の席に座っている山城さんを見る。
「松ちゃん……ドジ」
 あれ、どうして僕を見ているんだ?
 山城さんの指が床を指している。いや、僕の机を指している。
 身を縮めて机の中を覗き込む。
「……………………うわぁお」
 僕は携帯電話を発見した。通信端末が駄々っ子みたいに机の中で暴れていた。
 プラスチック製の本体と鉄製の机の底がぶつかり合っている。イルミネーションが花火みたいだ。
 つまり、僕は似合わないことをやらかした、ということか。
 なるほど。今こうしてみんなから冷たい視線を浴びせられているのはこれが原因か。
 携帯電話を手に取り、電源ボタンを一回押す。振動が止まり、井藤先生の名前が表示された。

 井藤先生が僕の前に立った。ジャージ姿でも先生の眼光は鋭いままだった。
 初めて会ったときはこんなだらしない格好をしている人じゃなかった気がする。
 入学式の日、僕は先生の姿を目にして言葉を失ったんだから。
「松田、何か言うことはあるか?」
 微笑まれた。笑顔と服装の品位が違いすぎる。
 悪あがきする僕の思考は、精一杯先生を褒める方向へと働いた。
「先生、ジャージ姿も素敵ですけど、スーツの方がお似合いですよ」
 周りで小さな悲鳴があがる。山城さんは小声で僕を罵った。
「そうか。オレはお前に褒められて、とても嬉しいよ。あっはっはっはっは」
 先生が両手を上げて伸びの仕草をとった。
 ジャージの胸元が膨らんでいる。初めて気づいたが、先生は声だけじゃなく胸も大きいらしい。
 その感動を伝える前に直上からやってきた衝撃に頭を打たれ、僕の視界から先生の姿が消えた。

 ―僕、何かまずいことを言ったかな?
 疑問が晴れる前に、目の前が真っ暗になった。


541:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:47:52 28tXPm3E
*****

 放課後、私は保健室で眠る松ちゃんを看護していた。
 松ちゃんは井藤ちゃんに殴られて白目を剥いて、保健室に担ぎ込まれた。
 それからゴタゴタになったおかげでクラスのみんなはチョコを没収されなかった。
 取られたのは松ちゃんの携帯電話だけ。
「残念だったねー、松ちゃん?」
 人差し指で松ちゃんの鼻先をつつく。ふがっ、という音が漏れた。
 鼻を摘むと眉をひそめた。口が開き、呼吸が再開される。なんだか面白い。
 でも。

「やっぱし松ちゃんと話してる方が楽しいよ。リアクションは面白いし予想外の展開も見られるし。
 それにね……………………好きな人と話をしていると、女の子はそれだけで幸せなんだよ?」
 耳元でささやく。これが原因になって夢の中で私と会ってくれたら嬉しい。
 松ちゃんの夢の中で、私はどんな女の子なんだろう。
 変わらない? いじわるになっている? おしとやか? 淫乱?
 ちなみに私の夢の中に出てくる松ちゃんはすっごい鬼畜だよ。
 一晩中休ませずイかせずにアソコを弄り続けるなんて当たり前。
 ロープで大股開きにさせたうえ、前と後ろにおもちゃを入れて、その様子を見ながら笑ってる。
 平らな胸に搾乳機を付けて、乳を出せ、なんて無茶を言う。
 でもそんなのはいい方。だって私も気持ちいいもん。
 一番ひどいのは四肢を縛り付けた後で体中をくすぐる時。
 夢の中なのに気が狂いそうになった。起きたら、部屋の中の物が散乱していた。
「仕返ししちゃおうかな? この場で。だって仕方ないよね。罰だよ、罰。
 ……松ちゃん、今日誰かにチョコレートを贈られてたんだよ?」

 今朝、私はいつもより一時間早く学校に来ていた。
 目的はもちろん、松ちゃんに贈り物をしようとする女を成敗するため。
 思いつく場所全てを見回った。見つかったのは一つだけ。
 松ちゃんの靴箱の中に、包装された市販のチョコレートが入っていた。
 本命ではなさそうだったけど、油断せずに処理を行うことにした。
 包装紙を破かずに剥ぎ、箱に歪みをつくらないようにしてチョコを取り出し、中身以外は再び元の形に戻す。
 これで中身不在のバレンタインチョコが完成。
 後は靴箱の中に戻してその場を立ち去る。
 しばらくして松ちゃんがやってきて靴箱を覗き、中身が無いことに気づいてがっかりしたところで姿を現す。
 ちなみに去年も同じ事をしている。
 去年も靴箱に一個だけ入っていた。どうやら松ちゃんに想いを寄せている女が一名、校内にいるらしい。

 でも、それっぽい相手は一年経った今でも浮上してこない。
 松ちゃんに近づく女は私ぐらいしかいない。
 クラスメイトや女教師も話しかけたりするけど、邪な考えを持っていそうな人はいない。
 男という線も考えてみたけど、ソッチ系の人間は校内に一人もいない。……たぶん。
 そう、松ちゃんと仲良くしている女は私だけ。――なのに。
「どうして松ちゃんは手を出してこないのかな? せっかく無防備な女の子を演じているのに。
 唐変木もほどほどにしておかないと、誰かに刺されちゃうよ?」
 今朝みたいに胸を触らせるのなんて、私を好きにしていいよ、って言ってるのと同じだよ?
 ここまで鈍いとなると、このゆずぽんは警戒しちゃいます。
 松ちゃんに好きな女がいるんじゃないか、なんてね。


542:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:49:37 28tXPm3E
「もしかして、他の人に色目使ったんじゃないの? 私の知らないうちに。
 そうじゃなきゃ、誰かがチョコを贈ったりなんかしないもんね」
 私にさえ甘い言葉を囁かない松ちゃんが想いを寄せる相手。
 許せない。こんなに想っている私をあっさり追い抜いて、隣に立とうだなんて。
 松ちゃんも松ちゃんだよ。鈍すぎるよ。
 毎朝会うだけで嬉しくって、放課後が近づくにつれて悲しくなる私の気持ちに気づいてよ。
 もう二年生の三学期だよ? 来年には卒業しちゃうんだよ?
 今の関係のままをだらだらと続けていったら、本当に友達のまま終わってしまう。
 私は友達の関係が好きなんじゃない。松ちゃんを独占する唯一の人になりたい。

「だから、好きになって? 私はもうこれ以上好きになったら……壊れちゃう。
 壊れたら、きっと周りなんか見えなくなる。松ちゃんの気持ちを無視してしまう」
 私はそんなんじゃなくて、普通の家庭を築きたい。
 結婚して子供産んで、時々喧嘩しちゃうけどやっぱり最後には仲直りする、そんなのがいい。
「あのね……たまに、怖い夢を見るの。松ちゃんも出てくるんだけど、鬼畜じゃないの。
 鬼になっているのが私。自分の望みを叶えるために、鬼はなんでもする。
 人を平気で傷つけたり、居場所を奪い取ったり、殺したり。
 想像できないでしょ? 私みたいな小さい女がそんなことをするなんて。
 でも夢の中で私は鬼になってる。
 寝ている時は気持ち悪いのに、起きたら気分が晴れてて、夢のことまではっきり覚えてる。
 学校に行って、松ちゃんが他の女と話しているのを見ると、女が頭の中でバラバラになってる。
 どこから壊していけばいいのか、そんなことまで理解できるようになってるの」

 松ちゃんの手を握る。寝ているから握り返してこない。それが、ちょっとだけ怖い。
 できることならこの手を離したくない。
 でも、まだ私は友達でしかない。起きる前に手を離さなければいけない。
 ずっと手を取り合うためにどうすればいいのか。その答えは分かってる。

「私はずっと松ちゃんの傍にいます。何があったって裏切りません。
 お願いですから…………私と付き合ってください」

 何度もシミュレーションした告白の言葉。
 言ってしまえばいいのに、振られるのが怖くて言えない。
 きっとチョコレートを渡せないのも同じ理由。
 チョコレートを渡せたら、ちょっとは度胸がつくのかな。
「……うん、そうだね。練習は必要だよね」
 松ちゃんの手を離し、ベッドにそっと置く。
 そして、耳元に口を寄せる。
「今日は無理だけど、明日はチョコレートを持ってくるから。
 あんなに欲しがってたんだから、貰ってくれるよね?
 貰わなかったら――怒るから」

 頬にキスをすると、私は立ち上がって保健室を後にした。
 暖房の効いていた保健室とは違って、外は嫌になるぐらい寒かった。
 さて、これからスーパーにでも行きましょうか。


543:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:51:52 28tXPm3E
*****

「ったく、あのバカたれが」
 人前であんなことを言うんじゃねえってんだ。
 照れたせいで手加減するのを忘れてしまった。本気でハンマーを食らわしてしまった。
 息があったから命の心配はないだろうが、またちょっとバカになったかもしれない。
 ま、それはそれで。
 バカになったとしてもオレが飼ってしまえばいいだけの話だ。
 さっきみたいにもっと褒めるようになればなお良し。むしろそれだけしてろ。
 湯飲みを手にとってお茶をすする。
 濃いめに煎れたつもりだったが、口の中に残る甘さを払うにはまだ足りなかった。
 机の上に湯飲みを置く。その横には所狭しと並べられたチョコレートたちが置いてある。
 これは生徒から没収したものじゃない。オレは今日という日にチョコを取り上げるほど無粋じゃない。
 今朝、職員室に入ったら机の上にチョコレートが山のように置かれていた。
 山のてっぺんには『剣道部女子一同より』なんて紙切れまで付いていた。
 いや……女からもててもなあ。これから女子部室で着替えられねえよ。
 そもそも、松田に惚れられないと意味がない。
 あいつはあいつでオレのことを教師としてしか見てないみたいだし。
 おまけに朝は山城の胸に触ってやがった。オレの胸には触れようともしないくせに。

「面白くねえ……」
 銀紙を剥がして小振りなアーモンド入りのチョコを口の中に入れる。気分が少しだけ晴れた。
 まったく、この美味しさがどうしてわからんのかね、あのおばちゃんは。
「優雅ですね、井藤先生? 生徒から取り上げたお菓子でティータイムですか」
 ―ツラを思い浮かべた途端に来やがったな、学年主任。
「そんなとこです。主任も食べます?」
「いいえ。私はそんな無慈悲なことはできませんから」
 すぐさまこんな切り返しが出来る時点でこの学年主任の底意地の悪さが知れる。
 オレらに持ち物検査するように命令しておいて自分はどこぞの会議に出席。
 せめてノルマ無しにしてくれたら楽だったのに。
「それに私は甘いものが大の苦手でして。特にキャラメルが」
「ああ、わかります」
 小学生のころキャラメルを噛んでいるうちに歯が抜けた記憶がある。
 トラウマになって甘いもの全てが嫌いになってもおかしくはないだろう。
 このおばちゃんにとっては四半世紀以上昔の話になるのかな。

「先生のクラスでは結構な量になったのですね」
「そですね。義理チョコを大量に持ってきた女子生徒がいましたから。
 男子に配るつもりだったそうです。男どもは悲しんでましたよ」
 嘘だよ。むしろ自習になって喜んでたはずだ。
 オレは数学の時間中、ずっと気絶した松田を見守ってたから。
「まあ。そんなものを食べて歯を磨かずにいたらすぐに虫歯になるのがわからないのかしら。
 これはもう、歯を磨く道具を持ってくるよう生徒に伝えないといけませんね」
「そんなことしたら買う金を出せ……出してください、とか反論が来るんじゃ?」
「押し切ります。子供のためにお金も出せないようでは保護者失格です」
 ……これが本気の台詞に聞こえるから、話すのが嫌なんだよな。

「それでは井藤先生。あとで没収した品をリストにして出してくださいね」
「りょーかいです、学年主任」
「言っておきますが、今週中にですわよ?」
「わかってます。あとでやっておきますよ」
 やるわけがない。意味がない。だって、没収したのは一つだけだし。
 仕方がない。部屋に転がってる要らない漫画でも持って行ってやるとしよう。
「では私は帰りますから、あとはよろしくお願いします」
「はい」
「ああそうそう、井藤先生にはジャージよりもパンツスーツの方がお似合いです。
 強制はしませんけど、明日こそはと思っていますわ。ごきげんよう」
 立ち去る学年主任に向けて軽く頭を下げる。下げなかったら今の顔を見られていた。
 今のオレは憎しみを顔にあらわしている。おばちゃんが気絶するかもしれない。
 ―ババア、松田と同じ台詞を吐くんじゃねえ。あいつが穢れるだろうが。

544:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:52:37 28tXPm3E
「……………………っはあああぁぁぁ」
 足音が遠ざかっていったところで顔を上げる。
 面倒でたまらない。教師になってから我慢することばっかりだ。
 なんで今頃になって男を好きになっちまったんだ。
 暇で仕方なくて、剣道だけしてた高校時代に松田に会えたらよかったのに。
 そしたらきっと毎日頭の中がお花畑になっていたはず。
 高校時代ならそれでも良かった。けど、教師になってから頭ん中に花が咲いてもらっても困る。
 気持ちの切り替えができずに変なテンションになる。
 松田が夢に出てきてオレの体を抱いた夢を見たときなんか、もう――
「やばっ……」
 急いで鼻を押さえる。鼻血が出そうになったんじゃなくて、鼻の穴が拡がっていたから。
 手をそのままにして立ち上がる。早くトイレに行かないと。
 
 生徒が利用する女子トイレは放課後はほとんど使用されない。
 そのことは知っていたけど、万が一のことを考えて別校舎に向かう。
 トイレに駆け込み、個室のドアを閉めて鍵をかける。
 ここは部活動をする生徒が利用しない、校庭からもっとも離れたトイレ。
 オレが何を言ったとしても聞こない。校内で松田に愛を囁けるのはここだけだ。
「松田……いや、正史。悪い。オレ……今日も駄目だったわ」
 上着のチャックを全開にして、肌着の中に手を入れる。
 ブラをしていないのは面倒だからじゃなくて、自慰するときに楽だから。
 それに、ノーブラで正史と話をするといつもより興奮する。
 間違って正史が胸に触れたら、たぶんオレは情けない悲鳴をあげるだろう。今みたいに。
「ぅ……あぅ、ん……違うんだ。乳首、固いのは……お前が原因だ。
 いつもいつも、オレを見るから。見られてるって意識すると、こう……なるんだ」

 一昨年の四月、新任の教師としてオレはこの学校にやってきた。
 どんな格好をしたらいいかわからなかったから、スーツを着て行った。
 そんで、クラスの担任として正史を含むクラスの連中に挨拶をして、流れで全員に自己紹介させた。
 その時に正史があんなことを言わなければ惚れたりしなかった。
「松田正史です。えー、スーツの似合う先生のクラスに入れて嬉しいです。これからよろしくお願いします」
 それ以来正史が見ている、見られている、と思うと恥ずかしくてスーツは着られなくなった。
 着なくなった時点でもうハマっていた。正史ばっかり見るようになってしまった。
 我ながらなんて惚れっぽいんだろ。それまで男を作らなかったのが悪いのか、別の何かが原因なのか。

 別の何か。正史しかいない。
 オレには正史しかいない。―あれ、何でそっちに考えがいく?
「わけ、わかんね……罪を償え、あほ正史」
 名前を呼びながら乳首の先端を引っかく。股間へ一直線に痺れが走った。
 下着と一緒にジャージの下もずらす。……なんでこんなにびちょびちょなんだ。
 男に挿れられたらどうなるんだろ。そういや、めちゃくちゃ痛いって知り合いが言ってたな。
 それでも、正史のモノならいい。

 右手で乳首を摘んだまま、左手を秘所にあてがう。
 濡れそぼった割れ目に指が吸い込まれていく。手が勝手に動く。
「奥まで……お前の、正史のが欲しい。こんな細い指じゃ、足りねえ。
 ……チョコ、もっとたくさんやれば良かった。その分、一ヶ月後にねだれたのに」


545:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:53:54 28tXPm3E
 でも、オレは正史にチョコを一個しか上げられなかった。
 去年と同じで、靴箱に持って行くだけで精一杯だった。
 呼び出す手紙も書いたけど、自分で破り捨てた。
 告白なんかできるかってんだ。情けない顔を見せるだけだ。
 じゃあどうやって想いを伝える? 一番いいのはあいつの方から奪ってもらうことだけど。
 既成事実でも作ってやろうか。
 道場に呼び出して、部室に連れ込んで一つ残らず服を引っぺがし、固いあいつのをココに挿れる。
 オレの体に夢中になった正史は次第に腰の動きを早めていって、そして――あれ、外に出した?
「ぃやっ、やぁやあ、だぁ…………もっと、もっとちょ、だい……」
 ポケットから携帯電話を取り出す。正史から没収したやつだ。
 正史が毎日手にしているもの。あいつの一部。あいつにとって大事な、大事なモノ。
 携帯電話を割れ目に当てる。ちょっと濡れるだろうけど、少しぐらいなら。
 細かい溝が割れ目を刺激する。あ……ほんとにイイ。返すの、やめるか?
 だな。すぐにオレしか見えないようにしてやるから。オレの連絡しか欲しがらなくなるだろうから。
 だから……いいよな、正史?

 遠慮はやめた。壊すのを覚悟して擦りつける。
 太腿へ愛液が垂れていく。手が濡れて滑りそう。
 今のオレは正史に犯されている。腰を打ち付けられよがり狂うオレを正史が抱き締める。
 口が正史のそれと繋がり、お互いの舌が行き来する。
 もぎ取られそうなぐらい胸を揉みしだかれる。正史の一物は胸の谷間も犯す。
 切ない。想像している通りにずっと繋がっていたい。でもオレは一人。正史と一緒じゃない。
 近づきたい。嫌がられるぐらいくっついて、殴って大人しくさせて、またくっつく。
 そうでもしなきゃ駄目なんだ。先生じゃなくて、女として見てほしいんだ。

「うぅ……んん、く、る…………来るよお、正史……」
 体の奥からせり上がってくる。心が張り裂けそうなほど正史が愛しく感じられる。
 どんな体勢をとっているのか、わからない。体全体が熱くなる。
 思考がぼやける。正史の顔しか浮かばない。
 快感が体内を食い破っていく。耐える力は完全に失せた。
 歯を食いしばる。ぎゅっと左手の中にある物を握りしめる。

 ――その時、予期せぬ力が加わって快感が倍加した。

「あ! ああっ、駄目、だっ! 震えちゃ、やあっ、やあああああああぁぁぁぁぁっ!」


546:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:55:25 28tXPm3E
*****

 十数回目のコール音が聞こえてきた。一旦諦めて携帯電話を折りたたむ。
 おかしいわね。正史に電話しても反応がない。
 呼び出し音がするから、電源は入っているはず。
 すでに午後五時を過ぎている。こんな時間まで授業をしているはずがない。
 ああもう、不安で不安でしょうがない。
 よりによってバレンタインデイに帰りが遅くならなくてもいいでしょうに。
 もしかしたら女の子に告白されているかもしれない。
 どうしよう。正史が穢されてしまう。

 今の今まで大事に育ててきた正史。あと一年で十八になる。
 来年の春には高校を卒業するから、それからは二人きりの生活が送れる。
 毎日抱き合ってお互いの熱で爛れて溶け合って、二人で一つになれる。
 結ばれることを夢に見始めてから幾星霜を経た。あと一歩というところまでやってきている。
「それが……それなのに、どこぞの馬の骨にとられるなんて!」
 他の女に正史は渡さないわ。渡すもんですか。
 正史。私以外の女はみんな不潔なのよ。
 あなたに出会っていなければ、あいつらは全員があなた以外の相手を見つけるわ。
 誰が相手でもいいのよ。愛を囁いてくれる相手が欲しいだけなのよ。
 でも私は違う。私の相手をできるのはただ一人、正史だけ。
 相手は他にいない。いるわけがない。

 なのにどうして正史は私の想いに気づかないのかしら。
 私が姉だから? 姉だから好きにならないように努力しているの?
 そんなの、気にしなければいいのに。私みたいに弟を本気で欲しがれば楽になれる。
 そうしたら、自分がとっても恵まれているということに気づく。
 好きな人は同じ屋根の下に住んでいる。お互いに相手がどんな人間か理解している。
 ――ね、まるで恋人同士みたいじゃない?

「ふふふ。あの子、本当のことを知ったら驚くかしら?」
 私には恋人なんかいない、ってこと。
 心に決めた相手はもちろん正史。浮気したことなんか一度も無い。
 私の本命は正史だから、バレンタインデイにはチョコレートを贈りたい。
 でも、チョコレートを渡したらあなたが本命だということを知られてしまう。
 来年のバレンタインデイまでは上手く隠し通さなければいけない。

 本命チョコレートは贈りたい。でも直接渡すことはできない。
 ならば、別の形にして食べさせてしまえばいい。
 その結果誕生したのが、たった今私の部屋の中で調合している、カレーライスよ。


547:独人達のバレンタイン・デイ ◆Z.OmhTbrSo
08/02/14 23:58:21 28tXPm3E
 テーブルの上に乗ったコンロがカレー鍋をぐつぐつと熱している。
 二月七日から正史好みの味になるようチョコや香辛料の量を調整してきた特製カレー。
 朝食に出したカレーを食べたときの正史の嬉しそうな顔を思い出すと、疲労なんか吹っ飛んでしまう。
 そして、とっても興奮する。だって、正史は私も一緒に食べているのだから。

 私が朝からぼーとしていたのは、血が足りなかったから。
 昨晩は味を損ねないようにしつつ、カレー鍋の中に血を注ぎ込んだ。
 これまでの経験からして、皮膚を切りつけるときは大量に血が噴き出すところを選ばない方がいいと知っている。
 一昨年は手首を大雑把に切ってしまったせいで部屋中が血に濡れて大変なことになった。
 去年と今年は左手の小指を少し切りつけて、そこから出てくる血を一滴一滴眺めながら鍋をかき混ぜた。
 おかげで今年のバレンタインデイのプレゼントは大成功。
 正史も私も笑顔になった。片手間に作ったチョコと血の入っていないカレーを食べた両親も感嘆していた。

 今年でもうチョコ入りカレーを作ることは終わり。
 来年からは手渡しで本命チョコをあげることができる。そして、私は正史と結ばれるのだ。
 そのための下準備もしっかりしてある。
 昨日の夕ご飯を作っている最中、正史に出す酢の物に媚薬をちょこっとだけ入れた。
 結果は……ちょっとだけ媚薬の効果あり、かしら?
 昨晩正史の部屋の戸に聞き耳を立てていたら荒い息づかいが聞こえてきた。
 実際に何をしていたのかよくわからないからはっきり言えないけど、効果ゼロというわけではないみたい。
 もし自分で慰めていたんだったら私のところに来て欲しかった。
 一年と一日早いけど、正史と結ばれるのなら結果オーライ。

 今まで私の愛を一身に受けて育ってきた正史は、一体どんな味がするのかしら?
 とっても甘いミルクチョコ? ほろ苦いビターのお味? まろやかなホワイトかしら?
 想像するだけでよだれが出てきそう。下もちょっと疼き始めてる。
 正史、早く帰ってきなさい。今夜のメニューもあなたの好きなカレーライス(私入り)だから。

 でも、私も正史の血が入ったカレーが食べたいな。
 一ヶ月後のホワイトデイが来たら、こっそり端っこを切っちゃおうかな?




-------

というところで終わりです。

では、また。

548:名無しさん@ピンキー
08/02/15 00:10:35 Jm7yAfYl
GJ
ホワイトデーに続くのかな?
期待してるぜ

549:名無しさん@ピンキー
08/02/15 00:17:38 CsBzdPrb
バレンタインネタGJ!
しかし正史に死亡フラグが立ちまくってる気がする。

550:名無しさん@ピンキー
08/02/15 00:26:29 pmYjV5do
最初体育教師が男かと思ってウホッかと思ったぜwww

GJ!!

551:名無しさん@ピンキー
08/02/15 00:37:57 hAz+i6f+
また、という言葉に期待していいんですね?
いいんですね!?

552:名無しさん@ピンキー
08/02/15 01:19:57 DQ0kqEUn
GJ!

ところで>>550、数学教師じゃないか。

553:名無しさん@ピンキー
08/02/15 01:52:02 MWgeW95Q
GJ!!
>また、
ここに期待しちゃいますよ?

554:名無しさん@ピンキー
08/02/15 05:51:45 5GXor0VL
>>547
GJっす!

素晴らしきヤンデレトライアングル!
俺は体育教師を応援したい

男みたいな体育教師の可愛らしさに萌えた・・・

555:名無しさん@ピンキー
08/02/15 07:40:35 xD/TrOek
>>547 GJです。最初、学年主任が出てきた時は主任もかと思いましたが、
どうやら違うようですね。ともかく、ホワイトデーが楽しみです。

556:名無しさん@ピンキー
08/02/15 15:37:39 MyL/ueO5
ゆずぽん理性強いなw

557:名無しさん@ピンキー
08/02/15 16:42:04 G6CUPep2
>>547
GJ!!

ホワイトデーにwktk

558:名無しさん@ピンキー
08/02/15 18:19:26 4akLCi4V
大きな胸というところで、やっと女だと気づいた。
厳つい男だと思ってたぜ・・・

559: ◆Z.OmhTbrSo
08/02/15 19:01:37 Iu6tUy6y
誤解させてしまったようで申し訳ないです。
性別がわかるよう、wikiの方では修正しておきました。

560:名無しさん@ピンキー
08/02/15 23:53:19 yOBFdfuG
叙述的ワナだと思ったんだが>性別

561:名無しさん@ピンキー
08/02/16 00:26:09 aczhLdY4
>>560
俺もw
たいしたもんだと感心してたぜww

562:名無しさん@ピンキー
08/02/16 02:37:51 LlzfDq4y
>>547
これは良い作品になりそうだ

俺も教員を応援したい

563:名無しさん@ピンキー
08/02/16 05:17:43 F/f9rgKZ
とりあえずGJ
ゆずぽんが可愛い
他の女のチョコ捨てたりとヤンデレ街道を歩みはじめつつ、まだ理性を残して踏みとどまろうとしている様が萌える

564:名無しさん@ピンキー
08/02/16 08:43:36 aAfHae2r
ゆずぽん真っ平らと聞いて、板チョコフラグかとオモタ

しかし、万力のような包囲網ですなぁw

565:名無しさん@ピンキー
08/02/16 19:54:49 VzQS/xp7
アッーかとおもってリタイアしてた
もう一回最初からじっくり読んでくる

566:名無しさん@ピンキー
08/02/16 20:46:16 joZAtlyx
現実世界にもヤンデレが!
URLリンク(news.www.infoseek.co.jp)

567:名無しさん@ピンキー
08/02/16 23:11:12 B71c4csm
男ヤンデレはやっぱダメだな

568:名無しさん@ピンキー
08/02/17 00:56:06 rEF/SLbP
これが女だったらオーケーと思ってしまう不思議。

569:名無しさん@ピンキー
08/02/17 02:56:15 FQyL10Ju
問題は性別じゃない
顔だ

570:名無しさん@ピンキー
08/02/17 06:32:08 cCh/gYDX
ヤンデレイケメンでも嫌です><

571:名無しさん@ピンキー
08/02/17 17:08:55 N/3k/le+
そこでヤンデレショタですよ

572:名無しさん@ピンキー
08/02/17 17:49:39 qtn6sN98
>>571
俺はそんな趣味は無いつもりなんだが、何故か「意外とありじゃね?」とか
思ってしまった・・・

573:名無しさん@ピンキー
08/02/17 17:50:06 M5urjDmY
>ショタヤンデレ
保管庫に忍者ものがあったよね。
作者さんもかなり気を遣っていた記憶がある。

574:名無しさん@ピンキー
08/02/17 18:33:45 IOtBzzfe
ここはオリジナルじゃなくてもいいの?二次創作でもOK?

575:名無しさん@ピンキー
08/02/17 19:05:00 Z2zJKfop
>>567
それは君が男だからだ。

576:名無しさん@ピンキー
08/02/17 19:19:15 9/7uPzC/
>>571
書きもしないのに毎回毎回しつこいな

577:名無しさん@ピンキー
08/02/17 19:21:52 FQyL10Ju
>>574
いいんじゃないかな
原作を明記してくれると嬉しい

578:名無しさん@ピンキー
08/02/17 19:25:08 rEF/SLbP
二次創作はその作品のスレで、って感じだった気がするんだが。

579:名無しさん@ピンキー
08/02/17 20:24:04 D55iUela
しかし、ヤンデレならこのスレの範疇じゃあ?
二次創作でもその作品のスレだとちょっとあわないかもしれんからな。

580:名無しさん@ピンキー
08/02/17 20:28:06 6zgdHVxr
おれはその作品のスレでを推奨するがな・・・

581:名無しさん@ピンキー
08/02/17 20:38:33 vfS33Bx+
作品スレがないくらいマイナーな原作なのやも。

582:名無しさん@ピンキー
08/02/17 21:11:21 6VtXrFVi
>>578
嫉妬スレの話じゃないのか、それ?だったらこのスレには関係なかろう。

2chのスレなんて全部チェックしきれないし
ヤンデレ好きとして作品を見逃す可能性が高まるのは、憂うべきじゃないか?
念のため冒頭に二次創作という断りとネタバレの危険等に触れておけば、個人的には問題なかろうと思う。

583:名無しさん@ピンキー
08/02/17 21:13:29 6VtXrFVi
更にいっとくと、嫉妬スレは当時の爆発的な勢いのせいで
二次は邪魔だし他でやれ、といった雰囲気になってた。
もろん粘着荒しのせいもあるが、スレの勢いが無くなってから作品を欲しがっても後の祭りなんだよな……。

584:名無しさん@ピンキー
08/02/17 21:30:39 7kb1b5Sr
ここは嫉妬スレではない件

585:名無しさん@ピンキー
08/02/17 21:36:09 vfS33Bx+
まあ作品スレがあって、そのスレで引かれないような内容ならそっちに投下するのがベターだと思うけど、
べつにこっちに落とすことに積極的に反対する理由もないわな。
あとは投下する本人の自己判断でってところじゃね。

586:名無しさん@ピンキー
08/02/17 22:03:29 cCh/gYDX
ある作品のスレでヤンデレ作品が投下されたら、このスレに任意に報告ぐらいでいいんじゃないの

587:名無しさん@ピンキー
08/02/18 00:08:21 4uiIC+MU
>>574
俺は大歓迎だな。
テンプレに二次禁止を謳ってない事や「ヤンダム」シリーズが保管庫にいる事からもスレ的にも反対する理由はないんじゃあないかな?
という訳で投下待ちwktk

588:名無しさん@ピンキー
08/02/18 00:27:43 /FHX6AR2
いやガノタの俺にとってヤンダムは大分きつかったんだぜ
だから警告だけでもだしてくれたら助かるんだぜ

589:名無しさん@ピンキー
08/02/18 01:18:47 N1xrm9FB
警告すればなんでもいいよ。

590:名無しさん@ピンキー
08/02/18 01:44:21 Og3aO9VI
次スレを立てる時はテンプレの修正が必要だな。

591:名無しさん@ピンキー
08/02/18 02:31:41 cB9oFTo8
了解、意見をくださった皆様ありがとう。
書いたら投下します

592:名無しさん@ピンキー
08/02/18 03:44:21 9i0SWU4m
まずはsageろ
それからだ

593:名無しさん@ピンキー
08/02/18 04:20:48 DXGV4sK6
【佐賀】50代女性教師、17才の男子生徒にキスを迫り首を捻挫させる 生徒はショックで休学★4
スレリンク(newsplus板)


594:名無しさん@ピンキー
08/02/18 04:25:31 ZfrJwK8B
これはヤンデレっていうより基地外なんじゃないかなぁ・・・
実際病気を患っていたらしいし

595:名無しさん@ピンキー
08/02/18 04:53:04 8RLFpXqi
このスレで書かれるヤンデレも大概基地外だと思うがw

596:名無しさん@ピンキー
08/02/18 06:05:53 9Jvvr6Rk
愛故に狂うのと狂人が愛を騙るのとはやっぱり違うと思う。


いや定義付けは難しいけどね。

597:名無しさん@ピンキー
08/02/18 06:22:22 3U0uwre6
>>596
いいや、簡単だ
広義狭義と唱える輩もいるがね

猟奇は結果に過ぎず、狂気は過程に過ぎぬ
ヤンデレの要因は、否、根本は、狂おしいがまでの強い愛情、依存、執着だ

598:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:07:56 10oW+0H1
第四話投下します。

599:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:09:18 10oW+0H1
 
 ***
 
 その時からか、兎は態度を一変させた。
 
 あれほど執拗に悪戯や邪魔を仕掛けていた兎は段々と大人しくなっていき、
 いつしか狸の傍らで腕を抱くようになっていた。

 驚いたのは動物達だった。
 動物達はあの愚鈍な狸が如何なる妖術を使ったのだろう、と噂した。
 当然、その事で狸の待遇が特段変わるわけではなかった。
 変わったことといえば、今まで以上に狸に対して距離感を置くようになっていることだけだった。
 狸としては、まあ、こんなものだろうという調子だった。

 狸が気に病んでいたのは、周囲の目では無かった。
 どちらかといえば兎の、その態度が変わり過ぎたことのほうが気に病んだ。
 一人の女性に愛されるくらいでは気質というのは変わらないもので、
 狸は相変わらず何か企んでいるのではないかと脅えていた。

 狸は釣りへと出かけた。
 狸が水面を眺めていると、兎が後ろから声をかける。
 狸は未だその声に馴れることが出来ず、相変わらず肩をびくっ、びくっと震わせた。
 兎は後ろから背中へと飛びつき、そして頬ずりをする。

600:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:10:31 10oW+0H1
「うわあ、兎さん、やめてくれ、その、恥ずかしいから」

 狸は身が固まってしまう。
 兎は狸の顔を覗き込む。

「狸さん、狸さん、お腹が空きませんか?もうそろそろ一緒に昼ご飯でも食べましょう」

 特に狸には断る理由は無かったし、恐らく断ることもできなかっただろう。
 気がつけば兎は狸の返事を聞くまでもなく、風呂敷を広げはじめていた。

 風呂敷の中からは笹の葉で包んだおにぎりが出てきた。
 おにぎりはまるまるごろごろとした形であり、正直不恰好ではあった。
 にぎりが強すぎるのか炊き方が間違っているのか、少々ご飯が潰れて
 もち状になっていた。

 だが、前のように張り切って料理を作っては毒殺されかねても困るので、
 それはそれでまあ、いいかと狸は思う。
 狸は一つおにぎりを掴み、口へと入れる。
 すると意外や意外にそのおにぎりはそれなりにおいしかった。
 ほんのりとした塩味と梅干の爽やかな風味がちゃんと行き渡っており、
 なるほどちゃんと味見を覚えたのか、と思いほっとする。

601:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:11:43 10oW+0H1
「狸さんに恥ずかしいところは見せられないですからね」

 と、少し頬を赤らめて言う。
 狸は変わったな、と思う。

 おにぎりを頬張っていると、竿の先がひくりひくりとなる。
 狸は竿に手を取り直し、えいと引っ張り上げる。
 飛沫を上げ、魚が鱗をきらきらと光らせる。
 兎は目を見開き、口に手を開ける。
 狸は糸を丁寧にたぐりよせ、最後のあがきをする魚を釣針から取り、魚籠へと入れる。

「狸さん、狸さん、この魚をどうするつもりですか?」

 狸は少し考える。

「うー……娘さんのところへ持っていこうと思う」

 その言葉を聞いた兎は少し口を歪ませ、軽蔑したような目付きで狸を見る。

「まだ……そんなことを言うのですか?
 ……私を抱いておいて、まだそんなことを言うのですね……」

602:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:12:57 10oW+0H1
 狸は焦る。
 あれは不可抗力に過ぎないことだし、狸は自分に責任は無いと思い込もうとしたが、
 そう思い込むには狸は繊細すぎた。魚籠の中で魚はぴちぴちと跳ねている。
 兎は歪んだ口のままくすくすと笑った。

「もう、貴方は以前のようには上手くいかないのです。
 形はどうであれ、一人の女性を抱いてしまった汚れた体なのです。
 その体を持って、あのような清浄な娘を汚すのですか?」

 狸の足元から力が抜ける。
 狸は娘に操を立てていた。愛する以上は操を立てる当然の行為だと思った。
 しかしその当然のことはあっけなく崩れるものなのだ、ということを認めざるを得なかった。
 狸は、ただ口をぱくぱくと開け閉めするだけだった。

「狸さん、あんな"女"のことなど考えなくて良いのです。
 ただただ、私だけを見て愛してくれればいいのです。
 全く悪いことは無いですよ。私は以前の私ではありません。
 ちゃんと反省し、誠意を尽くしているつもりです」

 兎はかぶさるようにして狸を抱きしめた。
 狸は悲しみに暮れていた。

603:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:14:28 10oW+0H1
 兎は当然、その姿を良しとしなかった。
 兎にとって、狸が自らと付き合うことは幸せな顔をするべきだし、
 悲壮な顔をするのは、他ならぬ自分が苛めた時であるべきだった。
 そして、兎にとって一番の問題は

 その悲しみの顔が他ならぬあの娘の思いによるものであったことだった。

 しかし、兎は大丈夫だろうと思う。
 直ぐに私に降参して、足元に平伏すだろうと。
 あとは時間が解決してくれるだろう。しかし、そのようなことは無かった。
 現実はもう少し残酷であった。
 
 ***
 
 その夜は満月だった。
 兎と狸は布団を並べ、身を寄り添うようにして寝ていた。
 狸は眠れなかった。狸は、娘のことを考えていた。
 兎は寝言で狸を呼んでいた。

 狸は一人、布団の中で考える。
 ああ、今頃どうしているだろうか。
 俺が、俺が不甲斐ないばかりに操を守り通すことが出来なかったと、
 狸は自分を責めていた。

 自分を責めれば責めるほど眼が冴える。
 少し夜風にあたり落ち着かせようと狸は外へ出る。

604:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:16:45 10oW+0H1
 さわさわと草木が揺れ、狸を撫でる。
 狸は少しの散歩のつもりだったが、何時しか娘の家が視界に入ってくる。
 娘の家は灯りがゆらゆらとゆれており、恰も狸を待っていたかのようだった。

 狸は頭を振るった。
 今、娘の前に姿を現したら自らの誓いが崩れてしまいそうな気がした。
 この汚れた体を近づけないつもりであった。
 しかし、狸がそのように頭で考えようとも、足は一歩一歩、距離を近づけていた。
 狸は、ふすまを開けなければ大丈夫だろう、と思った。
 ただその姿が見えればいいと思った。

 何の因果か解らないが、狸が直ぐ傍まで来ると、襖がすうと開き、娘が出てきた。
 狸は驚いてしまった。まさか狸は娘が出てくるとは思わなかった。
 確かに望んではいたものの、いざ対面すると、狸は無様に混乱してしまって
 体を動かすことが出来なかった。娘は裸足で狸に近寄り、そっと抱きしめる。

「寂しかった、寂しかったよ、狸さん」

 娘は改めて狸の顔を見る。
 哀しそうな顔をして、娘を見つめている。

605:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:18:21 10oW+0H1
「ねえ、狸さん、なんでそんな哀しそうな顔をしているのですか?
 こんな時間に、偶然でも会えたのですよ?もう少し楽しそうにしてくれなきゃ、
 私も悲しくなります」

 狸は力無くぼそり、ぼそりと呟いた。

「俺は、俺は、汚れちまったんだよ……
 兎に、兎に迫られて、いやいや……その……事に運んでしまったんだよお……」

 狸は我慢していたかのようにわっと泣き出した。
 狸の瞳からは土砂降りのような涙があとからあとから出てきた。
 娘は背中に手を添えた。

「狸さん……落ち着いてください……
 家のものがおきてしまいます……
 どうしたんですか、無理矢理事を結ばされたというのはどういうことですか……」

 狸はひっくひっくと背中を震わせて、呟く。

「関係ねえよお……俺は不甲斐ないからこういうことになったんだよお……」

606:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:19:43 10oW+0H1
 娘は厳しく問い詰める。

「関係ないことありません、ねね、正直に言ってください、
 そうしないと、私のほうが胸が張り裂けそうです」

 狸はその夜のことをつっかえつっかえながらに話した。
 娘は黙っていて聞いていた。黙って頷く。
 何時しか狸は無言になる。沈黙の後、娘は優しく語り掛ける。

「狸さん……狸さん、あまり自分を責めないで下さい、
 狸さんは何も悪くないですよ……」

 狸は顔をゆっくりと上げる。眼が真っ赤に充血していた。

「狸さん……何も悪いことは無いですよ……
 もし、狸さん、貴方の体が汚れているとするならば、
 私が一緒になって洗い落として差し上げます。
 もし、貴方の体で私が汚れてしまうとするならば、私もまた一緒に汚れてあげます、
 ですから……もうあんなことは言わないでください……
 私は貴方が離れることが一番辛いことなのですよ」

 狸は再び泣いた。それは嬉し泣きだったのかどうかは解らない。
 
 ***
 
 兎はふと、目を覚ました。
 隣の布団に目を向ける。そこには狸の姿は無かった。
 女性の勘というものがあるのか解らないが、多分あの"女"のところへ向かったのだろう、
 と兎は思う。


607:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:21:29 10oW+0H1
 兎は棚へと向かい、隠しておいた壷を取り出して、その壷の表面をなぞる。

「狸さん、狸さん、貴方はここまでしても、
 あの人の元へと行ってしまうのですね」

 兎はくすくすと笑った。

「狸さん、あの"女"がいなくなれば、私だけのものになってくれるかしら?
 私だけに頭を下げてくれるかしら?私だけに身を投げ出してくれるかしら?
 私がいなければ生きられないようになるかしら?
 私を求めて求めて止まないほどになってくれるかしら?」

 兎は壷を撫でる。そして笑った。穴倉に響き渡るように笑った。

「あははは……もうすぐ、もうすぐ……
 まだ時期を待たなきゃ……あの"女"を始末する為に、貴方には役に立って貰うよ、
 高い金銀を出して買ったものだもの……いずれ来るわ……近いうちに、近いうちに、
 貴方には役に立ってもらうからね」

 その夜は満月であった。
 夜空を飲み込むほどの満月だった。
 これほどの満月であるならば、恐らくは理性も藻屑となってその中へと消えていくに違いない。
 そんな満月の夜だった。

608:名無しさん@ピンキー
08/02/18 07:22:46 JdipJyuV
支援

609:恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26
08/02/18 07:24:08 10oW+0H1
投下終了です。

病んだ恋が人を病ませるのか、
人が病んでいるからこそ恋もまた病むのかは、
わかりにくいところでありますね。

では失礼します。

610:名無しさん@ピンキー
08/02/18 08:36:16 q6vVOWPn
いいねw
独特の魅力がある

611:名無しさん@ピンキー
08/02/18 08:36:23 T+YXavN3
GJ
うさぎが怖いんですけど…

612:名無しさん@ピンキー
08/02/18 12:29:18 LjzUKneC
GJ
狸が可愛すぎるwww

613:名無しさん@ピンキー
08/02/18 14:56:00 fLsAj8GI
やっほう! 兎かわいいよ兎かわいいよ兎かわいいよ兎かわいいよ兎(ry

人も恋も、分かちがたく一つのもので、後先はあるまいと思う。
ある日唐突に、思ってもみないくらいに抗いがたくも狂おしい自分を発見する。
恋とはそういうものだ、と思っている。

だから、あなたの描く恋と狂気は、好きだ。

614:名無しさん@ピンキー
08/02/18 15:23:05 l04Ej4z2
兎が素敵過ぎるw

615:名無しさん@ピンキー
08/02/18 19:14:18 zo0JJ7H1
>>609
GJ!
いつもながらwktkが止まりませんわwww

616:名無しさん@ピンキー
08/02/18 22:36:05 /pB6Ix2B
GJ!
狸と結婚したひ(´・ω・`)

617:名無しさん@ピンキー
08/02/19 00:07:45 11NxoNdQ
>>616
おい、頭のおかしい女関連スレでは口には気をつけろ。

618:名無しさん@ピンキー
08/02/19 00:37:23 EqKFSJfD
>>617
一時間半も経ってから忠告しても、>>616はもう……

619:名無しさん@ピンキー
08/02/19 00:58:59 Ao6kkqk8
>>609GJ!なんだけど、な ぜ か 娘さん を 応援 したく なった。

なんかチャイムが鳴ったからチョット出てくる。

620:名無しさん@ピンキー
08/02/19 01:08:08 uIoBNvNO
>>619
オイ、覗き穴はちゃんと見ろよ……って、遅かったか―

621:名無しさん@ピンキー
08/02/19 11:21:34 gtVrghbt
娘さんも病んでるっぽいなw
wktkwktk

622:名無しさん@ピンキー
08/02/19 21:13:07 KmrGH/+Q
気づいたぞ!
>>616>>619が兎に手によってこr

623:名無しさん@ピンキー
08/02/19 21:17:47 M0/+LYtO
なんだっr

624:名無しさん@ピンキー
08/02/19 21:24:00 B0DA9JdP
それはたいへ(ry)

625:名無しさん@ピンキー
08/02/19 23:29:48 4MVwNIW6
・・ぶり・・・・r

626:名無しさん@ピンキー
08/02/19 23:46:05 XeGOAjxB
そしてだれもいなくなtt

627:名無しさん@ピンキー
08/02/20 03:09:55 VAcJnGIr
この速さなら言える

3回目の浮気くらい多めににみてよ

628:619
08/02/20 04:38:10 COUKVhTy
は~い>>627が僕たちの仲間になりました。
_▲_  ▲_
(ノ^^)人(^^ )ノナカーマ

629:名無しさん@ピンキー
08/02/20 13:42:40 7SozY+UQ
昼ドラの安宅家の人々の遠藤久美子がヤンデレっぽい

630:名無しさん@ピンキー
08/02/21 01:21:07 1ET7IueN
あれは障害者の男を支える女が逆に依存してるのがポイントだな

だが所詮は3次元さ

631:名無しさん@ピンキー
08/02/21 15:35:37 37kVTdPt
「美少女に監禁されたい」って、女友達(軽度オタク、非腐)に言ったら、「ヒモ願望があるの?」って素で訊かれた
そんなんじゃないのに……

632:名無しさん@ピンキー
08/02/21 15:38:33 UrJnFnEr
キモ過ぎる
性癖は秘めねばならない

633:名無しさん@ピンキー
08/02/21 15:47:08 37kVTdPt
同じオタだから、通じるかもしれないと思ったし、このネタで盛り上がれたらと思っただけなんだ
監禁されたいかされたくないかの二択ならば、されたいのは事実だが

634:名無しさん@ピンキー
08/02/21 16:13:09 PJX5G968
>>632
オタ相手なら許してやれよ……

635:名無しさん@ピンキー
08/02/21 17:12:25 vahpFvFy
>>630
あの障害者役の演技はちょっとねぇ…って観てなかったけどそういうことは早くいってくれよ

636:名無しさん@ピンキー
08/02/21 20:35:23 0iGgiuDJ
でも、生活面だけ見ればヒモ同然なんだよな。監禁って。

まあ、病み娘から「あんたは私と一緒の時だけしかでかけちゃいけないの!」
と言われるならヒモの地位に甘んじるのも悪くないな。

637:名無しさん@ピンキー
08/02/21 20:40:12 PJX5G968
「外出なんて絶対にダメよ。外になんてでたら>>636君が他の女の視線で汚されちゃうわ」

くらいになるだろうけどな

638:名無しさん@ピンキー
08/02/21 21:44:04 aMh7H581
ふと思ったんだけど、監禁生活って太るよな。
ヤンデレっ娘は容姿の変化なんか特に気にしないだろうけど、メタボが原因で寿命が縮むのは対策あるんだろうか?

639:名無しさん@ピンキー
08/02/21 21:54:17 37kVTdPt
体型維持出来るぐらい、夜の運動を強要されるんじゃないか
あと、監禁から脱出しようとする努力が運動になるかもしれないし

640:名無しさん@ピンキー
08/02/21 22:40:20 S65lQIUS
案外引きこもりって太らないんだぜ!
1時間に1回は死にたくなるけどな!!

641:名無しさん@ピンキー
08/02/21 23:49:33 EITW8juu
>>637
そこまで来ると殴りたくなるなw
俺はヤンデレ監禁好きだけどたまに外出させてくれる人じゃないと嫌い。

642:名無しさん@ピンキー
08/02/21 23:55:36 xj0+4lT7
>>641
満面の笑みを浮かべたヤンデレっ娘にさも当然のように首輪を渡されるわけだな。
「もう、やだなぁ。お出かけするならこれつけなきゃだめだよぉ」

643:名無しさん@ピンキー
08/02/22 00:16:21 267bY/SF
>>641
リゾートで監禁やってるわけじゃないんだからw
監禁とは愛、愛とは命がけ。ヤンデレさん達は本気なのだから、こっちもいい加減覚悟を決めるんだ

監禁ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
逝っちゃた目のヒロインが疑心暗鬼に駆られて、不用意な発言でいつ「私から逃げるつもりなのね……?」と疑われてもおかしくない
足の骨を折られるか切断されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。
リゾート感覚は、すっこんでろ。

しかしこれをやると、ミザリーのヒロインはオバサンだという諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は、由乃んにミイラと一緒に縛り付けられてなさいってこった。

644:名無しさん@ピンキー
08/02/22 00:39:02 u0dg0AWv
某ヘタレゲーだと緑ルート一択というわけか

645:名無しさん@ピンキー
08/02/22 00:42:43 gPj/U3cG
>>643に着いていけない…

646:名無しさん@ピンキー
08/02/22 00:56:12 6+PWQXIg
>私から逃げるつもりなのね……?
これだけで俺萌えたわwwww

647:名無しさん@ピンキー
08/02/22 01:00:02 267bY/SF
>>645
す、すまない
つい素を出しすぎた…

さぁ、カチカチ山の続きを全裸で待つ作業に戻ろうではないか

648:名無しさん@ピンキー
08/02/22 01:07:20 gI9A4V7G
俺は全裸に靴下に正座で同時に傍観者と溶けない雪も待ってるぜ

649:名無しさん@ピンキー
08/02/22 06:48:28 hOBg5Rz0
この一連のレスの中に…
本当の監禁者とヤンデレがいるぞ!


全裸正座が待機の正装って何時ぐらい前に決まったのかな?


650:名無しさん@ピンキー
08/02/22 09:48:27 eyeuRkPM
>>643
改変乙w
つーか>>645、」こんなの前菜みたいなもんじゃねーか

651:名無しさん@ピンキー
08/02/22 10:32:56 bDLxMZMc
ちょっと聞きたいが、ヤンデレ少女の性格はヤンデレを抜きにした場合、
素で人間的に好きになれない、もしくは問題のある性格と、
元々は人間的に全うな性格はどっちがいい?

652:名無しさん@ピンキー
08/02/22 10:49:28 5Q2r+Tj5
全うな性格かな
そんな娘が病んだときとのギャップが良い

653:名無しさん@ピンキー
08/02/22 12:21:48 7ajTJvrg
ヤンデレと戯れる妄想しているときでもやっぱり愛液入りのご飯はNGだ。
痛いこと(手足切断)されるのもNGだ。監禁されても出入り自由。
だから俺の脳内では素人でも扱いが簡単なヤンデレさんが住んでるんだよね。初心者はまずここから。

654:名無しさん@ピンキー
08/02/22 12:42:03 eyeuRkPM
>>653
なんか甘口のカレーみたいだ
ちなみに俺は甘口のカレーはカレーと認めない派

655:名無しさん@ピンキー
08/02/22 12:54:30 5Q2r+Tj5
甘口だったら、体液と言わずとも体毛ぐらいは入っているんじゃないか?
バレンタインとかでも、髪の毛が数本入っていたとかよく聞くし。まぁ、体液入れられてても気付けるわけがないが

656:名無しさん@ピンキー
08/02/22 13:00:52 zf831HXe
>>655 >バレンタインとかでも、髪の毛が数本入っていたとかよく聞くし
それ手作りチョコだからだろ。料理してれば意図せず入ってしまう。
現実世界で意図的に食べ物に体毛入れられたらドン引きしちゃう。

657:名無しさん@ピンキー
08/02/22 13:21:15 5Q2r+Tj5
>>656
いや、実際に小学生中~高学年ぐらいのときに髪の毛の束が入ったチョコが話題になったことがある
あの頃は、占いやおまじないでそういうことをする女性も少なからずいたそうだ
アイドルへのチョコもそういう噂、一度くらい聞いたことないか?
ヤンデレには直接、関係ないかもしれないが、そういうのに頼ってまで男を自分のものしたいという女性は確実にいたということだよ

658:名無しさん@ピンキー
08/02/22 14:09:44 7ajTJvrg
>>654
愛液ドプドプ(お茶漬けできそうなくらい)のご飯を出され、手足切断は当たり前。
監禁されたら最後お日様とは永遠のおさらば。これが辛口?  SSなら俺も辛口派だね。
>>657
今は目立たないだけで今でもそう言うの多いと思うよ。男が弱くなってきたから更にヒートアップしそう。

659:名無しさん@ピンキー
08/02/22 14:36:37 eyeuRkPM
>>658
辛口というか、あくまでそれらは副産物なのであって、肝心の気持ちがどうとかそういうのが分からないと……

660:名無しさん@ピンキー
08/02/22 14:51:11 6+PWQXIg
ヤンデレは病みばかり注目されるけど本当はデレが本質だよな

661:名無しさん@ピンキー
08/02/22 15:48:41 bDLxMZMc
>>660
何のために病むか、それは愛ゆえだ


病みを重視するなんて、ハンバーグの肉汁ばかり重視して肉を蔑ろにするようなものだ

662:名無しさん@ピンキー
08/02/22 16:45:47 u0dg0AWv
こんなに愛してるのにっ!愛してるのにいッッ!!!
こんな台詞、言われてみたいもんだよなァ

663:名無しさん@ピンキー
08/02/22 16:49:21 B0UHSx4e
ナルトの主人公って自分の意思で里抜けしたサスケを無理矢理追いかけ
手足バッキバッキにしても連れ戻すとかサスケの意見をバリバリ無視してるが…女なら最高のヤンデレ?

664:名無しさん@ピンキー
08/02/22 16:51:51 6+PWQXIg
>>663
友情と愛はまったく違う

665:名無しさん@ピンキー
08/02/22 17:10:00 eyeuRkPM
>>663
アレは悪の道に落ちようとしていた、って事情があるだろ
ヤンとか無関係だ

666:名無しさん@ピンキー
08/02/22 17:45:04 cwplr3tW
ヤンデレの手料理なら愛液でも血液でも陰毛でも爪でも混ぜてもらって構わん
けど玉ねぎだけは入れないでください

667:名無しさん@ピンキー
08/02/22 17:52:06 u0dg0AWv
>>666
猫乙

668:名無しさん@ピンキー
08/02/22 18:00:39 eyeuRkPM
>>667
お前に言われて気づいたが、家猫飼ってる女ってある種のヤンデレが混ざってねえ?

669:名無しさん@ピンキー
08/02/22 18:42:24 2Q6Sb2Yl
>>666
激しく同意
タマネギは許せねえよ

670:名無しさん@ピンキー
08/02/22 19:16:04 9LD/DLwJ
>>669
犬乙

671:名無しさん@ピンキー
08/02/22 21:12:35 u0dg0AWv
>>668
レイプ目魔女と黒猫と申したか

672:名無しさん@ピンキー
08/02/22 22:24:25 YGUCBxZp
>>668
飼ってる人間じゃなくて猫自体がヤンデレっぽい。ブラック臭キツイし嫉妬が激しい。

673:名無しさん@ピンキー
08/02/22 23:08:37 267bY/SF
>>653さま >>654さま >>659さま 
ヤンデレとは愛であること、これはもはや論ずるまでもない真実でございます。
その上で不肖わたくし>>643は、「監禁」という言葉は「高度に拘束されている状況」を意味すると言いたいのでございます。
これは単純に、言葉の辞書的な意味の問題でしかございません。

両手両足は鎖で繋がれ、解いてよと頼んでも「私が貴方の手、貴方の耳、貴方の足になるわ。だから……そんな必要ないよ?」と言われるだけの状況。
なおも解いてよと頼むと、みるみるうちに彼女の表情が崩れていき「逃げるつもり……?」→「私のこと嫌いになったのねッ?」→「あの女のせいッ!?」
―などと話が飛躍して、ドンドンややこしくなっていくわけであります。
これを読んでいる貴方、ふと今のわが身を振り返って「あ、俺のことじゃん」と思う貴方、貴方はまさに「監禁されている」状態なのでしょう。

そこの貴方。アウンサン・スーチーさんの如く、お部屋の中では自由にしていていいけど、一歩も出してもらえない貴方。
「それじゃ行ってくるね。いい子にしてないとメッだゾ」と貴方のおでこをつつき、にこやかに微笑んでお仕事に出かける彼女の背中―
30個の南京錠と15個の電子ロックと10個の電撃トラップと3個の警報装置を玄関にガチャガチャ仕掛けていく彼女の背中を、ぼんやり眺めているだけの貴方。
そんな貴方は「軟禁」されていると言えるのではありませんか?

そして>>653 出入りが自由の貴方ですが、それは言葉の意味的に「監禁」ではありません。しかし恥じ入る必要もございません。
貴方の場合は「束縛」と表現するのがぴったりでございます。
思うに、貴方が外出するためには、キモ姉やキモウトの監視&付き添いが必須ではありませんか?
北の国の幹部は、一時間インターネットをしただけで思想教育が施されるそうでございます。
貴方も同じではありませんか? 三十分外出した後には、たっぷり三時間は「愛しているのは誰?」と問い詰められていませんか?

「監禁」「軟禁」「束縛」―どれもヤンデレには違いはございません。
どの状態に嵌りたいかは個人の嗜好の問題で、そこに貴賎はないのでございます。
しかし敢えて言おう! 俺は「監禁」されたい!
俺は由乃に監禁されたユッキーの如く、真っ白で虚ろな躯になって、渇いた涙を流したいのだ。

ヤンデレ好きとは、まっこと漢の修羅道なのでございます。
SSでもない青年の主張、ご清聴いただきありがとうございます。ありがとうございます。

674:名無しさん@ピンキー
08/02/22 23:18:12 eyeuRkPM
>>673
あなたほどの漢がなぜ軟禁状態におかれてないか不思議でならない

675:名無しさん@ピンキー
08/02/22 23:48:26 YgtxMzIe
>>673!!こんな処にいたのね?
さぁ、早く2人だけのあの部屋に戻りましょう?
貴方のこと、誰が世界で一番愛しているのか再度、教えてあげますからね?
ハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク
ハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク
ハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク
ハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク、カエリマショウ?

676:名無しさん@ピンキー
08/02/22 23:50:30 eu9iVfiS
>>672
新聞紙にも嫉妬するからな

677:名無しさん@ピンキー
08/02/22 23:54:30 u0dg0AWv
>>673
あんた随分前に別スレで姉妹について語ったことあるだろwwww
才能無駄遣いしすぎwwwwwwww

惚れた

678:名無しさん@ピンキー
08/02/23 00:04:10 CrP1vi28
おい>>677、今>>675が鬼の形相でお前の家に向かったんだが大丈夫か?

679:名無しさん@ピンキー
08/02/23 01:59:52 ztBYb5/b
遅かったか・・・クッ
>>673の恋人は私なのに>>675みたいなクソ女が・・・
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ

680:名無しさん@ピンキー
08/02/23 11:18:25 WRv9xa0P
>>671
シグルイの藤木が女だったら最強のヤンデレだよな

そんな風に考えていた時期が俺にもありました

681:名無しさん@ピンキー
08/02/23 11:20:33 wSFeQhpo

>>673に死亡フラグが…

682:名無しさん@ピンキー
08/02/23 11:37:42 LhanQoKr
しかし改めて考えてみるとヤンデレにデレは無いんじゃないかと言ってみる
デレているからこそ病んでるわけだし
でも病んでる状況こそがデレてるんだからやっぱりデレはあるのか?
あれ?

683:名無しさん@ピンキー
08/02/23 11:47:37 ku0/6Beh
>>682
日本語でおk

684:名無しさん@ピンキー
08/02/23 12:09:52 LhanQoKr
>>683
すまん
俺も何がいいたかったのか自分でわからなくなったから気にしないでくれ

685:名無しさん@ピンキー
08/02/23 12:26:11 +Fiw/AL0
ヤンデレにとってのデレの表現が、常人にはデレと受け取られないということだろう

686:名無しさん@ピンキー
08/02/23 12:41:19 2I80Fq9o
ヘンゼルとグレーテル<KHM15> 4-1

どこか大きな森の入り口に、貧乏な木こりが、お上さんと二人の子供と暮らしておりました。 
兄の名前はヘンゼル。妹の名前はグレーテルといいました。 木こりは元々貧乏で、苦しい生活をしておりましたが、この年の飢饉で日々のパンすら手に入らなくなりました。 
このままでは一家四人、全員飢え死にしてしまうと考えた両親は、ヘンゼルとグレーテルを森の奥へ連れ出し、そこに置いてきてしまおうと相談しました。 
その話はお腹が減って眠れずにいた子供たち耳にも届いていて、 「もうおしまいだわ」とさめざめと泣くグレーテルにヘンゼルは、 
「心配するんじゃないよ、お兄ちゃんがきっと何とかするからね」となぐさめ、その夜はヒシと抱き合って眠りました。 
翌朝、二人はまだ日の昇りきってもいない内におかみさんに起こされ、 
「ホラいい加減起きなよ、これからみんなで森へたきぎを取に行くんだよ」 
と、めいめいに小さなパンを渡し、「ほらこれはお昼ご飯だよ、お昼にならないうちに食べちゃ駄目だよ、もう無いんだからね」と言いました。 
両親は子供たちの手を引いて森の奥へ奥へ進みます。 
ヘンゼルはポケットの中でパンを細かく崩し、少しずつ道にこぼして行きました。帰りの目印にするためです。 
両親は森の奥深くへつくと、 
「あたしたちはたきぎを集めてくるから、ここで待っといで」と言って更に奥へと入って行き、 それっきりでした。 

「待っといでねグレーテル。月が出れば、まいたパンくずが見えてお家に帰る道を教えてくれるからね」 
と言いましたが、月が地面を照らしてもパンくずは一つも見つかりません。 
森や野原を飛び回っている何千何万の鳥が残らずついばんでしまっていたのです。 
「道はきっと見つけるからね」とメソメソ泣くグレーテルを慰めながら歩き続けますが、知った景色はいっこうに見つかりません。 
夜通し歩きとおすと、やがて小さな家の庭先に着きました。 
その家は壁はパンで、屋根は卵焼きのお菓子、窓は白砂糖で出来ていて、そばには冷たい奇麗な水で満ちた池がありました。 
「一つご馳走になろう。ボクは屋根を食べるから、グレーテルは窓を食べな」 
と二人がかりでぽりぽりかじりました。そうすると中から、 
「ぼりぼりばりばりパンの皮、あたしのお家をかじるのだあれ?」と言う声がして、それに子供達は、 
「かぜだ、かぜだ、天の子だい」と答え、構わず食べ続けました。 
そのうち中から石の様に年を取ったお婆さんが出てきて、子供たちを中に誘いました。 
お婆さんは二人に牛乳だの砂糖のかかったお菓子だの胡桃やリンゴだの、上等なご馳走をたんと食べさせ、真っ白いシーツのかかったベットを用意しました。 
この親切そうな婆さんは実は悪い魔女で、このお菓子の家も子供をおびき寄せ、ノコノコやってきた子供を殺して煮て食べてしまうのでした。 




687:名無しさん@ピンキー
08/02/23 12:44:12 2I80Fq9o
ヘンゼルとグレーテル<KHM15> 4-1

朝起きるとヘンゼルは家畜の檻に閉じ込められていて、グレーテルはその世話を魔女に命じられました。 
「ホラいい加減起きなよ、これから水汲んで、檻に居る兄ちゃんに何か美味いものをこさえてやりな。脂がのったらあたしが食べちまうのさ」 
グレーテルは泣きました。 ですが泣いても何の役にも立ちません。 
「どうせこんなところをうろついているあんた達は、誰からも必要とされなかったんだろう? せめてあたしのご馳走になれることに感謝しな」 
と言い捨て、気持ち悪い声で嗤います。 
魔女の婆さんに命じられた通りに、昼間中ヘンゼルに食事を作り続けました。 
グレーテルはヘンゼルが人質に取られているので作らないわけには行きません。 
ヘンゼルはグレーテルが人質に取られているので食べないわけには行きません。 
夜になればグレーテルもその小屋へ放り込まれ、懐から鍵を取り出し錠をおろしました。 
「大丈夫かいグレーテル? あの魔女に酷いことをされなかったかい?」 
兄は乱暴に投げ込まれた妹にかけより、抱き寄せ、頭をよしよしとなでなぐさめました。 
打たれたり蹴られたりもしましたが、それよりも魔女が事あるごとに言い放つ「お前たちは誰からも必要とされていない」というセリフに心を痛めましたが、 
「あたしは大丈夫よお兄ちゃん。でもこのままじゃお兄ちゃんが太らされて、あの魔女に食べられちゃうわ」 
とヘンゼルの胸でめそめそと泣きました。 
「ボクはきっと大丈夫だからね、泣くんじゃないよ」 
とは言え、どうしたら良いか具体的な方策はいっこうに思いつきません。 
ヘンゼルは小屋の中をぐるりと見回し、 
「こんなに狭いと、ここで出来る運動なんて、何があるだろう」 
と、ポツリとつぶやくと、 
「・・・ある、あるよお兄ちゃん!」 
グレーテルは顔を輝かせいきなり服を脱ぎ始めました。 

最後の一枚まで取り払い、幼い裸体をあらわにすると、今度は兄の服を剥ぎ取りにかかります。 
「グ、グレーテル? 何をしてるんだ?」 
グレーテルはむかし、家がまだ今ほど貧しくなかった頃、両親が寝台で息を切らせ激しく絡み合っているのを見たことがあったのです。 
ズボンとパンツも脱がせると、その中心のまだ形も大きさもウィンナーほどの男の子のシンボルが姿をあらわしまします。 
「えーと、お母さんは確かこう・・・」 
パク、とヘンゼルのそれを口にくわえました。 
「うゎ! グレーテル何するんだ!? 駄目だよそんなの、汚いよ!」 
そんな兄を無視し、しばらくペチャペチャと嘗めまわしていると、兄のソレが口の中で大きく膨れ上がしました。 
何が起こっているか分からないヘンゼルは未経験の感覚に戸惑い、固唾を呑んで見守ることしか出来ません。 
グレーテルはチュボチュボと音を立て、先端から根元まで顔を前後させます、始めはゆっくりと、要領を掴んだのかだんだん激しくなっていきます。 
その口に吸いだされるように、兄の下腹部に熱い塊がこみあげ、 
「グレーテル! どいて、おしっこ出ちゃう!!」 
と離れようとしますが、手にも足にも力が入らず振りほどけませんでした。 



688:名無しさん@ピンキー
08/02/23 12:46:42 2I80Fq9o
ヘンゼルとグレーテル<KHM15> 4-3

グレーテルが頬をすぼめ、ジュルルルと勢い良く吸い込むと、ついにヘンゼルは爆発しました。 
「んぶっ!? んは、けほ、けほ」 
先端から放たれたものは、尿とは違い、濁った粘液が脈打つように飛び出し、喉を撃たれ咳き込む妹の髪や体を汚しました。 
兄は産まれて始めての射精に、魂が抜けたようにその場にへたり込み、妹は始めのように力を失った兄の中心に再び口をつけました。 
「ふあぁ!!」 
たった今放ったばかりで敏感になっている所を刺激すると、それはすぐに力を取り戻します。 
グレーテルはそれを跨ぎ、そそり立つヘンゼルの肉竿を自分の中心へあてがいました。 
指一本触れていないのに、内側から溢れる蜜でトロトロに濡れているそこで兄の一部を飲み込み、 
ッビ 
「っっっっ!!」 
乙女の破れる痛みにのけぞり、半ばまで飲み込まれた肉竿に一筋の鮮血が伝わりました。 
「グレーテル! 駄目だよ! やめなよ! 血が、血が出てるじゃないか!!」 
グレーテルは、自分を気遣い、抜いてどかそうとするヘンゼルの肩を押さえつけ、 
「あたしは大丈夫よ、お兄ちゃんのためだもん」 
と健気にも全身を冷や汗で濡らしながらも、顔には笑みを浮かべ、兄の言葉を封じました。 
「っん」 
ズチャ、竿の残りを一気に飲み込むと、糸が切れたようにヘンゼルの胸へ崩れます。 
兄は、目に涙をため息を荒げしがみつく妹の背を撫でさすりながら、飲み込まれた部分から湧き上がる感覚に戸惑っていました。 
背中に回していた手で妹の小さなお尻を握り、小刻みにゆすります。 
本当はもっと大きく、激しく動かしたい衝動に駆られますが、可愛い妹が壊れてしまいそうなので必死に堪えていると、 
「いいよ、お兄ちゃん。思いっきり動いて、そのために、してるんだもん」 
と耳元でささやく少女の言葉に、少年の中で何かが弾けました。 
少年は自分の腰を下から大きく突き上げ、少女のお尻を強く引き寄せ、奥へ、奥へとねじ込みます。 
「あぐぅ! ぅあっ、ああ!」 
少女の苦しげな悲鳴も、精を放つ悦びを知った少年の歯止めにはならず、むしろ更に腰を激しく動こうとしますが、この体勢では上手く動けないと悟り、少女を抱きしめゴロリと転がって上下を反転させました。 
自由になった腰を思う存分動かし、何度も抜けそうになりながら、先端から根元までを使い、入り口から袋小路までを突き続けると、少女に劇的な変化が起こりました。 
「あぁ・・・んん、あぁん」 
苦しげな響きは消え、甘く切なげな声を上げ、両手両脚でしがみつき、少年の腰に合わせるように、自分の腰も振りはじめます。 
「あぁ! お兄ちゃんっ! おにいちゃん! あたし、もうだめぇ!!」 
「ボクも、ボクもまた出そう! 出ちゃうよ!!」 
先ほど勢い良く自分の喉に流し込まれた熱い粘液が、今度は自分の奥で放たれる。 
それは少女にとって恐怖でした。正気を保てる自信がありません。 
「出して! お兄ちゃんあたしの中で出してぇ!!」 
二人は一際強く抱き合うと激しく震え、少年は少女の胎の中に全てを注ぎ、少女は全てを受けとめました。 
息を荒げ、覆いかぶさってくるヘンゼルに、グレーテルは聞きました。 
「お兄ちゃん、あたしたち、ずっといっしょだよね?」 
「勿論だよグレーテル。ボク達は、たった二人の兄妹だもの、これからもずっといっしょだ」 
汗だくになり疲れ果てた二人は、繋がったまま抱き合い、すぅすぅと眠りにつきました。 


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