ヤンデレの小説を書こう!Part13at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part13 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/01/10 13:50:35 1bEeow00
>>1
         *、 *、      。*゚    *-+。・+。-*。+。*
        / ゚+、 ゚+、   *゚ ・゚    \       。*゚
       ∩    *。  *。    +゚    ∩    *
   (´・ω・`)      +。   +。   ゚*     (´・ω・`)
   と   ノ      *゚  *゚    ・     。ヽ、  つ
    と、ノ     ・゚  ・゚     +゚    *  ヽ、 ⊃
     ~∪    *゚  *゚      *    +゚    ∪~   ☆
          +′ +′      +゚   ゚+。*。・+。-*。+。*゚

3:名無しさん@ピンキー
08/01/10 14:55:21 vK0u66jz
>>1
乙です

4:名無しさん@ピンキー
08/01/10 15:37:51 0F7a8S2Y
>>1


5:名無しさん@ピンキー
08/01/10 20:52:41 v6b08AQV
乙っす

6:名無しさん@ピンキー
08/01/10 21:16:46 gXF8+qHR
オツマントルコ

7:名無しさん@ピンキー
08/01/10 21:32:12 leGMajbU
URLリンク(jp.youtube.com)
やんデレが倒せない?

8:名無しさん@ピンキー
08/01/10 21:34:16 0jW5/URE
いちおつ

9:名無しさん@ピンキー
08/01/10 22:19:30 uVb4D2GB
乙!

10:名無しさん@ピンキー
08/01/11 00:12:05 b4riooay
>>1
乙です

11:名無しさん@ピンキー
08/01/11 01:50:43 WorItLoe
稚拙な文章、ご容赦を。思い切って投下してみる
ヤンデレ万歳!

《闇母(やみはは)》

トントンと軽快な音をキッチンに響かせて、私は最愛のあの人に、夕御飯を作る。長年付き合ってきたこの包丁で、私は仕事でくたくたになって帰ってくる彼のために、腕を振るう。
私、織田市代(おだいちよ)が深海市代(ふかみ)となって早12年。

最愛の夫の深海聡史(さとし)と私はご近所の幼馴染みだった。幼い頃にはよく遊んでいた私たちも、中学に上がった頃にはお互いを意識して、疎遠になった。けれど、それが逆に私に彼を意識させてくれた。

彼の何を好きになったかなんて、きっと一生、いや永遠に分からないだろう。分かっていそうで、分からない。解けそうで、解けない。そういうもの。それが愛なのだ。

けれど、これだけははっきり言える。《私は、あなたを愛しています。》

12:闇母
08/01/11 01:57:02 WorItLoe
「ただいまー」
玄関を開ける音とともに、彼の声が私に届く。その声で私はひとまず料理を中断する。もちろん、彼の労をねぎらうために。
私たちはお互い今年で32歳。20歳の時、二人とも学生だったが、無理言って学生結婚をした。彼の良さは言うまでもなく、その良さ故にくっついてくる『蟲』や後をついてくる『猫』がいた。
私は言いようもなく不安だったのだ。人の優しさ、そして弱さを知っているから。
私は高校に上がった頃に必死になって、彼を自分に振り向いてもらおうと努力をした。料理を学び、オシャレをし、身も心も美しく、理想の女性となるために。
そのおかげで私は自分に料理において特に秀でた能力があることを知った。私の味覚・嗅覚は常人のそれを遥かに上回っていたのだ
。料理は好きだったので、私は料理を極めるため、大学ではそちらの進路をとったところ、先生方から訪問にきた一流シェフの方まで様々な人々に大絶賛を受け何度かヨーロッパにも足を運んだ。
そして、彼の専業主婦として今に至る。シェフの道なんて、彼との生活と天秤に掛けたなら結果は目に見えている。
私の腕は、彼のため。
私の料理は彼のため。
私の愛は、彼のため。
私の刃は、私のために。

13:闇母
08/01/11 01:58:24 WorItLoe
ただ、私たちの生活にはいくつかの大きな問題があった。それは──。

「お帰りなさーい♪」
私より若干早く、あの娘が彼を出迎えた。まただ。また先を越された。
今年で中学生になった私たちの一人娘の深海茉奈(まな)。彼女は生まれてからずっと、彼にべったりだった。普通の女の子ならば、思春期ともなれば遅かれ早かれ一定の距離をとるもの。私はそう思い、野放しにしておいてしまった。
後に確かに距離はとった。しかし私にだけ。その分だけ彼女は彼にとりついた。まだまだ現役で、短髪の似合う彼はとても若く見え、どうみてもまだ二十歳ほどにしか見えない。
きっとそんなことから、大人の異性の割に親しみを感じる彼になついているのだろう。
今も彼女は私をさしおき、彼の首に腕をまわし抱きついている。まぁいわゆる親子のコミュニケーションの範囲内かな。

あの時までは、そう信じていた。私はこの12年の平穏を通して、『あの感覚』をすっかり忘れてしまっていたのだ。

14:闇母
08/01/11 02:02:54 WorItLoe
一応一段落
プロローグみたいにww
このスレの繁栄のためにと、良かれと思ってやってしまった。今は少し反省してる

15:名無しさん@ピンキー
08/01/11 07:18:33 PW7NK5rn
これはGJ

母娘物は久しぶりだからこれからの展開にwktk

16:名無しさん@ピンキー
08/01/11 08:12:16 elJgP89e
グッジョブ!
続きが気になる

17:名無しさん@ピンキー
08/01/11 08:22:36 s3HfeAZb
GJっす

正に獅子身中の虫

母娘物・・・・しかも旦那の取り合いは大好物です

18:名無しさん@ピンキー
08/01/11 12:49:54 1fTJtV4K
1乙

19:名無しさん@ピンキー
08/01/11 18:00:48 +CdfYyII
続き町wktk

20:闇母
08/01/11 21:25:51 WorItLoe
《闇母》続き投下します。ゆっくりですがご容赦を。
〈聡史Side〉

俺、深海聡史はしがない会社員だ。
既に32歳となった俺は、今はなかなか給料のいい営業の仕事についており、幾つになっても若さを失わない、それどころかますます美しくなっている妻と、最近は成長の著しいかわいい一人娘に恵まれている。
今のところ、娘は反抗期はまだのようで、家庭内の治安は安泰だ。女の子の親は苦労すると聞いていたから、同僚や先輩の話を聞いたり本を読んだりと大切に育ててきた。
その甲斐あってか、妻の美しさとはまた違う、かわいい女の子へと成長してくれた。親として、なんと微笑ましいことか。
ただ、もう中学生になったというのに父親に甘えるのはどうかと思っている。ついつい構ってしまうのが、男の性というものかもしれない。

我が家は都心から少し離れた団地マンション503号室。
新築であり、眺めがよく、各部屋は広くとってある、というのがウリだったか。実際快適で、文句なんかつけようがない。それと家は五階にあるのでエレベーターがあるのが有難い。

「ただいまー」

21:闇母
08/01/11 21:28:21 WorItLoe
玄関を開けるとすぐに、ポニーテールの髪が目にはいった。

「お帰りなさーい♪」
開口一番に抱きついてくる茉奈。胸があたってドキッとしたのは秘密だ。
「なんだ、やけに上機嫌じゃないか。なんかいいことでもあったか?」
茉奈は頭を撫でてやると本当に嬉しそうにするもんだから、気づけば撫でてやるのが癖になっていた。

「へへっ、なぁ~いしょ」「なんだ、隠し事か?ゆるさんぞ~」
自分のことは棚にあげ、いつものように玄関でじゃれあうこと数分。

「あなた、お帰りなさい」
長めの黒髪をたなびかせ、妻の市代が廊下にでてきた。類希な美貌の持ち主。茉奈のくりくりとした目ではなく細目な彼女は、外見によらずなにかと不器用だ。
ところが包丁を持つと途端にそこらのレストラン顔負けの一流シェフに早変わりする。
市代は謙遜しているが、市代の味覚と嗅覚は常人の三倍なのだという。事実市代は匂いで鮮度まであててみせた。
そんな素晴らしい才能を持っていたにも関わらず、市代はシェフでなく、俺との愛を選んだ。それを聞かされたとき、無我夢中で抱きしめていたのを覚えている。

22:闇母
08/01/11 21:31:53 WorItLoe
「お疲れさま。荷物もつね」
市代の言葉で、右手に携えたかばんを意識すると、忘れていた重さが蘇る。
「おお、サンキュ」
「わたしがもったげる!!」
瞬間、茉奈は俺のかばんをひったくり、空いた手で俺の手を握り居間にひっぱっていく。
「まぁそう急かすなって」口がにやけちまうよ、ちくしょー!

だが、俺はこの時一人浮かれていたから気づけなかったんだろう。家族の空気が大きく変わり始めていることに。

23:闇母
08/01/11 21:33:30 WorItLoe
それは突然訪れた。
「じゃあ茉奈。この料理リビングに運ん」
「いや」
な、なんだ!?ぞっとする冷たい声に、俺は一瞬誰が言ったのかわからなかった。
「なっ…茉奈、あなた」
「自分で作った料理なんだから自分で運べば~?」
さっきとはうってかわって心底気だるそうに茉奈は吐き捨てた。俺はこんな茉奈を見るのは初めてだった。
「だってお母さんの手、血がついてるじゃん。そんな汚いのまじ運びたくない」
「ッ!」
「血!?」
俺は席を立ち市代の手をとった。
「なっ!?」
俺は言葉を失った。綺麗な彼女の手のひらに、爪を刺したと思われる跡があり、今は血は止まってはいるが、見ると痛々しい。
「おい、これどした?なんかあったのか?」
「いや、別になんでもないの」
市代が無理に笑おうとしたときだった。
「嘘」
茉奈は今度は何か汚物でも見るような目でこう言った。
「近所の安藤さんといろいろしてたくせに」


24:闇母
08/01/11 21:40:19 WorItLoe
安藤…安藤って同じ階の大学生か!!いろいろって、なんだよ。俺は急に安藤に対し言いようもない怒りがこみあげてきた。

「安藤くんと、何があったんだ?」
「か、彼となんて、なにもありません!」
「茉奈もいいかげんに」
市代は必死の形相で、しかし俺が何か言う前にまた茉奈が。
「私こないだ習ったからわかるよ。あれセックスっていうんでしょ。安藤さんを家に呼んでさ、私がいるのにあんあーんってうるさいったらないし」

少しの静寂がリビングを支配し。
俺は震えていた。怒っているのか絶望なのかは自分でも分からない。市代と目が合い、彼女と安藤がやっている姿を嫌でも想像してしまう。俺は彼女を愛している。愛しているからこそ、愛しているからこそ、許せなかった。
なんとか首だけを市代に向け何か言おうとしたが、言葉にならず、彼女も何かを言おうとしたが俺は構わずに市代を初めて、そう、生まれて初めて、本気で『殴った』。

俺の右手には、今までのどんなそれより強い痛みが走った。

25:闇母
08/01/11 21:42:15 WorItLoe
今回はこれで投下終了です(´∀`;)

このスレの良作には到底及ばない(泣)

26:名無しさん@ピンキー
08/01/11 22:10:44 h4r7cIuQ
GJ!!
安藤くん、とばっちりで一番可哀相だ

とりあえずヤンママがどうやってこの状況を切り返して
娘にどのように制裁を加えるかwktk

27:名無しさん@ピンキー
08/01/11 22:13:28 PW7NK5rn
GJ!!
かなり好きなシチュエーションだ
続きを楽しみに待ってます



てかパパさん
最低でも話は聞いてあげよう
(´・ω・`)

28:名無しさん@ピンキー
08/01/11 22:19:35 oxt0kF95
good job.

妻よりも娘の言うことを信じるという反応は、娘への愛とか信頼によるものかな?
娘に死亡フラグが立っているような気がするが、果たしてどうなることか。
これからの展開に期待。

29:名無しさん@ピンキー
08/01/11 22:29:56 s3HfeAZb
GJlっす

旦那さん、手出すのが早すぎるよ・・・

30:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:12:08 vH/sPFqN
712 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2008/01/11(金) 22:51:05 ID:auji+D04
ちょwwwおまwww

メチャクチャ萌えた! 埋めネタには惜しすぎる! GJ!

では埋めええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ




こういう書き込みを見ると本当に十八歳以上かと疑わざるを得ない

31:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:15:16 RAvOkCEZ
ここって21以上じゃなかったっけ

32:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:18:52 auji+D04
いや、マジで二十一歳以上だよ(´・ω・`)

てか>>30sageないヤツに言われたくないわwww


33:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:28:26 IfTOL0jI
よくわからんが
わざわざageてまで晒す必要はないわな

34:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:58:10 QoAMIA8j
別にいいけど今は18以上だよ。
>>24
安藤くん…カワイソス(・ω・`)
あ、もちろんGJ.

35:名無しさん@ピンキー
08/01/12 00:11:58 XrnaARgO
前スレ埋めネタ及び闇母の執筆者様

大変素晴らしいssをありがとうございました
あまりにもツボですた…

36:名無しさん@ピンキー
08/01/12 01:07:14 LEyUBh62
娘死ね

37:名無しさん@ピンキー
08/01/12 01:11:48 LEyUBh62
娘死ねああ娘死ね娘死ね
安藤さんに迷惑かけてんじゃねぇよ!!
恋敵貶めるのはいいけどそれ以外に迷惑かけんな

38:名無しさん@ピンキー
08/01/12 02:03:29 VEhg6w78
娘wwwwww

市代さんガンガレ!!

39:名無しさん@ピンキー
08/01/12 02:10:04 WPL0JEe4
お兄ちゃん、殺していい?


あはっ、お兄ちゃんの中、温かいね。

凄ぉい。もう、こんなにびしょびしょだよ。
血管少ないトコ狙って刺したんだけどな。

ねぇ、痛い?もっと痛くしたげよっか?

うわぁ、さすがにお腹は血が一杯出るね。

あ、腸が見えるよ。

あたしね、焼き肉とかでホルモンが一番好きなんだぁ。
ちょっとだけ貰うね。

へぇー、内臓には痛覚が無いって言うけど、ホントなんだね。つまんない。

あれ?どうしたの、お兄ちゃん?

あっ、横隔膜、傷付けちゃったんだ。呼吸、出来ないの?
苦しそう。すごく、かわいいよ

大好き、お兄ちゃん

40:名無しさん@ピンキー
08/01/12 03:00:42 XrnaARgO
>>39
キモ姉妹スレの転載じゃんか、それ

あとサイコとヤンデレは
ハヤシライスとカレーライス位違う

41:名無しさん@ピンキー
08/01/12 08:06:58 dXFe86os
パスタとスパゲティくらいだな

42:名無しさん@ピンキー
08/01/12 08:45:26 JNtkgiW4
新ジャンル:サイデレ

ヤンデレ大全買ったが微妙(´・ω・`)

43:名無しさん@ピンキー
08/01/12 09:02:39 Vp8du6q9
サイコデレ→元から狂ってる者が狂ってる方法で愛する
ヤンデレ→元々は普通の人が、好きな人に関わる不安要素(近くにいる女)や、
恐怖(取られるかも)の思いに駆られて恋の病の症状が悪化し、一生治らない病気にかかる


44:名無しさん@ピンキー
08/01/12 09:53:58 7dVHJ5GJ
>>43
それでいくといない君はサイデレで大河内さんはヤンデレ?

45:名無しさん@ピンキー
08/01/12 17:43:33 yjZouDa1
元からの狂気か
愛故の狂気の違いだと思う

46:名無しさん@ピンキー
08/01/12 17:56:07 6eBYJiu3
愛故に病むくらいだから、多少なりとも元から狂ってるところがあるだろうし、
そこのところの区別は難しいんじゃないかな。
合わせ鏡の水樹は、元々は狂気の人でないっぽいのに愛故に病んでいってるから、
まさしく本来の意味のヤンデレだな、と思ったが、弟を愛してる時点で狂気かも
しれん。

47:名無しさん@ピンキー
08/01/12 18:39:21 zq7sbqhA
今月のガンガン読んだら、ひょっとしたら杉小路は女だったら一種のヤンデレなのではと思ってしまった
…さっきからスカリーが脳内で貴方疲れてるのよって連呼してるのはきっと気のせいだ

48:転載
08/01/12 18:53:57 khe7/9v9
参考までに

ヤンデレとは─┬─愛情表現が病的なヒロインのことだよ(王道派)
             │     ├─最初はまともだけどだんだん狂うよ(エスカレート派)
             │     │  └精神の変化で色が黒に変わるよ(黒化派)
             │     ├─他人の目なんてこの子は気にしないよ(二人の世界派)
             |     |   └むしろ世界に二人だけだったら良いのに(アダムとイブ派)
             │     ├─極度の恥ずかしがり屋さんだよ(ストーカー派)
             │     └─惚れた男のためなら何でもするよ(直接行動派)
             │         └殺人だっていとわないよ(ちょろい派)

             ├─日頃の行動が病的なヒロインのことだよ(切れたナイフ派)
             │   ├─気を引くために自傷するよ(リスカ派)
             │   │  └やる気はないけど言ってるだけだよ(狂言派)
             │   ├─なんかいつでも武器を携帯してるよ(サバイバル派)
             │   │  └むしろ肉体がウェポンだよ(肉体言語派)
             │   └─死んじゃえば他の女に取られないわ(永遠を生きる派)
             │       └あなたを殺して私も死ぬわ(心中派)
             └─精神を病んでるヒロインのことだよ(過激派)
                └─精神病だったらなんでも良いよ(超過激派)
                    └むしろ俺が精神病だよ(ミイラ取り派)

49:闇母
08/01/12 19:47:20 f5RU4BjJ
《闇母》投下させていただきます。視点が何度か変わりますが、あしからず(_ _)
〈茉奈Side〉

スカッとするくらい気持ちいい音がリビングに響いた。ついに、お父さんが、荒だった。お母さん、いや、あの年増、ほんと無様。
泣いたところで無駄無駄。“今のお父さん”にはね。
私はいつからなんて分からないけれど、ずっとずっとずーーっとお父さんといたいって思ってた。お父さんの笑顔に、仕草に、言葉に、私のこの小さな胸はドキドキしてしまう。お父さんの全てが欲しい。ただそれだけ。
けれど、人の恋路を邪魔するヤツがいる。お父さんの幼馴染み?知らないよ、そんなこと。
不思議なのは、私はあの年増をなんとかしなくちゃいけないって分かること。何をすればいいのかも、身体が分かるの。

『嘘も方便』。過程なんて、関係ない。私が欲しいのは、結果だけ。悪いね、お母さん。いや、年増。
私、私のために最善を尽くすから。

50:闇母
08/01/12 19:48:03 f5RU4BjJ
もう私なんて眼中にない。半分嬉しくて、半分悲しい。私だけみていて欲しいんだもの。でもいいの。ホントいい気味だから。

お父さんはあの後も何十回も年増を殴り、蹴った。年増はただただうずくまって、必死に耐えるだけ。弁解の言葉は聡史さんには届かない。だって人間が『猫』の言ってること分かるわけないじゃん。
「お父さん…もう許してあげようよ」
お父さんが鬼の形相で振り返る。
「茉奈、まさかお前まで」目が血走ってる。吸いすぎたかな。
「ちがうよ。私はお父さん愛してるから…絶対裏切ったりなんかしないよ」
私はスカートをめくってパンツを晒す。かなり恥ずい。私の顔きっと真っ赤になってる。
「お父さんの、好きにして」
目がパンツに釘づけになってるよ、お父さん。
あの年増は気絶してる。血だらけの顔と床。掃除しとけよ、負け猫。けれどね、まだまだ足りないの。あんたからは全部奪うから。
「お父さん、先お風呂入ってて」
さすがに落ち着いてきたお父さんをお風呂に促し、私はやるべきことをやってしまう。
まだお父さんを我に返してもいけないし、あの年増からは『存在意義』を奪ってやらなくちゃ。
「あは、あははははははははははははは!!」


51:闇母
08/01/12 19:50:30 f5RU4BjJ
〈市代Side〉

気付けば、私はリビングの隅でまるくなっていた。身体中が痛い。頭がぐらぐらする。喉もヒリヒリする。軋む身体を起こして、私は周りを見渡す。
真っ暗なリビング。私は電気をつけて、初めて愛のムチの凄まじさを知った。時計を確認すると、午前三時を少し過ぎたところだった。
やられた。懐かしい手法だった。多分聡史さんは薬でもあの小娘にかがされたのだろう。かつて私がやったように。しかし全く同じシチュエーションを真逆の立場で味わうとは思わなかった。
そして悔しかった。まんまと策にはまったこと、そしていくら薬でとはいえ、聡史さんに誤解されたことが。涙が止まらなかった。

リビングを綺麗にし、仕方なしにシャワーを浴びた。。そこそこに上がり、寝室へ向かう。そこには、彼の字で“入るな”と扉に紙が貼ってあった。

仕方なくリビングで寝ようかと思い、背を向けたときに、その信じがたいものがギシギシという音とともにかすかに耳に届いた。
「んあっ、あっ、だめ、もうらめ、らめ、あんっ」
「いく、いく、ま、また、いっちゃうよおぉ、んーーっ!」
信じられない。まさか、あの人がまさか、ね。はは。

52:闇母
08/01/12 19:51:22 f5RU4BjJ
〈聡史Side〉

どうやら朝のようで。行為の後特有の気だるさとともに意識が覚醒してきた。
「市代…」
隣にさっきまでいたのだろうか。市代の温もりがまだ残っていた。
だが不思議だ。普段なら行為を思い出して朝も“あれ”が元気なのに、昨日のことをまるで覚えていない。学生時代にも似たようなことがあったような、なかったような。

今日は土曜日。俺は久しぶりの休日を享受できるわけだ。娘の教育の為にも、一応着替えてからリビングに向かう。
「………。」
誰もいない。
明かりはついているが人の気配がしない。
「朝食もまだか…」
なんだ?こんな珍しい。市代が朝食を作ってないとは。それのために毎朝毎朝俺より一時間も早く起きるのが市代の優しさだ。

キッチンを覗いて言葉を失った。まるで何かが大暴れしたかのようにぐちゃぐちゃになっている。バラバラの野菜。ひしゃげたおたま。
「こ、これは、これは一体…」
なんだよ、これ。

53:闇母
08/01/12 19:56:16 f5RU4BjJ
その時俺は視界の端にうずくまる市代を見つけた。
「い、市代!!」

市代の身体がピクリとする。
しかし俺は足がすくみ、すぐには近寄れなかった。なぜなら、市代の手には結婚して初めて贈った包丁が握られていたから。
(危ない!)
俺の本能がそう告げている。いやそれははっきりと雰囲気で分かる。
でも俺、俺はあいつの夫だから、それ以前に市代を愛しているんじゃないのか!?お前はあの日約束したろ?
俺はついに駆け寄り、彼女の顔をあげさせたところで、またも言葉を失ってしまった。
市代の顔は殴られたあとのような青痣と腫れでいっぱいだった。
「聡史さん…」
そしてその目は何も見ていなかった。
「私…私…」
「い、一体何があったんだ!?まさか、強盗か!?お、おまえ、まさかや、やられたんじゃ」
かなりパニクっていて、自分が何言ってるかも分からない。
「わか…ない…」
ボソッと言った市代と目が合うと、腫れたまぶたの下、彼女の瞳からぼろぼろと惜しみなく涙がながれて。彼女の口からは衝撃的な事実を聞かされた。
「味が、味がわかんないの…全然わかんないよぉ!!!」

後で分かったことだが、その日、彼女の舌は永遠に味覚を失った。

54:闇母
08/01/12 20:00:32 f5RU4BjJ
↑投下終了です。

グダグダになっているやもしれない。(;∀;*)シンパイ

55:名無しさん@ピンキー
08/01/12 20:02:34 khe7/9v9
>>54
お母さんが可哀想です°・(ノД`)・°・
てか娘はもちろん親父もムカつくなw

56:名無しさん@ピンキー
08/01/12 20:05:55 P6jTl3AV
薬盛られたんだから仕方ない

57:名無しさん@ピンキー
08/01/12 20:06:13 yjZouDa1

そしてGJ

薬のせいとはいえ
さすがに父親ムカつくなw
私は何も思いだせない、みたいなのが……
まだ娘のターンぽいけど
ここから母親がどう動くのかwktk

58:名無しさん@ピンキー
08/01/12 21:25:30 VEhg6w78
なにこれ…市代さん可哀想すぎるだろ・・・

59:名無しさん@ピンキー
08/01/12 21:49:19 tKTtAWQX
お母さんに救済SSを書いてほしい…
父親が慣れない料理を作ったりして精一杯奉仕するとか
スレの趣旨からズレルか

60:名無しさん@ピンキー
08/01/12 21:58:04 mG4zbXC5
おまいら、まだ始まったばかりじゃないか。
そんなに必死になるなよw









とりあえず茉奈と聡史氏ね

61:名無しさん@ピンキー
08/01/13 00:36:06 KMahz0qe
とりあえず全員に死亡フラグが…
とりあえず娘氏ね

62:名無しさん@ピンキー
08/01/13 01:00:02 5ChAM5LN
うーん、gjとは…

ただの気違いジャマイカ(´・ω・`)ショボーン


63:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:07:18 4c8uAKM4
茉奈もヤンデレなのに…まあ、俺も市代さん派だけど。

ヤンデレとサイデレ?の違いは難しい。
俺の最萌の如月更紗も、元々病んでるだけで、愛情表現は至極まっとうだし。
それとも、彼女の愛情表現をまっとうだと感じる俺が侵食されてる?

それでは、投下します。

64:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:08:06 4c8uAKM4
朝早く、電話があった。
昼過ぎに、電話があった。
この二つの電話が、喜劇の最終幕を告げる、ベルとなった。


言葉がうまく像を結ばない。
何を、言っているのか、脳が理解を拒否しているのだ。
「今……その、なんて?」
喉にからまった痰に邪魔され、かすれる声で問うと、電話の向こうの人物は、事務的な、しかし
十分にいたわりをこめた声でもう一度繰り返した。
「ご自宅で、白石勝さん、佐和子さんご夫妻が亡くなりました」
伯父さんと、伯母さんが、死んだ……?
まさか。今朝まであの二人はぴんぴんしていたのだ。今日の午後の便で帰ると言って、私と
こーたを大学に送り出した。
あんなに元気だった二人が、揃って死ぬということは。
「まさか……あんなに元気だったのに……死因……は?」
「殺人です。何者かに襲われたようです」
「犯人は、犯人は、誰ですか?!」
受話器の向こうの人は、一瞬、言葉を切って、息を飲んだ。
「まだ不明ですが、目撃者が存在します」
私が何度聞いても、その犯人について、その警察の人は、何も言ってはくれなかった。
ただ、警察の人間が迎えに行くから、研究棟にいてくれ、と言うだけだった。


65:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:08:36 4c8uAKM4
呆然とうなだれ、備え付けられた電話の受話器を持った手を下ろす。
研究室棟の実験室。朝から私と一緒にいた同期と後輩が一人ずつ、電話に向かって不穏な言葉を
叫んだ私を、気遣わしげに見つめている。
沈黙に耐えられなかったか、後輩が私に声をかけようとし、同期に止められた。
何かを言う気力もなく、私はただ、立ち尽くしたままでいた。思考が奔流する。
おかしい。
では、何がおかしいのか?
伯父と伯母は殺された。目撃者が存在するのに、犯人が誰かはわからないという。
この言い方自体がまず、おかしくないだろうか?
犯人がわからないというのなら、それだけを述べるだろう。目撃者が存在するかどうかという
ことは、犯人の正体の知・不知に関して、重要ではあるが直接の関係はない。
それをわざわざ私に告げた意図は何か?
目撃者の証言を元に犯人を捜しているところならば、その特徴を告げ、知人であるかを私に
問わなかったのはおかしい。
しかし、犯人がわかっているならば、不明であると言う必要も、目撃者が存在すると述べる
必要もない……。
目撃者が存在し、犯人の身元について私に確かめる必要がないが、犯人が不明である。
これに当てはまる解は一つだけ。


犯人は、私の顔をしていたのだ。


66:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:09:08 4c8uAKM4
目撃者が誰であれ、マンションの人間ならば、私の顔を知っている可能性は高い。
たとえ知らずに、私だと名指しできなくとも、特徴を述べるだけで、私だと警察にはすぐに
知れるだろう。
そして、警察は私を疑っている…?
いや、違う。
私を犯人と確信しているのならば、私に、伯父と伯母が死んだことも、警察が研究棟に向かって
いることも告げたりしない。
私が犯人ならば、間違いなく逃げてしまう。
警察は、まずこーたに連絡をとったに違いない。いや、事件の発覚が早すぎることを考えると
こーたが第一発見者の可能性すらある。
こーたは、前の事件についても、警察に話したはずだ。
だから、この顔が二人いるということを、警察は既に知っていて……どちらかが犯人であることも、
既に知っている。
そしておそらく、こーたは、犯人が私ではないと、主張しているはずだ。


今、警察は、どちらが犯人なのか、まだ確証がとれていないのだろう。
わざわざ「目撃者がいる」と告げたのは、私の反応を見るためだったのだ。
ここで私が逃げようとしたら、私が犯人であるということを示すことになる。
警察が「こちらに向かっている」というのも、ブラフだろう。おそらく、研究室棟の玄関先
から電話をかけたのではないか。きっと、非常出口にも、警察がいるだろう。
出口に警察がいれば、私を『確保』することはたやすいのだから。


67:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:09:47 4c8uAKM4
不思議なほど、私は冷静だった。
そして、何の疑問も持たずに、私は『全て』を理解し、『全て』を『受け入れた』。
犯人を導くための思考は、本当は、ただの確認作業にしか過ぎなかったのだ。本当は、二人が
死んだと聞いた時から、全部わかっていた。
いや、もしかしたら、もっと前から、こうなると知っていた。
天啓を受けていた……と言っていいかもしれない。
だから私は、私がすべき『全て』を知って、まよわず実行すると決めた。
覚悟などという大層なものではない。ただ、為すべきことは為さなければならないという、
それだけのことに過ぎない。
「ふ…くうっ、う…っ!」
知らず、嗚咽が漏れた。涙が次から次へと頬を伝う。
でも、私を満たしていた感情は、悲しみではなかった。
父母を殺されたこーたの苦しみを思うと、胸がつぶれそうになるはずだった。
でも、今の私は、そういった感情すら、持たなかった。

そこにあった感情は……。


携帯電話を手提げ鞄に入れ、ただショールだけを纏って、実験室を出た。
わかりにくい場所に扉があって、その先に資材搬入用のエレベーターがある。
この研究棟は、元は二つの建物を繋ぎ、その後も建て増しを繰り返したため、いびつな構造を
している。瑞希は、玄関から近いエレベーターの存在しか知らないはずだ。
私は、エレベーターのボタンを押した。低いモーター音がして、小気味良いくらいに順調に
階数表示が下ってくる。
エレベーターの扉、奈落を見せる小窓に、うっすら、私の顔が映る。
鏡の向こうの自分は、自分と同じ顔をして、自分と違う行動をする。
でも、それが私である限り……同じなのだ。
だから、瑞希が伯父と伯母を殺した理由を、私は知っている。瑞希がどこにいて、次に
何をするのかを、私は知っている。


68:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:11:07 4c8uAKM4
朝、瑞希から電話があった。
遠くへ行くことになった。水樹に会えるのは最後かもしれない。だから直接会って謝りたい。
二人で買ったおそろいの服を着て、夕方の五時に、会おう。
瑞希は、そう言った。

高崎瑞希及び水樹と白石浩太が姉弟であると知っているのは、伯父と伯母と私である。
白石浩太は高崎瑞希及び水樹と『戸籍上は』従姉弟なのだから、この三人がいなくなれば、
結ばれるのに何の問題もなくなる。
だから、瑞希はこの三人を消さなければならない。伯父と伯母を殺したならば、次は私の
所に来るのは当たり前だ。
私が研究棟にいるというのは、伯父と伯母から聞いたのだろう。彼女は二人を殺してすぐに
私の研究室に向かったに違いない。
用意周到な彼女のことだ、返り血を浴びるなどと言う愚をおかすことはないだろう。
誰にも不審に思われずに、ここまで来れたに違いない。
本来、IDカードがなければ玄関ホールから先の研究棟には入れないことになっているが、
この棟のセキュリティーシステムには、人的な穴がある。知り合いが後ろで待っていれば、
一緒に入るのが礼儀といった風潮があるのだ。
私と同じ顔をした瑞希にとっては、私の研究室までたどりつくことくらい、容易いことだった
だろう。
後は私を殺せばよい。
私にアリバイがないのなら、全てを私に押し付けて、水樹を犯人にして殺せばよい。
私にアリバイがあるのなら、生きている方が水樹で、死んだ方が瑞希になる。伯父と伯母と妹が
死んだショックという理由で、学校をやめれば、私と瑞希の違いなど、なくなる。
だから、同じ服である必要があった。


69:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:11:45 4c8uAKM4
でも、彼女にとっては不幸なことに、私にとっては幸いなことに、私は今日、地下の実験室で
実験をしていた。今日、私がいた場所は、放射能漏れの危険性のある、レッドゾーン区域だ。
探し回ってもわかる場所ではないし、私の居場所を知っているのは、私と一緒にいた同期と後輩の
二人だけ。
今、彼女は、私の3階の研究室の前で、歯噛みする思いで私を待っているのだろう。


エレベーターが開く。乗り込んで、6階のボタンを押した。
警察はそんなにすぐには私を探しに来ないだろう。でも、時間が経ち、私がいないことに
気づいたならば、行動するに違いない。
それに、3階にいる瑞希の存在が警察にわかったならば、やはり私の計画は無駄になる。
低いモーター音が止み、エレベーターが止まる。
私は小走りに、屋上へと向かう階段へと向かった。立ち入り禁止のロープを、鞄に入っていた
ハサミで裁ち、近くのゴミ箱に捨てる。
自分の記憶力に感謝しつつ、数年前に先輩から聞いた屋上の電子ロックの番号を入力する。
電子音とともに、扉が開いた。
時間は、あまりない。焦りながら、準備を終える。
一つ、深呼吸をした。
さあ、瑞希に電話をかけないと。


70:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:13:03 4c8uAKM4
携帯をパカリと開けたその時、私の心に、弱さが忍び寄った。こーたの声が聞きたくなったのだ。
思わず、こーたに繋がるショートカット番号を押す。
……話し中だ。事件のことで、誰かに電話をして知らせているのかもしれない。
私は苦笑し、通話ボタンを押して切った。これはきっと、神様からの戒めに違いない。
今度は、迷わず、瑞希に繋がる番号を選択した。
コール1回、息をつく間もなく、電話は繋がった。
瑞希が言葉を発する前に、一息に告げる。
「私は、今屋上にいるから、来て欲しい。エレベーターでも、階段でも来れる。6階で降りたら
 屋上へ続く階段はすぐにわかる。扉を開けて待っているから」
そうして、瑞希が、何も言わないうちに、電話を切った。


おそらく、瑞希がここまでたどりつくのには、3分ほどかかる。
きっとその3分は、永遠にも思えるほどに長いことだろう。
私は、大きく深呼吸をした。青い空を見上げる。
悲しいほど綺麗な、秋の空。心は、どこまでも澄み渡って、静かだった。
こーた、お姉ちゃん、今度こそ頑張るからね。今度こそ、こーたを守るから。


愛してるよ。


71:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw
08/01/13 02:14:24 4c8uAKM4
以上です。
幸いながら事件に巻き込まれたことがないので、警察の動きが話に都合よい
形で不自然かもしれません。そこらへんはお目こぼしください。

72:名無しさん@ピンキー
08/01/13 03:32:11 2MvyKI1S
GJ!
水樹には幸せになってもらいたい。
続き投下まで全裸待機してます。

73:名無しさん@ピンキー
08/01/13 03:38:13 d1AmQR1c
GJ
何だか物凄い勢いで死亡臭がするのはきっと気のせいだ

74:名無しさん@ピンキー
08/01/13 10:42:52 KMahz0qe
前スレのちび姉の続きプリーズ…
もしよければちび姉を書いてみたい…

75:墜落の夢 プロローグ1
08/01/13 11:30:37 jazuqUMY
彼女が、生きるために何があれば生きられるのだろう?
そんなことを彼女は、考えた事があったのだろうか。
彼女は座って泣いていた。
長い髪を振り乱し目からは、止めどない涙を流しながら
「どうして?どうして?どうして?」
「私たちがまともになんてムリだったのかな?」
しかしあまりに弱弱しいこえだった。
普段の彼女からは考えられない。
「あまりこれ以上かんがえるな。」
我ながらひどいとおもう。
彼女に対していった言葉は何の慰めにもならないのに。
「私たちがまともになんてムリだったのかな?」

食料と水と空気なんてお決まりの答え?
そんなの全然彼女は望んじゃいない。
現に俺達には、お決まりの答えくらい問題じゃなかった。
でもそれがこの結果だ。それだけじゃ、たった1人も守れない。
それだけじゃ、悲しみで心が潰れてしまう。
彼女は、現にそれだけでは生きては、いけなかった。
そんなのは、心のない本能だけの動物だろう。
動物園なんてわざわざ区分けしてるしな。
ただ生きるだけならお決まりの答えで理屈上十分だろう。
心なんていらない。
彼女が望むのは、その先だ。
まとも、当たり前、普通、そんな他人との心の触れ合いを夢見た。
だが、求めた瞬間それは、粉々に現実に壊された。
そして彼女の心も壊された。


76:墜落の夢 プロローグ1
08/01/13 11:59:59 jazuqUMY
彼女は、凶器をもっていたのに傷つける側なのに壊れた。
いじめられていたから、仕返しした。
それだけで……。
いや、それだけのことをしたのだろう。あやうくずれるところだった。
罪や悪意は、残り続ける。どうやっても抹消できない。
人が3人死んだのだ。十分罪深い。
しかし、救いが無さ過ぎる。
もう彼女は、立ち直れないかもしれない。

強く在れといつも俺にいっていた彼女。
いままでの日々を思い返す。幸せから絶望。そんな時 俺たちは、出会った。
そうだ。かつて交わしたあの約束の時から俺は、彼女によく助けられたんだ。
彼女を助けたい。俺は悩んだ。
人に踏み込まないよう生きてきた俺は、戸惑っていた。
リスクが頭にちらつく。孤独、そんな単語が頭を埋め尽くした。
さみしい、つらい、こわい。感情の波が俺を襲う。

妹達が逃げ出した。悲鳴をあげていた。家族だった。
目の前の俺を同じ人間と認識していなかった。
人とまったくの別物。俺を見てまるで化け物のように。
幼い俺は、しばらく理解できなかった。俺は、化け物。
俺は逃げ出した。姉が追ってくる。
目の前の人間は、俺を家族と認識していない。敵。攻撃される。
傷つけられる。理解は、出来た。俺は、家族の敵。

幼いとき感じたあの感覚に恐怖した。
一度失敗した俺は、臆病だった。
現状維持、それは甘美な響きだった。
俺は、逃避しようとしているのか。
ふいに彼女との約束が浮かんだ。
「いつか楽しいと思える日々まで、ふたりで生きよう」
大切な言葉だ。
俺にとって一番大事な約束。
そうだ約束したんだ。
いま果たさずにいつ果たすんだ。
覚悟の決意をした。最後に理由を聞いた。思い残すことが無いように。
「なんで俺を選んだんだ?。」
その俺の質問に彼女は、すぐ答えてはくれなかった。
しばらく黙っていて、俺は不安になった。
無視されているのか、それとも聞いていないだけなんだろうか?
見下し見下される関係が、続いていたので怖かった。
もう遅いのだろうか?
5分くらいだろうか、突然俯いていた顔が俺に向いた。
「好きだったから。」
それまでずれていた焦点が俺の目と重なる。
ひたむきな姿で告白してきた。俺にはいまだ到底無理な感情。誠 実、真心愛情。
不思議と嫉妬は、しなかった。その言葉は、純粋にうれしかったと思う。

だから、うけとめられるだけの器が自分にないのは、悲しかった。

突然の投下すいません。
続きは、できたら書きます。



77:名無しさん@ピンキー
08/01/13 15:14:21 IGUDAla6
>>76
続き期待してるぜ!!

78:名無しさん@ピンキー
08/01/13 17:45:47 wT36kRCu
水樹ガンガレ超ガンガレ

でも瑞希視点も読んでみたいなあと思ったり

79:名無しさん@ピンキー
08/01/13 18:59:11 /XtATejZ
>>74
書いてもいいんじゃないかな。
俺は読んでみたい。

80:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:42:26 637IVz6l
投下します。

81:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:43:21 637IVz6l
「加奈を、本当に、好きか?」
 島村の質問を、そのまま口にしてみる。
そうでもしないとそのまま聞き流してしまいそうな程、それは当たり前なことだ。
頭の中でも、言葉でも、繰り返し繰り返し確認してきた―俺という人間の前提。
「お前にしては愚問だな」
「真面目に答えて下さい」
 準備していましたと言わんばかりに即答された。
完全に返答を読んでいなければ絶対に出来ないであろうスピードだった。
それだけ真剣なのだということは理解したが……改めて思う。

 愚問にも程がある。

 島村は何を言っているんだ?
自分で、俺が加奈を好きだということは分かっていると言っておきながら、何で再びその一言を要求しているんだ?
経験上島村がどこか呑み込み難い性格の持ち主だということは知っているが、同時に言っていることに意味があることも解していた。
だが今の島村は、俺の理解の範疇を完全に超えている。
何か目的あってのことだという確信はあるが、その周囲が煙っていて全く見えない。
兎にも角にも―俺に出来るのは、肯定することだけだ。
人様に誇れるほど大層なものは俺には何もないが、加奈への気持ちだけは負けない自信だけはある。
この唯一無二の感情は、誰にだって否定させはしない。
「加奈のことが、誰よりも好きだ―」
 力強く宣言した俺をよそに、瞬きする間もなく、島村は俺の頬を叩いてきた。
それも、かなり重い平手打ちだ。
掌でやられた筈なのに、破裂音と言うには程遠い、鈍い音が響いた。
頬が腫れを通り越して打撲のように青ざめてるんじゃないかと心配してしまうほどの痛みが走る。
手で頬を押さえるという恥を忍びながら、若干呆然としたままの状態で島村を見返す。
「ふざけんのも大概にしろよ」
 思わずそんな汚い言葉が漏れたのは、先程ニュアンス的に俺の加奈への想いを否認されたような気分になったというのもある。
しかし何よりも俺を怒りに駆り立てているのは、今俺を見下ろしている島村の目に、溢れんばかりの非難めいたものが込められているからだ。
言葉にはしないが、お前はどういった了見でそんな視線を浴びせてくるんだと言いたくなる。
お前の命令に近い要求を呑んでやったというのに、した途端の仕打ちがこれか。
さっきまでの穏やかな気持ちが払拭されてしまったよ、全く以ってな。
「ふざけて、そんな暴力振るう訳ありませんよ」
「どの口が言うんだ。人のことつい前まで奴隷扱いしておいて」
 脳裏に浮かぶ男として屈辱としか表現し様のない光景。
少しだけ笑ってしまったのは、その惨めな姿が自分であるという事実を受け入れたくないが為に、客観視したからだ。
ますます、虚しくなった。
「何で笑っているんですか」
「どうでもいいことだ。それより、こんなに豪快にぶっ叩いてくれたんだ。何か意図あってのことだよな?」
「意味のない行動だってありますでしょうに」
「そんなことはどうでもいいから、俺の質問に答えてくれ」
 島村から、悪びれた様子は欠片も見受けられない。
逆に清々しくなる程に当然を身に纏ったその立ち居振る舞いに、沸々湧いていた憤りも萎縮してしまった。
いつもそうだ、こいつは。
俺に対して、傲慢としか取れないような言動を、半強制的納得と共にぶつけてくる。
人並の頭があるなら、いつかそれが俺の逆鱗に触れる時が来るかもしれないという場合を想定出来る筈だ。
にも関わらず、島村はまるで―俺が怒っても、行動には出さないと確信しているかのように振舞っている。
そこまで、俺を信用―そう呼んでいいのかは定かではないが―出来るその要因は、一体何だというのだ?
 ……今更だが、考えるだけ無駄か。
とりあえず思い直して、間もなく島村が返してくるであろう解答に耳の全神経を集中する。
筋道すら見えなければ、永遠に正解には辿り着けないんだ。
「一つは……単なる、嫉妬です」
「は?」
「今のところは諦めるとは言いましたが、私が誠人くんを好きだという気持ちに変わりはありません。絶賛継続中なんですけど」
「あ……」
「もう少し、乙女心というものを分かって下さい。女の子は繊細なガラス玉なんですから」
「どの口が―」
 言うんだか、とは言えなかった。
ふざけて開けてた大口に、島村の親指を除いた右手の四指がすっぽり入れられたからだ。
「憎まれ口しか叩けない、いけない口は、こうして塞いでしまいますからね」

82:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:43:48 637IVz6l
 島村の指咥えるのって、これで二度目だな。
同じ女の子の指を強制的に二度も口に含まされるってのは、男としてどうなのかね。
自分の認識を遥か遠くへと追放しながら、追憶してみる。
一度目は、保健室で治療と称した拷問をされた時だったな。
あの時は、頭踏まれたりして、その影響で半ば自棄になって丹念に消毒液を舐め取ってやったんだったな。
……そういえば、俺が意味を読み取れない素振りもあの頃から始まっていたな。
確か、島村の質問にへの返答に皮肉を込めたら、どこか物悲しい顔をしていたんだっけか。
結局、その真意も分からず終いだったな。
ま、今頃訊いたところで、当の島村本人が覚えている可能性は薄いし、何より俺の勘違いって線も捨て切れない。
どちらにせよ、今となってはどうでもいいことだ。
「あ」
 いい加減、涎が溜まってきたので慌てて指を放す。
本来ならば顔を真っ赤にして早急に引き抜くべきところを、何を冷静に俺は数秒間も犬のように咥えていたんだ。
島村の言う通り、身体に受動的快楽を享受する経路みたいなものが確立してしまったのかもしれないな。
「ご主人様とペットごっこは、この辺りで打ち止めにしておこうぜ」
 そう言いながら、口内に残った唾を嚥下した。
若干塩辛く感じたが、その理由を追究した先にはきっと恥ずかしい現実が待っているであろうから、そこで思考を打ち切った。
出来ればこの話題はそろそろ転換したい俺をよそに、島村は俺の涎で滑っている自身の指を色々な角度から凝視している。
見てるこっちも恥ずかしくなる程、島村は平然とそれを眺めている。
そのまま続けること十数秒。
「そうですね」
 相変わらず自分の指を見るのに夢中になっている様子の島村は、若干心此処にあらずな不安定極まりない口調で呟いた。
それを聞いて、ひとまず安堵の一息を吐こうとしたのも束の間―。
いきなり、島村は自分の人差し指を舐めた。
その唐突さに一瞬度肝を抜かれつつ、何とか平生を装いながらその光景を見据える。
猶も島村はアイスバーでも舐めるかのように、中指、薬指と次々に咥えている。
そんな扇情的な場面を前にして、今俺の中で渦巻いているものはと言えば、情けないながらも「厭らしい」の一言……。
島村を本当の意味で“知る”までに俺が彼女に対して抱いていた清楚―と言うと大袈裟だが―なイメージとのギャップが大き過ぎるんだよな。
半分以上言い訳だけど。
「以前みたいに飾る必要なんてないんですよね」
 若干追及したい節があったが、否定されなかった時の反応に困るだろうから無視することにした。
「今は一応ただの友達同士なんですから。友達って、そういう関係なんですよね? 誠人くん」
「そうなんじゃないのか……ねぇ?」
 ―友達、か。
頭の中でその言葉を反芻してみるが、いまいち実感が掴めない。
別に気心の知れた友人がいなかった訳ではないが、彼ら(彼女ら)が果たして俺にどれだけの影響を与えていたのか?
俺を占める割合の中で、当然のことながら一番は加奈であり、後は言い方は悪いがその他のようなものだからな。
そんな風に一括り出来る程、友達って存在は矮小なものなのか?
それとも、そう思うことは、単に俺が求め過ぎているだけだとでも言うのか?
……馬鹿だな、俺は。
普通の奴は、俺みたいに無駄に深く考えたりなんかしないよ。
皆、小さい頃に心で理解する術を学んでいるんだ―加奈のことに夢中な俺を除いて。
「だとしたら、私は加奈さんより少しだけ得したかもしれません」
 俺の適当甚だしい回答に、表情はそのままながらも、島村は僅かながら声を和らげた。
罪悪感に心が軋む音が聞こえたような気がした。
「彼女って立場では決して見れない誠人くんの一面を、垣間見れたんですからね」
「それって―」
「そのこととも関係があるんですか、もう一つの理由を教えてあげます」
 続きは遮られた。
だが、そのことはもうどうでも良くなっていた。
島村の言葉から察するに、俺の言おうとした疑問も全てひっくるめた解答を用意しているに違いない。
さっきまでそれを半ば怒りに任せて要求していたんだ。
素直に受け取るのが礼儀だ。
「後、話している間はおとなしく聞くだけで、割り込まないで下さいよ。私語厳禁、これ命令ですからね」
「わかったよ」
 島村由紀―彼女に関する幾つもの疑点、それが分かるということへの期待からか、俺は子供のように嘗てない程ワクワクしていた。
「それじゃ、まずは一つ告白しておきます。宿題は早目に終わらせるタイプなんでね」
 精一杯の深呼吸を披露した後、始めた。

「私、処女じゃないんですよ」

83:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:44:15 637IVz6l
 俺は今、ドッと噴き出る冷汗を感じながらも、心底ホッとしている。
もし発言を禁じられていなければ、島村のあまりにも突発的且つ突飛な告白に対して、俺は何か答えなければなかったのだ。
異性の繊細極まりない問題に、果たして俺はどんな対応が出来ただろうか……?
仮に慰めたとして、それは“処女”の重要性を肯定することになり、そうでない彼女を傷付けてしまう。
かと言って平生を装ったとしても、単純に薄情だと思われてしまうかもしれない。
完全な袋小路―どんな反応も、彼女を追い詰めてしまうのではないか?
「処女喪失の時は、高一の夏。当時付き合っていた男とです」
 必死に思慮している俺を置いてきぼりにして、島村は平気な顔でどんどんプライベートなところへと進んで行く。
その吹っ切れた感のある表情と口ぶりだけが、今の俺にとっては救いの手であった。
「事後の第一印象は、男の性欲旺盛な様です。だって、私と彼が付き合い始めたの、その三日前だったんですよ?」
 “手”は払い除けられた。
とんだ勘違いをしていたことに、気付かされてしまった。
確かに、島村の淡白過ぎる物言いには、心残りは欠片も見受けられない。
代わりにそこに込められているのは、悲しみや怒りを超越した―純然たる、呆れ。
それは、本来の上下関係を無視した威圧感を備えており、又、俺に畏怖の念を与えるのに足るものであった。
「でも、私に彼を貶める権利はありません。彼の『愛している』が当時の私にとっては全てだったんですからね。馬鹿はお互い様ですよ」
 すっかり冷静にさせられた思考の中で、俺を気持ち悪くしていたのは一種の矛盾であった。
女王の風格すら漂う、男を小馬鹿にした島村と、俺に一途に想いをぶつけてきた彼女―その二つの像が、全く一致しないのだ。
結局その根源を辿っていけば、島村が俺をあれ程に好いていた理由は何かという疑問にぶち当たるので、何も進んではいないんだがな。
「その頃の私は、それはもう“いい娘”でしたよ」
 島村は、苦笑を間に置いた。
「朝は彼と一緒に登校する為に、まだ光がない時間に起きて、彼の弁当を持参して家まで迎えに行きました。
 学校でも彼に恥じない彼女になるよう世間体を気にして過ごすようになりました。
 彼と下校する為に部活も辞めました。夜は、彼が求める日はいつでも応じました」
 島村から語られる過去の彼女の姿を脳裏に思い浮かべてみる。
あくまで傍観者としての率直な感想を述べるなら―。
「ちなみに、それは全て彼が私に要求してきたことなんですよ」
 異常だ。
「まるでゲームみたいですよね。自分の操作通りに動いてくれる人間なんて。
 薄気味悪いことこの上ありませんが、彼にとってはそれが至福だったんです」
 彼女のそんな様子を見て注意を促さないどころか、逆に火に油を注ぐようなことをしでかすその男も。
「それが彼にとっての幸せと割り切って我慢していた、私にとっても」
 傍目から見れば最低極まりないそんな男を妄信的に好きになっていた、島村も。
「“恋は盲目”とは良く言ったものです。私は献身的に尽くしました」
 再び、苦笑を一つ。
「ですが、どんなゲームにもいつか必ず訪れてしまいます―“飽き”という段階がね。その後の展開は、大体予想つくでしょう」
 言われなくても、今まで散々考えるということに没頭してきた身の俺にとって、それ位のことは訳ないことだ。
今までしてきた努力の継続では、彼氏を自分の下に繋ぎ止めておけない。
そんな状況に陥った島村が―恋の奴隷になった彼女が導き出す答えは、“足りない”ということ。
彼氏の非を決して認めない島村は、彼氏が離れていくのは自分の愛が足りないだけと信じて疑わないだろう。
彼氏は彼氏で、島村への好意を失くしたことでようやく客観的な視点で彼女を見て、気付いたに違いない―彼女の異常性に。
余計に彼氏は離れ、島村は原因を誤解したまま自ら彼氏に恐怖を植え付けるという、負の連鎖が形成される。
……俺の想定し得る、最悪の結末だ。
「双方にとって非生産的な状況のまま、高二の春になりました。
 春―あの男のことですし、けじめをつけるいい機会だとでも思ったのでしょう」
 三度目の苦笑を、島村は漏らした。
今まで最も深く、そして陰気な感がした。
「とうとう、別れを言い渡されました」

84:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:44:57 637IVz6l
 打って変って、自らの体験談を語るその口調には、やはり清々しさが漂っていた。
その言い草の軽快さたるや、まるで話すことを楽しんでいるかのようにすら思えてしまう程だ。
「当然反発しましたよ。省みると羞恥心で身が溶けそうな位取り乱して、とにかく何としてでも気を変えてもらおうとしましたね」
 懐かしむように島村は遠くを見回しているが、俺の心にはそんな余裕は露ほどもない。
感覚的にはほんの前に俺は、正に島村が口にした自身の像と類似する姿を見せ付けられたのだから。
俺の為に体を傷付け、心を侵し、自分を捨てた―形振り構わない、一人の女としての姿。
それがくっきり脳裏に焼きついて離れてくれない。
今でも耳にこそばゆい甘い囁きと、何度も与えられた肉体的苦痛。
飴と鞭を駆使して翻弄された感覚が、体にも心にも染み付いている。
だが、それは決して忘れてはいけないものなのだと思う。
同情だとか罪悪感なんて理性的なことを抜きにして、ただ本能がそうあるべきだと訴えかけてくるから。
「そんな私の様子を見て、狼狽し切った彼が私に言ったこと……何だと思います?」
 突然の問い掛けに一瞬戸惑い掛けたが、深呼吸をしている島村を見るに、回答は求められていないようだ。
胸を撫で下ろしていると、島村はゆっくりと俺の方へと近付いてくる。
そして何を思ったか、俺の右耳を親指と中指で抓んで、自分の口元に引っ張る。
「『もう俺に付き纏わないでくれっ!』」
 島村の言葉は、至近距離だったのと壮絶な音量だったのとが災いして、聞き取れたものの耳が痛くなった。
キーンとかいう擬音が俺の周りを飛んでいる気がして、耳を押さえる他どうしようもない。
その上、声量という点を除いても、島村の先程の言葉には有無を言わせない気迫があった。
結果的に俺に出来るのは、馬鹿になりかけた耳を壊れ物のように撫でながら、島村の次の言葉を待っていることのみだ。
「彼に最後に感謝した瞬間でした。その言葉を聞いて、私はようやく夢から覚めることが出来たんですからね」
 和解―島村が語るこの結末が、俺には少し腑に落ちなかった。
今の島村は俺が好きだということを考えれば当然のこととも言えるだろうが、彼女の常軌を逸した愛情を肌で感じ取った身としては、最終的にはあっさりと退いたことをおかしく思った。
「さて、誠人くん。問題です。私は何故こうもあっさり関係を断ったのか? あ、勿論もう喋っていいですからね」
「……」
「何ですか? その目は」
「いや、お前やっぱり俺の心の中見えてんじゃないかって思っただけだよ」
「そうだったらどれだけ幸せか」
 真顔の島村をよそに、俺は女々しく髪を弄くっている。
島村からの問いに答えようなどとは微塵も思っていない。
正解が導ける筈がないと諦めているからというのもあるが、何よりも俺は勘違いすることを恐れていた。
相手の心中についての懐疑の末に間違った結論を出して、そのことで相手を傷付けることだけはもう沢山だった。
―涙なんて、もう見たくない。
「ところで無言でいるのは、わからないってことでいいですね」
 沈黙で肯定する。
「難しく考える必要なんてありません。簡単なことです。私は人として彼を見損なった。だから別れた。それだけです」
「見損なった?」
「女を人形のように使い古して、飽きたら自身の罪悪を自覚しないで一方的に相手のせいにする。どこに魅力があるのですか」
 正直、意外だった。
あれだけ俺に対して一途に思いをぶつけてきた島村のことだから、前の相手にも同じだけの愛情を向けているのだと思っていた。
現にさっきまで島村が話していたことによれば、彼女は異常なほど元彼氏に尽くしていたようだ。
なのに、今は彼氏に未練どころか、逆に軽蔑している節すらある。
このことに対して、俺は失礼承知で尋ねずにはいられなかった。
「幾らなんでも、心変わり早過ぎないか?」
「全然」
 島村は目を丸くして俺を見つめてきた。
心底言っている意味がわからないとでも言いたげな、おかしな表情をしている。
この即答に、俺は再び沈黙の殻に閉じこもる他の選択を取り上げられてしまった。
「すぐに男を代えられるような軽い女と思うのならご自由にどうぞ。でも、これだけは言っておきます」
 息を若干大きく漏らしながら続けた。

「私は、弱い人は嫌いです」

85:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:45:39 637IVz6l
 断固として捻じ曲げさせまいという心意気が伝わってくるその言い振りは、島村が胸を張っているような錯覚すら覚えさせた。
「自分の正当性を疑わず、自省をしない―彼のような心が脆い存在を好きにはなれません」
 島村のことを軽い女だなんて思わないし、思える訳もない。
一人の相手にあそこまで執着する様は寧ろ、恋愛に対して実直だとすら評価出来るものだ。
だからこそ、島村が元彼氏への好意を完全に喪失した背景には、何か彼女自身の思考回路からの影響があるに違いない。
無論、俺には分からないが。
「彼は私に飽きて、そこで初めて客観視したことで私を気持ち悪く思ったんでしょう。
 それは私も同じで、彼のあの言葉で事態を客観視したんです」
 言いながら、島村は自分の顔を右人差し指で指した。
「誠人くん、あなたは私の過去を聞いた時、十中八九こう思った筈です。狂っている、と」
「そこまでは思っていないが……」
「なら異常だ、位ですかね。どちらにせよ、常識的に見れば明らかにおかしいと感じましたよね?」
 問い掛けながら、目で『分かっている』と教えてくる……島村らしい、実に厭らしい攻めだ。
「全く以ってその通りです。彼は私を玩具にし、私は彼を愛すだけ。
 お互い相手のことばかりで、自分を見つめようとしない―そんなの、恋愛とは呼べませんよね?」

 ……恋愛とは呼べない……恋愛トハ呼ベナイ…………レンアイトハヨベナイ…………レンアイジャナイ………………

 アレ?

「愛すことしかせず反省をしない、私が嫌いな人間に自身がなっていたショックもあって、私は彼と別れました。
 ですが、その時はほんの少し、それこそ米粒ほどの未練があったんですよ。
 それを完全に払拭してくれたのが、後の誠人くんとの出会いでした。
 誠人くん、あなたは知らないでしょうけど、私はあなたのことをあの女子トイレの時以前から知っていたんですよ。
 その時、あなたは丁度加奈さんに―“上書き”されているところでしたよ。
 当時の光景を振り返ってみても、壮絶だったとしか言い様がない程、衝撃的でしたよ。
 自分より一回りも小さな女の子に滅茶苦茶にされているあなたの姿は、惨めという言葉がお似合いでしたよ。
 でも、泣きながら謝っている加奈さんを笑顔で許しているあなたの姿を見た瞬間、胸が高鳴りました。
 『俺も悪い』と言いながら加奈さんの頭を撫でているあなたは、私が見てきた誰よりも格好良かった。
 あなたとなら、自分の罪を認める強さのあるあなたとなら、私は幸せになれる……あなたが欲しい、こう思うようになったんです。
 それからは密かに機会を伺っていたんですが、まさか女子トイレ前で会うとは思いませんでしたね。
 しかも、また“上書き”されているんですから、二重に驚かされましたよ。
 でも、そこから関係を持てるようになったんですから…………って、誠人くん、聞いているんですか?」
「……」
「誠人くん?」
「……どういうことだよ、島村? どうして、どうしてそんなこと言うんだよ!?」
 荒れる息をそのまま、俺はベッドから瞬時に飛び退いて島村から距離を取った。
訝しげな視線を送る島村に対して、威嚇するように俺は彼女を睨みつけている。
「そんなことって、何のことですか? ほら、冷静になって―」
「来るなよっ!!」
 立ち上がろうとした島村を言葉で制してみるものの、俺の言葉など意に介さず彼女はスッと立ち上がった。
更に俺は島村から離れる為に後退りした。
「本当にどうしたんですか? もしかしたら傷が深かったのかも……」
「おかしいぞ、この病院。さっき島村は大声を出した。そうでなくとも今俺は叫んだのに、何で看護婦も誰も来ないんだよ?」
 島村と話している間は熱中していてそんな些細なことにすら気付かなかった。
それに、俺が今いるこの部屋にはベッドが幾つもあるのに、俺の以外は全て空席状態。
俺以外は患者が誰もいないなんて、どう考えたって変だ。
「誠人くん、落ち着いて下さい……。話し合いましょうよ……」
「もう一つ」
 何よりも島村に追及したいことがある。
知りたいのは、あの言葉に関して―“故意があるかないか”ということ。

「お前は元彼氏と自分の関係を恋愛とは呼べないって言ったよな?
 それは、俺と加奈の関係に対しても言ったのかよ?」

86:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:47:18 637IVz6l
 お互いに相手のことばかりを気にして、自分の行動を振り返れない。
そんな緊張状態の中で何とか保たれてきた、俺と加奈の関係。
島村と元彼氏との関係に類似するそれを、島村は恋愛ではないと否定した。
自分は俺から身を引くと言っておきながらだ。
……勿論、俺の思い過ごしだという可能性もある。
そうであってくれ。
いつもみたいに、馬鹿にして一蹴してくれ。

「ははは……私、馬鹿ですね」

 束の間を置いて放たれた言葉。
似ているけど、違う。
『私』は余計だ。
素直に俺を馬鹿呼ばわりしてくれて構わないから……。

「気付いていましたよ、“矛盾”に。私が求めているものと、それがそうである為に必要なことは、決して交わらないってことにね。
 でも……もう戻れないところまで来てしまったんです。私もあなたもね。こうなったら、形振り構っていられません……ははは」

 島村が近付いてくる。
再び下がろうとしたが、壁にぶつかってしまった。
ドアを探したが、島村を挟んで逆側にあった。
逃げ道はない。

「誠人くん、私は二つ嘘をつきました。それを教えて、謝りますから、その暁には……ふふふ、ははは……」

 島村しかいない。

87:上書き ◆kNPkZ2h.ro
08/01/13 21:47:59 637IVz6l
投下終了。次回で終わりです。

88:名無しさん@ピンキー
08/01/13 23:02:26 c8PX/t8a
グッジョブお疲れ
次回で終わりかー…

89:機動兵器ヤンダム00
08/01/14 00:03:11 PTqGLfpw
投下します
ヒロインの恋愛対象が人外なんで苦手な人はスルーで

90:機動兵器ヤンダム00
08/01/14 00:06:12 PTqGLfpw
……この世界に“神”なんていない。

私は、ずっとそう思っていたんだ。
だって、いくら祈り続けても、私のお願いを叶えてくれなかったんだもの。
あの頃は毎日、毎日、一生懸命に祈っていた。……祈るしか、できなかったんだ。

“どうか、私を助けて下さい”って。



西暦2XXX年。
宇宙へと進出した人類は枯渇した化石燃料に代わり、宇宙太陽光発電によって新たなエネルギーを手に入れる。
しかし、その恩恵に与れるのは莫大な建造費がかかる軌道エレベーターを有する巨大国家群のみで、それぞれの超大国は全面的な衝突こそないものの、軍事技術の開発による冷戦状態に。
そしてそれらに属さない小国は資源の枯渇による貧困にあえぎ、紛争と内乱を繰り返し続ける。

そんな世界に、突如として“彼ら”は現れた。




「……“ゼノグラシア”、作戦を遂行します」
<了解、あなたの無事を祈っているわ>

ぷつん……と音を立てて通信が切れる。
オペレーターが告げたお決まりの台詞をもう一度思い返し、少女は薄く笑う。

「“祈る”だけじゃ、願いは叶わない。……そうだよね?」

91:機動兵器ヤンダム00
08/01/14 00:07:10 PTqGLfpw
現場は、数瞬の空隙の後、騒然となる。
新型の機動兵器の公開演習に突如として現れた、純白の人型機動兵器によって。
まるで重力など感じさせず、ふわりと地に降り立ったその機体は、突然の出現にあっけにとられるお披露目中の機動兵器へと右腕部に携えたライフルを向ける。

「野蛮で、無骨で、品性の欠片も感じられない……」

そのコクピット内で、少女は顔を歪め、吐き捨てるように呟く。
機体のカラーリングとは対照的に真紅のパイロットスーツに身を包んだ少女は、そっと手にしたレバーを撫でさすり、同意を求める。

「あなたもそう思うよね? “ゼノグラシア”」

“ゼノグラシア”と呼ばれたその機体は少女の問いかけには答えず、目前の新型機の詳細を分析し、彼女にデータを提示するのみ。
しかし少女は提示されたデータを確認しつつ、満足げにこくこくと頷く。

「やっぱり、あなたもそう思うよね! ……うん、分かる。あなたの考えていること。だって、長い付き合いだもの」

自分と意見が一致したことに少女は嬉しそうに顔を綻ばせる。
……が、その幸福を味わい、噛み締める時間はここにはない。鳴り響く警告音。

「ごめん、嬉しくなっちゃって今が作戦行動中だってこと忘れちゃってた。……大丈夫、あなたには私が指一本だって触れさせないから」

我に返り、謎の乱入者の迎撃へと打って出た“新型”が背部のハッチから誘導式のミサイルを乱れ撃つ。
一斉に迫りくるミサイル群。しかし、少女は、“ゼノグラシア”は動かない。
ぐんぐんとミサイルとの距離が縮まる。縮まり、…………と、ふいに純白の機体の姿が消える。
寸前で目標を失ったミサイルは互いが互いと衝突し、爆ぜる。盛大な爆発音と、立ち込める黒煙。
“新型”はモノ・アイのカメラをせわしなく左右へ動かし、敵機の姿を探す。……見当たらない。

「本当に見苦しい機体……」

影が差す。“新型”のモノ・アイがぐるりと頭頂部へ移動する。
そして、太陽を背に淡い輝きを放つその機体を、“ゼノグラシア”を視界に捉えた瞬間……

「だから、私たちの前から消えて」

両腕に備えた機関銃を向けることすら叶わず、“新型”は“ゼノグラシア”のライフルから放たれた光弾によって打ち抜かれる。

92:機動兵器ヤンダム00
08/01/14 00:07:53 PTqGLfpw
「“ゼノグラシア”、作戦を完遂。……次の作戦へ移ります」

少女が必要最低限の用件だけを通信で伝えると、再びコクピット内に鳴り響く警告音。
レーダーに映る、無数の機影。……突然に起こったこの事態にようやく対応し、送り込んできたこの基地の機動部隊だろう。
うっとうしそうにそれを見つめ、少女はゆっくりとヘルメットを外す。

「うん、今はこれで我慢してね。これが終わったら……ふふっ、後でたっぷり、ね?」

そう言って、少女はそっと機体のコンソールに顔を近づけ……

「大好きだよ。愛してる。……ずっと一緒だよ、“ゼノグラシア”」

“彼”に口付けを交わす。



武力による戦争根絶を目指す私設武装組織によって、世界は変革を促される。

これはそんな時代を駆け抜けた、一人の少女の物語である。

そう、物語はすでに始まっている。

世界に絶望し、唯一のよすがであった神への信仰も失った少女の下に、“彼”が舞い降りたその時から。

93:機動兵器ヤンダム00
08/01/14 00:09:25 PTqGLfpw
投下終了です
初投下がこんな話で本当にすまないorz

94:名無しさん@ピンキー
08/01/14 02:20:12 N1u3dnjd
>>86
ずっと楽しく読んでます
………楽しく、うん楽しく読んでます。GJ

>>92
ヤンダムktkr
期待GJ

95:名無しさん@ピンキー
08/01/14 02:22:26 h733mn0/
どうしてだろう、GJと言いたいのに
○ミ<スポーン
という言葉が先に出るのは

96:名無しさん@ピンキー
08/01/14 08:01:21 yW5hkD/j
>>87
島村さん派の俺としてはちょっと複雑な気持ちになった、かなあ。
でもやっぱり可愛いからおkw

97:名無しさん@ピンキー
08/01/14 09:43:52 JCV+IWZC
>>71
GJ
水樹には幸せになってもらいたい

>>87
GJ
上書き楽しみ待ってました

98:名無しさん@ピンキー
08/01/14 22:04:31 TzlQWb6v
>>89
元ネタの元ネタの信者だからあまり笑えない…

まあ別にそんなことどうでもいいんですけどね

99:深月
08/01/14 22:39:33 pk/0UBFF
 タイトルの読み方は、【深月(しんげつ)】。
 最初はわけが分からないかもしれませんが、何卒ご容赦をm(_ _)m
 細かな設定や質問などは極力お答えします。
 (この先の物語が分かるようなネタバレ的な質問はお答えできませんが)

 では投下↓

100:深月
08/01/14 22:43:50 pk/0UBFF
 闇に包まれた山道を深山蒼佑(みやま そうすけ)は走っていた。立ち止まることもなく、後ろも振り返らずに。切れ切れに吐き出される吐息は白く、瞬く間に昏い空に溶けていく。
今宵は満月。見慣れていたはずの月はいつもより、ひと際白い気がする。
その中で火照った体を冷やしてくれる冬の寒さと、夜の山道を照らし出してくれる月の光だけが彼にとって唯一の救いだった。
 もうどれほど走っただろうか。
今は少しでもあそこから離れ、街に近づけさえいればいい。
 街にさえ出ることができれば救いはきっとある。そう信じて蒼佑は走り続けた。
「っ!……あった」
 闇の向こう側一筋の光が見える。ようやく山道から街へ続く道路へ出たのだ。
 ここまで来れば、街はそう遠くはない。やっとあいつから逃げられる。
 走り際に標識を見ると、あと数百メートルで街に出られるようだ。
 数百メートル。陸上部だった彼からすればそんな距離、五分も満たない内に完走できただろう。
 けれど――――――――――
「…は、はは……」
 冷たい月の光がその人影を映し出す。
希望を絶望に変えるかのように、蒼佑の前に一人の少女が立塞がっていた。
西岡美月(にしおか みつき)。小学校からずっと一緒だった、幼馴染。
「そうだよな…無闇に追うよりも逃走経路に網張った方が確実、か。まあ、予想はしてたけど……」
 それでも彼女とは会いたくはなかった。
 蒼佑から乾いた笑いが自然と零れる。
「なんで、こうなったんだろうな……美月」
 彼女の着た白いワンピースは血塗られている。
 彼女の白い肌は血塗られている。
 故にそれを意味することは一つ。
「……ねえ、そー君」
 幼馴染はいつものような柔和な笑顔を浮かべる。
 何一つ変わったことなど無い、とでも否定するように。
「早く帰ろうよ。お家は向こうだよ?」
 彼女が指差す方向は数時間前まで自分が監禁されていた場所。逃げ出した地獄。
そこに戻れ、と彼女は言う。
 まるでそここそが深山蒼佑の帰る唯一の場所とでも言うかのように。


101:深月
08/01/14 22:45:26 pk/0UBFF
 蒼佑は背負っていたリュックの中から小刀を取り出す。ずっしりとした重量感がこれが“目の前に居る者”を殺す凶器なのだと告げている。
 それを慣れない手つきで幼馴染に向けた。
「そこを、退け」
 短く。自分の感情を抑えるように、警告する。
 けれどそこに躊躇いがある限り、今の彼女に通用するとは思わない。
「……そー君。そんなことしても無駄だよ」
 美月は彼の持つ凶器を気にも留めない様子で近づいてきた。
「いつもそうだったよね。テスト勉強頑張っても勉強する範囲を間違えたり、大会のために必死で練習してたら大会当日に風邪引いちゃったり……そー君って頑張れば頑張るほど空振りするんだよね」
 呼吸は荒く、手の震えが止まらない。
「だからね―――――」
 彼女が近づく度に、足は自然と後ろに下がる。
「これもきっと無駄。いつもみたいに徒労に終わるよ」
 白い月の下。
 昏い空は深く、底が見えない湖の様。
 今宵はいつもよりも月が白かった。

 何故、こうなってしまったのだろう。



102:深月
08/01/14 23:02:16 pk/0UBFF
 投下終了。書き忘れていましたが、第一話です。

103:名無しさん@ピンキー
08/01/14 23:17:35 pnwDPEhI
>>102
愛する監禁大歓迎頑張ってGJ

104:名無しさん@ピンキー
08/01/15 00:02:37 FV3Jb57N
これは期待

105:深月
08/01/15 00:08:47 O+x5QWq8
 投下後改めて自分のスレを読んでみて驚愕。
 途中から投稿できてねえっ!?
 なにぶん今までスレは完全に傍観者側だったので恐らくこちらの不手際かと…
 感想を書いてくださった>>103氏と、>>104氏には悪いのですが再投下
 (本当にすみません><)

106:深月
08/01/15 00:18:19 QJH77RNn
 夢を見た。
 白く、孤独な少女が出てくる夢。
 そこが何処だったかは思い出せない。その子が誰だったかは思い出せない。
 けれど、確かに僕はその少女を知っているような気がした。


 夢に出てきた場所はどこか山の中。古い日本屋敷の最奥。
 僕は今は亡き祖父に連れられて、幾重にも連なる赤い鳥居を潜っていた。
どこまでも続く同じような風景に飽きていた僕は「どこに行くの?」と尋ねると、祖父は困ったような顔をして、「これからね、蒼佑と同い年の女の子と会ってもらうんだよ」
それだけでは意味が分からない、と僕は答えた。まるで祖父は僕に何かを、いや自分から本題を遠ざけるような、そんな態度だ。
「その子はね、お前の番いになるかもしれない大事な子なんだ」
「つがい、って何?」
「んー…分かりやすく言うと、お前のお嫁さん、かな?ああ、でも、絶対というわけではないんだ。何人もそういう“候補の子”がいてね、その中の一人から選ばれるんだ」
 その時の僕は、祖父が言っていたことがよく理解できなかった。まだ会ったことも、話をしたこともない女の子をなぜ嫁にしなくてはならないのか?
「もし、選ばれたら―――――」
だから僕は祖父に聞いた。
「断ったらいけないの?」
 暫くの沈黙が続いた後、祖父は今にも泣き出しそうな顔で、

「これはね、【新月】が決めたことなんだ」

 【新月】。それは昔から僕にとって大嫌いなものだった。
 父と母は【新月】のせいで死んだ、と祖母は言っていたし友達と遊べなくなるのも、決まって【新月】に呼び出されるからだ。
 だからきっとこれも、ロクでもないことだろう。ようやく辿り着いた離れの門を前にして、僕はそう確信していた。


107:深月
08/01/15 00:20:46 IKcIIjn4
<hr>

「ようやくあの子に会える」

「この刻をどれだけ待ち侘びただろう」

「この瞬間が来るのをどれだけ夢見ただろう」

「彼が来るというだけで、何事にも無関心だったボクの心は掻き乱される」

「彼の笑顔を思い出すだけで、氷のようなボクの体は熱くなる」

「彼のことを想うだけで、空っぽだった自分の中が満たされるような気がする……」

「でも……まだ足りない。想うだけでは足りない……」

「だから、アナタのことが、欲しい」

<hr>

 部屋に入った瞬間、彼女と目が合った。そして魅入られるように、彼女から目が離せなかった。
 白い、月。
それが彼女を目にした感想。
 光の届かない部屋の奥で、白い少女は幽閉されるように“存在”していた。
 だから、暗い部屋の奥に居た白い少女がまるで夜空に浮かぶ白い月のように思えたからだろう。
彼女の来た藍色の着物は闇に溶け、足元まである長い銀髪と色素を感じさせない白い肌、そしてその奥に光る朱い瞳。外国人とも違う異質な雰囲気に、自然と息を呑んだ。
それはまるで人形の様に。
全てを見透かすような朱の瞳はそれまで何も、誰も見てはいなかった。たった今入ってきた自分を除いては。
「―――」
彼女は何かを呟いた後、僕に向かって、笑った。
声は聞こえなかったけれど、何故か彼女が呟いたことがはっきりと理解できた。けれど、なぜ彼女が僕にあんなことを言ったのかは、理解できなかった。
彼女は言った。「お帰りなさい」、と。
まるでここが僕の帰る家だとでもいうように。


108:深月
08/01/15 00:23:49 IKcIIjn4
 再投下完了。今度こそ本当に投下完了です。
 ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。

109:名無しさん@ピンキー
08/01/15 00:36:41 /fsQVnjI

レスが誘い受けみたいに見れるから、止めた方がいい
次回に期待

110:名無しさん@ピンキー
08/01/15 05:15:18 3TWRvj5U
歴史上のヤンデレを発見した!

「フアナ女王」か「狂女フアナ」で調べてみてくれ!

あと聡史くたばれ!

111:名無しさん@ピンキー
08/01/15 08:38:08 JDfLoMJh
ヤンダムの人の記号が見えないのは携帯のせいかな?

112:名無しさん@ピンキー
08/01/15 12:16:30 xHt9gAsu
>>108
こういう雰囲気は好きだ。
いい依存の兆候も出てるし続き待ってる

113:名無しさん@ピンキー
08/01/15 17:49:04 c3YyXhk/
序盤マッタリの、姉一人、妹一人、クラスメイト一人がヒロインの話を、
中編くらいで書こうと思うんですが、投下していいですか?



114:名無しさん@ピンキー
08/01/15 18:23:15 VIOGqAAI
どうぞどうぞ

115:名無しさん@ピンキー
08/01/15 18:36:55 dl5lKStF
私は一向にかまわんっ!

116:デレ&ヤン
08/01/15 19:20:13 c3YyXhk/
>>113ですが投下します。

序盤ハイテンションなので(しかもまだ病んでないし)
嫌いな方注意願います。

117:デレ&ヤン
08/01/15 19:22:03 c3YyXhk/
俺の名前は裕(ゆう)。
高校二年の男子生徒だ。
家族構成は高3の京(みやこ)という姉が一人、中2の梢(こずえ)という妹が一人だ。

京姐(”みやこねぇ”と俺は呼んでいる)は黒髪ロングストレートで、家の外では性格もよく、
優しげな顔立ちと、175センチの長身とスレンダーな体つき(ただしバストも)で、
どこに出しても恥ずかしくないモテモテの姉だ。

梢の方は、150センチくらいと小柄で、やっぱり黒髪のツインテール。
京姐とは違い、口数は少なく、毒吐きで急所を抉るタイプである。しかも”すぐにキレる”子だ。
バストのほうは・・・ODAが必要かもしれない。
いつも眠そうな目がツボに入るのか、彼女もモテモテである。

両親はというと、母は五年前に他界し、父は俺が小学校に上がるころには、ほとんど家に寄り付かなくなっていた。


118:デレ&ヤン
08/01/15 19:23:33 c3YyXhk/
「朝ご飯できてますよ、裕君。おきて下さい」

京姐の微かな声に目を開けると、京姐の顔がアップで飛び込んでくる。
横向きに寝ていた俺は、丸めていた背をのばし、さらにそれをもう一度丸めることで、
柔道の寝技回避法「エビ」を繰り出し、京姐の突き出している唇を回避する。

ゴン!!

「ぐわぁっ!?」

突如、後頭部を襲う痛みに悶絶する俺。
ベッドは壁際に配置されており、「エビ」を繰り出せば確実にこうなるのだ。

「ふふ。裕君、梢ちゃんが朝ご飯作ってくれていますから、早く着替えてきてくださいね?」

京姐は楽しそうに笑うと、一階の居間に下りていった。

「京姐は俺に何か恨み・・むしろ怨みでもあるのかな?」

一人つぶやく俺。
何しろ、京姐が起こしにくるときは、いつもキスをしようとしてくるのだ。
で、俺はいつも「エビ」を使っては、頭を打ち付ける羽目になる。
それでも、重度のシスコン(ちなみに姉にも妹にも)の俺は、
キスを甘んじて受ける、という選択はなく、京姐を傷物にしないように、
後頭部を打ち付ける毎日なのだ。


119:デレ&ヤン
08/01/15 19:24:14 c3YyXhk/
一通りの準備をし、居間に下りると、お吸い物の木の芽の香りが鼻腔をくすぐる。
自慢じゃないが、俺は食べ物にはうるさく、匂いを嗅いだだけで、
ある程度の献立を予想することができる。

「おはよう、京姐、梢!!今日のメニューは、お吸い物と塩鮭、りんごのトルタ、あとラピュタパンだろう!!?」

俺は背景に稲妻を背負い、ピシャーン!!という効果音と共に、梢に指を突きつける。

「おはよう、そうだよ」

梢は、うるさいといわんばかりに言い捨て、食卓に着く。
・・・目もあわせてくれない。
俺はまたひとつ、心に傷を負った・・・。

ちなみにトルタはイタリアかぶれの京姐の分で、和食は俺の分、
ラピュタパンは梢のお気に入りである。・・・奇妙な取り合わせだ。

「「「いただきます」」」

家訓の皆でいただきますを済ませ、食事(京姐は食餌)に取り掛かる。
京姐は、宅配ピザLサイズはある、巨大トルタを恍惚とした表情で貪り食っている。
いつものことだが、あの体のどこに入っているんだろう?
・・まぁ気にしないでおこう。

そういえば梢は、トルタとラピュタパンと和食、三種類も用意するの大変だよなぁ。

「そうだ、梢。俺も梢と同じメニューでいいぞ?和食って手間かかるし、
三種類も用意するの大変だろう?」

梢は目をパチクリとさせ、急に、恐る恐る、といった風になった。

「でも・・兄は、それが・・好きなんだよね?」

「あ、あぁ、俺は和食党だからな」

慌てて答える俺。
すると梢は、ホッとしたような顔になり・・・次に、鬼の顔になった。

「だ、だったら、黙って食えぇー!!」

梢が、気合と共に腕を一線すると、なにやら粉末状のものが俺を襲う。

「は、ハックション!!・・・?・・・!!ギャー!!」

粉は、ラピュタパン用の黒胡椒だったのだ。
目はビリビリ、喉はカッカッ、鼻はダラダラだ。
読者諸兄には、擬音しか使えない俺の状況を理解してほしい。

「あっ!?兄!ゴメン!つい勢いで・・」

謝辞より水を!釈明より目薬を!

慌てている梢。恍惚のままの京姐。苦しむ俺。
まさに、地獄絵図と化した朝食だった。

120:デレ&ヤン
08/01/15 19:27:05 c3YyXhk/
京サイド


今朝の裕君は、いつにも増して可愛い寝顔でした。
あまりにも可愛いので、いつものようにキスしようとしたら、
やっぱり避けられてしまいました。
なんで避けるんでしょう?
でも頭を打って悶えている裕君は可愛いので、許してあげます。

あぁ、しかし、いけないいけないと思いつつも、
梢ちゃんのドルチェ作戦には逆らえません。
朝食の記憶はおいしいトルタのことばかりです。
・・・ちょっと反省。

気合を入れなおして泥棒退治をがんばります。


梢サイド


兄に、和食じゃなくてもいい、と言われ、
不覚にもうろたえてしまった。
せっかくの好物なんだから黙って食べてればいいのに・・・
でも胡椒はやりすぎたかなぁ?

でも、京姉さんは、ドルチェに夢中だったから、
「裕争奪戦朝の陣」は私の勝ちだね。

さて、争奪戦は家の中だけだから、
あとは協力だよ京姉さん。
高校の泥棒猫を兄に近づけないでよね。


投下終了

121:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:00:15 dBcAdoaS
いつも思うんだけど何で主人公はいつも周りが見えないやつばっかなんだろう。
普通に相手の意思を読んでコミュニケーションを取れる主人公のヤンデレ小説は
ないのかな?

122:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:15:57 WWCwQ9X1
>>120
GJ
姉妹可愛いよ姉妹。

123:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:50:26 /6+PPD/e
>>120
GJ!これからが楽しみだ

>>121
主人公が上手く立ち回るとヒロインが病みにくいからでは?

124:名無しさん@ピンキー
08/01/15 21:01:27 dl5lKStF
>>120
グッジョブ 次が待ち遠しいぜ

125:わたしを食べて、みたいな?
08/01/15 21:53:57 WPpTwP0j
「なあ、お前、彼女できたんだって?」
「あ? ああ、うん……」
「なんだよ、あんまり嬉しそうじゃないな?」
「いや……ちょっとね、困ったことがあって」
「困ったことって?」
「彼女さ……今は隠してるけど、手首のところに傷があってさ」
「うわ、なんだそれ、メンヘラってやつ?」
「いや……違うんだよ。リスカ女とかじゃないんだ。傷できたの、僕と付き合い始めてからだし」
「はぁ!? どういうこった、そりゃ」
「実は、何日か前に道を歩いているとき……」

「暑いねえ、瞬君」
「そうだね穂波……あー、なんか喉渇いたなー」
「え、大丈夫?」
「まあ、我慢できないほどではないんだけどね……」
「ダメだよ油断しちゃ! 脱水症状で倒れたらどうするの!?」
「ははは、そんな大袈裟な……」
「ああ、でもどうしよどうしよ、この辺自動販売機もないし……そうだ!」
「? どうしたの、カッターなんか取り出して」
「えいっ」

 スパッ! ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

「ギャーッ! 穂波の腕から間欠泉の如き熱き血潮がーっ!? な、なにやってんの君ーっ!?」
「えへへ……さ、飲んで瞬君。わたし健康には気を遣ってるから、きっとおいしいよ?」
「そういう問題じゃないよーっ! ちょ、救急車、救急車ーっ!?」
「あはは、大袈裟だねえ瞬君は」
「真っ青な顔して言っても全然説得力ないってば!」

「……ってな具合でさ」
「うわぁ……っつーかよく生きてたなそれ」
「本人は『えへ、あいのちからだよ瞬君』って言ってた」
「間違いではないんだろうが……はぁ、メンヘラより数段性質悪いなお前の彼女」
「まあ、そんなところが物凄く愛しいんだけどね」
「結局幸せなんじゃねえかよ!」
「今度肝臓食べさせてもらう約束を」
「話さなくていいよ怖いから!」

126:名無しさん@ピンキー
08/01/15 22:09:17 82Uw8w1a
>>120
GJ!
続きwktk

127:名無しさん@ピンキー
08/01/16 00:54:50 nH+RdVbX
最近スレの進行がクライマックスだなw
追い付くのも一苦労だぜ

皆GJ

128:名無しさん@ピンキー
08/01/16 01:07:44 lEFvRcLI
>>125これってただの気違いじゃん(´・ω・`)

129:名無しさん@ピンキー
08/01/16 03:36:08 ODXfJBE3
伊南屋さんの「いない君といる誰か」を今でも待ってます。

130:名無しさん@ピンキー
08/01/16 08:31:14 3246YMCB
絵をか

131:名無しさん@ピンキー
08/01/16 11:00:05 1JieWkOC
>>121
沃野とかは?
気持ちを分かっていて、最善を尽くそうとしたけど……


132:名無しさん@ピンキー
08/01/16 11:04:25 1JieWkOC
しまった……、ごめん
ヤンデレスレで嫉妬三角関係スレのことを話して、何してんだ自分


133:名無しさん@ピンキー
08/01/16 13:05:47 dJUB5Vzn
住人の多くは被ってるからいいんじゃね?


134:名無しさん@ピンキー
08/01/16 14:58:09 qyLdUxZV
だが断る。
被ってない住人もいるし、
時々他スレの事情を持ち込んで無用なトラブルを起こす輩もいる。
よそのことはそっちでやってくれ。

135:デレ&ヤン
08/01/16 21:49:49 gzK135GS
投下します。
軽いノリ嫌いな人はスルーしてください。

136:デレ&ヤン
08/01/16 21:52:17 gzK135GS
京姐と、梢と連れ立って家を出た。
三人とも一貫教育制の病出学園(やんでるがくえん)に通っているため、
一緒に登校している。

「三兄妹!!おっはよう!!」

通学路の半分くらいを過ぎたところで、
唐突に、大変さわやかな挨拶をかまされる。

挨拶をしてきたのは、
活発さをうかがわせる顔立ちに、ショートカットが似合う
160センチほどの身長の舞という名の少女だった。
ちなみに、俺のクラスメイトで、
ムードメイカーとしてかなりの人気を誇る。

「「おはようございます、舞さん」」

京姐と梢はハモリで挨拶するが、俺はそのまま通り過ぎようとする。
こいつの相手をすると、いつもろくな事にならないからだ。

137:デレ&ヤン
08/01/16 21:55:04 gzK135GS
「待ちたまえゆっちん!!僕との激しい情事のあとだから、
恥ずかしいのは解るが、挨拶くらいはするべきではないのかね!?」

舞はいきなり大声でとんでもないことを言い出す。
次の瞬間、マイシスターズから俺への視線が、冷凍光線に変わる。
さらに、通学路にいた男子生徒が殺気立って俺を睨む。
まずい。・・非常にまずい。

「俺と貴様が、いつ、どこで情事に及んだのだ!!?」

弁解のために舞に詰め寄る俺。
舞は頬を赤く染め、ものすごく恥ずかしそうに言った。

「・・昨日の深夜、僕の夢の中で」

「・・それは非現実だろうが・・・!!」

和らいだ殺気に俺は一息ついた。
舞はそんな俺の油断を見抜いたのか、
素早く、俺の手をとり、自分の胸に押し付けながら言った。

「そんなに興奮してぇ・・じゃあ・・いまから・・する?」

「えっ・・?あぅ・・」

いきなりの色仕掛けに、
俺の顔面が真っ赤になっていくのがわかる。
恥ずかしいことに!俺は!・・色仕掛けにメチャメチャ弱いのだ。
うろたえる俺を見て、舞はクスクス笑っている。
と、ついにマイシスターズが動いた!

「はい、そこまでね?」

瞬間移動で舞の背後に回りこんだ京姐が、舞の脳天にチョップを入れる。

「しねーーー」

いつの間にか舞の懐に潜り込んだ梢が、棒読みで危険な発言をしながら、
アッパーで舞のアゴを打ち上げる。

上下に揺さぶられる舞の脳。

「死んだか・・・?」

舞はピクリとも動かなくなった。

「兄、早く行こう」

「裕君。遅刻しますよ?」

マイシスターズは何事もなかったかのように歩き出した。
俺は軽く舞の冥福を祈り、姉妹のあとを追うのだった。

138:デレ&ヤン
08/01/16 21:56:17 gzK135GS
今日の分は終了

139:名無しさん@ピンキー
08/01/16 23:33:32 yi6OzT3v
舞があっけなさすぎるw

ま、この先があるのかな?

140:名無しさん@ピンキー
08/01/16 23:48:48 PpfgFJOx
いや、これくらいのソフトなのもたまにはいい

141:名無しさん@ピンキー
08/01/17 00:10:40 PZ1PUTeD
>>138
GJ!

俺はかなり楽しんでるクチだぜ

142:デレ&ヤン
08/01/17 23:39:09 DPQ73JRh
投下開始

ちなみに、今はデレ期だから物足りなくても、
見放さないでください。病み期までもう少しです。

143:デレ&ヤン
08/01/17 23:40:12 DPQ73JRh
俺が教室に着くと、そこには既に舞がいた。

「た、確かに置いて来たはず・・・!?」

びっくりする俺に舞が気づく。

「ゆっちん、置いて行くなんてひどくなぁい?」

「わ、悪かった・・って言うか、どうして俺より先に着いている・・?」

舞は首をかしげ人差し指を唇にあてる、「考え中」のポーズをとり、
3秒ほど悩む。

「ゆっちんの靴箱から有害図書を捨てるため、かな?」

「俺は動機ではなく手段を聞いているのだが・・ん?」

気付くと、クラス中の視線が俺に向けられている。

(なんでそこスルーなのよ)

そんなヒソヒソ話が聞こえてくる。

「なぁ舞、俺何か変なことしたのかな?」

「さぁね?ゆっちんらしくていいんじゃない?」

舞はそんなこと言いながらクスクスと笑っていた。

144:デレ&ヤン
08/01/17 23:40:57 DPQ73JRh
1、2限は体育だ。
選択制で人数が少ないので、男女混合で行われる。
今日の内容はサッカーで、男子の試合が終わり、
今から女子のフットサルの試合だ。

「ゆっちん!僕の活躍を見ていたまえ!そして惚れ直すのだ!」

「あ~活躍を見るのはいいが、直すもなにも、元から惚れてないぞ?」

って言うか大声でそういうことをいうなよ、
いつか男子の誰かに刺されそうで嫌だ。

ピーーーーー。
キックオフの笛と共にフォワードの舞が中央をドリブル突破する。
は、早い・・・!
惜しくもシュートは逸れてしまったが、それでもすごかった。

・・・
・・・・
・・・・・・

試合終了まで残りわずか。
舞は警戒した相手チームが、
フットサルクラブの人間を2枚付けてきたため、
最初以外は思うように動けないでいる。

試合経過の方はというと、0-0で終わりかけている。

おそらくこのコーナーキックが、
舞チームの最後のチャンスだろう。

ピッ!!

笛の合図で、キッカーがセンタリングをあげる。
すると、舞が味方からのセンタリングを受けるため強引に位置取りに出た。
もちろん相手ディフェンダーとかなりの競り合いになる。

「だぁ!!」

舞は、コートの外にまで聞こえる声と共に
高く飛び上がった。

バス!
ピ、ピーー!!

舞がヘディングで点を取るのと、
試合終了の笛はほとんど同時だった。

145:デレ&ヤン
08/01/17 23:44:00 DPQ73JRh
あれ?舞の歓声が聞こえないな?
大体こういうときは、大騒ぎする筈なんだが?

「舞!?」

舞は、グラウンドに仰向けになって、足を抱え込んでいた。
俺は咄嗟に駆け寄っていく。

「舞!大丈夫か!?」

舞はかなり痛そうな顔をしているし、
体育教官が足を軽く触るだけで、うめいている。

「着地のときに捻ったらしいな。裕君、悪いんだが
舞君を保健室に運んであげてくれないか?
私は、授業を終わらせないといかんから」

「解りました。舞、悪いな」

俺は舞を、いわゆるお姫様抱っこして保健室へ向かう。

146:デレ&ヤン
08/01/17 23:44:30 DPQ73JRh
「わわ、は、恥ずかしいよゆっちん!!
肩貸してくれればいいから!!」

「こっちのほうが早いし、足への負担も軽い。我慢してくれ」

「う、うん・・」

舞は急にしおらしくなる。

「あんまり張り切るから怪我するんだぞ?」

「ご、ごめんね?ゆっちん」

「まぁ、でも、その・・あれだ、が、がんばったな!!」

梢や京姐を褒めることはあっても、
舞を褒めることはあまりないために、
かなり恥ずかしい。

「っ!!あ、ありがとう・・・
・・・僕のフラグ立っちゃったかも?」

「えっ?」

「なんでもないよ!!」

舞も俺から褒められることは少ないために、
かなり恥ずかしいようだ。

俺達はなんか変な雰囲気になりながら
保健室にたどり着くのだった。

147:デレ&ヤン
08/01/17 23:46:14 DPQ73JRh
今日の分は終わりです。
全体としては中編より少し長くなるかも?

148:名無しさん@ピンキー
08/01/18 00:40:31 KU5IAqwz
以前『異色物語』って作品を書いていた者ですが、今更続きを書くとか赦されますかね?
いやま、理由が無かったわけでもなかったんですが、なんか場違いな気がして……
覚えてる人いないかなぁ……なんかごめんなさい。

149:名無しさん@ピンキー
08/01/18 00:51:18 s1JJoNU8
”覚醒進化”とか”一を食べて一に戻る”とかがキーワード?
の話ですよね?ぜひ続き読みたいです!!

150:名無しさん@ピンキー
08/01/18 02:07:52 oL6tt301
先ずは投下だ

151:129
08/01/18 05:57:31 cUPpaAtV
>>130
A-1ルートとBルートが未完結ッス

152:名無しさん@ピンキー
08/01/18 06:14:53 jTvfuMgd
>>151
絵か?伊南屋さんは絵師だったと思うが

153:名無しさん@ピンキー
08/01/18 10:09:50 eCyeFIoA
>>147
うむ。これはいいデレ。

154:名無しさん@ピンキー
08/01/18 14:37:31 cUPpaAtV
>>152
うぁっ間違えたorz
ちょっとヤマネに刺されてくる

155:名無しさん@ピンキー
08/01/18 20:22:39 19tgTHBt
ヤンデレな女の子と日常を過ごすのってどんな感じなんだろ……

156:名無しさん@ピンキー
08/01/18 20:24:37 XHS9dmhf
まあ、基地外と暮らしてた俺の経験ではノイローゼになるが精神が基地外サイドに引張られる

157:デレ&ヤン
08/01/18 20:32:45 BIOnKyMu

昼休み、俺は梢と一緒に弁当を広げていた。
弁当は、梢がお重で三人分学校に持ってきているため、
俺と京姐は、毎回、梢と一緒に食べないとメシにありつけないのだ。
以前、一人用弁当箱を新しく買ったら、「洗い物が増える」
との理由で焼却処分されてしまった。

「そういえば京姐は?」

「今日、月曜日」

「なるほど・・・」

病出学園で毎週月曜に行われるイベント、「血涙の月曜日」
まぁ、告白される→ゴメンナサイを京姐が繰り返すイベントのことだ。
なぜ月曜かというと、日曜にラブレターを書くやつが多いってだけだ。

「もてるって言うのも考えものだよなぁ」



158:名無しさん@ピンキー
08/01/18 20:33:45 /OPEUWE+
まあ、二股とかしなければ純粋でいい子なんじゃないか?

159:名無しさん@ピンキー
08/01/18 20:33:56 rgXeQoJ3
三次はヒス持ちか精神病か養って欲しい甘ったれのどれか
どの条件と引き替えにセックスするかという問題に過ぎない

160:デレ&ヤン
08/01/18 20:33:58 BIOnKyMu
そんなことを呟きながら、卵焼きを口に運ぶ。

「む、これは?」

絶妙な歯ごたえ!甘さ加減!
何より、飲み込んだあとに残る微かなブランデーの香り!
う、うまい!!

「寿司屋のヤマイモと鱧のすり身のテクと、
洋酒の使い方の折衷がなんともいえない・・!!腕を上げたな!」

俺は梢の頭をワシャワシャと撫でる。
梢はすぐに首を傾けることで俺の手を回避し、
手櫛でクシャクシャになった髪を直す。
姉さん・・・俺、妹にウザがられてます(泣)

「兄、・・これも・・」

ショックを受けていた俺の前に、
恐る恐る、梢がカツを差し出してくる。
あれ?別にウザがられてないのかな?
それとも何か、毒でも入っているのか・・?
俺はとりあえずカツにかじり付く。

「な、何てカツだ・・!!」

肉は豚ではなく牛!しかも薄い牛肉と、
癖の強いヤギのチーズを層にして、小麦粉を使わず、
粉チーズとパン粉をあわせた衣で包んである!
俗にいう”ミラノ風カツレツ”のアレンジだ!
俺の好みを完璧に突いている。
妹でなければプロポーズしている所だ。

「う、うますぎる・・・!!嫁に来てくれ・・・!!」

って言うかプロポーズしてるよ俺。
まぁ、冗談で済むからいいか。

「ほ、本当・・・?」(”嫁に来てくれ”が)

「本当だ!!」(”うますぎる”が)

俺はそういってまた梢の頭をワシャワシャと撫でた。
梢は顔を真っ赤にしてうつむいていたが、
今度は抵抗しなかった。

161:デレ&ヤン
08/01/18 20:35:05 BIOnKyMu
帰り道の一幕

急に委員会の仕事が入った梢を残し、
俺は京姐と家路についていた。
結局昼を食べ損なった京姐はヘロヘロのようだ。
これも、血涙の月曜日のせいなんだろうな

「なぁ、京姐」

「ん~?なぁに~?」

「告白、とかさ、あんまり迷惑だったら言ってくれよ。
俺、何か作戦考えるからさ。今日だって、
結局ご飯食べられなかっただろ?」

京姐は、ちょっと驚いた顔をした後に笑顔になった。

「あら珍しい。心配してくれてるのかしら?」

「べ、別に」

俺はなんだか恥ずかしくなり、ぶっきらぼうになってしまう。
普段しないことをするのは慣れないな。

「大丈夫よ♪それより、お腹すいたなぁ~」

京姐が俺に上目遣いに言う。
暗に何か作ってくれ、と言っているらしい。

「まかせろって!」

俺は、普段は梢と京姐がやらせてくれないから、
家事をしないだけで、主夫を名乗れるくらいの家事スキルを持っている。

「じゃあスーパー寄ってから帰ろう!」

俺達は寄り道することにした。

162:デレ&ヤン
08/01/18 20:35:50 BIOnKyMu
スーパーの一番奥、生鮮食品コーナー。
俺は、今日の献立に頭を悩ませていた。

「京姐、肉と魚どっちがいい?」

「裕君が作ってくれるなら、何でも♪」

むぅ、ならばイワシが良さそうだから、
トマトソースで仕立てようか・・

「ねぇ、裕君?」

京姐はいいながら、
イワシとにらめっこしている俺の腕に、自分の腕を絡めてくる。

「わわ、な、なに?」

かなり慌てる俺。

「こうしてると、私達学生夫婦みたいだよね?」

照れくさそうに言う京姐。

「な、何言ってんだよ京姐」

「冗談っ!早く買い物終わらせようか?
私、お腹空きすぎで死にそうなの~」

京姐はそう言ってレジへと向かっていった。


163:デレ&ヤン
08/01/18 20:36:35 BIOnKyMu
今日の分は終わりです

164:名無しさん@ピンキー
08/01/18 21:38:34 i2P/D07e
>>163
主人公無意識にフラグ立ててるなあw
意識されないってちょっと梢カワイソス

165:名無しさん@ピンキー
08/01/19 00:39:38 amvSYpQN
>>163
じれったいから一気に投下してwwwww

166:名無しさん@ピンキー
08/01/19 00:42:48 2p2r3GNH
ここでは死亡フラグに等しいが。一人が病むのか、皆が病むのかそれが問題だ。
しかし…ここの住人は三次に対して異様に冷徹だな。何ぞ、童貞には分からない境地でもあるのだろうか。

167:名無しさん@ピンキー
08/01/19 06:31:21 q6ZhXnmH


168:名無しさん@ピンキー
08/01/19 08:16:47 jOaeJmCi
>>166
俺の知る限り、エロパロ板と角煮の住人はリアルの話題に対してとても冷たい反応をする。

あれだ。リアルツンデレが可愛くなかったりうざったく感じたりするのと同じようなもの。
リアルヤンデレも本当に凶行に走ったら犯罪者にしかならないだろ。
可愛く感じるラインは、男と仲のいい女友達にやきもちを妬くぐらいじゃないか? 


169:名無しさん@ピンキー
08/01/19 08:53:43 jI06MJPf
僕っ娘とか惨事でみてると殺意しか沸かないもんな。

と、書き込もうとしたら僕っ娘ヤンデレという電波を受信した。

170:名無しさん@ピンキー
08/01/19 10:42:07 hLUYV7Pk
>>137
なんか舞は
亜沙先輩みたいでいいなあw
空鍋を想像してしまうw

171:名無しさん@ピンキー
08/01/19 15:53:47 41wzIhE0
>>169
ボクっ娘は三次だとなー
二人でいるのは恥ずかしい

二次ならヤンデレでも可愛くね?

172:名無しさん@ピンキー
08/01/19 17:53:26 msqn9l87
ヤンデレなら惨事でも

173:デレ&ヤン
08/01/19 22:18:54 ulkKILrz
次の日の夕食。

「お、今日は京姐のたらこパスタか」

京姐はパスタ類が特に得意だ。
もちろん市販のペーストなど使わない。
フライパンにオリーブオイルを多めにしき、
刻んだ長ネギとパセリを炒める。
そこに、オーブントースターで炙ったたらこをブツ切にしていれて、
茹でたパスタにサッと絡めれば完成だ。
たらこは食べる人の好みに合わせて火を入れるべし。
読者諸兄もお試しあれ。

「うむ、絶妙の火加減!うまい!」

「おだてても何も出ませんよ、裕君」

京姐はうれしそうに笑う。
そういえば、舞の家が持ってる別荘に
悪友連中と遊びに行く計画立てたんだっけ。
二人に伝えなくちゃ。

「あ、そうだ。俺、週末・・・金曜の夜から、月曜の夜まで、泊まりで遊びに行くから」

月曜日は創立記念で休みなのだ。


「そ、そうなの~それで・・」

「ど、どこに、誰と行くの、兄?」

なんだか、二人ともすごく慌てている。

「内田とか川中とかと、舞の別荘に」

グニャリ!
あ、二人がフォーク握りつぶした。
・・・確かこのフォーク、チタンだぞ?

「あら、ちょっと代えのフォーク取ってくるわね」

「・・・ジュース取ってくる」

キッチンに消えるマイシスターズ。

「舞が別荘持ってるって知って驚いたのかな?」

俺はとりあえずパスタにかぶりつくことにした。

174:デレ&ヤン
08/01/19 22:19:53 ulkKILrz
短くて申し訳ないんですが、今日はこれだけです

175:名無しさん@ピンキー
08/01/19 22:56:32 bO2neGiW
>>174
ちょw
GJでwktkしてきたんだけど、さすがに短すぎるw
無理に毎日投下しなくてもいいと思われ

176:名無しさん@ピンキー
08/01/19 23:27:13 qqN6mW2D
頑張りすぎだ
グッジョブお疲れ

177:名無しさん@ピンキー
08/01/20 00:14:35 FrdBK8N7
gj

無理し過ぎんなよ

178:名無しさん@ピンキー
08/01/20 01:00:43 2w7H1Eos
数日かけて長い文章創って投下でもいいからwww

GJです

179:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo
08/01/20 10:21:01 Czr6Onq7
投下します。
かなこルート、24話です。

180:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo
08/01/20 10:22:00 Czr6Onq7
第二十四話~逃亡~

「さあ、雄志様。参りましょう」
 かなこさんが一歩詰めてきて、手を差し出した。
 手を取ってくれ、ということか?
「どこ、に……」
「もう一度、共に私の屋敷に来てくださいませ。そこに、殺されるにふさわしい場所を用意してありますわ」
 自分の家に殺される場所の用意を済ませてから、ここにやってきたのか?
 死の覚悟は既に済ませているということなんだろう。でも、どうしてかなこさんは普段と変わらないんだ。
 少しも恐れを見せず、堂々として、澄ました顔でいられるなんて。
 かなこさんは死すら恐れないというのか? 
 俺を―たった今殺してくれと自ら頼んだ人間を、自分の死地へと連れて行こうとしている。
 死ぬことを恐れるどころか、望んでさえいる。
 さっき言っていたのは、もちろん俺の真の望みじゃない。
 きっと自分の望みを、俺の望みへと投影しているんだ。

「……死に急いじゃ駄目です。死ぬってことは、そこで、もう……」
「もちろん、理解しております。既にわたくしは一度死を迎え、それを越えているのですから」
 そこで、かなこさんが物憂げな表情になった。
「……胸を貫かれる瞬間に脳裏に浮かんだのは、雄志様のお顔でした。
 常に傍に寄り添い、共に日々を過ごしてきた、大切なお方。
 これでもう、雄志様と顔を向き合わせて喋ることも、不意に困らせてしまうこともなくなってしまう。
 そう思うと無性に寂しくなり、最期にもう一度お話ししたい、と願いました。
 体中から力が抜け、目を開けることすら精一杯になった頃、雄志様はやってきてくださいました。
 あのまま、一言も告げることなく離ればなれにならず、本当に、本当に良かったですわ。
 おかげで、こうして出会うことができ、そして望みに応えていただけたのですから」
 手を差し出したままのかなこさんが近づいてきた。
「さあ、手をお取りくださいまし。そして、あなた様の望みを達してくださいまし」
 この人は全てわかっているんだ。死の意味も、自分自身の望むことも。
 ただ、俺自身に関することだけはわかっていない。

「俺は、かなこさんを殺しません。
 誰かを殺したいなんて、これっぽっちも望んでなんかいませんよ。
 俺が、かなこさんを好きだったとしても」
 目を泳がせて華を見る。
 俺の言葉に大きな反応をせず、かなこさんを見ているだけだった。
 そのことに安堵して、続きの言葉を言う。
「好きだったとしても、殺したいだなんて絶対に思いません。
 誰が、好きな人を殺したいなんて願うっていうんです」
「わたくしにはわかります、雄志様のお気持ちが」
 ……まだそんなことを言うのか。
「少しばかり話が離れますが―わたくし、ふと雄志様のお命を奪いたいと思うときがあるのでございます。
 憎いから、ではありません。大事にされているお命を奪って全てを手中に収めたい、という考えとも少々違います。
 それ以外に、それ以上に想いを伝える方法が浮かばず、また、雄志様の想いを知る方法も考えに浮かばないのです。
 愛していると幾多の言い回しで伝える、体を重ね合わせて全てを委ねる、というだけでは足りないのです。
 抱きしめて、そのまま一つに溶け合う想像をしていると、最後には体を腕で潰してしまいます。
 その時は結果として雄志様を殺してしまうであろう―ということでございます。おわかりになりましたか?」
「…………なんとなくは」
「その想像の、わたくしと雄志様の立場を交換することで、お気持ちが理解できましたわ。
 愛するがゆえに、雄志様はわたくしを殺したいと望んだのだ、と」



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