▼ ガンスリンガー・ガールでエロパロ ▼at EROPARO
▼ ガンスリンガー・ガールでエロパロ ▼ - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
08/02/24 23:42:05 YZPnqnJ1
>>47
冒頭は姑獲鳥の夏のパロディですね?
いい感じです。期待してます。

51:公社の十日物語
08/02/26 18:28:27 rRCT9vbl
>>46-48
わーいっ!作家仲間ができたよ。ここを見ている人は、少ないかもしれないけど、
ガンスリSSの輪を広げていきましょう!


52:名無しさん@ピンキー
08/03/02 20:38:49 Nk3pFh50
保守あげ
無断転載倉庫が一年以上止まってるな…。

53:名無しさん@ピンキー
08/03/02 21:34:55 QeWfb5kX
>>48の続き投下します。細切れでスマソ。
えっと、念のため、百合ではないです。

>>50
姑獲鳥の夏は好きです。
直前に読んで補正をかけてくれた清涼院流水御大には感謝しきれません。

54:血の味
08/03/02 21:35:40 QeWfb5kX
 観客の注意が一斉にステージに向かう。
 その瞬間、撃つ。
 1,2,3発。
 鮮血があがる。
 腕に響く振動と音。再び照明が消える。
 落ちる。
 軽やかに。
 ひらひらと。
 闇の中へ落ちていく。
 遅れて悲鳴。
 ステージの上に立つ。
 客席から向かってくる者。
 左から2、右から1。
 場内のざわめき。
 叫喚。
 迷っている暇はない。
 左と決め、舞台のセットの方へジャンプ。
 3m程の高さでそれを踏み台にしてターン。
 相手の後ろへ回り込む。
 硬直する気配。
 スキンヘッドの背広の男は私の動きに追いつかず、ようやく振り返ろうとしているとこ
ろだった。
 遅い。
 撃つ!
 同時にもう1人の方へ駆け出しながら、正確に頭を打ち抜いたのを確認。
 先程の男より若い。
 そいつは遮蔽物を探してステージの奥へ走りながら威嚇射撃をした。当たらない。
 もう射程距離内に距離を詰める。
 さようなら。
 1,2,3。
 儚い光が綺麗。
 警備員が駆け込んでくる物音。
 私は舞台袖へ入り窓を蹴破って飛び降りる。

55:血の味
08/03/02 21:36:59 QeWfb5kX
 大げさな音。
 外気の匂い。湿った土の匂い。
 曇って澱んだ天気。
 落ちていく。
 あの木も、あのビルも、あの自動車も。
 生まれてから死ぬまで、落ちっぱなしの奴ばかり。
 数時間ぶりの外は、上着がないから寒かった。


 着地。そのまま目の前に止まっているヒルシャーさんのバイクに飛び乗る。
 滑らかにギアアップし、フル・スロットル。
 寒い!
 こんなに寒いなんて思わなかった。
 仮面を外しポケットへ突っ込む。
 風を避けるように、彼の体に密着する。
「首尾は?」
「ターゲットは処理しましたが、SPを1人逃しました」
「あれがそうか」
 シグザウェルのカートリッジを交換しながら後方を確認する。
 猛スピードで追いかけてくるBMW。しつこい奴。
 けどもう駄目だ。
 リコのポイントまでもうすぐ。
 逃げていれば助かったのに。
 罠の危険を予測できなかったのか。
 それとも、逃げるわけにはいかなかったのか。
 私は、相手に殺意を抱くということがない。
 かわりに、戦う時、誰よりも深くつながっていると感じる。
 あの人も私もここでしか生きていく術がない。
 どこかに相手がいて、その人も銃を握っている。
 どちらか一方しか残れない。どちらかは生きていられなくなる。
 相手も必死になっている。
 必死に見て、必死に考えている。
 そのうち思う。
 この際だから、どうせなら楽しもう。
 相手と話して、相手を尊敬して、握手をする。
 手をつないでいると、相手の気持ちや動きも自然と分かってくる。

56:血の味
08/03/02 21:37:57 QeWfb5kX
 そうなんだ。
 あの人も、付き合ってみればいい人なんだ。
 ここでなら、それがわかる。
 どんより曇った空。路上は障害物だらけ。がたがた揺れて気持ち悪い。
 右にもいけない。左にもいけない。真っ直ぐにさえ、そのままではいけない。
 まるでこの世の映し鏡。
 その中でなんてクリアで、真っ直ぐな行為なんだろう。
 誰も助けてくれない。
 誰も褒めてくれない。
 1人だけ。
 1人で戦える者だけが、ここへやってくる。
 だから、あるのは尊敬。
 一筋の、その一瞬の光の中に、
人としての尊厳を見る。
 あらゆる希望がある。

 教会の尖塔が見えてくる。そこにリコがいる。
 その時、助手席から何かが顔を出す。
 ……MP7!
 炸裂するような音と共に銃口が火を噴き、路上で赤い火花がロールしながら迫る。
 とっさにヒルシャーさんの身体を持ち上げる。
 後輪に被弾したのは同時。
 真上へ思いっきり跳躍。
 きらりと何かが光る。
 息を止める。
 轟音。
 空気が震えて、体にびりびりと衝撃が走る。私は思わず顔をしかめた。見る見るうちに、
彼らの車が蜂の巣となっていく。
 やった?
 いや、運転手だけが満身創痍ながらもドアを開けて飛び出す。気付かれたのか。
 私は頂点に達したところでトルク・ターン。
 オートバイから炎が上がるのが見える。
 次にボロボロになった車の影。
 そしてこちらに気付き一瞬硬直する男。
 相手を上に見るようにしながら、目を細めて撃つ。
 血しぶき。

57:血の味
08/03/02 21:39:44 QeWfb5kX
 男はゆっくり背中から倒れていく。
 軽く目を閉じる。それ位のことができるまでには大人になったということだろう。
 空が遠ざかる。
 薄着でバイクに乗るのは2度と御免だ。
 地面が近くなり、景色の流れが加速する。
 私は、彼を傷つけないように衝撃に備える。
 大切な人と落ちていくには、いまいちな空だなと思いながら。



 アンジェリカが死んだのはその翌日のことだった。
 私達はモニカさんに呼ばれ、そう聞かされた。
 義体化の代償。
 それを一番早く迎えたのが彼女だった。
 私達は部屋に戻ってきて、気付けば薄暮れ時になっていた。
「新しい2期生はいつくるのかしらね」
 キッチンでコーヒーを入れているクラエスが言う。微かな音が時々聞こえる。
「わからないけど、少し忙しくなるのは間違いないね」
 それはとても正直な感想だった。突然の転勤、くらいだろうか。あるいは、ノートのペ
ージを簡単に破り捨てるような。
 思うのは、しばらく作戦の負担が重くなるなぁということ。それが一番大きい。
 私は彼女が淹れたコーヒーを飲んだ。
 とても温かく、それに十分すぎるほど甘い。
 いつもは彼女が自分のために作っている味。
 薬の副作用、というわけではないだろう。
 クラエスは茶色のブーツを翻すように足を組んで、窓辺に腰掛けていた。
「今日、大人しいわね」
「……そう?」
「思うところでもあった?」
 言葉にできることなんて、いつも、どんな場合だって、ほとんどない。
 話したくないこと、話せないことが多すぎて、体の一番下に埋もれてしまっている。
 温かくて濁ったコーヒー。複雑な味だと思った。複雑だから、こんなに濁っているのか。
「アンジェリカが死んだのに全然悲しくないことに、戸惑っててね。クラエスはどう?悲
しい?」
 目を細め、クラエスは顎を上げる。二秒くらい目を瞑った。そしてまた私を見る。
「不思議な感じはするけど、それだけ。あなたと同じ」

58:血の味
08/03/02 21:40:41 QeWfb5kX
 悲しいと言わなかったのは彼女も義体だからだろうか。悲しいと言うことは容易だし、
嘘でもいいからそうするべきかもしれない。現に、今日は公社全体、どことなく無口だっ
た。まるで私達に気を使っているような。それが彼らの流儀。私達はあまり気にしていな
いのに、とおかしな映画を見ている気分。
 けれど、残念だけど、私は意味の無いこと、確信のもてないことには手を出さないよう
にしている。
 そうでなければ、自分を信じられない。
 私も彼女も同じだ。その日1回だけ、自分が勝てると信じられればいい。その繰り返し。
もしこの約束を破ったら、死にゆく時に、自分を祝福できない気がした。
「理由が分からないけど、苛立ちを感じるの。アンジェは可哀想だったの?可哀想って何?
あー!分からない」盛大にため息を漏らす。
「優しいのね、トリエラ」
「優しくないよ」
 ううん、と彼女は首を振る。
「私より優しいわ」
「どういう意味?」
「私には、そこまで好きな人なんて、いないかも」彼女は顔をしかめた。
「好きになんて、きっと、私、なれない。嫌いな人の方が多いし。嫌いなことの方が多いし」
「そんな訳ない。クラエスだって」
「ほら、」
 彼女が体を起こして顔を寄せる。唇が触れ合って、腕が背中に回る。
「どうしてそんなに優しいの?あなた達は皆」
 寂しそうな笑顔で片目を瞑って見せる。
 私は何か言おうとしたけど、言葉が出なかった。
 その時、電話が鳴った。
 クラエスが取る。少し話して、受話器を置く。
「ヒルシャーさん。部屋に来てほしいって」
 もう、いつもの、冷静な声に戻っていた。



 ここへ来るのはいつ以来だろう。
 思い出せない。
 とにかくすごく久しぶりだ。
 白い壁に囲まれたドアの前に立つ。
 ノック。
「どうぞ」
 ヒルシャーさんの声がして、私は中に入った。

59:名無しさん@ピンキー
08/03/04 01:50:34 3d3Ei7pk
これはよいものだ

60:名無しさん@ピンキー
08/03/04 23:54:24 huZr6NAA
おお、ハードな展開w
そしてお楽しみはこれから?(笑)
期待しておりますww

61:名無しさん@ピンキー
08/03/05 00:19:53 Em2J7SbA
エロパロ板にノーエロSS投下するのって、ちょっと気がひけるんだよなあ。
フラグクラッシャーな担当官のお陰でちっとも進展しないんだよママン(笑)
ヘタレ父とツンデレ娘の親子カップルな話なんて、ここに投下していいのかね??
・・・ビミョーだよなあ。



62:名無しさん@ピンキー
08/03/05 03:30:31 K4lFLXHe
俺はおk かな?

63:名無しさん@ピンキー
08/03/05 14:30:48 a+mGJ/5y
>>61
まずは投下してくりゃれ

64:【熱】
08/03/06 00:31:13 CoW9Bek0
>>62 63 サンクスですw SS投下しま~す。微エロ?(笑)BGMはE.サティのグノシェンヌ第1番あたりで。

【熱】


「ヒルシャーさん……」
 ためらいがちに少女は男の顔を見やる。
「私……こういうの、初めてなんです。過去には経験があるのかも知れませんが、少なくとも、今ある記憶の中では……したことがないんです」
「不安なのか? 大丈夫だ。怖がらないで僕に身体をあずけていなさい」
「でも……」
「『でも』はなしだトリエラ。ほら、もう身体もこんなに熱いじゃないか」
 火照った肌に触れられて、少女はぴくりと身体をふるわせた。常よりも浅い呼吸に薄い胸を上下させながら、視界に入ったそれに本能的な恐怖を覚え身をすくませる。
「けど……やあっ! ヒルシャーさん、やっぱりダメです! そんな長いの……奥までなんて、無理です!」
 いやいやするように身をよじる少女を、だが男は確固たる意思をもって押さえ付ける。
「力を抜いていなさい。大丈夫だ、痛いのは最初だけだから」
「でも……、や、やだ、だめ、入れないで……っ」
「トリエラ」
 怯えを含んだ声音で逃げをうつ少女を、なだめるように男はその名を呼ぶ。
「痛ッ----!」
 ガードのしようのない身体の内側の痛みに上げた、少女の声は悲鳴に近い。予想していた以上の痛がりように、ヒルシャーは気遣わしげに声をかける。
「……トリエラ、大丈夫か?」
 痛みの衝撃にやや放心状態となったトリエラは男の胸元に頭をあずけると、いささかうらみがましい視線を向ける。
「……痛かったです」
「君の身体は痛みには強いはずだろう」
「いくら義体でも、こんな痛みに一々痛覚を遮断するようにはできてません」
「……そうか。すまない」
 不機嫌に答える少女に、背後に立った担当官は困ったような表情を見せた。


65:公社の十日物語
08/03/06 06:37:52 p10kPCq8
>>64
きゃぁーヒルシャーさんのえっちぃ!
つづきもっと!

66:名無しさん@ピンキー
08/03/06 17:11:04 9ontBbrI
>>65
志村ーー名前ーー

67:【熱】
08/03/06 22:26:12 e1t/FNxN
あり? 後半が着地してないな。
≫65
うちのフラグクラッシャーに期待はしない方が良いと思われ(笑)

68:【熱】
08/03/06 22:28:35 e1t/FNxN


「----よし、これで15分もすれば検査結果が出る。ヒルシャー、もうお嬢ちゃんを離して良いぞ」
 インフルエンザの簡易検査キットを片手に、医師が男に声をかけた。
「ありがとうございました、ドットーレ(ドクター)・ドナート」
「まさか一番の優等生がここまで抵抗するとは思わなかったからな」
 それはそうだろう。年頃の少女が人前で、鼻孔に綿棒を突っ込まれるなんて検査はまず受けたがるまい。
「ま、担当官なら力一杯振りほどかれることもないだろうしな。助かったぞ」
珍しくも熱を出したトリエラは、季節が季節だけにインフルエンザの検査をした方が良いと、担当官に強引に医務室へ引っ張られてきたのだ。
 検査内容の説明を受けた途端、トリエラは金のツインテールをぶんぶんと左右に振って抵抗の意思を示した。
 麻酔が効いた状態での切開検査などは受けなれているが、ダイレクトに痛みが予想される----しかも乙女心としては絶対に避けて通りたい情景の検査方法だ。いかに医療行為とは言え、こればかりは是が非でもご辞退申し上げたい状況であった。
 しかし結局は抵抗空しく医師らに押し切られ、ヒルシャーに後ろから押さえ付けられて検査を強要されることとなったのである。


69:【熱】
08/03/06 22:40:27 B9hj/WzJ
あれれ? なぜオチが着地せんの??

70:名無しさん@ピンキー
08/03/06 22:43:40 Q9t5cYOn
たぶん、一行目に空改行がはいってるからじゃね?
AA連投対策でそんな風になってたはず。

「.」(半角ピリオド)なり「 」(スペース)なりいれてごまかせば上手くいく事も。
ダメなら空行演出を諦めて、一行目から文字を入れる。

71:【熱】
08/03/06 22:45:35 B9hj/WzJ
≫70 了解です! ありがとうございます~~


まだつーんとする鼻を押さえて涙をこらえながら、少女は医師に発案する。
「ドットーレ・ドナート、私にインフルエンザの発症が疑われるなら、常に行動を共にしている担当官も検査を受けた方が良いと思います」
「トリエラ?」
「ふむ、それもそうだな」
「え? いや、ドットーレ、私は特に症状は出ていませんし」
「まあ、一応念のためだ。付き合っておけ、ヒルシャー」
「は? いや、しかしあまりに早期の検査は意味がないのでは……」
「はい! 座ってください、ヒルシャーさん」
「トリエラ??」
 疑問符を噴出させているヒルシャーを、トリエラがたたみかけるようにして椅子に座らせる。
「私が押さえていて差し上げますから、どうぞ、その長~い綿棒を鼻の穴にぐぐ~~っっと突っ込んで、奥の粘膜を、ぐりっと! 容赦なく! こそぎ取ってくださいっ」
「ちょっと待ってくださ----」 
 えらく痛そうに検査内容を説明され、さすがにヒルシャーが抵抗の素振りを見せるが、背後ではトリエラが強化された義体の筋力を遺憾なく発揮している。
「~~~~ッ!!」

----ふん。女の子に恥をかかせるからよ。

 面白がって必要以上に手荒く検査をされた担当官が涙目になっているのを見て、ようやく溜飲を下げたトリエラであった。


《だす えんで》


72:【熱】
08/03/06 22:55:16 pDcHCzYt
≫70 無事投下できました。ありがとうございました!
……しかし期待を裏切るこんなSS。
しょせんうちの親子はこんなもの~~(泣笑)

73:公社の十日物語
08/03/06 23:35:04 p10kPCq8
>>68
プンプン!!なんですとー
エロはどこ?どこなのー

エロのないSSなんて、クリープのないコーヒーみたいだ

「やってくれたな…」(ジョゼさん)



74:【熱】
08/03/06 23:59:07 Vz+pp7/z
≫73 ああっ やっぱり怒られた(笑)


75:【熱】
08/03/07 00:31:35 GFFLR+8d
こっちにもSS板ができてるみたいですね。

社会福祉公社技術部さくら板支所
スレリンク(sakura板)

んじゃ、ノーエロはこっちに投下することにしやう。
エロは修行しなおしてきま~す(笑)

76:名無しさん@ピンキー
08/03/07 07:40:19 qrNbYuTO
安価は >>75
 こうだぜ!

77:【熱】
08/03/07 15:27:31 Ps37OoGW
>>76
あ、こうか。ありがとうございますw
それではエロ修行の旅に出てまいります~~
……帰ってこられるのかな(苦笑)

78:名無しさん@ピンキー
08/03/08 08:34:31 MXayXyjV
アンジェって、末期には、公社に来る以前のことをいろいろ思い出してたじゃん。
エッタも末期には一晩中暴○されてたこととか思い出すのだろうか・・・。
そんでジョゼさんに拒絶反応を示してバッドエンドとか。
流れ切ってスマン

79:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:55:35 tmtKTO27
>>58の続きです。
続きもありますがエロはないし、充分に書く時間もないのでここまでです。お目汚し失礼。

80:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:56:02 tmtKTO27
 彼はベッド上にいた。煙草の匂いがこもっている。
「吸うか?」
 テーブルの上の煙草を持ち上げる。
 私は意味も分からずそれを手に取って、それから急いで首を振った。この人は煙草を吸
っただろうか。少なくとも私は見たことがない。
 彼は既にくわえた煙草に火をつけると、足を組みなおした。
「アンジェリカのことは残念だ」
 残念なのだろうか?でもそれは口にしない。
「そうですね」
「トリエラ」
「はい」
「君は彼女の面倒をよく見ていたそうだが」
「はい」
 天井に向けて煙を吐く。ライトに照らされて攪拌していく様子が見えた。
「生前の彼女は幸せだったか?」
 目が丸くなる。そんなの分からない。ヒルシャーさんはなんのためにこんな質問をして
いるのだろう。
「幸せというものがどういうものか分かりませんし、……何より彼女のことは何一つ分か
りません」
「そうだな」ヒルシャーさんはくすっと笑った。
「穏やかな顔をしていたよ」
 いつもより疲れた声。
「人を殺しているなんて思えないくらい、穏やかな顔だった」
「あの子はそういう子でした」
「聞いてもいいか?」
「何でしょう」
「トリエラにとって、命とはなんだ?」
 笑い出しそうになる。今日のヒルシャーさんはどこか変だ。
「どういう意味でしょう?」
「ずっと子供でいるということが、私には想像できないんだ」
「私には普通に歳を取る方が想像できません」
「ああ……。でも、たとえば義体じゃなくなる薬があったとしたらどうだ?」
「どう、とは?」
「君ならそれを飲むかい?義体じゃなくなるために」
「飲みません」
「何故?」
「あなたと一緒にいたいから」

81:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:56:36 tmtKTO27
 彼は私を見据えたまま。一度小さく頷く。
「ふふ」
 突然の笑い声。
「どこまでお人よしなんだ、お前は?」
「え?」
 長く煙が吐き出される。
「俺はお前が思っているような人間じゃない」
 頭を揺れる錯覚。
 いつもの彼とは違う感覚。
 真ん中に立っていたポールが抜けて、どこにいたらいいのか分からなくなるような。
「どういう意味でしょう?」
「話は終わった。もう戻れ」
 言葉が出ない。
「ヒルシャーさん」
「命令だ。戻れ」
 喉まで出かかった何かは煙のように拡散してしまった。
 彼は窓から外を眺めるようにして止まる。ドアが閉まるまで、こちらを見ることはなか
った。
 何かが生まれ。
 何かが壊れて。
 何かが諦めた。
 外に出る。濃密だった空気は湿った外気に掻き消された。


 ふらふらしながら外まで出てきて、クラエスの花壇に腰掛ける。
 忘れたまま持ってきてしまった煙草とライターに気付く。火を点けて吸う。
「…!っ!ごほっ!!」
 美味いとか不味いとかの問題じゃない。吸えない。
 仕方ないので右手に火の点いた煙草を持ったまま、上がっていく煙を見ていた。
 煙の流れる方向で風向きが分かる。それくらい、無風の空だった。
 どうして、こんなところで私はのんびりと煙草なんか吸っているのだろう。
 だけど、私がこうしていたところで、誰かが生活に困るわけでもない。
 つまりはそういうことで。
 人の役に立つことなんてない。
 私達の仕事は、そもそもそういうことでしかないのだ。
 ちょうどこの煙のように、どちらかというと、いらないもの。嫌われ者だ。

82:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:57:27 tmtKTO27
 ああ、
 もっと他にやり様はあるのではないか?
 煙は消え行く最後に自由になる。
 自由。
 すごく魅力的な言葉だ。
 けれど、それなら何故、さっきの彼の質問を否定したのだろう。
 そこまでして、どうして戦おうとする?
 愛情?
 いや。
 別に愛情なんかなくたって戦える。
 愛情とは関係なしに、命は投げ出せる。現に戦って死んだ者たちは皆そうだ。
 じゃあ生きるため?
 それはある。これは私の仕事なのだ。仕事をして、命をつなぐために戦っている。
 でも、それだけでは説明できない大事なものが、確かにある。
 きっと、
 この胸の温かさ、これが答えだ。
 自由だから戦う。
 生きてるから戦う。
 愛とか友とか社会とかのためじゃない。
 世界には、美しい言葉が溢れている。人を憎むな。殺し合いはいけない。平和に生きよ
う。
 その通りだ。醜いものが嫌いなのは人殺しもそうでない人も変わらない。
 でも、それを言うのは戦ったことのない人だ。
 善良すぎる人達。殺し合いなんてきっと、別の宇宙のファンタジー。
 彼らは綺麗な言葉を好む。まるで豪華なドレスに憧れるように。
 人の命は大切だと彼らは説く。
 けれど、その命より大切なものがある。それを知っている者が戦うのだ。
 彼らは知らない。
 大人達はそれを知らない。
 美しさという言葉でしか美しさを知らない。
 それなら、私は子供のままでいい。
 ただ、私が私であり続けたい。
 一番大切なものが手に入る、その時まで。
 視界の端にある車に、人影が乗り込むのが見えた。私は立ち上がって近づいた。
 エンジンのかかったその車のドアを開く。男は無言。私も無言。ドアを閉めてシートに
身を沈ませる。
 ヒルシャーさんはそのまま車を走らせ始める。行き先を聞くこともしなかった。



 私は助手席で真っ暗な風景を眺めていた。
 カーラジオが音楽を流していたから、2人はほとんど話さなかった。パックされたよう
な空間。きっと事故が起こっても、この凝縮した空気が身を守ってくれるだろう。

83:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:57:58 tmtKTO27
 対向車はなく、ヘッドライトの先にしかない世界を見続けていた。
 最後に山道を登って、目的地に到着した。
 大きな館が建っていて、かすかにライトアップされている。
 看板などは何もないけど、おおよそここがどんなところなのか雰囲気で分かる。
 玄関ホールには目の釣り上がった女がいて、彼はそこで手続きをした。女は私のほうを
じろりと見たけど、何も言わない。女の持つ長い煙草から出た煙が、吹き抜けの上のプロ
ペラに攪拌されてロビーに充満していた。
 彼は竹とんぼの軌跡のような階段を登っていく。私もそれに続いた。彼は薄暗い廊下を
通り、部屋に入っていく。続こうとしたところで、足音に気付く。
 誰かがやってくる。女だ。
 暗闇から浮かび上がってくるようにゆっくり歩いてくる。細く、白く、まとわりつくよ
うな薄い色彩。
 彼女が前に来るまで、私は決して壁を見なかった。見ないようにした。その白い手を、
白い指を。
 私を意を決して顔を上げる。
「この部屋に入らないで。お願い」
 彼女はあっけにとられた様子だった。数秒、閉じたドアを見る。そして、唇が歪に湾曲
する。
「で?」
 私は身を翻し、部屋の中に飛び込んだ。

 ベッドに腰掛けていた彼を押し倒し、自分の服を引き剥がすように脱ぐ。
 そのまま彼に口付けた。煙草の匂いが広がる。腕に絡まる上着を放り捨て、彼の首に腕
を回す。
 口の中で互いの舌が絡み合う。味わい、まさぐって、むりやりに性感を高める。
「んぐっ……!んん、んぅ……」
 舌の表も裏も無く。心拍が上がる。唇を吸う。目眩がした。
 薄暗く狭い部屋が、2人の鼻息で満たされる。
 唇を離すと唾液が溶けるように滑り落ちる。私は彼のスラックス、そして下着を脱がし、
屹立したそれに触れる。彼は何もしない。いつものように。私との距離を取りあぐねてい
るように。
 彼は私を見ていた。いや、そうじゃない。ブルーの瞳の中にあるのは、月。窓から映り
こんだもの。綺麗だと思った。私はそれを舌で掬う。

84:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:58:39 tmtKTO27
 そのまま彼のものに口付ける。
 ゆっくりと、下まで、裏側を舐めていく。
 一番下までつくと、今度は一気に上まで。
 舌の先端を恐る恐る。
 唇をついばむように。
 ヒルシャーさんのそれは大きくて、私の舌でカバーしきれない。仕方ないので一箇所、
一経路だけを丹念に舐める。こんな子供の舌で気持ちよくなってくれるのか不安だった。
上目でヒルシャーさんの様子を伺いながら、愛撫を続ける。
「くぅ……!」
 しばらくして変化を感じられるようになった。
 彼の顔が赤みがかり、大きなそれはより大きく。私の顔もきっと赤いのだろう。下腹部
が熱い。部屋の温度が上がっている気がした。
 はだけたワイシャツにくるまれた指で彼のものを包み、海のいきもののようなそれを飲
み込む。
 大きい。口の中があっという間にむっとした匂いで満ちる。のどに先端が当たってとて
も苦しい。自然に体全体で前後に動くようになる。呼吸が楽に出来るように。
 楽な形。苦しい形。
 楽な姿勢。苦しい姿勢。
 だんだん分かってきて、彼の反応を見る余裕が出てくる。
 上のほうがいいのか。下のほうがいいのか。右か。左か。先端の方か。根元の方か。鈴
口ってどうなのか。エラのような部分はどうだろう。睾丸を刺激するのは。息は吸ったほ
うがいいのか。吐いたほうがいいのか。一つ一つ、機械の癖を調べるようにして理解する。
もっと激しく動いてみたかったが、ゆっくりやるのが精一杯。元々が規格違い。歯が当た
って嫌じゃないだろうか。彼は何も言わない。
 右手で睾丸を軽くにぎる。左手で陰茎を支えて、唇の角度を変えながら何度も前後させ
る。エラの下のくぼみ、そこが気持ちいいみたいだ。舌で重点的にそこを刺激する。
「はん……、む……、んん…んじゅ……」
「うあ…!!」
 私の髪が彼のふとももにかかる。ふるふると揺れている。
 彼の苦しげな声。限界が近いのがわかる。
 彼はしなだれる髪をすり抜けるようにして両手を私の頭の後ろに回し、しっかりと抱き
とめる。
 より一層密着。
 私は弱いポイントを刺激しつつ、同時に思いっきり吸い上げた。

85:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:59:16 tmtKTO27
「ずずっ……!ずずずず!ず、ずずずずぅぅっ!」
「んん……!!」
 ヒルシャーさんは一度ぶるっと震えて、口中のものがはちきれんばかりに膨張した。直
後、先端から大量の液が放出される。多すぎる。そしてしょっぱい。
「ん…!んんー!んぐ…、んん、んぅ…。んん!」
 必死に吐き出され続けるそれを飲み込んでいくが、量が多すぎた。
 唇の隙間から白く濁った液体がぼたぼたと零れ落ち、私のワイシャツに無数の大きな染
みを作っていく。
 どく、どく、と不規則にまだ吐精は続く。先ほどのような量はない。
 彼が快感を得ているのなら、それに少しでも役立ちたい。
 最後の一滴まで残さないように、絞りつくすように、彼のものを味わい尽くす。
 そうしてようやく口を離す。放心状態。けぷっと音を立ててゲップが出て、紅潮してし
まう。それは、かすかに栗の花の匂いがした。

 まだぼんやりとしていた私を、ヒルシャーさんがベッドの上に引き上げる。
 え、え、と混乱しているうちに、私はベッドの上に四つん這いの状態になった。着てい
るものはショーツとはだけたワイシャツ。
 ヒルシャーさんが見えない。不安。先ほどまでと180度立場が違う。
 ショーツが脱がされる感触。とっさに振り返る。彼の手によって白いショーツが取り払
われていく。
 見れば、膣から流れ出た液体で濡れている。私は耳まで真っ赤になった。
 彼の指が秘部の中ににゅるりと入り込む。思わず声を上げそうになった。人差し指、少
し遅れて中指。ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。愛撫の必要はなさそうだった。
 彼はそれをゆっくり私の秘部にあてがった。
 ああ、いよいよこの時だ。何度これを夢に見ただろう。自分はおかしんじゃないかと思
ったこともある。
 夢では、行為の後いつも私は一人きりになってしまう。
 世界すらなくなり、完全に一人。
 そしてシーツにしがみつく。失われていく世界にしがみつくように。
 消えていくのが普通だとしたら、私は普通じゃないのだろうか。
 分からない。普通ってなんだろう。
 急に不安になった。
「ヒルシャーさん」
「ああ」
 囁くように言った。
「―私を離さないで」
 彼は私に覆いかぶさるようにして身を乗り出し、あごをつかむと短いキスをした。

86:名無しさん@ピンキー
08/03/08 21:59:41 tmtKTO27
 次の瞬間彼のものがゆっくりと挿入される。
 痛い。
 すごく痛い。
 私は下を向きながら何とか耐える。
 まだ半分も入っていないのだろうが、指はシーツに食い込み、太腿は小刻みにわななく。
 何かを突き破る感触、そして一番奥の突き当たりまで入った感触。けれど私の様子が尋
常じゃないのが分かったのか、彼はすぐに浅い位置まで戻る。
「大丈夫か、トリエラ?」
「はい……、平気です……っ。もっと奥で、感じさせてください……っ」
 純潔を失った痛みより、彼の役に立てない方が痛い。そう思った。
 彼は笑ったように見えた。私の頭をポンと軽く触り、動きを変える。
 浅い位置を往復するかたち。
 先程までのような圧迫感は少なく、私でも耐えられる刺激だった。
 手探りで相手の体を知ろうとするようなゆっくりした動き。ようやく慣れ始めた時に、
そこが刺激された。
「――!?」
 ビクンッと震えてしまう。
 ちょうど恥骨の裏側の辺りを攻められて、電流が体を駆け抜ける錯覚を覚えた。
 彼はその反応を見て重点的にそこを攻め始める。
「ひきゃ……、ひゃぁあぁ!?」
 途端にぐるりと世界が反転する。目が回るようなその感覚。
 しかしヒルシャーさんはそれだけでは終わらせない。右手を私の前に回すと、秘部の少
し上を弄り始めた。何のためにそこを、と思い始めたとき、
 ビリリッ!
 全く思ってもいなかった衝撃。
 何が起こった?予想外すぎてそれが快感かどうかも分からなかった。
 でも心配は要らなかった。何故なら、
「きゃ……、んぁあっ……!」
 一度だけではなかった。ヒルシャーさんは私のその敏感なところを何度も刺激する。
 そして秘裂の中でもずっと続いている前後運動。何かのスイッチがそこにあって、表と
裏からそれを攻められている感じだった。息遣いは荒くなり、きっとどんどん淫らになっ
ている。
「ぅあ……、すごく変っ……、あぁっ!ぅあっ……」
 何これ?初めての刺激。
 大きすぎる快楽。既に容量を超えている。
 視界が傾く。いや、頭がシーツにくっついているのか。
 手を突いていることが出来ず、ベッドに突っ伏していた。下半身だけがヒルシャーさんに持ち上げられている。
 いつの間にか、気付けば髪ゴムはとれていて、髪が動きに合わせてゆらゆらしている。
「ひゃめ、ですっ……、ひるしゃさん……!も、もう……っ!!」
 心臓が爆発しそうなくらい、早く打っている。

87:名無しさん@ピンキー
08/03/08 22:00:20 tmtKTO27
 もう達しているのか、達していないのか、分からない。小さな波は絶え間なく訪れ、私
を翻弄する。
 秘部からは濁った液体が溢れ、内股に淫らな弧を描く。
 ほんの浅い位置での行為だが、それが良かったのだろう。初めてとは思えないほどの快
感。彼の動きはいよいよにラストスパートに入り、同時に敏感な突起を弄る指の動きも加
速度的に激しくなる。
 目の前が白く霞んでいく。
「行くよ、トリエラ」
 彼の言葉にただ頷くことしかできない。
 耳たぶを噛んまれた時、限界が訪れた。
「あ、だめ、です、あ、もう……、あ、あ、あ、あ、あぁぁああぁぁぁぁっっっっ!!!」
 無数に重なった波が押し寄せ、いつまでも続く。そこへ、
 ドク!ドク!ドク!!
「ひゃ、あ、あつい!ふぁ、だめ、また、いっちゃう……!!」
 ビクン!ビクッ!!ビクン!!
 彼のものから熱い液体が吐き出され、また高みへ押し上げられる。
 震える体を抱きしめられ、一つに重なって滑り落ちていく。熱気の余韻が、体の中でい
つまでもくすぶっていた。



 抱かれて分かったこと。戦うことと、愛情は似ている。どちらも美しさがある、という
妄想にとりつかれて、まるで違わない。
 きっと、どうしたら戦わずに済むのかといえば、それは、どうすれば愛さずにいられる
のか、と言う問題に帰着するのだろう。
 彼は私の隣に横になっていた。
 どれくらい経ったのか。私の背中に手を回して、体を寄せる。
「なんだか懐かしいな。こんな、人のぬくもりなんて、もうすっかり忘れていた。ああ、
ごめん、嫌かい?」
「いえ」

88:名無しさん@ピンキー
08/03/08 22:01:08 tmtKTO27
「じゃあ、もう少しだけ、こうしていてもいい?」
「ええ」
 彼は私を強く抱いた。父親が子供にそうするように。
「こうしているだけで、とても……」甘い息が、耳元に触れる。
 私も彼の背中まで手を回して、体を引き寄せた。緩慢に温もりが伝わる。彼は私の髪に
触れて、それを優しくなでた。私は黙っていた。話すことを考えたけれど、思いつかなか
った。
「不思議だ。義体って、皆全然戦闘的じゃない。トリエラだって、最初はどう接していい
のか分からなかった。どんな人間なのか想像もできなかった。でも、そうじゃない、とて
も穏やかで、優しい」
「仕事をしているときは、そんなんじゃありません」
「うん。時々、疑問に思う。どうして、こんな優しい子達が、血を流すんだろう……ってね」
「さあ、どうしてでしょう」
 優しいなと思った。もっと、ジャンさんのように無関心にならないとだめだと思う。そ
んなだから、あなたが尊いと思ってしまう。遅からず終わりがやってくるなら、それは自
分が一番尊いと思えるものに捧げるのが道理ではないか。
「ヒルシャーさん」
「ああ」
「私は、あなたが好きです。どうしようもないくらい好きです。だから戦います。血だって流します。でも平気。あなたが無事なら。だから……最後まで私に守らせてください」
 彼は一呼吸置いて、それから私を抱きしめる力を強めた。瞳に涙が溜まっている。
「涙が出そうだ……。駄目だな、いつかの時までそれはとっておかないと」
 彼は毛布の中で私を離し、じっと見つめた。いつかの涙が頬を斜めに流れていった。

(おわり)

89:名無しさん@ピンキー
08/03/10 00:01:01 DuzUhNdF
GJ
こういうのもありだな
ありがちなエロパロの文体と違う気がするのは
トリエラ視点で書かれているからか

90:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:27:11 LZDjH83y
SS投下します。
かなり前に書いたものなので、現在の設定と違う箇所があるかもしれませんがご容赦ください。

91:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:27:54 LZDjH83y
あちこちから聞こえてくる人々の笑い声。
それを包み込むのはオレンジと白のレンガを前景として広がる青い空と海。

シチリア島の風景は見る者全てを幸せな気分にさせるようだ。

ただ一人、この俺を除いて。


『blu ed azzurro』


本格的に観光シーズンを迎えた現在ではそこかしこに観光客の姿を見ることができる。
彼らはみなここでの余暇を満喫しているようだ。
その表情は明るく、足どりも軽やかだ。
「きゃっ!」
突然隣りを歩いていたリコが奇声をあげた。反射的に懐に手がのびる。
見ればリコがバランスを崩したその横を二人の少女が駆けて行くところだった。
「すみません」
後ろからきた父親らしき男が頭を下げる。
「お怪我はありませんでしたか?」
「フロレンス、大丈夫か?」
「はい、兄さん。どこも怪我はしていません」
リコの返事に安心したのだろうか、男は微笑を浮かべ喋りだす。
「よかった……利発そうな妹さんですね。うちの娘たちはおてんばでね、手をやいていますよ」
「元気でいいことじゃないですか」
「ははっ、元気すぎるのも困りものですよ。おっと、娘たちが呼んでいるのでこのへんで。
では良い休日を」
「……良い休日を」
向こうのジェラート店の前で、二人の少女が手を振っている。そこに走っていく父親。
彼らが店に入っていくのを見送ってから、リコが口を開いた。
「ジャンさん。なんで元気過ぎて困るのですか? 病気の方が困るに決まってるじゃないですか」
CFS症候群の全身マヒ。それがリコの以前かかっていた病気の名前だ。
十一年間病室のベッドに縛りつけられていた身としては、親が元気過ぎて困るなどと言うことは信じられないのだろう。
「世の中には様々な人間がいるということだ」


92:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:29:10 LZDjH83y
それは俺たちの関係を鑑みれば良く分かることだろう。
復讐のために手段を選ばない男と、体を改造され義体としてテロリストと戦う少女……本当に世の中には様々な人間がいる。
自然と自嘲的な笑みがこぼれてしまう。
リコはそんな俺の様子を見て、
「よくわかりません」
と言って前に向き直った。
その横顔からはほんの僅かではあるが不快さを感じ取ることができた。
リコにしてはめずらしい。もう少し条件づけを書き換える必要があるかもしれない。
休暇中だというのにそんなことを考えてしまう自分。
心の中だけでため息をつき、リコの頭に手をおいて言う。
「お前もジェラートでも食べるか」
こちらを振り向いて「はい」と頷いたリコの表情は先ほどの少女たちとまったく変わらない無邪気な笑顔だった。


俺たちが休暇を過ごすため選んだ場所はジョゼたちと同じシチリア島。
ここへ行き先を決めたのはリコだ。
おそらくヘンリエッタから話を聞いたのだろう。
どこか行きたいところは? と聞けばいつも「ジャンさんの行きたいところへ」としか答えなかった彼女がめずらしく、
「私、シチリア島に行きたいです」
と嬉々とした顔で主張したのだ。
正直あまり乗り気ではなかった。
シチリア島といえば思い出すのは家族で過ごした夏のことだ。
こうしてこの家にいるともう戻らないあの時のことを思い出してしまい、柄にもなく感傷に浸ってしまう。
まったく……憂鬱だ。
「ジャンさん、シャワーを浴びてきました」
「ああ」
俺はリコの声で思考をとめ持っていたグラスを一気に煽った。
今夜は大分飲んだのに意識は明瞭なままで、不思議と酔えなかった。
そんな俺に向かって、リコは風呂上がりの肌をなお上気させて控えめに聞く。
「ジャンさん、その……今日はどうしますか?」
「いつもどおりだ」
「じゃあ……」
「先にベッドで待っていろ」
「はい」
仕事のときとは違い感情のこもった返事。表情からも嬉しそうな様子がうかがえた。
寝室へ向かったリコを見送ってから俺はソファーから腰を上げた。

ぬるい、というよりもはや冷たいというほどの温度でシャワーを浴びる。
リコとの情事に及ぶときはいつもこうする。
頭を冷やして考えるのだ。
義体の運用のためにこの行為は有効なのだ、と。
事実ベッドの上のリコはいつも嬉しそうにしている。行為の最中は何度も俺の名を呼びながら、愛を口にする。
俺の応えを受けられないのを知っていてだ。
俺はリコを愛してなどいない。リコはあくまで仕事の道具だ。俺の目的……復讐のための道具。


93:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:30:02 LZDjH83y
しかし、それでも……。

道具に愛着が湧いてしまうこともある。
ジョゼがヘンリエッタにある種の愛情を注いでいるように、俺もリコには愛情を注いでいるのだ。
俺とあいつではモノの愛した方が違うだけで、結局は似た者兄弟なのだろう。
それは今も昔も変わっていない。
俺のリコに対する態度、ジョゼのヘンリエッタに対する態度。
最近のそれはまるで――
「いったい何を考えているんだ、俺は……」
アルコールのきついシチリアワインのせいか思いの外酔いがまわっていたらしい。
こんなことを考えるなんて、全くどうかしている。
蛇口を拈りシャワーの勢いを最大にする。
肌を打つ冷たい水が身体の感覚を麻痺させていく。
強すぎる水の勢いに、排水構の容量が追い付かず床には水がたまりつつある。
これだけの水を浴びても、ほてった俺の頭は冷えた気がしなかった。
まだ酔いは醒めそうにない。

バスルームから出た俺は真っ直ぐにベッドルームには向かわず、一端リビングに戻った。
テーブルの上のワインボトルを持ち上げて一気にあおった。
しかし、既に残り少なくなっていたそれは僅かに俺の喉を潤しただけだった。
「ちっ……」
今度はダイニングに向かう。
床下の収納をあけて新たなワインボトルを手にしようとした、そこで、
「ジャンさん……」
リコが後ろから声をかけてきた。
「ベッドで待っていろと言ったはずだ」
その声は俺の想像したものより幾分の棘を持つものだった。
「すみません。ジャンさんが遅かったので……何かあったのかと」
振り向いて見たリコは俯きその小さな肩を震わせていた。
「何もない」
突き放すように言って、俺はワインボトルをもとの場所に戻すと、代わりにミネラルウォーターのペットボトルを手に取った。
「少し喉が渇いただけだ」
キャップを外し水を一気に流し込む。喉を下っていく清涼感が心地いい。
半分ほど飲んだところで口を離すと、それをそのまま俯いているリコに差し出す。
「お前も飲むか?」
俺の問いかけにリコは顔を上げて「はい」と返事をして頷いた。
その頬はほのかな朱色に染まっていた。


94:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:31:10 LZDjH83y
ベッドのスプリングが音を立てて軋む。
ベッドルームに移動した俺は直ぐさまシーツの上に身を投げ出した。
シーツをめくり上げ自分の右側にリコの入るスペースを作り俺は彼女を迎え入れる。
「リコ、バスローブを脱いでこっちに来るんだ」
「はい……」
リコは照れたような表情を浮かべながらおずおずと自分を包む布を取り払った。
薄暗くした部屋にリコの白い身体が輪郭をぼやけさせ浮かび上がる。
一点のシミも無い透き通った肌、幼くともバランスのとれた肢体、わずかな膨らみを見せる双丘。
少女の無垢な姿と、色欲をそそる女としての姿がそこには確かに同居していた。
普段テロリストどもをなぎ倒しているとは思えないほど可愛らしく、美しく、そして儚いその身体は俺を興奮させるには十分すぎるものだった。
ベッドに入ってきたリコは俺の起立を見てにっこりと微笑む。いつもと変わらないあの無邪気な顔で。
「ジャンさんのそこもう元気になってますね……嬉しいです」
「何が嬉しいんだ?」
「なんででしょう? うまく説明できませんけどなんだか嬉しいんです」
「リコ……」
俺は手をリコの頬に触れさせる。その途端彼女は「ひあっ」とよくわからない声を上げて肩を震わせた。
「どうかしたのか?」
リコは俺の質問に答えるより先に肌を密着させて抱きついてきた。
「ジャンさんの身体冷たいです……」
あのシャワーのおかげで頭は冷えなかったが、身体は冷えきってしまったらしい。
リコはその冷たい身体に縋るように抱きついて肩を震わせている。
「冷たいんじゃないのか?」
「冷たいです」
「寒くないのか?」
「寒いです」
なら何故? そう問うより先にリコが答える。
「……でもジャンさんはもっと冷たくて寒いのでしょう? なら私が温めるのは当然のことですから」
瞬間、俺の中に何か湧き上がるものがあった。
いや、おそらくそれはもうずいぶん前からそこにあったのだろう。
それがさらに量を増し噴出した。その勢いのまま俺はリコを抱きしめる。
「ジャンさん?」
驚いたような、戸惑いを感じさせる声。
思えばこうやって俺から抱きしめてやったのは初めてか。
「しばらくじっとしていろ」
「はい……」
リコから伝わる温もり、それが身体の隅々にまでいきわたる。
その温かさは肉体と精神の境目まで越えて俺の中に深く浸透していく。
自分でも不思議だった。
あの時から俺はもうこんな温かさを感じることはできないのだと思っていた。
だから復讐に身をやつし、憎しみという炎で心を焚きつけてきた。
リコは復讐を果たすための俺の道具だ。
それは、変わらない。
なのに何故、
何故こんなにも俺は…………。


95:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:31:58 LZDjH83y
しばらくの抱擁を終え、リコを開放する。するとまた微笑むのだ。
「私、嬉しいです」
いつもと全く変わらない、無邪気な笑顔で。
俺はそんな笑顔を浮かべているリコを抱き寄せると、やや強引に唇を重ねた。
「んっ……」
まずリコの柔らかな唇の感触を楽しむ。それは熟れた果実のように甘美だった。
十分に堪能した後で隙間に舌を差し込む。あっさりと俺の要求に応えリコは口を開いた。
リコの口内へと侵入していく俺の舌。それに呼応するようにリコもこちらへと舌を伸ばしてくる。
俺の舌はリコの口内を蹂躙し、リコの舌は俺の口内を愛撫する。
動き回るそれは互いの口蓋を、舌根を、歯茎を、歯列を、そして奥歯の裏までも本当に余すとこなく触れてまわった。
「んむっ、ちゅっ……んうっ、くちゅっ」
溜まった唾液が音を立てる。それでも俺はリコを放さない。
見ればリコは目を閉じて少し苦しそうにしていた。どうやら呼吸が追いつかないらしい。
そこで俺はやっと唇を離した。
「あっ……」
リコは少し名残惜しそうにして伸ばしていた舌を引っ込め、溜まっていた唾液を喉を鳴らし嚥下した。そして大きく深呼吸して息を整える。
「はぁっ……」
「苦しかったか?」
「はい。少し……でももっと続けて欲しかったです。私ジャンさんのキス大好きですから」
臆面も無くリコはそう言ってのけた。
「そうか、ならまた後でしてやる。その前に……」
「分かってます。こっちですね? 」
リコは俺の起立に視線を注ぐとそっとそれに触れた。
「ジャンさん、凄いです。もうこんなに大きくなってますよ」
リコは先ほどまでとは明らかに違う種類の笑顔を浮かべ、
「じゃあ始めますね」
両手で包み込むようにして愛撫を開始した。
たおやかな指で俺の欲望を握り、しごきたてるリコ。その挙措に思わず声を漏らしてしまう。
「くっ……」
「気持ち良いですか?」
その質問に俺は答えない。
しかし俺の表情を見て快感を読み取ったのかリコは一度屈託の無い笑顔をこちらに向け、「えへへ」と嬉しそうな声をあげて再び剛直を見つめる。


96:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:33:09 LZDjH83y
「もっと、もっと気持ち良くなってくださいね」
唾液を垂らしてすべりを良くしてからリコは手の動きを速めていった。
にちゃ、にちゃと湿った音が部屋の中に響く。
募る快感。
そろそろ口で、と思った瞬間俺のものは暖かく湿った空間へと導かれた。
視線を下げればリコがその小さな口を精一杯広げ咥えている様子が目に入る。
片手は剛直に添えたまま口の動きと連動させ動かし、もう片方の手は陰嚢を優しく嬲っている。
その動きはどこか熟練したものを感じさせる。
こいつはいつもそうだ。俺が喜ぶことなら驚く速度で上達していった。
戦い方も、ベッドの上での技術も。
「私の口で気持ち良くなってくださいね」
リコは一旦口を離し、今度は舌を使い俺を攻め立てる。
赤く小さな舌がちろちろと俺を舐める。
尿道口を舌でつつき、亀頭を舐めまわす。
カリを一周するようにした後はカリ裏を、包皮の結合している部分までも丁寧に舐める。
続いて竿へリコの舌は移動する。
まずは表の部分を下へとくだり、そこから半周して陰嚢にたどり着くとそこからは一気に裏筋を舐めあげる。
そして再びてっぺんから俺を咥えこむのだ。
教えた手順と寸分変わらぬその動作。
俺はよくやったとリコの頭を撫でてやる。そのことに気を良くしたのかリコは口淫をさらに一段階激しいものにした。
激しく唇と手を滑らせ、さらに口の中では積極的に舌を使い俺を高みへと押し上げていく。
「ひもちいいれすか?」
咥えながら喋ったことにより口の中が変動し、リコの歯が俺に触れる。
その僅かな痛みも今は快感へと変換される。
俺は眉を寄せ、少し奥歯を噛みしめて絶頂を堪える。それを見てリコは動きを中断させる。
「そろそろですか? 私の口にいっぱい、いっぱいジャンさんのをくださいね。全部飲みますから」
この焦らしも俺が教えたことだ。
目一杯口を広げて俺を咥えこむとリコは最後の口撃を開始した。
じゅ、ずちゅ、じゅぷっ、といういやらしさを多分に含んだ水音。
俺の視界に映るリコの頭頂部と飲み込まれていく俺の肉棒。
僅かに薫るリコの幼い少女の匂い、そして石鹸の香り。
先ほどのキスの余韻か口に残ったリコの味。
性器へ絶えずそそがれる愛撫の感触。
五感全てでリコを感じ、それは大きな快感の波となって俺を絶頂に向かって押し流した。
「――っ!!」
両手でリコの後頭部を掴み、下腹部へと押し付けながら俺は絶頂に達し、俺の肉棒は何度も脈動しリコの口内へ欲望の末を注ぎ込んだ。


97:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:34:41 LZDjH83y
「んーーー!!」
リコは声をあげながら俺の精液を受け取った。
何度やってもこの瞬間だけは慣れないらしい。
しかしすぐさま平静を取り戻し、精液の嚥下を始めるとともに、ちゅうっと頬をすぼめて竿に残っている精液すらも吸い出した。
こくこくと音をたて飲み込んでいき、最後はごくんと一際大きな音をさせた。
「ぷはっ」
大きな息継ぎをして、俺の肉棒を解放するリコ。
「えへへ、今日もいっぱい出ましたね」
笑う。その様子がまた扇情的で俺はもう一度身体を震わせた。
「きゃっ!」
吸い出しきれなかった精液がリコの顔と綺麗なブロンドの髪を汚す。
しかしそれに全く嫌悪した様子もなくリコは、
「ジャンさんは元気ですね」
と言って顔についた精液も手で掬い取り舐め取ってしまった。
「こっちにも付いてるぞ」
髪に付着した精液を指で掬いリコの口へ運ぶ。
「んっ……」
全く躊躇なく俺の指を咥え舐める。暖かな粘液に包まれる指先。
俺が指を引き抜くとまたリコは喉を鳴らし精液を飲み込む。
「リコ、別に嫌なら無理して飲まなくてもいいんだぞ。吐き出しても構わない」
リコはふるふると首を横に振りながら応える。
「そんな、吐き出すなんてできません。大好きなジャンさんのですから、それに私ジャンさんの味好きですから」
分かりきった答えだ。そう応えるように条件付けしたのは他ならぬ俺自身なのだから……。
胸の奥に何か変なしこりを感じる。
忘れていたもの。
忘れようとしていたもの。
それが俺を苛む。リコとの行為の後はいつもこうだ。
赤く燃え滾る欲情が過ぎ去った後は、青く深い憂苦へと身を沈める。
いつもならそれは表に出さないのだがこのシチリアという特別な場所がそうさせたのか、
「どうかしましたか?」
リコに訊かれてしまった。


98:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:35:59 LZDjH83y
「なんでもない。それより今日のは良かったぞ」
自分の気持ちと質問を同時に誤魔化し、リコの頭を撫でてやる。
「ありがとうございます、それなら一つお願いがあるのですが……」
「お願い?」
頷いてみせるリコ。
リコがこんなことを言うのは珍しい。少し戸惑ったが、
「何だ? 言ってみろ」
結局そう訊くことにした。
「私、もっと、もっとジャンさんを感じたいんです。ジャンさんと一つになりたいんです」
そう言ったリコの表情はいつもの微笑でもなく、任務の時の険しい表情でもなく、ただ真摯な、一人の女の子として俺を求めるどこまでも真剣なものだった。
「…………」
返答に詰まる。断るのは簡単だ、ただ「駄目だ」と言って後はそのままにしておけばいい。
それで何が変化するというわけでもないだろう。例え変化しようとそんなものは条件付けでなんともなる。
しかし……不思議と断る気にならなかった。
リコと交わる。
義体運用の面から見てその事前と事後には明確な一線がある。
変化する、しないというならばそれは明らかに交わってしまったほうが可能性は高い。
精神的には条件付けでどうにかできたとしても身体には俺と交わった証が確かに残る。
心身相関。肉体の変化、それはそのまま精神の変化だ。
それにもしそうなってしまった場合俺の方にも変化がないとは言い切れない。
担当官の変化。それもそのまま義体の変化へと結びつく。
それゆえその一線だけは越えまいと、今までしてきたというのに、不思議と断る気にはならなかった。
何故だろうか?
理ではしない方が良いと解っているはずなのに何故…………


「ジャンさん?」
リコの声で俺は現実へと立ち戻った。
「あの、無理ならいいんです。私今のままでも十分幸せですから……」
目を逸らし少しの怯えをその表情に浮かべている。
俺はそんなリコの頭に手を伸ばす、いつかのように身体を震わせることはなかったが、不安そうな目つきは相変わらずだった。
「抱いてやる」
リコの柔らかな髪を撫でながら俺はそう言った。


99:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:37:19 LZDjH83y
リコを仰向けに寝かせその上から覆いかぶさる。
下腹部に手を伸ばし入り口を探り当てるとすでにそこは十分に潤っていた。
「俺のをしゃぶってるだけでこんなになったのか? まったくいやらしいなやつだな、リコは」
「そ、そんな……っ、ぁぅ」
顔を真っ赤にしてリコは何かを言いかけたがそれは言葉にはならなかった。
俺に反論することもできない。
義体の悲しい習性だな、とも思ったが処女がそんなことを言われたら押し黙ってしまうのは当然な反応なのかもしれない。
「いやらしくていいんだぞ。男を楽しませるためにはそれぐらいで調度良い」
「ジャンさん……私ジャンさんが喜んでくれるなら、どんなことでもするし、どんな風にもなります」
「担当官のために義体がいるのだからそれは当然のことだ」
あくまで突き放すような口調はそのままで言う。
「はい」
しっかりとした返事。その献身的とも、もはや敬虔ともいえる態度にも俺は答えない。
ジョゼのような愛情を注いだりしない。
「ですから、ほんの少しでいいですから」
それでもリコは、
「私がジャンさんを想う気持ちの百分の一でも、千分の一でもいいですから」
俺に向かって、
「私を愛してください」
愛を語る。
俺は答えない。
ただリコの唇を求め顔を近づけていった。
「ジャンさん」
その呼びかけに俺は動きを止めた。
「あの、わ、私あれから口もゆすいでないので、その」
「少し黙っていろ」
開いていた口にそのまま舌を差し込み、深いキスを始める。
「やっ、ぅあ、ちゅっ、ジャンさん、そ、んっ!」
なおも口を利こうとするリコを強引な愛撫で黙らせる。
「はぁ……ん、ちゅっ、ぴちゃっ、んふっ」
観念したのかリコも積極的に舌を使い始めた。
その舌を俺のもので巻き込むようにこちらに導き強く吸ってやった。
吸引を弱めると今度はリコの番だ。俺と同じように舌を絡め、強く吸う。
その吸い取られるという感触が堪らなく気持ち良い。
リコの頭を抱え、より密着度をあげて俺はさらなる快感を求めた。
呼吸すらおろそかになるほどの激しい口付け。
酸欠になる一歩手前で俺たちは唇を離した。
混ざり合った俺とリコの唾液が糸をひく、薄い照明に煌めくそれはとても美しいもののように見えた。


100:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:38:26 LZDjH83y
「はぁ、や、やっぱりジャンさんの、キスは最高、です」
息を切らせて目をとろけさせて、そう言ったリコの姿はその幼さを忘れさせるほど艶麗なものだった。
その姿に俺の強張りはその硬度を限界まで高め、びくん、びくんと力強く脈動していた。
本来なら順序だてて愛撫を下らせていくべきなのだろうが、
すでに確かめたとおりリコの女性器は俺を迎える準備が整っているようなのでその必要もないだろうと判断し、俺は身体を起こしリコの足の間に腰を進めた。
「優しくはしないぞ。ある程度の痛みは覚悟しておけ」
俺の忠告にリコは首肯し、シーツを握り締めた。
「ジャンさんと一つになれるなら私はどんな痛みでも大丈夫です」
その言葉に満足した俺は腰をさらに進めた。
「んっ……」
触れ合う性器。四、五回ほどこすりつけ合わせる。
「やっ! あ、ジ、ジャンさん! 気持ち、いいっ、ああっ!!」
敏感な部分にでも触れたのだろう。リコは大きな嬌声をあげ始めた。
一方の俺もリコのぬめる愛液よって相当の快楽を得ていた。しかし本番はこれからだ。
リコの幼い性器はぴったりと閉じていてその入り口は見つけにくかったので、
「もっと足を開け」
そう指示し、さらに指で閉じられた花弁を広げる。
全く穢れを知らない鮮やかな淡い血色。その中に小さな入り口を見つけることができた。
まだ陰毛も生え揃っていない少女には大きすぎる俺の肉棒をあてがう。
「あっ」
何かを感じ取ったのだろう、リコはそう小さく声を漏らした。
その様子を確認して俺は挿入を開始した。
俺の肉棒は塞がれている柔肉を裂きながらリコの膣内へと進入していく。
「いっ、痛っ……いやっ、はぁっ、つぅっ」
リコは痛みに顔を歪めつつもシーツを握り締めて、自分の唇を噛むことで何とか破瓜の痛みに耐えていた。
そんな痛みとは対照的にこちらを包むのは感奮するほどの快楽。
リコの膣内の締め付けは凄まじく俺を放すまいと締め付けてくる。
それでも十分に濡れているので俺はゆっくりではあるが確実にリコの奥へと向かっていく。
膣内を進むたび媚肉が蠢き俺の性感を高めていく。
それにまだ幼いからなのだろうか、リコの膣内はとても温かくまるで蕩けてしまいそうだ。
きつくて、ぬめっていて、温かい。
しかも今はまだ挿入の最中であり、本格的に動いてはいないのだ、もしこれを動かしたらどうなるのか……。
「リコっ! い、いいぞ、リコの膣内は、凄くっ!」
言って、リコの様子をうかがう。
リコは目をぎゅっとつむりただひたすら痛みに耐えていた。
それでもリコは俺の言葉に反応する。
「ほ、本当ですか? う、嬉しいです、私、ジャンさんにそんなに褒めてもらえて、えへへ、わ、私は幸せ者ですね。
こんな、こんなにしてもらって、な、膣内でジャンさんを感じれて」
…………。


101:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:39:07 LZDjH83y
そう言ったリコの表情を見た瞬間、急速に頭の中が冷えていくのが分かった。
下腹部の熱さはそのままに、まるでそこだけ瞬間冷却されたように俺は冷静さを取り戻す。
その頭で考えても解らない。

何故リコはこんなに、
こんなに、
息を絶え絶えさせながら、
目の端に涙をためながら、
肩を強張らせながら、
こんな言葉を言って、
息をするのも苦しいだろうに、
俺を喜ばせるため、

微笑むのだろう。

頭の中がどんどん冷えていくまるで真冬の海に沈んでいくように、深い、深い青に呑まれていくように。

それでもその底で俺は僅かな温かさを感じるのだ。
それは喜びなのか、救いなのか、快楽なのか。

解らない。

ただ一つ。
この温もりの理由、源だけは確かに解る。

リコだ。
リコと繋がっているという事実だけが今俺に温もりを与えている。


102:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:41:17 LZDjH83y
「ジャンさん?」
俺の沈黙をいぶかしく思ったのだろう、気が付けばリコの顔が間近に迫っていた。
こんな状態で動いたら激痛が走るというだろうに、それでもリコは俺を心配して顔を寄せているのだ。
「ジャンさん?」
リコと目が合う。
蒼い、蒼い、澄んだ空のようにどこまでも蒼い瞳。
そこに映る俺の顔は……。
「きゃっ!」
俺はリコを抱きしめてそのままベッドに倒れこんだ。
その反動かリコの膣内の抵抗を押し切り俺はリコの最奥にたどり着いた。
「いっ! 痛い、です」
悲鳴に近い声をあげるリコを俺は両腕で包み込む。
リコは小さな腕を目一杯広げ背中に手を回す、がそれでも届かないので結局首にしがみつくようにした。
「ジャンさん……痛いけど、私嬉しいです。変ですね、痛いのに嬉しいなんて。ふふっ、それに嬉しいだけじゃなくて……。
凄く満たされているというか、なんて言うのかな? やっぱり幸せ、かな? 私今凄く幸せです」
「リコ……」
俺はもうそれしか言えなかった。
「動いてください、う、動いて、いつもみたいに私で、気持ち良くなってっ、ください」
その懇願に応え俺は腰を前後に動かし始めた。
リコの最奥から肉壁をめくりあげながらカリの部分まで引き抜き、そこから一気に子宮口に達するまで深く挿入する。
密着しているのでリコの息遣いがよく分かった。
そのリズムに合わせるように膣内は蠢く。
幼くてもリコの身体は知っているのだ、男の精液を求めるということを。
何百万年も続いてきた人の性愛の行為。
その前ではリコが義体であることも、この俺の醜い復讐心もそんなものは些細なことに過ぎない。


103:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:44:02 LZDjH83y
採光窓から差し込まれる陽光が眩しくて俺は目を覚ました。
リコは隣で穏やかな寝息を立てている。
俺は立ち上がるとテラスに向かい勢い良くドアを開いた。
夏の日差しは眩しい。視界がはっきりしないままテラスへと進み出る。
俯いて目を慣らしてから顔をあげる。
俺の視界に飛び込んできたものはどこまでも青く、そして美しいシチリアの空と海だった。
「綺麗ですね」
いつのまにかリコが横に立っていた。
「ああ、綺麗だな」
「また連れてきてくれますか?」
リコの問いに俺は薄く笑い、
「いいだろう」
と応えた。もちろん「ただし任務を完璧にこなしたらだ」と念押しも忘れない。
リコはその蒼い目をきらきらと輝かせ、
「はい」
そう返事をして、大きく頷いた。



Fin.


104:名無しさん@ピンキー
08/03/10 19:44:54 LZDjH83y
おまけ

公社へと戻った私はヘンリエッタに連れられてトリエラたちの部屋を訪れた。
「リコ、どうだった? シチリアは」
「いいところだったよね? ねっ?」
彼女たちに私は、
「うん。すごくいいところだったよ」
と応え、あの日のことを想い、夢見心地に浸った。
トリエラがさらに質問を重ねてくる。
「特に良かったところとかはないの?」
私はしばらく考えていたがジャンさんとのことを言うわけにはいかないので、
「うーん……みんな楽しかったよ」
「またそれか」
トリエラは呆れたような声を出してため息をついた。
すると今度はベッドの上で本を読んでいたクラエスが、
「せっかくシチリアまで行ったんでしょ。なにか珍しいものでも買ってもらった?」
と訊いてきた。
「何も」
「なにもぉ? 全くジャンさんは薄情ね。私やヘンリエッタはたくさん買ってもらってるのにね」
「そうだね……」
ヘンリエッタはそこで少し悲しそうな目で私を見た。
「でも私もジャンさんからは大切なものを貰ったよ」
「はい、はい。自由に動く身体でしょ。リコはそれだけで幸せなんだもんねー」
トリエラはそこで一旦区切り、
「私はもっともっといろいろ欲しいけどね」
と言った。
「それだけじゃないよ。私だっていっぱいジャンさんからもらってるよ。その……うまく言えないけど」
「わかった、わかった。ここでの生活や楽しみは言わば全部ジャンさんから貰ったものだしね」
トリエラは物知り顔をする。
少し悔しくて私は、
「きっとみんなが貰ってるものよりいいものだよ」
と反論した。するとトリエラも負けじと、
「それは有り得ないわ」
と言い返してきた。なんでそんなに自信満々なんだろう。ひょっとして……。
「あなたたちそろそろ訓練の時間じゃない?」
私の思考が結論に達する前にクラエスの呼びかけで断ち切られる。
「そういえばもう時間だね。急ごっか」
ヘンリエッタはそう言って私の手をとった。
そうだ、急がなくては。

訓練場ではジャンさんが待っているんだから。


105:名無しさん@ピンキー
08/03/12 01:24:29 P08qUei3
前半部分で
ツンデレなジャンさんというものがいかに素晴らしいものであるか
認識した

106:公社の十日物語
08/03/12 03:00:24 COcr5wVl
>>80-88
ああ,トリヒルのエロだよ!エロパロは,こうでなくてはな!ちゃんと飲んでるしーツンデレの醍醐味ですよ。

>>「私は、あなたが好きです。どうしようもないくらい好きです。だから戦います。血だって流します。でも平気。あなたが無事なら。だから……最後まで私に守らせてください」
>> 彼は一呼吸置いて、それから私を抱きしめる力を強めた。瞳に涙が溜まっている。

なんて,格調高い表現でしょう!あの「どうしてほめてくださらないんですか?」を彷彿とさせます。
それに,ある種の予感というか布石というか…
すばらしいです。インスパイアされちゃいます。ありがとうございました。

>>91-104
すごいよっ!いいよっ!エロいよ!ううれしいー!

>>「なんででしょう? うまく説明できませんけどなんだか嬉しいんです」

って台詞がイイ!ああっ,ガンスリエロパロスレッドに春が来た!
こんなSSが読めるなんて私は幸せです。
今後も,彼女たちのサイドストーリーを聞かせてください。
ありがとうございました。グっジョブ!

最近仕事が忙しく続編が書けていない…皆様のエロパロだけが,憩いと安らぎでございます。


107:名無しさん@ピンキー
08/03/12 15:11:11 d0Yo9XSq
GJだ。GJ!
blu ed azzurro ってどういう意味だか気になるが…

108:名無しさん@ピンキー
08/03/19 13:49:41 bR5Oqicl
SS書いたんだが長くなったので他に投稿してきた。
URLリンク(mai-net.ath.cx)
鳥昼の話なんだがオリキャラ出てくるし、原作から離れていくし……。
あんまりエロくないので、それでもよい人どうぞ。

109:名無しさん@ピンキー
08/03/20 21:35:54 jCndxlKq
これはいい

110:名無しさん@ピンキー
08/03/21 09:10:18 R5xcQBTL
>>107
調べてみましたが、bluもazzurroもどっちも青という意味らしいです。
edがandと同じなので、「青と蒼」といったところでしょうか。

111:名無しさん@ピンキー
08/03/24 12:45:20 E9WzRrvn
ほす

112:名無しさん@ピンキー
08/03/29 12:27:00 kSLI/vfZ


113:名無しさん@ピンキー
08/04/01 03:52:43 wRwRqbHo
俺とピノッキオだけのフランカが…。

114:名無しさん@ピンキー
08/04/05 23:46:25 9EGVugXf


115:名無しさん@ピンキー
08/04/06 16:50:55 duY859zc
過疎りはじめてる・・・

116:名無しさん@ピンキー
08/04/08 21:14:28 Ii+k78QZ
1. 学生さんと違って、社会人の今の時期は忙しいからなぁ
2. アニメのショックから立ち直っていない
3. 原作のストーリーの超展開がこわい

どれだろう

117:名無しさん@ピンキー
08/04/10 17:34:24 LafwZJfl
2

118:名無しさん@ピンキー
08/04/12 10:43:44 CLu22D/y
>>116
2

119:名無しさん@ピンキー
08/04/12 14:56:58 jrJY2Len
アニメの評価酷いなw
まだみてないが、見たら後悔する?

120:名無しさん@ピンキー
08/04/12 16:22:19 34eU+dlh
>>119
一期は見る事をお勧めする

二期はGUNSLINGER GIRLとして見ないことをお勧めする

121:名無しさん@ピンキー
08/04/12 17:55:32 ITbiI2k/
えった抱き枕

URLリンク(st-momo.hanya-n.net)
URLリンク(st-momo.hanya-n.net)
URLリンク(st-momo.hanya-n.net)

122:名無しさん@ピンキー
08/04/12 20:05:29 8RjbSWA4
>>121
ありがとう!あなたは、私に安らぎと癒しを与えてくれた。
お礼になるかどうかわからないが、受け取ってくれ。
URLリンク(www7.axfc.net)

123:名無しさん@ピンキー
08/04/12 20:23:42 ITbiI2k/
>>122

うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!

ごちになります!

124:122
08/04/12 20:30:07 8RjbSWA4
>>123
喜んでいただいてうれしいです。
もう少し、画像が大きければ、キレイにできたのにな。
わたしにKEEP OUTを消すほどのテクがないのがくやしい!
顔だけ浮いた感じになってしまった…OLZ

125:122
08/04/12 23:14:54 8RjbSWA4
連投すいません。やはり前バージョンよりもこっちの方が良い感じがするので。
背徳感バージョンです。シーツのしわにノイズが目立っちゃったけど、
顔の浮き上がりは抑えられたかな。
URLリンク(www7.axfc.net)


126:名無しさん@ピンキー
08/04/13 00:55:53 JNGxnKJF
>>125
なんか怪しくなってますが 乙です


127:名無しさん@ピンキー
08/04/13 18:28:27 JNGxnKJF
>>124
顔の浮き上がりは特に感じないですわ
って言うか顔にピントがあってる感じがしててグゥ

>>125
シーツが絹な感じがしていいですな。
あばら骨が好きな人にはグゥ

128:名無しさん@ピンキー
08/04/13 21:50:13 KgnALf26
リコの壁紙です。やはり、微乳はイイ。
URLリンク(www7.axfc.net)

129:名無しさん@ピンキー
08/04/14 22:22:30 nttveNb7
アンジェリカの壁紙です。思いっきり無修正です。やりすぎ?
URLリンク(www7.axfc.net)

130:名無しさん@ピンキー
08/04/15 00:22:38 NeUABq5v
>>129
何で無修正画像がwww

ふたばの職人さんにでも無修正に加工してもらったの?

131:公社の十日物語
08/04/20 09:51:48 Ytuk6RtZ
トリエラは、以前、ロベルタ=グエルフィ検事の警護任務で
ライフル弾を腹部に受けたことがあったので、その痛みを思い出したのだ。
処女性交の痛みとは、そんなにも痛いものなのかと、
クラエスへの労いが大きくなったのだ。
そして、そもそも、少女義体達が生身の人間だった頃は処女だったのかと言えば、
間違いなく処女だったはずで、
そんな痛みを経験することもなく義体として一生を終えてよいはずである。
それなのに、何故、痛みまで再現させなければならないのか?
その意味を考えざるを得ないほどの痛みをクラエスは感じていたのだ。
そして、義体年齢が最も最年長のトリエラにとっても、
それには何か意味があるはずだと、気がついていたのである。

「ええと、ごめんね。
私達だけイイ思いばっかりして、クラエスが居てくれることで、
私達が幸せなんだって、わかっていたつもりだったけど、
感謝の気持ち、足りなかったんだなあって、今、思ったよ。…」

トリエラは、乳首を弄るオナニーをやめて、クラエスの瞳をじっと見つめた。
それに続いて、ヘンリエッタとリコも粘る指先を止めて、
トリエラと同じようにクラエスを見た。

「もう、よしてよ!そんなふうにあらたまらなくたって、
みんなからの気持ちは、感じているわよ。
ただね、私達がもし、義体でなかったら、
多分、女としての悦びを感じる経験ができたはずでしょ?
それなら、そういう幸せを感じることも義体としての生き方なんじゃないかなって、
思うの。
担当官以外に、相手を選べないのは、残念かもしれないけどね。
まあ、年齢はともかく、男としてはみんな超一流なんだから、贅沢な悩みなのかも!」

クラエスがおどけてみせることで、みんなの顔をがほころんだ。
クラエスは、義体達のお姉さん役をしっかりと心得ていた。
そして、それを説明してみせるトリエラもクラエスと同じように、
保護者の役割を果たしていたのだった。

「人間の女性は痛みに強い身体になっているって医学書を読んだことあったな…
ええとデモイヤ博士だったかな?
仮に、出産に伴う痛みを男性の身体で再現すると、失神したり、
脳梗塞や心臓発作したりして、出産までの長時間には耐えられないんだって。
女性の生殖器官は、男性よりも優れた部分が多いみたいね。
処女性交の痛みって、出産時の痛みへの練習なのかしら。どう思う、クラエス?」

クラエスもそのことを考えていたので、即答でトリエラの問いに答えた。

132:公社の十日物語
08/04/20 09:57:05 Ytuk6RtZ
「そうね。アントーニオのプログラムの出来はともかく、
義体の処女性交に痛みを与えるべきっていう判断は、
おそらくは、義体技師最高責任者であるあの人の考えでしょうね。
現段階における私達の生殖器で、妊娠出産の機能は、
まったく無いのだから、処女性交の痛みには、何か別の目的がありそうね。
そう、例えば、担当官が与える痛みに、
どれほど受容できるかという条件付けの承認テストの一つだとか、あるいは…」

クラエスは、今度は、受け皿を持ちながら、
行儀良く紅茶を啜った。
トリエラが、おかわりのティーポットを持って、クラエスの言葉を静かに待っている。

「…あるいは、わたしちが痛みに耐えつつも、
担当官を悦ばせることを優先するほどに、
彼らを愛しているのだという証明なのかも。」

クラエスの言葉を聞いて、ヘンリエッタがすぐに反応した。

「わ、私だって、ジョゼさんを愛してるもの。
わ、私のあそこにも、痛みを感じるプログラムを追加しても、我慢できるわ!」

同じようにリコも真似をする。

「わたしも、追加してもらってもいいかな。
ジャンさんを愛してることの証明が、それでできるんなら、
初めての時だけでなく、毎回、痛くても我慢するよ。
だって、それが、わたしのお仕事だから。」

クラエスとトリエラが、同時に深いため息をついた。

「そうね。二人は、いつだって担当官のことを考えているモノね。
誰かさんと違って、ホントに健気なんだから。
ねっ、トリエラ!少しは、この二人の熱い愛情を見習ったらいかが?」
「わたしだって、ヒルシャーさんが、戦えと言うなら、いつだってそうしてきたわよ。
痛みを恐れて、担当官の命令に逆らったことは一度もないわ。
でも、担当官が悦んでくれるなら、痛みを感じることも躊躇わないかって言われると、
ちょっとつらいかな…だって、もう既に処女じゃないし、
初めから、あんな最高の快感を味わってしまったら、
もう、快感の無いセックスなんて、できないわよ。
ヘンリエッタやリコだって、痛いより気持ちイイことが好きでしょ?」
「うん、でも、クラエスだけ、そんな痛い思いをして、
私たちだけ得してるなんて、やっぱりずるい感じがするもん。」
「わたし、痛くても、我慢できるよ。気持ちイイ方が、好きだけど。」

クラエスは、リコとヘンリエッタの顔を交互に見て、微笑んだ。

133:公社の十日物語
08/04/20 10:00:57 Ytuk6RtZ
「二人とも、本当にいい子ね。
でも、この痛みは、私の仕事なの。
代わりに、銃の弾を喰らう痛みをみんなには、お願いするわ。
担当官からの快感は、その任務を果たすことへのご褒美よ。
そんなに申し訳なさそうな顔をしないで。
わたしだって、自分の仕事をちゃんと果たしたいだけ。
この痛みは、その役割を果たしているという自負なの。
わかる?女が痛みを感じるのは、新しい命を生み出すための試練なの。
この痛みを感じているから、生きている実感を感じられるわ。
それに、その痛みの後のそれ以上の快感もネ。」

「もう、クラエスのエッチぃ!」

円卓の中に、アンジェがいたら、
きっとマルコーさんからの違う愛情を受け取る企みをみんなで話せただろう。
今はもう居ないアンジェリカ。
そして、いつかは動かなくなるであろうみんなの義体。
そして、まもなく近づく死の痛み。
わたしは、そんな悲しみをどれだけ軽減できるのだろう。
その痛みに見合うだけの幸せを作り出せるのだろうか。
クラエスは、自分の生きる意味をそうして問い続けてきた。

「さあて、わたしとアントーニオの処女性交の話は、ここでおしまい。
明日の夜は、リコの番よ。
ジャンさんとのラブラブな話を聞かせてもらえることを楽しみにしましょう。」
「おやすみ、クラエス。」
「おやすみ、トリエラ。」
「おやすみ、アンジェ。」

ヘンリエッタとリコが、部屋を去っていった。
トリエラが、円卓中央のロウソクの火を消す。
そして、椅子に座ったままのクラエスの背後から、そっと彼女を抱きしめた。

「おつかれさま、あなたらしくないけど、イイ話を聞かせてもらったって、思ってる。」
「そう?よかったわ。
私の話で、みんなが幸せな気持ちになってくれるなら、こんな役もいいかもね。
もう、3時過ぎ?あと3時間ぐらいは眠れるわね。
日が昇る前に、畑にお水をやらないといけないもの。」
「私も付き合うわよ。クラエス先生。」
「良い心がけね、トリエラ君。」
「さあ、寝ましょ。夢の中でも、きっとイイことがあるわ。」

(第一夜 終了)

134:名無しさん@ピンキー
08/04/22 00:07:37 vGwviovU
良い意味で期待を裏切ってくれるというか
読者置き去りなところが快感になりつつある今日このごろですが

第二話はリコが「私のおまんこ」を連発するのですね
リコが医学用語を使ったり「あそこ」とか遠回しな表現はしない気がする


135:名無しさん@ピンキー
08/04/22 03:06:20 4+fr7OXN
てかエッタって義体になる前はレイ~プされてたんじゃなかったっけ?

136:名無しさん@ピンキー
08/04/25 22:20:28 rjZHoXr3
エッタの脳内ではヲトメですよ

137:名無しさん@ピンキー
08/04/28 11:18:25 kl+otvfQ
トリエラもまず間違いなく犯られてるよな。

138:名無しさん@ピンキー
08/04/30 09:49:14 iWQCSdxL
>>134
つーかリコが「おまんこ」なんて言葉を知っているのか?
耳年増なクラエスは間違いなく知っているだろうが、他に知ってそうな面々というと・・・

クラエスと相部屋という不幸? な境遇にあるトリエラは知っているつーか無理矢理聞かされてそうw
ペトラも担当官との関係からして知ってそうだ。

139:名無しさん@ピンキー
08/05/03 04:24:52 Rt2mZ4SA
ジャンがリコになんて言って教えてるのかという事だと思うが
案外プリシッラに丸投げだったりして


140:公社の十日物語
08/05/06 19:38:10 isPJ4lF1
第二夜

そこは、誰が見ても品格があり、衛生的で、
調度品の整った部屋の窓から差し込む月の光に当てられたベッドルームは、
美しい場所だと思えた。
ベッドの上で抱き合っている男女の姿を一人の少女が、
クローゼットの中からじっと観察を続けている。
女の方は、少し華奢だが、胸や臀部が女性を強調し、
細く引き締まった手足がとても魅力的で、
すらりとしたモデルのような肉体だった。
おそらくは、ある種の特別な訓練を積んだ女であることを、
少女は経験から、感じ取っていた。
少女の瞳が、小さなのぞき窓から男の方の躰の一点に集中し、
彼のペニスをとらえた。
それは、自分が持っている銃口よりも太く、長かった。
それを女は、口の中に全てくわえ込んで見せた。

”うわぁっ、すごいことしてるっ!
あれって、食べられるものだったんだ…ジャンさん、痛くないのかな?”

少女は、ゴクリつばを飲み込み、手に汗がじわりとしみてきた。
男の視線が、こちらをちらりと見る。特に重要なシーンだということなのだろう。
少女の瞳は、暗闇でも抜群の視力を誇っていた。
女の唇と顎と首と指の動き全てが、よく見える。
そして、女の息づかいと頬の膨らみ具合から、女がしていることは、
食べているのではなく、ペニスを愛撫し、扱いているのだということがわかってきた。

”おしっこ、飲んでるのかな?”

男は、仰向けになり、女が、男の顔の上に跨り、起立したペニスを上から、咥えなおした。
咥える前よりも、サイズが大きく硬くなっているようだった。
唾液でべとべとになったそれは、ひくひくと動き、痛みを感じているようにも見えたが、
歯形や切り傷は見られない。
それに、男は、苦痛ではなく、心地よい顔を見せていた。
あんなうれしそうな顔を自分に見せてくれたことは一度もなかった…。

『リコ、お前は、この中から俺の警護をしろ。
女が武器を持って俺を傷つけようとしてきたときのみ、ここから出て迎撃しろ。』
『女が武器を持っていないときは、迎撃しなくてもよろしいですか?』
『武器を持っていない女に殺されるほど、俺はヤワではない。』
『わかりました、ジャンさん。ここから、警護監視を行います。』

141:公社の十日物語
08/05/06 19:40:13 isPJ4lF1
少女は、クローゼットの中にいるが、
そこは、さらに、隣の部屋にもつながっている秘密の入り口があり、さらには、
ベッドルームをビデオカメラで全周域撮影できる装置も設置されていた。
この部屋は、社会福祉公社が、
とある高級ホテルのフロアを全て借り切っている工作員用の場所なのだ。
クローゼットから、ベッドまでの距離は2m。
扉からCz75を発砲すれば、いかなる状況でも、対象を警護できる自信が、リコにはあった。
問題は、警護任務ではなく、続きの任務を与えられたことだった。

『リコ、任務は、警護だけではない。』
『はいっ?』
『俺と女がすることをよく観察し、女がすることを学べ。
これからのお前に必要なことを教えてくれる…。』
『はい、わかりました。』…



「…という感じが、わたしの初めての夜。すっごくおもしろかったよ。
知らないことがいっぱいあってね、
特にジャンさんが、女の人の口の中でいっちゃうときなんか、どきどきしたよ。」

リコは、うれしそうにみんなの前で自分の体験談を語り始めた。

「ジャンさんが、女の人に自分のペニスを咥えさせたときは、
あれって何してるかわからなかったんだけど、
ジャンさんが女の人の口の中にたくさんのおしっこを出したときに、わかったんだ。
ああ、そういうことかって!男の人は、女の人に飲ませるのが、好きなんだってこと!」

円卓のローソクの焔が揺れるように大きな声で、クラエスとトリエラが反論する。

「違うわね!」(クラエス)
「間違ってる!」(トリエラ)

二人は、紅茶をごくごくと飲み干すと、その理由を説明し始めた。
ヘンリエッタは、うんうんと頷いていたが、どちらに賛同していたのか、わからなかった。

「それは、尿ではなかったはずよ。
間違いなく、射精、つまり、女が飲んでいたのは、
精液…ザーメン…スペルマ…男性が快楽の絶頂期にのみ放出する子種のこと。」
「あのね、そっちじゃないでしょ?
飲ませるのが好きなのは、担当官の嗜好によるものであって、
万人の男性が好きっていうところが間違いよ。
いい、リコ?精液は、飲みものじゃないの!!
もちろん、おしっこも飲んだりするモノじゃあないんだからね!」

リコは、二人の反論に落ち着いて、返答するために、自分も紅茶を一口飲んだ。

142:公社の十日物語
08/05/11 12:02:40 xzu3M+Xy
「えっと、そのときは、射精っていうことを知らなかったから、
おしっこなんだって思ったの。
でも、別にヘンな感じしなかったよ。
女の人も美味しそうに飲んでたし、ジャンさんもうれしそうにしてたから。
それから、トリエラは、すぐそうやって意地を張るんだね。
ホントは、ヒルシャーさんもトリエラに飲んでもらいたいんじゃないのかな。
あっ!でも、おしっこより、精液の方が美味しいかな?
おしっこは、ちょっと量が多すぎて、飲みにくいもんね。」
「ああ、なるほど!そういうこと。」(クラエス)
「なるほどじゃなーいっ!なんか、すごくわたしがバカみたいなんだけど。」(トリエラ)
「うふふっ。だって、今夜は、私の番なんでしょ?
みんなが知らないやさしいジャンさんのこといっぱい話そうと思ったんだけど、
ダメだったかな?」
「ううん、私は、すごく楽しいよ。
だって、ジョゼさんのお兄様のことだもの。
兄弟での相違点と共通点を知ることは、これからの夜の生活に必要なことだと思うの。
条件付けの学習では、性に関する知識ってほとんど教えられなかったから。」
「ねえ、リコはさ、ジャンさんの…あれ…お、おしっこって飲んだことある?
わたしは、ヒルシャーさんの排尿行為すら見たこと無いんだけど…
って言うか、見たいと思わんしー。」
「ほらぁ!トリエラってすぐそうやって担当官の悪口を言う!
私なら、ジョゼさんが出すモノなら、全て、飲めます!
いいえ、飲ませてくださいって言うわ!ねぇ、リコ?」
「うん、そうだね。」
「トリエラは、条件付けがゆるいから仕方ないのよ。
私たちと違って、ツンデレさんだから。ねえ、トリエラ?」
「はぁ、もういいから、話続けて…。」

143:公社の十日物語
08/05/11 12:04:31 xzu3M+Xy
リコは、紅茶のおかわりを自分で注ぎ、クッキーを口に頬張った。
長い舌をぺろんとだして、咥えて見せたのは、わざとに違いなかった。

「うんとね、ジャンさんがその女の人の口に出したとき、
私のあそこが急に濡れてきちゃったの。
喉が、からからに渇いてくるし、胸の乳首もなんだか突っ張って、
ブラウスと擦れてちくちくする感じになったの。
それでね、クローゼットの中で、自分の指を股の隙間に挟んで、
下着の上から強くこすったら、落ち着く感じがしたの。
多分、それが、私の初めてのオナニー。
あぁ、なんかこうやってお話してるだけで、濡れてきちゃうなあ。
あのときのジャンさん、すっごくたくさん出していたもの。
わたしが、おしっこなんだって勘違いしたのも、そのせい。
その女の人はね、出されたモノを1滴もこぼさなかったんだよ。
あれって、すごい技術なんだよね?
わたしが初めての時、飲みきれなくて、こぼしちゃったから、
『零すなって!』ジャンさんに叱られたもの!」
「そうね、ジャンさんならそうするでしょうね…
まあ、射精量が多ければ、即、飲み込むしかないけど、
わたしなら、飲まずに口に溜めるわ。」
「そうなの!クラエスの言うとおりなんだ。
その女の人はね、てっきり飲んでると思ったんだけど、
お口の中にジャンさんの精液を溜めて、飲んでいなかったんだ!」

円卓に座る一同の喉がごくりと鳴った気がした。
鼻から勢いよく出した息で、中央のロウソクの火が揺れた。
リコの話に、クラエスもトリエラもヘンリエッタも夢中にならざるを得なかった。
何と言っても、ジャンさんは、徹底した秘密主義の人だから、
彼の私生活を知るには、リコからの話だけしかない。
その一部が、今、明らかになろうとしているのだ。
聞いてはならない甘い秘密の匂いと味が、義体達の五感を刺激していた。

144:公社の十日物語
08/05/16 19:54:52 0mASlAfc
「その女の人はね、お口いっぱいに溜めた精液を…」(リコ)
「やっぱり、飲んだんでしょ?」(ヘンリエッタ)
「プロの娼婦なら、おしぼりなんかに吐き出すらしいよ?」(トリエラ)
「ジャンさんが、安っぽい風俗女を抱くとは思えないわね。
彼、高級志向でしょ?だったら、基本は飲むはず。
でも、それをあえて口に溜めた理由は、一つ…」(クラエス)
「そう、その女の人はね、ジャンさんのペニスをしばらく扱いてから、
内部の精液まで完全に搾り取った後、お口の中のモノを零さないようにして、
ペニスさんをお口の外へ弾き出したの。
ペニスさんの亀頭が、紅い唇にぴったり吸い付かれていてね、
ホントに、上手だったよ。
わたしも、それを真似しようとしたんだけど、うつむきだと、
ペニスさんがお口から出る瞬間、お口に溜めた精液が、
どうしても下に零れちゃうんだよね。」
「そ、それでさ、どうしたの?つ、続きを言ってよぉ!リコぉ!」(ヘンリエッタ)
「うん、それでね、女の人は躰の向きを変えて、
寝ているジャンさんの顔に近づいていったの。
そうして、お口に溜めた精液をジャンさんの顔の前で…」
「きゃぁーっ、それってさ、もしかして!!」(ヘンリエッタ)
「へえ、ジャンさん、そういう趣味があるなんて…体液交換&口腔愛撫ってこと?」(クラエス)
「ちょっと…これ以上…私…聞いてられないわ…」(トリエラ)
「みんな、ちゃんと最後まで聞いて。
女の人はね、ジャンさんにキスすると思ったんだけど、そうしなかったの!
ジャンさんがね、『まだ飲むなよ』って言うとね、
女の人はにっこり笑って、ジャンさんにお口の中を見せてたの。
そしてね、お口の中で、どろっとした精液をかき混ぜてたみたいなの。
あれって、どんな意味があるのかなぁって、不思議だったけど、
ジャンさんは、出した精液を見るの好きだったからなんだよね。」
「ああ、なるほど。ジャンさんらしいわね。」(クラエス)
「なあんだ、わたし、てっきり、
女の人がジャンさんに精液を口移ししちゃうかと思っちゃった…
そうよね、いくらなんでもそれはしないわよね、だって、
精液は、女の人が飲むものだもの。」(ヘンリエッタ)
「ちょっと、ちがうでしょ?精液はね、女の人が膣から入れて飲むものって…
いや…そうじゃなくて、とにかく、精液を口に出す時点で、
それは、男性の女性に対する支配欲の象徴であって、
女性を蔑視している行為なわけで…ホントは…飲んじゃいけない…と…」
「ト、リ、エ、ラ!今宵は、リコとジャンさんの話をしてるのよ。じゃましないで!」
「はい、わかりました…クラエス先生。ごめん、リコ、話を続けてくれる?」
「うん、それでね、女の人は、しばらく、ジャンさんの顔のそばで、
くちゃくちゃもぐもぐお口を動かしてたの。
横顔だったから、お口の中までは、見えなかったけど、
音が結構くちゃくちゃ聞こえてたから、多分、精液を噛んでたんじゃないのかなぁ。
美味しそうに味わってる感じだったよ。」

145:公社の十日物語
08/05/16 19:57:53 0mASlAfc
「その女の人って、大人の人だよね?義体じゃないんでしょ?」
「うん、生身の女性だったよ。
年齢は、20代後半から30代前半の雰囲気だった。」
「その年齢で、そういうことができて、ジャンさんが選ぶ娼婦となると、
まあ、かなりの高級プロ娼婦ね。一晩3000ユーロぐらいって感じ?」
「うん、その人はね、ずっとジャンさんだけをお客にしている人で、
他の人とはしない契約なんだって、専属なんだって。
その代わり、ジャンさんが呼んだときはいつでもどこでもどんなことでもするんだって、
その女の人が教えてくれたよ。」
「ふーん、リコが、一般人とそんな話をするなんて、
ジャンさんが、よほど信頼してる人なのね。意外だったわ。
公社の外で、そんなに社交性のある人には、見えなかったけど。」
「ううん、このことはね、ジャンさんも多分知らないと思うの。」
「えっ、何が?」
「私が、その人と話したこと…」
「えっ?じゃあ、ジャンさんは、リコが、
ずっとクローゼットの中から隠れて見ているって思ってるわけ?」
「うん、多分。」
「ええぇっ、それって、ありえなーいっ!担当官の命令に違反してるんじゃないの?」
「命令違反っていうか、ジャンさんは、その女の人から学べって、仰ったから、
その女の人は、担当官から任命された教官ということになるから、
公社の人間と同じ守秘義務を持つ人として、考えてるの。
それに、ジャンさんが、選んだ人なら、
わたしもその女の人に敬意を払わないと失礼かなって思ったから。」
「それで、その女の人とどうやって仲良くなったわけ?
あんた、まだ、クローゼットの中で隠れてるんでしょ?
どうやって、のぞきがばれたの?」
「うん、それが、この話の一番おもしろいとこなんだ。」

リコは、普段滅多に自分から話そうとはしない。
好奇心旺盛で、いろいろな芸術品に関心を示す一方で、
担当官であるジャンの意向に逆らうことは絶対にない。
それ故、ジャンの不興を買うような行いは、厳に慎むようになっていた。
しかし、ジャンが、わざわざ、『学べ』と命令したことで、
リコに行動の自由を与えることになったのだ。
自分が知らないことをもっと知りたい!
もっと勉強して、ジャンさんの完璧な道具になりたい!
他の女の人にできることなら、自分にもできるようになって、
ジャンさんに使ってもらうんだ!
そういう意欲が、リコの中に芽生えていた。

146:公社の十日物語
08/05/16 20:06:27 0mASlAfc
「女の人がね、しばらく、お口の中で精液をかみかみさせていたら、
ジャンさんが、『もういいぞ、飲め』って言ったの。
そうしたら、その人、『ごっくん』って喉を鳴らして、嚥下したの。
わたしね、その音を聞いたとき、わたしの股の間がびちょびちょに濡れちゃってて、
”ああ、わたしも、ジャンさんのをああやって飲んでみたい”
って、ジャンさんが喜んでくれるなら、わたしだって、あれをやってみたいって、そう思ったの。
そうしたらね、その女の人が、
『なんだか、いつもと感じが違うわ、今日のあなたって、先生みたいよ。
まるで誰かに教えてる感じ…』
って言ったの。
ジャンさんは、黙ってたんだけど、その後、急に不機嫌になって、
ベッドから降りて、一人でシャワーを浴びに行っちゃったの。」
「ふーん、なるほど、自分の心を読まれて、不機嫌になっちゃったわけね。
それって、ジャンさんらしくないわね。」(トリエラ)
「つまりさ、ジャンさんは、リコに、フェラチオとか、
セックスのテクニックを学ばせようとしてたんでしょ?
それなら、その女の人にそう頼めばいいんじゃない?
わかんないなあ、中年男性の心理って!」(ヘンリエッタ)
「私が思うにさ、ジャンさんって、リコを自分の道具だって思ってるところがあるでしょ?
だから、自分の愛人に、それを教えてくれって、頼めないんじゃないの?
30代の男ってプライド高いから。
まして、自分の妹に、性処理の仕方を教えてやってくれってなんて、絶対に言えるわけないじゃん!
このロリコンペド野郎って、言われそうなんじゃない?」(トリエラ)
「それにしても、その女の人の観察力もすごいよね。
結局、ジャンさんが、リコに見せようとしていたことが、ばれちゃったわけでしょ?
鋭いよね、大人の女の人って、セックスの最中でも、そういうことまでわかるようになるんだぁ。
私なんかまだまだなぁ、もっとかんばって、ジョゼさんのお役に立てるようにならないといけないなあ。」
「それでね、ジャンさんがシャワールームに行ったらね、
その女の人が、クローゼットの方を見て、見えないはずの私に言ったの。
『隠れてないで出てきなさい!』って。」
「えっ!リコ、それで、あんた、素直に出てったわけ?」
「うん、初めは、ごまかそうと思ったんだけど、女の人がね、
『私は、あなたの先生なのよ、私のテクニックを学びたいなら、
きちんと顔を見せて、挨拶をなさい』
って言われたの。」

147:公社の十日物語
08/05/16 20:11:17 0mASlAfc
「ほーう!並の娼婦の台詞じゃないわね。もしかして、元軍人なのかしら?」
「ううん、お仕事は、ずっと男の人を躰で癒すお仕事をしてる人。
ただ、社会福祉公社の仕事をよく引き受けてる人で、
今は、ジャンさんとだけおつきあいしてる人なの。
それで、わたしも、クローゼットから出て、その人に会ったの。『こんばんは』って言ったわ。」
「その人、驚いたでしょ?」
「うん、少し、驚いたって。でもね、すぐに、その人は、私のことを理解してくれたの。」



『あなた、社会福祉公社の娘さん?普通の子じゃないわね?名前は?』
『はい。いいえ。リコって言います。』
『そう、彼の命令で、私を見張っていたのかしら?それとも、自分の意志?』
『両方です。』
『なかなか賢い子ね。同時に複数の質問に答えてくる子は、そうは、いなくってよ?』
『ありがとうございます。』
『礼儀正しく躾けられてるようだし、何より、その不釣り合いな背中のアイテムが、おもしろいわね。』

女性は、リコの背後のホルスターに収められているCz75の存在を自分の躰のジェスチャーで示して見せた。
銃を持っていることを知られ、リコは、もはや自分が普通の子だといういいわけができなくなった。

『えっと、あなたが、ジャンさんに危害を及ぼすときは、撃つように命令されていました。』
『あはっ!そうなんだ。
でも、私にその気はないし、彼に危害を与えられるほど私は強くないわよ?おかしいと思わない?』
『あなたがしていることを見て、学ぶようにも命令されてました。』
『うん、よろしい。そっちの命令が、正解よ。それで、どうかしら?真似できそう?』
『難しいお仕事だと思いました。でも、できるようになりたいんです。』
『だから、出てきてくれたんでしょ?』
『はい、わたしに、あなたのお仕事の様子を観察させてください。』
『もちろん、見せるのはいいんだけど、このことを彼には?』
『あなたに、ばれてしまったことを知られたら、多分、もう、見せてもらえないと思うんです。
だから、内緒にしていただけませんか?』
『上手い言い方。そうね、それでいきましょう。私に損はないもの。私たちは、師弟関係というわけね?』
『ありがとうございます。じゃあ、クローゼットの中に戻ります。』
『待って、私の名前は、エマヌエーラよ。』
『はい、ありがとうございました。エマヌエーラ…さん。』
『イイ子ね。今夜は、あと最低でも2発は出させるから、しっかり、おべんきょしてね。』
『はいっ、がんばります。』

148:122
08/05/17 17:17:12 YAqL0z0W
どなたかは存じませんが、無修正版を作ってくれたようです。
そたなに感謝を!
URLリンク(www7.axfc.net)


149:名無しさん@ピンキー
08/05/19 05:52:00 Qqd9yk49
>>147
>>148
GJ!!

150:公社の十日物語
08/05/25 19:41:41 s4B194vA
だれもいない…
レスおくれよ…
さびしいよ…

151:名無しさん@ピンキー
08/05/26 12:59:22 utXpHvC8
公社の十日物語様
いつも楽しませてもらっています。
続きを心待ちにしていますよ。

152:公社の十日物語
08/05/26 20:48:57 onoce0D3
「こんな感じだったの。」(リコ)
「ふーん、リコには、ちゃんとした実技指導の先生がいたんだね!」(ヘンリエッタ)
「クラエスの速習モジュールに、ジャンさんとエマヌエーラさんとの実技指導、
…リコのベッドテクニックが上手になるわけね。」(トリエラ)
「わたしの速習モジュールは、本来、銃操作や格闘術に最適化されたものだもの。
セックスという微妙な身体の動きをコントロールすることは、おまけみたいなモノよ。
やはり、実践に勝る練習方法はないわね。」(クラエス)
「それでね、続けて、ジャンさんとエマヌエーラさんのセックスの様子を観察できたの。」
「でも、それってさぁ、リコは、それでよかったの?」
「えっ?なにが?」
「だって、担当官が他の女性とイイことしてるわけでしょ?なんか、腹が立たない?」
「別に…だって、私、おっぱい小さいし、あそこに毛も生えていないし、
ジャンさんを喜ばせるいろんなテクニックを知らなかったら、
ジャンさんが、がっかりするだけでしょ?
早く勉強して、わたしを使ってもらえるようになる方が先だもの。
それに、セックスは、大人の女性とした方が、気持ちがイイって!
ジャンさんが言ってたの。」
「はぁ、よく言うわね!
担当官ってみんな自分勝手なことばっかり言ってる!」(トリエラ)
「それに、ジャンさんは、エマヌエーラさんを愛しているわけではないと思うの。
わたしに見せるために、無理に抱いてるわけでしょ。
だから、ちっともくやしくなんかないよ。
うん、そういうことなんだ。」…


153:公社の十日物語
08/05/26 20:51:32 onoce0D3
エマヌエーラは、ベッドの上で、喫煙を始めた。
ジャンのシャワーの音を聞きながら、事実を整理して考えてみる。

男性のモノを飲んだ後の煙草は何故か格別な味がする。
少女時代から、ずっとこういう仕事を続けてきたし、
自分には、男を癒す才能があるようだ。
彼も、多くの高級娼婦組合の中から私を引き抜き、
彼の専属としたくらいだから、やはり、
自分にはそれなりの実力があったからだと思える。
事実、彼とつきあいだして、収入や待遇は、格段に良くなった。
しかし、身体の若さを売りにできるのは後5年くらいだろうか、
その後は、違った魅力で癒す技術を持たねば、
この商売は、やっていけない。
男だって、若い方がいいに決まっているのだから。
しかし、アレはいったい何なんだ!
どう見ても、あの子は、プレティーンだ。
落ち着いて見えても、ハイティーンでないことは確かだ。
彼って、ああいうのが好みだったのだろうか?
だったら、私を専属なんかにしないはず。
彼の女になって、3年ほど経つが、他の女を抱いていた形跡はなかった…
今の射精量だって、他の女に出していないから、あれほどの量が出る。
味も濃さも臭いも溜まった状態のモノだった…。
あの子に、夜の世界を見せるねらいがどうもよくわからないわね…。
しかも、超一流の男と女の姿を見せて、いったいどうしようっていうのかしら?
真似できるような技術なら、誰もが一流になってるわよ!
ちょっとだけ嫉妬しちゃうわね。
彼が連れてきた謎の少女…

ジャンがシャワールームから出てきたのを見て、
エマヌエーラは、皮肉をこめてかわいらしく語りかける。

「ねえ、自分だけシャワー浴びて、私をベッドに独りぼっちにさせるって、どうなの?」
「俺は別に、そこに居ろとは命令していない。
シャワーを浴びたければ、浴びてこい。
俺は、まだお前に用があるのだから、準備は念入りにな。」
「もうっ!だって、なんか怒ってる感じだったでしょ?
だから、遠慮したんじゃない!わたしも一緒にシャワー浴びたかったなぁ…いじわるね!」
「シャワーを浴びていようがいまいが、お前の身体や技術にはまったく欠点がない。
俺は、お前に惚れ込んでいる…」
「もうっ、真面目な顔でそんなこと言わないでよ!照れちゃうじゃない…」

154:公社の十日物語
08/05/26 20:53:02 onoce0D3
”まったく、この人ときたら、よく言うわ!
私に心を許したことなんかないくせに!”

エマヌエーラは、ベッドの中で、もう一度整理してみた。

つまり、今夜は、私とのベッドシーンをあの子に見せたいわけね。
ねらいは、何らかの教育…あの子が、政府の要人たちの慰み者になるとしたら、
可哀想だけど、男の生理を理解させることが必要な任務を与えられる子なのだわ。
であれば、この仕事も完璧にこなしてみせないといけないわね。
そう、あの子は、多分、諜報員か、工作員としての教育をこの場で受けているのだわ!

エマヌエーラは、クローゼットの方をチラリと見た。
あの子は、きっと、ただの一瞬も見逃さないくらいの集中力でこちらを見てる…

だとしたら、見せてやらねばなるまい。
超一流の大人のセックスというものを。
決して、凡人が真似できないような技術と経験の技を!

「ねえ、ジャン。シャワー浴びなくても、イイって言ったわよね?」
「浴びても浴びなくても、いいと言った。」
「じゃあさ、今度は、私を慰めて欲しいなぁ。
いっぱい、飲んであげたでしょ?
今度は、私のを飲んでみない?シャワーを浴びてない熟れたアソコ…」
「ふっ、飲めるほどお前が濡れているとは思えんな。」
「もうっ、濡らすのはあなたの仕事でしょ?
私は、あなたをいかせるのが仕事なんだから、それは、ちゃんと果たしたじゃない!」

155:公社の十日物語
08/05/26 20:55:59 onoce0D3
>>151
レスを要求してゴメン。
でも、最近元気がなくってさ。
欲求不満をここではらすのも、変だけど…
応援アリガト!がんばるよ!

156:名無しさん@ピンキー
08/05/26 21:47:07 upG1SN/O
このスレに触発されて某ガンスリスレでSSみたいなの書いた事あるけど・・・実際書くとなると難しいねえ。
十日物語さんをはじめここの書き手さんたちはエロいだけでなく、語彙や知識が豊富なのが素晴しいと思う。
でも・・・



もっとエロいの読みたい♥

157:公社の十日物語
08/05/26 22:01:11 onoce0D3
>>156
具体的には、どんなエロがお好みでしょうか?
助言いただければ、幸いですっ!

158:名無しさん@ピンキー
08/05/29 00:07:31 /i+0T/bK
てかアニメって13話で終わりなのか?

159:名無しさん@ピンキー
08/05/29 20:56:02 I7a/Czkn
アニメは終わっても、まだガンスリは終わらないぜ。
俺達はまだ、登り始めたばかりなんだ。
この果てしなく続く、ガンスリ坂を!

未完

160:名無しさん@ピンキー
08/05/30 11:17:30 Lph0ZvQu
問題作である。人によっては「胸が悪くなる」というかもしれない。
舞台は、近未来のイタリアに設定された「公益法人社会福祉公社」。表向きは政府主催の
身体障害者支援事業だが、実態は、なんらかの事情で半死半生の大けがを負った少女たちの
身体を機械でおきかえ、テロリストの暗殺など政府の非合法活動に従事させている団体である。

少女たちはそれまでの記憶を消され、「条件付け」と呼ばれる洗脳によって、
人を殺すことに罪の意識をもたず、男性の担当官に絶対的な忠誠と愛着を持つよう
仕向けられている(少女と担当官の間に性的関係はない)。

「条件付け」と鎮痛のための薬は少女たちの寿命を確実に縮め、ときには記憶障害を引き起こす。
しかし少女たちは、人殺しが日常の世界を淡々と生き、彼女たちを教育する担当官との間には人間的な
「約束」や交流が生まれたりもする。

「少女たちに与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ」

もちろん、とんでもない話である。だが少女たちは、あるいは人身売買によって「殺人ビデオ」に
出演させられた犠牲者であり、親に轢き殺されかけた子供であったりする。それが命を取り留め、
つらい記憶は消され、彼女たちの「殺人」によってテロは未然に防がれ、彼女たちの身体のデータは、
障害者のためのよりよい義手・義足の開発に役立てられる。

つまり、この物語は私たちを試す。大きな矛盾には目をつぶって、せめてできることに縋すがる。
けれど残る違和感と罪の意識。あなたはどんな審判を下すだろうか。

URLリンク(f.hatena.ne.jp)
URLリンク(d.hatena.ne.jp)

161:公社の十日物語
08/05/30 21:49:50 jfeq157u
>>160
より問題作なのは、ブラックラグーン双子のヘンゼルとグレーテルだろ?
あれも、社会の矛盾をテーマにしてるよな。
1人の命を救うために、何億の金を使うこともあり、
1億人の命を助けられる金で、1人の欲望を満たすこともあるって。
1人を殺して、2人以上が助かるなら、それは、犯罪でもOKなのか?
ガンスリもBLも問題作だよなあ。

162:名無しさん@ピンキー
08/06/17 03:08:15 20seftO8
保守をしておこう。

>>161
社会の矛盾をテーマにしてるけど
ブラクラはガンスリ以上に救いようがないような気がする。
公社もラグーン商会も社会的矛盾を解決できるような立場にはないしね。

あくまでもラグーン商会は傍観者的立場で、公社は社会的矛盾を利用しているような?

163:名無しさん@ピンキー
08/06/23 12:41:16 0l2qNpSZ
公社の十日物語さ~ん!
全裸で正座して続きを待ってるよ~!

164:名無しさん@ピンキー
08/06/26 20:44:43 1oV8FlYQ
問題作なのは承知だけど
エロは別腹ww

165:【棘】
08/06/27 01:13:15 Jw/WP5hh
とうとう今日は本誌の発売日。
珍しくエロ神様が降りてきたのに、
これでうっかりヒルシャーに先に逝かれでもしたら
二度とこの話書けなさそう。
そんなわけで二日間でやっつけ仕事w
時間なくて肝心のシーンがこってり書けませんでした。
エロパロ板に投下するにはエロがあっさりし過ぎな気が
しないでもないが、今はこれが精一杯。

166:【棘】
08/06/27 01:15:41 Jw/WP5hh
【棘】


Auf die Hande kust die Achtung,      手の上なら尊敬 
Freundschaft auf die offne Stirn,    額の上なら友情 
Auf die Wange Wohlgefallen,         頬の上なら厚情 
Sel'ge Liebe auf den Mund;         唇の上なら愛情 
Aufs geschlosne Aug' die Sehnsucht,   瞼の上なら憧憬 
In die hohle Hand Verlangen,        掌の上なら懇願 
Arm und Nacken die Begierde,       腕と首なら欲望 
Ubrall sonst die Raserei.       さてその他は、みな狂気の沙汰 

        フランツ・グリルパルツァー ( Franz Grillparzer ) 『 接吻 ( Kus ) 』




 気遣うように髪に触れる手が額へのキスに変わり、頬へ、唇へと落とされるようになっていったのはいつの頃からだっただろうか。

 彼は少女を抱きしめると自身の欲望をこらえるように、あるいは少女の香りを吸い込むように、深く、呼吸をする。なめらかな褐色の頬にそっと手を添え上向けさせたその面は、幼さを残しながらも十二分に美しい。
 ふれるだけの生真面目な口づけからはじまり、段々と深く唇を重ねてゆく。
----それはまるで儀式のように、初めて身体を重ねた時から変わらない手順だ。どれほどそのはしばみ色の瞳に情欲が揺らめいていても、男が抱擁と口づけを省略して行為に及んだことはない

167:【棘】
08/06/27 01:20:15 Jw/WP5hh
 血の色をのぼらせ始めた唇を薄く開いて男の口づけを受け入れながら、少女はぼんやりと思考を巡らす。
 男の、時に滑稽なほどのその自制心は、自分をおびえさせないための気遣い。けれどおそらく、男がそこまで慎重になるのは、そうせざるを得ない理由があるはずで。……そしてそれはきっと、封じられた自分の過去に関わりがあるのだ。
  かつて、男と旧知の間柄だというマフィアの元幹部が語っていた、男がアムステルダムで摘発した児童人身売買組織の話。
自分が保護されたと聞かされている街で行われていた犯罪。売買された子供の用途は大抵の場合はチャイルドポルノ。児童売春かスナッフムービーか…まあ、そんなところだろう。多分自分も、珍しくもないそんな被害者の一人だ。
 だからきっと、この男は呆れるほど慎重に手順を踏んでゆくのだろう。
 つま先立ちで男と唇を合わせたまま、少女の両腕がためらいがちに男の広い背中に回される。
 銃の撃ち方も、異国の言葉も、キスの合間の息継ぎも、皆この男に教わった。背すじを滑らせるように自分の身体をなでる男の手の感触に熱いため息をつきながら、少女は潤んだ青い瞳を閉じる。
 いいか?と問いかける男の言葉に、お好きなように、と少女は答える。
 時には強引に奪って欲しいと思っても、彼は必ず少女の意思を確認しようとする。突き放すような返答は朴念仁な男へのささやかな抵抗だ。そうか、と困ったような表情で少女を見つめ、男はもう一度閉ざされた瞳の上にくちづけた。



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