08/02/15 16:30:20 FxHk9zko
>>271
GJそして乙。ここ数日投下なさった方々も乙。
投下ラッシュのせいか、それとも風邪で熱があるせいか目眩がします。
262:名無しさん@ピンキー
08/02/15 19:33:19 Db6REbPu
お疲れでした。寸止めが憎い……w
263:名無しさん@ピンキー
08/02/15 21:04:56 LHbIKiKC
絆キター!!
>>271
GJ!!
264:Tokyo Lights 1
08/02/16 01:23:46 15WjgzXC
ピリリリリリ
…
ピリリリリリ
…?!
携帯が鳴っている。寝ぼけた意識の中、電話に出る。
「もひもひ」
「メールしたから見て」
「は?」
「寝てた?○○駅にいるから」
名前を確認する前に、一方的にやり取りを終了されてしまった。
メールを確認した。
-新着メールあり-
アドレスを見て、眠気が一気に吹っ飛んだ。
件名:こんばんは
本文:こっちに戻ってきてるんだ。今、○○駅。
迎えに来てくれないかな。
ジーンズを履き、ジャケットを羽織り、マフラー片手に車の鍵、携帯を持ち玄関下りていった。
「出掛けるのか?」
父親が遅い晩酌をしていた。
「うん。車借りる」
「雪の後だ。気をつけろよ」
「わかった」
玄関を出ると、冬の夜の寒さが襲ってきた。吐く息が白い。
車に乗り込むとエアコンをフル回転させた。
ガムを手に取り、包みを捨て口に含む。レモンが口に広がる。
まだ寒いが車を発進させた。
返信はしていない。あいつの性格なら多分ずっと待ってる。
この時間なら駅まで数分で行ける。でも、急な電話だったな。
というか、電話もメールもしばらくしていなかった。
信号待ちがいじらしい。車内は暖まってきた。
ラジオをつけた。FMでは静かな洋楽が流れている。駅入り口の信号でもつかまった。
ロータリーに白いコート、黒のロングブーツの彼女がいた。
縦列タクシーの横につけるとハザードを焚いた。プップッと軽くクラクションを鳴らした。
この車がうちに来て、もう十年近く経つ。気付くはず。
内側から助手席ドアを開けた。無言で乗り込んできた。
265:Tokyo Lights 2-1
08/02/16 01:24:20 15WjgzXC
「ふぅー」
第一声は安堵の一息だった。
「ねえ…」
「…」
「…?!」
「寒いね~」
彼女はそう言うと両腕を摩った。その仕草はかわいかった。
「…酔ってる?」
「ごめん。バスも無ければお金も無かったから。寝てたよね…」
「それより、そんなカッコで…」
「マフラー置いてきちゃったみたいの」
「どこに?」
「あっ今、高校の時の友達と飲んでいて、多分そこ」
ブー
タクシーがクラクションを鳴らしてきた。
「ここまずいからとりあえず出すよ」
「おっけ」
車内は静かだ。ずっと会ってなかったとは言え、特別話すことも無い。
ラジオが流れている。家の角まで来て車を停めた。
「どうする?」
隣同士だが、家の前で降ろすのはなんだか気が引けた。
父親に出掛けるのを見られているし、彼女を迎えに行っただけだと思われる。
だからって別に隠すような事でもないんだけど。
「ドライブしない?」
「はい?」
「ドライブ!」
「こっちに帰ってくる予定だったんだろ。いいの?」
「もともと朝まで遊ぶつもりだったのを抜けてきたから。明日なんかある?」
「いや、ないけど」
「じゃあ決定。行き先は…」
「…」
「横浜!」
進路を西に、湾岸を目差しとりあえず車を出した。
セルフスタンドに寄る。給油中、彼女の後姿を見つめた。
266:Tokyo Lights 2-2
08/02/16 01:24:50 15WjgzXC
真崎惠子。同い年でうちの隣りに住んでいた。
いわゆる幼馴染というやつだ。親同士も仲が良く、家族ぐるみの付き合いをしている。
しかし、最近は正月や盆位にしか会う事はなかった。
気まずいとかそういう事は無かった…と思う。
スタンド内のカフェで、ミネラルウォーターと缶コーヒーを一緒に会計をした。
「○○リッター入りまして、こちらと合わせて○○○○円になります」
財布を覗く。今月はヤバいな。
スタンドの照明が反射して良く分からなかったけど、
レジからフロントガラス越しに惠子が見えた。その顔を見たら、出費の痛手も吹っ飛んだ。
寝てる。
ミネラルウォーターを頬に当てた。
「ひやっ」
彼女はびくっとして起きた。
あ、余計な事したな。気が利かないな、俺。帰りは寝かせてあげよう。
「これ飲めば酔いが覚めるかもよ。冷えるとあれだからこっちも」
「ありがとー」
「じゃ、行きますか」
車は再び走りだした。
267:Tokyo Lights 3
08/02/16 01:25:17 15WjgzXC
高速入り口を見つけ車線を右に移った。遊園地を左手に川を越える。
しばらくすると観覧車が見えてきた。惠子が口を開く。
「昔話しようか」
「なにそれ」
「保育園のさぁ」
「うちらの?」
「そう。あれ覚えてる?あの膝ぐらいまでしかないプール」
「あったな。夏になると、校庭に、あっ校庭?保育園の場合なんて言うんだっけ?
広場?お外?まあいいや。そこに骨組み作ってビニールを張ったようなやつ」
「そうそれ。相当大きかったよね」
「そうそう。でも今見ると小さいんだろうな」
「プールの後のあれは覚えてる?せーので言おうか」
せーの
「シャワー!」「シャワー!」
~俺は小柄でおとなしい園児だった。話す相手も決まっていて
あまり話さない子達が来ると大人しくなる。家では正反対だった。
いわゆる内弁慶だった。プールは水泳というより水遊びに過ぎない。
そしてプールの後、シャワーで体を流す。そのシャワーというのが可笑しくて、
水道にホースで延長し、先生がシャワーヘッドを持ってるだけ。
そして、園児はスッポンポンで並んで待つ。それが男女交互に並んでいるのだ。
もちろん順序を守らず、仲間同士、女の子同士になっている所もあった。
俺はそういうの駄目でちゃんと順番を守っていた。
隠す奴も隠さない奴もどっちもいた。隠さない奴の事は全く理解できなかった。
俺の前には女の子のおしり。もちろんそんな意識はない。
ただ自分の番になって体を流すのが嫌だった。だからずっと股間を隠して並んでいた。
俺の両肩に手が乗った。後ろは恵子だった。
恵子は四月生まれ。俺は翌三月生まれ。同学年だがほぼ一年違う。
頭半分くらい大きい恵子は動じない。手を乗せてるので隠す事なく待っているんだろう。
俺は振り向く事ができなかった。~
「今考えると問題になりそうだよな」
同じ映像が浮かんでいるのだろう。恵子は微笑んだだけだった。
~俺の番になると頭上から冷たいシャワーが降ってきた。
首から肩から、そして手を挙げるように促されると股間が晒された。
脇から足にかけて流す。そして、一番嫌な事。それは後ろを向き背中を流される事。
後ろを向くと恥ずかしさから下を向いた。恵子の足しか見る事が出来ない。
また手をどける様に言われると、そうするしかなかった。顔から火が出そうだった。
最後に頭からシャワーを浴びせられる。これも耐えられない。
俺は頭から水を浴びると、アップアップして息が出来なくなるような感じになる。
それから逃れる様にしたら、躓いて後ろの恵子にもたれ掛かってしまった。
恵子は俺をしっかり支えてくれて、後の事は覚えていない。~
268:Tokyo Lights 4
08/02/16 01:25:54 15WjgzXC
二つ目の観覧車。そこを過ぎると大きな海底トンネルが口を開けている。
「コーヒー飲む?手を温めてたからちょっとぬるくなってるけど」
「あー俺はいいや。トイレ近いし」
「そうだったね」
~うちの地区では保育園、幼稚園、小学校低学年時に子供会なる催しがあった。
「洋ちゃん、ジュース飲む?」
「ちょだい」
「駄目よ。寝る前に冷たいもの飲んだら」
「でも洋ちゃん、欲しいってさ」
その年は湖畔でのキャンプだった。
各バンガローに二家族が泊まる。俺のバンガローはもちろん真崎家とだった。
この子供会、父親は殆ど参加しない。うちも恵子のうちもそうだった。
お互い一人っ子のため母親が二人、恵子、そして俺。
定番の飯盒炊爨、カレー、簡単なアスレチック、夜はキャンプファイヤー。
楽しかったな。布団の中。背中をトントンされる。何かを渡された。
水筒だった。振り向くと、恵子はいたずらっ子のようにしめしめと笑う。
中身はレモンジュースだった。声には出さずアリガトの口を作った。恵子は笑った。~
「今もそう?」
「あのね…」
~翌朝、俺は布団から出る事を拒んだ。
「やったな」
さすが母上、良くお気づきで。下半身はいい感じに蒸れていた。
恵子はまだ寝ていた。おばさんはすぐにわかったようだった。
母親に掛布団を剥がされると、夏とはいえ股がひんやりした。
「早くしな。恵ちゃん起きちゃうぞ」
それを聞くと行動しないわけにはいかない。
しかし、母親は濡れたパジャマを持ち外に行ってしまった。
母親同士の暗黙の了解か、おばさんが手伝ってくれた。
タオルで下半身を拭いてくれた。隠しても無駄と分かると従った。
「おねしょだ…」
見られた。
「恵子そこのタオル一枚取って」
俺は股間を隠し、惨めにパンツを履いた。~
269:Tokyo Lights 5
08/02/16 01:26:28 15WjgzXC
空港の明かりが車窓を流れる。先を行く。
~恵子の家で遊んでいた時、いいもの見せてあげると言われた。
そこは、普段遊びに行っても踏み入れる事のない、秘密の扉という感じだった。
ベッドがある。おじさんとおばさんの寝室だ。
そこに入った時の感じは、なんとなくいけないことをしているようなものだった。
ガラス扉の棚には飴色の酒の入った瓶や、ジャンボジェットの模型が並んでいた。
「洋ちゃん、こっちこっち」
俺は飛行機の模型の方に興味があった。名残惜しかったけど恵子の方に行ってみた。
ビックリした。恵子の上半身が無くなっていた。
そうじゃなかった。恵子の上半身は、ベットの下に潜り込んでいた。
恵子はお尻をふりふりしながら出てきた。
平型のダンボール箱だった。開けると見たことも無い物が色々入っていた。
「これこれ」と言い、本を取りだした。エロ本だった。写真中心の物だった。
まだそういうのを知る前だったので、二人して興味津々。
実際、女の裸を見ても母親のそれというような感じだった。
「なんでみんなはだかなんだろね」
「おんなのひとをいじめてるんだよ」
「ちがうよ」
恵子が否定した。
「これえっちしてるんだよ」
「なにそれ」
「テレビで見たもん。好きな人ができるとえっちするって」
「こんなことするの」
「そうだよ、たぶん」
「なんでこことここ黒くなってるんだろ」
俺は結合していない男女の陰部の黒塗りを指差した。
「おちんちんはうつしちゃいけないんじゃない」
「おんなも黒くしてあるよ。おんなはちんちんないよ」
「わかんない」~
270:Tokyo Lights 6
08/02/16 01:26:57 15WjgzXC
あのダンボールはまだあるんだろうか。
「おじさんはまだ飛行機好きなの?」
「そうみたい。最近は国際空港近くの公園で離着陸を見るのが楽しいんだって。どうしたの急に」
「あ、いや、さっき空港通ったから」
~寝室にはその後も何度か行った。またいつもの様に本を取り出した。
俺はもう見飽きたのでベッドに大の字になった。
すると恵子が馬乗りになってくすぐってきた。
今だ体格で勝てないので抵抗しても歯が立たない。
両手を取られた。恵子の顔が近づいてきた。
「ちゅーしよ」
「やめろよ」
本でも見た。このままいくと本の通り、俺の口に恵子の口がくっつく。
その感覚がどうにも理解できなくて、人の顔がこんなに近づくのも
俺の今までの人生では有り得ない光景だった。
なので俺は、恵子の顔がくっつく瞬間、左右どちらかに顔をそむけた。
恵子はそれでも構わない風で、頬にぶちゅうっとされた。
感覚としてはよくわからなかった。
やめろと顔を反対にそむけても今度はこっちの頬に。その繰り返しだった。
この頃の俺は男同士で遊ぶ方が楽しかった。今日本当は、友達と自転車で
些細な冒険をするのを断ったのもあって、こういう女女な遊びはしたくなかった。~
今思うと、こんなにキスを迫られたのはこの時だけだな。ははは
「なんか、思い出し笑いしてない?」
「へ?」
顔が緩んでたかも。
271:Tokyo Lights 7-1
08/02/16 01:27:22 15WjgzXC
「保育園か。懐かしいよね」
「うん」
「小学校はどんな事あったっけ?」
「っと、その前に、ここちょっと寄るよ」
「うん」
大黒PAで休憩。めでたい名前だな。
~両家共通の知り合いの結婚式のため、どちらの親もいない。俺達は惠子の家で留守番。
俺も結婚式に行きたくて、すねた事を良く覚えている。
別にやる事はなかった。おじさんのエロ本も見飽きた。
俺はこの頃、自分の性器が勃つ事に興味を持ちだした。
性的な意味ではなくて、珍しい現象という意味で。その行動は自然だった。
「ねーねー」
「?」
俺はズボンの前を指で引っ張った。ゴム紐なのでズボンは簡単に開いた。
不意の為、恵子はそのまま視線を落とした。
「すげーだろ」
「なにそれ!」
「ちんちんってでっかくなるんだぜ」
小さい性器は皮を被ったまま勃起している。
日曜の朝は普段より若干遅くまで寝ていられる。
でも平日通り目が覚めてしまうため、布団の中でまどろむのが好きだった。
その時、性器が勃起しているのに気付いた。
昔から勃起はしてたんだろうけど、意識した事はなかった。
あったかい布団の中で、パジャマの上から性器を揉んでいるのが好きだった。
余計布団から出れなかった。
「ねー、えっちしようよ」
「なにそれ」
「あの本みたいなこと。行くぞえい!」
恵子を抱きしめた。けど良く分からなくてベッドで跳ねる事にした。
恵子も加わる。テレビで観たトランポリンを思い出し真似る。
手を伸ばしたり足を広げたり。二人で大笑いした。
それがだんだん変な方向にシフトした。跳ねながらズボンを下ろしたり戻したり。
ズボンを脱いだ。恵子もスカートを捲ったりした。
跳ねるのに疲れると、また変な行動にかわった。
体を屈め、足の間から顔を出す。多分エロ本の描写からの真似だと思う。
俺はパンツを脱いで尻を広げた。大笑い。保育園のシャワーの時の恥じらいが嘘の様。
そして、この時初めて女性器を見た。もちろん恵子の。
どういう成行きか、恵子からそうしたのか忘れたけど、恵子もパンツを脱いだ。
同じように足の間から顔を出した。そして尻を両側から開いた。
そこにちんちんでないものを見た。どちらかというと肛門の印象の方が強かった。
そのうち、親達が帰って来て「ばいばーい」と言って家に帰った。~
272:Tokyo Lights 7-2
08/02/16 01:28:27 15WjgzXC
「バレンタイン過ぎちゃったね」
「あー、14日だっけ」
「もらった?」
「ノーコメント」
~小学校五,六年だったかな。義理だろうがなんだろうが少なからず貰えた。
というか、ただ渡したいだけみたいな、バレンタインに酔っている雰囲気が女子連中にあった。
俺はチョコは甘いからレモンの飴が欲しいと、分けのわからない事を言った。
学校帰りに友達と一緒に帰ってたら女子が数人来て、「ほらチョコ」と渡してきた。
友達は普通にチョコ。かわいいピンク色のラッピングをされていた。
俺のは飴の袋を包装紙で包んである不恰好なもの。後悔した。この飴くれたの誰だっけな。~
273:Tokyo Lights 8
08/02/16 01:28:59 15WjgzXC
トイレを済ませ、一足先に車に戻る。
-メールガキマシタ-
聞き慣れない着信音。助手席に携帯が置いてある。
着信ランプは綺麗な桃色だった。
~中学の入学式の朝。恵子と家の前で記念写真を撮った。
学ランとブレザー。正直女子の制服は味気ないと思う。リボンでもあったら様になるのに。
俺のは袖口から辛うじて指が出ている。制服は大きい方がいいと言うから。
校門でも一緒に写真を撮った。ちょっと恥ずかしかった。
桜は、二人が写った卒業式の写真とは違い八分咲き。~
恵子はメールを確認する。
「友達」
「?」
「マフラー忘れたでしょって」
「そう」
~中学三年。受験の年。この時期の二人は今までで一番親密だった。
親同士もなんか笑って、何か言いたげな雰囲気を出している。
互いの家以外にも良く遊びに行った。
中一の時、同じクラスだったけど、学校では話す事は少なかった。
そもそもクラスは男同士、女同士という構図が出来上がっていた。
その頃とは違い、とても自然になった。~
大黒を後にし、みなとみらいを右手にベイブリッジを渡る。
三つ目の観覧車。
~恵子の家で勉強をした。リビング横の和室にコタツのテーブル。俺はしないけど。
「麦茶ちょうだい」
「勝手にどうぞ」
恵子の了解は関係なくて、いつもの様に勝手に冷蔵庫を開ける。
おばさんがいない時だけだけど。恵子の分も持って戻る。
「勉強しないの?」
「まだ大丈夫」
「何がまだなんだか意味わかんない」
「ギリギリまで粘るのが男!」
「意味不めーい」
「うっさい」~
この考えは高校でも変わらなかった。だから後々後悔する事になった…
274:Tokyo Lights 9-1
08/02/16 01:29:25 15WjgzXC
~合間の休憩。俺はニ杯目。
「うちのクラスの由佳いるでしょ」
「うん」
岸田由佳。一年の時同じクラスだった。小柄でかわいい子だった。
みんな好きな人の話になると、大抵岸田と答える。
好きな人に求める条件をしっかり備えていた。
俺も好きだった。
誰が言っても冗談と取れてしまうため、浮いた話は無かった。
みんな本命がいても、言いたく無いための逃げ道の名前ともいえた。
浮いた話がないので、その曖昧さが心地良かった。
その心地良さが中ニの時に崩れた。三年と付き合ってるという噂が流れた。
ちょっと嫉妬した。ちょっとだから本当に好きだったのか分からない。
ただ、今の心地良さにずっと浸かってても何も起きない。
少なくとも行動しないと、付き合うとかそういう事に発展しないとわかった。
「こないだ、ホテルから出てきたって」
「!…それって…あん時の奴?」
「そう。先輩が高校に行っても付き合ってるんだって」
「つーか、どっからの情報?」
「噂。先輩は制服で行ったから補導されたとか、自転車で行ったから、
自転車に貼ってある学校のステッカーで分かったとかそういう話。
噂になってるよ。由佳と同じクラスだから結構気まずいよ。男子には広まってないの?」
「聞いたことない。つーか自分も噂を広めてるねー」
「…そうかも。一応内緒ね」
「ホテルってさ。あんのかな…」
「なにが?」
「…回転ベッド」
「あーあれ、丸いやつ?なんか古くない?もしかして一面鏡張りとかも想像した?」
「あははは、想像した!」
「頭ん中バブルか!まー私もあると思ったけど」
「行ってみない?」
「…?!」
「…」
「え?ちょっ…」
「うっそ~ん」
「……かっ、ちょっとねー、そういうのやめてくれる!」
「お怒んなって。勉強しなよ」
「わ、わかってるよ!」
275:Tokyo Lights 9-2
08/02/16 01:30:01 15WjgzXC
沈黙
冗談言ったのに冗談じゃない空気になってしまった。
平静を装って雑誌読んでるけど、なんか意識してしまう。
ずっと一緒にいるけどそんな目で恵子を見たことはなかった。
ちらちらっと恵子を見た。顔はノートを取っているためうつむき加減。
視線には気付かないはず。首筋から胸元に移る。
膨らみが二つ、肘をついた腕の奥にある。
腰をひねった感じに座っている。時折足を掻く。
「ねえ」
「な、なに」
返事がぎこちなくなってしまった。
「好きな人いないの?」
「俺?」
「うん」
「いないっちゃ、いない」
「なにそれ」
「そんなホテルの話されて僕、泣きそー」
わざとふざけた。
「え、もしかして、由佳好きだった一人?」
「そうよん。だから付き合ってるの聞いた時はショックだったなー」
「でも、みんな岸田がいい。岸田、岸田って言うからみんなどこまで
本気かわからないよね。本気だった?」
「…」
「なんだ。返事に詰まるんだ」
「なんだよ。自分はどうなんだよ」
「…いないな。勉強忙しいし。勉強しなよ」
「いいのいいの。でも俺らガキの頃からずっと一緒だよな。好きな人の話なんか女にしたことねーよ」
「それって女として見てないってことでしょ」
「腐れ縁っつーの?それだよ」
「余りにも日常だよね。お互いがいる事が。空気って言うか。
普段意識しないけどなきゃ困るみたいな。でも腐れ縁は使い方違くない?
それは好ましくない時に使うんじゃなかった?」
なんか凄い事言ってるような気がするんだが。
276:Tokyo Lights 10
08/02/16 01:30:31 15WjgzXC
「でもそれって理想の関係かもね。ねっ」
「…」
答えず惠子を見つめる。
「な、なに?!」
コタツ越しの告白。その言葉は自然に出てきた。
「キスしていい?」
「えっ」
「ダメ?」
「…」
長い沈黙。空気が完全におかしくなった。
「するから」
「待って。心の準備が…」
惠子の方に周り、肩に手を置き、唇を合わせた。
恵子の匂いと感触と熱が唇に広がる。
唇を離すと恵子はうつむいた。恥らっている様に見えた。見つめ合う。
「ちょっと、もうやめようよ」
恵子を押し倒した。再びキスをした。胸を触った。
シャツを首まで捲くり、スカートをたくし上げた。
白い下着。恵子は両手で顔を覆っている。
俺はシャツを脱ぎズボンも脱いだ。手をどけると、恵子と目が合った。
その目は、俺には同意と映った。パンツを脱ぐとペニスは完全に勃起していた。
避妊なんてどうしていいかわからないし、持ってないし。
心臓が信じられない鼓動を繰り返す。顔が火照る。
どうしていいかわからないので、恵子の股間に自分のモノを近づけようとした。
俺はペニスを握っていざなうつもりだった。
「!」
白い液体は、恵子の下着と畳を汚した。
体中の血の気が引いていく。
惠子は片腕で両目を覆い、
…泣いていた。
「…ご、ごめん」
「帰って…」
「でも…」
「帰って!」
そうするしかなかった。~
深夜の山下公園。自販機でジュースを買って戻る。
~あれから数日全く会わなかった。
電話で謝った。惠子はもういいからと言った。怒ってはいないけど、後悔してるという。
惠子は俺と目を合わせなくなった。そのまま卒業を迎えた。
277:Tokyo Lights 11-1
08/02/16 01:31:01 15WjgzXC
卒業式の朝。二人で記念写真は撮らなかった。
入学式の朝。二人で記念写真は撮らなかった。
俺は、家の前の道を左へ自転車で行く。地元の公立高校。
恵子は、家の前の道を右へ駅へ向う。都内の女子高。
あの日を思い出してオナニーをした。
人生最悪の射精だった。
その日も、それを済ませると、手を洗うため一階に下りた。
恵子のおばさんが来ていた。
「恵子が……連れてきたのよ」
「あらそう!」
「あ、洋ちゃん…」
おばさんは俺に気付くと、口篭もった。
「それじゃね」
肝心の部分は良く聞こえなかったけど、俺も薄々感じていた。
高校に入ると、恵子と会う事は少なくなった。
あの時を思い出し自分を慰めた直後に突きつけられた、惠子の恋人の事。
自分自身を嫌悪した。大切なものを失った感じがした。~
-心地よさに浸っていても何も始まらない-
車内。下道で帰ることにした。都内に向け北上する。
軽快な着信音。J-POPだ。
「ごめん、出ていい?」
「あ、うん。いいよ」
~東京に来たのは久しぶりだった。現地待ち合わせ。
海外アーティストのドーム公演に誘われた。
そのアーティストにはあんまり興味無かった。
誘ってきたのは恵子だった。急な誘いだった。どうして?と思った。
惠子は恋人がいるのに、俺とも昔の様に話すようになった。
コンサートが終わりトイレに行くから待っててもらった。
トイレから戻ると電話をしていた。なにか緊迫した感じを受けた。
「ゴメン、お待たせ」
「…」
「どした?」
「帰ろ」
その目は泣いた後のようだった~
278:Tokyo Lights 11-2
08/02/16 01:31:30 15WjgzXC
外で話したいからと車を停めた。歩道の端で話している。
ハザードの点滅が惠子の白いコートを、一定の間隔でオレンジに染める。
~惠子の様子が変わった。早足で先を急ぐ。
「どうしたの?」
「なんでもない」
「なんでもないなら、どうして泣いてるの」
「…」
「彼…氏?」
抑えていた物が堰を切った。惠子は、人目をはばからず泣き出した。
地元の駅まで一言も口をきかなかった。家まで歩く。
大分落ちついたようだ。相変わらず、惠子は俺の数メートル先を行く。
なぜこのタイミングだったか良く分からない。
「俺、恵ちゃんが好きだ」
「…」
惠子の足が止まる。
「付き合って欲しい」
「ゴメン」
「子供の頃からずっと一緒で、あまりにも身近にいたから気付かなかったけど…。
あの時…あの時、お互いが空気のような存在、それが理想の関係って言ったの覚えてる?
あの事が恵ちゃんをとても傷つけた事。高校に進んで恵ちゃんに恋人が出来た時、
取り返しのつかない事をしたと後悔した。大切な何かが遠くに行ってしまったと思った。
恵ちゃんの事は忘れようとしたけど…出来なかった。
俺にはこんな事言う資格ないんだけど…恵ちゃんを大切にしたい。だから、」
「ゴメン…無理だよ…」
「…」
「私…、先行く…」
惠子は走り出した。俺はその場に立ち尽くした。拳を強く握り締めた。~
279:Tokyo Lights 12-1
08/02/16 01:32:02 15WjgzXC
「ごめん、お待たせ…」
「うん」
~俺は大学受験に失敗した。恵子は上京し家を出た。
二人の関係は致命的に薄れていった。
浪人生活が始まり、予備校とバイトの日々が続く。バイト代はパチンコと風俗に消えた。
東京で大学生活を送る恵子を思うと、情けなくて死にたくなった。~
いろいろあったが、これからを決心した矢先の電話。
車内に戻った恵子は喋らなくなった。
何度目かの信号待ち。
「私…結婚するの」
「…!」
後続車がクラクションを鳴らす。信号は青になっていた。動揺を隠せない。
「約束した人がいるの。いつか結婚しようって」
「…」
恵子の方を向く事が出来ない。視界の端にうつむく恵子が写る。
「でも…今、ふられちゃった」
反射的に恵子を見た。目にいっぱい涙を溜め、今にも頬を伝いそう。
「…」
「重いんだって…」
「…」
「本当は駄目になるってなんとなく分かってた。今の電話も、合鍵を返してだって…」
「…」
「私、やり直せないか聞いてみたけど…」
「もう、」
「無、」
「もう…言わなくていいよ」
俺は、恵子が他人と結婚しても祝福できると思っていた。
一瞬だけその相手を心底軽蔑した。
280:Tokyo Lights 12-2
08/02/16 01:32:32 15WjgzXC
車内。沈黙。川崎の夜景。信号待ち。青になる。アクセルを踏む。
車が左にブレた。急ブレーキ。後続車はいない。
恵子がハンドルを左に切った。
「まだ帰らない」
「?」
「あの日の続きする?」
切られたハンドルの左前方。ネオン看板。
-Hotel Tokyo Lights-
「恵子おまえ、やけになるなよ」
「そうかもね…」
「そうかもって…だったら思ってもない事言うな!」
「…」
「帰るぞ」
「洋ちゃん」
「?」
「私ね…」
「…」
惠子は涙を拭いながら続けた。
「私、小さい時から洋ちゃんの…、へへ…、お嫁さんになるって思ってた。
子供の頃お父さんの本とか見たよね。小中でもいろいろ知ったし、
…初めては洋ちゃんだと思ってた。そうなれたらうれしいなって思ってた」
「…」
「あの時、強引にされて本当にショックだった。あれは嫌悪の対象にもなるって思った」
「…恵ちゃん」
「高校の時も彼氏いたけど、なんか違ったんだよね。
高校の頃は洋ちゃんの事、露骨に避けてたよね。ゴメンね」
「恵ちゃんが謝らないでよ」
「告白された時、本当はうれしかった。でも踏ん切りがつかなかった」
「俺…恵ちゃんがずっと好きだった。思えば恵ちゃんが隣りに越してきた時から。
高校で恋人ができたって知った時、もう、諦めようと決めた。
受験に失敗して、これでもう恵ちゃんに合わせる顔も無くなった。
大学諦めようと思った。悪い方に悪い方に考えるようになった」
「洋ちゃん…」
「今日連絡貰って、恵ちゃんに会って、もうちょっと頑張ってみようって思った」
自然と、本当に自然と涙が溢れてきた。
「キスして」
助手席に体を持っていき、唇を合わせた。
281:Tokyo Lights 13
08/02/16 01:36:15 15WjgzXC
Tokyo Lights 13
「ベッド回転してないね」
「うん」
「鏡もないね」
「うん」
「体逞しくなったね」
「そう?」
「うん」
「恵ちゃんも、綺麗だね」
「本当?変じゃない?」
「全然」
「うれしい」
-Crazy For You!!!-
大田市場から海底トンネルで臨海エリアに抜ける。前方にテレビ局。
「あ、そこのコンビニ寄ってくれる?」
「あ、うん」
「何飲む?」
「え、じゃあ烏龍茶」
「おっけ。ちょっと待ってて」
レジを待つ惠子が見える。自分でドアを開けた。助手席に座る。
ちょっと照れ臭い。
「はい。ハッピーバレンタイン」
コアラのマ○チ…
「これも好きだったでしょ」
レモンの飴。
そう言えばなんだかんだいって、あの時、飴をくれたのは一人だったな。
ずっと覚えてたんだ。
「帰ろ」
「うん」
下道はさすがに無理があった。こんな時間になってしまった。
夜明けが近い。地元の川に掛かる橋を渡る。恵子が口を開く。
「随分遠回りしたね」
「え」
「ドライブ」
「うん」
「それと…」
「それと?」
「私達」
3月14日には、とびきりのお返しを!
おわり
282:名無しさん@ピンキー
08/02/16 01:57:18 Ma+vC3EI
こ、ここで終わりとな
むごい、その仕打ちはあまりにむごい
つづきを たのむ
しかしGJせざるをえない
283:名無しさん@ピンキー
08/02/16 18:19:59 PEuhDLua
GJと言わざるを得ない
284:名無しさん@ピンキー
08/02/16 23:52:21 Te93bLOf
GJだな
紆余曲折の果てに結ばれるというのも悪くない
ただまぁ、もうちょっと最後に甘い展開があればもっとよかったかも
あ、いやあくまで個人的意見よ?
285:名無しさん@ピンキー
08/02/17 06:32:05 4MTIi3dk
終わり方はこれでいいと思うけどなぁ。
286:名無しさん@ピンキー
08/02/17 06:52:37 sPtFHGrR
小説は少なからず読者に空想の余地を持たせるものだからこれでGJ。
287:名無しさん@ピンキー
08/02/17 22:29:46 HNVrM9Ht
GJ!
それはそうと、NVcIiajIyg氏を未だ心待ちにしているんだが…
氏は何処へ…
288: ◆6Cwf9aWJsQ
08/02/18 04:51:54 yKCL4vKD
投下いきます。
バレンタインネタの続きです。
289:シロクロ番外編『手を変え品を変え』
08/02/18 04:53:37 yKCL4vKD
「・・・あうぅ、あんっ・・・・」
既にパンツ一枚になった啓介がベッドに横たわりリボンに包まれた私のカラダを愛撫する。
私は恋人のその行為に身を任せていた。
普段とは逆の構図になってるけれど、
私が啓介にどうすれば喜んでもらえるかがわからないのでこのようにされるがままになっている。
悔しいという想いはない。
啓介が私のためにしてくれることはいつだって嬉しいことだから。
ただ、それに答えられないのが歯がゆい。
だから、少しでも啓介に尽くそうと思って彼に口付ける。
「んむぅっ・・・、くちゅっ・・・」
舌と舌を絡ませ合い、互いの唾液を味わう。
「・・・チョコの味がする」
「そりゃさっきまで食ってたしな」
しばらくそうしたあと唇を離すと、リボンに覆い尽くされた私の胸が啓介に揉まれ、形を変える。
「んぅっ・・・」
初めて揉まれたときは痛みも伴ってたその行為も、
何回か行為を重ねた現在では私にただ快感を与えてくる。
そして、啓介は私の胸のリボンをずらして乳首を露出させると指で摘み始めた。
「はぅ・・・」
コリコリと彼の指の腹で愛撫され、思わず声が出た。
そうして胸の先端が攻められると同時、啓介は私の鎖骨、二の腕、ウェストや太ももに唇を寄せ、
少し強めに吸い上げてキスマークを付けていく。
「うっ、はぅ・・・!」
私はどうやら感じやすい体質のようで、それらが与える刺激に敏感に反応してしまう。
そして、啓介の指が私のクレパスに触れ、なぞり始めた。
「綾乃のここ、濡れてる」
「はぁっ・・・はぁっ・・・うん・・・」
激しい責めで息も絶え絶えになりながらも、私は何とか返事をすると、
お返しに私も啓介の股間に触れた。
「啓介のも、大きくなってる」
「うん」
頷いた啓介は最後に残ったパンツを脱いだ。
290:シロクロ番外編『手を変え品を変え』
08/02/18 04:54:24 yKCL4vKD
「ちょっと待って」
私はそういうと枕カバーの中に手を入れ、そこからあるものを取り出した。
「はい。ゴム」
「おう」
啓介がいつも避妊具を隠している場所はこれまで何度もえっちをした時に覚えている。
啓介もそれを承知しているので素直に差し出されたコンドームを受け取り、自分のものに付けた。
それを確認した私は脚の間を覆っていたリボンをずらして秘所を剥き出しにし、
「・・・いれていいよ」
啓介は頷くと私の割れ目に自分のゴムに包まれた肉棒を押し当て、一気に貫いた。
「ん、くぅ・・・!」
啓介の性器が私の膣内に入り込み、一体になる。
そのときにいつも感じる強烈な快感に苛まれた私は喘ぎ声を漏らしてしまう。
「んはぁっ、今日は、私が、上に、なるね・・・」
啓介が頷くのを見ると、私たちは繋がったまま体勢を逆転する。
「んぅっ、あぁっ!」
「ぐぅっ、ふはぁっ!」
身体を動かすたびに互いの性器がこすれあって、圧倒的な快感が襲いかかってくる。
それに耐えながら位置の交換を完了させると、私はゆっくりと腰を動かし始めた。
「あふっ、ああん、あうぅ、あんっ・・・・!」
「くうっ、あうっ、かふっ、うあっ・・・・!」
私が腰を動かすたび、私と啓介は同時に喘ぎ声を漏らしていく。
私の中に啓介が何度も出入りし、その度に感じる摩擦すらも愛おしく感じてくる。
それを何度も繰り返していくうちに、絶頂が近くなってきた。
「啓介、私、そろそろ・・・」
「俺も・・・」
互いに頷きあうと、私は腰の動きを速めた。
「くううぅっ!!!」
「やああああぁっ!!!」
その叫びを合図に、私と啓介は同時に果てた。
291:シロクロ番外編『手を変え品を変え』
08/02/18 04:55:28 yKCL4vKD
「えっちのときにはなんであんなに積極的なのよ。
普段は照れまくってて自分からはなにもしてくれないのに」
「・・・仕方ないだろ。俺だっていろいろ溜まってるんだから」
「いろいろ?」
「ああ、普段は恥ずかしいけど出来ることなら綾乃とイチャつきたいし
特にえっちしてる時にはそういう気持ちが抑えられなくなって暴走してしまうというか
・・・って何言わせてるか!」
「別に言えって言ってないけど」
行為後の心地よい疲労を感じながら私たちは裸のままベッドに横たわって雑談をしていた。
子供の頃もこうやってベッドの中でおしゃべりはしていたけど、
こういった恋人同士のビロートークでは同じような行為なのにものすごく新鮮に感じる。
そのことと先ほどの啓介の自爆から思わず苦笑が漏れる。
「もっと好きにしてもいいんだけどね。私的には私はとっくに啓介のものなんだし」
「・・・やかましい」
「あっ、赤くなった。かわいい~♪」
「やかましいっつーに!」
そう叫ぶと啓介は彼の頭を撫でていた私の手を掴んだ。
もしかして怒って手を振り払っちゃうかなと考える。
が、それも一瞬のことで啓介は掴んだ私の手を引き寄せ、
それに引っぱられた私のカラダを抱きしめた。
「ありがとな」
そういって私の頭を撫でる。
「うん・・・」
愛しい人の肩口に顔を埋めながら私はそう答えた。
ひょっとしたら、私って啓介に思った以上に愛されてるのかなと少し自惚れた考えをしながら。
292: ◆6Cwf9aWJsQ
08/02/18 04:58:16 yKCL4vKD
以上です。
どうしてもバレンタイン当日に投下したくてこんなことになったんですが、
こんな分量だったらまとめて投下すればよかったですねすみません。
293:名無しさん@ピンキー
08/02/18 17:14:49 PP2DbiQl
ムヒョー
294:名無しさん@ピンキー
08/02/18 21:43:27 Eku2PiWJ
エロス
295:名無しさん@ピンキー
08/02/18 22:56:58 wynQODbD
>>304
ご馳走様でした……
296:“年の差。”を書いてる人
08/02/19 01:56:25 Urz0HZVB
思いつきのネタ、投下しますよ。
勢いのまま書いたんですがどうかという話。
『年の差。』も進めずに何やってるんだろうね全く……
なお、タイトルの『勢い全開喧嘩友達』は存在しない架空の作品です。
297:続・勢い全開喧嘩友達 ◆tsGpSwX8mo
08/02/19 01:57:18 Urz0HZVB
「聞いてるぅ、くずはァ」
「聞いてる、聞いてるから、まずは落ち着きなさい」
しなだれかかる酔ッパー。対処に困る私。
……しなだれかかると言うには、なんとなくポーズが危ないけれど、まあ、私の部屋だ。誰も見てない。
「あ、あいつは、もうあたしのコトなんてもうどうでもいいとか思ってるンだァ……絶対……」
あ、泣き出した。しかもなにやら大泣き。ぐじゅぐじゅいう音も聞こえる。
もしかしたらコイツうわぁ汚ねぇハナミズだァとかそんなハナシだろうか。
だが、離れろ、と直で言ったら余計酷いことになりそうだ。
ああ、お気に入りのセーターよ、さらば。幼馴染のものとは言え、他人の鼻水が付いた服は即洗濯籠行きだ。
「待て。いいか、落ち着け。落ち着け」
落ち着け、と三度言うと、彼女―雪津・春猫<ゆきつ・はるねこ>は大泣きをすすり泣きに変えてくれた。
酒の席。お互いもう大学生で、既に十七年の付き合いになる。
お互い大学は別だが、住んでいるのは同じ街だ。
しかしあまり会う機会が無いのは、地元の観光名所にはあまり行かないのと一緒だろうか、などとたまに考えていたのだが、唐突に春猫の方から連絡があった。
『お互い二十になったし、酒飲もう』
……至極単純な文言だった。
しかし、その理由……と言うか言い訳は、既に三回ほど使用されており、お互いもうすぐ二十一になるのであった。
ぐすぐす泣く、酒に弱い親友の頭を撫でつつ、天井を見上げる。
……こうなった経緯は、彼女と私、共通の幼馴染にして、ついこの間春猫の恋人になった馬鹿にあるらしい。
元々、二人をくっつけたのはこの私―季野・葛葉<きの・くずは>である。
ならば、私がどうにかせねばなるまい。
そんな風に意気込みつつ、私は春猫の持ち込んできたビールを飲み干した。
/
298:続・勢い全開喧嘩友達 (2)
08/02/19 01:58:00 Urz0HZVB
―夏島・涼見<なつしま・りょうけん>は、その名前とは裏腹に暑苦しい馬鹿である。
高校時代、体育祭でエキサイトしすぎて肋骨を折り、しかも『翌年に悪い影響を与えぬため』と我慢するという伝説―もっとも、春猫がすぐにそれを露見させたのだが、それはまた別の話だ―を持つほどに。
当然器用さなんてものは望むべくもない。恩を着せるような言い方だが、もしも私が後押ししなければ、今だって涼見と春猫は喧嘩友達の関係だっただろう。
「……と言うワケでだね、君は私に何が起きたのかを説明する義務がある」
と、私が持参したスルメを噛む馬鹿に言う。
昨日の報告を聞いてから即日。襲来に面食らったであろう彼は、やっぱりか、と言う顔をした。
「……酒とスルメの代金は払うから喋らんでいいか? 枝豆もオレがゆでるから」
「駄目だ。私の方にも解決する義務がある。そしてその最適手が君から話を聞くことなんだ」
視線がかち合う。
大学に入ってからオールバックにしはじめた髪は、今は自室だからか昔のようにボサボサだ。
顔つきもどこか疲れているようで、目の下にはクマがある。
「……そうかよ。で、春猫はなんて言ってた」
「君が、距離を置こう、と言ってきたと」
「……そうか」
声に覇気がない。そも、コイツは三点リーダを使わなければセリフを表現できないような空白時間を作らないような男だ。
―攻めれば落ちる。
普段であれば抱けないような確信を持つのも、ある種当然だ。
「なあ、頼むよ涼見。君達が喧嘩をしているのを見るのは、実に心苦しい。喧嘩に他人が介入するのは無粋かもしれないが、喧嘩しっぱなしでいいというワケではないだろう」
「……まあ、そうだけどな」
「涼見。まさか、彼女の事を嫌いになったというワケでもないんだろう? 何か狙いがあるなら、もう少し穏便な方法を提案できるかもしれない。話してみてくれないか」
「嫌いになんかなってねェよ。むしろ愛してる……ん、だが」
さらっとノロケつつ、涼見はスルメをかじる。
「だが、なんだ。やはり何か理由があるのか」
「……ああ」
彼は深くため息を吐き、理由を語る。
訥々と―大真面目に、静かに。
/
299:続・勢い全開喧嘩友達 (3)
08/02/19 01:58:26 Urz0HZVB
……十数分ほどだろうか。
程よく酔いも回り始めた頃、彼は語り終えた。
終わりだ、との言葉に頷き、
「……終わりだな? それ以上、例えば、何かどんでん返しのオチは無いんだな?」
「……ああ。ねェよ」
オーケー、と深く頷き、
「ぅわーはっはっはははははっ!」
腹の底から笑う。本当に、聞いている最中から笑いたかった。
堰を切った笑いに、馬鹿が―否。超絶馬鹿が怒鳴る。
「な、何がおかしいんだバカキツネ!」
「ははは、何がおかしい……!? 何がおかしいだって!? 実に面白いな君たちは! ははは……!」
涙が出てきた。
腹が痛い。
こんなに笑うのは久しぶりだ。
「は、はははは、ひ、はは、シリアスに語っているから何事かと思えば! ははは……!」
ああ、こうしてはいられない。
このおかしさを、もう一人の当事者へと伝えなければならない……!
「あ、こら待てばか!」
唐突に立ち上がった私を見て何かを感じ取ったのか、超絶馬鹿が私を捕まえようとする。
が、
「馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはないなぁ!」
はははははは、と笑いつつ軸足を蹴る。
彼は宙に浮き、
「ふ」
テーブルの端に、思いっきり頭を打ちつけた。
ふ、とか気まずい声だった。ゴスッ、とかやたら鈍い音がした中で、そのただ単に息が抜けただけのような声が妙によく聞こえたのもなにやら気まずい。
……やりすぎただろうか。
「あー……まあ、死んではいないだろう」
うんうんと頷き、動かない涼見に二秒だけ手を合わせる。
……さて。今度こそ、こうしてはいられない。
くつくつと笑いつつ、私はタクシーで春猫の家へと向かう。
/
300:続・勢い全開喧嘩友達 (4)
08/02/19 01:58:48 Urz0HZVB
「やあ春猫。理由が分かったぞ」
開口一番。私はおさまらぬ笑いをこらえつつ言った。
「……理由って何さ」
雪津・春猫は悪酔いする性質だ。
今回は特に二日酔いが酷いのだろう。
髪の毛に櫛も通っておらず、長い前髪と悪い顔色も相まって、以前涼見にチケットを送ったホラー映画のキャラクターに見える。
「彼が君を避ける理由だ」
「……そんなのどうでもいいよ。アイツ、距離を置こう、なんて……あたしのコト嫌いにでもならなきゃ、出てこないでしょ」
「いや、違う」
できる限り、自信満々、と言った風で言い切る。
彼女は怪訝な顔をし、疑問を送ってくる。
「……なんでさ」
「ああ、今から説明する。よく聞いてくれ」
そうして、私は語り始める。双方の話を聞いて、多少脚色した、しかし真実である話を。
/
彼は悩んでいた。
が、ひとまずは目の前の問題だ。
胸の中には最愛の人がいる。
長い前髪を、胸板にこすりつけるような動きだ。
「ぎゅーってして……」
心臓に語りかけるような声は、まさに殺人級。
……オーケー、と思う。鼻血出してもいいですか神さま。
勿論、その要求に答えるのはやぶさかではないと言うかお願いしますぎゅーってさせてくださいと足の裏を舐めたくなるくらいに魅力的だが閑話休題。
よし抱きしめよう、と思った時には、腕は彼女の背と後頭部に回っていた。
流石俺、と頷きつつ、至極優しく力を込め、その体温を実感する。
……今日はいいか。
穏やかに思っていると、胸元から、ああ、と吐息のような囁きが聞こえた。
「心臓の音、優しい……」
だからなんでお前はイチイチ俺の残機を落していくんだ、と落ち着きかけた心臓が再度十六ビートへと向かっていく。
……いかん、と彼は思う。
世には、熟年離婚という例がある。
彼の両親は、彼が幼い頃離婚した。その後父親に引き取られ、紆余曲折があってこの場にいるワケだが、
……昔は、両親だってラブラブだった筈だ。
駆け落ちらしいし、と思い、身をすり潰すような苦しみを進行形で味わいながらも、両の腕から力を抜く。
何の合図と思ったのか、彼女は顎をあげ、目蓋を閉じた。
……ぐああああああ!
悶絶。心の中で超悶絶。分かっている。幼馴染だ、以心伝心、というかこの状況でキス以外の何を求めていると言う……!
腕を、意志を持って彼女の肩に置く。ともすれば貪りそうなその唇を見つめつつ、
「は、―春猫。いいか、よく聞け」
……い、言うぞ俺! 言っちゃうからな!
心の中で盛大にヘタレつつ、彼は言う。
「―春猫。ちょっと、距離を置くようにしよう」
/
301:続・勢い全開喧嘩友達 (5)
08/02/19 01:59:14 Urz0HZVB
「……それが、どうかしたの」
情感たっぷりに語ったが、彼女の反応は至極冷たいものだった。
「……この、距離を置こう、と言う発言だが―彼にとって見れば、『物理的に』とのことだ。先ほども語ったように、彼は心の中でいつも悶絶しているらしい」
「…………」
赤くなるな。無言でノロケているように見えるから。
「それと、もう一つ理由があるらしい」
と、どたばたと廊下を駆ける音。
もう一人の当事者の登場だろうか。来たらどうせ騒ぎになるワケだし、先に言っておかねばならない。
「―彼は馬鹿だろう。自分の底が浅い、といつも己を卑下している」
春猫は無言で同意する。
合鍵があるのだろうか、一度閉められた筈の鍵が回る。
「近づく事は、より深くを知ろうとする事だ。―彼は、底を全て知られたら、己が飽きられてしまう、と恐れていたそうだ」
苦笑し、涙を流す春猫を見る。
「……そんなわけ、無いのに」
……続く言葉を先に言われてしまった。
まあ、春猫も理解してくれたようだし、これ以上は流石におせっかいだろう。
私は開くドアの方向へと向かい、入ってくる馬鹿とすれ違う。
「―本当、そんなワケないのにな」
私の事は眼中に無しか、と一直線に春猫へと向かう馬鹿の背中を見送る。
「お互い、底どころか、表も裏も、過去も真実も、全てを知り尽くした―」
――幼馴染だからな、と、私はドアを閉めた。
302:“年の差。”を書いてる人
08/02/19 02:00:22 Urz0HZVB
投下終了。
以下、言い訳。
保管庫にあるのとか結ばれるまでのばっかりだから、結ばれた後のがあったっていいと思うんだッ……!
とにかく勢いで書いた。書いてる途中はなんかやたら楽しかった。
楽しんでいただけたら幸いなんだが、どうですかよ……?
なお、最初の投下はトリップ機能を全力で忘れていたためなんだぜ。
前のにGJくれた人、本当にありがとうー。
ちなみに、名前の由来は動物から(猫、妖狐、猟犬)。苗字は季節(冬、季節、夏)。
303:名無しさん@ピンキー
08/02/19 02:18:41 anUnQEnu
>>314
一番槍でGJ
なるほど、こういう切り口もありなのか。短いからさっと読めるのもいいね
同じ職人(ってほど大した数も質もこっちにはないが)として勉強になりました
今後もよろしくお願いしますね
304:名無しさん@ピンキー
08/02/19 02:40:24 vb4rwPyt
>>314
前のとテンションが違いすぎる……なんという勢いSS
うん、GJ。
続じゃないのも気が向いたら書いてほしい
305:名無しさん@ピンキー
08/02/20 22:03:45 6edQd84m
ところで、リアル幼なじみいる奴は今どんな関係?
たまに会って酒飲んで、とかあるん?
306:名無しさん@ピンキー
08/02/20 22:47:00 X10Ju8K0
>>317
休みに地元に戻った時に酒飲んだりカラオケしたりするぜ。
趣味とかも合うから朝までぐだぐだに語り合ったりとかな。
……これで男同士じゃなかったらよかったんだが。
307:名無しさん@ピンキー
08/02/20 23:24:10 x/hlLViZ
>>318
あれ、俺がいる
308:名無しさん@ピンキー
08/02/20 23:27:01 XEatjPPb
幼馴染み欲しいな…
どこかに落ちてたり、売ってたらいいのに。
もちろん可愛いおにゃのこ限定で!!
309:sage
08/02/21 00:23:29 3bjFtH3E
>>317
付き合いが小学校からだから幼馴染とは言わないかもしれないけど、年3回くらいカラオケに行って歌いまくってる。
310:名無しさん@ピンキー
08/02/21 00:27:21 Key4PabW
>>317
約10年位の幼なじみがいる。よく家で飲む。まあその場合他の友人も込みだけど
恋愛感情はお互いにないと思う。
311:名無しさん@ピンキー
08/02/21 00:40:34 bIa1d1MF
>>317
地元がド田舎なお陰で保育所~中学卒業までずっと同じだったのが20人ほどいるが、
帰省したときに飲みに行くくらいの付き合いでしかない。
312:名無しさん@ピンキー
08/02/21 00:56:24 zG04i9re
PCの中には一杯居る。
友達のままだったり、セクロスまで行ったり、結婚したりと様々だよ。
大抵の場合、俺に惚れてるんだよな。
313:名無しさん@ピンキー
08/02/21 01:07:59 1ET7IueN
>>324がかわいそうです(´;ω;`)
そんな俺の幼なじみは『選挙前』だけ電話してくる/(^o^)\
314:名無しさん@ピンキー
08/02/21 01:27:42 pkteuVCT
家が隣でベランダも柵があるだけでほぼ繋がってて
物心ついた時には知り合ってた同い年の幼なじみの娘いたよ
けど幼稚園は別でな、遊ぶのはいっつも帰ってからだった
小学校は一緒になったけど、一度も同じクラスにはならなかった
小4の時に(すぐ近くだが)引っ越すことになって、そこから疎遠になった
中2の時に初めて同じクラスになり、家庭科で同じ班になったり
隣の机になったりもしたけど、お互いに気恥ずかしくて一度も話さなかったよ
上京したし、今では連絡先すら知らない
現実はこんなもの
315:名無しさん@ピンキー
08/02/21 01:46:01 w/68uGUI
だからこそ、俺達はここで妄想を炸裂させるのさ。
316:名無しさん@ピンキー
08/02/21 02:46:22 qjYGCUUy
>>327
うまいことまとめやがってw
317:名無しさん@ピンキー
08/02/21 11:31:45 tFCduDgC
なんかこのスレ見ながらゴーイングアンダーグラウンドのトワイライト聞くと何故か泣ける
318:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:34:56 CklJClmN
「そういやさ」
「ん?」
「大学とか短大とか、行きたいとは思わなかったのか?」
並んで歩きながら、唐突に湧き上がった疑問を口にしてみる。そこの角を曲がれば、昔よく
遊び場にしていた河川敷に出る。それを過ぎれば、駅前にあるバイト先はすぐそこだ。
「お前の友達のほとんどは大学か短大かに進んだんだろ? それか就職か」
「まあね」
内容的にちょっと嫌がるかとも思ったが、穏やかな表情を崩さずに相槌を打ってくる。
こいつの中では既に、踏ん切りがついていることらしい。
「でもそういうのって、友達と一緒にいたいから通うもんでもないでしょ?」
「まーな」
「なりたい職業とか、やってみたいこととか無かったしね。崇兄と一緒」
「……」
にひひと笑う紗枝の顔を見て、気付かされる。
そういう暇が無かったんだろうってことを。
一番根っこにあった気持ちに構うことで精一杯になって、その時その時がギリギリで、
将来のことを考えてる余裕が、あの時の紗枝にあったとは思えなかった。
やっぱり、逞しくなったなぁ。その結果が職業家事手伝いなわけだが。
「お母さんにも言われたしね、『今のうちに家事全部叩きこんでやる』って」
「まあ、昔のお前の料理の腕は恐かったからなぁ」
「うるさいなあ、やってないことを最初から上手く出来るわけないじゃん」
「でも、自覚あったんだろ?」
「……あたしの料理食べて真っ赤になったり真っ青になったりする崇兄の顔を見たら、
自覚したくもなります」
全部の料理が不味いってわけじゃないが、昔のこいつの腕前はとにかくムラがあった。
美味いものとそうでないものの差がとにかく激しくて、そうでないものを食べる時は胃と
血圧に多大な負担をかけたもんだ。
「まぁその結果、俺は美味い飯食えてんだからありがたい話だけどな」
「ふへへー、ありがと」
本人が気にしてないならいいか。そもそも学費出してもらえそうもなかったみたいだし。
『大学とか短大通わせても今のあんたにゃ暇潰しにしかならないでしょ。それなのに何十万も
払うなんて馬鹿げてるよ』
進路に迷っていた時、おばちゃんにそう言われたようなのだが、明らかに他意がこもり
まくっているように聞こえるのは何故だ。
この前飯一緒に食った時も、またちっさい頃の思い出話されたからなぁ。「崇之君が家に
帰っただけでこの娘涙ぐんでたんだよ」だの「『崇之君のお嫁さんになりたい?』って聞いたら
すぐ頷き返してきてねぇ、可愛かったねぇ」だの。いやまぁ、紗枝の方が大変だったとは
思うが。
「崇兄に喜んでもらえるなら、それで良かったと思うよ」
「どーも」
恥ずかしがることもなく、さらりとそんなこと言ってくる。以前なら、こんなセリフ
絶対に言わなかったのにな。嬉しいやら寂しいやら。
「大人になったなぁ、紗枝」
けどまあ、以前のようにちょっとしたことで浮気の疑いをかけられなくなってきたのも
事実だ。ここはありがたく思っておくとするか、半分諦められてるだけなのかもしれんが。
「……そうかな」
う、そんな目でこっち見んな。相変わらずお前のそういう顔は苦手なんだよ俺は。
「身体の方も」
「……言うと思った」
突っ込まれるとやばかったので、ふざけてかわす。俺の方はなんだかあれからちっとも
変わってないような気がする。どうなんだそれって、男として。
「崇兄が色々あたしに変なことするからいけないんだろ」
あ、やべ。家出る時にも同じ手口使ってたんだった。不満を溜めさせてたのをすっかり
忘れてた。
319:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:36:47 CklJClmN
「つってもなぁ、あそこまで身持ち固くされたらな」
拒まれると、あの手この手を使ってどうにかして身体を開かせたくなる男の性というものを
こいつはどうにも理解できないでいるらしい。
ただ単に恥ずかしいだけなのかもしれんが。
「う、うるさいなぁ。しょうがないだろ」
「何なら今ここで…」
「ばかぁ!」
生意気な態度も、がさつな口調も、あの時だけは影を潜める。涙目で、しおらしくて、
普段とのギャップがあるからいつものことながら燃えてしまう。口では身持ちが固いだの
なんだの不満げに言ってしまうが、だからこそ紗枝なわけで、あけすけになってくると
ぶっちゃけ嫌な部分もある。っつーか嫌だ。
……俺って本当にワガママだな。
「まったく…本当にエロですけべでそういうことしか考えてないんだからっ」
「男という生き物は例外なくそう生き物でして」
「……崇兄は特別だと思う」
付き合う前からセクハラとかしてたしなぁ。胸揉んだり尻触ったり着替え覗いたり色々
楽しませてもらったことを思い起こす。付き合い始めてからはそういうことしなくなったが、
あれはあれで実に楽しかったなぁ、ふはははは。
「大体さ、妹と思いこんでた相手にそういうことするの?」
「あの時だけお前を一人の女として見てんだ。可愛かったぞー、ちょっと触るだけですげー
反応してくれるからな」
「……」
じろりと軽蔑の眼差しを向けられても、堂々と言い返す。最近主導権を握られる機会が
増えてきたからな。こういう時は今まで通りでいたい。
「はぁー…」
そしたら、心の奥底から吐き出すような深い溜息をつかれる。半ば呆れられてるような
気がしないでもないが気にしない。気にしたら負けだ。
「…まさか崇兄がこんなに変態だなんて思わなかったっ」
「変態だぁ?」
おいおい穏やかじゃねえな。エロだのすけべだの言われることにはもう慣れたが、そう
言われるのは初めてだ。俺は単に自分の欲望に忠実なだけだぞ。
「あんなことされるなんて! 思いませんでした!」
「……あんなこと?」
「あんなこと!」
「……」
「もうっ!」
あんなこととかそんな抽象的に言われてもだな。ボディタッチのことなら既に言ったし
他のこととなると心当たりがありすぎてどれのことなのか……うーん、さっぱり分からん。
幾つか挙げるなら、紗枝が高校卒業したっていうのについつい悪乗りしてブレザー着せて
前から後ろからやりたい放題したこととか、珍しく無実だったのに浮気の冤罪かけられて
その弱みに付け込んでスカートを本人にめくらせてそれを眺めたりそこに顔つっこんだりして
楽しんだこととか、あまりにも生意気な口調にちょっとカチンときた時に手首を縛って抵抗
出来ないようにしてから吊り責めして最後の最後まで半ば無理やりに事に及んだこととか、
俺が窓縁に座って紗枝は立ったままの状態で抱きしめ合ってた時に隙をついて紗枝の下着と
スカート思いっきりずり下ろして一瞬で下半身だけ真っ裸の状態にしてその後は言わずもがなな
展開に持ち込んだこととか、多分そこら辺になるんだろうが……どれだ?
「どれもだよ! このド変態!」
「えー」
心の狭い奴だなぁ、そういう時は精一杯その状況を楽しんだほうが楽しいぞ。
「そうかぁ? 俺はすっげー楽しかったぞ」
「崇兄はそうだとしても、あたしは嫌なの!」
「大人になれよ、紗枝」
「ついさっき『大人になったなぁ』って言ったくせに」
320:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:38:38 CklJClmN
「でもお前だってそういう風にした方が普段より濡れt」
「 何 か 言 っ た ? 」
「あ、いや、その、なんでもない…です、スイマセン」
「まったくもう」
おおお…怖ぇ。ついつい調子に乗ってしまった。最近なんだか尻に敷かれてる気がする。
ここんとこ構ってやれてなかったからなのか、それともふざけ過ぎだからか、なんだか威圧
されることが多い。
互いに砂利を踏みしめて、流れる川を横目にゆっくり練り歩く。子供の頃、毎日のように
通ったこの道は、昔はもっと長かった。道端に備え付けられた自動販売機やごみ箱も、今より
ずっとでかかった。小さくなったと実感した頃には、もうこの河川敷で遊ぶことはなくなっていた。
いつまでと続くと思っていた交友関係も、クラスや学校が変われば簡単に途切れてしまった。
中には気まずくなって、話をすることも無くなった奴もいて。新しい友人を作る度に、昔の
友人の数は減っていった。
そんな中で、ずっと変わらず傍にいてくれた奴もいるけれど。その結果、お互いにとてつも
ないくらいに傷ついた。変わることのないものなんて、あるはずないのに。
「? どしたの?」
「……」
さっきまでの怒りはどこへやら、無垢な表情でこっちの様子を訝しがってくる。今なら
分かる。こいつにどれだけ助けられてきたかってことが。
「…ちょっとな」
「うわっ」
不意打ち気味に、ちっちゃい身体をぽすんと腕の中に閉じ込めてみる。
柔らかい髪の匂いが鼻腔を擽った。実は俺も、こいつの匂いは嫌いじゃない。
「な、なんだよぅ…」
「んー?」
「いきなり何なんだよぉっ」
付き合い始めた頃のような初心な反応に、一人満足する。心の準備をさせなければ平静を
保てないってことは、やっぱり普段は懸命に背伸びしてるってことだよな。
「匂い嗅いでる」
「……やっぱり変態だ」
すーっと鼻から息を吸い込んでいると、また厳しい言葉をかっ食らう。いっつも人の布団に
縋りついてんのは誰だと言いたくなったが、今はそういう空気じゃないので止めておく。
「嫌なら振りほどけよ」
「フンだ」
「……」
言葉とは裏腹に、暴れる様子は一向に見られない。
……
折角の雰囲気だし、な。
やるか。
畔道の終わりも近い。ちょうどこの辺りが、あの場所だった。俺達の関係が終わって
変わる、きっかけになった場所だった。
「ちょっと降りようぜ」
「わっ」
それを思い出した途端、紗枝の腕を掴んで引っ張って、道を外れていく。
「え、でもバイトがあるんじゃ」
「まだ時間に余裕ある。いいから来い」
「あ、ちょっと!」
321:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:40:33 CklJClmN
雑草だらけの畔坂を、滑るように駆け下りていく。夏の暑い日ならともかく、春一番が
吹いたばかりのこの時期じゃ、まだまだ冷え込む。そんな寒さの中、ここで遊ぶような
子供達は見かけない。
ざしざしと地面を踏みしめて、川辺にまで来て立ち止まる。さすがに今回は、腰を下したり
しないが。
「やーっぱり嘘だったんだね」
開口一番、紗枝は口を尖らせる。不満げな顔をしてるが、実のところあまり怒ってない
んだろうってことも、表情から読み取れる。
「ははは」
「都合が悪くなるといっつもこれなんだから」
「ははははは」
乾いた笑いで誤魔化すと、隣の拗ねた表情をまた覗き込む。目線だけ一瞬こっちに向いて、
ふいと背かれた。
「あん時は、夕暮れ時だったか」
「……」
「もう三年近く前か。早いもんだな」
今でもはっきり思い出せる自分が情けない。あの時まで、自分はもっといい加減で大雑把な
人間だと思っていた。
「あたしは……よく覚えてないなぁ」
ここから、ここから始まった。それは今考えれば、まさに夢だった。頭に「悪」っていう
文字がつくけどな。
「俺はよーく覚えてるけどな」
「どうして?」
「お前が幼なじみだろうとそうでなかろうと、女の子からの告白を忘れるほど野暮じゃないぞ」
オレンジと紫が入り混じった奇妙な色をした大空と、夏から秋に変わることを告げる
冷たい風と、その風が揺らすススキの擦れる音と。そして肺に覚えた、一瞬だけ面倒なことを
忘れさせてくれる煙たさを。
「……告白、だったのかな」
「まあな。お前だって少しくらいは覚えてるだろ?」
俺は、覚えている。ずっと、覚えている。
「……」
「…思い出したくないか?」
「え…」
流れ続ける川へ顔を向けたまま、片方の手を紗枝の頭の上にぽすんと置いて問いかける。
覚えてるから、聞かざるを得なかった。
だって俺より、こいつの方が…な。
「首を横に振ったら嘘になるけど」
空っぽのコルクボードと。捨てることもアルバムにしまうことも出来なかった思い出写真と。
「けど、あの時が無かったら今が無かったんだからさ」
電気が点くことのなかった部屋と。曇り空が広がった早朝の駅前の交差点と。
「大事な思い出だよ」
全部が全部、脳裏にははっきりと刻み込まれていて。あんまり覚えてないんだけどね、
苦笑しながらそう呟く紗枝に、あの頃の脆さはもうほとんど残っていない。
幸か不幸か、俺の浮気癖が紗枝を強くしてしまった。無責任にも嬉しく思うが、一方で、
以前ほどころころと表情を変えなくなってきたことが、やっぱり少しつまらない。
322:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:42:26 CklJClmN
「でもあんまり覚えてないんだろ?」
「揚げ足とらないでよー」
不安もあったし、それが的中したこともあった。一度距離を置こうと真剣に考えたこともある。
大人に成りきれてなかったのは紗枝だけじゃなかった。苦悩していたのは俺だけじゃなかった。
けど、それを乗り越えたから今がある。幼なじみでも、付き合い始めてからは知らない表情を
見せられることも少なくなかった。
「あんまり覚えてなくても、大事な思い出なの!」
しかしまあ本当に逞しくなったと思う。というか、なりすぎたような。
「そうか」
照れと幼さが、今は照れと凛々しさが入り混じった表情に絆される。くしゃくしゃと髪を
撫でて手を離すと、髪型を乱されたことに、文字通り少しだけ口を尖らせる。
「うぅぅ、ちゃんとセットしたのに」
「俺のための髪型なんだしいいじゃねーか」
「崇兄のためじゃないよ、お洒落だもん」
よく言うぜ、俺がまた髪型戻して欲しいって言ったら、「崇兄が言ったから伸ばしたのに!」
って言いながらボカスカ殴ってきたくせに。
余談になるが、いざ切ってきた時に「やっぱりその髪型が一番可愛いな」って素直に言ったら
また殴られたんだけどな、そん時も笑いが止まらんかったが。
「ま、幼なじみだからな」
「……」
「付き合う前から、本当に大事な奴だったからな」
「もー、またそうやってふざけたこと…」
「そう思うか?」
「……」
今度は優しく、手のひらをきゅっと握って微笑み返す。戸惑った色が、今度は消えない。
照れ臭さより悪戯心より、強く宿った感情が、頭の中を覆っていく。
今から、嘘は言わない。
「…そう、思うか?」
同じ質問を、少しゆっくり問い直す。答えは分かっている。紗枝の性格を考えれば、
どう答えるかなんとなく分かっている。
「……思う」
やっぱり、どれだけ変わっても紗枝は紗枝だ。
「だろうな」
「フンだ」
返事はどうでも良かった。俺の中の紗枝と、本当の紗枝が重なってくれたことが、何よりも
嬉しい。
「でもあたし、崇兄の考えてること、よく分かんないよ」
そんな俺の様子を察したのか、少し沈んだ様子で言葉が続く。
「? そうなのか?」
そう言われることは意外だった。
俺だって、行動や思考パターンを読まれることは少なくない。だから、大体の性格は
掴まれてるもんだと思っていたんだが。
「いっつもふざけてばっかりだし、あたしの気持ち分かってて無視するし」
「……」
323:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:43:57 CklJClmN
そうした方が、可愛いお前が見れるからなんてとてもじゃないが言えなかった。言えば
必ず鉄拳が飛んでくる。正直に言ったところで、信じてもらえなかったら嘘と変わらん。
「崇兄がこれからどうしたいのかぜーんぜん分かんないし!」
……
やっぱり、そこか。
「あたしだって、ほんとは…」
今しか、ないよな。
「ほんとは……ほんとはね?」
鉛のように重かった、ポケットの中に入れてあった答えを、そっと握りしめる。
「俺は、やっぱりいつものお前がいい」
「でも…それじゃ」
穏やかな口調を装って、続きを遮る。
幸せの中にも辛さがあることに、違和感をずっと拭えなかったんだろう。泣きそうに
焦った顔は、初めて重なった日にも垣間見せたものだった。
そんなに、心配するなよ紗枝。
「ほれ」
お前の気持ちはもう全部知ってる。それを捨てることなんて出来ねえよ。
「……?」
「わはははは」
用意していた答えを、頭の上にぽすんと載せてやる。
「わっ…」
「じゃ、そろそろ時間だから行くわ」
ずり落ちかけたそれを慌てて手で支えたのを見届けてから、一人先に雑草を踏みしめ
坂の方へと向かっていく。
「あ、ちょっと崇兄!」
焦ったように呼びかける声にも、敢えて反応せず振り向かない。そのまま無視して坂を
上りきり、バイト先へ向かう。
「ちょっと! 待ってってば!」
服の裾を後ろからぐいっと引っ張られ、無理やりその場に押し留められる。振り向くと、
肩を上下させた彼女がいた。右手に裾を、左手に答えを握って。
「開けたのか?」
「え?」
「それ」
顎をしゃくって左手に握られたものを指し示すと、釣られるようにそちらを向く。その瞬間、
捉えた瞳が大きく見開いた。
「え、え…」
「まだなんだろ?」
それだけ言うと、掴まれた手を振り払い再び歩き始める。坂の上の畔道は、もうすぐ
終わりを迎える。
「…あ、もう!」
そしたらまた同じ箇所を掴まれた。どうやら今の彼女の最優先事項は、昔からの親友と
待ち合わせることでも、渡した答えを開けることでもなく、俺と一緒にいることらしい。
324:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:48:47 CklJClmN
「…なんなの?」
「追いかけるなら、中身見てからにしてくれ」
「……」
訝しげな表情になって、今度は向こうから手を離す。
その答えの中身は、開けなくてもこの箱さえ見ればほぼ確実に分かるものだ。だけど、
やっぱり実際にその目で見て確かめて欲しいわけで。
「……っ」
こくりと喉を鳴らせながら、震える手で、彼女はスリットの入った箱を開けた。それと
同時に、俺も歩みを止めてその様子をじっと見つめる。
「これ……」
けどそれがどうしても出来なくなって、川の方へと視線を逃がしてしまう。
眩しくなんかないのに、顔をしかめて目を細める。
何だかんだ言いながらやっぱあれだ、なんかあれだ。
「え…え、でも、え?」
その中身と、俺の顔を何度も交互に見返す様子が、視界の端に映り込む。
慌てふためいてしどろもどろになる彼女が何よりも好きで、それを見るたびに落ち着けてた
もんだが。流石に今回ばかりは勝手が違う。
違って当たり前だ。俺だって初めてのことをする時は、こんな心持ちになる。
「紗枝」
生まれた頃から、一緒に育ってきた。年が離れてたから、向かいの家に住んでる妹だった。
そんな考えが間違ってたと気付いたのはほんの数年前で、その時だけこいつは一緒じゃなくて、
傍にもいなかった。
そしてその僅かな時期が、僅かとはいえないくらいに長く感じられ、気付かない振りを
し続けていたこの気持ちに、真正面から向き合うきっかけにもなった。
「これって…その……」
「……」
まだ、視線は戻せない。名前だけは何とか呼べたけど、その次に何をどう言えば良いか、
混乱して分からなかった。
「その……崇兄…?」
戸惑った表情をそのままに、問いかけるような言葉をこぼしながら、紗枝の顔が視界の
中心に入りこんでくる。
耳が跳ね、心臓が爆ぜる。
「……ま、好きに受け取れ」
気付かれたくなくて、敢えて軽口を叩いて頭を撫でる。
「小遣いが欲しけりゃ、換金しても構わんぞ」
それだけならまだしも、臆病にも保険までかけてしまう。
普段からずっとぬるま湯に浸かり続けてるから、こういうことが、どうにも上手くできない。
325:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:51:05 CklJClmN
「……」
両手でその小箱を握りしめ俯くその顔が、みるみる顔色が赤くなっていっていく。こんな
紗枝を見るのは、ちょっと久し振りだった。
「こ、これって、その…」
「……」
「そういう…ことなの……かな…?」
頭が、痺れる。
「……」
耳が、熱かった。
「まあ、お前がどうしてもって言うんならな」
鼓動が、身体全体から発せられてるようだった。
「そういう意味で渡してやってもいいぞ」
視界がひどく狭くて、開いてるはずの目が閉じているようにも思える。
顔を隠すように眉尻を親指で掻く。
いきなり紗枝が目の前に来たもんだから、顔はまだそっぽを向いたままだった。
当初考えていた台詞とは全く違う言葉が、意識する暇もなく飛び出していく。こんな情け
なくて恩着せがましい言い方をするつもりなんてなかった。事前に色々考えてたのに。
本当はもっとこう、なんだ、えー……どう言いたかったんだっけか。
「……」
「……」
「……じゃあ」
後になって、この時の紗枝の表情を見てなかったことを、俺は死ぬほど後悔することに
なるんだろう。
「そういう意味で……受け取っても、いい…?」
でも今は、それどころじゃなかった。
「崇…兄……」
そこでようやく、向き直れる。見たかった表情は、既に俯いてしまっていた。
「…好きにしろ」
涙ぐみながら笑った顔が、一瞬だけぼやけて見える。それがまた、情けない。
「でも、知らねーぞ?」
「……」
「これからも、苦労かけるぞ?」
渡すのは、満を持したタイミングじゃなくて、何か用事がある直前にと決めていた。
「……分かってる」
一緒になることはできても、いつでもずっと一緒にいることはできないから。
「色々辛いことが、あるかもしんねーぞ?」
「…分かってる」
たまにしか見れないから、その価値が分かることだってあるよな。
326:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:52:41 CklJClmN
「……そか」
「……うん」
渡した小箱を、胸の前でぎゅっと握りしめる。
「心配すんな紗枝!」
さっきは緊張しすぎで言えなかった。だから今度は言ってやる。
「一緒なのはこれからも変わらん!」
やっぱりまた、今度は身体ごと川の方に向いてしまっていたけれど。耳の真横で心臓の
鼓動が聞こえていたけれど。
「……うん」
頷いた紗枝の声は、確かに聞こえた。
何だろうこの異常なまでの達成感と爽快感は。
それが何なのかは分からんが、俺が今、とてつもなく幸せだということだけは確かだ。
もう何を言われても大丈夫で全てを許して受け入れることができそうな気がする。
「でも、あのさ」
「ん?」
目尻を拭いながら、鼻を啜りながら、紗枝は口を開く。そんなに喜んでくれたのか、
勇気を振り絞った甲斐があった。もうお前の顔から視線を逸らさないぞ。
「そしたらもう……もう崇兄、浮気なんかしないよね?」
……
「え゛?」
「しないよね?」
「……」
思わず顔を背けた。
「……ふへへへー」
笑いかけてくる紗枝の両手が俺の首に絡みつく。
「するの?」
そしたら、今しがたまで涙ぐんでた声が、一気に低くなった。
いや、ちょっと待て、なんだこれ。
「ははは馬鹿言うな」
「じゃあしないよね?」
「……」
どうしよう、正直、自信無い。とまでは言わないが、合コンぐらいは行ってしまう可能性が
無いというか低いとは言い切れないのがちょっとあれだ。
「それは、あれだ」
どうにか言い訳しようと考え抜いたその結果。
「お前が俺のこと、ちゃんと名前で呼べるようになってからの話だな」
口から出たのは苦し紛れの方向転換。
327:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:54:01 CklJClmN
「えええ、だって」
ところがどっこい、これが功を奏したらしい。
「旦那になった時が来ても兄呼ばわりはちょっとなぁ」
反撃の糸口を掴んだ俺は、途端にふんぞり返って居丈高になる。
「と、時々呼んでるじゃん…」
その時々っていうのがいつのことなのか、言わなくても分かるよな。
「いつも呼んでくれんことにはなぁ」
「ううう…」
ニヤニヤしながら言い返すと、頭から湯気が出そうな勢いでその顔色が染まっていく。
抱きしめられることにも甘い言葉囁かれることにも、抱かれることにさえ慣れてきてるって
いうのに、なんで名前一つ呼ぶことに慣れないんだか。
ま、だからこそ紗枝なんだろうけどな。
「…じゃあ、今呼ぶ」
「ほほう、それは嬉しい」
出来ないことは言うもんじゃないぜお嬢さん。
「そんなことないもん! 言えるもん!」
ここにきて唐突に口調まで幼くなるのはどういうことなんだろうなぁ、いやはや、これは
楽しい。
「い、いくよ」
「おう!」
満面の笑顔で、両手を大きく広げて言葉を待つ。その瞬間、鳩の群れがバサバサと
羽音を立てながら空を駆け抜けていった。
「たっ……たっ……」
案の定どもる。
「た……たっ…」
「ちなみに俺の名前は崇之っていうんだぞ」
「知ってるよっ!」
「あ、忘れてなかったのか。ごめんな!」
「…う~~~」
あーあ、顔押えてしゃがみこんでしまった。ほんの少しだけもしかしたらとも思ったが、
こりゃやっぱり無理だな。
「無理すんなって」
「だって……だって…」
今になって泣きそうな顔を見せる紗枝を、にやけたまま宥める。
「ゆっくりでいいって。子供ができた時くらいまでに言えるようになってれば」
「こどっ…!?」
「はっはっはっはっは、どーした紗枝」
フフ、なんとか誤魔化せたな。しかもこんなに楽しい思いまでさせてくれるとは、なんて
良い奴なんだお前は。
「もう! さっさとバイトに行ってこい!」
「おお、そういえばそうだったな。じゃあ行ってくるぞ妻よ」
「まだ妻じゃない!」
「でも将来は決まりだろ」
「まだ決まってない!」
「またまたー、照れちゃってもー可愛いなぁお前は!」
「言っとくけど、もう許してあげないからね」
「何を」
「合コン。行ったらこれ突っ返すから」
げっ、しっかり覚えてやがった。面倒くさい奴だなまったく。
328:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:55:09 CklJClmN
「それは反則だろー」
「嘘じゃないからね! 半分諦めてたけど、これ貰ったからにはまた厳しくいくからね!」
「……心が狭い」
「何なら今返してもいいけど」
「あーウソウソウソウソ! それじゃバイト行ってくるわ!」
ふー、危ねぇ危ねぇ。折角渡したのに突っ返されたら意味がなくなってしまう。
まー仕方ないか。これからは俺も少しは身持ちを固めないといかんかな。でないと、
未来の嫁をまた泣かせてしまう。
「じゃあバイト終わったら、お前の家行くぞ」
「え、なんで」
「先に既成事実をおじさんおばさんに言っておいて、いざという時お前が断れないように
するためにだな…」
「ピッチャー第一球…」
「というのは冗談でな! もちろんこのことの報告にだ!」
「……ならいいけど」
ったく、冗談が通じないなんて頭が硬いったらありゃしねえぜ。やっぱり、紗枝は紗枝
だな。根っこの部分は変わりようもない。
「それじゃな」
くしゃりと頭を撫でて、鼻腔を擽らせる。
「……うんっ」
少しの沈黙の後、元気な返事が返ってきた。
軽く手を振りあって、紗枝と別れる。名残惜しそうな表情を見せたが、それを言葉には
出さなかった。俺がどうして、バイトに行く直前なんていう妙なタイミングであれを渡したのか、
その理由をちゃんと分かってくれているみたいだった。
生まれた頃から、一緒に育ってきた。年が離れてたから、向かいの家に住んでる妹だった。
そんな考えが間違ってたと気付いたのはほんの数年前で、その時だけこいつは一緒じゃなくて、
傍にもいなかった。
けど、これからはもう一緒にいられる。ずっと、ずっとな。その「約束」を交わすことが
出来て、良かったと思う。
『さえー! はやく来ないとおいてくぞー!』
もう、置いていったりなんかしない。それだけは自信を持って、確実に言えることだ。
『うわああああん! まってよー!』
なるべく泣かせたくない。悲しませて辛い目に遭わせたくないのもまた本心だ。今まで、
ずっと我慢し続けてくれたんだからな。
余談にはなるが、この一ヶ月後、俺は渡した小箱を中身ごと突っ返されることになる。
理由はもちろん、合コンに行ったのがバレたからだ。
更に余談になるが、それから二年後、俺はまた紗枝を泣かすことになる。
俺が黒のタキシードを、紗枝が白いドレスに身を包んだその場所で、だ――
329:エピローグ ~親しき人へ~
08/02/21 14:58:39 CklJClmN
ということで、>>136-143の続きでした
何度も何度も続き書いてしまって、往生際が悪くてごめんなさい
今度こそ終わりですので
あまりにも書きやすい性格だったんで、いつまでもダラダラと続きを
綴ってしまいました、重ねて本当にすいません
それでは、別の作品でお会いできたらと思います
ちょこちょこ投下はしてますが
330:名無しさん@ピンキー
08/02/21 16:16:11 WkTBaSQy
>>329
ランブルもいいぞ!!
331:名無しさん@ピンキー
08/02/21 20:42:26 UupYHkBN
>>341
GJ!GJ!GJ!GJ!超GJ!
終わってしまうのはすこし寂しいが、ここまでありがとう!
次回作も楽しみにしてるよ
332:名無しさん@ピンキー
08/02/21 20:44:15 kaK+UM2d
>>341
GJ!
お互い変わった所もあるけど二人はやっぱり変わらない所があるままっていう終わり方でしたな
シロクロの御方をライバル視しているのを見て、じゃあおれは作品投下するなら
>>341氏と張り合えるような作品を書こうと密かに思ってた名無しだったりする
トリ付けない人だから確証はないけどクリスマス前にも世話になった覚えがある
また別の作品の投下も楽しみにしてます
約束を守ってこその幼馴染スキーになりたいぜ。もう一度改めてGJ!
333:名無しさん@ピンキー
08/02/21 22:32:14 U/vM9+Ep
>>341
GJ!
お疲れ様でしたーーー!
幼馴染萌えスレの中でもトップクラスの長さと萌えを持つ崇兄と紗枝シリーズも遂に終わったか・・・
素直になれない紗枝とそんな紗枝をついからかってしまう崇兄のやりとりとっても好きでした
付き合いから紆余曲折を経て結婚までこの二人を見守れて本当に良かったと思います
何だか少し寂しくなります。また番外でも良いのでこのお二人は時々顔を見せてほしいですね
それでは最後に作者様にもう一度GJを贈りたいと思います。完結お疲れ様でした
334:名無しさん@ピンキー
08/02/22 00:32:55 K2ShbA5t
>>341
超GJ!
連載当時から見てきただけに感慨深いなぁ…
次回作にも期待してます!
335:名無しさん@ピンキー
08/02/23 12:52:03 wcGpX4AW
>>341
お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。
……この二人の後の話も見たいなあ。別の作品に脇役として出てくるとか……ダメですか?
336:名無しさん@ピンキー
08/02/24 09:30:36 SpUJV/xs
>>341終わり・・・ですか。寂しくなりますなぁ・・・
でも嘆くより、お礼を言わないとな。
今まで長い間楽しませてくれてありがとうございました。
神GJ!
337:温泉
08/02/25 01:08:52 dhWGthKy
誰もいない…投下するなら今のうち。
ちょっと展開早めです、今回。
>>270からの続きです
338:You is me
08/02/25 01:10:53 dhWGthKy
「なぁ、みー」
とんとんとんとんとん……包丁がまな板にぶつかる音が響いている。
「ゆーちゃん、なに?」
「あのさー」
「うん」
「俺たち、料理上手くなったよなぁ……」
「そうだね、最初の頃が懐かしいねー」
思わずしみじみ二人で言う。台所で並んで料理をする俺達。話しながらもお互い手は止めない。
『あの日』から数週間。休日に、また俺とみーは朝から一緒に過ごしていた。今は、昼ごはんを作っている最中。
「焦がしたりなんて当たり前、塩やら砂糖の量を間違える」
「調味料間違えたり、配分考えないで作って食べ切れなかったり、ね」
「あったなぁー……」
それでも互いに作りあったり、味見し合ったりして徐々に腕を上げて―互いの好みも把握するほどに更に作って、
今度は二人で作るようになって。
「えへ」
溢れちゃった、そんな感じの笑い声。俺はニンジンを切っている。半月切り、と
「何笑ってんだよ」
みーはあの日以来、ますます甘ったれになった気がする。
「だって―」
みーがこっちを向いて目を細める。みーはタマネギをくし形に切る。
339:You is me
08/02/25 01:12:48 dhWGthKy
「今まで、ゆーちゃんと色々あったなぁー、って、思って」
「……ああ」
脳裏を色々な風景や情景を映し出す。本当に、色々あった。前にアルバムで話した出来事。まだ話しきれて
いない出来事。まだまだ一杯ある。
「ね、ゆーちゃん」
「ん?」
「これからも続くかな、こうゆうこと」
こうゆうこと。
みーが指した、こうゆうこと、とは、この料理を作るという行為だけではなく、二人でいる時間を指しているのか、
と思った。
互いに手を止めない。みーが沸騰した湯の中に適当な大きさに切って、水にさらしたジャカイモとタマネギを
入れていた。肉ジャガを作るらしい。
実際、いつまで続けれるのだろう?
少し考える……さっぱりわからない。色々な事柄で続けれなくなるのかもしれない。可能性だけならそんなの
いくらでもあるんだろう。だけど、だけど―なんだろう。
「駄目だ、思い付かない。」
思わず言葉が出ていた
「何が?」
「こうゆうこと、が終わった時をさっぱり想像できない」
340:You is me
08/02/25 01:14:48 dhWGthKy
なんでだろうな、と呟く。何回考えても無理だった。どうやっても俺はみーと一緒にいるようにしか思い浮かばない
「いっしょ、だね」
くつくつという沸騰したお湯の泡が弾ける音が響く。
「あたしも、ゆーちゃんのいない時なんて想像できない」
「そか」
「うん」
無言。
冷蔵庫から豚の細切れを取り出した。みーはにこにこしながらジャガイモとタマネギの入った鍋を見詰めている。
「何笑ってんだよ」
「…………」
みーは答えない。けど、顔はまだほどけたままだ。
「答えろよー」
「やーだ。えへへ」
身をよじるふりをするみー。鍋の火を弱めて調味料を投入するのも忘れない。
実は、みーが初めて作ったのはこの肉じゃがだ。作った理由は……なんだったかな。
そうだ、思い出した。テレビのコマーシャルだかドラマだったかで、肉じゃがで男をオトす、とか説明してたのを
見て、つくりたいー、とか言い出したのだ。「ゆーちゃん、かくご!」とか言ってたなぁ。
よせばいいのに、誰の助けも借りずに本だけを見て作り―苦い経験になっちゃったんだよな。
「あ、ゆーちゃん何笑ってるの?」
「ん、ああ、いや、ちょっとな」
341:You is me
08/02/25 01:17:22 dhWGthKy
「なーんか、あたしの変なこと思い出してそうな笑いだったけど」
「違うって」
本当に、幼馴染はカンが良い。なーんて今更な事実にびっくりする。
みーが俺の胸をトンと叩く。お返しに俺はみーの頭を軽くぽんぽんと叩いてやった。
ふざけて叩き合って、笑いあって、ふざけて、また笑って―
「ね、ゆーちゃん」
笑いをこぼすみー。
「んー?」
「こうしていられるのって、いいね」」
「ああ、そうだな」
言って、また沈黙が広がる。でも、やっぱり顔は笑っている。
それを見て、俺も何故か笑いが込み上げてしまった。この前、思ったことを唐突に思い出した。
『本当に幼馴染ってだけだろうか、俺―』
あの日あの時から形容しがたい気持ちが胸にこびり付いていた。俺は一体、何をどうしたいんだろう、って。
俺はみーとどうしたいのか。
突然、気付いた。
こうゆうことなんだ。
「ずっと、続いたらいいのにな、こうゆう事が」
びっくりしたようにみーが俺の顔を見た。俺は言葉を続けた。
342:You is me
08/02/25 01:19:12 dhWGthKy
「俺はずっと続けたい」
まぁ、と俺は一言付け足した。
「みーが先に嫌になるかもしれないけど」
「あ、ひどーい、ゆーちゃん」
みーは手を振り上げて、怒ったような仕草を見せて。
「あたしは、絶対に嫌になんてならないよ。ゆーちゃんの方こそが先に嫌になるかもしれないじゃない」
「ばーか、俺が嫌になるもんか。さっきも言っただろ。こうゆう事、が終わる時が想像なんてできない、って」
「ゆーちゃん、何言ってるの」
そう言いながらみーが鍋に豚肉を入れる。ちらと見えたみーの横顔が赤くなっている気がした。
「それじゃ、プロポーズだよ?」
「……プロポーズ?」
プロポーズか……そうか。そうだな。
俺はさっき気付いたことに確信を抱いた。そうか、俺は―
「今気付いた。そうだな、プロポーズかもな、これ」
「……否定しないの?」
「なんで否定しなきゃいけないんだ。俺は嘘は言うが冗談は付かないってこと知ってるだろ」
「ゆーちゃんが嘘を言わない~? えー、嘘ばっかり」
「ばっか、俺以上に正直な人間なんて早々お目にかかれないっての」
「それだったら世の中、みーんな正直者になっちゃうと思うけど」
「何だとコラァ」
343:You is me
08/02/25 01:20:52 dhWGthKy
俺は怒った風に声を荒げるが、顔は笑っているだろう。みー笑顔だ。そのままふざけあっているとみーが
料理を完成させた。肉じゃが、味噌汁、ご飯。昼飯なので品数は少ない。いただきます、といって食べ始め、
しばらくしてみーが口を開いた。
「ね、ゆーちゃん」
「ん?」
俺はご飯を頬張りながら応じる。
「あたしね」
みーが恥ずかしそうにして俯いた。
「ゆーちゃんが嫌になるなんてことないけど……良いの?」
「そうでなきゃ、俺が困る」
言った後で、とんでもなく恥ずかしいことを言った事に気付いた。照れ隠しにご飯をかき込んだ。
「みー、おかわり」
茶碗を出すと、みーがたんまりとついでくれる。ほにゃっとした幸せそうな笑顔。
「なーににやにやしてんだ」
「ゆーちゃんこそ顔崩れてるよ」
「ばっか、嬉しいのに真顔でいられるわけないだろ」
「へへ、いっしょだね」
「ああ、いっしょだ」
俺とみーは笑い合って、体を乗り出してキスを交わした。
……俺はみーと暮らす日常をずっと続けたかったんだ。
344:温泉
08/02/25 01:22:21 dhWGthKy
とゆうわけで今回の投下は終了。
……唐突でゴメンナサイゴメンナサイ。
次回はラブシーンに入る!……かも。
345:名無しさん@ピンキー
08/02/25 01:48:39 uZO1tziu
甘い。こんな時間にも人は見てるもんなんだぜ。GJ!
エロはカモンッ
しかし遅くに投下するの好きだね、湯泉の旦那?
346:名無しさん@ピンキー
08/02/25 04:00:18 MYrqcBnc
この世界の甘味を全部混ぜたより甘い作品はどうにかならんのですか?終いにゃ小説だけで糖尿病になりそうじゃまいか。
そして、この二人の暖かい夫婦みたいな雰囲気には本当に癒される。見ていて癒されました。超GJ!
>>次回からラブシーンに
ちょwwwこれが前座っすかwww本番とかどうなるんだよww
wktkして期待してますぜ!
347:名無しさん@ピンキー
08/02/25 10:12:37 W+dnEKiW
>>356
あンまァ~いッ!
こりゃァもうおかわり必至だねェッ!
……いやまあごめんなさいテンション下げます。
ところで、
>俺はニンジンを切っている。半月切り、と
この文章、もしかして途中で切れたりしてません?
348:名無しさん@ピンキー
08/02/25 13:02:39 eY1H1Hdl
>>356
GJです!!相変わらず甘い。ニヤニヤが止まりません。
このシリーズ好きなので続きを楽しみにしております。
ただ一つ気になった点がありまして、
>俺は嘘は言うが冗談は付かない
ここは嘘と冗談が普通は逆だと思うのですが。
349:温泉
08/02/25 13:15:21 dhWGthKy
ちょっとだけレスを…
>>357
考えながら書いてると、完成したのが深夜ってことが多い……ですね
>>358
ご期待に添えれるようにがんばります、ハイ
>>359
一応、切れたりしてはいないのですが、ちょいと表現が切れ切れでわかりにくくてごめんなさい。
>>360
GYAAAAAAAAA! 何回も見直したはずなのに間違ってる……
ご指摘どおりでございます。ごめんなさい。
誤字の自戒として次もとっとと投下するようにしますorz しばしお待ちを
350:名無しさん@ピンキー
08/02/26 02:18:37 QIjd3qY0
ところでさー、さっきまで幼なじみと長電話してたらさー、何の話の流れか「お互い30まで売れ残ったら結婚するかー」とかなんとか。
今俺達20なんですけどね。
……コレ、フラグ?
351:名無しさん@ピンキー
08/02/26 02:26:49 XfHVR80C
>>362
フラグですからもうちょっと期限を短くしてもらっってください
352:名無しさん@ピンキー
08/02/26 02:33:22 VQf1o1FD
>>362
少なくとも結婚するのが嫌ではない、ってことだ
展開次第ではお前…
353:名無しさん@ピンキー
08/02/26 07:46:14 sW6jPpgM
>>362
もちつけ。お前と一緒になるのがイヤではないけど可能なら別の相手がいい、
とも受け取れるぞ。ここでがっついたらアウトだ。
354:名無しさん@ピンキー
08/02/26 09:13:58 ojlb2iZA
>>361
GJでした
「隣にいないことが想像できない」ってのはまさしく王道ですよねー、いいですねー
この調子で最後まで突っ走っちゃってください。あ、あわてずともいいですけど
>>362
今までよりちょっとだけ距離を詰めてみてもいいかもね
地道なアプローチを重ねてみたり
355:362
08/02/26 12:53:45 QIjd3qY0
レスサンクス。
「せめて5年後にしようぜ」って言ったらおk貰った。
……マジモンのフラグだ。
マジメに行くわ。これから。
356:名無しさん@ピンキー
08/02/26 14:28:07 ojlb2iZA
>>367
……スレ違いだが、バッサリ斬ってしまってもよろし?
ウソだけど。結ばれたら報告な
357:名無しさん@ピンキー
08/02/26 15:21:22 Pka8FoPg
>>367 RPG-7を家にぶち込んでもおk?
あ、 答 え は 聞 い て な い から安心して逝ってくれ。
それが嫌なら、実生活をSS化するんだ。5年を費やす超大作を書くんだ。
358:名無しさん@ピンキー
08/02/26 16:34:05 9TOT2bxv
>>367
それよりも何よりも、幼馴染を幸せにする為の甲斐性を身に付けるんだ。
その上で余力があれば、その日々の光景をSS化して貰えれば何も言うことは無い。
359:名無しさん@ピンキー
08/02/26 16:47:58 /c63XtPf
きさまらどこからわいてきたー!
>>367
sneg?
360:名無しさん@ピンキー
08/02/26 16:53:12 QIjd3qY0
>>370
そもそも甲斐性ってなんだよ?
女って言えば幼なじみくらいしか身近にいなかったからよくわからねぇ
361:名無しさん@ピンキー
08/02/26 16:53:56 QIjd3qY0
>>370
そもそも甲斐性ってなんだよ?
女って言えば幼なじみくらいしか身近にいなかったからよくわからねぇ
……いやはや、これなんてエロゲ、だよなあ。
誰か妄想書いてみて。
362:名無しさん@ピンキー
08/02/26 16:55:20 QIjd3qY0
>>372
おおっと中止したと思ったら書き込んでやがったか!
連レスとかスマンorz
363:名無しさん@ピンキー
08/02/26 17:02:05 /c63XtPf
>>373
一ヶ月に一度は豪勢な食事。年に一度は旅行にできるくらいの稼ぎと
必要なら許してやり、叱ってやれるだけの度量、でどうよ
364:名無しさん@ピンキー
08/02/26 17:44:10 XfHVR80C
>>373
とりあえず週末にでも一緒にお出かけしてこい
他の男に取られないようにブロックブロック
365:名無しさん@ピンキー
08/02/26 23:16:51 ojlb2iZA
>>362があまりにうらやましいのでネタにしてやった
反省はしていない……けど、気分を害したら申し訳ないので先に謝る。本当にごめんなさい
他の人も嫌な場合はスルーでお願い
では投下
「今年で俺らも二十歳かぁ」
「長いようで短かったわねー」
「これからは酒も堂々と飲める」
「まぁ今までも飲んでたけどね」
「煙草も吸える」
「まぁ吸う気はないかな」
「……あと何があったっけ」
「税金を納めたりとか?」
「……夢のない話だな」
「そうね」
「あー、そういやもう少しで就活とかしないといけないんだよな」
「先輩とかも大変みたいよ、色々説明会行ったり」
「仕事とかするのは、もっと大変なんだろうな」
「今だけだろうからね、こんなに時間があるの」
「そのうち自立して家も出ないといけないしな」
「会社が近場ならしばらくは家にいてもいいと思うけどね」
「そういうものか?」
「そういうものよ」
「社会人になったら、身を固めろー、なんて親に言われたりするのかね」
「さぁね、少なくともアンタの親は言いそうだけど」
「あり得るから怖い。お前のところはそういうのないの?」
「わからない。でも昔から私の好きにさせてくれたし」
「あぁ、そういやそうか。確かにし」
「……そうなのか?」
「今のところは。一人のほうが楽だと思うし」
「無難だけど夢がないな」
「ま、これから出会いがあれば別かもしれないけどね」
366:名無しさん@ピンキー
08/02/26 23:19:09 ojlb2iZA
「なら、さ。こうしないか?」
「何を」
「もし30歳までにお互い結婚してなかったら、いっそのこと俺らで結婚するとか」
「……?」
「ほら、俺らって昔からずっと一緒だったわけだし。
余るようなら売れ残り同士でくっつくのも悪くないんじゃないか?」
「……私は結婚する気ないって言ったけど?」
「あ。」
「人の話はちゃんと聞きなさいよね」
「……ま、まぁ、厳密な約束じゃないしな。聞き流してくれても構わないけどな」
「……それ、プロポーズとしては最悪」
「ん、何か言ったか?」
「何でもない」
「で、どうだ。乗るか?」
「……30歳でいいの?」
「は?」
「30歳って言ったらけっこう周りの目が厳しいと思うんだけど」
「でも、最近は晩婚化も進んでるらしいしなぁ」
「私はともかく、アンタのとこは大変じゃないの?」
「あ」
「またそれ?ちゃんと考えて発言しなさいよね」
「……あー、じゃあ25歳とかどうだ?」
「それならいいんじゃない?父さんと母さんもそれくらいだし」
「えらく即決したな」
「こういうことはグダグダ考えても仕方ないわよ」
「さっきと言ってることがちがうぞ」
「うるさい。だいたい、結婚するって決めたわけじゃないんだからね」
「お互いが余れば、だからな」
「それに、これからだってしばらくは顔合わせることになるんだしね」
「大学まで一緒じゃ、嫌でもな」
「ま、そういうわけだから」
「あぁ」
「「これからも、よろしく」」
「で、どうだ。乗るか?」
「……30歳でいいの?」
「は?」
「30歳って言ったらけっこう周りの目が厳しいと思うんだけど」
「でも、最近は晩婚化も進んでるらしいしなぁ」
「私はともかく、アンタのとこは大変じゃないの?」
「あ」
「またそれ?ちゃんと考えて発言しなさいよね」
「……あー、じゃあ25歳とかどうだ?」
「それならいいんじゃない?父さんと母さんもそれくらいだし」
「えらく即決したな」
「こういうことはグダグダ考えても仕方ないわよ」
「さっきと言ってることがちがうぞ」
「うるさい。だいたい、結婚するって決めたわけじゃないんだからね」
「お互いが余れば、だからな」
「それに、これからだってしばらくは顔合わせることになるんだしね」
「大学まで一緒じゃ、嫌でもな」
「ま、そういうわけだから」
「あぁ」
「「これからも、よろしく」」
以上。もちろんフィクション
個人的には25歳って結婚適齢期どストライクだと思うんだ
……次回はオリジナルを投下できるようにするよ
>>362、フラグ折るなよ
さて逃げるか
367:名無しさん@ピンキー
08/02/26 23:20:57 +D1KR8Vj
グッジョブ。だがなぜ2回言う?
368:名無しさん@ピンキー
08/02/26 23:26:23 ojlb2iZA
>>379
大事なことだから
編集ミスだよorz
これは情けないよなぁ……次頑張るわ
369:名無しさん@ピンキー
08/02/26 23:32:33 bWy1HnGR
>>379
恐らく
「大事な事は2回言う主義だ!」
「ほう、何故だ」
「1回目は相手に。2回目は自分に言う為だ!」
「それはすごい」
「そう!私はすごいんだ!お前はこんな私と婚約出来た事を誇りに思うべきだ!」
「まだ婚約ではないと思うけど……」
「私は25まで独り身でいるつもりだ!」
こうなると予想
370:名無しさん@ピンキー
08/02/26 23:34:34 QIjd3qY0
>>380
GJだ!
冗談を真に受けてくれるのがいるとは。
なんかかなり幸せ。
じゃ、ROM専に戻るよ。
371:名無しさん@ピンキー
08/02/27 00:49:00 5z1BjR7I
>>377
ぬあ速度で負けた!
しかもいい出来なので更に悔しい!
グダグダだが、お蔵入りさせるのも勿体無いので投下するぜ……
>>362、まあ、なんだ、こう……スマン。だがお前のエピソードは美味しすぎる。
372:(1)
08/02/27 00:49:25 5z1BjR7I
その電話は、唐突にかかってきた。
「……あん?」
携帯電話のディスプレイにあるのは昔馴染みの番号。
深夜、日付も変わる、という時間になっての電話だ。
メールのやり取りこそあったが、電話とは―。
……珍しい。
急ぎの用事だろうか、と思いつつ、通話を開始する。
『―私だ。』
「……はァ? もしもし?」
『私だ。と言えば、そっちも用件から話し出しなさいってば。洋モノ映画だとそうでしょうがー』
けらけらと何やら変に軽い声が聞こえてくる。
酔っているらしい、と頷き、
「どうしたんだ。何かあったのか」
『んー。フラれたぁ』
「……そうか」
はぁ、と電話口の向こうからため息が聞こえてくる。
『いやー、結構辛いねー、コレ。勝手に玉砕しただけなんだけどさー』
「……彼女がいたとか?」
『んー、そんなもん。分かってたからなんて言うか諦め悪くて最悪だけど。
サークル同じだから、これからちょっとサークルに行きづらいかも』
「そうか」
『ん』
小さな、気の抜ける音が聞こえてくる。
ビールか何かのプルタブを開ける音だろうか、と思った瞬間には、嚥下の音が聞こえてきていた。
「……あまり飲みすぎるなよ。二十になって堂々と飲めるとは言え」
『へぇーきへぇき。どーせ明日は休むつもりだし』
「そういう問題でも無いだろ」
『んー、まあ、そうかもね。でもまあいいじゃん。フラれちゃったんだし』
「…………」
互いのため息がシンクロする。
「不景気なため息だな」
『辛気臭いため息ね』
「お互い様だ」
『その言葉丁重にお返しいたすー』
向こうは盛大に酒を飲んでいるらしい。
こちらだけ飲まないのもシャクだ、と冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出した。
『んー? アンタも飲むのー?』
「そんなには飲まん。弱いし、明日もある」
『んー。……いやまあなんかゴメンねぇホント。同情するわ』
373:(2)
08/02/27 00:49:50 5z1BjR7I
「どの口が言うんだ馬鹿。今更謝るくらいなら電話するな」
『ヒドいなぁ、全くもう』
けらけらという笑いは、明るい響きなどでは無かった。
……無理をしているのか。
酒の力に縋って、家族よりは遠い、しかし、友人よりも近い立場の者に縋って―
一口酒を飲むと、一気に胃が熱くなった。
口から出るのは、抉る、とも言えるような質問だ。
「……なあ。その男、そんないいヤツだったのか」
『そーね。
……いっつもスーツ着てる変人で、スゴいてきぱきしたひとだったけど、どっかでミスるのね。
で、それをフォローする人が隣にいてね、……俺の隣は、彼女しかいないって、はっきり言われたさ』
「玉砕だな」
『うん。ホントばかみたい。……負けるのが見えてて突っ込むんだものなぁ』
「誰かに惚れてるヤツばっかり好きになる、お前の一直線ばかっぷりにカンパイ」
『んー。かんぱーい』
あはは、と笑う声は、涙混じりだ。
『……ちょっとゴメン』
「ああ」
鼻を乱暴にかむ音が聞こえて、十秒ほど後、何か小太鼓を叩いたような音がした。
『……あー、うん。もしもし。ゴメン』
「いや、いい。……ワインか?」
『ブランデー。安物だけど』
「飲みすぎるなよ」
『んー。これ飲みきってももうちょい行けるから大丈夫』
そのまま、しばらく沈黙がある。
酒量限界は、缶ビールにしておおよそ三本。一本を大事にするように、ちびちびと消費していく。
……この量を知ったのは、一年半前か、とふと思う。
地元から離れ、大学に来た。サークルに入って、その歓迎会の席だった。
彼女も似たような経緯で知ったのだろうか、と思っていると、向こうから声が来た。
『……アンタの方はどうなのさ。そう言えば、結構久しぶりだけど』
「変わらない。工学部なんて野郎ばっかりだ」
『まーそうでしょうねー。入試より倍率高いんでしょ、そっちの美人は』
「確かにその通りだが嫌なこと思い出させるな馬鹿」
『彼女いない暦=年齢?』
「お前こそ毎回玉砕してるだろうが」
『うるさいなぁ』
はぁ、と吐くため息の質量は、最初のそれよりも軽くなっているのだろうか。
……そうであればいい。
思い、酒をもう一口あおる。
「お互い、結婚は出来そうにないな」
374:(3)
08/02/27 00:50:49 5z1BjR7I
『希望が全くない理系ど真ん中に言われたくはないなぁー』
「最近は女性も増えてるらしいぞ。……本当だからな」
『……はいはい。でも、ホントに売れ残りそうだよね、あたしたち』
「お互い運が悪いからな」
『そーね』
「三十路まで売れ残るかもな」
『そこまで行ったらキッツいなー』
「……賭けるか?」
『どっちが先に結婚するか?』
「ああ。負けた方は何でもする、とかそんな大胆ルールでどうだ」
……自覚する。今日は少し、酔いの回りが早い、と。だからこんなコトも言えてしまうのだ、と。
それが何のためかは、よく分からない。だが、分からないなりに、思うところはある。
『オーケー。いいよ、これから十年。―これまでで一番長い勝負だね』
「ああ」
頷き、口を噤む。
……前を向いてくれればいい。そう思っての沈黙だ。
すぐに前を向くほど、彼女は強いだろうか、―そう自問し、
『ところで、どっちも三十まで売れ残ったらどうする?』
その声に、その考えが一瞬飛んだ。
酒のせいだろうか、出かけた結論が出てこない。
とにかく、返答をする。
「あ、ああ。……そういうコトもありえるか。ドローじゃつまらないな」
『んー。じゃ、お互い買い取るってコトにしとく?』
「……そりゃあいい。売れ残り同士に相応しい、最高のルールだな」
『んー、あたし天才?』
「そりゃあもう、……天災すぎるな」
『うははははは』
遠慮ない笑い声が響いてくる。
最初から比べれば大した進歩だ、と思い、彼は酒を一気に飲み干す。
「それじゃ、俺はもう寝る。お前もほどほどにしておけよ」
『んー。ありがとねー』
「別にいいさ。もう四度目だ」
『……そうだっけ。
キッツいコトとか恥ずかしいコトはすぐ忘れるようにしてるから、あんまり覚えてないなー』
「……全く。最悪だな」
『最高と言ってよ。過去にこだわらない女っていいでしょ?』
「そうかもな」
……強がりでも、それだけできれば上出来だ。
思い、それじゃあ、と別れの挨拶をする。
『―うん、それじゃあ。十年後、覚えてなさいね』
375:(4)
08/02/27 00:51:50 5z1BjR7I
「お前こそ」
ツ、と電波の途切れる音。
缶をビニール袋に入れて、電気を消す。
「…………は、ぁ」
俺は、と思う。
……俺は、どうして喜んでいるのだろうか、と。
ため息を吐き、布団に転がった。
アルコールが思考にもやをかける。
その中で思うのは、彼女のコトのみだ。
……彼女が悲しんだなら、共に悲しみ、彼女が喜ぶのなら、共に喜ぶ。
昔からそうだったように思う。
だが、こと恋愛に関してはそうではなかった。
今だって、表面上は元気付けようとしているくせに、内心では喜んでいる。
「……最悪だな」
自嘲するように笑い、携帯を開く。
キー操作の結果表示されるのは、とある掲示板だ。
打ち込んでいく。
376:名無しさん@ピンキー
08/02/27 00:52:25 5z1BjR7I
……そして>>362に続く。
と言うワケで投下終了。
とりあえず俺も逃げるぜ。
もう一度。
>>362、マジスマン
377:名無しさん@ピンキー
08/02/27 00:55:11 w9ayDj6p
いつからここはVIPになったんかと驚いたが
>>377-378と>>384-387に更に驚いた。GJ!
しかし>>384-387の流れだと5年短縮は無理なような。