【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/01/01 13:17:27 oxjuAFGG

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3:名無しさん@ピンキー
08/01/01 13:18:05 oxjuAFGG
次スレはレス数950or容量480KBを超えたら立ててください。
では職人様方読者様方ともに今後の幼馴染スレの繁栄を願って。
以下↓

4:名無しさん@ピンキー
08/01/01 14:21:49 uFewZ5m1
>>1
乙!!
さて、『三人』と『その幼馴染み、驚異のメカニズム』の続きを待つぜ!

5:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:37:42 VOsPewZf
前スレ
スレリンク(eroparo板:435番)-436
スレリンク(eroparo板:541番)-545
スレリンク(eroparo板:608番)
の続きです。


無理やり今日投下に内容を合わせたという説もありますが、気になさらないでください。

では投下します。

6:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:38:33 VOsPewZf
 結局、俺のクリスマスは熱と悪夢にうなされて終わった。
 ……それどころか、ようやく熱がある程度下がり、外を出歩けるようになった時には、
もう2007年が終わりを迎えようとしていた。
 だがまあ、そんな事は問題じゃない。
 問題なのは、その間ずっと、歌乃から何の連絡も無い事だった。
うちに様子を見に来るどころか、電話の一つもよこさない。
当然ながら、こちらからかけた電話にも、全く応答が無い。
「ちょっと、ヒロ。まだ熱あるんでしょう? 大丈夫なの?」
 まだ軽く熱と頭痛と吐き気と眩暈がしたが、何とか歩けるようになった俺は、
歌乃の家に行ってみることにした。
 日はもう傾き始めていて、一歩外に出ると、ダウンジャケットの下にも感じる程の冷たさが俺を包む。
「心配すんなって。五分かからねえんだからさ」
「もう……歌乃ちゃんの顔見るか、親御さんに会うかしたら早く帰ってくるんだよ?」
「オッケー」
「具合悪くなったらうちに電話するんだよ?」
「了解了解」
 お袋は心配そうにしていたが、俺は自分の事よりも、アイツの事ばかりが気になって、
軽く感じる熱も頭痛も吐き気も眩暈も、気にならなかった。気にする余裕がなかった。
 あの夜、考えてしまった最悪の想像。
 それを打ち消す事ができないまま眠りに落ちた俺は、その最悪の想像を夢に見た。
具体的な内容は何故かあまり覚えていなかったが、目覚めた時の最悪な気分と、
頬に残っていた涙の跡が、その夢がどういう夢だったかを、俺に教えてくれていた。
「……さぶ」
 まもなく新しい年を迎えようとしている街の空気は、ひたすらに冷たい。
 思いっきり厚着をしてきたはずなのに、寒さがしみこむように肌に突き刺さる。
 腕を組むようにして背中を丸め、俺は足を速めた。
 その冷たさによるものではない、そして熱によるものでもない寒気を、必死に振り払おうとするかのように。
「えっと、確かこっちだったよな」
 数年振りに向かう、歌乃の家。
 あの頃から、アイツはいつもあの大きな家で、半ば一人暮らしのような生活をしていた。
 たまに友達が来る事もあったようだが、学校からやや距離のある歌乃の家には、
本当にごく稀にしか、友達がやってくる事はなかった。だから、アイツは……家に帰ると、いつも一人だった。
 俺が夜、自分の家を抜け出して遊びに行ってやると、凄く喜んでくれた……ように、思う。
まあ、最後は俺がイジワルをして、むくれたアイツに追い出されるというのがお決まりのパターンだったりしたんだが、
翌日になるとアイツは何事もなかったかのようにケロっと笑っていて……。
 ……本当に、何があったんだ?
 心臓が早鐘のように鳴り響く、その音が聞こえるようだった。
 不安ばかりが募っていく。その募った不安を振り払う為に、俺はとうとう走り出した。
「……はぁ……はぁ……」
 頭がグラグラする。道が、まるで船の上に走っているかのように波打って見える。
まだ完全に風邪が抜けきっていない俺の足は、いつものスピードを出せない。
 次第に、目の前がボーっとしてきて、グラグラしていた頭はズキズキし始める。
 それでも、俺は走らずにはいられなかった。
 ほとんど歩くのと変わらないようなスピードで、それでも俺は走った。
 歌乃。
 歌乃。
 歌乃に―
 歌乃に――
 歌乃に―――会いたい!
 あの日自覚した俺の気持ちは、もうこれ以上無い程にはっきりと、俺の中に根付いていた。
 もう会えないなんて、そんな事があってたまるか!
 約束すっぽかして、俺に合わせる顔が無いって、家で塞ぎこんでるに決まってる!
 そんな事で―そんな事で俺が怒らないって事を、怒ってないって事を、直接会って
しっかり伝えてやるっ!!

7:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:39:02 VOsPewZf
「はぁ……っ! はぁ……っ! ごほっ……く……はぁ……っ!」
 叫びの代わりに、吐息を吐き出し、吸い込み、時には咳き込み、俺は走り―そして、辿り着いた。
「……つい……た」
 俺の目には、陽炎の如く揺れているように写る、土壁の日本家屋。
 その二階が、歌乃の部屋だ。俺は、その部屋を見た。
「……点いてる、な……」
 いつも、アイツは一人であの部屋にいた。一人で、小さな卓上スタンドを灯して。
 そして、それは今日も同じ。
 そして、俺が下からアイツの名前を呼ぶと、アイツは窓から顔を出して、ニコっと笑って―
「……すぅ」
 俺は大きく息を吸い込むと……叫んだ。
「歌乃っっ!!!!」
 叫んで、俺は、アイツが顔を出すのを待った。
 だが……アイツは、アイツの部屋の窓は、開かない。
「……っ!」
 それどころか、それまで灯っていた小さな卓上スタンドの明かりが、消えた。
 つまり……歌乃は、間違いなく部屋にいる。
 やっぱり、俺との約束をすっぽかして、合わせる顔が無いと塞ぎ込んでた、って所なんだろうな。
「ったく……アイツは……」
 俺は文字通り頭を抱えながら、何気なく玄関の扉に手をかけた。
 当然、そこには鍵がかかっているから、何とかして歌乃に降りてきてもらい、鍵を―
「ぬぉ!?」
 ―扉は、ガラガラと音をたてて、あっけなく開いた。
 ……無用心というか何というか……。
 だが、これはむしろ好都合。
「……歌乃、入るぞっ!」
 俺は声をかけると、家の中へと足を踏み入れた。
 入ってすぐの階段を昇り、右に曲がる。まっすぐ歩いて、突き当りを左。
 その先にある部屋が、歌乃の部屋だ。場所は変わっていない。ひらがなで「かの」と
書かれた可愛らしいネームプレートがぶら下げてある所も。
「歌乃、いるのか?」
 声をかけても返事は無い。
「いるなら、返事してくれないか?」
 やはり、返事は無い。
 だが、気配はする。それに……何か、聞こえる。
「……歌乃?」
 これは……泣いてる、のか?
 しゃくりあげるような声が、微かに聞こえる。
「………………」
 俺はドアノブに手をかけると、ゆっくりと捻った。やはり、鍵はかかっていない。
「……入るぞ」
「駄目っ!」
 初めて返ってきた応えを無視し、俺は扉を開いた。
「歌乃」
「だめ……だめだよぉ……」
 そこに、歌乃はいた。
 ベッドの上で、小さく震える背中を俺に向けている姿が、月明かりに照らし出された。
「……怒ってないから、さ」
「……な、なんで……?」
 歌乃は、泣いていた。
 泣きながら、振り向いた。
 目は真っ赤に腫れ、頬には涙の跡が残り、髪もボサボサだ。
 だが、間違いなく、歌乃だ。
「ヒロ君……だってぇ、わたし……わたし、やくそくして……なのにぃ」
 目を擦りながら、しゃくり上げながら、歌乃は何とか言葉を継ぐ。
「……とにかく、俺は怒ってない。だから……あー、その、なんだ……泣くなよ」
「…………う」

8:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:39:47 VOsPewZf
「へ?」
「うわぁあああああああん!!」
 歌乃の瞳から、珠のような涙がボロボロと零れ落ちる。
 な、なんでさらに泣くんだ……? 俺なんか変な事言ったか!?
「だから泣くなって!」
「らってぇ、らってぇ……ヒロくん、ひっく……ヒロくん、やさしくて……うぇえええん!」
 子供のように泣きじゃくる歌乃を前に、俺はオロオロとする事しかできない。
 あー、もう、面倒だっ!
「きゃっ!?」
 俺は勢いに任せて、歌乃を抱きしめた。
「ほら、泣き止め……な?」
「う、あ、え、あ、お、うー?」
 びっくりしたのか、歌乃は言葉にならない言葉を発しながら、顔を白黒させている。
しばらく、俺はそのままの体制で、泣き止まない子にをそうするように、歌乃の頭を
撫でてやった。
「……落ち着いたか?」
「………………う、うん」
一先ず、泣き止ませるという目的は達成したようだ。
「じゃあ……話してくれ。なんで約束守れなかったのかと、なんで今まで連絡もよこさず
 部屋の中で塞ぎこんでたのか。……理由、あんだろ?」
「………………言わなきゃ、駄目?」
「駄目。怒ってはいないけどな……心配したんだぞ?」
「う……そ、そうだよね。……ごめん、ヒロ君」
「聞かせて、くれるよな?」
「……う、うぅ」
 ……なんでそこで赤くなるんだ?
「言う……言うけど、その前に、その……ああっ、ちょっと待って!」
 歌乃はそう言うと、涙の跡を袖で拭い、乱れていた髪を整え、俺と真正面から向き合う
ように、ベッドの上に正座した。
「……理由を話す前に、ヒロ君に聞いて欲しい事があります」
「おう、なんでも聞くぞ」
「……………………すぅ」
 大きく、大きく、これ以上無い程に大きく息を吸い込み、歌乃は叫ぶように―
というか、叫んだ。
「私っ、ヒロ君の事が好きですっ!」


「………………へ?」
「……うわ、百年の恋も冷めそうな間抜け面だぁ……」
「え、いや、だって……え、ああ?」
「はぁ……ま、いいけどね。いきなりこんな事言われたら、誰だって驚くだろうし」
 それが告白であるという事にすら、俺はすぐには気づけなかった。
そして、気づいた瞬間、頭が真っ白になった。
思考が止まり、歌乃の言葉が脳内をエンドレスでリピートのヘビーローテーションな
JFKを来期先発陣が岡田監督目指せワールドカップはBby歌乃。
ああ、最早何がなにやら。
「……もう言っちゃったから、後にはひけないし、全部言うけど……あの日はね」
歌乃は少しだけ俯きながら、あの日……クリスマスイブの夜に、何故自分が
行けなかったのかを語り始めた。
「本当は、あの日、言うつもりだったの。前の日……その、ヒロ君が、あんな冗談言う
 からさ……もう、これは思い切って告白して、駄目なら駄目で諦めようって思って、
そんで約束したんだけど……なんか、怖くなってきちゃって、さ」
「歌乃……」
「……断られたら、もう仲のいい幼馴染でもいられないんだ、って。家に帰ってから、
 それに気づいちゃって……もう、それが、凄い……凄く、怖くて……行けなくて……。
電話も、できなくて……かかってきた電話もとれなくて……家にも、行けなくて……
どうしよう、どうしようって、ずっと一人で考えてて……何もできないまま、部屋に閉
 じこもってて……自分勝手だよね……弱虫だよね……こんな私なんか……ヒロ君も、
 きっと……私の事なんか、もう嫌いに」

9:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:40:03 VOsPewZf
「ならねえって」
 俺は、歌乃の自分を責める言葉を遮った。
なんだよ。
こんな簡単な話だったなんて。
「嫌いになんかならん。だいたい、勝手に人の感情まで決め付けてくれるなよ。それこそ
 自分勝手の極みじゃないか?」
「う……ご、ごめん」
「いや、違う……そうじゃなくてだな……俺もお前に言う事があるんだ」
「……?」
「……この前『冗談だ』って言ったろ? なんか、そのせいで色々お前を悩ませちまった
 みたいだけど……あれが『冗談だ』っていうのが、ホントは『冗談』なんだ」
「………………???」
 ……遠まわしだと、さっぱり伝わらないらしい。
 まあ、俺もはっきり言われるまで、さっぱり気づかなかったんだし……同じか。
「……つまりだなぁ……俺も、その、な……好きなんだよ、お前の事が」
「………………」
 あ、ポカーンとしてる。
俺も似たような顔をしてたんだとしたら、そりゃ確かに間抜け面だ。
「だから、本当はあの時……本気だったんだ。冗談なんかじゃなくて。お前から連絡が
 来ない間、お前に何かあったんじゃないかって……お前がいなくなったらどうしよう、
 って……そんな事ばっかり考えてた」
「え、いや、だって、それって………………」
「驚くべき事に、俺達は両想いという事になるらしい」
「……私が、ヒロ君を、好き」
「うん」
「……ヒロ君が、私を、好き?」
「うん」
 唖然としたまま固まっていた歌乃の表情が、次第に崩れていく。
驚きから、喜びへと。
「……………………う」
 そして―
「うぇぇぇええええええええええええん!」
 ―歌乃の両の目から、再び溢れ出る、涙。
「……泣くなよ、歌乃」
「らってぇ……ホッとして……うれしくてぇ! なによー! もぉ、バカぁ!」
「俺だって、イブの日に会ったら言うつもりだったんだぞ?」
「そんなのしらないもんバカぁ! いままれ一人でうじうじしてた私もバカだけどぉ!」
 言葉とは、そして両の瞳から溢れるものとは裏腹に、歌乃の顔には笑顔が浮かんでいた。
「もう、バカぁ! ヒロ君のバカぁ! けど……けど、大好きっ! わぁぁぁぁんっ!」
「……いつから?」
「ずっとぉ! ずっとだよぉ! なのに……なのに、ずっと気づいてくれなくてぇ!
 でも、やっと……やっと……うわぁぁぁあああああん!」
「そっか……気づいてやれなくて、ごめんな」
 ずっと……ずっとか。最初から、ずっと歌乃は俺の事を想ってくれてたのか。
「歌乃……」
 嬉しさが溢れて涙になっている、そんな、幸せそうな泣き笑い。
それだけ、歌乃が俺の事を想っていてくれたんだと、くれているんだと思うと―
「ひゃっ!?」
 知らず、笑顔で泣きじゃくる歌乃を、俺は抱きしめていた。
 服の上からでもわかる、女の子らしい柔らかい身体が俺の腕の中に収まる。
さっき泣き止ませる為に抱きしめた時には感じなかった、歌乃の『女』を妙に意識して
しまい、俺は自分の鼓動が次第に高鳴っていくのを聞いたような気がした。
 鼓動の導くがまま、俺は口を開く。
「『冗談』の続き……しても、いいか?」
 驚きが、歌乃の涙を止める。残ったのは、笑顔。
「……いいよ。ヒロ君なら、いいよ」
 穏やかな笑みと、涙の跡はそのままに、歌乃は瞳を閉じた。
「歌乃……」

10:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:41:18 VOsPewZf
 俺は、歌乃の両肩に手を置き―ゆっくりと顔を歌乃のそれに近づけて―
―あれ?
 歌乃の顔が、歪む。
あれれ?

なんで

            めのまえ、が

      まっしろ


                      に?

















まあ、率直に言って、歌乃と口付けを交わそうとした、その瞬間―俺はぶっ倒れた。
 次に俺が目を覚ました時、そこは歌乃の部屋でもなければ、俺の家でもなかった。
病院のベッドの上。横を見れば、心配そうに俺を覗き込む歌乃の顔があった。
倒れた俺は、歌乃が呼んだ救急車で運ばれ、念の為2日程入院する事になった。
 ……まあ、治りきったわけでもないのに全力疾走してれば、そりゃ風邪もぶり返すわな。
歌乃を抱きしめた時に感じた鼓動も、半分くらいは風邪による動悸だったのかもしれない。
 ちなみに、気を失っている間に年は明けたらしい。なんつう正月だ。体調自体は、
点滴したりでもうほとんど快調に近いんだがなー。
「もとはと言えば、私がヒロ君との約束守らなかったから、ヒロ君風邪ひいちゃった
 わけだし、あの日も無理して私の所に来てくれたんだしね?」
「……いや、まあ……すまんな、歌乃」
「それは言わない約束だよおとっつぁん」
「誰がおとっつぁんやねん」
 そう言って笑う歌乃は、もうすっかり元の明るさを取り戻したようだった。
「しかし……クリスマスも正月も、こうやってベッドの上か……」
「クリスマスとは違うでしょ?」
「……だな」
 そうだ。クリスマスの時とは違う。
不安に駆られて悪夢を見る事は、もう無い。横に……コイツがいてくれるから。
「それに……なんだかんだで、二人きりでいられるしねー」
「……恥ずかしい事言うなよ」
「……えへへ」
「俺が治ったら、二人で買い物行こうな」
「買い物?」
「ああ……一週間くらい遅くなったけど、クリスマスプレゼント。何が欲しいか
 わからなかったから、イブに一緒に行こうと思ってたんだ」

11:終わりのエロ無し帰省ネタ
08/01/01 21:41:56 VOsPewZf
そんな俺の言葉に、歌乃は意外にも首を横に振った。
「……いらないよ」
 嬉しそうに、照れくさそうに、笑いながら、歌乃は俺を見つめている。
「……なんで?」
「……だって、もう……一番欲しい物は、ここにあるから」
「そっか」
 釣られて笑みを浮かべながら、俺も歌乃を見つめた。
「俺もだよ、歌乃。……最高のクリスマスプレゼントが、ここに、ある」
 きっと俺も、嬉しそうに、照れくさそうに、笑みを浮かべているのだろう。
今日、この瞬間、俺達は二人とも最高のクリスマスプレゼントを貰ったわけだ。
「……けど、風邪治ったら、したい事は……あるよ?」
「そっか……俺もだ」
 皆まで言わずとも、それが何かはわかっている。
俺も、歌乃も。
「実は……ちょっとだけ、今でもいいかなぁ、とか思ってたりして……」
「……風邪、うつるぞ」
「うつったら……ヒロ君のは治るでしょ?」
「今度は、俺が看病する番か?」
 言葉を一つ一つ紡ぐ度に、少しずつ近くなる俺と歌乃の距離。
ベッドの上に上がり、膝を立てた歌乃の肩に手を置き、俺は歌乃の目を見た。
その丸くて大きな瞳が、瞼に少しずつ隠されていく。
それを確認すると、俺は―段々と顔を歌乃のそれに近づけて―
「佐野さん、検温ですよー!」
 ―瞬時に開く、俺と歌乃の距離。
だが、真っ赤になった俺達の顔と、何故かベッドの上に正座している歌乃を見れば、
俺たちが何をしようとしていたかは一目瞭然だろう。
「おや、お邪魔でしたか? けど、そういう事はちゃんと治ってからにしてくださいねー」
 看護師さんはニヤニヤ笑いながら体温計を俺に手渡すと、
「じゃ、計り終ったらコールしてくださいねー」
 そう言って、何故か颯爽と帰っていった。
「………………」
「………………」
「……そ、そうだよね! ちゃんとヒロ君が治ってからにしよう、うんっ!」
「だな。焦らなくても、いいよな」
「そうだよ! これから、時間はいっぱいあるんだし。……ずっと、ずっと好きだったん
 だから、これからずっとずっと……幸せにしてくれなきゃ、嫌だよ?」
「……ああ、わかってる。約束するさ」
「……嬉しい。私も、ヒロ君に幸せになってもらえるように頑張るね」
「お互い、幸せになろうな……って、冷静になってみると、なんつう会話してんだ俺らは」
「ちょ……今更照れないでよ……こっちまで恥ずかしくなるじゃない……」
「はは、わりぃわりぃ……お」
「あ」
 その時、俺達は二人同時に気付いた。
「……雪、降ってきた、ね」
「……雪、降ってきた、な」
 雪が、降り始めた事に。
俺と、歌乃の、本当の始まりを告げるように。
俺と、歌乃の、これからを見守るように。
「あ、そうだ言うの忘れてた」
「何?」
「あけましておめでとう。そんで……メリー、クリスマス」
 今日言わなくてはいけない言葉と、あの日会えず、言えなかった言葉。
その二つが、俺達の幸せを物語っていた。
そりゃ幸せさ。なんせ、正月とクリスマスが、最高のプレゼントと一緒にやってきたんだから。
「うん……あけまして、メリークリスマス!」
                                                   ~終わり~

12:終わりのエロ無し帰省ネタby唐突に(ry
08/01/01 21:42:22 VOsPewZf
ここまで投下です。

13: 【中吉】 【1862円】
08/01/01 23:45:17 Pdu32YQh
あけおめ
>>6 年越しGJです
新年早々ハラハラしました

14:名無しさん@ピンキー
08/01/02 00:24:17 8BHnlqa/
素敵でした…

15:名無しさん@ピンキー
08/01/02 02:47:25 453aGYGl
クリスマスの待ち合わせに来ないというネタだとイブ(24日)をクリスマス(25日)と
間違えてたっていうベタなネタでくるかと思ったら、そう来たか
何はともあれGJ

16:名無しさん@ピンキー
08/01/04 02:02:36 jlQ8Y80H
>>6 乙です
微笑ましいです

17:名無しさん@ピンキー
08/01/05 04:09:51 hPVfcmeS


18:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:43:33 APa8ubkl
どうも、優也と友梨の作者です。
これはネタが被ってしまったことで俺的黒歴史に入りかけてたから……
でも前スレを見たら好きでいてくれた人もいたみたいなのでまた書き始めました。
とりあえず、出来たかな?と思うので投下してみます。

19:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:44:53 APa8ubkl
 彼女の事だから昼前には連絡が来ると思ってた。ところがどっこい今は午後二時。
 昼飯くらいは一緒に、と思ってたんだけどな……
 まぁ、しょうがないか。あくまで、俺が考えたものだしな。
 とりあえず、メールくらいは送っておこうか。
 
 気付けば午後二時。
 シャワーを一時間(も)浴びて、何を着ていこうかを悩み始めたのは午前八時半。
 勝負下着で行くかどうかを決めたのは九時半。優也は黒が好きだから、黒の勝負下着に決めた。
 スカートかズボンかは、スカートが勝利。これは十時。ロングスカートに決めたのが十時半。
 上着は彼が「似合ってる」と言ってくれたこともある着慣れたものか、新しく買ったものか。
 人生は挑戦。新しく買ったものに決定。
 ここまでで十二時。
 それから、化粧をいつも通り薄くするか、それとも少しだけ気合いをいれて口紅くらいは濃くするか。
 髪はいつも通りか、結んで行くか。
 そして今、靴をどうするかと悩んでいて、ふと時計を見ると午後二時。
 お昼御飯を、あわよくば夕飯も一緒に食べて……そのまま、私も食べて貰えたら……ってな、何を考えて…
 で、でも、結婚報告が最高のプレゼントだ。とかは親に何回も言われてるし、そろそろ…しちゃっても……
 唐突に流れ出す有名なラブソング。
 着メロ。しかもこの曲なら
─優也だっ!
 出来るかぎり早く携帯を取り出して、見る。
『まだ出なくて良いのか?』
 これだけ。
 優也から来るメールは無条件で嬉しいし、保存確定なのだけどさすがに思わずにはいられない。
─こっちの気も知らないで……

20:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:46:43 APa8ubkl
 
『そろそろ来て』
 彼女からの返信。
 少しばかり短い気もするが、あのメールじゃこれくらいしか返答出来ないか。
 それじゃ、迎えに行きますかね。愛しの人を。
 
 友梨を乗せて、法定速度内で道路を走る。目指すは近隣市内の百貨店。特に急ぐ用でもない。
 信号はたまにある程度で、そこで曲がれば何分かは直線が続く田舎道。そんな道が、俺は嫌いじゃない。
 少し離れた市に通勤して、田舎で日常を過ごす。そんな生活が、俺は好きだ。
 何より彼女が、側に居てくれるから。
「何を買う気なんだ?」
 一応付き添いとして、それくらいは聞いてもバチは当たらないだろう。
「腕時計、かな。だいぶ古くなってるみたいだから」
「あれ?おじさんがおばさんから貰ったっていまだに自慢してるの、なんだっけ?」
 青信号、右に曲がる。
「ネクタイ、真っ黒のね。いっつも付けてくの。いい歳して、まだまだデレデレだから」
「今度の誕生日でなんぼだっけ?五十くらい?」
「うん、丁度五十歳。二人ともね。結婚生活二十六年」
「丁度、歳は俺らの倍か。てか、二十四で結婚してんのか」
「うん、私達二十五歳、もう過ぎちゃったよ」
 助手席で彼女がクスクスと笑っている。
「はぁ、そろそろ結婚とか、考えないといかんのかね?そういうの、苦手なんだがな……」
 車が多くなってきた。市が近い。赤信号、止まる。
 少しだけ、ほんの少しだけ、彼女を覗き見る。目に見える変化はない。
「あの、さ……」
 彼女が呟く様に言う。
「……なんだ?」
 少し、ドキッとする。
 少しの沈黙
 耳をつんざくようなクラクション。後ろの車から。いつの間にやら信号は青。
「やばっ」
 急いでアクセルを踏む。真っ直ぐ直進。
 気まずい沈黙。
「も、もう、ちゃんと前見なきゃダメだよ?」
 明らかに誤魔化しを含んだ叱責。
「悪いな」
 その誤魔化しに俺は乗るしかない。
 その先を聞くのが、恐かったから。

21:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:48:02 APa8ubkl
 
 考える必要なんて無いのに。
 だってすぐ横に、今までずっと側にいて、この歳になってもまだ純潔を守って、君の事を大好きな女の子がいるんだよ?
 それともなに?君の目はそんな女の子が見えないくらい老眼なの?
 
「ところで軍資金は?」
「二万円、高すぎてもあれだけど、安すぎても、ねぇ?」
「ねぇ?って聞かれてもな。ま、妥当なとこじゃないか?」
 そんなことを言い合いながら百貨店の時計屋へ。
 「お手頃品も高級品も、この店で」の売り文句通り、子供用からそこらの金持ち用まで数多く取り扱っている。
 五万を越えるような腕時計は完全無視、一万から二万の範囲で探す。
 探し始めてから十分ほど。
「……こんなのどうかな?」
 そう言って友梨が指差したのは、時計から腕に巻く部分までメタリックシルバーで統一された一万強の腕時計。
「ちいっとばかしピカピカしすぎじゃないか?それなら、俺はこっちを勧めるな」
 そう言って俺が指差すのは時計盤がシルバー、腕に巻く部分は黒い革で作られた腕時計。
「…君の趣味も混じってるでしょ?」
「…分かるか?」
「うん、なんとなくね」
 彼女が笑顔で答える。

22:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:49:29 APa8ubkl
 
 君の趣味は分かってるつもりだよ。
 派手な色は苦手、黒とかの暗い色が好き。
 ホントに小さいときから、二十年以上君の横にいるんだから、君を見てきたんだから、分からない訳ないじゃない。
「で、どうかな?」
「良いとは思うけど……二万円越えちゃってるし………」
 彼が指差した時計は二万七千とちょっと。
 買えなくは無いけど、それじゃあ流石に財布の中身に影響が出てくる。
「そのくらい俺に出させろ。一応金は持ってきてんだ」
「え?でも……」
「おじさんには小さいときから世話になってるからな。お礼だよ。お礼」
 ちっと少ないけどな、と言いながら彼は笑う。
 彼は律儀だ。律儀で、優しくて、ちょっとだけイジワル。
 そんな優也が好き。そんな優也だから好き。
「ほれ、そういう訳で、買え」
 そう言って一万円札を差し出してくる。
「……うん」
 店員を呼び、この時計を買う旨を伝える。
 
「はい」
「んあ?」
 俺の目の前に差し出されたのは千円札が二枚と硬貨数枚
「さっきのお釣り」
「あぁ、別に良いって、そんくらい」
「でも……」
 律儀なもんだ。見習いたいくらいだね。
「んじゃ、外の店で軽くなんか食おうや。そんな何千も使う店じゃないから、二人でもそんくらいで間に合うだろ」
 そういって俺が口に出すのは全国に店舗を持つ有名なファーストフード店の店名。
「……だね。うん、食べよう!」

23:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:51:10 APa8ubkl
 
 周りにいるのは高校生らしき団体やカップル。
 周りから見たら、俺たちはどう見えるのだろうか?
 友人?親友?恋人?夫婦?
 後に上がるものほど、現実味が無い。
 そうなれたら良いな。と、そうは思える。だが、そうなるために踏み出す勇気が無い。
 分かっている。友梨は魅力的な女性だ。何もせずに俺の隣にいつづけてくれる筈がない。
 だからこそ─
「うぅ……」
「……どうした?」
 ハンバーガーの最後の一片を口に放り込む。
「多い……」
 彼女はまだ半分程しか食べていない。それでも多いのか?
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……」
 そう言ってストローをくわえてドリンクを飲む。
「……無理なら食べてやるぞ」
「ホン、ト……?」
「こんな嘘つくかよ」
「じゃ………その……お願いします…」
 彼女から残りを受けとる。心なしか頬が赤い。
「顔赤いぞ?どうした?」
「え!?……そ、そう?」
「うん、だいぶ」
 
 予想外のところで、デートみたいな流れになっちゃったんだから、しょうがないじゃない。
 それにだって、私が残したのを食べるって事は、かん、その……か、間接キ、ス……
「ちょ、ちょっとここが熱いから、かな」
「ああ、確かに。外に比べたらな」
 そう言って彼は、私が残したものを頬張る。
「ん……こっちのも美味いな………どうした?」
「……………」
 わ、私が食べてたものを、つまり、私の唾液、とかがついちゃったのを、彼が飲み込んでる訳で……
「おい?」
「ひゃい!?」
 つい、すっとんきょうな声をあげてしまう。
「………どうした?」
「な、なんでもない!なんでもないよ!うん!」

24:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:52:53 APa8ubkl
 
「しっかし、お前ってあんなに少食だったか?」
 ブレーキ。左折。アクセルを踏み込む
「む、なに?私はもっと大食いだっていいたいの?」
 そのむくれた様な言い方につい笑みがこぼれる。
「そんなんじゃねえよ。ただ、あれはいくらなんぼでも少ないだろ」
「そう?結構大きいのだったよ?」
「そうだったか?」
「そうだよ」
 彼女の笑顔は、綺麗だ。それをずっと隣で見続けていたい。
 信号は青。真っ直ぐ行くと友梨の家、右折で俺の家。直進。
「…えっ!?」
「………なんかしたか?」
「え、あ、えと、その、ど、どこ、行くの?……」
「どこって……帰るんだからお前さんの家だろ。それ以外あるか?」
「…その……やの…………とか…」
 よく聞こえない。
 
「…その…優也の…部屋、とか…」
「なに?」
「な、なんでもない……」
 女の子にこういう事言わせるのはずるいと思う。
 少しくらい、そっちから誘ってくれてもいいじゃない。
 さすがに今までのスルーっぷりを思い起こすと少し苛立つ。
 だいたいそうだよ。いつもいつも赤面するのは私で、彼はいつもそれを見てニヤニヤしてさ。
 いや、まあ、その、そんな笑顔も、まぁ、その、好きだけど、好きなんだけどね……
 私の気持ちにも全然気付く様子は無いし……
 でも、好きって想えてる事が、幸せで、彼の側に入れることがまた、幸せで……
「友梨?」
「ななななに!?」
「……着いたぞ…さっきからどうした?」
「な、ナンでもナイよ」
 テンパった。
 この際、片言なのは許して欲しい。
 なんでもないなんでもないと連呼して恥ずかしさを誤魔化しながら車を降りる。
「今日は、ありがと。じゃあ、ね」
 小さく手を振る。
「はいよ。あ、そうだ」
「どうかした?」
「その服、似合ってるぞ」
 油断したところに言葉と笑顔のダブルパンチ。彼は手を振り、そのままアクセルを踏み込んで車を発車させる。
 
 数分後。
 立ちっぱなしでニヤニヤしながら虚空を見上げ、ブツブツと何かを呟いている不審度全開の私を、母が発見した。

25:名無しさん@ピンキー
08/01/06 02:57:59 APa8ubkl
投下終了
 
数ヵ月も置いといて一日しか進んでない点は、うん、ごめんなさい。
 
誤字脱字がなかったらいいな。書き続けれたらいいな。常留スレのネタも進めばいいな。

26:名無しさん@ピンキー
08/01/06 03:32:58 Nt4pCiDT
GOD乙!

27:名無しさん@ピンキー
08/01/06 09:42:36 MmaD1BhW
>>25
GJ!
相変わらず上手いね。常駐スレの作品も楽しみに待ってる。

28:名無しさん@ピンキー
08/01/07 01:59:11 NQB8Xy/2
>>25
イイネイイネ  続きが気になりますわぁ

常駐スレってどこなんだろ  そっちも気になる

29:名無しさん@ピンキー
08/01/10 10:33:58 mEUD0NsR
ほしゅ

30: ◆NVcIiajIyg
08/01/13 05:23:15 YFKyPicU
なんか変なあれですが書いてしまったので投下します。
珍味ということで箸休めに僅かでも楽しんでいただければ幸いです。

31: ◆NVcIiajIyg
08/01/13 05:24:13 YFKyPicU
メリマルの幼馴染みは出稼ぎに行った。
ずた袋ひとつ抱えて、12の歳に出稼ぎに行った。

メリー・マルー。ぼくはいつか帰ってくるよ。
きっとおまえみたいなノッポのグズは誰も貰ってくれないんだろうから、お金持ちになったぼくが結婚してやる。

そんな格好いい台詞を残して人買いに売られていった。

―そう。
あれは人買いだったのだと今なら分かる。
出稼ぎといったってきっと帰ってはこない。
お金を数年送り後は途切れて戻ることはない。
女性一般のそれより高いが、しかし大抵の男性よりは既に低くなった背丈がウインドゥに映っている。
肩でまとめてとめた髪は、朝風に吹かれてほつれている。
雲の流れる冬空を仰ぐ。
落ち葉を掃く箒もそろそろ雪掻きスコップに取り替えなければならない時期だ。
太陽も地平線から離れ、今日も店を開ける準備であわただしい。

メリマルの家は生活に必要な団子を売る店だったので、食べるだけならどうにかやっていけた。
一方幼馴染のイノコウダは煙草栽培の7男で、食い扶持を減らすための最初の手段だった。
だからあの口約束も忘れていい。
本当は忘れていいはずなのだった。
隣村の五穀商人に結婚を申し込まれても、断る理由なんてなかったのに。
「イーノが夢になんか出るからだよ」
呟いて箒に手を載せ、顎を預けた。
溜息はほんのり白かった。


(1)



32: ◆NVcIiajIyg
08/01/13 05:42:03 YFKyPicU
あれ、書き込めない…連投していたら大変申し訳ありません。
エラーでなくなったら戻ってまいります。

33:「花と煙」2/3 ◆NVcIiajIyg
08/01/13 05:47:27 YFKyPicU
大きな池がある山間の街は、冬も霧が深くなる。
出て行くものが多くて、入ってくるものは少なく、帰ってくるものはさらに少ない。
最近は地元の客も少しずつ減ってきている。
波も途切れてきたので、メリマルが病気の父の薬代が幾ら余っているか落書きのように計算をしていると、ストーブの火が揺れた。
ベルが鳴る。
「はい」
「やあメリー。おひさっし。郵便だよ」
「お久しぶりって、昨日も会いましたよね?郵便ないのに」
席を立つと郵便屋だった。
最近は郵便物がなくてもなぜか立ち寄ってくる。
昔はいじめっこのお兄さんだったのになんてことだろう。めんどうくさい。
途中でちりとりに躓いて、でもなんとか転ばずにやり過ごしてドア口まで歩み寄る。
「メリー宛てだよ。珍しいね」
陽気に手を伸ばしてくるので後ろに一歩下がってかわした。
(こういうときには流石に転ばなくなった。
 彼女も我ながら進歩だ!と密かに自負している。)
見覚えのない筆跡に眉をひそめて、裏返して糊付けの痕を丹念に確認する。
「ホック兄さん。まさか、中身見てないでしょうね」
「うわ、何疑ってんの。見てないぜ。もうここクビになったら終わりなんでさぁ」
同じくらいかやや上の背丈をちらりと見やり、メリマルは肩をすくめた。
前に別の小包配達人に中身を見られたことがあるのだ。
ホック兄さんはしかし、どうやら本心から見ていないようだ。
そういうところはまともらしい。
「外、寒いでしょう。お茶でもいかがですか」
「おお嬉しい。嬉しいなあ。心がもう温まった」
「おおげさです」
「しかし今日は霧が濃いね。きっとこれから数日、郵便も人の出入りも止まるだろうよ。」
寂しい?寂しい?と言いたげな顔がうざかったので前言撤回、つま先で蹴りだした。
昔はブスだのグズだのいじめてきたくせに。
村に同年代の独身女性が少なくなってきたからだろうか、調子がいいにもほどがある。

34:「花と煙」3/3 ◆NVcIiajIyg
08/01/13 05:49:04 YFKyPicU
とはいえ、寒いのも本当なので一応入れていたお茶を保温容器に入れて窓から渡してやった。
去っていく姿も桐ですぐに見えなくなった。
もう一度封筒を眺めて、彼女は窓を閉めた。
桟が古く、閉めるたびにギリギリと軋む。

メリマルは精算台の椅子に戻り、あまり見たことのない柄の封筒を裏返した。
差出人がなかった。
「んー」
見つめて、悩む。
宛先の筆跡もどう考えても見覚えがなく、どうしたものか悩んでとりあえず机の端に放っておいた。
冬の訪れはいつでもゆっくりだ。
じわじわと、気づいた頃には深みに嵌って春を待つばかりの厳しさは、
人の生きる様にも似ているのだ。だから冬が訪れる前には覚悟をしなさい。
仕立て屋の老人がいつかそう言ったのを思い出した。






『親愛なるメリー・マルーカ

 契約期間が終わった。
 帰ろうと思う。

      イノー・コウデロイ』


腰を抜かすとはこのことだ、と台所にへたり込んでメリーは手紙をくしゃくしゃにした。
夕餉の鍋がことことと湯気を吹き上げ、猫のククがそれを狙っているのを目端に見ても何の力もわかなかった。


35: ◆NVcIiajIyg
08/01/13 05:50:41 YFKyPicU
途中変なのが入ってすみません。
続きは時間の出来ましたときに、また。


36:名無しさん@ピンキー
08/01/13 07:26:41 aV43IrXM
確かに珍味ですな・・・
なんというかとても独特な世界(イメージ的には中世ヨーロッパ)みたいな感じだな。
つまり人買いに買われた幼馴染みの男が戻って来るってことだよな?
これからに期待してます

37:名無しさん@ピンキー
08/01/14 04:24:43 vUz2QnXo
お、◆NVcIiajIyg氏ではないですか、お久しぶりです。
氏の文が個人的嗜好に一番マッチするので期待しておりまっす。

38:名無しさん@ピンキー
08/01/14 07:07:52 +ClKIEAo
今日は成人式、楽しみで昨日からムラムラして眠れなかったから少し書いてみた。
もし良いことがあったら帰宅後妄想の塊をうpします。

39:38
08/01/15 01:14:53 KW0ckO/g
うわああああ、もう寝る。

40:名無しさん@ピンキー
08/01/15 02:30:30 0+LW7emN
何があった?


41:名無しさん@ピンキー
08/01/15 06:20:07 GQEip1Z4
投下がうまくいかない、というのであれば、
最近エロパロスレに導入された規制に引っかかった可能性がある。

・22行以上ある長文を投下する際、最初の一行目が『空白の改行』だったばあい、AA嵐とみなされて投下スルーされる。
・回避するには、冒頭の一行目を『全角スペース』にするか、空白改行無しで本文に突入する。

42:名無しさん@ピンキー
08/01/17 01:56:07 wmxefaHY
>>35
うわー、お久しぶりです。嬉しいなあ。
ふらりと現れて下さるのを心待ちにしていました。
時間ができたら続き、待っていますよ。

43:名無しさん@ピンキー
08/01/18 08:09:46 9OSri5do
報告です。
前スレに三人がきてます。お帰りなさい。
そしてGJです。

44:名無しさん@ピンキー
08/01/19 06:18:46 q6ZhXnmH


45: ◆NVcIiajIyg
08/01/19 23:28:08 9ge56B0f
>>31-34の続きです。

46:「花と煙 第二話」1/4 ◆NVcIiajIyg
08/01/19 23:30:28 9ge56B0f
 
イノコウダの話をしよう。
正式筆記名称はイノー・コウデロイ、通称はイノー、煙草農家にできた予定外の七男で末子だった。
彼の攻撃的で世話焼きな性格と小柄でがりがりの身体には出自が深く関係している。
出自故に、献身的な溝鼠(どぶねずみ)になったといってもいい。

―雲が重く、火山灰が冷害を起こした、よりにもよって大凶作の秋だった。
食い扶持の増加はコウデロイの家にとって大打撃だった。
既に上の六男を養子にまで出したというのにと両親は嘆息して食べ盛りの長男次男は憤り、
仕事の増加に長女は水でひび割れた手肌を晒して祈った。

ああ、生まれなくても良かったものを。

イノーが卑屈にならなかったのは奇跡というほかない。
両親が嘆きつつも彼を外に出さなかったことが善悪どちらに傾いたかは分からない。
少なくとも、末っ子で厄介者の少年は兄姉を見返したい一心で戦い抜くことにした。
侮ってくる同世代の友人たちを必死に制圧して食料を確保し、空いた時間で家の仕事をできる限り手伝った。

疲れると、友人のところにたびたび通った。
団子他、主食となる穀物を扱う店によく使いにやらされた少年は、
メリー・マルーカという少女がいつもお茶をくれることに気づいた。
初めて舌足らずな「イーノ」という呼び方で笑いかけられたときには、なぜだか急に泣きたくなったのだった。
初めての友人がメリーだった。

―イノコウダは12の歳まで畑と家の手伝いに明け暮れた。
暦が一巡りし、虫の大群が空を暗く染めて十年ぶりに不作の兆しがやってきた。
少年は、畑より楽で稼ぎのいい仕事を両親に紹介された。
そうして、いつか少女を迎えに来るために見知らぬ大人についていった。
育ち盛りの溝鼠が体よく厄介払いされたことに気づいたか、定かではない。


イノコウダの少年期は以上である。


(2)



47:「花と煙 第二話」2/4 ◆NVcIiajIyg
08/01/19 23:32:01 9ge56B0f
雨音が屋根を打ち、薬缶が湯気を吹き上げている。

「メリー。酒はないんか」
しわがれた父の声に、メリマル―正式筆記名称メリー・マルーカは現実に引き戻された。
父は俯いている。
咳が掠れ、薄い髪が抜けて肩に落ちた。
猫のククがおかずを横取りしようと前足を膝元にかけている。
「もうないよ。お医者さんが言ったじゃない。お酒を飲んではいけないの」
「そうかね」
野菜汁を音を立てて啜り、老いた父は余計に小さくなった。
メリマルは干魚の包み焼きをつついて黙殺し、我慢してもらった。
父は老いた。
物心ついて初めての凶作のあと、母が父のとろさに愛想をつかして出て行った。
以来二人暮しをしていたが、身体を壊してから父は妙に頼りなくなった。
煙草はやめたものの、酒には懲りずに手を伸ばすのでそのたびメリーが取り上げる。
至極頼りないとは思っているが、自分も似たところがあるためか母のように見切ってしまうこともできなかった。
結局、今は自分中心に店を何とか切り盛りしている。
イーノが帰ってきたらきっとびっくりするだろう。
魚の骨を飲み込んだ気がしたが、錯覚だった。
そう、イーノだった。
彼は読み書きができなかったはずだ。
だから、本当に彼からの手紙なのか分からない。
不安と興奮とがない交ぜになったまま胃の中に沈み、
いつもの日常をこなすことで現実逃避をしている気がした。
足首に爪を立てるククの喉元を撫でて宥める。
「お父さん」
「なんだね」
「昔、お使いに来てた男の子、いたじゃない。コウデロイさんのところのイノー」
猫を抱き上げることで父の視線を逸らした。
胸の隙間で肉球が暴れる。
「あの小坊主が、どうかしたんかい」
「帰ってくるらしいよ」
口にすると薬缶の湯気にまぎれた。
父は、喉元で唸った。
信じていないのは分かる。
メリマル自身も、半信半疑のままだったのでよく分かった。
嬉しいような気もしたけれど、うきうきするには実感がなさ過ぎるのだ。
猫を片腕に抱いたまま、薬缶を取り上げるために椅子を立った。
お茶っ葉を取り、雨漏りをふさいだ跡を見上げる。
このくらい雨音が弱くなると、とうとう季節も冬に近づく。


48:「花と煙 第二話」3/4 ◆NVcIiajIyg
08/01/19 23:33:15 9ge56B0f
 
手紙が来てから幾日か後の夕暮れ前、店の窓を伝う水滴がみぞれに変わった。
本格的に雪になる前に買出しに行くことにし、コートを羽織ると外に出た。
一旦看板を裏返す。
傘の下で息が染まった。
イーノはまだ帰ってこない。
もっとも都会からここまで、どのくらいかかるかも分からないものだから指折り数えることもできないのだった。
分かりそうなのは一人いるが、最近急がしいのか探しても中々会えない。
八百屋と豆屋と雑品堂を巡ってから、お昼を済ますために街中の店に入った。
人の多い時間から多少ずれていたので席が幸運にも空いていた。
しかも例の探し人が立ち上がって目立っている。
耳の下辺りでくせのない髪を切りそろえ、大雑把な格好をした少女が分厚いメモ帳を振りかざして熱弁していた。
向かいでは子供といってもいいくらいの大人しそうな少女が黙々とお粥を食べている。
その隣には付き人が座っている。
残念ながら近くの席は埋まっていた。
「お魚を」
ウェイトレスに注文し、テーブル越しに二人の様子を眺める。
少女らはどちらも湖のほとりに家があり、本来このような下町にはいないはずである。

ヤユム地方は古くから水運業で財を得た土地である。
数年前から下流域にある都会では海運取引が主となってきているため、
次第に衰えてきてはいるものの今でも財力のあるもの・名士・古い一族などは湖周辺の地区に住んでいたし、外部との交流も盛んだった。
ちなみに湖からやや下って、宿場兼陸路の中継地点としてある区画にメリマルの店がある。
さらに山間部に沿って開けているのが農業地帯で、イノコウダの畑はそこにあった。
ともあれ、そういうわけで町長の姪でありこの地方きっての放浪娘、ミル=ダッタミルの外国周遊暦なら、
どのくらいの時間で帰ってこれるのか分かりそうだとメリマルは考えていた。

49:「花と煙 第二話」4/4 ◆NVcIiajIyg
08/01/19 23:35:12 9ge56B0f
喧しい少女の方がミルダだった。
出会った時から圧倒されるバイタリティだったが久々にみても全く衰えない。
『あのですね、水運業が廃れてしまったのはしょうがないんですよ!そういう時代なんだから。
 これからはぁ、過去の使い方にこだわらないで、別の価値を与えてかなくちゃ生き残れないんですよっ』
とかなんとかいいながら親の仕事にくっついてあちこち飛び回り、勉強し、
何気にこのような下町にも訪れてしまっている。
どうやら地域復興が野望のようだ。
働く親父や老人老婆にも真剣に話を持ちかけ、持ち帰り、数ヵ月後にまた検討して持ってくる。
とにかく元気である。
女性が髪を短くするのもこの辺りの風習にはなかったのに、あるとき「動きやすいの」とばっさり切って帰宅した。
親類が卒倒したそうだ。

妙な縁があり、メリマルはいつの間にか彼女の友人になってしまった。
というのも、ミルダの向かいでスープをすすっているサチがメリーの異父妹だったことによる。
母は、父と別れて暫くすると町の名士と再婚したのだった。

「メリー!メリーじゃない、元気にしてました?」
お魚を食べ終わった頃に席が空いたので近づくと、ようやくミルダも友人に気づいたらしい。
妹のサチも付き人に促され食事から顔を上げた。
若干栄養過多で頬がぷっくりしているが、ぷにぷにすると気持ちいい(ミルダ談)くらいで太っているというほどでもなかった。
「あ、お姉さん」
「こんにちは。サチ」
最初は複雑だったものの、小さな妹ができたのはやはり嬉しい。
サチに笑いかけ、向かい側に顔を向ける。
「ミルダに教えてほしいことがあるんだけれど」
「幼馴染のイノー君がいつ頃帰ってくるかですか?」
にっこりとお嬢様は口の端を上げ、人差し指をつきつけてきた。

50: ◆NVcIiajIyg
08/01/19 23:37:24 9ge56B0f
以上です。
続きは、また時間ができましたら。

51:名無しさん@ピンキー
08/01/19 23:44:37 51NyZSLQ
GJ
わくわく感が、じんわりと湧きだしてきた。

52:名無しさん@ピンキー
08/01/23 03:22:21 0sXPhhmE
保守

53:名無しさん@ピンキー
08/01/23 18:55:13 lJTTHwf9
初めて投下させていただきます
お眼鏡にかなえばいいのですが


54:名無しさん@ピンキー
08/01/23 18:55:38 lJTTHwf9
「…お、そっちも今出たのか」
「うん、ちょっと服に手間取って」
隣り合う家から出てきた、18歳ほどの少年と少女。
少年はティーシャツにハーフパンツ、少女は水色の浴衣という姿だ。
「よし、それじゃ行くか」
「うん」
時刻は午後4時。もうある程度は人も集まって、賑わいを見せているかもしれない。
そう、今日は年に一度のお祭りなのだ。

二人が一緒に祭りに行くのは今年で13回目となる。
家が隣同士の二人はいわゆる幼馴染というやつで、学校も小中高と一緒だ。
何となく一緒に登校し、何となく一緒に昼食をとり、何となく一緒に下校し、
たまには何となく一緒に夕食を食べたりテスト勉強をしたりと、二人の関係には惰性も見え隠れする。
夏に行われる地元の祭りに行くのもそうで、別に二人の間に約束があるわけではない。
祭りに行こうとするときに、たまたまお互いが暇だから一緒に行っているだけだ。
……別に、お互い友人からの誘いを断っていることなどは断じてない。はずである。
とにかく、今年も二人はいつものように、祭りの中心となる神社に向かった。

「さすがにこの日は人が多いな」
「普段はめったに見かけないのにねぇ」
二人が着いたとき、もう神社には人だかりができていた。
この地域では比較的大きな神社ではあるが、これだけの人が集まるのはこの日と正月くらいである。
元々は土地神を祀る儀式が祭りの発祥らしいが、そんなことより騒ぎたい人間のほうが多いのだ。
二人もそれは例外ではなく、
「よし、じゃあ最初は何しようかね」
「んー…私はりんご飴が食べたいな」
「りんご飴か。お、さっそく見つけたぞ。200円か」
「え、おごってくれるの?」
「……それはオレの財布の中身を知っての発言か?」
いつもと変わらず、楽しげに会話していた。


55:名無しさん@ピンキー
08/01/23 18:56:21 lJTTHwf9
りんご飴を買った二人は、それから今度はお面を買った。
スーパーボールもすくったし、焼きそばも食べた。
アイスやベビーカステラ、ポテトも買った。
少女はそれこそ出店を全制覇する気かもしれない。少年は彼女の食いっぷりに苦笑しつつ、それに付き合う。
それはいつもの、毎年変わらぬ二人の祭りのすごし方。
ただ、ちょっとだけ違うのは。
「焼きそば、おいしかったね」
「さっきから食べてばっかな気もするけどな」
「いいの、せっかくのお祭りなんだし。じゃあ次は、つ…」
「おっ…ととと」
石畳につまずく少女。その細い腕を、少年が掴んで引き寄せる。
少し勢いが強すぎたのか、少女はそのまま少年に寄りかかる形になった。
「あ……」
「え……」
そのまま固まる二人。その姿は傍から見ると少年が少女を抱き寄せているようにも見える。
「…行くか」
「…うん」
歩き出す二人。でも、少年の手は少女の腕を掴んだままだ。
「ね、腕…」
「…あ、スマン」
「ううん、違うの」
慌てて離した少年の手に、今度は少女の指が絡む。
少女は顔を赤くしつつも照れくさそうにはにかみ、少年は自分の手を見て、それから幼馴染の顔を見て、再び前を向いて彼女を引っ張るように歩き出した。
その顔が彼女に劣らず真っ赤なのは、彼自身もよくわかっていた。


56:名無しさん@ピンキー
08/01/23 18:56:56 lJTTHwf9
祭りの最後には、花火の打ち上げが行われる。
打ち上げ場所こそ街を流れる川なのだが、比較的山間にあるこの神社からも十分見える。
本来はなかったイベントだったらしいが、華やかな催しを、という意見が集まってできた企画だそうだ。
もちろん二人はそんな事情は気にせず、夜空に開く大小さまざまの光の花に目を向けていた。
「わーっ、今の見た!?」
「見た。すごかったな」
「だよねっ。あっ、今のもきれい…」
「あぁ」
少女は目の前で繰り広げられる情景に見入っている。この花火は彼女が毎年楽しみにしているものだ。
一方少年は、少女の言葉に相槌を打ちつつ、心ここにあらずといった雰囲気を醸していた。
正確には、彼は花火そのものではなく、今、この時間を楽しんでいた。
楽しそうな彼女を見るのが好きだったから。
いつからか、彼にとってこの幼馴染はそれ以上の存在になっていた。
家が隣、学校が同じ、クラスも同じ。幼い頃からずっと一緒だった。
ただそれだけ。彼と彼女は何となく一緒にいた。
今日だって、特に約束していたわけじゃない。たまたまお互いが暇だから一緒に行っているだけだ。
でも、それはもう終わりにしよう。
もう二人は18歳だ。お互いの進む路次第で、今度こそ分かれ道になる可能性はある。
この何となく続いた関係が、唐突な終わりを迎えてしまうかもしれない。
でも、それは嫌だ。彼女とずっと、一緒にいたい。
「…来年も」
「え?」
何か、確かなつながりが欲しい。でもそんなものは少年には思い浮かばず。
だから、せめて今までしなかったことを。
「…来年も、一緒に来ような」
「…え?」
約束を、しよう。
何となくじゃなくて。今までから一歩を踏み出して。
「再来年も、その次の年も、その次の年も…」
彼の声が一瞬詰まって。
「…ずっと、一緒にいたいから。お前と」
そう、口にした。
少女はしばらく呆然としていた。それから顔を真っ赤にして俯く。
「嫌、か?」
少年の声に首を振る。それから、蚊の鳴くような声で、
「…わ、わた…、私も、一緒に…いっしょにいたい、です」
とだけ言った。

祭りの帰り道。
行くときと同じように、二人が歩いている。
違うのは、二つだけ。
彼と彼女は、お互い顔を赤く染めて微妙に視線を逸らしていることと。
それとは対照的に、しっかりと手は握られていることだ。
まるで彼らの今のつながりを示すように。


57:名無しさん@ピンキー
08/01/23 18:57:42 lJTTHwf9
以上です
さて逃げるか

58:名無しさん@ピンキー
08/01/23 19:14:31 VxE4uZ4Q
そうは問屋のおろし大根!おじさん、この幼なじみについてもっとよく知りたいんだわ~

59:名無しさん@ピンキー
08/01/23 20:31:33 txFNpBxI
とにかくGJ!!


60:名無しさん@ピンキー
08/01/23 21:27:44 OIu2NrfQ
>>57
甘いな。
地獄まで付き合って貰おう。中途半端で逃げる事の罪を味わってもらうよ…

何?続きがある?
しゃーない、放免

61:名無しさん@ピンキー
08/01/23 21:47:31 79ZStS4c
>>58-60
ID変わってますが、投下した者です
ありがとうございます。喜んでもらえて本望です

いや本当は一発芸で終わらせるつもりだったんだけどね。続き、何か考えてみますわ
全然別の話になってるかもだけどそのときはごめんなさい
でも幼なじみは永遠

62:名無しさん@ピンキー
08/01/24 03:26:56 TSgfRSKY


63:名無しさん@ピンキー
08/01/24 18:52:54 BUCze51X
>前スレ最後
ちょ、おまwwww
涙腺緩ませんなコラwwww

64:名無しさん@ピンキー
08/01/24 22:18:49 LFhfqMI3
前スレに書けよ。

65:名無しさん@ピンキー
08/01/25 00:37:04 uqHoIuhr
エロパロ板 過去ログ倉庫
URLリンク(ninjax.dreamhosters.com)

66:名無しさん@ピンキー
08/01/25 15:50:59 zMRBe0j0
>>64
見てきたけどその埋めネタでちょうど500kb埋まっちゃったみたいだな
だからこっちに書いたんだろう

ていうかまだ埋まってなかったのかw

67:名無しさん@ピンキー
08/01/25 18:39:39 foItWAtk
優也と友梨の二人が、このままいくと前スレ最後みたいなカンジになりそうだなw

68:名無しさん@ピンキー
08/01/27 07:29:02 eX5wajti


69:名無しさん@ピンキー
08/01/29 22:16:31 YuNb1OOr
保守

70:名無しさん@ピンキー
08/01/30 01:44:03 8pCwxjIc
まあ、しかしなんつーか幼馴染ってのはマイナージャンルだよな
幼馴染キャラは多いけど幼馴染好きは結構少ないって言うかさ
別に悲しくはないけど

71:名無しさん@ピンキー
08/01/30 05:19:18 iUt8qcQu
幼馴染って一口に言っても、そのキモみたいなものって
複数あるだろうし、人によってどれが重要だか分かれる
ってあたりが原因じゃないのかなぁ。

友達以上恋人未満のあったかいようなじれったいような距離感が
イイんだ!ってひともいるだろうし
もう見飽きちゃって家族同然でそんなことには絶対ならないと
おもってたのがある瞬間を境に異性に見えちゃって
どうすんだよ俺どうすんだよこれからっていう狼狽がいいと
言う人もいるだろうし
言葉に出したわけでも約束したわけでもないんだけれど
お互いが隣にいるのがあんまりにも自然で相棒のように
気持ちが通じ合っちゃってる空気が心地よいという人もいるだろうし
胸に秘めた思いが隣り合う時間の長さで封印されて
膨れ上がっても言い出せない胸が固まるような想いの強さが
心打たれるんだって人もいるだろうし
以上のような幼馴染なんてのは成功例であって
どんなに固く幼い誓いをしたところで思春期になれば
お互いの道は離れてすれ違うのが当たり前なんだよ本当だよ
でもそんな別れともいえない別れの切なさも幼馴染の醍醐味だと
思う人もいるだろうし。


つまりなんだ。貴様ら。幼馴染はイイモノなんだよっ!!


72:名無しさん@ピンキー
08/01/30 08:36:15 bA6Nzoh3
ほぼ同意
だがまぁ、オレが話を書くならば、別れの物語は書かないだろうなぁ
そういう話があること自体は否定できないし、する気もないけど
やはり結ばれて欲しい

73:名無しさん@ピンキー
08/01/30 15:40:42 jxftqcD5
一瞬どこぞのスレと間違えて「あれ、こいつらまだ斬られないのか?」
と思ったのは内緒だ

74:名無しさん@ピンキー
08/01/30 21:36:19 8pCwxjIc
いやさ、幼馴染系スレで細々続いているのはココとエロゲ板とラノベの某スレぐらいだろ
エロ漫画板とかにもないし例が悪いが角煮にもない(そもそも一枚絵で幼馴染表現はむずいかも)
幼馴染オンリー即売会とかもないし、やはり少数派なんだろうと思うぜ

考えてみりゃ幼馴染がいなかったのに架空の世界の幼馴染に萌えまくる変態とか
実際に幼馴染がいたのにフィクションの幼馴染に萌える変態なんて、そうはいないよな
しかも更に、その中でも>>71で挙げられた分類以上にバイアスが掛かり得る
こう考えると幼馴染萌えというのは"特殊性癖"だと思う


だが、それがいい………!

75:名無しさん@ピンキー
08/01/30 23:57:07 7PTlRAz8
どこぞのスレw
副会長と会長は元気かなあ……

76:名無しさん@ピンキー
08/01/31 00:18:13 fhFt052O
奥深いな、幼馴染みは。

77:名無しさん@ピンキー
08/01/31 01:18:35 hUrY77Sx
むしろ業だろう

78:名無しさん@ピンキー
08/01/31 02:18:56 6fJGE7Bu
それでも俺は、幸せになる幼馴染を妄想せずにはいられない……ッ! 早く書かないとな……。

79:名無しさん@ピンキー
08/02/01 21:13:54 poM2ihZj
>>78
がんばってくれ 応援してる

ところで
十数年ぶりに会った、昔よく遊んで�r> 「来ねーよ」
 当たり前みたく言われて、その瞬間は、意味が分かんなかった。はっとして慶太の顔を見て、でも、そこには、なんの表情もなかった。
「あんた。それって」
「オレ、トイレ」
 慶太は素早く立ち上がり、袴の裾であたしとの間の空気を断ち切るようにして、行ってしまう。呆然とその後ろ姿を見送ったあたしに、師匠が近づいてきて、言った。
「ま、しゃーないな。これも経験だ。焦るこたねえ。まだ、中三だしな」
「……」
「それにしてもよ。やっぱ、心当たりはねえのか」
「……分かんねえっスよ。あんなの」
 本音だった。いったい、何がどうなってんだ。見当もつかねえ。いや……まさか。そんなこた、ねえはずだ。だって、あんなにいい雰囲気だったじゃねえか。ちくしょう。ありえねえよ。でも。
 昼食の間じゅう、慶太はずっとあたしを避けてた。あたしも、あえて話しかけたりしなかった。後輩どもにつきまとわれてるのをいいことに、慶太からずっと目をそらしてた。
 そうして、午後の形で、慶太のバカが何度もトチるのを見届けたところで、携帯を取り出して、かけた。

「よう。どったん。いきなし呼び出したあ」
 行きつけのモスで、あたしの向かい側にどさりと腰を下ろした沙織は、のほほんと挨拶をよこした。あたしが睨み付けるのも気にしないふうに、コーヒーシェイクなんかすすってやがる。
「あんたに、訊きたいことがある」
 そのくせ、あたしに向けた目は、妙に落ち着いてた。こいつ。分かってやがんな。だったら、こっちも遠慮なんかしねえ。
「慶太と、なんかあったのか」
「本人から、なんか聞いたんじゃねえのかよ」
「とぼけんじゃねーよ。とっとと吐け」
「んー」
 あたしから視線をそらして、窓の外なんか見てやがる。その耳でも引っ張って、強引にこっちを向かせようかと思ってたら、
「別れたよ。あたしからフった」
 あたしは、目を細めて腕組みをした。そんなことじゃないか、って思ってた。そうじゃなきゃいい、って思ってた。でも、どーしてなんだ。
「ワケ。聞かせろ」
「んな義理は……ま、あるか」
 沙織は、肩をすくめて、小さくため息をついた。
「別に大したこっちゃねーよ。ちょっと遊んでみて、やっぱガキの相手はヤだな、って、そんだけだよ」
 自分の目元の筋肉がひきつるのが、分かった。それでも何とかガマンして、
「そんだけか」
「ヒマつぶしにゃ、なったかな」
 ガマンできなかった。気付いたら、テーブルごしに沙織の胸ぐらを掴んでた。向こうも、あたしの目を挑戦的に見返してくる。こいつ。
「なんか、文句あんのかよ。よくあることだろーが。ちょっとお試しに付き合うくらい」
「あいつは、マジだった。それは、分かってたよな。それを、てめえの気まぐれで」
「ああ。悪いかよ」
 開き直る沙織を前に、なんだか、あたしの怒りは急に冷めた。こいつは、こんなやつだったのか。今まで、あたしはこいつの何を見てたんだ。なんで、こんなやつをダチだなんて思ってたんだ。
 あたしは、沙織の胸を突き飛ばすようにして、手を離した。沙織はイスの背にもたれかかりながら、ちょっと意外そうな目をした。
「なぐんねーのかよ。口よか手が早えくせに」
「んな値打ちもねー」
 あたしは、自分のトレイを手に立ち上がった。
「てめえとは、これきりだ。じゃあな」
 吐き捨てて、立ち去ろうとしたときだった。沙織が、呟くようにして、言った。
「……仕方ねーんだよ」

80:I'm the one to watch over you 7/8
08/02/02 14:44:37 Q8g+Q+sP
 
 なんでそこで足が止まったのか、よく分かんねえ。ただ、どういうわけだか、聞き捨てならねえ、って思ったんだ。
「……なんだって?」
 沙織を見下ろす。沙織は、あたしの方なんか見ずに、下を向いてた。髪の毛が顔にかかってて、表情なんか分かんなかった。
「だめなんだよ。だめだったんだ。うれしかったよ。コクってもらえて。あたしなんかに。ああ、これで忘れられる、って。でも」
 こいつ。何を言ってんだ。じっと立ち尽くすあたしの前で、沙織は返事も相づちも待たずに、続けた。
「でも。あの子に好きって言われて。あの子といっしょに絵を見て。思い出しちゃったんだ」
「……」
「あたしは……先輩が好きで、先輩の絵が好きで、絵が好きなんだ。どーしようもなく、好きなんだ。忘れるはずだったのに。諦めたはずだったのに」
「……あんた」
 あたしは、沙織の表情を確かめたくて、その向かい側に、また腰をおろした。沙織は、そんなあたしをちらっと見上げて、少しだけ笑う。泣き笑いみたいな、顔だった。
 あたしは……こんな沙織を、知らない。知らなかった。ほんと、あたしは、今まで、こいつの、何を、見てたんだろう。ちくしょう。あのバカ笑いの下に、こんなもんを隠してやがるなんて。こっちがバカみてーじゃねーか。
 沙織は、も一度、目を伏せる。
「ああ。ひでーことしてんのは、分かってんだ。でも、あたしは……こんなんじゃ、あの子にこたえられない。こたえちゃいけないんだ。そうだろ?」
「……」
「もっと、いーかげんな子なら……よかったよ。そしたら、あたしだって、もっとテキトーに付き合ってさ。テキトーにごまかせたのによ」
「いーかげんなやつのワケ、ねーだろ。あたしの、弟分だぞ」
「そっか……そーだったよな」
 肩をすくめる沙織に、あたしは目を据えた。
「一つだけ、教えろ。今の話……あいつには、ちゃんとしたのか」
 沙織は、あたしの目を見た。そして、小さくうなずいた。あたしはそれで、肩の力を抜いた。
「そうか。だったら、いーんだ。あんたが、マジでフってくれたんなら」
「……いーのかよ。あの子」
「あいつなら、大丈夫だ。あたしは、知ってる」
「ふーん」
 沙織は、なんか眩しそうに、目を細めた。
「あんた……ひょっとして、あの子のこと」
「ああ。好きだよ」
 言ってしまってから、それがほんとだってことに、気付いた。ああ。なんだ。そういうことか。バカバカしい。そんな、単純なことだったのか。あたしが苦笑いしてると、沙織も少し目を見張ってから頬笑んで、
「そ、か……悪いこと、したな」
 あたしはかぶりを振る。
「あんたは、悪くねえ。あたしが好きになったのは、あいつがあんたにコクった後だからよ」
「へええ」
 沙織は、人の悪そうな笑い方をした。こりゃ、ちょっとまずったかもな。あたしが頬をひきつらせてると、どういうわけか、沙織は細いため息をついた。
「ちぇっ……あんたなら、殴ってくれるって思ったんだけどなあ」
「んなことまで面倒見るか。てめえのバカで痛い目にあいたきゃ、よそ当たってくれ。いや。そーだな」
「何だよ」
「さっきの話。いつか、あたしにも聞かせろ」
 沙織は、びっくりしたような顔で、あたしのことを見た。なんだよ。いーだろが。
「話してくれる気になったらで、いい。でもあたしは……あんたのこと、ちゃんと知りたい。あいつが好きになったあんたのこと。あたしのダチの、あんたのこと」
 沙織は、じっと黙って、あたしを見てた。それから、にんまりと笑った。
「そーだな。そんときゃ、ふた晩ぐれえ、寝かさねーぞ」
 おお、こわいこった。全く、面倒な女だよ。あんたも。あたしも、人のこた言えねえけどな。ったく。自分のことだって、ひとつも分かっちゃいねえんだから。

 夕方、家に帰り着いて、でもあたしが立ったのは、隣の家のドアの前だった。インターホンを押すと、慶太の小母さんが出てくる。
「あら……里香ちゃん」
「慶太、いますか」
「いるわよ。なんだか、うまくいかなかったみたいで、不貞寝してんのよ。里香ちゃん、良かったら喝入れてやってよ」
「ええと……ちょっと、話があるんです」
「どーぞ、おあがりなさい」
 あたしを招き入れると、小母さんは台所に引っ込んだ。このあたりさばけた人で、助かる。あたしは迷わずに、慶太の部屋へ向かった。ドアの前で、一応声だけはかけてみる。
「慶太。あたし。入るぞ」
 返事なんて、なかった。あたしは構わず、引き戸を開けて、中に入る。薄暗い部屋の中で、慶太は、ベッドの上で仰向けに横たわって、両腕で顔を覆ってた。
「……なんだよ。出てけよ」

81:I'm the one to watch over you 8/8-A
08/02/02 14:47:18 Q8g+Q+sP
 
 あたしは、そんな慶太のセリフになんか取り合わず、無言で勉強机のとこからイスを引き寄せると、背もたれを前にして座り込んだ。そうして、告げた。
「沙織に、会ってきた」
 慶太は、ぴくりとも動かなかった。ただ、少ししてから、苦々しい声で、言った。
「バカみてーだな。オレ」
「そうかい」
「舞い上がってさ。すぐにヘコまされて。せめて審査くらい、って思ったら、あのザマでよ」
「ああ。そうだな」
「オレ……なにやってんだろーな」
「後悔してんのか」
 慶太は、答えなかった。あたしは、静かに言った。
「後悔なんかしてやがったら、あたしがぶっ飛ばす」
「……」
「あんたは、自分で決めたことをした。その結果も、ちゃんと引き受けた。だったら、前向いてろ。あんたは、だれにも恥じることなんてない。沙織にも。師匠にも」
 それに、あたしにもな。
 慶太は、ずっと、黙ってた。ほんとに、長い間。あたしも、ずっと、待ってた。慶太が、ぽつりと呟くように言うまで。
「……好きになってくれてありがとう、って……言ってくれたんだ」
「……」
「あたしに勇気をくれてありがとう、って。……なあ」
「なんだい」
「オレ……迷惑じゃなかったよな?」
 腕で目のあたりを覆ったままの慶太は、ひどく弱々しく見えて、まるで、あたしが昔からよく知ってる、お隣の頼りなくて情けないガキみたいだった。
 でもな。もう、騙されねーよ。あんたは、もう、弱っちい弟分なんかじゃない。あたしになんか助けてもらわなくたって、自分の足で立ち上がれる。ただ、ちょっと時間が必要なだけなんだ。
 それでも、あたしの言葉は、きっかけぐらいにはなるだろうか。こんなあたしでも、あんたが立ち上がる時に、手ぐらいは貸せるだろうか。そうだと、いいんだけどな。あたしは、柄にもなくおずおずと、でも力をこめて、言ってみた。
「んなこと。ぜってー、ねえ」
 慶太は顔から腕をどけて、あたしを見た。その顔は少し笑ってて、だからあたしもにやっと笑ってみせてやった。
「ま、そう気ィ落とすなよ。まだまだ、世の中いい女はたくさんいらあな」
 あたしとかな。

82:I'm the one to watch over you 8/8-B
08/02/02 14:48:55 Q8g+Q+sP
 
 なのに、そんなあたしの気なんから知らずに、
「三島さんよりいい女なんて、いねえ」
 慶太は天井を見ながら、きっぱりとそう言った。ふーん。そうかい。
 あたしはその横顔をしげしげと眺めながら、思う。こいつ、いつの間に、こんなオトコに育ったんだろ。人を真っ直ぐに好きになって、迷わずぶち当たって、玉砕してヘコんで、なのに、自分をフった女のことなんか堂々とほめるよーな、そんなオトコに。
 だから、しみじみと、言ってみたんだ。
「あんたも、いい男だよ」
「バッ……なに言ってんだ」
 慶太は怒った顔になってこっちを見た。ふふん。耳が赤えよ。ガキめ。
「からかうと、承知しねーぞ。いくら里香でも」
「へへ」
 あたしが片目をつむってメンゴしてみせると、慶太はそっぽを向く。
 そうだな。今んとこは、あたしの気持ちを口にすんのは止めとこう。あんたの弱みにつけこむようで悪いし、あたしも、心臓がばくばくいってて、うまく言葉にできそうにないしな。
 でもね。あんたより、いい男なんて、いないよ。少なくとも、あたしにとっちゃ、さ。そいつは、こっから、ゆっくりとっくり教えちゃる。覚悟しとけ。
「慶太」
「なんだよ」
「受験はコケんなよ。あたし、待ってるからな」
「おうよ。見返してやらあな」
 ああ。沙織のためにも、こいつは頑張るだろう。自分はもう大丈夫だ、って、惚れた女に向かって胸を張ってみせるだろう。意地っ張りで、頑固で、でも優しいこいつは、そうするはずだ。
 ほんとに、あたしは、今までにいろんなことを見落としてきたんだな。沙織のことも。慶太のことも。なんて、バカだったんだろう。なんて、ガキだったんだろう。
 だから、これからは、何も見逃したくない。ずっと、こいつを見ていたい。子どもの頃から、そうしてきたんだ。それがちょっと、互いにじーさんばーさんになるまで続くだけのこった。なんてこたねーよ。
 だから、手始めに、なかなか起き上がらねーバカを叩き起こすために、あたしは、その上に飛び乗ってみたんだ。
「わ、バカ。やめろ。こら。ヘンなとこ触んじゃねーよっ」
 おお、なかなかの反応。ま、そのうちに立場が逆になってくれると、お姉さんうれしいね。……いや。このままでも、それはそれでいいのかもな。などと思ってしまったあたしは、実は相当ヤバいのかもしれねえ。
 ま、それもこれも、あたしのせいじゃねえ。このバカのせいだから、仕方ねーだろ?
「この……バカ里香っ。……胸、当たったじゃねーよ……」
 んー? 今、なんか言ったかい? わざとだよ。それぐれえ、早いとこ気付け。この、バカ。

83:名無しさん@ピンキー
08/02/02 14:50:13 Q8g+Q+sP
以上でおしまい。

84:名無しさん@ピンキー
08/02/02 15:15:55 M0srdHj0
リアルタイムでキテタ

いあー、これは上手すぐる
上手いだけじゃなくて、幼馴染萌えスキーなのが
良く伝わってくるなあ

85:名無しさん@ピンキー
08/02/02 22:07:56 ggIaGGU4
ボーイッシュな年上の幼馴染みもいいっスね。なんか姐さんとか姉貴って感じで
GJ!久々の作品、楽しめたよ。

86:名無しさん@ピンキー
08/02/04 19:41:23 7FaWI4Zs
サーバー移転だかなんだかに気付いてなくて
本当に過疎ってるなあとか思って部屋の隅っこで体育座りしてた
そしたら作品投下があって良かった
GJ!

87:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:30:00 qcqS1kj6
ちょっと投下しよかな

88:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:32:29 qcqS1kj6
 俺には幼馴染がいる。家が隣同士の縁で出会ってからもう十年以上になるので、呼び方もひどく気軽だ。
 俺があいつのことを『みー』
 あいつが俺のことを『ゆーちゃん』
 クラスメイト野朗共の評価ではみーはかなり可愛い部類に入るらしい。
 ん? 可愛い女の幼馴染がいてうらやましいだって? あのなぁ、結構大変なんだぜ? 幼馴染って奴は。
幼馴染に面倒な嗜好がある場合は、なおさら特に。


 ある日の下校時。俺は唐突に明日がみーの誕生日だったことを思い出した。慌てて財布を除く。中には何かの
レシートと十円玉が三枚入っていた。
 これは、非常に、まずい。
 横目で隣を歩いているみーを見た。
「なぁ、みー」
「なに? ゆーちゃん」
「明日の誕生日のことなんだけど……」
「うん、どうかしたの?」
 みーが短めのサラサラの髪を揺らしてにっこりと笑いながら俺を見た。
「いや、その、なんだ。プレゼントのネタがもういい加減尽きちまってさ。何か欲しい物は無いか聞こうと思って」
 何を口走ってるんだ、俺は。

89:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:34:47 qcqS1kj6
「え、うーん……そう言われると何が欲しいかなぁ」
 みーは右手の人差し指を頬に当てて思案顔だ。
 おい、どうするんだよ俺。金無いくせに。ばっか、だからといって、あんな笑顔向けられて「今年は誕生日
プレゼントなくていいよな!毎年なんかプレゼントしてるし!」なんて言えるわけねぇだろうがぁぁぁァッ! 
まぁ、小遣いを前借りすりゃなんとかなるよな。二ヶ月分くらい既に前借してるけどなんとかなるよな。
……本当になんとかなるのか?
「あ、そうだ!」
ぴこーん、という電球の音が聞こえてきそうな嬉しそうな声だった。
「ね、ね。ゆーちゃん物じゃなくても良い?」
「おう、勿論良いぞ」
 俺としては願ったり叶ったり……
だが、俺は次の言葉を聞いて、ある事を忘れていた事に気付いた。

「じゃあ、ゆーちゃんと一日中ちゅーしてたいっ」

 そうだった、真性のアホだったんだこいつ。
 ちなみに、俺とみーは付き合っていない。
 いやいやいや、嘘じゃないんだぜ? ただ、みーが昔からキスすんのがが好きなんだよ。いやマジマジ。本当。
まぁ、俺以外とはしたことないらしいが。自慢じゃねぇって。いつぐらいからやってたって? ……幼稚園ぐらい
からしてた記憶はあるなぁ。その頃は意味わからんでやってたけど。なんかツバが付いて汚ねぇなぁ、ぐらいしか
思ってなかったし、そもそも言い始めたのは俺の方じゃないし。キスは気持ちいいなぁ、とか思ってないぜ。
いやこれホント。


90:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:36:22 qcqS1kj6
 待て待て、落ち着け俺。とりあえず真偽を問いただそうじゃないか。
「えー……っと、みー、何だって? ワンモア」
「だから、ゆーちゃんとちゅーしてたい」
「一日中?」
「うん」
 頭痛を引き起こすようなことを平然と言いやがるな。
「別に形ある、こう、何と言うか、ぬいぐるみとかでも良いんだが」
「ゆーちゃん、今お金ないんじゃないの。さっき財布覗いてたし」
「う」
「どうせ、今の今まであたしの誕生日忘れてたんでしょー。ひどいなぁ」
「ぐ」
「いっつも、あたしはちゃんとプレゼントあげてるのになー」
「むむむ……」
「傷付くなぁー」
「うぐぐ」
 幼馴染って奴はデフォで幼馴染の仕草から心を読み取ってくるから非常に厄介だ
 考え込みながら、横を見た。みーは少し前かがみになって両手を後ろに組んでこっちを見ながらにやにや笑っている。
 どうやら、俺に拒否権を行使する権利は無い様だった。
 ……役得なんて思ってねぇぞ! 本当だからな!?

91:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:38:34 qcqS1kj6
 と、ゆうわけでみーの誕生日―の翌日の早朝。俺はみーの家(といっても俺の家の隣)を訪れていた。
誕生日の日は友達とかパパとかママとかが邪魔だから、と誰も余計な人がいない次の日ね、と言われたのだ。
 勝手知ったる人の家。植木の下に隠されている合鍵を取り出し、中に入る。正面の階段を上って二階の
突き当たりのドア。妙にぬいぐるみが多い部屋に入る。部屋の右にあるベッドでみーは無防備な姿をさらしていた。
「おーい、みー。起きろー」
 ぽんぽんと布団の上からみーを叩いた。あーあ、本当にいつもいつも寝相わりいなぁ。
「ううん……あと五分だけ……」
 なんというテンプレートな言葉。ったく、こいつは。
「早く起きないとプレゼントの一日が無駄になっちまうぞー、良いのかー」
「困る……困るからだっこー」
「全く、毎度毎度」
 呟きながら、俺はみーをベッドから持ち上げてやる。相変わらず軽い。そのまま階段を下りてリビングへ。
「んふー」って幸せそうな吐息を漏らしやがって。
すると、みーが両手を俺の首に回し
「ゆーちゃん」
と言った。俺はやれやれと思いながら、約束の履行を果たした。唇にしっとりとしたみーの頬の感触。フレンチキス。
ああもう、みー、笑うんじゃねぇよ。俺がこっぱずかしいんだよ!


92:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:40:41 qcqS1kj6
 朝食は冷蔵庫の中にある物を適当に出してやった。トーストにイチゴのジャムとヨーグルト。以上。
「ね、ね。ゆーちゃん」
「うん?」
 トーストを食べ終わったみーが唐突に口を開いた。
「ヨーグルト、食べさせてー」
「……んん? まぁいいけど」
 俺はみーの手からヨーグルトとスプーンを取り、ヨーグルトをすくってみーに食べさせ―ようとして止められた。
「そうじゃないよぉ」
「へ?」
「口移し」
 自分、俺、と唇を交互に指差した後、みーは目を瞑った。
 え、マジでやるの? しばし呆然。てか、口移しってどうやってやるの? 今まで通り軽いキスをするだけと思ってたのに。
いや待て、なんでこいつこんなに元気いっぱい? よし、とりあえず落ち着け俺。クールになれ、クールになるんだ。
 俺は考えた。そして名案を思い付いた。そーっと右手を持ち上げて、みーの顔に近付け―思いっっきり額に
デコピンをかましてやった。
「あだっ」
「限度があるだろ、常識的に考えて……」
 搾り出すように声を出して反論すると、みーは額を押さえながら再反論した。
「うー…そんなのウソに決まってるじゃない、ゆーちゃんのばかー!」

93:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:43:02 qcqS1kj6
「わかりやすいウソを付けよ……」
「あっれー、ゆーちゃん本気にしちゃったの?」
「っ! バ、バカ言ってないで早く食えよ、ほらっ」
 畜生、赤くなるなよ、俺の顔! クソ、みーもくすくすくすくす笑うなっての。これは何かの拷問か。畜生家に帰りたい
帰らせてくれ!

「で、どうするんだよ」
 朝食を食べおわったみーに紅茶を煎れてやり、俺は皿を洗っている。時刻は午前九時。何かをしようとするなら
最適の時間だが。
「って、おい?」
 返事が無いので不審に思って振り向く。みーは両手で頬杖をついてこっちを向いてにこにこ笑っている。なんか
今日は笑顔が多いな。
「みー、どした?」
「べっつにー、なんでもー」
「なんだよ、気持ち悪いな……」
 サクッと皿を洗って、みーの向かいに座る。改めて聞く。
「どうするんだよ、今日」
「うん、とりあえず―」
「とりあえず?」
「ちゅー」


94:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:44:54 qcqS1kj6
 ああ、今日はずっとこんなノリなんだな…オーケー、もう諦めた。覚悟完了ってか。
 目を瞑ったみーにキス。今度は唇に。ふわっとした感触。息の漏れる音を妙に大きく感じながら、口を離す。
「……えへ」
「何笑ってんだよ」
「なんでもなーいよっ、ね、ゆーちゃんもっかいしてよ」
「はいはい」
 言われるままにもう一回唇を付ける。さっきと変わらない感触の後―ぺろ、とみーが俺の唇を舐めた。
「っっ!」
 びっくりして顔を離した。掌で唇を押さえた。わずかに湿っているということが事実を証明していた。
 みーを見る。顔を真っ赤にしていた。
「え、えっと……自分でやっといてなんだけど、恥ずかしいね、コレ」
「は、恥ずかしいと思うならやんじゃねぇよ」
 あー、やべぇ、俺も顔赤いだろうなぁ。それにすっごいドキドキしてるし……って、おい、おかしいぞ。みーとのキス
なんて腐るほどしたことがあるじゃないか。なんでちょっと舐められたくらいでこんなに。
 横目でみーを見た。かっちり目が合った。何でか、目が逸らせない。そして、その勢いのまま、唇を合わせて―がちっ、という音ともに痛みが走った。
「あいたっ」
「うぎっ」
 二人して口を押さえる。涙目でみーが言った。
「いったぁ~…ゆーちゃん、ガツガツしすぎだよぉ。歯ぶつけるなんて」

95:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:47:12 qcqS1kj6
「う、うっせーよ! 仕方無いだろ!」
 内心、何が仕方ないんだよ、と自分でツッコんだが何なのかわからない。
「ほら、とりあえず着替えてこいよ。いつまでもパジャマって訳にはいかないだろ」
「あー、ごまかしたー」
「やかましい! 良いから着替えろ!」
 きゃー、こわーいと声をあげてみーは部屋を出て行き、ぱたぱたという階段を昇る音が聞こえてきた。
 畜生、なんか今日は雰囲気がなんか浮ついてるな。流されそうになったぜ、あぶねぇ。みーも見たこと無いくらい
顔が赤かったしな。
 ふぅ、と溜息を付きながら椅子に座りなおし、思った。
 いきなりこんなんで今日一日持つのか俺。いや、まぁ、別にちょっと期待で胸が膨らんだりしてないぞ……
本当ですヨ?


96:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:48:05 qcqS1kj6
状況終了。レスがあれば続きを書きたいと思う所存。
あーばよとっつぁーん

97:名無しさん@ピンキー
08/02/05 23:52:34 RMbQdnHw
>>108
わっふるわっふる

98:名無しさん@ピンキー
08/02/06 00:19:07 xo71mhdM
>>108
GJ
なるほどキス魔(?)ね
何がしか習慣化してるってのも、確かに幼なじみっぽいな
さてこっからどうなるか楽しみ、つーわけで
わっふるわっふる

あ、>>95さんもGJ
姐さんな幼なじみってのも悪くないと思ったぜ
二人のこれからに期待

99:名無しさん@ピンキー
08/02/06 00:33:53 DeY46PBV
>>80
わっふるわっふる



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