08/02/09 16:48:01 qO2JQ2BS
外気に冷えた窓の向こうから朱色の光が射し込む。
セピア調と表すにはやや明るすぎる色合いのそれに照らされた影が一つ。
いや、二つ。
「ほら、めぐ」
男が、頭を垂れた女に声をかけ、促す。
伸ばした腕を引っ込めようとはしない。
「ちゃんと、真っ直ぐ、立って」
「…うっ…立ってる、ヨ」
女の細腕も、小刻に震えながらも引っ込もうとしない。
かすかに、ぎこちなく動く手元。
折れそうなほど細い手首。
「立ってる、ダロ」
「ん…それじゃっ…ダメだ。
…ほら、俺みたいに、ぴんって。背筋…伸ばして」
「ふっ…ウルサ、いっ…!う、く」
電灯も点していない教室の一角で、互いの下半身に手を伸ばしあう男女のシルエット。
飛び跳ねたいのを我慢して震える肩。絡み合わない視線。
逃げる細腰。女は前屈みに折れるそれをまた、はっとしたように正す。度々、度々、幾度もだ。
無駄に大きなサイズの鏡面に浮かんだそれはあまりに、少なくとも、彼らの日常からかけ離れ過ぎていた。