【瀬戸の花嫁】木村太彦総合4【ズシオ・アーティ】at EROPARO
【瀬戸の花嫁】木村太彦総合4【ズシオ・アーティ】 - 暇つぶし2ch284:にっぷし 2/2
08/03/30 23:32:53 P1XVFqWL
「燦ちゃん? 朝食の準備はもう大丈夫だから、永澄起こしてきてくれる? あの子朝弱いから」
「ふぇ? あ、はい、わかりました」

ハッと我に返った燦は手を洗ってエプロンで拭くと、エプロンを脱いでぱたぱた駆けていった。

(ふぁあ、あかん。なんか今日、私えらい変やわー顔熱いー)

ううーと瞼を閉じて頬をぴたぴた叩いた燦は、スリッパを脱いで屋根裏部屋に続くハシゴを登る。
まだピンクのリボンでポニーテールにしている頭を、ぴょこりと出して部屋の様子を伺った。
すかぁ。すぴぃ。むにゅむにゅ。どう聞いても眠ってる音に、ちょっと安心して部屋に入る。
だらしなく布団を抱えて眠る永澄のいつもの寝姿を、燦は優しい微笑みで見つめ続けた。
特別かっこいいわけではない顔は、眠っているためどこまでも無防備に緩んでいる。
そんな冴えない寝顔さえ愛しく思えてしまう自分が、どうにも温かくってむず痒かった。

小さな窓から射す光が埃を輝かせ、ゆっくりとした時間の流れを伝えている。
寝息に合わせて上下する胸板は、燦が昨日、涙を流しながら身を寄せたものだった。
抱擁を交わした時のことを思い出し、白い頬に赤みがさし、胸がきゅうっと締めつけらる。
しかし胸の痛みは穏やかに流れる時間の中で柔らかくほぐれ、身体全体にうっすらと熱が灯った。

(……永澄さん、私、おかしぃなってしもたかもしれん……)

熱に浮かされたような頬、甘く潤んだ瞳で、燦は永澄の寝顔に心の中で語りかける。
永澄の身体に影を落とすように近寄った燦は、瞳を一瞬だけ唇に向けたが、すぐにそらした。
それは違う気がした。きっとまだ早くて、取り戻した日常を別の形で壊してしまう気がして。
咽喉をごくっと鳴らしたあと、桜色の唇を永澄の頬に近づけていった。

(……ありがとうな、永澄さん。私、助けたんが永澄さんでホンマに良かった思ってるんよ……?
 こんなん永澄さんからしたら不謹慎な物言いかもしれへんけど、どうか堪忍したってな……)

静かな屋根裏部屋に、ちゅっ、と可愛らしい音が響く。
ゆっくりと身体を起こした燦は、両手を太腿の上でぎゅっと握り、耳まで真っ赤になって俯いた。
ピンクのリボンでポニーテールに結んだ頭からもくもくと湯気が出そうな勢いで羞恥する。

ばくばくと早鐘を打つ心臓を深呼吸して落ち着けると、燦はパッと顔を上げた。
その顔はまだ少しだけ赤みが差していたが、表情はいつもの元気な燦に戻っている。

(……私、きっと立派なお嫁さんになるきん。永澄さん、ずっとずっと側で見とってね。
 そのために、とりあえずはお母様に頼まれたことをせんといかんきん!)

グッと拳を握り締めて気合を入れた瀬戸内組組長瀬戸豪三郎が長女、瀬戸燦は、未来の亭主に声をかけた。

「―永澄さん! 起きて!! 朝じゃきん! はよ起きへんと朝ごはんなくなるでー!!」

人魚特有の綺麗な声を大きく響かせ、元気いっぱい盛大に布団を捲り上げながら。

「うわぁぁっ!? ……うあ、あれ、燦ちゃん?」
「えへへ。おはよう永澄さん。元気に起きなあかんよ? 今日もいい天気じゃきん!」
「―あ、えっと……あははっ………………うん。おはよう、燦ちゃん」

驚いて飛び起きた永澄は、燦を姿に、昨夜の経緯を思い出して落ち着きを取り戻した。
じっと見つめ合うと、二人とも顔が真っ赤になってしまい、慌てて視線をそらす。
どこかくすぐったそうに朝の挨拶をする永澄に、燦もはにかんだ笑顔で応えた。
一緒に屋根裏部屋から降りると、まだだいぶ眠そうな留奈がのそのそと起きてくる。
ぞんざいな挨拶をしてくる留奈に二人で苦笑。燦は巻を起こしに行き、留奈と永澄は先に一階に下りる。

燦が巻と共に一階に下りると、永澄は超戦士になった後遺症が今頃表れてマッチョになっていた。
その隣では留奈が物凄い疲れた顔をしていて、肩に猫を乗せた父親と母親も軽く引いている。
椅子を増やして五人掛けになったテーブルで、巻も含めてみんなそろって「いただきます」をして―

そしてまた、いつもの日々が始まった。


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