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■零総合 玖■ - 暇つぶし2ch28:怜×深紅 ―冬の情景―
07/12/20 13:24:22 i/6Qn87I
公園の入り口にあるアーチ状の柵に腰掛け、手袋に包んだ手で作る
ファインダー越しの情景。闇に沈む家々の窓からは暖かな明かりが漏れて、
何処からともなく夕食の支度を感じさせる香りが運ばれてくる。
街路樹の葉は散り、時折そっと流れる冷気に路肩に積もった枯葉が、
カサカサと身を擦り合わせた。

「今日は、やけに冷え込むわね……」

私は一人ごちて、ダークグレーのコートの襟元を手で押さえた。
そして「だけど」と呟いて、今度は空を見上げる。
それこそ肌が切れる程に空気が冷えて澄み切った夜空は、完全なる闇に
覆われて、それ故に瞬く星々のその輝きを引き立てていた。

うっとりとその光の粒達に魅入るのも束の間、私の手はやはり襟元を
強く合わせるようにして握られた。

―もしかして、どこか別のところに寄ってるのかしら?
それとも、別の道から帰ったとか? 怜さんは結構根性無しなんだから、
寒さに負けてそろそろ帰ってしまうわよ―

ここに着てからまだいくらも経ってない内に、私は立てた襟の下でブツブツと
ぼやいた。寒いロマンチックより、暖かな鍋のほうが歓迎。―なんて言ったら、
世の殿方は皆愛想を尽かすかしら。でも、それを聞いても可笑しそうに笑って、
私らしいと言ってくれた奇特な人もいたんですけれどね。

少し回想に耽っていたところで、遠目に見える街灯の明かりの下に、
見慣れた色のコートとマフラーの組み合わせを見つけた。

途端に、寒さも忘れて喜んでいる自分に少し苦笑したりして。

「あら、怜さん?」

ほんのり暖かみのある白色のコートに深い紅のマフラーを巻いた彼女こそが、
こんな寒空の下に、私を引きずり出させるに至った原因。
まだ少女と呼んでもいい歳なのに、ミトンの手に下げたスーパーの買い物袋が
とても似合ってたりなんてするものだから、知らず、私の顔は綻んでしまう。

「どうしたんですか、何かありました?」
「可愛い新妻のお出迎え」

本当に珍しそうな顔をして覗き込む深紅に、私はにんまりと笑ってそう言った。
深紅は一瞬目を丸くした後、少し目を逸らして「何言ってるんですか、もう……」
と小さく呟く。寒さのために色づいた頬の赤みが、少し濃くなったのを見逃さずに、
私はその反応に満足した。でも、本当にそうしたかったからなのよ?


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