08/07/07 01:55:17 GZHEgGPw
新王の即位から一年。
長年の戦によって乱れに乱れ続けてきたこのイヴァリースにも、少しずつではあるが平和という言葉が実感を伴って
各地の人々に浸透しつつあった。
以前ほど人の死体を見かけなくなったし、食料をはじめ、市場に出回る物資の量が増えた。武装した兵の数が
日を追う毎に減っていき、そして何よりも人々が大きな声で笑う様になっていた。
しかし、戦争はまだ終わってはいない。戦火によって抉られたその爪痕にはまだ血が滲み、今でも苦しみ喘ぐ人々は確かにいる。
特に力の無い者、女や子供たちはその筆頭であり、その苦汁と辛酸の日々は後世に長く語り継がれる哀史となった。
今日も夜の街の路地裏には様々ないでたちの女達が人待ち顔で立つ。
そこへフラリと現れた男達は、並んだ顔と体つきを嘗め回す様な視線で品定めし、女との短い交渉を終えると
馴れ馴れしくその肩を抱いて去る。
今もまた一人、騎士崩れとおぼしき中年男が二言三言交わした白いローブの女を抱き寄せると、路地裏の暗がりの方へ、
連れ込み宿の並ぶ界隈の方へと向かって歩き始めた。