【貴方なしでは】依存スレッド2【生きられない】at EROPARO
【貴方なしでは】依存スレッド2【生きられない】 - 暇つぶし2ch200:名無しさん@ピンキー
07/11/30 22:56:44 PPvsANHI
>>198
「好きで好きでしようがない」という点では同じだからなぁ

誰かの受け売りだが個人的になんとなく共感したイメージ
  ヤンデレは「攻め」で依存は「受け」

201:名無しさん@ピンキー
07/11/30 23:00:31 Fy+Xh6oS
>>200なるほどねえ。確かにその言い方はしっくりくるわ

202:名無しさん@ピンキー
07/11/30 23:30:44 /ofVBjRa
精神的な意味を含めて自傷なのが依存で、
相手を含めた回りを暴力的に壊すのがやんでれな印象。
依存とヤンデレは違うと思うなあ。
ヤンデレは究極的には相手はいなくていいんだけど、
依存は相手がいることが必須な感じで、つまり自分は依存もの大好き。

でも、>>200のはなんとなくわかる気がする。


203:名無しさん@ピンキー
07/11/30 23:51:28 Fy+Xh6oS
>>202
>ヤンデレは究極的には相手いなくていいんだけど

それは、末期状態というかもう追い詰められた状態で狂いきったサイコなヤンデレだけじゃない?
半分位はやっぱり相手がいないことには生きていけないっていうキャラもいるしさ
ヤンデレも更に細分化されてると思ったから完全に

ヤンデレ≠依存

とは言い切れないんじゃないかと

例えば同じヤンデレでも言葉様やshuffleの楓みたいなキャラと
ヤンデレスレにあるようなサイコキャラみたいに…
特に言葉は絶対に誠のこと傷つけなかったし

204:名無しさん@ピンキー
07/12/01 01:16:55 FbY634+e
ヤンデレは攻撃性(対自分含む)のある依存として認識してる
依存にも攻撃性がないわけじゃないけど、どちらかというと受動的なものっぽいイメージがあるし

205:名無しさん@ピンキー
07/12/01 01:33:56 PDtRDY9O
・・・たぶん線引きが難しい上にそれぞれ違う価値観を持ってると思うんだぜ。
特にこんなジャンルはな。

・・・今はそうではないけど、喧嘩するなよおまいらw

206:名無しさん@ピンキー
07/12/01 06:33:17 vIDkteOW
尽きない話ではあるよな
そもそも、統計は取れても、その平均=定義になるとは限らないし

ヤンデレは自分勝手
依存は自分勝手にしたいけど相手の都合とか考えて躊躇する、だと思う
そこら辺が攻撃性の有無になるのかね?
ヤンデレは手綱が取れれば最強なんだが、未だにそれが出来るキャラは見たこと無いなw

207:名無しさん@ピンキー
07/12/01 07:13:07 mIxRuTzH
恋する乙女は常に想像の遥か上だから
孔明でも手綱を握るのは不可能

208:名無しさん@ピンキー
07/12/01 08:55:10 FbY634+e
>>207
最終的な目標は馬鹿でもわかるが、そこに至る過程で倫理観とか尊厳とか投げ捨てるからなあ……

209:名無しさん@ピンキー
07/12/01 12:27:43 s3/eWeit
>>206
未来日記の主人公がヤンデレの手綱を取りそうではあるw

210:名無しさん@ピンキー
07/12/01 15:07:52 SDvCqJRh
>>207
むしろ、想像は出来るんだけど、暴走したら止めるための現実的手段が無い
で、暴走しないように抑えるのもほぼ不可能、と
ヤンデレが暴走し出したら対抗できるのは戦国武将くらいだろうなぁ
麻薬で痛覚トばしてるような連中が、
チェーンソーやスタンガン片手に襲ってくるんだから

>>209
いや、あれは単に今はそこら辺気にしてる暇が無いだけだと思う
いずれまたお宅訪問とかVS巻物日記の時みたいになるね

・・・まあ、
やっぱ致死レベルに攻撃的女の子はいくないので、
世界の常識としてヤンデレ<依存でおk?

211:名無しさん@ピンキー
07/12/01 22:16:51 sU9B2x5U
>>190
ありがとうすごくスッキリした。


ヤンデレと依存は地続きではあるが全然別物だと認識してるよ俺は
だけど俺がいじくってるヤンデレが必ず依存的なもんを内包するからちょっと自分の中でカオスってた

212:名無しさん@ピンキー
07/12/02 11:05:44 iOSGvc/H
このスレ的には
「私、二番目でもいいの」
が依存?

213:名無しさん@ピンキー
07/12/02 11:27:19 JbcZXy0w
>>211
まあ、ヤンデレも部分的には依存を内包したりしなかったりするからじゃね?
「卵使う卵料理」が依存で、「卵も使うけど卵メインでない料理」がヤンデレとかさ

>>212
それも含まるとは思う
ただ、ヤンデレは「自分が一番出ないと嫌!」
ではなく「順番に関係なく彼の中に自分以外が存在するのが嫌!」
なので「オレにとってはお前が一番大事」というのが通用しないのに注意
ひどいのになると他の人間(男相手でも)と目が合っただけで首絞められるからな

しかし、考えると依存とヤンデレは結構違いあるもんだね

214:名無しさん@ピンキー
07/12/02 11:57:27 ANdNIrmu
あー新治君と綾子のカップルいいなー
ふたりとも凄い可愛い。妹の問題があるのもわかるが
もっとこの二人が単純にエロくいちゃつくのを読みたい

215:名無しさん@ピンキー
07/12/02 15:52:05 cxF1QbA/
このスレはゲーパロ氏に依存してんじゃね?

216:名無しさん@ピンキー
07/12/02 16:46:13 XqoCReek
少なくとも俺がゲーパロ氏のエロパロに依存してる事は確かだ

217:名無しさん@ピンキー
07/12/02 17:27:04 cvHgdaWn
オレのナニがこのスレに依存していることも確かだ

218:名無しさん@ピンキー
07/12/02 21:22:46 LhSL89bz
>>215痛いとこつくな

219:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 22:58:09 1berHH9T
<私が私でいられる時>・10

「ふう」
掃除が終わって、一息つく。
久々に綺麗になった我が部屋を満足して見渡す。
トイレやキッチンは、先に終わらせている。
最近、何かと忙しくて、あまり家事に時間を割けなかったから、
学校から早く帰ってこれた今日は、まとめて一気に終わらせた。
終わった今、時計はもう夜の九時を指しているけど。

─今日は、綾ちゃんに会えない日。
この間、彼女が「罪」を告白した後、そういう日ができた。
正確には、その日の会話がどうとか、その後行ったボランティアでのことがどう、というわけではない。
その前の日、僕と綾ちゃんが……セックスしたということが、その状況を作った。
綾ちゃんたち<姉妹>が大喧嘩した原因、
―綾ちゃんが持ち帰った使用済みコンドームを、綾ちゃんのお母さんに見られた。
それは、綾ちゃんがセックスをして来たと言う証拠。
当然のことながら、彼女の両親にショックを与えたと思う。
そして、綾ちゃんは、外出できない日が増えた。
週末の、ボランティアも当然禁止。
お母さんが家にいるようになって、買い物や家事も綾ちゃんがやることは少なくなったらしい。
綾ちゃんが外出できるのは、お母さんがどうしてもお父さんに付いていかなくてはならない日に
買い物とかをするときだけになった。
でも、綾ちゃんは、それを全然気にしていない様子だった。
僕は、綾ちゃんとセックスした。彼女の、処女を奪った。
それは、嫁入り前の娘を傷物にしたということ。
そのことで綾ちゃんの両親が怒鳴り込んでくるかと思ったけど、そういうことはなかった。
「母さんも、義父さんも、私のことは<心配>してないから……」
綾ちゃんは、そう言って笑った。
そして、僕らはメールと、携帯電話と、頻度は減ったけど濃密さを増した逢瀬を重ねた。

220:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 22:59:51 1berHH9T
綾ちゃん。
ベッドに腰掛けてぼんやりとしていると、すぐにあの娘(こ)のことが心に浮かんだ。
それは、甘い髪の毛の匂いと、優しい微笑みと、綺麗な声を伴った姿。
あの娘のことが、好きだ。
それは、会う機会が少なくなってから、強く気が付いたこと。
綾ちゃんに会えない日は、自分の心が半分になってしまったかのように、さびしい。
綾ちゃんの声を電話で聞けると、自分の心が倍になったかのように、うれしい。
綾ちゃんからのメールが来ると、いつもどきどきして、でもすぐに心が穏やかになる。
これが、恋と言うものなのか。
僕は、戸惑いの真っ只中にいた。
女の子って、みんな恐くて嫌な存在だと思っていた。
どんなに努力したって、僕を好いてくれることがない存在。
自分の心のままに振る舞い、ある日裏切って突然にいなくなってしまう存在。
だから、近づいてはいけない、好意を寄せてはいけない存在。
そんなものだと、思っていた。
僕の母親のように。
綾ちゃんは、自分はそういう女とはちがう、と言った。
そして、彼女は、それを僕に証明し続けた。
あの日、身体と心を重ねてから。
僕は、それを半ば受け入れ、半ば戸惑っていた。
彼女の存在に、戸惑っているわけではない。
彼女のことが好きだ、ということに戸惑っているのでもない。
それは、僕の中にある、もっと生々しくて卑しい感情だった。
「……綾ちゃん」
ことばにして、声に出すと、胸がどきどきと脈打つ。
そして、股間のものも。
僕は、僕と触れ合ってくれる女の子のことを考えると、
すぐに鎌首をもちあげてくる、自分のいやらしい器官のことを、
自己嫌悪とともに睨みつけた。

221:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:00:59 1berHH9T
綾ちゃんに会えない日、僕は自慰をする。
彼女のことを考えて。
何度も、何度も。
綾ちゃんの裸が、胸が、お尻が、あそこが、鮮明なイメージで蘇り、
僕のいやらしい欲望に奉仕する。
僕は、―あの娘の裸を知っている。
彼女が、どんなにスタイルがよくて、着やせをして、肌が白いのか知っている。
おっぱいやお尻が、どれだけ大きくて柔らかいのか知っている。
彼女の性器、女性のあの部分さえ、僕は知っているのだ。
そう思うと、僕の男性の部分は、どんどん硬くなってくる。
生身の女の子の身体がこんなに蟲惑的だなんて、僕は知らなかった。
いや。そうじゃない。
それは、あの娘だから、そうなるのだ。
綾ちゃんの身体だから。
綾ちゃんの裸だから。
綾ちゃんのおっぱいだから。お尻だから。
綾ちゃんのあそこだから。
僕は、こんなにも反応してしまうのだ。
「綾ちゃん……」
そのことばが思い出させる彼女の姿に、
僕の性器は、ズボンの生地を突き破らんばかりにそそり立っている。
自慰をしたい。
彼女のことを考えながら、オナニーをしたい。
綾ちゃんの裸を、綾ちゃんの女性器を、綾ちゃんとのセックスを思い出しながら、
おち×ちんをしごいて、思いっきり精液を吐き出したい。
─その欲望は、下劣で薄汚い。
なぜって?
そのとき、彼女の唇とか、声とか、微笑とか、そういうものさえ、
僕は、僕の欲望で穢(けが)してしまうから。

222:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:01:52 1berHH9T
(綾ちゃん……)
自慰を始めると、想像は、簡単に妄想に変わってしまう。
セックスのとき、綾ちゃんと向き合ったときには絶対にしないようなことまで、
僕は、僕の頭の中の綾ちゃんにはさせてしまう。
人の欲望は、限りがない。
綾ちゃんが、僕のために差し出してくれるもの。
僕とのセックスに供じてくれるもの。
自慰するとき、僕は、それだけに満足することが出来ない。

綾ちゃんは、僕のために喜んで裸になる。
僕のことをを大好きだと言ってくれる。
僕とセックスするために、ベッドに従順に横たわる。

でも、僕は─。
自慰をするとき、

彼女を裸にさせただけに飽き足らず、卑猥なポーズを取らせたり、
彼女が言ってくれる「大好き」という声だけでなく、淫猥なことばを言わせたり、
彼女が自由にしていいと与えてくれる身体を、まるで奪い取るように淫らに貪る。

もし、綾ちゃんが、自慰をしている僕の頭の中を覗いたりしたら、
きっと、彼女は幻滅し、怯え、そして僕を軽蔑するだろう。
僕が、綾ちゃんに対して見せている顔は、僕の、ほんの一面。
それも、一番いいところ。
あとは、もっと駄目な自分。
僕が彼女に隠している本性は、きっと自慰のときのそれなのだ。
それが、とても悲しいし、苦しい。
「……」
僕は、ため息をついた。
こんなに自分の性欲を、下劣さを嫌悪していても、それでも僕の下半身は自制がきかない。

223:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:02:25 1berHH9T
ズボンの下でぱんぱんに膨れ上がっているそれは、
精液を吐き出すという目的を達成しない限り、金輪際言うことを聞かないだろう。
僕は諦めて、立ち上がった。
本棚から、お気に入りのエロ小説やエロマンガを探す。
なかなか決まらない。
本棚の中はエロ同人誌や、巴里書院のコレクションなど、
その手の趣味の人間なら垂涎のアイテムに満ち溢れていたけど、
最近は、なぜかそれらのものが色あせて見えて、
自慰に使う気になれないでいたのだが、今日は、これにお世話になろう。
(どうせなら、うんといやらしいのにしよう……)
そう思った僕は、黒い表紙の小説を手に取った。
男の子なら、一度はお世話になったことがあるという巴里書院のエロ小説の一冊。

『リアル孕ませごっこ』
舞台は王政の敷かれた西暦三千年の日本。
王様は自分の姓である佐藤の人口が500人を切ったことから、
佐藤姓の男性に、妊娠の可能性がある女性がわかる「HR探知ゴーグル」を与え、
七日間でナンパしてセックスに持ち込み、より多くの女の子に「佐藤の子供」を作らせた男を
養子として迎え、次期国王にすると発表した。
主人公は、その佐藤姓の男の子。
セックスどころかナンパもしたことがないが、どうにかして憧れの女の子に……、というお話。
<誤字を超えた超表現>
<日本語の範疇を超越した>
その表現力はあの<愛空>にも匹敵すると評され、映像化もされた。
僕のお気に入りなのは、そのメインヒロインではなく、
お話の最初のほうに出てくる、サブヒロインのほう。

ゴーグルを持っている主人公に自分から近づき、その初体験の相手を努めた彼女は、
「君が王様になったら、私を王妃してね」というちゃっかり者だけど、どこか憎めない女性だ。
晩生な主人公をリードするシーンは秀逸で、メインヒロインとの人気はむしろ逆転してさえもいる。

224:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:03:06 1berHH9T
僕は、ページをめくってその場面を眺めはじめた。

「うわあ、おち×ちん、おっきいじゃない」
ブリーフを脱がした女の子は、にっこり笑った。
ものすごく機嫌が良くて、上機嫌な顔をして僕を見ている。
「そ、そうかな?」
僕はどぎまぎとした。
いかにも挙動不審な行動だ。
「うん、けっこう大きいよ、君。ちょっと自慢していいから。他の女の子に言われない?」
そんなこと、十六年間の間、言われたことない。
「あはは、君、童貞君だったよね、そりゃ言われたことないか」
女の子はころころと笑い、僕のおち×ちんを指でちょん、とつついた。
「うん。ちゃんと洗ってきているのね。えらいえらい。
うふふ、セックスする前に、おち×ちん、しゃぶってあげようか?」
「え?」
僕の心臓が騒々しく騒いだ。
「フェラチオ。して欲しいでしょ?」
女の子は、にやりと笑った。
「そ、そんな……」
「いいわよ、恥ずかしがらなくたっても。
男の子は、女の子におちんちんしゃぶられるのが大好きだもん。
君も、オナニーするとき、フェラされるところ想像したことあるでしょ?
私がしてあげるよ。あ、でも気持ちいいからってお口の中に射精しちゃダメだぞ?」
女の子は、僕を軽く睨んだ。
「精子を出すときは、こっちにだから、ね」
短いスカートから「わざと見せてあげてる」ショーツの前を意味ありげにさする。
「ま、あたしのフェラでいきたければ、王様になって私を王妃様にしてちょうだい」
女の子はまた笑った。
「そしたら、毎日でも君のおち×ちん、しゃぶってあげるから……」

225:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:03:54 1berHH9T
僕は、性器を握る手の動きをはやめた。
モテない、冴えない主人公の男の子は、僕には容易に共感できるものだった。
このサブヒロインのような女の子も。
主人公が最初の男ではない、という設定も、お話の中では受け入れることが出来る。
相手の男は出てこないし、彼女が主人公とヒロインを助けていったり、
最後の告白のシーンも含めて、主人公を裏切らない存在であることを知っているから。
そして、セックスは、あくまでも優しくリードしてくれながら、
処女の妹であるメインヒロインよりも、ずっとエッチシーンが大胆でいやらしい。
ページをめくる手が早くなる。
もう片方の手の動きも。

「うふふ、あたしの中に精子出したいでしょ?
いいよ、あたしのおま×こ、君に貸してあげるから、
気持ちよーく、童貞、捨てちゃおっ……」

─心臓が一瞬、止まった。
フィニッシュに近い、その文章を読んだ瞬間に、浮かんだイメージ。
僕にのしかかって、そのいやらしい誘惑のことばを吐いたのは、
原作の挿絵にある女の子でも、映画でその役を演じた少女でもなく、―綾ちゃんだった。
「んんっ……」
かろうじて、手が止まった。
おち×ちんは、びくびくと震えて、絶頂を迎えられなかった不満を声高に主張する。
最近、いつもそうだ。
自慰するとき、僕は綾ちゃんにそんなことをさせてしまう。
今まで集めた、いろんなエッチな本やビデオの中のセリフや、行動を。
それは、二次元の作り話のヒロインや、お金を貰って演じる女優さんがする行為。
頭の中で、それを綾ちゃんにやらせてしまうことに、僕は激しい自己嫌悪を抱いた。
僕のことを好きになってくれている女の子に。僕にすがって生きている女性に。
その信頼と愛情を、見えないところで利用し、裏切っている。
綾子ちゃんを都合よく使ったイメージでの自慰は、そんな罪深いものだった。

226:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:04:25 1berHH9T
僕は、本を放り出した。
股間の物はおさまりが付かない。
全身が性器になったような感覚を抱え、僕は─パソコンの前に座った。
何台か並んだパソコンの、一番奥のマシーン。
ネット配線から外した、どこにもつないでいない、安全な一台。
その中に大事に保存してあるのは─。
僕は、パソコンを立ち上げ、映像ソフトを起動させた。
フォルダを選び、データを開く。
微笑む綾ちゃんが画面に映った。

「綾ちゃん……」
僕のベッドの前で立っている綾ちゃんは、恥らうように笑い、スカートに手をかける。
何の躊躇もなく、中のショーツを下ろす。
白い靴下を履いた足から、同じ色の清楚なショーツがするりと脱ぎ取られる。
もう一度、恥じらいの微笑を浮かべてこちらを見た綾ちゃんは、
スカートの裾を、ゆっくりと持ち上げた。
(見えますか。これが石岡綾子のおま×こ、です……)
言いながら真っ赤になる。
白い太ももの付け根に、淡い翳り。その下がよく見えない。
(ん……、ちょっと、待ってね)
綾ちゃんは、ベッドの上に腰掛けた。
体育座りのような格好になり、それから、足を思いっきり広げる。
スカートの中で、無防備な女性器が丸見えになる。
カメラレンズ越しに、目が合う。
綾ちゃんは照れたように笑い、それから、片手を自分のあそこに這わせた。
(んっ……)
白い指が、自分の性器を思いっきり押し広げて、中の様子をカメラに晒す。
(もっと近くで撮っていいよ。私のここ、もっと奥まで見て……)
映像がちょっとゆれる。
撮り手が、カメラのズームを合わせることも思いつかずに、身体ごと近寄ったからだ。

227:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/02 23:05:31 1berHH9T
覗き込むようにして撮り続ける。
綾ちゃんの恥ずかしい部分を。
「ううっ!!」
どんな女性のものよりも綺麗で魅力的な女の子のそこを見ながら、僕は射精した。
びくんっ。どくんっ。
何度も途中で止めた欲望は、解放のときをむかえて、おどろくくらいに激しく汚液を噴き出す。
抑えるようにかぶせたティッシュから、どんどんとそれはにじみ出てきた。
画面の中の綾ちゃんは、今度はお尻を高く掲げて、僕にそれを撮らせていた。
僕を「安心」させるための「人質」の映像。
綾ちゃんは、裸やセックスするところを僕に撮らせている。
そのことで、綾ちゃんが僕を裏切れないということを証明させるために。
そして、僕は、それを拒めなかった。
信じているのに。
信じたいのに。
僕の臆病な心は、その「人質」を手元に置きたがっていたし、
僕の下劣な欲望は、好きな女の子の裸や性器の映像を欲していた。
だから、僕は、「そんなものがなくても、綾ちゃんを信じている」
ということばが言えなかった。
綾ちゃんは、そんなことも受け入れているように、何度も僕にビデオを撮らせ、
それを笑顔のまま差し出した。
無垢、と言っていいほどの笑顔で。
それは、彼女にとっては、僕の信頼を勝ち取るために神聖な行為なのだろう。
でも、僕は、それを自慰に使っている。
僕の大切な恋人の、優しさと思いやりの結晶を。
画面を見ながら、僕は、射精したばかりの性器がまた硬くなったのを感じた。
なにか言おうとして、僕は、僕が意図していなかったことばが口から漏れたのに気がついた。
「……あのポーズの綾ちゃんが、あの女の子みたいに誘惑してくれたら……」
その、心の奥にどろりとたまった下劣でいやらしい欲望は、
好きな女の子のことさえ信じきれないでいる臆病さと、
それでも僕に寄り添おうとしている綾ちゃんを認識しているずるさとともに、
自分を大嫌いになるのに十分すぎる罪だった。
「最低だ、僕……」
つぶやいて、僕はまたため息をついた。



ここまで

228:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:25:52 TKA1o2bU
リアル孕ませごっこワロスwwwww愛空ってwwwwwww

gj

229:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:30:20 ZHM1BkD1
ついにキター!
ゲーパロ氏超GJ!


230:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:46:52 gLXfMrVF
GJ
おれも巴里書院読みてえ

231:名無しさん@ピンキー
07/12/03 00:57:50 RTnMQzmO
GJ
山田流秘奥義吹いた


普通に面白い話にネタを混ぜてくるゲーパロ氏がにくい

232:名無しさん@ピンキー
07/12/03 02:01:21 j0eolWBk
超GJっす

リアル孕ませゴッコにフイタww

233:名無しさん@ピンキー
07/12/03 02:04:12 yqcrEGnQ
リアル孕ませごっこw

くやしい・・・でも噴いちゃゔ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブフォ オ

234:名無しさん@ピンキー
07/12/03 15:14:39 e7d/yaOP
リアル○ごっこw
エアーウルフやアッキアキに続いて、相変わらずゲーパロ氏の蝶変換は凄いなw

しかし、その分主人公の心境との落差がセツナス
やはりこのカップルは幸せになるべき

235:名無しさん@ピンキー
07/12/03 19:31:16 TETTpqgS
URLリンク(alfalfa.livedoor.biz)
弟に依存してる姉、に脳内変換したら萌えたw

236:名無しさん@ピンキー
07/12/03 22:02:30 bs+DIsH8
まさか、この板でここまで笑わされるとは思わなかった
(いい意味で

237:名無しさん@ピンキー
07/12/04 23:59:11 F1LP5RJS
しかし、喧嘩の現場を押さえた直後にはなんもせずに、妹が逃げ帰ったとたんにこれか。
結局母親はどこまでも妹の手先なんだな。
母親主観の回にしても「だから私は悪くない」という逃げ口上としか思えんし。
そりゃ食っていくことは奇麗事じゃすまんだろうが、再婚以後姉を妹の付き人に売り飛ばして
全く姉の味方をしてこなかったのはあんた自身だろうが。無能無策な親父主観はまだかね。

238:名無しさん@ピンキー
07/12/05 13:52:24 G3+hXdBv
娘がテーブルにザーメンコンドーム放り出してたのに
なにも言わないわけないだろ

239:名無しさん@ピンキー
07/12/05 21:15:01 /xNiRi4e
孕ませごっこがないのにリアル孕ませごっことは、これいかに

240:名無しさん@ピンキー
07/12/06 00:41:02 YkzYE2O0
<誤字を超えた超表現>
<日本語の範疇を超越した>
というがごとし。

241:名無しさん@ピンキー
07/12/06 03:36:00 EYhVmTK1
そう言えば、この両親にそれなりの制裁が加えられる
可能性は超展開でもない限りなさそうだな。
あー、3人とも殺したい。

242:名無しさん@ピンキー
07/12/06 08:45:28 HybkDtRH
いや、殺したいってほどに直接的問題行為はしてないと思うんだが3人とも。
親として最低限の義務は果たしてるので、自立して関わらないようになれば問題ないレベルだし。

243:名無しさん@ピンキー
07/12/06 11:50:11 k0aKpMVP
綾子が悪いわけじゃないんだが、家族への「侵入者」って予想以上にムカつくもんだぞ
子供なら尚更だ。
大人なら大人で、その後の遺産の分け前という
更に性質の悪いドロッドロッの争いになったりするしなー

244:241
07/12/06 15:06:48 o4AdeAnX
>>242
まあDQN妹はともかく実際、両親は積極的にやってないからもっともかもな。
たださ、エンディング辺りで、
妹&母&父「あはは、今までごめんなさーい。今度から仲良くしようね」
的な展開が予想できるだけに、こうカチンと……
ま、両親には三下り半突き付る程度で充分だな。

245:名無しさん@ピンキー
07/12/06 21:27:28 XtYnl//B
三下り半 → 三行半

246:名無しさん@ピンキー
07/12/06 22:24:03 NJGrpmbw
母親は娘をいっそ女子寮かなんかにいれて
あの家から出してやるのも一つの手段だろうにと思ってしまうよ。
名前さえ奪って使用人扱いするという精神的DVを母親までもが加担した上で行うよりは、
綾子の方はのちのちまで母親に捨てられたという恨みは持つだろうけど、
娘二人を引き離す方がよっぽど両方のためなんじゃないのかとね。
遠く離れたら綾子は自分自身を取り戻せるわけだからなあ。
そうしたら母親一人に矛先が向かうだろうけど、十代の自分の娘楯にするよりは母親が我慢した方がいいだろうさ。
まあ母娘の絆がもっとしっかりしてたら、娘もお母さんのためにと我慢するための土台ができているから
新治との依存関係に陥らず読者としては楽しめないのだが。

再婚夫は所詮親じゃないから無理にせよ、母親の方はまだ十代真ん中の娘を守る義務があるわけだからなあ。
もっとも再婚夫は自分の娘の異常に気付いてやれてないから、やっぱり問題山ほど抱えた家ではあるが。

などと背景にまであーだこーだ言いたくなるほど続きをwktkしている。

247:名無しさん@ピンキー
07/12/08 01:56:24 Mujzzew1
もう綾子とシンジ君だけ幸せになれば満足

248:名無しさん@ピンキー
07/12/09 11:14:40 pqdNg269
同意
もう二人で駆け落ちすればいいじゃん

249:名無しさん@ピンキー
07/12/09 13:50:03 Aweo+FHH
おまえら落ち着け

250:名無しさん@ピンキー
07/12/11 23:42:21 V7W+0Odj
hosyu

251:名無しさん@ピンキー
07/12/13 23:33:07 e+qVqAaK
過疎っとるne

252:名無しさん@ピンキー
07/12/14 00:33:20 k4R95RTI
元々だyo

253:名無しさん@ピンキー
07/12/14 23:42:03 w0klV/aj
このスレがないと生きていけない

254:名無しさん@ピンキー
07/12/15 12:44:55 PgWKcz2c
それにしても、シンジ君は綾タンにどんなプレイをしたかった、
もしくはさせたかったのだろう・・

255:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:39:00 7xxuUfDS
<私が私でいられる時>・11

「―ぴ、ぴ、ピラルクー、ぴっくるんるん♪」
突然携帯が鳴り、僕はびっくりして振り返った。
<恋のピラルク伝説>の着メロは、綾子ちゃんからだ。
というより、こんな時間に僕に電話をかけてくるのは、彼女しかいない。
僕は、慌ててパンツとズボンを履きなおした。
「……」
どぎまぎして、手を伸ばす。
頬っぺと耳たぶが真っ赤になり、心臓がバクバクいっている。
今、頭の中でいやらしい格好をさせて犯したばかりの綾子ちゃんからの電話。
僕は、混乱しきっていた。
お、落ち着け。
し、深呼吸だ。
今、僕が、綾子ちゃんでオナニーをしたことは、言わなければわからない。
綾子ちゃんは、僕の考えていることがよく分かるけど、
それは、顔色や、ちょっとした仕草をもとに敏感に察知するということで、
それはエスパーとか、そういう類のものではない。
……最近は、ちょっと自信がないけど。
まあ、それは、ともかく。
僕は深呼吸をして、携帯に出た。
「も、もしもし」
「あ、新治君。こんばんは」
「あ、ああ、こんばんは……」
「ひょっとして、寝てた? だったらごめんなさい」
「い、いい、いや、お、起きてたよ、すぐに出れなくてごめん」
自分で分かるくらい、声が裏返っている。
「……も、もしかして、あの……その……お、オナニーとか、してたの?」
僕は、盛大にむせこんだ。

256:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:39:31 7xxuUfDS
「ちょっ! な、な、な、なんでっ、わかっ……」
日本語になってない声は、それでも綾子ちゃんには意味が伝わったらしい。
「だって、その……後ろで私の声が聞こえたから……」
「え?!」
「私の声。……こないだビデオに撮ったやつ、……だよね?」
僕は振り返った。
……電話が掛かってきた動揺のあまり、パソコンの映像ソフトを止めていなかった。
僕の家は、新築で窓は二重ガラスだし、遮音効果はかなりすごい。
雨戸とカーテンを閉めると、テレビやステレオを大音量にしても全然外に音が漏れないのだ。
だから、普段、ヘッドフォンでそういうのを聞く僕も、
ちゃんと戸締りしていると、けっこう大きな音で聞くことがある。
今日は、パソコンにヘッドフォンをつなげるのももどかしく、あれを始めちゃったから、
必然的にビデオの音はスピーカーから聞こえる形になり、
つまり、かなり大きな音量で─ビデオの中の綾子ちゃんの声が聞こえていた。

(―綾子は、一生、新治君以外の男の子とエッチしません。
こうやって、ここを見せるのも、新治君一人だけです……)

モニターの中では、綾ちゃんが、顔を真っ赤にして宣言していた。
上半身にまとっているのは、私服ではなく、ネームプレート付きの学校の制服だ。
それは、他の人に見せられない物になるように、つまり、
「もし、私が新治君のことを裏切って、
新治君がこの映像をどこかに流しちゃうときに、
これが、私のことだと皆にはっきり分かってしまうように」
下半身はソックスだけの姿で、女の子のあそこを僕の撮るカメラに晒している。
ことばとポーズを色々と変えて、何度も、何度も。
そして、綾ちゃんは、僕によくその「誓約」が聞こえるように、
カメラと僕の目を見つめながら、大きめな声ではっきりと喋っていた。
その声は、わずかながら、携帯の向こうの綾ちゃん本人に聞こえていたのだ。

257:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:40:02 7xxuUfDS
「……あっ、いっ……こ、こここっ……」
日本語どころか、人間の声の範疇を軽く逸脱するくらいに裏返った声。
「あ、あのっ……ちがっ……」
綾子ちゃんが、くすり、と笑った。
「―うふふ、オナニーしてたんだ、新治君。私の裸で」
「あああ、おおお……」
「嬉しい」
「えええっ!?」
綾子ちゃんが、携帯の向こうで微笑む気配が伝わった。
「私の裸で、そういうことしてくれてたんだ。……よかった」
「えええっ」
混乱している頭にも、綾子ちゃんの声にとりつくろった響きが全く含まれていないことは分かる。
小さな吐息は、ほっとしたような気配を確かに運んできていた。
「お、怒らないの……綾ちゃん」
僕は、恐る恐る聞いた。
身体を重ねあった間柄とはいえ、自分の穢(けが)れた妄想と性欲の標的に、
綾子ちゃんのビデオを使ったことは、軽蔑されるべきものだ。
このビデオは、綾子ちゃんから差し出された人質。
それは、取引が終わるまで、大事に保護されていなければならない。
僕は、その人質を欲望のまま犯している。
「なんで、私が怒るの?」
綾子ちゃんが聞き返す。
こちらも、恐る恐るという響きがあった。
「だって、僕は、綾ちゃんのビデオで、お、オナニーしてたんだよ……?」
「うん。……それで、なんで私が怒るの?」
「……」
「……」
かみ合わない話。
黙ったまま、お互い、深呼吸を一つする。もう一つ。もう一つ。
呼吸を合わせて十秒間。唐突に二人はお互いの言っていることを理解した。

258:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:40:32 7xxuUfDS
「もしかして、新治君、あのビデオ、エッチなことに使っちゃいけないと思っていたの?」
「もしかして、彩ちゃん、あのビデオ、そういうつもりで僕にくれたの?」
「……うん」
「……うん」
僕は、真っ赤になった。
携帯電話の向こうの、綾ちゃんも。
立ち直りは、綾ちゃんのほうが早かった。
「だって、女の子が男の子にああいうものをあげるっていうことは、
……そういうこと、でしょ?」
「う、うん」
「だから、その……あのビデオ、新治君の自由にしていい、って言ったのは、
そういうの……も、含めてのことだったのよ?」
「綾ちゃん……」
背中がぞくっとした。
久々の感覚。
忘れていた。
綾ちゃんは、「怖い」女の子。
自分の恋人がどんな覚悟で僕と向かい合っているか、あらためて思い知った。
綾ちゃんは、自分の人生を丸ごと差し出すつもりで僕と相対(あいたい)している。
それはわかっていた。
でも、最近、なんとなく互いが互いに安心して触れ合うことが多くなってきて、
僕は、綾ちゃんのそうした「恐さ」を忘れていた。
だけど、それは─。
「私、……もう、新治君の女、なんだよ。新治君だけとしかエッチしない女の子。
だから、新治君は、わ、私のビデオで、お、オナニーしても……いいんだよ!」
言い切って、微笑む気配。
背筋のゾクゾクが止まらない。
ああ。
綾ちゃんは、こういう娘(こ)だった。
綾ちゃんは、―怖い女の子。

259:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:41:14 7xxuUfDS
目的のためなら、なんでもする。自分の裸をビデオに撮らせたりもする。
目的のためなら、何でも捨てられる。自分の人生さえも。
でもそれは、─僕を安心させるための覚悟の恐さだった。
僕は、綾ちゃんと普通に喋られるようになった。
いや。
普通に、だけじゃなく、安心して喋れるようになった。
彼女に安心して話しかけ、安心して触れ、安心してそばにいられるようになった。

─それは、綾ちゃんが、「強くて怖い女の子」だから。
本当は、誰よりも「強くて怖い女の子」だから。
綾ちゃんは、僕を安心させるために、自分を縛って差し出した。
普通の女の子では絶対出来ないくらいの固さ、絶対逃げられない固さの鎖で。
綾ちゃんは、その鎖を自分で作って僕に結びつける覚悟を持っている。
そうしなければ、僕が安心できないと知っているから。
僕は弱くて臆病だから、強くて怖い綾ちゃんは、そうやって僕を安心させる。
だから、僕は、綾ちゃんとお話が出来て、綾ちゃんと触れ合うことが出来て、
綾ちゃんのそばにいることが出来るようになったのだ。
そして─。
僕は、ズボンの前が固く盛り上がってきたのを、唾を飲み込みながら見つめた。
綾ちゃんが、そうしてくれているおかげで、僕は─。
綾ちゃんに、欲情することが出来た。
綾ちゃんと、セックスすることが出来た。
僕は、僕がとうてい手に入れられないような「強くて怖い女の子」が好きだった。
僕の母親のような。
そして、その女の子が、僕だけを好きになってくれるのを望んでいた。
そんなことはありえない。あっても、きっと僕はそれを疑う。
僕より強くて怖い女の子は、いつでも僕から逃げられるから。
「逃げない」と言われても信じない。信じられない。
だから、綾ちゃんは、自分が僕から「逃げられないこと」を証明し続けている。
自分で自分を縛って、僕に差し出して。

260:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:41:45 7xxuUfDS
「……新治君?」
耳元で綾ちゃんの声がした。
「……な、何……」
かすれた声。
何分くらい、僕は黙っていたのだろう。
その間、綾ちゃんは何を話していたのだろう。
いや。
きっと、綾ちゃんは何も言わなかったのだろう。
僕の息遣いをじっと聞いて、そして、僕が何を考えているのか、考えていたのだろう。
僕が、綾ちゃんにそうしてきたように。
だから、綾ちゃんの口にした次のことばは、唐突だったけど、
僕には意味が良くつながって聞こえた。
「私も、新治君のこと考えて、……オナニーしてるよ」
「綾ちゃん……」
─鎖で縛られた人質の姫君は、花嫁のように微笑む。
彼女は、はじめから逃げるつもりも、帰るつもりもない。
だから、鎖の端を自分から陵辱者に与えるのだ。
「……私ね、オナニーするとき、新治君のこと考えながらするの
新治君にキスされたり、おっぱいを触られたり、
セックスしているときのこと、思い出しながら……」
「綾ちゃ……」
「今日も、しちゃった。……ついさっき。この電話をする前……」
僕が綾ちゃんの事を考えながらオナニーをしていたとき、
綾ちゃんも、僕の事を考えながら自慰に耽っていたのだ。
頭の中と、あそこが、かあっと燃え立つ。
「いやらしい、よね。私……」
「そ、そんなことない……よ」
僕は、また唾を飲み込んだ。
「ううん、きっと、私、すごくいやらしい女の子なんだと思う。
<妹>はそんなことしないって言ってたし、母さんもそういう感じじゃないから」

261:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:42:26 7xxuUfDS
「ぼ、僕だって、綾ちゃんのこと考えて、オナニーしてる」
突然、口をついてでてきたことばに、僕は驚きかけ、そしてすぐにそれを受け入れた。
「新治君のエッチ……」
「あ……」
「でも、それ、すっごく、うれしい」
「綾ちゃん」
「……うふふ、二人とも同じなんだね。同じくらいエッチなんだ」
「うん」
「二人とも、同じくらいにエッチっていうのは、
……きっと、すごく幸せなことなんだと思う」
「綾ちゃん……」
「私ね、あれから、母さんと何度か話をしたんだ。いろんなこと。
……母さん、今のお義父さんと離婚を考えてるんだって……」
綾ちゃんの言う「あれ」というのは、僕とのセックスと、
そしてそれが<姉妹>喧嘩の騒動の中で両親に知られたことを指しているだろう。
「離婚……」
トラウマになっているくらいに嫌いな単語が出てきて、僕はぎょっとした。
呼吸の音が、わずかに乱れる。
それだけで、綾ちゃんは気がついたようだった。
「あ……ごめんなさいっ、私……」
心の傷は、恋人の声で瞬時にふさがった。
二ヶ月前には、想像もつかなかった癒され方。
僕は、確実に何かが変わりつつある。
「いや、大丈夫。いいんだ、話、続けて……」
僕は、綾ちゃんを促した。
「う……ん。ごめんね。
それで……母さんは、私を連れて、もう一度二人でやり直すって言ってくれたの。
パートでも何でもいいから、二人だけで暮らそうって。
……本当のところ、私はどうすればいいのか、よくわからない。
母さんのこと、今、好きでも嫌いでもないの。一緒に暮らしたいかどうかもわからない」

262:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/12/16 22:43:17 7xxuUfDS
綾ちゃんの声は、冷静だった。
「誰かと一緒にいたい、っていうのだったら、私、新治君と一緒にいたい」
「……綾ちゃん」
「あ……」
綾ちゃんは、慌てたように口ごもった。
それから、今までよりもっと明るい口調で続けた。
「……それでね、色々話してて、なんだか、そんな話になっちゃんたんだけど、
母さんは、……今のお義父さんの愛され方がいやなんだって。
もっとちがう形の愛され方をされたかったんだって」
「……」
「母さん、言わなかったけど、それって、きっとエッチのことを言っているんだと思う」
「……え、エッチ?」
「うん。でも母さんは、色々良くしてくれている今のお義父さんをこれ以上困らせたくないから、
だまってそれを受け入れてたみたい。でも……どうしてもダメになったんだって」
「綾ちゃん……」
「だからね、エッチって、すっごく大切なことなんじゃないかなって、思う」
「……」
「私ね、男と女の結びつきって、この世で一番強いものだと思ってるんだ。
だって、家族って、最初、男の人と女の人がくっついてできるんだよ」
それは、僕の考えとまるっきり違っていて、まるっきり同じ考えだった。
「それでね、男の人と女の人って、何が特別かって、結局、エッチするのが特別なの。
親子って、エッチしないもん。兄弟姉妹もエッチしない。でも、夫婦や恋人は、エッチする」
「……そう、だね……」
僕のベッドで、僕の下になってうねる綾子ちゃんの裸体を思い出して、僕はまた唾を飲んだ。
「だから、新治君が私のこと考えてオナニーしてくれてるの、とってもうれしい。
私と同じだから。……二人が、同じだから。……私たち、すっごくお似合いなんだよ」
「綾ちゃん……」
「うふふ……。ねえ、新治君」
「な、何?」
「一緒に、オナニーしちゃおうか、今?」
「ええええーっ!?」
綾ちゃんの提案に、僕は、盛大にむせこんだ。
だけど、背中に、これ以上はないくらいのぞくぞくが走りぬけたのも感じていた。
ズボンの中で、おち×ちんが硬く硬くそそり立つ。
女の子と─それも、大好きな女の子と一緒にオナニーをする。
くらくらするほどの陶酔が僕を襲った。
「私は新治君のこと、考えて……。新治君は私のこと、考えて……。
いつもしてるオナニーを、相手に聞かせるの。
ううん、いつもいつも考えていたこと、相手に伝えて、するの。
きっと、きっと、すごく気持ちいいよ……」
綾ちゃんの微笑を、僕は携帯電話越しに「見た」。
僕の彼女は、まるで息を吸って吐くのと同じくらい自然に、
僕に自分の全てをさらけ出す覚悟を決めていた。
その強さと恐さ─僕は彼女に抗えない。
「……うん」
戦慄にも似た感覚の中、僕はそれを受け入れ、
そして二人は、互いをもっと知るための自慰をはじめた。


                        ここまで


263:名無しさん@ピンキー
07/12/16 22:55:58 plTlJIl6
>>262
お待ちしておりました!!
超GJっす

電話の二人のやり取りでお腹一杯です

綾と新治の結婚式はまだですか?

264:名無しさん@ピンキー
07/12/17 01:20:34 X3/dADKx
GJ
いつもお疲れ様です
寒くなって参りましたのでお体に気をつけて下さいね

265:名無しさん@ピンキー
07/12/17 02:10:43 9bnC4E3r
会話だけでも充分エロいし、改めて最強のヒロインだと実感した。
超絶GJ!

266:名無しさん@ピンキー
07/12/17 02:32:43 G7KgPRlB
GJ!!
最高だこの2人
幸せになってほしい

267:名無しさん@ピンキー
07/12/18 04:47:28 2pb1Aquj
恐ろしい子や・・・
綾ちゃんはほんに恐ろしい子や・・・・・・(((((; ゚Д゚)))))

268:名無しさん@ピンキー
07/12/18 22:32:44 jO1+wYvg
GJ!
ぴらるくーは二人の愛のメロディーになったか

269:名無しさん@ピンキー
07/12/19 00:27:49 n3LCXXzp
彼氏の影響でその音楽を知りました的なものかと

270:名無しさん@ピンキー
07/12/20 00:07:55 MuVic+Bu
この二人は本当にいいカップル
邪魔する奴は俺が出て行ってやっつける

271:名無しさん@ピンキー
07/12/20 13:26:24 sjDeDxWi
ちょんぎって捨ててやるんですね?

272:名無しさん@ピンキー
07/12/21 01:38:40 I/vGnp5e
邪魔者をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す>>270


273:名無しさん@ピンキー
07/12/21 19:09:42 Mc4oUvtX
グシュ ブチャ ベチャ

274:名無しさん@ピンキー
07/12/22 02:58:52 K6QvQlqA
ぽいんぽいん ぐぎっ ばろろろろ

275:名無しさん@ピンキー
07/12/22 04:15:08 Vlx6+J5I
そして邪魔者をちぎっては投げていた頃を回想する>>270

276:名無しさん@ピンキー
07/12/23 20:11:05 snV7iJZO
妹がこのまま終わるとは思えない

277:名無しさん@ピンキー
07/12/25 00:42:23 JpfIYGNR
保守

278:名無しさん@ピンキー
07/12/26 16:02:24 b/eKMGcw
保守

279:名無しさん@ピンキー
07/12/26 20:29:40 imijhGqI
保守

280:名無しさん@ピンキー
07/12/28 01:05:35 N5G8YqS+
GJ!

281:名無しさん@ピンキー
08/01/01 00:10:03 zMh35mpr
新年明けましておめでとうございます。
今年も精一杯このスレに依存していこうかと思います。
昨年に引き続き、今年もよろしくお願い衣します。
                       依存スレ一同様へ

282:名無しさん@ピンキー
08/01/01 00:22:37 xlQXEJvD
明けましておめでとう!
オレはますますこのスレに依存していくぜ!

283:名無しさん@ピンキー
08/01/01 22:44:09 KLpmgFND
ここのすれって
依存したい派とされたい派どっちがおおいのかね?
俺はされたい派

284:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:40:54 OEkfwT3A
>>283
相互依存が好きな俺は
依存教相依存の異端派なんだ・・・

あてにならない意見ですまない

285:名無しさん@ピンキー
08/01/02 00:37:12 i7iFllY0
依存されているはずが、知らないうちに自分も依存していたっていう共依存の
形が一番美しいな、やはり。

286:名無しさん@ピンキー
08/01/02 10:40:09 UGs+yLAh
1番好きなシチュはなんかある?
俺は捨てられそうになった時の必死なとこかな。
何でもしますから捨てないで下さい的な

あとお前ら大好きだ

287:名無しさん@ピンキー
08/01/02 12:05:50 KQLuuiZf
今まで自覚してなかったけど、何かの拍子で気付いて依存度合いが深まっていくのが好みだな。
例えば、幼馴染みの世話をなんとなしにやいてた女の子がある男に告白され
→主人公が気を利かせて「俺の事には構うなよ」
→で幼馴染みが実は主人公に依存していた事に気付く
→一方の主人公も幼馴染みの存在が大切なものと自覚する


長文すまない、つい願望が入ると語ってしまう

288:名無しさん@ピンキー
08/01/02 15:07:44 OU/PFEFT
共依存の関係が、何かの出来事がきっかけで
さらにぐでっぐでに深まっていく場面が好きだなあ。

289:名無しさん@ピンキー
08/01/02 20:02:06 3EW5Osz3
>>287
>>288
ふむふむなるほど。それでそのあとは?詳しく最後まで聞かせてもらおうか…。
お互いに自分の気持ちに気付いてからの展開を特に詳しくな。いっそのことSSにして投下してくれても私は一向に構わん!


290:287
08/01/04 11:43:35 Pa3i8LdN
小過疎ってるので、神が来るまで場繋ぎを

(287続き)
でお互いが必要なのは分かってはいるが、今さら告白できない主人公に男に告白された幼馴染み
→幼馴染みの親友が主人公に興味を抱いて、幼馴染みに紹介を迫る
→追い詰められた主人公と幼馴染みは・・・

(略)

→お互い依存しあってハッピーエンド


ステロタイプですまん
で振られた男と幼馴染みの親友がくっつけばそれなんて月9の(ry)

291:名無しさん@ピンキー
08/01/05 08:33:03 ofA/lvqc
で、親友はアルコールに依存するわけだな

292:名無しさん@ピンキー
08/01/05 19:56:59 7skWUrCE
お正月なのでお屠蘇等で酔った世話焼きの幼なじみが幼児退行でもしながら、熱くなった体で絡んでくる展開はどうか?
風呂やトイレに立つだけで泣き始めたり。

293:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:54:26 42SrOrQn
<私が私でいられる時>・12

カーテンを閉める。
部屋のドアのカギを確認する。
スカートを脱いで、ベッドに腰掛ける。
さっきまで、充電器につなげておいたから電池の容量は十分。
携帯は、持ったまま、かけたままだ。
一秒でも、新治君の声から離れるのはいやだから。
ううん。
別に、声が聞こえなくてもいい。
息遣いだけでもいいし、それさえ聞こえなくてもいい。
新治君が、この電話の向こうにいるという気配を感じるだけで、私は、世界で一番幸せになれる。
その、私を世界一幸せにさせてくれる男(ひと)は、電話の向こうで緊張しきっていた。
こういう時、どうすればいいのか、私は知っている。
「吸った息を、どうやって吐いたらいいのか」と同じくらい、簡単にわかる。
身体と心を堅くしている、私の愛しい人を解きほぐすのは、私の一言。
「うふふ、新治君は準備OK?」
質問する私の声が弾んでいる。
どきどきが止まらない。
新治君に自分の秘密を教えるどきどき。
新治君の秘密を教えてもらうどきどき。
「あ、……あああ、だ、大丈夫」
「うん。私、スカート脱いだよ。新治君は?」
「ズ、ズボン下ろした……」
「えへへ、お互い下着姿なんだ」
「うん、そ、そうだね」
「お、オナニーするとき、下着着たままでするの?」
「ううん、脱ぐ……」
「あはっ、私は両方、かな。ショーツの上から触ることあるよ」
「そ、そうなんだ」

294:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:54:56 42SrOrQn
「うん、最初の一回目は、そうやってすることが多いんだ。
でも、二回目からは、ショーツがびしょびしょになっちゃうから脱ぐの。
私、エッチな気分になっちゃうと、何回も続けてしちゃうんだ」
「そ、そうなんだ」
「新治君は、その……一度に何回もするの?」
「う、うん。やっぱりエッチな気分になりと、三、四回くらいは……」
「わあ、すごいのね」
軽い会話。
お互いの呼吸がだんだんと合ってくる。
でも、それは、本当は他人に最後まで隠しておかなければならないもの。
性は、人の最後のプライベートだ。
オナニーなんて、その最たるもの。
自慰は、自分だけの楽しみ。
誰にも教えないもの。
たとえ、もうセックスをしている恋人同士でも、
自分の部屋に帰って「する」ことを教えあったりしない。
─だから、教える。
─だから、伝える。
新治君に。
あなたが手に入れた女の子は、こんな女の子だということ。
みんな教えてあげる。
女の子が男の子に絶対に教えちゃいけない、最後のことまで。
恋人でも夫婦でも絶対に見せない、一番奥の部分まで。
だって、私と新治君は普通の恋人同士じゃない。
もっともっと、深くて、濃密な関係から。
「私、最初は、ショーツの上からなぞるの。
そうすると、すぐに敏感になってきて……んっ」
水っぽい音は聞こえただろうか。
びくん、と跳ねた身体がベッドの上で立てた音は聞こえたに違いない。
新治君が息を飲む気配を感じて、私は携帯にさらに耳を押し当てた。

295:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:55:28 42SrOrQn
「んっ……気持ちいい。新治君の声聞きながら、ここ触るとすごく、気持ちいい……」
少し声がかすれた。
あそこは、こんなに潤っているのに。
私の身体って、不思議。
ああ、興奮するとこっちに水分を取られるから、喉のほうはかすれるのかな。
そんなことないか。
新治君とディープキスするときは、あんなに興奮してるのに、
お口の中は唾液でいっぱいだし。
「私、ここのお汁、いっぱい出る体質なのかも」
「そうだね。綾ちゃんは、濡れやすいかも……」
「新治君は、あ、あれ、いっぱい出るじゃない」
「う、うん、そうだね。……特に綾ちゃんとするときは、いつもよりいっぱい出るかも……」
「そ、そうなの……」
「うん、普段オナニーするときより……」
「そ、そうなんだ……」
あっという間に形勢逆転。
心臓がばくばく言っているのは私のほうになった。
新治君には、本当に敵わないなあ。
私は、布の上を這う指先が湿ってきたのを感じた。
「新治君がそんなこと言うから、もうショーツ濡れちゃった。……脱ぐね」
「うん、僕も、脱ぐ」
衣擦れの音。
二人が自分の性器に手を這わす。
これが、お互いの手であったら、もっと気持ちいいだろう、と思いながら。
自分の性器より、相手の性器に触れたいと、思いながら。
その軽い焦燥感が、快感を増していく。
無言。
少しずつ高まる息遣い。
自分のつがいが、昂ぶってきたことを感じて、私はさらなる解放へと進もうとした。

296:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:56:00 42SrOrQn
「……新治君は、どんなオナニーするのが気持ちいい?」
昨日から、考えていた質問。
慎重にタイミングに測り、流れに乗せる。
「えっ……あ、それは……あ、綾ちゃんの……」
さっきの動画のことを思い出したのだろう、ちょっと慌てながら新治君が答えた。
私に配慮した優しい答え。
嘘も、ついていない。
新治君にとって、その瞬間、たしかに私が最高の性的対象だったろう。
でも、男の子の性欲って、そういうものだけじゃない、というのを私は知っている。
男の子と女の子って、ちがう。
たとえば、私は、新治君以外でオナニーをすることはない。
新治君に再会する前にしたときは、別に何かを考えて「した」ことはなかった。
何かの拍子に触れてしまった、純粋な身体の反応。
それは、新治君にも話しているから、知っている。
でも、新治君は、きっと、私以外のことでオナニーをしている。
たくさんある、エッチな小説や漫画は、私がビデオをあげても減ることがなかった。
最近は、買い求める量が減ったと言うけど、捨てるほどにはなっていない。
私以外の女の子の裸。
私以外の女の子のセックスの描写。
愛する男(ひと)の性的関心が自分以外の女の子に向けられるのは悲しいし、悔しい。
それでも私が比較的平静でいられるのは、その多くが小説やマンガの世界のものだから。
新治君にとって、生身の女の子の中では私が唯一の存在ということには確信がある。
そうした架空のヒロインたちと並べても私が「一番」と想い始めてくれていることにも。
なぜ生身の世界のように、私が架空のヒロインを交えた中でもオンリーワンになれないのだろうかと。
私の心を捉えているのは、
嫉妬よりも、どうして? なぜだろう? という疑問だった。
新治君の心の中をもっと知りたい。
それが、私の一番の願望で、
そしてきっと、新治君の性癖やオナニーは、その答えを内包している。

297:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:56:32 42SrOrQn
私は新治君の心の中がわかる。
でも、全部が全部わかるわけではない。
むしろ、新治君の中を「見た」中で、
私が理解できるところだけを理解しているといったほうがいい。
当たり前だ。
新治君と、私は、別の人間だ。
─だけど、もっと近づくことが出来る。
なにか、もう一つきっかけがあれば、もっと強く。
なんだろう。
それがわからないのが、もどかしい。
でも、私は、その答えが、これから始まる二人の自慰に隠されていることを知っていた。
だから、私は、互いの全てをさらけ出す昂ぶりに新治君を誘った。
「うふふ、嬉しい。新治君、私でオナニーしてくれたんだよね」
「ああ、うん」
「……でも、私、もっと新治君のオナニー、知りたい。
私のとき以外は、どんなこと、考えてるの?」
「―!」
息を飲む気配。
とまどい。
それが、拒否に変わるまでの短い時間に、もう一言。
「私、怒らないよ。新治君が、私のこと以外でオナニーしてるって知ってるもん」
「!」
「だって、新治君、私と出会う前もオナニーしてたんだもん。
私以外でオナニーしたことあるのは、当たり前だよね」
そういう私は、新治君以外でオナニーしたことはない。
「あ、綾ちゃん……」
新治君の声から伝わる緊張が、ほんの五ミクロン緩まる。
うん。
いい感じ。
あと一押し。

298:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:57:10 42SrOrQn
「さっき言ってたよね、新治君。
オナニーするとき、頭の中で、私にいやらしいことさせてるって。
私、それ、―次にあったとき、新治君にして、あげたいっ……!」
最後のほうは、また声がかすれた。
言った瞬間、身体がびくん、と跳ねる。
軽く、イきかけた。
自分の欲望を、好きな人に素直に伝える快感と幸せ。
そう。
私は、新治君をもっともっと気持ちよくさせたい。
なぜなら、それは……。
「……知ってるかな? 新治君……?
新治君、私とエッチするときに、すっごく気持ち良さそうな顔をするんだよ。
すっごく気持ち良さそうな声をあげるんだよ……」
「あ、綾ちゃん……」
「─私、それを、見ると、聞くと、すっごく気持ちよくって、幸せになれるん、だよっ……!」
「……!!」
「わ、私っ、私は、新治君を気持ちよく、したいっ……。幸せにっ、したい……!
……それと、同じで、新治君は、私のことを、気持ちよく、幸せにさせたいっと……、
思ってくれているのが、すごくっ……よくわかるの……」
「あ……!」
そう。
新治君は、私のことをすごく大事に想ってくれている。
私が、新治君のことを想うのと同じくらいに。
だから─。
「新治君が、私のことを気持ちよくさせてくれたいのなら、……新治君が、いっぱい気持ちよくなって!」
新治君が、気持ちよくなること。それは、私が気持ちよくなること。
私が、気持ちよくなること。それは、新治君が気持ちよくなること。
新治君が、幸せになること。それは、私が幸せになること。
私が、幸せになること。それは、新治君が幸せになること。
ふたつは、まったくの同意義。

299:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:57:41 42SrOrQn
「……」
唾を飲み込む気配。
新治君が、私の言ったことを理解したのが伝わる。
私は、絶頂に達っしようとする指先を、かろうじて止めた。
自慰の最後の瞬間、身体も精神も堰を切ってしまった後でそれを止めることなんてできない。
─普通の女の子なら。
人間(ヒト)の心と体なんて、すごく弱く出来ている。
だから、麻薬とか媚薬とか打たれただけで、男の人も女の人も獣みたくなっちゃうんだ。
人は、痛みや不幸には耐えられるけど、快楽や幸せには耐えられないように造られているから。
─だけど、私は、それを止められる。
だって、私には、この快感以上の快感があるから。
私には、この幸せ以上の幸せがあるから。
今、携帯電話の向こうに。
私が一番気持ちよく、一番幸せになるには、新治君もそうなっていなければならない。
だから、私は、自慰の絶頂の瞬間でさえ、止められることができる。
はぁっ、はぁっ……。はぁっ、はぁっ……。
呼吸は荒く、甘く、切ない。
頭の中は、分泌された脳内物質でぐちゃぐちゃだ。
止められた快感は、どんな拷問よりも強く身体を悶えさせる。
でも、私がイくのは、私が与えているこの快感と幸せでじゃない。
もっと気持ちよくて、幸せなものでだ─。
「綾ちゃん……」
新治君は、私にそれを与えることに同意した。
自分の快楽のためだけでなく、私のために。

300:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:58:13 42SrOrQn
「……うん、じゃあ、どうするの、どうすればいいの……? 教えて、新治君……」
脳内物質のせいだろうか、五感がどんどんと研ぎ澄まされるのが分かる。
新治君の息遣い。
ことばに迷う一瞬。
意を決して、声を発する。
「あ、うん。じゃ、じゃあ、ちょ、ちょっとエッチに、お姉さんっぽく……ダメかな……?」
「ダメじゃないよ。大丈夫!」
反射的に答える。
今、新治君がどんな「お願い」をしてきても、
私の答えは肯定の一択だということを、新治君は半分信じていた。
そして、私は、その通りの答えを出す。
いつだって。
ううん、新治君の期待以上の答えを。
たった二言三言に隠された新治君の願望を、私は正しく読み取った。
普通にしていたって、私は、新治君の心は読める。
今の私がもっと読めるのは当たり前かもしれない。
「エッチなお姉さんって、……『リアル孕ませごっこ』の、杏子さんみたいな?」
「え……」
「ちょっと」は、新治君の照れと遠慮。
ほんとうの願いは、「すごくエッチ」に、だ。
私の知っている「新治君の好きなすごくエッチなお姉さん」は、あのキャラクターだった。
新治君の沈黙は、混乱と、―肯定だ。
まるで、最初から答えを知っているテストのように、私は新治君の欲望を言い当てる。
「あはっ……当たった、みたいだね」
「う、うん、なんで……わかるの……?」
「たまたま、だよ。こないだ、私に貸してくれたでしょ?」
「あ、そうだったっけ……」
正確には、恥ずかしがる新治君から少し強引に「好みのエッチな本」を何冊か借りてきたのだ。
黒い表紙の巴里書房のベストセラーはその中に入っていた。
「……あれ、新治君の部屋にももう一冊、あるよね。……ね、一緒に読もうよ」
新治君は、『リアル孕ませごっこ』を二冊持っていた。
一回買って、気に入ったので、「保存用」に買っておいたらしい。
私は、新治君が読んでエッチなことに使ったほうを借りたかったけど、
新治君はものすごく恥ずかしがって拒否したので、新品のほうで我慢した。
でも、これをこういう風に使うとはその時は考えもしなかった。
─いや、無意識にそれを考えていたのかも。
互いに文庫本を片手に、もう片方には携帯をしっかり握って始めた会話は、
すらすらと、最初から決まっていたようにうまく交わすことが出来たからだ。

301:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:59:06 42SrOrQn
「じゃあ、どこがいいかな。あ、42ページなんかいいかな」
「う、うん……」
「じゃあ、いくよ……。」

<うわあ、おち×ちん、おっきいじゃない。
うん、けっこう大きいよ、君。ちょっと自慢していいから。他の女の子に言われない?>

「……どうかな?」
「う、うんっ! す、すごくいいよ!」
「あはっ、じゃあ、新治君も、主人公のほう、読んで……」
「え、あ、ああ、うん……。」

<そ、そんなこと、十六年間の間、言われたことないよ>

今のは、小説では地の分のところだった。
アドリブでしてくれたのは、新治君がリラックスしてきた証拠。
新治君は、臆病な男の子だけど、おびえる必要がなくなれば、
ものごとに色んな、ものすごい能力を発揮する。
それが、私だけが知っている、本当の新治君。
私は嬉しくなった。
手を触れることさえためらい、恐がる男の子は、
女の子から手を握ってあげれば、ぎゅっと握り返してくれる。
あったかい手で。
それを知っている、それができる女の子が私だけということは、石岡綾子の誇りと幸せだった。

302:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 15:59:36 42SrOrQn
<あはは、君、童貞君だったよね、そりゃ言われたことないか
うん。ちゃんと洗ってきているのね。えらいえらい。
うふふ、セックスする前に、おち×ちん、しゃぶってあげようか?>
<え?>

ページをめくりながら、エッチな会話は続いた。
主人公と、第二ヒロイン─巷では一番とも言われる─との最初のセックスのときの会話。
経験豊富で積極的なヒロインが、晩生な主人公に迫るシーンだ。

<フェラチオ。して欲しい……でしょ?>
<そ、そんな……そりゃ……して欲しいけど……>

少しだけ、ほんの少しだけ語尾とかを変えてみる。
予想通り、新治君もセリフを少し付け加えてきた。
最後の<して欲しいけど>は、小説にはないことば─新治君のことばだ。

<いいわよ、恥ずかしがらなくたっても。
男の子は、女の子におちんちんしゃぶられるのが大好きだもん。
君も、私のことを考えてオナニーするとき、
フェラチオされるところ想像したことあるでしょ?>
<う、うん。ある……。き、君のお口でしてもらうこと、考えて……する>

<私のことを考えて>なんて部分、ヒロインのセリフにない。
それに答える主人公のセリフも。
それは、私と、私にと携帯エッチをしている男の子の心の中だけにあることばだ。
私は、どんどん昂ぶってくる私を自覚した。

303:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 16:00:07 42SrOrQn
<あはっ……じゃあ、私がしてあげる。
うふふ、気持ち良かったら、お口の中に射精してもいいよ?
私、全部飲んであげるから……>
<ほ、ほんと……?>
<うん。この間みたいに、無理やりっぽくでも大丈夫だけど、もっと優しく、のほうが好きかな?>
<ごめんね……こないだのは……>
<ううん、あれは、私のためだったんだもん。あれでよかったの>
<つ、次からは優しくするよ。もう、あんなことしない>
<うん、でも、時々なら、乱暴でもいいよ。私、それでも気持ちいいから。ほんとだよ>

目で追う小説の文章からどんどん離れている。
新治君と私は、主人公とヒロインの会話を借りて、この間の逢瀬のことを語り合っていた。
本質的に必要でないから、なんとなく言わないでいたことも、
こうしてきちんと語り合って、わだかまりを消していけばもっと良くなっていく。
面と向かった話し合いよりも手紙が効果的なときのように、
仮面舞踏会の逢瀬が普段の語らいより燃え上がるように、
二人はごく自然に相手に自分をさらけ出していた。

<新治君、女の子に精子飲んでもらうの好きでしょ?
女の子にフェラチオしてもらうと気持ちいいでしょ? 嬉しいでしょ? だから、私がしてあげる>
<うん……だけど、お、女の子の誰でもいいわけじゃ、ないよ>
<え……?>
「あ、ああ、綾ちゃんだから……気持ちいい……綾ちゃんだから、嬉しい……」
「新治君っ……」

私は、『リアル孕ませごっこ』をベッドの上に放り投げた。
新治君も。
片手でしっかりと愛しい人の声を伝えてくれる携帯電話を握り締め、
今、あいた片手で、性器を嬲る。
お互いの声とことばで達しようとして、二人は狂おしい自慰を再開した。

304:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 16:00:42 42SrOrQn
<あはっ、君、おちんちん、そんなに大きくして、
そんなに私とセックスしたいのぉ?>
<う、うん、そうだよ、き、君とセックスしたいっ>
「綾子の中に、精子出したいのね、新治君っ!」
「うんっ! 綾ちゃんの中に精子出したいっ!」
<い、いいのよ、いいのよっ! お姉さんの中に、出しちゃっていいのよ。
ほら、ここが私の入り口。エッチなおつゆでびしょびしょでしょ?>
「うん、綾ちゃんのここ、すごく、濡れてるっ!」
「ああっ、そ、それは新治君のおち×ちんが欲しいから……」
<いいのっ!? いいのっ、お姉さんっ、本当に入れちゃうよ!>
<来てっ! たくさん締めてあげるっ! エッチなおつゆもたくさん出してあげるっ!
君が射精しやすいように、うんとおま×こ良くしてあげる。だからいっぱい気持ちよくなって……>
「あ、綾ちゃんもっ、気持ちよくなってっ……!!」
「し、新治君もっ……!!」

誰かが言っていた。
恋愛は、ポーカーみたいなものだ、って。
お互いが裏返したカードを読み合い、駆け引きし合い、手を作っていく。
強いほうが、最終的な勝者になって関係を作るけど、
その手を作ったカードの一部は、相手の出した物だったり、
相手の対応で引き直したもので、決して勝者一人だけのものじゃない、って。
だから恋愛は面白いんだ、って。
でも、新治君と私のポーカーは、恋愛は、きっとちがう。
二人とも、一切、駆け引きなんかしない。
だって必要ないから。
相手に勝とうとなんて思ってないから。
相手の勝ちが自分の勝ちだから。
─二人は、お互い、自分のカードを全部、表に出して見せ合う。
そして、相手が役を作れるように、自分の手順を使うのだ。
私は、新治君のすべてのカードを見て新治君の手を作る。
新治君が、幸せになるように。
新治君は、私のすべてのカードを見て私の手を作る。
私が、幸せになるように。
だから、二人は、フルハウスでもフォーカードでも何でも作れる。
二人で、ロイヤルストレートフラッシュな幸せだって作れるんだ。

305:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 16:01:13 42SrOrQn
「あ、綾ちゃん、僕もう……」
「イッて! 新治君、イッて! 新治君、私でイッて!!」
「うんっ! 綾ちゃんもっ……僕でイッて!」
「ええ! イくわ、私、新治君でイッちゃうっ!」
「綾ちゃんっ!!」
「新治君っ!!」
お互いが、相手のイメージに包まれて絶頂に達する。
私は、新治君のおち×ちんが精液を噴き上げるのをあそこの中に感じ、
新治君は、私のあそこがおち×ちんの周りに絡みつくのを感じて、欲望を解放する。
一人でするのよりも、麻薬や媚薬を使ってするのよりも、何十倍も濃密で強い快感。
もう離れられない。
こんなものを知ってしまったら、二人は一生離れられない。
次に会えるのはいつだろう。
次に声を聞けるのはいつだろう。
次に愛し合えるのはいつだろう。
恋しい。
涙と、汗と、愛液でぐしょぐしょになった心と身体が、新治君を求めて彷徨い、
「あ、綾ちゃん?!」
携帯から聞こえる声で、戻ってきた。
「新治君……」
「あ、綾ちゃん……」
「新治君、私、すっごく気持ちいい……とっても幸せ……」
「うん、ぼ、僕も……」
「……ね、これから、いっぱいこうやってエッチしようね」
「あ、ああ、うん!」
「私、わかったんだ。私の中には、まだ私の知らないエッチな私がいっぱい、いるんだって。
『リアル孕ませごっこ』の杏子さんみたいな私もいるし、もっと違う私もいるって。
それも全部私で、―それ全部、新治君にあげたい、って」

306:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 16:01:45 42SrOrQn
「綾ちゃん……」
「私、わかっちゃった。……新治君は、色んな女の子が好き。色んな女の子とエッチしたいの」
夢うつつに微笑みながら、私はつぶやいた。
心の中で甘く蕩けていたものが固まって、ことばになってくる。
「……ううん、それは浮気とかそういうのじゃなくって、きっと男の子の性質なんだ。
新治君は、きっといつもの私が好きになってくれているだけど、そういうのとは別に、
杏子ちゃんみたいな女の子に責められたいときもあれば、別の女の子に優しくされたいときもあるんだよ。
男の子は、みんなそう。だから、エッチな本とか小説とか集めるの」
「ち、ち、ちが……」
「そして、女の子は、―私は、きっと一人で何人もそういう女をできるんだ」
「綾ちゃ……」
「うふふ、新治君はねえ、杏子さんみたいなエッチな女の人より、
杏子さんみたいなエッチな女の人を演じる私、が好き……なんでしょ?」
「!!」
それは、自慰の昂ぶりの中で感じ取った真実。
新治君は、私が好き。
私が、新治君がすきと同じくらい絶対的に。
だから、色んな私とエッチしたい。
色んな私に優しくされて、色んな私に気持ちよくされて、色んな私と幸せになりたい。
それは、
色んな私に優しくして、色んな私を気持ちよくさせて、色んな私を幸せにしたい、ということ。

─だから、私は、新治君をますます好きになった。

「ね、次、私、どんな「私」になればいい?」
私は、私のままで、どんどん新治君の好きな石岡綾子になれる。
そして新治君は新治君のまま、どんどん私が好きな新治君になる。
新治君が好きな石岡綾子が好きな新治君が好きな石岡綾子が好きな新治君が……。
─やっぱり、私たちは、もう離れられない。

307:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/06 16:02:23 42SrOrQn



「ふう……」
夜風が、火照った体に心地いい。
綾ちゃんと、声だけの、でも全てを重ねあった逢瀬から二時間経っても、僕は眠れないでいた。
あれから三回も立て続けに自慰で達した身体はだるいけど、爽快だ。
お風呂に入って冷水シャワーを浴びても、肉体の芯が熱くて、心の中が温かい。
時計はとっくに零時を回っている。
「コンビニでも行こうかな……」
もう、今日売りの<週刊少年チャンプDEAD>が並んでいる頃だろう。
『素手ゴロの王子様』と『こちら遠江国掛川藩岩本道場』の続きが気になった僕は、
Gジャンを羽織って外に出た。
坂の下にあるコンビニで<週刊少年チャンプDEAD>を買い物カゴに入れた僕は、
ふと、その横の棚の写真週刊誌に目を留めた。
昔は大売れしていたこいつも、最近ではすっかり部数が減っている。
一時期は、立ち読みもしていたけど、最近は全然興味がなくなった。
だけど、今日は、ものすごく大量に仕入れているな。
なんか特ダネでもあったのか。
表紙を見る限り、いつもと代わり映えしないけど。
手にとってぱらぱらとめくる。
面白い記事は何もない。
─と。
手が止まる。
思わずつぶやいた。
「何だ……これ……」
そこには、

「<彩ちゃん>が喫煙? <ホワイトプリンセス>龍ヶ崎彩子の地元でささやかれる黒い噂」

というタイトルの見開き記事が載っていた。
「あー、それ、すごいっしょ。お客さん、買ってったほうがいいよ。しばらく話題だよ、多分。
俺も気がついてさー、慌てて仕入れ追加したのよー」
にかっと笑った親爺さん(ここのオーナー店主だ)が手作りのポップを持ってあらわれた。

「あの彩ちゃんの記事、載ってます!!」

今書かれたばかりの、厚紙の上に踊るマジックのへたくそな字を、僕は、呆然と見つめた。



ここまで



308:名無しさん@ピンキー
08/01/06 16:14:18 66iV2T0O
うほほ!GJ!!
妹のほうがどうからんでくるのかwktk

309:名無しさん@ピンキー
08/01/06 16:45:13 W6URuoYo
きたきたきた!
らぶらぶ空間最高だわー
そしてそろそろ妹が絡んできそうだ

310:名無しさん@ピンキー
08/01/06 20:53:46 ppgyhUM0
なんか姉の幸せと反比例して妹が追い込まれてるな

311:名無しさん@ピンキー
08/01/06 21:43:09 pzSdxZIQ
ここから妹フラグがバリ立ちになっていく富田

312:名無しさん@ピンキー
08/01/07 01:13:57 o8xq3orw
GJ!GJ!!
GJ!!!!!!!


313:名無しさん@ピンキー
08/01/07 02:15:47 O9OQW9C1
妹フラグ立ったら修羅場スレにひっこされそうw

314:名無しさん@ピンキー
08/01/07 03:17:34 6pjTEiK5
この作品が他スレ行ったらこのスレは死ぬだろうが!
ここの住人の依存度、決してこの二人に劣るものではない!

しかし妹と彼はどう絡むんだろうね
必然的に姉も関わるし、最低でも血は見そうなんだが

315:名無しさん@ピンキー
08/01/07 14:59:53 0Ov7mwWt
自らの誇りたるピアノを幼稚園児に否定(?)され、回りからも喫煙報道で白眼視され。
頼るものを失った妹はどうするんだろうな。
姉に依存するか姉の彼氏に依存するか。それとも自立して姉から離れるか。
続きが気になりますな。

316:名無しさん@ピンキー
08/01/07 19:04:21 f+hBkX0W
ああいう他者を見下すことでアイデンティティ保ってるタイプは立場逆転すると弱い
というかストレスでずるずると落ちて行きそう
ある意味で見下してる他者に依存してるとも言えるし
それしても今までのレスを見てみると妹への立場でスレ住人は真っ二つに分かれそうだな

317:名無しさん@ピンキー
08/01/07 19:20:29 Ij18jFgh
だからこそ手を差し出せばあっさり依存してくれそうな気はするな
落ちることを知らない人間は、落ちた時に一人じゃ再起不能になりかねん

318:名無しさん@ピンキー
08/01/07 19:43:54 mjngZMfy
ちゃん様のようになるのか

319:名無しさん@ピンキー
08/01/07 21:24:50 jEKVKQuj
ちゃん様キャラは大好物です

320:名無しさん@ピンキー
08/01/07 21:52:24 QfhoGg4i
つつつつ遂に………キタ━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)`Д´)-_-)冫、 )ノД`)=゚ω゚)━!!!

2人のラブラブっぷりにもう萌え即死しそうっす!!!


お願いします、神様
この2人の幸せを永遠に栄えさせ賜え…


妹は一体、どう動くのか…2人の幸せを阻む壁にならなきゃ良いが…

321:名無しさん@ピンキー
08/01/07 22:55:27 0L1/EDJ/
待ち焦がれてもう心臓止まるかと思ったよ
読んだら読んだで萌え死ぬかと思ったよ

仮面が剥がれて落ち込んで姉貴依存に走った妹が、狂って二人の幸せを壊しませんように……
……この二人、引き剥がされたら心中してしまいそうだなあ

322:名無しさん@ピンキー
08/01/08 00:07:07 XqLjh7jk
姉も妹も母も みんなしあわせ

これがいい

323:名無しさん@ピンキー
08/01/08 10:58:03 mHEzsACS
しかし全員ヤンデレタイプだからまとめて依存されると
間違いなく新治は誰かに刺されて死ぬ

324:名無しさん@ピンキー
08/01/09 03:15:31 w3PWEJH9
GJっす

俺は恋愛対象になるのは綾子だけの方がいいよ派
ここまで愛し合ってるのに浮気なんて考えられない
妹にはあくまでも自立のサポートをしてあげる程度でいい
姉妹丼とかも・・・望んでる人はいるだろうが・・・自分は反対かな

325:名無しさん@ピンキー
08/01/09 08:37:52 vRDEQeEf
おまえら落ち着けってばさw

326:名無しさん@ピンキー
08/01/09 11:15:15 c5cEfbBs
書く人の好きなように書かせろや
何々には反対だ、やめて!とか自重しろよな

327:名無しさん@ピンキー
08/01/10 21:19:40 ZWR+utL+
読み手がSSに依存しちまってるから難しいだろうな・・。

328:名無しさん@ピンキー
08/01/10 22:23:29 7G/bqm31
誰上手

329:名無しさん@ピンキー
08/01/11 00:12:24 kSWn4G8R
誰もが可愛いと思う
上村先輩は
手を繋ぐ彼に依存

つまらんな…ごめん

330:名無しさん@ピンキー
08/01/11 01:45:03 8hLTLL+C
相変わらずこのスレはゲーパロ氏に依存しっぱなしなんですね


331:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:08:53 nJTYjqOZ
一事言わせてくれ。

>『こちら遠江国掛川藩岩本道場』
ここで吹いた。盛大に。

332:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:54:37 kSWn4G8R
↑誤爆?

333:名無しさん@ピンキー
08/01/12 00:06:01 xutxp/Vg
>>332
ちゃんとSSを読み返すんだ

334:名無しさん@ピンキー
08/01/14 00:56:38 V6WnkaL1
保守

335:名無しさん@ピンキー
08/01/15 12:58:33 b8eadZAK
>>331
伊良子のバカはどこだ!!

作者さんは間違いなくアサメ常駐者。

336:名無しさん@ピンキー
08/01/17 01:22:10 MTvXnNUg


337:名無しさん@ピンキー
08/01/17 13:52:56 gWu8VqzA
過度な展開予想はいけないぜっ。

保守

338:名無しさん@ピンキー
08/01/20 15:41:18 CFw4mKqL
保守

339:名無しさん@ピンキー
08/01/21 20:29:33 laBglHAp


神降臨↓

340:名無しさん@ピンキー
08/01/21 20:30:35 yXM1PznF
ちょっと神になってくる

341:名無しさん@ピンキー
08/01/21 22:24:42 FXlw3yiS
>>340
無茶しやがって……

342:名無しさん@ピンキー
08/01/21 22:45:27 uSg0yxOk
バカ野郎…

>>340は必ず帰ってくる

大きくなって…俺達を…楽しませてくれると……信じるんだ………

343:名無しさん@ピンキー
08/01/21 23:44:49 5K/YKkDs
>>340に依存するスレ。

344:名無しさん@ピンキー
08/01/22 18:45:28 9w7/jI9O
さあ皆、>>340に身を任せようじゃあないか

345:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:02:05 hPNkhdI2
投下します。

男が依存。
修羅場展開あり。
長文初。

駄目な場合はスルーしてください。

346:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:04:49 A4fazaHW
 悲劇というものはそれだけでは終わらないものだ。
 一つの悲劇が別の悲劇を産み、連鎖していく。


 一人の女性が、不倫の果てに相手の男と心中した。
 世間は彼女を、愛を貫いた悲劇のヒロインとして持て囃し、その悲恋歌に涙した。
 悲劇のヒロインがいれば、当然のように悪役が必要となる。
 彼女の遺族にその役割が求められた。
 自分から気持ちが離れていたにも関わらず、離婚を了承しなかった夫。
 離婚の足枷となり、実の母親を死に追いやった息子。
 この二人を非難する事で、多くの人々は、その悲劇に対する鬱憤を晴らした。

 その事が新たな悲劇を産む事になる。

347:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:06:21 8vsfq6tD
 高校生、新田圭一には殆ど表情がない。まるで能面のような、無機質な顔をいつもしている。
 昔からそうだった訳ではない。
 彼がこうなったのは、母親の心中事件以降だ。

 笑えば、実母の死を何も感じない冷血な子供。
 泣けば、周囲に同情を買う演技をする計算高い子供。
 怒れば、自分の責任を弁えずに周囲に当たり散らす身勝手な子供。
 次第に彼が表情を忘れていったのは、自然な流れと言えるだろう。

 そんな彼にも表情を出せる相手がいる。

 須藤里沙、彼の幼馴染みにして、彼が心を許している唯一の相手だ。


 「おはよう、圭ちゃん!」
 「あー、おはよう…」
 父親が仕事の関係で殆ど家にいない為、圭一が朝一番に挨拶する相手は決まって里沙だ。
 何時もの事であっても、明るい彼女の声に圭一は救われる気分になる。
 「ちゃんとご飯食べた?元気出ないよ!」
 「ちゃんと食べてるって、子供じゃないんだから。」
 少しだけ表情を緩めて答える。
 毎朝の定例のようなやり取り、それが圭一を不思議と落ち着かせた。
 「じゃぁ、学校に行こう、遅刻しないようにね!」
 里沙に引きずられるように、二人は学校へと向かった。

 時折、圭一は不安になる。
 里沙が自分をどう思っているのか、依存しているだけの自分に対して、どんな感情を抱いているのか…。
 それは恐怖を感じさせる不安だった。
 今の圭一にとって、里沙がいない生活など考えられないモノなのだから。


348:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:08:08 8vsfq6tD
 圭一が学校に着くと、下駄箱の中に一通の手紙が入っていた。
 その手紙は、ここしばらく投函されているものと同一のモノだ。

 「それ、ラブレターってヤツ?」
 目敏く手紙を見つけた里沙が圭一に尋ねる。
 「そんなんじゃないよ」
 手紙を手早くしまいながら、圭一が答える。
 「え、まだ中身も見てないのに…」
 そこまで言ってから、圭一の顔が曇っているのが里沙には分かり、言葉を切った。
 小学生時代、彼の下駄箱には良く罵りの手紙が入れられていた事を思い出したからだ。 
 「また、虐められてるんじゃ…」
 不安そうな里沙の声が圭一の耳に届く。
 「そんな事はもうないよ。」
 里沙を不安にさせない為、圭一が空元気を出した声を出す。
 そんな時の表情の作り片を知らない圭一がやっているのだから、当然に不自然になっているし、更に里沙を不安にさせた。
 「授業始まっちゃうから、早く行こう。」
 それ以上の追求をかわす為、強引に話しを終わらせるようにして、圭一はやや小走りで自分の教室に向かった。

 教室の自分の席に着いた圭一は、今朝の手紙を取り出した。
 内容は分かっている。

 須藤里沙から離れろ、須藤里沙に近付くな、貴様が須藤里沙を不幸にしている…等々の、誰かしらの嫉妬によって書かれたような内容だ。

 その日の内容も特別に変わった内容ではなかった。
 ただ一つ、放課後に体育館裏で待つ、との一文が目新しく、圭一の興味を引いた。

 どんな奴が、飽きもせずに毎回毎回手紙を出しているのか、その事に興味が沸いた。

 行ってみるか…、小さくそう呟く。

349:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:10:10 8vsfq6tD
 放課後、体育館裏で圭一を待っていたのは、見知らぬ下級生の女子だった。
 流石に自分とは関係ないとも思ったが、彼女が自分に向ける視線が、手紙の主である事をありありと告げている。
 嫉妬、殺意、憎悪、嫌悪、侮蔑、様々な負の感情がありありと彼女の目に宿っている。
 普通の人ならそれだけでたじろぐだろうが、圭一には慣れた視線であり、特に何かを思う事はない。
 むしろ、相手の正体が知れた事で、既に興味を失わせていた。

 それでも来た以上は、何かを話さなければいけない。
 「あの手紙を書いたのは君?」
 声に感情を感じさせない、圭一独特の喋り片で問い掛ける。
 その喋り方が相手の不快さを増させたようだ。
 「そうです!」
 まるで吐き捨てるように答えてきた。
 「ああ、そう。」
 自分を蛇蝎の如く嫌っているのは良く分かるが、圭一にとって見ればどうでもいい事、既に帰る気になっている。

 「手紙は読んだんでしょう!」
 圭一の言い方のせいか、相手の語気が荒くなる。
 「用件は分かっているハズですよね!」
 「用件…、里沙から離れろというのか。」
 声を荒げて熱弁を奮う女生徒、それに対してまるで表情を変えずに平坦に話す圭一、その事が更に女生徒の怒りを煽って行く。

 「なら、とっとと里沙先輩から離れろ!」
 「それは出来ない。」
 感極まったような怒鳴り声にも、間髪入れずに即答する。
 「な…!」
 「里沙は俺にとって大事な存在だ。俺から離れる事はありえない。」
  棒読み口調、これが芝居だったら絶対にNGが出る。
 だが、そんな中にも、揺るがない意思と相手に反論させない強さがある。

 「言いたい事は終わり?」
 何時通りの無機質な無表情で、相手の様子を伺う。
 特に反論はしてこないようだ。
 その事を確認すると、俺は帰るから、とだけ相手に告げ、その場を後にした。

350:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:11:04 8vsfq6tD
 校門では里沙が待っていた。

 「先に帰って良かったのに。」
 「ちょっと心配しただけだから、気にしない気にしない!」
 心配したと言う割りには、圭一の疑問にやたら笑顔で答えてくる。

 「どうしたの?何か嬉しそうだけど…。」
 「うん!ちょっと‥いや、かなり嬉しい事があったからね~♪」
 今に鼻唄でも歌い出しそうに答えた里沙、圭一はその姿に圧倒されていた。

 「今日は何が食べたい?私が何でも作るよ!」
 「えっ、え?」
 「そうだ、買い物していかないとイケないネ!スーパーに寄ってから帰ろう♪」
 戸惑う圭一を気にする事もなく、里沙は圭一の腕を取ると、終始ご機嫌に歩き出した。

 圭一にしても、ハイテンションな里沙相手に戸惑ってはいるものの、彼女が喜んでいれば、自分も少しだけ楽しい気持ちになれた。


351:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:12:19 8vsfq6tD
 仲睦まじく帰宅していく圭一と里沙の姿を、憎悪をもって見送っている女生徒がいる。
 ついさっき、圭一にしてやられた女生徒、名を小野瀬真由美という。

 噛み締めた唇、握りこんだ拳から血が滴り落ちる。
 「何であんな男に…!」
 怨嗟の声が口から漏れる。

 彼女が里沙と出会ったのは同じ委員会での事。
 右も左も分からず、戸惑い混乱していた自分を助け、教え導いてくれたのが里沙だった。
 それからと言うもの、視線は気付けば里沙を追っていた。
 テキパキと仕事をこなし誰にも媚びずしっかりと自分の意見を言う、その姿を見ていたのだから、同性としての憧れが恋心に昇華するのに時間は要らなかった。

 同性の壁は想像以上に高かったし、何より里沙に嫌われる恐れがある。
 自分の気持ちを抑え、ただの後輩としてだけ接していた。

 そんな中で知ったのが新田圭一の存在だ。

 もし、彼がもっとちゃんとしていれば、里沙に釣り合う容姿、成績、体力を持っていれば、彼女も里沙の事を諦めただろう。
 だが、新田圭一はそうではない。
 無表情でクラスから孤立し、周囲から腫れ物扱いを受けている。その上に母親を死に追いやった過去まであるという。

 それを知った時、彼女の中で何かが弾けた。
 何故、自分は我慢しなければイケないのに、そんな男が傍にいれるのか、里沙先輩はあの男に騙されているか、何か弱みを握られているに違いない。

 今、小野瀬真由美の中での新田圭一は、憧れの人を縛り付けて自分との恋路を邪魔する障害物でしかない。

 「里沙先輩、すぐにその男を始末しますから」
 腕力で勝てずとも、方法は幾らでもある。
 「そうしたら、私の気持ちに気付いて下さい」
 万感の想いを込めて、そう願った。

352:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:14:34 8vsfq6tD
投下終了です。
上手く共依存を書ければと考えてます。

353:名無しさん@ピンキー
08/01/27 00:26:38 dMRKT/Qs
>>352
これは素晴らしいSS!
続きにwktkして待ってます。

354:名無しさん@ピンキー
08/01/27 01:07:30 Sfz5FFV2
>>352
乙。
出だしの心中と世間の~辺りの展開が無理やりな気がするが
3人とも相手に依存しているようで今後に期待。


355:名無しさん@ピンキー
08/01/27 01:09:42 P6xPGIfY
里沙はやっぱり覗いてたんだろうなぁ
もしそうだったら真由美はとっくに嫌われてるかも
続きが気になるな!

356:名無しさん@ピンキー
08/01/27 05:10:31 bMj72oko
楽しみ。

357:名無しさん@ピンキー
08/01/27 22:39:02 S36paI66
>>355
なるほど。「嬉しい事」ってのはそれか。

358:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:37:21 ztFgcjAx
GJ!
これは続きをwktk。

<私が私でいられる時>続き行きます。
今回は、「お漏らし」がちょっとあるので、苦手な人は回避推奨。

359:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:38:46 ztFgcjAx
<私が私でいられる時>・13

♪ O-E-A-E-OO-、O-E-A-E-OO-……

悲しく伸びる美しい母音。
主題歌が始まる。
私は、テレビモニターを見つめた。

♪ あの時最悪のブラクラが向こうから会いにきたのは
♪ ぼくらのセキュリティはこんなにも脆弱だと笑いに来たんだ

♪ jpgだと思ってもexe偽装という真実に惑うよ
♪ 拡張子の何を信頼して開けばいい

♪ フォーマット:C(シー) フォーマット:C
♪ このネットの無数の罠の一つだと
♪ 今の僕には理解できない

♪ フォーマット:C フォーマット:C
♪ 恐れを知らない初心者のように
♪ クリックするしかない
♪ フォーマット:C……

「フォーマット:C……」
知らず知らずのうちに口ずさんでしまう音楽。
昨日よりも綺麗に歌えた、という自覚に、私は唇の端に笑みを浮かべた。
“あの人”から借りたDVDを、もう何度見ただろうか。

360:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:39:17 ztFgcjAx
TVアニメ<おたくの>。

絶望的にはびこる21禁ネット犯罪と、コンピューターウイルスとに業を煮やした政府が、
「大人が都合よく利用しやすい少年少女を育成する部活動」に属さない、
パソコン好きの帰宅部生徒たちを、15人単位のチームに編成、
インターネットを使ったウイルス/ブラクラバトルに投入。
バトルに敗れたチームは全員逮捕、勝ったチームも代表選手を逮捕、
という過酷な消耗戦を強制する筋書きのアニメ。
その主題歌「フォーマット:C(シー)」の美しい旋律とあいまって、大人気を博した。

私も、“あの人”に貸してもらってから、ファンになった。
というより、“あの人”の選ぶものは、みんな、とても素敵。
私は、うっとりしながら画面に見入った。
ドアをノックする音が聞こえるまで。
「彩ちゃん、いる?」
「……いない……!」
子供のような返事が反射的にこぼれたのは、それが、期待した声ではなかったからだ。
母親のことは、今でも苦手だ。
昔よりは、ずっと身近に感じるけども。
ここ数ヶ月の生活の中で、この女(ひと)はこの人なりに、
私や<家族>のことを考えてくれていることを理解した。
でも、まだ私の部屋の中に入れる気にはなれない。
それは、この人も理解してくれていて、
「そう……。朝ごはん、出来たんだけど……」
というか細い声が返された。
私は、ちょっとつまったけど、結局昨日と同じ答えをする。
「……食べたくない……」
実際、おなかはあまり空いていなかった。
でも、そう答えてしまうのは、他にも理由がある。
義母さんに、そう返事をしたら─。

361:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:39:48 ztFgcjAx
「……入るわよ」
─“あの人”が来てくれる。
ドアの鍵は閉められていない。
“あの日”、錯乱した私が三日間も篭城したせいで、ドアの鍵は外されたから。
でも、今、私は、もし鍵があっても締めようとは思わないだろう。
だって、そんなことをしたら、“あの人”が入ってこれなくなる。
そう。
「ん……おはよう……」
「おっ、おはようございますっ……!」
私は、跳ね上がるように立ち上がって、すぐに、うっとりとした。
入ってきたのは、私より、一つ年上の女の子。
私に似た、女の子。
でも、

─なんて綺麗なんだろう。
─なんて魅力的なんだろう。

「ん……。サンドイッチ持ってきたけど、食べる?」
「は、はいっ……」

義母の呼びかけを断ると、この女(ひと)が来てくれる。
手作りの卵サンドと、温かいココアと一緒に。
ベッドに並んで腰をかけて一緒に食べる。
“あの日”以来の習慣。
私の、ドキドキする、そしてキラキラする時間。
左隣に腰掛ける女(ひと)を、私はまぶしいものを見るように盗み見た。
私に似た、でも何百倍も素敵な女性。
「……ごちそうさま、でした……」
「はい。おそまつさま」
私が卵サンドを全部食べ終えたことを認めると、
<姉>は、にっこりと笑った。
「さ、学校よ、彩ちゃん。支度して」
「は、はいっ……」
私は、立ち上がって、着替えはじめた。
なるべく、きびきびと見えるように、一生懸命に。
学校に行くことは、もう、私にとって苦痛ではない。
だって……。
「ん。じゃ、いっしょに行きましょうか」
「はいっ!」

―私の<姉>。
龍ヶ崎……いいえ、石岡綾子お姉さまといっしょに歩けるんですもの。

362:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:40:30 ztFgcjAx
「―彩ちゃん……さ、今度の土曜、どこか行かない?」
「あ、ごめんなさい。第三土曜は、ボランティアなんだ」
「あっ、そ、そうだったよね、ごめん、ごめん」
「うん、よかったら、別な曜日に、誘ってね」
「ええ」
たわいのない会話。
……意味のない会話。
写真週刊誌の記事は、結局、中傷的なものだとされた。
喫茶店の写真が、喫煙しているものではなかったことが、決め手となった。
パパは出版社と争い、こないだ小さな謝罪記事が載ったことで、
騒動は一区切りが付いた。
でも、私は、……それまでの私ではなくなったことを、自分でよく知っていた。
いいえ。
気が付いた、と言ったほうがいいのかな。
こうして、笑っているクラスメイトたちが、本当は全然友達でも味方でもなかったということを。
街の人たちも、TVを通じてファンだと言ってくれていた人たちも。
─“あの日”。
写真週刊誌に載った「喫煙」写真は、私の世界を変えた。
雑誌の発売日、学校の皆がいつもと違うのに気がついたのは、
二時限目と三時限目の間の休み時間だったかな。
「何、―どうしたの?」
「あ、うん……なんでもないよ……」
違和感。
いつもは争うようにして私の周りに集まってくるクラスメイトの多くが、今日は私を遠巻きにしている。
私のまわりにいた女の子たちも、一人、また一人と離れて行く。
それが、クラス中に、そして学校全体に広まったのは、昼休みだろうか。
「龍ヶ崎、……ちょっと職員室に来なさい」
担任の先生が、呼び出した先で見せられた、その見開きページ。

「<彩ちゃん>が喫煙? <ホワイトプリンセス>龍ヶ崎彩の地元でささやかれる黒い噂」

そのタイトルの元に書かれている記事の人物は、私だった。
カン・ナム・エクスプレス・カフェでぼんやりと座っている、私の写真。
私のわがまま振りを伝える「友人」のコメント。
私は、悲鳴をあげ、そして、先ほどまでのみなの反応
─あいまいな表情と、遠巻きの視線と、ひそひそ話の意味を知った。

煙草は、吸っていない。
でも、わがままは─確かな事実だった。

363:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:41:01 ztFgcjAx
「綾ちゃんって、わがままなんですよね。
クラスメイトの子に夜中の二時にいきなり電話かけてきて、
明日のボランティアに参加したいから手配してって、突然命令したり、
そうかと思うと、そうして無理やり参加したボランティアも、途中で帰っちゃったり。
なんだか、お姉さんも振り回されてるみたいですよ。」

誰が、記者のインタビューに答えたのだろうか。
わからない。どうでもいい。
大曾根さんは、後で、絶対自分じゃないって泣いて言っていたけど、
誰が言ったのかなんか、どうでもよかった。
それは事実だったから。

私は─わがままなで、嫌な子。
優しい、いい子じゃない。
……ママが誉めてくれた、優しい、いい子じゃない。
その事実を突きつけられて、私の精神(こころ)は、砕けた。
そして、三日間、自分の部屋に篭城して、
─三日目に、この女(ひと)に出会った。

そう。
突然、出会った、としか言いようがないくらいに、
何年も同じ屋根の下で暮らした義姉は衝撃的な存在だった。
うん。
覚えている。
ろくにご飯も食べず、眠ることも出来なかった頭はあまり覚えていないけど、
心は、よく覚えている。

364:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:41:41 ztFgcjAx
「彩ちゃん、いい加減にしなさいっ!」
……いきなり、叱られたんだ。
“あの日”職員室で倒れて気を失い、家に戻った私は、
学校にも行かず、初日以外は、両親と話をしようともしなかったけど、
最低限、トイレだけは部屋の外に出ていたから、
パパも、義母さんも、ドア越しに声をかけ、私が部屋から出てくるのを待っていた。
悩みに悩んだ末、それが一番いいと考えたのだろう。
でも、この女(ひと)は、ちがった。
叱ってくれた。私を。
ドアに耳を当て、廊下に誰もいないことを確認し、
トイレに行こうとして、私は、この人に行く手を阻まれた。
そして、叱られた。
呆然と見上げる私に、続いて頭の上から降ってきたのは、
「部屋に閉じこもっていても、何もよくならないでしょう。
お父さんが待っているわ。階下(した)に降りるわよ!」
という言葉だった。
─何がなんだか、わからなかった。
わからなかったけど、涙が出た。
ううん。
私は、わかっていたんだ。
これが、この言葉が、三日前に突然なくなってしまった「日常」だと。
写真週刊誌の記事の形をとって、私の前から突然消えてしまった「日常」から戻ってきてくれた言葉だと。

遠巻きに見詰める視線。
遠くから聞こえる声。
それは、本当は私を快く思っていなかった人間だけでなく、
私を好いていてくれている人間でも同じだった。
私を嫌いな人間は、自分が傷つくことを恐れて、
私を好きな人間は、私が傷つくことを恐れて、
どちらも、遠巻きにして吊るし上げられた女の子を囲んだ。
それは、遠ざかる「日常」。
人は、一人では「日常」を生きていけない。
なぜなら、人は群れる動物だから。
だから、私は、パパと義母さんの優しさといたわりをドア越しに感じながら、
部屋から出られなかった。
だから、私は<姉>の声を聞いて、泣き出した。
こんなに近くから、叱り付けられたから。
こんなに近くから、叱り付けてくれたから。
そして、
……私は。
……私は……。
安堵のあまりに……お漏らしを、した。
<姉>の前で。

365:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:45:26 ztFgcjAx
トイレに行こうと思っていた我慢の限界。
意思の力では止められない、生理現象。
太ももをつたう、温かい感触。
フローリングの床に広がる、液体。
開放感と、脱力感と、一瞬遅れて来る激しい羞恥心―感情の波。
私は、今、自分が作り出したばかりの水溜りの上にへたり込んで、泣き出した。
「もう、いやー! みんな、嫌い! 嫌い!」
私は、金切り声をあげた。
自分の声が、誰か、もっと小さな女の子の悲鳴のように聞こえる。
先ほどの、安堵の涙ではなくて、恥ずかしさと、情けなさと、
今近づいてきてくれた「日常」が、また去っていってしまう恐怖に、
私は目をつぶって、泣き叫んだ。

─でも。
「日常」は、行ってしまわなくて。
“この人”は、そこに居てくれて。
私がお漏らしをしても、そこに居てくれていて。
「彩ちゃん……」
子供のように泣きじゃくる私に、また声をかけてくれた。
そして、“この人”は、私の上にかがみ込んで。
「……大丈夫」
と抱きしめてくれたんだ。

366:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:46:14 ztFgcjAx
「……ん。これでよし。じゃ、今度は彩ちゃんの番ね……」
<姉>は、下洗いしていた私の下着とパジャマを軽く絞ると、洗濯機の中に放り込み、こちらを見た。
裸の私は、お風呂場のタイルの上で子供のように立ちすくんでいた。
本当に、小さな子供のように。
「身体、洗える?」
「あ……」
声が出ない。
また、涙が出る。
「ん……。いいよ、今は無理しなくて。洗ってあげる……」
「ふあっ……」
何か言おうとしたら、変な声が出た。
<姉>は、泣きじゃくる私を抱きしめた。
「ごめんね。もう、大丈夫」
「あ……」
その瞬間、私の頭の中にあったのは、羞恥心。
“あの日”から、三日間、お風呂に入っていない。
それに、今、お漏らしをしたばかりだ。
でも、<姉>は、黙って、私の身体を洗ってくれた。
細くて優しい指が、タオル越しに私の肌に触れる。
甘くて優しい髪の匂いが、私の鼻腔をくすぐる。
綺麗で優しい微笑が、私の瞳を釘付けにする。
ああ。
午後の優しい日差しが、バスルームの曇りガラス越しに差し込む。
Tシャツとショーツだけを身にまとって、私の身体にシャワーをかける女性の後ろから。
それは、まるで女神さまの背負う後光のようで─。
そして、私は気が付いてしまった。
この女(ひと)、石岡綾子お姉さまが、どれだけ素敵な女性だったのかを。
いいえ。
素敵な女性に変わっていたのを。
そして、その女の人は、私を、いつもの「日常」に戻してくれた。
私のために。
自分が傷つくことも、私が傷つくことも、ためらわない強さで。
それは、その時の私にただ一つ必要なもので、
私は、私に戻れた。
……そして、それ「以上の私」が「ある」ということにも、気付いてしまった。

367:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:46:44 ztFgcjAx
どうして、見えなかったんだろう。
どうして、気が付かなかったんだろう。
どうして、認めなかったんだろう。
いつの間にか、変わってしまった、この女(ひと)の魅力を。
私に似ているけど、私以上の人。
私によく似ているだけど、私ができないことが出来る人。
私にそっくりだけど、優しい、いい娘な女(ひと)。

(ママ……)

死んだママが、そして、ママが私になりなさい、と言った理想の女の子。
優しい、いい娘。
それを具現化した女性が、目の前に居た。
一度、気が付いてしまうと、それは、
もうどうしようもないくらいに強く私の心を締め付けた。

(コノ女(ひと)ノヨウニ、ナリタイ)

それは、理想の私。
私がなりえる可能性のある中で、一番良い私。
ママのような、私。
パパが一番大好きだったママのような、素敵な私
今の私に出来なくて、でも、いつかならなきゃならない私。
私のあるべき姿の、私。
そう。
それは、写真の中でしか会えないママよりもずっと身近に、もっと身近に居た。
私と一歳しか違わない、私と同じ高校生の女の子の中に。

……だから、私は……。

368:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:47:19 ztFgcjAx
「彩ちゃん……」
「は、はいっ!」
いつの間にか、つまらない授業は終わりになっていたらしい。
放課後の教室で、私は、お姉さまが隣に立っているのに気が付いた。
慌てて立ち上がる。
「ん。……あのね、悪いけど、今日、先に帰ってね」
「え……」
お姉さまは、照れたように微笑んだ。
「あ……お兄さまのところに……行くんですか……」
「う、うん、ちょっとね……。夜には戻るから」
「そう……ですか……」
「ごめんね、夕飯は私が作るから……」
「……大丈夫……です。私が作っておきますから、八時くらいまで、大丈夫ですよ……」
“あの日”以来、龍ヶ崎家の中心は、綾子お姉さまになった。
家事などは、私もずいぶん手伝い始めたけど、そういうものではなく、
龍ヶ崎家の<主婦>は、お姉さまだ。
そして、その信頼感から、一時期禁じられていたお兄さまとの逢瀬も、黙認されるようになった。
今日のように、学校帰りにお兄さまの家に行くことも。
「あ、ありがとう!」
お姉さまは、嬉しそうに、本当に嬉しそうに微笑んだ。
「……」
私は、その笑顔に呆けたように見とれ、それが大きなバッグを担いで去って行くのを見詰めた。
そして、がっくりと、肩を落とした。

……お姉さまには、恋人がいる。
私も知っている人だ。
新治お兄さま。
お姉さまと同じ、石岡と言う苗字の、男の人。
お姉さまにふさわしい、素敵な男の人。
綾子お姉さまは、新治お兄さまに出会って、変わった。
私と、そんなに違わなかったはずの女の子が、理想の女性に変わった。

─私と、どこが違うのだろう。
─私と、何が違うのだろう。
わからない。
答えの出ない自問は、一人で帰宅しても終わらなかった。

369:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:47:55 ztFgcjAx
♪ ぴ、ぴ、ピラルクー、ぴっくるんるん
♪ ぴ、ぴ、ピラルクー、ぴっくるんるん

TV画面に、<恋のピラルク伝説>が流れるのを、ぼんやりと眺める。
朝起き掛けに見ていた<おたくの>と同じく、お姉さまから借りたDVDだ。
つまり、もとは、お兄さまの。
お姉さまが、お兄さまのことをもっと知りたいように、
私も、お姉さまのことをもっとよく知りたい。
だから、私は、お姉さまに近付き、同じものを同じように見て、
同じものを同じようにしている。
だけど。
お姉さまは、もっともっと、ずっとずっと魅力的になって行く。
私が、真似しても、真似しても、追いつかないくらいに。
それは、お兄さまがいるから。
綾子お姉さまは、新治お兄さまと二人で、どんどん成長している。
それは、私だけが知っていることではない。
最近は、皆が、認めていることだ。
お姉さまが、素敵な女性だということは、もう学校の皆が言っている。
お兄さまも、そう。
お姉さまは、前よりも、ずっとずっと綺麗に、美しく。
お兄さまは、前よりも、ずっとずっと格好良く、逞しく。
二人は、並んで歩きながら、寄り添いながら、重なり合いながら、お互いを高めている。
そして、私は、私だけは、取り残される。
二人をまぶしく見つめるだけの、龍ヶ崎彩は。

……私は、身震いをした。
ああ。
今、耳から聞こえる音楽は、お姉さまの携帯の着信音だった。
お姉さまの、一番大事な人からの電話を告げる音。
それを聞いたときのお姉さまの笑顔を思い出して、私は涙を流した。

370:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:48:39 ztFgcjAx
なぜだろう。
どうしてだろう。
私は、お姉さまみたいになれないのだろう。
私は、理想の私になれないのだろう。
─答えは、分かっている。
私には、新治お兄さまがいないから。
お兄さまのような、人がいないから。
お姉さまは、お兄さまと愛し合い、心と身体を重ねることで成長している。
今日も。
お姉さまが、肩に担いでいたバッグ。
それは、昔の罪深い私が担がせていた私の荷物ではない。
入っているのは、衣装。
お兄さまの好きな、お姉さまの服。
巫女服だろうか、ゴスロリだろうか、もっと他の服だろうか。
お姉さまは、それを着て、お兄さまとセックスする。
今、お姉さまは、きっとお兄さまの下で、あられもない声をあげている。
大好きな人と交わって、自分を高めている。
今でさえ、私の理想を具現化しているのに、もっと、もっと高く、遠くへ。
「―!!」
私は、目をつぶり、耳を塞いだ。
<恋のピラルク伝説>から。
だけど、脳裏に焼きついたその音は、消えてくれない。
お姉さまの嬌声も。
─お姉さまは、お兄さまと会えない日は、オナニーをする。
お兄さまと電話で話しながら。
お姉さまの部屋の前で、ドア越しに漏れ聞こえるその声を聞きながら、私は何度も自慰をした。
私の理想の女性が、まさにその女性を生々しく解放する瞬間を聞きながら。
自分がいつかなりたい、成熟した牝の声を聞きながら、何度も達し、そして泣いた。
あの女(ひと)になれない、自分に。
私になれない、私に。

371:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:49:32 ztFgcjAx
「……」
いつの間にか、DVDは終わっていた。
白い画面をぼんやりと見つめ、私はのろのろと立ち上がった。
身体の芯が熱い。
自分の性器が淫らな蜜を吐いているのを自覚した。
「ショーツ、洗わなきゃ……」
自分の言葉に、何をすればいいか思い出して、階下に行く。
洗濯物は、もう一人で出来るようになった。
お姉さまのやっていたこと、ママがやっていたこと。
ちょっと前までできなかった、やらなかったことが、どれだけ大事なことか、
今の私には悲しいくらいに理解できていた。
ショーツを脱いで、お風呂で下洗いをする。
洗濯籠の中のものと一緒に洗濯機に入れようとして、私は動きを止めた。
洗い物の中にある、薄いブルーのショーツと、ブラジャー。
私の物でも、義母のものでもない。
綾子お姉さまの、下着。
私は、震える指でそれを手に取った。
甘やかな、若い、だけど十分に成熟した牝の匂い。
「―!」
脱いだままの下半身の中心が熱く蕩ける。
「ん……お姉さまぁ……」
理想の女性の下着で、私は何度も自慰に耽った。
お姉さまが、こっそり持ち帰ったお兄さまの下着で自慰をしているときと同じくらいに、狂おしく。
指を自分の女性器に伸ばしかけて、私は、不意に目を見開いた。
天恵のように、脳裏に走った衝動。
「お姉さまの下着……私がつけたら……」
ごくり、と喉が鳴るのを私は止められなかった。
洗濯前の、お姉さまが昨日身に付けていたショーツを履くのも。
一回り以上大きなサイズのブラジャーを付けるのも。
そして、理想の女性の下着を身に付けた私の身体を、さらなる「天恵」が稲妻のように貫いた。

372:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/01/28 00:51:43 ztFgcjAx
(三次元の女の子は、二次元の女の子に勝てない……)
(おっぱいも、お尻も厚みのない萌え少女に……)
(……だったら、どうする?)
(なっちゃえばいいじゃん! 萌え少女に!!)

アニメ<ノース・ドラゴン>のヒロインの一人、
<魔法のコスプレイヤー・工藤建子>の決めセリフ。
やっぱりお姉さまから借りて、見ていたその言葉は、突然に私を襲った。
そうだ。
なっちゃえば、いいんだ。
お姉さまに。
私が。
石岡綾子に。
龍ヶ崎彩が。
私は、お姉さまの部屋に駆け込んだ。
無人の部屋の中で、私は、それを手に取った。
お姉さまの匂いがする、服を。
お兄さまが愛する、服を。
二人が交わるときに、愛し合うときに、成長するときに使う服を。
身に付ける。
整える。
鏡に映す。
─髪の毛がちょっとだけ、お姉さまより長い。
ハサミを取り出して、切った。
─うん。
完璧。
お姉さまの下着を付け、お姉さまの服を着て、お姉さまと同じ髪型の娘が鏡の中に居た。
それは、―石岡綾子。
私の、理想の私。
私は、お姉さまのように微笑み、そして家を出た。
冬の夜は早い。もうあたりは真っ暗だ。
<マジ狩る少女ピクル>の格好をした石岡綾子は、新治お兄さまの家に向かって歩き出した。
どうするんだろう。
何をしに行くのだろう。
お兄さまに、セックスしてもらいに行くのかしら。
自分を、もっともっと魅力的な私にしてもらうために。
それとも……?
わからなかった。
まだ、私は、綾子お姉さまの姿をした龍ヶ崎彩でしかなく、
─そして、この姿で新治お兄さまに会ったときに、答えは出るような気がした。



ここまで


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