【貴方なしでは】依存スレッド2【生きられない】at EROPARO
【貴方なしでは】依存スレッド2【生きられない】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
07/10/25 16:58:40 MOuiGlVg
>>1


3:名無しさん@ピンキー
07/10/25 16:59:16 32dM1Wc+
>>1


4:名無しさん@ピンキー
07/10/25 18:46:21 xDEN8RbR
>>1

ついに2スレか……

5:名無しさん@ピンキー
07/10/25 19:08:08 jGcHYmUE
>>1

誰か保管庫作ってくれないかな?

6:名無しさん@ピンキー
07/10/25 20:45:32 0B25mf1E


7:名無しさん@ピンキー
07/10/26 07:36:08 FTn7EWg+


8:名無しさん@ピンキー
07/10/27 16:19:23 9UiAFuwP
保守

9:名無しさん@ピンキー
07/10/27 17:21:57 22ENrOkb
勝手に前スレ埋めてきた

10:名無しさん@ピンキー
07/10/27 18:14:06 GKhE8EQt


11:名無しさん@ピンキー
07/10/27 21:54:18 hVdZ7PSb
>>1乙  

12:名無しさん@ピンキー
07/10/28 04:32:14 JFQApQwt


13:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:14:18 WDSOTnWl
<私が私でいられる時>・5

こつん。
額と額が当たる。
伝わってくる、新治君の体温。
熱はない。
汗も引いている。
よかった。風邪じゃないみたい。
でも、私は、新治君の瞳の中に違和感を感じ取った。
動揺、後ろめたさ、恐怖感。
それは、新治君が女の子に抱いている根源的な感情。
私にはそれがわかる。
昨日、新治君からその理由を聞いたから。
ううん、それよりも、私は新治君の目を見つめるだけで、この男(ひと)の心を覗ける。
なぜって?
それは―私が新治君のことを大好きだから。愛しているから。
犬って、飼い主の感情が読み取れる。
飼い主のことをいつでも見ているから、いつでもその姿を探しているから。
私も同じ。
新治君をいつでも見ているし、いつでも探している。
いつもは一日に五分しか会えないけど、あの日からずっと、私は新治君のことしか考えてない。
だから、私は新治君の心が読めるようになった。
彼が私の心を読めるように。
新治君はまだ私のことを恐がっているけど、心と心はもうつながっている。
後は、身体をつないでしまえば、いいんだ。
そして、私はそれをすることで、新治君を治療することが出来るということも知っていた。
私だけがそれを癒すことが出来るという事も。
だけど、今日の新治君のその感情は、昨日よりももっと大きく異質だった。
だから、私は聞いた。愛しい人の瞳と心を覗き込みながら。
「……新治君、私に何か、隠してるでしょ?」

14:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:14:59 WDSOTnWl
(な、なんでわかるの?)
新治君の心の叫びが、聞こえる。耳で聞くよりも確実に。
至近距離。
おでことおでこが触れ合っている。
吐息がかかる。
新治君は、可哀想なくらいにうろたえている。
大丈夫。
私は、味方だから。
どんなことがあっても、貴方の味方だから。
だって、私は貴方がいなければ私でいられない。
生きていくことさえ、出来ない。
石岡綾子は、貴方の中でしか存在できない女だから。
私は、それをわかってもらう手段を知っていた。
新治君の火照った頬を、両方の手のひらで優しく挟む。
唇を寄せる。
舌を入れる。
唾液を混ぜ合わせる。
昨日よりも、舌は巧みに動いた。
丁寧に、優しく。
執拗に、強引に。
ディープキスで新治君の脳髄をとろとろにとろかせる。
うん、落ち着いてきた。
私はもう一度、新治君の瞳を覗き込んだ。
「―ね、教えて。何か、あったんでしょ?」
新治君は、息を飲んだ。
震える体が、弱々しくもがこうとする。
私は身体を密着させた。
もっと近く、もっと深く。
新治君のもがきと震えが小さくなっていく。
そして、新治君は、告白を始めた。

15:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:15:40 WDSOTnWl
「……そう。あの女が、来たの……」
私は、静かに言った。

あの女、―龍ヶ崎彩。
私の<妹>。
昨日の晩のことを思い出した。
私は、今日の準備を整えていた。
たくさんの心の準備と、少しの品物の準備。
両方とも、楽しい作業。
たぶん、私はにこにことしていたのだろう。それをあの女は見咎めた。
「―ご機嫌じゃないの。男でも引っ掛けたのかしら?」
ふん、と鼻を鳴らすのは、テレビカメラの前では絶対見せない、この女の正体。
「え、楽しそうに見える?」
私は、笑顔を崩さずに聞き返した。
<妹>の皮肉や嘲笑は、飽きるほどこの身に受けてきた。
だから、私は強くなった。
砂漠を彷徨う旅人が、熱や乾燥した空気に耐えられるように。
微笑を保ったまま、顔を向けると、<妹>の顔が憎しみに歪んだ。
「別に─。しょせん、売女(ばいた)の娘も、売女ってことね」
心の中で渦巻く怒りのせいか、言おうとしていることが意味を成していない。
ただ、私を罵倒したいことだけは伝わった。
私はことさらに微笑んで見せた。
言葉ひとつもまともに使いこなせない<妹>に対する、成熟した寛大な<姉>の表情で。
「……いい気にならないでよね、オネエチャン」
それが伝わったのだろうか、<妹>は歯軋りさえしていた。
「何が?」
「あなたは……しょせん、私のニセモノってことよ」
ようやく自分の中から取り出そうとしていたものを掴んだ<妹>は、
その言葉の固まりを思いっきり投げつけてきた。

16:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:16:21 WDSOTnWl
「……なぁに、ニセモノって?」
私は、不穏当なその単語を聞きとがめた。
「なんでもないわ。……あなたにも、明日、わかるから」
<妹>は、にやりと笑った。
「人間ってね、本物を目の前にしちゃったら、
ニセモノには目もくれないのよ」
「ふぅん」
なぜか勝ち誇った笑みを浮かべて、あの女は部屋から出て行った。
あれは、―そういう意味だったのか。
石岡綾子と龍ヶ崎綾。
同じ日、同じ時間に、同じ男の子にデートを申し込む。
どちらかを、男の子に選ばせる。
自分が<姉>よりも優れていると思いたがっている、
そして、それを証明したがっている<妹>の取りそうな策(て)。
だけど、私は取り乱したりしなかった。
なぜって?
だって、その勝負は、私の勝ちだったから。
─新治君は、ここにいる。
あの女との約束を破り、私との約束を守って。

「─でも、新治君は、私を選んでくれたのよね」
私は、世界を手に入れた女王のように自信に満ちていた。
新治君は、ちょっと身じろぎした。
そうだ、とは言えない。
ちがう、とも言えない。
だから、何も言えない。
(僕ハ、タダ、流レサレタダケ。何モ、選択シテナイ)
新治君のおびえた目は、そう言っていた。
でも、私はその目に優しく微笑んだ。
なぜなら、それこそが新治君が私を選んだ証明だったから。

17:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:17:03 WDSOTnWl
「ふふふ。やっぱり、私、貴方のことがよくわかるのね」
「……え」
私が微笑むと、新治君は、びくり、と肩を震えわせた。
大丈夫。
貴方は、自分の意思で、ちゃんと私を選んだの。
たとえ、それが無意識のうちの出来事だったとしても。
それを教えてあげる。
「私が、デートの待合場所を、あの女のように他のどこかではなく、
ここ─貴方の家にしたのは、なぜだと思う?」
「……」
新治君は、ちょっと戸惑ったような表情になった。
「ここが、一番貴方が好きな場所だとわかっていたから」
「!!」
きっぱりと言い切る。そして、微笑む。
龍ヶ崎彩よりも傲慢に、だけどこの世の誰よりも新治君には優しく。
「何かあったとき、貴方はどこかに逃げるより、きっとこの部屋にいる。
私はそれがわかるから、ここを待ち合わせの場所にしたの。
そして貴方は、私がここに来ることを承知で、それでもこの部屋から動きたくなかった。
それは、私のことがあの女より必要だったから」
私と同じことをしようとしながら、<妹>は、致命的なミスをした。
それは、新治君のことをわからない女の犯す間違い。
新治君に、選択の逃げ道を作ってあげなかったこと。
女の子が怖い男の子に、優しい逃げ道を与えようとしなかったこと。
新治君をわかっていれば、自分という選択肢を選ばせるという傲慢が
この男(ひと)をどれほど怖がらせ、萎縮させるか想像がつくはずだ。
だけど、<妹>は、気がつかなかった。
新治君を、理解していなかったから。
彼を、わかろうとしなかったから。
この男(ひと)を、愛していないから。

18:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:17:54 WDSOTnWl
だけど、私は、違う。
私は、新治君の選ぶ選択肢にこだわらない。
私は、新治君に無理やり私を選ばせようとはしない。
新治君は、自由に、何を選んでもいい。
どこに逃げてもいい。
何も望まなかったり、何も選ばないという選択でさえもかまわない。
その先には、必ず私がいるから。
新治君にとって、一番楽で、一番好ましくて、
一番良い選択肢の先には、常に私がいるから。
新治君が動く必要はない。
私のほうが、そう動けばいいのだ。
私にはそれが出来る。
私は、新治君を理解している。新治君を愛している。
だから、新治君が「選ぶ」前に、その答えが分かる。
新治君が動かない、選ばないならば、私のほうがその場所に行けばいいのだ。
新治君にデートを申し込んだあの時、私は<妹>の挑戦のことを知らなかった。
あの女のやったことは、いわば不意打ちだ。
だけど、結果はやっぱり私の勝ち。
戦う前から、それは決まっていた。

「ふふ、もう16:45ね。さっき私が入ってきたときも、もう16:20だったわ。
無意識かもしれないけど、新治君は最初から、あの女とデートする気がなかったのよ。
そして、私のこと、待っていたの。最初から、私のことを選んでいたのよ」
私は、新治君自身が意識していなかった深層心理を解き明かして見せた。
新治君は、息を呑んだ。
図星を指されたように。
「……貴方は、私の<妹>を選ばなかったし、
二人ともから逃げることも選ばなかった。私が昨日言った約束を守りたかったから。
私が、貴方のお母さんとはちがう女だ、ということの証明を目にしたかったから。
……ね、そうでしょ?」

19:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:18:41 WDSOTnWl
催眠術にかかったかのように、新治君がゆっくりとうなずく。
私は微笑をいっそう濃くした。
「ふふふ、いいわよ。教えてあげる。
石岡綾子が、貴方のことを裏切らない女だってこと。
貴方にとって、一生必要な女であるってこと」
そろそろと手を伸ばし、持ってきたバッグの口を開けた。
小さな箱を取り出す。
コンドーム。
最も手に入りやすくて、避妊効率も高い、学生の性行為には一番頼りになる避妊具だ。
ごくり。
目を見開いた新治君が、唾を飲み込む。
「ね。……私と、セックスしましょう。新治君もそれを期待していたんでしょ?」
私は、新治君の身体の中に湧き上がっている性欲を咎めることなく、
むしろいっそう優しい声でそれを肯定した。
「……いいよ。私、貴方のはじめての女になる。
貴方は、私のはじめての男になって。
そして、最後の相手になりましょう。
お互いがお互いの、最初で最後の、唯一の相手に。
私と貴方は、初恋同士の人。それも、お互いが心を読みあうことが出来る。
心でもつながっているのだから、身体でもつながったら、もう一生離れられないわ」
新治君は、がくがくと震え、おびえたように私を見た。
私は、優しく笑いかけ、うなずいた。
……新治君は、こくん、とうなずき返した。
「うふふ。じゃあ、新治君、お風呂に入ってくる?
私は、家でシャワー浴びてきたんだけど、いっしょに入ってもいいよ?」
「いいい、い、いや、ひ、一人で入ってくるっ!」
顔を真っ赤にした新治君は、あわてて部屋から飛び出した。
これも、予想通りの展開。
新治君が戻ってくる前に、私は「準備」しておくことがある。
……私は、バッグの奥を探って、「それ」を取り出した。

20:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:19:32 WDSOTnWl
「……」
「準備」を終えた後、私は、階段を上ってくる足音を聞いた。
足音は、部屋に近づくにつれ、音が小さく鈍くなる。
部屋の前で、それはぴたりと止まった。
「……」
くすり、と笑って私は立ち上がった。
勢いよくドアを開ける。
「!!」
びっくりした新治君に、私は明るく声をかけた。
「おかえりなさい。……さあ、セックス、しましょ」

有無を言わせない。
でも、その手の中に押し込むようにして与える物は、
いつも新治君の望んでいるもの。
女の子におびえる男の子は、それでも女の子と仲良くしたい。
できれば、エッチなことも。
私は、手早く洋服を脱いだ。
「新治君も、脱いで」
「え、あ……ああ」
勢いに飲まれて、新治君は、身に付けたばかりのTシャツを脱いだ。
脱いでから、ちょっとあわてる。
私は、かまわず、ブラとショーツだけになった。
ぎゅっ。
下着姿のまま、抱きしめる。
抱きしめる。
抱きしめる。
……新治君は、おずおずと抱きしめ返してきた。


   ここまで

21:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:20:15 WDSOTnWl
<私が私でいられる時>・6

どくん。
どくん。
心臓が早鐘のように鳴り響く。
下着姿で抱き合うと、互いの体温がじかに伝わる。
「あったかいね」
「……うん」
私は手を伸ばして新治君の髪の毛を梳いた。
少し湿った髪の毛は、私が今まで触ったことのない髪質。
女の子同士で三つ編みを編んであげたり、櫛をかけてあげたりしあうことは何回もあるけど、
こんな髪の毛には触れたことがなかった。
それが、私に「異性」を強く感じさせた。
「キス、して……」
かすれた声で、おねだりをする。
新治君は、すすんで唇を重ねてきた。
そう。
この男(ひと)は、したことがあることや、知っていることには積極的になってくる。
私とのキスには慣れてきた。
それなら、もっともっと私に慣れてくれればいい。
溺れるくらいに。
私が、新治君に溺れているのと同じくらいに。
キスを受け入れながら、新治君の手を取る。
ブラジャーの上に導き、私の手を重ねて、そこに押し付ける。
新治君が、はっとしたように目を見張った。
だけど、私は、私の胸の上に置かせた手に、もっと乳房を押しつけた。
「これ、今日から、新治君のものだから」
唇を離して、すぐに宣言する。
「ん。だから、……脱がせて」

22:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:21:10 WDSOTnWl
フロントホックのブラは、剥ぎ取られるまで随分と時間がかかった。
新治君は可哀想なくらい動揺しながら、自分の彼女のブラジャーを外した。
水色の布きれに包まれていた丸くて白いものが、
その所有者の視線にさらされる。
新治君が、ごくりと唾を飲み込んだ音が聞こえる。
「下も……」
「え……いいの……?」
「見たい、でしょ? 女の子の……私の、おま×こ」
口にするのは恥ずかしかったけど、私は、はっきりとその単語を声にした。
「……!!」
「それとも、見たくない? 怖いなら、明日でも、いいよ?」
「……み、見たい……見たいよ、綾ちゃんの……!!」
ほんの少しの言葉のやり取りで、新治君は私の性器を目にすることに同意した。
自分の意思で。
これも、<妹>や他の女の子には、絶対に出来ないことだ。
龍ヶ崎彩が、もし、私のように身体を使ってこの男(ひと)を篭絡しようと思ったとしても、
あの女は新治君の羞恥心や恐怖心などの心の障壁を乗り越えることはできない。
見せるとしても、強制的に自分の裸を押し付けるしか、ない。
それは、レイプだ。
私は、そんなことはしない。
怯えきった野生の小動物に餌付けするときように、こわがりの男の子の警戒心を解きほぐす。
私の導くまま、真っ赤になりながら新治君はショーツに手をかけた。
するり。
女子高生の滑らかな太ももは、こうしたことに慣れていない手つきの前でも、
簡単にショーツを下へと引き落とさせることに成功した。
「あ……」
あまりのあっけなさに、新治君が思わず声を上げる。
「……」
そして、はじめて見る生身の女の性器に、息を飲んだ。

23:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:21:52 WDSOTnWl
「ふふふ、これが、私の……おま×こ。
新治君のもの。今日から、新治君が、好きにしていいおま×こ」
私は、床にぺたりと座り込んで私の太ももの奥を見上げている。
「ん。もっとよく見せてあげる。でも、その前に……新治君も、脱いで……」
私は、できるだけ優しく、穏やかに言おうとしたけど、最後は声がかすれた。
私も、欲望を抑えているのだ。
愛しい人の、全てを見たいという欲望を。
「あ……」
羞恥心が舞い戻ったのだろう、新治君は真っ赤になった。
でも、一度火がついた情欲は、そう簡単には収まらない。
新治君は、熱しにくい性質(たち)だ。
そして、熱してしまえば、冷めにくい。
熱に浮かされたように、新治君は自分の下着に手をかけた。
「……私も、新治君のを、見たいの」
最後の一押し。
一瞬の躊躇の後、新治君はトランクスを下ろした。
「わあ……」
私は、言葉を失った。
ここまで計算どおりにリードしてきたけど、
男の子のそれを見るのは、産まれて初めて、だ。
そして、私じゃなくても、経験豊富な女だって、きっと息を飲むだろう。
新治君の、天を突いていきり立っている男性器は、ものすごく立派だった。
何年か前に、従姉妹が、赤ちゃんを産んだ。
遊びに行って、抱かせてもらった赤ちゃんの手足は、
ピンク色をして、私の手で全部を握れるくらいの太さだったけど、
新治君のそれは、まさにそれくらいの大きさだった。
色合いも似ている。
まだ穢(けが)れを知らない肌は、なめらかで、でも女の子のものとは明らかに違っていた。
びくびくと脈打つそれを目にして、私はわなないた。

24:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:22:36 WDSOTnWl
「……お、大きいのね。それに、とても綺麗……」
私は思わずつぶやいた。
言ってから、恥ずかしくなって真っ赤になる。
「そ、そうかな……」
新治君もほっぺたを赤くしてうつむく。
そして、二人は、お互いの顔を窺って、―吹き出した。
「新治君、お顔、真っ赤っか。」
「……あ、綾ちゃんだって……」
名前を呼ばれて、私は、もっと気持ちが落ち着いた。
落ち着いただけでなく、軽くなる。
本当の自分、石岡綾子になっているのがはっきりと分かった。
だから、私は、素直に言った。
「だって、恥ずかしいもん」
「ぼ、僕だって恥ずかしいよ」
新治君も、素直に言う。
そんなことを言ったら、目の前の女はどう思うのだろう、とか、考えない。
何を言ってもいい、何をしてもいい。
石岡綾子とはそんな相手なんだ、と、新治君は認識しつつある。
だから、私は自然に微笑み、新治君も笑顔を見せた。
「恥ずかしい……けど、私の裸、新治君に見せたい。新治君の裸、見たい。
いやらしいでしょ、私。でも、それが私の、石岡綾子の本心なの」
「ぼ、僕も……彩ちゃんのを、見たい。」
「ね、お互いそう思ってるなら、もっとよく見せあいっこ、しましょう」
「……う、うん」
照れや、恥ずかしさは消えないけど、言葉にすると気持ちが落ち着く。
新治君とベッドの上に横たわる。
添い寝をしながら、肌をすり合わせるように密着する。
心も身体も裸になって触れ合うと、もっとお互いの気持ちが伝わってくる。
いつのまにか、私は上下を互い違いにして重なっていた。
シックスナインの形。お互いの性器を見せ合うには一番いい形だ。

25:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:23:18 WDSOTnWl
「すごい……男の子って、こんなになるんだ」
近づくと、驚きはさらに増した。
新治君も同じだろう。
互いの性器を顔の前にした二人は、ペッティングをすることさえ忘れて
相手の器官をまじまじと見つめ続けた。
はじめてそれを目にする私にだって、新治君のそれが普通でないことはっきりとわかった。
ピンク色の肉筒は、まるで骨があるかのように固く思えた。
(こんなのが私の体の中に入ってきたら……)
今日、処女を捨てる―ううん、新治君に処女をあげることは決めていた。
それでも、いざ男性器を目の前にすると、性交経験のない女の持つ恐怖心が蘇る。
でも―。
「んあっ……こ、これが綾ちゃんの……」
私の体の下で、新治君が興奮しきった声をあげた。
私の性器を見て、興奮し、欲情した声。
それを聞いて、私は瞬時に覚悟を決め直した。
こんな大きくて、固いのを身体の中に受け入れたら、私のおま×こは壊れちゃうかもしれない。
でも、だから、―どうだっていうの?
壊れたって、血がいっぱい出たって、新治君が入ればいい。
だって、私は、一生、新治君としかエッチしないんだもん。
新治君の大きさに合わせておま×こが広がるんなら、それでいい。
割れ鍋に綴じ蓋。
きちんと重なるようにするためなら、ちょっとくらい壊れてもいい。
身体の傷はすぐに治る。そして治ったあとは、前よりももっと新治君にふさわしい身体になるんだ。
「あっ……綾ちゃん、これって……」
新治君が上ずった声を上げた。
顔の上にある私の性器が、突然蜜をあふれ出させ、その雫が二、三滴、顔にかかったから。
「あっ、ごめんなさいっ……」
「ううん、大丈夫。でも、これって……」
「うん。新治君のことを考えると、私、こうなっちゃうの」
私は、身体の奥底の器官が、今決めた覚悟に賛同しているのを悟った。

26:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:24:20 WDSOTnWl
「……いっつもね、新治君のこと考えると、私のここ、こんなになっちゃうの。
新治君のこれを欲しいって、いつも思っていたの。」
「あ、綾ちゃん……」
「ね、これ、私のここにちょうだい……」
かすれた声に、新治君が息を飲む。
そして、
「……うん」
私を受け入れる一言。
そして、二人は、顔をさらに赤らめながら、協力し合ってその準備を始めた。

「こ、コンドーム、着けなきゃ」
新治君が、顔の汗をぬぐいながら言った。
「うん。……私は着けなくてもいいけど、まだ子どもは作れないよね?」
「う、うん……そりゃ……僕たち、まだ学生だし」
「うふふ、じゃ、それは大人になって、結婚してからね」
「えっ……、う、うん」
どさくさまぎれのプロポーズは、あっさり了承された。
私が新治君のお嫁さんになり、新治君の子どもを生むまでには、
もっともっと新治君と分かり合う必要がある。
お互いが、お互いを自分の分身と思うくらいに溶け合ったとき、
私は、この男(ひと)のつがいになり、その子孫を産むのだ。
今日は、そのための記念すべき第一歩。
新治君が童貞を、私が処女を、お互いに捧げる日。
だから、慣れていなくたって、ちっとも恥ずかしいことではない。
だから、準備万端整えて持ってきたコンドームがなかなか付けられないのは
それも、しょうがないことだったのだろう。

27:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:25:01 WDSOTnWl
「ん……」
私は、焦りながら、手元を確認した。
隣街の自動販売機で買った避妊具は、なかなか愛しい人の性器を包めないでいた。
私がリードしなきゃ、と付けてあげることを申し出たはいいけど、
二回失敗して、これが三個目のゴムだ。
「ええっと……あの……」
新治君がためらいがちに言った。
「な、何……」
私はさらに舞い上がって上ずった声を出した。
「た、多分、それ、ちっちゃすぎるんだと思うよ……」
新治君も上ずった声で言った。
「え……」
「え、Mサイズだと、僕のおち×ちんに合わないんだ」
「……こ、コンドームって、サイズあるの?」
あわてて箱を見る。
たしかに、普通サイズと書いてあった。
「ごめん、最初に言えばよかったけど……綾ちゃんが……」
新治君は、ちょっとためらってから、机の引き出しから紙箱を取り出した。
私が買ってきたのより大きな箱に入っているコンドームは、中身も大きかった。
「し、新治君、使ったこと、あるの……?!」
思わず聞いてしまう。
「う、うん。お、オナニーするとき、時々。
根元をきゅって絞られると、気持ちいいんだ」
「そ、そうなんだ……」
他の女の子相手に使ったんじゃないと知って、ほっとする。
「これ、こうして……」
つけた経験があるだけに、新治君はいとも簡単にそれを装着した。
「……」
「……」
準備が終わる。そして、その先が始まる。

28:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:25:42 WDSOTnWl
私は、ベッドの上で、自分から大きく足を広げた。
正常位。
はじめて、は、この体位に憧れがあった。
錯覚や思い込みの類かもしれないけど、大好きな人を受け入れる、というイメージに、
この体勢はすごく合うものがあったから。
頭の中で、新治君を自分の中に迎え入れることを考えたとき、
私はいつもこの格好で新治君を待っていた。
今のように。
「ほ、本当にいいの……?」
新治君が身体を震わせながら聞いた。
さっき、コンドームをつけたときとはまた形勢逆転だ。
それでいいの。
お互い、得意なこと、積極的になれることをやって、
苦手なこと、消極的になってしまうことは相手に勇気をもらえばいい。
今度は、私が積極的になって新治君を導く番だった。
「うん。いいよ。……ね、新治君」
「な、何?」
「その……入って来るとき……」
「……うん、わかったよ」
最後まで言わなくても、もう伝わる。
新治君は、私の添えた指が導くまま、私の性器の入り口に自分の性器をあてがった。
そして、ゆっくりと身体を私の中に沈めながら、ささやいた。
「行くよ……綾ちゃん……」
私の、すでにシーツまで垂れてしまっているくらいに濡れそぼった女性器は、
その言葉に、新たな熱い蜜をさらに吐き出した。
「綾ちゃん、綾ちゃん……綾ちゃん……」
そして、新治君は、私の願いどおりに、私の名をささやきながら、
私の中に入っていった。

29:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:26:30 WDSOTnWl
潤んだ肉が、強引に割られる。
だけど、破瓜の痛みは、甘美だった。
「ふうっ、ふうっ……あ、綾ちゃん……」
「う……ん、もっと来て……もっと……」
新治君が、私の上で身体を前後に動かす。
「はじめて」でも、男の子の本能が、
そうすることが目的に叶うことにつながるとちゃんと分かっている。
私の身体も、女の子の本能が、
どうすればそれを上手く受け入れられるかをちゃんと知っている。
二人の初心者は、何億年前からずっと続いてきた営みに支えられている。
「あっ……綾ちゃん……僕、もうっ……」
「来てっ! 私の中でっ……私の中にっ……!!」
「くっ、あ、綾ちゃ……」
最後の瞬間、新治君は、私に、名前を呼ぶのを聞かせようとしたのだろう。
だけど、私は―その唇を、私の唇で塞いだ。
その瞬間、綾ちゃんと呼ばれるよりも、新治君とキスをしたかったから。
「!!」
驚いた表情の新治君が、うめいて、目をつぶった。
びくん。びくん。
どくん。どくん。
私の中で、新治君の性器が跳ねる。
律動は、心臓の鼓動。命の鼓動。
それが、薄いゴムの膜を通じて伝わってくる。
(射精、しているんだ。新治君が……)
股間に宿る鈍い痛みは、もう、気にならなかった。
新治君と私は、その律動が完全におさまるまでキスをし続けた。
やがて、まだ私の中に入ったまま、ぐったりと身を預けてきた新治君が
かすれきった声でささやいた。
「あ……綾…ちゃん……」
息切れの合間に聞こえたその声で、私も、確かに達した。

30:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:27:11 WDSOTnWl
「すごい……量……」
私の中から引き抜かれた新治君のおち×ちんは、
その先っぽに、白濁の粘液で膨らんだコンドームを付けている。
避妊具は、その役割をしっかりと果たし、
新治君の精液を余さず留めていた。
ゼリーみたいに濃くてたぷたぷの粘液は、ゴム膜越しにも温かかった。
「う、うん。出すのは、久しぶりだったから……」
新治君がどぎまぎとした様子で答えた。
男の人は、射精をすると急に冷静になるらしい。
熱狂で忘れていた恥ずかしさとか、警戒心とかが新治君に舞い戻ってきてしまったのを、私は感じ取った。
仕方がない。
―今は。
これから、ゆっくりと、じっくりと分かってもらえばいいんだ。
私は、にっこりと微笑んで、コンドームを外し始めた。
「……根元、きゅっとされると気持ちいいんだよね?」
「うあっ……」
外すときに、さっき聞いた事を実践してみる。
新治君の太い根元をから、ゆっくりと強めにしごくと、
尿道に残っていたのだろう、精液がちょっと先っぽから出てきて、ゴムの内側に溜まった。
コンドームを引っ張る。
外れた。
ちょっと手で引っ張って、口元を縛る。
うん、いい感じ。
中に驚くくらい大量の粘液を蓄えたコンドームは、外側が私の蜜でぬらぬらと光っている。
破瓜の血も。
「これ……貰ってもいい?」
「え?」
「新治君の、「はじめて」の……」
「……えええ!?」
答えを待たず、私はそれを宝物のようにそおっとティッシュで包んだ。

31:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:27:53 WDSOTnWl
「ちょ、まっ……綾ちゃん……」
新治君が、パニックになった。
「うふふ、新治君の精子君、お持ち帰り~!」
私は、今日という記念日の戦利品を大切にバッグにしまいこんだ。
「綾ちゃん、ダメだよ、そんなの……。か、返してっ」
新治君は狼狽しきっている。
私の全てを征服したばかりの男の子は、それに気がつかずに、
また臆病な人間に戻っていた。
だから、私は明るく笑って答えた。
当初からの予定通りに。
「うふふ。か・え・さ・な・い! 新治君には代わりにいいものあげる」
「……え?」
本棚のほうに向かった私を見て、新治君はきょとん、とした。
すぐにそれが、驚きと恐怖の表情に変わる。
私の手には、ビデオカメラが納まっていた。
「あ、綾ちゃん、それって……」
「ん。ビデオカメラよ。<妹>の様子を取るのも、私に命じられてるから。
家にはいっぱいこういうのあるから、私、撮影とか編集とか、得意なんだ」
ホームビデオの他に、<妹>の発表会や旅行のときのビデオ係はいつも私だった。
だから、さきほどの二人の初体験をおさめたビデオを撮れるよう
ベッドに向けてカメラを設置するくらいは朝飯前の仕事だ。
新治君がシャワーを浴びている間に、ちょうどいい位置にそれを設置しておいたそれは、
しっかりと二人の行為を録画していた。
「うふふ」
新治君の目が、怯えきっている。
私が、このビデオをネタに新治君を自由にしようとしている、と思っているから。
私は、新治君を欲しがっていて、このビデオは、その格好の材料だった。
「うふふ、ふふふ」
私は笑いながら新治君に近づき、
―ビデオカメラをその手の中に押し込んだ。

32:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/10/28 18:28:56 WDSOTnWl
「……え?」
新治君は、何が起こったか、わからない、と言った表情で私を見た。
「あげる」
「えええ?!」
「今、撮ったの、新治君の好きにしていいよ。
綺麗に取れてると思うから、パソコンに入れて大事にしてね」
「……」
「本体は、来週あたりに返してくれればいいよ。家には別のカメラあるから」
「……な、なんで……」
新治君は予想外の私の行動に動転しきっていた。
「証明するって、言ったでしょ?」
「え……」
「私が、貴方のこと裏切らない女だって。だから」
私は新治君に顔を寄せて、その瞳を覗き込んだ。
「そのビデオはね、私からの人質。
新治君が、私が裏切ったと思ったら、それを好きに使って。
パソコンで編集すれば、私の裸とか、声だけ取り出すことできるでしょ?
ネットに流したり、近所に知られるように配るだけで、私の人生、終わっちゃうわ」
「!!」
私に怯える男の子を癒す方法は、―私より絶対優位にあることを悟らせること。
「ね、だから、私、もう新治君のこと裏切れないよ」
私はゆっくりとささやいた。
新治君に、その事実が染み渡るように。
「そんな……受けとれないよ、こんなのっ……。
ぼ、僕が、これで綾ちゃんのことを脅したりしたらどうするつもり!?」
爆弾を抱えて、新治君は必死で叫んだ。
「大丈夫。新治君は、私のこと、脅せないから」
「え……」
「だって、私、新治君の言うことなら、こんなもの無くったって、なんでも聞くもん」
「……!」
「知ってる? 脅迫だって、レイプだって、女の子のほうが受け入れていたら絶対に立件できないんだよ……」
「……あ、綾ちゃ……」
「私は、最初からそういうつもりだけど、それじゃあまだ、
新治君は納得するくらいに伝わらないと思ったから、こういう形で証明しただけ……」
私は、ビデオカメラを持ったまま固まっている新治君に抱きついた。
耳元でささやく。
「ね。もう一回……ううん、新治君が満足するまであれの続き、しましょ。
そのビデオで私の恥ずかしいところ、撮ってもいいよ。
世間に知られたら、私が生きていけないくらいに恥ずかしいところまで、撮っていいから……」
確かに、このビデオが出回ったら、私は首を釣って死ぬしかないだろう。
でも、恐怖心は微塵もなかった。
新治君を信じているとか、そういう理由だけではない。
だって。
このビデオが出回るということは、新治君が、私のことを捨てるということで、
そして、私は新治君から捨てられたら、どの道生きていけないのだから。
 
ここまで


33:名無しさん@ピンキー
07/10/28 19:32:00 aRXqSixX
一番槍GJ!

まさかそこまでするとは思わなかった。
その気持ちがちゃんと男に伝わっていれば、案外健全なカップルになりそうな起臥す。
さて、あとはあの邪魔な妹をどう始末するかだが・・

34:名無しさん@ピンキー
07/10/28 20:11:43 NRsKET3W
GJ!まさかの逆ハメ撮りとは。

35:名無しさん@ピンキー
07/10/28 20:26:30 xrlooR4D
(´;ω;`)二人で幸せになってくれ・・・・・・

36:名無しさん@ピンキー
07/10/28 20:29:15 sYUh/FRz
GJ!
さて、妹がどうでるか楽しみだぜ

37:名無しさん@ピンキー
07/10/28 20:50:59 K5RnCHGt
てっきり近藤さんに針で穴を開けてると思ったw

38:名無しさん@ピンキー
07/10/28 21:03:53 uWMkUmzj
す、すげえ……。
嫉妬・修羅場スレとは異なる、ヒロインの圧倒的な強さにただ脱帽です。

39:名無しさん@ピンキー
07/10/28 21:59:43 S5IABKeg
>最後の瞬間、新治君は、私に、名前を呼ぶのを聞かせようとしたのだろう。
>だけど、私は―その唇を、私の唇で塞いだ。
>その瞬間、綾ちゃんと呼ばれるよりも、新治君とキスをしたかったから

この部分、面白いね
もう自分を「綾ちゃん」と呼んでくれる人なら誰でも良い訳ではなく
本当に新治のことが好きなことを読み取れる
このカップル応援するわ。傷を慰めあう関係っていうのも悪くはないと思う

40:名無しさん@ピンキー
07/10/28 22:03:23 s0tYCCih
まさに、「貴方なしでは生きられない」
依存スレの王道がここに示されたな。

41:名無しさん@ピンキー
07/10/28 22:37:55 m1phMLCS
この手のキャラは一歩間違えるとただの自己中女になるからな。
その点、これはいい女を表現出来ているな。
さて、これから悪い例のクソ妹が邪魔をし、
最終的にはフルボッコにされるといった所かな。

42:名無しさん@ピンキー
07/10/29 01:08:20 jLm2Sy6/
綾子可愛いよ綾子
お願いだ妹さん
綾子と新治がくっつくの認めてあげてくれ!

43:名無しさん@ピンキー
07/10/29 01:27:36 6/yHVXs/
主人公、姉妹丼コースじゃねーの?

44:名無しさん@ピンキー
07/10/29 03:07:59 8MJ0w/Ck
このまま最後の戦いに流れるなら依存スレ的には王道。
だが、あの妹がこのまま姉を幸せなままにしておくわけが無いよな。

うぇええ、そういう方面の展開にわくわくするのは鬼畜かね。

45:名無しさん@ピンキー
07/10/29 05:17:02 TPcA9TNk
そういや綾子は新治と結婚して名字を取り戻そうと画策してたような

46:名無しさん@ピンキー
07/10/29 06:58:47 0X5qFqQa
GJ!!たとえ妹が何をして来ても、こと新治に関してはこの姉は無敵だと思ったり。
なんせ妹が肉体使ったとしても綾子の認識は「逆レイープ」だという伏線まで。
互いに心を読み合えるか…女の人の心は皆読める新治に対し、綾子の方はまさに新治専用に自分を作り上げたって感じですね。
「新治君から捨てられたら、どの道生きていけない」と、綾子が新治を傷つけるような事は無さそうで、理想的な依存関係だ。
まあ、妹もこのまま引き下がる訳ないし、新治は妹の方の心も読めちゃうし、で話としてはまだまだこれからって感じでwktk

47:名無しさん@ピンキー
07/10/29 14:25:11 JHGaRaV0
GJ。妹視点もそろそろ来るかな?

48:名無しさん@ピンキー
07/10/29 17:20:03 oma6wiwk
もう続き読むの怖いわw
幸せになれよこのまま

49:名無しさん@ピンキー
07/10/30 03:06:31 5GthNqd0
流血沙汰にだけはなりませんように・・・

50:名無しさん@ピンキー
07/10/30 10:50:05 xGc5UF6r
>>48
同意w
いい依存カップルだよなw

51:名無しさん@ピンキー
07/10/30 12:03:30 B/uRsXAT
まあここは何とか主人公に頑張って立ち回って治めてほしいw
ところで気になるのは妹って純粋に悪人か、ただ単に我侭なだけで姉と母に対しては父親を取られたって嫌悪感で暴走してるのか、どっちだろ?
後者なら、主人公のトラウマに似てる部分あるので、依存姉妹丼ルートもアリかと思うわw

52:名無しさん@ピンキー
07/10/31 07:03:32 7rGcAlDU
これはいい依存

53:名無しさん@ピンキー
07/10/31 23:54:35 J5U/jyDC
このまま新治も綾子に依存しそうだな

54:名無しさん@ピンキー
07/11/01 02:03:46 LH7M5YuR
まだ新治攻略には早い希ガス
新治の攻略難易度はたぶんラスボス級

55:名無しさん@ピンキー
07/11/01 02:07:11 souXxBds
新治「ボクは後二回……あと二回トラウマを残している……この意味がわかるな?」

56:名無しさん@ピンキー
07/11/01 10:15:50 PN0hZB0C
>>55
おまwww

57:名無しさん@ピンキー
07/11/01 19:26:39 54Vzbcrd
元ネタなんだっけ?

58:名無しさん@ピンキー
07/11/01 20:39:27 vlxaoLs2
>>55
綾子「新治君のことかーーーーーーッ!!」
で切れた姉の自慢の黒髪がパツ金になる訳か

59:名無しさん@ピンキー
07/11/03 16:14:08 gYzhfjO/
ほっしゅ

60:名無しさん@ピンキー
07/11/05 08:28:58 c7Zyy5yi
保守あげ☆

61:名無しさん@ピンキー
07/11/07 14:53:20 InKkKELx
保守。
まだかまだか

62:名無しさん@ピンキー
07/11/07 19:49:09 m4oqIqI8
投下に対する反響のレスが投下のレス数を上回ってるのも珍しいな。

63:名無しさん@ピンキー
07/11/07 22:09:57 3lrIsOBS
私このスレがないと生きていけないの

64:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:33:28 mJ7zga9y
<私が私でいられる時>・7

目が覚めたとき見えたのは、白い天井だった。
記憶にない、模様。
(ああ、そうだ。○×市のホテルに泊まったんだっけ)
自宅から電車で数時間のところにあるそこは、夫のコンサートツアーの会場がある街だった。
昨晩、準備のためにここにやってきて、夫と合流し、
ホテルで彼の世話をして、一緒に泊まった。
午前中、打ち合わせをする夫に秘書役として付き添い、雑務が終わった後で分かれた。
ホテルに置いてきた自分の荷物を回収しに戻り、疲れを感じてベッドで横になったが、
そのまま少し眠ってしまったらしい。
時間は、正午を過ぎていた。
(帰らなきゃ)
スーツについた皺に眉をしかめた。
身体が鉛のように重い。
疲労感がどうしても取れなかった。
特に何をしたと言うわけでもない。
逆だ。
何もしていないから疲れる。
そんなことがあるなんて、思っても見なかった。
今の夫と結婚して、この生活に入るまで。

娘─綾子が小学生の頃、最初の夫が死んだ。
病気とわかって、すぐに。
闘病生活さえ、ほとんどなかったあっけない死は、
しかし、私と娘の生活を変えるには十分すぎる出来事だった。
最初の夫とは、見合い結婚だったが、私はあの人のことを愛していたし、
あの人と、あの人との間に授かった娘との三人の生活も愛していた。
だがそれは、一瞬にして崩れ去ってしまった。
私、石岡美和(いしおか・みわ)……いや、今は龍ヶ崎美和の幸福は。

65:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:34:09 mJ7zga9y
私は、戸惑い、悲しみ、焦った。
私はピアノの教師をしていたが、それで食べて行くのは無理だった。
夫の収入と理解があってはじめて成り立つ程度の奥様芸は、
せいぜいが、娘を近所で一番のピアノ少女にしてあげるくらいが関の山だった。
その夫が天国に召されてしまうと、私はたちまちに窮した。
私に浪費の癖はないつもりだったし、夫もかなりの高給取りだったが、
今のご時勢、双方の親が資産家でもない限り、娘に普通の教育を施し、
マンションのローンを払い続ける生活に、さらに親への援助などが重なれば、
余裕などは、ないものだ。
マンションだけは、かけていた保険のおかげでローンが終了したが、
残された貯金は生命保険も含めてわずかなものだった。
私は仕事を探したが、それは、自分の無能さとキャリアのなさを思い知らされるだけの作業だった。
娘のためには、慣れないパート生活も耐えられもした。
しかし、一日一日、目減りして行く預金通帳の数字は、私の心を必要以上に蝕んだ。
そしてその頃に、私は、今の夫、龍ヶ崎八郷と再会したのだった。

八郷は、私のピアノの先生だった。
先生と言っても、当時から日本を代表するピアニストだった彼は、
本当は私が教えてもらえるような相手ではなかった。
しかし、私の祖父が面識があったおかげで、
年に何度か、ピアノを見てもらったり、教室のイベントに参加させてもらったりしていた。
私よりも二十も上の八郷は、まったくの偶然の再会を喜び、
喫茶店で話を聞いたのち、数日して交際を申し込んできた。
あちらのほうも、配偶者を亡くして、娘との二人暮らしだった。
彼は忙しい生活の中で、自分をフォローしたり、家庭を守る役目の女が必要だったし、
私は、娘と自分の生活基盤を守ってくれる人が必要に思えた。
そして、かつての師弟は、再婚相手に互いを選んだ。

66:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:34:50 mJ7zga9y
ベッドに横たわったまま、ぼんやりと手を動かす。
何を掴もうとするわけでもなく、
だが、その手が、放り出したままのバッグに触れ、
その中に入り込み、―小さなビニールの包みを探り当てる。
無意識にそれを取り出し、私は眉をしかめた。
毎日用意していて、昨日も使わなかったもの。
コンドーム。
八郷とは、昨晩、一緒に寝た。
このホテル、このベッドで。
性交渉、いわゆる<夫婦の営み>というものもした。
私を裸にして長い愛撫。
ピアニストの繊細な指先は、高校生の娘を持つ年増女の熟れきった身体を何度も絶頂に導いた。
クンニリングスもされた。
丁寧で執拗な舌は、二番目の妻を喜ばせるべく、
女性器やアヌスの中にさえも入り込み、女体を悶えさせた。
私は何度も達した。
前夫、つまり綾子の父親とのセックスでは経験のなかったことだ。
そして、その何度も女の絶頂に導かれる感覚は、私に疲労と絶望とを与えた。
八郷のセックスは、ペニスの挿入と、射精と、そして愛がなかった。

龍ヶ崎八郷。
今の私の夫が、この再婚を自分から望んだのではない事を、わたしはすぐに察した。
天才ピアニストには妻が必要だったし、娘の母親も必要だった。
だが、それは別に私でなくてもいい。
それなのに、何のとりえもない、三十後半の女を再婚相手に選んだのは、
私が、彼の最愛の妻、龍ヶ崎美浦(りゅうがさき・みほ)に、私が似ていたからに過ぎない。
綾子と、彩は似ている。
それは、母親同士が、よく似ていたから。
そしてそれは、二人を親の再婚という形で引き合わせ、互いを憎悪させた。
それは、八郷と私の罪だ。

67:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:35:31 mJ7zga9y
美浦とは、子供の頃から何度も会ったことがある。
その頃から、すでに日本屈指のピアニストであった八郷は、
私のように年に何度か教わるだけのお義理の弟子のほかに、
日常的に指導している直弟子が何人もいた。
その愛弟子の中でも、秘蔵っ子中の秘蔵っ子こそ、美浦だった。
美浦は、私より数年年下のその少女は、本当の天才だった。
あえて言うのならば、今の龍ヶ崎彩以上の。
彼女の才能は、あるいは八郷自身さえも凌ぐものがあったのかも知れない。
八郷は、彼女を溺愛し、そして、そのうち二人は男女としても愛し合うようになった。
二十も違う、親子ほどの年の差も、当時は、
三十代後半の日の出の勢いのピアニストと、二十歳前の実績のない少女のこと、
誰もがその結婚を祝福した。
「本格的なデビューは、子育てがひと段落してからになっちゃったわ」
結婚してすぐに妊娠した彼女は、龍ヶ崎門下生の同窓パーティで、そう言った。
その一言を、私は、傲慢とも思わなかった。
彼女の才能と努力は、多くの天才にとって致命的になるだろう数年のブランクを以ってしても
色あせさせることが出来ないものに思えたから。
すでに結婚し、前年、綾子を産んでいた私は、素直に彼女を祝福した。
こんな運命が待ち受けているなんて、
その時、自分なりの幸福に浸っていた私には想像もつかなかったから。
だが、運命は、私を、彼女の後釜へと導いた。
中身のない、後釜へ。
「―美穂さんと美和ちゃんって、似てるね」
それは、同門の一同が抱いていた感想だった。
私たちは、顔立ちも似ていたし、体型や雰囲気まで似ていた。
決定的に違ったのは、中身─ピアノの才能。
アルバイトレベルのピアノ講師がせいぜいの私と、まぎれもなく日本一の天才。
だが、その天才を失った師にして夫たる人物は、その偽者を欲した。
龍ヶ崎美和。
再婚すれば、名前さえも、一字ちがいになる女を。

68:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:36:12 mJ7zga9y
八郷は、美浦という支えを失い、
私は、夫という支えを失った。
互いは、互いを、偽者と知りつつ求めあい、
結婚と言う過ちを選んでしまった。
それが、自分の娘にどれだけの地獄を与えたのか、私たちはすぐに思い知った。
綾子は、彩を憎んでいる。
彩は、綾子を憎んでいる。
互いの親が、互いの親を奪ってしまったから。
そして、皮肉なことに、その親同士は、そこまでして手に入れたものから
何の幸せも掴むことができないでいた。

八郷が、私と普通のセックスをしなくなったのは、彩にそれを見られたから。
再婚当初、八郷は私を抱いた。
五十を半ば過ぎているとはいえ、若々しく体力もある男は、精力に満ち溢れていた。
その年齢の夫婦にしては、なかなか盛んだったセックスは、
しかし、ある日、彩が夫婦の寝室の前で泣いていたことに八郷が気がついたときに終わりを告げた。
以来、彼は、私を指と舌とで愛撫はしても、性器同士の交わりはしなくなった。
あるいは、それは、彼なりの<妻>への気の使い方であるのかも知れない。
だが、それは私にとって苦痛以外の何者でもなかった。
セックスは、もともと好きでも嫌いでもない。
綾子の父親は、それほど好色でもなかったが、淡白でもなかった。
小学生の娘を持つ夫婦は、子どもに影響がないように気をつけながら、
ごく一般的な頻度で交わった。
前夫は、八郷のような繊細な指先とテクニックを持っているわけではなかったが、
それは、私にとっては、むしろ相性がよかった。
私の身体はどうも感じすぎる体質のようで、
不幸なことに、それを楽しみ尽くすほどの体力は備わっていなかった。
「お前は、男で言うなら、早漏だな」
前夫はそう言って笑ったが、その当人も私の中に入ってからは数分も持たないで射精する似た物夫婦だった。
そして、一晩で十分もかからないセックスは、私にとって一番安心で楽しめるものだった。

69:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:36:53 mJ7zga9y
唇へのキス。
首筋へのキス。
どこのハウツー本で覚えたのか、耳に息を吹きこむ。
それから胸を揉み、乳首を吸う。
指で、私の女性器をなぞり、何度か指を出し入れして濡れ始めた事を確認する。
気が向けば、二分か三分か、クンニリングス。
同じくらいの頻度で、やはり二分か三分のフェラチオをせがむ。
それから、ペニスを挿入する。
体位は、正常位がほとんど。
たまに私に隠れてみていたアダルトビデオに興奮するのか、後背位を。
騎乗位は、私が下手なのと、互いの骨格や肉付きの相性のせいか、気持ちよくない。
その他の体位は、試したことがなかった。
射精までは、五分もかからない。
普段はコンドームを。
安全日には、二人の気分によって膣内射精を。
隣の部屋で寝ている娘に気付かれる間もなく終わる、短い営み。
だけど、私も、夫もそれで十分満足していた。
お互いの愛情は疑いもなく確認できたし、
互い以外の男や女を欲しがることも皆無。
私は、私と前夫は、それでよかった。
それで十分だった。
そして、二番目の夫、龍ヶ崎八郷は、それを理解してくれない人間だった。

「君を、もっと気持ちよくさせたい、愉しませたい」
私との初夜に、八郷はそう言った。
再婚同士だ。
処女と言うわけでもない私は、それに頷いて応えた。
しかし、八郷の愛撫は、私の想像を超えて巧みだった。
それを悦ぶ女は多いだろう。
龍ヶ崎美浦は、きっと全身でそれに応え、夫にしがみついたにちがいない。

70:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:37:33 mJ7zga9y
だが、私は、八郷たちに比べれば、ほんのねんねのセックスで満足する女は、
その丁寧で執拗な技巧に戸惑い、身体がついていけないことを感じた。
美浦は、一晩に何十回も自分を絶頂に導く夫を喜んだろうし、
夫の前で快感のあまりに失禁することも厭わなかっただろう。
私の前夫の倍もある大きさのペニスを嬉々として受け入れただろうし、
生理の日でさえ欠かさずに毎晩自分を求めることを、夫の愛情の証と信じて疑わなかっただろう。
だが、私には、無理だった。
私は、夫がいくときに一緒に一回いければ満足だったし、
ドライブ先の山などで用を足すところを見張ってもらうのは大丈夫でも、
セックス中にベッドの上で失禁するのは嫌悪感がある女だった。
ごく標準的な大きさだという、前夫のペニスが性に合ったし、
生理の前後や、娘がぐずかる夜は、ごく自然にセックスを我慢してくれる男(ひと)に感謝の念を抱いた。
それでも。
それでも、八郷が、性器のつながりと射精で終わる普通のセックスを続けていたのなら、
これほどまでの嫌悪感は持たないで済んだのかもしれない。
だが。
義理の娘、彩が泣いた次の日から、八郷は、私を愛撫だけになった。
その理由もいわず。
娘が拒むから、<妻>としては扱えない。
それでも、<夫>の義務として、満足はさせる。
指と舌は、そう言っていた。
そして、私は、私が望まぬやり方で、何度も絶頂に導かれる。
昨晩のように。

「んくっ……」
いつの間にか、私は、ショーツの中に手を差し入れていた。
綾子の父親と結婚していたときは、三十を過ぎた既婚女が自慰などするとは思っても見なかった。
ましてや、どんな形でも一晩に十回以上も達している女が。
だが、事実は逆で、私の自慰は、八郷が私とセックスをしなくなってから激しくなった。
皮肉なことに、技巧に慣れた身体は、自慰の指先も巧みになる。

71:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:38:14 mJ7zga9y
私は、自分の性器の隅々までをまさぐった。
八郷がそうするように。
そして、何度か細かい絶頂を味わった後に、最後に大きな波を迎えて仰け反った。
「……さんっ……!」
最後の瞬間に、唇から漏れた名は現在の夫の名前ではなく、
その時、脳裏に浮かんだ、精液を噴き出したペニスも八郷のものではなかった。
それが、今の私に出来る精一杯の復讐だった。

「……」
自己嫌悪に身を焦がしながら、私はのろのろと起き上がった。
女の粘液に汚れた指が、何かに触る。
昨日発売の、写真週刊誌。
<娘>が載っている。
龍ヶ崎一家の写真も。
今着ているのとは、また違う、だけど同じくらい値の張るスーツを着て、
髪型も、メイクもプロにきっちり仕上げてもらった<母親>も写っている。
でも、それは、誰なんだろう。
龍ヶ崎美和?
龍ヶ崎美浦?
私は、それがわからなくなっていた。
鏡を見る。
美浦にも、彩にも、そしてもちろん綾子にも似ている顔が写っている。
でも、それは、その三人と違ってひどく疲れた年増女の顔をしていた。
「……」
不意に、鈍痛が襲い、私は唇をかみ締めた。
そういえば、そろそろ生理になる頃だった。
PMS(月経前症候群)。
ここ数年、私は、ずっとそれに悩まされていた。
たぶん、これも、八郷とのセックスのせいだろう。
私と八郷は、不幸なことに、とことん相性の悪い夫婦だった。

72:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:39:08 mJ7zga9y
「……」
痛みは少し治まった。
不快感を抑えながら、私は鏡をもう一度見た。
「……綾子……」
不意につぶやいた自分に動揺を覚える。
なぜ、実の娘の名前が唇から漏れのか、は、すぐにその理由に思い至った。
昨日の出掛けの、会話。

「機嫌いいわね、……お姉ちゃん」
ここ数週間、別人のようににこにことしている綾子に、私はとまどいながら声をかける。
腫れ物にさわるように。
「ん。そう、ね」
くすくすと笑いながら、綾子は<妹>のカバンの準備をしていた。
一ヶ月前なら、どんよりと濁った怨恨しか映さぬ瞳でしていたその作業を。
「……そう」
なんとなく気おされるものを感じながら私は返事にならない返事をした。
「……今週は、なんか生理もすっごく軽かったんだ」
私より少し早めに周期が来る娘は、確かに今月、そうしたところをまったく見せなかった。
「……」
不意に私は、息苦しくなった。
それが、一体何を意味するのかが、唐突に分かったような気がしたから。

上機嫌。
女性ホルモンの大量分泌と、安定。
なによりも、自信と幸福感に溢れた笑顔。

それが恋をし、その恋が順調に
─女としての肉体に影響を与えるほどの精神性を与えるほどに─
すすんでいる、ということが、女親の目にははっきりとわかったから。

73:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/07 23:40:11 mJ7zga9y
チェックアウトを済ませて、ホテルを出る。
特急のチケットを買って乗り込む。
グリーン車。
私は、こんな贅沢をしたかったのだろうか。
ただ、パートでは娘を満足に育てられない、と思っていただけのはずなのに。
二時間弱の移動。
地元駅に戻ったときは、もう夕方だった。
なんとなく、すぐ家に帰る気がせず、行き付けの美容院に寄る。
少し乱れた髪を整えてもらう。
店を出るときは、もう夜になっていた。
携帯で、家に電話をする。
誰も出なかった。
なんとなく胸騒ぎを覚えた。
タクシーを拾って、家に戻る。
玄関の扉を開けた。

─とたんに、金切り声が聞こえた。
キッチンのほうで。

「―このっ! 人殺しっ!!」
「あんたの大切なものなんか、何度だってそうしてやるわよっ!!」

飛び込んだ私が見たのは、―ののしりあいながら床の上で掴み合いをしている二人の娘の姿だった。


ここまで


74:名無しさん@ピンキー
07/11/07 23:43:50 HHwHcXJk
GJ

75:名無しさん@ピンキー
07/11/07 23:51:10 /KZIQoGk
GJ
>>64がいないと生きていけないの

76:名無しさん@ピンキー
07/11/07 23:55:36 XCXviUI2
私もゲーパロくんがいないと生きていけないのッ。
というか、えらい所で切られた!!! もしかして新治殺された!?

77:名無しさん@ピンキー
07/11/08 00:37:50 MKtOU7jZ
またきてくれるって信じてたよぉ・・・

78:名無しさん@ピンキー
07/11/08 01:35:25 Jht0EMW7
人殺し?!
おいおい、まさか新治が・・・
新治と綾子のカップル好きだったのに・・このやろぅ・・

79:名無しさん@ピンキー
07/11/08 01:54:39 jO7xPVVG
乙であります


…ってシンジきゅん終了のお知らせ!?
もしそうならオワタ\(^o^)/

80:名無しさん@ピンキー
07/11/08 04:26:29 qo6rGvrZ
>>76
まあ待て。本当に殺してたら逮捕されてるだろう。多分大怪我負わせたくらいだよまだ。

81:名無しさん@ピンキー
07/11/08 05:47:51 l96WhZkB
超GJ!!
まあ、本当に殺してたら、親の所にも連絡言って、妹の立場なら対処に大騒ぎになってるわな。
……てか大怪我でも騒ぎになってる筈、未遂にしてもどの程度なのかが問題だ。
いや、母親の独白読んでる間は、姉妹丼だけでなくすわ母娘丼フラグも、なんて読んでたらこの急展開は驚いた。

82:名無しさん@ピンキー
07/11/08 07:46:07 6ayCTFLg
実際、全員に急所がある以上はハーレムENDはありかと

にしてもここで切るとは憎いぜ(依存的な意味で)

83:名無しさん@ピンキー
07/11/08 07:55:56 d1fihshQ
新治くん、大変な状況にはなってそうではあるな
それでも新治くんなら・・・新治くんならきっと何とかしてくれる
つハーレム和解エンド
あの女の気持ちを読む能力はきっとその為のもの
そして新治くんの方も過去の代償的にその状況に依存

84:名無しさん@ピンキー
07/11/08 10:44:46 a0bNegaT
姉も妹も独占欲が強そうだからな。
ヘタにハーレムENDを目指すと、Nice Boat.な展開になりそうだ

85:名無しさん@ピンキー
07/11/08 12:41:26 U0d6zXPt
こんな所で止めるなんてドSにも程があるぜ!
とにかくGJ!

86:名無しさん@ピンキー
07/11/08 14:18:23 aqO1G2xB
前スレの最後のほう見逃した所為でなにがなんだかわかんなくなった

87:名無しさん@ピンキー
07/11/08 20:04:32 GzI096Y7
あ゛あ゛あ゛あ゛、妹ウゼェ。
和解しようとハーレムEDになろうと妹はイラネって思うのは俺だけ?


>>86
URLリンク(www.23ch.info)

88:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:39:56 GkVLEGkD
>>87うぉ( ̄□ ̄;)!!?

有り難くいただきます

89:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:43:19 Jht0EMW7
俺も綾子と新治の二人っきりENDでいい
妹に何もかも奪われたんだから恋ぐらいお姉ちゃんに独占させてあげたい
隠し撮り動画を新冶に渡したとき、俺の綾子の好感度メーターはMAXになった

90:名無しさん@ピンキー
07/11/08 23:51:43 2wxMY/gb
個人的には絶妙の精神的バランスで成り立った依存ハーレムと言うのは展開的に面白そうだと思う。

91:名無しさん@ピンキー
07/11/09 00:08:30 RQ+QG0hA
せっかく綾子と新治で、完璧な共依存関係が成立する下地が整っているんだから、
このまま二人の世界が完成するのを見てみたいよ。


92:名無しさん@ピンキー
07/11/09 00:12:10 lrMzIZrR
みんな、もちついて続編を待とうぜ

93:名無しさん@ピンキー
07/11/09 00:34:45 rjqh+ko4
ハッピーエンド希望!
バッドエンドでも、まあそんなにひどくないもんがいいなあ

とにかく、ゲーパロ氏GJ!

94:名無しさん@ピンキー
07/11/09 01:32:27 6aVIBapZ
まあまて、とりあえず座ってテカテカしながら待とうぜ!

95:名無しさん@ピンキー
07/11/09 04:18:20 CF7I+qmS
お前ら、そこにせーざ!せーざ!



俺は胡座かいてwktk

96:名無しさん@ピンキー
07/11/09 16:39:36 mVK9y/+9
やはり一筋縄でいかないのがいいよな。個人的には泥沼路線大歓迎。
まあ、ハッピーだろうがバッドだろうが、引きの上手さは変わらんね。

97:名無しさん@ピンキー
07/11/10 16:45:05 rQiVWE+l
お前等ハードル上げすぎww
あまりハードルを高くしたら、投下できなくなるぞ?ここは黙って投下を待とうぜ!

98:名無しさん@ピンキー
07/11/10 17:27:58 tuyhbO92
ハードルが高すぎるならくぐればいいのさ

               ―車田正美

99:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:08:22 lzZ1ZIxC
<私が私でいられる時>・8

ガラス越しに見る街の雑踏は、見慣れたものとは違う雰囲気に思えた。
それは、曇り空のせいだったからかも知れないし、
店内に流れる洋楽のせいかも知れなかった。
カン・ナム・エクスプレス・カフェ。
カナダ人とアメリカ人の二人が作り上げて日本にも進出したカフェは、
私の密かなお気に入りだ。
あまり来ることができないけど。
テレビ局や、雑誌のインタビュアーには、先入観があるらしい。
取材は、駅の反対側にある英国風喫茶店ブリティッシュ・ブルドック・カフェでされることが多かった。
紳士と淑女の国から来た本格的なカフェで、気品溢れる紅茶の一時。
―それが、龍ヶ崎彩のお茶の時間に思えるらしい。
でも、私は、こっちの、紙コップに入ったコーヒーも嫌いではない。
このカフェは、全面禁煙ではないというところも。
私自身は、もちろん煙草は吸わない。
吸わないけど、煙草の匂いはそんなに嫌いではない。
特に、服に着いた程度の残り香なら。
それは、パパの匂い。
広い広い背中の、スーツの匂い。
ほっとする、匂い。
私は、それを嗅ぎに、この店に来る。
普段と違う服を来て、普段と違う髪型にして、色の薄いサングラスまでかけて。
やりすぎかな、と思わなくもない。
でも、こないだは、写真週刊誌にほとんど隠し撮りに近い写真を取られた。
体育祭の、スパッツ姿。
さすがにそれは世間さまから叩かれて、出版社はおわびをしたけど、
私の生活は、私の自由になるものではなくなっていた。
そして、週刊誌も、テレビも、みんなも、龍ヶ崎彩と言えば、
英国風カフェに行くもの、と思いたがるだろう。

100:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:08:53 lzZ1ZIxC
「……」
時計を見る。
17:00。
デートは、すっぽかされたらしい。
私は、ため息をついた。
不思議と、あの男の子に怒りは沸いてこなかった。
あの日、自分の家の前で立ち尽くしていた男の子は、<姉>の恋人。
ボーイフレンドというような軽い関係でないことは、一目見ただけで分かった。
彼女の人生を、丸ごと変えてしまうような、関係。
この一ヶ月、いいえ、三週間? くらい前から、私の<姉>は変わった。
私の住む家に怯え、悩み、恨む。
私と言う存在が心の半分を覆い、それがどうしようもないくらいそれが苦しくて、憎む。
そんな娘が、突然堂々と振舞い、艶やかに笑い、そして私を見なくなった。
私が、目の前に立てば、彼女は前と同じく挑戦的な瞳で睨みつけてくるが、
そうでなければ、前のようにわざわざ探し出してまで睨むことはなくなった。
この間は、どこかの児童施設でピアノを弾いていたらしいことを、クラスメイトから聞いた。
私に全然関係のないところでピアノをまた始めたということだ。
異変。私はそれを敏感に察知した。
<姉>が私を見ずにはいられないように、私も<姉>を見ずにはいられない。
二人は、互いを、互いの傷口のように思っていた。
痛みと苦しさの源。
だから、触らずにはいられない、確かめずにはいられない。
醜い傷がそこにあるということを、確認せずにはいられない。
龍ヶ崎彩と、石岡綾子。
両親の再婚で双方が望まぬのに<姉妹>になってしまった二人は、
互いが互いを、心の傷として認識していた。
だけど、石岡綾子は、私の傷口であることを止めようとしていた。
突然に。
唐突に。
そして、私は、その事実に、戸惑っていた。

101:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:09:23 lzZ1ZIxC
(オネエチャンがいると、私は私でいられない)
それは、ひとつ年上の<姉>ができた日に思ったことだった。
理由は、はっきりしていた。
彼女と、彼女の<母親>が、パパを取ったから。
ママが死んでから、私一人だけを見つめてくれていたパパが、
突然、他の人のことも見るようになってしまったから。
そして、その女が、ママに似ていたから。
そして、その娘が、私に似ていたから。
それは、私の心をかき乱した。
(―どうして、なぜ?)
疑問は、その答えを知っていたからこそ消えなかった。

パパには、ママが必要だった。
パパにとって、世界中で一番必要なのはママ。
でも、それは、別に変なことじゃない。
パパは、男と女としてはママが一番だけど、こどもとして、私は別格。
ママは、男と女としてはパパが一番だけど、こどもとして、私は別格。
毎日キスをして、毎日いちゃいちゃする両親は、
産まれたときから見慣れていれば、別に気にはならない。
もちろん、こどもだから、時には二人の仲に嫉妬したりすることもあったけど、
こどもにとっては、両親が不仲よりもずっとずっと好ましい。
父親と母親の仲が良く、互いに愛し合っていること。
それは、そこから産まれた自分が無条件で愛されることの下地になる。
こどもは、家庭で育つ。
小さなときは、世界の全てがそこにあった。
幼稚園に行き、小学校に通うようになって少しずつ世界が広がっても、
その中心は、父親と母親と自分が生活する家庭だ。
だから、家庭と言う基盤が揺るぎないもの、と疑いもなく信じられるこどもは、
とても幸せだった。
とてもとても、幸せだった。

102:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:09:54 lzZ1ZIxC
だから、パパが再婚したとき、私は、私の世界が崩れてしまったように思った。
本当に崩れてしまったのかもしれない。
パパがいて、ママがいて、私がいて、
一生懸命にピアノを習って、ママが誉めてくれて、パパが誉めてくれて。
……私は、そんな私でいられなくなった。
ママに良く似た名前の、ママに良く似た感じの女の人は、ママじゃない。
その女の人と一緒にいるパパは、私のパパなのだろうか。
わからない。
わかっているけど、わかりたくない。
パパが、ママと一緒に寝ていた寝室で、その女の人とセックスしていた。
白くて大きなお尻。太腿、胸。
私の何倍もボリュームのある、熟れた女体。
ママのような裸の女の人の上にのしかかり、夢中でそれを貪るのは、
私の大好きなパパだった。
父親が、母親以外の女の前で男になる。
それは、私にとって何よりもショックだった。
パパが、ママの前で男の人でいるのはいい。
ママが、パパの前で女の人でいることを望んでいたから。
パパが、ママとセックスするのは全然構わなかった。
でも。
パパが、ママ以外の人とそれをするのは、私にとって
吐き気がするくらいに嫌悪感のあるものだった。
そして、私は、昔の私でいられなくなった。
義母になった人をののしった。
義姉になった人をののしった。
意地悪をした。
傷つけた。
追い出そうとした。
優しい、いい子でいられなくなった。
ママが可愛がってくれた、優しい、いい子でいられなくなった。

103:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:10:25 lzZ1ZIxC
「彩ちゃんは、いい子ね。ママはとっても嬉しいわ」
ママは、いつもそう言って私のことを誉めてくれた。
頭を撫でながら。
家の中―こどもにとって世界の半分以上の存在─で、「そういう子」でいられるということは、
そのこどもの中身が本当に「優しい、いい子」ということだ。
そして、ママのいない家の中で、「そういう子」でいられなくなった私は、
中身が「優しい、いい子」でなくなってしまったのだ。
きっと。
「オネエチャン」に嫌味を言うたび、意地悪をするたびに、私は私でいられなくなる。
ママが頭を撫でてくれた、いい子の彩ちゃんが、どんどんなくなっていく。
それを、止められない。
「オネエチャン」を見るたびに。
長い髪。上品な雰囲気。優しい笑顔。
一つ年上の女の子が持っていたのは、私が持っていたはずの「優しい、いい子」だった。
だから、私は─。

「……」
ずずっ、という音にびっくりして私は我に返った。
ストローが、紙コップの底を吸ってしまった音。
ミルクとシロップをたっぷりと入れたアイスコーヒーは、いつの間にかなくなっていた。
ぼうっとしていたのだろう、それに気がつかなかった。
まわりの人が笑ってないだろうか、と恐る恐る見渡す。
誰も私のほうを見ていない。
ほっとため息をついて、私は立ち上がった。
帰ろう。
いつの間にか、あたりは暗くなっていた。
時計は、20:00を過ぎていた。
4時間も、ここに居たことになる。
(帰ろう)
私は立ち上がった。

104:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:10:55 lzZ1ZIxC
振られたことは、新鮮だった。
男の子には興味がなかったけど、<姉>の恋人は、
ほとんど反射的に誘惑をした自分よりも、<姉>を選んだ。
それが、不思議と嬉しかった。
「……オネエチャン」
言葉にして、心の中の傷に、そっと触れる。
痛い。
だけど、我慢できなくはない、と思う。
少なくとも、<姉>は、私という傷以外のものに目を向け始めた。
それは、良いことなのだろと思う。
冷静に考えれば。
「優しい、いい子にならなきゃ」
不意に出たつぶやきは、私を驚かせた。
「……そうね」
自分で自分に答える。
帰ったら、―祝福してあげよう。
<姉>とあの男の子との恋は、きっと素敵なものなのだから。
ママが生きていたら、きっと微笑むような。
だから、私は、それを祝福してあげたい。
昔の「優しい、いい子」だった私だったら、きっとそうしたから。
「……いいお休みだったかも」
学校から帰ってから何もなかった4時間。
その何もない、カフェでコーヒーを二杯飲んでぼうっとしたことの贅沢。
ちょっと穏やかな気持ちになれた時間だけで、私はとても満足だった。
<姉>に対する気持ちが、何か、変われるきっかけになったような気がするから。

─でも、やっぱり駄目だった。
家に帰ったとき、私は、やっぱり私でいられなかった。

105:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:12:09 lzZ1ZIxC
「―お帰りなさい。今、卵サンド作ってるけど、食べる?」
帰宅したとき、姉はキッチンで言葉どおりのことをしていた。
卵のサンドウィッチは、私の大好物だった。
好き嫌いは多いというつもりはないけど、食欲がなかったり、
コンクール前の緊張したときは、それしか喉を通らなかったりする。
<姉>は、何度もそれを作らされていて、
実際、料理上手の彼女が作る物は絶品だった。
ママが作ったもののように。
私は、ちょっと息を止めて心の中で十数えた。
<姉>の作ったサンドウィッチが、ママの味がするのは、
彼女が私の思い出に挑戦しているわけではない。
私が、味の好みにうるさく注文と駄目出しをしたから、
必然的にママが作ったものにそっくりになったからで、つまりは、私の為したことだた。
そして、私は、いつもそのことさえ気に入らなくて<姉>を怒鳴りつけていた。
優しい、いい子じゃなかった。
十、数え終えた。
言わなきゃならないことは、わかっていた。
「……ありがと。夕御飯、食べてなかったの。ありがたくいただくわ」
はじめて言ったかもしれないお礼の言葉に、<姉>が驚いたように振り向いた。
私は、思わずそっぽを向いた。
でも、耐え切れなくて、ちらりと上目遣いで相手を窺った。
しばらくして<姉>は、小さく微笑んだ。
優しい、穏やかな笑顔で。
誰かから愛されているから、世界中を愛したいと思っている人の優しさで。
誰かから優しくされているから、世界中に優しくなれる人の穏やかさで。
「―ん。ちょっと待っていてね。もうすぐ卵が茹で上がるから」
「うん……」
私は、まぶしい物を見るように<姉>のことを眺め、テーブルに着いた。
てきぱきと動く<姉>の後姿をぼんやりと見つめ、何か声をかけようとした。

106:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:12:40 lzZ1ZIxC
「……オネエチャン……」
「何?」
「……なんでもない」
<姉>は何も言わなかった。
何も言わないことで、彼女が恋人と充実した時間を過ごしたことはわかった。
私が衝動的にあの男の子のことを誘惑したことさえも、
今の<姉>にとってはささいな出来事なのだろう。
(ごめんなさい、って言わなきゃ)
ありがとう、が言えたのだから、それも言えそうな気がした。
でも勇気がちょっと足りなかった。
もう一度心の中で十を数える。
うん、きっと大丈夫。
<姉>は、絶対に許してくれる。
それには確信に近いものがあった。
あ、謝るときは、椅子に座ってちゃ駄目だ。
立たなきゃ。
そう思って私はテーブルの上に手をかけて─それに気がついた。

なんだろう。
何かを包(くる)んだティッシュの包み。
無意識のようにそれに手を伸ばしたのは、好奇心と言うよりも、
<姉>に謝るという、はじめての行為に戸惑い、
それをほんの数秒でもいいから後回しにしたいと思ったからだろう。
臆病な心が、その包みを開けさせ、―そしてもっと自分を傷つけた。
「な……に、これ……」
それを目にしたとき、私は、思わず声をあげていた。
薄いピンク色のそれは、見たこともある
用途も、知識として知っている。
使用済みコンドーム。
私は、悲鳴を上げた。

107:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:13:10 lzZ1ZIxC
避妊具。
男性が精液を女性の膣内に射精しないために使う。
あの日、パパの寝室のごみ箱に入っていたもの。
パパが義母とのセックスで使っていたもの。
義母の女性器に入っていたパパが、
性欲を満たしても子どもは作りたくないので使ったもの。
成熟した男女が、性愛を楽しむための道具。
じゃあ、このゴムの中に入っている大量の粘液は……。
どろりとした、ゼリーみたいな白濁の汁は……。
─男の人の、あれ、だ。
精子、精液、ザーメン。
<姉>とセックスした、あの男の子の、あれ、だ。
それが四つも。
私は呼吸さえ忘れて絶句した。
「なぁに、どうしたの、アヤチャン?」
<姉>が振り向いた。
穏やかな笑顔で。
成熟した女の顔で。
セックスに満足しきった女の顔で。
義母に良く似た、私のママに良く似たその顔を見たとき、私は金切り声を上げた。
「あ……それは……」
驚いたような表情で何か言いかけた<姉>に、私は我を忘れた。
<姉>に謝ろうとした私を。
<姉>と仲直りしようとした私を。
優しい、いい子の私を。
「このっ! 変態っ!! 色キチガイっ!!!」
私は、コンドームを掴んで投げつけた。
怒りのあまり、叩きつけるような感じになったそれは、
狙った<姉>の顔へではなく、キッチンコンロの上に落ちた。

108:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:13:41 lzZ1ZIxC
「あっ!!」
<姉>が狼狽しきった声を上げた。
避妊具は、サンドウィッチ用の卵を茹でている鍋の中に落ちた。
ぐらぐらと煮立つ、お湯の中に。
「あああっ!!」
<姉>の悲鳴は、切羽詰っていた。
まるで、愛する人が傷つけられたかのように。
いや。
しぶきが撒き散らされるのも構わず、鍋を掴んで流しの中にぶちまけた<姉>は、
大切な人が重症を負ったときの必死さを持っていた。
もうもうたる湯気の中、私は、呆然と突っ立っていた。
水道の栓がひねられ、鍋の中身に冷水がかかる。
湯気が収まるまでの数十秒、いや一分ほどの間、私は何をしていたのだろう。
気がついたとき、<姉>が目の前にいた。
鬼のような─と言ったら、鬼が怯えるだろう─表情で。
「……死んじゃったっ!!」
「……え?」
「新治君の、精子、死んじゃった!!」
姉の手のひらの上でくたくたになっているコンドームの中身、
透けて見えるそれは、先ほどとはまた違った白濁色に染まっていた。
卵の白身が、熱を加えられて白く固まるように。
それは、好物の卵サンドのイメージと重なり、私は強烈な吐き気を催した。
だが、<姉>にとって、恋人の精液は、とても大事なものなのだろう。
「―このっ! 人殺しっ!!」
そんなことを口走ってしまうくらいに。
私は、世界がグルグルと回るのを感じた。
ふらつく足を踏みしめ、吐き気を押さえながら、私は必死でそれに抵抗した。
「そうしてやるわよっ! ……あんたの大切なものなんか、何度だってそうしてやるわよっ!!」
<姉>が身体ごとぶつかり、私たちは床に転がって互いをののしりながら掴みあった。
義母が帰ってきて、叫び声を上げて二人を分けるまで、それは激しく続いた。

109:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/12 23:14:12 lzZ1ZIxC
「……」
一時間後、私は、自分の部屋の闇の中で、こみあげる吐き気と自己嫌悪と戦っていた。
義母が私と姉を引き離したが、彼女自身、動転しきっていて、
キッチンの中は、めちゃくちゃだった。
(人殺シッ!)
<姉>の憎しみの塊のようなことばが、耳を打つ。
(シンジ君ノ、精子)
生々しい性的な単語も。
私は、暗闇の中で、暴れた。
どちらも、聞きたくもない単語だった。
私、龍ヶ崎彩が、耳にすべきことばではない。
それを、投げつけてきた<姉>に、私は限りない憎悪を抱いた。
そんな自分そのものさえ、嫌だった。
嫌で嫌で仕方なくて、私は、それをもたらした相手に復讐をしなくてはならなかった。
……復讐?
どうすれば、いいのだろう。
(……アンタノ大切ナモノナンカ、何度ダッテソウシテヤルワヨッ!)
耳の奥に、自分自身の声が響く。
そうか。
そうすれば、いいんだ。
あの子の大切な物は、なんだろう。
二つ、思い浮かんだ。
どちらも、壊してやるには……?
枕元をまさぐって、携帯電話を手に取る。かける先は、私のクラスメイト。
「……もしもし、○○ちゃん? 私、彩。……ええ、こんばんは。
あのね、貴女って、ほら、児童施設のボランティアに行ってるでしょ?
そうそう、私のオネエチャンも最近行きはじめてる。……あれ、来週私も行ってもいいかな?
うん……みんなに、ピアノ、弾いてあげたいんだ。……そう、じゃ、お願いね」
電話を切る。
私は、唇に微笑が浮かぶのを覚えた。
闇の中にいるためにそれを見られないことを、私は感謝した。
自分でも、今私の浮かべているそれが邪悪なものだとわかっていたから。


ここまで

110:名無しさん@ピンキー
07/11/12 23:31:45 t+dVfaxF
GJ!!
人殺しってこういうことでしたか、上手い。
しかし彩の内面が生々しく描写され、妹さんの攻略無くしてのENDは無さそうな状況ですね。
まあ、新治に完全に依存の基盤がある綾子にピアノの方は通用しないでしょうが。
あと新治の方に来たら新治は読めるだろうから、そこからどうやって自己を守る為に必死に彩を懐柔するか期待。
まあ、彩の欠陥部分は性に対する嫌悪感だよなー。

111:名無しさん@ピンキー
07/11/12 23:32:37 l0mtGfkJ
ゲーパロさんGod Job!

112:名無しさん@ピンキー
07/11/12 23:35:28 TrK+FcvK
GJ!
氏ね!と思っていた妹に情が移ってしまった。どうしよう

113:名無しさん@ピンキー
07/11/12 23:42:34 vH9aPxXn
GJ!
両方ともいいかんじに病んでますな。

114:名無しさん@ピンキー
07/11/12 23:55:08 fgnwTB87
GJ。
しかし、俺は楓みたいに恋愛感情以外の原因で八つ当たり的に
善人を攻撃するような自己中には怒りしか沸いてこないな。


115:名無しさん@ピンキー
07/11/13 00:43:49 d0xrC6ZL
>>ゲーパロ専用
GJ!!
妹はツンデレだったのか…デレフラグがあっさり折られたが

116:名無しさん@ピンキー
07/11/13 00:58:47 bKRwOI/+
やばい、おもしろい。けど・・・
シンジ君、頼むから円満に収めてくれー

117:名無しさん@ピンキー
07/11/13 01:55:04 9q+NVhst
綾ちゃんは精子をどうするつもりだったんですか・・・

118:名無しさん@ピンキー
07/11/13 02:18:42 LN2Y5iMk
>>117
そりゃおまえ・・・・・・





野暮なコトは聞くなよ。

119:名無しさん@ピンキー
07/11/13 08:14:24 7mIJqMD1
ゲーパロ氏GJ

120:名無しさん@ピンキー
07/11/13 23:10:42 RbpEEK6U
超GJ!!
次は父親視点が読んでみたいなー
特に綾子のことをどう思ってるのか気になる

121:名無しさん@ピンキー
07/11/14 00:59:54 2gqp161k
GJ!
もう妹はいいよ・・また姉の幸せを奪おうとしてるし・・
新治と綾子が二人っきりで幸せになればいい

122:名無しさん@ピンキー
07/11/14 01:46:40 bhLaxRwA
しかし、妹が慰問に行ってもレパートリーの問題で「綾子お姉ちゃんのほうがいいー」とか言われたりしてw
結構衝動と勢いだけで動く傾向があるから何の下準備もしないだろうし、ガキに高尚なクラシックなんぞわかる訳がねえ。

123:名無しさん@ピンキー
07/11/14 02:03:58 GETuMojL
おいおいさすがに今回のに関しては姉の方にも問題あると言わざるをえないだろうw
正直食事になるはずの場面で精子を、とか想像したらw
そこからいきなり極端に走るのが問題なんであってw
きちんとそれぞれの問題点を描写していってるあたり最後は病んでいても完全ハッピーエンド期待できそうなのが良いんだがw
まあこの物語で最後に試されるのは新治君の甲斐性だなw

124:名無しさん@ピンキー
07/11/14 02:54:42 ysfIESvv
今のシンジのヘタレっぷりを見るに、シンクロ率400パーセント超えクラスの確変が要求されるな

頑張れ、超頑張れ

125:名無しさん@ピンキー
07/11/14 04:11:32 Z0ARIsLW
修羅場キタ

126:名無しさん@ピンキー
07/11/14 09:03:16 b0n63pHT
DQN妹には死んでほしいが、ごめんなさいだけで済まされて
家族仲良しハッピーエンドになりそうだな。

127:名無しさん@ピンキー
07/11/14 09:16:36 0EmnSz8X
あや は しんじ に こころないことば をなげつけた!
あやこ をみかたにつけた しんじ にはこうかがないようだ…
しんじ は かいしょう をはつどうした!
あやこ は はつじょう した!
あや は つんでれ に なった!


しんじ はしょうりした!
しんじ は 5 かいしょうをてにいれた!
あやこ は せいしいりコンドーム をてにいれた!
あや は こいごころ をてにいれた!

128:名無しさん@ピンキー
07/11/15 03:07:52 f6frnvdZ
まあ、使用済みのゴムを大事に持ってたらひくよな。
妹の気持ちもわからんではない。
ちょっとDQN過ぎるけど。

129:名無しさん@ピンキー
07/11/15 03:54:35 4kQQTbUT
帰ってすぐ部屋に大事にしまっておいたら問題は起きなかった筈
食事するテーブルの上にそんなもの置いておいたのがちょっと・・・
まあここで和解してたとしても色々棚上げにした和解だった気がするけど
あとDQNは依存の必須条件だと

130:名無しさん@ピンキー
07/11/15 17:36:08 pGRtVTOC
>>122
あー確かに。なんで姉がガキ共にウケてるか理解してない気がする。
おもっくそクラシック弾いて「どう!?これが格の違いよ!」とかテンション上げて振り返ったら
ガキ共全員、爆睡してて妹涙目とかw

131:名無しさん@ピンキー
07/11/15 19:13:18 8n5cexxp
でもガキってミーハーだから「あの」あやちゃんが弾くってだけで
大うけだぜ、きっと

132:名無しさん@ピンキー
07/11/15 20:51:53 pGRtVTOC
大人の視点から考えればそうだろうけど、自分が子供のだった頃思い返してみるとさ
どう考えても世界的クラシック奏者なんかより、教育TVに出てる歌のお姉さん&お兄さんのが
子供にとってはヒーローなんだよな。

つまり妹がマジで姉潰したいなら、まずは子供向け番組を網羅する必要があるかと。

133:名無しさん@ピンキー
07/11/16 00:43:57 L7eOt0w5
おまいら少しは黙って待てないのか?

134:名無しさん@ピンキー
07/11/16 12:50:42 RFn65vKE
そんなこと言いながら全裸・正座で待ってる>>133はツンデレ

続きにwktk

135:名無しさん@ピンキー
07/11/16 23:49:23 L7eOt0w5
>>134
な、なぜわかった…
まさか監視されてる!?

136:名無しさん@ピンキー
07/11/16 23:57:44 Q43ClYd/
>>133
だってこのスレ書き手が他にいないしな。

137:名無しさん@ピンキー
07/11/17 00:28:33 rttXjTKh
YOU!書いちゃいなYO!

138:名無しさん@ピンキー
07/11/17 00:44:38 YoIcmtcs
とりあえずシンジくん本体は無事らしいな。
いまや龍ヶ崎家の命運は彼の双肩にかかってしまっているぞ。

139:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 20:57:20 RUBfyf+q
<私が私でいられる時>・9

私は、きっと、思いつめた顔をしていたのだろう。
いつもの坂を上がって行くとき、すれ違った子どもたちが怯えたような顔をした。
一瞬ひるみかけた心を、だけど私はどうにか立て直すことが出来た。
(新治君に会いたい)
その想いが何よりも強かったから。
それでも、新治君の家に着いたとき、私は玄関前で躊躇した。
躊躇は、罪悪感と後ろめたさで出来ていた。

昨日の夕方、私は世界を手に入れた女王のように幸福だった。
その数時間後、私は牢獄につながれた罪人のようにみじめになった。
きっかけは、<妹>との喧嘩。
外から帰ってきた<妹>と私は、最初、不思議な空気に包まれていた。
本来なら、顔を合わせた瞬間、取っ組み合っていてもおかしくなかった。
<妹>が、私への当てつけで新治君に言い寄ったのを私は知っていたし、
新治君が家にいることを選択することで、<妹>が振られたということも事実だった。
龍ヶ崎彩。
誰もが知っている天才美少女が、そのことに対してどれだけの屈辱を感じたのだろうか。
新治君の家からの帰り道、私の頭をちらっ、とそのことが掠めた。
ちらっ、と。
ほんのちょこっと、だけ。
私の頭の残りの部分は、新治君と、新治君と先ほど交わした行為のことでいっぱいで、
少しだけ浮かんだ<妹>のこともすぐに忘れ去って、その隙間も新治君のことですぐに埋められたから。
(私、新治君と、セックスしたんだ)
そのことを思うたびに、私は幸せになった。
股の間に何かが挟まったような鈍い痛みも、気にならない。
それは、新治君に私の「はじめて」を捧げた証だから。
痛みや異物感は、むしろ誇らしくさえあった。
帰り道、私はその痛みと、バッグの中に持ち帰った新治君の温もりを感じることで、
自分が世界で一番幸せな女だということを反芻していた。

140:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 20:57:51 RUBfyf+q
バッグの中のティッシュの包み。
それには、使用済みのコンドームが入っていた。
新治君が、私とセックスしたときに使ったもの。
精液が詰ったゴムの袋。
そんなものを大切に持ち帰るなんて、どんな変態女の所業なのだろう。
でも、それは、私にとって宝物だった。
大好きな人と、私の「はじめて」の証。
新治君のエッセンス。
新治君が自分の子どもを作るときに生産する、新治君の遺伝子が凝縮されたエキス。
それを考えると、コンドームに入った精子を持ち歩くことで、
私は新治君といっしょにいるような気持ちになれた。
もちろん、それは錯覚だ。
本当の新治君は一人だけ。
明日になったら、また会える。また声を聞ける。またおしゃべりができる。
でも、冷たい家への帰り道に、新治君の一部と一緒に「いる」ことは、
私の心をとても温かくした。
そう。ゼリーのように濃い粘液が入った避妊具は、
指先に触れると、まだあの男(ひと)の体温を伝えてくれる。
それが嬉しくて、私は帰り道、何度もバッグの中をまさぐった。
薄いゴム膜越しに触れる新治君の体液は、私の心の中を新治君への想いでいっぱいにし、
<妹>とか、家のこととかを、みんな追い払ってくれた。
だから、私は、石岡綾子という人間にとって敵地に等しい
龍ヶ崎の家の玄関をくぐったときでも、とても心穏やかだった。
<妹>はまだ帰ってきていなかった。
拷問を待つ時間は、拷問そのものよりも苦しいという。
でも、私は、その時間さえ、微笑んで過ごした。
宝物をキッチンの机の上に置いて眺め、時々指先で触れることで温もりを確かめながら。
だんだんと精液が冷えていってしまうのは悲しかったけれど、私の心は穏やかだった。
戻ってきたら私を責めるにちがいない<妹>のために
好物のサンドウィッチを用意してやる余裕さえあったのだ。
そして、<妹>が帰ってきた。

141:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 20:58:22 RUBfyf+q
私の様子にとまどったような感じになった<妹>は、
サンドウィッチを作っていることに対して、
珍しく─はじめてかもしれない─私にお礼を言った。
そして、さらに何か言いかけ─私をののしり始めた。
テーブルの上に置いてあった、コンドームを見つけて。
ののしりながら、<妹>はそれを掴み取り、コンロの上に投げつけた。
私は悲鳴を上げた。
コンドームは、卵を茹でている熱湯の中に打ち捨てられ、
新治君の精子は、煮殺された。
「人殺しっ!!」
私は、そう叫んだのかもしれない。
叫んだ、自分の言葉に、私は戦慄した。
新治君の、エッセンス。新治君の、一番濃密な分身。
それは、熱湯の中で、白く固まったたんぱく質に変わった。
それは─新治君の死骸。
恐怖と罪悪感に染まりきった私は、その「殺人」を犯した<妹>に掴みかかった。
でも、それは─その状況を作ってしまった自分への怒りと後悔の衝動に過ぎない。
人殺しは、私だ。
新治君の精子を、温もりを、ただのたんぱく質の塊に変えてしまったのは、私。
私の行為と、選択。
それが<妹>にその行動を取らせてしまった。
少し考えれば分かっていたことなのに。
最初、そうしようと思ったように、冷凍庫の奥に深くしまいこんでしまっていれば、
料理なんてしない<妹>や、母さんに知られることなく
大事な思い出は生きたまま保存することが出来た。
あるいは、帰り道に思いついたとおりに、
まだ温もりが残っているうちに、その精液を飲み込んでお腹の中に収めてしまえば、
大事な思い出は、私の身体の中に溶け込んでずっと消えることがなかった。
でも、私はどっちも選ぶことが出来なくて、テーブルの上に乗せたまま躊躇して、
その大事な思い出は─<妹>に殺されてしまった。
それを認めるのが恐くて、私は、<妹>に罪をかぶせた。

142:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 20:59:03 RUBfyf+q
掴みかかり、ののしり、思い出を、温もりを殺したのが相手だと自分に納得させようとした。
<妹>はののしり返し、私を否定し、そして二人は相手につかみ合ったまま転げまわった。
母さんが帰ってきて、金切り声を上げて二人を引き離すまで、
私たちは互いを憎み殺さんばかりの勢いでわめき散らした。

「……」
チャイムを鳴らすまで、何秒かかったのだろう。
私は、新治君の家の玄関で立ち尽くしたままだった。
無意識の間に、チャイムは鳴らしたのかもしれない。
昨日の晩、あの後、部屋に帰って寝るまで記憶がないように。
母さんは、私に何か言ったかもしれないし、いつものように何も言わなかったのかも知れない。
娘が─出来の悪いほうの娘が─処女をなくしていようが、男とセックスをしてこようが、
日本中に誇れる義理の娘を持った母親は何も気にしないだろう。
私だって、母さんに気にかけてもらえなくたって、構わない。
私には、もっと大事な人がいるから。
でも、私は、その人の一部を殺してしまって……。
どの顔を下げて、私は新治君に会えばいいのだろう。
ドアが開いた瞬間、私は涙をこぼしていた。
「……あ、綾ちゃん……?」
びっくりしたような新治君の顔。
それが、視界ごと歪んだ。
涙で。
そして、その涙がこぼれる前に─私は温かく包み込まれた。
「ど、どうしたの? と、とにかく、中に入って─」
肩を抱いた手から伝わる本物の新治君の温もりは、
スキン越しに触れたそれよりももっと温かくて、優しくて、私は泣き出した。
そして、私は新治君に、私の罪を告白した。

143:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 20:59:34 RUBfyf+q
「えっと、その……」
新治君は、最初、戸惑ったような表情で私を見つめた。
それから、あちこちに視線をめぐらして何か考えているようだった。
当然だ。
私は、心臓が鷲?みにされたように怯えた。
血が凍る。
全身の産毛が逆立つ。
歯の根がかみ合わない。
自分の肩を抱いたのは、寒さに耐えられなくなったから。
砂漠の遭難の果てに見つけたオアシスに、拒否される感覚。
足元の大地が腐り果て、なくなる感覚。
世界に見捨てられて、私一人しかいない感覚。
でも、嘘はつけなかった。
新治君を騙すことはできなかった。
それは、新治君を裏切ることだから。
新治君に、自分の都合のいい嘘をついたり、
都合のいいことだけを喋ることは、新治君を一番傷つけることだから。
私は、新治君を絶対に裏切らないと誓った。
それは、きっとこういう時に嘘を言わないことや、隠し事をしないことも含まれる。
だから、私は、私が新治君の精子を殺してしまったことを、彼に伝えた。
「ええと、その……」
新治君は、しばらく考えて、それから、勢い良く何かを言った。
「……え?」
「……だ、だからさ、その、膝枕してよ、綾ちゃん……」
私は、混乱した。
「ひ、膝枕?」
「うん……だめ……?」
勢い良くそういった新治君は、聞き返されて声が小さくなった。
「あ、あああっ、大丈夫よ、新治君! するわ、するわよ、膝枕っ……!」
何を言われているのか、分からないまま私は慌てて頷いた。

144:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:00:05 RUBfyf+q
「……ごめんなさい。新治君の精子は……飲んだわ。
土に埋めてあげればいいのか、他に何か出来たのか、わからなかったから、
部屋に戻った後、全部、飲んだの。お腹の中で暖めれば、火傷した精子君もきっともう痛くないと思って……。
ごめんなさい……本当に、どうしていいか、分からなかったの……」
罪の告白は、覚悟していたよりもずっと穏やかに口にすることが出来た。
太ももの上、スカート越しに伝わる新治君の体温が、そうさせていた。
膝枕。
今は、それに耳かきが加わっている。
新治君が、突然言い出したのは、その「お願い」だった。
混乱、と言っていいほどに戸惑っていた私は、
ベッドに腰掛けて、新治君の頭を膝に乗せたときに、嘘のように気持ちが落ち着いた。
大好きな人と、触れ合っている。
そして、細かな手作業。
新治君の耳の中を傷つけまいと手元に集中すると、雑念は綺麗に消えた。
新治君は、向こう側を向いて、右の耳を私に預けている。
その耳たぶは真っ赤だ。
(そうか、……そうなんだ)
不意に私は、新治君が、私を落ちつかせるために膝枕と耳かきをねだったことを悟った。
臆病で、照れ屋で、傷つきやすい男の子が、
拒否されるかもしれない、という怯えを抑えて求めたことは、自分のためのものではなかった。
(どうして、この男(ひと)は、こう……)
私の心が分かってしまうんだろう。
「あ、あの、僕、全然気にしてない…から……」
むこうを向いたまま、新治君がつぶやく。
「ありがとう……」
心の奥を見透かされていることが、すごく、気持ちよかった。
不意に私は、小さな頃、両親になんでも言えたことを思い出した。
いたずらはあまりしない子だったけど、優等生でもできないことや失敗はたくさんあった。
それを、父さんや母さんには包み隠さず言えた。
怒られたけど、嘘をつかなかったことは誉められた。
正直に言えた自分が、大好きだった。

145:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:00:37 RUBfyf+q
父さんが死んでしまって、母さんに全てを正直に言えなくなった。
ずっと忘れていた感覚。
新治君は、その大好きな私を思い出させてくれた。
胸の中のつかえが、半分くらい、なくなってしまったことに私は気が付いた。
新治君は許してくれた。
コンドームを持ち帰った変態女も、
その精子を殺させてしまった罪深さも、
結局その精子の死骸を飲み込んださらに罪深い変態女の私も、許してくれた。
─後は、私の心の問題。
とげのように引っかかっている悔悟の念は、自分一人で溶かすしかない。
それでも、鉛のように重かった心は、随分と軽くなっていた。
何よりも、先ほど感じていた世界の消失感が、今はもうない。
それだけで、今の私には、十分だった。
「……」
私の膝の上で、新治君が一瞬固まる。
そのことさえ、伝わっているのかもしれなかった。
「……ん……反対側も、……お願いしていい?」
「うん、いいよぉ」
返事と同時に、新治君は、身体をころんと反転させた。
「え、えっ……えええっ!?」
逆側と言うと、てっきり、一回起き上がって逆側に寝そべるのだと思った。
けれど、新治君は、身体はそのまま、向きのほうを変えた。
つまり、私の太ももの上で、私のほうを向いたのだ。
「……」
「……」
二人は、時間が止まったように動かなかった。
すうっ。
新治君が深呼吸をした。
私の膝の上で、私のほうを向いて。
「あっ……」
私の背筋に、電流が走った。

146:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:01:45 RUBfyf+q
新治君の顔は、私のお腹のほうを向いていて、
つまりそれは、私の二本の太ももとお腹の合わさる接点に近くて、
もっと言えば、私の股間─性器のすぐそばにあった。
新治君の深呼吸が、ふたつ、みっつ。
スカートは、冬服であっても、数ミリしかない、ただの布切れ。
その下のショーツだって。
「……し、新治君」
「綾ちゃん……いい匂いがする……」
それは、体臭そのものや、香料入りの制汗スプレーのことを言ったのかもしれない。
でも、私の耳には、それが薄い布越しに、
新治君が私の奥をかいで言っているように聞こえた。
嗅がれている。
自分の女性器の匂いを。
大好きな男(ひと)に。
私の牝の本能は、たちまちのうちに燃え上がった。
熾き火のように胸の奥を焼くとげの痛みを、つかの間忘れるくらいに。
性器の匂いをかがれていると思ったのは、錯覚ではないのかもしれない。
新治君の耳はさらに真っ赤になっていた。
私の耳も、きっとそれ以上に赤いだろう。
新治君が、顔をうずめたまま、つぶやいた。
「……あ、綾ちゃん」
「な、何、新治く…ん……」
「見て……いい?」
「……うん!」
ベッドの上に横たわり、スカートをまくられる。
蜜に濡れたショーツを見られるのは恥ずかしかい。
けれど、それを脱がされるともっと恥ずかしくなる。
新治君が、ためらう様子もなく、そこに顔を近づけて、
唇と舌で愛撫を始めたときは、もっと。

147:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:02:16 RUBfyf+q
「ひあっ……んっ……」
濡れた舌が、もっと濡れた粘膜を這う。
舐められてる。
新治君に、私のおま×こを。
女の子が、最後まで隠しておかなきゃならない大事な場所を。
私の、牝の中心を。
無抵抗で、受け入れて。
その事実が、私の身体と心を熱く甘く支配する。
経験も技巧もない愛撫は、信じられないくらいの快感を生み出していた。
昨日まで童貞で女の子が恐くて仕方なかった男の子のクンニリングス。
はじめて異性の性器を舐める、というその作業に新治君は夢中になっている。
そして、私は、自分の女の部分を貪る男(ひと)の愛撫に、
声も上げることも出来ずに悶えた。
「ひあっ……!!」
昨日まで処女だった、敏感な女の子は、二分もしないで絶頂に達した。
オナニーとは違う、ものすごい刺激。
身体の底が抜けてしまったように、私はベッドの上でぐったりとした。
「あ……綾ちゃん……」
「し……んじ……君……」
汗まみれの顔を上げた新治君の顔を見て、私は衝動的に起き上がった。
「え……」
「……新治君にも、してあげるね」
ズボンの前をまさぐる。
ベルトとチャックは簡単に解けた。
「あ、そんな……」
焦ったような、新治君の声。
でも、それは欲情も期待も含んでいて……。
「新治君も、して欲しいんでしょ?」
「……う、うん」
私は、新治君のしてほしいことがわかる。
だから、私はためらいもせずにフェラチオを始めた。

148:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:02:46 RUBfyf+q
男の子のおち×ちんを舐める。
そんなこと、もちろん、したことない。
昨日まで私は処女だったし、昨日は、性器と性器の普通のセックスだけで精一杯だった。
でも、こういうことをする、というのは私の中で自然だった。
さっき新治君にしてもらったクンニリングスと同じくらいに。
生殖器は、自分の身体の一部だけど、自分だけのものじゃない。
自分の相手のために使用する器官でもあるのだ。
だから、ヒトは、愛しい相手の性器を愛撫する。
こういうふうに。
唾液にまみれた舌と口の粘膜は、固くて熱い性器に良くなじんだ。
お湯と石鹸の匂い。
新治君は、私を待つ間、お風呂に入っていたのだろう。
私が、家を出る前にシャワーを浴びてきたのと同じように。
こういうことをすることを、二人とも望んでいたのだ。
だから、未経験のクンニリングスもフェラチオも、二人の間では自然な行為だった。
「うあっ……、あ、綾ちゃん、僕、もうっ……」
新治君がうめいた。
「……っ!!」
新治君の手が、私の頭を抱え込んだ。
「んっ、んむっ……!?」
突然のことに、私はびっくりしたけど、かろうじて口は離さないですんだ。
「あ、や……ちゃん、いくよっ、僕、もう、精子、出るっ!!」
新治君が興奮しきった声をあげた。
ああ、新治君、いくんだ。精子、出すんだ。
私の頭を固定して、腰を振り始める。
「あっ……」
乱暴なそれが、男の子のいく瞬間の衝動的なものということを私は理解した。
女の子と違って男の子の性欲は、刹那的で、支配的で、乱暴なものだ。
私のことをいつも優しく気遣ってくれる新治君も、射精の時は、どうしようもない衝動に襲われるのだ。
だから、目を閉じて、私はそれを受け入れた。

149:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:03:17 RUBfyf+q
「うあっ、いくっ! 精子出るっ!
―飲んでっ、綾ちゃん、飲んでっ! 僕の精子飲んでっ!!」
甘い悲鳴を上げて、新治君が私の口の中に射精を始めた。
その横暴さも、私は喜んで受け入れた。
熱い塊が、口の中を満たす。
新治君の射精は、長かった。
生臭い、男の子のエキスが私の唇と舌を犯す。
新治君の精液の味は、知っている。
昨日、自分の部屋で泣きながら、死んでしまった精子を飲み込んで、お腹の中に収めたから。
でも、熱湯で固まっていた白い粘液と、今、口の中に出されているものとは全然違っていた。
「んんっ……」
私は、必死でそれを嚥下する。
新治君が、「飲んで」って言ったから。
新治君は、自分の女に精液を飲んでもらうのが好きだから。
新治君が、それを望んでいるなら、それがどんな乱暴なことでも受け入れる。
熱い粘液が、喉の奥を通っていく。
お腹の中が焼けそうな、感覚。
でも、それは─。
私がはっとして目を開けるのと、新治君がぐったりと力を抜くのは同時だった。
「……はあっ……はぁっ……」
荒い息をついて、新治君が離れる。
私は、口の中に残った粘っこい汁を飲みこもうとした。
「んっ……んくっ……」
新治君は、濃い精液がたくさん出る体質なのだろう。
喉の奥にひっかかるそれを、私はようやく飲み下した。
「あ、綾ちゃん……」
新治君が、我に返ったような声を上げた。
「ご、ごめ……は、吐き出してもいいよ……」
私は首を振った。

150:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:03:48 RUBfyf+q
「ううん。もう、全部飲んじゃった。新治君の精子」
「ご、ごめん、綾ちゃん、僕、調子に乗って……」
「ううん、美味しかったよ、新治君の精子」
私は、くすりと笑って新治君に返事をした。
新治君の、今の行為の意味が分かったから。
「……新治君、今、わざと私に精子飲ませたでしょ?」
新治君が、固まった。
図星を指されて。
「え……、あ、うん。マンガとかで、そういうの見てたから。
ごめん、ごめんなさい。そういうつもりじゃなくて……」
新治君は、しおしおとうなだれながら、謝ろうとした。
「ううん。そうじゃなくて、……私のために、そうしたんでしょ?」
「……!!」
「あはっ、やっぱり」
私は、口元に手を当てて笑った。
精液を無理やりに飲まされる。
女の子にとっては、屈辱だ。
たとえ、それを受け入れる覚悟のある女の子でも、
ああいうふうに、動物的な衝動を受け止めるのは、悲しい。
まるで、自分が男の子の射精のための道具のように扱われるから。
そして、新治君は理由もなしに、そんなことをする男の子じゃ、ない。
それは、私のための乱暴だった。
「うふふ。今ので許した、って私に伝えたんでしょ? 私、というより、私の身体に……」
「……」
この沈黙は、肯定。私も、新治君の心が読める。
新治君は、私が、私自身でも溶けないで苦しんでいるトゲに気がついた。
自分でも説明がつかない罪悪感。
それは、新治君の死骸─正確には昨日の精子の死骸―を死なせて飲み込んだことの罪悪感。
謝って、許してもらった。
それ以上は、誰にも望めない。新治君にも望めない。
でも、私は、自分自身が許せなかった。

151:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:04:19 RUBfyf+q
トゲは、飲み込んだ精子の死骸の形を取って私の身体の奥にひっかかっている。
誰も、それを溶かせない。
私自身が、時間をかけて溶かしていかなければならないトゲ。
でも、新治君はそれに気がついた。
そして、わざと乱暴に、私に精子を飲ませた。
それを受け入れ、耐えるという代償行為は、贖罪だ。
そして、新しい精液を新治君の意思のもとに飲まされることは、昨晩の私の行為を上書きする。
「新治君……私のお腹の中、あったかいよ」
私は服の上からお腹をそっとなでた。
今飲み込んだ新治君の精子は、温かい、生きてる精子。
それは、私の体の奥にささったままの、自分の仲間の死骸を溶かして流し去った。
ことばだけではできない、対処法。
代償行為。
それは、ものごとの解決につながらないという人もいるけど、それはきっとちがう。
こういう代償行為でしか解決できないこともあるんだ。
私はそれを知っている。
新治君も。
だから、私は、私の大好きな人に抱きついた。
抱きついて、甘えた。
私が、新治君を傷つけないようにしているのと同じくらい、
新治君は、私を傷つけないようにしてくれている。
私が、新治君を新治君のまま好きになっているのと同じくらい、
新治君は、私を私のまま好きになってくれようとしている。
それが、何より嬉しかった。愛しかった。
─だから、私は、何があっても大丈夫だった。
新治君の温かい塊をお腹の中に収めたまま、30分遅刻して、
児童施設のボランティアに着き、リーダーの人に怒られても。
そのまま慌しい準備にこき使われても。
そして、―<妹>が、龍ヶ崎彩が来ていて、
今日は彼女がピアノを弾くと言い出しても。

152:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:04:51 RUBfyf+q
「―すごいわ、本物の彩ちゃんよ」
ボランティアリーダーは、近くの女子大の生徒だった。
興奮気味に、<妹>を眺めている。
「昨日、大曾根さんから電話があったのよ。
彩ちゃんが、ボランティアでピアノ弾きたいって」
大曾根さんは、<妹>の同級生で、このボランティアにも不定期で参加している。
その伝手を使って、<妹>はここに来た。
たぶん、私に意地悪を、復讐を、するために。
「すごいよね、あの彩ちゃんだよ。近所で見かけるけど、
生演奏は市のコンサートのときくらいしか聞いたことないわ」
「これから、ずっと参加したいって。うちらがピアノ弾かなくてもよくなったわね」
「彩ちゃんが固定メンバーで参加してくれるサークルなんて、すごいよね」
別な子も、テレビの中で見る美少女に興奮気味だ。
調律まではいかないが、弾こうとするピアノの音を丹念に確認し始めた<彩ちゃん>に
普段と違った雰囲気を感じ取ったのだろう、子どもたちも、少し騒がしい。
そのうちの一人が、私のもとに走って来た。
「綾子お姉ちゃん、今日はピアノ、しないの?」
「そうね、今日は、アヤチャンが弾くわよ」
「アヤチャンが?」
「うん。私よりずっと上手いから、聴いてごらん」
「はぁい」
子どもたちのざわめきと、学生たちのささやきが頂点に達したとき、
日本中のミーハーと、世界中のピアノ関係者が<ホワイトプリンセス>と絶賛する少女は、
にっこりと笑って顔を上げた。
「―リストの<超絶技巧練習曲>を弾きます。一曲だけですが」
おお、と息を飲むのが聞こえた。
ボランティアのメンバーには、私のほかにもピアノが弾ける人間が何人もいて交代でピアノを弾く。
そして、そういう人間にはわかる。
その曲が、どんなものなのか。
それを弾ける娘が、どれほどの技術を持っているのか。

153:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:05:22 RUBfyf+q
<超絶技巧練習曲>。
ピアノ曲としては最高難度の曲の一つだ。
史上最高の天才ピアニスト、リストがその神がかり的な演奏技術を磨くために
自ら作曲したという練習曲。
当時、全曲を原曲のまま弾きこなせるのはリスト本人のみ。
何現代においては何名かのピアニストがレコーディングに成功したが、
それは、十分に調律したピアノを使い、何回もトライしたものだ。
こんな古びたピアノで弾くものではない。
「では─」
しかし、天才少女は、その難曲も楽々とこなした。
白い指が、魔術のように動く。
安物のピアノが付いていけない音さえ、上手くカバーした。
その曲が終わった後、私はため息が漏れるのを自覚した。
周りの学生たちも。
「―いかがでしたか。次は、第九第四章を演奏します」
<妹>は、確かに私のほうを見ながら、そう言った。
勝ち誇って。
私は目を閉じて、小さく頷いた。
ピアノでは、勝てない。
それは分かっていたことだった。
目の前で聴いてみて、それがよく分かった。
でも、私は、不思議とそれを悔しいとは思わなかった。
彼女が─龍ヶ崎彩が、どれだけの才能と努力との上で存在するのかが改めて分かったから。
そして、今、新治君が隣にいる石岡綾子は、それを素直に認めることができる女の子だったから。
私は、拍手をしようとした。
呆けたような学生たちも我に返って拍手をしようとして、
「つまんなーい」
という子どもたちのことばに、拍手は、そのタイミングを失った。

154:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
07/11/18 21:05:58 RUBfyf+q
「え……?」
思いがけないことばを耳にして、<妹>は戸惑ったような表情を浮かべた。
「つまんなーい。おうたの曲、まだー?」
「おうたー!」
「アッキアキにしてあげるー、はー?」
「やー。エアーウルフがたおせない、が、いいー!」
子どもたちが騒ぎ始める。
無理もない。
最高峰のピアノ曲は、それを理解できる人間が少ないのだ。
そして子どもは残酷だ。
わからないものは、わからないという。
全身で、遠慮なく。
「そ、そうね、みんなが分かる曲がよかったわね。何にする?」
強張った笑顔で、龍ヶ崎彩が聞く。
「―ぴくるー!!」
誰かが叫ぶ。
「ぴくるー!」
皆が、わっと同意した。
「ぴ、ぴくる……?」
聞いたこともない単語に、<妹>が困惑した。
「―ぴ、ぴ、ピラルクー、ぴっくるんるん♪」
男の子たちが歌い始めた。
「―ぴ、ぴ、ピラルクー、ぴっくるんるん♪」
女の子たちも歌いだした。
<恋のぴくる伝説>。
第二期放映も決定した、大人気の変身魔女っ子アニメの主題歌だ。
恐竜とともに塩漬けになっていた古代魔法王国のプリンセスが、
「魔法」と「腕力」と「野性」でご近所の事件を解決する単純明快なストーリーは、
少女アニメとは思えない蛮勇を奮ったアクションシーンと、
作中で自分は鯉(=恋)だと言い張る魚のマスコットキャラ・ピラルクー君のおかげで、
女の子のみならず男の子にも人気だった。


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