【高津カリノ】WORKING!!エロパロNo.5at EROPARO
【高津カリノ】WORKING!!エロパロNo.5 - 暇つぶし2ch850:名無しさん@ピンキー
10/05/28 17:56:48 YhJ4Fdvq
>>849
音尾妻追加

851:名無しさん@ピンキー
10/05/28 18:09:45 S8+DJ/ir
半数以上の女が予測不能って事じゃないかw

852:名無しさん@ピンキー
10/05/29 03:01:09 WXr54Yo0
相馬さんって隙がなさそうに見えて結構隙だらけだと思うんだが

853:名無しさん@ピンキー
10/05/29 03:13:19 TPSfLcwZ
いいじゃん、好きに書かせてくれよ

854:名無しさん@ピンキー
10/05/29 05:20:04 nPdNoZFv
山田がミステリアスな魅力に相馬さんはメロメロですよ!!

855:名無しさん@ピンキー
10/05/29 13:20:17 //mywwHG
>>854
仕事しろ

856:名無しさん@ピンキー
10/05/29 13:33:28 QHRu6ryO
実は種が佐藤の事が好きで・・・
って想定の同人誌が出てくれないかと期待してる

857:名無しさん@ピンキー
10/05/29 18:50:08 ccMFLaVO
>>856
・何でも話す
・佐藤が八千代を好きという事を知らない
・ガムあーんの時に真ん中に座っていたのに体の角度的に見てないっぽい

おいしすぎる

858:名無しさん@ピンキー
10/05/30 23:27:50 Nnkt9mHx
佐藤さんと轟さんがいつものように喋ってるのを見て
急にぽぷらの胸がズキズキしはじめたら兆候。
その前日くらいに佐藤さんがぽぷらに優しい一面を見せたりしたらなおダメージアップ

859:名無しさん@ピンキー
10/05/31 02:05:07 TZcQlaOB
やべぇ、切ない話もいける俺にはたまらんシチュエーションだ

860:名無しさん@ピンキー
10/05/31 10:53:52 rZ0PltXT
いい最終回だったな・・・

861:名無しさん@ピンキー
10/05/31 13:51:54 sSK2sA0z
大学卒業後即籍を入れた幸せと不幸せが同居してるさとやち調教生活はまだですか
俺がお前を守るからとか言って剣を外させるところから教育開始で
「女の子が生まれたら名前は」「駄目だ」的なやり取りまだですか
夢オチでお願いします

862:名無しさん@ピンキー
10/05/31 14:44:08 YaOdZJK5
小鳥遊は将来娘を持ったら伊波父に似そうだな
誰かそのネタを

863:名無しさん@ピンキー
10/05/31 18:24:17 /Q0w4oWa
といってもなずなに対しても姉たちの様にはなるなと願うだけで何をしてるってワケでもないしな

864:名無しさん@ピンキー
10/05/31 18:29:19 BEtONHBJ
幼女いなみんにイタズラする伊波父ネタは同人で出そう

865:名無しさん@ピンキー
10/05/31 23:29:40 qKFEhsOq
>>862
あの親父さんの教育方針は真っ向から否定したが、
娘に対する溺愛っぷりは親父さんそっくりってことか
まあ、あんな教育をしなくても、母親の遺伝子を受け継いでしまったせいで
男が近くにいると本能的に身構えるor殴りそうになる悪癖を
生まれつき持ってるってオチがつきそうだが
もしくは、孫娘が可愛くて心配になったおじいちゃんが
娘夫婦に隠れてあの教育を施すor
施そうとしたら娘夫婦にバレてボコボコされるとか

866:名無しさん@ピンキー
10/05/31 23:45:40 OfxABoaP
遺伝子に刷り込まれているのかよw

867:名無しさん@ピンキー
10/06/01 12:58:14 KK/iYYtA
たかいなとさとやちでWデートをしたら、
伊波は男殴るし八千代は帯刀だしで男達は大変だろうと思う。

ワグナリアでいちゃつけばみんな幸せ。

868:名無しさん@ピンキー
10/06/01 13:07:43 vxA9/5oB
殴打はコミュニケーション
帯刀はファッション

869:名無しさん@ピンキー
10/06/01 18:18:37 +my0omIv
SSはまだかー

870:名無しさん@ピンキー
10/06/01 18:31:21 vxA9/5oB
たかいなで
携帯で会話(録音したやつ)後、携帯に口付けて、照れはしゃぐ伊波
…を偶然目撃してうろたえるタカナシ
お願いします。誰か!

871:名無しさん@ピンキー
10/06/01 20:45:59 KK/iYYtA
たかいなはネタはいっぱいあるけど、なかなかエロくならないんだよなぁ

872:名無しさん@ピンキー
10/06/01 20:54:23 vxA9/5oB
>>871
カモーン!
読んでいてこそばゆくなるようなのも好物
WORKINGはエロ2:純情8くらいが丁度いい

873:名無しさん@ピンキー
10/06/01 21:01:43 fEEqmnOb
エロ無しも大歓迎ですよ

874:名無しさん@ピンキー
10/06/01 21:15:40 D2uR7ihs
ホレホレ早くおしよ

875:名無しさん@ピンキー
10/06/01 21:15:41 ITXyExyi
ていうかあんまりエロいとな・・・
エロパロ板でいうのもなんだけど

876:名無しさん@ピンキー
10/06/01 21:23:29 P+LGvpyG
エロもいいが、単に二次創作を楽しみたいという気持ちが強い

877:名無しさん@ピンキー
10/06/02 00:12:00 AtDV1mIc
たかいなでニヤニヤしたいとです

878:名無しさん@ピンキー
10/06/02 01:30:45 MkGs/x2x
さとやちでほのぼのしたいです

879:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:08:38 9Od7QJ5u
にやにやもエロエロも楽しめるおれさいきょーーー といいたいがグログロは苦手。
相馬さんが山田にからまれてピンチになる展開もみたい

880:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:08:41 7/60TGq3
>>871です。
スレ読み返したら、誘い受けのようになっていて、気分を悪くされた方申し訳ないです。

無駄に長くなったたかいなエロなしです。




「伊波、休みのところ悪いが今日昼だけでも来れないか?
小鳥遊が今日熱出してで休むって連絡があってな…」


「伊波ちゃん、もうあがって大丈夫だよー。
今日はありがとうねー」
「ううん、小鳥遊くん休みだって言うし…」
「かたなしくん、風邪かなぁ…心配だよね」
「…うん…」
「伊波ちゃん、お見舞い行ってみたら?」
「えっ⁉おっ、お見舞い?」
「きっとかたなしくん喜ぶよ!」
「…でも…」
「種島ー、料理あがったぞー」
「はーい!伊波ちゃん、かたなしくんによろしくねー」
「えっ…たっ、種島さん⁉」


散々迷ったあげく、結局私は小鳥遊君の家まできてしまっていた。
やっぱり、お見舞いなんて迷惑かな…
殴っちゃうかもしれないし…
門の前でウロウロしてると、急に玄関のドアが開いた。
「あっ、伊波さん!」
出て来たのは小鳥遊くんの妹、なずなちゃんだった。
「もしかしてお兄ちゃんのお見舞いに来てくれたんですか?」
「う、うん…でも、やっぱり迷惑だから止そうかと…」
気まずくてもじもじしてしまっていると、なずなちゃんが笑顔で私の手を取った。
「よかったぁー!
実は今からお夕飯の買い物に行くところなんです。
今日、一枝お姉ちゃんも梢お姉ちゃんも仕事でいないし…
お兄ちゃん一人残して行くの心配だったんです。
伊波さん、ちょっとお留守番しててもらっていいですか?」
「え、でも…」
「お兄ちゃんもうだいぶ良くなりましたし、今寝てますから!
伊波さんがいてくれたら安心出来るんですけど…ダメですか?」
いつも迷惑をかけている手前、無下に断れない。
なずなちゃんは私に鍵を預けるとニコニコと出掛けて行った。

「…おじゃまします」
いつもと違う静かな小鳥遊家にあがらせてもらう。
お邪魔するのは三度目なので、迷うことなく小鳥遊君の部屋に向かった。
コンコンと控えめにノックする。
「た、小鳥遊くん?伊波です…」
声をかけるが返事がないので、ゆっくりとドアを開けて部屋に入る。
なずなちゃんが言った通り、ベットで眠っている小鳥遊くんを見つけた。

881:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:13:42 7/60TGq3
殴らないよう距離をとってぺたりと座らせてもらう。
眠っている小鳥遊くんは、なんだかいつもより幼い。
そう言えば、私より年下なんだっけ。
16歳で、学校行って、バイト週7働いて、家事をして、家族の世話をして、私に殴られて…
今回の発熱も日頃の疲れが溜っていたからに違いない。
…やっぱり、あの時世話係をかわってもらうべきだったのかもしれない。
嫌われても、怒られても、こんな風に好きな人を追い込んでしまうよりはよっぽど良い。

「小鳥遊くん、ごめんなさい…」
いつのまにか涙が零れていた。
声を出さないようにと思ってもひっくひっくとしゃくりあげが止まらない。
明日、ちゃんと言おう。
杏子さんに言って小鳥遊くんを係から外してもらおう。
また小鳥遊くんが怒って、もう口も聞いてもらえなくなるかもしれないけど、小鳥遊くんにとってはその方がいいんだもん。
私の病気に小鳥遊くんをこれ以上つきあわせちゃいけないんだ。

頭はちゃんとわかっているのに、涙がぽろぽろと流れてくる。
罪悪感と離れてしまう寂しさで私の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
小鳥遊くんが起きる前に、顔を合わせないようにして帰ろうと思ったその時だった。

882:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:15:06 7/60TGq3

「…いなみ、さん…?」
声をかけられてびくっとしてしまう。
「あれ、どうしたんですか?なんで家に?」
顔を上げると、小鳥遊くんが上半身だけ起き上がって、こっちを見ていた。
眼鏡をかけていない小鳥遊くんは、はっきりと見えていないらしく、目付きが随分悪い。
「…ああ、お見舞いにきてくれたんですか?
すみません、たいしたことないんですよ」
小鳥遊くんが手探りで枕元の眼鏡をさぐる。
「…だめっ‼眼鏡、かけないで!」
私は素早く小鳥遊くんの眼鏡を奪った。
「伊波さん、何するんですか⁉」
「だめ…こっち見ないで…」
「伊波さん?状況が全然理解できないんですが…」
小鳥遊くんは困惑している。
困らせたい訳じゃないけど、小鳥遊くんに泣き顔を見られたくない。
小鳥遊くんは、すごく優しいから。

「あのね…なずなちゃん今買い物に行ってるの。
鍵、預かったんだ。ここにおいておくね」
なずなちゃんから預かった鍵を机に置く。

「…伊波さん、何があったんですか?」
見えない小鳥遊くんが目を細めてこっちを見てる。
まるで知らない男の人みたいだ。
「ううん…気づいただけ」
「え?」
私は涙と殴りたいのと逃げたいのを我慢して、真っ直ぐ小鳥遊くんに向き合った。
「小鳥遊くん、迷惑ばっかりかけてごめんなさい。
…今まで、ありがとう」
私はぺこりと頭を下げた。
これが小鳥遊くんと向き合える最後かもしれない。
「…世話係の事を言ってるんですか?」
小鳥遊くんが怪訝な顔をした。
「うん。…やっぱりもう迷惑かけたくないから…」
「待って下さい。前も言いましたよね?気を遣わないで下さいって」
「違うの。私がイヤなの…」
ぐっと小鳥遊くんが息を飲んだ気配がした。
小鳥遊くんの顔が強張っている。
「俺じゃあ、力不足ってことですか…?」
「違うよ!小鳥遊くんがいなかったら男の人となんて話せなかったもん!」
「話せるようになったから用済みって事ですか?」
「違うって!私はもう…」
ぎゅっと手にしてた小鳥遊くんの眼鏡を握り締めた。
「もう…小鳥遊くんに私のせいで苦労して欲しくないの…」
「……」
「熱出すまで無理させたくないの」
「伊波さん、違いますよ」
「ううん、違わない。私のせいで小鳥遊くんの負担、ふえてるもん!」
涙がまた出そうになる。
「その上、押し掛けて…本当にごめんね。
もう、殴らないように小鳥遊くんには近づかないようにするから」
「伊波さん‼」
「じゃあ、もう行くね。お邪魔しました」
ぎゅっと涙を堪えて小鳥遊くんに背を向けた。
握り締めていた眼鏡を机に置いて、一刻も早くこの家を出なくちゃ。


883:おわり
10/06/02 02:16:37 7/60TGq3
「伊波さん‼」
瞬間、腕をぎゅっと掴まれた。
もちろん小鳥遊くんの手に。
「きゃあああああー‼」
殴りそうになるのを必至でこらえる。
「伊波さん」
「たた小鳥遊くん、はなして…」
「放したら、逃げるでしょう?
だから駄目です」
「でも、殴っちゃうよ…?」
「覚悟の上です。言ってるでしょう?気にしないで下さいって」
「気にするよ!」
「…俺がやりたいからやってるんです」
「え…?小鳥遊くん、マゾなの?」
「違います‼」
頬がだんだん熱くなってくる。
私の中で、それまでの殴りたい衝動から段々と好きなひとに手を掴まれている恥ずかしさにスイッチが切り替わって行くようだ。
「正直に言うと、他の人が伊波さんの係になるのは嫌なんです」
「えっ⁉」
恥ずかしすぎて顔が見れない。
「その…なんて言うか、ここまで俺が伊波さんに付き合ったのに、他の人に変わられるのが嫌なんです」
「……つきあう…」
私きっと耳まで赤い。
「なんと言うか…伊波さんは俺の…犬、なんだって意識があって…」
「…うん」
私の腕を掴んでいる小鳥遊くんの手にきゅっと力が入った。
痛いけど、なんだかうれしい。
「だから…他の人にかえるとか、言わないで下さい。
伊波さんの世話係は、俺の役目ですから」
「…はい」
どうしよう。
腰が抜けそう。
小鳥遊くんは責任感とかそういう事で言ってくれているのに…
免疫なさすぎる自分が恥ずかしい。
きっと、小鳥遊くんはいつもの涼しい顔をしてるんだろう。
勇気を振り絞って顔をあげた。

「あ、小鳥遊くん大丈夫?」
「え…?」
「また熱上がったんじゃない?顔があかいよ?」
少し間があって、小鳥遊くんが自分の頬に手を当てた。
「…そうかもしれません」
「ごめんね、疲れてるのに変な話しちゃって。
早くベットもどって?」
「…そうさせてもらいます」
脱力したように小鳥遊くんがそう言うと、私の腕を掴んでいた手がするりと離れた。
「伊波さん、殴りませんでしたね」
「そう言えば…そうだね」
頭の中は手を掴まれているどころの騒ぎじゃなかったからね。
「繋げるといいですね」
「え?」
「手。最終目標ですよ」
「あ…うん」
手を繋いで出掛ける、と言うのが小鳥遊くんの決めた最終目標だ。
「早く、繋げるように頑張るね」
「…ゆっくりでいいですよ」
「でも…」
チラッと小鳥遊くんを見上げる。
一瞬だけ目が合って、小鳥遊くんが顔を逸らした。
「また、熱あがったかも…」

884:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:18:30 7/60TGq3
無駄に長くてすみません。

初めはマジックハンドで伊波が小鳥遊を弄り倒す話だったのにどうしてこうなった。

885:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:20:06 UwnI3ZCc
あまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい

886:名無しさん@ピンキー
10/06/02 03:27:34 NjA6Hu/M
甘々じゃねえか!!
gj過ぎるぜ

それにしても伊波さんかわいいなあ


ところで小鳥遊君との初キスを描いたSSはまだかね?

887:名無しさん@ピンキー
10/06/02 03:41:32 AtDV1mIc
ぐっじょぶ!!
伊波ちゃんがお姉さんな雰囲気出すのいいね~

あまあまでおいしかったです

888:名無しさん@ピンキー
10/06/02 04:56:36 9Od7QJ5u
ここにきてなお犬扱い gj

889:名無しさん@ピンキー
10/06/02 08:40:47 zFn1NWJm
GJ!
最近のたかいな無双っぷりは異常だな
いいぞもっとやれ

890:名無しさん@ピンキー
10/06/02 13:31:54 LfP3uBdb
初投下します。
小鳥遊×伊波のエロなしで、少し未来の話です。



「いらっしゃいませ!」

満面の笑み、とまではいかないが、はにかむ程度に微笑んでテーブルのお客様に声を掛ける。
男のお客様、三人。年は、見た感じ近い。
以前なら、それこそ接客云々の前に殴っていただろう。しかし、今は違う。深呼吸して、気持ちを落ち着けて、心構えをきちんとしてからなら、こうやって接客も可能になった。
女性相手ほど満足な接客ではないけれど、それでも次第点だ。

距離は、女性相手より一歩分だけ下がった状態で、お冷やを出す。
注文はすぐ決まり、戻ろうとする前に、お客様の一人に声を掛けられる。
なんだろう。まさか、無意識ながらまだ顔が強張っていたか。
しかし、そうではなかった。どこか緊張した様子で、口ごもりながら、いつもありがとう、と言ってくれた。
その言葉に、嬉しくなる。男性恐怖症で、まともな接客もできなかった自分が、今ではお礼を言われるなんて。
これも、すべて―。
一瞬、その人を視界の端に探しながら、男の人相手には精一杯の微笑みを浮かべて、お客様に向き直る。

「こちらこそ、ありがとうございます」

伊波まひる、十七才。
男性恐怖症は、飛躍的改善の一途を辿っていた。

891:名無しさん@ピンキー
10/06/02 13:32:52 LfP3uBdb
バイトを終え、制服に着替えながら伊波は微笑む。それは嬉しそうに。
あのお客様は、料理を運んだ時も、精算の時も、伊波に礼を言ってくれた。律儀な人だ。
でもなにより嬉しかったのは、また来るという一言だった。
病気が治ってきたから、接客ができる。まともな接客だから、お客様もまた来てくれる。なんて嬉しいスパイラルだろう。
だけど、何より嬉しいのは―。

着替え終わり、鞄を持ってスタッフ専用の出入り口に向かう。
途中、他のスタッフに挨拶をして、そうして。

「ごめんね、遅くなっちゃって」
「…いえ、構いませんよ」

待ち合わせをしていた小鳥遊は一足先に着替え終わっていたようで、伊波が謝ると間があったものの気にしてないと返される。流石は女系一家、唯一の男手。
どちらからともなく歩きだしながら、手をつなぐ―までは、やはりいかない。対面したまま会話はできても、気安く触れ合えるほどには、病気は治っていなかった。

長い間伊波を悩ませてきた、男性恐怖症。老若問わず、果ては無機物にまで拳を向けてしまう程重症だったそれに、小鳥遊は辛抱強く付き合ってくれた。
そう、付き合う。
病気にだけじゃなく、伊波個人に、同情じゃない、恋情として。
両思いだと発覚した時の事を思い出すと、それだけで気絶しそうになる。今も、顔が熱くて堪らない。

伊波は、小鳥遊の服の袖を控え目につまんで歩く。万が一指が触れてしまわない様に、慎重に。
本当は、触れたいけれど。でも、我慢。
袖を、その先の手をじっと見つめていると、不意に小鳥遊が口を開いた。

「伊波さん、随分ご機嫌ですね」
「え、分かる?」

小鳥遊の言葉に、伊波はぱっと表情を明るくする。
実はね、今日ね、と先程のお客様の事を話した。この喜びを分かち合いたくて。みんな、小鳥遊のおかげだと。

892:名無しさん@ピンキー
10/06/02 13:33:52 LfP3uBdb
しかし。
話し終えると、小鳥遊はむっつり黙り込んでしまった。ぴりぴりしているのが見て分かる。
今の話に、怒らせる要素はあっただろうか。ひょっとして、伊波が気付かなかっただけで接客に問題があって、それを見ていたのだろうか。
少し前の幸せだった気持ちが急速に萎む。じわりと涙が込み上げてきて、慌てて道路に視線を落とす。泣きそうだと、気付かれたくない。

「…………です」
「、え?」

聞き逃してしまった。
顔を上げると、小鳥遊は睨む様な眼差しで、伊波を見つめていた。
やっぱり、怒ってる…。

堪えていた涙が浮かぶ。ごめんね、そう言う前に、小鳥遊の手が伊波の手を掴んだ。
すぐさま反対の手で殴りそうになるが、抱きしめられてそれも敵わなくなる。
今度は別の意味で泣きそうだった。気絶こそしないものの、心臓はどきどきするし顔は熱いし、言葉が出てこない。離れようにも、片手は掴まれ、もう片手は背中に回されてしまった。

「伊波さん、しばらく男の接客はやめませんか?」
「な、なんで…っ」

せっかく、接客できるようになってきたのに。
なにより、接客をする事で男性に慣れ、治療の向上にも繋がると提案したのは、小鳥遊なのに。

顔を見ようにも、しっかり密着しているのでそれどころではない。
分かるのは、小鳥遊は伊波がすっかり納まる程、しっかりした体格で男の人の体なんだという事くらい。

「他の男に、笑わないでほしいんです」

言って、離れると、頬を両手で挟み、そのままキスをした。
真っ正面からの、手どころか唇での触れ合い、ヤキモチの告白に。
伊波は、全身を茹でダコの様に赤くしながら、気絶した。

こんな状態の伊波を放っておける筈もなく、しかし伊波家に送る訳にもいかず。
小鳥遊は自分の家に運び、お姫様抱っこを姉妹にからかわれ、更にどうやってか撮影したキスと抱っこの写真を相馬に見せられ、それを見てしまった伊波は羞恥の限界から久々に相馬を叩きのめした。

そうして、しばらくの間。伊波は他のスタッフに不思議そうな顔をされながらも、男性相手の接客を控えたのだった。

893:名無しさん@ピンキー
10/06/02 13:38:25 Hl9V6LaG
俺は今日しぬかもしれん

894:名無しさん@ピンキー
10/06/02 13:38:57 LfP3uBdb
アニメ視聴だけでまだ原作全巻を買い揃えていないので、おかしなところがあったらすみません。
お目汚し失礼しました。

895:名無しさん@ピンキー
10/06/02 13:59:57 AtDV1mIc
もだえたww
GJ!!!

896:名無しさん@ピンキー
10/06/02 20:21:59 ckPm/z0H
今日最高www

お二人とも超GJ!

897:名無しさん@ピンキー
10/06/02 20:24:34 nhlp5tOy
ウィジェットDL記念にさとやち投下します
佐藤一人芝居でエロなし、ベタ
相馬さん、すみませんすみませんな内容です

898:1/3
10/06/02 20:27:07 nhlp5tOy
 いつもの気だるい朝、見慣れた室内に異変があった。

 自分の見ている光景が信じられず、佐藤は半ば呆然と己の頬を引っ張った。
「む」
 痛い。しかしこれは誰がなんと言おうと絶対に夢だ。
 佐藤は頑固に現実逃避をはかった。

「ん……」
 逃げたい現実そのものである張本人が寝返りをうった。床が固くて寝苦しいのか、少し苦しそうだ。
 佐藤の思いをよそに、彼女は悪戯でも仕掛けたくなるような無防備さだった。

 八千代は私服を着たまま、佐藤の隣で横になっている。ブランケットをめくると、下の着衣にも乱れはないようだ。強いて言えば、スカートがめくれて脚が見えているくらいか。
 触れたら柔らかそうだな、と邪な感情が首をもたげてきて、佐藤は慌ててブランケットから飛び出した。

 八千代から出来る限り距離を取ってから、佐藤はため息をついた。
 ―なぜ八千代が俺の部屋で眠っているんだ。
 しかも隣で。床で。

 佐藤は昨夜からの記憶を脳内検索した。バンド仲間達と飲んでいたのは覚えている。
 帰る途中、バイトを終えてた相馬と出会った。既に酔っていたこともあって、相馬の口八丁に流され二人で軽く飲み直した。

「……」
 そこから記憶がない。

 佐藤は頭を抱えた。多分、いや間違いなく相馬だ。今のこの状況は奴が作り出した罠に違いない。
 動揺する佐藤の姿にほくそ笑みながら、一眼レフを構え、シャッターチャンスを狙っている相馬がどこかにいる。と佐藤は決めつけた。
 悪の同僚は面白さ追求の為になら何でもやるとはいえ、洒落にならないことはしない。基本的には世話好きで優しいのが相馬だ。だが何故だろう、信じきれない何かがあの男にはあった。

 おそらく八千代は相馬に呼び出されて、酔った佐藤を介抱するように頼まれたのだろう。それでこの状況になるのは謎だが、そこは相馬が上手く誘導したのだと佐藤は思った。
 このアホ娘を騙すのは鳥が空を飛ぶより簡単だ。

899:2/3
10/06/02 20:29:00 nhlp5tOy
 冷静になればカラクリは解ける。感覚からいっても八千代とは何事もなかった。ここまで考えると、佐藤は現実を受け入れた。

 煙草はないかと見回すと、八千代の腕の中にそれを発見し、佐藤は短く舌打ちをした。理由は分からないが、彼女は大事そうに煙草の箱を抱えこんでいる。
 こんなことになったのは相馬のせいだ。八千代に煙草を奪われたのも奴が悪い。お節介め。理不尽に相馬を責め立てながら、佐藤は脱力して壁に寄りかかった。
 こうして佐藤が動揺するのも、正しい現実を導き出し落胆するのも、相馬にはお見通しだと思われた。

「う……ん」

「……わざとかコラ」
 八千代は夢を見ているのだろうか、身動ぎをしては艶めかしい吐息をもらす。その度に佐藤は息を飲み、それから渋面になった。彼女の見ている夢はたやすく想像がつく。
 どうせあの店長の夢だろう。雛に餌を運ぶ親鳥のように、せっせと飯を食わしているのが眼に浮かぶようだ。そこに佐藤の入り込む余地はない。

 この後の予定は決まりきっていた。
 幸福な夢から目を覚ました彼女はけろりとしながら、佐藤の具合でも尋ねる。二日酔いで気分が悪いだけだといえば、八千代は安心して帰る。
 後ろ姿を見送りながら、佐藤は虚しい気分に襲われるに違いない。

 それなのに佐藤は八千代から目が離せないでいた。
 腕を伸ばせば届きそうな位置に、八千代は少しまるまった姿勢で眠っている。口元に軽く握られた指が押し付けられていて、時折ぴくりと動いていた。

 寝乱れた長い髪を引っ張って、お前はアホか、いやアホだったな。俺は男だぞ、このバカ! 鳥! と怒鳴りつけてやりたい。
 そしてとっとと、この悪夢のような状況から抜け出したい、と佐藤はやや荒んだ気持ちになった。

 八千代を包むブランケットからは、たおやかな曲線を描く肩から足の先まで、女らしい身体のラインが見てとれて、居たたまれない。先程見たばかりの白い脚がちらちらと頭に過ぎる。
「八千代」
 起きろと密やかに呼びかける。
 しかし返ってくるのはかすかな寝息ばかりで、八千代が目を覚ます気配はない。

900:3/3
10/06/02 20:31:48 nhlp5tOy
 顔の前で掌をハの字に構え、佐藤は慎重に声をかけた。
「……朝だぞー起きろー」

 いいや、いつまでも目を覚ますな。そのまま寝ていろ。起きるな、起きるなよ……。
 呼びかける言葉とは裏腹に、佐藤は懸命に願っていた。

 嫌な汗をかいて、鼓動が早いのが分かる。心の中までポーカーフェイスというわけにはいかない。動揺を誘うのはいつも八千代だ。そう思うと佐藤は妙に悔しい。

 素直に認めるならば、自室に八千代がいるのはまぁまぁだった。胸の中に暖かいものが広がって、ちりちり切ない幸せを感じる。そこだけは相馬に感謝したい。
 だがこれでは何もできないし、ただ寝顔をみているだけの生殺しでしかない。空腹なのに、好物を目の前にして味見すらできないとは。

「野郎、覚えてろ」
 相馬への復讐を呟くと、八千代が何事かを返した。目覚めが近いのかもしれない。のん気な寝顔がいっそ憎らしい。

 つねってやろうか。佐藤は不貞腐れながら考えた。つねれば八千代はたちまち目を覚ますし、起こせば多少楽になれる。
 ならばつねってしまえ。
 それは駄目だ。

 つねろ派と眠らせておけ派の争いは膠着して、結論は永久に出そうにない。八千代が自然に目覚めるまで、佐藤は部屋の片隅でじっと固まっているだろう。
 二日酔いの所為ばかりとは言えない。佐藤は朝から頭痛がしてきた。

901:名無しさん@ピンキー
10/06/02 21:18:09 wjmPC4I8
さとーさんかわいそう……

902:名無しさん@ピンキー
10/06/02 22:54:30 Qh5rRsYJ
これは良いものだ
…はぁ

903:名無しさん@ピンキー
10/06/02 22:58:39 MkGs/x2x
これは八千代さんが起きた後の続きがあるんですよね(懇願)

904:名無しさん@ピンキー
10/06/02 23:26:19 7O6+csmV
3/3…だと!?

そんな馬鹿な、そんなはずはない!
探せ!草の根を分けてでも探し出すんだ!

905:名無しさん@ピンキー
10/06/03 01:21:52 2P0rV3JC
表示されてなくて専ブラが仕事しない

906:名無しさん@ピンキー
10/06/03 03:16:46 cISgAwCV
規制解除されてるかなー?


907:名無しさん@ピンキー
10/06/03 03:48:04 cISgAwCV
>>748の要望に応えて今更ながらに書き終えた。
何か要望どおりにならなかった気がするけど、いいよね!

16分割かな?
長くなっちゃったけど、小鳥遊×伊波いきまーす!

908:おさけのちから1
10/06/03 03:48:57 cISgAwCV
とっぷりと日が暮れて、外にももうほとんど人気がなくなった夜、
ファミリーレストラン「ワグナリア」のウェイター、小鳥遊宗太は店を閉める前の
店内の清掃に精を出していた。
と、そこにキッチンの方から黄色い声が上がる。
何事かと気になった小鳥遊がモップをかけるついでにそちらへと向かうと、
彼のバイトの先輩の種島ぽぷらが、キッチンのリーダーの佐藤潤に携帯電話を見せてもらっていた。

「どうしたんです、先輩?」

小鳥遊が声を掛けると、種島は見て見てと、携帯電話を見せ付けてきた。

「犬…ですか」
「あれ、かたなし君って犬嫌いだっけ?」
「あ、いえ別にそんなことはないですよ」
「かわいくない?」
「まあ、そうですね」
「反応うすいってばー、もっとこう、きゃー!ってならない?」
「…大型犬見てもちょっと」
「なるほどな」

と、小鳥遊本人が自身の病的な小さいもの好きを改めて吐露したところで
佐藤が納得したように声を漏らす。

「もー、佐藤さんもかたなし君も何でこのくりくりした目とか見て、そんな淡白でいられるかなー」
「犬飼うってのはめんどくせーんだぞ、お前飼ったことあんのか」
「う…ないけど…、でもかわいいものはかわいいの!」
「その犬、お前よりでかいぞ」
「……っ!」

自分の身長の低さを痛く気にしている種島に、佐藤が突き刺さるような言葉を投げつけると、
彼女はおもむろに手にしていた携帯電話を佐藤へと返した。

「どうした、種島。かわいいんだろ、もっとじっくりと見るといい」
「い、いいっ、もうじゅうぶん見たからっ」
「そうか。自分よりも大きいものは犬でも好かんか」
「きーっ! さとーさん、絶対それが言いたくて私にワンちゃんの写真見せてきたんでしょー!」
「落ち着け、種島。怒るとカルシウムが無駄に消費されて、身長が伸びなくなるぞ」
「うっ…」

そんな佐藤のはったりにも身長が絡むと、たじろいで何も言えなくてなってしまう彼女。

「もーいいよ。ねえねえ、かたなし君、携帯電話見せて」
「え、はい、どうぞ」
「ありがとー」

何をするのだろうかと思いはしたものの、特に迷いもなく小鳥遊は携帯を差し出す。

909:おさけのちから1
10/06/03 03:50:11 cISgAwCV
「ほう、種島、大きいものを見たのを小鳥遊の携帯の中にあるであろう
小さいものコレクションを見て中和する気か」
「!!」

言われて、目を丸くして佐藤を見てしまう種島。
小鳥遊は、図星なんだと思うと同時にそんな種島がかわいいなぁと思うのであった。

「そ、そんなことないよー。って、かたなし君、待ち受け……」

呆然とした様子で言う種島が見ているものが気になった佐藤が覗き込むと、
そこには普通コメントに困る生物の写真が映っていた。

「またミジンコか」
「ええ、またミジンコです」
「お前の病気も相変わらずだな」
「別に病気じゃないですって」
「もうちょっと他のものはないのか」
「えー、だって携帯の待ち受けって最初に目に映るじゃないですか。
つまり一番目に入る部分なわけですよ。
そこに自分が一番癒されたり、可愛いと思えるものを登録するのは自然なことですよ?」
「言ってることはわかるんだけどね…」

種島が苦笑して、携帯を持ち主へと返す。
どうにも自分には理解できないレベルの世界だと今更ながらに把握したらしい。
自分にとってこんなにも可愛い待ち受け画面が二人には不評で、小鳥遊は少なからず不服だった。
とはいえ、こんなことはいつものことであり、誰に見せても反応は大差なく、引かれるだけ。
人間の感性なんて千差万別、自分が可愛いと思えるものを素直に愛でればそれでいいのだと、
達観した小鳥遊は、さて、と掃除を再開しましょうと、佐藤と種島に促した。

「そういえば伊波さんはどうしたんですか?」
「あいつならゴミ出し頼んでおいたから、そっちにいるだろ」
「今日って結構量多くなかったですっけ」
「ああ、だから俺がやるって言ったんだが、力仕事は得意だって言うからな」
「まあ、その通りではありますけど」

小鳥遊は少し気になり、

「ちょっと様子見てきます」

その場を早足で後にした。

「いやー何だかんだでかたなし君も伊波ちゃんのこと、気にしてるみたいだねー」
「概ね犬扱いしてるけどな」
「もーそういうこと言わないの!」
「大丈夫だ、わかってる」
「ほんとに??」
「ああ、お前がちびっこナンバー1だ」
「むっきー!!」

その日の店締めまでそんな感じで種島と佐藤の会話は滞りなく続いた。





◆◇◆◇◆◇◆◇

910:おさけのちから3
10/06/03 03:51:14 cISgAwCV





小鳥遊が伊波を探しに外に出ると、もうゴミ出しはきっちりとされていた。
男性恐怖症で男を見た途端に殴りかかる少女ではあるものの、
性格は自分が知りうる年増の女性(12歳以上はそう分類している)の中では
非常に真面目で気が利く彼女が、この時間帯になって怠けるのは考えにくい。

「もしかして休憩室か」

もうすぐフロアもキッチンも片付くし、レジ閉めは店長がやってるし、
後は皆が一服入れられる休憩室を準備しているのかもと小鳥遊がそちらを見てみると、
なるほど確かにきれいに片付けられて、なおかつテーブルの上には湯のみとポットが用意されていた。

「疲れて寝ちゃったのか」

探していた伊波まひるはテーブルに突っ伏して、寝息を立てていた。
この店に来て、出会い頭に殴られて以来の付き合いだが、
やはり彼女は他の女性とは違うな、と実感する。
それは自分を何の躊躇もなくボコボコにすることを含めてのことだけれど、
最近は自分への気遣いなどのことの方がやけに感じさせられる。
果たしてそれは伊波が変化したのか、それとも自分自身が変わったのかはあまりはっきりしない。
それでも、根っこの部分で彼女はそういう性分なのだろうと考えると、
自分の方がちゃんと彼女を理解しようとし出したのかもと思っていると、
何やら異臭がどこからか漂っていることに気づく。

「この臭い…酒!?」

一体何故、というか誰が、と見回すと伊波のすぐ目の前に明らかに酒(ワンカップ)が
鎮座していることを認識した。
もしかして、と完全に判断を下すよりも先に、伊波ががばっと身を起こし、

「い、伊波さん…?」
「……」

ぼんやりとした目で小鳥遊を一点に見つめていた。

「たかなしくんだー」
「あ、はい、大丈夫…ですか?」

とろんとした様子で言う彼女に何となく気圧される小鳥遊。
酔っ払いを相手にしてロクな目に遭ったことがないためだろう。

「たっかなしくーん!!」
「ちょっ!」

猛烈な勢いで伊波が小鳥遊に飛び掛ったかと思うと、その体に抱きついてきた。
よろけたかと思うと、そのままバランスを崩して小鳥遊は地面に尻餅をつく。

「えへへー、たかなしくぅん、いなみまひるですよー」
「ええ、一応存じているつもりです」
「そうなのー、うれしいなぁ、うれしいよぉー」

911:おさけのちから4
10/06/03 03:52:08 cISgAwCV
何なんだこの状況、と思うが早いか、彼女がこんな至近距離というか
体と体が密着している零距離の状態は喜ばしいものではないと思い出す。
どうにかしないといけないとは思うのだが、いかんせん床に腰をついているに加えて
思い切り抱きつかれている今の自分では抵抗も何もあったものではなかった。

「い、伊波さん、その大丈夫ですか…?」
「あー、うん平気だよー。もしかしてたかなしくん、いたかった? ごめんねー」
「まあ、今のは大したことなくてですね、むしろ俺はこれからの心配をしているんですが」
「んぅ?」
「俺は男なわけで、伊波さんは男は殴っちゃうわけじゃないですか、でこの状況なわけです」

そこで伊波は視線をどこかへと泳がせるが、すぐに小鳥遊に笑って見せた。

「なぁんかねー、だいじょーぶみたい。もしかしてなおったかなー、えへへへ」

酔っ払うと殴らないってことなのか、と小鳥遊が考えていると

「うーん、やっぱりぃ、たかなしくんはカッコいいなー」
「はい!?」

予想だにしない言葉が伊波の口から告げられた。

「きゃー、いっちゃったー、照れちゃうよー」
「……」

恥ずかしさからなのか単に酔ったからなのか、もはや判別できない顔の赤さの伊波が
きゃあきゃあと騒ぐのに対して、小鳥遊はただただ唖然として阿呆のように口を開けるのみだった。

「もー、伊波ちゃんってば、だいたーん!!」

とそこに別の声が上がる。
その声で小鳥遊は思考を回復し、更にこの状況の元凶がそれであることを理解した。

「おい…、梢姉さん」
「え、なぁに?」
「なぁに?じゃない! 何やってんだ!」
「それが聞いてよー、新しい彼がねー
空手が得意だっていうからちょーっと寝技で相手してあげたらすぐオチちゃってー、
そしたらそしたら俺より強い相手がいたとは…とか言って、修行の旅に出て、結局フラれちゃった…」
「そんなことは聞いてない!」
「そんなことって何よー!」
「いいから、答えろ! 伊波さんに何で酒を飲ませた!」
「だって一人酒も飽きてきちゃって…」
「関係ない人を巻き込むなよ!」
「伊波ちゃんのことは妹同然っていうか、もう妹だって思ってるから問題なしよ!」
「意味がわからん!」
「だぁいじょうぶだって、あたしは中学生で初めて酒飲んだし」
「論点が違う!」
「もー、さっきから怒鳴ってばっかで宗太こわーい」
「お前の行動の方が怖いわ!」
「いーじゃないのー、結果オーライみたいになってるしぃ」

912:おさけのちから5
10/06/03 03:52:52 cISgAwCV

そこで自分の姉、梢への叱責よりも現状をどうにかしないとならないことを思い出す。

「とにかく伊波さん離れて」

小鳥遊がそう諭すように言うも、伊波は未だ何を思っているかはっきりしない顔で

「どうしてーたかなしくん?」

子供のように小首を傾げてみせた。
その仕草があまりに小さな子供を髣髴とさせるものだから、
小鳥遊は不覚にも一瞬ときめいてしまうが、どうにか可愛いと言ってしまうのをこらえて
言葉を改めて選んで発言する。

「何でって年頃の女の子がこんなことしたらダメですよ、他の人にもばれるのもまずいし」
「たかなしくんは離れたいの?」
「はい、だから」

これでやっと解放されると安心するが、

「うわーーん!!」
「うえぇ!?」

唐突に伊波が泣き出し始めてしまい、事態が余計に困窮へと向かい始める。
とにかく泣き止ませないとまずいと小鳥遊は伊波に落ち着くように言う。

「伊波さん、落ち着いて、泣かないでください」
「ごめんね、殴られるのやだよね、もう私なんかといるのやだよね?」

おろおろと泣きながら言う彼女の発言内容で、彼女がどう自分の言葉の意味を
曲解してしまったかを理解して、小鳥遊は幾分か冷静さを取り戻す。

「伊波さん、殴られることに関しては割とどうでもいいんです。
伊波さんがいなくても、どーせ姉たちに殴られてばっかなんで」
「ちょっとー、それじゃあ私が乱暴みたいじゃない」
「少し黙ってろ猛獣」
「ひーどーいー」
「だから殴ってしまうことは気にしないでもいいんですよ」
「じゃあ、いっしょにいてもいい?」
「ええ、男嫌いがちゃんと治るまでは付き合います」
「うわぁ、ありがとー、たかなしくん」

小鳥遊の言葉に安心できた伊波はうれしそうに小鳥遊の胸に顔を埋める。
さすがにニコニコとそんなことをされると、小鳥遊も照れてしまい頬を赤くする。

913:おさけのちから6
10/06/03 03:53:39 cISgAwCV
「えーっと、そういうわけなんで一旦離れましょうか」
「なんでー?」
「あの、ですから」
「もしかして私のこと嫌い?」
「はい?」
「私のこと嫌いだから離れたいの?」

―話が進まんっ…!

心の中で一向に好転しない状況に叫びを上げてから、小鳥遊はどうにかするために話を始める。

「そういうつもりで言ったわけじゃなくてですね、誰かに見られて変な噂が立っても困るでしょう?」
「どんな?」

間髪入れず、ただでさえ答えにくい内容のことをずばりと聞いてくるので、
小鳥遊はあたふたとしてしまう。

―というか何で俺はこんなに焦ってるんだ…?

「だ、だから俺と伊波さんが、付き合ってる、みたいな…」
「なぁんだ、そんなことか」
「そ、そんなことって…」

照れ屋の彼女ならそれで一気に離れてくれると思って意を決して言ったのだが、
あまりにもあっさりとかわされてしまい、小鳥遊は目を瞬かせる。

「私はもー、道行く男を殴り倒す辻斬りがいるって噂が立ってるから大したことないよーだ」

伊波の言っていることに妙に納得できてしまうところがあり、
小鳥遊は反論できず、現状を受け入れてしまいそうになる。
しかし、ここで受け入れたところで意味などないと小鳥遊は足腰に力を込め、
伊波の背中と足に手を回して抱き上げる。

914:おさけのちから7
10/06/03 03:54:47 cISgAwCV
「きゃっ」
「わあっ、宗太ってば王子様抱っこ! 宗太王子なの!?」
「茶化すな! そしてとっとと家に帰れ!」

こうなれば無理やりにでも打破しない限りは、ここからは逃げられないと悟った小鳥遊に
梢と伊波が二人で小鳥遊に絡む。

「何でよー」
「なんでなんでー」
「あーもう、泥酔状態が2つになるとこんなに面倒になるとは…」
「でーすいでーすぃねー、えへー」
「あっ! 伊波ちゃんナイスセンス!」
「オヤジギャグだろ、万年酔っ払い!」
「伊波ちゃん、恐ろしい子…!」
「続けなくていいから。とにかく俺、伊波さんを家まで送ってくから」

呆れながら小鳥遊は姉に帰るように再度通達するが、
梢は彼の真意を知ってか知らずか目を輝かせ始める。

「わぁお、ついに宗太が狼の牙を剥くのね!」
「誰が剥くか! 早く出て行かないと通報するぞ!」
「んふ、そーよねー、あとは若い二人のあっつーい夜の時間だものね、お姉ちゃんは退散しまーっす!」
「ったく、世話の焼ける…」

どこか勘違いしたまま出て行ってしまったが、もうこれ以上あいつを相手にするのは勘弁したいと思い、
小鳥遊は深いため息をついてから、伊波を見る。
すると、あれほど元気だった伊波ははしゃぎ疲れた子供のように規則正しい寝息を立てていた。

「こっちも、本当に世話が焼ける…」

そういう彼の顔は苦笑いと、ほっとした笑顔が混ざっていた。





◆◇◆◇◆◇◆◇

915:おさけのちから8
10/06/03 03:55:33 cISgAwCV





事情を話し、閉店の作業は佐藤たちに任せて、小鳥遊は何とか伊波をおぶり
彼女の家の前までたっぷり時間をかけて到着していた。
ようやっとこの年増の彼女の世話から解放されると思うと、小鳥遊は心から安堵したような息を吐く。

「着きましたよ、伊波さん、起きてください」
「うーん、あとちょっとだけー…」

完全に寝惚けている伊波に辟易として、小鳥遊は気はあまり進まないのだが、
チャイムを鳴らすことにした。

「伊波さんの家に俺のことがばれるのは正直怖いんだけど、しょうがないよな」

何とか伊波の母に話をして、父にはこのことは黙っているように説得するか、と
チャイムに手をかけて、一度ボタンを押し込んだ。
しかし、しばらく経っても、誰も出てくる気配がない。
繰り返してみるが、やはり誰も出てこない。
これはおかしいぞと思って、よく見てみれば、家には明かりがついていなかった。
まさかと思い、小鳥遊は伊波を揺り起こす。

「んー、なにー?」

眠たそうに目をこすって、伊波がやっと反応した。
それを皮切りに小鳥遊は強めの声で質問をぶつける。

「伊波さん、今日家の人は!?」
「…?」
「チャイムを鳴らしても誰も出ないんですって!」
「あー」

そう言われてようやく伊波が何かを思い出したらしく、声をあげて笑う。
小鳥遊にしてみれば、全く笑うところではないのだが。

「今日ねー、お母さんはお父さんのとこらよ? 明日帰ってくるのー」
「先に言ってくれ…」
「たかなしくんは、ドジですねー、えへー」

酒を飲んで酔っ払ってあまつさえ人にここまで運ばせておいて、その発言はないだろうと思いつつも、
酔っ払いの具体例、梢のことを考えると、まともに相手をすればするほどこっちが疲れるだけかと嘆息し、
次の一手を打つことにした。

「伊波さん、鍵、家の鍵は持ってますよね?」
「あるよー、私の胸!」
「は?」

質問に対する答えが素っ頓狂を通り越して怪奇なものであったため、
思わず小鳥遊は聞き返していた。
その様子に伊波は風船のように頬を膨らませて、声を上げる。

「だーかーらー! 私の胸にあるの!」
「ああ、胸ポケットのことですか」

916:おさけのちから9
10/06/03 03:56:22 cISgAwCV
―って、自分で出して欲しいんだけど…

そうは思うのだが、伊波にはもはや自分から何かをしようという気持ちは垣間見ることができない。
要するに小鳥遊が全て彼女の面倒を見るしかないのだ。
小鳥遊はとりあえず玄関に腰を下ろして、痛くならないように伊波を下ろしてやる。
一つ息を吐いて、ドアに背を預ける伊波の胸ポケットをまさぐってみる。

「ん…」

―変な声を出さないでくれ…

伊波が軽く声を上げただけで何かがぐらついてしまうが、どうにかこらえて
ポケットを探り続けるが、何も発見できないままだ。

「伊波さん、ありませんけど」
「なにがー?」

何がじゃねえよ、と言いたくなるが、小鳥遊は我慢して彼女のペースに合わせてやることにする。

「だから胸にですね」
「胸、ない?」

伊波が不意に目をぱちりと開けるので、小鳥遊は一瞬ぎょっとするが頷く。

「え、ええ、ないです」
「全然?」
「触って、ちゃんと中も確認したけどありませんでしたよ」
「これっぽっちも?」
「だからそうだと」
「うわーん!タカナシくんがいじめるー!」

またかんしゃく玉が破裂したように泣き始めた彼女に今度こそ小鳥遊も驚いてしまう。

917:おさけのちから10
10/06/03 03:57:10 cISgAwCV
「ちょ、伊波さん、何ですかいきなり」
「どうせ胸ないもん! ちっちゃいもん、貧乳だもん!」
「ええっ、違いますって! そんなこと言ってませんよ!」
「知ってるよ! そんなこと生まれた瞬間からわかってたわよー!」
「落ち着いてください! 生まれた瞬間から巨乳の人間なんてありえません!
それはもはや人間ではないUMA的な何かです! って真面目に突っ込んでどうすんだ」
「どうせ私の胸なんて魅力ないんだー、うぇええん…」

完全に話が変な方向に脱線してしまって、それのフォローも上手く立ち行かず、
いい加減に小鳥遊の堪忍袋の緒も限界に来ていた。
そして、その禁が解かれるのはすぐだった。

「ああ、もう黙れ!」
「はぅっ」

ぴしゃりと言ってやると、涙と声がぴたりと止まる。
その様を見ていると、普段の犬っぽさもよりもどこか本当に小さな子供を見ているような気分になり、
小鳥遊自身が何となく悪いことをしているような錯覚を覚えてしまう。
かといって、ここで勢いを止めるわけにもいかない。
さっさと済ませて家に帰りたい一心で小鳥遊は命令するような口調で続ける。

「とにかく家の鍵出して! つーかどこですか!」
「上着の内ポケット…」

怒られてしゅんとする幼児のように言った彼女の言葉で
胸ってそういう意味で言ったのかとようやく理解できた小鳥遊だった。





◆◇◆◇◆◇◆◇

918:おさけのちから11
10/06/03 03:57:57 cISgAwCV





伊波本人の部屋にたどり着くと、とにかく彼女を下ろしたいがために
小鳥遊はベッドへと歩いていき、どしりと腰を下ろす。

「はい…伊波さん、ベッドですよ。あとは寝るなり何なりご自由に」

言ってはみるものの、伊波はまた規則正しい息で眠りにつき始めているところだった。
小鳥遊はこれで自分のやるべきことはやったと帰ろうと思ったが、

「うん…にゅぅ…」

伊波の体を見ると、酒を飲んで体が火照っているのか汗の量が多いことに気づいた。
このまま放っておくと風邪を引くかもしれないと頭によぎってしまうと、
そこは主夫の性なのか小鳥遊は階下へ降りて、洗面所からタオルを探して持ってきた。

「それと着替えも用意しないと…」

タンスに手をかけて中を見てみると、幸か不幸かいきなり下着が目の中に入ってきた。
着替える以上は必要なのだが、さすがに家族でもない彼女の下着まで世話するわけにもいかないと
その段をすぐに閉めて、他の段からパジャマを探し出す。

―っていうか、年増の下着くらいで動揺するなよ、俺

そして自らを叱咤するように言い聞かせる。

―伊波さんは犬だ、伊波さんは犬だ伊波さんは犬だ伊波さんは犬…

精神集中を済ませると小鳥遊は伊波へと歩み寄って、体をゆすって彼女の意識を呼び起こす。

「伊波さん、少しだけいいですか? 着替えましょう、いい子ですから」
「うん、いい子…」

何となく操縦法が見えてきたかな、と小鳥遊が安心して次の言葉を言う。

「じゃあ、伊波さん服脱いでください」
「はーい…」

小鳥遊は今更ながらに気づいたが、これは本当にいいことなのだろうか。
一応彼女の体を気遣ってのことだったが、彼女の裸体、に近いそれを間近で見ることになるのだ。
男性恐怖症な上、恥ずかしがり屋な彼女の意識がないことをいいことに
男としての欲求を満たしているような感じになってしまっている。

―いやいや伊波さんは犬だ! それも年増の! やましさなどあるわけがない!

何とか自分を奮い立たせると、小鳥遊は更に伊波に具体的な指示を送る。

「じゃ、じゃあ服脱ぐからバンザイしましょうか、はいバンザーイ」
「ばんざーい…」

919:おさけのちから12
10/06/03 03:58:34 cISgAwCV
彼女のシャツを脱がせると、目の前にブラジャーを巻いた彼女の上半身が露になる。
瞬間、小鳥遊はごくりと生唾を飲み込んだ。
それは果たして欲情してのそれなのか、単純に緊張してのそれなのかは定かではない。
自分自身で正体不明の得体の知れない何かを抑えようとするだけで精一杯だった。
あとは変な気分に流されないようにタオルで彼女の体を拭き始めることで何とかやり過ごした。

「くすぐったいかもしれませんけど、我慢してください」
「んっ…あぅ…」

時折漏れる少女の吐息のような声に小鳥遊はますます心の中で呟くのを多くして、
伊波を手間のかかる犬であると言い聞かせる。

「ふっ、ん…ぅん…」
「お、終わりましたよ、じゃあ服着ましょうか。こっち向いてください」
「……」

素直にこちらを向いてくれたので安堵したが、それは早合点だったとすぐに気づかされる。
伊波はいきなり小鳥遊に体を傾けて、彼をベッドへと押し倒した。
まだ彼女が酔っているのは間違いないはずだ。
何故なら自分を殴りつけるわけでもなく、こちらをじっと見ている。
つまり、正気ではない。
けれど、彼女の焦点がぼけている瞳には先ほどまでとは違う熱が確かにこもっている。
そんな風に見えて、小鳥遊は不覚にも見惚れてしまっていた。

「小鳥遊、くん…」
「な、何です?」
「胸、触って」
「はい、って、えっ!?」

この雰囲気のせいで一瞬流されてしまいそうだったが、
小鳥遊は改めて彼女の発言の内容を噛み砕いて理解すると、
その意味があまりにも衝撃的であることだと気がつき慌て出す。

「な、何を言ってんですか…。まだ酒抜けてないせいですね。
水持ってきますよ、それで酔いを醒ましましょう。ね?」
「触って」

少女は少年の言葉を無視して、そう続ける。
下着姿で顔を赤くする女の子を前に、さすがに自制が限界だった小鳥遊に対し、
とどめと言わんばかりの彼女のこの言葉。
もう誤魔化せないほどに小鳥遊本人が気づいていた。

―伊波さんを見て興奮してるのか、俺は…

それでも体を動かさないのは人間としての理性、常識があるからだ。
正常じゃないんだ、こんな状況は何もかもがおかしくてフェアじゃない。
だから、今ここで彼女に触れて傷つけるわけにはいかない。

920:おさけのちから13
10/06/03 03:59:21 cISgAwCV
「ムリですよ、そんなの」
「いいから」
「いいって、何がですか?」
「大丈夫だから」

普段ではありえないほどに強い言葉で言う伊波に小鳥遊は再び自分の中にある
劣情が膨らみ始めていることに気づいていた。
それを少しでも制しようと小鳥遊は口を動かす。

「ダメですよ…その、俺なんかより…」
「より?」

すぐに聞き返されて、言葉に詰まる。
今度は急に胸が苦しくなるのを感じていた。
この言葉を言ってしまうことで目の前の少女をどこか遠くへやってしまいそうで怖くなった。
けれど、これはよくないことだ、それを回避するためには仕方ないんだ。
そもそも何もためらうような言葉じゃないはずだと勢いで言う。

「好きな人とすべきです…」

そうだ。
この状況、距離、全てがそういう関係の下に成り立つはずのものだ。
それが世界の理、とまではいかないまでも、自分の中で知っている常識、ルールというものだ。
だからこそ、自分は彼女に触れることはできないはずなのだ。
けれど、それは伊波自身から覆された。

「だったら触ってよ…」

それは答え、と言っても差し支えない言葉。
けれど、それが本当なのか、彼女の純粋な想いなのか、
どこに真意があるのか、それが小鳥遊の目では測ることができなかった。

「それってどういう…」

少年が確かめるためにした問いは途中で止められた。

「お願い…」

少女の切実な、どこか悲痛さを込めた願いによって。
小鳥遊は自分に覆いかぶさる彼女の胸に触れた。
尚も言い訳をしながら。
これは彼女が望んだことで、俺は何も約束を破ってはいない、と。

「んぅ…」
「こ、これでいいですか?」

恐る恐る問うと、伊波は首を振って

「もっと、して…」

もう一度嘆願してきた。

921:おさけのちから14
10/06/03 04:00:04 cISgAwCV
小鳥遊はマジかよ、と思わずこぼす。
けれど、始めてしまったためか、堰を切ったように彼女の胸をまさぐっている自分がいた。

「あっ…ん…、たか、なしくん…きゃう…」

感じているのか、それとも痛いのか、小鳥遊にはわかるわけもない。
ただ彼女の望むままに事を進めているだけだ。
彼の頭ではそう幾度となく思考をループさせていた。
しかし、同時にもっと、もっと、と何かが騒ぎ出しているのも事実だった。
その声が思考を蝕み、支配してしまえば最期、彼は伊波を貪るだろう。
それが少女の本意なのかどうかがわからない、それだけが小鳥遊を支える理性の柱だった。

「たかなし、くん…、たかなしくん…」

不意に涙がぽたぽたとこぼれてきた。
そこで小鳥遊は手を止めて、伊波の体をまっすぐ立たせた。
そして、自分もベッドに腰掛ける形にまで戻す。
小鳥遊に残ったのはやり切れない気持ちと、どうしようもない男の欲だった。

「何で胸触って欲しいなんて言ったんですか? 意味わかってるんですか?」
「自信がないの…怖いの…」

泣いてはいるが、まだ酔いは回っているようで、会話が地に足着いていない。
そもそも正常であれば、こんな状態で話などしていられる人でもないか、と小鳥遊は会話に付き合うことにした。

「何の話ですか?」
「私じゃ、きっとふさわしくないのはわかってる…けどダメ…
他の人に取られたくない…。私だけ見ていてほしい…。でも勇気がないの…」
「……」


922:おさけのちから15
10/06/03 04:00:43 cISgAwCV
何となく。
そう、本当にニュアンスでだが、小鳥遊には彼女の言葉の意味が理解できた。
自分の中にあるものと似ている気がしたのだ。
ぼんやりとして存在している他の誰かとは違う伊波まひるへの感情と。
他の男と話せるのは伊波にとっては進歩なのだ、喜ぶべきことなのに。
手放しにいつも喜んではいなかった。
むしろ嫌悪感で頭が満ち満ちていて、自分にはこんな醜い心があるのかと吐き気がした。

だけど、伊波も同じだったのかもしれない。
こんなことを自分に求めてきた、それは都合のいい勘違いをわざわざする必要もないくらいに明白なことだ。

―きっと俺も伊波さんもただ単にこうしたかったんだろうな

小鳥遊はふっと笑うと、隣で泣き続けている女の子を自分の胸に引き寄せた。

「た、小鳥遊くん…?」
「しゃべらないでください、今は…」

直接胸と胸が触れ合って、互いの鼓動がわかる。
それが伊波にとってはとても心地よかった。
何だか変なことを頼んだけれど、違った。
私はただ小鳥遊くんにこうしてほしかった、それだけなんだ。
少女はこの状態では見えるわけではないけれど、笑顔で頷いた。

しばらくの間、そうしてから小鳥遊がそっと伊波の体を離してからベッドに横たわらせてやる。
さっきまでのようにぐずるような様子ではなく、ちゃんと気持ち良さそうに眠ってくれているのを確認すると、
小鳥遊は睡眠を邪魔しないようにそっとパジャマを着せていく。
本当のところ、まだ彼には伊波に対する男としての本能の残滓は残っていたが、
はっきりと自覚した伊波への愛しさが、それを包み込んで行動を抑制できていた。
そして布団をかぶせてやってから帰ろうかと思ったが、小鳥遊はあと少しだけ、と伊波のベッドの前に腰掛け続けていた。





◆◇◆◇◆◇◆◇

923:おさけのちから16
10/06/03 04:01:31 cISgAwCV
◆◇◆◇◆◇◆◇





「おはようございます、佐藤さん!」
「おーっす」

翌日、ワグナリアに小鳥遊が出勤してくると佐藤がそれを出迎える。

「今日はお客様は来てますか?」
「んー、まあぼちぼちだな」
「そうですか」

別に気に留めるような会話内容でもなかったが、何となく小鳥遊の様子が違うな、と佐藤には感じられた。
とはいえ、その正体を確めようとしてもこいつは多分言わないんだろうと思い、質問はせずにおいた。
言いたいことは自分から言うやつだしな、と佐藤は時計に目をやる。
そろそろ今日の自分の勤務時間終了だ。
後は他の人間に引き継ぎして、それから休憩室で煙草吸ったら帰る。

「さてと、俺はもう上がりだから、フロアは頼んだぞ小鳥遊」
「あ、はい、了解です」
「おい、相馬」

今日はラストまでいる予定のキッチン担当、相馬博臣に声を掛けると、

「え、何、佐藤君?」
「2卓と5卓、12卓の注文きてっからやっとけよ、じゃあな」
「え、ちょっと、佐藤君!? それ一人でやるの!? さすがに多くない!?
もしかして、この間轟さんの小さい頃の写真眺めてるの笑ったことまだ怒ってるの!?」

引き止める声も歯牙にかけず、更衣室へと入っていった。
そして、自分のロッカーを開けようとしたが、不意にこつりと固いものが足に触れるのに気づく。
屈んで拾い上げてみると、それは小鳥遊の携帯電話で
佐藤が何とはなしに一度だけ電源ボタンを軽く押し込んでみると、表示された。

気持ち良さそうに眠る少女の笑顔が。










924:名無しさん@ピンキー
10/06/03 04:04:17 cISgAwCV
以上でしたー。
最近いい感じに書く人が増えてていいですねー。
僕ももっとシンプルな話を作れるようになろう。

もう寝ないとリアルWORKING!!にやられる!

925:名無しさん@ピンキー
10/06/03 04:15:54 wTwg7EaO
>>924
うわああああ

こんな時間にニヤニヤしちゃったじゃねえか

伊波さん可愛いなくそー
このときの記憶って伊波さんあるのかなあ

続き読みたいぜ

926:名無しさん@ピンキー
10/06/03 05:39:10 B44UiH/E
朝からいい2424成分が補充されました。
かたなしくん紳士だねえ。 gj

927:名無しさん@ピンキー
10/06/03 09:47:36 u9VoUPBj
朝から素晴らしいもの読ませていただきました。GJ

いなみんは記憶ないんだろうね。
小鳥遊くんだけが大人の階段上がっていく、と。
苦労人頑張れ。

928:名無しさん@ピンキー
10/06/03 10:04:59 uiPaHNnt
うおおおおお
たまんねー
酔っ払った伊波ちゃんかわいすぎる

GJGJ!!始終ニヤニヤが止まりませんでした

929:名無しさん@ピンキー
10/06/03 10:32:33 sak6Rawq
GJGJ!
小鳥遊は紳士を通り越して鉄人だな!

見てはいけないものを見てしまった佐藤さん、
胃痛が悪化しそうだw
「これは…いや、まさか…でも…」
って感じで悩みそう

930:名無しさん@ピンキー
10/06/03 10:56:45 X/5Tj8oj
アニメ化成功してスレが盛り上がる良い例だな

931:名無しさん@ピンキー
10/06/03 11:58:17 Kqw2xVs6
だな

けいおん(笑)

932:名無しさん@ピンキー
10/06/03 12:38:47 sak6Rawq
なにこれ怖い

181 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2010/06/03(木) 12:14:16 ID:391eQqn+O
触れられても大丈夫くらいに体質改善出来たら
小鳥遊がいなみんの髪にヘアピンを付けてあげるシーンを見たい

933:名無しさん@ピンキー
10/06/03 13:00:06 duGDZL0R
発送を逆転しよう
かわいそーまさん「付けてる最中に殴ったら髪が抜けちゃうかも。そうなるとしばらく顔合わせられないよね色々な意味で」
みたいな感じで

934:名無しさん@ピンキー
10/06/03 14:24:27 B44UiH/E
>>929
実は相馬さんが待受画面をこっそり変更してさとーさんを悩ませて楽しんでいるとか言うのもありだな。


#アンカーはつけないけど他のアニメをわざわざ揶揄する必要はないと思うんだな。

935:名無しさん@ピンキー
10/06/03 15:45:10 xnlTpFyn
相馬さんが言葉巧みに佐藤さんのケータイで八千代さんを写メする・・・だと・・・?

936:名無しさん@ピンキー
10/06/03 17:44:27 sak6Rawq
>>934
いつものひとでしょ

937:748
10/06/03 23:02:45 fRVbfRa5
>>907
貴方が神か

938:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:29:09 u9VoUPBj
流れ読まずに投下。

たかなしといなみんです。
エロなくてすみません。

939:そのいち
10/06/03 23:30:24 u9VoUPBj
今日もワグナリアは一日平和だった。
八千代が杏子にパフェを作り、佐藤が種島をいぢめ、小鳥遊は伊波に殴られた。
いつもの一日が終わろうとしていた。

「ありがとうございました」
最後のお客様の会計をした八千代の声が聞こえる。
小鳥遊は頭の中で片付けの手順を考えながら、卓の片付けをするためにホールへ出る。
「かたなしくん!かたなしくん!」
慌てた様子で種島が飛び込んで来た。
「どうかしましたか?先輩」
そう尋ねながら、小鳥遊は慌てる先輩の可愛らしさにうっとりする。
「あのね、伊波ちゃんがねピンチなの。助けてあげて!」
種島はぴょんぴょん跳ねて一生懸命お願いをする。
「伊波さんがピンチ、ですか?」
「あのね、伊波ちゃん看板下げに行ってくれたんだけど、最後のお客様に話しかけられてるみたいなの!」
最後のお客様は男性2人組だ。
「それを早く言って下さい!」
確実に血の雨が降る。
暴力ファミレスとして新聞に載ってしまう所を想像ながら、小鳥遊は店の外に飛び出した。

「すみません、お客様!」
店を出たすぐの所に伊波とお客様はいた。
お客様はまだ殴られた様子も、血を流している様子もない。
小鳥遊はとりあえずホッとした。
「なんだ、てめぇ…」
イライラしている声が向けられる。
その刹那、伊波が小鳥遊の影に隠れる。
「小鳥遊くん…」
なんとなく想像していた状況ではないようで、小鳥遊は伊波を振りかえる。
「伊波さん、どうかしましたか?」
「な…殴りたい」
ぐっと伊波の腕に力が入り、小鳥遊のあばらがメシメシと音をたてる。
一応、新聞沙汰にはならずにすんだようだ。

「すみません、何かございましたか?」
無理矢理笑顔を作ってお客様に向き合う。
二人の男は小鳥遊を睨みつけるように見ている。
「お前に用はねぇよ。そこのかわいいお嬢さんに用があるんだよ」
「かわいい…?」
つい本音が零れてしまい、小鳥遊が訝しげな表情になる。
「ちょっと彼女とお友だちになりたいんだよ。アドレス聞くぐらいいいだろ?」
「アドレス、ですか」
「こいつ、彼女が気に行ったみたいでもう一週間通ってるんだよ。一目惚れしたんだと」
先程から黙っていた方の男が照れくさそうにやめろよ、と言った。
「でも一度も接客してくれねーって落ち込んでたから、俺が来てやったんだよ。
アドレスぐらい教えてやってよ、な?」
口調の割には悪くなさそうな男たちが、小鳥遊越しに伊波を見る。
「すみません、彼女困ってますので」
男たちの視界から伊波を隠すように小鳥遊が立ちはだかる。
「だから、あんたに言ってないだろ?彼女に直接聞きたいんだよ」
苛ついた様子の男が小鳥遊を睨みつける。
「直接聞かない方がお客様のためだと思いますが」
「なんだよてめぇ…邪魔すんなって…」
小鳥遊に男が詰め寄ったその時、悲鳴が木霊した。
「きゃぁぁぁぁぁー‼」
限界を超えた伊波の拳の被害者は、やっぱり小鳥遊だった。

940:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:34:44 Kqw2xVs6
WORKING!!最強

941:そのに
10/06/03 23:34:59 u9VoUPBj
「伊波ちゃん、かたなしくん、大丈夫?」
宙を舞った小鳥遊に怯え、二人の男たちは去って行った。
「小鳥遊くん、ごめんなさい~」
伊波が必死に謝る。
男に触れない伊波のかわりにぐったりした小鳥遊を介抱するのは種島だ。
「伊波ちゃん、お客様なぐらなかったの、エラかったね!」
「うん。小鳥遊くんが来てくれたから…ありがとう、小鳥遊くん」
「…殴ってやれば良かったんですよ」
ポツリと吐き出した小鳥遊の言葉は小さくて二人には聞こえない。
「でもそっかぁ…あのお客様、最近よく来てくれると思ったんだー!
伊波ちゃんのファンだったんだね!」
種島が悪気なくニコニコと言うと、伊波は慌てたように言う。
「や、やめてよ…種島さん…」

すっと小鳥遊が立ち上がる。
「とりあえず、早く片付けて帰りましょう」
「うん、そうだね!かたなしくん」
種島も立ち上がると、二人続いて店内に向かう。
「あのっ…小鳥遊くん」
「…はい?」
小鳥遊は振り向かない。
「ありがと…助けてくれて…」
精一杯、伊波がお礼を言う。
「いえ…」
しかし、小鳥遊は伊波を振り返らずに店内に戻って行った。


「かたなしくん、きっと照れてるんだよー!」
更衣室で種島が嬉しそうに言う。
「そ、そうかな?…なんか怒ってなかった?」
伊波は殴った後の小鳥遊の態度が気になっていた。
あの後も普通に片付けをしたけど、なんとなく表情が恐かった。
いつもよりもパンチがいい角度で入ったからかな?
伊波が着替えを済ませて更衣室から出ると、先に着替えた小鳥遊が待っていた。
「かたなしくん、伊波ちゃんお疲れ様!また明日ねー」
「種島さん、おつかれさま」
「先輩、気をつけて下さいね」
「かたなしくんも伊波ちゃんをちゃんと送ってあげてね」
気をきかせたのか、種島がばたばたと帰っていく。
なんとなく気まずい空気の中、小鳥遊がマジックハンドを差し出す。
「帰りましょうか」
「…うん…」
伊波が控えめにマジックハンドを掴むと、二人は店を出た。

942:そのさん
10/06/03 23:36:16 u9VoUPBj
帰り道っていつも何を話していたっけ?
伊波は考えてしまう。
いつもは、どちらからともなく自然に会話をはじめて、家まであっという間についてしまうのに、今日は違った。
話しかけても会話が続かず、小鳥遊はずっと重い空気をまとっている。
伊波は小鳥遊の後頭部を見つめる。
何か嫌われる様な事したっけ?
小鳥遊の出す空気が伊波の中でちくちくと胸をつつく。
「た、小鳥遊くん」
勇気を出して呼びかけた声が震えている。
「な、なんか怒ってない?」
「…何でですか?」
やっぱり小鳥遊はこちらを見ない。
「わかんないけど…いつもの小鳥遊くんじゃない」
伊波は二人を繋いでるマジックハンドをがちゃりと強く握った。
小鳥遊がようやく伊波を振り返った。
「伊波さん」
「な、なに?」
やっぱり表情が怖い。
「どうしてちゃんと断らなかったんですか?」
「え…?」
「アドレスです。お客様に聞かれた時、伊波さんがちゃんと断ればよかったんですよ」
いつもより迫力のある小鳥遊に伊波は戸惑ってしまう。
「だって…殴りたいのを抑えるのに必死で…」
「殴ってやれば良かったんですよ」
「えっ⁉だ、だってお客様だよ⁉」
いつもの小鳥遊からは考えられない台詞が出て来て伊波は焦ってしまう。
「なんかあったら、店長がもみ消してくれるでしょう?大丈夫ですよ」
「た、小鳥遊くん…いつもと言ってる事違う…」
伊波が一歩後ずさる。
小鳥遊はその距離を縮めるように大きく一歩伊波に近づいた。
「伊波さん、お父さんの教え、ちゃんと覚えてますか?」
「え?男はみんな狼ってヤツ…?」
「そうです。…まぁ、みんなって言うのは言い過ぎですけど、中にはそういうヤツもいるんですよ?」
伊波は小鳥遊の気迫に圧されていた。
いつのまにか距離がほとんど無くなっている。
がちゃりとマジックハンドが鳴った。
「でも、私強いから大丈夫だよ…?」
それは伊波の精一杯の強がりだった。
いつもの小鳥遊ならわかるはずだが、今の小鳥遊には伊波の甘さとしか取れなかった。

「伊波さんは何にもわかってないです」

943:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:37:28 Kqw2xVs6
WORKING!!つえー

944:そのよん
10/06/03 23:37:57 u9VoUPBj
小鳥遊がまた一歩伊波に近づく。
もうほとんど距離はない。
伊波は思わず拳を振り上げたが、それを小鳥遊はがっちりと受け止めた。
そして、空いている左手も掴むと、伊波ごとそのまま壁に追い込んだ。

「ど、どうしたの?…たかなしくん…」
伊波が微かに震える。
「伊波さんは、女の子なんです。こうすれば俺に適わない」
落ちたマジックハンドを小鳥遊の爪先が蹴る。
小鳥遊の息が伊波にかかる。
ぶるっと伊波が震えた。
「たかなしくん…近いよ…」
伊波は顔を逸らす。
「そんなんじゃ、ダメです」
低く、酷く落ち着いた小鳥遊の声が響く。
「え…?」
「もっとちゃんと拒否して下さい。そんなんじゃ男は引き下がりませんよ」
伊波がおそるおそるもう一度小鳥遊に向き合う。
真っ直ぐな小鳥遊の視線は伊波をじっと捉えている。



945:さいご
10/06/03 23:38:19 u9VoUPBj
「…や、じゃない…」
「え?」
震える唇から紡ぎ出された言葉を小鳥遊は聞き取れなかった。
「…怖いけど…いやじゃないの…」
伊波の潤んだ瞳が小鳥遊を見つめる。
形勢逆転、今度たじろぐのは小鳥遊の方だった。
「い、伊波さん?」
「ずっと…触ってみたかったの。触って欲しかったの…たかなしくんに」
どくん、と小鳥遊の心臓が音をたてる。
ふわりとどこからか甘い香りがする。
「わ、わたし…いやらしいのかな…?」
伊波が精一杯の笑顔を作る。
小鳥遊の中で、何かが壊れた。

「…伊波さん…」
名前を呼ばれ、伊波がぴくりと反応する。
「ほ、本当に嫌じゃないんですか?」
小鳥遊の言葉に伊波は首を縦に振った。
「たかなしくんが、好き…」
「…それは、気が付きませんでした…」
「…おかしいよね?あんなに殴っておいて…」
「おかしいのはお互いさまだと思いますよ」

小鳥遊がゆっくりと伊波に顔を近づける。
伊波は本能に従うように、瞼を閉じた。

それは一瞬だけの。
ぎごちない二人の初めてのキス。

「た…たかなしくん?」
先に口を開いたのは伊波だった。
小鳥遊は手の拘束を解くと、伊波の髪を優しく撫でた。
「あんなに殴られてて…おかしいと思うかもしれませんが…」
こほんと照れ隠しの咳払いが入る。
「…俺もずっと、伊波さんにこうして触りたかったです」
「…え?」
今更きょとんとする伊波に、やっと余裕が出て来た小鳥遊はクスリと笑った。
「だって小鳥遊くん…ちいさいものが好きなんじゃぁ…」
はい、と今度はニッコリと笑う。
「え…⁉だって…わたし…」
あわあわとうろたえる伊波を愛おしいそうに見つめて、小鳥遊は耳元で囁いた。

「ミジンコより、好きです」

946:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:40:13 u9VoUPBj
以上です。

もたもたしていたら、間に他の方のレスを挟んでしまいました。
すみません。

とりあえず、ラストの小鳥遊の台詞をいわせたかっただけでした。
後悔はしてない。

947:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:44:11 fRVbfRa5
ID:Kqw2xVs6はただの粘着クンだから気にするな

948:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:50:16 b2KAk2Cl
可愛いww
こういうの好きだ
ご馳走様でした

949:名無しさん@ピンキー
10/06/04 00:04:22 o0c+5Qyr
GJ!!!
いいねーいいねーおいしいねー

950:名無しさん@ピンキー
10/06/04 00:10:20 E6iQxar9
一つだけ注意
⁉ とか ‼ が
文字化けの原因になるから避けてくれい

951:名無しさん@ピンキー
10/06/04 00:16:48 w7XDJpvw
GJ!

ところで次スレっていくつで立てる?

952:名無しさん@ピンキー
10/06/04 00:18:03 E6iQxar9
>>970ぐらいでいいんじゃない?
容量も500KBオーバーは無さそうだし
あと、このスレはスレ番間違ってるから次は7ね

953:名無しさん@ピンキー
10/06/04 00:50:01 6xEWLwxn
ずっと教えぬ規制で困っている

954:795
10/06/04 01:01:57 /jRPrduL
後編いきまーす

前振りしっぱなしで時間ばっかりかかってスミマセンでした。
伊波陥落回には間に合わなかった・・・




955:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:03:48 /jRPrduL
小鳥遊宗太は走っていた。
短距離競走でもしているかと思うくらい全力で、がむしゃらに。
まだ明るいはずの時間帯であるにも関わらず、外は薄暗い。
厚い雲が空を覆い尽くし、日の光の侵入を阻んでいる。
天気予報によれば大型の低気圧が発達してきているらしい。
台風なみの強風に加え、雪もかなり積もるとのことだった。
雪が降り出すのは明朝以降という話ではあったが、既に空模様は怪しい。  
これは大雪になりそうだ。そう感じたが、小鳥遊は構わず走り続けた。

--伊波さんに会ったら・・・
思うと、色々な気持ちが頭を巡る。
小鳥遊自身、まだ自分の言葉を整理できていなかった。
ただ、まずはとにかく謝りたい。それだけを胸に、ひたすら走った。

電柱に書かれた地名が白藤の用意したメモと一致する。
足を止め、周辺を見回すとまもなく『○○町内会』と書かれた看板を見つけた。
地図によるとどうやらすぐ近くのようだ。
気付けば、既にひらひらと雪が降り出していた。
ここの所の冷え込みの原因であった寒気団を巻き込んでいるそうで
吹く風もずいぶんと冷たい。

雪が地面に落ち、染みていく様子を目にして
不意に昨日の伊波の涙が思い出される。
自責、後悔の念が噴き出し、胸が締め付けられた。
そして、伊波に謝罪すら拒絶されてしまったら・・・という恐怖が背筋を寒くする。

ズキン、と白藤に殴られた頬が痛む。
そう、結局のところ自分はそれが怖くて逃げ出そうとしていたのだ。
いまさら怖気づくものか。
気合を入れるように自分で左頬を小突く。
--痛い。
当たり前の事を再確認して、小鳥遊は足を前に進めた。

 ***

伊波まひるは真っ白になっていた。

伊波は自宅の居間で乾いた洗濯物をたたんでいたが、
ときおり急に手が止まったかと思えば
魂が抜け出たかのように完全停止する。
そして一定時間経つとはっと気がついて
びっくりしたように辺りをきょろきょろと見回す。

えーと、ああそうか。
洗濯物たたんでたんだっけ。全然進んでいないや。
駄目だなぁ、昨日の事があってからずっとこんな調子だ。
昨日の事、、、昨日の事、きのうのこと、きのうのコト、キノウノコト、、、

ぷしゅー。

再び思考停止。
昨晩の出来事でテンパリゲージを振り切って以来、伊波はこんな調子だった。

956:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:04:54 /jRPrduL

ピンポーン

家のチャイムが鳴る。
誰だろう。困ったな、いまお母さんいないから男の人だったら出られないかも・・・

ピンポーン

二度目のチャイム。
いけない。考えている場合じゃない、とりあえず出なきゃ。
そう思いインターホンのボタンを押す。
 
スピーカーからは、聞きなれた声が飛び込んできた。
「まひるさんと同じバイト先の小鳥遊宗太と申しますが、まひるさんはご在宅ですか?」
「た、たたたたたたたかなしくん!?」

飛び出すように伊波が玄関を開けると、確かに、小鳥遊はそこにいた。

「伊波さんにお話がありまして、、、突然押しかけてすみません」
「小鳥遊くん!?どうしたのその顔!!」
顔?と聞き返そうとして、白藤が殴った顔の事を言っている事に気付く。
小鳥遊自身は確認はできないが、頬は青黒く変色してしていて見るに痛々しい。

伊波は驚いて手を伸ばそうとしたが、すぐに引っ込めてしまう。
伊波の表情が暗く沈む。
想い人に触れるどころか、近づくことすらできない。
その現実が、彼女の心を締め付けた。
小鳥遊にも伊波が男性恐怖症のせいでまた心を痛めているのが伝わり、
強いもどかしさを感じる。

ゴウッッ・・・!!!

強風が家の中に吹き込む。雪も強くなってきているようだった。
「と、とりあえず入って!」
家に上がるつもりはなかった小鳥遊だが
こんな風が吹く中、玄関先で話し込むわけにもいかない。
伊波に促されるままに家の中に入った。

「タオル持ってきたけど・・・どうしよう、いまお母さんいなくて・・・」
「あ、大丈夫です。念のため『コレ』も持ってきていますから。」

差し出されたタオルを折りたたみ式のマジックハンド(¥1980)で受け取り
軽く頭を吹く。思ったよりは濡れていないようだった。

伊波は小鳥遊を居間に通そうと思ったが、
そこにはたたんでいる途中の洗濯物が散乱している事を思い出す。
散らかった状態ということもあるが
部屋着や下着を小鳥遊に見られるのは恥ずかしい。

「えーと、えーと・・・」
しばし逡巡するが、やがて意を決する。
「こっち!私の部屋に来て!!」

伊波の言葉に流石の小鳥遊もどぎまぎする。
『お母さんはいない』・・確か父親は単身赴任だったはず。
『私の部屋』・・伊波さんの部屋ってことだよな?
小鳥遊にしてみれば、自分でも意外なくらいに動揺していたが
どうにかして落ち着こうと頭を整理しながら
伊波の後ろについて階段を登る。

957:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:05:47 /jRPrduL

「あ!!!」

自室のドアを前にして伊波が叫び声を上げる。
「ちょ、ちょちょちょちょっと、ここで待ってて!」
伊波は小鳥遊を制止したまま部屋に飛び込んでいった。
何か見られたくないものでもあるのだろうか、との疑問が頭に浮かぶ
しかし、他人の部屋のことだ、詮索すまい。と思い直し深く考えないことにした。

ほどなくして、再びドアが開く。
「ど、どうぞ・・・」
おずおずとドアの隙間から伊波が顔を出す。
「・・おじゃまします」
小鳥遊も伊波に誘われ、伊波の部屋に入る。
ちょこん、とベッドのしたの床に座り込む伊波。
釣られて小鳥遊も床に座るが、何故か正座だった。

「で、その顔は・・・どうしちゃったの?」
あくまで伊波は顔のアザが気になるようだった。
早く本題に入りたい気持ちはあったが、答えを返す。

「えーとですね、バイトを辞めたいという話をしたら店長にぶん殴られまして・・・」
「えっ・・・」
しまった。余計な事を言った、と思ったが既に遅い。
伊波の表情に見る見るうちに曇る。
「たかなしくん・・・辞めちゃう・・・の・・・?」
言いつつ、伊波の声は消え入りそうに小さくなっていった。
またこんな顔をさせてしまった。頬以上にズキズキと心が痛む。

「いえ、辞めませんよ!辞めるわけ無いじゃないですか!
話の流れでそうなっただけで・・・」
「・・ほんと?」
「本当です!」
「よかった・・・」

伊波の表情が明るさを取り戻し、小鳥遊も胸をなで下ろす。
そして、ふぅ、と軽く息を整え今度こそ本題へと入り始める。

「今日はですね、伊波さんに謝りに来たんです。」
「あやまる・・・?」
「いきなり、あんなことをしてすいませんでした。と」
「あんなこと・・・・・・あっ」
呟くように復唱して、それが昨夜のキスの事だと思い当たると
伊波の顔が一気に真っ赤になる。
その様子に、小鳥遊もどうしようもない恥ずかしさを覚える。

「俺は最低です、伊波さんが男性恐怖症だということもわかっていながら、あんな・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
謝罪を続ける小鳥遊を伊波が制止する。

「それを言うなら私の方こそ・・・
あの・・・私が仮眠していた時のこと覚えている・・・よね?」

--やっぱり、仮眠していたときの記憶はあったんだよな。そりゃそうだ。
伊波の言葉で小鳥遊は何だかホッとするような感覚を覚える。

958:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:08:22 /jRPrduL

「・・・・」
「・・・・」

急に言葉が続かなくなる。
昨夜の一件だけでなく、ごまかし続けていた1回目のキスも
事実として2人の間に横たわったことで
急に恥ずかしさや気まずさが沸き出してきた。
色々と言いたいこと、言うべきことがあるはずなのに言葉が出ない。
沈黙が二人の間を支配する。

「・・・あの、」

伊波が何かを言いかけた瞬間、

ブツッ

「きゃぁ!」
ガタン、ガラガラ・・・

突如、部屋の電気が消えて暗闇に包まれる。
悲鳴を上げた伊波はその場で腰から飛び上がり、
何かが床に落ちる音がした。

「停電…?」
「強風か、雪かで、電線が切れたんでしょうか」

「それより、大丈夫ですか!?
何かにぶつかったような音がしましたけど
怪我とかしてないですか!?」

「うん・・・どこも痛くはない・・・んだけど」

伊波が飛び退いた拍子で
小鳥遊が伊波の肩を抱くような姿勢になっていた。

「小鳥遊くん、、、ゆっくり私から離れて。」

そう言われて、小鳥遊は自分の中に
得体の知れない感情が頭に渦巻くのを感じた。
この手を離したくない。間違いなくそう思っていた。

伊波の肩が小さく震えているのに気付く。
それは男性恐怖症によるもののようにも思えたが、
少し様子が違う。

そういえば、この人は人一倍怖がりだったっけ。
自分自身が不安で一杯であろうに、
こんな状況で俺の事を気遣っているだなんて。
そんな伊波に対して、小鳥遊は、

「この人を守りたい。」
心の底からそう思っていることに自覚した。

ああそうか。
簡単なことじゃないか。
俺は伊波さんの事が―

なんだ、まだ気づいていなかったのか。冷静な自分が鼻で笑う。
アホだな、俺は。ああ、本当にアホだ。大アホだ。

959:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:09:40 /jRPrduL
だけど、わかってしまえばこっちのものだ。
もう自分の気持ちに振り回されたりしない。

「言い訳を、させて下さい」
「いいわけ・・?」
半ば唐突な言葉に、伊波も思わず聞き返す。
「キス、、、だけじゃなくてですね。」
「俺は、伊波さんが寝ぼけていたとはいえ
伊波さんに触れることができて、嬉しかったんです。
だから・・・夢にしたくなかった。」

「俺は・・・!伊波さんが好きです!!」

突然の告白に、伊波は言葉を失った。
嬉しくないわけがなかった。当然である。
笑顔を向けられれば胸が高鳴った。
1cmでも近くに寄れれば、幸せだった。
きっかけは自分のために父親に怒ってくれたこと。
でもそれだけじゃない。
さりげない優しさや強さ、そしてごく稀に見せる弱さ。
こんな私を避けずに向き合い、怒ってくれる、唯一の男性。
きっとお父さんの事がなくても、私はこの人に恋をしただろう。
--だけど。私が近づくと、小鳥遊くんを傷つけてしまう。

呪いのような、自分の体質。その呪縛が心を凍らせる。

「でも、でも、私は、小鳥遊くんを、殴っちゃう。。。」
話すうちに、泣き出しそうになってくる。

「もう、もう限界なの・・・お願い、離れて!!」

しかし、小鳥遊は、宣言するかのように大きく声を上げた。

「嫌です!」

「俺はどんなに殴られても伊波さんの傍を離れません!
これは俺のエゴです!伊波さんが俺を殴りたくなくて、
殴ってしまって自分を責めてしまうとしても、
それでも俺は伊波さんに近づきます!何度でも!」

そう言うと、小鳥遊は伊波を思い切り抱き寄せた。

伊波の心拍数が跳ね上がる。
血が逆流するかのような感覚を覚える。
殴ってしまう、その衝動を抑えようと強く目をつぶる。
・・・・・

とくん、とくん、とくん

小鳥遊の心臓の音が聞こえた。
伊波ほどではなかったが、小鳥遊の鼓動も早まっていた。
小鳥遊の鼓動、体温、吐息。
暗闇の中、伊波は小鳥遊の存在だけを感じることができた。
--あたたかい。
早鐘を打っていた伊波の心臓が落ち着きを取り戻す。
二人の鼓動が重なり始める。
気付けば、伊波の心を長い間支配していた男性への恐怖感が薄れている。
伊波の殴り癖は身を守らなければ、という強迫観念である。
--怖くない。小鳥遊くんなら、怖くない。
ごまかしではなく、そう思えていた。

960:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:10:47 /jRPrduL
チカ、チカ、チカ、
ブゥゥーーン

電気がつく。
急な光に目がなれずにチカチカする。
目が合うと、気恥ずかしさから目を逸らしてしまう。
が、何かとても勿体ないことをしたような気持ちになり
再び小鳥遊の顔を見た。
小鳥遊は照れくさそうに、それでも優しく、微笑んでいた

「た、たかなしくん。あのね・・」
返事をしなきゃ、伊波はそう思うのだが上手く言葉が出ない。
こんなに幸せに満たされているのに。
焦る心がさらに言葉を乱す。

「いいですよ伊波さん。何も言わなくても俺にはわかりました」

伊波さんの行動はわけがわからない?
違うだろう。俺が鈍感過ぎただけなのだ。

その証拠は、伊波の部屋の床に落ちていた。
停電に驚いた伊波が机にぶつかった際に床に落ちた物。
本来であれば机の上に大事に飾られていた伊波の宝物。
先程、小鳥遊を部屋に入れる直前に伊波が裏返らせておいた、写真立て。

そこには、伊波の想い人の写真が飾られていた。

「あう・・あう・・・」
伊波は再び言葉を失い、
茹ってしまわないか心配なくらいに真っ赤になる。

「こんな俺を、好きになってくれてありがとうございます。」

「・・・自意識過剰じゃない、ですよね?」
ほんの少し不安になって、照れくさげに訪ねる。
「ちがい・・・ます。じゃなくて、違うのは自意識過剰、って方でね」
「そう、違わないの。」
伊波も支離滅裂になりながらも、精一杯の言葉を紡いだ。
「私も・・・小鳥遊くんが好きです」
小鳥遊の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。

「べ、別にね?」
「はい?」
「強引なのが嫌なわけじゃないの」
「あの時、涙が出たのは・・・びっくりしたのと、むしろ嬉しかったかも」

--伊波さん、それは反則だ。
愛しさが止まらなくなる。

「・・・伊波さん。俺は男なんですよ」
「うん・・・知ってる」
「男は狼なんです。ご存知でしょう。」
「うん・・・知ってる」
「でも・・・こんな優しい狼なら怖くないよ」

視線が絡み合い、時間が止まる。
世界が溶け合い、境界線が曖昧になる。
どちらともなく求め合い、、、唇を重ねた。
夢ではない。衝動に任せた不意打ちでもない、本当のキス。
今度こそ、やっと見つけたお互いの存在を確かめあった。

961:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:11:11 /jRPrduL

 ***

またある日のワグナリア。
いつもどおりの光景がそこにあった。

「きゃー!」
ばきぃっ!

小鳥遊が伊波に殴られているという、いつもの日常。
「うぇーん!小鳥遊くんごめんなさいー!!」
「いえ、いまのは死角にいた俺が悪いんです」
「本当にごめんね、いま絆創膏とってくるね・・・」

しょげた様子でパタパタと走り去っていく伊波を横目に佐藤が小鳥遊に尋ねる。

「お前ら付き合ってるんじゃなかったのか?何でまだ殴られているんだ」
小鳥遊と伊波が付き合い始めたことは
何故かあっという間に周知の事実となっていた。
犯人、と書いてそうまと読む、原因は分かり切っていたが、
もはや深く追及はしないことにしていた。

「染み付いたものはなかなか直らないようで・・・まぁスキンシップということで」
伊波に殴られても怒らなくなった小鳥遊も気持ちが悪い。
「とりあえず鼻血を止めてくれ」
呆れた口調でティッシュを差し出す佐藤。

「あ。でも殴られない時もあるんですよ。ある法則を見つけたんです」
ティッシュを鼻に詰めながら、嬉しそうに話す小鳥遊。
「ほう?」
「なになに?僕にも教えてよ!」
「すごいね!さすが伊波ちゃんのプロ!」
端でやり取りを見ていた相馬と種島も会話に加わってくる。

「実はですね・・・」
「うんうん」

「キスをするときと、してからしばらくは殴られないんです!」

さらりととんでもない事を暴露する小鳥遊。
 
「・・・・」
絶句する一同。

「ふしだらだ!かたなしくんがふしだらだ!」
「俺、、、頭痛くなってきたわ」
「僕の負けだよ小鳥遊くん・・・こんな話、流石に人に言う気にはなれない」

「あ!でも真似しちゃ駄目ですからね!!」
「しねーよ!!!!」×2


―嵐が過ぎ去っても、ワグナリアは変わらず騒がしかった。



962:ゴールデン・デイズ
10/06/04 01:11:36 /jRPrduL
==おわり==


963:名無しさん@ピンキー
10/06/04 01:16:25 /jRPrduL
以上、です。

小鳥遊と伊波のキスシーンを書きたかったがだけに
勢いのみで書きました。

8巻収録予定分に小鳥遊が伊波の家に行く話があるそうで・・・
単行本派なもんで、矛盾した話があったりしたらご容赦下さい。
店長住所渡す必要ないじゃん、とかw

「こんな台詞いわねーよw」とか思う部分があったらすいません。
願わくば、諸兄と俺の妄想世界が交わりますように。

964:名無しさん@ピンキー
10/06/04 01:28:08 YD7ICPG0
やっぱWORKING!!はアニメ界No.1

965:名無しさん@ピンキー
10/06/04 01:44:33 kYPk9+i8
GJでした
やはり伊波は可愛いな。タカナシに譲るけど。

966:名無しさん@ピンキー
10/06/04 01:54:25 o0c+5Qyr
GJ--!!
伊波ちゃんかわいすぎるわw
タカナシいい男だな

付き合いだしたらこんなだったらいいなー
って思ってた雰囲気で凄い満足できた

967:名無しさん@ピンキー
10/06/04 05:15:57 IgMWdAeL
かたなしくんのふしだらさには呆れるのみだぜ!

>>963
GJGJ

968:名無しさん@ピンキー
10/06/04 06:37:14 mG7XJbbf
たかいな最高!

969:名無しさん@ピンキー
10/06/04 07:46:16 YD7ICPG0
WORKING!!負けなし

970:名無しさん@ピンキー
10/06/04 12:36:18 ppEJOJhf
さすがに9話のあとはいなみん無双だなw

@次スレ立てるぜ

971:名無しさん@ピンキー
10/06/04 12:38:18 ppEJOJhf
ごめん次スレ無理だた
立てられる人お願いします

スレ番は7ね

972:名無しさん@ピンキー
10/06/04 12:45:20 E6iQxar9
  ________________________________
 | Sub 新スレ                                          |
 |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|
 |【高津カリノ】WORKING!!エロパロNo.7                       |
 |スレリンク(eroparo板)       |
 |                                              |
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                           /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
                          ,':/:/|::,:::::::l:|::::::::::::::::::::::::;;;;;;;::i:::::::::::::::::::::::i
                            | ハ|:::|/Nヘ|:|\:::::::::::::;;;;;;;;;;;::|:::::::::::::::::::::::::l
                 _____     丶リヽ',  り ',Σ:::::::::;;;;;;;;;;;;:ハ:::::::::::::::::::::::|
             | ┌―┐|        ' ,   /ヽ-,:::::::;;;;;;;;|:::::::::::::::::::::::::::|
             | |==│|        l   l / ) ノ:::::::::::::;;;i:::::::::::::::::::::::::::し
             | |    │|         |    |/  ' し:::::::::::;;;ヽ::::::::::::::::::::::/
             | |    │|        ',   |      ヽ:::::;;;;;ヘ:::::::::::::::::/
             | └―┘|        丶,_ | _     ヽ::;;;::|::::::::::::::/
             ヾ====            し, rドi'",i´リへ::::::|::::::::::::|

973:名無しさん@ピンキー
10/06/04 13:11:19 od8AqceI
スレ立てお疲れさん、ゆっくりしていきな

974:名無しさん@ピンキー
10/06/04 13:54:52 lFckOe5y
スレたて乙~
次スレでもいっばい2424やむらむらできるといいな。

975:名無しさん@ピンキー
10/06/04 13:57:23 x+bSSiHm
最近の投下率が嬉しい。

スレ立てさんも職人さんもまとめサイト編集さんも乙!

976:名無しさん@ピンキー
10/06/04 14:44:52 d6IjHMPd
>>975
お前もなんかやれよw

977:名無しさん@ピンキー
10/06/04 16:49:16 ppEJOJhf
>>972
ありがとう!助かりました

978:名無しさん@ピンキー
10/06/04 17:10:19 V/GwVTrI
>>963
GJすぎて涙が出た
ごめん、GJなのはほんとだけど涙が出たのは>>960読んだからだった

979:名無しさん@ピンキー
10/06/04 18:08:19 f3AZS8GW
>>963
GJ!
なんかここ数日ニヤニヤが止まらないんだけど

980:名無しさん@ピンキー
10/06/04 18:24:48 ppEJOJhf
>>960はそのままなだれ込んでもおかしくない流れ

981:名無しさん@ピンキー
10/06/04 19:53:41 vfKAlNhH
このスレ立ったのもう三年近く前になるんだな……
正直こんなに持ち直すとは思わなかった
長生きもしてみるもんじゃ

982:名無しさん@ピンキー
10/06/04 19:58:59 g8iwdXHG
500まで行くのに2年半かかったのに
500から残り半分は2か月掛からなかったていう

恐るべきアニメ化のパワー…

983:名無しさん@ピンキー
10/06/04 20:23:31 ZF5fWbMJ
>>506
さとやち書き始めたら同じ状態になった

984:名無しさん@ピンキー
10/06/04 20:29:36 g5ed8qKJ
>>972
スレたて乙、種島の髪をモフれる権利をやろうって佐藤がいってた!
あと埋めついでに5/30のらくがき見てティンときた小ネタを4コマ風に

「足立君」
「な、何?」
「……(じー)」
「…え、えーと……」
「急な話で申し訳ないんだけど」
「う、うん」
「アレがまだ来てないの」
「いやいやいやいや!俺達まだそこまで進んでないから!キスまでしかしてないから!」


そのなんだ、最後のコマに「あ」って書いてあったんでつい…

985:名無しさん@ピンキー
10/06/04 20:49:10 ZF5fWbMJ
>>984
「まだ」ってことはこれからする予定はあるのね?


986:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:00:57 ppEJOJhf
伊波ちゃんが孕んじゃって一枝が怒って宗太が家を出て同棲開始…
ってネタが浮かんだけど、エロパロどころが二次創作でも異色過ぎる気がしたw

987:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:17:26 LGEZhVHP
宗太が出てったら小鳥遊家崩壊するだろw

988:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:33:49 ZF5fWbMJ
その前に伊波は父親が障害だな
最終手段ことりになって挨拶しに行くとかw
断られる

なぜかついてきた種島が「それじゃことりちゃんと私が結婚するね!」

伊波父「だめだ!ことりさんは伊波のものです」

種島「よかったね、2人の仲認めてもらったよ!」

ないなw

989:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:34:25 f3AZS8GW
>>987
しばらくはなずながなんとかできるんじゃね?

990:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:38:23 6xEWLwxn
宗太はみんな出来ないやらないから自分がしないと駄目と思っているが結果的にみんなを甘やかしているだけのような気がする

ことりちゃんってピンク髪だからきっと淫乱ですよね

991:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:39:01 AO2NNlpu
ことりを「男前だ」とビビッてたから、
意外とストレートに行けば、いけるんじゃね?

992:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:44:04 ppEJOJhf
怒る一枝、泣く泉、応援しようとする梢・なずな
セブンセンシズに目覚める伊波父、変わらぬ伊波母
孕んだ時の周りのリアクションの想像が妙に膨らんだw

そういうのひっくるめて駆け落ち的な展開のSSを…
書きたいような書きたくないようなw

993:名無しさん@ピンキー
10/06/04 21:52:13 x+bSSiHm
小鳥遊くんはいいお父さんになりそうですね。

とりあえず、妊娠を小鳥遊に告げるいなみんを想像したら萌えた。

994:名無しさん@ピンキー
10/06/04 22:01:01 ppEJOJhf
>>993
お互いを気遣い過ぎてすれ違いそう
でも最終的には喜びを分かち合うわけですよ


相馬は相馬で超真面目な一面を見せそうな気がするし

995:名無しさん@ピンキー
10/06/04 22:01:20 f3AZS8GW
葉子さんみたいになりそう

996:名無しさん@ピンキー
10/06/04 22:22:05 x+bSSiHm
伊波さんから母乳…だと…?

997:名無しさん@ピンキー
10/06/04 23:23:25 s/oXqbtQ
そんなエッチなことココで話さないでください><

998:名無しさん@ピンキー
10/06/04 23:42:54 91cnqcK9
998

999:名無しさん@ピンキー
10/06/05 00:05:21 /elCsGHq
>>996
実際母乳出なくて苦労する人もいるらしいよ

1000:名無しさん@ピンキー
10/06/05 00:09:10 gVZBKboO
1000なら伊波はかたなしの嫁



【高津カリノ】WORKING!!エロパロNo.7                       |
スレリンク(eroparo板)     

1001:1001
Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。


最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch