07/10/06 18:44:46 kbYK2Eag
「花火、ですか?」
「うん」
夏休みのある日、花火大会に行かないかとミチルくんに誘われた。
「練さんも?」
「誘うわけねーじゃん。
オレとお前、ふたりだけ。それに練呼んだら兄貴も来るし」
そうですよね。
練さんとシゲル先輩が一緒にいるところをわざわざ見るのはキツいですよね。
「学がどうしても練と見に行きたいなら止めないけど、オレはふたりだけがいい」
『ふたりだけがいい』
その言葉にどきどきしていたら、後で、
お前だったら人混みでもはぐれないだろうしって笑った。
練さんは小さいから、
きっと花火大会で見失ったことがあったんだろうなと、言葉の裏を考えた。
きっとそのころは練さんとシゲル先輩とミチルくんと……
もしかしたら練さんのお姉さんもいたのかな。
私の知らないミチルくん、私の知らない練さん。
どんなふうに過ごしていたんだろう。
「ジャージ、Tシャツ禁止。浴衣推奨。じゃ、また電話する」
そう言って片手挙げて去っていったミチルくんの後ろ姿につぶやいた。
「お望みの女装していきますからね」