09/06/20 21:00:16 P+m2mTri
───コツコツ
窓を叩く音に、何の警戒心も抱かずあかねはカーテンを開ける。
二階である自室の窓をノック出来る人物などそうはいない。
「おかえり、乱馬。」
窓を開けると、思った通りの人物が軽快にひょいとあかねの部屋に入る。
「玄関開いてねえけど、皆は?」
無遠慮にあかねのベッドに寝転がりながら問う。
「乱馬が2、3日修業に出るって言ったら、あっという間に
みんなで旅行の計画立てて出掛けちゃったわよ。」
やりかけの課題を広げた机を前に座り、あかねは呆れた顔をする。
「オメーは行かなかったのかよ?」
キョトンとした表情の乱馬を軽く睨みながらあかねは口を開く。
「乱馬が居ないのが悪いのよ!」
─事の発端はこうだ。─
あかねから乱馬が2、3日家を空けると聞いた早雲は
中々進展しない二人の仲を発展させるべく、旅行を計画した。
私も行くとごねるあかねを家族は口々に
「乱馬くんが可哀相」やら
「いいなづけなんだから、ちゃんと世話してあげなきゃ」やら
色々言いくるめられ、結局留守番させられる羽目になったのだ。
──────
「別にオメーが居なくても平気だけどな。」
呆れたような、ふて腐れたような声で乱馬が呟くと
「もういいわよ。どうせ夏休みの課題も全然手付かずだったし・・・」
チラリと机上の参考書に目をやり、それに・・・と小声で続ける。
「修業頑張ってる乱馬を置き去りにして、旅行なんて行ける訳ないでしょ。」
「あかね・・・・」
何とも言えない表情でベッドから降り、
少しあかねに近づく乱馬にドキッと心臓が跳ねる。
「な・・・何よ?」
照れ隠しの為か、わざとぶっきらぼうに言うと
乱馬はさらにあかねに近づく。
「・・・・夕食は出前取ろうな。絶 対 に 。」
「どういう意味よ!!」
一体何処にあったのか疑問な
店屋物の店前にありそうなたぬきの置物であかねは乱馬をどすぅっ!と叩き潰した。