08/11/11 19:34:07 sEMNz/3M
天道道場に着いた…
突然降ってきた雨のせいで重い荷物を引きずる事になっってしまったが、
豚になっている時の方が鼻が利くせいか、道に迷わずに済む事が多い気がする。
いつものように池側の窓から居間に入ったが、人の気配が無い。
誰もいないようなので土産だけ置いていく事にするか…
留守宅を勝手に使うのは気が引けるが、風呂場で人間に戻らせてもらって、
また往く当てもない旅に出るとしよう。
脱衣所の扉を鼻でこじ開けると、暖かい空気が流れてきた。
誰か入ってるのか?
扉の音に気づいて風呂場から人が出てきた。
「良牙じゃねーか」
らんま!マズイ!
俺はひょいと体を持ち上げられると湯船の中に落とされた。
「最近、姿見せなかったな、どこ行ってたんだ」
「宮崎だ。居間に『白い恋人』を置いてきてある」
俺は壁に向かいながら答えた。
とても目を合わせられない。
らんまが男に戻れなくなってから、
俺はらんまの様子が気になり土産を口実に天道道場に来るようになっていた。
しかし、なるべく人間の姿ではなく豚の姿で会うようにしていた。
あの時、開水壺を見つけ出すことが出来なかった俺が
まともに顔を合わせられる訳が無い。
「久々に会ったってのにつれない奴だな。人の顔を見て喋れ」
らんまは両手で俺の顔を自分に向けた。
久しぶりに見るらんまの顔は一段と綺麗に見えた。
それに体も女らしく丸みを帯びて肌は薄紅色にほてり水を弾いている。
鼻血が垂れて湯船に滴った。
「お前、今は女なんだから服くらい着ろよな!」
「ごめん…」
らんまは急に気が付いたように赤面すると体を手で隠しながら後ろを向いた。
こちらもつられて赤面して後ろを向く。
「すまん」
「…」
「……」
何なんだこの間は?
いつもと違うアイツの反応に空気が張り詰めて息が詰まりそうだ。
兎に角、この空気を変えたい…
「茜さんは留守のようだが元気にしているか?」
「………」
「なあ、何かあっ…」
沈黙に耐え切れず振り返ると、思わず息を飲んだ。
らんまが泣いている。