08/06/10 02:31:32 ds8JsU2h
「ただいま」
いつもと違い静かな玄関。
出来る限り静かに廊下を歩き自室に、鞄を投げ込む。
風呂へ。
洗面器を手にとる。水をくんでハンドタオルを掴み、廊下に出る。
姉の部屋の前に。
「入るよ?」
返事は無い。少し申し訳ないが、勝手に入らせてもらう。
ベットに姉。寝ている。寝息が少しばかり苦しそうだ。
カゼをひいてしまったらしい。買い物のときにでも拾ってきてしまったようだ。
顔に汗がにじみ、うっすらと赤い。症状は熱と軽い頭痛。咳は無い。
洗面器の水にタオルを浸し、絞る。
冷却シートはちょうど無くなっていた。買いに行こうかとも思ったが、出来れば姉の側についていたかった。
すっかり熱の込もってしまった額のタオルをとり、絞ったばかりの冷たいタオルを入れ替わりにのせる。
「ん……あ…おかえり…」
「うん、ただいま」
やはり元気はない。
「ごめんね……迷惑かけて……」
「なに言ってんのさ、迷惑なんかじゃない、いつも世話になってるし。恩返しさ」
「でも……ご飯も作れないし……」
「俺はインスタントでも大丈夫だから。姉ちゃんは茶漬けでいい?」
「うん」
「……ごめんね。ホントはもっと、俺がちゃんとしたもん作れればいいんだけど……」
後で料理の勉強くらいしておこうと思う。今よりマシになるくらいには。
「ううん、こうして世話をやいてくれるだけでも充分だよ」
「そう言ってもらえると、少し気は楽かな。それじゃ、ちょっと茶漬け持ってくる」
「いいよ、私が行くから……」
「ダメ。ほら、病人は安静にしといて。どうせ何分もかかんないんだからさ」
冷やし直したタオルで姉の顔ににじんだ汗を軽く、優しく拭ってから部屋を出る。