08/02/08 16:32:41 y15iujCl
目を覚ますと、視界一杯に白い柔肌が広がった。しかも、ちょうどパジャマの開いた胸元
から覗いている部位の。寝起きという以外の理由で下半身に血が流れていく。信二郎はま
だすぅすぅと寝息を立てる碧から少し離れた。
こんなにぴったりくっついて、よく夢精しなかったものだ。やはり寝る前に一発抜いておい
たのがよかったか。
時計を見ると、八時半。いつもなら学校に行っていなければならない時間だが、それでも
のんびりできるのが冬休みの特権だ。
「ん……」
信二郎が動いたせいか、碧がゆっくり瞼を開けた。
「あ、起こし―」
「きゃあぁぁあああっ!?」
突然の悲鳴である。それもご近所さんが怒り出すか110番してもおかしくないほどの。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん?」
「うわ! シンジロだ!」
碧は「怖い人かと思った~」と胸を撫で下ろした。ついでに信二郎も外が騒がしくならない
ので胸を撫で下ろした。
「びっくりさせないでよぉ。わたしそういうの弱いんだから」
「おどろいたのはこっちだよ……」
「あー! しかもミスった~。『もう朝だよ、起きて起きて』ってやりたかったのに。なんでシン
ジロが先に起きちゃうかな」
「……」
聞いちゃいないな、と寝グセのついた頭をガシガシ掻いた。碧はそんな信二郎を尻目に、
ベッドから下りると早速(何が楽しいのか)にこやかに飛び跳ね始めた。
「朝はーお姉ちゃんのーモーニングサービスだぞーっ、と」
鼻歌混じりにパジャマに手をかける。信二郎は高速で明後日のほうを向いた。昨日から
思っていたが、どうも碧は思春期真っ只中の少年に対する配慮に欠けている。
「顔洗って、髪整えて、朝ご飯の準備だ!」
無駄に元気よく碧が部屋を飛び出して行ってから、信二郎はいそいそと着替え始めた。
碧と入れ違いに洗面所に入り、顔を洗って、手櫛で大雑把に寝グセを整える。
キッチンでは、碧が一昔前の歌を熱唱していた。
「いーざすーすめーやーキッチーン。めっざすーはじゃーがいもー!」
何をするにも楽しそうだな、とつくづく思う。冬の朝に台所仕事なんて面白いものでもな
いだろうに。信二郎はキッチンから聞こえてくる歌声を耳に、テーブルについた。
「あ、シンジロ、朝ご飯オムライスでいい?」
「……え?」
なん……だと……オムライス? じゃあ、あの歌は一体?
「あれ、苦手だった?」
「いやいや、全然いいよ」
深く考えるのはやめよう。考えたら負けだ。
「ほいほい。好き嫌いしないってのはいいことだよ」
少しして、特盛りのオムライスが運ばれてきた。正直、朝からそんなに食欲が出ないのだ
が……
「はい。どーぞ!」
食べないわけには、いくまい。
胃がパンパンだ。
朝食の片付けを済ませると、碧は携帯で時刻を見て、
「シンジロ。わたしちょっと出かけてくるね。友達に荷物運ぶの頼んでたんだ」
と言った。信二郎は「ついていこうか?」と言ったが、碧は首を横に振った。
「いいよいいよ。駅で待ち合わせてるから、道わかるし」
本心を言えば、碧の友達というのが気になったのだが……信二郎は「そう」とおとなしく留
守番していることにした。