男主人・女従者の主従エロ小説 第二章at EROPARO
男主人・女従者の主従エロ小説 第二章 - 暇つぶし2ch319:王様と書記官
08/01/08 15:35:59 AWDHW0fr
「閨…と申しますと、私に陛下の相手をせよと、そう言うことですか?」
 陛下の言葉が発せられてから、随分の時間が経って、私はようやくそう口にしました。
 実際はそんなに時間が経っているわけではないのかも知れませんが、私には嫌に長い時間だと感じました。
 うむ、と陛下が頷くのを見て、私はあっけにとられてしまいました。
 一体この人は何を言っているのだろう。
 計りがたい人だとは思っていましたが、今回ばかりは計るどころではなく理解不能。
 先ほど発したのも人間の言語かと疑ったほどです。
 恐ろしさも忘れてつい、まじまじと陛下を見つめてしまいました。
「あなたは…馬鹿ですか?」
 いつもならば決して口にしなかったような言葉がつい口から出てしまったとしても、仕方ありません。
 それほど吃驚していたのです。
 口に出してしまってからその言葉の不敬に気づき、身が縮こまる思いをしましたが、陛下はむすっとして、押し黙っていました。
 よくよくみると頬が赤らんでいます。
 ああ、これは照れているのだなと気が付くと、急に陛下を可愛らしいと思う気持ちが湧き上がってきて、くすくすと笑ってしまいました。
 私が笑うと、陛下はますます顔を真っ赤にして一言、笑うな、と仰いました。
 けれどその言葉に先ほどまでの王者の威厳は欠片もありません。
 そこに立っているのは、まだ初心な少年でした。
「陛下、お戯れもいい加減になさいませ。
 陛下にはもっと年若い、可愛らしい娘でないと。
 私のようなおばさんに、陛下の相手はつとまりませんわ。」
 では失礼。
 そう言ってスカートを翻し退出しようと思いましたが、それを遮ったのは、荒々しい抱擁でした。
「な……」
 何を、と言いかけた唇を強く吸われ、胸を無茶苦茶に揉まれました。
 その手つきがあまりに乱暴だったので眉をしかめ、抵抗しようと突っ張った腕は瞬く間に捻り上げられてしまいました。
「おやめ下さい、国王陛下!」
 体をねじり、必死でキスを逃れながら叫んだ声は、ドレスを破る音でかき消されました。
「いや、やめて…」
 必死で抵抗する私のあごを掴むと、陛下は私の唇を執拗に吸い、下着を剥いでいきました。
 涙のにじむ目で見上げると、陛下の目は赤く血走り、食い殺さんばかりの形相で私を見下ろしていました。
「ひっ………」
 あまりの恐ろしさに叫ぼうとしても、引きつったようなうめき声にしかなりません。
 まだ濡れてもいないような場所をいじられて、無理矢理貫かれました。
 その時に何と叫んだかは覚えておりません。きっと言葉ですらなかったのでしょう。
 陛下が私の中に精を放ったときは、霞がかかったような頭の中で、やっと終わった、とだけ感じました。


320:王様と書記官
08/01/08 15:59:53 AWDHW0fr
 事が済んだ後、私は放心したまま横たわっておりました。
 私もとうに乙女ではありませんでしたが、それでも男の人に体を開くなどと言うことがそうそうあったわけではありません。
 まだほんの年若で、与えられた役目の重圧にあえいでいた頃。
 うなだれていた私をかばい、励ましてくれていた方がおりました。
 お互いに心を寄せ合い、愛を誓い合った仲でした。
 謀反人の娘でも構わないと仰ってくれていたその方が、周りの声に抗いきれずに他家の娘と結婚することが決まったその夜。
 私とその方は、お互いの涙に濡れながら抱き合いました。
 それ以来、男の方と愛を交わしたことはありませんでした。
 自分でも心のどこかで、生涯あの方一人と決めておりました。
 その誓いが、こんなに容易く破れようとは思ってもいませんでした。
 呆然と見上げる天井は、重く冷ややかでした。
 月は、その姿すら見えないほど朧気で、それなのに光ばかりが差し込んで、陛下を残酷に照らしあげます。
 うつろになった体でぼんやりとその様を見ていると、ばさりと深緋が翻りました。
「お前は俺の閨役を務めるんだ。」
 これは決定事項だと、まるで書類を読み上げるような無機質な声で言うと、私の体に深緋のマントをうちかけました。
 深緋の色は、高貴な色。
 ただ一人、国王陛下にのみ許された色です。
 そのマントを掛けられると言うことは、所有か、もしくは死を意味しています。
 マントを掛けられ、私も観念しました。
「分かりました…」
 喉から出た声は、枯れた、かすれた声でしたが、陛下には届いたようで、満足げに目を細めるのが見えました。
 私はそれを見届け、ともすれば消えそうになる声で続けました。
「……貴方に体を許します。その代わり、この事は誰にも言わないで下さい。」
 もし私が国王陛下の愛人になったとしたら、その話は瞬く間に広がるでしょう。
 生涯ただ一人と誓った、あの方の元にまで。
 あの方にそのような噂を届かせたくはありませんでした。
 たとえあの方に妻がいようと、それでも私だけはただ一人、あの方だけを思っていたかった。
「秘密にしてください、お願い……」
 もう、この身は汚れてしまった。
 けれど、せめて表面だけでも清いままで。
 あの方に身を捧げたままでいたかった。
「秘密にせよと? 都合の良い、そんなこと聞くわけが…」
「聞かねば舌を噛んで、自害します」
 あざ笑う陛下の言葉を断ち切る厳しさを込めて言い放つと、陛下がびくりと震えた。
「随分外聞が悪いでしょうね、謀反人の娘が陛下の部屋で強姦された上に自害だなんて。
 お望みなら今この場で、舌を噛んでみせましょうか?」
 そう言って見せつけるように口を開き、突きだした舌をちろちろと揺らしながら、ゆっくりと歯を閉じていく。
 「分かった、分かったから止めよ!!」
 これには流石の陛下も慌てたらしく、すぐさま私に馬乗りになって口をこじ開け、舌を噛むことが出来ないように口の中に指を差し入れました。
 その動作があまりにも速かったので、私の方が驚いてしまったほどでした。
「そなたの言いたいことは分かった。そなたとのことは一切口外せぬ、誰にも秘密だ。
 だからもう、そのような真似をするな、良いな?」
 その言葉にこくんと頷き、あごの力を緩めたのを認めると、陛下は慎重に私の口から指を外しました。
「その代わり、そなたは俺の好きなときに体を開くのだ。よいな?」
 私はまた、頷きました。
 頷いた拍子にこぼれた涙に、月の光が映って見えました。


321:王様と書記官
08/01/08 16:36:31 AWDHW0fr
以上です。
王様と書記官で誰にも秘密、と言うシチュを考えたら
こんぐらがった設定になってしまいました。

322:名無しさん@ピンキー
08/01/08 16:51:52 /i1fkEKR
いや、面白いぞ。
続き、所望

323:名無しさん@ピンキー
08/01/08 21:18:30 rCG+hbBA
面白かった!続き!続き!

324:名無しさん@ピンキー
08/01/08 23:44:09 PCyu1Mpi
リトレさん、22歳はおばさんではない!仕方なく抱かれる~みたいなところが最高でしたGJGJ!

325:名無しさん@ピンキー
08/01/09 11:42:41 u7KZT6Yq
朝チュンに近いものがあったから、そこに至るまでをじっくりねっとり書いてくれ

326:名無しさん@ピンキー
08/01/09 18:42:20 7dMMIOUC
うにさんまだ?

327:名無しさん@ピンキー
08/01/09 20:43:08 Ja+/hcUX
GJ!続きマダー?

328:名無しさん@ピンキー
08/01/09 21:26:21 GWdYIAL1
文乃!文乃!

329:名無しさん@ピンキー
08/01/09 23:30:57 7dMMIOUC
ほしゅ?

330:王様と書記官 その2
08/01/10 23:43:17 JC2w7ZFC
正月なので第二弾。


 王宮は多忙を極めていました。
 あと一月先に開催を控えた大舞踏会は冬越しの祭りと呼ばれ、その日には貴族も平民も、分け隔て無くお城に集い、歌い踊ります。
 この日に知り合った男女が結婚することも多いために、若い者を中心に城中の人間が……いえ、国中の人間が浮き足立つ季節です。
 そうなると、書記官の私も仕事が増えるわけです。
 冬越しの祭りの準備や、それまでに済ませてしまわなければならない仕事を済ませる為に文官総出で書類の山を処理したり、作り出したり。
 祭りのために王都へ出てくる地方領主との謁見の為の諸々の調整もやるわけですから、大忙しです。
「リトレ様、国王陛下に提出する書類が纏まりました!」
 そう声を掛けてきたのは、私の直属の部下であるディックです。
 今年で19になる彼は、若手の俊英と噂される頭脳の持ち主。
 まだ位階は三位と、書記官の中では駆け出しですが、これからが楽しみな青年です。
 受け取った書類を読みながら、その出来に感心します。
「良く纏まってるわ。流石ね、ディック。」
 そう言って書類から顔を上げると、緊張した面持ちだったディックの顔が、ぱっと笑顔になりました。
 喜怒哀楽が透けて見えるところが清々しくて軽く笑むと、ディックは真っ赤になって、ありがとうございますとお辞儀を返してくれました。
 とん、とん、と書類を揃えて袋に入れる。
 後はこれを陛下に提出すれば完了です。
「……あの、ディック。私はまだやらなきゃいけない仕事があるの。
 悪いけど、私の代わりに陛下にこれを持っていってくれる?」
 本来は、一位の書記官である自分が国王陛下の元に出向き、提出するべき書類です。
 けれどもどうしても、気が進みませんでした。
「え? 僕が陛下に、これを?」
「ええ。この書類はあなたが作ったものだし、あなたの方が上手く説明できると思うの、お願いね。」
 ディックに経験を積ませたいから、だから彼に頼むのだと心の中で言い訳じみた事も考えます。
 駄目押しのようによろしくねと言って、渋るディックを送り出しました。


331:王様と書記官 その2
08/01/10 23:45:02 JC2w7ZFC
「やっぱり、いきなりは無理だったかしら……」
 書記官室を出て行く時の半泣きだった彼を思うと、少し胸が痛みました。
 でも、あの書類を持っていくという事は、国王陛下と相対すると言うことなのです。
 私は陛下のあの、冷たく底光りのする金の目を思い出してしまい、両腕で自らの体を守るようにかき抱きました。
 あの夜。私と陛下、二人だけの密約が交わされてから、もう三月が経とうとしています。
あの日約束したとおり、陛下は私との関係を誰にも明かさず、表面上はそれまで通り、書記官と国王の間柄を続けております。
 私も初めはあまりに普段通りなので、あの夜のことは悪い夢か何かの冗談なのだと思いました。
 しかし、ある日いつものように陛下の執務室に行くと、いつかの夜のように人払いがされていました。
「失礼いたします。」
 衛兵も小間使いもいない執務室は、あの夜を思い起こすには充分でした。
 椅子から立ち上がり、近づいてくる陛下に、ドレスは破かないで欲しいと言うと、ちょっと目を丸くし、それから低い声で笑いながら頷きました。
 注文の多い人だ、と囁きながら口づけをされました。
 それから少し間を置いて、床でするのとソファでするのとどちらがいいかと聞かれました。
 床ですると背中がこすれて痛いのですが、ソファは窓際です。
 外から見えてしまう危険性もあるので床が良いですと答えると、陛下は私の希望通り、床の上でなさいました。
 陛下は目だけはぎらぎらと光って、欲望を露わにしていましたが、所作は年の割に落ち着いたもので、私の反応を観察なさっているかのようでした。
 政務に没頭していた国王陛下には浮いた話の欠片もありませんでしたから、女性の身体が珍しかったのかもしれません。
 それからは、執務室に行くと陛下に求められるようになりました。
 珍しい物でも扱うように私の反応を引き出してゆくことで、陛下自身もまた、上達してゆきました。
 「陛下の望む時に抱かれる」という約束をしてしまった以上、求めに応じないわけには参りません。
 陛下の方は「決して誰にも話さない」という約束を守ってくださっているのですから、なおさら私が拒むわけにはいかないのです。
 けれど、今回は間が悪すぎました。
 冬越しの祭りの準備でただでさえ疲れているというのに、陛下のお相手までしていたら、それこそ身が持たないというものです。
 更に、やっぱりこれも冬越しの祭りのせいですが、陛下に決済を求めるべき書類が異常と言っていいほどの数になっているのです。
 それまでは多くて三日に一度陛下の元に参上すればいいほどだったのですが、ここ一週間は毎日と言っていいほどに陛下の執務室を訪れています。
 そして、執務室を訪れる度に抱かれているのですから、ここ一週間の疲労は尋常ではありません。
 一昨日は四回も書類を持っていく事になり、色々な意味で死にそうになりました。
 流石に4回目をなさろうとしたときには「駄目です」と拒否して譲らなかったのですが、結局私が陛下に口で奉仕することになってしまいました。
「それは嫌です」とごねると、「嫌なら襲うぞ」と脅されたのです。
 おまけに全部飲め、などと言う始末。
 私が「こんな事は金輪際しないで下さい」と言うと、では抱かせろ、の一点張り。そんな事を言われても困ると言うと、約束が違う、お前はいつでも俺の望むままになると約束したではないか、と反論なさいます。
 結局は、陛下の仰るとおりにするしかありません。律儀に守られた約束は有り難いのですが、それは私をも拘束するものでした。
「身が持たないわ……」
 今も刻々と増えつつある書類の中で、こっそり呟きました。


332:王様と書記官 その2
08/01/10 23:50:47 JC2w7ZFC
 ディックが真っ青になって帰ってきたのは、彼を送り出してから暫くのことでした。
 何でも、私が参上しないことで陛下にねちねちと嫌味を言われ、上手く答えられなかった部分をしつこく追求された挙げ句、
「これでは埒があかぬ、リトレを呼んでこい」
 と言われたのだそうです。
 可哀想にディックは、唇の先まで蒼くなって
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 と繰り返すばかりです。
 元はと言えば、陛下の元に行くのを避けようとした私に非があります。
 申し訳なく思って、ディックの震える手を取り、手の震えが収まるまで握ってあげました。
「謝るのは私の方よ。一人で行かせてしまったりしてごめんなさい。書類はしっかりしてるのだから、これに文句を付ける陛下の方が意地悪なのよ。」
 そう言って励ますと、ディックはみるみる血色が良くなっていきました。
「私が今から行って、お話してくるから安心して。きっと陛下も分かってくださるわ。」
 スカートを翻し書記官室を後にすると、むかむかと怒りがこみ上げてきます。
 彼の答えられなかった部分は報告の全体には関わってこないような枝葉の部分。
 あんなになるまでいじめられるような事ではありません。
 この忙しい時に可愛い部下を潰すだなんて、なんていう王様なのかしら!
 ぷりぷりと怒りながら陛下の執務室をノックすると、「入ってよいぞ」という了承の声も聞かず、陛下の執務室に飛び込みました。
「リトレ、随分と早く来たな」
 執務室の机の向こうに座っている陛下は、ディックをさんざん苛めてすっきりしたのでしょう。
 やけに上機嫌でした。
「私の部下をいじめて、そんなに楽しいんですか?」
 言葉に精一杯のトゲをまとわりつかせながら睨むと、陛下はにやにや笑いながら手招きをなさいました。
 私は先ほどディックから手渡された書類を持って、ずんずんと進んでゆきました。


333:王様と書記官 その2
08/01/10 23:58:43 JC2w7ZFC
「そっちではない、こっちだ」
 と陛下が自分の膝を指さしましたが取り合わず、書類の束を机に叩きつけました。
「一体どう言うつもりですか、この忙しい時に!
事と次第によっては、陛下でも許しませんよ!」
 腰に手をやって、本気で怒って抗議しているというのに、陛下はぬけぬけと
「だからそっちではない、そなたが来るのは俺の膝の上だ」
 と仰いました。
「何、ふざけたことを言ってるんですか!!」
「お前は部下の不始末を詫びに来たのだろう。
それならば俺の言うことを聞いて、俺の怒りを解く為に尽力するのが筋というものではないのか?」
 可愛い部下にいちゃもんをつけておいて何を、と思いましたが、
ここで下手に機嫌を損ねたら、有望な若者の前途が断たれてしまうかも知れません。
 私は怒りを抑えて、大人しく陛下の膝の上に乗ることにしました。


334:王様と書記官 その2
08/01/11 00:01:02 JC2w7ZFC
「では、失礼いたします。」
 スカートの裾を押さえ、貴婦人が乗馬する時のように横座りになって陛下のお膝に乗ると、違う、と言われてしまいました。
 こう、足を広げて陛下にまたがれと仰っているようで、私は随分嫌がったのですが結局は強引に押し切られ、恥ずかしい格好で陛下のお膝の上に乗っかることになってしまいました。
「ん、こうですか…?」
 スカートの裾がめくれて、露わになってしまう太腿を隠そうとすると、陛下にその手を制止されました。
「駄目だ。俺の背中に手をまわせ。」
 大人しくその言葉に従いながらも、スカートをどうにかしたくてもじもじしていると、
「恥ずかしいのか?」
 と、聞かれました。私が素直に「はい」と答えると、にんまりと笑って
「ならば、俺がそなたのスカートを直してやろうかな?」
 と言いながら、太腿をすっと撫でました。
「あっ……」
 思わず、溜息よりも甘い声が漏れてしまいます。はしたない声を漏らしてしまったことに恥じらいを覚えながら、それでも今は陛下に従うしかありません。
「陛下……。お願いします、どうかスカートを直して下さいませ……」
 甘くかすれる声を自覚しながら、私は陛下を見上げ、懇願しました。
 けれど陛下は金の目を輝かせながら意地悪そうに笑うばかり。
「さて、どうしよう。さっきは随分威勢の良いことを言っていたな。」
 言いながら陛下の手は、私の太腿をじっくりと味わうかのように動きます。
「陛下、いい加減おやめ下さい……!」
「俺の気が済んだら止めてやるさ」
 逃げようとしても、膝の上では逃げ場はありません。
 太腿への愛撫はいつしか秘所へも及び、身動きが取れないままに私の身体は解きほぐされてゆきました。
 陛下の指に目に舌に、嬲られるがままに身をくねらせ、喘いでいるうちに、剥ぎ取られたドレスがふわりと床に落ちました。
「ああ……陛下、いやぁ…………」
 執務室で、しかも陛下の膝の上で嬲られることに羞恥を覚えその身を縮こまらせると、陛下は嬉しそうに笑って「お仕置きだ」と言い、私の中へと入ってきました。


335:王様と書記官 その2
08/01/11 00:02:11 WYBRWiYb
 もう、何のための、何をした事によるお仕置きなのかもよく分からずに陛下の「お仕置き」を一身に受け、途中からは、これが「お仕置き」なのだ、と言うことすらも分からなくなっていました。
「よいか。これからそなたの部署の書類は全て、お前が持ってくるのだ。それがお前の仕事だろう?」
 さぼりおって、と言いながら陛下は私の腰を揺らします。
 密室に、隠微な音が響き渡りました。
 そうして正体をなくすほどの「お仕置き」をされた後に、気が付けば私は陛下に「一日一回は必ず陛下の元に参上すること」を誓わされていました。
 私が嫌だと言うと「うんと言うまでいかせてやらぬ」とまで言われ、泣く泣く条件を飲むことになったのです。
 その代わりに、陛下には「理不尽に家臣を怒らない」という条件を飲ませました。
 いつものように身なりを正しながら、陛下はもっと沢山の文官と触れあわなくてはなりません、と言うと、ちょっと嫌そうな顔をして、
「そなた以外の文官って……男しかおらんだろう?」
 男となど誰が触れあうか、という考えがその顔にありありと書かれていたので、
「ご不満なら女官も付けますが?」
 と言うと、「違う違うそうじゃない、そう言う意味ではないのだ!!」とか何とか言った後、「女官は付けずとも良い」と仰いました。
 いつものように居住まいを正し、退出するとき。
「リトレ」
 声を掛けられ振り向くと、陛下は私にそっと口づけを落とされて、
「また明日」
 そう、おっしゃいました。
「明日……ですか」
 思わず引きつった私の顔を面白そうに眺めると、
「明日、だ」
 そう言って、にっこりと。そこだけはやけにあどけない、年相応の顔で笑いました。


336:王様と書記官 その2
08/01/11 00:05:00 JC2w7ZFC
以上です。
ここまでエロを書き込んだのは初めてなので、うぷ主自身が羞恥プレイ。
改行が上手くいかなかった部分もあるので目に優しくなくてすいません。

337:名無しさん@ピンキー
08/01/11 01:33:01 ek6iSK/u
GJ

338:337
08/01/11 01:36:53 ek6iSK/u
途中送信してしまった。スマン
続きありがとう!投下お疲れ様
絶倫陛下が読めて、起きててよかったw
GJ、GJです

339:名無しさん@ピンキー
08/01/11 02:11:18 z6m2msy8
保守してきた甲斐があった!GJありがとう
やきもちやいた激しい王とかも見たいな。

340:名無しさん@ピンキー
08/01/11 22:14:33 z98dyK+b
GJ

いいよ、いいよー
はじめは温度差があるのは珍しいと思ってたけど、こういう展開もいいね

341:名無しさん@ピンキー
08/01/11 23:03:39 cnTSt0Nl
ほっしゅほっしゅ

342:王様と書記官 その2.5
08/01/12 09:38:08 cXr8Lyes
お正月のあまりもの。
エロ無しですが、微妙に続いてるので投下します。


 年越えの祭りが終わってもまだ春は遠く、寒空の下で細々と鳴く鳥の声は春を恋しがっているかのようです。
「今年の年越えの祭りは盛況だったな」
 と陛下が仰ったのは、もはや「いつもの」と言うしかない行為が終わった後でした。
 身を起こすと仕草は気怠げで、陛下の汗ばんだ身体には行為の後の濃密な空気が漂っています。
 私は白貂の外套にその身を横たえたまま、冷たく澄んだ光で映し出される陛下の姿をぼんやりと見上げておりました。
「みたいですね。私は会場の方には顔を出していないので知りませんが、
 お嬢様方が陛下と踊っていただいたって大騒ぎしてましたね」
 ことん、と頭を陛下のお体にもたれかけます。
「何だお前、祭りに参加しなかったのか? 道理で姿が見えないと思ったら」
「生憎と、書類の山に埋もれてましたので」
 素知らぬふりでそう言うと、ぽんぽんと頭を撫でられました。
「勿体ないことを。今年はこれでもかと言うほど大勢の娘と踊り倒してやったんだ、
 リトレとだって一曲くらい踊ってやったかもしれんというのに」
 撫でられた部分からひたひたと、私の身体を冷気が浸食してゆきます。
 私は身体の熱を奪い去られないように外套に身を潜めました。
「踊りはあまり、好きではありませんから」
「嘘を申すな。踊りが好きで、年越えの祭りを楽しみにしていたとそなたの父が……」
 そこまで言って気が付いたのでしょう、陛下は口をつぐみました。
 罪人として父が死んだ後、私の周りから急速に人が消えてゆきました。
 爵位こそ剥奪されなかったものの一人残された娘を見て、人々は正しく私の立場を理解したのです。
恭順の意を示して領地を差しだし、市井の中に紛れようとした私を、書記官として王城に留まらせたのは陛下ご自身。
 それは、思い上がった一族の末路を皆に忘れさせないようにする為でした。
 そのような人間が、どうして祭りなどに顔を出せるでしょう。

「約束だよ、リトレ。一緒に年越えの祭りに出よう。僕が貴方を誘うから」

 束の間、日だまりの中にいるような安らぎを感じさせてくれる日々もありました。
それはあっけなくかき消えて、果たされないままの約束が私の手元に残りました。
 気まずそうに目をさ迷わせている陛下の狼狽えようが可哀想になって、私はそっと、冷気に浸された部屋の空気を撫ぜるように笑いました。
 覚え立てのステップを踏み、それを夢見ていたのは、ずっとずっと昔のことです。
 沢山のおしゃべりと、刺繍と踊り。ひたすら甘いもので形作られていた時代。
「もう、好きではないのです」
 だから、そんな顔なさらないで。
 言外にそう伝えると、陛下はますます眉根を寄せられ、難しい顔をして俯きました。
 冷えきった室内で身なりを整え、扉に手を掛けたとき。
「すまない」
 絞り出された小さな声を、私は聞こえなかった振りをして退出しました。

343:王様と書記官 その2.5
08/01/12 09:42:55 cXr8Lyes
以上です。
お付き合いありがとうございました。。

344:名無しさん@ピンキー
08/01/12 18:01:11 BrdAvV1s
GJ!切なくっていい感じ。ハムスターのように空回りしている王様がいいですね。

345:名無しさん@ピンキー
08/01/12 23:44:45 p2GgR2Gh
王様と書記官、素晴らしい。
続きを激しく狂おしくキボンヌ。
でも作者さんの負担になるのは本意ではないので、
無理なら無理でいいです。

346:名無しさん@ピンキー
08/01/13 20:17:22 K7+qlpSv
保守がてらどうでもいい小話を投下してみる。改行変ですまん

「…はッ……あ…いや…もう、許してください……王子…」
「王子ではない、リオンだ」
俺のものになってもう半年が経つというのに、寝屋では名前で呼べと命令しているのに、この女は一向に命令を聞こうとしない。
……忌々しいな。
独占欲と焦燥感が入り混じったような、なんとも言えない気持ちを目の前の透けるような白い肌にぶつける。
「いやッ…あ…もうこれ以上はやめてください…」
「こんなに濡らして…」
触ってくれと言わんばかりに主張している膨れ上がった芽を、愛液を絡めながら中指で刺激すると、女は豊満な肉体をくねらせてよじった。
「あああああ…!!だめぇ!」
何がだめなんだ。この女の、俺を拒むような態度が気に食わない。
いつまでたっても…。
無意識のうちに女の身体に口づける。
首に、肩に、胸に。
「!王子、おやめ下さい!跡が残ってしまいます……服、服で隠れないところはどうか」
「見せつければいいだろう。おまえが実質俺の妾であるということは周知の事実だ」
「……!」
「それと王子ではない。…リオンだ」
女の耳元で囁きながら、自身のものを深く埋めてゆく。

347:名無しさん@ピンキー
08/01/13 20:18:54 K7+qlpSv
出会いは偶然だった。
鷹狩りの最中に偶然見かけ、その美しさに目を奪われた。
自らの権威を利用したのはその時が初めてだった。
結婚間近であった女を城へ無理矢理連れ帰り、自分付きの召使いにした。

その時から女は俺に笑いかけない。一度たりとも。
俺の地位と容姿に媚びる女共は腐る程いる。
隙あらばコネを作ろうとする武官や文官も多数いる。どうでもよい者ばかりが集まってくる。
俺が必要とする者たちは俺を嫌うのだ。
………この女も……両親も…………。

「…皮肉なことだな」
自嘲的な台詞を吐きながらも、次第に高まる快感に目を細めて耐える。
この女の泣き顔は見慣れたものだ。いくらでも泣くがいい。
どんなに泣いても喚いても、………離してやらない。


以上。スレ活性化を願って。

348:名無しさん@ピンキー
08/01/13 21:37:13 fWIedlBD
GJ!
淋しがり王子、可愛いな。

349:名無しさん@ピンキー
08/01/15 00:03:17 kZwxTKXh
GJ!こーゆう暗めの一方的なのも嫌いじゃない

350:名無しさん@ピンキー
08/01/15 22:10:13 IiD+PKIe
GJ! おいしく頂きました。

351:名無しさん@ピンキー
08/01/18 01:13:01 cEkZqdX5
いったん浮上

352:名無しさん@ピンキー
08/01/20 14:36:03 166ZtjQP
保守

353:名無しさん@ピンキー
08/01/20 19:05:20 uauyzmDJ
男・王子
女・部下の女騎士
でSMありのやつを書きたいんだけど携帯からでいつ書き終わるかわからないので
もう少し案を練ってから登校します。

354:名無しさん@ピンキー
08/01/24 01:39:54 sqo9pfBA
春休みになる前に登校してくれると嬉しいな
スカは苦手だがSMは好きなんでwktkして待ってるよ


355:名無しさん@ピンキー
08/01/25 18:28:52 bXuWGW1m
保管庫から削除してもらえるってユリシスの人が前にブログかいてたけど消えてないように見えるのは俺だけ?
ユリシスの人に削除されてないって教えてやるべき?

356:名無しさん@ピンキー
08/01/25 18:48:51 1Z41W2sm
ほっとけば?

357:名無しさん@ピンキー
08/01/25 22:08:11 kEvu4fum
好きにすりゃいいだろ、そんなの

358:名無しさん@ピンキー
08/01/26 00:17:52 6ECFn8go
>>355
お前みたいなのがいるから職人さん達いなくなったんだと思うんだ。自重しろ。



姉妹スレにも書いたんだけどこっちにも書く。

ここも姉妹スレも過疎ってきてることだし合併してはどうだろう?

359:名無しさん@ピンキー
08/01/26 00:45:55 /tvJ0PPR
>>358
姉妹スレとじゃスレの趣旨が違いすぎないか?

360:名無しさん@ピンキー
08/01/26 01:45:31 q3hHgeZp
>>359
主従スレのことだろ
一緒でいいんでないか

361:名無しさん@ピンキー
08/01/26 19:31:03 xvfDLL0T
合併賛成。だけどタイミングが…。
実はあっちの新スレ立てるときに提案しようと思ってたんだけどいつの間にか立っていたorz
まだ17レスだから、「今から統合です」で間に合うかだけが心配。

362:名無しさん@ピンキー
08/01/31 12:12:04 bKsSLQIB
むこうで次スレからって話が出てるみたいだし、
ここが埋まってから引っ越すのでおk?

363:名無しさん@ピンキー
08/02/04 22:36:33 iKhNGaTw
一応保守


364:名無しさん@ピンキー
08/02/04 23:06:51 151436rC
それでいいと思う。今はどっちのスレも容量あまってるから。

365:名無しさん@ピンキー
08/02/06 13:05:33 jnFUf0GY
保守

366:名無しさん@ピンキー
08/02/08 15:45:13 7uCJ4tfi
俺もそれで良いかな。

ところでここは社長×秘書とか、現代物もいけるのか?

367:名無しさん@ピンキー
08/02/08 15:51:42 xOD/5duO
問題ないかと

368:名無しさん@ピンキー
08/02/08 17:23:46 BKZ5AE00
>>366
大好物です。ぜひお願いします!

369:名無しさん@ピンキー
08/02/08 17:33:41 Qiq/dHTi
社会的な地位や主従関係は男>女で、
男がドMで、女がドSな場合、どっちのスレに投下すればいいんでしょうか?
例:ドSメイドとドMご主人様

370:名無しさん@ピンキー
08/02/08 18:52:14 Yqoa0r/d
>>369
本来の主従関係のスレに一言注意書きして投下するほうがいいと思う
どうしても気になるなら合併するまで待つとか
どっちにしろ注釈は必要

371:名無しさん@ピンキー
08/02/12 18:17:05 haYj7mTD
これは?携帯だけだけど
URLリンク(courseagain.com)

372:王様と書記官 その3
08/02/14 23:41:16 TaR6f0Qz
バレンタインの滑り込みで投下させていただきます。

373:王様と書記官 その3
08/02/14 23:43:39 TaR6f0Qz
「ところでな、これには媚薬が入っているのだ」
 そう言って手渡されたのはチョコレートでした。
 いつものように陛下の元に参上すると、手招きをされ、右手にころんと黒い固まりを落とされたのです。
「びっ……な、何でこんな物を、陛下っ!!」
 そんな汚らわしい物、本当は窓の外にでも投げ捨ててしまいたいのですが、国王陛下から寄越された物を粗末にするわけにはいきません。
「ふ、ふざけたことは止めて下さい。どうせただのチョコレートなのでしょう? 
 そんなっ……媚薬入りのチョコレートなんて、そうそう手に入るわけがないじゃないですかっ!!」
 手の平にチョコレートを載せたまま、半泣きになって陛下を見ると、陛下は金色の目を実に愉快そうに細めておりました。
「実は、今朝方レジオン卿がやって来てな。俺に女性関係の噂が無いので
『これと思う女性がいたら押し倒せば良いんです! やったもん勝ちです、
媚薬でめろめろにして押し倒してしまいなさい!』といってな、これを押しつけられた」
 陛下はその時の事でも思い出したのか、やれやれといったご様子で肩をすくめてみせました。
「レジオン卿ですか…あの方、陛下にまでそんなものを……」
「何だ、知ってるのか?」
「以前、『貴方は嫁き遅れもいいところだから、これでもつけたら誰かが貰ってくれるでしょう』と、ほれ薬入りの香水とやらを頂きました……」
 女性に香水を送り付ける所といい、二重に失礼な方でした。
 私個人への嫌がらせかと思えばそうでもなく、会う人会う人に変な贈り物をして嫌がられているんだとか。
 巷では『愛の押し売り伝道者』と呼ばれている方です。
「それはまた、災難だったな」
「ええ、とっても」
 思い出しても溜息が出ます。
 そう言って溜息をついてみせると、笑われてしまいました。
陛下の笑い声にふくれっ面をして見せながら、そっと陛下のお顔を窺います。
 引き結ばれている口元が緩むと、年齢よりもなお若く、子供のようなお顔になるのです。
 自分でもそれを意識しているようで、陛下はあまり笑いたがりません。
 そんな所が余計に子供じみていて、密かに微笑ましかったりするのですが、それはともかく。
 今は手の上のチョコレートです。
「溶けておるぞ」
「知ってます」


374:王様と書記官 その3
08/02/14 23:45:22 TaR6f0Qz
 手の平の体温で柔らかくなったチョコレートは、溶けすぎてどうにも出来ない状態になっていました。
「食べぬのか」
「謹んでお断りいたします」
「だが、もう返して貰うことも出来ぬほどに溶けてしまっているな」
「こんなもの、手を洗えば済むことです」
「勿体ないではないか」
「チョコレートに媚薬などを混ぜ込んだ時点で既に勿体なくなってます。
 全く、城下にはお腹を空かせている子供だっておりますのに」
 お菓子で遊ぶなんて、と憤ると、陛下がまた笑いました。
「全く、リトレはいつも生真面目だな」
 そう言って私の右手を引き寄せると、手の平をぺろりと舐めました。
「へ、陛下っ……!!」
「勿体ないだろう?」
 思わず引っ込めようとした手を強く引き戻され、体のバランスが崩れました。
「きゃあっ!」
 ここで陛下に倒れ込んだりしては大変です。
 とっさに陛下のお座りになっている椅子の背もたれに手を付いて、何とか踏みとどまることが出来ました。
 根性です。
 私がそんな風になっているのを余所目に、陛下は丹念にチョコレートを舐め取ってゆかれます。 
「陛下、あの……」
「黙っていろ」
 それ以上は言いつのることも出来ず、右手を陛下に委ね、中腰のままじっとしていると、陛下のつむじが目に入りました。
 されるがままという状況が何だか口惜しくて、つむじでも押してやろうかしらと思いましたが、流石にそんな事を国王陛下に出来よう筈もありません。
 暫く左手を陛下の頭の辺りでうろつかせていましたが、指先に触れた髪の毛の感触が思ったよりも硬い事に驚いて、手を引っ込めました。
 舌が掌の上を這う感触はこそばゆくて、何だかこのままじっとしていたいような、暴れだしたいような、妙な感じがいたします。
 そうしてもじもじしていると、陛下は立ち上がりざま私の身体をぐいと引き寄せ、キスをなさいました。
「んっ……」
 口の中に甘くて苦い液体が流し込まれ、こくり、と喉が動きました。
 チョコレートの味の口づけに身体は甘く痺れ、いつの間にか陛下に縋り付いておりました。


375:王様と書記官 その3
08/02/14 23:47:39 TaR6f0Qz
「……どうだ、効いただろう?」
 なぜか得意気な陛下の声に我に返って、急いで身体を離しました。
「そ、そんなわけないじゃないですか。たかがチョコレートですよ、ばかばかしい」
 後ずさりながら早口に言うと、やっぱりそうかと陛下が呟きました。
「レジオン卿が退出するときに言っていたんだ。
 『陛下、女性にとって甘い物はときに媚薬以上の効果を発揮します。
 試してみる価値はあると思いますよ』とな」
「な……。じゃあ媚薬って、嘘じゃないですか!」
「いいや。俺に渡すとき、レジオン卿は確かに『媚薬入りだ』と言ったぞ」
「え? でも……」
「レジオン卿が何を考えているかは、俺にはいまいち分からん。
純粋にチョコレートかもしれんし、本当に媚薬が入っているのかもしれん。
リトレ、そなたはどう思う?」
「えっと……び、媚薬という物を飲んだことがないから何とも言えませんが……
 私には、普通のチョコレートのように感じます」
 口の中に残る甘い味を確かめながら私がそう言うと、陛下はちょっと考えてから
「媚薬だと言うことにしてしまわんか?」
 と、仰いました。
「え?」
「だから、これは媚薬だったのだ。よいな」
 言ってまた、私に長い口づけをなさいました。
「……っ、んっ……」
 思わず漏れた甘い息に、陛下はにやりと笑いました。
 ああ、確かにこれは媚薬かもしれません。
 だって、チョコレートより甘くて熱い。
「効いてきたのではないか。随分と感じた顔をしている」
 言葉に詰まって目をそらすと、陛下は服の曲線にそって私の身体をなぞってゆきます。
 肩から胸へ。
 ゆっくりと降りてきた手は、服のダーツに沿って降りてゆき、腰まで来ると、
また胸へと上がってゆきます。
 陛下の手は何度も胸と腰の間を往復なさいました。
 服と肌がこすれる音が恥ずかしくて辺りに目をやると、タペストリに織り込まれた
女神達が、アーモンドのような瞳で見下ろしておりました。
 まるで見られているような気恥ずかしさを覚えて目を伏せ、胸を揉み込まれる感覚に
耐えていると、スカートをたくし上げられました。
 そのまま下着の中に潜り込んだ指が、室内に湿った音を響かせます。
「もう……よいな」
 我慢できない、という色が滲んだ声で陛下に囁かれ、私も思わず頷いておりました。


376:王様と書記官 その3
08/02/14 23:49:29 TaR6f0Qz
「あぁ……すごい」
 壁に掛かったタペストリの上に縫い止められるような格好で貫かれ、思わず出て
しまった言葉を恥じ入る間もなく突き上げられておりました。
 豊饒の女神の上で交わるなんて、という私の言葉を嘲笑うように
深く、浅く、と責め立てられ、いつしか我を忘れて交わっておりました。
「良かったぞ、リトレ」
 ようやく我に返ったのは、陛下に耳元で囁きかけられてからのことです。
 途中はあまり覚えていないのですが……いえ、思い出したくもありません。
 あんな、ねだるような…………何でもないです、何でもないのです!
「あんなに可愛いお前は初めて見た」
 だから知りませんってば、そんな事!!
 私が真っ赤になってそっぽを向くと、陛下はおもしろがって、最中に私が発した
うわごとを耳元で囁いてゆきます。
「な……何でそんなこと、細々と覚えてらっしゃるんですか、いやらしい!!」
「そうは言っても、あんな可愛らしい声でもっともっととせがまれたら、
忘れろという方が酷というものだろう」
「やめてっ! やめて下さい!!」
「嬉しそうに声を上げて、搾り取られるかと思ったぞ。
 恥ずかしいとか言いながら、あそこは貪欲に……」
「違います! あれは……」
「あれは? 何なのだ、一体」
 反論できるものならやってみろ、とからかう陛下が小憎らしくて睨み付けると、
怖い怖いと首をすくめて笑われてしまいました。
 それ以来、抱かれる時に嫌だと言えなくなってしまいました。
 何しろ、あれほど乱れたのです。
 「嫌」と言っても、陛下は笑いながら「お前は嘘つきだ」と仰るのです。
 そこでやっきになって否定するのも気恥ずかしく、何も言えなくなってしまいました。
 それはその……段々気持ちよくなっているのは確かなのですが、決して積極的に
いたしているわけではありません。
 それなのに、まるで喜んで抱かれているように言われて、反論も出来ないなんて。
 あんまり口惜しいので、残りのチョコレートは全て没収して焼却炉に放り込んでおきました。


 あれから、チョコレートを食べる時に赤面してしまうことは誰にも秘密です。


377:王様と書記官 その3
08/02/14 23:53:51 TaR6f0Qz
以上です。

以前の話にコメント下さった方、有り難うございます。
やっつけなので色々あれですが、せっかくのバレンタインなので投下しました。

378:社長と秘書
08/02/15 03:28:59 mD6FawpP
机のうえの携帯が震えながら光る。



……五分後、私は社長室の前にいた。

五分前にかかってきた電話は社長からだった。通常、会社内の業務連絡などは内線を使う。
そう、これは誰にも秘密の会話…………


社長室の中にはいると、窓際の豪華なデスクに20代後半の青年が座っていた。
その青年こそ、起業して五年でこの会社を名の通る企業に育てた社長、中丸雄二だ。

「……お呼びですか?」

呼び出されてすることはわかっているが、あえて聞く。

「スカートをめくれ」

私は命令通りにタイトスカートを腰までずり上げる。
露出した下半身にはガーターベルトとストッキングを除いて纏っているものは何もない。

「よし、じゃあ始めるか」

そう言って彼がこちらに向かってくる……



ダメだ、つまらないorz

379:名無しさん@ピンキー
08/02/15 04:24:47 dj+aiM4f
王様と書記官きてたー!
今回は王様も心身ともにご満足されたことでしょうw
いじましいなあ。ハムスターから進化できてよかったよかった。
リトレさんの複雑な境遇や心情を思うと切なくなるけれど
今後どう展開していくのか楽しみにしています。

380:弁護士秘書 茉莉花
08/02/17 12:37:06 7rpH2LKG
「木野茉莉加君。何で呼ばれたかは……見当が付くな?」

 怒りを押し殺した低い声で呼ぶと、彼女は青くなりながらこくこくと頷いた。
 その様子を確認しながら、坂井は書類を半ば叩きつけるように机に置いた。
「読んでみたまえ」
「は……はひっ!」
 声がうわずってるな、と思いながら彼女の様子をじっくり見つめる。
 書類をめくる手は小さく細く、あまり労働には向かない手だ。
 茉莉花は震えながら一枚一枚書類をめくっていく。
「それは何だか分かるか?」
「こ、今度の裁判の資料です」
「それを誰が作った?」
「私……です」
「なぜ23箇所も誤植があるんだ?」
「そんなに少ないんですか?」
「木野君っ!!」
 ばん、と机を叩くと茉莉花はびくりと震え、ついでに一歩後ずさっていた。
「す、すいません……でも、前回が51個だったから、随分減ったなあと思ったんです」
「君って人は……」
 坂井が睨み付けると、彼女は身体を縮こまらせた。
 そうすれば書類の陰に隠れられるとでも思っているのだろうか。
 馬鹿じゃないのかと呟くと、今度は狂ったようにぺこぺことお辞儀を繰り返す。
「ご、ごめんなさい、善処します、頑張ります、精進しますっ!」
「昨日もその台詞を聞いたぞ。なのに君には全然進歩がない」
「あの、51から23というのは飛躍的な進歩だと」
「反省の色無しか、仕方ないな……机に手を付いて尻を突き出せ」
 溜息をつき、突き放した口調で命令する。
「せっ……せせせ先生、それは」
「黙ってろ。俺は昨日3時間しか寝てない、つまり機嫌が悪い。
言う通りにしないと手加減は出来ないぞ」
 彼女は暫くおたおたしていたが、坂井が促すように顎をしゃくると、書類を机に置き、
その横に手を付いた。
 そのままゆっくり腰を上げ、椅子に座ったままの坂井を懇願するように見つめた。
 悲痛な瞳に哀れみの感情がこみ上げたが、坂井はわざと視線を外し引き出しを開ける。

「今日はどんな道具が良い?」
 引き出しの中の物を一つずつ、彼女の目の前に並べてゆく。

 バイブレーター、ローター、鞭、セロハンテープ、ローション、消しゴム。

 一つ机の上に置く毎に、彼女は青ざめたり真っ赤になったりする。
 その反応が面白いので、たまに関係のない物を混ぜて並べてゆくのだが、
彼女はそれに気が付いていないようだった。
 それどころか、どのように使うのかと想像しつつ混乱しているらしく、
特大サイズのゼムクリップを置いたら顔が歪んだ。
 飴玉、シャープペン、ホチキスと並べたところで泣き出しそうになったので、
そろそろかと思い、坂井は席を立った。

 坂井は茉莉花の背後に立つとスカートをめくり上げた。
「命令の通りちゃんとガーターをつけてきたんだな。これだけは褒めてやろう」
 言って尻を撫でると、茉莉花はひう、と涙混じりの声を上げる。
 下着を引きずり下ろすと赤い裂け目が濡れそぼっていた。
「まず、誤植の数だけ鞭打ってやる。その後はこの中から一つ使ってお仕置きを
するから覚悟しとけよ」



という、保守。

381:名無しさん@ピンキー
08/02/17 12:52:17 f8MZNAj1
(;´Д`)

382:名無しさん@ピンキー
08/02/17 16:23:38 fONkKLIc
セクレタリーという映画があってだな

383:名無しさん@ピンキー
08/02/17 20:54:54 V4cmlcuU
ああ、あれはいい映画だった。
Mは究極のSという。

保守GJ。

384:名無しさん@ピンキー
08/02/17 20:58:50 wld8HR/w
>>377
遅ればせながら、GJ!

リトレさん、可愛らし過ぎる。
そして、>>379と同じく王様が少しはリトレさんに受け入れてもらえて良かったなぁと(2.5がチト暗かったらね)。

続きを楽しみにしています!


385:保守
08/02/21 00:58:38 oa9x0AYY
「あ、だめです……だんさまっ、ふあっ…いけません! なか、は……あっ、ああっ」
 今にも達しそうな私の高ぶりを内部で感じているようで彼女は力の入らない腕で必死に私の胸を押す。体を離そうとしているくせに、内部は蠢き吸い付き私の精を搾り取らんと複雑に締め付ける。
「大人しくして」
「あっ……できちゃ、っ! あッ」
「いいかい。こうして私たちが交わることは大事なことなのだよ」
 冷静に語りかけたつもりが声がだいぶ上擦っている。
 彼女が一瞬怯んだ隙に、深々と奥まで突き込んで欲望のすべてを吐き出した。
 射精感が全身を支配し、彼女のすべてを満たした歓喜に私は身を震わせる。
「ああ、私の可愛いレディー」
 繋がったまま抱き寄せると彼女の中がきゅっと締まった。
「いけませんと申しましたのに」
「さっきも言ったけれど私たちが交わることはとても重要なことだ」
 髪を避けて額に口づけ、私は彼女に微笑みかけた。
「時にはこうして交わり、その様を皆に見ていただくことでスレの存続を保たねばならない」
「しかし旦那様。それは中で果てることとは関係がないのでは」
「それは違う。私と君の間に子ができればその子が保守というかけがえのない仕事を継いでくれる」
 彼女は納得がいかないような顔をしている。言っていることに嘘はないが、中で果てたかっただけというのが理由の八割だとバレているのかもしれない。
 私はまだ衰えていない滾る欲望を使い、彼女を丸め込むことに決めた。
「ほら、もう一度。神々の降臨を待つ間、スレを保守しなければ」
「や、だんなさま……少しやすませ、ああっ」
「だめだよ。そうして気を抜いている間に圧縮がきたらどうするんだい? 神々を待つ間は私たちがスレを守るんだ。義務なのだから、さあ続けよう」
 ずっとこうしていられるなら過疎でもいいかと思った私の気持ちを見透かしたように彼女が涙ぐんだ目で睨みあげてきた。
 ……冗談です。神々の降臨お待ち申し上げております。
 彼女のこめかみにキスをして、私はしばしの睦事を思う存分楽しもうと誓った。

386:名無しさん@ピンキー
08/02/22 01:20:56 4X7iIiL/
ワロタ

387:名無しさん@ピンキー
08/02/23 15:18:57 Ct22xjSB
保守ついでに質問

このスレの住人は一回の投下がどのくらいの長さ&エロ割合を求めているんだ?
自分の勝手にやれって言われればそれまでなんだが、自分はエロメインに書けないんで参考までに。

388:名無しさん@ピンキー
08/02/23 17:10:13 AfkPDz2g
>>387

あくまで個人意見だが
話は長いにこしたことはない。
エロが多すぎると辟易するけどね
一割くらいがちょうどいいかな

389:名無しさん@ピンキー
08/02/23 18:20:44 h/gZrHg3
正反対っぽい意見になるけど、3スレぐらいで纏めてくれたらありがたいです
私は、短編シリーズ系読むのが好きなもんで…

390:名無しさん@ピンキー
08/02/23 21:45:25 qNqIcdmv
結論
話の出来が良ければ長短問わずOKってことで。 

391:名無しさん@ピンキー
08/02/23 22:55:45 OY+66xAS
うむ

392:名無しさん@ピンキー
08/02/24 00:48:42 AzDND6wU
タイトルにもこの板自体にもエロと入っているとおり
エロがないと一切読まない。

393:名無しさん@ピンキー
08/02/24 01:11:29 tVCzPVcN
エロといっても、キスやハグ、それこそ身体の一部が接触するだけであっても
ものすごくドキドキしたり色っぽいと感じることがあるし、極端な話
会話だけであってもエロいと思えればそれはもうエロだと思う。
あと、服装とか、それこそ綿か絹か麻か、そのさわり心地やしわのつき方の描写でも
読み手を想像力を刺激させることはできる。

逆にいえば行為自体の描写でも単なる組体操だとかホモサピエンスの交尾としか
受け取れないもんだってある。まあそこはたぶん男性女性で見方が変わると思う。


割合でいえば、前ふりが全くないのも味気ないが、たしかに直接関係のない部分が
長く続いても興が削がれるな。正直、たまに途中すっとばし読みすることもある。
だからといって厳密に割合このくらいが自分にはベストといいきれないから難しい。

394:名無しさん@ピンキー
08/02/27 01:14:05 xxw046Ib
過疎age

395:名無しさん@ピンキー
08/03/04 21:16:12 njGy56G3
上司と部下で小ネタ。保守代わりにどうぞ。

396:保守小ネタ 1/4
08/03/04 21:18:47 njGy56G3
 腕を掴んだ手を離され、私の体は柔らかなベッドに沈み込む。だけど、貫かれた部分はそのままで元帥は変わらぬ強さで私を責める。
 腰だけを突き出した体勢で私は元帥に突かれる度にシーツに顔を擦りつけた。
「や、げんす……もっ、だめ」
 まるで抉られるみたいに中を擦られ、たまらずにシーツをぎゅっと握りしめた。
「クロウ」
 腰を折り、元帥は私の耳朶に息をかけるようにして囁く。一瞬何を言われたかわからなくて、けれど元帥は同じ言葉をもう一度口にする。
「ベッドの上では名前で呼んでくれと言ったはずだ」
 元帥の手が腹を伝って下へ。私の体で一番敏感な場所を撫でられて、私は一気に上りつめる。
 元帥の動きが止まり、私の中が自分でもわかるくらいに収縮する。
「俺は個人的に君に協力しているだけで、これは俺と君の職務上の関係とは一切関係ないだろう。だから、名前で」
 私の中にあるものは熱く滾ったままなのに、元帥の声はそれが嘘のように冷静そのものだった。それでも、ほんの少し上擦っているように聞こえるのは彼も興奮状態にあるからだと思う。
「欲しいか」
 元帥に問いかけられ、全身が総毛立つ。
「くださ……クロウの、ほしい」
 必死でねだると元帥は私の腹に手を添えて抱き起こす。膝立ちのまま、ゆっくりと元帥は腰を動かし始めた。
「君が欲しいなら、いくらでも。早く俺の子を孕むといい」


◇◆◇


「俺でかまわなければ協力してやろう」
 祝勝会の席でひっそりとお酒を飲んでいたはずなのに気がつけば広いバルコニーで元帥と二人きり。相当酔ってしまっていたのだと認識できるほどには酔いはさめてきているらしい。
 何に協力して下さるのだろうかと首を傾げると元帥は変わらぬ調子で口を開いた。
「俺では不満か」
 一体何の話をしていたのかと記憶を辿り、思い至った途端に冷や水を浴びたように酔いがさめた。
 今の私は相当顔が赤いだろうと自分でもわかる。はいともいいえとも言いかねてしどろもどろになっている私を見て何を思ったのか元帥は小さく溜め息をこぼした。
「一個人としての俺でかまわないと思うならいつでも訪ねてくるといい」
 そう言って元帥は指から指輪を引き抜き私の手に握らせた。
「それがあれば屋敷へ入れる」
 呆然としている私に背を向け、元帥はバルコニーから立ち去った。




397:保守小ネタ 2/4
08/03/04 21:21:46 njGy56G3
 二日、私は悩んだ。
 そもそもどうして元帥と二人きりで話をしたりしたのかもわからないし、元帥にあんな話をしてしまったのかもわからない。けれど、元帥が協力を申し出て下さったのは夢でも幻でもない現実だ。
 私の家系は少し複雑でその事情により、私は早く子を産まねばならなくなった。でも、恋人なんていないし、知らない人の子なんて嫌。どうしたらいいのかが目下の悩みであったのだ。
 元帥が私の子の父親になってくれたらそれはとても素晴らしいことだと思う。三十を越えてはいるがまだまだ若く魅力的だし、賢く逞しい。子の父親として理想的だ。
 それに、実は密かに元帥に憧れていたりする。遠くから眺めるだけの、元帥はいわゆる高嶺の花だったのだ。
 机に置いた指輪をじっと眺めてみる。元帥の家の紋章が刻まれた指輪はあれが白昼夢ではないという証。何度も何度も確認したから間違いない。
 問題は、元帥が下さるのは子種だけだということ。好きな人に抱かれて子を宿しても、結婚して一緒に育てることは出来ない。それは凄く寂しいことだ。
 だからといって、知らない人の子を産むのはもっと嫌。
 二日も悩んだのに、私は自分では決められずにうじうじしているだけだった。


 三日目に私は元帥の屋敷を訪れていた。子種をもらいにきたわけではなく、もう一度お話をするつもりだったのに、気がつけば私は元帥の腕の中で身を強ばらせている。
 品のよい年配の男性に案内された場所は紛れもなく元帥の寝室で、私が何かを言う前に元帥は私を抱き寄せて唇を重ねた。
「名前で」
 唇を離し、元帥は私を抱き上げた。
「名前で呼んでくれ。今の俺は元帥ではない」
 困惑しながらも私は頷いた。
 寝台に横たえられ、また口づけられる。こうするつもりじゃないんだと言いたいのに、何一つ言い出せない内に元帥は私の服を器用に剥ぎ取ってしまった。
「来ないのかと思っていた」
 露わになった肩に額を当てて、元帥は吐息混じりに呟いた。
「必ず俺が君に子を抱かせてみせるから、俺以外とは寝ないと約束してくれ」
 顔を上げた元帥の顔がことのほか真剣で、今更話をしにきただけなんですとも言えずに私は唾を飲み込んだ。
 そして、頷いた。元帥が協力して下さるなら他の人に協力を求める必要などないのだから、それは杞憂というものだ。
「ありがとう」
 なぜか安心したようにお礼を言い、元帥は体を起こして服を脱ぎ始めた。


398:保守小ネタ 3/4
08/03/04 21:23:28 njGy56G3
 上半身が露わになるとこれから何をするのかということをいよいよ認識させられて私はぎゅっと目を瞑る。でも、目を閉じると衣擦れの音がさっきよりも大きく感じられてその方が恥ずかしいことに気づく。
 とはいえ、元帥の裸を見るのも恥ずかしくて、結局私は天蓋の模様をじっと眺めることで自分を落ち着かせた。
「呼んでみてくれ、俺の名を」
 頬に手を添えられて元帥と視線を合わせられる。
 名前を呼べと言われてもいきなりは恥ずかしい。ごにょごにょと躊躇っていると元帥が私を名で呼んだ。
「俺も君を名前で呼ぶ。だから、君も名前で呼んでくれ」
 姓でなく名で呼ばれるのはなんだかむずむずと不思議な感じで、けれど嫌ではなく嬉しい。元帥の発音は柔らかくて心地良く、私は私の名前が今までよりもずっと好きになる。
 小さく息を吸い、私は元帥の名前を呼んだ。男の人を名前で呼ぶことなど滅多にないから、口に出した途端に恥ずかしくて顔から火が出そうになる。
「ありがとう。元帥としての俺でない時は名前で呼んでくれ。ベッドの上では特に」
 了承の意味を込めて頷くと、頬に触れていた元帥の手が静かに下方へと動き出す。それが胸に触れた瞬間、私は今から何をするかを思い出して硬直した。
 私の緊張を解すように元帥は何度も何度も優しい口づけを下さり、何度も何度も名前を呼んで下さった。触れる手にはいやらしさなど欠片も感じられず、ただただ優しいばかり。
 氷のようだとか機械のようだとか言われる元帥が実はものすごく優しいのだと気づき、知らず私の緊張は解けていた。


◇◆◇




399:保守小ネタ 4/4
08/03/04 21:27:41 njGy56G3
 あの夜、私は元帥から無事に子種をわけてもらうことができたのだ。
 けれども、一度の交わりでは子はできず、最初の約束通りに元帥は子ができるまではと積極的に協力して下さる。
 今夜もまた宿舎に忍び込んだ元帥と狭いベッドで横になっている。
「お帰りにならないのですか」
 元帥の腕の中は心地良くて本当は朝までこうしていたいのだけれど、元帥との噂が立たないようにするには早々に帰っていただかねばならない。元帥の評判が下がるような噂が立っては後悔してもしたりない。
「君が眠れば帰ろう」
「まだ、眠くないです」
「そうか。それならば、もう暫くここにいよう」
 ずっと眠らずにいられれば。ずっと夜のままなら。そう思いはしても、疲れ果てた体はすぐに重たくなっていき、意識もふわふわと落ち着かない。
 本当はずっと、ずっと一緒にいたいんです――伝えたい言葉を飲み込んで、代わりとばかりに私は元帥の胸に頬を寄せて温もりをしっかりと記憶に刻み込んだ。



◆◆◇◇◆◆◇◇


言い忘れてました。
保管庫入りは辞退します。保管しないで下さい。

400:名無しさん@ピンキー
08/03/04 21:29:32 HaPp/0Zt
Real Time Good Job!

401:名無しさん@ピンキー
08/03/04 22:11:13 7e24XJPu
これはとても素敵

402:名無しさん@ピンキー
08/03/04 22:50:40 pn7oxuyW
GJ!小ネタと言わずに是非とも続いて欲しいです。
読んでてにやにやした。元帥絶対惚れてるね。

403:名無しさん@ピンキー
08/03/05 14:33:27 7xB4fsxT
けしからん!元帥もっとやれ(*'д`)

404:名無しさん@ピンキー
08/03/05 21:25:42 WI9fmZYh
素敵な元帥がいるスレはここですか。期待期待

405:395
08/03/06 00:51:46 5yg3OhAu
保守のつもりだったからあんま細かいこと考えてなかったんだよね。
でも、せっかくだから続き書いてみた。
続きというかただいちゃいちゃしてるだけだけど。

406:元帥×私 1/3
08/03/06 00:54:25 5yg3OhAu
 しゃらりと首から下げた鎖が鳴った。細い銀の鎖の先には元帥からいただいた指輪が通してある。
「あ……クロ、ウ」
 いけないことをしている。それをまるで元帥に見咎められたような気がして、その背徳感が私の快感を二倍にも三倍にもする。
 元帥のことを思い出しながら敏感になった胸の先を摘み、もう片方の指で滑った入り口を擦る。それだけで達してしまいそうな自分の体が怖かった。いつの間にこんなに淫らになってしまったんだろう。
「クロウ……っ、あっ、ん……クロウ、クロウっ!」
 元帥の手はもっと大きくて、元帥の動きはもっと巧みで、本当はこんなんじゃ全然足りない。足りないのに、淫らな私の体は稚拙な指の動きに歓喜する。
 涙で滲んだ視界に、元帥の指輪が映った。
 ごめんなさい。元帥、こんな私を嫌いにならないで下さい。
 いけないことをしているのだと思えば思うほどに快感は高まり、私は背を仰け反らせて声にならない声を上げた。
「はぁ…………しちゃった」
 下着の中から指を引き抜くとくちゅりといやらしい音がした。
「元帥。寂しいです」
 滑った指で指輪を掴み、私はそれにそっと唇を寄せた。


◇◆◇


 東の街に魔物が出た。それがなかなかに強大で現地の派遣員だけでは手に負えないとの報告を受け、元帥が現地へ赴くことを志願した。
『元帥』が出るほどの魔物ではないと反対を受けても、彼は聞く耳を持たない。執務室の机に向かうより、現地で魔物に対峙する方が性にあっているのだと元帥は言った。
 私には討魔の才能などなく、組織を運営するためのただの一般構成員にすぎない。だから、元帥と一緒に東の街へ行くことはできなかった。
 それを寂しく思っても、特別な関係ではない私には元帥に何かを言う権利などなく。その事実が更に私の胸を締め付けた。

 白い手袋をつけ、白い外套を翻して元帥は部屋を後にした。
 出発前に呼び出され、問答無用でベッドに押し倒された私はくたくたの体でその背を見守った。
 その時の元帥を思い出す度に、心地良さと寂しさと狂おしさのないまぜになった感情が胸を焼く。

 東の街の魔物を元帥が問題なく処理したのだという知らせを耳にしたのは出発の翌日のことだった。それを聞いて無事を安堵するとともに、もうすぐ元帥に抱きしめてもらえるのだと喜びが込み上げる。
 けれど、私の期待はすぐさま砕け散ることになる。


407:元帥×私 2/3
08/03/06 00:56:05 5yg3OhAu
 往路は転移の魔法陣を使った元帥が、帰路はそれを使わずに帰るという。道中各地を見回るのだというのだから元帥らしい。
 おかげで私は元帥に抱きしめてもらうことを数ヶ月も我慢しなければならなくなってしまったのだ。


◇◆◇


 早く湯を浴びて身を清めなければならないのに体のけだるさが動くことを躊躇わせる。
 私は中途半端に脱げかけた服のまま、ベッドの上で浅い呼吸を繰り返していた。
「随分と楽しそうなことをしているようだが」
 びくりと体が跳ねる。扉の方から聞こえた声はつい先ほどまで何度も何度も繰り返し思い出したものと同じ声。
「もう、満足なのか?」
 恐る恐る身を起こし、私は扉の方へと顔を向ける。
 真っ白な外套、真っ白な手袋、輝くばかりの金色の髪。そして、優しく細められた目。
「げん、すい……?」
 優雅な動作でベッドへ近づき、そこへ腰を下ろしてから私の額を人差し指で突く。
「クロウ、だ」
 幻ではない。本物の元帥が目の前にいる。
 たまらずにしがみつくと優しく背を撫でられた。
「ただいま」
「おかえり、なさい」
 元帥の唇が髪に触れ、耳朶に触れる。ずっと欲しかった感触が惜しみなく私に与えられる。
「寂しかったかとは聞かないでおこう。さっきたっぷりと見せてもらったから」
 笑みを含んだ声音に思わず顔を赤くする。さっきたっぷりとは、どの辺りから見られていたのだろう。
「俺がいない間、いつも一人で?」
 まだ乾ききっていない指を元帥が引き寄せて唇に含む。
「だめ……汚っ」
「フ、今更だ。何度も口にしてる」
「で、でも」
「こんなにして、すごく濡れているんじゃないのか」
 元帥が下着の上から敏感な場所をやわやわと撫でる。下着はとっくに濡れてびしょびしょになっていた。
「すごいな」
 恥ずかしさで元帥の顔が見られない。たまらずに元帥の服をきつく握り締めて目を閉じた。
「何を想像してた?」
 元帥に協力して腰を浮かすとすぐに下着は取り払われ、手袋を外した指が直接濡れた場所に触れる。
 そんなことは言わなくてもわかっているはずなのに元帥は重ねて問う。恥ずかしさで死にそうになりながらも、私は答えた。
「元帥、の」
「クロウ」
「……クロウの、こと」
「俺のこと? どんな?」


408:元帥×私 3/3
08/03/06 00:58:38 5yg3OhAu
 触れるか触れないかの愛撫がもどかしくて、私の腰は元帥の指を求めてくねる。けれど、元帥は指を引いて私から逃げる。きちんと答えるまでくれないのだと悟り、私は絞り出すように答えた。
「クロウが、いつもしてくれることを、たくさん……たくさん、私のこと抱いてくれるのを、思い出して、それで、たくさん抱いてほしくて」
 そう。早く欲しい。会えなかった分たくさんたくさん抱いてほしい。こんな風に焦らされるのは嫌。
 私はクロウの胸を押し、彼をベッドに倒して唇を重ねた。初めは驚いたようにしていた彼もすぐに口づけに応えてくれる。
 荒々しく貪るような口づけに夢中になっている内に体勢が逆になっていた。
「積極的だな」
 ちゅっと啄む口づけを落とし、クロウが笑う。
「い、いやらしい? 私、いけないことをして……嫌いになった?」
 クロウは瞬きを数度繰り返し、蕩けるような甘い声で囁いた。
「まさか。俺の前でならいくらでも、どんなにいやらしくてもかまわない。嫌いになるわけないだろう」
「本当に?」
「当たり前だ。君があんなに俺を求めていてくれたのかと思うとたまらない」
 嬉しいよと囁き、クロウはいつもより少しだけ荒っぽく私の体に触れ始めた。クロウが触れるだけで私の体は過敏に反応し、一人の時とは比べものにならないほどの早さで高みに上りつめる。
 服を脱ぐのももどかしいとばかりにクロウは下衣の前だけをくつろげて私の中へ入ってきた。
 久しぶりの交わりは獣のように荒々しく激しく、私はクロウの与える快楽の中で正気を保つのが難しくなってきた。そして、大して抗いもせず私はその中へと堕ちた。


◇◆◇


「土産でも買ってくればよかった」
 夜明け前の仄かに白んだ空を見つめているとぴたり寄り添った元帥が気だるげに口を開いた。
「どうも俺は気が利かない」
「いいんです。お土産なんて、私は元帥がこうして下さるだけで嬉しいです」
「……可愛いことを言う」
 ぎゅっと抱き締められ、喜びに体が震える。
「君を喜ばせるには子を与えるのが一番ということか」
 子などできなくても寄り添えるだけで嬉しいのだと口にしかけて、それでは抱いてもらう理由がなくなることに気づき、私は口を噤んで元帥の胸に頭を預けた。どんな理由でも会いに来てくれるだけで嬉しい。
 ほんの少しだけ感じた悲しみは心の奥底にしまい込み、私は今感じる幸せだけを大切に思うことに決めた。

409:名無しさん@ピンキー
08/03/06 01:00:32 5yg3OhAu
また書き忘れてた。
前作同様こちらも保管庫入りは辞退します。

410:名無しさん@ピンキー
08/03/06 01:40:22 bma3wUgk
これはとてもエロス。
このまま結婚してしまえ。

411:名無しさん@ピンキー
08/03/06 03:04:46 mLHKp4eP
私可愛いよ私。
畜生…保管辞退だって?
紙に書いて保存しなければ!

412:名無しさん@ピンキー
08/03/06 16:46:20 49/ivqGK
>>411
アナログなお前に萌えたww

413:名無しさん@ピンキー
08/03/06 17:21:23 Ttq426Sb
なんという萌えるシチュ!
なんて素敵な元帥!転がりながらお待ちしております。

414:名無しさん@ピンキー
08/03/06 22:55:57 8LVndfAN
元帥キター!GJッ!すげぇ私かわいくて萌えたよ!
子供できたらこれ幸いと結婚だと元帥はほくそ笑むけどすれ違いとかでこじれちゃって元帥ヤキモキしちゃってでもすったもんだの末結婚
…なんて要するにもっと続いて下さい!

415:名無しさん@ピンキー
08/03/07 01:37:25 NM4tPhGA
元帥×私 完結編書いてみた。
わかってるとは思うけど時間かけてないから細かい設定ミスにはつっこまないでくれ!

416:完結編 1/4
08/03/07 01:39:46 NM4tPhGA
「……えっと、それは、あの」
 にっこりと華やかな笑みを浮かべて、困惑する私に彼は再度言葉を投げた。
「結婚を前提に、ね。僕はそう言った」
 どうすればいいのかわからずにおろおろするばかりの私の手を取り、彼は優雅に片膝をついた。そうして、おもむろに私の手の甲に口づける。
 それまで見て見ぬふりをしていた周囲の人間が色めきたつ。
「僕では不満かい?」
 何も言えず、俯いた私の耳に彼が小さく笑う声が届いた。
「今すぐでなくてもかまわない。考えてみてくれるかな」
 私が頷くのを見届け、彼は立ち上がる。
 非礼にならないように頭を下げて、私は逃げるようにその場を立ち去った。



 引き寄せられ、思わずもれそうになった悲鳴は柔らかな唇に飲み込まれる。
 突然のことに唖然としたが、背を撫でる手と温もりには覚えがある。
「……元帥」
「今すぐ抱きたい。だめか?」
 唇が離れ、確かめるために名を呼ぶと唸るように元帥は言う。
 駄目も何もここはさっきの場所からさほど離れてはいないし、何より建物の中ですらない。整備された庭の一角、木々の生い茂る人工の林のような場所だ。こんな場所ではいつ誰に見られるとも知れない。
「クロウ……クロウ、クロウ!」
 それなのに、私は元帥の首に腕を絡めて荒々しい愛撫に身を委ねている。
 もっと、もっと欲しいと浅ましい体が悲鳴を上げる。
 木の幹に背が押しつけられて痛いのに、そんなことよりも肌を這い回る熱が嬉しい。
「クロウ、やっ……ん」
「濡れてるな。すごく熱くなっている」
「やだ……いわな……ふぁ、ああっ」
 指が中をかき回し、私の体は快感に震える。
 もっと、そう指なんかじゃ足りない。元帥、元帥が欲しい。
 服の上から撫でるだけで元帥のものが大きく膨らんでいるのがわかった。
「リーファンの言うことなど無視してしまえばいい。忘れてしまえ」
 片足を持ち上げられ、元帥の熱いものが押し当てられる。けれど、リーファンという名前が私の熱を急激に冷ましていく。
「元帥、待って……ここではだめです」
「待てない」
「リーファン様のお屋敷です。人に見られては」
 そうだ。人に見られてはいけない。元帥の名が下世話な噂話にのぼるなんて耐えられない。
「元帥が悪く言われるのは嫌です」
 小さく舌打ちをし、元帥は私の足を離した。
 身支度を整え、元帥は苛立っているのかぐしゃぐしゃと髪をかき乱す。


417:完結編 2/4
08/03/07 01:41:41 NM4tPhGA
「早く帰ろう」
 震える足と指では上手に身支度ができず、見かねた元帥が手伝ってくれる。
 ぎゅっときつく手を握られ、手を引かれるままに元帥に続いて歩いた。


◇◆◇


「嫌がらせだ」
 グラスの中の酒を一気に呷り、元帥は憮然として呟いた。
「リーファンはいつもそうだ。俺に張り合おうとする」
 私はグラスをちびちびと傾け、酒を舐めるように少しずつ飲む。
「俺と君が」
 元帥は一度言葉を区切り、適切な単語を探すように黙り込む。
 屋敷へついてすぐ、元帥は私が立てなくなるまで何度も何度も求めてきた。そして、一人で寝室を離れて酒瓶を二本とグラスを二つ持って帰ってきた。
 私は裸のままベッドにおり、元帥はベッド脇に椅子を引き出して掛けている。
「えっと」
 元帥は機嫌が悪いらしく、私には信じられないような早さで瓶を空にする。
 私は何を言えばいいのかわからずに、口を開いたはいいがすぐに閉じた。
「つまり、俺と君が……恋仲……と勘違いしてああいうことをした。俺への当てつけというわけだ。更に、あわよくば俺から君を奪って優越感に浸ろうという下らない考えに違いない」
 肝心の部分はよく聞こえなかったけれど、元帥は恋仲と言ったのだろうか。
「恋仲?」
「……リーファンにはそう見えたのだろう」
 元帥は不服そうに言う。
「幾つになってもいけ好かない男だ」
 ぽっかりと胸に穴が開いたように空しさが私を襲う。
 苦虫を噛み潰したかのような元帥の顔を見るのが辛くて俯く。
 最初からわかっていたのに、なるべくなら考えたくなくて、ずっと見ない振りをしていた。
 元帥は私の恋人ではないのだ。私たちは体を重ねても愛を語らいはしない。
「泣、いているのか」
 ぽろぽろと涙がこぼれ、私はたまらずにベッドに突っ伏した。
「どうした? そんなに嫌なのか」
 動揺した元帥の声が聞こえるが涙は止まらない。後から後からこぼれてくる。
「俺と恋仲だと思われるのは泣くほど嫌なことなのか?」
 苦しげな声が聞こえ、私は少しだけ顔を上げる。
「一年以上も体を重ねてきた。今更そんな風に泣かれては……俺の方が泣いてしまいたくなる」
「お嫌なのは、元帥ではないのですか」
「なぜ? 馬鹿なことを。君と恋仲だと思われるなら、嬉しく思いこそすれ嫌がるなど有り得ない」
 元帥にきっぱりと言い切られ、私の涙が少しだけ止まる。


418:完結編 3/4
08/03/07 01:43:02 NM4tPhGA
「で、でも、嫌そうな顔をなさいました」
「リーファンが君に手を出そうとするのが嫌なだけだ。俺は君に他の男が触れることが許せない」
 それではまるで嫉妬しているようだと思うと頬が熱くなる。もしかして、元帥は妬いているのだろうか。
 希望的観測が現実のものか確認するために、私は勇気を振り絞って元帥に問いかける。
「それでは、まるで……や、妬いてらっしゃるようではありませんか」
 私と目が合うと、元帥が怒ったような照れたような顔をしてそっぽを向いた。
「そうだ、妬いている。君は知らないだろうが、君に男が近づく度に俺は妬いていた」
 あまりのことに開いた口が塞がらず、私は呆けた顔で元帥の横顔を眺めていた。
 しばらく二人の間に気まずい沈黙が流れる。
 気を取り直して尋ねようと口を開いても、声が上擦って震えてしまう。
「ど、うして?」
「年甲斐もなく恋をしているから」
「恋?」
「伝わっていないようだから言うが、相手は君だぞ」
 今度は違う意味でベッドに突っ伏す必要が生じた。
 今のはもしかしてもしかしなくても愛の告白と言うものではないのだろうか。しかも、元帥から私への。夢を見ているのかも知れない。そういえば体が熱い。眠っていると体温が上がるものだ。これは夢だ。きっと夢―
「どうして顔を隠す? 何か言ってくれないと恥ずかしいじゃないか」
 ゆさゆさと肩を揺すられ、私は逃げるように布団の中へ潜り込む。
「だから、どうして隠れるんだ」
 布越しに私を揺さぶる元帥の手は紛れもなく現実で、夢ではないのだと私に教えてくれる。
 心臓がうるさい。夢にまで見た告白なのに、どうしても元帥の顔がまともに見られない。
 嬉しさから溢れだした涙は止まらず、元帥への愛しい気持ちが込み上げてきて胸がいっぱいだ。
 喜びに浸っていたいのに、元帥は私の気も知らず布団を剥ぎ取った。
「顔を見せて」
 私の両頬を掴んで目を合わせ、私が泣いていることに気づいた元帥は動揺している。
「どうして泣くんだ? 嫌なのか。俺が嫌いか」
「違っ……嬉しい、の」
 元帥は安堵したように息をつく。
「大好き、です」
 勇気を出して、私は元帥に気持ちを伝えた。
「元帥が好き。大好き。愛してます」
 溢れる涙と同じで、一度口にすると止まらない。譫言のように何度も好きと口にする。
 そんな私に口づけを落とし、元帥はいつものように柔らかく笑んだ。


419:完結編 4/4
08/03/07 01:47:26 NM4tPhGA
「……リーファンよりも?」
「当たり前です」
「そうか。リーファンには俺からきっちりと断りを入れておくから君は心配しなくていい。大丈夫。流血沙汰にはならないさ」
 笑みの向こう側にひやりとしたものが見えた気がしたが、見なかったことにしようと決めた。元帥は意外と嫉妬深いのかも知れないと私はその時に初めて気がついた。


◇◆◇


「そもそも、俺は君のような娘が好みなんだ。姿形も性格も立ち居振る舞いも、好みにぴったりかち合う。前々から目をつけていたところにあのような悩み相談などしてくるからこれ幸いとつけこんだわけで」
 流されるままに再度体を重ねた後、元帥はそう語り出した。
「卑怯と言われれば卑怯だ。返す言葉もない。子ができたらそれを口実に逃げられないよう周りを固めて結婚に持ち込む気でいた。下準備は既に整っている」
「……それなら、もっと早く言っていただきたかったです」
「子ができる前に逃げられては困るだろう」
「逃げたりしません」
「……俺だって、惚れた女が相手では多少気弱になるものだ。小細工の一つや二つ仕掛けたくもなる」
 拗ねたような顔をする元帥が可愛くて、私はその頬を人差し指でつついた。
「君だって、一度もそんなこと言わなかった」
「言えばもう抱いて下さらなくなるかと思ったんです」
 お返しとばかりに元帥が私の額に額をぶつける。
「つまり」
「お互い様ということですね」
「そうだな」
 優しい口づけが落ちてきて、私は温かな腕の中でその優しさに浸る。
「愛している」
「私も、愛してます」
 いつまでもこうしていたいと望み、それは叶わないことではないのだと気づき、私は込み上げる幸せに頬を緩めた。



◇◇◆◆◇◇◆◆


元帥と私にラブコールくれた方々のために書いたぜ。保守小ネタのつもりだったのに楽しく書けたよ。ありがとう!


保管庫入りは変わらず辞退させていただく。

420:名無しさん@ピンキー
08/03/07 04:14:00 5CfMOcWb
職人さんGJです!完結編まで書いてくれてありがとう!
私可愛いよ私!やきもち元帥も可愛いよ(*´д`)
お断りシーンとか妄想するとニヤニヤが止まらない。
寝る前に覗いて良かった。脳内に焼き付けます。
良いもの見させてもらいました。本当ありがとう!

421:名無しさん@ピンキー
08/03/07 08:02:38 aqJKk247
おおおおおおおー!なんて素敵な可愛い元帥w
仕事行く前に覗いて良かった~~乙です。GJです!
子供も早く出来るといいね。ありがとう!

422:名無しさん@ピンキー
08/03/07 12:16:26 xJQjhrfZ
小細工を仕掛ける準備万端な元帥が可愛すぎる。
職人さんGJ!!!


423:名無しさん@ピンキー
08/03/07 12:51:36 EweazLXy
女とヤってお金が貰える♪
まさに男の夢の仕事!
出張ホストっておいしくない?
URLリンク(rootinghost.com)

424:名無しさん@ピンキー
08/03/07 14:43:30 EXe9yUe0
>>415
ありがとう…ありがとう(*'д`)
私が一年も抱かれ続けて子供が出来なかったのは、きっと元帥がイチャイチャしたかったからに違いない。
出来たら出来たで子供に嫉妬しそうな奥さん馬鹿になりそうだ。
神さま、ありがとう!

425:名無しさん@ピンキー
08/03/07 20:13:33 lDb7B+qc
久々にこのスレに来たら
とんでもない萌え元帥が投下されてて大興奮
ありがたくメモ帳に保存させて貰いましたぜ!

426:名無しさん@ピンキー
08/03/07 23:31:13 P846oqt6
GJ!続ききてた!私も元帥も大人なのにかわいいよ!
完結編とは悲しいですが職人さまありがとうございました!
二人に倖あれ!

427:名無しさん@ピンキー
08/03/08 02:31:56 IRi7J2TF
「お互いさま」がよかった。
幸せな二人が見れてよかったよ。

428:名無しさん@ピンキー
08/03/11 03:29:17 a6I+wEKk
もっと読みたいけど完結編ってことは続きはなし?結婚もしくは子供できるまで書いてほしいよ

429:名無しさん@ピンキー
08/03/14 21:55:28 xsBO4d67
いやいや、それ以上描くのはヤボというもの。
あとは各自脳内妄想で萌えるなり禿げるなりするのが良かろう。

430:名無しさん@ピンキー
08/03/17 02:07:46 +PPPBYjg
保守

431:名無しさん@ピンキー
08/03/25 01:38:15 RcK1Leks
保守

432:名無しさん@ピンキー
08/03/26 23:22:10 ZgXDvYRd
「いやです!」
 組み敷いた少女から強く拒絶され、男は深々と嘆息する。
「夜伽というのは添い寝のことじゃないぞ」
 少女から返事はなく、男はまたしても息をついた。
「十日も我慢させて、少しくらい申し訳なさそうな顔でもしたらどうだ」
 男が体を起こすと、少女はすぐさまベッドの端に寄り、毛布を体に巻き付けた。
「こ、心に決めた人がいます」
「俺だってお前がいいんだ。手に入れると心に決めてる」
 男の手が少女の髪を撫でる。
「だいたい約束だ何だというなら絶対俺の方が先に目を付けていたのに」
 ぶつぶつ独り言ちる男の声は少女の耳には入らない。
 男の手からも逃れるように少女は毛布の中に頭まで潜り込んだ。
「せっかく迎えにきたのに忘れているんだから」
 男はまたため息をこぼす。


 約束を交わしたあの日の相手が彼であることを少女は知らず、彼女の待ち人が自分であることを彼は知らない。
 二人が事実に気づくのはまだずっと先の話。




不器用ツンデレカップルが見たいです、先生!

433:名無しさん@ピンキー
08/03/27 21:38:05 PjncKg4y
こんばんわ。

イカした>>432の希望を裏切ってスマナイ。
これから、刑事モノ男上司×女部下を投下するぜい。
一応エロ無(だって、本番に行きつくのが無理なんだもん)、ネタ的な意味では微エロ。
3or4レス借ります。

NGワードは【caleidoscopio】で逃げるべし。
では、ドウゾ!

434:caleidoscopio 1
08/03/27 21:43:16 PjncKg4y
 俺の右に出るヤツは誰もいないから、俺はお前をいつでも奪える。

     ***
「ふざけんなよ!」

芦原警察署刑事課の取り調べ室から怒声が飛んだ。
課員の皆が何事かと、ドアに目線を向けた。
あの敏腕刑事で知られる須崎亮警部補が珍しく憤慨していた。
カンカン状態での説教を窺い知ることは出来ない。
「須崎提督がキレた…」
上里が青ざめながら、フルフェイスヘルメットを被る。
元来、彼はヒステリッカーが嫌いで、悲鳴があれば、愛用のヘルメットをかぶる。
しかしこのヘルメット、自作の阪神タイガース仕様とは、手が凝っている。
「警部補、どこか調子悪いからなぁ…イラつくのも無理無いって」
次に喋ったのは中橋。
彼はサプリメントケースに新しいビタミン剤を収めながら、ケラケラ笑う。
食事には気を使うものの、やはりどこかで不摂生になる。
「ああ、上のミスで給料が来なかったからか?」
その直ぐ後に、下山田が市販の点鼻薬を鼻に打ち、天上を仰ぐ。。
「後少しで‥娘がぁ…ユウミが待っている…だが、もう少し待て。待つんだ…下山田ぁ」
急いでティッシュを何枚か抜き取り、口許に当てた。
薬が変な箇所にまわったのだろう。
上里が心配そうな視線を寄越してから、中橋が首をかしげる。
 謎が二点ある。
 一つは下山田の点鼻薬にある妙な汚れ。
 もう一つは、警部補の苛立ち…………前者は気にしないとして。
「いや…情報屋が事件予備軍の匂いを掴まないからじゃないか?しかし、誰に説教を…」
三人の課員がヒソヒソと噂するが、通りすがりの庵原が水を差す。
「…さっき、取り調べ室に遠野を呼びましたよ?」
「「「うえぇ!?トーコ!?」」」
「なんでも、事件だとか」
「「「え?事件…!」」」
窓を背に座る、西ノ宮課長がのほほんとお茶のおかわりを宣言する。
しかし、東山のばあさんは華麗にお盆を投げた。
お盆は課長の喉に衝突し、課長の身体は宙に返る。
「自分でやっとくれ」
ばあさんは後片付けをせずに、帰って行った。
課長がひっくり返った隙に、庵原は鍵の保管庫を調べた。
「んー…」
取り調べ室の鍵がない。
直ぐ隣にも部屋があるのだが、その鍵もない。
マスターキーもない。
「…変態上司め…」
舌打ちし、庵原はキャスターにライターで着火する。

435:caleidoscopio 2
08/03/27 21:45:40 PjncKg4y
 隔離部屋には、須崎以外に、ぺたりと尻餅をついた女性がいる。
 急な呼び出しを食らったのは、芦原警察署刑事課所属の遠野 千春巡査。
 彼女はガクガクと震えながら、涙を堪える。
 須崎はポータブルDVDプレーヤーを机に置き、遠野に座れと命じる。
 再生ボタンを押すと、穴からリビングを覗いたような映像に変わった。
 それこそ、ダブルオーセブンのオープニングに登場する穴に似ている。
「これ……私の…家…」
 一時停止を押すと、画面の右端に3Dの画びょうが止まる。
「お前の顔を知っているヨソの署の知り合いがな、俺に貸してくれたよ」
ぐるりと遠野の背後を周り、肩を抱く。
 遠野がぴくりと反応する。
 須崎は彼女の耳にかかる髪をかき上げて囁く。
「【あんたの部下がホシのオカズにされた】ってな」
「お…おか、ず…?…‥」
 かたかたと小さく震える彼女は不安そうに上司を、相方をやや上目遣いで見る。
「遠野のプライベートを覗いて、喜ぶ…そんなやつが世の中にいるんだ。おまけに遠野の家に忍び込むとは、手癖が悪すぎる」
 それにと、須崎は一本のシガレットをくわえる。
「‥う…そ……」
「刑事が盗撮されちゃ…問題だな」
「------え?」
「ちょっと考えてみろよ。裁判の資料に提出されて、裁判官のジイさんや検察や弁護士や、傍聴人にも見られる」
 すうっと、脳内が冷える。
 もし、この出来事を検察官の兄や海上自衛隊所属の父、中学教師の母に、芦原署の皆に知れてしまったら…。
 課長になんて謝ればいいだろう。
 他の課員は呆れるかもしれない。
 色眼鏡で遠野を視る人間も現れるだろう。
 彼女を煙たがる庵原は馬鹿にして、ネチネチと小言を云うに違いない。
 いつ誰が嗅ぎ付けるか、恐ろしくて考えもつかない。
 それに、もっと公になってしまったら…須崎警部補と捜査が出来ない。

 憧れであり、目標。
 大学での説明会で会ったあの日から、須崎の背中を追いかけてきた。
 その背中を、その名を知ったから、ここにいる。
 所轄を転々としていた須崎の異動を心待にしていた。 
 直ぐ後に、朗報が飛込む。
 須崎の芦原署刑事課異動。
 それから、遠野は須崎の相方になった。
全てが現実だということを、新しい相方と握手をして気が付いた。
 絶対に、足手まといにはならない。
 戒律を守れないなら…辞めてしまえばいい。
 ずっと、守り続けていた約束。
 けれど、降りる気はない。
 降りたら、降りたで後悔する。
 下がるのも、戻るのも、降りるのも、出来ない。
 憧れや目標以外に、もう一つの何かを知ってしまったから。
 尊敬じゃない、何かを。

 遠野は顔色を真っ青にし、須崎の腕を掴んだ。

436:caleidoscopio 3
08/03/27 21:47:49 PjncKg4y
「警部補っ…あたし‥もう覗かれるの嫌です」
「…………遠野…」
「だから……犯人を殴らせてください。事情聴取は私がやります!」
 泣きそうな瞳は訴える。
 やられて嫌な事はしない、させない。
「勝手に覗いて、いい気になっている馬鹿に…お灸をすえてやりたいねぇ」
 この女刑事は盗撮犯をボコボコにする気だ、須崎は手で制し、プレイヤーを片付ける。
「犯人はヨソが捕獲した。そいつに強烈な一発をお見舞いしてやれ。ビデオカメラ回収はその後でな」
 ちょっと失礼と、須崎が断りを入れると、遠野の身体は宙に浮く。
 すぐ下に落ちるが、須崎の手に落ちる。
「ひやっ!…って、でええ!!?」
「つかまっていろよ!」
 ばんっと、取り調べ室を飛び出す。
 庵原は取り調べ室のドアが壁に衝突する衝突音で、ギロリと二人を睨む。
「「「けーぶほおおおお!」」」
「ちょっと行ってきまーす」
 鍵を西ノ宮課長に投げる。
「いってらっしゃーい」
 上・中・下の苗字を持つ、三人組は口を通常より三十センチ大きく開ける。
「下山田、中橋………見た?」
「ばっちりと」
「横抱きにして、かっさらったな」
 二人が飛び出した刑事課は煙草臭さが一層強まった。
「…………………警部補…コロス」
「「「!!!」」」
 庵原の不機嫌さは刑事課のドアを超え、よその部署に影響を及ぼしたとか、しなかったとか。

 ばんっ。
「あがっ!」
 西ノ宮課長がまたお盆の餌食になった頃、泣きべその女刑事が盗撮犯をグーで思いっきり殴ったのだ。
「…っ…刑務所で頭を冷やしてくださいっ!」
 彼女は犯人を預かる署の刑事たちに頭を下げ、一足先に署を飛び出した。
 事情聴取は終了し、残るは盗撮器具の回収となる。
犯人は宅配業者で、郵便受けの裏に張り付けていた鍵を得て、仕掛けたと供述した。
 現場マンションの集合ポストは外部の人間でも開けることが出来るタイプで、郵便物を盗むには可能だ。
 遠野は鍵の紛失を恐れたのだろう。
 ポストの裏に鍵をしまっていたと判明した。
 マンションはセキュリティが充実している物件に限る。
 須崎は相方が角を曲がっても、向こうを見つめていた。

437:caleidoscopio 4
08/03/27 21:55:07 PjncKg4y
「…俺も行くわ。ディスク、ありがとう」
「ああ…そいつの処分はお前に任せるよ」
 須崎は同期の水原に片手を上げ、もう片方の手を上着のポケットに突っ込んだ。
「…ああ……そうだ」
 さも今思い出しましたと須崎は水原の肩を叩く。
「……一発、俺にも殴らせてくれねえか?」
 にっこりと須崎は笑うが、水原は寒気を感じた。
「…………あえ?」
 気のせいだ。
「………?」
 須崎の背後に取り巻く黒い霧も──気のせいだ。
「ごぶぁっ!」
同時刻。
また、西ノ宮課長がお盆と衝突した。

──今すぐ、水原の記憶の一部が消えますように。
 須崎は心の中で祈ってから、部下が待つ車内に合流しなければ。
 行先は彼女の自宅。
 その場所でじっと彼女を監視していたブツとご対面が待っている。
──躯のセンターやや下が疼くのは秘密だな。
 あのディスクで予習するんじゃあなかったと、言ったら嘘になる。

須崎は芦原署刑事課の西ノ宮課長に、この後の予定と直帰を伝えた。
「須崎君、現場検証って‥庵原君の目線が…痛いんだけど‥」
「すんません、課長。俺には出来ません」
その瞬間、庵原のキャスターは灰皿で山になった。
従兄妹の遠野 千春に密やかな好意を寄せている庵原は、須崎を呪わんばかりに、キャスターを延々と吸う。
その遠野本人は何も知らずに、覆面パトの車内で待っていた。
「俺には、遠野にキョウイクをしなきゃならないと思います。また、このような事件が起こるとは限らないですから」
「キョウイクね………うん、いいよ。行ってらっしゃい」
 すみません、課長。
上里・中橋・下山田の上中下コンビには申し訳無い。
刑事課の皆、庵原を止めてくれ。

──これも遠野の狂育のためだ、狂育!
    end
*****
拙くてサーセン;;; ある意味未完成なので保管庫には入れないで下さい。
ありがとうございました!!!

438:名無しさん@ピンキー
08/03/29 16:03:45 YXZoOmdr
>>432>>434もGJ!
久々に萌え分補給させて貰った。


439:名無しさん@ピンキー
08/03/29 20:20:56 oHj+/VKa
先生と生徒というか師匠と弟子も主従に入る?それなら一つ落としたいネタがあるのだけど。ここでいいのかわかんなくて。

440:名無しさん@ピンキー
08/03/29 21:20:05 RJyvDd8N
>>439
上下関係だからここの範疇だと思う
師匠と弟子 先生と生徒 上司と部下 先輩と後輩 箱入り娘と丁稚

441:名無しさん@ピンキー
08/03/29 22:01:08 V8r+i+5f
なんと、先・後輩もこのスレの範疇とな?

442:名無しさん@ピンキー
08/03/29 22:16:00 YXZoOmdr
上司と部下の延長線上に先輩・後輩がある……のかもしれん。
規律の厳しい、共学リリアンみたいなところの先輩後輩とか、
生徒会長と副会長、軍学校のエリート坊ちゃんとお目付役で入学した従者とか、
色々あるよな。

443:名無しさん@ピンキー
08/03/29 23:24:43 RJyvDd8N
>>442
そうそう
そんな感じでいいと思う

444:439
08/03/30 03:22:14 i6Ki5t0K
大丈夫そうなんで前後編予定で前編投下する。
今回エロなしなんでエロだけ読みたいって人は注意。
一応後編にはエロ入れてる、ぬるいけど。

445:忘れ去られた聖地 1/6
08/03/30 03:23:55 i6Ki5t0K
 床に散らばる硝子の破片が素足のシャロンを傷つけたが不思議と痛みはなかった。熱に浮かされたようにふらつく体で彼女は割れた窓へと近づいていく。
「可愛い僕のシャル」
 窓枠に足をかけ、まるで姫君の寝室に忍び込む秘密の恋人といった様子で青年は微笑む。
「僕はね、思うんだ。このまま君を連れ去るのは僕にとって難しいことじゃない。それは、そうだな。君が薔薇園から薔薇を失敬して部屋にこっそり飾るのと同じか、それよりももっと容易い」
 シャロンの枕元に置かれた一輪挿しを一瞥し、青年はくすりと笑う。
「でもね、それが出来ないんだ。どうしてだろうね、君を僕は浚えない」
 ようやく窓際にたどり着いたシャロンは呆けた顔で青年を見上げた。
「ああ、可愛い僕のシャル。君が愛おしい」
 手袋をつけた指がシャロンの頬を撫でた。
「せ、んせい」
 青年の言葉の意味がわからず、シャロンは喘ぐように問いかける。
「先生、何を」
 何をおっしゃっているのかよくわかりません。口にしかけた言葉は音になる前に消えた。
 幾度となく触れた唇が慣れた様子でシャロンの唇を塞ぎ、そして離れる。
「だからこそ僕は怖いんだ。この僕が恐れを抱くなんて、ああ、なんて滑稽なんだろう」
 青年は少しもおかしそうではない、今にも泣き出してしまいそうな顔でシャロンの瞳を覗き込む。
「忘れないで、君は僕のものだ。僕だけのものだよ、シャル」
 指が頬から離れるとともに青年の姿がゆらりと煙のように儚く消えた。
 伸ばした手が宙を掴み、頬を生暖かい何かが伝い落ちる感触にシャロンは叫んだ。
「先生!」
 はっとして辺りを見回す。窓は割れていないし、足も傷ついていない。
 ばくばくと鳴り続ける心臓を押さえ、シャロンは頬を伝う涙を拭う。
 夢だ。何年も何年もシャロンを苦しめる夢。忘れることを許さないとばかりに、シャロンの記憶が薄れそうになる度に夢は鮮明に記憶を色付ける。
 深く浅く呼吸を繰り返してシャロンは意識を落ち着ける。
 そして、すっかり鼓動がおさまると彼女は起き上がって身支度を整える。寝間着から白を基調とした制服へ着替え終え、細身の剣を腰に帯びた頃扉を叩く音がした。
「どうぞ」
 扉が開き、長身の男が姿を現す。詰め襟の上着は本来上から下まできっちりと釦で留めるよう作られているはずだが男は首元をくつろげて着崩しており、しかしすらりとしたズボンはきちんとブーツの中へと納められている。


446:忘れ去られた聖地 2/6
08/03/30 03:24:44 i6Ki5t0K
襟には彼の階級を表す紋章が印されており、それはよくよく見れば彼の身につけた手袋や腰に下げられた拳銃にもあしらわれている。
 シャロンとよく似た格好をしているのは彼も同じ組織に属する人間であり、彼の着ているものも支給される制服だからだ。違うのは色とあしらわれた紋章だけ。
「なんだ、起きてるじゃないか」
「寝ていると思いましたか」
「まあ、少し遅かったからな。他の面子は食堂に揃ってる」
「すみません。ですが、時間には遅れていません」
 壁に掛けられた時計を見やり、シャロンは微笑む。男―レスターは緩やかに波打つ自身の髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「シャロン」
 上着の釦をきっちりと留め、シャロンはレスターの立つ扉へと歩き始める。
「感情ってのは厄介だろう。一度芽生えた情はそう容易く消え去りはしない」
 いつから扉の前に立っていたんだろうかとシャロンは傍らの男を睨みつけたい衝動を賢明に堪えた。
「そうかもしれません。私は彼が憎い。憎しみは正常な判断を鈍らせる。彼を前にした私が憎しみから暴走するとお思いならあなたは私を使わなければよいのです」
 感情を消した顔でシャロンはレスターを見上げた。
「私を使うか使わないか。その判断を下すのはあなたで、私はあなたの判断に従うだけ。置いていくというなら素直に従いましょう」
 レスターは口を開きかけ、力なく肩を竦めた。
「俺はただお前が可愛いだけだよ。強くなったのは魔術と剣術の腕前だけで中身はあの頃のままだから」
 シャロンより頭二つ分背の高い男は、彼女の頬を優しく撫でた。
「レスター。あなたの心配は杞憂です」
「兄弟子としては心配せずにいられないんだが」
「あなたの気持ちは有り難いと思います。ですが、それ以上の気遣いは侮辱に等しい。今や私も一介の魔術師。あなたの庇護下に置かれ守られていた頃とは違うのです」
 レスターは溜め息をこぼし、そうだなと呟いた。
「悪かった。お前が可愛いからついつい世話を焼きたくなっちまう」
「いつまでも兄気分では困ります」
「なあに、今だけだ。公私混同はない」
「当然です。そうでなければ困ります」
 ぽんと頭に置かれた手を払いのけずに受け入れ、シャロンは少しだけ表情を緩めた。
 二人は並んで歩き、食堂を目指した。
 食堂では既に朝食が始まっており、シャロンと同じ制服を着た人々が席について食事をとっていた。


447:忘れ去られた聖地 3/6
08/03/30 03:25:37 i6Ki5t0K
 レスターが入室したことに気づき、皆が食事の手を止めて立ち上がる。
「さて、全員揃ったところで作戦会議といこうか」
 レスターがにんまりと笑い、椅子に掛けながら宣言する。彼の合図に従い全員が着席し、シャロンも自身の席へと腰を下ろした。

 数年間頑として足取りを掴ませなかったクラウスの目撃情報を得たのが三日前。事実関係の確認を急いでいた諜報員が姿を消したのが昨日。
この目撃情報が信憑性の高いものであるとして、レスターを中心とした追跡部隊が数年ぶりに再編成された。足取りを掴むための諜報活動を主としていたものから捕獲あるいは討伐を主としたものへと移行する。
 シャロン、そしてレスターの属する組織《忘れ去られた聖地》は大陸中央を拠点とした巨大な魔術集団である。大陸に存在する魔術師の約六割は《聖地》に属しているとされ、東西南北の地域に支部を置き、他の組織とは一線を画する。
 シャロン達の追うクラウスは元は《聖地》に属する魔術師であり、中核を担う幹部でもあった。しかし、今は《聖地》に追われる立場となっている。
 それは、彼がある日を境に忽然と姿を消したためである。《聖地》の情報網を以てしても目撃情報すら得られない。彼は姿を消したのだ。
 《聖地》が彼を見つけだすことに諦めを抱きかけた頃、彼は不意に姿を現し、そしてまた消えた。
 まるで遊んでいるかのように―現に彼にとっては暇潰しにすぎないのだろう―彼は出奔してからずっと《聖地》の追っ手から逃れ続けているのであった。
 初めの頃は穏便に連れ戻すことを目的としていた上層部も、時が経つにつれ目的を捕獲から討伐へと変えてきた。組織の矜持にかけて出奔者を好き放題にさせておくわけにはいかない。
 そう言った理由から久方振りに現れたクラウスを捕らえ、あるいは抹殺するためにシャロンを含めた追跡部隊は現在作戦会議に及んでいるのであった。





448:忘れ去られた聖地 4/6
08/03/30 03:26:24 i6Ki5t0K
 長い作戦会議が一応のまとまりを見せ、シャロンは自室へと戻っていた。
 寝台へ倒れ込み、枕元の一輪挿しを眺める。シャロンが初めて高等魔術を成功させた祝いに師が贈った品で、稀少価値の高い石材で作られた高価な一品だ。シャロンの好きな花の模様が彫られている世界に一つしかない一輪挿し。

『先生、これってすっごく高いんでしょう? レスターさんが教えてくれました』
 レスターが推定価格を口にした瞬間からシャロンはその一輪挿しを軽々しく持ち歩いていた自分が怖くなって師の部屋へと転がり込んだのだ。
『さあ、どうかな。僕はそれなりに高給取りだけど浪費家ではないから一輪挿し程度に“すっごく高い”なんて称される額は使わないよ』
 師は常と変わらぬ微笑で何でもないことのように言う。一輪挿しと師の顔を見比べ、シャロンは垂れ下がった眉をますます下げる。
『可愛いシャル。それはね、僕が君のために用意したご褒美なんだよ。僕の言いつけを守って毎日鍛錬を怠らず、今の君には難度の高い魔術を成功させた。頑張り屋さんの君へのご褒美』
 その頃にはもう師の腕の中で優しい口づけを受けることは珍しいことではなくなっていたから、シャロンは引き寄せられるままに彼の腕の中にすっぽりと包まれる。
『君の好きな花だ』
 シャロンの手の中の一輪挿し。その模様をさして師は言う。
『君を喜ばせるためだけに作られたものなのに、君が喜ばないとこの一輪挿しが可哀想だ』
 ついでに依頼した僕も可哀想と師は笑う。
『私、割ってしまうかも』
『形あるものはいつか壊れてしまうのだから、それを恐れてはいけない』
 それでもうじうじと思い悩んでいるシャロンを愛おしげに見つめ、師はそっと額に口づけた。
『可愛い僕のシャル。では、君のために僕は魔法使いになってあげよう―』

 目を閉じれば記憶は鮮明に甦る。今なお胸を焼く思い出を振り払おうとシャロンは一輪挿しを床へ払い落とした。
 鋭い音を立て、一輪挿しは砕け散る。けれどもそれは少しの間で、気がつけば元の形へ戻り、床には水と薔薇の花弁だけが散っていた。
 忌々しい。シャロンは舌打ちをして一輪挿しへ背を向けた。
 どれだけ時を経ても記憶は薄れず、師のかけた魔術も効果をなくさない。
「先生……」
 初めは信じられなかった。師が《聖地》を出奔したことも痕跡一つ残さずに姿を消したことも。

449:忘れ去られた聖地 5/6
08/03/30 03:28:04 i6Ki5t0K
それよりも何よりも自分を置いていってしまったことがシャロンには信じられなかった。
 彼は魔術の師であるだげでなく、シャロンにとって父であり、兄であり、恋人であった。かけがえのない大切な、心から愛する人だったからだ。
その思いはシャロンの一方通行ではなく、同じだけの愛情を与えられていると信じていただけに置いていかれたという事実はシャロンを打ちのめした。
 周囲から慌ただしさが消え、ずいぶんと穏やかになってからもシャロンは呆然として日々を過ごしていた。僅かに残された品すらすべて運び出されたがらんとした師の部屋でシャロンは待っていた。
待っていればいつか帰ってきてくれるのだと信じていた。信じていたかった。
 しかし、いつまで待っても師は戻らず、衰弱しきったシャロンを迎えにきたのは兄弟子にあたるレスターだった。
 レスターはシャロンを連れ帰り、師は戻らないのだという事実を長い時間をかけてシャロンに認めさせた。彼はもう先生ではないのだ、と。
 そうして事実を受け入れてからシャロンは魔術の鍛錬に没頭し、護身のための剣術を標準以上の腕前になるまで磨いた。
戻らないのならせめて自分の手で捕まえたい。それがかなわないのなら刺し違えてでも殺してしまいたい。新しい目標は追跡部隊に選ばれるまでにシャロンを鍛え上げた。
 今やシャロンは《聖地》でも上位に位置する魔術師へと成長している。マスターと呼ばれる幹部たちには及ばぬまでも並の魔術師では相手にならないほどには強くなった。
 シャロンは腰の剣へと手を伸ばし、柄を握って目を閉じた。
 きっとクラウスはシャロン相手に魔術を使いはしないだろう。彼が魔術を使えばシャロンは瞬きをする間に殺される。悔しいがそれだけの実力の差がある。
 だからこそ、クラウスと相対することがあればそれは剣術で。シャロンが銃や弓でなく剣をとったのはクラウスが好んだ獲物がそれであったから。
 かつて尊び愛した師と斬り結んでみたい。
 憎悪と愛情がないまぜになり、シャロンの心がクラウスを渇望する。


450:忘れ去られた聖地 6/6
08/03/30 03:28:39 i6Ki5t0K
 結局のところ、シャロンは師に認めてほしいのだ。足手まといだから連れていかなかったというのなら成長した自分を見てほしい。そして悔やんでほしい。こんなに強くなるのなら連れていけばよかったと。
 そうしたら、そうしたら、きっと―
 シャロンは息を飲む。
 どうするというのだろう。彼が自分を置いていったことを悔やんだとして、そうしたらどうするというのだ。
 シャロンはゆるゆると目を開く。
「嘲笑ってやればいい。今更何を言うんだって」
 自分に言い聞かせるように声に出し、シャロンは再び目を閉じた。こんな気持ちのまま眠れば夢見は最悪。それはわかっていたが、今はただ眠りたかった。





以上。前編終わり。
本当に主従スレでよかったのかちと不安だ。

451:名無しさん@ピンキー
08/03/30 04:29:34 XA6q4lR3
おお。いい設定です。
レスターにも頑張ってほしいなあ。

452:名無しさん@ピンキー
08/03/30 23:46:08 i6Ki5t0K
忘れ去られた聖地 後編投下します。

453:忘れ去られた聖地 1/7
08/03/30 23:47:06 i6Ki5t0K
 痛みはもうなかった。それよりも甘さを伴う慣れない感覚が全身を支配しており、それがたまらなく心地よかった。
 自分でもよくわからない体の奥の奥で愛する人を受け入れていることがシャロンの心を満たしている。
「ごめん」
 シャロンの肩に額を押しつけていた師が呻くように言う。けれど謝罪の意味がわからず、シャロンは首を傾げた。
「加減の仕方がわからない」
 さっきまでの激しさが嘘のように師はしおらしく呟く。その拗ねたような声が愛おしくシャロンは小さく吹き出した。
「どうして笑うの」
 師が顔を上げ、拗ねた顔でシャロンを見下ろす。
「だって、先生可愛い」
 素直な気持ちを述べたのだが、師は複雑に表情を歪めた。可愛いと言われても嬉しくないらしい。
「僕は真剣に悩んでるのに。君の体を気遣いたい。それなのに、未だかつてないほどの肉欲と渇望が僕にいたわりを忘れさせる。加減が少しも出来ないんだ。
体の傷はいくらでも癒せるけど、痛いとか苦しいとか君に思わせるのが嫌なんだ。だからといって、無理矢理快楽を呼び覚ますのはもっと嫌だし」
 ぶつぶつと師は独り言のように語り続ける。
 シャロンの体と心を案じてくれているのがひしひしと伝わり、それだけでシャロンは幸せの絶頂へ至る。シャロンの体は確かにまだ喜びを覚えてはいないが、心は幾度となく歓喜の声をあげているのだと師は気づかないのだろうか。
「先生」
 シャロンは未だ自身の中に収まったままの師の一部を撫でるように臍の下辺りに手を置き、師に微笑みかけた。
「私、先生に抱いてもらうの好き。まだちょっと苦しいけど、心は気持ちいい。先生が愛してくれてるって思うと泣きたくなるくらい幸せなの」
 師は黙ってシャロンを見下ろし、吐息混じりに名を呼んだ。
 シャロンの手の下で、萎えていたものが再び熱を帯びていく。
「教え子に手を出すなんて、僕はどうかしていると思ってた。いや、今も思ってる。でも、どうかしているとわかっていても僕は君が欲しくてたまらない。……愛だ。これが愛なんだよ、シャル。ああ、たまらない。君を愛してる」
 感極まった様子で師はシャロンに口づけた。そして、動きやすいように彼女の足を肩にはねのけ、先ほど吐き出した白濁を掻き出すように腰を動かし出す。


454:忘れ去られた聖地 2/7
08/03/30 23:48:04 i6Ki5t0K
 こうなってしまうと何度も欲を吐き出して疲れきるまでシャロンを離さないのだと経験上知っている彼女は強く打ちつけられる腰に僅かな痛みを覚えながらも喜びに咽ぶ。何事にも淡白な師が熱く求めてくれることが嬉しくてたまらない。
 もっと、もっとと慣れないながらも彼女は彼を誘う。ぎこちなく腰を揺らし、甘く掠れた声で師を呼ぶ。欲しくてたまらないのは彼だけではない。シャロンも同じだ。どれだけ与えられても足りない。彼女はいつだって彼に餓えている。
「せんせ……すき、っは、あっ、ン、すき……あッ、せんせぇ」
 屹立はシャロンの中を遠慮会釈なく蹂躙し、その荒々しさにシャロンはのけぞって応える。師が気遣いを忘れて、シャロンを貪ることに夢中になればなるほどにシャロンは満たされた。
 互いの粘膜が触れ合う粘着質な音とシャロンの喘ぎ、そして師の乱れた呼吸だけが室内を埋め尽くし、それは空が白む頃まで幾度も続いた。


 やはり夢見は最悪だ。幸せだった頃の、少なくともそう思っていた頃の記憶はシャロンの心を乱す。かつて愛した人を思い出すことは古傷を抉り塩を擦り込むように痛かった。
 まだ夢を見ているかのようにシャロンの体は火照っている。彼女は自身の体を抱き、胸の内から憎しみを呼び戻す。
 躊躇わずに彼を殺せるように常に憎悪をまとっていなければならない。愛情は刃を鈍らせるだけだ。
 ともに過ごした時間より離れて過ごした時間が長いのにどうして忘れられないのだろう。シャロンは奥歯を噛みしめる。
「シャロン」
 かけられた声にはっとして顔を上げる。
 扉にもたれたレスターがこんこんと扉を叩く。
「ノックはしたんだぞ、何回も」
 シャロンが震える息を吐くとレスターは寝台へと歩み寄り、許可も取らずに腰を下ろした。
「うなされてたな」
「見ていたのですか。悪趣味ですね」
「ずっとじゃないさ。さっききたばかりだからな」
 レスターの手がシャロンの頬を撫で、顎を掴んで上向かせる。
 視線が絡み、彼はゆっくりと顔を近づける。程なくして唇は重なり、どちらからともなく舌を絡めて口づけを深めた。
 レスターに肩を押され、シャロンは寝台へと横たわる。口づけを交わしたままシャロンは彼の上着に手をかけた。


「俺はお前を死なせたくない」
 露わになった背に唇を寄せ、レスターは囁く。
「ああっ、く……ふ、ぁッ」
 レスターは強く腰を打ちつけ、肩に噛みついた。


455:忘れ去られた聖地 3/7
08/03/30 23:48:47 i6Ki5t0K
「俺にはお前があの人に殺されたがっているように見える」
 上体を起こし、突き出した腰を掴んでレスターはシャロンを責めた。
「なあ、シャロン……くっ」
 それ以上喋るなと言う代わりに下腹部に力を込めて、シャロンはレスターを締め付ける。思惑は成功して、レスターは会話を止めて行為に集中する。
 レスターに抱かれると快感を得れば得るほど虚しさで胸が埋め尽くされる。この行為に愛などなく、お互いに傷を舐めあっているだけだと理解しているからだ。
 枕を掴んで顔を埋め、シャロンはレスターの責めから逃れようとする。先に達するのは嫌なのに、レスターは的確にシャロンの感じる部分ばかりを責めてくる。
 逃げようとした腰はしっかりと抑え込まれているし、片手が結合部へと滑りシャロンの敏感すぎる部分を指で撫で始めている。
 快感ですすり泣きながら、シャロンは悲鳴に近い嬌声を上げる。
「レ、スター……いや、だめっ」
「いきたきゃいけよ」
「いやぁ……あっ、い、いや……ああ、あっ、ああああああッ」
 堪えきれずに絶頂を迎え、シャロンの体が強ばる。それでもかまわずにレスターは腰を打ち付ける。レスターを止めようと膣はきつく収縮し、襞がまとわりついてくる。しかしレスターは止まらない。
 悲鳴を上げながら、シャロンは強すぎる快感から逃れきれずに小刻みに体を震わせる。
 逃れられないように腰をしっかり両手で掴み、レスターは自らが達するまで動くことをやめない。彼が満足してシャロンの尻に白濁を散らす頃には、彼女はぐったりとして寝台に体を投げ出していた。
 シャロンは虚ろな目でレスターを見上げた。優しい兄弟子を苛んでいるのは自分の存在だと気づいているのに、離れることが出来ない。いっそ突き放してくれればと思うが、優しい彼が自分を見捨てられないことも知っている。
「レスター」
 泣きすぎて掠れた声で彼を呼ぶと低く穏やかな声が答えた。
「ん? なんだ」
「ごめんなさい」
 困ったような顔で彼は笑い、シャロンの髪がぐしゃぐしゃになるのもかまわずに頭を撫で回す。
「それと、ありがとう」
「……馬鹿だな。お前みたいな可愛い女を抱けるんだから、こういうのは役得っていうんだ」
 レスターはおどけて見せたが、ありがとうとシャロンは重ねて口にした。





456:忘れ去られた聖地 4/7
08/03/30 23:49:34 i6Ki5t0K
 情報に従い、追跡部隊は北部へと向かった。転移魔術で《聖地》支部へ、そしてそこから馬車で三日かけて鬱蒼とした森へ移動した。森の中の古びた館にクラウスがいるという。
 今までの記録から想像するに、追跡部隊が到着した頃にはもぬけの殻になっている。あるいは姿は見せるが交戦の間もなく逃げられる。あるいは―
「以前北部で発見した時は負傷者多数でほぼ壊滅状態だったそうですね」
「気まぐれな人だからな。毎度結果はあの人の気分次第というところだ」
 落とした声でシャロンとレスターは言葉を交わす。
「だが、死人は出てない」
 レスターが不快そうに眉を寄せる。
「死なない程度に痛めつけることが可能だということはあの人は追跡部隊全員束ねてもまだ数段高見にいるってことだ。あの時は一度目の追跡だったから面子も今ほど攻撃に特化した奴ら揃えてたわけじゃなかったが」
 レスターの話を聞き、シャロンはぎりぎりと奥歯を噛みしめる。
 今回の追跡部隊にシャロンがいることに、きっと師は気づいているはずだ。逃げずに向き合ってほしいと願う。
「クラウスは私が必ず捕まえてみせます」
 この日のためだけにシャロンは十年を越える歳月を生きてきたのだ。
 決意も露わに、シャロンは前方に現れた目的の館をじっと見つめた。



「可愛いシャル。僕の、僕だけのシャル」
 別れた時のまま、目の前で師は笑んでいた。
「会いたくて、触れたくて、気も狂わんばかりだったよ。でも怖くて会えなかった」
 悲しそうに表情を歪め、片手で掴んでいたものから手を離した。それは力なく床へ倒れ込み、師は一瞥もくれることなくそれから剣を引き抜いた。
「……レスター」
 それの腹の辺りからじわじわと血が滲み、それは恐るべき速さで床に血溜まりを作った。
 床に横たわるのは追跡部隊の長であり、マスターと呼ばれる高位の魔術師であり、シャロンの二人目の師であり、クラウスの弟子であるレスターだ。
「せんせい」
 血の臭いがする。レスターの命の臭いだ。
「ああ、シャル。怖いのかい」
「レスターが、レスターさんが」
「仕方がないよ。僕だって嫉妬くらいする」
 体が動かなかった。館へ入ってすぐに体の自由を奪われた。
 攻撃は唐突で確実。シャロンの周りにだけ防護壁が張られ、不意をつかれた追跡部隊は雨のように降り注ぐ強烈な攻撃魔術にさらされた。


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