男主人・女従者の主従エロ小説 第二章at EROPARO
男主人・女従者の主従エロ小説 第二章 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
07/07/28 22:32:49 mZTYUcoA
◇姉妹スレ◇
【従者】主従でエロ小説【お嬢様】 第四章
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↑こちらは女が主人で男が従者(時と場合により女従者)の主従を扱うスレです。
双子のようなもんで、そっくりですが性質は全く違います。
仲良く棲みわけましょー。

◇その他関連スレ◇

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3:名無しさん@ピンキー
07/07/28 22:35:45 mZTYUcoA
以上テンプレ。
part2でいいかとも思ったけど姉妹スレに対応させて第二章にした。

アドレスとか他にも間違いあったら誰か修正よろしく。
あと保管庫は今の時間帯繋がりにくい模様。

4:名無しさん@ピンキー
07/07/28 23:22:36 BretuVG4
乙!
ついにこのスレも第二章かー

5:名無しさん@ピンキー
07/07/28 23:57:43 MbNchYeI
こっちにもついでに
乙!!

6:名無しさん@ピンキー
07/07/29 00:12:14 IjKeTL98
乙です

7:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 01:06:34 YjP0dEN0
乙!

王都騎士団の続きを密かに待っとります…

8:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 01:29:59 DNCN7bcs
乙カレー! 保守がてら小ネタを投下。ラブコメ以前の話。


 プロボーズに必要なものといえば何だ。
 いや、そもそも女性が喜ぶものが分からない。
 こんなことなら若い時に一度ぐらいは合コンでも行っておくべきだったか……。

「……しょ、将軍?」
 その声に男は思い出したように顔を上げた。目の前には軍属についたばかりの若者が今にも泣き出しそうな顔でこちらの気配を窺っていた。
 ……どうしたというのだ、頼んでいた書類は自分の望んでいた成果を高らかに謳っていたというのに。
 とりあえず下がる許可を与えると、部下は一目散に部屋を出て行ってしまった。

 全く理由が分からず首をかしげていると、部屋のインターホンが鳴り、扉が開いた。
「将軍、一体、何をなさったのですか? 彼が粗相でもしましたか?」
 入ってきたのは男より十は年下のグレーの瞳が印象的な女性士官だった。彼女は男の主席副官であり、何より事務能力に長けた有能な部下だ。
 そして、男が密かに恋焦がれる相手でもある。
「いや、何もしていない」
「将軍は普通の顔が不機嫌を通り越して怒っているように見えるんです。気をつけて下さい」
 こうやって男を叱り付けることができるのは彼女ぐらいだ。その竹を割ったような性格が男は好きだった。聞けば血筋は名のある貴族らしいが、彼女は何の不満のない生き方を捨て、軍に入ったらしい。それも好感が持てた。
 自分のように戦いしか知らない男など相手に相応しくないとは分かっていたが、それでも自分の気持ちに嘘が付けなくなってかなり経つ。
 嫌われてはいないと思う。いつもの礼だと言って食事を誘えば、彼女は嬉しそうに付いてきてくれる。それなりに脈はあるはずだ、─多分。

 ああでもないこうでもないと一人考え始めた上官に、有能な副官は顔に似合わず男の好きなココアを入れてやろうと部屋を出て行った。
 まさか彼が自分のことで悩んでいるなど、彼女はその時になるまで全く思いもしなかった。

9:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 02:20:51 3KQXzTcA


10:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 11:28:50 6TEv/sjO
>>1乙!

>>8
続き待ってます!

11:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 12:48:36 kpZyoeLO
>>1

>>8

続きを!

12:名無しさん@ピンキー
07/08/04 07:13:17 6eNMe4vV
ほしゅ

13:名無しさん@ピンキー
07/08/05 02:11:43 PIJfm/QQ
即死回避?保守

14:名無しさん@ピンキー
07/08/06 18:27:07 pxMlOZHE
中性的でシャイな男
90年代中頃でしたでしょうか、「フェミ男」などという言葉が流行りだした頃から、ちょっと中性的でシャイな男がモテるようになりました。
私自身は古い人間ですので、男はちょっと強引なくらいが好みです。
が、最近は特に、女性が年上のカップルも増え、可愛い男、シャイな男が好みだという御姉様方も多いようです。
シャイな男というのは、自ら果敢に攻めるということがないため、気が強くてちょっとわがままな女性や、しっかり者でリーダーシップのとれる年上の女性と付き合うことが多いようです。
ただし、私について来いと言わんばかりの強引なだけの女はNG。いくらシャイでも男は男ですから、弱さや可愛らしさという女の「隙」がなければ恋愛には発展しにくいものです。

俺様系の強引男
俺様系の強引男というのは、男としてのプライドが高く、どちらかと言えば女性を卑下する傾向も強いのが特徴です。
女に対しては綺麗でか弱いという幻想を抱いていることも少なくありませんですので、自分より有能そうなバリキャリの女性や、男勝りで女らしさに欠ける女性などは敬遠しがち。
しかし、じつは俺様系を前面に出している男性こそ、内面は意外と繊細で脆いものです。
弱い犬ほどよく吠える、というアレですね。人間関係で躓いたり、仕事で失敗した時などは、つべこべ言わず優しく側にいてくれる、癒し系の女性に惚れやすいでしょう。
普段は自分が主導権を握っていても、いざという時は女性に甘えるのが俺様系の強引男です。


15:名無しさん@ピンキー
07/08/06 18:30:45 pxMlOZHE
中性的でシャイな男
90年代中頃でしたでしょうか、「フェミ男」などという言葉が流行りだした頃から、ちょっと中性的でシャイな男がモテるようになりました。
私自身は古い人間ですので、男はちょっと強引なくらいが好みです。
が、最近は特に、女性が年上のカップルも増え、可愛い男、シャイな男が好みだという御姉様方も多いようです。
シャイな男というのは、自ら果敢に攻めるということがないため、気が強くてちょっとわがままな女性や、しっかり者でリーダーシップのとれる年上の女性と付き合うことが多いようです。
ただし、私について来いと言わんばかりの強引なだけの女はNG。いくらシャイでも男は男ですから、弱さや可愛らしさという女の「隙」がなければ恋愛には発展しにくいものです。

俺様系の強引男
俺様系の強引男というのは、男としてのプライドが高く、どちらかと言えば女性を卑下する傾向も強いのが特徴です。
女に対しては綺麗でか弱いという幻想を抱いていることも少なくありませんですので、自分より有能そうなバリキャリの女性や、男勝りで女らしさに欠ける女性などは敬遠しがち。
しかし、じつは俺様系を前面に出している男性こそ、内面は意外と繊細で脆いものです。
弱い犬ほどよく吠える、というアレですね。人間関係で躓いたり、仕事で失敗した時などは、つべこべ言わず優しく側にいてくれる、癒し系の女性に惚れやすいでしょう。
普段は自分が主導権を握っていても、いざという時は女性に甘えるのが俺様系の強引男です。


16:若君と女家庭教師
07/08/07 18:45:16 DoAT1lP3
 「本当に、私があのグレイザー卿のご子息の家庭教師で、よろしいのですか?」
 エリザは、澄んだ湖のような蒼い大きな瞳を、歓喜の涙で潤ませながら、囁いた。
 「ええ。貴方のように、若く思慮深い、女性を、主は探しておられたのです。」
 ニッコリと執事のアルバートは微笑みながら、告げた。
 (……しかし、この方もすぐ落胆されてしまうかもしれない。)
 屋敷で新たに家庭教師を求めるのは、これで五人目だ。 
 原因は言わずと知れた、この屋敷の若君ロベルトだった。
 17歳になり、紳士として社交界へのデビューは当然果たしていなければ、ならない筈なのに、
未だそれは果たされない。いつまでも、子どもの様に野山を駆け回り、犬や獣達と戯れている。
  (国の英雄とご主人様は讃えられているが、若様は……)
 「どうぞ、明日からよろしくお願いいたします。」
 きっちりと貴婦人としての礼にかなった所作で、エリザは挨拶をした。
 主に対する畏敬の心。若く美しい彼女は、教育者としての情熱に、満ち溢れていた。
 (今度こそ、若様を変えてくれると信じていますよ。)
 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
 アルバートは彼女なら、若君を救えるかもと一縷の望みを託し、深いお辞儀をした。
 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」




 「…っ!せ、先生。このような、動きで…よろしい、でしょうか…」
 「あぁ…。と、とてもお上手です。こ、これならどんな貴婦人も喜ばせることが、
…―んっ。あ…」
 しがみついた豪奢な机の脚が、二人の激しい動きにあわせギシギシときしんだ。
 エリザの金色の髪は乱れ、汗ばむ額に張り付いた。いつもはきつく閉じられた前ボタンは開かれ、
豊かな乳房がこぼれ出しロベルトの手で、優しく愛撫されている。
 背後から貫かれているエリザは、振り返り潤んだ瞳でロベルトにキスをねだった。
 「んっ。…はぁ…キスを…」
 荒々しく、エリザの桜色のふっくらとした唇を、ロベルトはついばんだ。
 「ほ…ほんとにお上手に……」
 「お―お願いです。もう、出させてください。」
 「い、いけません!まだ、まだ……やっ!あぁぁぁ」




という、ホシュ。

17:名無しさん@ピンキー
07/08/07 22:16:53 3axz66lA
>>16
GJ!
一癖も二癖もありそうな登場人物たちがイイ
年下主人×年上従者ってのも全然ありだな

18:名無しさん@ピンキー
07/08/13 23:41:08 McBhAkU8
あげ

19:名無しさん@ピンキー
07/08/14 03:21:07 pVVqKxa5
年下と聞いてショタだと思った俺は死ねばいい。

20:名無しさん@ピンキー
07/08/14 05:19:34 BoXc61Tf
男主人・女従者に当たるかどうか微妙ですが、場所を借りさせていただきます。
ファンタジー
怪我人と看護師
エロ未到達

 こんにちは。ニーナです。
 今日は田舎も田舎の超ど田舎の、町と呼ぶのもはばかられるごくごく小さくて質素な町に来ています。
 道も舗装されていないし、お洒落なブティックなんかも当然見当たりません。
 だけど私は大丈夫。
 なにを隠そう、私は超エリートな看護師なので、お洒落にもお化粧にも全く興味が無いからです。
 嘘です。嘘をつきました。
 興味はあるけど手を出す勇気が無いだけです。
 だって今更お化粧なんかしたところで、同僚に「あらニーナ、あなたって女装癖があったのね」なんていわれるだけなのは目に見えているからです。
 もう何もかも諦めました。私は仕事に生きるのです。
 車が上下にガタガタと揺れます。
 資料の地図が正しければ、私の目的地は川沿いの水車小屋に隣接するレンガ造りの二階建て。
 大変な怪我をして体が不自由な友人がいるので、住み込みでその人の面倒を見てくれと言うご依頼です。
 男の人の家で住み込みなんて嫌でしたが、私の一月の給料を軽く越える特別手当に目がくらんで引き受けてしまいました。
 まぁ、大変な怪我をしているなら襲われる心配もないでしょう。
 なにより私は体は小さいけど力は凄いと同僚からも評判で、私の倍の体格の男性くらいだったら軽々と持ち上げられる力持ちです。
 それにしても、田舎町の町外れには本当に何もありません。
 果たして私が来るまでの間、その大怪我をした男性はどうやって暮らしていたのでしょう。
 きっとこの依頼をしてきた男性が、苦しむ友人のお世話をしていたに違いありません。なんと美しい友情でしょう。私は愛とか勇気とか希望とか友情とか、そういった鳥肌もののお話が大好きです。

 そんな妄想に一人浸っていると、ようやくレンガ造りの家が見えてきました。
 あれは果たして家なんでしょうか? 私にはただの廃墟に見えます。
 っていうか、屋根に盛大に大穴が開いています。これでは大変な雨漏りです。漏るというより、雨が普通に吹き込んでくるんじゃないでしょうか。住人の神経を疑います。
 ひょっとしたらとんでもない貧乏人で、食べる物にも困る暮らしをしているんじゃないでしょうか。
 だとすると、この依頼の特別手当は何処から出ているんでしょう。依頼を持ってきたご友人でしょうか。
 まぁ、私は私の口座にお給金さえ入っていればそれで満足なので、お金の出所については詮索しない事にしましょう。
 私は車から軽やかに降り立つと、とてつもなく陰鬱な空気を発散している廃墟のドアの前に立ちました。
 呼び鈴は何処でしょう。
 見当たりません。表札もありません。本当に誰か住んでいるのか疑問になります。私は何か間違えたんでしょうか?
 しまった、ここは田舎町です。呼び鈴なんてハイテクな物があるなんて、都会的な私の思い込みです。
 きっとこの町ではノックが主流なのでしょう。私は早速、ガッチリとした扉を拳でどんどんと叩きました。
 驚きました。扉は鉄です。って言うか電子ロックです。物凄く近代的です。そのくせ窓は壊れて開いています。本当に防犯する気あるんでしょうか。
 っていうか電子ロックの前に呼び鈴を付けやがれと思います。私は非常に腹立たしく思います。
 腹立たしく思った瞬間、家の中で物凄い音がしました。何かがひっくり返ったような、そんな音です。
 私の怒りが天罰を与えてくれたのでしょうか。
 やっぱり神様は存在します。


21:名無しさん@ピンキー
07/08/14 05:21:27 BoXc61Tf

 そして、扉は開かれました。
 しかし何も見えません。あぁ、見えていました。これは男性の胸部でしょうか。見事に発達
していますが、同じく見事に痣だらけでひどい有様です。しかも裸体です。
「なんだ、おまえ」
 上から声が降ってきました。
 それもかなり上の方からです。
 思わず見上げて、私は呆然となりました。
 あり得ません。育ちすぎです。大きすぎます。二メートル超えてませんかこの人。
「で……でっかい……」
 思わず声に出てしまいました。
 第一印象はでっかい、第二印象派頭悪そう。今のところいい印象は一つもありません。あ、
気付きました。今気付きました。巨大な絆創膏や前髪が鬱陶しくて分かりにくいですが、結構
な色男です。たぶん私よりもきれいです。
 男の人は真っ直ぐに私を見下ろしています。
 怪我人だと聞いていましたが、それほど深刻な怪我ではなさそうです。
 安心なような、残念なような、これでは私の腕の見せ所がありません。
 しかし、どうして私を見ているのでしょう。一目惚れ? いえいえ、そんなはずありません。あぁ、分かりました。私がいつまでも質問に答えないからに違いありません。
「あ、本日からお世話になります、ジョージア医療介護サービスの者です。こちらはフランシ
ス様のお宅で間違いございませんでしょうか?」
「いらん。帰れ」
 ばたん。
 扉が閉まります。

 なんでしょうこの展開。門前払いの典型例みたいなことになってます。
 私は慌てて扉に取り付き、再びガンガンと扉を叩きました。ついでにドアノブもがちゃがち
ゃやりますが、全く開く気配がありません。
「あのー! フランシスさん! せめてお怪我の具合だけでお確認させていただけませんか! 
ご友人の方からのご依頼で、決して怪しい者ではないんですー! フランシスさーん!」
 再びドアが開く気配を感じ、私はぱっとドアから離れました。
 すると、中から物凄く嫌そうな顔をしたフランシスさんが出てきます。
「……友人?」
「はい。えぇと、ご近所のパン屋さんのウィルトス様です。ご存知ですか?」
「……待て、確認する」
 ばたん、と、また乱暴にドアが閉じられます。
 とてつもなく失礼な方です。っていうか、全然大怪我じゃありません。だったら普通の家政
婦を雇った方が遥かに安上がりのはずです。
 私がいらいらしながら待っていると、また、中でひっくり返る音が聞こえました。
 背が高いとバランスも悪いんでしょうか。
 それとも身長は無関係で単に彼のバランスが悪いだけなんでしょうか。

 三度目にドアが開かれた時、今度こそそこに人はいませんでした。
 おや、と思うと、足元に気配があります。見下ろすと、フランシスさんがうつ伏せに倒れて
いました。
 ここまで這ってきたような様相です。
「あの……フランシスさん?」
「添木が折れた……立てん」


22:名無しさん@ピンキー
07/08/14 05:22:43 BoXc61Tf
 なんの事でしょう、と失礼ながらひょいとフランシスさんをまたぎ越し、私はぐったりと伸
びたその脚に手を触れました。
 確かに、ズボンの中に添え木があるようです。そして、確かにそれは折れていました。転倒
した弾みに折れたのでしょうか。これはなんとも一大事です。
「ズボンを破かせてもらいますよ」
「だめだ」
 無視してズボンを破きます。
 私は思わず絶叫しそうになりました。
 膝が紫色に変色し、大きく晴れ上がっています。っていうか見るからに折れています、完全
に折れています。しかし鮮やかな折れ方をしています。人為的に誰かに折られた物でしょうか。
危険なお仕事の香りがしますが、私は怪我人には分け隔てなく接する潔癖な看護師です。

 早速持ち前の剛力を発揮して、フランシスさんを担ぎ上げます。
 そこで気付きました。あり得ません。肋骨が折れてます。右腕も折れてます。左腕にはなに
やら大仰に包帯が巻かれています。
 私の看護師魂が激しく燃え上がりました。
 この人はなんとしても、私が完治させて差し上げます。
「ベッドルームはどこですか」
「最近の看護師は力があるんだな……」
 ぼんやりと呟くフランシスさんの指し示す先に、その巨体をのしのしと運びます。
 やけにきちんの整っているベッドに根転がし、腰に下げた作業バックから取り出したマイ裁
ちばさみでフランシスさんのお洋服を容赦なく切り裂きます。
 よく見れば随分な高級品ですが、治療の前では衣服などただの邪魔者に過ぎません。
 見れば見る程大怪我でした。なんでこれで動き回れるのか疑問です。
 一体何があったのか聞きたくなる所ですが、余計な質問はしないのが我がジョージア医療介
護サービスのモットーです。
 私は看護師として機械的に、かつサービス精神旺盛に患者さんの完治に勤めればいいのです。
 私の迅速勝つ華麗なる治療テクニックに身を任せながら、フランシスさんはぼんやりと天井
を眺めながらなにか考え込んでいるようでした。
 何をしても痛がらない患者と言うのは初めてですが、やりやすくて非常に優秀な患者さんだ
と思います。
 世の中の患者さんがみんなこうだといいのにと切に思わずにはいられません。
 そして手当てがすっかり終わり、私がばたばたと治療セットを片付けていると、ようやく私
の存在を思い出したようにフランシスさんが私を見ました。
「……使えるな、看護師」
 そのたった一言に、私の自尊心はこの上ない満足を覚えました。
 そうです、私は有能で使える看護師なのです。

「あの、ところで私、ニーナって名前なんですが……」
「知らん。寝る」
「はぁ、おやすみなさい……」
「お前もだ。添い寝しろ」
 当たり前のように言ってきます。
 なんでしょうかこの男。激しい怒りを覚えます。
「では、電話で娼婦を呼んで起きます。骨折を悪化させたくなかったら、ことをいたす時は控
えめにおねがいしますね」
「何の話だ。俺はおまえに言ってるんだ。小さくて抱き心地が良さそうだ。きっとよく寝られる」
「申し訳ありませんが、当社ではそういったサービスは行っておりません」
「来い」
「嫌です」
 格好良く言い捨てて、私はひらりと横暴な好色男に背を向けました。
 その途端、背後で起き上がる音が聞こえます。


23:名無しさん@ピンキー
07/08/14 05:23:30 BoXc61Tf
 まさかと思い振り返ると、やはり彼は立ち上がっていました。しかも足をしっかりと床に付
けて仁王立ちしています。
 そして一歩足を踏み出すなり、がくん、とバランスを崩して盛大にその場に転倒しました。
 私が来た時に家の中から聞こえていたのは、彼が折れた足で歩こうとして失敗している音だったのです。

「な―何やってるんですかあなた! 折れてるんですよ足! 膝! なんでわざわざ治りが
遅くなるような事してるんですか!」
「歩けるから歩く。それだけだ」
「歩いちゃいけないんですよ! 歩けちゃいけないんですよ!」
「何故だ」
「治りたくないんですか!?」
「歩かなければ何も出来ん」
 一人暮らしの男性です、確かに歩かなければ何も出来ないのは確かです。
「ご……ご友人の方がいらっしゃったりはしなかったんですか?」
「友人はいない」
「そんな! だって私をここによこしたのはパン屋の―」
「あれは友人なんかじゃない。もっと汚いものだ。失礼な」
 友人よりも汚い関係ってなんでしょう。
 それにしても、どうして友人でもない存在のために大金を支払って看護師をあてがったりす
るのでしょう。パン屋さんってそんなにお金持ちなものなんでしょうか。
 なんだか疑問ばかりです。
「と、とにかく。これからは私がお側にいますから、なにか欲しい物とか、したい事あったら
言ってください。おトイレもしばらくは尿瓶です」
 言いながら、私は再びフランシスさんをベッドに寝かせてあげました。
 するとなんと、フランシスさんは立ち去ろうとする私の手をガッチリと掴んだのです。
「添い寝しろ」
「まだ言いますか!」
「でなければ歩く」
 これは脅し文句のつもりなのでしょうか。
 こんな時のための拘束具ですが、私の本能がこいつには何をやっても無駄だと告げています。
 ベッドを引きずって歩きそうな気がします。さすがにそこまではしないでしょうが、何故か
絶対に大丈夫と言う確信が持てません。

 物凄く悩んでから、私か仕方なくこの要求を受け入れる事にしました。
 あの足で動き回られたら、私ははらはらしすぎてきっと胃潰瘍になるに違いありません。
「……変な事したら、睡眠薬血管にぶち込みますからね」
「変な事ってなんだ」
「胸を揉んだりお尻を触ったりです」
「どちらもないように見える」
「血管に十リットルの酸素ぶち込みますよ」
「そんなに入るのか」
「物の例えです」
 例えか、とフランシスさんが繰り返し、なにやら考え込むように目を閉じました。
「よし、わかった」
「わかりましたか」
「だから来い。眠いんだ」
 ぐいぐいと腕を引っ張られ、私はフランシスさんの腕の骨折を気にしながら仕方なくベッド
に横たわりました。


24:名無しさん@ピンキー
07/08/14 05:25:29 BoXc61Tf
 ジョージア医療介護サービスは、患者さんの完治のためなら多少無理な注文は聞き入れる事
が多いのです。

 折れた腕で人形のようにぎゅうっと抱きしめられ、私は内心慌てました。
 こんな風に男性と密着したのは恐らく父親以来です。
 ときめいて恋に落ちたりしたらどうしましょう。
「……おまえ、ひょっとして女か」
「―はい?」
「男だと思っていた……やわらかいな、おまえ」
 怒りに任せて眠たげな横っ面をひっぱたきます。
 ばちん、といい音がしましたが、フランシスさんは特に痛がる様子もなく、動けないように
更にガッチリと私の体を抱きこみました。
 腕に力を入れすぎです。これでは明らかに骨に悪影響です。
「フランシスさん! 腕に圧力をかけちゃだめです。腕は胸の上に置いて動かさないでくださ
い。固定しますよ」
 すぅ、と気持ち良さそうな寝息が聞こえました。
 信じられません。もう寝てます。とても人間とは思えません。
 しかも、がっちりと私を抱きこんでいる腕は一向に外れません。
 仕方ないので、私はその腕の中で必死になって身じろぎし、なるべく骨折部に負担がかから
ない位置を見つけて落ち着きました。
 こんな時、小さな体は便利だと思います。
 それにしてもこの大怪我、フランシスさんの動きたがりの気性を考えると、完治には随分と
かかってしまいそうです。
 そんな事を思いながら、私はいつしかうとうととし始めていました。
 とても信じられない事ですが、フランシスさんの腕の中は暖かく、寝心地は抜群です。
 寝てしまっていいでしょうか。
 この際寝てしまいましょう。
 こうして、私はこの家の期間限定の同居人となったのです。


                          切らせていただきます

前半の改行ミスは脳内で修正しておいていただけると助かります……申し訳ない

25:名無しさん@ピンキー
07/08/14 08:46:10 37amxVG7
GJ
こっちで外伝が続くことになったんですか

26:名無しさん@ピンキー
07/08/14 10:33:22 0kgsF4lA
をー、サイコなフランシスがラブコメの主人公になるのかwww
続きに超期待


27:名無しさん@ピンキー
07/08/14 18:32:59 wgj/RJK2
GJ!

外伝て、本編はどこのスレにあるんだ?


28:名無しさん@ピンキー
07/08/14 18:58:00 37amxVG7
ボーイッシュスレ
まあフランシス氏が脇役(?)で登場してるくらいだけど

29:名無しさん@ピンキー
07/08/14 23:06:18 yFQSw6hl
見慣れた名前見て茶噴き出した
続きが楽しみだ GJ!

30:名無しさん@ピンキー
07/08/15 09:36:25 02rnI7u8
GJGJGJ!!
以前ここでちらっと話題に上って読みにいったクチな自分。
震えるほど面白かった。こっちでも投下してくれて嬉しいです。
フランシス可愛いよフランシス。ニーナがんばれ。

31:名無しさん@ピンキー
07/08/15 10:24:52 Q4VCod+F
うわー!GJ!!
ニーナかわいいよニーナ!
フランシスも気に入ったのかな。
女の子だけど 。

続きキボン!

32:名無しさん@ピンキー
07/08/15 22:27:13 aabgmCMq
エルヴェとツィラの人に書いて欲しい

33:名無しさん@ピンキー
07/08/17 09:25:11 awkDlaYQ
上げる

34:名無しさん@ピンキー
07/08/17 22:57:38 5Zc3nN/0
陛下に会いたい……

35:名無しさん@ピンキー
07/08/18 01:05:42 eiU3yT5R
ユリシスの人のサイトが403エラーなんだけど閉鎖した?主従同盟もそのままだし。
ここできくのはよくないかもしれないけど他にきくとこないから。
閉鎖したのかどうかだけでも誰か知ってたら教えて(´・ω・`)

36:名無しさん@ピンキー
07/08/18 01:12:04 56588JFj
閉鎖したお

37:名無しさん@ピンキー
07/08/20 20:59:42 BNjdY9AS
閉鎖したんだ。教えてくれてありがとう

38:名無しさん@ピンキー
07/08/20 22:07:57 iAuykbWz
もっとSMチックで変態的なのも欲しい

39:名無しさん@ピンキー
07/08/20 22:32:48 kVYFiCog
>>38
同意

40:名無しさん@ピンキー
07/08/20 23:12:34 9hH4pkIw
それは言い出した38が書かなきゃw

41:名無しさん@ピンキー
07/08/21 04:40:25 XYQhsaBg
>>35
つヒント 同人モバイルサーチ

42:名無しさん@ピンキー
07/08/21 10:00:03 z3VPyhVO
>>38
SMっつーと、お仕置きプレイとかだろうか・・・。
そっち方面には詳しくないので
ことこまかに詳しく解説してもらおうか

43:名無しさん@ピンキー
07/08/22 04:18:51 TvIs7YRk
とうかまち

44:名無しさん@ピンキー
07/08/22 11:49:28 cf1wpVVu
言葉責めくらいなら萌えるけど、肉体的に虐めて何がいいのかわからん。


45:名無しさん@ピンキー
07/08/22 11:56:30 Le/E0zO/
URLリンク(anu.s7.x-beat.com)

46:名無しさん@ピンキー
07/08/24 02:02:30 FqH21Qpr
age

47:名無しさん@ピンキー
07/08/26 20:40:55 OFtUaaFN
待ちつつ保守

48:名無しさん@ピンキー
07/08/28 23:36:00 6UnAQHiX
あげる

49:名無しさん@ピンキー
07/08/30 00:15:08 8iLRU/Cz
前スレ645
乙でした!

50:名無しさん@ピンキー
07/08/30 09:33:30 P36bNEE6
前スレ645 ありがとう、本当にありがとう。

前スレ、埋まったようです。

51:名無しさん@ピンキー
07/09/02 21:37:53 uJpsLgXA
age

52:名無しさん@ピンキー
07/09/06 04:37:57 Fq74XicA
エロなしですが、我儘主人×新米護衛。保守代わりに投下します。

53:我儘主人×新米護衛 1
07/09/06 04:39:14 Fq74XicA
 主に対面するのは初めてのこと。無礼のないようにと思えば思うほどに緊張は高まっていく。
 跪いて頭を垂れ、ヴォルテールは緊張から息を飲む。
「へえ」
 傍らに立つヴォルテールの父が話し終えると主となるべき青年は緩く波打つ髪を気だるげにかきあげた。
「それで、僕の護衛をしてくれるわけだ」<BR>
 明らかに見下した目で青年はヴォルテールを見た。ヴォルテールの心を失望が覆う。
「この、どう見ても子どもにしか見えないか弱い少年が」
 ゆったりと背もたれにもたれたまま、青年は腕を組んで嘲笑う。
「若。見かけで判断してはなりません。こう見えてそこらの大人には負けはしませんぞ」
 父の反論に青年は鼻で笑う。
 仕方がないのかもしれない。主となるべき青年は他人を信用がするのが嫌いなのだと父が言っていた。そして、信頼を得るのは難しいかもしれないがヴォルテールなら出来るはずだとも言ってくれた。
「お、おそれながら申し上げます」
 ヴォルテールには父の期待に応える義務がある。父の期待に応え、主の信頼を得る―それは後継者としての責務だ。
「確かに私では父には及ばぬかもしれません。しかし―」
 体は反射的に避けようとする。けれども、主への忠義が辛うじてヴォルテールをその場へ留まらせた。
「僕は発言を許した覚えはないし、顔を上げてかまわないとも言っていないよ」
 ぽたりと髪を伝って滴が落ちる。青年は机に置かれた水差しの中身をヴォルテールへぶちまけたのだ。
「申し訳ございません」
 じわりと涙がこみ上げるがヴォルテールは必死にそれを堪えた。
「僕がなんと言おうと君はきかないんだろうね」
「ええ。若には申し訳ありませぬが、私の主は若の父君。逆らえはしません」
「……そこの濡れた子犬は番犬くらいにはなるのかな」
 青年が父に全幅の信頼を寄せているのはヴォルテールにもよくわかった。
「君が言うなら子犬の一匹くらい飼ってもいい。―但し、僕には絶対に逆らうな」
 ヴォルテールは跪いて頭を垂れたままだ。
「いいね、子犬君。さあ、顔を上げてごらん」
 しばらく迷い、ヴォルテールは意を決して顔を上げた。
 明るい色の柔らかそうな髪と深い色の瞳。少し冷たそうではあるが、青年の容姿は彫刻のように美しく整っていた。
 ぼんやりと青年を見上げ、ヴォルテールはその容姿に見惚れた。


54:我儘主人×新米護衛 2
07/09/06 04:41:57 Fq74XicA
「僕に忠誠を誓うことを許可してあげるよ」
 くるりと椅子ごと青年がヴォルテールへ体を向ける。
 目の前に靴を差し出され、ヴォルテールは意味が分からず困惑する。それを見た青年は不快げに眉をひそめた。
「一から躾てやらなきゃならないのか。面倒だな」
 靴の爪先がヴォルテールの額をこつんと小突く。
「申し訳ありません」
 よくわからないなりに主の機嫌を損ねたことにだけは気づき、ヴォルテールはうなだれる。
「まあいい。僕の身辺警護をするのは許してあげる。但し、その目障りな姿を必要以上に僕の前に晒さないでくれ」
 ひらひらと手を振られ、ヴォルテールはまたしても首を傾げる。
 助けを求めるように見上げた父は楽しそうでいて困ったような表情で傍観している。
「だから」
 苛立たしげに青年は髪をかきあげ、ヴォルテールを睨みつけて舌打ちをした。
「いいかい。僕が呼びつけない限り、僕の前にその間抜け面を晒すなと言ってるんだよ。今すぐ、僕の前から消えてくれ。濡れた顔して、目障りなんだ」
 自分が水をかけたことを棚上げして怒り出す青年を理不尽に思うよりも、ヴォルテールは青年の意図を理解できない自分自身に失望する。このままではいつまで経っても父の期待に応えられそうにない。
 とりあえずと部屋から出たヴォルテールは青年の目に触れぬように護衛をするための作戦を唸りながら考え出すのであった。


おわり


またスレに活気が戻ること祈ってます。

55:名無しさん@ピンキー
07/09/06 19:18:51 Vl1GCMoE
ヴォルテールはつるぺただと理解した
主はそこをなじりながらも愛していくんだね

…ツンデレ?

56:名無しさん@ピンキー
07/09/07 03:03:55 P3PPmj1L
ツンデレな主とそれに健気に尽くす女従者とか最高だろ
主は鬼畜臭いくてもよし

57:名無しさん@ピンキー
07/09/08 19:17:10 J5NNsgIV
age

58:名無しさん@ピンキー
07/09/12 20:56:54 0UaoKDmv
上げ

59:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:44:08 APGDIMYu
人少ない・・・

60:名無しさん@ピンキー
07/09/14 22:42:43 B/Bhvj/L
そうだな

61:名無しさん@ピンキー
07/09/15 02:16:40 EtwlYuvI
ほしゅ

62:名無しさん@ピンキー
07/09/16 23:04:05 0yTaoNuy
ほ、、ほしゅ?

63: ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:32:37 Xh+0GDP/
お久しぶり&新スレでの初投下

いつもの二人ではなく、今回は別カプ
少なくとも、デュー×ファムよか主従色は濃いかと

エロ無しですが、暇潰しになれば幸い

64:王都騎士団【感謝の気持ち】1 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:33:57 Xh+0GDP/

 王都騎士団赤河隊は、重装備兵を主力とするため、古くから女性騎士の入隊は禁止されていた。
 実際、男性騎士の間でも、大人一人分の重さの装備で行軍出来る者は、限られている。

 だがしかし、赤河隊が見習い騎士達に敬遠されているかと言うと、そうでもない。
 精鋭部隊である黒旗隊に次いで、志願者が多いのは、華やかな場面に出る事が多いからとも言えよう。

 それはさておき。
 赤河隊内部で、一番の不満を挙げるとすれば、やはり、男ばかりのむさ苦しい隊、と言った声だろう。
 付属養成学校は男女混合。他の隊も、多少割合は違えども、女性騎士が所属している。
 気を使わなくて良い反面、華が無いと言うのも困った物である。

 特に兵卒は、棟の掃除から下着の洗濯まで、担当を決め割り振られている。食事だけは騎士団棟の一角にある食堂で賄われるが、それ以外は全て、自分達でこなさなくてはならない。
 これはどの隊にも当てはまるのだが、側遣えの侍女を持てるのは、私室を当てがわれる副隊長補佐以上の者のみである。



 そして。



「本日よりお世話を申しつかりました。ミラルド・カッツェと申します。よろしくお願い致します」

 シルヴァリア・ハリスが、赤河隊副隊長に就任した時、挨拶に現れた侍女を前にして、うろたえる余り執務机に膝をぶつけたのも、有名な話である。



65:王都騎士団【感謝の気持ち】2 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:34:49 Xh+0GDP/

 シルヴァリアは当時二十八歳。
 十八歳で赤河隊に入隊してからと言うもの、家族や親戚以外で女性と話した事は皆無に等しい。
 その家族も、母親や年老いた乳母以外に女性はなく、はっきり言えば女性に免疫がないのである。

 しかし、そんな事はミラルドの知るところではない。

 彼女は仕事熱心で良く働いた。
 細かい所まで気がつくし、常に笑顔を絶やさない。
 シルヴァリアが、長期に渡る演習から戻って来た時などは、どんなに夜が遅くても出迎えるほどに、ミラルドの働きぶりには目を奪われる物があった。

 そのお陰か、半年もすれば、シルヴァリアも、ミラルドに対しては打ち解けられるようになっていた。
 さほど変わらない、二十七歳という、彼女の年齢のお陰もあったのかも知れない。



 そんなある日。

 三年前から付属養成学校の講師としても働くシルヴァリアは、今年黒旗隊に入隊したばかりのデュラハム・ライクリィを連れ、城下街へと出ていた。
 シルヴァリアにとってデュラハムは、教え子と言うよりも年の離れた弟のような存在だった。
 事実、デュラハムはシルヴァリアよりも十四歳年下で、講師に就任した最初の一年を、養成学校のルームメイトとして過ごした事もあり、他の生徒達とは違ってプライベートな付き合いも多い。
 この日も、デュラハムの入隊祝いと称して、久々に二人で食事でもしようということになったのだ。
 言い出しっぺがデュラハムなのは、今更言う間でもない。

66:王都騎士団【感謝の気持ち】3 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:36:43 Xh+0GDP/
 冬の空気は冷たいが、穏やかに晴れているからか、さほど寒さを感じない。
 先を歩くデュラハムの後に続きながら、シルヴァリアは賑やかな城下に目を細めた。

 ここ数日、新しく赤河隊に入隊が決定した見習い騎士達の世話で、城下に降りる暇もなかった。
 デュラハムに誘われなければ、暫くは執務室に篭りっぱなしになっていただろう。

「見ろよ、シルヴァ」

 まだあどけなさを残すデュラハムは、立ち並ぶ露店の一角を指差す。
 新年を間近に控えた街は着飾り、一風変わった品物も多く並んでいた。
 デュラハムが示したのも、その中の一つ。王国内では出土の少ない銀を扱う店であった。

「ほう…銀細工か」
「帝国製だってよ。……格好良いなぁ」

 細やかな細工のナイフは、革の鞘と共に置かれ、目の玉が飛び出る程ではないにしろ、相応の値がつけられている。
 柄の部分にも装飾が施されていたが、店の主人に断りを入れ、手に取ってみると、しっくりと馴染む。
 単なる装飾品ではなく、実用的に作られている辺り、軍国の異名を取る帝国製と言うのも頷ける。

「俺も俺もっ」
「振り回すなよ」
「しねぇよ!」

 せがむデュラハムにナイフを渡し、シルヴァリアは他の商品にも目を向けた。
 帝国から流れて来た物以外にも、様々な銀で作られた品がある。
 ふと、その中の一つに目を奪われたシルヴァリアは、引き寄せられるようにしてそれを手に取った。

67:王都騎士団【感謝の気持ち】4 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:37:31 Xh+0GDP/

 デイジーを象った髪留め。

 掌サイズだが、その装飾は見事な物で、比例して他の髪留めよりもやや値が張る。

「どうした、シルヴァ?」
「ん? あ、いや」

 ナイフを戻し、他に面白い物はないかと物色していたデュラハムに、不意に声を掛けられ我に返る。
 手にしていた髪留めにデュラハムの視線が向けられたが、シルヴァリアは平静を装って、髪留めを元の位置に戻した。

「あれ、買わねぇの?」
「……買わん」

 ニヤニヤと悪戯小僧のように自分を見上げるデュラハムに、軽い睨みを利かせてみる。
 もっとも、その程度でデュラハムの表情が変わる筈もなく、デュラハムは髪留めとシルヴァリアを交互に見ると、芝居掛った仕草で頭を左右に振った。

「俺の事は気にしなくて構わねぇのに」
「誰がお前の事など気にするか」
「あれ? 彼女にプレゼントじゃねぇの?」

 冷たく言い放つと、今度は不思議そうに此方を見る。
 シルヴァリアは小さな溜め息を吐くと、店の主に「邪魔をしたな」と声を掛け、デュラハムを置いたまま歩き出した。

「ちょ、待てよ、シルヴァ!」

 慌てて後を追って来るデュラハムが隣に並ぶ。
 頭一つ分は背の低い少年を一瞥し、シルヴァリアはフンと鼻を鳴らした。

「何だよ。シルヴァ、彼女いねぇの?」
「俺に女がいなくて悪いか」
「や、悪かねぇけどさ」

 態と突き放した物言いで返すと、デュラハムは少し決まりが悪そうに口篭った。

「だったら……何で、髪留めなんか見てたんだよ」
「別に。他意はない」
「……ふぅん」

 本気で機嫌を損ねたとでも思ったか、それ以上デュラハムが口を開く様子はない。
 大人気ないかと内心反省しながらも、シルヴァリアは、暫く無言を貫いた。

 とは言え、その程度で居心地の悪くなる二人ではない。
 二年前までは日常茶飯事の遣り取り。
 食事を始める頃にはもう、二人はいつものように他愛ない雑談を交すようになっていた。



68:王都騎士団【感謝の気持ち】5 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:39:04 Xh+0GDP/


 シルヴァリアが執務室に戻ると、暫くして扉がノックされた。

「どうぞ」
「失礼致します」

 涼やかな声が聞え扉が開かれる。
 いつもならエプロンドレスを身に付けているミラルドが、私服姿で姿を現した。

「どうかしたのか」
「お戻りになるのをお待ちしておりました」

 問掛けに、ミラルドはにっこりと笑う。
 意図する事が分からず、不思議そうな表情を浮かべるシルヴァリアに、笑み顔のミラルドは小さく頭を下げると、顔を上げた。

「暫くのお暇を頂きましたので、発つ前にご挨拶をと思いまして」
「あぁ、今日だったのか」
「はい」

 間もなく新年を迎える。
 新しい年を王都で迎える者も少なくないが、側遣えの者の大半は、故郷に戻る。
 ミラルドもその中の一人で、シルヴァリアも以前から話は聞いていた。

「わざわざ私を待たなくても構わなかったのに」
「いえ」

 素直な想いを口にすると、ミラルドは口許を綻ばせ、からかい混じりに目を細めた。

「私が居ない間、お部屋を汚されては敵いませんもの。留意して頂かないと」

 その言葉に、シルヴァリアは一瞬目を丸くしたが、直ぐに笑いを溢すと、クツクツと肩を震わせながら席を立った。

「そう心配するな。その手の事であなたを煩わせた事はないだろう?」
「そう言えば、そうでしたね」

 くすくすと笑うミラルドの髪は豊かな黒髪。いつもはネットに収まっているそれは、今日ばかりは下ろされて、ミラルドが笑う度に柔らかに揺れた。

「それでは、私はそろそろ」
「ああ。気を付けて行けよ」
「はい。ハリス様もお風邪など召されませぬよう」

 浅く会釈を残したミラルドが部屋を出る。
 背後の窓から差し込む、冬の日差しに黒髪が輝き、シルヴァリアは、暫しそれに見惚れていたが、ミラルドの姿が見えなくなると、小さな溜め息を吐いて、また執務に戻る事にした。




 何度も言うが、赤河隊は女性と接する機会が少ない。
 こと、シルヴァリアに於いては、実直な性格も関係してか、女性関係には人一倍縁が無かった。

 だからこそ。
 ミラルドに対する己の感情に、気付かなかったとも言える。

 少なくとも、この時までは。



69:王都騎士団【感謝の気持ち】6 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:40:27 Xh+0GDP/

 王都内にある生家で新年を迎えた翌日、シルヴァリアは早々に、騎士団の己の執務室に戻ってきた。
 名家の出とは言え、シルヴァリアは分家の身。更に言えば、騎士団に入隊した時から、一切の煩わしい関わりを断っていた。

 閑散とした、人気のない棟はいつもと違うが、執務に没頭してしまえば気にならない。
 そうやって、二刻ほどの間、春先の合同演習に向けて、書類と睨めっこをしていたシルヴァリアだったが。

 ふとした拍子に感じた違和感に、ペンを走らせる手を止めた。

 大した事のない違和感だが、やけに胸の内に引っ掛かる。
 小さな棘のような違和感は、やがて徐々に大きくなって、その時になって初めて、シルヴァリアは喉が乾いている己に気が付いた。

「あぁ……そうか」

 気付いてしまえば何の事はない。
 いつもは喉が乾く前に、ミラルドがお茶の支度をしてくれていたのだ。
 ただ、それだけ。

 シルヴァリアは席を立つと、給仕室へと足を向けた。
 今は副隊長補佐のデール・ギブソンも休暇をとっている。お茶を煎れるぐらいは自分でするしかない。

「そうか……彼女がいないと、こうも不便なんだな」

 フと溢れた笑みは、僅かに苦い物が混じってはいたが、それ以上にミラルドの有り難みを感じていた。

 シルヴァリアは、ミラルドが煎れたお茶を拒んだ事はない。
 それどころか、彼女にお茶を煎れるよう指示した記憶もない。

 今まで気にした事がなかったが、思い返せば、ミラルドは常にシルヴァリアの望むタイミングでお茶の支度をしてくれていた。
 いくら職務に忠実とは言え、多忙な自分を相手に、そうそう都合良くお茶の支度など、直接の部下であるデールにも出来るかどうか。

「絶対無理だな」

 そう思えば思うほど、ミラルドがいかに自分を気に掛けてくれていたのかが分かる。
 こんな些細な事だからこそ、それが良く分かってしまうのだ。
 例えそれがミラルドの職務だとしても、彼女以上に自分を気遣ってくれている人間もいないだろう。

「……何か、礼をするべきかも知れんな」

 給仕室の前に立ち、ぽつりと呟いたシルヴァリアは、ふいに顔を上げると、足早に今来た道を戻り始めた。



70:王都騎士団【感謝の気持ち】7 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:41:27 Xh+0GDP/


 執務室の扉がノックされ、シルヴァリアは返事と共に顔を上げた。

「どうぞ」
「失礼致します」

 予想通りの相手の声に、シルヴァリアは軽い咳払いをして、慌てて机の引き出しに手をやった。
 扉を開けて入ってきたのは、簡素な服装のミラルドである。

「新年おめでとうございます、ハリス様。本年も引き続きよろしくお願い致します」
「あぁ、こちらこそ」

 見慣れたエプロンドレスを身に付けていると言う事は、今日からミラルドも仕事に戻るのだろう。

 シルヴァリアから遅れる事三日だが、まだ新年休暇を得た者達の殆んどは戻っていない。
 ミラルドは比較的早い方と言える。

「生家はどうだった」
「お陰様で、みな健勝でした。両親も兄も、皆様に宜しくとのことです」
「それは何より」
「ハリス様もお代わり無くて何よりです」
「む……そ、そうか」

 他愛ない話をしている間も、シルヴァリアの手は、引き出しの取っ手を握ったり話したり。
 中に入っている物を渡すだけだと言うのに、いまいちタイミングが計れない。

「いつ、こちらにお戻りに?」
「二日に」
「まぁ、そんなに早く」
「色々と、執務があるのでな」


 半分上の空で口を開くシルヴァリアだが、ミラルドは気にした様子もなく、それどころか執務が忙しいと思ったのだろう。
 歯切れの悪いシルヴァリアの口調に、邪魔をしてはいけないとばかりに、「それでは……」と頭を下げて出て行こうとする。

 その姿を目にした瞬間、シルヴァリアはガバと引き出しを開いた。

「ま、待て。カッツェ!」
「……はい?」

 勢いはそのまま大声となり、ミラルドはびっくりしたのか、目を丸くして振り返った。

「その……ちょっと、待ってくれ」
「は……はい」

71:王都騎士団【感謝の気持ち】8 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:43:13 Xh+0GDP/

 無性に緊張するのは何故なのか。
 その理由すら考えられないシルヴァリアだったが、決意を固めたのは二日も前の話。
 ここで後には引けない。
 むしろ先に伸ばす方が、精神衛生上、良くないに違いない。

「その……あなたに、言わなくてはならない事が……」
「……はい」

 くるりと向き直ったミラルドは、不思議そうに目をぱちくり。
 シルヴァリアは大きく一つ深呼吸をすると、紙包みを掴んで立ち上がった。

「あなたが俺に仕えるようになって半年だが……その……俺は、今までそれが当然の事のように受け止めていた」
「それは当然のことですから」
「いや、違うんだ」

 机を迂回し、ミラルドの前に立つ。
 ミラルドはやはり不思議そうに口を開いたが、シルヴァリアは首を左右に振って、話の続きを始めた。

 拳に固めた左手の中は、じんわりと汗ばんでいて気持ちが悪い。

「当然と言えば、そうだが……俺は感謝しているんだ。だが、それを、今まで口にした事がなかった。だから……少しでも、それを伝えたくて……」
「……はい」

 もごもごと口篭った口調だが、ミラルドはシルヴァリアの言葉に笑みを浮かべる。
 柔らかなその表情に、シルヴァリアは一瞬息を飲んだが、次の瞬間、ぐいと右手を彼女の前に差し出した。

「あの……?」
「嫌なら捨ててくれて構わん。だが、今は受け取って欲しい」

 早口でそう告げたシルヴァリアは、押し付けるようにして、ミラルドに紙包みを手渡す。
 ミラルドは戸惑ったように、紙包みとシルヴァリアを交互に見ていたが、やがて、そっと紙包みを広げた。

「これは─」

 銀細工の髪留めは、デュラハムと共に出掛けた日に見付けた物である。
 そもそも、女性に物を贈ったこともないのだ。
 何が喜ばれるかなど、真剣に悩んだこともないし、この髪留めもたまたま見付けたに過ぎない。

 もちろん、ミラルドはそんな事は知らないが、シルヴァリアはがりがりと頭を掻いて、ミラルドから視線を外した。

「あなたに似合うだろうと思って……。こんな形でしか、感謝の気持ちを表せないが、今までの礼だ」
「そんな……お気持ちだけで充分ですのに」

 手の中の物を見つめたミラルドの声は、困惑の色が混じっている。
 しかしシルヴァリアは、有無を言わせぬ口調で、矢継ぎ早に口を開いた。
 ただし、視線は逸らしたままである。


72:王都騎士団【感謝の気持ち】9 ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:44:38 Xh+0GDP/

「いや、それだと俺の気が済まないんだ。……あなたがいなくて、この三日、俺は不便で仕方なかった。こんな物で礼の代わりにするのも、どうかと思ったんだが」
「…………」
「……受け取ってもらえるか?」

 沈黙を続けるミラルドに、シルヴァリアは不安で仕方ない。

 恐る恐る視線を移すと、ミラルドもゆっくりと視線を上げ、それからにっこりと微笑んだ。

「ありがとうございます、ハリス様」
「……え」
「大切にします。……本当に、嬉しいです」

 両の手で包み込むようにして髪留めを握り締めたミラルドの言葉に、シルヴァリアは心底安堵して、深い深い溜め息を吐いた。

 ミラルドは早速髪留めを付けると、指の先でそっとなぞる。
 微笑みに満たされた表情は、彼女の言葉が嘘でない事を物語っていた。

「それにしても……」
「ん?」

 ふと視線を戻したミラルドに、シルヴァリアは己の視線を交わらせる。
 ミラルドは少し可笑しそうに笑いながら、口許を緩めた。

「ハリス様がご自分の事を「俺」とおっしゃる姿を、初めて見ました」
「え!? あ……」

 悪戯に笑うミラルドに、そう言えば、と思い出す。

 執務の時は常に「私」で通しており、「俺」はプライベートの時でしか使用しない。
 何と無く身に付いた言い回しだったが、ミラルドには新鮮だったのだろう。

 それだけ緊張していたのか、と、今更ながらシルヴァリアは恥ずかしくなったが、ミラルドは気にした様子も見せず、くすりと笑みを溢した。

「それでは、仕事に戻ります。お茶の用意をして来ますね」
「あ、あぁ……ありがとう」

 一礼して立ち去るミラルドに、シルヴァリアは暫し呆けていたが。

 緊張していたせいか、妙に喉が乾いている。
 それをミラルドが察したかどうかは分からないが、相変わらずのタイミングだ。

「……敵わないな、彼女には」

 苦い笑みを浮かべて呟いたシルヴァリアは、ゆるゆると首を振って席に戻る。
 目を閉じると、先ほど一瞬だけ目に止まった、黒髪に栄える髪留めが瞼の裏に焼き付いていて。

 シルヴァリアは、本日二度目の安堵の吐息を漏らした。




73: ◆KK1/GhBRzM
07/09/18 01:48:19 Xh+0GDP/
以上です

番外編のつもりでしたが、この二人の方がスレの主旨には則してるような気が…orz
次回はエロ有りを持ってきます

74:名無しさん@ピンキー
07/09/18 05:25:12 lCFKJAir
おぉ、待ってました!王都騎士団!!
しかし、若かりし日のシルヴァがこんな純情だったとはwww
次はエロありとの事ですが、ここからどうなったらそんな素早い展開になるんだろう…
wktkして待ってます。

75:名無しさん@ピンキー
07/09/18 23:15:38 8Y0qGvHq
うぉーニヤニヤが止まんねぇー
同じくwktkして待ってます!

76:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:54:10 VK6WQCZ9
>>20続き

 こんばんは。ニーナです。
 今は夜です。夜中です。
 こんな夜中でもフランシスさんは眠りません。パソコンが要るんだと騒ぐので仕方なくベッ
ドルームまで重たいモニターと本体を運び込み、指示通りに配線をしてから一週間、フランシ
スさんは上機嫌で一日中パソコンに向かって過ごしています。
 昼だろうと夜だろうと、眠い時に寝て起きていたい時に起きているのが彼のスタイルらしい
のですが、とても不健康な行為なのであまり好ましい事ではありません。
 ですがお仕事だと言われてしまえば私に口を出す権利はなくなります。悔しいですがこれば
かりは仕方ありません。
 お手洗いは尿瓶です。
 お食事は作って運んであげます。
 未だに名前は呼んでもらえませんが、最近では呼びつけられる頻度が上がっているように思
います。
 最初の頃は全部自分でやろうとして直りかけた骨を折ったりと酷い有様でしたが、もうそん
な事も起こりません。
 仕事は増えましたが看護師として誇らしい限りです。
 この一週間で一度だけ、一人お客さんがありました。
 すらりとしていて背の高い、赤茶けた髪も愛らしい大人な印象の男性です。
 お話を伺ってみるとこの男性が私をフランシスさんの所に派遣した張本人らしく、お仕事ご
苦労様ですとおいしそうなパンを頂きました。
 そうです。私をここに派遣したウィルトスさんは、この町で人気のパン屋さんなのです。
 何やらフランシスさんに御用があるとの事なので寝室までご案内すると、フランシスさんは
物凄く不機嫌そうでした。
 ですがウィルトスさんが茶封筒をちらつかせると急に上機嫌になり、自分から椅子を勧める
始末です。
 封筒の中身が気になったのであえてその部屋に留まっていると、フランシスさんに追い出さ
れました。不満です。
 しかしジョージア医療介護サービスは決してお客様のプライバシーを侵害しません。
 その日私は大人しく退室し、今日に至るまでその袋の中身を知る事はありませんでした。

 そうです。
 つまり今日。正確には数分前。私はその袋の中身を目撃してしまったのです。
 それは、真夜中にも関わらずフランシスさんの部屋から物音と光がこぼれていたので、早く
寝ろと注意をしに行った時の事でした。
 ドアノブを握ろうとした私の耳に苦しげな呻き声が飛び込み、私は慌てて部屋に飛び込みま
した。
「どうしましたフランシスさん! どこか痛むんですか!」
 と、実に颯爽とした物です。
 しかしそこで私が目撃したのは、見事に勃起した立派な生殖器を自ら掴み、そう、自慰をな
さっている最中のフランシスさんの姿だったのです。
 思わず股間のナニを凝視して固まった私を、しかしフランシスさんは無視して事をおし進め
ました。
 そして大きな体をびくりと震わせ、亀頭部にあてがっていたティッシュをくるくると丸めて
側の込み箱に放り込みました。
 そして股間のナニをきっちりしまい、そこでようやく私を見て言ったのです。
「なんだ、見てたのか」
 私は驚愕しました。
 戦慄しました。
 そして私は気付いたのです。
 ベッド一杯に広げられている色鮮やかな写真の存在に。
「これか? 俺の女神だ。おまえも見たいか?」
 そう、無邪気な笑顔を浮かべたフランシスさんの言葉に、私は自分がひどく傷つくのを意識
しました。
 しかもあろう事か私は、その差し出された写真をまじまじと見てしまったのです。
 どう見ても少年でした。しかしフランシスさんが女神と言うからには女性なのでしょう。
 幸せそうに笑っていたり、不機嫌そうに怒ったりしている姿はとても可愛らしくはつらつと
していて、もしも少年だったら私が放っておかないところです。


77:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:54:44 VK6WQCZ9
「俺の腕の傷、酷く痕が残るって言っただろ。この刻印を刻んでくれた女だ。俺を踏みつけに
して、俺を殴り、俺を銃で撃って俺の骨を折った女だ」
「そ―その傷全部、その人にやられたんですか!?」
 驚愕して叫んだ私に対して、フランシスさんが自慢げに笑います。
「凄いだろう。こんなこと出来る女は他にいない。俺は女には勃たないがこの女にだけは勃起
する。たまらない。あぁ、愛しい、愛しい俺の女神」
 形のいい唇から色艶のいい舌を出し、フランシスさんがうっとりと写真を舐め上げます。
 たまらず、私は部屋から飛び出しました。
 そして今、私はフランシスさんに与えられた自分の部屋で、一人しくしくと枕をぬらしてい
るのです。
 ショックです。衝撃です。男性の生殖器を凝視してしまった事も、見られても平然としてい
るフランシスさんの図太さも、写真を舐める変態振りも。
 そして何より、フランシスさんが写真の人に恋をしている事実に衝撃を受けた自分自身がシ
ョックで仕方ありません。
 これじゃあまるで、私がフランシスさんに恋をしているみたいです。横恋慕です。
 いやいやそんな事があるわけありません。
 私は依頼人に特別な感情を抱く事は決してない、潔癖で完璧なジョージア医療介護サービス
の敏腕看護師なのですから。

 ぐすぐすと泣きながら一晩を過ごし、私は泣きはらした目のままぐったりと仕事に取り掛か
りました。
 栄養バランスがよく、なおかつ消化にいい朝食を用意して、フランシスさんの部屋に運びます。
 ノックをして部屋に入ると、フランシスさんはまだ起きていました。
 昨晩から一睡もしていないのでしょうか。真剣な表情でキーボードを叩いています。
 その、テーブルの空きスペースにトレーを置き、私は無言で踵を返しました。
 しかしその腕を、前触れも無くフランシスさんがつかみます。
「なんですか?」
 と平静を装って振り返ると、フランシスさんはいかにも困ったと言うような、そんな表情で
私を見ました。
「泣いたのか」
「泣いてませんよ」
「目が赤いぞ」
「花粉じゃないですか?」
「どうして泣いた」
「泣いてませんってば」
「言え。誰に泣かされた」
 あんたですよあんた。あえて原因を上げるとすれば、あんたが美形なのに変態でしかも少年
の様な美知らぬ美少女を愛してるのが原因ですよ。
 言ってやりたいのを必死に堪え、私は再度なんでもありませんと繰り返した。
「関係なくないぞ。看護師だろう」
「看護師にだってプライバシーはあるでしょう」
「知らん。俺のものだ」
「私はジョージア医療介護サービスの社員で、依頼主はウィルトスさんです。ここはただの勤
務地であってフランシスさんはただの患者です」
 困り顔から、不機嫌顔に。
 ぶんぶんと腕を振るも、フランシスさんが放してくれる様子はありません。


78:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:55:19 VK6WQCZ9
「放してください」
「なんで泣いてる」
「だから泣いてないって―!」
 ぽたりと、暖かなしずくが落ちました。
 なんて事でしょう。本当に泣いています。しかも涙は後から後から溢れてきて―。
「な、泣いて……ないてなんか……」
 だめです。声まで震えてきました。泣きそうです。っていうかもう泣いています。
「う……うぅ、う……ふぇえぇえ!」
 なんて惨めなんでしょう。こんなのってあんまりです。
 産まれて初めての一目惚れの相手が“こんなの”で、しかもあまりといったらあんまりな振
られ方です。
 まだ愛の告白もしていなかったのに。
 一目惚れの事実にも気付いていなかったのに。
 振られた瞬間に気が付く愛なんて悲恋物の恋愛小説だけで十分です。
「もう! 全部フランシスさんのせいです! なにもかもフランシスさんのせいです! この
変態性欲者! マゾヒスト! 潜在的同性愛者!」
「それとおまえが泣くのとなんの関係がある」
「否定しないんですか!」
「すれば泣きやむのか?」
「私が泣こうが喚こうがあなたには関係ないじゃないですか! あなたなんか写真の人の事で
も考えながら自慰にふけってればいいんです!」
 わぁああぁん、と子供のような泣き声を上げる私を前に、いよいよフランシスさんは困り果
てたように、それでも私の手は離さずに沈黙しました。
 一分か二分くらいでしょうか、ただ私の鳴き声だけが無駄かつ滑稽に響きます。
 そしてふとひらめいたように、フランシスさんが顔を上げました。
「分かった。さては生理だな」
「なんでそうなるんですか! セクハラです!」
「女は生理になると情緒不安定になるんだろう」
「生理が原因じゃなくてホルモンバランスの変化が原因なんです! 生理なら全部の女性が情
緒不安定になるなんて思わないでください!」
「そうなのか」
「そうなんです!」
「まいったな。本当にわからん。降参だ。教えろ」
 なんなんでしょうこの男。
 どういう育ち方をしたらこういう性格に育つんでしょう。
 そんなに聞きたいなら教えてやります。驚愕して狼狽えて困り果てればいいんです。
「好きです」
 ずずず、と鼻水をすすりながら、まったくムードの欠片もない愛の告白を決行し、私は自由
になる方の腕でごしごしと涙を拭いました。
「なにがだ」
「フランシスさんが好きなんですよ! それなのにあなたが他の人を好きだって知っちゃった
から泣いてるんですよ! 傷ついてるんですよ! 乙女の失恋劇ですよ!」
 何を考えているのかよく分からない表情で、フランシスさんが私を見ます。
 ガン見です。凝視です。なんですかまったく。そんなに私の泣き顔がみっともないですか。
「おまえ……俺を愛してるのか?」
「あ、あ、愛って……! ま、まだそんな……そこまでは」
「なんだ違うのか」
「愛してます!」
 理解しました。
 この人は言葉をそのままの意味で受け取ります。
 乙女の恥じらいとか全く考慮していません。
 仕方なく半ば逆ギレ気味に断言すると、フランシスさんはようやく私の手を放し、スライド
式のベッドテーブルをぐいと足元に押しやりました。


79:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:55:54 VK6WQCZ9
 再び私の手を掴み、引っ張って乱暴にベッドの上に引っ張り上げます。
 ベッドに横たわっているフランシスさんに横抱きにされるような形になり、迂闊にもされる
がままになっていた私は瞬く間に赤面しました。
「な、な、な……なにを―!」
「動くな」
「ちょ、ちょちょ―ちょっとま! 待ってください! 待って!」
 私の制止を無視して、もぞもぞと私の胸元を探ります。
 ぷつん、と看護服のボタンが一つ外され、次の瞬間、部屋中に痛そうな音が響きました。
 音を立てたのはもちろん私の手の平です。
 顔面をひっぱたかれたフランシスさんは一瞬呆気に取られたように唖然とし、直後ににたり
と―本当ににやりなんてレベルじゃなく―笑いました。
「勃った」
「は……はへ?」
「驚いた。もっと早くに試せばよかった。おまえも小さくて、ふわふわしてて、たまらなく抱
き心地がよかったから、ひょっとしたらとは思ってたんだ」
 ずいと、フランシスさんの危ない笑顔が迫ります。
 次の瞬間には唇を塞がれていて―ファーストキッスは犯して貪るような、優しさの欠片も
ないものでした。
 生暖かい舌がぬめぬめと私の口の中を這い回り、私の舌を絡めとってちゅうちゅうと吸い上
げます。
 きもちいい物ではありません。ですが妙にくらくらします。
「ふ―フランシスさん! やめてください! ちょっと、私初めてなんです! だから告白
したら即時セックスで気持ちよくってラブラブなんてことにはならないわけで! 聞いてます
かフランシスさん! フランシスさん!?」
 私の言葉を完全に無視して、剥ぎ取るように看護服の上を脱がされ、私はささやかながらも
形がいいと自負している乳房を両腕で隠しました。
 その手を恐るべき腕力で引き剥がされ、フランシスさんの舌が私の乳房をべろりと舐めます。
「うひゃあぁ! ちょ、ちょっと、ちょ―本気ですか! 本気なんですか!? 落ち着いて
ください! おちつぃ……いぁあぁ!」
 喋ると意思に反して変な声が出てしまいます
 しかし黙っていると行為を黙認している事になってしまいます。
「ふ、ふわ、ふわぁあぁ……! そ、そんなに、舐め……なめなぃ……ひゃぁあぁ!」
 ちゅうっと音を立ててフランシスさんが私の乳首に吸いつきます。
 舌でべろべろ舐められて、ころころと転がされて、押しつぶされてまた吸われて。
 き―気持ちよすぎてどうでも良くなってきました。
 いつの間にか両腕が自由になっています。
 それはつまり、フランシスさんも両手が自由と言う事で―。
「女を抱くのを初めてなんだ」
 ど―童貞ですか? それは嘘でしょう。
 ぐったりとなった私の体をひょいと持ち上げ、フランシスさんは向かい合うようにして私の
体を抱き寄せました。
 あれよあれよと言う間にズボンが脱がされていきます。
 こんなに手馴れた、しかも手の早い童貞なんて許しません。認めません。
「って―だ、だ、だだ、だめです! フランシスさん! 本当にそっちは―!」
 フランシスさんの大きな手が、すべすべと私のお尻を撫で回しました。
 指が回りこむようにして私の股間をまさぐり、恥ずかしながら溢れ出していた分泌液をにち
ゃにちゃと音を立てます。


80:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:56:31 VK6WQCZ9
「なるほど、こうなるのか」
「ほ、本気で童貞なん、ひぅ―! うわ、うわぁ、あ、なかに、入って……だめぇえ!」
「女はここが感じるんだろう?」
「きゃん!」
「犬のまねか。上手いな」
 何が悲しくてこんな状況で犬の鳴きまねしなきゃならないんですか。
 あなたが無遠慮にぐにぐにと―そ、そんなとこ、を、お、押しつぶさないでぇぇ!
 って……あれ?
 ちょ、ちょっと。
 なんでお尻の穴なんていじくって―うわ、ゆび! ゆびが!
「き、汚い! フランシスさ―ちょ、ゆゆ、ゆび! ぬひてぇ……」
 なんでしょうこの感覚。
 体に力が入りません。
「あう、あぁ、ん……ひん。ふぁ、あぁ……ふら、んしす……さぁん」
 意思に反して体が小刻みに震えます。
 なんだか、お腹の辺りになにか、硬いものが―。
 そんな事を思っていると、フランシスさんが私を快楽で責めさいなんでいた手を止め、ズボ
ンをごそごそとやり始めました。
 そして、布地の下から引きずり出された―凶器。
 無理です。
 いえ物理的にどうという話ではなく、精神的に不可能です。
 こんなものが私の中に入るわけありません。
 しかし顔面蒼白で硬直した私を気にかける様子も無く、フランシスさんは負傷しているはず
の両腕で軽々と私を持ち上げました。
 元々痛覚が存在していないとしか思えない人なので今更驚きませんが、この期に及んで傷の
悪化を心配している自分の看護師精神に感服します。
「処女か? 看護師」
「しょ、しょ……処女ですよ! あ、あたりまえじゃないですか!」
「そうか。処女は痛がるんだってな」
 しまった。
 その事実をすっかり失念していました。
 痛いのは嫌です。ですがなんか、もう絶対に後戻りできない所まで無理やりつれてこられて
しまった感じです。
 どうしましょう。どうすればいいんでしょう。
「我慢しろ」
 なんでこの人、常に命令口調なんでしょう。
 いえ、いい加減なれもしましたが、なんといいましょうか、こういう時くらい優しくなって
も良さそうなものなんですが、乙女の甘い幻想でしょうか。
 しかも我慢しろって―。
「あとでケーキ買ってやる。好きだろ? 甘いもの」
 ケーキごときで処女を売り渡す女と思われていることが衝撃ですが、しかしケーキは確かに
魅力的です。
 決してケーキが原因ではありませんが私が気合を入れて目を閉じると、フランシスさんはギ
ンギンに勃起している赤黒い凶器でぐちぐちと入り口のあたりを擦り上げました。
「は、はぁ……ん、んん……あう、あ……」
「入れるぞ」
 はい―と答える間もなく、フランシスさんは乱暴とも言える動きで私の中にずぶずぶと押
し入ってきました。
 い―いた、いたたたた……た、た?
 ……あまり痛くありません。
 いえ、確かに痛いですが、引き裂かれるような―だとか、脳髄を突き抜ける―だとか。
「……あれ?」
「どうした」
「いえ……そんなに痛くない、かなぁ……なんて」


81:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:57:06 VK6WQCZ9
「そうか。我慢強いな。看護師」
 我慢強いと言うか、これが音に聞く個体差というやつなのでしょう。
 これはラッキーです。幸運です。これならば、フランシスさんの体に負担をかけずに済みそ
うです。自分で動いてしまいましょう。
「看護師?」
「ふ、フランシスさんは怪我人ですので、激しい運動は控えたほう、が……いいので、僭越な
がら私の方で、出来る限りの事を、いたします」
 フランシスさんのお腹あたりに手を置いて、おそるおそる腰を浮かせ、またゆっくりと腰を
落としてみます。
 よし。大丈夫。やっぱり痛くはありません。
 やっぱり男の人は、こういうのは激しく動いた方が気持ちいいんでしょうか。
 肋骨に負担をかけないように慎重に、動きます。
 こつを掴んでくると滑らかに動けるようになり、ちらと様子を伺うと、フランシスさんは気
持ち良さそうに息を乱して快楽に浸っているようでした。
 なんでしょうこの優越感。
 これはいい。なんだか楽しくなってきました。こんな私は変態でしょうか。
 いえいえそんなはずありません。患者さんに気持ちよく、心地よく、快適に過ごしていただ
く事を何よりも喜びとする看護師精神の表れなのです。
「は、は……あ、はぁ……んん……っは、んぁ」
 経験は無いながらも、ちょっと踏み込んだところまで書いてある大人の恋愛小説を愛読して
いた私です。
 三度に一度はきゅっと締めるなんて難しい事は出来ませんが、それでもがんばって締め付け
てみたりします。
 ふと、思い出したようにフランシスさんが私の体に触れました。
 腰をすべすべとなでさすったり、太腿をむにむにしたりしています。
 あ、ちょっと気持ちいいかもしれません。
「あ、だ、だめ……そんな、さわったら……じょ、じょうずに動けな……」
「努力しろ」
 きゅ、とフランシスさんが私の乳首をつまみます。
 くりくりと転がされて、なんだか下半身がきゅうってなって―。
「い、いく……! うわ、うわぁあ……!」
 じゅぷじゅぷと音を立てる結合部にフランシスさんの指が伸びて、指先で充血して敏感にな
ってる突起をくすぐります。
 そんな風にされるものだから、つま先が丸まって、握り締めた拳も解けなくって、な、涙が
出てきました。
 って、いつの間にかフランシスさん、腰動かしてませんか。
 そんなに下から、え、えぐられた、らあぁ―!
「うあぁ! あ、ふあぁ! ふら、ん、しすさ……だ、だめ、あぁ、け、けが、が……!」
 不意にフランシスさんが上半身を起き上がらせ、がっちりと私の腰を掴みました。
 ギリギリまで引き抜かれ、叩きつけるように突き入れられます。
 そうすると奥の方に何か当たって、なんだか痛くて、だけどじんじんと、きゅうきゅうとし
てしまって―。
「出すぞ―!」
「ま、ま―だだ、だめです! なか、なかは……!」
 って、思い切り生で入ってるのに、今更外で出そうが中で出そうが同じでしょうか。
 なんたる不覚。
 なんだか妙に冷静な思考とは裏腹に、私は乱れに乱れて髪を振り乱して喘ぎました。
 ぐ、と奥まで押し込まれ、フランシスさんが動きを止めます。


82:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:58:15 VK6WQCZ9
 どくん、と中で大きく脈打って、熱ささえ覚える暖かいものがじんわりと広がっていくのが
わかりました。
 ぞくぞくと体が震え、いつの間にか私の理性を焼ききっていた絶頂の余韻に浸ります。
 結合部からどろりと白い液体が溢れ、私はその様子を見ながら、シーツを取り替える手順を
考えていました。

 ことを終えて後片付けに動き回る私を、フランシスさんは興味深そうに観察していました。
 曰く、愛を交わした直後にそんなに事務的に動き回る奴は始めて見た―だそうで、あの行
為に愛があったとは到底思えなかった私はその言葉にほんの少し驚きました。
 しかし、女を抱くのは初めてじゃ無かったんでしょうか。
 女じゃなくて男なら抱いた事があるとかいう落ちだったらどうしましょう。
 なんだか恐ろしくなったので聞いていました。
「そんなに沢山、男性とは経験があるんですか?」
「ああ。特に少年はいい」
 今ほど聞かなければよかったと後悔した事はありません。
 私は一連の会話をなかった事にしてフランシスさんを着替えさせ、シーツを取り替えて洗濯
機に放り込みました。
 一仕事を終えて一息つくと、ようやく気恥ずかしさや後悔が襲ってきます。
 やりました。
 やってしまいました。
 関係を持ってしまいました。しかもなんだか、正常とは言いがたい関係を気付いてしまった
ような気がします。
 セックスフレンド?
 肉奴隷?
 女神とまで賞した写真の女性を、別の女に告白されて一回肉体関係をくらいで諦めるような
潔い人間には思えません。
 泥沼です。
 どろどろです。
 しかしセックスがあんなに気持ちいいものだとはおもいませんでした。
 あれははまります。だだはまりです。
 しまったアフターピルを飲んでおかなければ、妊娠したらわりと洒落になりません。
 フランシスさんが責任を持って結婚するとか言い出す人では無い事は確かです。
「……まぁ、こんな第一歩もありか」
 肉奴隷から始まる愛もあるかもしれません。
 私はよし、と小さく気合を入れ、ひそやかにフランシス陥落作戦の決行を心に決めたのでした。

 以上です。
 お付き合いありがとうございました。

83:名無しさん@ピンキー
07/09/20 15:54:03 rgWYABuU
昨日ボーイッシュスレの過去ログ読みふけってきたばっかりだw
ニーナ可愛いよニーナ GJGJGJ!

84:名無しさん@ピンキー
07/09/20 18:40:40 u0XFladw
GJ!!大爆笑したッッ
ニーナがフランシス落とすとこまで見てみたいものです

85:名無しさん@ピンキー
07/09/20 18:52:25 Iu9IEUPj
ニーナの恋が実ると良いですね。GJ!

86:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:28:34 HAc8oOjT
ニーナが可愛すぎてやばい

87:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:19:43 3N0x6Q+O
ニーナまってましたww
GJです!!
ボーイッシュスレの時から
あなたの作品が大好きです!
次回の投下、楽しみにしてますww

88:名無しさん@ピンキー
07/09/22 06:42:48 KRhgoFhs
age

89:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:15:23 OD7aWZ80
よっしゃ、ニーナオッケエェェェ!!

90:名無しさん@ピンキー
07/09/25 15:05:57 nnRdGchs
90

91:名無しさん@ピンキー
07/09/27 22:19:51 /453W0fB
保守

92:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:35:07 vfpSnHBo
新作待ち

93:名無しさん@ピンキー
07/10/04 12:01:41 Yk5VhmgG
あげ

94: ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:16:26 /ysLN0ey
>>64-72の続編

短くまとめる才能がないため、結局前後編にorz
今回はエロ無しなので、興味のない方は申し訳ないがスルーでお願いする

95:王都騎士団【愛しい人・前編】1 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:17:49 /ysLN0ey


 仕事を持つ身でも、二十五を過ぎれば行き遅れ。三十を過ぎれば貰い手もない。そんな周囲の「常識」の中、ミラルドは二十八の誕生日を迎えた。

 親兄弟はのんびりとしたもので、ミラルドが結婚しようがどうしようが、本人の好きにさせておけ、が基本スタンスだったし、ミラルド自身も、結婚なんて自分には縁がないと思っていた。
 しかし、周囲はそう思わなかったようで。

 王都騎士団侍女長の、サリー・ヘッグマンから、見合いの話を持ち出されたのは、誕生日の翌日だった。

「私が、ですか」

 不意の話に目を丸くするミラルドの前で、サリーはにこにこと笑いながら頷いた。

「そうよ。ブランド子爵の末息子さんなんだけど、中々の好青年でね。少し年はいってるけど、ホラ、あなたもアレじゃない?」

 中途半端に言葉を濁すサリーに、ミラルドは苦い笑みを浮かべる。

 ─行き遅れって言いたいなら、言えば良いじゃないですか。

 喉元まで出掛った言葉を、すんでの所で飲み込んで、ミラルドは曖昧な相槌を返した。

「はあ……」
「それにほら、あなたのお母様もトレバー男爵家のお家柄でしょう? 決して釣り合わない話じゃあないと思うの」
「ええ……」
「会うだけでも会ってみてはどうかしら。悪い話じゃないわよ」
「まあ……」

 正直、あまり乗り気ではなかったが、不幸なことに断る理由が思い付かない。
 なにより、サリーの押しの強さは侍女達の間でも有名なところ。

 ミラルドは歯切れの悪い、曖昧な相槌を返しながら、ふと、彼に話せばどうなるだろうかと考えた。



96:王都騎士団【愛しい人・前編】2 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:19:37 /ysLN0ey

 それを実行したのは、もう夕方から夜へと、空が色を変えた時刻だった。

 王都騎士団・赤河隊副隊長は、つい先程貴族評議会の議会室から戻って来たばかりで、疲れた様子で持ち帰った資料を執務机に置いた。

「お帰りなさいませ」
「あぁ、ただいま」

 微かに笑みは浮かべているが、シルヴァリアの顔に疲労の色は濃い。
 ここ数ヶ月、隣国から流れて来る難民が後を断たない。
 元々、さほど豊かではない国だったが、今年は近年稀にみる不作の年で、その影響が出ているからだろう。

 それだけならば良いのだが、流れてきた難民達は、各所で混乱を招く原因になっていると言う。

 王族評議会でも、難民の処置をどうするかが議論の対象になっており、その下の貴族評議会では特に、隣国に近い貴族達から苦情が寄せられているのだと、ミラルドも人伝に聞いたことがある。

 基本は王都を守護する騎士団だが、王国内のあちこちに支部もあり、貴族達の私設騎士団とも繋がりがある。
 今回の件は、その私設騎士団と、遊撃隊である黄鐘隊で混乱を収める方向に働くことになるようだったが、その一部に赤河隊が同行する事になったらしい。

 ミラルドは用意していたお茶を置くと、じっとシルヴァリアの様子を伺った。

 いつも穏やかなシルヴァリアだが、評議会から戻った時は、決まって疲れたように口を開かない。
 実際、頭脳労働は得意でも好きではない性格らしく、長期遠征から戻った時の方が、彼は口数が多かった。

「ハリス様」
「ん?」

 ミラルドの視線に気付いたシルヴァリアが、資料から目を外して顔を上げた。

「……お疲れのようですね」
「まぁな。だが、王都に混乱を招く前に、事態を緩和させるのが俺達の仕事だ。愚痴を溢している暇はないさ」

 フと浮かべた笑み顔に、ミラルドは少し眉尻を下げる。

 今年の初め、ミラルドが生家から戻って以降、シルヴァリアはミラルドの前では、仕事の顔を見せることが少なくなった。
 いつもなら「私」と自身を呼んでいるが、二人きりの時は「俺」と言葉を崩すのが、その際たる証だろう。

 その事が、ミラルドの中で変化をもたらしていた。
 だからこそ、聞いてしまったのかも知れないが。

97:王都騎士団【愛しい人・前編】3 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:21:23 /ysLN0ey

「あの、ハリス様」
「何だ?」
「……もしもの話ですが」

 そう前置きするミラルドに、シルヴァリアは不思議そうな眼差しを向ける。
 いくら距離が近くなったとは言え、気軽に雑談を交すほど、二人は親しい間柄ではない。
 どちらかと言えば、シルヴァリアとの距離は、付属養成学校の生徒達の方が近いだろう、と、ミラルドも感じている。

 だが、聞かずにはいられない。

「もしも、私がお暇を頂く事になれば……ハリス様はお困りになられますか?」

 なるべく婉曲に。言葉の真意を悟られぬよう、ミラルドが尋ねる。
 問われたシルヴァリアは、少しばかり眉を顰めたが、すぐに笑みを浮かべると、残っていたお茶を飲み干した。

「それは今すぐ、と言う話なのか?」
「いえ。仮に、の話ですが─」
「正直に言えば、困るな」

 問い返され、やや口篭ったミラルドに、やはり笑みを向けたままのシルヴァリアは、きっぱりと言い切った。

「美味いお茶が飲めなくなるし、何より俺の仕事が一つ増える」
「と……言いますと?」
「お茶が飲みたいと、わざわざ侍女に言いつけなければならないだろう?」

 茶目っ気混じりに笑うシルヴァリアが、軽くカップを持ち上げる。
 その様子に、ミラルドはくすりと笑いを漏らして、ティーポットを手に取った。

「なるほど。私は専属のお茶係な訳ですね」
「もちろん、それだけではないがな」

 とぽとぽと掲げられたカップにお茶を満たす。
 侍女の仕事は数多いが、仕える相手に負担を掛けてはならないのが鉄則。

 ミラルドは意識的に行っていた訳ではないが、今までにも何度か、お茶の煎れ方とタイミングをシルヴァリアに褒められた事がある。
 その点だけで言うならば、お茶のために呼び付けられることのないミラルドは、他の侍女達に比べて有能とも言える。

「あなたは良く気が付くし、仕事も早い。何より、俺の気付かぬ部分で、想像以上に支えられていると感じている。俺にとっては、大事な人だよ」

 シルヴァリアは何気無く言ったつもりだろう。
 しかし、その言葉を聞いた瞬間、ミラルドは、つくり、と、胸の内に何かが刺さったのを感じた。

98:王都騎士団【愛しい人・前編】4 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:23:13 /ysLN0ey
 それは決して嫌な物ではなかったが、何故だか無性に気になってしまう。
 動揺、と呼んでも良いかも知れない。

 その動揺を悟られぬよう、ミラルドはお盆にポットを戻すと、微かな笑みを取り繕った。

「それでは、私はお暇を頂けませんね」
「無理にとは言わんよ。あなたにもあなたの事情があるだろう。どうしてもと言うなら、俺は止めん」
「そう……ですか」
「何か切っ羽詰まった事情でもあるのか?」
「……いえ」

 二杯目のお茶を飲みながら、シルヴァリアは穏やかに笑う。
 その様子に、ミラルドは益々動揺を激しくした。

 否。それは確かに動揺ではあるのだが、明らかにさっきとは種類が違う。
 妙な苛立ちが胸の奥深くに湧き起こり、さっき刺さったばかりの何かを、ぐりぐりとえぐり出そうとしているのを感じる。

 心地良かった筈なのに、苛立ちがそれを消そうとしているのに気付いて、ミラルドは思わず眉をしかめた。

「それでは、ハリス様は、私がお暇を頂いてもよろしいのですか?」

 言葉に知らず棘が含まれる。
 そう気付いた時には、既に言葉は口から溢れ、シルヴァリアまで届いてしまっていた。

 シルヴァリアはと言うと、不意に不機嫌そうな口調で問われ、不思議そうに目を見開いている。

 呆けたようなシルヴァリアの顔を見ているうちに、ミラルドは段々と苛立ちを募らせる。
 何故、そんなに腹が立つのか、自分でも良く分からなかったが、抑えの利かない苛立ちは、ミラルドから冷静さを奪っていた。

「もしかしたら、結婚するかも知れないんです。私」

 きっぱりと、今までにない強さで告げると、シルヴァリアの目は益々開かれて、ミラルドを凝視した。

「ですから、こうしてお茶を煎れられなくなるかも知れません」
「それは……いつ……」
「さぁ。早ければ来月にでも」

 適当なことを言っている。
 だが、ここまで来て引くことは出来ない。
 冷静さを欠いたミラルドは、お盆を手にすると、深々と頭を下げた。

「執務のお邪魔をしてしまい、申し訳ありません。失礼します」

99:王都騎士団【愛しい人・前編】5 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:24:45 /ysLN0ey
 固く強張った表情を見られぬよう、顔を上げると背中を向けて扉へと向かう。

 悔しい。

 何故かその一言が、胸の内を掠めて行ったが、ミラルドは足を止めようとはせず、扉に手を掛けた。

 だが、

「待て、ミラルド!」

 不意に強い口調で呼び止められ、次の瞬間、ミラルドの耳に、ガラスが割れるような音が届いた。
 その音よりも、初めて名前を呼ばれた事に驚いたミラルドが足を止めると、今度は強引に肩を掴まれた。

「な……」
「あぁ、くそっ!」

 驚きで目を白黒させたミラルドの耳に、焦ったような呟きが届く。
 が、それを理解するよりも早く、ミラルドは何か暖かな物に包まれるのを感じた。

 ミラルドを抱んだのは、シルヴァリアの大きな体だった。

 二人の間に挟まれたお盆が床に落ち、僅かな飛沫と陶器の破片が床に散る。
 だが二人は、それに気を回す余裕も無く、シルヴァリアは固くミラルドを抱き締め、ミラルドは何が起こったのか分からず、されるがままになっていた。

「それならそうと、早く言ってくれ」
「な……にが」
「あなたが結婚なんかしたら、俺は困る」

 頭上から振る声は、今までに聞いた事がないほどに、悲痛の色が濃い。
 懇願にも似た声で紡ぎながら、シルヴァリアの腕に力が込められ、ミラルドは息苦しさを感じた。

「副団長の立場なら、俺は止めん。だが、一人の男としてなら、話は別だ」
「ハリス様……苦しい」
「……あぁ、すまん」

 何かとんでもない事を言われたような気もするが、取り合えず息苦しさを何とかしようと、ミラルドはシルヴァリアの胸許に手を掛ける。
 それに気付いたシルヴァリアは、少し腕の力を緩めたが、ミラルドの体を離そうとはしなかった。

100:王都騎士団【愛しい人・前編】6 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:26:04 /ysLN0ey

「あの……」
「本当に、結婚するつもりか?」

 戸惑うミラルドだが、シルヴァリアは少し首を傾げて、ミラルドの顔を覗き込む。

 ミラルドが顔を上げると、間近にあるシルヴァリアの灰色の瞳は、真っ直ぐにミラルドを捉えていた。

「……かも知れない、と」
「それは……困る」

 途端、フとシルヴァリアの顔に苦笑が浮かぶ。
 その時になって、ようやく冷静さを取り戻したミラルドは、事の次第に頬を赤く染めてうつむいたが、シルヴァリアもそれ以上に顔を赤くして、唇を噛み締めた。

「自分でも呆れる話なんだがな、ミラルド」
「……はい」
「俺はどうやら、俺が考えていた以上に、あなたを必要としているらしい」
「と、言いますと……」
「どう言えば良いのか分からないが……」

 さっきまでの勢いは何処へやら。視線をさ迷わせ、シルヴァリアは口の中でもごもごと何事かを呟く。
 しかし、その声は酷く篭っていて、ミラルドの耳に届いても、言葉までは分からない。

 はっきりしない態度に、ミラルドは訝しげな面持ちで、シルヴァリアを見上げた。

「ハリス様?」
「あぁ、いや……その……」

 言い淀む様は、到底、戦斧の似合う重装備兵とは思えない。
 立ち居振る舞いは謙虚で礼儀正しいが、その容貌は武骨で大きな岩山を想像させる。
 そんなシルヴァリアが、少年のように顔を真っ赤にしているのを見て、ミラルドは思わず笑いそうになった。

 だが、

「ミラルド」

 意を決めたかのように、シルヴァリアが表情を固くする。
 真摯な眼差しに、溢れそうになった笑いは引っ込められて、ミラルドは息を飲んだ。

「俺は、あなたに恋している」
「……え」
「だから、あなたが他の男の物になるのが許せない。あなたの幸せを願う事も、俺には出来ない」

 強い眼差しと強い口調。
 それを受けたミラルドの胸の奥を、何か大きな物が突き刺さった。

「……こんな事を言われて、あなたは迷惑だろうが」

 目を伏せたシルヴァリアが、抱き締めた腕の力を強くする。
 しかし、先程のような性急さはなく、むしろ優しく包み込まれるような抱擁に、ミラルドは自分の両腕をシルヴァリアの背に回した。

101:王都騎士団【愛しい人・前編】7 ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:27:29 /ysLN0ey
 突き刺さった何かはじわじわと溶け、酷く暖かな物が胸の内に広がっていく。
 身体中の細胞一つ一つが、その暖かな物に歓喜の声を上げている。
 その声に従って、ミラルドは両の手に力を込めた。

 迷惑などではない。
 それどころか、慕う相手に想われていた事実は、ミラルドにとって喜び以外の何物でもない。

 薄ぼんやりと自覚はしていたのだ。
 シルヴァリアの為に働ける事が喜びだと、そう想った時から。

「ハリス様」
「……」
「私は、貴方を愛しています」

 シルヴァリアの胸に顔を埋め、それでもしっかりと言葉を紡ぐ。

「迷惑だなんて、思いません。貴方が幸せになれるのなら、私は何でも捧げられます」
「……ミラルド」

 頭上で深い吐息が漏れる。
 少し顔を上げたミラルドは、戸惑いを隠せないシルヴァリアの表情を目にすると、にっこりと笑って見せた。

「だから、安心して下さい。私が結婚すればハリス様が幸せになれないと言うなら、私は一生独身で構いません」

 自分と同じ物がシルヴァリアにも突き刺されば良い。
 そう想いながら告げた言葉に、シルヴァリアは一瞬言葉を失ったが。

「……ありがとう」

 やがて穏やかに目を細め、そっとミラルドの額に口付けた。




102: ◆KK1/GhBRzM
07/10/06 08:30:10 /ysLN0ey
今回はここまで

後編はエロが八割…
この連休中に投下しますので、しばしお待ちを

103:名無しさん@ピンキー
07/10/06 09:22:04 MsLR39X8
わーい! 待ってる待ってる



104:名無しさん@ピンキー
07/10/06 09:56:27 T2xiJqO5
very乙です

105:名無しさん@ピンキー
07/10/06 16:17:28 lEUVCR8i
正座して待ってます!

106:名無しさん@ピンキー
07/10/07 01:51:31 fn+jP79Q
GJ!
毎度の事ながらにやけてしまうな

107:名無しさん@ピンキー
07/10/07 08:59:30 r0LWaqSk
待ちます!

108: ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 16:53:04 2uMkCt/x
後編、別名イチャイチャ編投下

デューよりシルヴァの方がエロが長いのは
若さ故と言う事にしておいて欲しい
少し長めなので、投下規制に引っ掛かるかも知れないが
その時はその時で

以下、投下

109:王都騎士団【愛しい人・後編】1 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 16:55:07 2uMkCt/x

 シルヴァリアの私室に、足を踏み入れるのは初めてで、ミラルドは所在無さげにあちこちを見回した。
 その様子に、シルヴァリアは笑みを深くし、ソファに腰を下ろすと、ミラルドを手招いた。

「そう固くなるな。何も、取って食おうと言う訳ではない」

 本人は安心させる為なのだろうが、時刻は日付を回る頃。
 しかも、いつもの騎士団の制服ではなく、私服に着替えた相手を前にして、不安になるなと言う方が無理がある。

「ミラルド」

 名前を呼ぶシルヴァリアは、穏やかな表情のまま、こちらの様子を伺っている。
 寸間、ミラルドは躊躇ったが、やがておずおずとシルヴァリアの前に歩み出た。

 近付いたミラルドの手を取り、シルヴァリアが引き寄せる。
 向かい合わせに抱きつく格好になったミラルドを、シルヴァリアは軽々と持ち上げると、自分の膝を跨らせるように座らせた。

「まさかさっきの今で……」

 互いに想いを告げたのが数刻前。
 あの後、微妙にぎこちなくなった二人の間に、副隊長補佐のデールが現れなければ、どうなっていたのか想像もつかない。

 シルヴァリアはミラルドの腰に両腕を回し、少し困ったように眉を下げた。

「善は急げと言うだろう」
「意味が違います、ハリス様!」

 珍しく冗談めかすシルヴァリアに、思わず声を荒げたが、シルヴァリアはクツクツと笑いながら、ミラルドに顔を寄せた。

「俺は心配症なんだ、ミラルド。だから─」
「ひゃっ!」

 かぷりと、ミラルドの耳にシルヴァリアが噛みつく。
 突然の事にたじろいだミラルドだが、シルヴァリアの舌はゆっくりとミラルドの耳を沿う。

「さっきの事が夢でない証が、早く欲しい」

 ちろちろと這う舌先と、耳元で囁かれる低い声音に、ミラルドは目を閉じてシルヴァリアの首にすがりつく。
 腰に回された両の手が優しく背を撫で、それが一層ミラルドの吐息を熱くする。

「あなたが誰の物にもならないのならば……俺の物にして構わんだろう?」

 唇を滑らせ、シルヴァリアの舌がミラルドの顎を捕える。
 薄く目を開けたミラルドの視界に、上目使いで見つめるシルヴァリアの顔が写り、ミラルドは唇を噛んだ。

110:王都騎士団【愛しい人・後編】2 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 16:56:35 2uMkCt/x

「まさか、自分がこれほど独占欲の強い男とは、思わなかったがな」

 顔を離したシルヴァリアが目を細める。
 僅かに刻まれた眉間の皺に気付き、ミラルドは不思議と穏やかな心持ちになり、シルヴァリアの頬を両手で挟んだ。

「そんな顔をなさらないで下さい。誰も嫌だとは言ってないじゃないですか」

 恋ではなく愛。
 求めるのではなく、与えることが喜び。

 ミラルドはゆっくりと顔を寄せると、何事かを言い掛けたシルヴァリアの唇を自分のそれで塞いだ。

 自ら舌を差し出し、シルヴァリアの口内へと滑り込ませる。
 途端、舌を絡められ、ミラルドは小さく呻いた。

 熱い舌がミラルドのそれを捕え、吸い付かれる。
 遡るようにしてシルヴァリアの舌が這い、ミラルドの口内へと潜り込むと、余す所なく舐め回される。
 かと思うと、下唇を噛まれちゅうと音をたてて吸い上げられた。

 シルヴァリアの片手は何かを確かめるようにミラルドの背を撫で、もう片手はするりと足の上を滑っていく。
 僅かな衣擦れの音と共にワンピースの裾がたくし上げられたが、抗議の声はシルヴァリアの口の中へと吸い込まれる。

 ごつごつと骨張った手が足をなぞり、そのゆったりとした動きに震える背筋を、やはり男らしい手が優しく撫でる。
 シルヴァリアらしからぬ執拗なまでに長い口付けと、シルヴァリアの人柄そのままの愛撫に、ミラルドは頭の中がぼんやりと白くなっていくのを感じたが、そのどちらもが嬉しくて、ひたすらに甘い感触に酔い知れた。

 やがてシルヴァリアが顔を離す。
 二人の間で透明な糸がつぅと伝い、ぽたりと落ちた時にはもう、ミラルドは完全に息が上がっていた。

 瞼を押し上げると、僅かにぼやけた視界の向こうで、何処か苦しそうなシルヴァリアの表情が映る。
 何かやらかしたかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。
 シルヴァリアの手は、変わらずミラルドの体に甘い刺激を与えているし、よくよく見ればシルヴァリアの頬も朱に染まっている。

「……ハリス様?」

 掠れた声で名前を呼ぶと、シルヴァリアは少し困ったように微笑んで、二人の隙間を埋めるように、強くミラルドを抱き締めた。

「どうされました?」

 ミラルドの髪に顔を埋め、シルヴァリアは大きく息を吐く。
 その吐息が酷く熱く思えて、ミラルドは知らず首筋に回した手に力を込めた。

「……さっきの言葉を、訂正しなければならん」

111:王都騎士団【愛しい人・後編】3 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 16:58:06 2uMkCt/x
 背中を撫でる手が心地良い。
 うっとりと目を閉じながら、シルヴァリアの言葉を耳に入れていると、シルヴァリアはミラルドの耳元に口を寄せて、申し訳なさそうに呟いた。

「取って食いはしないと言ったが……そんな余裕もなくなりそうだ」

 何処までも律儀な人柄に、ミラルドの口許が綻びを見せる。
 ただひたすら優しく背を撫でるシルヴァリアに、ミラルドは緩く首を左右に振ると、少し顔を離してシルヴァリアの顔を覗き込んだ。

「何を今更。私だって子どもじゃありませんよ? 部屋に呼ばれた時点で、十分に意味は理解出来ています」

 まるで大きな子どもを相手にしているようだと、シルヴァリアの目を見つめながら思う。
 シルヴァリアは、少しバツが悪そうに眉を顰めていたが、ミラルドの言葉に安心したか、ゆっくりと笑みを取り戻すと、くしゃりとミラルドの髪を撫でた。

「俺は、あなたのそう言う所に恋しているんだろうな」

 照れも混じった穏やかな微笑みを浮かべながら、シルヴァリアの手が後頭部に伸びる。
 するりと髪留めが外されて、癖のついた黒髪が、背に落ちた。

 デイジーを象った銀細工の髪留めを視界の端に捕えると、ミラルドもにっこりと笑みを返す。

「私は、貴方のそう言う性格を愛しています」
「……そういう直球は、心臓に悪い」

 素直な気持ちを言葉にしただけなのに、シルヴァリアは途端に拗ねた子どものように顔を赤くしそっぽを向く。
 ゆらゆらと気恥ずかしさを著すように揺れる髪留めが、益々愛しさを募らせ、同時に可笑しくもあって、ミラルドは笑みを深めた。

112:王都騎士団【愛しい人・後編】4 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 16:59:22 2uMkCt/x
 しかしシルヴァリアは、手にした物をミラルドに渡すと、ミラルドの体に手を回し、ソファから立ち上がった。

「ハ、ハリス様!?」
「笑うあなたが悪い。いつまでも膝の上では、居心地も悪いだろう?」

 切り替えの早さもシルヴァリアの美点。
 そう離れていないベッドの上に優しく放り出され、ミラルドは反射的に両手の中の物を握り締めた。

 そんなミラルドの両手を自分の手で包み、シルヴァリアが顔を寄せる。
 ついばむような口付けを繰り返し、唇を舐める。
 包み込まれた両手は、その形を確かめるように指が伝い、愛し気に摩られる。
 髪留めを握り締めていた力は徐々に抜け、シルヴァリアの舌が再び口内に差し込まれると、ミラルドはそれを受け入れる事に集中した。

 もしも媚薬があるとすれば、きっとこんな感じなのだろう。
 甘く酔い知れるミラルドは、口付けを受けながらそう思う。

 シルヴァリアの手が体を這い、前留めのボタンを一つ一つ外される。
 絡められた舌はミラルドの熱を煽り、握り締めていた筈の髪留めは、気付けばシーツの上に落ちていた。

 肩までを大きく開けられ、シルヴァリアの手が下着の上から胸に触れる。
 豊かな乳房は、シルヴァリアの手には少し余るらしく、揉まれるたびに形を変える。
 初めて与えられる刺激に、喉の奥から声が漏れたが、深い口付けのせいか、呻き声にしかならない。

 ミラルドに馬乗りになる形で覆い被さったシルヴァリアは、舌を絡めながら両手でミラルドの柔らかさを確かめていく。

 だが、一瞬唇が離れた瞬間。

「あっ…!」

 大きな掌に擦られた頂に、今までにない甘い刺激を感じ、ミラルドは思わず声を上げた。

113:王都騎士団【愛しい人・後編】5 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:00:48 2uMkCt/x
 それまで、一度も聞いたことのない自分の声に、ミラルドは慌てて口を閉ざすが、見下ろすシルヴァリアは目を細め、とても嬉しそうに笑っている。

「や……ちょっと、待って─」
「待てん。俺を生殺しにするつもりか?」

 呼吸を整える暇も与えられず、シルヴァリアの手が下着をたくし上げる。
 固く尖った頂に指が触れ、ミラルドは再び声を上げた。

「あんっ、だめ…っ!」
「ならば、こちらの方が良いのか?」

 くりくりと指先で頂をもてあそばれ、ミラルドの肩が小さく震える。
 それに制止を掛けようとすると、シルヴァリアは意地悪く問掛けて、頂を口に含んだ。

「や、ああっ」

 ちゅう、と音を立てて吸い付かれ、軽く歯を立てられる。
 反対側の胸も、シルヴァリアの手で揉みしだかれ、頂は指でこねまわされた。

 生暖かなねっとりとした舌は、少しざらついていて、それが触れるたびに体の奥が溶け出しそうになる。
 強く吸い付かれれば、その刺激はぞくりと背筋を這上がり、頭の芯がぐらぐらと揺れる。
 自分で自分を慰めたことはあるが、それよりも遥かに気持ち良い。

「あ、あぁ、やぁあ」

 求めるままに遠慮のないシルヴァリアの動きは、ミラルドの全身を朱に染める。
 中途半端に脱がされた服が邪魔をして、思うように動けなくてもどかしい。

「ハ、リスさまぁ…っ」

 両腕を伸ばしてシルヴァリアの頭を掻き抱くと、両手で胸を寄せ指で摘んだ頂を交互に舌で柔躪していたシルヴァリアは、益々行為を激しくした。

 胸に吸い付きながら、ずるりとワンピースを肩から引き抜く。
 その動きに促されるように、少し体を浮かすと、ワンピースは足元までずらされて、シルヴァリアの手が直接肌に触れた。

 腹を、腰を、太股を。ゆったりとした動きで撫で摩りながら、体のあちこちに唇を落とす。
 時折痛いぐらいに吸い付かれると、日に晒す事の少ない箇所は、薄らと赤く充血した。

114:王都騎士団【愛しい人・後編】6 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:02:12 2uMkCt/x
 最後に残った下着の上を、シルヴァリアの指先が伝う。
 恥丘からさらに下へ。
 一瞬、敏感な突起に指が触れたが、ミラルドは唇を噛み締めただけで、何とか声を押し殺す。
 いくら覚悟しているとはいえ、はしたない声を荒げるには、まだ理性が勝っている。

 だが、さらに奥に指が触れた瞬間、その強がりはあっさりと砕かれた。
 下着の奥から滲み出た蜜が、ぬちゃりと掠かな音を放つ。
 その音は、本当に小さな物だったが、静かな室内ではやけに大きくミラルドの耳に届いた。

「凄いな。もうこんなに─」
「そ、れは…ハリス様が……っ」

 感嘆の吐息を漏らすシルヴァリアに、恥ずかしさのあまりミラルドは両手で顔を覆ったが。

「嬉しいよ、ミラルド」

 シルヴァリアは熱の篭った眼差しをミラルドに向けると、下着に手を掛け、一息に脱がせた。

「やだ、ハリス様!」
「あなたが嫌でも、俺はこうしたいんだ」

 ミラルドの制止の言葉も聞かず、シルヴァリアは大きくミラルドの足を割り開く。
 今まで、誰にも見せたことのない部分を晒していると思っただけで、ミラルドは恥ずかしさで死にそうになったが。それと同時に体の奥が溶けるような錯覚を感じ、とぷりと蜜が溢れるのを自覚した。

「いや……また……」
「あぁ、溢れているな。そんなに、気持ち良かったのか」

 問掛けではなく、確認なのだろう。
 独り言のように呟いたシルヴァリアは、ゆっくりと顔を近付けると、ミラルドの秘所に舌を伸ばす。
 焦らすように秘肉を舐め、足の付け根にキスを降らせる。
 それだけでミラルドは耐えきれなくなって、仔猫が親猫を求めるような切ない声を上げながら、体の奥からとろとろと蜜を溢れさせた。

「やぅ、や…あ、は、ハリ、ス、さまぁ」

 周囲の蜜を舐め取っているのか、シルヴァリアの舌は思う所に刺激を与えてはくれない。
 なのに、眼差しは酷く熱くて、ミラルドの反応を一つも逃さまいと、全身に向けられている。
 その眼差しだけで蜜が溢れ出し、ミラルドは小さな子どものようにふるふると首を横に振った。

115:王都騎士団【愛しい人・後編】7 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:03:51 2uMkCt/x

「や、だ…ハリス、さまぁ……もっと、いっぱい…っ」

 恥ずかしいはずなのに、じらされ続けて、ミラルドの体は快感を欲して止まない。
 口許を抑えながら、それでも耐えきれず漏らした言葉に、シルヴァリアは口許を弧にすると、蜜の溢れる秘所に舌を伸ばした。

「ひぅ、は、ああぁっ!」

 ぴちゃぴちゃと蜜を舐めとる音がしたかと思うと、柔らく弾力のある物が、体の中へと侵入する感覚に、ミラルドは堪らず声を上げた。
 胎内を掻き回され、指で肉芽を撫でられて、ミラルドの腰は逃げそうになったが、シルヴァリアの腕ががっちり掴んで離さない。

 明らかに異質な温度のそれは、胎内を蠢いたかと思うと、秘所を上下に這い回り、肉芽を強く転がしていく。
 気付けばシルヴァリアの腕は外されていたが、ミラルドはもう、されるがままで、刺激されるたびにビクビクと体を揺らした。

「や、は…あ、あぁっ、あぁぁっ!」

 指で剥き出しにされた肉芽にシルヴァリアが吸い付く。
 産まれて始めての快感は、ミラルドの理性を容易く破る。
 もう、恥ずかしいとか、はしたないとか、そんな事を考える余裕もない。

「きも、ち…いいっ、ハリ、ス、さ─」
「シルヴァだ」

 ちゅうちゅうと肉芽に吸い付いていたシルヴァリアが顔を上げる。
 口の回りに付いた蜜を舌で舐めとりながら、シルヴァリアは衣服を脱ぎ捨てた。

「シルヴァ、と…呼んでくれ」
「は…、シル、ヴァ…様」

 切な気な眼差しで見下ろされ、ミラルドは荒い呼吸の隙間から、途切れ途切れに名前を呼ぶ。

 顔も、体も。爪先までもが熱くて堪らない。
 なのに、名前を呼んだだけで、さらに熱が高まったような気がする。

「シルヴァ、さま……」

 もう一度。今度はしっかりとシルヴァリアを見つめて、その名を呼ぶと、シルヴァリアは嬉しそうに破顔した。

「そう、シルヴァだ」

116:王都騎士団【愛しい人・後編】8 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:06:03 2uMkCt/x
 優しく囁きながら、シルヴァリアが秘所に手を伸ばし覆い被さる。
 太く長い指がゆっくりと差し込まれ、ミラルドはビクリと肩を震わせ、シルヴァリアの首筋に腕を回してすがりついた。

「あ、あぁっ、シルヴァ様っ!」
「きついな……初めてか?」

 解すように入り口を掻き回しながらシルヴァリアが問う。
 ミラルドが小さく頷くと、シルヴァリアは更にゆったりと動きを緩めながら、ミラルドの頬に口付けた。

「俺もだ」
「え……」

 目を見開くと、シルヴァリアの視線とかち合う。
 少し困ったような微笑みで、シルヴァリアは口を開いた。

「俺も、女性を抱くのは初めてなんだ」
「や、で、でも…んっ! すごく…手慣れて、ます、シルヴァ様…っ」

 くちゅくちゅと掻き回す指が、胎内へと侵入する。
 異物感は馴れないが、肉壁を擦る動きは優しくて、気持ち良いと言えなくもない。

 だがミラルドを気遣うシルヴァリアの動きは、初めてにしては余裕がある。
 思わず正直な感想を口にすると、シルヴァリアは益々困ったように笑い、空いた方の手でミラルドを抱き寄せた。

「男は、良いところを見せたがる生き物なんだ。─正直、そんなに余裕もない」

 その証と言わんばかりに、引き寄せられた体の間で、一際熱を放つ物を感じる。
 硬く猛った肉棒を下着越しに感じて、ミラルドは目を丸くした。

「シ、ルヴァ…さま」
「だが、我慢強さなら自信はあるからな」
「んんっ!」

 情事の最中にはふさわしくない、冗談めかした声で言いながら、シルヴァリアの指が更に奥へと滑り込む。
 散々濡らされた胎内で、指はさほど抵抗もなく動き回り、痺れるようなうずきに、ミラルドは体を固くした。

117:王都騎士団【愛しい人・後編】9 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:07:38 2uMkCt/x

「あなたを気遣うぐらいは、まだ出来る。─痛いか?」
「い、いえ……どちらかと言えば、気持ち、良い…です」

 ゆっくりと抜き差しを繰り返す指に、ミラルドの熱は昂ぶりを見せる。
 正直に答えると、シルヴァリアは指を増やして、再びゆっくりとミラルドの中へと埋め込んだ。

「ひゃ、あ、あっ!」

 狭い入り口を掻き分けて、二本の指が入り込む。
 より大きくなった異物感は痛みを伴い、ミラルドはシルヴァリアにすがりついた。

「あ…う、んん…っ」

 抱きつくミラルドに、シルヴァリアは口付けを交す。
 指の動きはそのままに、少しでも気をそらそうと、肉芽を転がしながら、口付けは徐々に深くなる。

 一瞬の痛みはやがて甘い痺れとなり、交す口付けに、ミラルドは頭の芯がぼぉっとなった。

「う、ん…くっ、ふぅっ」

 口許と下腹部とで起こる水音は、静かな室内に大きく響く。
 やがてシルヴァリアは指を引き抜くと、唇を離して体を起こした。

 ぼんやりと見つめるミラルドの前で、下着を脱ぎさり、ミラルドの足を大きく割り開く。
 ぬちゃり、と蜜を絡めた肉棒が花弁の間を上下に擦り、ミラルドの体が小さく震えた。

「あ…それ……」
「気持ち良いのか?」
「……はい」

 硬く熱い物で擦られるたび、言い様のない快感が背筋に走る。
 思わず腰を浮かせれば、シルヴァリアはがっしりと腰を支え、更にぐちゅぐちゅと肉棒を擦り付けた。

「あ、あぁっ、や、あつ…っ、シルヴァ、さまの、熱いぃ…っ」

 肉芽を突かれ、秘部全体を擦られて、ミラルドは甘く鳴き声を上げる。
 知らず、シルヴァリアの動きに併せ腰が動き、更なる快感を得ようと、ミラルドは腰を押し付けた。

「ミラルド、もう…っ」

 熱い吐息と共にシルヴァリアが呟いた瞬間。

「っ─!」

 くぷり、と先端がミラルドの中へ埋め込まれた。

 言葉にならない声を飲み込み、ミラルドは己の体を抱き締める。
 充分過ぎるほどに潤ったとは言え、指とは比べ物にならない太さの物に、狭い入り口は悲鳴を上げる。
 ぎゅっと体を硬くしたミラルドだが、ずるずると入り込む異物に、少しでも楽になろうと、深く息を吐き出す。

「っ……すまん、ミラルド」

 大きく呼吸を繰り返す姿を見下ろして、シルヴァリアが申し訳なさそうに眉を顰める。

118:王都騎士団【愛しい人・後編】10 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:09:33 2uMkCt/x
 肉棒はまだ半分ほど入っただけなのに、酷く窮屈だったが、ミラルドは無理矢理笑みを浮かべると、小さく首を横に振った。

「平気、です。だい、じょうぶ…ですから」

 叱られた子どものように、肩を落とすシルヴァリアに笑い掛け、ミラルドは両手を伸ばす。
 いざとなれば女性の方が強いのか、などと、妙な事を考えながらシルヴァリアの手に自分の手を沿えると、シルヴァリアは指を絡めて手を握り返して来た。

「すまん」

 痛みが顔に出ているのだろう。
 謝罪の言葉を繰り返すシルヴァリアに、無言で首を振ったミラルドは、握り締めた手に力を込めた。

 それが合図であったかのように、再びシルヴァリアが侵入する。
 ミラルドが息を吐き出すのに併せ、ゆっくりと進められる動きは緩慢で、二人の体に汗が滲む。
 やがて全てを飲み込むと、今度はゆっくりと引き抜かれる。

「くぅ、…あぁ、ぁっ!」

 痛みを伴う熱に胎内を擦られて、ミラルドは声を上げた。
 初めの方こそ余裕を見せていたシルヴァリアだが、二度三度と繰り返すうちに、動きは徐々に早くなって行った。

「あ、あぁっ、やあ…!」

 酷い痛みは最初のうちで、何度か擦られていくうちに、その痛みすらもぼんやりと薄らいでいく。
 与えられる熱の狭間に、ほんの時折痺れる甘さが、痛みを和らげているようだ。

「すまん、一度……っ」

 粘ついた水音の隙間、小さくシルヴァリアの声が聞えたかと思うと、次の瞬間、膨らんだ熱が弾けて、ミラルドの体の奥に熱い塊が吐き出された。

「ひ、─あぁぁ……っ!」

 どくどくと流れ込む熱に、大きく息を飲む。
 体を硬くすれば、吐き出された物は行き場を失い、繋がった隙間から溢れ落ちる。

 シルヴァリアは大きく肩で呼吸しながら、ミラルドに体重を預けるように覆い被さり、触れるだけの口付けを繰り返した。

 胎内では、シルヴァリアの物がぴくぴくと震えている。
 それを感じながら、ミラルドは汗の伝うシルヴァリアの頬を撫でたが。

「……シルヴァ…さま…?」

 口付けの隙間から名前を呼ぶが、シルヴァリアは笑みを浮かべ、唇を重ねる。
 今だ胎内に肉棒を埋めたままで、引き抜かれる様子はない。

「あの……」

 もしかすると、とんでもなく恥ずかしい体勢なのではないだろうか。


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