男主人・女従者の主従エロ小説 第二章at EROPARO
男主人・女従者の主従エロ小説 第二章 - 暇つぶし2ch118:王都騎士団【愛しい人・後編】10 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:09:33 2uMkCt/x
 肉棒はまだ半分ほど入っただけなのに、酷く窮屈だったが、ミラルドは無理矢理笑みを浮かべると、小さく首を横に振った。

「平気、です。だい、じょうぶ…ですから」

 叱られた子どものように、肩を落とすシルヴァリアに笑い掛け、ミラルドは両手を伸ばす。
 いざとなれば女性の方が強いのか、などと、妙な事を考えながらシルヴァリアの手に自分の手を沿えると、シルヴァリアは指を絡めて手を握り返して来た。

「すまん」

 痛みが顔に出ているのだろう。
 謝罪の言葉を繰り返すシルヴァリアに、無言で首を振ったミラルドは、握り締めた手に力を込めた。

 それが合図であったかのように、再びシルヴァリアが侵入する。
 ミラルドが息を吐き出すのに併せ、ゆっくりと進められる動きは緩慢で、二人の体に汗が滲む。
 やがて全てを飲み込むと、今度はゆっくりと引き抜かれる。

「くぅ、…あぁ、ぁっ!」

 痛みを伴う熱に胎内を擦られて、ミラルドは声を上げた。
 初めの方こそ余裕を見せていたシルヴァリアだが、二度三度と繰り返すうちに、動きは徐々に早くなって行った。

「あ、あぁっ、やあ…!」

 酷い痛みは最初のうちで、何度か擦られていくうちに、その痛みすらもぼんやりと薄らいでいく。
 与えられる熱の狭間に、ほんの時折痺れる甘さが、痛みを和らげているようだ。

「すまん、一度……っ」

 粘ついた水音の隙間、小さくシルヴァリアの声が聞えたかと思うと、次の瞬間、膨らんだ熱が弾けて、ミラルドの体の奥に熱い塊が吐き出された。

「ひ、─あぁぁ……っ!」

 どくどくと流れ込む熱に、大きく息を飲む。
 体を硬くすれば、吐き出された物は行き場を失い、繋がった隙間から溢れ落ちる。

 シルヴァリアは大きく肩で呼吸しながら、ミラルドに体重を預けるように覆い被さり、触れるだけの口付けを繰り返した。

 胎内では、シルヴァリアの物がぴくぴくと震えている。
 それを感じながら、ミラルドは汗の伝うシルヴァリアの頬を撫でたが。

「……シルヴァ…さま…?」

 口付けの隙間から名前を呼ぶが、シルヴァリアは笑みを浮かべ、唇を重ねる。
 今だ胎内に肉棒を埋めたままで、引き抜かれる様子はない。

「あの……」

 もしかすると、とんでもなく恥ずかしい体勢なのではないだろうか。

119:王都騎士団【愛しい人・後編】11 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:11:41 2uMkCt/x
 戸惑いを隠せぬミラルドは、シルヴァリアの胸元を軽く押したが、その意図を察したらしいシルヴァリアは、ミラルドの両手を片手で掴むと、不意に体を起こした。

「今度は、あなたに満足してもらう番だ」
「え? あ、きゃっ!?」

 繋がったまま、向かい合わせに座る形を取らされ、不安定さに思わず抱きつく。
 シルヴァリアはミラルドの頭を固定すると、少し目を細めて、強引に口付けた。

「ふっ、うぅ…ん!」

 舌を絡め、上顎を擦り、口の中を犯される。
 馴れ始めたばかりの口付けは、麻薬のように全身に痺れをもたらし、ミラルドの体から力が抜けた。

「む、ふぅっ…ん、シル、ヴァ…っ」

 髪を撫で、背中を伝うシルヴァリアの手に、ミラルドの中で小さくなっていた昂ぶりが、再び熱を取り戻す。
 同時に、胎内で硬くなり始めた肉棒の感触に、ミラルドは思わず体をよじった。

「や……だ、だめっ」

 痛みは平気なのだ。
 それよりも、先程少しだけ感じた甘い刺激が怖くて、ミラルドはシルヴァリアから離れようとしたが、シルヴァリアの手はしっかりとミラルドを支えて離さない。

「大丈夫。怖くはない」

 ミラルドの不安を感じとったか、耳元で優しく囁いて、シルヴァリアはズンと腰を持ち上げた。

「ぁああっ!」

 最奥にぶつけられた衝撃は、びりびりと全身を走り、快感をもたらす。
 繋がった隙間から、二人の体液が混じりあった物が流れ、そこを汚すが、シルヴァリアは気にする事なくミラルドの体を揺らし始めた。

120:王都騎士団【愛しい人・後編】12 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:13:28 2uMkCt/x

「ひ、あ…あっ、あぁぁっ」

 その形すらも記憶出来そうなほど、窮屈な胎内に埋め込まれた肉棒は、肉壁を擦り最奥を突く。
 指先までも走り抜ける快感に、ミラルドの思考は切り放される。

 口付けを求め、交し、シルヴァリアの体に自身を預ける。
 先を求めるシルヴァリアに、全てを捧げながら、ミラルドは全身でシルヴァリアを求めた。

「は、あっ、シル、ヴァ、さまぁ…っ、シルヴァ…さま…っ!」

 シルヴァリアの背に両腕を回し、突き上げられる動きに併せて体を揺する。
 唇と言わず頬と言わず、無茶苦茶に口付けるミラルドに、シルヴァリアは唇を滑らせながら、その体を横たわらせた。

「ミラ、ルド…っ」
「あん、ああっ! いっ、あっ、いいの…気持ち、いい……っ!」

 しっかりと抱き合いながら、不安のなくなったミラルドからは、甘い悲鳴が絶え間なく溢れる。
 何度も互いの名を呼び、貪るように熱を求める。
 初めは揺らすだけだった動きも、やがて大きな抽迭へと代わり、そのたびに結合部からは、淫猥な水音が響いた。

 何度も突かれ、余す所なく胎内を擦られ、気持ち良さと充足感に涙が溢れる。
 なのに、シルヴァリアが与える快感は気持ち良すぎて、身も心も溶けてなくなりそうで。

 それが酷く恐ろしい。


「は、ぃやっ、シル、ヴァ、さまぁ! や、やあ…っ!」

 思わず制止を掛けようとしたが、シルヴァリアはミラルドを抱き締め、涙を拭って口付けた。

「だい、じょうぶ。ミラルド……、大丈夫、だ」

 少しでもミラルドの不安を拭おうとするシルヴァリアの声も、酷く掠れて余裕はない。
 子どものようにしがみ付いたミラルドは、半分泣きじゃくりながら、シルヴァリアの名を呼んだ。

「シルヴァ、さまぁっ…シルヴァああ…っ!」
「ミラルド、くっ、あぁ…ミラル、ド─!」


 ─愛しい人。


 その一言を耳にした瞬間、ミラルドは、頭の芯が溶けて無くなる錯覚を覚え。
 深く突き上げたシルヴァリアが、二度目の熱を吐き出すのを、不思議と遠く朧気に感じながら、自分を包み込むシルヴァリアの暖かさに全てを預けた。



121:王都騎士団【愛しい人・後編】13 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:15:47 2uMkCt/x


 少し眠っていたのだろう。
 ミラルドが目を覚ますと、幸せそうに笑うシルヴァリアの顔が横にあった。

「あ……」
「大丈夫か、ミラルド。辛いところは?」
「い……いえ……」

 ミラルドの黒髪を指に絡めて遊びながら、シルヴァリアが問う。
 流石に、もう繋がってはいないが、裸のまま布団一枚を掛けただけの姿は、恥ずかしさを呼び起こす。
 もぞ、と布団に潜り込もうとしたミラルドだったが、シルヴァリアの腕が回されていて、自然と引っ付く形になるしかない。

「あの……私、どれくらい…」
「ほんの半刻ほどだが……すまん。俺も手加減出来なかった」

 もしかして、謝るのが口癖なのではないだろうか。
 何と無くそんな事を考えて、ミラルドはシルヴァリアの胸に頭を預けた。

 よくよく考えれば、あれほどの情交の後なのに、大した気持ち悪さを感じない。
 シルヴァリアに尋ねるのも恥ずかしいが、聞けばあっさりと事後処理をしたと言われ、ミラルドは恥ずかしさと申し訳なさで顔を真っ赤にした。

「も、申し訳ありません!」
「いや。─それよりも」

 心地良い一時を作り出すのは難しい。
 まともに顔を上げられないミラルドだったが、シルヴァリアの声に恐る恐る顔を上げると。

 シルヴァリアは、こちらも顔を真っ赤にして、真剣な表情でミラルドを見つめていた。

「もし……あなたが嫌でなければ、なんだが」
「……は、はい」

 言い淀む姿は、何処かで見た覚えがある。
 事に及ぶ前と─今年の始め。
 真っ直ぐに気持ちをぶつける時、シルヴァリアはいつも真っ直ぐにこちらを見ていた。
 顔が赤いのは、きっと、とんでもなく恥ずかしいから……なのだろう。

「また、さっきの今で…と思われるかも知れんのだが」
「はい」

122:王都騎士団【愛しい人・後編】14 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:16:45 2uMkCt/x

「…………結婚、してはくれんか」

 いったい何を言われたのだろうと、言われた意味を理解するのに精一杯な自分がいる。その一方で、本当に言葉が出なくなる事があるのだと、妙に冷静に考えたミラルドは、目を丸くしてシルヴァリアを見つめ返した。

「もし、子どもが出来ていたら……勿論、責任を追うつもりであなたを抱いたが! やはり、こういう事はきちんと順を追うべき、と言うか……」

 しどろもどろになりながら、シルヴァリアが視線を外す。
 徐々に思考が回復したミラルドは、思わず小さな笑いを漏らした。

「だから、いつとは言わんが─」
「私で良いのですか?」
「あなたが、良いのだ。俺は!」

 わざとからかうように問掛けると、シルヴァリアは焦ったように声を荒げる。
 余りに必死なその姿に、ミラルドはもう絶えきれなくなって、くすくすと笑いを溢した。

 笑われたシルヴァリアはと言うと、まるで睨むような眼差しでこちらを見下ろしているが、それすらも、今のミラルドにしてみれば、愛しさを募らせるだけで。

「……私で良ければ」

 小さく頷くと、拍子抜けしたように呆けた表情を見せたシルヴァリアに、ミラルドはにっこりと笑い掛けた。



 二週間後。
 今まで女気一つなかった赤河隊副隊長が、側仕えの侍女と、文字通り電撃的な素早さで結婚式を上げ。
 その十ヶ月後、二人の間に可愛らしい男児が誕生したが。

 それはまた、別の話である。




123:王都騎士団【愛しい人・蛇足なオマケ】 ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:18:36 2uMkCt/x


「あの時、先にプロポーズをすれば良いのに、と思いましたけど」
「は、はぁ……」

 ハリス邸の一角。
 日の当たるサロンで、二人の成れ染めを聞いていたファムレイユは、歯に衣着せぬハリス夫人の言葉に、苦い笑みを浮かべた。

「で、でも、結果的には良かったんじゃないですか? その……当たり、だった訳ですし」

 こんな事を言って良い物かどうか。口にしてから後悔したが、ハリス夫人は、にこりと笑み浮かべて、お茶を飲んだ。

「ええ。後悔など、これっぽっちもしていませんよ。二十三年たった今でも、毎日が驚きと幸せの連続です」

 年を経ても、相応の魅力を持つ人間はいる物で。
 同じ女性ながら、その美しさに、ファムレイユは感嘆の吐息を漏らした。

「だからあなたも、後悔しない結婚をなさい。彼が相手では、少し手は掛るでしょうけれど」
「お、奥様っ!!」

 暗に誰の事を示しているのか。心当たりのあるファムレイユは、慌てて相手の言葉を遮った。
 それと同時に部屋の扉が開かれて、屋敷の主人と一緒になって姿を現したのは、噂の主その人だった。

「あら、お話はもうお済みですか?」
「あぁ、これから少し外へ出て来る」
「では私も─」
「や、お前さんは良いわ。大した用事じゃねぇし、すぐに戻る」

 ハリス夫人の問掛けに、主人は小さく頷く。
 直属の上司が出るならば、自分も共に向かわねばならないと、ファムレイユは席を立ったが、それを制したのは噂の男だった。

「それに、一応休みだろ? 折角だ、今夜の晩飯の手伝いでもしとけ」
「おい、デュラハム?」
「上司命令。今日はお前さんちで、晩飯だ。俺とこいつの分も頼むな」

 眉を顰めた主人に、男はニヤリと人の悪い笑みを寄越し、ハリス夫人に片手を掲げて拝む。
 呆れ顔の主人とは対照的に、ハリス夫人は笑って頷き、いまだ渋る主人を促して二人を送り出した。
 ファムレイユはと言うと、その遣り取りに呆気に取られているだけだ。

「……申し訳ありません、奥様」
「良いのよ。いつもの事ですもの」

 快活なハリス夫人に掛っては、男も掌の上の猿も同然らしく。
 少しだけ「この性格は見習うべきか」と、ファムレイユは小さな溜め息を漏らした。




124: ◆KK1/GhBRzM
07/10/07 17:19:56 2uMkCt/x
以上、投下終了

15レス越えたのが始めてで、正直ドキドキ

また何か思い付けば、お邪魔したいと思いますノシ

125:名無しさん@ピンキー
07/10/07 17:35:57 zXiUCyV1
GJ
二人が幸せになって良かった

126:名無しさん@ピンキー
07/10/07 17:43:03 kF8v6ocX
おお、良い仕事です。
大作、お疲れ様でした。

127:名無しさん@ピンキー
07/10/07 18:32:59 3zzoXRZR
良い仕事乙です

128:名無しさん@ピンキー
07/10/07 22:06:51 AIxFh6wc
本編の二人も好きだが、シルヴァのストレートな愛情表現、
ミラルドのしっとりと匂い立つ色気に萌えた。
じっくりと描かれたエロもおいしく頂きました、GJ!



129:名無しさん@ピンキー
07/10/09 19:16:07 aNfXjLsb
二人とも可愛くて萌えたw
GJです!

130:名無しさん@ピンキー
07/10/09 19:41:25 +9d2x8I7
GJ!

131:名無しさん@ピンキー
07/10/09 20:10:21 gRpStV2F
……ミラルドと聞くとどうしても召喚士の想い人を思い出す俺。

132:名無しさん@ピンキー
07/10/09 23:23:29 H50V3SO5
テイ○ズ?

133:名無しさん@ピンキー
07/10/10 04:34:58 4mQqeZhX
GJ!このシリーズ大好き!男キャラが皆純情で床上手って素晴らしいわ。
ファムも好きなんで、またいちゃいちゃ待ってます。

134:名無しさん@ピンキー
07/10/13 13:49:26 K9lVAU3/
ほしゅ

135:名無しさん@ピンキー
07/10/13 16:53:27 Imq0Z/Rq
保守がてら初投下。
スレタイに触発されて書きました。
関係成立までの話しです。


136:セイレーンの乙女
07/10/13 16:55:19 Imq0Z/Rq

ブノア王国の第二王子ラファエルは、戦火の広がる街を丘の上から満足げに眺めていた。
眼窩に広がるユベール公国の首都が、彼の手に落ちるのも時間の問題のようだ。
今回のユベール公国侵略の任についてから、一度も被る機会のない兜を小脇にかかえ、
赤褐色の頭髪を風になびかせながら、にやりと笑う。
どうやって、世に名高いセイレーンの乙女たちを屈服させようかと、ラファエルは
琥珀色の瞳に好色の光を浮かべていた。
大陸の南に位置するユベール公国の民には、南の海に住む精霊の血が混じっている
という古くからの言い伝えがある。
実際、民の中には、精霊の力と思われる不思議な術を使う者がいるらしい。
俗にセイレーンの乙女と言われ、言霊で男を操るとされる魔性の女たちだ。
その力のせいか、ユベール公国の君主の座は、代々直系女子にのみ引き継がれ、
巧みに不可侵条約をとりつけることで、大国からの侵略を免れていた。
「口で丸めこまれるなら、交渉のテーブルにつかなければいい」
ラファエルはそう言って、今回の武力によるユベール公国侵略の算段を練り、
自ら父王に提案してその全権を任された。
現ブノア国王の御世になってからというもの、ブノア国はその領土を拡大し、
近隣諸国より恐れられる存在になったが、その功績の影には、この二十歳そこそこの
第二王子の働きもあった。
「ラファエル殿下」
今回の遠征でラファエルの右腕を勤めるヴァンサンが、兜を脱いで跪く。
「主城が開門いたしました」
「そうか」
ラファエルは余裕の笑みを浮かべて身を翻し、白亜の街を見下ろす丘から
出立することにした。


137:セイレーンの乙女
07/10/13 16:57:02 Imq0Z/Rq

ラファエルが、無駄な殺戮と略奪を固く禁じたためか、ユベール公国の主城の中は
静かなものであった。
中庭には、武装を解除して降伏した騎士たちが集められ、侍女や小間使いは別室に
集められている。
階上の渡り廊下を歩きながら、中庭の様子をうかがったラファエルは、
女騎士が多いことに驚き、またその器量のよさにも感心した。
わざわざ遠征した甲斐があったというものだ。
ユベール公国の女は美女揃い。というのも、公国にまつわる伝聞の一つだった。
「殿下、主の間はこの奥です」
ラファエルの頬が緩くなったのを見て、ヴァンサンが話しかける。
「ああ」
ラファエルはきりりと表情を正し、自分に続く精鋭からなる一個小隊に、
当初の作戦を実行するように命じた。
騎士たちは頷いて、耳に栓をする。
主の間に入って以降は、手によるサインで支持を出す作戦だ。
もはや主城は完全にラファエルの軍に制圧されている。
むやみに抵抗してくるとも思えなかったが、念のため、セイレーンの乙女に対する
対策だけはしておくことにした。
唯一、ブノア王国の要求をつきつける立場のラファエルだけは、耳栓をしていない。
彼には、乙女の力に負けないという根拠のない自信があった。
操るといえど、実際のところは、少々カリスマ性があってその言に逆らえなくなる
というのが本当だと、ある人から聞いていた。
そんなものは、気高く生まれた自分に通用するはずがない。
ラファエルは悠然と構えて、主の間の扉が開かれるのを見ていた。


138:セイレーンの乙女
07/10/13 16:58:37 Imq0Z/Rq

高い天井と奥行きのある主の間は、訪問者の視線を遮るように天井から幾重にも
垂らされた薄い絹の幕が揺れ、それに天窓から差しこむ日の光が反射して幻想的な
空間になっていた。
ラファエルとその一行は、薄布を忌々しげに払いながら、奥を目指した。
あと一枚。
薄い絹の向こうに玉座が見える。
「止まれ!」
不意に響いた鈴の鳴るような女の高い声に、ラファエルたちは、反射的に足を止めた。
ラファエルは驚いて目を見開く。
女の声は耳栓に遮られることなく、騎士の耳に届くのだろうか。
誰も止まれのサインを出していない。
「女大公の御前である。膝を折り、頭を下げろ!」
騎士らに動揺する気配がある。
「控えろ!」
続く女の声に、ラファエルは辛うじて耐えた。
女の言葉通りに、膝を折りそうになったのだ。
が、後ろの騎士たちは、一斉に跪いて頭を垂れた。
本人たちの口からも、自分の行動が信じられないというような苦しい息遣いが漏れた。
これが、セイレーンの乙女の力なのかと、ラファエルは密かに舌を巻いた。
相手のペースに乗せられてはいけない。
賢明なブノア国の第二王子は即座に判断した。
「ふっ。いまだ自分たちの立場が分かっていないのか。ユベール公国は今日をもって、
その歴史に幕を閉じたのだ。その玉座も今やブノア国王のもの」
「何を言う! この簒奪者め!」
怒りに上擦った女の声は意外に幼く、ラファエルはおやと思う。
感情のままに叫ぶのなら、こちらに分がありそうだ。
「大人しく渡さぬというなら、こちらにも考えがある」
ラファエルが挑発のために剣の柄に手をかけると、薄布の向こうでも動きがあった。
剣が鞘走る音と、長靴が大理石の床を蹴る音がした。
薄絹が人の形に膨らんでくる。
ラファエルも抜刀し、床を蹴った。
「殿下!」
ヴァンサンが叫ぶ。
次ぎの瞬間、布ごしに剣がかち合い、金属音が主の間に鳴り響いた。
相手は声の女だとラファエルは確信していた。
なかなかの打ち込みだったが、切り結んでしまえば、力はラファエルの方が
圧倒的に強い。
女の力を測りながら押し合い、相手が全力で押してきた瞬間に、剣を弾いた。
互いに間合いを取ると同時に、薄絹が天井から落ちてくる。
遮るものがなくなり、初めて相手の顔を見た瞬間、ラファエルの身体に衝撃が走った。
―ものすごい好みだ。


139:セイレーンの乙女
07/10/13 17:00:14 Imq0Z/Rq


思わず口角が上がりそうになるのを、ラファエルは必死に抑えた。
表れた女騎士は、年は16、17といったところで、まだまだ女性の丸みに欠ける
細身の身体つきだったが、胸まで届く淡い金色の髪と、意志の強そうな
薄青色の大きな瞳を持った、なかなかの美少女だった。
陶器のようになめらかな白い肌の中、怒りのために紅潮させた頬と、
固く結ばれたピンク色の唇が愛らしい。
真っ直ぐにラファエルを睨みつける眼力も鋭くて、それにもそそられる。
ユベール公国最初の女は彼女にしようとラファエルは勝手に決めて、
彼女の第二撃を受けとめた。
剣の筋も悪くない。
女の非力をカバーするため、しなやかな全身のバネを使って攻撃してくる。
ラファエルは、懸命に剣を繰り出す彼女に半ば見とれて、その剣を受けとめていた。
「フェリシテ。お止めなさい」
玉座に座る女大公が初めて口を開いた。
艶のある静かな声だった。
その容姿も、銀の真っ直ぐな髪に紺碧の瞳と、高貴な女性が持つ華やかさを
供えている。女騎士の初々しさとは異なる成熟した美しさを持つ女性だった。
女大公の命令に、フェリシテと呼ばれた女騎士はラファエルを一睨みすると、
大人しく剣を引いて女大公に跪いた。
その姿を見ながら、ラファエルはユベール公国公家の家系図を頭の中で思い描く。
女大公の妹の娘が、確かフェリシテといったか。
ラファエルは、当初の戦略をどう修正しようかと、即座にいくつかの案を捻り
出していた。
「あなた様は、ブノア王国の第二王子ラファエル殿下であらせられますね」
「ええ」
「投降した者、力なき者の命をお助けくださり、ありがとうございます」
「当然のことです」
剣を収めて、ラファエルは丁寧に答えた。相手が礼節をもって接してくるのであれば、
こちらもそれ相応の態度で臨む。元来、ラファエルは女には優しい性質だった。
「私達は、これ以上、無益な血を流すつもりはございません。そちらの要求に従い
ましょう。ただし、いくつかお願いがございます」
来たなと、ラファエルは内心思った。
「いいでしょう」
戦に勝った余裕が成せる優雅な笑みを浮かべて、ラファエルは交渉のテーブルに
つくことにした。


140:セイレーンの乙女
07/10/13 17:01:48 Imq0Z/Rq


交渉の相手として、ユベール公国の女大公は、確かに手強かった。
結局、ユベール公国の名は、今後も地図に残る事になったが、その実権はブノア
王国が握ることとなり、ラファエルも父王に胸を張って報告できる結果となった。
ユベール公国はこの後、18歳になる第一公女のミレーヌを現ブノア国王の側室として
差しだし、6歳の第二公女セレスティーヌの婿として、ブノア国の第四王子である
3歳のダミアンを迎えるのだ。そして、ダミアンが次期大公となる。

ラファエルは、交渉の結果に満足して、主城で一番豪華な客室の寝台に寝転がっていた。
彼にとってはこれからがお楽しみである。
いや、本番とでも言おうか。
セイレーンの乙女を完全にモノにするには、ここからが重要なのだ。
ノックの音に、ラファエルはニヤケ顔を正して、寝台の上に起き上がった。
「入れ」
遠慮がちに室内に入ってきたのは、昼間主の間で剣を交えた女騎士のフェリシテだった。
さすがに無骨な鎧は脱ぎ捨てて、白い簡素なドレスを身につけている。
女大公との交渉の最後に、今日の閨にとフェリシテを所望すると、その願いはあっさりと
聞き入れられた。
公女もブノア国王に嫁ぐことになった今、公族として、フェリシテも我を通す訳には
いかないのだ。
「こっちに来い」
昼間の威勢のよさはすっかり影をひそめ、フェリシテは重たい足取りで、寝台の上に
上がってきた。
その白い腕を少し力を入れて引き寄せると、フェリシテは困ったように視線を下に向けた。
金色の長い睫が白い頬に影を落とす。
形のよい顎に手を添えて上を向かせると、今度は薄青い瞳としっかり目があった。
「昼間は……ごめんなさい」
艶やかなピンク色の唇から、殊勝な言葉が紡がれて、ラファエルは表情を崩さずに
感激した。すぐにでも押し倒してしまいたいのを堪える。
「気にするな。なかなかの腕前で、楽しめた」
フェリシテの眉頭がぴくりと動く。格下に見られたのが癪に障ったのだろう。
それさえも今は可愛く思えて、ラファエルはその艶やかな唇に口付けた。


141:セイレーンの乙女
07/10/13 17:03:22 Imq0Z/Rq

唇を奪った瞬間、フェリシテの身体がピクリと震えた。
全身を強張らせるフェリシテを怖がらせないように、ラファエルは軽く唇をついばむ。
我ながら優しいなと、恋も戦も負けしらずのブノア王国第二王子は心の中で
自画自賛した。
公族として大切に育てられた16歳の少女。
剣を持つなど男勝りではあるが、おそらく初めてのキスだ。
それを裏付けるように、舌を入れようとすると驚いたように目を開き、ラファエルの
肩に手をかけて身体を引こうとする。
その背中に左手を回し、右手で顎をくいと下げて唇に隙間を作ると、ラファエルは
固く閉じられた歯列に舌を這わせた。
執拗に唇を吸っていると、息苦しさに顎が開く。
その瞬間に、ラファエルの舌がフェリシテの口内に忍び込んだ。
一度舌が入ってしまえば、あとはラファエルの独壇場で、逃げようとする小さな舌に
ねっとりと唾液を絡ませる。
「んっ」
口内を弄りながら、うっすらと目を開けてフェリシテを窺えば、固く瞳を閉じていて、
男の責めに耐えようと一生懸命の様子。
両の手のひらは、ラファエルの服を強く握り締めている。
ラファエルはその反応に嬉しくなって、彼女の腰を引き寄せた。
より深く唇が重なって、フェリシテの唇の端から、どちらのものとも言えない唾液が
溢れた。
「んんっ!」
不意に、胸板を強く叩かれて、ラファエルは口付けを中断した。
「ばかっ、息が、できない」
唇を拭って、はあはあと肩で息をするフェリシテに、ラファエルを自然に微笑んだ。
「そういうときは、鼻ですればいいんだ」
「うう……」
もっともなラファエルの言に、フェリシテは言葉をつまらせ、耳の先まで赤くする。
そんなフェリシテの細い絹糸のような金髪を優しく撫で、ラファエルは彼女の呼吸が
落ち着くのを待つ間、頬や耳たぶ、髪にキスを落とした。
唇の端に口付けると、けなげにもフェリシテが瞳を閉じたので、ラファエルは唇への
キスを再開することにした。
優しく舌を差しこむと、彼女の柔らかい舌が遠慮がちに絡んでくる。
ラファエルは、そろそろ色々我慢ができなくなっていた。



142:セイレーンの乙女
07/10/13 17:04:48 Imq0Z/Rq

フェリシテの白いドレスは、背中に紐がついていた。
キスをしながら、ラファエルが器用に紐を解いていく。
開いた服の間から直接背中に触れても、フェリシテは少し背中を反らせただけで、
拒絶することはなかった。
どちらからともなく唇を離すと、フェリシテは惚けたようなとろんとした表情で
甘い溜め息を吐いた。
形のよいフェリシテの唇から垂れた二人の唾液を、ラファエルが手で拭ってやる。
ラファエルの親指が、赤味を増した桃色の唇をなぞると、その青い瞳に艶っぽい光が
宿った。
まるで男を誘うようなフェリシテの視線に、ラファエルの手は反射的に白いドレスを
脱がしにかかっていた。
背中側から前の方へドレスを引っ張ると、フェリシテは素直に両腕を抜く。
首から鎖骨、肩へと続く、女らしい柔らかなラインが露わになり、二つの乳房に
ラファエルの視線が釘付けになる。
フェリシテはそれを隠すことはなかったが、やはり恥ずかしいのか、目を伏せていた。
ラファエルは、その間に自身も上半身の服を脱ぎ捨てると、乳房の下の丸いラインを
掬うように両手を伸ばした。
「ぁ!」
フェリシテがシーツを掴む。
ラファエルは、そんなフェリシテの反応を観察しながら、まだ弾力のない薄桃色の
頂点を乳房の中に押しこんでみた。
「やっ」
思わず身体を離そうとする少女を、ラファエルが追う。
「!」
ラファエルが押し倒す形で、二人は寝台の上に身体を横たえた。
フェリシテの身体の儚さと柔らかさを、ラファエルはしばらく味わった。
フェリシテも人肌の温もりと重みを感じて鼓動を高ぶらせた。
「わたし……初めてなの」
消え入りそうな声で呟くフェリシテ。
「分かってる。優しくする」
身を起こし、ラファエルはフェリシテの熱く潤んだ瞳を見つめた。
その瞳が閉じられたのを見て、優しく唇を奪う。
そして、頬、耳たぶ、首筋へと、彼女の存在を確かめるように顔を埋めた。


143:セイレーンの乙女
07/10/13 17:06:45 Imq0Z/Rq

仰向けに寝ているフェリシテから、ラファエルは白いドレスと下着をとりさった。
生まれたままの姿になったフェリシテの全身を見て、ラファエルの口が感嘆の形に
一瞬変わる。
白い肌にはシミ一つなく、豊かな乳房の頂点は、穢れを知らないキレイな薄桃色を
している。
薄い筋肉がついて括れた腰と、適度に脂肪ののったしなやかな太腿から細い足が
すらりと伸びる様は文句なく美しかった。
そして、頭髪よりも少し暗い金色の薄い茂みが被う股間が、男の劣情を誘う。
ラファエルに見られていることが恥ずかしくて、フェリシテは身体をよじった。
それが期せずして、お尻の線と、瑞々しい秘所の一端を見せることになり、
ラファエルの理性が吹き飛びそうになる。
―まずい。
理性は最後の最後まで残しておかなければいけないのだ。
今さらながら、処女のセイレーンの乙女を抱く危うさを思い知り、ラファエルは
ふるふると頭を振った。絶対にコイツはしかけてくると、幾分か冷静な思考を
取り戻して、自分のズボンと下着を脱ぎにかかった。
そんなラファエルを、フェリシテは直視できないようだった。
裸になったラファエルが、再度フェリシテにのしかかる。
下半身に感じる熱くて固い感触に、フェリシテは頬を染めた。
が、すぐに、ラファエルの唇が乳房を這い始め、意識がそこに集中していく。
まるでそれ自体が一つの生き物のような舌が、柔肉を揉み、乳首に粘液を
擦りつける。
「あっ」
ぷくりと起き上がった乳首にラファエルが歯を立てた瞬間、フェリシテの背筋に
悪寒にも似た疼きが走った。
「だめ、こんなの……」
今まで感じたことのなかった疼きは背徳感を呼び起こし、これ以上の刺激に身を委ねる
ことに、恐れを抱かせた。
そんな処女の胸の内を知ってか知らずか、ラファエルの剣ダコのある固い手のひらは、
白いの乳房を揉みしだく。
乳首を摘まみ、薄桃色の乳輪の淵を親指でなぞると、フェリシテの背中が仰け反った。


144:セイレーンの乙女
07/10/13 17:08:09 Imq0Z/Rq

「ぁんっ!」
フェリシテの甘い喘ぎ声に、ラファエルの男根がさらに固くなった。
セイレーンの乙女の喘ぎ声は、普通の女以上に、男をその気にさせる魔力が
あるようだった。
「やっ、やめっ」
今更ながらの拒絶の声に、ラファエルは耳たぶを唇で舐りながら訊ねた。
「どうした、怖いのか?」
「っ!」
答えの変わりに、フェリシテの手がラファエルの胸板を押しのけるようとする。
「わたしが、わたしで……なくなっ…ちゃうっ!」
腹筋を撫でられ、フェリシテが身体をよじらせる。
瞬間、ぎゅっとつむった瞳から、涙の筋が流れた。
「大丈夫。……お前は、お前だ」
フェリシテの頬を大きな手で包んで、ラファエルは言った。
流れた涙を舌で舐めとってやる。
「快楽に抗うな。悪いことじゃない」
そう言って、ラファエルが深く口付けると、フェリシテの手がラファエルの頭を
強く抱いた。
フェリシテの喉が嚥下の動作で上下する。
ラファエルから注がれた唾液を、自然と受け入れるようになっていた。
激しいキスにフェリシテの身体は解けていったが、男の手が太腿に伸びると、
再び緊張で身体を強張らせる。
それでも、フェリシテの秘所はすでに潤いを蓄えていた。
割れ目に沿って指を動かせば、確かに卑猥な粘着性の水音が聞こえてくる。
「はぁぅっ!」
ラファエルの中指が、慎ましやかな肉芽を探り当てた。
円を描くように軽く押しつけると、フェリシテは首を左右に振って身悶える。
新たに溢れ出た愛液が、ラファエルの手のひらを濡らした。
水音は、ますます激しく淫らになっていく。
「んんっ!」
肉襞に蜜を塗り込めていたラファエルの中指が、ゆっくりとフェリシテの
膣内へ沈んでいった。



145:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:09:56 Imq0Z/Rq

とりあえず、ここまで。
sage間違ってすみません。
続きは夜にでも。


146:名無しさん@ピンキー
07/10/13 20:17:49 J2rRph7j
ぐっじょび

147:名無しさん@ピンキー
07/10/13 22:04:10 /NOdaAP7
全裸で星座して待ってる

148:名無しさん@ピンキー
07/10/13 23:11:19 6W96EX2w
ところで唐突なデレ化の裏には一体何があったんだw

149:名無しさん@ピンキー
07/10/14 00:45:41 KJJv8n96
セイレーンの乙女の続きです。

150:セイレーンの乙女
07/10/14 00:48:55 KJJv8n96

ラファエルの陰核と秘唇への愛撫によって、フェリシテのそこはしとどに濡れ、
入り口を指でさすれば、異物を飲みこもうと、ひくひくと動くまでになっていた。
「もう、だめ……おかしく、なっ…ちゃう」
白い肌は、いまや全身が桃色に染められ、汗を滲ませていた。
「はぁん!」
自ら吐き出した蜜の塊が膣内を流れるだけで快感を感じている。
「入れるぞ」
前後不覚に陥っているフェリシテのために、一応断りを入れたが、拒絶の言葉は
返ってこなかった。
時間をかけてほぐしたとはいえ、処女の中は狭い。
先端が入っただけで、かなりの圧迫感があったのか、フェリシテは初めて
彼の名を呼んだ。
「ラファエルさまぁ……」
「!」
名前を呼ばれただけで果ててしまいそうで、ラファエルは焦った。
―恐るべし、セイレーンの乙女。
自分の欲望のままに事を終わらせることは簡単だったが、フェリシテへの
配慮が、ラファエルの頭の片隅を支配していた。
こんなときでも女に甘い自分にラファエルは苦笑する。
これは負けられない戦いだというのに。
「フェリシテ……」
際奥よりも手前で行く手をはばまれ、ラファエルは腰に力を入れた。
「んんん! あーっ!!!」
内臓を串刺しにされたような激痛に襲われたフェリシテの瞳が見開かれ、
その身体が跳ねた。
「ぃい痛っーーーーーー!!」
そんなフェリシテの身体を強く抱きしめ、ラファエルは最後まで腰を進める。
フェリシテも夢中でラファエルの身体にしがみついた。


151:セイレーンの乙女
07/10/14 00:50:08 KJJv8n96

「あなたが初めての人でよかった……」
まだ痛みの収まらぬフェリシテが、自分の身体を撫で、顔の至るところにキスを
しているラファエルに向かって呟いた。
瞳に徐々に光が戻ってきている。
これも作戦のうちかもなと、一瞬、ラファエルは穿った捉え方をしてしまったが、
それでも、やはり最後は素直に嬉しく思う。
「光栄だ」
ラファエルは、フェリシテの目尻にキスをした。
「もう、平気だから……」
「ああ」
フェリシテが無理をしているのは分かったが、このままじっとしていても、完全に
痛みが消えることはないので、ラファエルは円を描くようにして、腰を動かし始めた。
わざと陰核をさするようにし、乳房の柔らかさと突起の感触を楽しむように胸板を
密着させる。
「んっ……ん…っ…」
少しづつ腰の動きが大胆になる。
結合分にちらりと視線をやると、男根も秘所も破瓜の血に染まっていた。
ラファエルは思わずにやりと笑ってしまった。
「ぁ…ぁん…ん…あっ……熱っ……熱いのっ」
しばらくすると、フェリシテの声に甘さが混じり、すらりとした白い足が
ラファエルの腰に絡みついてきた。
背中にまわされた手に導かれるように、ラファエルがその艶やかな唇を舐めると、
可愛らしい舌が差し出される。
貪るように吸ってやると、膣壁がわなないた。
そろそろくるかなと、ラファエルは思った。
なるべくフェリシテの声に集中しないよう、腰を振ることに専念し、処女の膣内を
蹂躙し続けた。


152:セイレーンの乙女
07/10/14 00:51:57 KJJv8n96

「ラファエル様……」
狭い膣壁がさらに締まった。
背筋を駆け上る快感に耐えきれず、ラファエルはフェリシテの耳元に顔を埋めた。
「好き」
頭に直接響くような、セイレーンの乙女の言霊。
「フェリシテ…っ!」
ラファエルは、もはや彼女の身体を労わることも忘れて、己の欲望を
放出することだけを目的に本能的な往復を開始した。
フェリシテの肩を押さえて、より深くつながるようにと角度も変えた。
「あっ…あっ…んっ…ゃっ…ぁん!」
フェリシテの口から漏れる甲高い嬌声が、ラファエルの脳をチリチリと焦がす。
その上、微妙に腰まで振ってくる。ラファエルは密かに舌を巻いた。
「ラファエル様ぁ……愛しています」
その冷めた色合いとは対照的な熱い光の篭もった瞳で、ラファエルを見つめる
フェリシテ。
心臓が大きく脈打ち、頭を殴られたような衝撃がラファエルを襲った。
さらに秘肉が根元から搾り取るようにラファエルの男根を締めつけて、
主の意志を無視して暴発寸前の状態に誘う。
「ずっと……私を、愛して、永遠に」
フェリシテがラファエルの背中をすがるように抱きしめて、言霊を発する。
「!」
その言霊を合図に、ラファエルは、フェリシテの際奥に己の欲望の楔を
強く打ちつけた。
「あああああっ!!」
白い喉を晒してフェリシテの身体が反り返り、男の背に爪を立てる。
全身を震わせて、今処女が果てた。
「……おねがい」
イった後に繰り返される膣内のぜん動運動に、ラファエルは何とか持ちこたえた。
『俺も愛してる』
承諾の言葉を必死の思いで飲み込み、交わる前から決めていた残酷な言葉を
紡ぐため、口を開いた。


153:セイレーンの乙女
07/10/14 00:53:16 KJJv8n96

「お前の愛には、応えられない……」
そう言った瞬間、初めての絶頂に恍惚としていたフェリシテの顔が、引き攣った。
「いやーーーー!!」
悲痛な叫び声に、膣内がきつく締まる。
ラファエルは、滾る欲望を放出するために、激しいピストン運動を再開させた。
一度絶頂を極めたフェリシテの身体が、再び燃え上がり、快感と絶望の相反する
感情に翻弄されて、キレイな顔を歪ませていく。
「ど、おして? ……なんで、なんで、拒否するの!?」
青い瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
その瞳からは光が失われ、激しく突かれるままに、中空を見つめている。
その姿は、痛々しくもあったが、ラファエルは強烈な劣情を掻き立てられた。
白い太腿の裏を抱えてより深く挿入し、悲しみにむせび泣く彼女の顔と妖しく
揺れる乳房とをまじまじと見つめて腰を振る。
「はうっ……ぁんっ……ひどいっ……ぃやぁ…こんなぁ」
二度目の絶頂に向けて、フェリシテの身体は強制的に昇り詰めさせられていた。
結合部からは愛液が飛び散り、肉のぶつかる音が鳴り響いている。
「ラファエルさま……ラファエル…さ、まぁ……」
官能の渦に意識が混濁しているのか、甘えるように名前を呼ぶ。
伸ばされた腕に応えて、ラファエルは強くフェリシテを抱きしめた。
フェリシテの足がラファエルの腰に絡みつく。
ラファエルは、小刻みに最奥をついた。
「あ、ぁあーー! ラファ、ラファエル様ー!!!」
怒張が、引き千切らんばかりに締めつけられた。
―くっそ。たまんねー
ラファエルの視界で光が弾け、女の膣内に初めての白濁液が放たれた。
男根が脈打つ度に、何度も熱い滾りが子宮口を叩く。
フェリシテに体重を預けたまま、ラファエルは全身で呼吸した。


154:セイレーンの乙女
07/10/14 00:54:48 KJJv8n96

―勝ったな。
瞳を閉じて荒い息に胸を上下させているフェリシテから、本懐を遂げた男根を
引き抜くと、秘裂から鮮血の混じった白い粘液がとろりと零れ落ちた。
「どうして……」
目を開けたフェリシテは涙を拭き、寝台の天蓋をじっと見ていた。
「純潔まで捧げたのに……」
可哀想ではあったが、ラファエルにはこうするしかなかった。
「私のこと、そんなに嫌い?」
ラファエルは、流した涙で頬に張りつく金髪をそっと梳くった。
「俺が幼少のみぎりに通っていた王立学院の師に、若い頃諸国を旅していた
という変わった男がいてな。そいつが言うには、セイレーンの乙女の純潔を
散らす場合には、かなりの覚悟がいるというのさ」
「あなた! 知っていたのね!」
「ああ。セイレーンの乙女は、破瓜の際に、相手の男を一生自分に縛りつける
ように言霊を発するとな。操り人形になりたくなければ、愛の言葉を返すこと
なく拒絶しろと教わった」
ラファエルは、爽やかに笑う。
「ひどい人!」
「ふっ。何を言うか。自分たちだって、俺を篭絡して、講和条約をユベール
優位にするつもりだったんだろーが」
「処女を奪ったんだから、責任をとるのは当たり前でしょ!」
「女大公の旦那のように骨抜きにされて、いいようにこき使われるのが、
責任のとり方とはお笑いだ」
「でも、二人は愛し合ってる。幸せになれるわ!」
「俺は、そんな、砂糖菓子みたいな幸せはいらない……」
「最低!」
完全に頭に血が上ったらしいフェリシテは、そそくさとドレスをまとうと、
覚束ない足取りで出口へと歩いた。
「ちょっと、待て」
ラファエルの声に、フェリシテの動きが不自然なくらい、ぴたりと止る。


155:セイレーンの乙女
07/10/14 00:56:15 KJJv8n96

「俺は何も責任をとらないとは言ってない」
振り向いたフェリシテの頬が強張っている。
「お前のことは、ちゃんとこれからも可愛がってやるよ。下僕としてな」
「ふざけないでよ!」
ぷいっと顔を背けて、フェリシテは今度こそ部屋を出ようとする。
「お座り!」
「きゃあっ」
膝がくずれて、フェリシテはその場にしゃがみ込みんだ。
何が起こったか分からない様子で、目を瞬かせている。
ラファエルは満足そうに笑みを浮かべた。

「純潔の契りで相手の男をものにできなかったセイレーンの乙女は、その男に
心を捕らわれ下僕となる。まさか、ここまでのこととはね。最強の人心掌握術
には、それなりの対価が伴なうって訳か。爪が甘かったな、フェリシテ。
お前の腰の動き、初めてにしてはなかなかよかったぞ。セイレーンの乙女は、
男を虜にするために、処女でも感じるって本当だったんだな」 
ラファエルはそこまで言うと、フェリシテの肩が震えていることに気がついた。
嗚咽の声も漏れている。
ラファエルは黙って赤褐色の髪を掻いた。そこまで苛めるつもりはなかった。
「来いよ」
ラファエルの声に、フェリシテの泣き声が止む。
が、一向ににラファエルの方へ来る気配はない。
「来い」
語気を強めて繰り返すと、フェリシテは緩慢な動きで立ち上がって、
ラファエルのいる寝台まで歩いた。
今となっては、ラファエルに逆らうことなどできないのだ。
彼の言霊には絶対服従。
それでも瞳は伏せたままのフェリシテを、ラファエルは強引に自分の側に
引き寄せた。
「許せ、フェリシテ。俺は女に主導権を握られるのが嫌いなんだ」
ラファエルの真剣な顔を見て、フェリシテの頬を新たな涙が伝った。


156:セイレーンの乙女
07/10/14 00:57:55 KJJv8n96

「あなたのことなんて、好きでもなんでもないし。これだって、ユベールの
ためだもん」
男の残滓が新たに秘所から吐き出され、その感触にフェリシテは身を震わせた。
「ちゃんと、あなたを好きにならなかったから、こんな結果になっちゃったんだわ。
言霊の力が足りなかったみたい。自業自得ね。まだまだ未熟だったんだ、私」
「フェリシテ……」
「でも、ユベールにはまだまだ優秀な乙女がいるから、あなたなんて、明日には、
陥落しているはずよ、きっと。そうなったら、見物ね。骨抜きにされちゃえば
いいんだから! あっ」
悲痛な涙を流して喋り続けようとするフェリシテの唇を、ラファエルのそれが塞ぐ。
もがくフェリシテを押さえつけ、ラファエルは荒々しく口付けた。
十も数えないうちに、フェリシテは降参する。
初めて感じたこの激しい気持ちは偽ることができないことを悟った。
「フェリシテ……俺は、明日もお前がいい」
今までで一番長いキスの後、ラファエルがそう言うと、フェリシテは熱く潤んだ
瞳で愛する男を見つめ返した。
「嫌か?」
「そんなこと、ない」
フェリシテは慌てて首を横に振った。
まだヒリつく膣内がきゅんと縮まって、新たな蜜が滲み出る気配がする。
自分に淫乱な素質があるような気がして、フェリシテは眉根を寄せた。
「初めてでも腰を振る淫らな女は嫌い?」
「いや、悪くない」
「じゃあ……終わったばかりなのに、すぐ欲しくなる女は?」
ラファエルは少し驚いたが、勇気を振り絞るように、頬を紅潮させて訊ねる
フェリシテの姿を見て、琥珀色の瞳を細めて微笑んだ。
「望むところだ」
すでに彼の分身も固い。
ラファエルは、再びフェリシテを押し倒し、寝台の上に組み敷いた。
二人の初めての夜は、まだまだ終わりそうになかった。


157:セイレーンの乙女
07/10/14 00:59:08 KJJv8n96

一ヶ月後。
戦の後始末と講和条約締結のための諸手続きを終えたブノア王国第二王子
ラファエルは、故国へと凱旋するため、ユベール公国を後にした。
その軍の中には、武装して帯剣するフェリシテの姿もある。
彼女は第二王子付きの近衛騎士として、あらたな人生をスタートさせた。
純潔の契りで失敗したため、下僕という屈辱的な立場であったが、それでも
フェリシテは幸せに似た温かい感覚に包まれていた。
「フェリシテ! こっちに来い!」
呼ばれてフェリシテはあわてて馬を進めて、ラファエルの一馬身後ろにつけた。
その隣では、ヴァンサンが渋い顔をしている。
フェリシテのお蔭で、ユベール公国の他の女たちの操は守られ、
下手にブノア王家の子種を残すということはなかったのだが、
ヴァンサンはフェリシテの扱いに困っていた。
ただの臣下なのか、愛人なのか、それとも未来の―。
そんなヴァンサンの苦悩を余所に、当の王子はブノア王国に関する知識を
喋り倒している。
王子の晴れやかな顔を見ていると、ヴァンサンも苦言をはさむことができず、
ただただ王子の幸せを祈るばかりだった。


158:名無しさん@ピンキー
07/10/14 01:00:31 KJJv8n96

以上です。
長々と失礼しました。



159:名無しさん@ピンキー
07/10/14 02:06:24 oBRmPlou
GJ!
途中二人がどうなるのかハラハラしたけど最後は幸せな終わり方で良かった!萌えた!

フェリシテ可愛いよフェリシテ


160:名無しさん@ピンキー
07/10/14 09:20:15 oeg6ayQ9
一部トンデモな所もあったがGJ

161:名無しさん@ピンキー
07/10/15 03:42:44 QJHNo88A
GJ!言霊に縛られ、本当は恥ずかしいのにラファエルのいいように乱れさせらる
フェリシテのこれからの痴態に期待!しかも勝ち気っ娘と意地悪主人…萌える設定だよう!

162:名無しさん@ピンキー
07/10/15 13:22:31 +a8bGT6k
戦争捕虜と戦勝国の王子が何でラブラブなのか全く理解できないんだが
誰か三行

163:名無しさん@ピンキー
07/10/15 17:35:22 8NYuvShW
まあまあ

164:名無しさん@ピンキー
07/10/15 18:53:33 +cI3aUoA
まあ、>>160ってことだろう。
しかし王の側室に姫を差し出すって
おかーさんは賭けに出たんだろうが、ラファエルはいいのか?
王が誘惑に負けてアイチテルーとか言っちゃったら終わっちゃうじゃんw

165:名無しさん@ピンキー
07/10/15 22:21:16 0EcQ8HG6
コメディなんだし(だよね?)楽しければおk
てなわけでGJでした。

166:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:14:04 nmexR5Mm
>>162
侵略され敗北して敵国の領土に併合されたら、旧王家の人間は処刑されるかもしれんが
この話の場合は、降伏して宗主権を認めて属国になっただけで、一応独立国としての体
裁は保たれてる。ということは、建前上はフェリシテちゃんは他国の王族の姫なんだか
ら、粗末に扱う方がおかしいんじゃないか。
言霊はファンタジーとして、この設定はトンデモとは思わんかったけど。

面白かったので、続き期待してます。

167:名無しさん@ピンキー
07/10/17 01:59:45 Um3kerbG
>>164
きっとパパも美男子ナルシストで高貴な精神をお持ちなんだよ!

>>166
色々と落ち着けw

俺だけかも知らんが、投下した後で前後の内容の食い違いに気付くのはたまにあることだから
そういう時は深く追及しないで各自脳内補完するがよろし

168:名無しさん@ピンキー
07/10/17 02:26:28 8ErVypkA
>>166
いや、そこの設定じゃなくて。
例えばフェリシテが出会い・情事前・中・後でキャラがブレすぎじゃないかと
この簒奪者め!と罵った相手に、チャンスとはいえ娼婦の真似事しろって言われて
王族なのに悔しがるとか一切なしで「ごめんなさい」だし。
「申し訳ありません」「ご無礼を…」とかじゃなくて。立場下なのに
なんかあまりに親密な空気が流れてるから、昔からの知り合いだったのかと思った
高貴な感じ→甘えキャラ→強気な町娘風っていう変遷がなんとも

とはいえ面白かったし、かなり好きな部類w
濡れ場の描写も良かったww

169:名無しさん@ピンキー
07/10/17 18:22:07 lHmKw6fW
>>168
なんというツンデレ。

何だかんだいいながら皆158が好きだという。
その人気にshit!!!


170:名無しさん@ピンキー
07/10/18 01:57:00 9LnSJj5P
さりげなく最後の英単語がキツイなと
無粋なツッコミをしてみる

171:名無しさん@ピンキー
07/10/19 08:33:16 iGk+o7if
~にshitって割とよく見る気がするけど?

172:名無しさん@ピンキー
07/10/22 07:24:51 o5MChuue
ほしゅ

173:名無しさん@ピンキー
07/10/23 13:30:42 nuw0yekC
浮上

174:名無しさん@ピンキー
07/10/27 01:04:58 0Vpt1sw8
保守しとくべ

175:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:00:59 o/h9gFxV
<M'aider M'aider>

@@1

「嫌です。」
きっぱりと断言される。にべもないとはこの事だ。

「困ったな・・。」

「困りません。それが私の仕事です。さ、若様。」
そう言いながら若葉さんはいつものようにきゅいと肩までの髪をちょんまげに結わえ上げた。
若葉さんは見た目だけは凄くソリッドな感じの美人だから
そういう伝法な動作がなんとなく似合う。

「でも」

「でもも味噌もありません。若様は私をクビにするおつもりですか?」
「そんな事無いよ。でもさ。僕の話を聞いてくれても」

「私の仕事は私の仕事。若様の仕事は私にお世話される事。
 次代の御当主がそんな我侭ばっかりじゃ駄目なの。」
はいはい。と言いながら僕の背中を押す。

若葉さんは大人の女だ。
確か今年でもう17歳になっている。
13歳になったばかりの僕とは違う。
だからこうやって理屈で攻められると、いつも何もいえなくなってしまう。

それでも若葉さんは僕付きの上女中の中では
一番年が若いから何でも相談がしやすい。
そういう事もあって提案したのだがにべも無く却下されてしまった。

若葉さんはぐいぐいと背中を押す。そして言った。
「さ、お風呂に入りましょう。若様。」

176:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:03:04 o/h9gFxV
@@

ちょっと遅かったけど毛が生えました。(まだ一本だけだけど)
だからお風呂には1人で入りたいです。

要求はそれだけだ。
それだけなのだが、それをどう言うかが問題なのだ。

「毛が生えたので1人でお風呂に入ります。何か文句でも?」

そう言えれば苦労はしない。
僕だって男なんだ。プライドだってある。
そんな事を言える筈が無い。

だって絶対にからかわれるもの。
見せてみろとか言われる。
あとなんかこそこそと裏で話し合ったりするきっと。凄く真面目な顔で。
絶対嫌だ。冗談ではない。

現在、僕付きの上女中は3人いる。百合さんと、文乃さんと、若葉さんの3人だ。
それぞれ教育担当、生活担当、両方の補助となっている。

お風呂に入る担当なのは生活担当の文乃さんと若葉さんの2人だ。
今日は若葉さん。
しかし上女中の3人の代表は一番年上の百合さん。
だれに相談するのかが考えものなのだ。


177:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:04:04 o/h9gFxV

一緒に入りたくないと言った時、
百合さんは理由を徹底的に追求してくるだろう。
何が問題で、それに対してどういう解決方法があり、どう実現していくか。
普段の真面目で融通の利かない性格がフルに発揮されるに違いない。
ちょっと気分でとか察してくださいとかそういうのは一切通用しない。
根掘り葉掘り理由を聞かれ、追い詰められ、結局言う羽目になる。

文乃さんの場合、恐らくパニックになる。
普段の献立だとか身の回りの事だとかそういった事は完璧な文乃さんだが、
その代りといっては何だけれど致命的に察しが悪い上に
突然の事態に対応するのがとても苦手だ。
あと結構思想がネガティブ。
多分さめざめと泣いた後お世話になりましたとか言う。多分というか絶対。
それも困る。

でも、若葉さんなら。
大人とは言っても一番年は近い事だしもしかしたら。と思ったのだ。
僕の様子からぴーんと察してくれて、からからと一つ笑って、
よし判ったよ。私がうまく皆に話しておくね。
なんて言ってくれるかなーとか思ったわけだ。

嫌です。の一言で却下されるなんて事は思いもしなかった。
まさか全く察してくれないとは。
頭を抱えたくなる。


178:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:05:58 o/h9gFxV

@@

多分、僕が元から相馬の家にいたのであれば
こういう事にも疑問を持たなかったのだと思う。
いつまでも慣れなかったり、違和感を持ったりするのは
多分、僕が貰われっ子である事が原因にある。

元々遠縁ではあったらしいが、一度も会った事も無い相馬の叔父さんの養子となったのは4年前、僕が9歳の時になる。

若くして僕を1人で産んだ母は、4年前に僕を置いて逃げた、らしい。
本当のことは良く判らない。
ある日学校から帰ったらその時は会った事も無かった相馬の叔父さんがいて、
「始めまして。秀君。急な話なんだけどお母さんは病気になって入院してしまったんだ。今日からは叔父さんの家で暮らすといい。」
急にそんな話があるかふざけるなという話だけれど、
部屋の中に母はすでにいなかったし当時小学生の僕に選択権なんてものは無かった。
後々母が病気ではなく僕を捨てたのだろうという事は想像が付いたが
それにしても相馬の叔父さんも下手な嘘を吐いたものだ。

訳も判らないまま叔父さんに附いて行き、
馬鹿でかい家に着いたその瞬間いつの間にか僕は相馬の養子という事になっており、
百合さんと、文乃さんと、若葉さんが連れて来られて
「今日から秀君付きの子達だ。何でもこの子達に聞きなさい。」
と紹介されたのだ。
今思い返すに拉致に近い。
跡取りを拉致してくる金持ちというのも想像がつかないけれど。


179:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:07:30 o/h9gFxV

まあそんな訳で相馬の家に入った訳だけれど
まず戸惑ったのは訳の判らない仕来りやルールだ。
相馬の家は貴族の出の上に閉鎖的な田舎にあるからか色々と仕来りが多い。
叔父さんに連れてこられた時に戸惑うかもしれないとは言われてはいたが
実際に生活を始めてみると予想以上、というか今まで普通であった事が
相馬の家では全くの非常識であったりするのだ。
跡取りには特にそういったルールが色々とあるようで、
急に跡取りとさせられた僕には未だに良く判らなかったり理解できない事が多い。

例えば、上女中と下女中。
相馬の家には代々近くの村や町からお手伝いさんが入る。
上女中さんは住み込み、下女中さんは住み込みと通いの2通りに分かれている。
上女中と下女中には厳密な階級があるらしくて
上女中の仕事、下女中の仕事は明確に分担されている。
上女中は当主や跡取りに付く専門の女中さんだ。
当主、跡取りに子供の頃より専属で付けられて
若い頃は教育、その後は当主にくっついて秘書の様な仕事をするらしい。
だから同年代か少し年上が多い。
女中さんというより執事さんとかそういった方が近いのかもしれない。

主人と女中さんという区別はあるものの朝から晩まで一緒にいるので
パートタイムの仕事、というよりも一緒に生活をしているような関係になる。
仕事柄ずっと共にいる事、当主の仕事に携わる事もあるという事で
生活全般において他の使用人の人からは優遇されていて
若葉さんなんかも学校に行きながら上女中の仕事をしている。
当然当主、跡取りとの関係も近いものとなり、
相馬の叔父さん付きの上女中は10人ほどいるけれど
昔からの人はもう30年にもなる人もいる、らしい。
ちなみに若葉さんのお母さんも相馬の叔父さんの上女中をしていたりする。


180:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:08:31 o/h9gFxV

下女中は所謂家の中の仕事を分担している。
お掃除をしたり、洗濯をしたり、といった仕事だ。
その中でも通いの下女中さんは村からその年毎に入れ替わりで入ったりしていて
村のおばあちゃんが空いた時間に手伝いにきたりもしている。

この上女中、下女中という階級が曲者なのだ。
色々な仕来りに縛られているみたいで、
ルールが判らないで付き合うと色々と苦労をする。
例えば下女中は当主、跡取りには触れてはならないという仕来りがあるらしく。
最初の頃はうっかりと色々な事をして大騒ぎになったりもした。


181:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:11:43 o/h9gFxV

ここで言っておきたいのは仕来りとは厄介だとはいうものの
厄介なのは別に触れてはいけない、というルールそのものだけにあるわけではないのだと言う事だ。
仕来りとは法律ではなくて考え方なのであるという事を僕は相馬の家に来て始めて知った。

この触れてはいけない問題もルールとしてはどうも
下女中さんからみだりに馴れ馴れしくしてはいけないという位の事であって
僕や相馬のおじさんが決して触れてはいけないという訳ではないらしい。
現に相馬の叔父さんなんかはよく出かけに特に若い子供の下女中さんの頭を撫でたりお菓子をあげたりもしている。
それを叔父さん付きの上女中さんは別段見咎める事もなくニコニコとみていたりもする。

しかし仕来りの怖いところはどうも下女中に触れるとか仲良くするという行為は
何故だか上女中のプライドをとても刺激する部分もあるらしいという事だ。
おばあさんとか年配の下女中さんだとまだいいのだけれど、
百合さん、文乃さん、若葉さんと同年代の下女中さんについこちらから何かを取ってもらったり、
一緒に何かをしたりすると大変だ。途端に3人の機嫌が悪くなる。
この前は雨が降っていたからつい下女中の雪子さんという人の傘の下に潜り込んで一緒に傘をさしたら1週間口を聞いてくれなくなった。


182:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:12:30 o/h9gFxV

まあ、上女中さん下女中さnだけをとってもそんな具合であるわけで。
相馬の家では結局生活全てがこんなふうに何らかの仕来りやルールに支配されている。
最近では僕のやる事なす事に驚かれる事にも慣れてしまったが
やってきた当初は何をやっても目を丸くされるか怒られるかで
ずいぶん戸惑い、寂しい思いもした。

でも、そんな時にでもどうにかやってこられたのは百合さんと、文乃さんと、若葉さんがいたからだ。
3人ともずっと相馬の家にいるから僕のやる事なす事に未だにびっくりするらしいけれど。
僕が戸惑っている時は年の近い3人がいつも傍にいて何もかもを教えてくれたおかげで何とかやってこれたという面が多い。
だから僕は未だに3人に頭が上がらないのだ。


183:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:13:31 o/h9gFxV

@@

ちなみに上女中さんと一緒にお風呂に入る。
という行為も相馬の家では当たり前の行為である。
僕が男で上女中さんが女の人、というのは断る理由にならないらしい。

相馬の家に来た直後、一緒に入ろうとした若葉さん(当時13歳)に恥ずかしいから1人で入ると強く言って1人で入った僕は
30分後ホカホカになってお風呂を出た瞬間に、立ち尽くしボタボタと涙を零す若葉さんと
その隣で相馬の叔父さん付きの上女中さんの1人が百合さん(当時18歳)と文乃さん(当時15歳)を凄い勢いで叱り飛ばしている光景と
他の叔父さんの上女中さんが青ざめた顔で膝を付いて僕の方に何か問題があったのかを問いかけてくる光景に出くわした。
それ以降、あきらめてお風呂は文乃さんか若葉さんと一緒に入るようにしている。


184:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:14:23 o/h9gFxV

まあもちろん一緒にお風呂に入るといっても
一緒に湯船に浸かってのんびりする、という訳ではない。

僕と一緒に入る上女中さんは身を清めるという意味で
僕が入る前に1人で上女中さん用のお風呂に既に入っている。
一緒に入るというのは手伝いをするという訳だからだ。
だから一緒に入るといっても僕が湯船に浸かっている間、
若葉さんはいつものメイド服のような服を着て洗い場で待っていて、
体や頭を洗うのを手伝ってくれる訳だ。
まあ逆に言えばこれが僕の我慢出来る限界でもある。
若葉さんも一緒に湯船に浸かるなんて話になったら
さすがに僕も万難を排してでも1人で入るようにする。



185:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:15:10 o/h9gFxV

@@

「若様さ、さっきは何でお風呂に一緒に入りたくないなんて言ったの?」
ざばざばと僕の背中にお湯をかけながら若葉さんは声を掛けてきた。
僕はスポンジを手に持ちながら体の前面を洗っている。
前面に関しては絶対に駄目だと強く言っている為、
若葉さんは諦めてその間はお湯を背中にかけていてくれるけれど、
文乃さんは未だに隙あらば洗ってこようとするから油断がならない。

「だって、やっぱりおかしいよ。1人で入れないわけじゃないのに。」

「・・・ふーん。でも若様は1人で出来る事を全部1人でやる訳じゃないでしょう?」

ざばーんとお湯をかけて僕の背中を撫でながら
若葉さんはちょっと考えてからそう言った。
因みに僕がお風呂に入るのを手伝う訳なのでお湯はざばざばと使われる。
洗い終わる頃には若葉さんのメイド服も文乃さんの女中服も終わる頃には毎回びしょ濡れになって
正直刺激が強いので僕は洗ってもらった後は若葉さんと文乃さんの方は見ないようにしている。


186:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:16:31 o/h9gFxV

「どういう事?」

「例えば、若様はご飯を作れないわけじゃないよね。
ご飯を炊いて、お魚焼いて味噌汁くらいは作れるんじゃない?」
「まあ、その位は」

「じゃあ、若様は作るの?」
「だって、毎日毎食作るのは大変だよ。それは出来ないって事になるんじゃない?」

「うん。確かに意地悪な質問かもしれない。でもこれは例えばの話だから若様、聞いて。」
「・・・うん。」

「若様。私は違うけど、下女中の人の中にはお屋敷でお手伝いをさせて頂いてやっと家族が食べられる人もいるの。
若様がご飯をつくる事になっちゃったらご飯を作ってくれる下女中はいらなくなっちゃうんだよ。」
「・・・」
「ご飯だけじゃない。お掃除も、お庭も全部そう。やらなくてもいい仕事はあるかもしれない。合理的に考えればね。
だってお庭が綺麗じゃなくてもご当主様はもしかしたら全然困らないし、
もっと言えばご当主様が働かなくても、お屋敷には全然困らないくらいのお金がある。」
「うん。」


187:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:17:58 o/h9gFxV
「でも、ご当主様はお仕事をしていて運転手はご当主様の送り迎えをしている。
ご当主様をお仕事の場所に連れて行くのが彼の務め。
お庭の人はお庭を綺麗にして、そこに働く人やご当主様や若様、お客様に恥ずかしい思いをさせないのが務め。
下女中は屋敷内の事を全て遺漏なく保つ事が務め。
上女中の皆はご当主様や若様のお手伝いを一生懸命して
ご当主様や若様がお屋敷にいる間に何一つ心を痛めなくて済むようにするのが務め。」

「うん。」

「やらなくてもいいよ。って若様に言われてしまったら困る事もあるの。
それは忘れないで欲しいな。」

「・・・ごめんなさい。」
僕が洗い終わったスポンジを若葉さんに渡しながら俯くと、
若葉さんはん、頷いて笑いながらこう言った。

「それに、若様は私達に気を使ってそういう事を言う事もあるみたいだけど。
 私は、若様に今している事で嫌な事なんて一つも無い。
 これも忘れちゃ駄目なことかな。」


188:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:19:17 o/h9gFxV

そしてもう一回ザバーンとお湯をかけてからこう言った。
「ま、文乃とか百合さんとかは気が付いてないみたいだけど
私は若様の恥ずかしいってのは判らなくも無いけどね。」

「本当!?判る?」
やっぱり、若葉さんは判っていてくれていたのだ。くるりと振り返る。
するとメイド服をびしょ濡れにしている若葉さんが目に入って。
シャープだけどなんだか胸の辺りだけがやたらと主張していて
そんな体の線がくっきりと浮き出ているからなんだか凄く刺激だけれど
そんな事は今は関係ない。

若葉さんは振り返った僕の顔を見て胸を張りながら言葉を続ける。
「そりゃ判るわよ。だって、若様9歳でお屋敷に来たでしょう?
私だってずっとお屋敷にいて若様だから当たり前だけど他の男の人だったら別だよ。
お仕えするのなんて絶対無理。」

「じゃ、じゃあ若葉さんもやっぱり恥ずかしいの?」


189:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:20:10 o/h9gFxV

若葉さんはちょっと猫目がちな目を伏せてうーんとちょっと考えてからこう言った。
「だって若様だもの。一緒に入ってお世話するのは当たり前だから恥ずかしいっていうのはそんなにないかな。
でも、やっぱりちょっとね。」
そう言ってちょっと。と親指と人差し指をくっつけながら笑いかけてくる。
若葉さんは普段はシャープな感じがするからそうやってふにゃっと笑うと、
とても魅力的な可愛い顔になる。

「そっか!やっぱり若葉さんも恥ずかしいんだね!」

「それに若様最近・・・あれ?」

「そうかあ。よかった。僕いっつも若葉さんとかに迷惑掛けてばっかりで、
ここに来てから僕の考え方は変なのかもしれない、
変なのかもしれない。ってずっと・・って若葉さん?」

ふと気が付くと若葉さんの視線が僕の下腹部に張り付いていた。
喜びのあまり若葉さんに向き直ったのを忘れていた。
若葉さんも僕にお湯をかけながら話していたから泡で隠されてもいない。
「うわっ!」
あわてて前を押さえて後ろを向く。


190:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:21:13 o/h9gFxV

「・・・若様・・・・」

恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
勿論お風呂に入っているのだから今までだって何度も見られているのだけれど
こんなにまじまじと見られることは無かったし見せないようにしていた。

「・・・若様、毛が・・・」
恥ずかしい。
でもまあ毛が生えた位、恥ずかしがる事はないのかもしれない。
生えたといっても良くみなければ判らないくらいだし、
大体13、今年は14にもなるのに生えてなかった方が異常なのだし。
当たり前の話だ。
そう思うと少し気が楽になった。
それに今、僕の胸の中には若葉さんと分かり合えた喜びがあった。
きっと若葉さんはこんな事を告白する僕の事を笑いながらからかうに違いない。
もしかしたら、ちょっと真面目にこういう事の話をしたり
それこそこれからはお風呂は自分1人で、って話になるかもしれない。

「あ、あはは、う、うん。実は若葉さん、遅かったけど僕生えたんですよ。毛。
ちょっとだけだけ」


その瞬間。
若葉さんは僕に最後まで言わせずすたっと立ち上がった。


191:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:22:10 o/h9gFxV
「若様、少々お待ち下さい。」
口調まで変わっている。
立ち上がったその勢いで若葉さんはびしょ濡れのまま風呂場を飛び出すと
文乃さんと百合さんの名前を呼びながら風呂場を出て行った。

「あれ、若葉さん?若葉さん?」

1人で取り残される。

嫌な予感がする。
ここの仕来りとか慣習とかいうのには慣れていたはずなのに。
いつもそうだ。
忘れちゃ駄目だった。
なんでもないことなのかなって思って口に出した瞬間にこうなるのだ。
判り合えたと思った瞬間に。



192:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:22:49 o/h9gFxV

風呂場に近づいてくる足音が聞こえる。
かなりの大人数のようだ。
「赤飯を早く用意しなさい!!今日は全て作り直し!」
台所担当の昔からいるという大柄な下女中のおばさんの
気合の入った声が窓の向こうからかすかに聞こえてくる。
何処か遠く、屋敷の門の方向から何台もの車が
猛スピードで出発しているような音が聞こえる。

予想以上だ。
大騒ぎだ。

何か良く判らないけれど、何かが起こっている。
ちょっとでも期待をする度にいつもそうだ。
とりあえずほんのちょっと先の未来だけは僕にも判ったから湯船に飛び込んでおく。

その瞬間、風呂場のドアが音を立てて開いた。
百合さんと文乃さんがもつれ合いながら風呂場に入ってくる。
その後ろには濡れネズミの若葉さんと叔父さん付きの上女中さんの姿もある。



193:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:23:48 o/h9gFxV

百合さんと文乃さん、若葉さんは何かを言いたそうにこちらを見ている。
しばし、時間が止まる。

又きっと何かがあるのだろう。
話に聞くのも怖い。絶対碌な事じゃない。

でもまず言う事がある。
何が来るにしてもまずはこの要求を呑んで貰ってからだ。
顎までお湯に浸かりながら、僕は3人に向かって叫んだ。

「いいからパンツ持ってきてください!!
パンツ渡してここから出て行ってくれるまで、絶対上がらないからね!」





194:uni ◆/pDb2FqpBw
07/10/31 19:25:33 o/h9gFxV

----

始めまして。宜しくお願い致します。


195:名無しさん@ピンキー
07/10/31 19:37:57 crRBrpk6
ごめん、登場人物が日本人のって萌えないんだー。

196:名無しさん@ピンキー
07/10/31 19:45:50 Z0FIFuWQ
うにさんだ…マジでようこそ。続き期待してます。

197:名無しさん@ピンキー
07/10/31 19:47:13 0LkXwYIN
続きを希望。

198:名無しさん@ピンキー
07/10/31 20:18:54 HVcxoFpY
>>194
個人的にはGJ
これからどうしていくのかが楽しみ

199:名無しさん@ピンキー
07/10/31 21:53:26 12Y0eAM0
主人公の語り口が軽妙でいい、GJ

200:名無しさん@ピンキー
07/10/31 23:19:00 O4N6kLUW
男主人が年下で女従者が年上というのが好きです。
続きおながいします。

201:名無しさん@ピンキー
07/11/01 01:17:49 9DidVAR3
毛一本で4Pは精子が足らんと思うのだがどうよ

202:名無しさん@ピンキー
07/11/01 02:28:39 vKh7aJjx
>>201そこはそれ、アレだ。
きっと超絶倫。

続きwktk

203:名無しさん@ピンキー
07/11/01 07:38:47 2eSGafAe
ここでもうにさんの見れるとは。
いやー、期待してます。

204:名無しさん@ピンキー
07/11/02 08:34:45 jCGhjFpd
>>193
GJ。こういうノリは大好きなんだぜ!
続きwktk

205:名無しさん@ピンキー
07/11/02 13:06:29 bidJMPLq
ところでuni氏は元々どこの住人なんだ?

206:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:10:49 Wm4HsP5k
<M'aider M'aider 2話>
<Freesia争奪戦 前編>

@@

「そこで若様は立ち上がって私に言った訳。
若葉、もっとこっちの方を洗ってくれ。って」
若葉が身振り手振りを交えながら得意げに胸を張って喋っている。

「はい、そこで嘘。秀様は若葉なんて呼ばないでしょ。」
私がそう言うと頬を膨らませる。

「呼びました。呼んだもの。でね、でね、若様は私に体を洗わせながらこう言ったの。
若葉、そんな洗い方じゃあ駄目だな!って。
だから私は申し訳ございません、
若様の体をスポンジで洗うなんて若葉が考え違いを致しておりました。
ってお答えした訳。
そして私が手と唇で洗って差し上げようとしたその時、その時に気が付いたの。
・・・若様のに毛が生えてるっていう事に!」

「若葉、本当ドMだよね。妄想が。」
と、ばりばりと煎餅を齧りながら前に座っている百合さんが口を挟む。
妄想もそうだけれど若葉は見た目のシャープな印象に比べて
本性は夢見がちな少女という所が問題だと思う。
隠してるけど人形とか好きだし。

207:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:12:00 Wm4HsP5k

「ドエムって何よ?大体妄想じゃないし。」

「判らないならいいけど。大体ね、妄想じゃないって
秀様が若葉が言ってるようなそんな事言う訳無いじゃない
どうせ偶然確認することができたってだけなんだから
夜中にするような妄想はいい加減にしなさい。」
むう、と若葉が黙る。

「大体若葉、そういう妄想絶対に秀様に見せちゃ駄目よ。」
ぴしゃりと言い放つ。さすが百合さんだ。締める所は締める。

今は週に一度の秀様付き上女中の会議時間だ。
週に一度、3人で集まって秀様に関してお互いの情報を共有し、
今後の予定を話し合う場として使われている。

まあお菓子があったり、若葉が暴走したり、
雑談が混ざったりするのはご愛嬌。
別名休憩時間とも言われる所以だ。
まあ、女の子が3人で集まっているのだからこんなものなのである。


208:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:13:06 Wm4HsP5k

百合さんがんん。と咳払いをする。
「さ、雑談はこのくらいにしてそろそろ会議にしましょうか。」
さあ、これからだ。
いつもに比べて多少硬い声で百合さんが会議の開始を宣言する。

さあきた。
私の予測が外れていないなら。
今回の議題は、恐らく私達3人にとって非常に重要なものとなるはずだった。


209:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:19:38 Wm4HsP5k

@@

私だけではない。
若葉があんなに秀様のを見た見たと力説しているのも
彼女なりの作戦のうちだ。
若葉も本日の議題が何であるかを気が付いているのだ。

「性教育・・・だよね」
沈黙に耐え切れず口火を切った若葉の声に
うん。と百合さんは首を縦に振って背筋を伸ばしながら私達に言った。

「そう。若葉の言う通り、この前の女中会議にて正式に決定しました。」
ここで一度区切る。

私達の顔を一度見回してから、百合さんは続けた。
「秀様、いえ若様に対して私達は今後・・・性教育を行って参ります。」

ここまでは想定通りだった。
仕来りに基づいて大人と認められた未来のご当主様、つまり秀様には
今後上女中によって性教育が行われる。
当然教育なので専門の担当者が付くという事を意味する。
今日はその話だ。

ここからが勝負。
それは3人とも判っていた。そう、百合さんも含めて。
騒いでいた若葉もいつの間にか鋭い目で百合さんを見ている。



210:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:21:16 Wm4HsP5k

性教育担当は百合さんの担当している教育担当や
私の担当している生活担当等の恒久的な担当とは意味合いが異なる。
云わば暫定的な担当なのだ。
つまり他の担当者が兼務する形となり、
どの上女中にも担当になる権利はあるという事だ。

「で・・担当者なのですが・・・
女中会議では秀様付きの上女中から候補者を出すように、との結論に達しました。」

一瞬だけ若葉と目を交わす。第一段階はクリアだ。
そこが駄目だと話にならないからだ。
性教育担当になれるかどうか、のである。
性教育担当は暫定対応であるが故にご当主様付きのベテランの上女中の中から
外見の優れたものが担当として選ばれる例も多いと聞く。
そうなってしまった場合、ご当主様の上女中には頭の上がらない私達の出番は完全になくなると見ていい。
最悪のパターンだ。

つまりここまでのこの結果は百合さんが女中会議にて勝ち取ってきたという事でもある。
恐らく秀様の特殊なご事情を説明し、
秀様付きの上女中から出すべきだと強弁したのだろう。
ご当主様付きの上女中にとって次代のご当主様の性教育担当となることは名誉だ。
会議が相当難航したであろう事は想像に難くない。

私だったら勝ち取れたかどうか。
そう考えると百合さんが勝ち取ってきたこの結果には頭が下がる。


211:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:22:30 Wm4HsP5k

しかし頭を下げてばかりはいられなかった。
ここから、今日の会議は私達3人の戦いとなる。

まずはここまでの情報を先に知っており、
この会議の議長でもある百合さんがどういう手段を考えてきて、どう出てくるかだ。
そしてそれを私達がどう切り崩すか。
私と若葉は固唾を呑んで百合さんの動向を見守るしかない。
ここを崩すまでは若葉との共闘となる。

淡々と百合さんは会議を続けようとしている。いつも通り、冷静に見える。
が、震える手に百合さんの動揺は現れていた。
百合さんもここが勝負どころである事は心得ているのであろう。
勝負をかけてくるつもりなのだ。それも今すぐに。



212:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:24:05 Wm4HsP5k

百合さんは大きく息を吸う。
そして早口で一気に捲くし立ててきた。

「で、担当者ですが教育担当である私が適任だと考えていますので
そのように次回の女中会議にて提案を行う予定です
では今週の会議を終了します各自仕事に戻って下さいはい終了。」
一息で言うと椅子から立ち上がりはい解散とパンパンと手を叩く。

そうきたか。
ふ、と鼻で笑う。
職権を利用して担当者の選定は既に決定事項として会議の場にて発表する。
社会でも中間管理職という職責にある人間がよく使うテクニックの一つだと
ビジネス書で読んだことがある。
これに対する手は・・・
文句を言おうと口を開こうとした瞬間、若葉ががたんと立ち上がる。

「百合さんそれずるいっ!!」

先手は取られたが私も立ち上がる。
「百合さん、私も異議があります。候補者の選定には万全を期すべきです。」


213:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:25:22 Wm4HsP5k

そう、異議を唱えるべきなのだ。
このような時に必要なのはベストの対案を出す事ではない。
スピードのある異議だ。
兵法にも拙速は巧遅に勝るとある。
決定には早い事のみを主張し、まずは敵の作り上げようとしている防壁を破るのだ。

「却下しますもう会議は終わりましたはい仕事、ぼやぼやしない!」

「ずるいです。」
「候補者の選定には万全を期すべきです。」

会議を終わらせようとする百合さんに対し私達は動かない。
絶対に動かないぞという意思を視線に込めて百合さんを見つめる。
それを見てごり押しは無理だと悟ったのであろう。百合さんの肩が落ちる。
「・・・私が教育担当ですので適任だと思います。それに一番年上です。
ご当主様の時もご当主様付きの上女中から選ばれましたが
一番年長の上女中が担当しました。」

それに対して若葉が被せてきた。
「若様が男になられたのを発見したのはさっき話した通り私な訳でしょう?
だとしたら適任者は自ずから決まってくるんじゃないかな。
それに年齢に関しては寧ろ一番若様と近い私の方が適任といえると思うし。
だってこういう事は近い年齢の方が若様も話し易い筈だよ。絶対。」

「いえ、こういう事は経験です。
特に性教育担当は若様の心の奥底に触れるとてもデリケートなお仕事であり、
そして臨機応変さが求められる仕事でもあります。
そうするとこの前の夏で20歳となった年長の私が最も適任です。
あと倫理的にも。」


214:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:27:29 Wm4HsP5k

「臨機応変。百合さん臨機応変って言ったよね。
だとすると文乃さんには難しい仕事って事になるのかなぁ。」
百合さんの言葉を受けて若葉がにやりと笑う。
シャープな顔立ちが歪む。
防壁は既に突破した。
早速若葉が敵に回ったという事だ。
しかしこんなことは織り込み済み。
まずは私を候補者から外して百合さんと一騎打ちとの腹積もりなのだろう。

それに対して・・・
私は目を閉じ、口を閉じる事で応じた。
はっきり言って理屈で攻められたら私は負ける。
特に秀様に年が近い訳でもなく、百合さんよりは年下。
そうは言っても今年で19歳なのだから17の若葉、
20の百合さんとはそう変わらない訳だけれど、数字は残酷でもある。
厳密に攻められたら中途半端な年齢であると、そう言わざるを得ない。

それに私にとって致命的なのは今若葉が指摘してきたその部分にあった。

言い訳の出来ない欠点だ。
私にはパニックに陥りやすい。
準備をし、ある事を予定通りに遺漏なく行う事に掛けては私は自信がある。
ミスをせず、想定できる範囲の事に関しては全て想定して事に臨む。
しかしそこから事態がずれるような事があった場合に
一瞬にして頭が真っ白になってしまうのだ。
そうなると涙が出てきて、何か訳の判らない事を口走り、
挙句の果てにその場を走り去ってしまう。
そして恐怖に駆られて走った事でさらにパニックが襲ってくる。
子供の頃からそういう事があって、未だにどうしようもなかった。
無論一度そうなってしまった事に対しては今後想定を行って事に望むから
同じ事が2度繰り返される事は無い。

しかし常に秀様の傍にいて、何かあった時にこそ資質を問われる上女中としては
致命的な欠陥と言わざるを得なかった。

だから私は外に出たり、お客様が訪問されるという様な
何らかの想定外の事態が起こりうる仕事は
出来るだけ百合さんや若葉に任せるようにしていた。
生活担当というミスが許されず、その代り起伏の少ない仕事を担当しているのは
そういう事情に起因する。

215:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:28:29 Wm4HsP5k

だが今回ばかりは絶対に譲るつもりは無かった。
今回の仕事に臨機応変さが必要なのは判っている。
しかし譲るつもりはない。
もしご担当できる事になったら全ての想定しうる事態を想定し、
絶対にパニックにならない準備をする。
解決策があるのであればそれがどんなに困難でもクリアしてみせる。
クリアすればそれは欠点では無い。

絶対に勝たなくてはいけない。一歩も引くつもりは無い。
だからこそ。
だからこそ今は口を開かないのが得策なのだ。
ここは話し合いを泥沼に持ち込むべきだ。
私にとっての勝負はそこからだ。

私が黙り込んだのを見て2人は私が脱落し、一騎打ちになったと判断したようだった。
2人でどちらが相応しいかを延々と言い合っている。

水を口に含む。
5分程は待つ必要があった。
場が泥沼になって、前にも後ろにも動かなくなった時に私が橋を掛けてあげるのだ。



216:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:30:18 Wm4HsP5k

10分ほど待つ。
場が白熱し、ネタが出尽くして百合さんと若葉は睨み合っている。
ここだ。

一度落ち着いたそのタイミングのを見計らって、おもむろに私は切り出した。
「精通に導いて差し上げる。というのはどうでしょう?」

「・・・は?」
「・・・は?」
2人の動きがぴたりと止まる。
視線が私に集まる。

「んん。」
咳払いをする。勝負だ。

「失礼ながら生活担当として秀様をご担当させて頂いている関係上、
どうやら秀様はご精通されていないように見受けられます。
初心な秀様を一番最初に精通に導いて差し上げられた人をその後の性教育担当とするのです。
もちろん無理やりなんてのは駄目ですよ。
秀様が怯えられないように、自然に優しく、判りやすくお教え差し上げるのです。」

「ちょっと待ちなさい文乃。性教育担当とはそういう事をするのではなくて」

「百合さん、判っています。
無論、そもそも性教育担当とはそういう意味ではありません。
世の中の仕組みを学ばれる若様の大事な時期に男女の事柄を知って頂く事、
そして正しい知識を知って頂くことにより
それに惑わされない心の強さを持って頂く事がその本質。」
百合さんの抗議を途中で遮る。



217:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:31:48 Wm4HsP5k

「しかし、本質と実態は又異なる事を百合さんは知っているでしょう?若葉も。」
ぐっと2人が詰まる。
それはそうだ。寧ろそれが目的である。

「外見の優れたものが選考対象としての最低条件という意味がどういう事であるかという事を。
確かに必要なのはは正しい知識を身につけていただく事。
それを私達の言葉にて身に付けていただく事が理想です。
けれどそれはあくまで机上の論理。
デリケートな問題を話し合う時に言葉だけでは伝わらない事もあります。
ましてや若様は14になられるお年。
時に衝動が理性を上回っても何もおかしくはありません。
いえ、寧ろ正常であるのだといえるかもしれません。
現に性教育担当者は若様のは、は、は、・・・」
落ち着け私。自分の言葉にパニックになるな。
今日のこの勝負の為に何度も練習してきた言葉だ。
胸を押さえる。

「は、初めての相手にお選び頂く事も多いと聞きます。」
ここで2人に視線を送る。
百合さんがついと目を逸らす。
若葉が素早く鼻を押さえる。鼻血だろう。



218:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:33:54 Wm4HsP5k

「勿論、そのような事にならないようにする事が重要です。
もしそのようになったらきちんと私達でなく未来の伴侶となる方が決まるまで
そのような事は我慢して頂くよう教育するのが私達の務め。
しかし、万が一、万が一という事もあります。
お仕えしているうちに若様の気分が高まるような事がもし万が一あった場合。
若様が『私達の』名前を呼びながら切ない声でお求めになられたら。
どこまで私達が拒みきれるでしょうか・・・。
いえ、拒まなくてはいけません。しかし・・・」

百合さんがハンカチを取り出して目頭を拭く。感極まっているようだ。
若葉は鼻に当てたティッシュを真っ赤に染めながら悶えている。

「・・・因みにご当主様の性教育担当を務められた女中頭の沙織さんの話を
2人とも知っているでしょう。」

上女中なら全員知っている。
毎年の上女中同士の忘年会で酔いが回ってきたタイミングで
「このような事になったのは私の未熟さ故です。
今考えるに私はいかに未熟だったか。お断りしなかった私は上女中失格です。
私の教え方がいけなかったからあのような事に。悔やんでも悔やみきれません。
でも、でもあの時ご当主様は逞しく私を布団の中に横たえると・・・もう我慢できないっ!などと仰って・・・はぁ・・・
皆さんは絶対にこのような過ちの轍を踏まないように
私の話を聞いてよくよく参考にしなくてはいけませんよ。
でも、でもあの時のご当主様・・・」
と頬を染めて身悶えながら数時間にわたって思い出話をする女中頭の姿を。

因みに女中頭の沙織さんはご当主様より年上なのでもう50に手が届く筈だけれど外見上、
未だに30代前半にしか見えずしかも非常に美人である。
その仕事に対する厳しい姿勢を含めて若い女中の間では
影で妖怪と呼ばれて尊敬されている。
普段は本当に本当に鬼のように怖い。


219:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:35:47 Wm4HsP5k

「女中頭はああやって毎年毎年暮れの忘年会の度に
私達若手の上女中を前に大変深く深く反省しておられます。
しかし、あの女中頭でさえ、過ちを犯してしまう。
因みに、女中頭は18の折、15歳のご当主様の性教育担当となり、
お手が付いてから5年間に渡って毎夜ご当主様のお部屋にて教育を行われたとの話があります。」

出血多量でリタイアするかもしれない。
と横目で鼻血を振りまきながらのた打ち回る若葉を見て話を続ける。

「んん。しかし、しかし私は逆に毒が薬になる。
という言葉もあるのではないかと思うのです。
今のご立派なご当主様がおられるのも、その時に過ちを知ったからこそ。
それが良いご経験となったのかもしれない。と。
そういうことも踏まえ、万が一の万が一、もしその時を考えて、
そういった面においても上手く行えるものが
最も担当者に推薦されるに相応しいと考えます。」

「だからまず、若様を自然に精通へと導いたものをその候補者にすると、
文乃はそう言いたいのね。」

「そうです。」

「自然にって・・・」

「自然には自然にです。あからさまに誘惑をするようなそのような事は上女中として許される訳がありません。
秀様に自分の体に自ずから疑問を持って頂き、それが何かを教えてあげる。
そういった流れで導いてさし上げる事。これが条件です。」

2人が黙り込む。
多分、今必死に2人はこの提案が自分にとって有利かどうかを考えている。
しかし結局は首を縦に振るであろう。
2人の性格、行動パターンを考えた末での作戦だった。


220:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:40:35 Wm4HsP5k

恐らく2人は長期戦を想定しているだろう。
若葉も百合も目算はあるはず。
どうせ若葉は夜の休憩時間、百合さんは勉強時間を当てて
一ヶ月ほど掛けてじっくりとでも今考えているのであろう。
そしてそれぞれ自分には勝機があると考えているはず。

そこが狙い目だった。
私は逆だ。短期決戦。
つまり、今日中に勝負を決める。
2人が唖然としている間に勝利を引き寄せる。
そこに私の作戦があった。

お風呂当番である。
一緒にお風呂に入るというのはこの提案の解決には正にぴったりなのだと言う事を私は気が付いていた。
お風呂でお仕えする事は生活担当としてのごく当たり前の仕事だから
まだ2人は気が付いていない。

しかも、今週のお風呂当番は幸運にも私だ。
今週が若葉の担当なのであればこんな提案はできなかった。
百合さんも、そしていくら若葉でも冷静になって考え直せば直ぐに気が付く。
この勝負は短期決戦で決着を付けなくてはいけない勝負だったと。
しかし今それに気が付いているのは私だけ。
そして、勝負が始まってしまえば断然私が有利なのだ。


221:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:42:23 Wm4HsP5k

んん。
私の顔と若葉の顔を見ながら百合さんが咳払いをする。
もう提案を受け入れた顔だ。
しかし百合さんの事、最後に一回悪あがきをするはず。

「ん。んん。確かに文乃の言う通り、万が一のもし万が一を考えて担当者を決める。
というのは正しい考え方であると思います。
しかしですね。文乃の言うとおりそれほどに難しい仕事であればやはり年長の私が。」

そうくると思っていた。
賭けではあるが、最後の切り札を出す。

「さっきから年長、年長って言ってますけど百合さん処女ですよね。」
瞬間、百合さんの顔が真っ赤に染まる。
やはり図星か。

「な、な・・・」
目を丸く見開いている。よほどびっくりしたのであろう。


222:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:44:59 Wm4HsP5k

「うそ。本当なの?絶対百合さん違うと思ってた。
 だって休みになると百合さんどっかいくじゃない。デートじゃないの!?」
百合さんの真っ赤になった顔を見て若葉も絶句する。

上女中だから恋愛をしてはいけないという訳ではない。
大体上女中とはそんな厳密なものではないのだ。
求められるのは忠誠心、それだけだ。
寧ろ恋愛感情を持つ事は禁忌と言って良い。
もし恋人を持つ事が上女中の仕事に支障を来たすのなら
下女中に配置換えをして貰えば良いだけだし現にそういう例もある。

だからこそ厄介だった。
私達3人は違った。
昔からいた若様じゃなかったから、
私達に頼らなくてはいけなかった若様だから。
始めて若様を見た時の百合さんの顔を覚えている。
そして最初は戸惑っていたけれど、すぐに優しい若様に夢中になった若葉の事を。

恋をしているのだと、思う。
百合さんも若葉もそして、私もだ。
だから譲れない。
3人とも譲る気は無いはず。

私だって絶対に譲らない。
私が不利だからと言っていつものように譲る気はない。
どんな策を弄してでもだ。ひっくり返す。

223:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:46:50 Wm4HsP5k

「あれは競馬か打ちっぱなしの練習です。ですよね。百合さん。」
「な・・・なんで知ってるのよ。文乃。そんな事・・・」
わなわなと百合さんが震える。

「ご想像にお任せします。
百合さん、ご当主様の上女中から選ばれる例が多いと言うのは
年長であるが故に経験済みであるからだと聞きます。
百合さんが処女なら私達は状況としては横一線と言っても良いのではないですか?」

百合さんは声も出ない。

「若葉も。あなたは若様に対して友達扱いのような振る舞いが目立ちます。
教育をするという担当において今の時点で本当に自分が相応しいと言いきれるの?」

若葉も黙る。

「じゃあ、そういう事で良いですね。初心な若様に精通とは何かを伝え、
導く事ができたものを担当者として推薦してもらいます。」
百合さんと若葉がこくり。と頷く。

駄目を押しておく。
「い い で す ね。」

「う、うん。」
「はい。」

「では今日の会議は終了と致します。」
会議の終了は、私が宣言する。
舞台は、整ったのだ。


/後編へ続く



224:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/02 18:53:49 Wm4HsP5k
ーーーーー
ご感想ありがとうございました。
嬉しいです。

次回は後編で。
このペースで書くと死にそうになるので一週間くらいで出来れば。

>>205さん
最初は気の強いとか幼馴染とか
ハリーポタとかでした。
ただ基本的に流れ者です。

ノシ

225:名無しさん@ピンキー
07/11/02 19:05:05 bidJMPLq
>>224
リアルタイムGJ!性教育争奪戦とはまた斬新な修羅場ですな
全裸で正座しながら保管庫でも読みあさって待ってる

226:名無しさん@ピンキー
07/11/02 20:48:28 rANOnZAV
性教育争奪戦されてみたいっす!!GJでした!!

227:名無しさん@ピンキー
07/11/02 22:51:55 JMn6WJ1w
想定外の事態が発生!
若様は今朝自慰を覚え、既に精通していた。
どうする文乃!
…だったらまた泥沼化。uni氏GJ!沙織さんの話も読みたいぜ!

228:名無しさん@ピンキー
07/11/03 11:47:14 ZxQOrvzF
このテンションの絶妙さが素晴らしいw
一気に三人のキャラが理解できた。

229:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:10:27 /LItWSM1
文乃に親近感を覚えた。頑張れ文乃

230:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:28:56 bzs1v36H
明治時代の感じが新鮮
続きが楽しみです

231:名無しさん@ピンキー
07/11/05 14:45:14 xuYZFEND
時代背景は現代だと思ってますた。スマソ

232:名無しさん@ピンキー
07/11/05 15:41:44 445gr1xG
一言も明治なんて書いてないが…

233:名無しさん@ピンキー
07/11/05 18:05:04 M0sEQvvy
勘違いだったか…スマソ

234:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:05:08 5cEsyYdC
<第2話 Freesia争奪戦 中編>

@@1

何か変だ。
屋敷を何か緊張が取り巻いている。
何か空気に薄い皮膜でも張り合わせたかのような、
一つ一つの動作に何か制限でも掛かっているような、
空気中を泳いでいるようなそんな緊張感がある。

普通の人なら判らないかもしれない。
しかしこちとら捨て子の貰われっ子。なめてもらっちゃあ困る。
空気を読むことに掛けては万人に引けを取らない自信がある。
その僕が感じるのだ。
屋敷に充満する震えるような緊張感を。

235:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:05:47 5cEsyYdC

確かに一見するといつもと変わらない。
若葉さんも、百合さんも文乃さんもいつも通りだ。
下女中の皆さんも朗らかでいつも通りだ。
何ら変わらない。
しかし何故だか強い空気を感じる。
何か、屋敷内の空気そのものに意思でもあるような・・・

まあ、気のせいなんだろうけれど。
もしかしたら女中さん同士で何かイベントがあったり、
こっそりと隠れて何か遊びのような事
(例えば、何かのスポーツの結果で休みの日の演劇のチケットの争奪戦をしていたりとか)をしたりしていて、
その空気がそんな風に僕に感じさせているだけなのかもしれない。


236:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:06:26 5cEsyYdC
@@2

「今日のお食事はどうでした?」
文乃さんがニコニコしながら聞いてくる。
お風呂前の一時の休憩時間である。
僕の部屋で文乃さんは僕の前に座っていて、手にはトランプを持っている。
小脇にはお風呂セットが置いてある。
文乃さんは生活担当と言う事で毎日の献立なんかを考えてくれたりしている上女中さんで
今年19歳の優しいお姉さん、という感じの人だ。
口調も丁寧なんだけれどとても優しく問いかけてくれるから
一緒にいるとなんだかとても落ち着く。
ここに来たばかりの頃は仕来りを知らなくて迷惑を掛けてしまった時など
百合さんに怒られては文乃さんに慰めてもらっていた。
今ではこの2人が怒り役と慰め役で僕に色々な事を教えてくれていたんだという事位、判っているけれど。
因みにその頃、若葉さんは何故だか僕と一緒になって怒られたり慰められたりしていた。


237:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:06:57 5cEsyYdC

文乃さんは落ち着いた口調と同様、外見も全体的に柔らかい感じがする。
シャープな印象の若葉さんや百合さんとは違う。
地毛だそうだけれどちょっと明るめの髪は緩やかなウェーブが掛かっていて
私服を着ているときはなんだかどこかのお姫様のように見えたりもする。

街にでればきっと凄くモテるんだろうなあと思うのだけれど、
文乃さんは人込みは苦手との事で休みの日もいつも屋敷の中にいるし、
僕が外出する時も若葉か百合さんが同行する事はあっても文乃さんが同行する事は無い。なんだかちょっともったいない気もする。

そんな文乃さんの質問で、
そういえば今日の夕食はなんだか物凄く豪華だった事を思い出す。



238:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:07:37 5cEsyYdC

「ええと、今日は凄かったね。鰻と、白子とニンニクの丸揚げ。あとヤマイモのとろろ。あと不思議な味がしていたけどあのスープみたいなのは何だったの?」

「南米はペルーという国のマカという所で採れる、
日本で言えば蕪のような植物を使用したスープです。
ちょっと苦味がありましたからミルクを入れて味を調えさせました。」

「あれも凄く美味しかったよ!」
凄くまろやかだけど、なんだかとても元気になりそうな味だった。

「そう、それは何よりです。
秀様に喜んで貰えると私も遠くから取り寄せておいた甲斐があります。」
そんなに珍しいものを態々取り寄せておいてくれたらしい。
あ、とその言葉で思い出す

「そういえば珍しく叔父さんとは全然違う献立だったね。」
叔父さんの献立は叔父さん付きの上女中さんが考えるのだけれど、
一緒に食事をする日は大体同じ内容になるように
文乃さんと叔父さん付きの上女中さんで打ち合わせておくのだと聞いたことがある。
今日は叔父さんの食事と僕の食事が全然違っていたので
叔父さんが「おいおい、秀のは豪華だなあ」等と目を丸くしていた事を思い出す。
そんなに珍しいものなら叔父さんの食卓に上ってもおかしくないけれど
あのスープは僕の方にしかなかった。


239:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:08:33 5cEsyYdC

「ご当主様に同じものを食べさせたら今日のお夜伽の女中が次の日仕事にならないから
出せませんと向こうの上女中が・・・んん!ん!ん。
食べ盛り、育ち盛りの秀様とご当主様では食事の中身も
多少変えてお出ししないといけないのです。そういう配慮です。」

「そうなんだ・・・。所で今言ってたオヨトギって何?」
聴きなれない言葉が出てきたので聞き返す。
オヨトギの女中だから何かの場所だろうか。
それとも役目だろうか。
なんかの植物っぽい単語だけれど。

「・・・そんな事私、言いましたか?」
ついと文乃さんが目を逸らす。

「・・・今、言ったけど・・・」

「聞き間違いですよきっと。はい。上~がり。」
と最後のカードを場におかれる。


240:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:09:05 5cEsyYdC

「あっ!ああああああ・・・」
話に夢中になっている間にいつの間にかゲームは文乃さんが上がっていた。

「私の勝ちです。そうですねー。今日の罰ゲームは何に致しましょうか・・・。」
「お手柔らかに・・・」
文乃さんはふふん。と笑う。
僕と文乃さんは大抵お風呂に入る前にカードゲームをやる事になっている。
負けた方が罰ゲームだ。
大抵文乃さんの罰ゲームは次の日の夕食に僕の好きなものを入れる事になって、
僕の罰ゲームは体に良い、でも僕の好きじゃない食べ物が
次の日の夕食に入る事になっていた。



241:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:09:45 5cEsyYdC
「あーあ。」
明日は菜っ葉のお浸しにでもされるのかなあ。と考えつつ文乃さんの顔を見る。

けれど文乃さんはいつもの様に柔らかく笑いながらいつもじゃない事を言った。
「うーんと。いつもいつも明日の夕食の内容じゃ、飽きちゃいますよね。
 今日の罰ゲームはいつもとは違うものにしましょうか。
 お風呂場で出来る罰ゲームなんてどうでしょう。」
そう言いながら僕の頭を柔らかく撫でて。
さ、お風呂に入りましょう。と言いながら
文乃さんは傍らのお風呂セットを持って立ち上がった。

なんだか文乃さんがいつもとちょっと違う雰囲気だなあと思いながら、僕も立ち上がる。
いつも前を歩く文乃さんが僕の横に来て、行きましょうと言う。
文乃さんは年上だけれど背は僕より小さいんだなあと。
僕は、今まで思った事の無い事を思う。


242:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:10:23 5cEsyYdC



@@3

「百合さんさぁ。」
「ん、何?」
湯船の中から声を掛けると百合さんはこちらを見ずに声を返してきた。
相馬家のお風呂はご当主様、若様用と上女中用、
そして他の使用人用と3つに分かれている。
私達は上女中用のお風呂に入るわけだけれど使用人用とは言ってもそこそこ広い。
5人位は余裕で入れるので休憩に同時に入ったような日は
文乃や百合さんと一緒に入る事もある。

百合さんはカラスの濡羽色とはこういう髪の色を言うのだろうという感じの
長い黒髪を漱いている。
この人は本当に同姓から見ても立ち居振る舞いが綺麗だ。
なんというか、昔風と言うか。
お風呂場での百合さんを見ているとカポーンという音が
どこかからか聞こえてきそうな気がする。



243:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:11:05 5cEsyYdC

「…え~っとさ、今日の文乃が言ってた事。本当なの?」
「文乃が言ってた事って?」

「……その、百合さんが処女って事。」
百合さんがぴたりと止まる。

「い、いやだってさ。百合さんだよ百合さん。
沙織さんの再来と呼ばれて次代の女中頭とか言われてる」

「…あの妖怪の再来ぃ?」
「だってさ。」
言いよどむ。すると百合さんはくすくすと笑った。

「…もう。何で私が処女なのが不思議なのよ?」
「だって。百合さん結構どころかかーなーりモテてたでしょう?
高校の時は女子生徒で初めての生徒会長だったし、
今だってお見合いの話がわんさか来てるって話だし。」

「モテるなら文乃の方がモテるわよ。
あの手の一見お嬢様で守りたくなるタイプに男の子は弱いのよ。」
学校じゃ相馬の家のご令嬢じゃないかって噂が絶えなかったのよ文乃。
と言いながら百合さんはくすくすと笑う。


244:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:11:57 5cEsyYdC

「だって文乃はあれじゃない。
高校の時だって学校終わったら屋敷に即直行でしょ。
恋人なんか居たわけないし。
百合さんはよく門限ギリギリになってたじゃない。
学校時代とかそれ以降とか何も無かったの?デートとか。」

「よく見てるわね。・・・ま、お誘いは多かったけど。」
「え、ええ!?誰かと付き合ったことあるの?」
百合さんは笑う。
「どっちにもびっくりするんじゃない。映画は何回か行ったかな。
誘われて。野球部の人でね。」
エースの人。と百合さんは笑いながら髪の毛を結い上げて、
じゃばんと私の横に身を沈めて来た。

「え、え、それで、それでどうしたの?」

「どうしたのって若葉が期待するような事はなにも。
何回か映画に行って、何回か手紙のやり取りをしてそれだけ。」

「なあんだ。つまんない。キスとかもなし?」
がっかりとしてしまう。

「ないよ。まあ、付き合ってもいいかな。と思うことはあったんだけどね。」
そういって百合さんはぶくぶくとお湯に沈む。
百合さんにしては珍しい、歯切れの悪い受け答えだ。


245:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:13:00 5cEsyYdC

「好きだったの?」
「嫌いじゃなかった。」

「じゃあなんで?」
「時間が無かった。」
「嘘。」
ここはとても労働環境が良い。
そのうえ若様はとても良い子だ。
そんな時間なんてその気になれば幾らだって作れた筈だ。
と私は百合さんに言う。
と、百合さんは少し驚いた顔をした。

「若様が良い子。だと若葉は思うの?」
「う、良い子って言い方は良くないかもしれないけど。」
「そう、ううん。たしかに良い子。若様は。とても良い子。」
若葉はそう思うのね。と百合さんは続ける。

「何?違うって言うの?」
「違わない。でも私は若様付きの上女中としてずっと心配だったから。今もね。」
「何がよ?」
イライラとして私が聞くと百合さんはこちらを見てちょっと寂しそうに笑った。
「良い子、なんだよね。若様。誰から見ても。」
それから湯船の中で、しゃんと背筋を伸ばして正面を見た。
なんだかいつもの会議の時みたいな格好だ。


246:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:13:31 5cEsyYdC

「歴代のご当主様はね。とても我侭だったそうよ。子供時代。
今のご当主様もね。もう沙織さんに聞いて驚く位。
我侭と言うより無茶苦茶。
それはそうよね。こういう閉鎖的な場所で育てられるのだもの。
でも私は思うの。その我侭さはきっと必要な我侭さだって。
我侭に我侭に育って貰って。
で、徐々に色々な事を知って頂いて、我侭と我侭じゃ駄目な事を知って頂く。
これが本当の上女中の仕事なの。
何故ならご当主様は、いざと言う時にとても我侭にならなくてはいけないから。
お前は死ね、お前は生きろと選択をする事すらある。
我侭で、他人の事なんか一つも考えないで。
そうじゃないと選択できない事もあるから。」
私が黙ると、百合さんは続けた。
やっぱり寂しそうな顔で。

「ねえ、若葉。お母さんに捨てられて、不良にならない子ってどう思う?
私はね、…おかしいと思う。
あなたが一番、世界中で一番可愛いくて良い子ねって言ってくれる人が自分を捨てて、
平気で居られるわけがないもの。
他人を妬んで、傷つけて当たり前。
若しくは自分の殻に閉じ篭るか。どっちかになって、当たり前。」

「でもそれは」
百合さんの横顔を見て、私は私達がいたからと言う言葉を呑み込んだ。
それ位厳しい顔をしていたから。


247:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:14:03 5cEsyYdC

「若葉は秀様の事、好きよね。ううん。言わなくたって判る。
言葉だけじゃない。立場とかじゃなくて本当に好きよね。
文乃もそう。文乃も若様に夢中になってる。
あの子の場合、ある意味若葉よりずっとね。
でもね、そうやって私達上女中が若様を好きになるのって正しいのかなって。
私は思うの。
沙織さんが昔、私に笑いながら言った事があるの。
私、昔はご当主様にこのクソガキって300回位思ったのよって。
ね。
私は若様にクソガキだなんて一回も思ってない。
ね。今のご当主様はそうなの。
多分、昔のご当主様も。
ね、私達の顔色を読むような、私達に優しいご当主はご当主じゃない。
そうなんじゃないのかな。
私達に優しいご当主様なんて。
優しくて、私達が好意を持ってしまようなご当主様は
ご当主様としては失格なのかもしれないんじゃない?
私達は何か間違えているのかもしれない。
ね、今回の事も。
私達は本当は上女中の名誉の為に抱かれなきゃいけないんじゃないのかって思う。
ね、若葉と文乃、そうなったとしたら2人とも御手付きにされたって思うのかな。
そうじゃないんじゃない?
好きな人に抱かれたって、そう思うんじゃない?
ね、間違ってるんじゃないかな。それ。


248:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:14:37 5cEsyYdC


少なくとも女中会議の時、ご当主様の上女中は名誉の為に自分達から候補者を出したいと、そう言い切ったよ。
多分今のご当主様の時もそうだったんだと思う。
でも私達は違った。
若葉も、文乃も本気。それも若様が来てからずっと。
ご当主様の上女中と私達若様付きの上女中の違い。
その違いは正しい違いなのかな。
上女中として正しく出来ているのかな私達は。私はずっとそれが心配。
今更どうにもならないのかもしれないけれど。
若様はね、今までのご当主様とは多分、違うの。
だから今までのやり方じゃあ、私達は駄目なのかもしれない。
ね、思うんだ私。
もしかしたら、もしかしたら私達は本当は相馬家の上女中の中でも始めての、
前例の無いやり方を若様にしていかなくてはいけないのかもしれないんだって。
そう考えたら、私はとても怖い。怖いと思う。
もし、沙織さんの真似をしてもそれが全く駄目なんだとしたら。
どうしたらいいのかなんて、私は判らない。


正面を向いたままそこまで言うと、百合さんは一つため息をついてこっちを向いた。


249:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:15:10 5cEsyYdC

「で、私は若様をどう思ってるのって顔してるわね。若葉。」
「う、うん。」
百合さんが厳しい顔のままなので思わず緊張したまま頷く。

その瞬間、ふにゃんと百合さんは顔と体勢を崩した。

「抱かれたいに決まってるじゃない。」
「え」
「私ロリコンだもの。ロリコンって言わないのかな女の人の場合は。」
「えええええええええ、今までの話はあ?」
がっくりと脱力する。

「今までの話は上女中としての私。
何で処女なのって若葉言ったでしょ。
若様としたかったからに決まってるじゃない。
野球部の人を見て、帰ってきて若様を見て、もう全然。
私駄目だなって思っちゃった。
もう、若様可愛くて可愛くて仕方ないもの。私。」

「真面目に聞いて、損した・・・。」
百合さんはすでに隣で目を輝かせている。
真面目な顔をしたと思えばこうやって可愛くなる所が百合さんはずるい。
美人なのか可愛いのかはどちらか一方だけにしておくべきだ。

250:uni ◆/pDb2FqpBw
07/11/05 20:15:42 5cEsyYdC

「あーあ。今日の会議、失敗したなあって。
女中会議から持ち帰ったなんて言わないで、
もう最初から私に決まったって言っておけばよかったなぁ。」

「ちょちょっと!百合さん。」
「ちょっとした友情を見せたお陰で、賭けなんてする羽目になってさ。
あ、どうするのよ、若葉。どうせ色々考えてるんでしょ。」

「敵には言いません。百合さんこそあれでしょ。
 勉強教えてる時に胸元とか開ける予定でしょ。」
夜の遊び時間にテレビを一緒に見ながら膝の上に乗ってもらって
あれ、若様大きくなってない?どうしてかなーなんて作戦は言わない事にしておく。

「私も言いません~。」
百合さんがふんにゃりしながら言う。

「あ、でもさ、今日私文乃があんな事言うなんて思わなかった。」
私が言うと百合さんは湯船の淵に顎を乗せてにやにやと笑った。
「ふふふ。それは若葉、文乃を判ってないなあ。
まあでもそれにしても今日の文乃、気合入ってたよねえ。
なんだかんだ言っても、あの子がある意味一番夢中だからねぇ。若様に。」
文乃はこわいよう、と百合さんは冗談めかした声で言う。



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