おんなのこでも感じるえっちな小説8at EROPARO
おんなのこでも感じるえっちな小説8 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@ピンキー
08/03/14 23:27:04 spAgQExC
私もマニア的支援

401:ヘタレ男と高飛車女(5)
08/03/14 23:39:25 C1ji+rjY
 
 
「んっ…!パイパ…?」
知らない単語に反応し目を開くと、
『パイパン。ここに毛が生えてないことだよ。剃ってるの?』
彼は笑顔を輝かせながら、クリトリスを親指と中指で上下にしごき始めた。
「あんっ…剃って…ないよ…っ!リカの…やっ…はぁん!んっんっ…!喋ってるんだから…ぁ…手止めてぇ…!」
『ははっ、ごめんごめん!一生懸命しゃべる姿が可愛くてつい』
そう言いながらも手を休めようとしない彼の腕を起き上がって掴んだ。
「はぁっ…ちゃんと聞いてよっ!リカは元から体毛が薄いのっ!だから…その…下も全然生えなくて…」
だんだん恥ずかしくなり口ごもったあたしを見て、彼もゆっくり起き上がった。
そっかあ、と微笑みながらあたしのYシャツのボタンを外していく。
『リカちゃん、それは悪いことじゃないよ。むしろ好都合ってゆうか』
「好都合?」
『うん、こちら側としてはやりやすいというか…』
なんのことを言ってるんだと訝しげな顔をしていると、
彼は『百聞は一見にしかず』と目を光らせた。



402:ヘタレ男と高飛車女(6)
08/03/15 00:06:15 2c4Z+j3v

そして『あ、せっかくだし』と言うとYシャツのボタンを留め直してしまった。
「え…エッチしないの?おしまい?」
拍子抜けして聞く。
『ううん、これからだよ。でも制服着たままの方がそそるし!あ、パンツだけ脱いで。靴下は履いたままで。リボン着け直しといて』
何を言っているんだ。
彼の企みが理解できないまま、とりあえず言われた通りの格好になる。
ベッドから離れた彼は部屋の照明を明るくして、タオルを一枚持ってきた。
ますます訳がわからない。
股間のスースー感に身をよじりながら、彼を見上げると『準備完了』と親指を立ててきた。
『じゃあリカちゃん、ねっころがって良いよー』
額にキスをされて、ゆっくり押し倒された。
次はばんざいしましょー、とまるで赤ん坊相手のような口調で指示される。
今は149センチだけど、まだ成長期なんだからね!なめてると痛い目にあうわよ!チビの恨みは怖いぞバカ!と胸中で文句をたれていたら、
『できた!』と彼の陽気な声が聞こえた。
手首に感じる違和感に視線をやると、タオルで器用に縛られていた。



403:名無しさん@ピンキー
08/03/15 00:08:10 2c4Z+j3v
本編?というかヘタレ登場まで、もうしばらくかかります。
序盤が長くてすいません…

404:名無しさん@ピンキー
08/03/15 00:21:45 mKjwkl3j
全然おk
いい流れだわー
男性目線だとこういうのないんだよね

405:名無しさん@ピンキー
08/03/15 16:23:30 494771Yc
超紫煙

406:ヘタレ男と高飛車女(7)
08/03/16 01:38:59 YpLIvAFo
 
さすがに身の危険を感じる。縛るってやばいでしょ…

「ちょっ…なにコレ?!」
『あー…リカちゃんさ、クンニって知ってる?』
質問を質問で返されムッとする。
「知らないっ!それより解いてってば!」
『やっぱり。あのね、初めてだと抵抗あるだろうし、暴れられたら楽しめないからさ。ちょっと我慢して?』
あたしの太ももをやんわり撫でながら、眉を下げて申し訳なさそうに彼が言う。
子犬みたいな表情にドキっとしちゃうよ。
「わ、わかった。痛いのなしだよ?」
負けじと、とびきりの上目使いで言ってやった。
『痛くなんてないさ。うんと気持ち良くさしてあげる』
そう言うと彼は下の方に下がっていった。
なにかの儀式なのか?顔付きは神聖なことでも行なうかのように真剣だ。



407:ヘタレ男と高飛車女(8)
08/03/16 01:39:38 YpLIvAFo
 
すると突然足首を掴まれ持ち上げられた。
その手の冷たさに「ひゃっ」と声をあげ驚いていると彼はあたしに向かって力をかけ、閉じたままの膝を曲げて太もも全体をお腹にペタンとくっつけてしまった。
スカートがパラリとめくれる。
シワになることを心配し脱がせてと訴えると
『そこは譲れないよ。十分気を付けるから履いてて』と懇願された。
不満だったが、それは次の瞬間吹き飛んだ。
『オープン!』
彼が楽しそうに言うと、あたしの膝に手を当て一気に広げたのだ。
「…っ!」
あまりの恥ずかしさに叫ぼうとしたが声がでなかった。
彼は足の間を凝視する。荒い呼吸が聞こえてきた。
こんな明るい部屋でまじまじと他人に秘部を見られている…こんな屈辱初めてだ…!
「っ…やっやめて!見ないで!電気消してよ!やだっ!お願い!」
やっとのことで声を出し、まくし立てる。
しかし彼は何も聞こえないかのようにそこに顔を近付け
『いただきます…』とささやいた。



408:ヘタレ男と高飛車女(9)
08/03/16 01:40:39 YpLIvAFo

まさか…と思った時には遅かった。
彼の舌が秘部全体をベロリと舐めあげたのだ。
「いやぁ!汚いよっ…そんなとこ…あっ…だめ…やああ!」
続けざまに舐めあげられる。
半分パニックになり涙が止まらない。
『汚くないよ…舐め甲斐のある綺麗なおまんこだよ…』
彼のくぐもった声が股間から聞こえる。恥ずかしさが頂点に達し目をギュッと閉じた。
「だめぇ…!やぁぁ…」
―チュッチュッ
大丈夫だよ…とでも言うように彼が2度優しくクリトリスを吸った。
しかし恥ずかさのあまり恐怖を感じていたあたしには大丈夫とは思えなかった。
『一度イッたら緊張もほぐれるかな』
泣きじゃくるあたしを見て彼はつぶやいた。
そして指を一本ナカに入れると軽く曲げて出し入れをし始める。
「あぁっ!はっ…やぁ!んっんっんぅぅ!あぁん!」
 


409:ヘタレ男と高飛車女(10)
08/03/16 01:41:13 YpLIvAFo

クチャクチャクチュッ…
粘膜をこすられる音が弾みを付けて聞こえてくる。
「あっ…あぁっ…!」
涙はいつの間にか止まり、恐怖の代わりに快感につつまれた。
彼は指を出し入れしたまま再びクリトリスに吸い付いた。「…っ!あっあっあっ!いやぁ…はんっ…!きも…ちいい…よぉ…ぁん!」
それを聞いた彼は指を更に激しく動かし、吸い付いたクリトリスを舌先で激しくこねる。
「もっ…だめぇっ…いっちゃうぅ…あぁん!いっちゃうよぉ…っ!ぁっあぁぁん!イクっイクぅ!!!!!!はぁぁぁん!!!!!!」
腰を跳ねらせてあたしはイッた。頭がしばらく真っ白。ぷかぷか浮いてるみたい。気持ちいー…。
うっすら目を開くと満足そうな彼の顔が映った。
『気持ちいいでしょ、クンニ』
声を出すのが億劫でコクコクとうなずく。
『緊張もほぐれたし再開しよっか!』
言い終わらない内に彼は再び顔を股間にうずめた。
 


410:名無しさん@ピンキー
08/03/18 19:41:52 j3Wb6t9D
続きマダー?

411:名無しさん@ピンキー
08/03/24 19:24:28 PN8VXwt5
捕手

412:名無しさん@ピンキー
08/03/25 19:03:16 UdyWUosL
また過疎かよ!

413:名無しさん@ピンキー
08/03/25 21:43:47 am2xBIRK
>>409
続き…

414:名無しさん@ピンキー
08/03/26 23:51:48 5ULL9LYC
質問
ファンタジー系の作品って以前は投稿されていたよね?
それっぽく書けていればファンタジーでも投稿おk?

415:名無しさん@ピンキー
08/03/27 00:06:15 kORCUfd8
いいと思う
あ、エロスをお忘れなくwお待ちしてます

416:名無しさん@ピンキー
08/03/28 19:44:00 wcUn5Jiz
待ちつつ保守

417:名無しさん@ピンキー
08/03/30 17:17:01 5wpaVF8j
投下町

418:名無しさん@ピンキー
08/03/31 23:37:16 n6GDfSws
自分のSSがどこまで女性に通じるか試そう思ったが、
投下された作品見てギブ。

俺は死んだ。スイーツ(笑)

419:名無しさん@ピンキー
08/04/01 00:17:00 G0HAjncv
自分の性別を伏せて思い切って投下していただきたかった。
あとスイーツでないのも好きって人はいますよ。愛が無い話ばかりになるのも辛いけれど。

420:名無しさん@ピンキー
08/04/01 00:32:16 bIpQvjhl
男性と女性の嗜好って違うよね。
でも、人によっても違うし、何でも歓迎!

421:名無しさん@ピンキー
08/04/01 00:47:48 OHMpvwrY
>>418
投下してくれれば良かったのに
個人的にこのスレのSSすごく楽しめる
逆に男の人向き?なSSは読めないこともある
人それぞれだね
とりあえず投下して~

422:名無しさん@ピンキー
08/04/01 00:50:36 3CBxhzYF
一度読んでみたいので投下願う。

423:名無しさん@ピンキー
08/04/01 01:07:27 V3LrtfWF
今他のも書いてて、新作投下できないから、また今度既作を転載させていただきます。

小生、ついに女性相手に羞恥オナニーをしようとする我が身に畏れを覚えました。

424:名無しさん@ピンキー
08/04/03 09:42:26 QbK851Dc
保守

425:名無しさん@ピンキー
08/04/07 20:26:33 p3lDoCXZ
黒澤君待ち保守

426:名無しさん@ピンキー
08/04/10 09:14:02 3yx0ZX/t
黒澤君カモーン

427:名無しさん@ピンキー
08/04/12 02:18:09 YRTDewvy
ヘタレ男と高飛車女続き待ち保守!

428:名無しさん@ピンキー
08/04/12 08:49:31 2jLlqra8
>>418
情けない男だな。誘い受けにしても包茎短小で見苦しい


とりあえず繭子たんを楽しみに待つ俺も保守

429:名無しさん@ピンキー
08/04/14 18:39:04 ZKAV72P6
待ち

430:名無しさん@ピンキー
08/04/17 06:28:16 VRThmW7p
補習

431:名無しさん@ピンキー
08/04/19 19:09:34 y9WpzZ7d
保守

432:名無しさん@ピンキー
08/04/21 21:20:42 V/Zyc6Hr
支援

433:名無しさん@ピンキー
08/04/24 00:12:44 9WM0vTtx
職人さん待ち捕手

434:名無しさん@ピンキー
08/04/27 23:40:22 uldyQ677
スレ1の虜囚ってもう読めないんですか?かなり前のものだと思うんですが

435:名無しさん@ピンキー
08/04/28 01:32:25 2YKZtxS2
>>434
ここの1に過去スレへのリンクがあって、1とか2とか読めるのでそれで。
あと縮刷版に作者さんサイトへの行き方があるので、それでも。


436:名無しさん@ピンキー
08/04/28 20:48:41 0pfMm70J
ほっしゅ

437:名無しさん@ピンキー
08/04/30 18:56:46 5HSYi7jC
そろそろ投下してくれー

438:名無しさん@ピンキー
08/05/03 15:24:40 Sq8Gt05+
黒澤きゅん…

439:名無しさん@ピンキー
08/05/04 18:10:49 2lWCeelA
GW保守

440:名無しさん@ピンキー
08/05/05 00:44:02 XjFomuQo
短めのやつをうpしようと思っているのですがおkかな?

441:名無しさん@ピンキー
08/05/05 01:38:28 sfqNGJOp
ばっちこ~い

442:440 (1/3)
08/05/05 01:55:30 XjFomuQo
いつも感じる、背中に突き刺さるような視線。
思わず振り返れば鋭い目付きの男性が資料を読み進めている男。
あぁ、まただ。また見られていた。
気にせずに、作業を再開するのにやっぱり気になってしまう。
スカートのポケットに入れていたケータイのバイブが振動する。

深夜のオフィスで全裸になったあたしの胸を揉みしだきながら、あそこに入れた指を動かす。
十分にされた愛撫に蜜がどんどん溢れ出てくる。
次第に音が大きくなる水音に身体がもっと火照っていく。
もっとして……下さい。
恥ずかしくて口にはしない言葉。
けど、この人は察してくれるようでいつも気持ち良くしてくれる。
指の出し入れが早くなっていくよ。
乳首も痛いぐらいに沢山摘んでくれて声が抑えられない。
あ……指引き抜かないで。もう少しでイキそうだったのに。

机の上に押し倒されて両脚を開かされて、何かが触れる。
やだ、今度は貴方ので感じさせてくれるの?
時間をかけてからしてくれるのに、なんだか切羽詰っているみたい。
昨日も一昨日もしたのにあたしがそんなに欲しいのだ。

443:440 (2/3)
08/05/05 01:56:13 XjFomuQo
昼にはあんなに厳しい目線を送っているのに、夜はこんなに優しくしてくれる。
スーツをばっちり着こなして髪の毛も整えているのにね。
今はジャケットを脱いでネクタイは外している。オールバックの前髪が額に垂れているよ。
乱れた彼の姿を見ているのはここで働く人は知らない。そう、あたしだけしか知らない。

は、入ってくるぅ。ゴム越しなのに熱くて、凄く硬いの。
ゆっくり、そう、ゆっくり入れて。
奥まで届いてそんなに慣れていないから苦しいや。
動くの? いっぱいしてもいいよ、夜景に照らされた貴方の表情を見つめていたい。
すごいや……初めっから激しいなんて。
グチュグチュって音大きいし、あたし濡れすぎ。
「やだ、熱い」
「お前の中はそれ以上に凄いけど? エロい表情もそそるし」
お互いに見つめ合って微笑む。
そして、舌を絡ませるキス。

ホント、こんなの彼誰にも教えたくないよ。

いっぱいピストン運動されて吐息が漏れていく。
大丈夫、ただの吐息だから。警備員さんに見つかるわけがない。
癖ついちゃったね、ホテルとかでしている時にうまく喘ぎ声出せるかな?
頭がボーっとして全身がビリビリ痺れていくような感覚。
やばい。さっき中途半端に指でされていたからイッちゃうかも。
って、突き上げるように動いてこないで。一緒にイキたいのに。
だ、ダメ。本当に、イッちゃう! イ……くぅ……。
ゴム越しに彼のも痙攣して、熱いのを放った。
なんだ、結局一緒にイッちゃった。

444:440 (3/3)
08/05/05 01:58:19 XjFomuQo
彼は後処理をし、あたしは服を着てから、ふと思った。
セックスしているのばれたら彼、クビにされるし。
あたしはインターシップだから大学に報告されちゃって、下手すれば退学かも。
今更だけど彼の家でした方が安全じゃない。あたし、気が付くの遅い。
「ここでするのは止めない?」
「何で?」
「警備員さんにばれたら会社、クビにされるよ」
「そうかもな。でも、昼と夜の態度の違いが楽しめるからここでしたい」
……あはは、思わず顔が引きずるような答えを出したよ。
ま、いいけど。

翌日、いつも通りの雑用が続く。
と、やっぱりあの視線を背後から感じ取れた。
昨晩と今日とのギャップがあまりにも激しすぎて、口元が緩んでしまう。
あたしは冷たすぎる視線を浴びながら、今晩も行うだろう熱すぎる情事に胸が高鳴った。

おわり。

445:440
08/05/05 01:59:53 XjFomuQo
以上です。
うまく30行で切れなくて、微妙なところで切ってしまったので
読みづらかったらごめん<(_ _)>

446:名無しさん@ピンキー
08/05/06 16:14:31 8M1fGO7e
よかったよ。
なんかぐっときた。
妙にリアルで臨場感があるのがよかった。

447:名無しさん@ピンキー
08/05/07 20:31:39 R58w396M
GJ!

448:440
08/05/10 00:40:32 zn4fKuiy
感想ありがとうございます。
スレが過疎化しているので、何にも反応がなかったらと不安でした。
※をいただけけただけでも感無量です(*ノ-;*)

書けたとしてもSSぐらいですが、機会があればうpしに来ます。

449:名無しさん@ピンキー
08/05/10 03:00:50 1WfHfbFS
投下してくれてありがとう
大好きなスレだから過疎って悲しかった
またSS投下しに来てね

450:sage
08/05/10 20:11:31 yPv9qW1n
GJ

451:名無しさん@ピンキー
08/05/13 14:10:43 QGYtWGPy
SS投下希望~

452:名無しさん@ピンキー
08/05/14 00:35:44 1A4h1hj/
>>445
ありがとう。良かったよ。
次に期待しているのでちょっと言わせてくれ。
インターンシップ、 顔が引きつる
     ^^^           ^^^^

453:名無しさん@ピンキー
08/05/14 23:49:05 raWmn2sk
良作豊作ホックホク~

454:名無しさん@ピンキー
08/05/16 09:39:53 zA/TRFaD
保守しまぁす

455:名無しさん@ピンキー
08/05/17 00:33:25 fUxJ+l+B
黒澤君マダー?

456:名無しさん@ピンキー
08/05/20 00:31:47 qZGY4moT
投下してくれるのならなんでもええ。
保守。

457:名無しさん@ピンキー
08/05/22 09:00:24 3I0mLVMo
>>456
投げやりね
でもそんな貴方も好き…

保守


458:名無しさん@ピンキー
08/05/22 20:13:02 BONK12Tz
黒澤君&繭ちゃん、いいね。
次の投下が楽しみです。

それにしても、このふたりラブラブになったら絶対、「大奥ごっこ」とか
「越後屋プレイ」とかするよねw

459:名無しさん@ピンキー
08/05/23 16:32:38 48ekQ8WF
すいません
「ごっこ」とか「プレイ」とか一体何のことですか
無知な私めに事細かに説明して下さい

460:名無しさん@ピンキー
08/05/24 01:08:15 hadA6VNq
>>458
「そちも悪よのぅ、越後屋…」
「えっへっへ、お代官様こそ…」

…これはプレイなのか?www

461:名無しさん@ピンキー
08/05/24 20:48:32 BW2cDbh4
>>459
「上様、どうかお許しを」
「フハハハ…良いではないか良いではないか~」
 ほどけた帯(or腰紐)を引っ張ると女の体がクルクルと回る
「あ~れ~!ご無体な~~~」

という脱衣プレイ

462:名無しさん@ピンキー
08/05/25 11:40:10 bVEsrsRf
>>461
なんかワロタw

463:名無しさん@ピンキー
08/05/26 20:39:35 YH80qze0
>>461

漢の浪漫だ

464:名無しさん@ピンキー
08/05/28 01:29:31 7JA+FF5Q
>>461
それで投下お待ちしてますw

465:名無しさん@ピンキー
08/05/29 01:17:18 1p11dKsU
こっそり
鮮魚センター
とつぶやいてみる

466:名無しさん@ピンキー
08/05/30 00:58:17 yo/R0tUK
ロリっ子ハードル、とかもつぶやいてみる。

467:名無しさん@ピンキー
08/05/30 03:56:10 bQLZio1j
意味がよくわからな

468:名無しさん@ピンキー
08/05/30 23:10:44 TG2XjGp9
水沢君とさくらちゃんの再登場を待っている俺は一体

469:名無しさん@ピンキー
08/05/31 18:19:38 esRimARN
誠司と千佐子の再登場を未だに待っている俺は一体

470:名無しさん@ピンキー
08/06/02 19:30:47 gfldc4he
ホシュ

471:名無しさん@ピンキー
08/06/05 17:24:27 arIlJ+9B
黒澤君、お待ちしてます。

472:名無しさん@ピンキー
08/06/07 02:30:47 fWqzryJB
   | \
   |Д`) ダレモイナイ・・投下スルナラ イマノウチ
   |⊂
   |

そういう訳で、拙いですが投下させてもらいます。
元々ここ向けに書いていた物だったんですが、
なりゆきでで別スレに既に投下しちゃった奴です(つっても2年前ですが)。
枯れ木も山の賑わいという事で、場の繋ぎにでもなれば嬉しいです。

473:無題 1/3
08/06/07 02:31:40 fWqzryJB
どうしようどうしたらねえどうしようごめんなさい

そんな言葉は彼に届くはずもない。
うなじから耳にかけて、舌で舐めあげられる。熱い。それだけで体の中心から、また
零れ出してしまう。私のなかをかき乱している指を、また締め付けてしまう。
体育館に通じている非常階段の踊り場。遠くでバスケ部の練習の声が聞こえる。
耳元で、クッと喉がなる音がした。軽蔑されたのかもしれない。こんなところで、しっかり
濡れている私は。ひどい格好だ。シャツはボタンが外されて胸だけが露出するように
なっているし、ブラもホックが外されている状態。ショーツは足首のところで絡まっている。
もしかしたら、もしかしたら誰かがここを通るかもしれないのに。

「なんで、逃げたの」

熱っぽい吐息と共に、彼が言葉を吐き出す。体がびくびくと震える。
だめ、この人の声だけで私は。私は。

「ねえ……」
「…ぁ……んん…っ」

何も考えられない。あまり触ってもらえなかった敏感なそこを、こねくりまわされる。
長く美しい、私の好きな彼の指で。
きっと私はこの上なく、うっとりとした顔をしていたと思う。だから、指を引き抜かれて
彼と向き合うように体を回された時、ひどく残念だった。腹立たしくもあった。

「答えてよ」

私のなかから引き抜いた指を舐めながら、彼が問う。ああ、その目が好きだ。
太腿にとろりと、零れる感覚がした。

「あ……ごめんなさ…その、私、」
「ホテルのロビーから、君が見えた。声、かけようと思って外に出たのに、なんで」

474:無題 2/3
08/06/07 02:32:24 fWqzryJB
昨日の話だ。ガラス張りの戸の向こうに彼がいた。私はたまたま通りがかっただけ。
まさか会うとは思わなかった。そして彼は女の子といたのだ。少し離れた高校の制服。
なのに、まさか、彼が私のもとにわざわざ来ようとするなんて。

「なんで、逃げるの」

舐めていた指を、そのまま私の口のなかに突っ込む。犯されている。彼に犯されている。
私は彼の手を取ると、指を舐めあげた。そして彼のものを奉仕するかのようにしゃぶった。
好き、彼の指が好き。
とても久しぶりだった。こんな事をするのも、彼に触れるのも、彼に触れてもらうのも。
彼に触れてもらえなくなって、1ヶ月。その間、彼は全く単なるクラスメイトとして振舞ってきた。
何故彼が触れてこないのか、怖くて、全くわからなくて、私はただ心が空ろになったいったの
を覚えている。でもどこか頭は冷えていて、仕方がないと思ったのだ。突然始まった関係は、
突然終わるものだろう。そう納得したのに、昨日はきっとどうかしていた。

「だって、もう耐えられない……」

あなたこそ、なんで近づいてくるの。
彼が、私以外の女の子と一緒にいる。それも仕方がないと思っていたはずだ、少し前なら。
なのに悲しくて、耐えられなくて、そして体が疼いてしょうがなかった。

「あの時話していたら私、きっと馬鹿な事言ってた。軽蔑されてもおかしくない、いやらしい事」

指から唇を離して、少しずつ話す。目は合わせられない。怖い。
すると顎を持ち上げられたかと思うと、キスをされた。舌が入ってくる。いつもより乱暴なキスだ。
そういえば、今日初めてキスをしたなと思った。
私は本当に馬鹿な女だった。彼の行う全てに欲情し、すぐ濡らす。
キスが久しぶりで、それでも私は確実に幸せを感じていて、涙が零れた。
唾液を交換しながら、舌を絡めながら、階段に座らされる。
唇が離れて、彼が目尻の涙を舐め取った。そしてそのまま額にもキスされる。

475:無題 3/3
08/06/07 02:32:52 fWqzryJB
「言ってよ」
「……え?」
「今。そのいやらしい事」

少し微笑んだように思えるのは気のせいだろうか。
その表情があまりにもきれいで、見とれてしまっていると、ほら、と彼が催促する。
それでも口にするのはためらいがあった。

「……いっぱい……して…。いかせて…」

やっとの思いで、口に出す。羞恥で声が震える。きっと真っ赤な顔をしている。
こんな風にねだった事などなかった。
おそるおそる彼を見ると、今までに見た事のない目の色をしていた。
軽蔑された? 嫌われた? わからない。
けれども不思議と怖くない。そんな事、今までなかった。
彼は、私の足を開かせた。どろどろしたそこが丸見えだ。

「ぁ、やぁっ…何…」

一瞬ひるんでしまって情けない声を出してしまう。
彼は構わずに私の中心に唇を寄せた。そして、嬲られる。

「ん、や、やぁ、あ、」

舌で、その啜る音で、指で、追い詰められる。
何より、彼が彼が私に触れている。
その事実が、

「ぁ、は、いい……っ あ、んん、好きぃ…」

もう何が何なのかわからない。私はうわごとのように、好きと繰り返した。

ああ、そうか。
頭が朦朧としていく中、ひとつだけわかってしまった。
逃げたのも、耐えられないのも、彼を欲したのも、全部、そうだ。

私は彼が…


End.


476:名無しさん@ピンキー
08/06/07 02:33:56 fWqzryJB

以上です。

477:名無しさん@ピンキー
08/06/07 02:37:28 Ie3uFI47
週末に良いもの見れました、ありがとう&乙です

478:名無しさん@ピンキー
08/06/07 23:05:17 O//TZWZt
もっと詳しく書いて欲しいなぁ
彼は女の子のことどう思ってて、なぜ他の女の子といたのか
なぜまた戻ってきたのか
ぜひ続編として…!

479:名無しさん@ピンキー
08/06/08 21:58:52 YcFUcAsO
エチにいたるまでの設定がしっかり描けてないと萌えない…
オツなのにごめん

480:名無しさん@ピンキー
08/06/09 09:05:10 d0mcvwdt
館もんの明かされてない謎を伏線回収してくれええええ
千尋ルートは結ばれてめでたしめでたし、だったけど、誠司はメインルート?だから
結ばれて終わりってわけじゃなくて続き気になりすぎ!!

>>479
私もそうだなぁ。

冒頭から最後まであはぁんっ→AV
セクロスに至る過程と登場人物のバックボーン描写つき→Hシーンつき映画作品

のようなイメージがわくので、AVは興奮するが心にこない。
映画は感情移入できる。

481:名無しさん@ピンキー
08/06/09 15:22:50 N0UveR6x
みんな好みが厳しいなあ。
バックグラウンドに想像の余地がある感じで、
こういうのも結構好きだ。

ってことで、自分は少数派かもしれんが、GJでした。
ありが㌧! 楽しませてもらったよー。

482:名無しさん@ピンキー
08/06/09 17:37:26 qvSbnPKE
好み激し過ぎ。だから過疎るんだろ。

自分としては館もんの人は前フリ長すぎだと思う。

483:名無しさん@ピンキー
08/06/09 18:43:00 ox4cprgN
趣旨に反していなければそれでいいじゃないか。
書き方や特徴は人それぞれで好みも人それぞれなんだから、
文章としてよほど酷いというならある程度は仕方がないけど
注文つけすぎるのはよくないと思う。

484:名無しさん@ピンキー
08/06/09 22:33:16 /yR2AcV6
あたしもこういうのも好きー

>>479>>480が言ってることもわかるけど、
>>473のは背景やら気持ちがいろいろ妄想できてイイ。
文章が好みなんだろうな。

ってことで>>473さん乙でした!ありがトン!


485:名無しさん@ピンキー
08/06/10 15:22:04 U3fz/NG1
好みはあるのはわかるが、
職人は時間を割いて書いてくれてるんだ。

自分好みにしたければ、
自分が書けばよい。

486:名無しさん@ピンキー
08/06/10 19:33:32 7xieJBLb
ここに投下するのは読み手の反応を知りたいからじゃないのか?
無反応よりはたとえマイナス意見でも読んだ感想を知りたいんじゃないの。
まぁ、投下したあとに賞賛のレスがつかなければ、いちいち聞くまでもないって
いうことなのかもしれないが、それも結構残酷だろ。

487:名無しさん@ピンキー
08/06/10 23:18:37 SPvxd9yN
作品のクォリティとは別にスレタイの女の子が感じるにこだわるなら男性とは異なり
Hに至る過程、性衝動のみでなく男性が気持ちの部分でも女性を強く欲する心情が
読み手も納得できるように描かれているとより萌えやすいのは確かだよ
ただそれをテンポよく描写するのが難しいことも皆よくわかっている
だからこそ素晴らしい作品にはレスがいっぱいつくんじゃないのかな
レスあるときはいっぱいあるよね…こんなに住人がいたのねってくらい

ただレスしなくても書き込み自体にはいつも感謝してます


488:名無しさん@ピンキー
08/06/11 00:16:55 LDoLoBx0
添削するような部分ではなくて好みのレベルだと思うよ。
そういう手法の作品なんだから、あーしろこーしろと言われても
作者さんもどうしようもないんじゃないかな。

女性向け18禁添削虎の穴スレじゃないんだから、
自分好みの作品にしたければ自家生産する。
明らかにスレ違いの作品でもなければ、気に入らないならスルー汁、
過剰なマンセーもイラネ、というのが昔からの空気だったと思うけどなぁ。
そもそも、こんな論争続けてたら他の作者さんが投下しづらいじゃないか。

489:名無しさん@ピンキー
08/06/12 00:51:11 PmHlCQOw
つか、何か上から目線なんだよなぁ。
それを意見だからと言ってても、スレが繁栄する訳ないと思う。
初期スレみたいに、わいわい雑談しながらの雰囲気が好きだった…。
私もあまり好みじゃない作品もあったりするけど
投稿してくれる事自体はありがたいと思ってるよ。

490:名無しさん@ピンキー
08/06/12 08:28:04 CMfsXX7p
初期みたいなわいわい雑談てただの馴れ合いじゃん

491:名無しさん@ピンキー
08/06/13 18:00:11 r+2om7fp
>>473
GJGJ!
自分は妄想で補完するの好きだから
大好きだこういうの!

492:名無しさん@ピンキー
08/06/13 20:30:15 7ABB5hpz
あたしも好き
こういうのははっきり書かないとこが萌えると思うんだが

493:名無しさん@ピンキー
08/06/15 12:55:15 ps3rnYWj
初カキコなんだが、書こうかどうか迷ってる話がある。

兄と妹なんだが、妹のほうが兄大好きで兄の子が産みたいくらい思い詰めている。
兄のほうは「可愛い妹」くらいしか思ってない。
しかし、妹はその家の子供ではなかった。産院で取り違えられたらしい。
妹は驚くより喜んでしまう。「これで兄と結ばれても構わない」と。
そしてあの手この手で兄を誘惑し、ついに結ばれる。
天にも昇る気持ちの妹は毎日でもSEXしたがる。
一方、妹に手を出してしまった兄は悩み始める。
しかし、肉体の快楽に負けてダメだと思いつつも妹を抱いてしまう。
そして―

というのが大まかなあらすじ。ラストはまだ決まってませんが悲劇かも。
どこに投下していいのか判らなくてここにカキコしました。
お目汚し失礼しました。

494:名無しさん@ピンキー
08/06/15 14:42:36 8rHv24Re
妹スレなんてものもあるぜ!
でも読んでみたいぜ!

495:名無しさん@ピンキー
08/06/15 15:01:22 oFxH7hyA
近親ものはその属性が集まる人のスレに書いたほうがいいかと。
ここより圧倒的に受け付けてくれる人多いですよ。

496:名無しさん@ピンキー
08/06/15 15:42:12 eWMlluIu
でも、他人なんだよーあの二人。
近親ものはあの禁断な雰囲気がいいのかと・・・。
それと兄のほうが妹LOVEで無いので妹スレは場違いな気がした。

497:名無しさん@ピンキー
08/06/15 23:15:58 xP70Vhn0
読んでみたいけど、ここじゃないかな~
と思う

498:名無しさん@ピンキー
08/06/16 00:20:11 KP12LgnA
ガチな近親ものは苦手なので血の繋がらない兄妹なら読みたいっす
どこに投下するか決めたら教えていただけると嬉しい


499:名無しさん@ピンキー
08/06/20 14:00:20 iTgs4mvl
ほす

500:名無しさん@ピンキー
08/06/21 01:23:43 SftyGzHX
>>493
こちらでも大歓迎します

501:名無しさん@ピンキー
08/06/26 15:49:07 piHRPSs0
黒澤くんに逢いたい保守

502:名無しさん@ピンキー
08/06/27 20:46:19 jxBb0FW7
ほっしゅあげ

503:名無しさん@ピンキー
08/07/01 16:40:17 qH9kHKKN
捕手

504:灰色 猫
08/07/02 00:39:10 6rAJ76oC
以前、話したのとは違うが… 流用なのだけでど、決して元ネタが
少女漫画だから、女性向になるという安易な発想で貼ったわけではないと。
さてどこまで通じるか…?
スレリンク(eroparo板:104番)-111n

505:名無しさん@ピンキー
08/07/03 16:34:51 HqLFBOMD
20レス程お借りします

エロまでがちょっと長いので人によったら嫌かも



506:ほんきの嘘 1/20
08/07/03 16:36:47 HqLFBOMD
 中学からの親友ふみちゃんは言うわけだ。
「あんたらマジでつき合ってんじゃないかって、みんな噂してんだけどね」
 いや、ありえないんだなコレが。
 クリスマスは一緒にファミレスでご飯食べてゲーセン行った。
 バレンタインは本命への手造りの余りをあげた。(基本的に義理はあげない主義だが) 
 でもホワイトデーに全く期待しなかったクッキーのお返しなんぞくれたりしたんで
(しかも自分で作れるんだこれが)、直後の奴の誕生日には一応プレゼントをあげた。

 この男「ケン」とあたし「奈緒」は1年の時たまたま隣の席になったのが
きっかけで仲良くなった。
 あたしも割とゲーマー寄りなので話が合ったわけだ。(だがあくまで私自身は
ヲタではない……と思う。いや、思いたいけど傍目には同類かもなorz)

「ねえ、それレベル上げダルい?」
「いや。けど敵がえげつない……やる?」
「いや、いい」
「ラスボスならまた手伝ってやるよ?」
「んじゃ、やろっかな」
 ん、とニッコリ笑うとケンはまた画面に釘づけになった。眉間に皺が寄る。マジじゃん。
 今も新刊の文庫を読みふけるあたしの隣の席で、DSの新タイトルにのめり込んでる
こいつを見ていると『傍目には似合いのヲタクカップル』に見えるんだろうなと思う。
 いや全然ちがうんだけどね。嫌いじゃないし、どっちかっていうと好きかも。
 早々と読み終わった文庫をケンのリュックに入れてやる。
 いつもこんなもんだ、色気も何もない。でも一緒にいるのはあたしは好きだ。
 けどそれは親友としてのレベルである。互いに好きな相手もいるし、それを
それぞれが応援している。
「よっしゃクリアー!俺マジ天才!!」
「あーもうっ、うるさい!」
 またやってる、くすくす笑う声が教室のあちこちから聞こえる。
 いやだから、一緒にしないで……。


507:ほんきの嘘 2/20
08/07/03 16:38:45 HqLFBOMD
「奈緒ー。後でね」
 うんバイバイ、とふみちゃんに手を振って自分もパンを取り出す。
「広野さんあっちのコたちと食べるんだ?」
「そうみたいだね。ん……何?」
 自分も弁当を出しながらケンはあたしをじっと見てる。
「いや、女の子ってトイレとかランチとかみんなで行くの好きじゃん?奈緒は
 そういう所ないよね」
 別に嫌いってわけじゃないんだけど、何か苦手なのよ。用足し位落ち着いてしたいし
なんつうかその、ああいうのが肌に合わないんだ。
「やっぱ変わってんのかなー」
「いいんじゃないの?無理したってボロが出て結局辛くなるよ。それに広野さんていう
 いい友達がいるじゃんか」
 そうなんだよね。誰とでも仲良くできるふみちゃんのお陰でハブられずに済んでんだ。
「俺だって相当変わってると思うよ?」
 確かに。自分で弁当作るのが好きな男子高生はそういない。男女逆なら嫁にしたい。
 そう言うと「マジで?」って結構喜ぶんだよね。変な奴。
 隣のクラスの山田君が呼びに来たけど手振って弁当開けてる。
「行かないの?」
「うん、ここで食べる」
 あっ、そう。あたしも1人はちょっと寂しかったりもするんで嬉しいんだけど、
時々『気を遣ってくれてるのかな』と考えたりしてしまう。
 ……まさかね。そんな義理ないよね。
「あっ、ケン、ユリちゃん♪」
 小声で肘をつつくと廊下の窓を示す。ケンの片思いの彼女『永井ユリ』が通ったからだ。
背中までの髪は綺麗で、体は小さくて白くて可愛い。
 ちっちゃくピクッと体を反応させて「ん」とだけ言うと、「いただきます」と
行儀良く手を合わせてご飯を食べ始めた。
「やけにあっさりじゃない?」
「いや、普通だよ?」
「照れてんの?」
 うるさい、って呟きながら卵焼きを1つくれた。


508:ほんきの嘘 3/20
08/07/03 16:40:08 HqLFBOMD
「昨日の本さ、まだ読めてないんだけど~」
「いいよ。ゆっくりで。まだやりたいエロゲーあるんでしょ?」
「うん……てエロゲーって言うな!恋愛シュミレ」
「はいはい」
 帰りまで一緒かい。
 あたしは趣味が高じて書店でバイトしている。本代はかさむし、社員割引なるものも魅力的。
 ケンも趣味には金が掛かると新聞少年をやっている。
「何であんたも付いてくんの……あっ、また何か買う気?今日発売のアレなら
 あたしが買っといたげるよ」
「いや、いつもだと悪いし」
「ついでだからいいよ。エロ本以外なら」
「ば……!なら、頼んどく」
 周り気にして真っ赤になってやんの。案外ウブな奴。
 並んで歩くと155センチのあたしと180のケンはすっごく凸凹してて、あたしは首が痛い。
 結構顔も整ってるし、髪型とか気をつければ……惜しいなあ、などと良く思う。って
人のこと言ってる場合かあたしは。自分こそ何とかしろよ、この寝癖。
 今朝、時間がなくて誤魔化すためにとりあえず編んだ似合わない三つ編みをいじりながら歩く。
 肩までだと跳ねやすいんだよね。でも一応女の子ですから、長い髪で少しでも
可愛くなれるもんならと頑張ってるんだけど、今度こそと一度位は背中まである
髪に憧れたりしては何度も切っては後悔する。
 今が限度だ。ユリちゃんとやら、マジ尊敬する。

「あっ」
 下駄箱の間から出てきた相手とぶつかりかけて、思わず顔を見て息を呑んだ。
「ああ……深田か」
 少しハスキーがかった声に、反応すまいとしてあたしの肩に力が入る。
「志真、くん……」
「元気そうだな」
「うん」
 顔、見らんない。
 しばらく沈黙した後、彼は口を開いた。
「深田、今からちょっといい?」
「あ~……バイトで」
 じゃ明日。そうあっさり約束事を交わして彼は玄関から出て行った。
「おい、今のって呼び出しかなぁ?奈緒チャンスじゃないか!……おい、どうした。
 嬉しすぎて声出ないか?」
 肩を掴んで揺さぶりながら笑ってるケンに、あたしは愛想笑いしか返せなかった。

 志真くんは、あたしの想い人だった。


509:ほんきの嘘 4/20
08/07/03 16:41:24 HqLFBOMD
 翌日の放課後、下駄箱の前に彼は待っていた。
「深田」
 気づかない振りして素通りしようと思ったのに、あっさりと捕まってしまった。
「志真くん……」
 すぐ後ろにはケンがいた。
「行こう」
 そう言いながらその視線はあたしを通り越しチラとケンを見る。
「……あ、俺ブクオフ寄ってくから」
 あたしの肩をポンと叩くと一度も振り返らず行ってしまった。
 残されたのはあたしと志真くん。久々に間近で聞いた声はあたしの胸に小さな亀裂を産んだ。

 その時ほんとうは、ケンにいてほしかった。


 誰もいない視聴覚室準備室にあたし達は向かい合っていた。
 何を言えばいいのだろう、彼は何をするつもりなんだろうか。
 何を考えてるの?
「深田とこうして話すの久し振りだね」
 そう話しながらカーテン越しに外を眺めて目を細める。陽に透けた薄茶色の柔らかな
髪が眩しいと思った。
 ここに来るのもバレンタイン以来だった。

「俺とつき合う気まだある?」
 いきなりの台詞に面食らった。思わず彼の顔を凝視してしまったまま固まった。
「なに、言ってるの……?」
「あいつとは別れた。今度こそ終わりだ」
 突然の事にパニクって志真くんが近付いてくるのをどうにも出来なかった。
 気が付いた時には、腕を掴んで抱き締められてた。
「う……そ」
 返事もしないうちに彼は首筋に唇を当て、そのままあたしの唇へそれを滑らせようとする。
「……ちょっ!」
 背筋が一瞬にして凍った。その寒さに耐えきれなくて思い切り顔を背けた。
「ふか……っ」


 ガタガタッ!!

 その時ドアが大きな音を立てて揺れた。
 あたしは今だ!とばかりに駆け寄って出入り口へ向かった。
 もっとも、そこしか無かったんだけど。

 だがドアを開けたあたしを待っていたのは、今のよりもっと重い衝撃だった。
 目の前に立ち塞がる大きな人影。
「な、んで……!?」
「いや、あの」
 いたたまれなくなって、あたしは後ろも見ずに2人の男子を残してその場から逃げ出した。

 背後からはあたしを呼ぶケンの声だけが響いていた。


510:ほんきの嘘 5/20
08/07/03 16:42:46 HqLFBOMD
「彼、すっごく心配してたけど」
 あのまま家まで逃げ帰ったあたしをふみちゃんが訪ねてきた。
「彼って?」
「どっちだと思う?」
 その時あたしの頭に浮かんだのは1人だけだ。
「多分、奈緒が考えてるので合ってると思うよ」
 見透かしたようにあたしを見ながらお茶に口を付けた。
「何があったかは教えてない。でもきっと何か勘付いてるんじゃないかなー?」
 重い気分で膝を抱えていると、場違いに明るいゲーム曲が流れ出した。
 ……ケンだ!
 出な、と手をひらひら振って促すふみちゃんが背中を向けて手近な漫画を開くのを見て
携帯を手に隣室へ出た。

「……もしもし」
『俺だけど、ケンだけど。……無事か?』
「うん」
 心臓がバクバクする。
 出来れば電話叩き切って、みんな無かった事にしてしまいたい。
『今××にあるコンビニなんだけどさ~……出て来れねえかな?』
「えっ!?」
 来るまでいるからって切れた。……マジっすか。
 ふみちゃんと家を出て送りがてら外を歩く。足は重い。
「もう忘れちゃいな」
 ガラスの向こう側に見えるケンの背中に気付くと、ふみちゃんは一言だけそう呟いて帰った。

 休憩コーナーのベンチで携帯を凝視しながらケンは待っていた。
 あたしが声かけるより先に気付くと、位置をずらしてあたしの座るとこを作った。
 無視して突っ立ってるわけにもいかず、腰を下ろす。だけど言葉は見つからない。

「あいつと何があったの」
 静かに呟く質問に 答える事が出来ずに黙ったままのあたしに
「何された」
いつもの柔らかな声とは違う、低く静かなそれが突き刺さる。
「本当に好きなの?あいつの事」
「……何で?」
「奈緒、逃げてるみたいに感じたから」
 心臓を捕まれたような気がして、思わずケンの顔を見た。
 ケンもあたしを見ていた。


511:ほんきの嘘 6/20
08/07/03 16:44:38 HqLFBOMD
「怯えてるみたいにも見えた。……何があった?」
 Gパンの膝を握る手が小刻みに震えた気がした。
「……ごめん」
 それだけ言うのにかなりの力がいった。
「何が?」
「あたし、あたしね」
 楽になるのかな?
 忘れること、出来るのかな?
「うん」
「あたしね。あたし……もう、綺麗じゃないんだ」

 がしゃん。

 ケンの携帯が足下に落ちてる。
「何て?」
「落ちたよ、携た」
「だから何て!?」
 いつもモバゲーするためだけにあるような四角い通信機は、床の上に放置された。
 いつもなら慌てて拾うのに。
「あたしね、ほらバレンタインにチョコあげたって言ってたじゃん」
「うん。でも渡しただけだって……」
 そう、告白はせずに逃げちゃった、ってケンには言った。志真くんには他校に彼女がいるし。
 中学からずっと好きで、だから、渡して振られてそろそろ諦めても良いかなって思ってた。
 今時流行んないよね、そういうの……。
 でもその後の展開は意外だった。
『付き合ってもいい』と彼は言ったのだ。彼女とは年末に別れてしまったから、と。
 それからのあたしは混乱していた。
 キスされて胸を触られた。後は……。
 とにかく恐くなって彼を突き飛ばして逃げ出した事は覚えている。
 そして数日顔を合わせないまま過ごしているうちに、元カノと復活したのを人伝に聞いた。
 皮肉な事にバレンタインのあの出来事の直後だった。

「ふみちゃんには話したけど、あたし……話せなかった。ケンには言えなかった」
「…………」
「異性だし、軽蔑されて友達でもいられなくなると思って……。簡単に
 キスとか許しちゃった事になるんだもん。おまけにそれを後悔してるなんてさ」
 ごめんね、何でも相談するって言ったのに。
 携帯を拾ってふらふらと出て行く後ろ姿を見ながら思った。

 あたしは、大事なひとを失ったんだ。


512:ほんきの嘘 7/20
08/07/03 16:45:48 HqLFBOMD
 翌日学校は地獄のように退屈で、苦痛で、早く放課後が来る事ばかりを待ち望んだ。
 ケンはとんでもなく遅刻して昼前にやっと来たと思うと、昼休みになるや否や
どっかにすっ飛んでった。
 あたしと並んでるのが嫌なのか気まずいのか……とにかく追う事も出来なかった。
 普段は無理にあたしを女子の輪に誘う事のないふみちゃんは、珍しく声を掛けてきた。
「いいよ、あたしに気遣わないで」
「じゃ、あたしが奈緒といていい?」
 そう言うと他のコにごめ~ん、て挨拶してさっさとケンの席に弁当持って座った。
 こういう時、普通は1人になりたいと思うものかもしれないが、逆にそれに慣れて
しまったあたしにはありがたかった。人間……というよりあたしって、勝手。


「森山って、ああ、2組の森山研?」
 ……ケンの事だ!

 次の授業前にとトイレを済ませ、個室の扉に手を掛けた時聞こえた声に思わず
ノブを握り締めたまま出そびれてしまった。
「あいつって、ユリの事好きだったんだよね?」
「そうそう!」
「ああ、何かそうみたい……」
 1組女子!ユリちゃんもいる。
 ケン、何かしたのか?ユリちゃんに。バレてんじゃん!!
「でもあいつヲタ入ってんじゃん。キモイよねー。ユリのタイプじゃねぇわ」
「ん~まあ、ちょっとね」
「見た目は悪くないけど、なんかこう……ああいうのってさ~」
「ああ、わかるわかる」

 ハァ!?
 何が?知りもしないくせに見た目だけで決めつけんなよ!!
 何か知らんが頭に来た。思わず出て行こうとしたその時だ。またあたしの手は止まった。
「けどあの人どうしちゃったんだろうね?3組の男子殴ろうとしたってマジ!?」
「ねー。相手はふざけてただけですって言ったらしいけど、本人は殴るつもりだった
 って言ってるらしいよ。でも理由は頑として言わないみたい。相手が庇ってる
 んだとしたらせっかくなのにバカだよね」


513:ほんきの嘘 8/20
08/07/03 16:47:17 HqLFBOMD
 3組男子ってまさか……。
「やっぱりああいうタイプってキレると恐いのかね?」
 散々喋って彼女達は出てった。
 静かになってからようやく個室から顔を出すと、隣の個室からは同じ様にふみちゃんが
顔を出してた。
「奈緒、今の話」
「うん……」
 鳴り響いたチャイムに会話はそこで終わった。
「行こ。……とにかく本人に聞きなよ」
 そうするほかない。ふみちゃんに手を引かれて教室まで走った。


 午後の授業が終わってもケンは教室に戻って来なかった。ずっと主張を替えずに
いた挙げ句理由についてはだんまりを続けていたそうだ。
 しかし庇っているかもとは言え当の相手(やっぱり志真くんだった)は実際のところ
殴られてはいないのだし、先生達もお手上げで折れるしか無かったそうだ。
「ごめんな。もう、変に構ったりしないから」
 玄関で待っていた志真くんはあたしにそう言って頭を下げた。
「結局彼女に逃げられて、その穴を深田で埋めようとした俺が悪かったんだ。森山が
 怒るのは当然だと思う。『そんな奴ずっと好きだったなんて奈緒が可哀想だ!』
 って……本当に悪かった」
 寂しさに負けたんだ。そう言った。あたしはキープされる所だったわけか……。
 結局は彼女に適いはしなかったわけだ。そう思っても別に悲しくは無かった。
 少しだけ、遠ざかる彼の背中に胸はちくん、と痛んだけど。

 もう少ししたら多分解放されると志真くんが言ったとおり、間もなく職員室から
ケンが出てきた。
 あたしと目が合うと気まずいのか床に目を落として歩いてくる。
「……待ってたの?」
「うん。あー重かった!一体何入ってんの?こん中」
 机に置きっ放しだったリュックを渡す。
「今日バイトないからさ。一緒に帰っていい?」
「……うん」
 余計な心配かけてごめんな。

 小さく呟いて歩き出した。


514:ほんきの嘘 9/20
08/07/03 16:48:49 HqLFBOMD
「俺も奈緒に黙ってた事がある」
「えっ!?」
「奈緒と仲良くなってすぐ、だから半年以上前か……告って振られた。永井さんに」
 はあ!?聞いてない!
「何度も言おうとしたけど出来なかった。そしたらもう奈緒は俺の背中押してくれなく
 なるし、そういう繋がりがなくなったら話とかしなくなって切れるって思ったから」
 あたしも言えなかったようにケンも言えなかったって事?
「振られんのはわかってたからまあ、すぐ立ち直ったんだけど。そん時より昨日の
 奈緒の話の方がショックだった。……軽蔑はしないけどむかついたし、苦しかった。
 ごめん俺、奈緒と今迄通りは付き合えない」
 一番恐れていた事が起きたと思った。やっぱり騙してた事は大きい。あたしは
取り返しのつかない事をしてしまったんだ。

「好きなんだ。永井さんに告白した時は気付かなかっただけかもしれない。
 奈緒が、好きだったんだ。思ったほど悲しくなかったのがショックだったんだ、
 失恋しても」
 気がついたら、ぽつぽつ降り始めた雨にも構わないほどあたし達の空気は張りつめていた。
「奈緒、困る?」
「ううん」
 たった一言であたしの心は新たな色に染まりゆくだろう。でもそれを受け入れられるかが怖い。
「……あたしは志真くんがOKした事も、キスされた事も嬉しいよりショックだった。
 それを後悔してるあたしにもショックだった。好きだったら結果どうあれそんな筈ないのに」
「綺麗じゃないって……どこまで?」
 ケンはあたしの目を見ずに言った。
「……胸少し触られただけ。怖くて逃げたから。けど、そんな気持ちになったんなら」
 あたしには黒歴史だ。流されて、悔やむなんか最低だ。
「それ、忘れられる?」
「えっ!?」
「無かった事にはならないかもしれないけど、俺が塗り替える事……出来る?」
「ケン」
「ごめんな。俺何だかんだ言っても結局同じ様になろうとしてんのかもしれない。
 でもマジなんだ。奈緒……お前としたい」


515:ほんきの嘘 10/20
08/07/03 16:50:32 HqLFBOMD
 どこまで?
 そんな無粋な事聞けない。じゃあどこまでなら構わないというのか。それより
あたしはどうしたいのか。

「濡れるなー」
 誰にともなく呟くとリュックから折り畳み傘を出してさすケンの広い肩を見ていた。
 歩いてるうちに段々視界が薄暗くなった。少しずつ傘があたしの方に傾いていくのに気付く。
「濡れるよ」
「いいよ」
 でも、と見上げたケンの顔はあまり良く見えなくて、途端に得体の知れない不安に襲われた。
「……た」
「なに?聞こえない」
「もっと早くに気が付いて、何とかしたら良かった。ごめんね」
 気付いた所で結局は嘘を突き通したのかもしれないけど。
 互いを失くさないための悪あがきのための心からの嘘を。
「謝るな。……泣くなよ」
「ごめん……」


「明日、会える?」
 駅まで送ってくれたケンの言葉に迷い無く頷く。
「今夜ひと晩よく考えてな。俺の事も、奈緒の……気持ちも」

 あたしに傘を押し付けるようにして、本格的な雨の降り始める中に消えてゆく
背中をずっと見ていた。


 翌日は学校は休みだったから、昼からバイトに出てた。店を出ると外の植え込みに
腰掛けてTシャツに短パン姿の兄ちゃんが必死の形相でDSやってた。ていうか
どう見ても立派なオタクに見えるんですが。……まあ、いいけど。
 あたしに気付くと
「飲む?」
ってリュックからペットボトルをくれた。
 いつも何入れてんだ一体。ていうか更にコンビニの袋見えたんですけど、何故出さない?
……重そ。
「うちな、親社員旅行で明日の夜まで留守してんだ。……来る?」
「うん」
「どっか遊び行ってもいいけ」
「ふみちゃんに頼むから」
 ゆうべひと晩考えた。何度も何度も、どれだけ悩もうと答えは同じだった。
 黙ってあたしの手を握るとやりかけのDSを閉じて立ち上がった。
「俺、いいんだよね?奈緒の事諦めなくても」
「うん」
 あたしも恐れるのはやめる。

 終わった事悔やむのも、嘘つくのも。


516:ほんきの嘘 11/20
08/07/03 16:51:59 HqLFBOMD
 母子家庭だし1人っ子だからって言ってたから、3部屋あるうちの1部屋はケンのもの。
「団地ってどこも造りは同じだね。でもうち弟いるからさ、未だに部屋一緒だよ!?いーなぁ」
 しかしフィギュアやらゲームやら、そら金掛かるわ。バイトも頑張るわな。
「言っとくけどエロいのはねぇぞ」
 ばれてたか、弱みを握ってやろうと思ったのに。
「明日朝、3時位に一旦朝刊配りにでるけど、いい?」
「うん」
 朝、あたしはどういう顔してるんだろう。
「……奈緒、あの、抱いてもいい?」
「は!?」
 いきなり!?
「いやその、そっちじゃなくて……抱き締めてもいいか、と」
「あ、ああ、うん……いい、よ」
 そっち!?……まあどっちにしろ恥ずかしいけど、ムードというかスマートじゃないなぁ、
ストレート過ぎて恥ずかしい。
 でもそういうの勝手な幻想なのかもしれない。

 本を読むのが好きだった。一度書いた感想文が賞を貰った時褒めてくれたのが志真くんだった。
そっから妙に彼を美化してしまってた気がする。だから違ったんだ。
 ゆっくりと近付いてきて、いきなり距離が無くなった。あたしの顔はケンの胸にあって、
どちらも互いの表情が見えない。
 ただしがみつくだけしか出来なくて、そこからどうしていいのかわからないでいると
頬にあった胸の温もりが消えて、あっ、と思う隙もなく唇が塞がれた。
 がちっ!
「痛っ!?」
 勢い余ってぶつかった歯を抑えて2人とも顔をしかめた。ムードぶち壊しじゃんorz
 今度は焦らずゆっくりと触れ合う唇を感じながらキスをした。
「奈緒のちゅー顔可愛いな」
「やだ……って、えっ、目!」
 ニヤリといやらしく笑う顔をマジでつねってやろうかと思った。こ、こいつっ……。
「今日は全部見せて貰うから。今迄我慢したんだから」
 まさか意外とS!?……早まったか?あたし。
 いや後悔はしないけど、などと思ってるうちにまたぎゅっと抱き締められて、
さっきよりも強いキスとともに思考が途切れてゆく。


517:ほんきの嘘 12/20
08/07/03 16:53:57 HqLFBOMD
 背中に回されていた手が徐々に下りてGパンのお尻に触れた。
 抗議しようにも塞がれっ放しの唇は声1つ漏らせない。無理やり喋ろうとして
逆に舌をねじ込まれどうにも出来なくなった。
 絡み合ってくる舌の動きと下半身を撫でる掌に翻弄されて、しがみついた背中を必死で叩く。
「んっ、痛……何、やっぱり嫌?」
「えっ、いやそうじゃなくて」
 ただびっくりして恥ずかしくて俯いて目を逸らした。
「ごめんな……つい」
「ううん」
 今度はそうっと抱き締められて、あたしは逆にぎゅっとしがみついた。強く、強く。

 大丈夫。あたしはこの男が好きだ。


 お風呂を借りて夕飯を食べた。(ケンが作ってくれてあった)
 うっかり寝間着を持ってなかったあたしはケンのスウェットを借りた。
 パンツはあまりに長いため穿くのを諦めて上だけ着たけど、それでも結構大きくて
膝を抱えただるまさん状態でころんと転がったままテレビを見ていた。
 風呂から上がってほかほかの顔でペットボトルを抱えたケンが、じーっとドア
を開けた状態で見てるのに気が付いた。
「なに?」
「……水玉」
「???…………!!!!!」
 慌てて起き上がって必死で裾を引っ張った。
「誘ってんのかと思った」
「ばっ……ふ、不可抗力!」
 焦ったあたしの顔もきっとこんなだろうと、赤い顔したケンを見て思う。
「消していい?」
 リモコンを指差したのに頷くとケンはそれでテレビを消した。
「こっちも消す?」
「……お願い」 
 部屋の灯りが落ちた。

 頼り無げな豆電球の灯りの下、ベッドの上で背中合わせに恐る恐る服を脱いだ。
「奈緒、こっち向いて」
 初めて異性に肌を晒すのかと思うとただ恥ずかしくて、胸に押し当てた服を握る手に力がこもった。
 背中に感じる視線とケンの気配に意識が集中して身動きが取れない。
「これ、取っていい?」
 ブラのホックをくい、と引っ張られ、一瞬戸惑ったけど何も言わずに頷いた。


518:ほんきの嘘 13/20
08/07/03 16:55:34 HqLFBOMD
 ごそごそとホックをいじってる。上手く外せないんだ……慣れてないから。
いや変に上手でも何かヤだけど、どうしよう?手伝った方がいいの?なんて延々
考えてるうちにあたしの胸は解放された。
 肩紐を腕から抜こうと引き下げて
「こっち向いてよ」
と耳元で囁く声の柔らかさにぞくっとした。
 体をケンの方に向けると覆い隠していたモノを剥ぎ取られ、裸の胸に抱き締められた。
「ずっと、ずっとこうしたかった。奈緒が欲しかった」
 喉元にこみ上げてくる切なさに、ため息しか出ない。
 体が熱い。
「……好き」
 やっとの事で絞り出した声に応えるように唇が重ねられた。
 何度も啄むように浴びせられたそれは段々激しさを増し、唇をなぞるように
這わされた舌がやがて口内を蹂躙し始めた。

 もう後戻りできない。

 のしかかられてそのまま後ろへ倒れたあたしをケンが見下ろしていた。
 じんわり滲んだ汗に張り付いた髪を指ですくい、首筋に息をかけられた。
「ひゃ……」
 初めての感覚に思わず声が零れた。それに被せるように吸い付き舌を這わされ
そのぞくぞくする感触に背中が仰け反る。
「あ……っ」
 出すつもりなんかないのに、意思とは関係なく普段とは全く違う声が出る。
 やだ、絶対変!
 とっさに手の甲を押し当て口を塞いだ。
 そんな事にはおかまいなしに這わせた唇や舌はそのままに、両胸に熱い手の温もりを感じる。
 しばらく撫で回された後鷲掴みにされて揉みしだかれながら、唇をまた塞がれ
ごく当たり前に舌を絡まされるともうされるがままにケンのペースに巻き込まれてゆく。
 キスが再び首筋へと移り胸に落ちた。何気に目を向けると目を閉じて吸いつく
表情が何だか可愛くて、思わず頭を撫でたらケンがこっちをちらと見たので目が合った。
 うわっと恥ずかしくなって顔を背けると、反対側の乳首に走った刺激に
「……っ!?あっ」
予定外に声を出して反応してしまった。


519:ほんきの嘘 14/20
08/07/03 16:56:58 HqLFBOMD
「ふーん。揉むのよりこっちのがいいんだぁ……」
 両手で指先を使ってそーっと触れる。その焦らすようなもどかしい刺激に堪えきれず
背中を反らし、思わずケンの髪をかきむしった。
「ああ、あ……」
「気持ちいいの?」
 そんな事聞かないでよ!ていうかわかんないよ。
 でも止めて欲しくはなくて、むしろもっと狂ってしまっても構わないとさえ思う。
 感じる、ってこういうの?
「なんか声だけでイケそう、俺」
 はあ、と熱い息が耳に掛かるのがまたぞくぞくする。
 出したくないのに、喉の奥から絞り出すような嬌声が唇から零れて、すぐ側にある
ケンの耳にどんどん届いて吸い込まれてく。
 口を塞ごうとすると両手をそれぞれ押さえつけられ、再び吸い付いた胸を舌で弄ばれた。
「う、んーっ……あ……」
 唇を噛んで我慢するけど、呆気なくそれは失敗する。
 ケンの無駄な肉のないそれでいて大きな体に組み敷かれては、あたしなんかもう
どうにも出来ない。
 いつしか自由になった両手を動かすのも忘れて、お腹や太ももを撫で回す彼の
愛撫にされるがままに身を投げ出している。
 そのうち、体の中心の奥でじんわりと不思議な熱が溢れてきて、それに我慢ならなくなった。
 無意識に身を捩って摺り合わせた脚が長いケンの脚に絡み付く。
「どした?」
「……んっ」
 わかんない。でもこのままじゃ……。
 黙ってケンの顔を見ると触れるだけのキスをして抱きついた。
 どうしよう。多分もっと先を求めてる……。
 ぼうっとなった頭でそんな事を考えてると、最後の砦となった布越しに指の感触がした。
「すげ、湿ってる」
「うっ……!!」
 見なくても解るくらい。その指の動きで下着が軽く張り付いてしまっているのがわかってしまった。


520:ほんきの嘘 15/20
08/07/03 16:58:15 HqLFBOMD
「う……そお」
「そう思うなら触ってみ?」
 手首を掴まれてそこへあてがわれた。本当に、布越しにでもぬるっとした感触がわかる。
 これ、濡れてるってやつ……!?
「自分でした事ないの?」
「ない……」
 だから全く初めての事にどう反応していいのかがわからない。興味がなかった
わけじゃないけど、なんか怖くて、イケナイような気がしていた。
「あんた、するの?」
「聞くなよな、お前」
 そっちが先だろうが。軽く呆れるわ。
「男だからな。もう結構ヤバい」
 ケンのそこは下着が突っ張って見えるから、初めて目の当たりにするあたしでも
かなりな事になってるのは何となく想像がついた。
「でもまだ我慢だな」
 そう言ってあたしの最後の1枚を脱がしに掛かった。
 さすがにこれだけは顔から火が出そうで抵抗しようと試みたものの、既に力が
入らなくなった体はあっさりと全てを晒すことになった。
 脚の間に体を割り込ませると、ついにケンの手がそこを探った。
 指を動かすと微かにぴちゃっという濡れた音が耳に届いて、あたしは恥ずかしさで
死にそうな程心臓が縮まった気がした。
「良かった。気持ちよかったんだ……?」
 ちょっとホッとしたように息をついて、また動き始めた指はあたしを休ませてはくれない。
 多分そこは一番感じやすい所なのだろう、触れられる度に勝手に声が漏れて体が跳ねた。
「あっ、うぁ……やぁん、ああ……」
 自分でも凄く感じてる、とわかる。熱くて、溶けそうで、息が出来ない。もし
今止められたら辛いかも……。
「ちょっと力抜いて」
 初めてあたしの中に何かが出入りしている。少し痛い?
「何?」
「俺の指。奈緒ん中暖かいよ」
 そんな事言われたらもうどうしたらいいのかわからなくて混乱する。


521:ほんきの嘘 16/20
08/07/03 16:59:32 HqLFBOMD
 黙って指を抜くと濡れたその先をぺろりと舐めた。うわあ、や、やらしいっ!
 ニヤリと歪んだ口元に何となくやな予感がよぎったが時既に遅し、次の瞬間あたしは
これ以上ない羞恥に追い込まれた。
「うそっ!?だ……だめ、や、ああっ!!」
 文字通り体を開かれて指の代わりに舌の滑る熱が、あたしの理性を壊し始めた。
 両の太ももの付け根をがっちりと押さえつけられて頭を押し付けられては、閉じたくても
閉じられずどんな抵抗も出来なくてただ泣き声をあげるしかなかった。
「やああ……あああ……っだ、めぇっ……んん」
 じたばたと腕を、頭をぶんぶん振ってもがいても、その波から逃れることは出来ない。
 体全体を痺れるような突き抜けるような何とも言えない感覚が巡り、言葉も思考も
吹っ飛んでばらばらになったような気がした。
 気づけば枕を千切れそうなほど握り締めて、悲しくもないのに訳も分からず
泣きじゃくっていた。
「大丈夫?……もしかしてイった?」
「う……わかん……ない」
 話には聞いても、それが何なのかわからないあたしには判断のしようがなかった。
 きゅうっとその体にしがみついて泣きじゃくるあたしの頭を撫で、のし掛かるように
抱き締められて、狂った時間を徐々に落ち着かせていった。
「奈緒。もう限界……。入れていい?」
 一瞬体が強張ったけど、黙って頷いた。
 ケンは起き上がるとリュックをごそごそと探り、中からコンビニの袋に入った箱を出した。
 あ、昼間のペットボトル!そっか、だから袋ごと突っ込んで重い思いしてたわけか。
 納得。そう考えたら悪いけど笑えてしまった。どんな顔して買ったんだ?だって
他にどう考えてもお菓子やら漫画やら、ついでに買いすぎ。
「お前……なんか想像してるだろ!?」
 すっげ恥ずかしかったんだぞ、と言いながら作業を終えて振り向いたケンを見て
一瞬にして顔色が変わった(に違いない)。


522:ほんきの嘘 17/20
08/07/03 17:01:17 HqLFBOMD
「ま、まじで?本当にする………の」
「は?何、心配してんの?大丈夫だろ。ちゃんと入るように出来てんだろ」
 わかってるよ!わかってるけど。
「だって、何か思ったより……おっきいんだもん」
「ああ、俺背高いからな」
「えっ!!関係あるの!?」
「知らん」
「はあ!?」
 がくっ。マジで言ってんですけど!あたしの不安をよそにくっくっとお腹を抱えて
笑ってやがる。むーかーつーくーっ!!
「怖いか?」
「もういい」
 一転して不安げな目であたしを覗き込むケンを見て、あまりの忙しさにそんなのどっか行った。
 ゆっくり優しく体を押し倒されて脚を開かされ、何かをあてがわれたのを感じると
さすがに怖さが先に立って目を瞑った。
「いくよ」
「う……」
 それは強い力であたしの体を押し開き始めた。
「いた!痛い、痛いっ!!」
 体が勝手に退けてきて、しがみついた上半身とは逆に下半身は逃げようともがいてる。
「ごめん、奈緒、ごめんっ!!でももう無理……」
 あたしだってわかってる。だけど心と体はバラバラで、受け入れたくてもそれに
耐えることが本当に辛くて、悲鳴をあげそうになっては歯を食いしばって思いとどまる。
「う……はあ、はあっ、んっ」
 少しずつ引き裂かれるように体を貫いてくるケンのそれに、思考の全てが持って行かれる。
「も、少しだから」
「んっ」
 またあたしは泣きながら思い切りしがみついて耐え抜いた。
『やめて』
 そう言うのは簡単だけど、それだけは絶対引いてはならないカードの数字のようで
初めから見なかったものとする。
 じゃなきゃ何故今ここにこうしているのかあたし自身に説明がつかない。
 それに、あたしはやっぱりどんな思いをしても、このひととだけは繋がっていたいんだ。
 幼稚な嘘で守り通した絆を。


523:ほんきの嘘 18/20
08/07/03 17:02:31 HqLFBOMD
「は、入った……全部」
 高い背丈を縮めて流れた涙にキスして、そのまま唇同士を重ね合わせてきた。
「ごめんな……」
 首を振って答えると、すぐ終わらせるから。そう言って腰を少しずつ引いては押し付ける。
「た……痛いっ……んっ!!」
 我慢しようとしても想像以上の激痛に顔が歪む。
「はあっ……な、おっ……。ごめん」
 息も切れ切れに喘ぎながら名を呼ばれてふとその顔を見た。
「ケン、気持ちいい?」
「う……ん。すげ、気持ち、いい。マジでごめんっ、やめんの無理……」
 その顔を見て少しだけ、ふっと力が緩んだ気がした。
 嬉しい。
 こんなに痛い思いをして、抱かれているのに自分の方がケンを抱いてる気がしてきて
凄く愛おしく思えるその髪を撫でた。
「あ、俺、イキそ」
「いいよ」
 更に激しさを増した動きにまた痛みがぶり返し、再びしがみついて耐える。
「…………っ!!」
 最後になんか呻いてあたしの上に倒れた体を精一杯受け止める。
 和らいでいく痛みも今は何だか心地良くて、頬に掛かる荒い息遣いに耳を委ねた。
 けど現実として。
「あの、ケン、重っ」
「あ~……ごめん」
 ぼうっとした顔で体を起こすとゆっくりキスして肩で息をする体は、とても大きく見えた。
「もー俺のもんだ!」
 大事にするから。そう言って汗で湿ったあたしの髪を目を細めながら撫でた。
「ん」
「ごめんな」
 少し鈍い痛みの残る下腹を撫でられながら、抱き合って事後の時間を過ごした。

 ……んだけど。
 腕枕されてまどろみながら程よいだるさに眠りにつこうか、などと目論んでいたのに。

 ピッピッ…ピピ

「ねえケン、あたしの事好き?」
「うん」

 ピコピコ…ピピピピ

「大事にするってゆったよね?」
「勿論」

 ピピー…チャラララ~♪

「だったら今やんなーーーーっ!!」
 DS潰したろか!!何故今やる?


524:ほんきの嘘 19/20
08/07/03 17:03:40 HqLFBOMD
「ちょっと待って、もうちょいでこいつをっ……ああミスった!よし持ち直した、と」
 ムード無さ過ぎ……。
「奈緒待ってる間ずっとやっててさ~、そしたらレアアイテムget出来たんだよ!
 だからもちょっと待っ」
「知らん!これだからゲーオタはーっ!!」
「オタ野郎なんてこんなもんでしょ?……よし倒した~!」
 いや、それは違うと思うよ。謝れ、全国のオタクに謝れっ!!
「さっきまではもっと優しくて男気があったのに……。ああ、もう別れてや」
「ちょっ、ごめん。捨てないで!マジでごめんなさい。俺奈緒にまで見離されたら
 一生独男じゃん」
「なんか……微妙」
 部屋の灯りを消して3時のアラームが鳴るまでくっついて眠った。
 いわゆるモーニングコーヒーという物は、ケンのバイト後2人で早朝の公園で
食べたコンビニサンドと缶コーヒーで済ませた。

 時々こうして朝ご飯食べようか。
 健康的なデートだ、って笑った。


 月曜日の体育の時間、ケンは腹痛だって嘘付いて休んでた。
「まあ、そりゃ無理もないわな」
 ふみちゃんがニヤニヤしながらあたしの前の席に後ろ向きに座ってる。
「こっ、声がでかいって」
 あの後あたしの爪痕でケンの背中はエライ事になってしまった。当然人には
見せられなくて(多分バレる)ズル休みする羽目になってしまった。
 まあ半分は自分のせいだしねぇ……。
「ところでさ、彼氏持ちな深田奈緒子クン。あんたさっきから何してんの?」
「か、彼氏持ちはやめてよ。自分もじゃん!……いや、やっぱりあたしの髪って
 猫っ毛だからブロー持たないのね」
 必死で寝癖直して来たのに水の泡だわ。
「ん。何ふみちゃ」
「ん~?んふふふ。今日の奈緒はカワユいねっ♪」
 頭ナデナデ。あたしは子供ですか?

 でっかい図体の子供がトイレから戻ったので、ふみちゃんはじゃあね♪と行ってしまった。
別にいいのに。


525:ほんきの嘘 20/20
08/07/03 17:06:47 HqLFBOMD
「奈緒、今度の休みデートしよっ」
「は?いいけど」
 今までにも2人でいた事あるから今更って感じなんだけど。
「ちゃんと付き合ってするの初めてじゃん。どこがいい?」
 付き合って初めて、でちょっと感動してしまった。
「どこでもいい」
 ケンと一緒なら。
「じゃ、任せといてな」
 それが甘かった……。


「どこでもって言ったじゃん」
「だからって何で初めてのデートがここなのよ!?」
 ま、漫画喫茶って……。この前一緒に見たテレビで『初デートでこれはないわ』
ってやってたじゃん。
「いいじゃん。ほら奈緒が読みたがってたやつ全巻あるぞ?俺も存分に遊べるし~♪」
 備え付けのゲーム機に目を輝かせてるこやつに何を言っても無駄かもしれん。
「だったら社会見学行くか?」
「どこ」
「裏のラブ」
「ここでいい!」
 神様、あたしはヲタではありません。と言いつつ長編漫画を読みふけってしまった。

 世間から見たら立派なヲタカップルみに見えるんだろうなー、なんて考えながら
でも好きなんだよな、とケンの横顔を見ながらため息をついついてしまうあたしだった。

* * *おしまい* * *


終わりです。
もしや読んで下さった方ありがとうございました

526:名無しさん@ピンキー
08/07/04 00:19:57 AZIvBIgc
乙でした!
ゴメン言いながら止まらないケンに萌えたw


527:名無しさん@ピンキー
08/07/04 09:35:36 I2OBb+qI
超乙!!


528:名無しさん@ピンキー
08/07/04 13:24:52 rphkWcq2
恋愛シュミレじゃなくて、シミュレーションね
ケンがそう言う人間ならしょうがないけど

流れが丁寧で良かった、乙です

529:名無しさん@ピンキー
08/07/05 03:34:07 yFd1m+Jw
乙です!リアルでよかったよー
繭タンと黒澤君書いてる人?上手いよね。



530:書き手です
08/07/05 04:06:26 wZR8j3wP
>>528
あ、本当だ…
ごめんなさいorz


ちなみに申し遅れましたが以前>>310書いた者です

繭タンは自分も楽しみに待ってます


531:名無しさん@ピンキー
08/07/05 15:22:25 Ewvg1Een
310もよかったよ。
今回のも面白かった!
なんかプロットひらめくポイントとか教えてほしいくらいだ。

532:名無しさん@ピンキー
08/07/05 18:55:28 GvTVATdY
>>525
文体に見覚えあると思ったら『週末のパズル』の職人さんだった!

今回も等身大の女の子の心理描写が上手いなぁと感心しました。
奈緒とケンのキャラクターがとてもイイ! エチシーンも
初めて同士のいっぱいいっぱい感が微笑ましくて、量的にも良かったです。
一作きりで終わるにはもったいない~!

533:名無しさん@ピンキー
08/07/07 19:36:40 cR8M+hq/
また作品読ませて欲しいと思ってたよ!
また来てくれて本当にありがとう
良かったらまた読ませてね

534:名無しさん@ピンキー
08/07/10 00:46:40 gfFYp1n7
既出かな?
「夕焼けの窓辺」って作品が凄くよかった

535:名無しさん@ピンキー
08/07/11 21:35:58 nuoLYUfz
>>534
たまにはこういう情報もうれしい。
アリガトサンクス。

536:名無しさん@ピンキー
08/07/13 23:27:01 12UulmB2
>>525gj

537:名無しさん@ピンキー
08/07/18 10:08:02 QEfLPH4q
ホシュ

538:名無しさん@ピンキー
08/07/22 08:12:47 tKzXIjDj
ほしゅ

539:名無しさん@ピンキー
08/07/24 20:51:15 3AnZZKIB
ほす

540:名無しさん@ピンキー
08/07/28 14:29:36 lyv0FtRB
(;´д`)ゞ アチィー!!

541:名無しさん@ピンキー
08/07/28 14:29:43 xjQxZjIi
黒澤くん待ち

542:名無しさん@ピンキー
08/07/31 16:07:08 B6GRd+KV
ほ(`・ω・´)す

543:名無しさん@ピンキー
08/08/03 11:35:45 RkVdvUZa
繭タソ…

544:名無しさん@ピンキー
08/08/06 08:11:03 aHmwlEjz
続き読みたいなぁ

545:名無しさん@ピンキー
08/08/08 09:20:47 KZ9/iggt
職人さんまち

546:名無しさん@ピンキー
08/08/08 19:56:52 DiKrLVRX
スレリンク(eroparo板:754番)

これはこっち向けのような

547:名無しさん@ピンキー
08/08/09 11:45:57 K/HzuBhK


548:名無しさん@ピンキー
08/08/11 00:00:35 IVwk3Yux
あげ

549:名無しさん@ピンキー
08/08/14 15:51:08 RqiMcxrS
黒澤くん待ち

550:名無しさん@ピンキー
08/08/17 11:39:24 cJd1PeBb
待ちあげ

551:名無しさん@ピンキー
08/08/19 19:14:46 Iz7En9fg
職人さん待ち

552:名無しさん@ピンキー
08/08/20 00:02:48 jUBQ8pny
「週末のパズル」を書いた者ですが、連投になりますが一作できた所なので投下します。
注意書きとして

※年の差(10歳程度)
※血縁無し、親子とも兄妹ともつかない微妙な関係
※未遂だけど強引な箇所有り

長いので取りあえず1/3程度にします。エロは今回少な目、
それぞれの該当スレにするには中途半端過ぎたので…
あと男、ヘタレかも…


553:montage~真夏の雪解け~ 1/15
08/08/20 00:04:29 jUBQ8pny
「大丈夫だよ」
 その温もりの主はそう言った。

「僕がいるから」

 ぎゅうっと握り締められた私の左手が、微かに震えていたのを覚えている。

 そして、その頬に流れていた涙のことも……。




「ねえ、アレだれかのお兄さん?」
「本当だ。若いね」
 今クラスの子達が噂してるのは、歳の頃は20代後半のスーツ姿の男性だ。
 高2の冬、来年は受験や就活となる私達は今日は三者面談という事もあり、廊下にちらほら
見える親の顔に皆緊張や興味で、小学生の参観日のように浮き足立っている。
 この歳になればそうそう親が出て来る事なんてありはしないから、無理もないのか?
何だかんだ言っても暇なんだ。
 そんな中、中年に紛れて1人中途半端に若い(?)のがいたら自然と目に付くのは仕方の
ない事なのだろうが、それを感じてか見られている方も落ち着かない様子で益々ぎこちなく
所在なさげに小さくなっている。
「林葉。林葉香子(かこ)」
 はい、と呼ばれて立ち上がると私はそのまま男の元へ向かった。
「いくよ、イチ君」
 ああ、と小さく返事して私の後につき進路指導室へと向かう。
 背中に感じる視線やひそひそと聞こえてくる声にも、もう慣れた。好きに想像して下さいな。


「そんじゃ今日このまま仕事戻るよ。下手すりゃ帰るの午前様かもー。ご飯いいから先に寝てな」
「ん、わかった。行ってらっしゃーい」
 役目を終えてホッとしたのだろう。月末の忙しさからなのか(いや、いつもか)ボサボサの
頭を掻きながらまた会社へと急ぐ姿を見送る。
 八神伊知朗(やがみいちろう)は私の保護者だ。年は27歳。
 かといって兄ではない。血は繋がっていないのだ。

 もしママが生きていたら……。
 彼は私の―パパになる筈の男だったのだ。


554:montage~真夏の雪解け~ 2/15
08/08/20 00:06:10 jUBQ8pny
「ただいま」
 二間のアパートに戻ると直ぐに茶の間の隅にある小さな仏壇に向かい、まず手を合わせるのが
我が家のルールである。
「ただいま、お母さん」
 右側の写真立てにあるふっくらした優しい顔に声をかけ、それから左側の写真立てに挨拶する。
「ただいま……ママ」
 2人に手を合わせると台所へ向かった。
「あー何もないな。今日は1人だから卵でも焼くか」
 小さな2人掛けのテーブルに1人で着くと、ふと思い出す。あの頃もこうしてママの帰りを
待っていた事を……。


 7年前の今頃、雪の降る日に学校から帰ると具合が悪くなって、なかなか帰らないママを
待っているうちに心細くなった私は、徒歩10分程の職場へ自ら歩いて向かう途中に倒れて
しまったらしく、気が付いたらママの勤める病院のベッドで寝かされていた。
 側にいたのは心配そうに手を握っていたママと、青い顔して私を覗き込んでいた若い男の人だった。
 私の顔を見るとホッとした様子で『良かった~』と呟くと、私の頭をわしわしと撫でた。
その手の温もりとママの顔に安心して、またそのまま眠ってしまったのを覚えている。
 当時流行っていたインフルエンザに掛かってしまっていた私は、その後数日寝込んでしまった。
道の真ん中で倒れていた私を背負って近くの病院まで運んでくれた若い男の人は、何度も
家まで見舞いに来てくれて、元気になってもママのいない時の話し相手になってくれた。
 当時大学生だった彼は、自分より15も年上の子持ちナースに惚れたのだ。だが大学を卒業
したら結婚してくれと猛アタックし、唯1人の身内である母親の説得を済ませた直後、
ママは事故で呆気なくこの世を去ってしまった。
 未婚のまま私を産んだママには頼れる人間は誰もなく、私は1人ぼっちになってしまった。


555:montage~真夏の雪解け~ 3/15
08/08/20 00:07:46 jUBQ8pny
 ママのお墓の前で佇みながらその人は私の手を握り締め、
『大丈夫だよ』
そう言って微笑んだ。

『僕がいるから』

 かすかに震えるその右手で私の左手を強く握り締めながら、泣きはらした瞳で。
『僕が守るから』
 きっぱりと揺るぎない口調で。

 親戚には猛反対されたらしい。当然ながら若さ故の気の迷いだとか、まだ自分も学生の癖に
甘い考えが過ぎるだとか、まあもっともだと思う。だけど、彼は決して私を捨てようとは
しなかった。
『きょう子さんに約束したんだ。香子ちゃんも同じように大事にするからって』
 その言葉通り、私は大切に守られて今まで暮らしてきた。学生時代はバイト、就職してからは
建設会社で真面目に働いて、私に決してひもじい思いはさせまいと頑張った。
 彼の母親も最初は戸惑ったけれど、本当は女の子が欲しかったから、と私を可愛がってくれた。
私も「お母さん」と呼んですぐに懐いていた。
 だけど、お母さんも3年前の中2の時に病気で亡くなってしまった。

 それから、私は彼―イチ君こと八神伊知朗と暮らしている。
 親子でもなければ、兄妹でもない。一体私達は何なのだろう?
 お母さんが死んでしまってから、経済的な理由もあって今の部屋に越して来たけど、
周りには兄妹だと言ってある。名前が違うので色々噂されているかもしれないけど、
余所の家庭の事情までは皆口出しなど下手に出来ない。学校でもしょっちゅうあったしもう
慣れてしまった。
 私達は「家族」という括りの中にいる。それだけだった。

 だけど今、私は彼が父親になり損ねた10歳違いの兄のような人間から、「男」という
生き物である事を見せつけられて恐ろしい程動揺してしまっていた。
 何気に目についた本棚の裏の隙間から覗くモノ。
 思わず引っ張り出して思いっ切り後悔した。そして見なかった事、としてまた元に戻した。
 イチ君がいない日で良かった。それだけが救いだった。


556:montage~真夏の雪解け~ 4/15
08/08/20 00:09:49 jUBQ8pny
「なあ、本当に就職すんの?香子は頭いいんだから大学行ってもいいんだよ。それ位の貯えは
 あるから」
「いいの!私勉強そんなに好きじゃないし、やりたい事もあるわけじゃないからさ。それに
 りっちゃんも進学はしないみたいだし」
 りっちゃんとはママが生きてた頃からの長い付き合いの友達だ。腐れ縁でもうずっと同じ
クラスというから驚きである。彼女んちとは家族ぐるみで付き合いがあるので、私達の事情も
知っている、数少ない関係者である。
「そっか、りっちゃんもかぁ」
「それに私早く一人前になって、イチ君に甘えてばかりじゃなくなりたいんだよ。……もう、
 夕べ遅かったんだからさー、寝てて良かったんだよ?今日は出勤遅くでいいんでしょ」
 欠伸を繰り返しながらヨレヨレのスウェットで味噌汁を飲むイチ君に、テレビで時間を
見ながらご飯をよそう。
「駄目!朝は一緒がうちのルール」
 そうなのだ。昔からどんなに二日酔いで辛くても絶対起きてきて、私と必ず会話するのだ。
 だから余程でない限り、1人で朝ごはんを味わった事はない。
 お母さんが生きていた頃から学校の行事にも来てくれたし、亡くなってからは尚更。お陰で
私はママが居なくなってからも寂しい思いをした事はなかった。
 それを当然のように受けていた。私は大切にされていたのだ。それは成長するにつれ彼への
感謝の気持ちを私の中に満たしていったし、信頼を増す一方のものだった。
 だけど今、それがどこかでほんの少しだけ狂い始めている。
 今朝、初めて目を合わせずに「行ってきます」を言って部屋を出た。
 何故か一刻も早くあの場から離れたくて、余裕はあるのにやたら急ぎ足で駅まで向かった。
 1本早い電車に乗りながら、私は胸の奥からどす黒い気持ちが渦巻いては消えようと
もがいてるのを感じていた。
 何に対してかは解らない。だけど。
「イチ君のばか……」

 裏切られたような気がした。


557:montage~真夏の雪解け~ 5/15
08/08/20 00:12:01 jUBQ8pny
 今日も残業か、と彼の分の夕飯をテーブルに残して部屋に引きこもった。
 私の机は二間のうちの奥の部屋にあって、寝るのもそこにしていた。
 布団を敷こうと押し入れを開けようとして、ふと隅の本棚に目が止まる。背板と壁の隙間
から覗くそれを少し躊躇しながらも引き出すと、怖いもの見たさからついページを捲って
しまった。

『Fカップの誘惑』
『現役女子大生のフルヌード』
『特選風俗情報』

 袋綴じまで開いてあった。--絶句。
 隠すように置いてあるって事は、やっぱり知られたくないって意味で、私も見ない事にする
つもりでいたのに……好奇心と何から来るのかわからない苛立ちが私を襲った。
 見なけりゃ良かった。
 そう思ってまた元の場所へ、それを汚いものを棄てるような気持ちで押し込んだ。
 しばしぼうっとしながら部屋の真ん中で固まってしまっていた。
「あ、洗濯物忘れてた……」
 リビングに放り込んだままの塊を思い出して、気持ちを切り替えるようにそっちへ動いた。
 彼は寝るときはこっちに布団を運んで寝ている。お母さんがいた時はよく川の字で寝ていた
けど、2人になってここへ来てからは一緒の部屋で寝なくなった。
 ふと考える。一体いつそんな事してるんだろう……?
 私はまだ異性とも、自分での経験もなかった。だけど17歳ともなれば周りには色々な変化は
あるし、知識としては既に頭に入っていた。
 イチ君のような歳ならまだ若いし、男なのだ。そういう事位は当たり前にするんだろうと
頭ではわかってる。わかってるつもりだった。
 だけど私と襖1枚隔てたここで?などと想像してしまうと、生々しくてどことなくぞっとする。
それと同時に胸の奥が押しつぶされそうに痛むのだ。
 あのグラビアを見て何を想うのか、もしかしたらどっかでビデオでも観てるのかも……。
そう思うと、何だか苛ついてくる気持ちをどう呼んだらいいのかわからなくて、
なぜか悔しくてたまらない。


558:montage~真夏の雪解け~ 6/15
08/08/20 00:13:57 jUBQ8pny
 洗いたてのYシャツを畳もうと触れて、ふとその大きさに両手で目一杯広げたそれをしげしげ
と眺めた。
 意識した事無かったけど……こんなおっきな体してたんだ。背は178は軽くあると思う。
痩せてはいないけど、現場に出る事の多い顔はよく焼けていて、がっちりした体格に合ってる。
 何気に香る洗剤のと共に男の人の匂いが残っている。気が付くとシャツに顔を埋めていた。
「……なにやってんだろ?ばかみたい」
 そう思いながら、ふとそれはどんなものなのだろうかという気持ちに駆られていた。

 イケナイ。

 なのに私の右手は、パジャマの上からそうっと誰にもまだ触れられた事の無い自身の体を探ろうとする。
 どんな気持ちになるんだろう……?
 下着を付けていない上からの刺激に、直ぐに先端の尖った様子が生地越にもわかった。
 そっと触れると驚く程感覚が鋭くて、小さく声が漏れてしまった。
「あっ……」
 何これ?へんな感じ。摘むと少し痛くて、軽く擦るように撫でると痺れるように疼く。
 そんなにも強くない程度の暖房の部屋の中、首筋と脇辺りにじわっと汗が流れそうになった。
 やだ、やめなきゃ、こんなコト。
 そんな風に思うのに、ボタンをはだけて直にまさぐり始めた胸の感覚から逃れられない。
「んんっ……」
 終わらさなきゃ。
 何故か途中で止めることが出来ないと思った私は、嫌悪を抱きながらも胸の上に左手を
残しながら右手をパジャマの中に入れた。
 下着の上からそうっと割れた部分を撫でると、初めてそこがじんわりと熱くなって疼いて
来る感覚にたまらず床の上に投げ出した脚がじたばたと動くのをやめられない。
「あ……」
 熱い。何かが中で焼け付くように暴れて、もっともっと、と欲している気がして、それを
知るために躊躇無く直に下着に指を差し入れた。
 裂けた深みにそって恐る恐る指を滑らせると、ぬめりを帯びたものが絡まる。そのなめらかさが
益々快感を産んでいくのをどうにも出来なくなっていた。


559:montage~真夏の雪解け~ 7/15
08/08/20 00:15:53 jUBQ8pny
 一心不乱に指をかき回しているうちに小さな芯に触れた。その途端、今までにない程の
快感が全身に駆け巡った。
「っあ……」
 発するつもりがないのに自然に吐く息に声が混じる。だめ、やめなきゃ、なのに止まらない。
 ふといつの間にか閉じていた瞳を開けると、投げ出したままのYシャツが目についた。
「…………イチ……」
 27の男ならどう動くのだろう?
 強く胸を掴む。
「こう?」
 それとも。
「……はあぁっ、ん」
 下着の中を自ら玩ぶ指の、もはや暴走とも呼べる動きを止めることなど出来ず、無意識に脚を
開いては気付いて閉じようと繰り返す。
「イチ……」
 何故そうなってしまうのかわからない。口を開けばその名を呼んでしまう。何度も、何度も。
 自分の息遣いに紛れて耳を掠める濡れた音が段々と速く流れていく。それは指の動きと同化
して痺れるような疼きを私に送り込んでくる。
「……あっ!た、たすけ、て……イチ……っ」

 ぼやけた視界にその顔を思い浮かべながら、呼吸困難に陥ったような感覚のまま私は
眠ってしまった。



「……れ?」
 布団の中で目が覚めた。いつの間に?確か夕べは……。
 記憶の糸を必死で辿りながら、段々と羞恥心がその中を占めてゆく。
『私……何てこと』
 しかし、と考える。自分で布団に入った覚えはなく、あれは夢だったのかと思えば、ふと
確かめた胸元はそのまま2つ程ボタンが外れたままだった。普段きっちりと上まで閉めないと
気が済まない癖があるので、やはりあのまま寝てしまったのか。
「お、起きたか?」
 襖が開いてイチ君が顔を覗かせたのでびっくりした。
「12時頃帰ったら部屋の真ん中で大の字になって寝っ転がってたんだぞ?……風邪、ひいてない?」
 おでこに手のひらが当たった瞬間、反射的に自分でそれを払いのけてしまった。
「あ、ごめん。大丈夫だから!」
「……へ?あ、なら、いいけどさ。早く起きないと遅刻すっぞ」
 卵を焼いた匂いがする。
「……もっと早く起こしてくれたら良かったのに」
 少し焦げた匂い。それを嗅ぎながら襖を閉めて制服を取った。


560:montage~真夏の雪解け~ 8/15
08/08/20 00:17:59 jUBQ8pny
「あ、やっぱ焦げてるじゃん!もう無理しないで起こしてくれりゃいいのに。……イチ君は
 モノ造る仕事してるくせに、料理のセンスはないんだからさ」
「心が痛っ!ちょっと傷ついたかも。でもそろそろ家事くらいちゃんと出来ないとな」
「何で?今更」
 私を育てると言った手前、料理やら何やら頑張ってはくれたものの結果は散々だった。
だから結局の所お母さんがやって、その後は私が頑張ってる。まあ最初は散々だったけど。
「俺だっていつまでも香子に甘えてるわけにはいかないからな」
「え?」
 どういう意味かと問おうとして固まった。
「そのYシャツ……」
「ああ、香子がやってるの思い出してやってみたんだけど、難しいなー。高いけどこれからは
 形態安定のやつにすっかな」
 アイロンまで自分でやったんだ。所々まだ皺が残ったままのシャツを眺めていて、テーブル
の隅にある桜色の封筒に目が留まった。
「何これ?」
 手に取ってみた途端イチ君が慌てて引ったくろうとするが、私の方が中身を引き抜くのが
一瞬だけ速かった。

「……どこに行ってた?」
 まだ昼間なのにカーテンを引いたままの部屋は薄暗かった。
「何時だと思ってる」
「……11時」
 はぁ、と溜め息をついて低い声で背中を向けたままもう一度訊かれた。
「どこにいたんだ?香子」
「……どこだっていいじゃん。イチ君には関係ないでしょ?どうせ他人になるんだから」
 瞬間振り向いた彼は私の頬を平手打ちした。
「っ…………!?」
 焼け付くような熱さと痛みが後から徐々に襲ってくる。
「どれだけ……俺がどれだけ心配したと思ってるんだ!?連絡1つ寄越さないで、もしもの事が
 あったらって俺がどんなに……」
 痛さと腹立たしさで涙が溢れた。その瞳で睨みながら私の中で切れた何かが喉の奥から
次々と気持ちを爆発させてゆくのがわかりながらも、自分を抑える事が出来なかった。
 だが、本棚の裏から引き出され大きな音で床に叩きつけられた物を見て、呆然とするイチ君の
顔は何故か妙に冷静に見ている自分もいる。


561:montage~真夏の雪解け~ 9/15
08/08/20 00:20:20 jUBQ8pny
「イチ君だって男だもんね。わかってるよ、別にこんなのじゃ驚きも何ともしないってば」
 彼はそれをばつが悪そうに拾うと、黙ってゴミ箱につっ込んだ。
「……ごめん」
「何で謝んの?」
 苛々してきた。頬が痛いのと得体の知れない悔しさが体中を駆け巡る。
「色々。……いきなりぶって悪かったし、ごめんな」
 ぶたれた事なんかなくてびっくりした。そのショックで黙っていた私の頬にそっと彼の手が
触れた。だが、
「……触らないでよ!!」
反射的にその手を思い切り払いのけた。
「香子」
「ママが死んでからも7年も経つもんね。本当我慢したよね?いい加減自由になりたいよね?
 正式に結婚してたわけじゃないし、私がいなくても……むしろいない方が都合いいよね?
 色々と」
 ダイニングテーブルにあったままの封筒を掴んで中から二つ折の台紙をまた床に投げた。
 和服姿の女の写真がひしゃげた状態で壁にぶつかった。
「それは……上の人が世話好きでたまたま今回持ってきただけだよ。俺だけじゃない」
「そんなの!……じゃあ何で今更家事なんかすんの?私が居なくなるのが当たり前みたい
 じゃない。あんな……本とか。時々石鹸の匂いさせてくんのもどっか行ってんじゃないの?
 最低っ」
「あれは、現場で汚れた時に会社のシャワールームで汗流して来るって言ってるだろ!?」
「どうだか?」
「……もういい。勝手にしたら?」
 じっと私を睨みながらも、話にならないと言った様子で首を振りながら溜息をついている。
「俺は誰とも付き合う気もないし、結婚だってしない。……他の誰とも」
「は?何言ってんの。もう頑張んなくてもいいってば。ママだってきっと許してくれるよ?
 私には反対する権利はないんだしどうでもいい」
「……本気で言ってんのか?」
 冷たく静かながらもきつい声だった。普段の柔らかな喋りからは想像がつかない位堅い。
「本気で言ってんのかよ!?」
 手を掴まれて乱暴に引っ張り寄せられた。その強さに負けるように、私の体は床に転がった。


562:montage~真夏の雪解け~ 10/15
08/08/20 00:22:10 jUBQ8pny
「イチく…っ」
「結婚なんかしないって言ってるだろ!?」
 倒れた私の上にのしかかり手首をがっちりと掴まれた。
「や……!」
「何で、何でわかってくれないんだよ……」
 何か言わなきゃと開いた唇はすぐに彼のそれで塞がれた。初めてのキス。
 思い描いていたのとは違って、強く激しく押し潰されるような感覚に空想の壁が打ち崩されてゆく。
 彼の-―男の体の重さに押しつぶされて苦しい。息が出来ない。
 乱暴なキスは、押し当てられただけの様な感覚から、徐々に緩く柔らかく軽く啄まれる
ものに変わっていった。それに何故か声が漏れる。
「んっ……」
 何度も何度も繰り返し唇を重ねられる毎に自然と体の力が抜けていく。不思議。
「香子……」
 ようやく離れた唇からその声が漏れた時、私は完全に力が抜けていた。何も抵抗できずに。
「香子」
 私の顔の映るその瞳がまた再び近づき距離を無くした。もうされるがままになりつつキスの
雨を受けると、ふいに両手が楽になった。それと同時にブレザーのボタンが外され
一気にブラウスが捲り上げられた。
「!!……いやぁっ!?」
 いきなりの事に停止しかけた思考が戻り、おかれている状況に精一杯の対応を試みるも、
剥き出しになったブラのカップが引き下ろされかけて、彼の舌が中に侵入しようとしていた。
「や、だめっ」
 頭を押し退けようとして逆にまた腕を掴まれ胸に顔を埋められた。
「香子……香子」
 頬や唇の触れる感覚に羞恥と恐怖が入り混じり、もう一度声を上げて抵抗しようとした。
だが、ふと私は開きかけた口を閉ざしてしまった。それと同時に僅かに残る力での抵抗も止めた。
 その様子に腕を押さえる力が緩み、胸の重みが消えた。
「……どうして?」
 抵抗を止めた事に戸惑ったのか顔を上げた彼と目が合って、恥ずかしくなって逸らした。
「いいよ。好きにしてくれて構わない」
 これだけ薄い壁だ。声を出したら近所の誰か通報するかもしれない。そしたら世間の噂になる。
2人とも益々好奇の目に晒されて、きっと何を言ってもダメになる。隣のテレビや外の車の
音が私の耳に届いた時そう感じた。
 私は……まだ彼と離れたくはなかった。


563:montage~真夏の雪解け~ 11/15
08/08/20 00:23:43 jUBQ8pny
「ごめん」
 重い体を引きずりながら動くように、ずるずると音を立てて私から離れ立ち上がった。
「ごめん。俺どうかしてる……」
「どこ行くの?」
 ジャンパーを羽織る背中に急に不安を感じて声を掛けた。
「……ちょっと友達んとこに行ってくるから。今日は泊めて貰う、本当にごめん」
「……私昨日りっちゃんとこに居た。おじさんたち旅行で居なかったから電話も留守にして
 貰って、携帯も切ってた。私こそ心配かけてごめん。酷い事も……」
「わかった。もういいから」
 いつもの顔で少し弱々しく微笑む口元には、さっき胸に感じた無精髭が見えた。そういえば
Yシャツにネクタイのまま。一晩中私を待っていたのか。かくいう私も制服のままだった。
 昨日の朝例の見合い写真を見てから飛び出すように学校へ出て行き、そのまま帰る気がしなく
なった私は幼なじみの家へ行った。
 無断外泊も初めてだったけど、あんなに叱られたのも初めてだった。

 ……もっとも、なるべく波風の立たないように過ごしてきただけの事かもしれないけど。
困らせたいと思った事も一度だってなかった。
 玄関が閉まり、足音がしなくなるのを聞いてから小さな引き出しをそっと開いた。
 隅っこにひっそりとしまわれていた小箱を取り出すと中を開く。
 決して高価とは言えないその中身は-―指輪だった。
 ママに渡されるはずだった物。貧乏大学生には精一杯の贈り物だったんだろう。
 中学生になった頃にふざけて指にはめてみて言った事がある。
『これ私が大人になったら貰っていい?』
 たわいない子供の言葉だったのに、彼は真剣に言ったのだ。

『駄目だよ。それはママのために買ったものなんだから』

 それは私の心を静かに、だけど確実に打ちのめした。

 それが何であったのかはその時の私にはわからなくて、ただ深く傷ついたのを覚えている。

 私達は義理とはいえ父親と娘になり損ねた上に、兄と妹になりきる事も出来ず。
「なんで死んじゃったの?ママ」
 あなたさえ生きていてくれたなら。
 ごく自然な筈の感情がこんなに自分を傷つけ苦しめる物だったのなら。

「私って悪い事してるの?……」

 恋なんか知りたくなかった。


564:montage~真夏の雪解け~ 12/15
08/08/20 00:25:46 jUBQ8pny
*** ***

 俺は何という事をしでかしてしまったんだろう。
 宝物のように守って来たつもりの香子に酷い事をしてしまう所だった。
 ……いや、もうやってしまっているのかもしれない。

 いつ頃からか、肩の上で揺れる髪に気軽に触れる事が出来なくなった。スカートから伸びた
脚から意識的に目を逸らすようになり、顔を寄せて喋る事も自然にしなくなっていった。
 そんな自分がいつか抑えられなくなる日が来てしまうのではないかといつも恐れていた。
 欲望を爆発させてしまうのを防ぐために時折自己処理を施して体の欲求を抑えつけても、
気持ちの高ぶりは置いてけぼりになって益々体と心がバラバラになっていく気がした。
 もしそれがバレたらどんなに軽蔑されるかと思っているうちに、それはとうとう見つかって
しまった。目の前に突きつけられた時にはまるで犯罪を暴かれたような気持ちになった。
 想像はついていた筈だったのに、まるで汚い物を見るような香子の瞳が刺さるように痛くて
あんな物さっさと棄てておけば良かったと思い切り後悔した。
 なじられたその瞬間抑えていたどす黒い欲望が否応なく噴き出して、気が付けば無抵抗に
躰を投げ出した香子の悲しそうな顔があった。
 あのまま助けを呼び叫べばきっと、俺は悪意の塊として香子から引き離される事となって
世間に曝され二度と彼女と逢うことは無くなってしまったかもしれなかった。
 そんなことは堪えられないと今の今まで思っていたが、いっそそうなってしまった方が
楽なのではないのだろうか?

 昨夜帰宅した俺の目に映ったのは、畳みかけたYシャツを抱き締めて眠る香子の姿だった。
 布団に運んだ時にはだけた胸元が見えたが、直そうかと手を出しかけて本心は違う事を
思っているのに気が付いて、触れてしまう前に布団を掛けて隠し離れた。
 子供のままの寝顔に密かに見える女としての姿に、俺は……怖くなったのだ。

 きょう子さん、あなたが生きていてくれたなら。

 あの子を傷つけずに済んだんだろうか……?


565:montage~真夏の雪解け~ 13/15
08/08/20 00:27:38 jUBQ8pny
*** ***

 鍵が開く音がして、玄関に立った。
「お帰り」
「……ただいま」
 あれからずっと、翌日の晩まで彼は連絡一つよこさず。私はいつ帰るのかと問うことさえ
出来ず部屋で待ち続けていた。
「……待ってたのか?」
 ラップをかけたまま冷えて並んだ夕飯の皿を見て、申し訳なそうに目を伏せた。
「だって、いらないって聞いてなかったし。……もう済んじゃった?だったら別に」
「いや、まだ。食べるよ」
 上着を脱いでハンガーに引っかけ席についたのを見て、温め直した食事を出した。
「……来年から出るつもりなの?家」
 突然思ってもみなかった事を言い出されたので、ずっと何となく合わせ辛かった視線が絡んだ。
「は?」
「だって就職したら自活するつもりなんだろ?」
 ぽつりとそう言うとゆっくり静かに箸を口に運び、私の方を見ないまま食事を続けた。
「……何でそういう事になるの?」
 私は自分も食べ始めるつもりで持った箸をまた置いた。声が震える。
「違うのか?」
「そんな事言ってないじゃん!……私が邪魔?いない方がいい!?」
 私自身驚く位の剣幕におののいたのか、彼は箸をくわえたまま目を見開いた。
「……誰もそんな事言ってないよ。ただ、もう俺に頼る気はないような事言ってたからさ」
「あれは、今までみたいに生活の負担をイチ君に全部かけなくて済むようにって意味で……」
 役に立ちたかっただけなのに。
「私一度もここを出ようなんて思った事ないよ。だからこれからだって家事なんて私がやるから」
 そんなふうに思われてたのか。だから急に出来ない料理なんかやろうとしたんだ。
「そっか……俺の早とちりか、ごめん」
 ほっと肩の力を緩めた。だが
「でもいつかはそうなるんだよ」
その言葉にまた私の心が痛みをぶり返した。


566:montage~真夏の雪解け~ 14/15
08/08/20 00:29:40 jUBQ8pny
「なんで?なんでそんな事言うのよ……」
 たった今その気はない事は言った筈じゃないか。
「いつまでもこのままってわけにはいかないだろ?香子だってこれからなんだから」
「何でよ!今までこれでやってきたじゃない。これからだって……」
「無理だよ」
 彼はきっぱりとそう言った。
「いつまでもこんな暮らし、不自然だと思うよ?俺は香子の親みたいなもんなんだから。
 その代わり……お前が嫁に行くまでは……」
 我慢のならない一言だった。
「しないよ。私……イチ君がするまでは」
「俺はしないって」
「だったら私だって好きにするよ。勝手に決めないでよ、そんな事!……やっぱり私がいない
 方がいいんじゃない」
 それに対して動きを止めた彼は静かに箸を置くと、唇を噛んで瞳を逸らす私の方を見て
信じられない言葉を吐いた。
「そうかもな。その方がいいかもしれないな、俺達は」
 まさかそんな事を言われるなんて考えもつかなくて、冷水を浴びたようなショックで
動けなくなった。
「その方がいい。俺達一緒に居すぎたんだ」
「……」
「ごめんな。香子の事大事にするって約束、守れそうにない。ごめん」
 涙腺が壊れた。
「……嘘つき」
「うん、ごめん」
「僕がいるって言ってくれたのに!ずっと一緒にいてくれるって……。なのに今になって
 私を1人にするの?じゃあ何であんな事……」
 しようとしたの?昨日のあなたは。
「ごめん。それしか言えない。ごめんなさい」
 テーブルに付くくらい頭を下げ続ける彼をこれ以上見たくはなかった。
「謝らないでよ……謝るような事しないでよ、バカ!!」
 いたたまれなくなって席を立つとそのまま部屋に引きこもった。その間、キッチンからは
身動き一つする気配はなく、私は唯流れ続ける涙を手の甲で拭い続けた。
 その間、昨日出て行ったままの皺の残るシャツと剃られないままの無精髭がずっと焼き付いて
益々私はたまらなくなるのだった。


567:montage~真夏の雪解け~ 15/15
08/08/20 00:33:03 jUBQ8pny
 翌日の朝からは、食事の用意だけをすませて早めに家を出るようになった。
 夜は同じように夕飯をテーブルに並べて置いて、後はずっと部屋に引っ込んで過ごした。
 もっとも、連日遅く帰ってくるようになった彼とはどのみち顔を合わさなくなったんだけど……。

 もう何日会話していないのだろう。
 朝になると必ず空にされて洗い桶に浸けてある食器を眺めては、取り留めのない言葉の
やり取りが今となっては遠い日々の事のように思える。


 そんな事を考えながら布団に潜って眠れない夜を過ごしていた。時計を見ると11時半。
明日も早いし寝なくちゃ、と灯りを落とした所で玄関の開く音がした。
「ただいま……」
 誰も返事のない電気の消えた部屋に小さく呟く声に、胸が締め付けられた。
『おかえり』
 その一言がかけてあげられない自分が情けない。
 彼の気配に神経が全て向かってしまう。それを悟られたくなくてじっと身を固く耐えていると、
ゆっくりと襖が開いた。
 向こうに背中を向けた状態だったので、幸いにも目を閉じてさえいれば寝たふりをする
事ができた。
 しゃがんで覗き込んで居るのだろうか?ズボンの衣擦れの音と側での気配がする。
「香子……」
 そうっと髪を撫でられて小さな声で囁かれる。
 バレないようにひたすら我慢してじっとしていると、髪に絡んだ指がゆっくりと離れた。
「ごめんな……」
 そう言って静かに隣室へ消えた彼の後には、微かにお酒の匂いがした。


 翌朝洗濯しようとしたYシャツからはやはり友達のだろうか、煙草の匂いがした。毎朝私が
出して置いたシャツを着て出勤する。昨日はこれだった。
 文句も何も言わず食べて着て……穏やかながらもそれは何だか冷たく寂しいやりとりに思えて、
ふいに哀しくなって思わずシャツを抱き締めた。
「香子」
 まさか起きてくるとは思わなくて慌てて振り向いた。
「俺今日は早く帰るから。……話したい事もあるし」

 いきなり脆い足場に立たされたような不安な感覚に陥って、シャツを掴んだ手に力がこもった。


                                   「続」


568:名無しさん@ピンキー
08/08/20 01:49:28 lzb9ecTd
うお…
一気に引き込まれてしまった。
ここで引きなんて鬼だーw いやいや、GJでした!
続き楽しみに待ってまする。

569:名無しさん@ピンキー
08/08/20 02:00:58 3hvOycjF
乙です!
もどかしさがいいですね、きゅうっとなります。
続き早く読みたいです~

570:名無しさん@ピンキー
08/08/20 13:56:26 7OuwlJpG
既に泣いた…
続き楽しみにしてます!

571:名無しさん@ピンキー
08/08/21 08:35:28 2Ov3R3VR
GJ!!
続きが楽しみすぎる!
全力で待ってます!


572:名無しさん@ピンキー
08/08/21 13:58:50 hbEAiuHA
続き投下します
今回のあともう1回で終わります


573:montage~真夏の雪解け~(その2)1/15
08/08/21 14:01:15 hbEAiuHA
*** ***

 好きな女と堂々と一緒に暮らす、というのはどんな気持ちなんだろう。俺は経験出来ない
うちにその夢が砕けてしまった。
 それでも大切なものを手元に置いておく事が出来た。おかげで残された幸せを噛みしめて
生きて来れたのだというのに、それさえも失う覚悟を迫られている。
「それはお前の勝手な強迫観念じゃねえの?」
 この部屋の主である早川は大学からの友人だ。
「俺は……元々そんなつもりで香子を育ててきたわけじゃない」
「んなの俺だって解ってるさ。でも人の気持ちなんか変わるもんだろ?」
「…………」
「周りの目なんか気にすんなよ。誰だよハタチで結婚なんて散々俺ら驚かしてくれたやつ。
 なんかお前らしくねえよ」
「若かったんだよ。あの時はさ」
「お前あのコ引き取ったの、後悔したりしてるわけじゃねえんだろ?」
「まさか」
 香子と暮らしてきて一度だってそんな事考えた日はない。ただ、こんな気持ちの誤算が
起こるなんて思わなかっただけだ。
「そんなに大事ならちゃんと一緒にいてやれ」
「それが無理なんだよ。ただでさえ好奇な目で……って何、お前タバコやめんの?」
 早川は洗った灰皿をゴミ箱へ突っ込みながら頷く。
「ん。いい機会だからな。……出来たらしいんだ」
「へ?」
 何となくキッチンに洗って伏せてあるカップや、2つ並んだ枕に目がいく。
「もう7年越になるしな。なかなか半同棲から進ましてくんなかったから、やっとって感じかな」
「いよいよか?」
 家庭にトラウマを持つという彼女はなかなか結婚に踏み切れなかったらしい。
「生きてる限りは忘れることも必要なんだよ。じゃなきゃ何時までも縛られてばかりだしな。
 俺がそれになれるかどうかは解らんが、後で悔やむ前に手に入れとく。……だから連れてくよ」
 大事な物を守ると決めた奴の顔は清々しく羨ましかった。

 あの頃の自分もこんなふうだったんだろうか。
 今の俺は……。
 想えば想うほど、傷つけてしまう。そんな気がするのは何故なんだろう。

 ―そんな気持ちが俺の背中を押した。


574:montage~真夏の雪解け~ 2/15
08/08/21 14:02:38 hbEAiuHA
*** ***

「美味しい?」
「うん」
 数日振りの一緒の夕飯は和やかな時間だった。
「寒いし今日はお鍋にしといて正解だったよね。あ、ビール切れた?ほらそこ煮えてる」
 冷蔵庫から新しいのを出して、休む間もなく野菜を取り皿に入れてやる。
「そんな食べらんないよ」
「だめです!」
 端から見たら普通の家庭の団欒に見えるのだろう。自分でも意識していた。だけど無邪気な
高校生のはしゃぐ様は、単に沈黙が怖いが為の必死の振る舞いだったし、ちびちびと
アルコールを口にするのも、多分手持ち無沙汰をごまかすにすぎない。元々そんなに強い方
ではないのだし。
「香子」
「何?……あ、ご飯忘れてた」
「いいよ」
「あっそう。じゃ、後でうどん入れよっか」
「いいから」
 何かと理由を付けて席を立とうとする私に、
「何もいらないから。聞いて、お願いだからさ」
そう言うと箸を置いた。
 少し上目遣いに見つめられ、何だか自分が意地悪をしてしまったような気になって、妙に
逆らえない雰囲気を感じて仕方なく腰掛けた。

「いきなりだけど。俺転勤する」
「……本当いきなりだね」
「うん。こういう話は早い方がいいから」
 あんまりサクッと切り出されたから、逆に何というか、「へえー」って感じで冷静な気がした。
「早川が結婚を機に、地元に帰って向こうの支社で働くらしい。そんで俺も誘われた。
 ……まあ転勤というより転職だな。設計士が欲しいって引き抜かれた」
「そう」
 大学の友達で私も知ってる。確か年下の彼女さんがいて、ちょっと無愛想だけどいい人だ。
「いつ行くの?」
「春休み中かな。4月からはあっちだと思う」
「そっか。……私なら大丈夫だから」
 イチ君にならどこにでもついて行きたいのに。
「うん」
 だからお願い。
「この際思い切ってそうしてみようと思ってる」

 言わないで。
「香子は大事なひとだから」

 聞きたくない。

「そろそろ離れよう―俺達」



 ママ。
 どうして私が好きな人は、みんな私を置いていってしまうの?



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