おんなのこでも感じるえっちな小説8at EROPARO
おんなのこでも感じるえっちな小説8 - 暇つぶし2ch200:名無しさん@ピンキー
07/11/06 20:41:18 jHva6vUg
繭と黒澤君のことで頭がいっぱい。
早く続きを!

201:名無しさん@ピンキー
07/11/07 00:07:15 9SM+3wg6
催促するようなレスは控えましょう

202:名無しさん@ピンキー
07/11/07 20:22:41 s6nSrul6
催促する気持ちはすげーわかる
話うまかったもんなー

203:名無しさん@ピンキー
07/11/08 04:05:41 PG1G5EEH
読んでて、何だか高校時代のことを思い出したよ。
あの頃は良かったな。
まゆちゃんも黒澤君もいとおしいよ。

204:名無しさん@ピンキー
07/11/09 01:01:21 wywt4lP1
黒澤くんに惚れました。
クールな男の子がたまに見せる激情っていいよね。

205:名無しさん@ピンキー
07/11/10 23:41:51 P1pRPY4/
首を長くして待ちながら保守

206:名無しさん@ピンキー
07/11/11 23:45:53 DBeu2rM1
黒澤君期待age

207:名無しさん@ピンキー
07/11/12 22:40:57 6oYs6NTe
プレッシャーをかけてはいかん
他の書き手さんも投下しにくいだろうし

208:名無しさん@ピンキー
07/11/13 01:47:26 quywlWq7
他の職人さんもお待ちしています

209:名無しさん@ピンキー
07/11/14 03:19:19 xxJ5OAac
ごめん、つい。

210:名無しさん@ピンキー
07/11/15 01:02:16 7XB/qms8
誰でもいいから投下お願いします

211:名無しさん@ピンキー
07/11/15 15:21:33 WBl/v17F
うぜーw

212:名無しさん@ピンキー
07/11/18 08:23:14 ttJM568v


213:名無しさん@ピンキー
07/11/18 23:54:33 wFmB6sLH


214:名無しさん@ピンキー
07/11/22 03:24:12 yzxrpp49
投下待ち

215:名無しさん@ピンキー
07/11/23 17:18:14 Aepi+Os4
香織のメイド日記 きぼんm(__)m

216:名無しさん@ピンキー
07/11/26 17:58:17 zm3BMbWx


217:名無しさん@ピンキー
07/11/27 22:22:53 KrtoCDBm
過疎ってますね

218:名無しさん@ピンキー
07/11/28 17:01:37 jpdh8CEi
なんでだろうね

219:名無しさん@ピンキー
07/11/29 00:06:01 bfxO7UBT
いつもこんなもんだ、マターリ

220:名無しさん@ピンキー
07/11/29 01:33:43 8JsjlS/S
もう来ないのかな?

221:名無しさん@ピンキー
07/12/01 01:59:58 52GeJubl
期待してます

222:名無しさん@ピンキー
07/12/03 19:26:15 K8khhAKi
エロ薄めでよかったら投下しますが…

223:名無しさん@ピンキー
07/12/03 19:55:27 yhyL0aEg
ばっちこーい

224:無題
07/12/03 21:15:12 mNzvJ3+G
「頼むッ! 恋人になってくれ!」
土下座までするソイツを見て私は踊りだしたいような高揚感に包まれた、と思う。
もちろんそれはおくびにも出さないというか出せないというか。
私たちは幼馴染、というだけでアイツにはいつも好きな女の子がいたし、
私は『一番仲良しの女子』というポジションを崩さないように自分の気持ちを封じ込めていたから
アイツの毎度毎度の恋愛相談にも快くのっていた。
なのに。
「頼むよ。恋人になってくれよぅ」
「どうしたの? とりあえず土下座はやめて、部屋で話そっか」
目の前で起こっている出来事が夢でも覚めないで欲しい、そう願いながら
おそるおそる事情を聞くことにした。

「来週ウチのガッコの学園祭があるんだけど……ダチ全員彼女連れてくるって言うしさー」
「この前告白したミクちゃんとかいう子はどうしたのよ」
「その日は本命の彼氏のガッコの学園祭なんだと」
「それって……」
「うん。 いや、俺がね、本命じゃなくてもいいから付き合ってくださいって告白するときに言ったんだけど」
「自業自得じゃん」
「うん。 だからちー子、頼むッ! 恋人になってくれ!」
……それは。恋人じゃなくて学園祭で自分だけ一人なのが恥ずかしいからってことじゃないの。
「頼めるのお前しかいないんだよぅ」
「もう、情けない声出さないでよ。はいはい、わかりました。学園祭に一緒に行けばいいんでしょ」
「やった! さすがちー子様!」
「お昼ごはんとおやつ、ぜーんぶアンタのおごりよ?」
「もちろんでございますぅぅ」


225:名無しさん@ピンキー
07/12/03 21:17:40 mNzvJ3+G
ウソの彼女だっていい。アイツの彼女として側にいられるなんて、ずっと願ってきた夢みたい。
だから当日、私はケバくないように、でもしっかりとメイクをして、髪もしっかり巻いてセットした。
アイツが友達に「女を見る目がないヤツ」と思われないように。
もしアイツの友達に話しかけられたらおとなしめでいよう、とか無駄に好印象プランを練りまくって。

「すげえな。本当に女の子みてえ」
迎えに来たアイツの目が丸くなってるのがわかる。
「はいはい、どうせ普段はオッサンですよ」
「や、違うって! かわいい! かわいいよ」
ぶーたれる私をなだめようと必死に私を褒めてくれるのが、嬉しい。
にやけそうになる顔を必死にこらえているだけなのに、アイツはまだ一生懸命褒めてくれる。
「どうせだから」
「え?」
「手、繋いで行こっか。 せっかく恋人同士なんだし」
ななな、なんで今日は積極的!? うろたえる私に
「そういや昔はいっつも手繋いでたな」
「それはアンタがすぐ迷子になるから……!!」
わあわあ騒ぎながら電車に乗って、アイツの通う学校に着く頃には私たちは恋人になっていた。

たこ焼き、ホットドック、クレープ、おしるこ、カレー、カキ氷、おでん……
模擬店を各個撃破していると、うきうきした気分で満たされてくる。
当たり前だ。お祭り気分というだけじゃなく、模擬店に行っても展示を見に行ってもアイツの後輩が出てきて
「先輩の彼女さん、キレーっスねー」
と言って私を褒めてくれる。社交辞令にしろその言葉はアイツの彼女としての私に向けられた言葉だ。
ずっとずっと願ってやまなかったその立場に自分がいる。
ウソだけど。
一日だけだけど。
心の奥に刺さった棘がチクンと痛んだ。
「あれ?」
アイツがいない。私がよそ見してる間にどこかへ行ってしまったんだろうか。
子供の頃いつも迷子になって泣いていたのはアイツだった。
今は図体だけはデカくなったけど。
そんなことを考えていたら急に寂しくなって、泣きたいような気持ちになる。
賑やかなお祭りの中でただ一人置いていかれているのは自分だけだ、というような。
「ちー子! すまん、知り合いにつかまってた」
背後から不意に懐かしい声が響いた。
「どこいってたんだよ。ちー子が迷子になるなんて、らしくねえぞ」
「ごめん……」
泣きそうなのをこらえるには、あまり喋らないほうがいい。
「いや、こっちこそごめん。ちー子にとってはアウェーだもんな。ずっと側にいなかったオレが悪かった。
やっぱり手ぇ繋いでよう」
こっちの気持ちはお見通しみたい。今日のアイツは妙に冴えてる。

226:名無しさん@ピンキー
07/12/03 21:19:48 mNzvJ3+G
お腹がはちきれそう。甘味の屋台を巡るのにもそろそろ限界だ。
「少し休憩するか」
アイツの言葉に私は素直にうなづいた。

私の手を引いたアイツは人ごみに逆らって校舎の中を奥へ奥へ、人気のないほうへと進んでいく。
「美術準備室」と書かれた部屋の前でアイツの足が止まった。
「ここの窓、鍵が壊れてんの。ちょっと待ってて。ドア開けるから」
そう言うとアイツは泥棒みたいに窓から部屋に入っていった。
ドアを開けてもらって入ったその部屋は埃っぽくって、それでいて落ち着きを感じさせる空間だった。
デッサン用の石膏像や描きかけのキャンバスもあって雑然としているけど、かえってそこが落ち着く、みたいな。
「コーヒー飲むか?」
「うん」
そう言うとアイツは教員用らしいコーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れてくれた。
「慣れてるのね」
「美術部にもダチいるし、よく来るんだ」
「ふーん」
私の知らないアイツ。
「そういえば、ちー子昔はコーヒーダメだったよな。今は大丈夫なんだな」
「……今も得意じゃないけど」
「ゴ、ゴメン」
「謝らなくていいわよ」

「今キスしたらコーヒー味だな」
不意をつかれて私はフリーズした。
アイツはそのまま何も言わずに私の髪に手を伸ばした……そう思った瞬間にはキスしていた。
「イヤか?」
それはコーヒー味が? キスが?
返答に困っていると、もう一度キスされた。
今度はいわゆるディープキスというやつ。
もうコーヒー味とかそんなの全然わからない。心臓がバクバクする。顔もきっと赤かったと思う。
「……ゴメン」
長いキスの後、最初に口を開いたのはアイツだった。
なんで? なんで謝るの? そう聞きたかったけど、何か怖かった。
「今日ちー子と一緒にいてさ、スゲー可愛いと思った。で、さっきの顔見てたら、つい……キスしたくなったんだ。
だけど、お前の気持ち無視して本当にゴメン! 形だけの恋人って約束、忘れてた。」
え? え? それって……どういうこと?
「今の、忘れてくれ」
「忘れられるわけないじゃない。ファーストキスなのに」
「ウソだろ」
「本当。ついでに言うと、ずっとアンタのことが好きだった」
隠していた想いが堰を切ったようにあふれ出してくる。
「ウソでもいいから恋人になれて、嬉しかったの。デートできて、めちゃくちゃ嬉しかった」

「「恋人になってください」」
重なる、声。

227:名無しさん@ピンキー
07/12/03 21:21:02 yhyL0aEg
投下乙
とりあえずガリレオ終わったらゆっくり読みます

228:名無しさん@ピンキー
07/12/03 21:22:59 mNzvJ3+G
引き寄せられて、抱き合う。
何度キスしたか途中で数えるのを私はやめた。
「やべえ」
「どうしたの?」
「いや……」
アイツの目線の先には、膨らんだズボンの股間。
「お前を抱きたい。ケーベツされるかもしれないけど、お前のこと好きだからこうなっちゃったんだもん」
「今、ここで?」
「できれば。お願いしますちー子様」
哀れっぽく言うその姿に思わず笑ってしまう。
「初めてなんだからね」
「じゃあ手でお願いします」
「いいけど。私、その……初心者だから、うまくできるか自信がないんですけど」
椅子に腰掛けてズボンとパンツを下ろしたアイツの姿は、傍目に見るとややマヌケだったと思う。
けど、私はそんなことを考えている余裕もなくて、目の前に出されたソレの存在感にただただ吃驚するばかりだった。
「どうすればいいの?」
「キツく握って。大丈夫だから。で、上下に動かしてみて」
言われたとおりにやってみたつもりだけど、よくわからない。
アイツの顔を見てみたけど、アイツが嬉しそうな顔して私を見ているのに気がついて目をそらしてしまった。
勢い、ソレだけに注目している状態になってしまう。
気持ち良くなってくれますように。それだけを感じながら懸命に手を運動させる。
「たまんねえ」
感極まったような声を吐くアイツに運動は中断させずに問いかける。
「気持ちいい?」
「なんつーか、このぎこちなさといい、初々しくて最高です!」
でも、男の人の「おわり」にはまだ達しそうもない。

229:名無しさん@ピンキー
07/12/03 21:25:19 mNzvJ3+G
私は思いきって、いつか見たHな漫画を思い出しながらソレに唇をつけた。
「わ、わっ! ちー子っ」
「嫌? 気持ち悪い?」
「いや、スゲー気持ちいいんですけど……無理しなくていいんだぞ」
「大丈夫」
最初はキスの雨を降らせるように。徐々に大胆に舌を絡めてゆく。
思い切って口に含んでみる。
「いい。スゲーいいよちー子。そのまま上下に動かせるか」
リクエストどおりに自分が行動できてるかは自信がなかったけど、気持ちよくなってほしい一心で何でもしてあげたいような気持ちだけが私を動かしていた。
クチュクチュ、ピチャピチャという湿ったいやらしい音とアイツの吐く息、それに私の心臓の鼓動だけが時間の流れを表していた気がする。
「ちー子」
呼び止められて顔を上げる。
「もう、いいから…… ティッシュ取ってきてくれ」
「ん」
戻ってきたときにはアイツは息を荒げて、辛そうな苦しそうな顔をしていた。
「手のひら、ここに当てて?」
訳がわからないまま先端に手をあてた、と思ったら
「「!!」」
精が放たれた。


「ゴメン。本当にゴメン」
「謝んならすんな」
冗談交じりに憎まれ口をたたく。
「でも、本当に気持ち良かった。ありがとな」
「ん」
「愛してるから」
「ホンマかぁ~?」
思わず関西弁でツッコミを入れた。
「ずっと…」
「「そばにいてください」」

この瞬間は、ウソじゃない。

(完)

230:名無しさん@ピンキー
07/12/03 22:22:07 yhyL0aEg
乙す
読みました
初々しくて良い感じですが、もうちょっと「人が来たらどうしよう」的なドキドキ感も欲しかったなぁと思います。
この二人の初エッチも読んでみたいなーと思います。
気が向いたらまた書いてくださいねー

231:名無しさん@ピンキー
07/12/04 02:04:33 8012KFsF
乙です!
テンポよく読みやすかったです
ただこの流れでは、ちー子がセフレにされるんじゃないかと心配になったw

嘘の恋人だと友達にばれてちー子争奪戦とか、性欲以外に♂の愛情が見えるエピがあったら
エロも萌えも高まると思いました

232:名無しさん@ピンキー
07/12/04 02:18:08 oHF9oMvE
キャラと状況設定と長さがうまくバランスして理想的。
読んでて気持ちよかったよ、GJ。

233:名無しさん@ピンキー
07/12/07 18:53:41 POjfzOqN
乙!かわいい話で良かったです。
この長さの話に盛り込むのは大変だと思うけど、
男の子→ちー子なところがあったら、なおGJでした。


234:名無しさん@ピンキー
07/12/09 06:01:35 1gU/jhk7
微エロにも満たない微エロですが…

電気を落とした部屋は寒い。
その中で彼女は自分の布団だけが嫌に暖かいのでなかなか寝付けないでいた。
「はぁ…熱い…」
もぞもぞと布団から顔を出すと黒く冷たい空気がひんやりと頬に気持ちいい。
毎日寒い日が続いたにもかかわらず…と、彼女はうたたねをしてしまった事に後悔をした。
ため息をついたらうとうとと眠れそうな気がする。
ふぅと一つ息をはいたらすばやく布団の中をくぐる音がして、背中にひんやりとした感触がひたついた。
「ちょ…何してるんですか!」
「冷え性で寝付けないんでな」
彼は彼女の背中から手を離すと狭い布団に潜り込み、暖かい寝巻きに唇を寄せた。
「言ってる意味が…」
分かりません、と繋ごうとした唇を無理やり塞がれた。
強引に引き寄せられた首の痛みと共に、彼の冷たい体のにおいが首筋をのぼってくる。
「ん…!」
身じろいだ隙に、寝巻きのすそから冷たい手が入り込む。
その冷たい感触だけでぞくぞくとしたものが背中を走るのに、彼の指は胸を執拗に攻め始めた。
「んぅ、ん…ぁ!」
声が全部舌に吸い込まれて消えていく、たっぷりと蹂躙された後ようやく唇が離れた。
「か…風邪感染りますよ」
「お前の弱っちぃ風邪なんか感染らねぇよ」

235:名無しさん@ピンキー
07/12/09 06:04:16 1gU/jhk7
そう言い終わらないうちに彼女の熱い首筋に軽く歯を立て、親指で突起をいじる事に専念する。
「あ、いや…んっ」
彼女の細い指が力なく彼の肩に抵抗するが、彼の舌はいともゆっくりと首筋から鎖骨に伝い、胸の先までたどり着く。
「熱いな…」
「だめ、ですってば…!」
痛みと痺れるような快感が胸の先からちりちりとうなじまで上ってくる。
まばたきですらも高熱を感じさせる、もう良いだろう?と呟いて、彼は手を火照る彼女の下半身へと伸ばした。


次の日
「ゴホッ」
「あー、やっぱり風邪ひきましたね」
「ひいてねぇ」
「ひきました」
「ひいてねぇ」
「ひーきーまーしーた!」


―――――
以上です。
実際、風邪の時は本当ダメらしいですね。
携帯からな上、短くてすみません。


236:名無しさん@ピンキー
07/12/09 21:44:27 AS2REL+u
>>234-235
イイヨーイイヨー
こういうちょっとした話って好きだ

237:名無しさん@ピンキー
07/12/10 23:53:42 lvxf9BZw
224です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
書くの久しぶりというか、以前一回書いたっきりだったので自信がなかったんですが
反響がかえってきて嬉しかったです。

言われてみれば確かに、恥じらいの無いバカップルですいませんw
(実は最初の構想ではちー子の経験&知識不足にアイツがつけこんで
最後までヤってしまう…という展開だったのですが、
さすがに初体験でどんなプレイだよwということでこういう風になりました。)
アイツの心理描写が甘かったのも、確かにそうですね。

今読み返すとアイツが自分の手でフィニッシュまでもっていく描写も入れ忘れてた… orz
次は頑張ります。

238:377
07/12/14 17:38:48 VzljUG6Q
お久し振りです、投下します。
ちょっくら長いです。

239:VS幼馴染+α 1/24
07/12/14 17:40:51 VzljUG6Q

 ていうか、あいつ嫌いだ。
 男の癖に私より顔がキレイで髪がサラサラだし。
 勉強出来るし運動出来るし、センスとか全然無いけど、もてるし。
 性格イヤミの癖に人望あるし、家は金持ち。なんだこの完璧超人。

 …ひがみなのか?と自分も思ったし、他人にも本人にも言われた事ある。悩んだ事もあ
る。けど、今は――というか、小学校2年生くらいでもう悟った。単純に嫌いなだけで、
あいつがブサイクだろうが貧乏だろうが、きっと変わらなかっただろう、と。
 なので、一緒にいると精神衛生上悪いから離れようとしたんだけど…
 なんか知らんけど、今度はあいつがわざわざ私に突っ掛かって来るようになった。
 用も無いのにわざわざ寄って来てイヤミを言って来るし、変な技掛けてくるし…

 あいつとは、ただ単に本当に相性が悪いだけじゃなく、きっと前世は巨人ファンと阪神
ファンか源氏と平家かLAWとCHAOSか何かの、争うべき立場だったんだろう。

 ――いや、ホントのホントに自分でそう思っていたんだけど。




「…?」
 現在、時刻は9時43分。ドラマのちょうどいい所でチャイムが鳴った。イラっとしな
がら、覗き窓から来訪者の顔を見る。どうせ酔い潰れた工藤か、ケンカして来た三沢だろ
うかと思っていたけど、アラ勘違い。

「え?マジ?」
 顔が引き攣るのがわかった。だってそこには、あいつが――立てば悪口、座ればイヤ
ミ、歩きながらのブレーンバスター、最早自分で何を考えているかもわからんくなるくら
いに嫌いなあいつ、千田昌平の野郎が。
「すいません、どちら様ですか」
 とりあえず、他人のフリをする。バレたら妹が来てるって事にしよう。
『…先に言っておくが、お前に妹はいない』
  バレるどころの話ではなかった。
 くそ、人の行動パターンとかも逐一読みやがって…私は負けたと思ったので、ドアチェ
ーンは外さずに戸だけ開ける。あれか、何かの罰ゲームとかか?

「…なんだよ。これ以上は開けないし、入れんぞ」
 こいつの性格を考えて、爪先も入らないようなくらいちょっとだけ開ける。
「ふん、俺だってお前の部屋になんぞ入りたくも無い」

240:VS幼馴染+α 2/24
07/12/14 17:42:53 VzljUG6Q
「じゃあ帰れ」
 そう言って、ばたん、と閉めてすぐに鍵も掛ける。ドラマは頼まれて録画してあるから、
テレビを消して寝てしまおう。そう思ったのに。

 ぴんぽーん、ぴんぽ、ぴん、ぴん、ぴん、ぴんぽーん。

 …千田の癖に、中々切羽詰った?状況なようで。私はちょっとだけ優越感を感じながら、
とりあえず『うるせー、死ね』と、メールを送る。すぐに返事。『黙れ、お前が死ね』。よ
っしゃ、私は更に返信『あーあ、傷付いた。せっかく入れてあげようと思ったのに』と。
 送ってすぐに電話が掛かって来た。
『最初からそんな気も無い癖に言うな!!』
 名乗らずに、怒った声で叫んですぐ切れた。ていうか、何がしたいんだこいつ。私は携
帯の電源を切って、さっさと寝る準備に掛かる。が、またチャイムが鳴る。くっそ、こっ
ちも電源切ったろかと思いつつも、ここまでしつこいと気になって来てしまう。
「用件だけ言え」 
 根負けして、私はさっきと同じだけドアを開いて言った。
「お前は来客に対して」
「閉めるぞ」
 まずイヤミかよ、と思ったけど、こっちが今は上なので、強気に被せる。珍しく悔しそ
うな顔をしていた。
「…入れろ」
「断る、嫌だ、絶対に嫌だ。死んでも嫌だ」
 即座に断る。ふざけんなバーカ。なんで嫌いな奴を部屋の中に入れなきゃいけないんだ。

 まあ、こいつが私に何かする、というのはプロレス技かイヤミ言うかくらいで、なんつ
ーか、ホレ、そういう事したいってのは、限りなくZeroどころかマイナスだろうけど。
 うう、なんか一瞬そういう『へっへっへ、もう逃げられないぜ』『きゃー、いやー、おか
あーあさぁーん』『観念しなー』『ああぁ~…』ぽと。(←椿かなんかの花が落ちる音)…と
か想像して、マジ寒気がして来た。自分の想像力の貧困さにも泣けて来た。
 千田は私の顔を見て、やっぱり同じような想像をしたのか顔を引き攣らせながら。
「安心しろ、お前をどうにかするくらいなら工藤をどうにかする方がまだいいしい楽だ」
「…どの工藤だ」 
 因みに、工藤は三人いる。
「三人全部だ」
「ハゲて死ね」
 ばたん、と閉める。もう開ける気は無い。けど。
「――っ!?」 
 ドアを開ける音。
 しまった!鍵忘れてた!でもドアチェーンが、とか油断していたら相手の思うツボ!!
「…俺を入れんと、借金取りの真似事をするぞ」


241:VS幼馴染+α 3/24
07/12/14 17:44:55 VzljUG6Q
 この野郎、何が目的かは知らんが強行手段飛び越えて脅しに掛かってキヤガリマシタ
ヨ!ていうか、ここまでアレだと、なんか必死に見えて来る。とりあえず趣味の悪いグラ
サン掛けて発声練習してやがる。
 ま、こいつは本気で私に何かしようとかは無いだろうしな。いやいやホント。
 物凄く嫌だけど、恥をかくくらいなら、と私はこのバカタレを部屋に招く事を決めた。



「さて、なんの用だ。すぐ死んでくれるとありがたいけども」
「お前が先に死ね」
 ふん、とでかい態度でそっぽ向くけど、なんとなく若干いつものキレが無いような気が
する。とりあえず何か飲み物でも…
「冷えた豚汁と水道水、どっちがいい」
「あっためろ」
 ツッコミは一応機能している。若干、震えている…のか?本当に、犬猿どころか軍鶏VS
軍鶏みたいな関係の私の家に来るって、本当にどういうつもりなんだか。とりあえず、指
差して笑うのは、もう少し情報入手してからだな。とりあえずは油断させるか。

「ほれ、生ぬるい豚汁」
 あっつあつにしては、逆に罠かと思われる。なので、中途半端に油が浮いてぬるい豚汁
を湯飲みに入れて渡した。イヤーな顔しながら、でも一応飲む千田。ほっと一息ついた所
で、湯飲みを机の上に置いて…なんか、急にいつもの横柄なオレ様千田に戻る。
「よし、出てけ」
 私は改めての挨拶代わりに玄関を指差す。が、千田は動かない。
「ふん、相変わらず礼儀がなってないな。この俺がわざわざお前の掘っ立て小屋に来てや
ったんだ。丁重にもてなせ」
 
 …やっぱ、こいつにいつものキレは無い。ボケが甘い。ここは掘っ立て小屋じゃない。
立派な賃貸マンション、しかもこいつの親の持ちもんだっつーのに。
 普段の千田なら、こういう細かい所で突っ込まれるようなボケは放たない。因みに、な
んで私がこいつの親のマンションにいるかっていうと、こいつの親とは仲良しだからだ。
 まあ、実家近いし、親の前じゃ千田もいいこちゃんぶってるから、それに乗って仲良し
でいると物凄い形相で千田が睨んでくるから面白くて面白くて。
 結果『貴枝ちゃんがお嫁さんになってくれればいいのに』と言われている現在。
 …おばちゃんには悪いけど、それは多分無い。ま、それはさておき女の子のひとり暮ら
しはこのご時世危ないという事でイイお値段で部屋を借りている訳だ。
 で、こいつなんだけど。
「お前、おばさんに言うぞ。このマンション掘っ立てとか、夜這い掛けに来たとか」
 あまりに私に優位過ぎる状況で威張ろうったって、土台無理な話なのに。やっぱおかし
い。ここはひとつ、大人な私が降りてやるしかないのだろうか。


242:VS幼馴染+α 4/24
07/12/14 17:47:13 VzljUG6Q

「…ふん、俺がお前を夜這いだと?」
「うん。変なグラサン掛けて、私がお前に借金してるって嘘言いふらすとか脅し掛けて部
屋に入って来るって…立派に親御さんに言える」
 だから、馬鹿だなあ。問題はお前の気持ちじゃなくて、歪曲も何もしていない事実を伝
えられた側がどう思うかって、今は思い付かないのか。

「――もう。まあいいや。馬鹿話は後だ。用件言え。今からスーパー真面目タイム。茶
化しは無し」
 これ以上はもう、ただの繰り返しになる。有益な情報も手に入らない。私は姿勢を正し
て、千田の顔を見る。千田もスーパー真面目タイムと聞いて、ようやく我に返る。

「…お前、霊とかそういうの、信じる方か」
 お前、宗教走ったんかい。と、すぐさま口をついて出そうになったけど、止めた。なに
せ今はスーパー真面目タイム。元はスーパーのタイムセール品を両方のお母さんに買って
来いと言われ、その時だけは争いなしで協力し合う時の言葉だったんだけども。
「…私は、そういうの感じた事無いけど…信じるかっていったら、ちょっと信じる」
 ちょっと、と、親指と人差し指をくっつけて、1cmくらいだけ離す。ほっ、と千田は
安心したような顔になる。
「――工藤の新居、行ったか」
「え?うん、行った。高校ん時から住みたいって言ってたし。自分らがゲットするまで場
所とか教えてくれなかったから、興味あったし。あそこいいよね。すっごい住みやすい」 
 でも何故か、そこには工藤の内2人しか住んでいない。別にいいんだけど。

 はん、と、なんか鼻で笑われた。スーパー真面目タイムなのに、カチンと来た。私は千
田を睨んでやる。けれども意に介さず。
「――ふん、やはりな。お前みたいな鈍い人間にはわからんか。工藤達もお前レベルだ
からこそ、あんな所で住めるんだろうがな」
「そんな事より、お前が言うと工藤が結婚したみたいだな」
 わざと、話の腰を折る。先にルール違反したのはそっちだ。商談not成立だ。
「で?鋭い千田様はなにがおわかりになったんですか千田様。ご自慢が終わったら早急に
お帰り下さいな」
 べー、と舌を出す。ホントにこいつ嫌い。ていうか工藤も水沢もなんでこいつとつるん
でんだかわかんない。まあ、あいつらもお世辞にも性格がいいとは言えないけどさ。

「…つまりだな、俺はお前と違っ」
「寝言は寝て言え、この珍滓が」
 つまり、の時点で被せてやったわ。
 そして、ルール違反は見逃してやる。こいつ、おかしい。支離滅裂にも程がある。同じ
事を短時間に何度も言いやがって。もう本当におかしい。


243:VS幼馴染+α 5/24
07/12/14 17:49:15 VzljUG6Q
 私は冷蔵庫に走り、中からマヨネーズを取り出し、蓋を開けて顔に突き出す。
「単刀直入に何があっただけ言えええええええええええええ!!」
「工藤の家でめっちゃ怖い幽霊が出てこっち向かって来たんで逃げてきましたあああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 眼球に刺さる勢いで突き出したのにマジビビリしたのか、絶叫してくれた。
 そして、今がチャンスと思い、私はマヨネーズの蓋をしめて、指を差して。
「っはん」
 と、鼻で笑った。
 けれども、一旦その恐怖っつーの?開放してしまったらもう抑え切れなくなったのか、
私の嘲りをスルーして、顔をみるみる青褪めさせて変な動きをして語り始めてしまった。

「だからな?カラオケ行って遅いから工藤ん家呼ばれて、コンビニ新商品祭しようって話
でさ。俺は普段そんなコンビニのもんなんか食べないだろ?もうすっげぇ食いたくて、そ
んでもって家入った瞬間だよ、なんか、首がそこまで曲がっちゃいけないだろ確実にって
くらい曲がってスーツで血塗れの頭髪の不自由な30代から60代のオッサンが、俺の方
だけ見て、眼が合ったら一目散に追いかけて来て、俺、全力で走って全力疾走して、気が
付いたら、その…ここに」
 ガクガクと変な動きして、大分変な日本語で状況説明してくれた。

「あ、だからさっきからお前のコートに血ぃ付いてたんだ」
「ひぎぃいいいぃぃいっ!?」
「わ!?」 
 明らかにウソ丸出しなのに、変な喘ぎ声みたいな叫びで私に飛び掛って来た。重い。抱
き付くな。ていうか、本当だからすげー怖い。コートの肩付近に血の手形がべっとりと。
いや、気付いたのはついさっきなんだけどさ。
「っ、う、うううう、ウソ、嘘だろ!?」
「いや、あの、嘘だったらよかったよね」
 …これ、工藤達と千田の壮大なドッキリならいいのになあと思いつつ、私はとりあえず
千田のコートを脱がせる。そして。
「捨てて!捨てて棄ててすててえええええええっっ!!」
 見た瞬間、また大パニックを起こす。とりあえず、私は玄関まで飛んで行って、丸めて
外に置いておく。このコート、千田はもう着ないだろうな。私欲しかったから、血ぃ取っ
て塩撒いてから着ようっと。
 玄関を閉めてしっかり鍵を掛けて、ついでに、そこらにあった水沢から旅行の土産で貰
った変な魔除けの人形をドアノブに引っ掛けておく。ストラップ付きだから、多分こうい
う時の為にあったんだろう。ご利益無くて、もしえらい目にあったらその時は化けて出る。
 くっそ、嫌がらせか。戻ったら千田は小鹿のようにプルプル震えやがってた。
「…ほれ千田、もう大丈夫だから。水沢の協力もあって多分奴は入って来れない」


244:VS幼馴染+α 6/24
07/12/14 17:51:20 VzljUG6Q
 とりあえず、水沢の名前出しときゃ大丈夫だろ。あいつ素で霊丸とか廬山昇龍覇を撃て
そうだし。
「ほ、ホント?じゃあ、俺生きたまま脳ミソ弄られて情報搾取とかされない?」
「…お前から有益な情報出ないから大丈夫だっての」
 はあ、と溜息をつく。こいつ、恐怖のあまり普段のうっすい殻が完全に剥げ落ちてやが
る。ていうか、もしかして。

「泊まる気?」
「――さて、彩川。お前俺に言う事があるだろ?」
 視線で気付いたのか、うっすい、ぺっらい、いつもの殻をようやく被って、若干まだ青
褪めながらもいつもの千田に戻った。ていうか、言う事とは?

「ヘタレ」
「…違う。この俺がここまでお膳立てしてやっているんだ。馬鹿なお前でもわかる筈だ」
 いやいやいやいやいやいや。
 いや、本当にわからないって。どういう事だ?そんな事より、明日休みとはいえもう眠
くて仕方ないんだけど…
「あの、もう寝るからさ、頼めないんなら家出すよ?お前は本当にいいとこのボンボンの
癖して礼儀がなってないよな」
「…彩川、お前俺が好きだろう。受け入れてやるから告白してもいいぞ」 
 びしっ、と、なんかキメやがった。別の意味でもキメてやがるな。恐怖で。

「あのさ。お前はもう、泊めてやるからそこで寝ろ」
 もう、疲れた。本当にこいつ嫌い。どうしてこんな自信過剰でアホなんだろ。こんなや
つ好きにはならないっての。
「ベッドよこせ。後、流すな」
「…流しもするわ。な、千田」

 こういうのだけは、こいつは本気でわかってなかったとしたら今後も大変だろうし、そ
うでなくたって凄く不愉快になったから、言う。
「…お前、人に――私にものを頼むのが嫌だからってそういう事言うんだろうけど、そ
れって凄く嫌だ。仮に、本当に仮に、百歩譲って仕方なく、仮定として言うけど、私が本
当にお前を好きだとしても、そんな事言われたら嫌いになる。それに」
 珍しく神妙に、黙って私の話を聞いている。
「それに、なんで今この状況でそういう事言うんだよ。これで付き合う事になったら、一
緒の布団で寝られるから怖い思いしないで済むってか?」

 …千田との口喧嘩は、大抵お互い捨て台詞を言って別れて終わる。だから。

「――」


245:VS幼馴染+α 7/24
07/12/14 17:54:04 VzljUG6Q
 息を飲む音が聞こえた。
 私は言うだけ言って、寝室に向かう。付き合いが長いんだから、私がもう話を一切する
気が無くて、寝るのだってわかった筈だ。
 顔も見ない。どんな表情してるかも考えない。私はこいつが大嫌い。
 静かに戸を閉めて、一気にパジャマに着替えて、布団の中に潜り込む。何も考えずに眼
を閉じる。元々眠かったから、すぐに寝れそうだ。けど。

 戸が開く音。しまった、また鍵忘れてた。ぱっ、と、電気が付く。ひた、ひた、と、力
なくこっちに近付いて来る。というか、これ例の悪霊だったらどうしてくれる。水沢超ご
利益無ぇ。今度会ったらボコってやる。それより、今日この事態が既に悪夢みたいなもん
だけど――
「…ベッドよこせ」
「断る。床で寝ろ」
 千田は人の話も聞かんと、人の布団の中に入って来ようとする。私は壁側を向いて、意
地でも顔を合わせようとしなかった。


「彩川」
 無視する。無視無視。こんな奴、もう知らない。私は何の反応もせずにただ、眼を閉じ
て意識が落ちるのを待つ。けど。
「…俺は、お前が好きだけど」
 
 割と、嫌じゃなかった。さっき想像したのに、あいつが驚いて私に抱き付いて来た時だ
って、嫌悪感はそれほど無かった。思っていた悪寒なんか何も無くて、今だって触られて
いるのに、ていうか一緒の布団に入っているのに、嫌だとは思わない。多分、きっとこい
つがようやく折れてしまって、今の言葉込みでなんだろうけど、それでも不思議。
「お前がさっき言ったみたいになんか、思ってない。それだけは訂正させろ」
 千田は細い。身長は私より5~6cm高い程度。体重はきっと私が重い。私のが食うし、
どう見たって千田モデル体型だし、きっと私の手首の方が太い。


 嫌い。だって、いつだってこいつはイヤミで馬鹿で根性悪で、そうだ、プロレス技だっ
てしょっちゅう掛けて来るからこんなに近いのなんて大した事じゃない。なんでこいつの
手、こんなに大きいんだ。後ろから抱き締めて、人の手首握るな。

「…お前、何キロ」
「聞くかそれ。お前より重いわ」
 またイヤミかよ。ふざけんな、この期に及んで一人になりたくないくせに、イヤミだけ
は言うのかよ。ていうか、やべえ喋っちゃった。無視する気だったのに。
「普段からそれ言ってるよな。悪いけど、俺お前より多分10キロは重いぞ」


246:VS幼馴染+α 8/24
07/12/14 17:56:09 VzljUG6Q
「――へ?」
 
 へ?と言ったはいいものの、千田の野郎もそれ以降は黙ってしまった。
 今日は少し寒いし、こいつがくっついているとあったかい。けど、これって問題だろ。
相変わらず私の手首を掴んで、がっしりとくっついたまま離れない。くそ、足くっつけん
な鬱陶しい。

「…嫌がらんのか?」
「嫌がったら出てってくれんの?」
 いつものような軽口。違うのは、こんなにくっついているのに、技を掛けられているで
もなし、イライラした感情もなし。
「流石に、お前が泣き叫んだら引き下がるしか無いだろ。なんでお前は無反応なんだ」
 馬鹿にしたような口調。すん、て音。後頭部に鼻くっつけやがった。びくっ、とした。
「あ、なんか、嫌だ」
 今までのはまだいい。けど、今みたいな匂い嗅がれるとか、それはちょっと。
 だって、それってちょっと違う気がする。
「今更それって何だ。止まるか」
「――あ、あ?」 
 びく、が、ぞわ、になった。なんて事すんだこの馬鹿、人の首の裏――えと、うなじ
に口付けやがった。抱き締める力も強くなった。

「普通、嫌いどころかちょっと好き程度でも、こんなんなったら何がしかの反応するだろ。
倦怠期の夫婦か、俺らは」
「…間柄としては近いかもなあ」
 付き合い、ホント長い。でも、ケンカばっかしてて、こいつは組み技が得意になってっ
て、私は殴る蹴るが得意になって、幼稚園から今まで、なんでかずっと一緒で、でも、ず
っと嫌いだったし、今更――ああ、本当に今更感丸出し。
「今更だよ。今から関係変わったら、きっとしんどい」
 
 すとん、と、はまったような気がした。うん。きっとそうだ。
「…私、ずっとお前が嫌いだと思ってここまで来たんだ。急にそんな事されたって、本当
に今更だよ。しんどい。お前とはずっと嫌い同士でいいよ。その方が」

 …楽しいし、心地好いし、楽だ。
 なんだかんだ言って、嫌いだけど、わかってる。そんなの最初から知ってる。千田とい
る時が一番楽しい。嫌いだけど。だから、別の関係になんて今更なれない。それに。

「ごめん。わかんないんだ本当に。気が付きゃお前とばっかいたから、私に好きとかそう
いうのはわからない。恋とかした事無いんだよ。だからやめとけ」
 ぺし、と、手を叩いてやる。


247:VS幼馴染+α 9/24
07/12/14 17:58:29 VzljUG6Q
 一応、自分としてとても納得出来る断りのお言葉を、出来るだけ真摯に伝えた。千田だ
って馬鹿じゃない。むしろ頭いい。だから、きっとわかっ――
「――っ!?」
 胸。おい。胸、胸。何触って、しかも揉みしだいてくれてやがりますかこの野郎。
「ちょ、おま、聞いてなかったのか?さてはお前寝てたのか!?わかってくれてんだろ?
お前はいつだってわかってんじゃんか!」
「だから、ここまで来て今更だと言うとろうが!それにな、お前は俺がずっといたから恋
愛がわからんと、馬鹿丸出しな事を言ってるがな、いいんだよそれで!これからわかれ。
俺はずっとお前といるからな。この俺からここまで言われて、まだ何も思わんというか、
この罰当たりが!!」

 …硬直は、する。だって、こいつ馬鹿だ。あまりの馬鹿っぷりに逆に引くわ。ナニコノ
永久ストーカー宣言。男のヤンデレってただの犯罪者か801のどっちかだって誰かが言
ってたけど、こいつは正にそれじゃんか。

「ば、罰当たりって何…やだ、やだやだ、やめて、やめてって」
 急に、怖くなる。怖い。さっきの千田みたいに、パニック起こしそうになる。さっきは
あんなに怖がっていた癖に、忘れたみたいに私の事性的に抱き締める。
「いいから、観念しろ。お前の相手は俺しかいないし、逆もまた然りだ。どうせ近い内に
こうなっていた。その時が今来たと思え!」
 せ、説得力のカケラも無ぇ!お陰で怖さが持続しねぇ!ていうか、マジ?私、マジでこ
いつに犯られるんか!?
「い、いやいやいや、お前、実はまだどっか変なままだろ?私だよ?勃つんか?勃たんだ
ろ?いやホン――」
 イヤホン?
 …自分で言って、本当に何を言ったのかもわからなくなった。
 今まで、なんとか、抱き締められながらも後ろを向いて抵抗していた訳だけれども、い
とも簡単に転がされて仰向けになってしまう。思わず瞑っていた眼を開いてしまって、そ
してその目の前にはいつものように人を見下して笑っている千田。
 ホント、こいつキレイな顔してる。ちっさい頃は女の子によく間違われてた。成長した
今は、女に間違われるなんて事は当然無いけど、線は細くて、でも実際に女装でもしよう
もんならホンモノ臭く見えてしまうだろう的な感じで、なんていうか。
 …だから、あの、性的なモノは感じなかったというか、それなのに。
 私の手を取って、あろう事か、友だちんこをしよった。いや、それって普通笑うか怒る
かドン引くかなんだけど、なんで、私、どうして。

「充分、勃っているだろう。満足か?」
「う、あ――あ、は、はい」
 ここまで堂々と言われたら、そりゃ返事するしか無い。うんうん、と千田は満足そうに
頷いて、私の手を放した。


248:VS幼馴染+α 10/24
07/12/14 18:00:35 VzljUG6Q

「さて、逃がす気は毛程も無い。お前は俺の事だけ考えていろ。何もせんでいい」
 犯る気満々でビンビンでギンギンの千田さん。私はもう、諦めるしか道は無い模様。こ
こまで愛してくれるんだったら、最初からそうしてくれればいいのに…
「いや、あの、だからさ、私は別にお前とするなんて言ってないし、パジャマ脱がすな。
だから、あの、その、勘弁して下さい。服脱ぐな」
 人の服脱がしたら、次は自分か。私は微妙な寒さと状況の寒さに慣れる事が出来ない。
そもそも、こんなんしてたら『バリバリオッケーです!どんと来い生殖活動!!』と言っ
ているようなもんなんだけど、なんで私は無抵抗なんだろうか。
 部屋明るいし、本当にお互い丸見えだし、実感が湧かない。だって、これから私、千田
とやるんだよなあ。初めてなのに。そういや、千田はどうなんだ?
「…千田、お前どうなの?」
 付き合いが長いから、それ、とは言わなくても察する事は出来る。
「ふん。俺のこの華麗な身のこなしを見てわからんか?」
 自信満々のご様子。華麗かどうかはともかく、なんとなくわかってたけど。でも。
「千田はいつから私が好きだったの?」
 でっかい眼が、もっとでっかくなる。私は素っ裸の幼馴染を見て、純粋に疑問に思った。
私が千田を好きだから、千田は私を好きになったって言った。でも、私にはまだ、千田を
好きかどうかもわからない。それで、千田は私が好きなのに、他の女の子と付き合ったり
やる事やったりしてたとなると、どうなんだろう?

「…そんな事、どうでもいいだろう」
 一瞬だけ、迷ったような顔をして、私の胸に掴み掛かる。さっきは身体が横になってた
から揉み甲斐はちょっとあったかもしれないけど、今は仰向けだから無い胸が更にナイム
ネに。ていうか、スタイル悪いよな私。今は千田の方が重いってわかったけど、腹もちょ
っと出てるからなあ。幻滅してないか。また、物笑いの種にされないか。
「彩川」
 声が掛かる。う、ほら来た。乳無いとか、腹出てるとか、太ってるとか。
「…お前、身体つき、幼いな」
 これまた、対処に困る。言い方が戸惑っているから、悪口じゃなくて心底思っているっ
ぽくて、逆に悲しくなって来る。
「なんか、あの、お前は背があって、手足長いのに、胸とか…こことか、なんかアレで、
逆にやらしい。なんか、子供の頃のお前にイタズラしているような気になる」
 たどたどしく、なんか危険な発言をしているバカが1人。お前、子供に対してその下半
身かよ。後、さわんな。ついでに生えてないのがそんなに珍しいか。
「剃っているのか?」
「…ううん」
 声が、弱弱しくなる。そりゃ、こんなの親にだって見せてない訳だし、一番最初がまさ
かこいつになるなんて思ってもいなかった。
「あの、笑うなら笑えよ?お前になんか変に気ぃ使われるの、一番嫌だ」


249:VS幼馴染+α 11/24
07/12/14 18:02:52 VzljUG6Q
 少し、声が上ずる。そっか、腹出てるのとか、太ってるんじゃなくて、幼児体型みたい
なもんか?しかも、それで欲情するって、マジでバカかこいつ。なのに、なんでそんな顔
すんだ。同情してるなんてカケラ程も思えない。こんな顔、初めて見る。
「彩川」
 既に、私の言葉なんか耳に入っていない模様。駄目だこいつ。もうやる気だ。
「…っ」
 触れた。指が、あそこに。怖い。くすぐったい。するっと指が、ウソ、中に簡単に入っ
た。すぐに抜かれて、でも、またすぐに中に入れて来て、なんか、太い。指細いと思って
たし、実際細いのに、なんでこんなに太いんだ?
 そう思っていると、もう片方の手が頬に触れた。その手に、手を重ねて、多分入ってい
る人差し指を摘まむ。やっぱり、私よりは太いけど、こんなもん…だよな。
「…2本、入れてる?」
 びっくりする程声が出ない。身体がだるい気がする。
「いや、1本だ。痛いか?」
「…痛くは、ないけど…凄く太く感じる」
 凄くバカっぽい会話だったと思う。それでもいつもみたいに鼻で笑うとかそういうのは
無しに、そうか、とだけ呟いた。
「でも、そんな指太くないな、お前」
「…ああ」
 浅く入れていた指が、もう少しだけ奥に入り込む。身体は震えるし、涙が出そうになる。
声が出そうになるのを必死で我慢した。
「お前、怖いなら俺にしがみ付いてもいいぞ」
「あ、遠慮する」
 う。なんか、千載一遇のチャンスを自ら潰した気がする。こういう所、可愛くないんだ
ろうなあ。くそ。でも、そんなのしちゃったら、きっと、もう。
…不意に、千田の視線が外れる。怒っちゃったのかと思ったけど、違った。
「や――だめ」
 こんな事してる時点でもう駄目なんだろうけど、それでも、ベタベタするよりはこうい
う風に一部分とかだけくっついていた方が、まだ。手遅れにならない気がする。
 千田の口の中に、私の胸がある。熱い息が掛かる。凄く、見た目いやらしい。
「待って、だめ。だめ、だめ――」
 駄目って10回言ったらやめて貰える気でいたけど、そんな事はけして無くて、そのま
ま吸ったり、口の中で舐めたりする。ゾクゾクして、千田の髪の毛を引っ張ったりしても、
全然やめてくれない。その間にも私の中で指がなんか、蠢いてるみたいな動きをしていて、
気が気じゃない。わざと音を立てるみたいに胸を吸っているし、下の方も湿った音がする。
 千田とこうなる前に、なんで私は家に入れちゃったんだろう、と、今更ながらに後悔し
始めていた。

 こいつ、気持ち悪い。


250:VS幼馴染+α 12/24
07/12/14 18:05:29 VzljUG6Q
 次から次に、私の身体を全部舐めそうな勢いで舐めて来る。一心不乱というか、眼が虚
ろというか、レイプ眼というか。
 徐々に、怖いよりもキモイになって来る。でも、こんな事されて喘いでる自分もキモイ
事には変わりないんだろう。
 
 …こうなって来ると、やっぱり千田も、努めて必死に私を好きになろうとしているんじ
ゃないかと思って来る。心のどこかで、もうやめたいなんて思ってるんじゃないかと。自
分は彩川貴枝が好きなんだって、必死で言い聞かせているように見える。

 だってキス、して来ない。普通する…だろ?それなのに、身体ばっかり舐めてる。
「――入れる」
「へ?」
 突如、がばりと私の脚を開いた。あ、入れるってそういう事か。
 …怖いという気持ちは吹っ飛んでいる。今は何もかも、顔も行動も全てがキモイ。理不
尽なくらいに熱いのが、押し付けられる。それでもあまりくっつかない。
 今殴れば、正気に戻るかな。戻るかも。そう思ったけど、腰を浮かされて、先端がめり
込んで来た時にもうアウトだと思い知った。

「彩川――彩川、彩川、彩川っ」
 綺麗な顔を歪ませて、泣きそうな顔で、千田は私を呼ぶ。
「いっ」
 不意に、鈍い痛み。下を見ると、先端の方が私の中に埋まっている。ウソ。これ、だけ?
それなのに、なんで身体の奥まで締め付けられるみたいな感覚なの?だって、先っぽだけ
だろ?
「あ――あ、ぁ!?」

 そこで、初めて私は言いようの無い恐怖を感じて、引き攣った声を上げた。
「っ」
 同時に、私の手首を掴む。右も、左も。
「…彩川、しがみつけ。楽だぞ」
 いつの間にか出ていた涙を舐め取って、もう一度、千田は呟く。一瞬戸惑うけど、もう
少しだけ楽な言葉をくれる。
「様式美だ」
 …そう言われるとなんとなく、そうした方がいい気になって、ようやく私は千田に抱き
ついた。あ、楽だ。本当に、そう思った。
 千田のかたい身体と、匂いと、体温と、全部が楽だ。擦れ合う頬が気持ちいい。
「まだ、辛いか?」
 頬で頬を擦られる。耳元を声がくすぐる。さっきから、私の中で何も動かない千田。私
は反射的に首を横に振る。と、嬉しそうな顔で。
「そうか」


251:VS幼馴染+α 13/24
07/12/14 18:07:40 VzljUG6Q
 とだけ呟いた。さっきから口数が少ない。千田といえば余計なまでにくっちゃべるのに。
「っ――」
 また、少しだけ私の中に入って来る。さっきの状態でも痛かったのに、更に。でも、大
丈夫と伝えた手前、声を上げるわけには行かない。
 我慢する。大丈夫。死にはしない。きっと死にはしない。けど。

「…痛いだろ。無理をするなバカタレ」
 また、千田は動かなくなった。鈍い痛みは、動かなければなんとかなる。楽になったけ
ど、でも、なんでわかるの?
「え――なん、で?いたく、ない」
「…気付いていないのか?」
 普段だったら、こういう私がわからなくてこいつがわかる、みたいな時は心底バカにし
た顔なのに、今は違う。呆れたような顔はしているけど、なんだか違う。
「お前に気を使われるのは御免だ」
 どこかで聞いたような言葉。おでこをおでこにくっつけて、ようやく唇にキスされる。
 …なんだか、何かが終わってしまったような気がした。

「…だい、じょうぶだから…いつもは、私が何言ったって好きに、する、だろ…平気だよ、
いたくない。いたく――っぐ!?あ…あっ!」
 びち、と、こめかみにデコピン(?)しやがった。一瞬視界が真っ暗になって、同時に。
「折衷案だ。お望み通りにしてやった。暫く動かんから、もっとしがみついていいぞ」
 変に身体が緩んだ隙に、一気に入れやがった。声が、出ない。なんか撃ち抜かれたみた
いな感覚。そんな経験無いけど。
 私は痛くて、反射的に千田を抱き締める力を強めてしまった。頬とこめかみと目頭が熱
くて、下半身が焼けるみたいに痛くて涙がぼろぼろ出て来る。
 痛い。苦しい。でも、それでも、口で痛いって言う訳にはいかないような気がした。
 きっと、千田にはもう全部わかられているんだろう。いつもと同じだ。でも、それでも。
「…だから」
 涙で濡れてしまった頬に、また頬擦りして来る。涙を吸って、頭を撫でる。

「痛いんだろ。ていうか、俺も痛い。背中。背中。お前、そんな事にも気付かないくらい
痛いのか」
「――え?」
 何を言っているのかすら、よくわからなかった。背中?
「あ」

 私、ぶっ刺してた。爪、思いっ切り、千田の背中に。
 気が付かなかった。力の限りしがみ付いて、千田にこれ以上ないってくらい、頼ってた。
「っ、ごめん――ごめん」
 ぱっと手を放す。反射的に謝ってしまう。そりゃそうだ。相当痛かったろうに。


252:VS幼馴染+α 14/24
07/12/14 18:09:46 VzljUG6Q
「痛い?」
「多分、お前よりかは痛くないだろうな。お前が俺にしがみついて、こうなるまで1セッ
トの様式美だから気にするな」

 一度したからって、もう当たり前みたいにキスして来る。言っている事がわかるような、
わからないような感じで、なんだか翻弄されてるみたい。仕方が無い。こっちに関しては、
私は全くの素人なんだから、こいつに一日の長があるのは仕方が無い。

 …でも。
「どうして、さっきまでしなかったのに、今、するの?」
 それがキスの事だというのは、すぐに気が付いたみたい。
「…うるさいっ、バカタレが」
 一瞬だけ不機嫌な顔をしてから、悪態をついて私の口を塞ぐ。勿論キスで。それでなん
となくわかった。嬉しかった。素で忘れてただけなんだ、と。
 嬉しくもあったけど、それでも内心はやっぱり複雑。
 こんな事になっているのに、未だに吹っ切れないのにも、腹が立つ。嫌い嫌い言ってい
たのだって、もう、最初から詭弁だったって認めてる。
 嫌いっていう言葉は、全部『すき』って言葉だった。なにもかも、気に入らない所はな
にもかもすきな所だった。こんな事許すのなんて、こいつしかいない。ううん、こいつに
なら何をされてもそれが自然だと、だから、今となっては全部予定調和だったんだ。

 ――そう、必死で思い聞かせる。理屈ではわかっている。私はこいつしかいない。こ
いつも私しかいない。身体だって、徐々にこいつを受け入れている。息だって荒くなる。

 鈍い痛みは取れない。それでも少しずつ、少しずつ慣れて行く。私の中に千田がいる事
が当たり前みたいな感覚になる。不意に、千田が繋がってる所、より上に触れて来た。反
射的に、きゅっ、と千田を締め付けてしまう。声も出る。何より、悪くなかった。寧ろ、
変になるくらい気持ち、良かった。
 千田はそれがわかってる。私がそれに戸惑っている事も、受け入れたくない事も。

 なんでこいつ、人の気持ちを読むのが得意なんだろう。そういう奴だから、といえばそ
うだけど、空気だって凄く読むし、そうだ、空気読めない工藤と空気読まない水沢と、こ
いつら3人セットだとバランスいいんだよな、割を食うのはこいつなんだけど――

「あ――っ」
 ずるりっ、て感触。そんな音する訳無いけど、そんな音が頭に浮かんだ。抜かれる。痛
くは無い。熱い。やらしい声が出る。
「…ふざけるな。俺の事だけ考えていろと言ったろうが」
 怒った声。わかられてた。悔しい。抜かれた時と同じくらいの速度で、また入って来る。
何度も、征服されてるみたいな気分になる。


253:VS幼馴染+α 15/24
07/12/14 18:11:59 VzljUG6Q
「っ、はぁ…あ、あ…っ、あ」
 だらしなく口が開く。引き攣ったような声しか出ない。声を我慢しようとすると、そん
な声になってしまうけど、我慢しなかったらもっとマヌケな声になると思って、我慢しか
出来ない。

 痛い。でも、それが気持ちいい。全部、とけそうになって、爪はもう立てたくないけど、
しがみつきたくて、さっきのこいつみたいに、匂い、かいで、いい。凄く、いい。
「っ、せん、っ、千田…千田」
 名前を、呼ぶ。名前じゃないけど、きっと一生、こう呼んでる気がする。
「――彩川」
 こいつも、きっとそうだと思う。私らは、多分そんなだから、ずっと一緒にいたんだし、
これからもいるんだと思う。でも、そうだったのに、これからは――
「っ…あ、あ、や、やあ――っ、や――」
 考えが、中断される。自分の身体が変になる。声が、我慢出来ない。自分の身体が、千
田に吸い付く。もう、何も考えられなくなる。また、涙が出て来る。

 頭が、ぐらぐらした。身体中が気持ち良くて、それしか考えられなくて、それしか考え
ないまま、私はどうにも眠くなって、そのまま意識が遠くなって行った。





 暗い中、目が覚める。隣には千田。静かに寝息を立てている。ゆっくりと、千田を起こ
さないように身体を起こす。

「…れ?」
 なんでだろ。
 さっき、散々泣いたからもう出ないと思ってたのに、痛くないのに、涙が出て来た。
 理由は、すぐにわかった。悲しいんだ。
「――あや、かわ?」
 目覚めてしまったのか、はたまた最初から起きていたのか。ぐずっている音で、千田を
気付かせてしまった。
「泣いてるの?」
 千田の手が、頬を撫でる。私はやんわりとその手を拒否した。

「どして、私と、したの?」
 触られたくない事を察してくれたのか、千田は私に触らなかった。千田の気の付きよう
に今は感謝しながら、自分が落ち着くのを待った、そして、聞いた。わかっていたのに。
聞いても答えられてもどうしようもないの、知ってたのに。


254:VS幼馴染+α 16/24
07/12/14 18:14:01 VzljUG6Q

「…好き、だから。好きで、ずっとこうなりたくて、だから」
 幽霊云々はきっと本当だったんだろう。それを忘れたかったのも、あったんだろう。で
も、それ以上にこれがチャンスだからと、そう思ったから、こうなったんだろう。
 思っていた事は殆ど当たっていて、さっきの問いも――いつから私を好きだったのか
も、ちゃんと答えてくれた。

「きっと俺はお前が最初から好きだった。子供の頃、お前に離れられそうになった時、そ
れっきりになりたくなくて、ずっとお前に纏わり付いてた。それがわかったのは、本当に
最近で、俺はお前と嫌い合って殴り合っている関係が凄く楽で楽しいって思っていた」
 千田とは思えないくらいに乱暴に私を抱き締める。
 その乱暴さが心地好くて、私も千田を抱き締める。
 こうなって、後悔はしていない。私だって、結局こいつといたいし、好きだと…多分、
思う。こいつ意外に楽しくて楽で、よくわからないけどこんな気持ちになる奴なんて、き
っといないけど。

「…うん。楽しい。多分――多分な、そういう今までの私らの関係って凄く幸せだった
んだと思う。だから、そういうの捨ててまで、今まで以上に楽しいのかなって、そう思っ
て、もしかして、凄く大切なものを自分で手放したんじゃないかって思って」
 そんで、涙が出た。
「俺も――ん。気が合うな。俺もそれ考えた。それでも、他の誰かにお前を取られるよ
りかは、いいと思った。だから、行動に移した」
 
 …それでも。
 手放したものが、手に入れたものより大切ではなくても、充分大切で、心の中を占めて
いたものだとはわかっていて、だから、悲しい。

「…もう、前みたいには出来ない?」
「…さあなあ。そればかりはわからん」
 私を抱き締めたまま、寝転がる。
「楽しかったよなあ。お前ってなんで組み技とか寝技専門になったの?まさか私に触りた
かったとか?」
 あはは、だとしたらキモイ。超キモイ。でもあり得る。
「半分正解。後の半分は『グラップラー』という響きに憧れてな。因みにお前はストライ
カーだ」
 …いや、マトモに答えられても凄く困った。マジだこいつ。
「私はお前に寝技掛けられてるの水沢に見られて『健康的エロス!!』て言われて、なん
か怖くて、必死に捕まりたくなくてそっち行ったなー。それ言われたとき中1だぞ?絶対
ぇ水沢頭おかしいよ」
「まあ、奴の頭がおかしいのは認めるが」


255:VS幼馴染+α 17/24
07/12/14 18:16:08 VzljUG6Q
「うん。それに大きく分ければお前と水沢は同じ所にいるしなあたたたたた」
 ストーカー気質と陰湿エロ、という括りで。いや、実際は知らんけど。ていうか。

「…なんだか、変わらないかも」
 頬を引っ張って、笑う。
「そう、だな。なんだか考え過ぎているのが馬鹿らしくなって来たな」
 やっぱ、変わったような気もする。柔らかく笑う千田が、なんだか嬉しい。というか。
「もしかして、こうなる方が難しいのかも」
 手を引っ込めて、いままで引っ張っていた場所に口付ける。似た様な場所に、千田が口
付ける。
「ふん、構わんさ。そんな時はこう言えばいい」

 ――やっぱ、付き合い長いっていいのかも。同じような言葉が頭に浮かんだ。そして、
同時に口に出す。


『スーパー恋人タイム』
「ってか?」
「だろう?」
 顔を見合わせて、にんまり笑う。そして。

「とっとと寝ろ。その年で夜泣きかバカタレが」
「うっせー。文句あんならFULL珍で床で寝ろ。その間にオッサン幽霊来るぞ」
 …お互い、痛いところを突く。本気で腹立つ。けど、これでいい。

「ふん、まあいつまでも泣かれていては鬱陶しいからな。特別に胸を貸してやろう」
「はん、そんな事言ってオッサン怖いんだろ?生まれたての小鹿みたいにぷるぷる震えて
ろよ。あ、漏らすなよ?」
 顔を見合わせる。お互い引き攣った顔してるんだろう。
 ふん、と鼻を鳴らして布団を被った。まだ納得した訳でもしっくり行った訳でも無い。
それでも、これで良かったんだと思える程度には――


「安心した」
「何がだ?常識でわかる範囲内で説明してくれ。お前の頭を酷使する羽目になるだろうが」


 安心し過ぎて、こいつの事殴りたいなー、と、やっぱり今日も思った。




256:VS幼馴染+α 18/24
07/12/14 18:18:37 VzljUG6Q

 ‐後日談‐

「ああ、それですね。知っています。通称三田村屋敷事件です。俺の地元じゃそれなりに
有名ですよ」
 休み明け、なんとなく工藤の新居であった事を工藤に聞いてみたら、水沢が答えた。
「へーぇ、そうなんだ。ま、僕達は普通に暮らせてるから、別にいいけど」
 当事者である工藤(晴)は、全く興味が無さそうにしている。
「そんなんよりかさ、貴枝ちゃんはなんで昌平くんのコート着てんの。僕だってそれ欲し
いなーって思ってたのにズルイ。謝罪と賠償と慰謝料と生活費とお小遣いを要求します!」
 染み抜きしたら、血っぽいのカンタンに取れた。千田は二度と着ないと言っていたので
貰った。本人は捨てて欲しいっぽいけど、もったいない。高いし。ていうか工藤図々しい。
「なんか、霊感ある人に向かって行くんだって」
 自分の言った事に責任は全く持たないのか、早速別の話題に移る工藤。という事は、千
田は霊感があるって事なのか?
「加えて、お金持ちの人が大嫌いだそうです。匂いでわかるんですかねぇ。三田村正二、
当時47歳。銭ゲバですが、自分の息子に裏切られ、犯された挙句に首を折られて殺され
たそうです。それ以来あの屋敷に霊感のある人が入ると無差別に襲い掛かるそうです」
 これまたあっさりと、おっとろしい事を言いやがる。中盤が特に恐ろしい。
「へーぇ大ちゃん詳しいねぇ。もしかして実際お目にかかったとか?大ちゃん素で念とか
固有結界使えそうだし」
 …有りうる。確かに水沢なら霊感とかありそうだし。近所だし何より詳しい。少し期待
しながら水沢を見る。が、当の本人は少し困ったように笑って。
「いいえ。実は叔父と不法侵入した事はあるんですけど、2人揃ってなーんも見えも聞こ
えも感じもしませんでしたよ。詳しいのにも理由はあります。その息子本人と名乗る人が
この話を道行く人にしまくるっていう事がありまして。あ、俺が小学生の時です。でも不
思議なんですよね。確かにその家の管理をしている人なんですけど、息子本人は警察に捕
まる前に首を吊って死んでいるんですよ」
 やっぱりさらっと水沢は言ってくれたけど。
 ――なんとなく、空気が凍った気がした。工藤も、表情を固まらせている。
「…なんか微妙な人だと思ってたら、虚言癖でもあるのかな?千萩に気を付けるよう言わ
なきゃ…」
 お前も怖いわ。物凄くズレてると思うけど、今は工藤のズレ方と、水沢の神経がとても
羨ましい。この場に千田がいたら、卒倒してるんじゃないか?

「でも――うん。実際に殺された人はまだいないんだよね?」
 何かを思い付いたように、工藤は物騒な質問をする。
「ええ。どうも霊の方は屋敷から出れないようですし。となると、千田さんは幸運だった
のかもしれませんね」
「ていうかさ、捕まったら、どうなるんだろね。今度実験してみない?」


257:VS幼馴染+α 19/24
07/12/14 18:20:40 VzljUG6Q
 おいおいおい。いきなり物騒な事言い始めるなあこの男。
「なに?千田か工藤連れてくの?2人とももう、敷地内どころか半径100m以内にも近
付きたくないって思ってるだろうに」
「ううん。ちょうどいいのがいるから。多分その子霊感あると思うし。最近さあ、千早に
彼女出来たんだけど、それが凄く嫌な子で、千早カンッペキに騙されてるんだよね」
 …あらま、憎々し気な顔しちゃって。いつもにこにこしてる工藤にしちゃあ珍しい。
「…工藤さん、顔が怖いですよぉ?ていうか、本気ですか?」
 本気なんだろうなあ、という顔だ。こいつこういう所怖いんだよなあ。
「俺は反対ですよ。人が死ぬかもしれないのをあえて見過ごすなんて嫌過ぎです」
「私も反対。ていうか、お前気に食わないなら直接対決しろ。その子にしろ、工藤にしろ」
 まあ、その嫌な子と工藤の問題なんだから、工藤には関係無いと思うんだけど。
「――いいよ、別にあんな子死んでも」
 プイっ、と顔を背けて拗ねてしまう。ていうか軽くヤバくね?
「…千萩と千早にはこの事言わないでよ?…ウソだよ、僕の生活スペースにあんな子入れ
たくないもん。だから、僕がその子嫌ってるって事言わないでね。2人とも騙されてるも
ん。人に取り入るのだけは上手いんだからさ」
 そのまま、頬を膨らませて黙り込んでしまった。

「そういえば、千田さんはどうしたんですか?」
 私、若干引いてるのに水沢はなーんも気にしとらんと、話題を普通に変える。
「え、あ、え――せ、千田?あ、千田?知らない」
 別に、意識していた訳でもないんだけど、いきなり振られると口ごもってしまう。


 朝になって最初に眼が覚めたのは私だった。幸せそうに寝てる千田の顔を見たら、なん
だか変にソワソワして、叩きたくなったので、落ち着ける為にお風呂に入る事にした。
 で、身体洗ってたら、急に転げ落ちるような音がして、家中を走り回る音がして、もし
かしてこの時間になってオッサン来たのかと思ってたら、風呂の戸が開いて、そこには全
裸の千田様が血相変えて立っていた。

「え…え?ど、どしたの?あ、おはよ…」
 ぜーはー荒い息をついて、私を凝視する。私は泡の付いたスポンジくらいしか持ってな
かったし、半分呆気に取られていたので叫ぶ事もせずに、とりあえず手で身体を隠した。
「あ――あ、お、おはよ」
 ようやく我に返ったのか、千田も手を上げて挨拶をし返す。

「…いや、あの、その――もしかして、夢だったのかと、思って」
「FULL珍で、人のベッドで寝ておいてか?」
 よっぽど自分様の御身体に自信があるのか、堂々と私に身体を見せ付けている。多分、
気が付いていないんだろうけど。


258:VS幼馴染+α 20/24
07/12/14 18:23:54 VzljUG6Q
 言われてようやく気付いたのか、急に顔が真っ赤になる。バーカバーカ。更に元気にさ
せてみようと、私は追撃を仕掛ける。
「で、どうするよ?もしかして、昌平ちゃんは一緒にお風呂入りたいんでちゅかあ?」
 うぇへへへへへ、と、下品に笑ってみせる。ここまで馬鹿にすりゃあフリーズ状態から
再起動するだろ。そのまま帰るもよし、不貞寝するもよし。

 ――が。

「……………………」
 今度は、私がフリーズするハメになった。別の場所が再起動しよった。



 結局、私がこの期に及んで、昨日の夜にすりゃあよかったように、泣き叫んでそこらにあ
ったものを投げ付けて、ちょうど満タンに入ったボディソープの容器が元気になったうま
い棒にクリーンヒットして、千田は悶絶した。

 その後怒って帰って、会っていないままだ。



「そうですか。この間借りたDVD返そうと思って持って来たんですけどね」
「へー、どんなの?」
「こんなのです」
 時と場所を考えろ。ここ構内だぞ。なんだ『美人教師・由愛子の淫乱性指導―困惑の生
徒23人レイプ・レイプ・レイプ―』って。センスのカケラもねぇな。それよりも乳でけえ。
「なにそれなにそれ!あ、由愛子の新作じゃん!僕に貸してよ!!」
 一瞬で機嫌が直ったのか、すぐに飛び付いて来る。新作て。
「え、その由愛子って有名なの?」
 私が周りに人がいないかどうか確かめながら聞くと、水沢は普通に頷いて。
「一部では、ですね。ええ。後工藤さん、駄目です。借りるなら千田さん本人に言って下
さい。又貸しはマナー違反ですよ」
 そう言ってDVDをカバンにしまう。そっか。千田は巨乳好きなのか。

「あ、昌平くん!愛してる!!」
「千田さん、俺は愛していません」
 思うところあって、少し考えていると、不意に愛の告白と逆告白のお言葉。振り返れば
奴がいた。微妙に不機嫌そうなお顔の千田。
「よう、巨乳大好き千田さん」
 私はげひひひひ、と笑いながらあいさつする。


259:VS幼馴染+α 21/24
07/12/14 18:26:28 VzljUG6Q
「…工藤、お前の愛は重い。水沢、奇遇だな俺も愛していない。でもって彩川」
 よっぽど、お前の方が幽霊みたいだと思った。
 首を少しだけ傾げて、ゆっくりと私の方へ向き直る。おお、千田のなく頃にか?
「俺が巨乳好きだといつ言った」
「へ――?え、それは――」
 水沢が借りたDVDが、と言おうとしたんだけど、私の手を掴んで、もと来た道を戻る。
「せ、千田?」
 うわ、怒ってる。なんでか知らんけど怒ってる。私はどうしよう、と思いながら千田に
されるがままに引き摺られていた。

「僕、左ストレートで貴枝ちゃんの勝ち。大ちゃんは?」
「俺はバックドロップで千田さんに」
「僕が勝ったら大ちゃんの彼女のおっぱい揉ませて」
「じゃ、場外乱闘という事で今ここで決着付けましょうか」
 カーン、と、あっちでもゴングが鳴ったような気がした。予想としては、2秒で水沢勝
利。予想通りにすぐになんか、しちゃいけないような音がしたけど気にしない。
 今は、千田だ。どこに連れて行かれるかわからなかったけど、多分あまり人目の無い所
だろう。うう、こいつがこんなので怒るなんて思わなかった。

「――さて、彩川」
 私を壁際に追い詰めて、相変わらず物凄く不機嫌そうな顔をして、私を睨んだ。
「な、なんだよ。やるか。やるんだったらお前もさっきの工藤みたいに2秒で――」
「…いつ、どこで、誰が、何時何分何秒、巨乳が好きだと言った」
 しょ、小学生かお前は。若干呆れながら千田を睨もうとする、けど。
「もしかしなくても、傷付けたか?身体つきが幼いって言った事」

 ――ん?
 私は、首を傾げる。え?何それ?え?とりあえず頭をフル回転させる。あ、言ったか?
そういやあの時、妙にそれで興奮?してたのキモイって思ったな。あー、あ、そういう事?

 …うわ。思わず、下を向いてしまう。
 やべ、なんか頭の裏っ側が熱くなったような気がした。いや、照れてる場合じゃあない。
何、勝手に罪悪感持ってんだバカ。
「あ、違う。違うんだって。あの、水沢がお前にDVD借りたの返したいって言ってて、
それ見せてもらってさ。あー、お前ああいうの好みなんだなあって、そう――」
 しどろもどろに話す。ていうか、なんだかくすぐったくて居心地が悪い。私、なんだよ、
千田にすっげぇ大事にされてるなあって実感しちゃった。どうしよう、なんだか、凄く。
「あ、あの――」
 俯いていた顔を上げる。が、既に千田はそこにはいなかった。
「え、え?千田?」


260:VS幼馴染+α 22/24
07/12/14 18:28:31 VzljUG6Q

 消えた!?
 幽霊に連れ去られたかと一瞬思ったけど、違う。多分――




「何してくれてんだお前はああああああああああああっ!?」
「え、ちょ、えええ、なんでそんなに怒っているんですか、引きますわー」
「お前の態度に引くわ!!」

 …元いた場所で、千田と水沢が追いかけっこをしていた。
 あら可愛い、千田は自分の性癖?を知られた事がそんなにショックだったのか?今まで
だったら気にしなかった…のか?それはわからないけど…

「おはよ貴枝ちゃん。ねー、どうしたのあの2人。工藤くんたら、賭けだけ持ち掛けて原
因教えてくれないの」
 観戦モードに入っている三沢がいつのまにかそこにいた。ていうか、工藤まだ倒れてる。
「あ、おはよ三沢。なんか、痴情のもつれ?」
「え、ウッソー。なになに?じゃあ、そこで倒れている工藤くんは?負けたの?それとも
賞品?だから原因教えてくれないの?」
 なんか、妙に輝きながら私に聞く。
「…知るか。ていうか、いらねー」
 なんだか、よく言っている事がわからないけど、ロクでもないという事だけはわかった。
「ところで貴枝ちゃん。どうして千田くんのコート着てるの?」
「ああ、なんか工藤の家で頭髪の不自由なオッサンに襲われて、体液付着しちゃったから
もう着たくないっていうし…染み抜きして貰った」
 一応、端的に説明する。

「――っ、千田総受伝説の幕開け!?じゃあアレは襲い受け!?」
「そこ!バカに変な知識を植え付けるなバカタレが!!」 
 水沢を追っかけながら、三沢へのツッコミも忘れない。うーん苦労性。しかし、そんな
隙を見逃す水沢じゃあない。ツッコミに行く、と判断した瞬間に別方向に逃げ出した。そ
して千田が振り返った時には、もう遅かった。

「…ちぇっ、私の負けかあ。工藤くんはい、これ」
「まいどありー。ね、僕の言った通りでしょ」
 負けたらしい三沢は、勝負が付いた時にはもう起き上がっていた工藤に持っていたパン
の紙袋を渡す。あ、アゲアンパンと苺牛乳だ。いいな。


261:VS幼馴染+α 23/23
07/12/14 18:30:34 VzljUG6Q
 因みに、工藤は水沢の逃亡成功で、三沢は暫くしたら水沢が転んでとっ捕まる、だった
そうだ。2人ともいい読みをしていると思う。工藤はさっそくアゲアンパン食べながら。
「貴枝ちゃん、そういや2人のバトルはどうなったの?」
 と、聞いて来た。あ、そういやそんな話になってたな。
「…いや、別に…最初から戦ってない」
 あれ?と首を傾げる工藤。フラフラしながら千田も戻って来る。
「あ、おかえり昌平くん。ねー、なんでさっき貴枝ちゃん連れてったの?」
「…うるさい…もうどうでもいい…」
 体力を相当削られたのか、まるで徹夜明けのようだ。まともに捕まえられたら、水沢秒
殺だったのになあ。わかってたからこそ、必死で逃げたんだろうけど。
「ねー、貴枝ちゃんおせーて。どしたの、どしたのー」
 千田はダウンしたので矛先がこっちに。あ、三沢も興味津々。
 …まあ、隠す事でもないけど、でも千田も私も、まだ色々と納得していない。言うのは
得策じゃあないなと思って。

「いやね、千田は巨乳も好きだけど、実はつるぺたにも異常に興奮するらし――ぉぶっ」
 千田が、私の後頭部にチョップを。うわあ腹が立つ。せっかく誤魔化してやったのに!

「やるかコラァ――っ!?」
「来いやオラァ――っ!!」
 一瞬で臨戦態勢に。

 後ろでどっちが勝つか早速話し合いをしている。あ、水沢いつの間に戻って来た。千田
も水沢を見た筈なのに、既に私しか視界に入らないようだ。ま、99%私が勝つだろうか
らな、今は。油断は出来ないという事か。



 ――これで、いいか。
 そう思いながら、既に体力の無い千田をどう料理してやろうかに集中する事にした。


 ボロクソにした後は、一緒にお風呂入ってあげようかなあ、と思った。









262:377
07/12/14 18:32:36 VzljUG6Q
こんな感じです。

最後の最後で24ページでなくて23ページなのに気付きました。
あと、『終』の位置が変ですね。申し訳ございません。

263:名無しさん@ピンキー
07/12/14 18:36:07 kL01lops
gj面白かった。
したの名前では呼び合わないの? けじめ?

264:名無しさん@ピンキー
07/12/14 18:39:31 F6yzhF/6
GJ

265:名無しさん@ピンキー
07/12/14 19:04:03 qRnG6iUg
数週間前に377氏のファンになり、初めてリアルタイムで遭遇。
楽しく読ませて頂きました
もう二、三度読み返して堪能させて頂きますね。

乙です。

266:名無しさん@ピンキー
07/12/15 00:30:59 KP9Vsx77
GJ!!


267:名無しさん@ピンキー
07/12/15 01:47:25 gG6TOBN5
GJ
千早と彼女編が早く読みたいw
千晴がそこまで嫌う子がどんな子なのか激しくwktk

377氏の書くストーリーに嫌な奴ってあまり出てこないから
千晴の思い違いなのかなー等と想像しながら楽しみに待ってます。

268:名無しさん@ピンキー
07/12/15 02:14:31 gG6TOBN5
あれ
勘違いレスしたっぽいな……
ちょっと読み直そう……

269:名無しさん@ピンキー
07/12/15 02:56:04 M4YdqTtc
GJ!!
377氏の作品は登場人物のリンクが多いね

270:名無しさん@ピンキー
07/12/16 12:47:31 CYOy6Ipw
初投下です。
あんましエロくないですが、感想、批評いただけましたら幸いです。

271:落書き  1/12
07/12/16 12:48:25 CYOy6Ipw
 また見られてる。
 もう全く気にしてないけど、最初は戸惑った。というか、恥ずかしかった。
 でも大分慣れてしまったな。
 コイツは私が化粧するのを見てるのが好きらしい。一緒に暮らす前から知ってたけど。
 いつだったか理由を聞いた時、私は軽くショックを受けた。
『なんか見てるうちに、だんだん見覚えのある顔になってくのが楽しくて』
 本っ当に失礼な奴だ。笑いながらこんな事を言う。
 おまけに人の気も知らずにマイペース。
「このマニキュア良い色だねぇ、借りて良い?」
 また始まった。どうせ趣味のプラモ作りに使う気だ。
 私は、使ってみたいの?とは訊かず、何を塗るの?と訊く。
「ガンダムの白い部分がパールで光ってたら格好良くね?」
 格好良いかどうかはさておき、この狭い部屋にまたガンダムを増やす気か。
 私は部屋の隅に置いてある飾り棚に目を遣る。
 コイツのお陰で無駄に名を憶えてしまったロボットが6体、戦車が3台、バイクが4台並んでいる。
「ダメ、高いんだからね。ってか、これ以上増やすんなら古いのヤフオクで売っちゃえば?」
「だねー、合計で20個になったら古いのから順に売っちゃうか」
 絶対売る気ないな、これは。
 確か、会社のデスクにも1体飾ってると言っていた。ザクレロとか云うふざけたデザインのロボ。
 よく上司に怒られないもんだ。

272:落書き  2/12
07/12/16 12:49:03 CYOy6Ipw
 彼は化粧ポーチからアイシャドウを一つ取り出して
「ケイさ、この色あまり使わないよね。全然減ってないし」
 赤系のシャドウ。買ってみたは良いけど、私にはあまり似合わなかった。
 と言うか、妖艶さを強調したくて頑張ってみました的な印象を感じ、買った事を後悔した色だった。
「なーんか大袈裟な感じになっちゃうから、それ」
 簡潔に理由を説明すると、彼はふーんなんて解っているのかいないのか、会話の上では納得したよう
な返事をしていた。
 珍しい。これまで化粧する私を見てるだけで、マニキュア以外の化粧品に興味を示す事は無かったのに。
 今度は口紅を取り出していた。
「これもあまり使ったとこ見た事ないよねぇ」
 薔薇のようにやや暗めな赤のそれも、赤系のシャドウと同じような理由でほとんど使ってない。
「どしたの?塗ってみたい?」
 何気なく訊いてみただけの言葉だが、反応が面白かった。
「え?いや、別にそうじゃなくてさ。ポーチん中ぎゅうぎゅうだから、どんなの入ってるのかなーって
思って。女装願望とか別に無いし、ってか化粧似合うようなツラ構えじゃないしさ」
 少し慌ててる。何?そういう趣味あるの?
 確かに化粧映えする顔じゃないと思う。男らしい顔ってわけでもないけど、中性的なわけでもないし
ぶっちゃけカッコイイわけでもないしね。好きだけどさ。
 けど、悪戯を見破られた子供みたいな目で、無駄に饒舌になっちゃってる彼の言葉は私の中のスイッチ
を入れた。

273:落書き  3/12
07/12/16 12:49:35 CYOy6Ipw
 私は自分の口紅もそこそこに彼に紅筆を向ける。
「ちょっ、まっ、出掛けるんだろ?こんなんしてる時間ないだろ」
「どこか予約してるわけでもないんだから良いじゃん、ちょっとだけやってみようよ、ね?」
 今日は別に何処に行くかを決めた日でもない。ただ土曜日だから、二人でどこかでご飯を食べて、映画
でも見に行こうとだけ決めていた日。だから多少予定がずれたところで困らない。と言うか、元々ちゃん
とした予定なんか無いんだから。
 この人が口紅を差して、アイシャドウを塗って、チークを入れたら、どんな風になるんだろう?
 絶対に綺麗や可愛いなんて結果にはならないのだけはわかる。でもしてみたい。きっと馬鹿笑い出来る。
 にじり寄る私にじりじりと後退りしていたが、彼の背中はすぐに壁に止められる。狭い部屋だから、
逃げるスペースも数十センチしか無い。
 やめて、とか、まじでまじで、なんて言ってたけど、すぐに彼は観念した。
 大した抵抗を受けなかったところを見ると、少しは興味があったんだろう。
 絶対似合わないけど、それを知っているからこそ照れている。わかりやす過ぎて笑えてくる。
 普段リップクリームすら塗らないカサカサの唇を紅筆でなぞる。が、元々綺麗にしてあげる気なんか無
い私は、筆を口紅そのものに持ち替えて豪快に塗り始める。
 最初だけ、ほんの最初だけは唇の輪郭に沿って塗ってあげようと思っていた。
 しかし、思いの外似合わない。いや、似合わないだろうとは思っていたけど、予想を遙かに超えた似合
わなさ。
 正直、同情を禁じ得ないほどだ。
 私は即座に予定を変更し、思い切って唇をはみ出したラインを描き始めた。
 ギャグにしてあげなきゃ可哀想なくらい似合ってなかったのだ。
 しかし明らかに唇をはみ出して塗り広げられている状況に彼も気付かないわけが無かった。
「お前っ、ふざけっ……やめっ!やめれっ!」
 耐えきれずヒクヒクしだした彼の腹筋に釣られて私も笑い出す。

274:落書き  4/12
07/12/16 12:50:15 CYOy6Ipw
「オバQだ。オバQが出たっ」
 笑いながら言い、なおも口紅を塗り続ける私に抑えつけられながらも、彼は腕を伸ばしていた。
 化粧ポーチに。
 ポーチの中から手探りで一本のアイブロウペンシルを取り出した彼の反撃が始まった。
「お前を残虐超人にしてやるっ」
 彼は私の額に何かを書き始めた。多分「中」の文字だろう。
 バトル開始のゴングが頭の中に鳴り響く。
 私は壁に凭れた彼のマウントポジションを取り、鼻の穴に口紅の先を突っ込んでそのまま下に引いた。
 ざまぁみろ、鼻血を出させてやった。が、彼も負けじと私の頬に何か書いている。また文字だろうか?
 私は得物を奴と同じくペンシル型のアイライナーに持ち替えて応戦する。
 額に「肉」、頬に「バカ」と書き入れてやったが、彼も私もそろそろ限界を迎えつつあった。
 主に腹筋の。
「あー、笑い死ぬ。終わり終わり」
 ペンシルを放り投げ、彼が私を抱きしめる。
 まだ腹筋がヒクヒクと痙攣してる。私もだけど。
「あー面白かった。てかこれじゃ出掛けらんないね」
「まだ昼前だし、後でそこのダイ○ーでも行って買い物してこよう。すき焼きとか食べたくね?」
 昼からすき焼き?という問いかけを彼の唇が遮る。
 腰に回した手に力が込められるのを感じると、私は自然と舌をのばしていた。
 もう条件反射かもしれない。コイツにこんな風に抱きしめられるとすぐにスイッチが切り替わる。
 おふざけモードから一転、いちゃいちゃエッチモードだ。

275:落書き  5/12
07/12/16 12:50:59 CYOy6Ipw
 ぬるぬると舌が絡み合う。んんーなんて言いながら私の口の中で遊び回る彼。
 その鼻に抜けるような「んんー」が色っぽいというか、可愛いというか。きっとコイツは解った上で
言ってるんだ。私がその声に反応する事を充分に知ってるから、わざとそうしてるんだ。
 良いよ。何度でもその手に乗ってあげる。
 彼の舌を吸いながら、絡まって私のか彼のかもう区別が付かない唾液をこそぐように口を離していく。
 舌先を手放す際にちゅぽんと音を立て、すぐさま彼の首筋に唇を這わす。
 ちゅっちゅと音を立てて首を登っていき、耳朶に到達すると、彼はいつも通りほんのちょっとだけ震え
て、はぁ、と力無く漏れる吐息が私の耳に当たる。
 この瞬間が大好きだ。本当に可愛くて、絶対誰にも渡したくないと思う。
 きっと誰も欲しがらない、ただのガノタなのにね。
 耳の中に尖らせた舌先を入れると足が震えだして、座っていた場所が硬くなり私のお尻を持ち上げようとする。
 すでに準備を整えた彼が愛おしくて、もう一度キスをしようと耳朶から口を離すと
「ぶっ」
 そうだった。お互い落書きだらけの顔だった。
「ヒロの顔……ひゃはははは」
「おまえの顔だって……くくくくっ」
 二人で笑い合っているうちに、彼が硬さを失っていくのを感じる。
 すこし寂しい。
「顔洗ってさ……続きしよっか」
 私は頷いて軽いキスをした。

276:落書き  6/12
07/12/16 12:51:45 CYOy6Ipw
 服を脱ぎ、この部屋に相応しく狭いバスルームに二人で入る。
 私はそこで初めて鏡を、落書きされた自分の顔見た。
 案の定額には「中」と書かれており、右の頬には「バカ」の文字。
 そして左の頬には「オレの」と書かれていた。
 ああ、参った。これだからこの男は油断ならない。久しぶりにキた。ずっきゅぅーんだ。
 鼻の下にバカボンパパのような髭まで書かれていたが、それはまあ良いよ。
 どうしようもなく昂ぶった気持ちは、私の隣で「まじオバQじゃんこれ」なんて言ってる男にぶつける事にする。
 まだお湯も浴びずに肌寒さで全身鳥肌状態のまま抱きついてやる。
 ぎゅーの刑だ。
「なになに、どうした。まずシャワー浴びようよ」
 いけしゃあしゃあと、どうした、だって?なんなんだこの色男め。
 相手の顔にどれだけ面白い落書きをしようかって戦いの最中、お前は私の顔に「オレの」なんて書いたんだぞ。
 相撲の取り組みを終えて、控え室でまわしを取ったら、中に対戦相手からのラブレターがねじ込まれていた、
みたいなもんじゃないか。ウホッ やな喩え。
 あーもうどうでも良い。とにかくキスさせろ。
 むちゅーっと唇を押しつけて、舌で無理矢理に彼の口をこじ開ける。
 舌を入れたまま大好きと言ってみるが
「あいふひ」
 としか聞こえない。まぁ、伝われば良いのよ。

277:落書き  7/12
07/12/16 12:52:16 CYOy6Ipw
 胸に彼の手が触れる。下からむにっと持ち上げられ、大きい手の平に包まれる。
 あ、少しだけはみ出す感じね。そんなに小さくはないから。
 むにゅっと掴まれたまま人差し指と中指で先っちょを摘まれると、表面じゃなく、胸の中をぎゅーっと
されてるような気分になる。
「すっげぴんこ立ち」
 違う。寒いからだ。
 でも別に良い。私がもうバリバリに感じて発情してると彼が勘違いして、それで燃え上がってくれるなら、
訂正する事に意味なんか無い。
 私も彼のに手を伸ばして、お返しに言ってやる。
「ヒロもぴんこ立ち」
 彼も恥ずかしがる事無く、うむ。なんて言ってる。
 でも目が合うとやっぱりお互い落書き顔。
 とりあえず顔洗っちゃおうか、とクレンジングオイルを彼の手に絞り出す。
「これ、普通に顔洗うみたいにしていいの?」
「うん。あまり目をぎゅーっとつむってると……あ、大丈夫か、目の回り描いてないから」
 言うが早いか、彼はオイルの付いた両手の平で顔をごしごしと擦りだした。
「なんかぬるぬるだな、これ」
「いやまぁ、オイルだし、そりゃぬるぬるでしょ」
 と答えてひらめいた。けけけ。
 私は自分の手に必要以上のクレンジングオイルを絞り出し、しゃがみ込んで彼のを握った。
 オイルまみれで目が開けられない彼を犯してるような気分。

278:落書き  8/12
07/12/16 12:53:03 CYOy6Ipw
「なっ……何してんの」
 彼は半笑いで言うが、語尾は僅かに色っぽい。
 いけるっぽいね、これ。
「ぬるぬるで気持ちいくない?」
 私はそれ全体にオイルを塗り広げてから右手できゅっと握り、ゆっくりと上下に扱き始めた。
「やばい、気持ちいいけど、目ぇあけらんないからなんか怖い」
 怖いとは言ってるけど、まだ声が笑ってる。それに少し喜んでるっぽい。
 親指の腹で先っちょをくるくると刺激し、左手でたまたまさんを下から撫でてみた。
「あ……」
 彼は肩を震わせ、色っぽい声を漏らした。
 これだ。
「たまたまさん気持ちいい?」
 おっと、我ながら意外と大胆。滅多にこんな事言わないのに。
「ん……。すごい良い。足震えてきた」
 ほんとだ。太股あたりがふるふるしてて切なそう。
 透明なのもいっぱい出てる。
 色々と撫で方を試してみたが、触れるか触れないかくらいでたまたまさんを撫でると足の震えが大きくなるみたい。
「んっ…… ケイ……が、我慢出来なく…なっちゃうよ」
 でた、『なっちゃうよ』。攻められて気持ちが昂ぶってくると、彼はちょっと乙女モードに入る。
 『なっちゃうよ』とか『もっとして』とか、そんな言葉が多くなるのだ。
 愛い奴め。

279:落書き  9/12
07/12/16 12:53:53 CYOy6Ipw
 そんな可愛い乙女の先っちょを舐めてあげる。
 鈴口をちょんちょんと舌先で突っついて、傘の部分をくるーっとなぞる。
 オイルと彼のが混じり合って変な味。
「あ……んっ……。い、いくかも」
 かもって何よ。
 彼の言葉通り、左手で撫でていたたまたまさんがくぅーっと上がっていって、限界付近だと教えてくれる。
「うん? ヒロくんいっちゃうの?」
 わざと作った甘ったるい声で子供に話しかけるように言ってから、私は彼の亀頭をぱくっとくわえ込んだ。
 歯を当てないように注意しながら、口の中で彼を撫で回す。
 先端から溢れるおつゆを舌で亀頭全体に塗り込めるよう愛撫し、一旦口を離すと舌全体を密着させるよう
にして根本からゆっくり舐めあげる。
 彼はこの攻撃に弱い。
 お尻にきゅっと力が入り、舌の上の彼がぴくっと跳ねた。
 逃がさないわよ、ともう一度口の中へご招待し、括れた部分をチロチロと撫でる。
「んっ、いく」
 と切ない声の後に、口の中の彼はぴくんぴくんと痙攣しながら、精液を放出した。
 このまま飲んでしまっても良いかな、とも思ったが、毎回それを期待されては困るのでやめておく。
 排水溝に向かって、音を出さないよう気をつけつつ口の中の精液を吐き出した。
 ぺっぺ、なんて音を立てたら、いくら彼でもきっと良い気はしないだろう。
 シャワーヘッドをフックから取り、蛇口をひねってお湯を出す。
「流すよー」
 手で湯温を確かめてから、彼の顔を流してあげる。
「ヒロ……、気持ちよかった?」
 やっと目を開けた彼にちょっと色っぽい声で聞いてみる。が
「うはっ、俺こんな顔した奴にしゃぶられていっちまったのか」
 笑いながら酷い返事。
 ……吐き出さずに口移ししてやりゃ良かったかな。

280:落書き  10/12
07/12/16 12:54:36 CYOy6Ipw
「すぐいっちゃったクセにぃ」
 少し語尾を伸ばして拗ねましたよのサイン。我ながらきもいが、コイツの前だから少しくらいかわいこ
ぶっても良いだろう。
 さして慌てもぜずに、気持ちよかったよ、と私の背中を抱きしめてフォローする彼を無視してシャワーを
フックに戻し、自分の顔を洗い始める。
 目の周りを丁寧に洗っていると、ものすごくぬるぬるしたものが内腿に触れて、背中がぞくっとした。
 それが彼の指だとわかるまで3秒くらい掛かったと思う。
 先刻の仕返しかお返しか純粋なスケベ心かはわからないが、彼の悪戯が始まったらしい。
 毛の部分を撫でられてシャワシャワと泡立っていく感覚で、彼の指のぬるぬるがボディソープによるものだ
とわかる。
 アッという間に泡は股付近一帯に塗り広げられ、ぬるつく太股を割って彼の手が私に触れる。
 彼のを舐めながら充分に反応していたそこは、大いなる期待を持って彼の指を迎えた。
 別に普通だよね。好きな人のあそこを舐めてたらそうなっちゃうもんだよね。
 意地悪な言葉に拗ねたふりをしていた私は出来るだけ声を押し殺してやろうと我慢していたが、一番敏感な
突起に指が到達した瞬間に
「んっ……あっ……」
 簡単に負けてしまった。我ながら情けない。でも気持ちいい。
「気持ちいい?」
 小声で聞いてくる彼の声が頭の中でぐわんぐわん響く。
 元々風呂場に居るんだから、多少エコーの掛かった声なのかもしれないが、目を開けられない状況で与えら
れる気持ちよさが、私の耳にカラオケマイク並のエフェクト機能をもたらしている。
「気持ちよくない?」
 返答を待ちきれない彼は片手を私の胸に当てて来た。
 それはまずいって、そんなぬるぬるの手で触られたら1秒掛からずにツンツンになる自信あるって。
 あっ――ほらね……。
「気持ちよくない?なんかアッという間に乳首立ったけど」
 訊きながら彼は、ぬるぬるの指で乳首をゆっくりと緩く摘んではつるんと逃がす攻撃を繰り返していた。
「あ…んっ……気持ちいい…よ」
 もう足は一寸前の彼以上に震えてる。後ろから支えてくれてる彼のおかげでやっと立ってられる感じ。
 なのに次の瞬間、彼はシャワーのお湯で泡まみれのそこを流してしまった。

281:落書き  11/12
07/12/16 12:55:08 CYOy6Ipw
 あれ?もうおしまいなの?でもなんで胸の方は流さないの?
 素朴な疑問と少しの残念さを感じている間に、ぬめりを失った指が再び私のそこに触れた。
 さっきまでやたら攻め立てていた場所よりもうちょっと下の、入り口付近に近づく。
 恥ずかしい事に表面の泡を流されても中はまだ自前のぬるぬるでいっぱいになっていて、私は彼の侵入を
簡単に許してしまった。
 付き合い始めの頃に洗いっこをしてて、石鹸で中まで洗われると後でぴりぴりするから、と彼の悪戯を諫
めた事があったのを思い出した。
 ああ、この人は私が言った事をちゃんと憶えてくれてるんだ、と嬉しくなってしまう。
 やっぱり単純なんだな、私って。
 なんて、約1年前のエピソードでまったりした気分に浸る暇もなく、彼は私の中で指をくいっと曲げて
最近開発されてしまったポイントをくにくにと刺激しだした。
 指を曲げたまま引っかけるように往復されて、真っ暗なはずの目の前がどんどん白く霞んでいく。
「目かくしされてるみたいだろ?」
「あっ、あっ、んっ……あふっ」
 耳元で囁かれるが、もう返事なんか出来ない。
「可愛いよ、ケイ」
 きっとこういう時の可愛いって言葉は信用してはいけないんだと思う。
 乱れてる様子を見て「そそるぜ」とか「エロいな」って言葉を聞こえの良い「可愛い」に置き換えてるだ
けだと……頭じゃ理解してるんだけどね。
 理解してても、さっき思い出したエピソードや頬に書かれた「オレの」のおかげで私は好き好きモードに
入っちゃってるし、乳首は相変わらずぬるぬるの指でぴんこ立ちにされたまんまだし、目が開けられなくて
なんだか普段よりイケナイ事してるような感覚だし、そこで「可愛いよ」なんて言われたらもう、ね。
「ああっ、だめっ……だめ、もうっ……」
 なんとか言葉を絞り出した私に
「いいよ」
 と答えた彼は、ほらいけっ、と言わんばかりに私の右耳をついっと舐めあげた。
「ああっ…いっ、いくっ……ああああっ」
 舐められた耳から右の乳首まで一気に鳥肌が立つような感覚に襲われ、絶頂を迎える。

282:落書き  12/12
07/12/16 12:58:54 CYOy6Ipw
「ああっ……ああっ……ああっ」
 一定のリズムであそこが痙攣してるような感覚が、目を開けずとも自分の身体が今どうなっているのかを
解らせる。
 くじらさん状態。
 曲げた指で攻められると、こうなってしまう。
 きっと彼の手には生温かい飛沫がたくさん掛かっているんだろう。気持ちいいけど非常に恥ずかしい。
「んー、可愛かった」
 痙攣が収まるのを見届けた彼が頬にキスをくれた。
 まだオイル流してないのに。早く目を開けたい。
「ほれ、流すよー」
 という言葉の前にちゅぽという音が聞こえた。
 嬉しさと恥ずかしさで一気に顔が熱くなる………それは舐めちゃだめって言ってるのに。
 オイルとボディソープを流してもらって、数分ぶりに光を得た私は、シャワーヘッドを持ってえっち
くさい笑みを浮かべたままのヒロの唇に思い切りえっちなキスをした。
 好き好きモードをなめるなよ、こんなんじゃまだ満足しないんだからね。
 私は先に言われてしまう前にどうしても自分から言いたかった言葉を彼に伝える。
「ベッド行って続きしよっ」

 ―終―

283:名無しさん@ピンキー
07/12/16 20:46:33 JMhgMX/5
すごく、いい。

こういう、大きな仕掛け無しなのに
丁寧に読ませるもの書ける人、尊敬する

284:名無しさん@ピンキー
07/12/16 23:34:00 lNLdtDYl
GJ!!萌えた!

285:名無しさん@ピンキー
07/12/17 13:51:54 m1PdtUI7
GJ!書き慣れてるって感じがしました

いろんなタイプのものが読めて嬉しい
職人さんたちありがとうございますぅ

286:名無しさん@ピンキー
07/12/17 15:37:47 JsIQI89o
>くじらさん状態
いい呼び方だなー、ほのぼのしますな。

左ほっぺの落書きもステキです。
いちゃいちゃも、えっちも、女性が受け身一辺倒じゃないのがいい。
面白かった~、ありがとう。GJっす!!

287:270
07/12/17 23:33:18 g9NvcqfY
拙作にご感想をお寄せ頂き、感謝感激です。

二人が可愛く見えるえっちを目指して書いてみたので
エロ的には物足りない内容かと思いますが、ほのぼのした空気を感じていただければ幸いです。
こんな短編を書くのに二週間もかかってますw
推敲も何度もやったつもりなのに脱字等ありますねぇ・・・
>>276 2行目 自分の顔見た× 自分の顔を見た○ 等)

またなにか書けたら投稿しに参ります。

288:名無しさん@ピンキー
07/12/18 18:40:10 PHYc8YJi
やっと規制解除の喜びカキコ

377氏、目一杯笑わせていただきました。
純な恋心をへらず口と暴力で武装した二人のやりとりがとにかく可笑しい。
工藤その3と三沢もいいキャラですし、
個人的にツボな水沢と話題にさり気なく出てきた
さくら(彼女)とシロー(叔父)の箇所で思わずニヤリとしましたw
相手が6人増えた由愛子の新作、当然誠司も買ってるでしょうね?

289:名無しさん@ピンキー
07/12/26 17:22:50 LE4/sZ2U
緊急保守

290:名無しさん@ピンキー
07/12/27 01:48:48 KZFHruZD
保守乙!

291:名無しさん@ピンキー
07/12/27 02:11:55 B75lKyk3
>>277
エロもなかなかだけとラブラブっぷりとほのぼのに萌えた。Gj

292:名無しさん@ピンキー
08/01/01 15:21:14 IlSDyGRF
ほしゅ

293:名無しさん@ピンキー
08/01/03 12:22:43 OmgQ2tvG
保守!

294:名無しさん@ピンキー
08/01/07 18:21:03 C78NLWy9
職人さん、お待ちしてます。

295:名無しさん@ピンキー
08/01/11 11:42:17 7ZRb1GfY
保守

296:名無しさん@ピンキー
08/01/14 21:32:29 s0sEvqNW
ほしゅ


297:名無しさん@ピンキー
08/01/18 01:07:45 EKk+Lffb
前スレの◆O8ZJ72Lussさんは
続きを書いてくれないのだろうか?
続きが気になる。

298:名無しさん@ピンキー
08/01/18 01:32:30 Bxa6FGEM
黒澤くんに会いたいなあ…

299:名無しさん@ピンキー
08/01/19 22:59:03 soXB2z61
>>298
ノシ
まあ気長に待とう。

300:名無しさん@ピンキー
08/01/20 02:55:23 ZEs3RXXN
自分も繭子たんの話をまた読みたい

301:名無しさん@ピンキー
08/01/20 09:54:17 aU/gDVcz
カツオ「マ、マスオ兄さんッ太くて大きい。」
マスオ「カツオ君のアナル、すごい締まりだ。」
中島「ワカメたん、ハァハァ。」


302:名無しさん@ピンキー
08/01/20 21:50:19 SaqYn3WR
 _,._
(・д・)…

303:名無しさん@ピンキー
08/01/21 13:14:46 lna2LssF
保守がてら投稿します
携帯からですみません…。



「優、ほんっとごめん!ダッシュで行くから!」
「早く来てよねもー!電車の中で走れっ!」
私は賢に言うだけ言って電話を切った。
賢とは遠距離で、付き合ってもうすぐ1年になる。そして今日が付き合ってから初めての賢の誕生日。
…なのにヤツは寝坊したと言うのだ。
こっちへ来るのに4、5時間はかかるというのに、賢が起きたのがたった今。こっちへ着く頃にはもう夜だろう。私は朝からバイトで、モーニングコールできなかったから気にはなってたけど…見事にやってくれた。
(お昼からデートしたかったのに…こんなのエッチだけになっちゃうじゃん)

遠距離でなかなか会えないから、会うときはデートの後にホテルでいちゃいちゃするのがお決まりのコースだ。それは嫌いじゃないけど…むしろスキンシップは大好きなんだけど。
(賢がすぐ触ってきたりするから、なんっか満足できないんだよね…)
ほんとは、ホテルではまったりとデートの話をしながらちゅーしたり抱っこしてもらって、気分が乗ってきてからエッチしたいのだ。
でも彼は普段あんまり会えないし、思春期真っ盛りだしで、ちゅーしてたらすぐに手が胸にいったり、色々といじってくる。


304:名無しさん@ピンキー
08/01/21 16:16:21 lna2LssF
それがドキドキするときもあるけど、やっぱり気持ちよくなりたいから、物足りない。

でもお互い初心者で、まだ恥ずかしいのもあって、もっと焦らして濡らして気持ちよくさせてほしいなんて言えない訳で。
それでもいつもは一日中遊んで、気持ちが満たされてる状態だったからそんなに気にしなかった。
(でも今日は、寝坊して遊べなかったから、さっさと手ぇ出してきたらキレる!絶対させてやんない!)
と、女性脳の特異な思考回路で私はよく分からない決意を固めていた。

305:名無しさん@ピンキー
08/01/22 03:44:49 BHme3Rno
紫煙

306:名無しさん@ピンキー
08/01/22 15:43:12 sXQ8+7Zv
男の敬語に萌えるので、色々あさってみたんだけど、
なかなかないねぇ~
「恋するたんぽぽ」くらいかな~

307:名無しさん@ピンキー
08/01/25 11:32:11 5lPBLfzQ
このスレ初めてなんですけど、保守がわりに投下してもタイミング的に大丈夫ですか?

携帯からなのと、ちょっと長くて15レス位なんですけど…

308:名無しさん@ピンキー
08/01/25 12:21:33 DE4pak8J
>>307
過疎の村へようこそ。お待ちしておりました。
どうぞどうぞ、遠慮なく。

309:名無しさん@ピンキー
08/01/25 12:52:21 5lPBLfzQ
307です。投下させて頂きます。
改行には気をつけたつもりですが読みにくければすみません。
あまりエロくはないかも

310:週末のパズル 1/15
08/01/25 12:54:43 5lPBLfzQ
 えーっ。ちょっと、そこあたし使ってんですけど。

 ジュースを買いに立ったらその間に場所取られた。有り得ない。
 あたしは構わずカーテンを開けてやった。
「ちょ、テメェ何しやがんだ!」
 慌てて男がパソコンの画面を手をバタバタしながら無かった事のように隠そうとする。
「……それ位じゃ今時誰も驚かないよ」
 わざわざんなとこまで来てエロ画像かよ。ダサッ。
「つうかさ、人が使ってるとこ勝手に開けんじゃねえ!」
「それはこっちのセリフだよ」
 ああ?と男はあたしが指差した椅子の下を見た。
 小振りのバッグが1つ。足下にあるのに気がつかなかったらしい。
「……悪い」
 気まずそうに頭をポリポリと掻いて電源を落とすと席を立って、隣りへ移った。
 あたしは再び席に着こうとする、が、館内放送に仕方なくバッグを手に立ち上がった。
「何だよ、使わねえのかよ」
 さっきの男が顔をしかめてこっちを覗く。
「時間」
 この店―いわゆるネットカフェだが―では9時までしかあたしのような女子高生は
いられない。
「ガキは早く帰れよ」
 男は軽くばいばいと手を振りながら紙コップに口を付ける。
 あたしはそれを見ながらこの後の事を考えていた。
 そして、閉めかけたカーテンに手を掛けてその動きを止めた。
「な、なんだよ!まだ何かあんのか?」
「……ねえ、あんたさ、彼女いないよね?」
 金曜の夜にこんな所でエロ画像見てるんじゃ当然そうだろうけど。
「う、うるせえな。だったら何なんだよ?」
 こいつ、口は悪いけど人は悪くなさそうに見えた。ちょっと無精髭が残念な感じ?
ちゃんと髪も手入れしたらそこそこの見た目だろうに。
 思い切って言ってみた言葉に男は飲み物を噴き出しかけてむせた。
「な…………!?」

 無理も無い。だってあたしが言ったのは……。

「あたしとどっか泊まらない?」


 だって、あたしはその日帰るつもりなんかなかったんだから。


311:週末のパズル 2/15
08/01/25 12:56:20 5lPBLfzQ
 1週間後。

 あいつ……『コージ』はまた居るだろうか?正直期待は出来ない。部屋のパソコンが
壊れたから来ただけだと言っていた。修理が終われば用はない筈だから、あれっきり
でも不思議じゃない。
 メアドも携帯番号も教え合う事はしなかった。聞かれはしたけど、教えなかった。
そんな事したら何だか格好悪い気がして、だから互いに下の名前―それも普段呼ばれ
慣れた愛称位の物だけを教えてあった。それも便宜上の事だから大して意味は成さな
かった筈。

 醒めた1度だけの付き合い。それだけでも良かったのだ。

 あの後コージは戸惑いながらも結局はあたしとラブホに行って、当然セックスした。
 ただ、する前と事後とではあいつの態度はちょっと変わっていた。


『お前……!?』
 苦痛に歪んだ顔と少し汚れてしまったシーツを目にした途端、頭をポリポリ掻いて 
『ごめん……』
と消え入りそうな声で呟いた。
 部屋に入れば当たり前の様に交替でシャワーを浴びてさっさとベッドに入った。
そのまま当たり前の様に始めた行為だったから……それは驚くのも無理はないのかも
しれない。
『なんでお前……!?』
『別に』
 捨てるという事自体にはあたしは正直何の感傷も抱いてはいなかった。ただもっと
こいつがイヤらしいオヤジだったりし馬鹿そうなヤンキーだったりしたらさすがに
そんな事しなかったけど、なんて考えてた。
『家に帰りたくなかったから。誰かが一緒にいてくれたらそれで良かったんだ』
 それが、たまたまあんただっただけだよ。
 そんな風に考えながらただグッタリとベッドに沈んでいたあたしは、気付いたら
コージのされるがままに腕枕されて眠ってしまっていた。
 気恥ずかしくて朝、ばいばいとだけ言って速攻ホテルの前で逃げる様に別れた。


 それから一週間後、またあたしはネカフェにいる。


312:週末のパズル 3/15
08/01/25 12:59:09 5lPBLfzQ
「マナ、か?」
 思わずビクッとして振向いた。この間の様にパソコン周りをうろついて見た。でも
まさか居るかどうか期待半分、諦め半分だったから正直凄い驚いた。
「来たんだ?……てことはまだ直してないんだ?パソコン」
「ん」
 短い返事だけしてコージは空いたブースに座る。
「お前は?」
「別に。……時間まではいるつもりだけど」
「そっか」
 口調はこの間と変わらずぶっきらぼうだった。だけど何故かあたしはちょっとだけ
ホッとしていた。何ていうか、知らない場所でやっと自分の知り合いに会えて安心す
るような感じに似ている。

 会いたかった?まさか!
 1回寝た―大して大事にしていたわけでもない貞操とかいう奴をたまたま渡した
だけの相手に?そんなのダサすぎる。
 
 あたしは両親が互いに不在がちで上手くいっていない、よくある話に乗っかって
しまって週末に1人家にいるのがばからしかったのだ。

 だからあたしが家にいてもいなくても同じなわけで、だったらどうせなら誰かと
一晩位過ごして見たかっただけだったのだ。その最初の相手がたまたまこのコージ
だっただけ。それだけ。

「なあ」
「なに?」
「今日はちゃんと帰るのか?」
「さあ」
 特に何をするわけでもなくパソコンの前に陣取りながら言う。
「だったらまた今夜も俺といるか?」
 ほっぺを指先で掻きながら目線は画面に向けたまま、低く小さな声で呟く。
「……そうする」
答えた途端あたしの手を掴むと立ち上がって、そのまま店を出た。


 またこの間と同じ様に交互にシャワーを浴びてセックスした。
 ただ違ったのは、黙ってさっさと始めてしまった慌ただしくどこかギスギスしたこの
前とは雰囲気が変わった気がした。
「んっ……」
 おざなりだったキスを嫌と言う程浴せられ、時間をかけてあちこち丁寧に撫でられた。
 その後はまた腕枕されて眠って、同じ様に朝には別れた。


313:週末のパズル 4/15
08/01/25 13:00:41 5lPBLfzQ
 翌週も同じ様にそこにコージはいて、同じ様にラブホに行った。

 今度はあたしが先に入ったシャワーの途中でいきなり自分も入って来て、そのまま
押し倒された。
「なん……っ」
 驚く事もままならないうちに唇を塞がれ、ソープの泡で滑る身体を長い指がはい回る。
「あ、ちょっ……」
「……嫌なら、やめるけど」
 そう言いながら後ろから抱き締められ……というよりはがい締めにされた感じで
あたしは身動きが取れないままツルンと乳首の先を摘まれ、思わず
「……は、ああっ」
と声をあげてしまった。
「立ってるじゃんか」
「こっ、これは、寒かったからで……や、んぁっ」
 耳朶の後ろに熱い息が掛かり、そのまま噛まれてぞくぞくした。この間気付いたん
だけど、あたしの弱点だったようだ。
 その上両胸を鷲掴みにされたまま中指で尖端を擦られ、おかしくならない方がどうか
してる。
「……ふ、あぁ、や、だめ、だめ、だっ……あああっ!!」
「よく滑るな」
 右手がいつの間にか下半身に伸びていて、ぬるぬるとした感触とカッと火照りだした
そこの熱を帯びた感覚にあたしは思わず膝が震えた。
「辛いか?」
 必死で頭を縦に振ると、コージは立ててあったマットを敷いてその上に座り、あたし
を膝の上にまた後ろ向きにしてから乗せた。
「泡とお前のとどっちだろうな」
 もうあたしのあそこは音を立てて濡れまくっている。
「声出せ」
「そんなやだぁ……っ、あ、ああっ」
「やめたくないだろ?」
「…………っ」
「俺もやめたくないから」
 肩に乗せられた横顔をチラッと見る。切れ長の目がSっぽい雰囲気を醸し出してる。
だけど決して乱暴な事はやらない。むしろ、回を重ねる毎に優しくなる気がする。
 愛撫は止まず、風呂場にやらしい水音とあたしの喘ぎ、コージの息遣いが響き渡る。
「あ、ーーーー……っ!!!!」

 その日、初めてあたしは、イク感覚を知った。


314:週末のパズル 5/15
08/01/25 13:02:19 5lPBLfzQ
 全てが済んでもまだぼうっとマットに沈んでいたあたしを、コージは抱き抱えて
起こしてくれた。そのまま何となく流されるままに身体を洗われて、髪を洗うのも
手伝ってくれた。
 気恥ずかしいけど嫌じゃなくて。だから、あたしも背中を流してコージの頭を洗って
あげた。
 やだ、なんか。
 あたし笑ってる。
「これって気持ちいい?」
 指先でマッサージするように地肌を洗ってやると
「うん」
と心なしか弾んだ声が聞こえた気がした。
「……また、頼むな」
「いいよ」
 またって事はこの次もあるって事。約束したんだあたし達……初めての約束。
 どこまで続くのだろう?正直、初めてのあの時で終わるもんだと何の疑問も持たな
かったのが嘘の様だ。

 次を決めてしまったら、切れてしまう事を考えるのが恐い。あたしはどうしてしま
ったんだろう?

 2人で広い湯船に向かい合わせで膝を立てて漬かった。改めてじっくり見合うと、
今更何だか気恥ずかしい。
「なあ、歳聞いていいか?」
「…………17歳。高2。あんたは?」
「ハタチ。××大の2年」
 そういやあたし達は互いの事ほんとに知らない。
「17か、本当はこれってやばいんだろうなぁ?」
「さあ」
 コージは頭を軽く掻きながらあたしを眺めている。
「別にいいじゃん。いちいち誰も聞きやしないよ」
「だな」
 本当に今更。そんなの最初に考える事じゃん?だけど、だからって会うのやめよう
かと今更思いもしなかったのも事実。
 頬から首筋まで自然にコージの指があたしに触れる。長くて綺麗だな、といつも心の
中で思いながらそれを眺めている。
 代わりにあたしは無精髭を何となく撫でてみる。と、引き寄せられるように唇が軽く
触れ合うだけのキスをした。
「……ちょっとチクチクすんね」
「悪い」
 でも嫌いじゃなかった。


 あたしはコージの事を知らない。コージもあたしを知らない。それでも良かった。
 でもこのままだとあたし達はどうなるのだろう?

 いわゆるセフレ。それでいいのかもしれない。


315:週末のパズル 6/15
08/01/25 13:03:55 5lPBLfzQ
 今夜は迷っていた。
 建物の前まで行ったものの、中に入るのはためらわれた。
 コージは来てるだろうか?最初の時から3週間は経ってるし、パソコンが直ってい
たらもうここには用はないんだ。
 時間はもうすぐ9時になろうとするから、今から中には入れない。仕方ない、今夜は
うちに帰ろう。

「…………待て!」
「きゃっ!?」
 後ろから肩を掴まれて驚いて振向いた。
「なんだよ。もう来ねえのかと思っただろうが」
息を切らして店から飛び出して来たのは奴だった。
「…………うん、ごめん」
 何で?あれ、何であたし謝ってんの?
「具合でも悪かったのか」
「ううん」
「そっか」
 心配してくれた?……まさかね。
「行くか」
 自転車を取って来ると、いつもの様に後ろに乗れと促された。だけどあたしは動か
なかった。
「ごめん……」
 まさかそんな返事が返って来るとは思わなかったんだろう。切れ長の目がかすかに
開いた気がした。
「どうか、したのか?」
「今日はダメなんだ」
 行きたくても一緒に行けない。何故なら……。
「あたし今日できないから」
「は?」
「だから、昨日から、始まっちゃったから、その……」
 最初は首を捻っていたコージは徐々に理解したようで、途中から
「あ、ああ、なるほどな。そっか」
頭を掻きながら
「いや、いいんだ、うん。そっか」
って心なしか顔を赤らめた気がした。
「……んじゃ、送ってやる。乗れよ」
「いいよ」
「気にすんな。いいから、ほら。こんな時間に1人で帰せるかよ」
 確かにこんな時間に来た道を戻るのは賢いとは言えなかった。あたしはコージの言う
事を聞くことにした。

 ダウンのフードのファーの感触がくすぐったいけど、奴の背中は広くて暖かいと思
った。落ちないようになんて言い訳しながら掴まる手に力がこもる。
「……良かった」
ふいにコージが呟いた。



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