おんなのこでも感じるえっちな小説8at EROPARO
おんなのこでも感じるえっちな小説8 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
07/09/06 23:19:36 Y66cgwqm
最初は本屋で売ってる小説とかについても語り合っていたな

51:名無しさん@ピンキー
07/09/11 21:14:26 XLSI8iB7
職人さんカモーン!!age

52:名無しさん@ピンキー
07/09/13 22:24:07 EdZaDgbK
職人さんを待ちつつ雑談

商業でもよければ、
新潮社「花宵道中」宮木あや子著 をオススメしてみる
R-18文学賞受賞作を含む短編集
吉原遊女 エロイというより切ないっす

53:名無しさん@ピンキー
07/09/22 13:00:47 xh6lPCUk
保守

54:名無しさん@ピンキー
07/09/24 16:35:18 bq/N0Hom
えへ

55:名無しさん@ピンキー
07/09/25 04:24:26 L0CVkHOF
質問。
ここって男女ラブラブしか投下しちゃ駄目なん?
陵辱とか輪姦なのに前戯はみっちりとか、
クンニしまくりとか、
そういう意味の女の子向けなSSは駄目?

あとファンタジーとか書いていい?
触手とか。

56:名無しさん@ピンキー
07/09/25 15:45:59 qjxtjH/h
好みが分かれそうなものでも、注意書きがあれば問題ないよ派

57:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:20:37 F2pGmsyC
個人的には、女の子向け触手FTとか、読みてぇぇぇと思ったが、
よく考えたらジャンルスレもあるんだよなー。

注意書き付きでココに投下するもヨシ、
触手スレでもおk
お好きなほうでどうぞ。

触手・怪物に犯されるSS 14匹目
スレリンク(eroparo板)

58:名無しさん@ピンキー
07/09/25 21:58:45 JALPdcRX
過去にも陵辱ものはあったけど
ハードなものには反発が大きかったかな。

>前戯はみっちりとか、クンニしまくりとか、
だからといって、作品中の女が感じてる=女向け
になるわけでもないからw
心配なら過去の作品を読んで空気を掴んだらどうかな。
どっちにしても注意書きは必要。

59:名無しさん@ピンキー
07/09/25 23:16:02 A9FVuk0p
URLリンク(avec-toi.net)
アンケートだと陵辱ファンもいるようです。
ハンドルネームや作品名入れてもらえば、
嫌いな人がスルーできて、好きな人が気持ちよく読めて、みんなしあわせ。

60:名無しさん@ピンキー
07/09/27 09:12:44 h3T4CiSD
陵辱輪姦ありなら、できれば感想にも対象SSのタイトル入れて欲しいと思ってる。
本編はスルーできても、内容の特定の部分やアンカーを示して感想つける人がいるから
嫌な内容でも完全スルー不可能で、気分悪くさせられる。

61:名無しさん@ピンキー
07/09/27 18:00:19 7JyOkvn+
そこまで強いるのはどうかとw

62:名無しさん@ピンキー
07/09/28 15:17:20 odFLz4Ay
そこまでは我侭だと思うなぁ。

63:名無しさん@ピンキー
07/09/28 17:45:54 ktBO8M0p
凌辱ものっていっても、多少Mっ気のある男性経験有りな女性が~、ていうのと
うら若い何も知らないおじょーさんがいきなり拉致監禁強姦ていうのとじゃ
また受け止め方も違ってくるなあ。自分の場合。
だから注意書きはお願いしたい。

あんまりレイプから始まる恋ってのは肌に合わないんだけど、
以前読んだ小説は、ハードな強姦シーンもあったけどヒロインが芯の強い子で
ラストシーンに感動して涙したこともあったし、こればかりはケースバイケースだ。


ところで私は絶倫でテクニシャンでSっ気ありなタイプもいいけど
ヘタレな男というのも結構好きですw
最近読んだやつで、女性があまりにスペック高くて怖気づいて最初は上手く
いたせなかったが、その後熱心に研究しその道を極め女性の愛を獲得して
エンドだったのが意外性あって面白かった。
他スレのシリーズもので病弱貧弱な男にふらっといってしまった美少女が
でてきたけどあれも萌えた。

64:名無しさん@ピンキー
07/09/29 06:44:13 SXKn4EaL
年下がどうのヘタレがどうのってのもいいけど
普段Sっ気持ちの男が恋人に犯されて戸惑うようなのをリクしたいw

あと>>60に一票入れる。自分もそういうの苦手だし
投下されたこと自体なかったことにしたいのが本音

65:名無しさん@ピンキー
07/09/29 08:54:12 llEDZjfi
確かに作品中の女性が感じてればいいってもんじゃないよね
読み手によっていろんな受けとめ方があるし…
注意書きは必須

66:名無しさん@ピンキー
07/09/29 13:21:56 G9s5al9V
和姦が一番。
「レイプから始まる恋愛」ものって最近多いっぽいけど、何が良いのかさっぱりわからん。
赤の他人に犯される所妄想する趣味もないしねー

67:377
07/09/29 18:45:34 lMcITbtg
そんな訳で、今までの流れを受けて投下します。
テーマは陵辱ですが嫌いな方でもご安心いただける内容を
目指しました。



後、横溝正史は全体的にエロいと思います。

68:陵辱談義 1/8
07/09/29 18:47:36 lMcITbtg

「つまりアレでしょ?陵辱って嫌な事しながら無理矢理エッチするって事でしょ?だから
さ、僕がミカンちゃんを陵辱するっていうのは、すじこを強引に食べさせながら寝起きに
無理にやっちゃうという事かい?」
 
 …知ってました。
 わかってたし、理解もしていた。だけどやっぱり痛感する。
「バカだろ、アンタ」
 言うのも辛いわ。馬鹿馬鹿し過ぎて。
「ほらさ、僕はミカンちゃんが大好きだけど、そういう性?の探求者でもあるからさ。エ
ロスクエストっすよ。だからさ、今から鮮魚センター行ってすじこ買って来るからさ。ち
ょっとお昼寝しててよ」
 …妙に興奮しながら、財布を捜そうとする。本気かこの馬鹿。

「…別にさ、それって私がバナナさんの買って来た新作ゲームを勝手に始めつつ今読んで
る小説の犯人バラしながらケツを掘る、でもいいんじゃないですか?あ、犯人は実は角田
の生き別れの弟だった大田ですよ。凶器はプラスドライバーです」
 
 ぴた、と、バナナさんの動きが止まる。中腰で止まって、しんどくないのかな。
 犯人云々は物凄いマナー違反だと思うけど、この間夜中にトイレで白い仮面被ってセー
ラー服着て驚かしてくれたから、これであいこだ。

「ぶぱきゅるはおわーーーっ!?」 

 なんか、きっと自分でもよくわからないであろう奇声をあげるバナナさん。あ、これが
陵辱って奴か。この後バナナさんはレイプ眼になって壊れてしまうのかしら。
「さて、一緒に鮮魚センター行きましょう。私、今日は鰯のマリネ作ります。この間テレ
ビでやっていて、実際作ったらすっごく美味しかったんですよー」
 私も鞄を持って笑い掛ける。一応、恋人であるバナナさんとお買い物。今日は久し振り
にお泊りだから、色々してあげたい。陵辱は勘弁だけど。


69:陵辱談義 2/8
07/09/29 18:49:45 lMcITbtg
 バナナさん、と言うが、それが本名ではない。本名…の中にバナナが入ってるからそう
呼ばれているだけだ。狙った訳では無いだろう。相葉七生さんは、こんなんでも私の3つ
上。ワガママで基本馬鹿でとても馬鹿な人だ。なんでこんなんと付き合う羽目になったの
やら。いや、別にいいんだけどさ。バナナさんが私じゃなきゃやだって咽び泣くから折れ
てやったんだけど。
 因みに私もどこぞの新聞のマンガの子みたいに本名がミカンな訳ではない。バナナさん
と同じく名前が速水カンナ、というだけだ。昔からのあだ名である。

「ほらほら、バナナさん鮮魚センター行きましょう。レタスも買わなきゃ。確かお酢…」
「うわあああああああああああああっ!!ミカンちゃんなんか、陵辱してやるー!!」
 本気で泣きながら、私の事を押し倒す。
「布団も敷かないでここでしてやる!」
「いや、それってただ堪え性が無いだけでしょ?」
 陵辱とは何か違うような気がして言ってみる。と、バナナさんは一瞬言葉に詰まり、で
もすぐに気を取り直して。
「じゃあ、その上服脱がさないでやってやる!」
「それはただの着衣プレイじゃないすか?」
「っ、じゃあ、こうやってこうやって――ほーら、身動き出来ないでしょ?」
 なんか苦し紛れにそこらのコードで私の手首を縛る。あ、これACアダプタだ。細っ。
「いやー…ソフトSMでしょこれ?そんな趣味もあったんですか?」
 口ごたえ、というよりは本当に疑問に思ったので、突っ込む。だって、やっぱりちょっ
と陵辱とはズレてる気がするんだもん…
「じゃあやっちゃうよ!そんでカメラとかムービー撮って…」
「だから、それは所謂ハメ撮りでしょ?」
「じゃあ、叩いて悪口言ってやる!」
「余裕でDVじゃん!」
「やだ!なんで僕が大好きな女の子をドメスティックバイオレスらなきゃいけないんだ
よ!何を考えてんのさ!!」
 …激昂する。いや、自分で言って自分で否定してますよこのバカ。
 肩で息をして、困ったような顔をして、そして、一言。


70:陵辱談義 3/8
07/09/29 18:52:02 lMcITbtg
「…陵辱って、どうすればいいの?」
「知りません」
 緩く縛られていたので、自分で解く。私に乗っかったまま、元気なさ気に溜息をつく。
「第一、陵辱なんて…なんでそんな事したがるんですか」
「いや…だって、なんか、こう…こう」
 相変わらず、説明どころか日本語にさえなっていない。どうせなんかそういう本でも見たんだろうな。
「…はいはい、もういいですから、鮮魚センター行きましょう。自分に合わない事や理解
も出来ていない事をするなんて、時間の無駄です」
 頭を撫でて、未だ私にのしかかって説明しようと頑張っているバナナさんをどかそうと
する。けど。

「あー…の、あのさ、陵辱はもういいや。あの、でもさあ」
 なんだかかしこまって顔を近付けて来る。なんだろう?
「ミカンちゃん、あの、その――今日、鮮魚センターやめよ。後でお寿司食べに行こう。
奢るから。だから、あの、ベッドルームに」
「なんでベッドルーム言うんですか、わざわざ」
 そんなの聞いた事無い。妙に腹が立つ。でもお寿司もいいなあ、と思ったので了承する。
それに、私だってずっと、好きな人の下にいたんだから。

「ぬおおーーーーーーっっ!!」
 …物っ凄い気合を込めて、私をお姫さま抱っこする。いや、そんな気遣いいらんし。こ
ういうのスマートにやってくれなきゃ、迷惑なだけなんだけど。逆に気ぃ使うし。
 よたよたと寝室に向かって、私をベッドに寝かせる。ぜーはー荒い息をついて、腕ぷる
ぷる震えさして、どや、とばかりに笑う。うん、死ぬほどかっこ悪い。
「バナナさん、もう体力全消費してません?」
「だ、大丈夫だと思いたい!」
 そう言って、倒れ込むように私を押し倒す。暫く自分も倒れたまま、息を整える。よう
やく元気を取り戻したのか。



71:陵辱談義 4/8
07/09/29 18:54:15 lMcITbtg
「やりましょう!」
 と、これまた大きい声で言った。

 鮮魚センター行けば良かった、とちょっと思った。


「バナナさん、陵辱向いてないですよね」
「そうかな…もうどうでもいいや…」
 確実に向いてない。する前に、お互い裸になってまず最初に何分か抱き締めるのが好き
な人に向いているとは到底思えない。何度かお互いにそのまま寝ちゃって朝になった事も。
 ある意味、すげぇ性欲処理の方法だと思う。今日はそうならないみたいだけど。
「性格診断とかしたら、バナナさんってロマンチストになると思うよ」
「いや、実際やったら『あなたはふつうです』って言われたよ」
「…それって、性格診断って言えるの?」
 質問の答えは無しに、バナナさんは私にキスして来た。電気も消してあるのに微妙に明
るい中でエッチするのって、そういえば初めてかもしれない。なんだか物凄く恥ずかしい。
 バナナさんの身体が全部見えるのも照れ臭いし、私もバナナさんに全部見えられている
のも、考えただけで体温が上がる。
「ミカンちゃんが今考えてる事、わかった」
 …そりゃ、わかるだろうなあ、と思った。
「ちょっと眠くなっちゃったでしょ。でも今日はダメー。寝かさないよ」
 全然違った。いや、ちょっと前なら正解だけど。
 バナナさんはニマニマしながらもっかいキスして、唇を付けたまま、下がっていく。
 身体中にキスされて、それが全部見えて、私は恥ずかしくてぎゅっと眼を瞑ってしまう。
でも、唇が徐々に下に行くに連れて、次はどこに触れられるのか予想してしまう分、まだ
眼は開いていた方がいいのかもしれない、とも思えた。
「――っ!」
 来る、と思ったのに、急にそこだけ指で触れられた。だからびっくりしたような声も出
てしまう。でも、びっくりしたのはそれだけじゃない。
「あー、ミカンちゃんもうすっげぇ濡れてる。ほら、指楽々入っちゃう」


72:陵辱談義 5/8
07/09/29 18:56:33 lMcITbtg
 凄く楽しそうな声で笑う。指も、本当に簡単に受け入れてしまう。嘘、なんで?
「や…やだやだ、ちょ、バナナさん、待って待って」
 ベッドの上で、バナナさんから逃げようとする。けど、すぐ壁にぶつかってしまう。て
いうかこれ、初めての時と似たような状況かもしれない。
「バナナさん――っ」
 そんな状況だから、あっという間に追い詰められる。壁に背を着けて座っていたような
状態で、簡単に太腿掴まれて、大開脚させられる。
「しないけどさ、生ってダメ?」
「…いいって言ったらするんですか?」
「しないよ。超怖い」
 色んな意味でか。判断に困るような事言って。
「万が一の事があって、ミカンちゃん悲しませたくないしね」
 取って付けたような事を言いながら、うわ、こんなはっきり見るの初めて…バナナさん、
中には入れないように擦り付けて来る。凄く熱い…
「…陵辱ってーと…やっぱ生なのかな…後先考えないでやっちまえ精神…?」
「まだその話っすか!?さっきもういいって言ってたのに…」
 ていうか、陵辱って単語、今までどんだけ出たんだろう。いい加減、それがなんだか別
の意味を持つ新手の一発ギャグに思えて来る。ベッド脇に手を伸ばして、近藤さんを取り
出す。そういえば、ちゃんと着けてる所もよく見た事が無い。じー、と見ている私に気付
いたのか。
「やだミカンちゃん恥ずかしい、僕の事陵辱しないでよ」
「…いや、これはただの視姦プレイじゃ」
 もう、笑い声になってしまう。なんだこれ。もう単語出るだけで面白い。バナナさんも
わかって言ってるだろ。
 手際良く装着して、にんまり笑う。座ったまま、少しだけ腰を浮かされて、そのまま私
の中に入って来る。体勢が体勢だけに、少しきつい。
「ん…んー…」
 少し身を反らす。壁に頭が当たる。自然と涙が出て来て、少し苦しいような気がした。
「ミカンちゃん…ミカンちゃん」
 私は壁に肩を預け、バナナさんは私の中をゆっくりと行き来する。


73:陵辱談義 6/8
07/09/29 18:59:23 sbWPLg8e
 本当に、知らない間にそんなに濡れていたのか、動く度に音が耳に響く。上を向いて声
にならない声を吐き出していたけど、不意に下を向きたくなった。けど、すぐ後悔した。
「あ、や――や、だ」
 私と、バナナさんが繋がってるとこ、丸見えだった。
 結構な速度で、バナナさんのが出入りして、音が結構大きくて、なんか、凄くぬらぬら
してて、それを見た瞬間、勝手に奥まで入ったのをぎゅう、と、締め付けて、それが凄く
気持ち良くて――
「あ、あ、あああ…」
 小刻みに声が出る。バナナさんが、私が締め付けてしまうのに合わせて、動く。どうし
よう、見たくないのに眼が釘付けになる。だって、最初、痛くて、入った後も奥の辺りが
しっくり来なくて、暫く痛くて、その後も、痛くなくなるまで我慢する時が多かったのに、
それなのに。
「っ、ば、バナナさんも、見ないで…やだ、やぁ…」
「ん…やだ。だって、僕、これ見るの好き。大好きな子と、僕、ちゃんと繋がって…って、
はぁ。わかるし、すげ、イイ眺めだし」
 言葉が途切れ途切れになりつつ、そんなとんでもない事を言う。
「っ、れに、ミカンちゃんも…コレ、見たらさ、僕の、ぎゅってきつく締めてくれんじゃ
ん?だから、もっと見ろよ」
 薄ら笑いを浮かべて、言う。少しだけ、背中がぞくっとなった。
「…っ、ばかっ…」
 それが、いいだなんて一瞬でも思ったのが恥ずかしくて、私はこれ以上見ないでいいよ
うに、見られないでいいように、バナナさんにもたれ掛かる。
「――わっ!?」
 それは意外だったのか、バナナさんはバランスを崩してしまう。そのまま身体を倒して、
今度は私がバナナさんを押し倒してしまうような恰好になってしまった。
「あ、っ――っ」
 ぷちゃっ、て音がした。同時に、今まで入っていたものが抜けてしまう。私は無意識に
腰を浮かせて、先端をまた入り口にあててしまう。ヌルヌルになったそこは、簡単に受け
入れてしまう。けど、そのまま止まってしまった。
「おっ…ミカンちゃん、入れて。そのまま」


74:陵辱談義 7/8
07/09/29 19:01:53 sbWPLg8e
「ちょっ…やぁ…やだ、手、やめて」
 お尻と、入り口近くのお肉を掴んで、上に押し上げるみたいに力を入れる。あそこが広
がったような感覚を覚えて、大して力も入れずに、するりとバナナさんのものを受け入れ
てしまう。
「んっ…んー…う…っ、あっ?」
「はいはーい。よく出来ました」
 少し身体を起こして、ぺしぺし、とお尻を叩く。かと思えば、そのままお尻を撫で回す。
なんか、遊ばれてるような気分になってしまう。
「ほれ、ミカンちゃん動いてー」
 それなのに、何故か従わなければいけないような気がしてしまい、腰を浮かせる。さっ
きのバナナさんみたいに、自分で動いて行き来させる。音が、また耳に響く。時折バナナ
さんも動いて、その度に背中に電気が走ったみたいになる。
 我を忘れたみたいに腰を動かして、私は快感を貪ろうとする。バナナさんも同じみたい
で、少しだけ乱暴に私を抱いた。
 自分勝手に、自分が気持ちよくなるように自分から動いていたせいか、限界はすぐにや
って来た。一瞬だけ、本当に自分が何をしているかもわからなくなって、そのまま押し寄
せて来た快楽に身を任せる。自分じゃないみたいな声が出て、身体中の力が抜けて、私は
半ば気を失うようにバナナさんの上に崩れ落ちた。



「あああああ、えがったぁあああ…」
 …オッサン丸出しだ…
 なんか、全ての余韻をぶち壊してくれるような感想を漏らすバナナさん。私は何故か無
性に甘えたくなって、布団の中でベタベタしている。抱っこしてもらって、嬉しがってい
る自分がいて、なんだか気恥ずかしい。
 でも、不意にとある事を思い出して、にっこにこ笑ってるバナナさんの顔を見た。

「…バナナさん、あの…」
「ん?」


75:陵辱談義 8/8
07/09/29 19:03:55 sbWPLg8e
 その笑顔を見ると、さっきのが少しだけ嘘みたいに思えて来る。
「さっき、あの、途中、ちょっとだけ陵辱っぽかった…」
 なんだか、言ってる事も、やってる事も邪悪なお兄さんみたいだった。そいで、私もそ
れが、あんまり嫌じゃなかったような気がした。
「ウソ!マジで?やったあ!」 
 …なんか知らないけど、喜ぶバナナさん。なんで?
「なんで喜ぶんですか?」
「…さあ」
 改めて言われると我に返ってしまうのか、バナナさんも困ったような顔になった。私も
似たようなものだろう。そして、同時にあくびをする。

「ちょっと、寝ようか。起きたらお寿司ね。お寿司超楽しみ」
「…はい」
 頷いて、眼を閉じる。
 妙に疲れてしまったけど、なんだかとても満たされた気分で、私とバナナさんは一寝入
りする事にした。日の高い内にする昼寝は、なんだかとても贅沢な気分だった。





「…あれ?ミカンちゃんなんでその皿取るの?嫌いじゃなかったっけ?」
 不思議そうな顔をしているバナナさん。私は自分の取った皿を見て。
「あ、すじこは嫌いですけど、イクラは好きなんです。バナナさんこそ、何でさっきから
デザートばっか食べてるんですか?」
 バナナさんの前にはゼリーとかアイスとかムースのお皿がたくさん。
「いや、別に…食べたいなーって…」
「そうですか」
「うん。安心して。後で茶碗蒸しとか唐揚げとか食べるから」
「…寿司食って下さい」
「うん。食べる…あ、なにこれ…マグロの竜田揚げ!?食べる!!」
「あ、私も食べたいです!」


                                                   終


76:377
07/09/29 19:09:41 sbWPLg8e
こんな感じです。
皆が楽しく読める触手モノってどうすれば書けるんでしょうかね。

77:名無しさん@ピンキー
07/09/29 19:43:25 llEDZjfi
うはw
想像してた凌辱モノとはだいぶ違った。これは良いですね。
377氏はすごいです。

78:名無しさん@ピンキー
07/09/29 20:01:37 ItOwZai0
377さんは本当にバカだと思うよw
もちろんほめ言葉ですよ。
触手って時点で駄目な人も多いと思うよ。私だけど。

79:名無しさん@ピンキー
07/09/29 20:38:44 ZRnVpVhr
ワロタwww超GJ!w
触手もの、自分は特にNGでもないから377氏が書くんなら楽しみにしてるー

80:名無しさん@ピンキー
07/09/29 20:40:08 YGH0QDiu
陵辱じゃなければ読めるかも。でも愛ある触手か~
呪いで下半身がタコやイカになってしまったイケメンとの切ないハートフルコメディとか?

81:名無しさん@ピンキー
07/09/29 20:57:13 usFx8Fp4
これは凌辱モノじゃなくて、凌辱「ネタ」ですね。
愛とおバカに満ち溢れていてGJでした!

82:名無しさん@ピンキー
07/09/30 02:25:57 yLQAwfjL
377氏GJ
果物カップルのおバカ度が愛おしいwwwww

>>80
上半身イケメンで下半身イカと言われてアーミンを思い出す件

83:名無しさん@ピンキー
07/09/30 08:27:49 ueKmcTlm
バカGJwww
なにこのバナナwww

個人的に触手大好きだけど(時々彼氏でそういう妄想するぐらい)
本気で嫌いな人、いるんだろうな

84:名無しさん@ピンキー
07/09/30 13:40:46 A2Af3nm9
以前は触手?なんじゃそりゃあだったけど
触手スレの和姦ものにこういうのもありかw
と思ってしまった自分がいる。

>>80
ああ、それいっすね。
他スレで下半身蛇の男と云々な話があって、
当初はものっそ嫌がってたヒロインが相手を
認めたらそんな体でも愛しく感じてて、
やっぱり好きになったらそういうもんだよなと。

85:377
07/09/30 18:36:52 zSDYhtyf
みんな楽しい触手はどう考えても無理でした。

自分で話題を出しておいて触手モノでなく触手ネタに走ります。
すいません。

86:本名 中垣内吾郎 1/2
07/09/30 18:40:07 zSDYhtyf

「…イチゴちゃん、君を呼んだのは他でも無い。僕に触手を付けてくれ」
「ふーん…オレに頼むってぇ事ぁ、それ相応の覚悟があるって事か。いい度胸だなバナナ、
悪いが他を当たれ。そんな技術ねぇ」
「そんなの関係ねぇ!僕は、イチゴちゃんと触手について語り合いたいんだ!」
「…そっか。そりゃ確かに関係ねぇな。じゃ行くけどよ、触手付けてどうしたい?」
「僕、大好きな子がいるんだ。あ、そこで僕らをゴミを見るような眼で見てる子ね。ミカ
ンちゃんっていうの。その子の穴という穴に突っ込みたいんだ!」
「ほう…なるほどな。が、そりゃ鼻とか眼とか耳とかも込みか?」
「ばっか!性的な穴だけだよ!ミカンちゃん死んじゃうじゃん!でも、おれのちんこくら
いの太さの触手もいいけど、指くらい細いのもオプションで欲しい!後、イボイボとかは
いらない。つるん、としてる方がいい!」
「へぇ、お前意外にスタンダード好みだな。オレもだけど。でもどうせならさ、各種欲し
いと思わねぇ?十本だったら十種類各ひとつずつ、みたいな」
「えー?そう?邪魔になんない?でもわかる。僕も全部欲しい。でも、つい2個ずつ欲し
くなるんだよね。保存用と使う用で。多分いらないんだけどねー」
「あーわかるわかる。絶対ぇタンスの肥しになんのにな。でもさ、たまにすげー人気出て、
ヤフオクとかでべらぼうな値段になってたりすんのな。出さねーけど」
「そうそう、で、すぐ安くなんのね。あ、安くなるっていえばさ、こないだプレミア付い
てたゲームがダウン販売で600円だったの。昔友達に借りパクされたから買うのもシャ
クだったんだけどぉ、でも新しいゲーム機必要だったから余計高くついた」
「マジでー?馬鹿だろお前。そうそう、ゲーム機で思い出したけどよ、オレの友達マニア
でさ。DS持ってんのにライトも買ったんだぜ。意味あんのかっつったら誇らしげにゲー
ムボーイとゲームボーイカラーとアドバンスとそのSPとミクロとかもう色々持ってると
か言ってんのマジ救えねー。その癖、ロリっ娘ゲットしてんだぜ。あいつ2人で犯そうぜ!」
「え?ロリっ娘じゃなくてそいつ?やだやだ、僕男はパス。だったらさ、この子2人で犯
そうよ。イチゴちゃんなら9万で涙を飲むよ。一回二輪挿しってしてみたかったんだ」
「マジマジ?えー、ミカンちゃん?悪くねーなー。触手無ぇけど代わりに色々似たような
もん持って来る。タコとか。よし、ちょっと鮮魚センターと銀行行って来る」
「あ、僕も。すじこ買う。後、イクラも。ちょっと行って来るね」


87:本名 中垣内吾郎 2/2
07/09/30 18:43:33 zSDYhtyf

 …そう言って、2人は出掛けてしまった。
 とりあえず、身の危険を感じたので帰る事にした。後、本気で言っているんだろうか。
 本気、なんだろうか。どうしよう。とりあえず、窓から逃げようかな。
 ていうか、記念すべき誕生日にアブノーマルな世界へようこそ、は嫌過ぎる。




「じゃーん!ほらほらミカンちゃん、欲しがってたお財布、新品で見付けたの!誕生日お
めでとう!…って、アレ?」
「どーもー!さすらいのケーキ職人イチゴさん特製の巨大アップルパイっすよ!好きなだ
け食べてくださ…ん?」

『バナナさんなんか大嫌い ゲーオタの方を輪姦しに行け バカ』

 机の上の書置きを見て、双方青褪める。

「ちょ、ウソ、ミカンちゃん僕が他の男にミカンちゃんを抱かせるような男だとでも!?」
「っ、ヤダヤダヤダ、あいつになんかしたら、上か下かロリっ娘のどれかに殺されるわ!
特に下とロリっ娘!」
 あわあわしながら、イマイチずれた事を言う。
 手が震えて来たのか、お互い手に持っていたものを机の上に置き。
「とりあえず、追いかけよう!」
「どこ行くかわかんのか!?多分家だろうけど!」
「ううん、きっと鮮魚センターだよ!!」
 そう言って、2人はまた外へ出る。そして。

「…やっぱバカだ…」

 押入れから顔を出して、私は机の上のお財布が入った包みと巨大アップルパイを見て、
頬が緩んでしまったのだった。
 あと、ちょっとだけホッとした。


                                        終





88:377
07/09/30 18:46:02 zSDYhtyf
こんな感じです。

なんか、ずっと俺のターン!なんで職人さんプリーズです。


89:名無しさん@ピンキー
07/09/30 19:59:39 jDh6OaM+
鮮魚センター吹いたwwwwwwwwww

90:名無しさん@ピンキー
07/09/30 21:55:41 ZjytfAP8
鮮魚センターを口から吹いてる>>89を想像してワロタ

そして377氏大好きだ!

91:名無しさん@ピンキー
07/10/01 00:00:15 4dgoAg22
鮮魚センターが要所要所に出てくるのが何か好きだw
GJ!

92:名無しさん@ピンキー
07/10/01 14:24:54 Fi1BvMpX
377氏!
あなたが書くならなんでも読めそうだ!!

次作超期待!
兎に角GJ!

93:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:23:11 tQTy5p6r
377さん、いつもながらすげぇぇぇぇw
鮮魚センター夢に出てきそうw
GJ!

94:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:20:47 Spcw9S1v
>>92-93
既に好評なんだから
その誉め方はかえって気持ち悪い
下手したらアンチが沸くぞ
ほどほどに

95:名無しさん@ピンキー
07/10/01 22:27:30 tQTy5p6r
>>94
ごめん、今日投下に気づいたんだ。
スマン自重する。

96:名無しさん@ピンキー
07/10/02 03:59:49 i+fEz++k
鮮魚センター
URLリンク(www.google.co.jp)

97:名無しさん@ピンキー
07/10/04 13:41:39 vv6WjRhX
ロリっ娘ゲットしたゲーオタって、ロ○トの剣ふりまわしてたあいつかw

98:名無しさん@ピンキー
07/10/04 19:44:04 w58lLrf/
期待!

99:名無しさん@ピンキー
07/10/09 18:03:56 61Z+CJZt
ほっしゅっしゅ

100:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:22:51 UamMUEDP
以前、「ラベンダー」という小品を書いたものです。
この度、縁あってこちらのスレの455さんがイメージ画を描いて下さいました。
スレリンク(erocg板:455番)
お許しを頂いてこのスレにもご紹介します。

ラベンダー
URLリンク(www2.gol.com)


101:名無しさん@ピンキー
07/10/20 00:15:05 qwitRQPR
絵も物語りも萌えた。

102:名無しさん@ピンキー
07/10/20 23:16:19 Q0xUbAJU
強引な和姦。ややラブコメ。3回の投下予定でエロまで長いです。

103:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:19:21 Q0xUbAJU
あたしが好きな青山君は人の彼女を奪うのが好きだ。
ほとんどビョーキ。4年半見続けているので間違いない。
顔にそこそこ自信のあったあたしは、中学ン時に告白してあっさりフラれた。
その頃彼は、野球部のエースで4番だった男の子の彼女に猛アタックをかけていた。
ショートカットのおとなしいちっちゃい子。あんな子に負けるはずがないと、
あたしはさらっさらの髪を揺らしながら上目遣いの必殺ワザを繰り出したけれどあえなく撃沈。
藤野さんに僕はもったいないよと、にっこり笑って断る青山君。小首を傾げたまま固まるあたし。
それまでフルことはあってもフラれたことはなかった。あの時味わった屈辱は、いま思い出しても腹が立つ。

ちなみにショートカットのちっちゃい子は、エースで4番だった男の子と別れて青山君と付き合い出したけれど、
すぐに別れた。なんと、次のターゲットは新婚ほやほやの英語教師だった。
信じらンない。なんか修羅場になったみたい。噂がピークに達した頃、その女教師は転任させられた。
あんな、人のものを欲しがるガキなんてサイアクー、こっちから願い下げだッ。はいはい、つぎつぎー。
……とはいけなかった。一目惚れだったから。はじめて本気で好きになった男の子だったから。
いくら口汚く罵ってもあたしは彼を心底嫌いにはなれなかった。ちょっとでも付き合えた彼女達がうらやましかった。
虫も殺さぬやさしい顔で狙った女を確実に落として、泣かせて、ひどい奴。
でも不思議と恨む女の子はいなかった。あの仔犬のような目で困ったようにごめんと言われると、
胸がきゅーんとなって理不尽だと思いつつ、誰もが彼を許した。
さすがに彼女を取られた男子とは険悪になっていたけれど、いつまでも尾を引くようなことはなかった。

告白してフラれた次の日。青山君は何事もなかったかのようにふつーに話しかけてきた。
プライドずたずたのあたしはむっとして距離を置こうとしたけれど、3日で断念。
元来前向きなあたしは、気が付けば友達から恋人へというナイスな作戦を思い付く。
じわりじわりと敵の懐に入り込み信頼を得た頃にはあら不思議、かけがえのない大切な女に。これだッ!
青山君を追っかけて、あたしの頭ではむりと言われた高校も恋のパワーで見事合格。
涙ぐましい努力の甲斐あって、いまでは親しげに繭ちゃんと呼ばれて何でも話せる仲になれた。
あとは青山君があたしの存在の大きさに気付くのを待つばかり。
晴れて彼女になった暁には、薫~と呼ぶ予定だ。

104:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:22:37 Q0xUbAJU
―待ちくたびれた。
あたし、このままだとおばあちゃんになっちゃうよ? 処女のまま死んじゃったりして。やだやだやだ。
やきもきするあたしをよそに、青山君は奪っては捨て奪っては捨てを繰り返していた。
なんでそんなに人のものを欲しがるのか、一度聞いたことがある。
長いまつげを伏せてしばし考え、心が動く瞬間を見るのがたまらない、と顔を上げてぽつり。
彼氏を裏切る葛藤で、揺れる瞳に少しずつ強い光りがともっていくのを見るのはぞくぞくするそうだ。
完全に気持ちがこっちに向いた時に見せる、共犯者めいた眼差しが最高らしい。
体中の血が沸騰する感覚が好きなんだよねー、と話す青山君はとても楽しそうだった。
続けて、でもなーだんだん重くなってきて疲れてくるんだよなー、というのを聞いてあたしは殴りたくなった。
はあ? なに勝手なこと言ってんの? 最後まで責任取りなさいよッ! ってむかついたけれど、
途方に暮れたような彼を見ていたら、なんだか可哀相になってきて救ってあげたい気持ちでいっぱいになってしまった。

青山君、あたしと付き合ったらそんなビョーキ直るよ、きっと。
そう言いたかったけれどぐっとこらえた。フリーの子がいくら言い寄ってもだめなのは、散々横で見てきた。
ほんとにぴくりともむくりとも関心を示さない。敵ながらあっぱれ。ある意味感心する。
どうやら、気が付けば友達から恋人へ作戦は失敗っぽい。無駄な時間を過ごしてしまった。
あーあ、ついにポリシー曲げてあの作戦の登場かー。はじめての彼は青山君って決めてたんだけどなー。
こうなったら仕方がない。もう手段を選んでる場合じゃないからね。あたしはやるよ。
郷に入っては郷に従えの精神で挑むそれは、題して寝取られ大作戦!!
敵はとことん狩猟民族だ。あたしは狩られるために彼氏を作る。
彼氏という名の撒き餌。当て馬ともいう。
ちらっと罪悪感がよぎったけれど、恋する乙女は残酷ってことで策を練る。

恋の障害物は大きければ大きいほど青山君はばかみたいに燃える。
こいつから奪いたいと思わせるような男子は誰だろうと考えて、ふと黒澤君の名前が浮かんだ。
いつだったか、いっこ下の子に告られた黒澤君がみんなのいる前でこっぴどくフッて泣かせたらしく、青山君怒ってたっけ。
女の子を泣かせちゃいけない。やさしくしないと、ってどの口が言ってんのよッ、って呆れたんだった。
普段めったに不快感を表したりしないのに、めずらしいなーと思ったのを覚えてる。
気に入らない男子からなら奪いがいもあるだろう。確かあのふたり、同じクラスだったな。
ライバルが近くにいるのもいいかもしんない。よしッ、決めた。
さみしい夏休みを過ごしたあたしは、決意も新たに明日から始まる2学期に備えて早めに寝ることにした。

105:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:26:32 Q0xUbAJU

***************

始業式が終わり、ぞろぞろと教室に戻る列の中に黒澤君を見つける。
ちょうど周りに人がいなくなった。チャーンス。ぱたぱたと近づいていく。
黒澤君の白い背中が目の前にある。うその告白とはいえ、青山君以来なんで緊張してきた。

繭子、ほんとにやるの? 自分の下衆い目的のために利用していいの?

さまよわせた視線の先に、笑っている青山君の姿が飛び込んでくる。
となりではバスケ部のキャプテンと付き合っている谷口さんが歩いていた。
身振り手振りを交えて話している青山君の肩を、ばんばん叩きながら谷口さんも笑っていた。
お馴染みのひりつきが胸のあたりを襲う。こんな痛いのもういやッ!
あたしはえいっと一歩踏み出して、黒澤君の横に並ぶ。
こっちを見てる気配がする。あたしは前を睨んだまま口を開いた。

「黒澤君、あたしと付き合わない?」
20秒待ったけれど、なんの反応も返ってこない。あれ? 聞こえなかったかな。
ちらっと横目で窺うと、じっと見下ろされていた。眼鏡越しの視線が鋭い。怖いんだけど……怒ってる?
だめだこれは。まあ、うすうすこうなるとは思ってたけどね。あたしは黒澤君のタイプじゃないだろうなー、と。
たぶん彼は、自分とよく似た頭のいい大人びた女の子が好きなんじゃないかな。勘だけど。
ふふん、こんなこともあろうかと、当て馬候補は他にも数人選んでおいた。ぬかりはない。
さて誰にしようかと考えを巡らせていると、いいよ、ととなりから低い声がした。
ええっ! 思わず大きな声を上げてしまったあたしを気にせず、黒澤君は続けた。

「今日、部活早く終わるから一緒に帰るか?」
「……(あうあうッ!?)。う、うん……じゃあ、あたし図書室で待ってる」
意外そうな顔をした黒澤君は、軽くうなずいて渡り廊下を左へ曲がっていった。
あたしは右に曲がって自分の教室へと向かう。なにいまの!? あたしが本を読むことのほうが告白より驚くことなのか。
……まあいい、とにかく彼氏を作ることには成功した。17年生きてきて、はじめてできた彼。
あくまで仮だけどね。カモフラージュの彼。

1時限目の休み時間。
教室で千明と夏休みのことを報告し合っていると、青山君がにやにやしながらやってきて言った。
「聞いたよ~、繭ちゃん黒澤君と付き合うんだって~?」
「なにそれ!? 繭子それほんと?」
あたしが青山君を好きなのを知ってる千明がびっくりした声で訊いてくる。
「あー(昼休みにゆっくり話そうと思ってたのに)、うー(聞くの早ッ。てか誰から!?)」
「ほんとほんと。俺、藤野と付き合うことになったからって、黒澤君に宣戦布告っぽく言われちゃった。
なんか僕と繭ちゃんの仲を疑ってるみたいだったよ? ただの仲のいい友達なのにね~。
誤解は早く解いといたほうがいいよ~。あ、やば遅れる。つぎ音楽なんだ。じゃ」
しどろもどろのあたしをさえぎって、千明の疑問に答えた青山君は言うだけ言って慌ただしく教室から出ていった。
ただの仲のいい友達発言にぐさりときながら、いつもより早口だったのは動揺してるせいだといいなと思った。
それにしても黒澤君、頼んでもいないのにいい仕事してくれる。

106:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:29:58 Q0xUbAJU

「はあ? 寝取られ大作戦!? ばかじゃないのあんた」
「しっ、声が大きい」
いまは昼休み。教室内はざわついている。
誰もこっちを注目していないのを確認してから、興奮すると口が悪くなる千明に言い返す。
「でもあたしが黒澤君と付き合うって知ったらすっ飛んで来たじゃん。
ロックオン状態になると音信不通になる青山君がだよ? 早くも作戦の効果ありッ!
もう谷口さんからあたしにターゲット移行してるかもよ? うわぁ、あたしついにロックオンされちゃうのかー」
「あんたはそれでいいかもしんないけど、道具にされる黒澤はいい迷惑だ。
わたし中学一緒だったから知ってるけど、あいつ性格きつい割りにモテてたよー。けど全然彼女作んないの。
いつも男とつるんでたからホモ疑惑があったくらい。なんだってまたこんなばか女を好きになるかな」
「好き? あはは、それはないって! 好きな子相手にあんな険しい顔普通しないと思う。
黒澤君もなんか事情があるんじゃないのォ。断り続けるのが単純に疲れたとか、それこそホモ疑惑を払拭するためとか。
あっ、もしかしたら……! 黒澤君は青山君のことが好きとか? うわぁ、なんかよくわかんないけどフクザツー」
「……あんたにはついていけない。まあ、方法間違ってると思うけど他の男に目を向けるのはいいんじゃないの。
目を覚ますいいきっかけになりそうだし、どうせ反対したってするんだろうし。わたしは応援するよ、黒澤を」
「えっ、そっち!?」

千明は高校に入ってできた友達だ。最初は嫌いだった。
青山君がまっ先に目を付けたのが彼女だったから。
はっきりした顔立ちの正統派美少女には他校に通う幼馴染の彼氏がいた。
いつになく張り切る青山君。けれど千明はまったく相手にしなかった。その鮮やかな撃退っぷりにあたしは惚れた。
話をしてみると、竹を割ったような性格で妙に気が合う。2年で同じクラスになり、ますます仲が良くなった。
あたし達3人の関係は、傍目には時々ケンカはするけれど仲のいい姉弟のように映っているらしい。
青山君ははじめて土をつけられた千明に頭が上がらず、いい加減人の心を弄ぶのはやめなさいよっ!
って叱られるたびに笑ってごまかしている。お姉ちゃん強し。あたしはさしずめ口答えばかりして言うこと聞かない妹か。

昼休み終了のチャイムが鳴った。
あたしばかだけど、千明がほんとに心配してくれてるのはよくわかってるよ。
席に戻る千明のまっすぐな背中に向かってつぶやく。本気で怒ってくれてありがたいよ。
でもまるで苦いものを飲み込んだような顔はちょっとなぁ。悲しくなる。
それにシワができちゃうよ? 凛々しい顔が台無し。
まあ見てて、今回は手ごたえあるんだ。笑って報告できると思う。あたし、幸せになるからッ!
ってまるで嫁いでいく娘のようだな、あたし。

107:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:32:56 Q0xUbAJU

「黒澤君てなに部?」
「将棋部」
訊いた瞬間しまったと思った。告白した相手の入っている部を知らないでどうする。
あせったけれど、黒澤君は別に気にしてないみたい。淡々としたものだ。熱いものがまるで感じられない。
やっぱり黒澤君には黒澤君の事情がある様子。深くは追求しないでおこう。
しょせん仮の彼だしあたしも訊かれたら困るしと、並んで歩きながらそう決めた。

図書室で待ち合わせをして、校門を出るまでの間に結構な数の生徒に目撃された。
びっくりした顔やうらやましそうな顔を眺めるのはちょっと面白かった。
正直、かわいい系が好きなあたしのタイプとは違うけど、ルックスのいい男の子と一緒にいて悪い気はしない。
青山君はあたしと同じくらいの身長だから、こんな風に見上げるのも新鮮だ。首疲れるけど。
「黒澤君、身長いくつ?」
「178センチ」
「視力は?」
「右0.2、左0.3」
「コンタクトにはしないの?」
「眼鏡が好きだから」
さっきから一問一答のような会話(?)が続いていた。
どうでもいい質問に黒澤君は表情を崩さない。変な人だ。一緒に帰るかなんて訊いてくるから、
なにか話でもあるのかと思えば黙々と歩いている。あと少しで駅に着く。
あたしは電車通学だ。3駅先のマンションに両親と兄の4人で住んでいる。
黒澤君の家は駅の向こう側にあって、父親とふたり暮らしだそうだ。
へぇ~、いいとこに住んでるんだねって言ったら外人みたいに肩をすくめてた。

「9月に入っても暑いねー」
「ああ」
黒澤君の顔は涼しげだ。なんだかイライラしてきた。
よく考えたら、青山君は女の子と遊ぶ軍資金を稼ぐために学校が終わるとバイトに直行する。
他の男子と一緒にいるところを見せ付けて、嫉妬心を煽るつもりが無駄足じゃん。
黒澤君の淡々とした態度がイライラに拍車をかける。
この人、なにかに熱くなることあんの? うらやましいほど滑らかな肌が赤らんだりとか、
誰かをめちゃくちゃ好きになって胸が苦しくなったりとか―

「黒澤君て童貞?」

ぎゃあああああああ! なんてこと訊いてんのー、あたしーっ!?
暑さで頭がパーに。わわわ忘れて、いまの忘れてッ!
黒澤君が立ち止まったのは、前からすごい勢いで自転車が来たせいだろうか。
腕を引っ張られたのと同時に、そうだよ、と耳元で囁かれた。
すぐ脇を自転車が走り抜けていく。心臓がばくばくいって止まらなかった。

108:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:36:33 Q0xUbAJU

***************

あっという間に3週間が過ぎた。
劇的な変化は現れてないけれど、落ち込んではいなかった。ゆっくりと動き始めている気がする。
噂で、谷口さんが彼氏と別れたと聞いた。でも青山君と付き合い出したとは聞かない。
いつもだったら青山君本人に根掘り葉掘り訊くところだけど、いまのあたしは彼氏(仮)持ち。
他の男の子なんて全然目に入りませーん、という態度を貫いている。
最近、しばしば青山君の視線を感じるようになった。
目が合うと、急にとってつけたような笑顔を返してきたり、なにかを言いかけてやめたりする。
そんな自分に戸惑っているように見える。いままでにはなかったことだ。
やった! もう一押し。とはいっても、どこを押せばいいのかわからない。

「―で、黒澤とはどうなってんの?」
「どうって言われても……別に、ふつーだよ。あー、この間一緒に映画観に行ったかな」
5時限目は体育。制服を脱ぎながらのろのろと答える。
すでに着替えの終わった千明が目を輝かせた。
「おっ、初デート!」
「そんなんじゃないもん。誰誘っても断られるし、女の子ひとりでは行きにくいから付いて来てもらっただけ」
「いったいなに観に行ったの?」
「昔の時代劇。黒澤君、子供の頃おじいさんに連れられてよく観に行ってたんだって」
「へ、へぇ……良かったじゃない。趣味の合う彼氏ができて」
確かに。彼氏云々は置いといて、なかなかする機会のなかった時代小説の話ができるのは嬉しい誤算だった。
あたしが好きな作家の本をほとんど読んでた黒澤君。
すごく詳しくて、他にも色々教えてもらっておススメの本を借りたりもしている。
映画を観に行ったのはその延長線上でのこと。たいした意味はない。

「……だから、家に誘われたのもたいした意味ないよね?」
亡くなったおじいさんが集めていた公開当時のパンフレットとか、
古い映画雑誌がたくさん残ってるから見に来ないかと、黒澤君に言われていた。
にんまりと意味ありげな笑みを浮かべている千明が気に食わない。
あたしはずぼっと体操服をかぶり、自分でもおかしいと思うくらいべらべらと喋った。
「さっ、それより早くグラウンドにいこ。遅れたらエロ本になにされるかわかんないよ。
女子は今日マラソンなんだって。やだなー、あたし走るの苦手ー。男子はサッカーなんだって―」

109:はじめての彼(仮)
07/10/20 23:43:32 Q0xUbAJU
む、またエロ本の奴が見てる。
みんな汗だくで、体操服は体に張り付きブラが透けていた。
ぜえぜえと上下に揺れる胸に舐め回すような視線を感じる。うわっ、いま舌をぺろっとしなかった? 気持ち悪ッ!
影でエロ本と呼ばれている榎本は、嫌がられてるのを承知で体に触ってくるセクハラ教師だ。
走り終えたあたしは、エロ本からできるだけ離れた場所にへたり込む。
発育が良かったせいか、小学生の頃から見られることに慣れているとはいえ、
エロ本みたいな中年おやじの粘りつくような視線には耐えられなかった。生々しすぎて恐怖すら覚える。
同世代の男の子が向けてくるギラつく視線のほうがまだマシだ。

ギラつく視線かぁ……早く青山君にそんな風に見られたいなぁ。
仔犬のような目が狼になっちゃうところを想像して、どきどきと震えた。
最近の青山君の様子から、想像が現実味を帯びつつあり期待で胸が膨らむ。
ただ一方で不安もあった。いざそんな場面になった時、テンパって支離滅裂なことをしてしまいそうだった。
いきなり張り手を食らわすとか大嫌いって口走ってしまうとか……、大丈夫だろうか? 
子供っぽいマネをして、呆れた青山君に嫌われないかと心配だ。
あたし、普段男子とふつーに喋ってるから別に苦手意識なんかないと思ってたんだけど、自分をよくわかってなかった。
誰とも付き合った経験がないせいか、男の子とふたりっきりになった時の距離感がうまくつかめない。
はっきりいって男慣れしてなかった。中身が中学生で止まってる。へたしたら小学生レベルかも。
黒澤君と付き合うようになって思い知った。仮の相手なのに、情けない。
しかもむこうは落ち着き払ってるのに、あたしだけテンパってるのが余計みじめだった。
共通の趣味の話では盛り上がれるんだけど、それ以外だとあきらかにぎこちない。
はっ、そうか! その不自然さが青山君にも伝わっていて、狩猟本能にブレーキがかかっているのかもしれない。
もう一押し足りないのはそれかッ! もっと自然に黒澤君と仲良くしてるところを見せ付けないと。
俄然、やる気が出てきた。習うより慣れよ。迷ってたけど、いっちょ黒澤君ちに行ってみるかー。
あたしの好きな時代劇スターが特集された映画雑誌も見たいことだし。

あーだこーだとひとりごちていたあたしの耳に、あぶねーどけーっ、という怒鳴り声が飛び込んできた。
ん? と振り向いた瞬間、ばしんと顔面に衝撃を受ける。サッカーボールが直撃したのは覚えている。
あたしはひっくり返って、今度は地面にごつんと後頭部をぶつけて意識を失った。


(つづく)

110:名無しさん@ピンキー
07/10/21 04:16:20 u47kPMcT
うおおおお書き手さんキテター.。゚+.(・∀・)゚+.゚
おにゃのこ1人称は何やらかわいらしいですな

111:名無しさん@ピンキー
07/10/21 11:16:19 XmkthONZ
無駄に行動派な女の子かわええ
続き!楽しみにしてる!!

112:名無しさん@ピンキー
07/10/21 22:27:56 nN/gYVcB
黒澤クンに萌えた。
つづき楽しみにしてますよ~!

113:名無しさん@ピンキー
07/10/22 03:39:27 a8PlP/7F
最初は、やな女(というかバカな奴)…と思ったけど
読み進めるうちに可愛く見えてきたよ。
当初の予定が狂って本当に瓢箪から駒となるといいなあ。
がんばれ黒澤君!w

114:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:10:35 LKJ1Xgqw
息苦しさを感じて目を覚ます。
一瞬なにが起こっているのか理解できず、レンズ越しに見つめ合っていた。
吸い込まれそう。きれい……少し緑がかった茶色の瞳。そこに、あたしが映ってる……?

ひゃあああああああ! く、黒澤君っ!? かか顔と顔がくっついてる! てか、唇と唇もッ!
あああたしのファーストキス。なんてことしてくれんのよーーーッ! ばかああぁぁぁあああああ!

言いたいことはたくさんあるのに動転して声にならない。
すっと体を離した黒澤君を睨みつける。つんと鼻の奥が痛くなった。
ごしごしと唇をこすっていると、いつもと変わらない冷静な声で矢継ぎ早に質問してきた。
「藤野、なにが起きたか覚えてるか? 吐き気は? 手足の痺れはあるか?」
「ひひひ(ひどい!)……ヒィィーック!」
マヌケなことに、しゃっくりが出てちゃんと喋れない。涙がぽろぽろとこぼれてどうしようもなかった。
気を失っている間に保健室に運び込まれたようだった。黒澤君は黙って突っ立っている。
なんで他に誰もいないんだろうとしゃくりあげていると、すぐにドアが開いてふたりの足音が近づいてきた。
ひとりは千明で制服を持ってきてくれた。もうひとりは保険の女の先生でトイレに行っていたらしい。
先生に黒澤君と同じ質問をされた。
しゃっくりは止まらないものの、あたしの意識がはっきりしているということで病院には行かず、
ここで休んで様子を見ることになった。あたしが泣いてるのは、腫れた顔面が痛むせいだと思われていた。
君達はもう教室に戻りなさいと先生に言われて、ふたりは出て行った。

「ヒィィーック! ヒィィーック!」
静かな保健室にあたしのしゃっくりだけが聞こえる。
先生もいるはずだけど、なにをしているのかカーテンに仕切られているのでわからない。
ぼんやりとベッドに横たわっていると、いやでもさっきのことが蘇ってくる。
―なかったことにしよう。幸い感触も残っていない。それほどかすかなものだった。
日常生活で肩や腕がぶつかるのはよくあること。それと同じでたまたま唇と唇だっただけ。
し、舌を入れられたわけじゃないし、あんなのキスとは呼べない。たぶん。
そう思わないとやってられない。忘れろ忘れろ忘れろ……さん、にい、いち、はいッ! 忘れた。
ところでなんで黒澤君がいたんだろう? 授業中なのに?
いくら考えてもわからなかった。

115:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:16:46 LKJ1Xgqw
結局あたしはホームルームも出ずにそのまま休んでいた。
まだ少し顔がひりひりしてるけど、他はなんともないので歩いて帰れますと先生に伝える。
制服に着替え終わった頃、千明が鞄をふたつ持って保健室に入ってきた。

「あ、ちあキィィーック! ありがとゥィイーック!」
「はい鞄。やだ、まだしゃっくりしてんの。ふふ、これ見たら止まるかもよ? じゃーん!」
黄門様の印籠よろしく、千明がケータイの画面をこっちに向けて突き出す。
「―ッ!」
心臓が止まるかと思った。そこにはあたしを抱きかかえた黒澤君が映っていた。
ななななにこれ!? 慌てふためきながら、どうやらあたしを保健室まで運んだのは黒澤君らしいと気付く。
でもなんでそんなことになっているのか、さっぱりわからなかった。
「驚くよね~。まさかあのクールな黒澤がこんなことするなんてね~。もうみんな大騒ぎ」
演劇部所属の千明が、ひとり何役もこなして起きた状況を再現してくれた。

「―で、ぐったりと気を失ってるあんたをエロ本が保健室に運ぶことになってね。
それはそれはもうやらしい顔と手付きで迫ってきて、周りにいた女子全員がひィィーっ、繭子万事休す!
ってのけぞった瞬間、現れたのよ黒澤がっ! 俺が運びますからって、颯爽と! 上履きのままで!」
くらっときた。また気を失ってしまいそうだった。まさかそんなことになっていたとは……。
教師も生徒も全員がポカンとするなか、黒澤君はさっさとあたしを抱き上げてその場を去ったらしい。
あとに残った女子の、きゃあーお姫様抱っこーかっこいいー合唱はすさまじかったと熱弁をふるう千明。
それに応呼するように、あたしの顔もみるみる赤くなっていく。
あたし重くなかった? 汗臭くなかった? ああッ、透けた胸を間近で見られた!
恥辱に身悶えていると、この写真はね~、と千明がとどめを刺すように説明し出した。

「黒澤のクラスは理科室で実験中だったんだって。ほら、あの教室ってグラウンドに近いじゃない?
立ってたからよく見えたんだろうね。突然黒澤が教室を飛び出したと思ったら、あとは知ってのとおり。
みんな授業そっちのけで窓に鈴なりになって見物してたらしいよ~。んで、当然激写。これ学校中にバラまかれたよ」
いやああーッッ! 誰か嘘だと言ってええええ。恥ずかしくて明日から学校に来れないッ!
黒澤君もなに考えてんのーっ。ばかばかばか。
「じゃあ、わたし部活あるからそろそろ行くね。気を付けて帰るんだよー」
手を振る千明に上の空で返事をする。いつの間にかしゃっくりが止まっていた。

116:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:21:50 LKJ1Xgqw
すっかり脱力して昇降口で靴に履き替えていると、名前を呼ばれた。
見るまでもない。声ですぐわかった。まともに顔を合わせらなくて、下を向いたままで訊く。
「……黒澤君、今日は部活ある日じゃなかったっけ?」
「休んだ。家まで送るよ」
「いい。ひとりで帰るから」
普段通りの声が出せて良かったとほっとしながら顔を上げると、
てこでも動かない顔をした黒澤君が立っていた。
その背後に、下級生が数人こっちを指差してにやついているのが目に入る。
かあとなって、くるりと背を向けて走り出す。ああ、また子供っぽいことしてると泣きたくなった。

黒澤君の一度言い出したら引かない性格には呆れる。
いいよと何度も断ったのに、結局一緒に電車に乗るはめになってしまった。
案外しつこい。そして認めたくはないけれどやさしい。
手すりも吊り革も使えない場所に押しやられてふらつくあたしに、
ほら、と照れもせず腕を差し出したりする。なんでそんなこと自然にできんの?
ガタンと電車が傾き、とっさに掴んだ腕のたくましさに驚いて、急いで袖を掴み直すあたしはすごく不自然だった。
―ありがとうを言い忘れた。自己嫌悪。ほんとやンなる。恥ずかしい思いをさせられたけれど、
保健室に運んでくれたお礼もまだしていない。部活を休んで(黒澤君、部長なのに)家まで送ってくれることに対してもだ。
ふがいない自分に、ちっとも収まらない鼓動にうんざりして、シャツの袖をぎゅっと握りしめる。
あ、いけない。しわしわになっちゃった。

いつ言おう、いつ言おうとぐずぐずしているうちに家に着いてしまった。
立ち止まってマンションを見上げている黒澤君に声をかける。
「あ、うちここの5階。えと……」
こういう場合、部屋にあがってもらってお茶とか出すんだよね?
お父さんは会社。お母さんも確か今日はパートで遅い。お兄ちゃんは大学のあとバイト。
誰もいない。……むり。あたしにはむり。そんな難題突き付けないで。
早く帰ってと思っていたくせに、じゃあ、と言いかけた黒澤君を大声でさえぎっていた。

「く、黒澤君っ! (げ、呼び止めてる!?)あああの(繭子、お礼お礼。お願いだから余計なことは言わないで!)、
今日はありがとっ、送ってくれて。それから……あのあのッ、保健室に運んでくれたのが黒澤君で良かった! 助かった!
エロ本だったらと思うとぞっとする。あいつ触りまくってただろうから(そ、そんなこと言わなくていいからッ)。
あ、あたし重くなかった? でもっ、意識失った体は重く感じるっていうし、違うの違うのッ(やー、口が勝手にー)。
そそそれと腕もっ、電車の中で。……ありがと。なんか袖、しわくちゃにしてごめんだけど。
えと、なんで黒澤君そんなにやさしいの? 黒澤君は……っ、なんであたしと付き合ってんの?」

117:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:26:04 LKJ1Xgqw
頭の中がまっしろ。もやもやと考えていた反動なのか、ぶちまけるように一気に言葉を吐き出していた。
あたしってば口滑りすぎ。途中からわけわかんないことに。特に最後。
深くは追求しないでおこうって決めてたのに、なに訊いてんの!?
黒澤君、ちょっと眉をしかめてる。けどかなり呆れ果ててるのが伝わってくる。ひゃ、口開いた。

「藤野は思ってた以上に馬鹿で鈍感なんだな」
「はあァ~~~!?」
黒澤君はふっと鼻で笑って、すたすたと行ってしまった。
はあ? はあ? 何度も呼びかけたけれど、振り向きもしなかった。

頭きた。ばかで悪かったな。
そりゃあ常に学年トップを誇る黒澤君からしたらあたしは大ばかだよ。言われなくてもわかってるよッ。
鈍感て鈍感て……え? あ、はいぃぃ? もしかして、好きってことォォ!?
それはないでしょ。急に冷静になる。だってそんなこと一言も。そんなそぶりだってなかった、よねぇ?
時々眩しそうに目を細めて見てるのは気付いてた。その視線に優越感を感じてたから。
でもォ、自分でいうのもなんだけど、目の保養的なニュアンスしかなかったような気がするけど?
最初は警戒してたんだよねぇ。ひょんなことからっていうか自分で訊いたんだけど(いま思い出しても恥ずかしい)、
黒澤君が童貞だと知って、あたしで筆下ろしするつもりー!? それが告白OKした理由かッ!
って血相変えたんだけど、なんか黒澤君全然がっついた感じじゃないんだよねぇ。
実際、手も握られたことないし。なーんだ、あたしの勘違いだったかと安心するやら拍子抜けするやら。

あっ、とひらめいた。なんでそんな簡単なことにいままで気が付かなかったのかと歯ぎしりする。
やっぱりあたしの恋愛偏差値小学生レベルかも。やさしいイコール好きなんかじゃない。
やるためだったら男はなんだってするってよく耳にするじゃない。下心を見せないのも変にやさしいのもすべて演技だ。
最初の直感が正しい。やりたい一心でのことだったんだ。黒澤君はそれを巧妙に隠してたんだ。
ふー、危ない危ない。あやうく騙されるところだった。でもあたしは負けない。
むこうがどんな手を使ってきても華麗にさばいてみせる。相手として不足はない。いい練習相手だ。
居ても経っても居られない気分で、その場をぐるぐると回っていた。

118:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:29:00 LKJ1Xgqw

***************

次の日。登校すると、案の定チラチラと見られた。くすくすと笑われた。
朝から好奇の目に晒され質問攻めに遭い、ほとほと疲れた。
ひとりになりたくて、昼休みは図書室に逃げ込む。
まじめでおとなしい生徒が何人かいるだけ。ここだったらほっといてくれる。
まあ、あと2日の辛抱だ。それで今週は終わる。来週になったら噂も落ち着くだろう。
ため息をつき、寝不足のあたしは机に突っ伏した。

「―繭ちゃん、繭ちゃん」
肩を叩かれて、顔を上げた。ぱっと体を起こす。
「あ、青山君! びっくりした。全然気が付かなかった」
「みたいだね。フフ、黒澤君のこと考えてた? 見たよ、昨日。やるな~妬けちゃった」
うつむいて髪で顔を隠す。色んなことに動揺していた。
吐息がかかるほど体を寄せて囁かれたことに。
からかうような口調とは反対に目が真剣だったことに。
いまのいままで青山君のことを思い出しもしなかったことに。

「繭ちゃん、耳まっ赤」
びくっと肩が跳ねる。髪を後ろになでつけられて、耳をあらわにされた。
あたしは動けない。耳が心臓になってしまったかのように、どっくんどっくんと脈打っている。
青山君にも伝わっているだろうか。男の子にしてはほっそりした指でぐるりと輪郭をなぞり、青山君が言った。
「きれいな耳だね」
「……そ、そんなの、どこで判断するの?」
声がうわずった。
「薄くて華奢で、全体的にきりっとしてて。それにここ」
一段とひそめた声で囁き、耳たぶのすぐ上にある窪みに指先をはめ込む。
「繭ちゃんのここ、狭くて深いね。ここで名器かどうかわかるらしいよ。黒澤君に締りがいいって言われない?」
「そそそそんなこと、したことないもんっ!」
勢いよく立ち上がり、叫んだ。派手な音を立てて椅子が後ろに倒れる。
他の生徒達がいっせいに白い目を向けてくる。なかでも一際冷たい視線があたしを貫いた。

119:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:32:43 LKJ1Xgqw
放課後。おじいさんが蒐集していたものを見に、黒澤君の家に寄ることになってしまった。
誘う黒澤君の表情は他にも話があると強制していて、とても断れる雰囲気じゃなかった。
逃げてると思われるのもいやで、ついうなずいてしまったあたし。
前を歩く彼の影を踏みながら思案に耽る。
繭子、やっぱりやめたほうがいいんじゃないの?
いっちょ黒澤君ちに行ってみるかと、気軽に考えてた昨日とは状況変わってない?
なんか嫌な予感がするんだけど。でも、あんなこと言われたら気になって仕方が無い……。

―黒澤君、いつから図書室にいたんだろう?
鋭い眼光に射すくめられて一歩も動けなかった。時間が止まったみたいだった。
視界の隅でなにかが動いて、やっと感覚が戻ってきて、黒澤君に向かって歩いていく青山君をぼんやりと追う。
立ち止まって、なにか声をかけた。青山君のあんな意地の悪い顔、はじめて見た。
無表情な黒澤君。視線はこっちに向けたまま。怖い。なにを言われたんだろう? 気になる。
青山君は図書室を出て行く前に、あたしを振り返ってにこっと笑った。いつもの天使のような笑顔。
逆に、悪魔のような冷淡な表情を浮かべた黒澤君が近づいてきて言った。

―青山のことが好きなんだろ。協力してやろうか。

協力ってなに? なに考えてんの? 黒澤君の頭の中が覗けたらいいのに。
それにしてもこのへん、立派な家が立ち並んでるなぁ。きょろきょろと周囲を見渡す。
わあ、あそこなんて女の子が夢見るようなお屋敷だなーと感嘆していたら、
黒澤君がそこにずんずん入っていくじゃないの! ってここが黒澤君ちー!?
目の前には蔦の絡まる洋館が建っていた。木が茂り、清涼な空気に包まれる。
ひゃー、世界が違う。目を白黒させて広い玄関に足を踏み入れると、お帰りなさいませというセリフが!
リアルで聞いたっ。小柄な中年の女性がにこやかに出迎えていた。
マサさん書庫に紅茶を、と告げて黒澤君は階段へ足を向ける。
あたしはマサさんと呼ばれた女性にぺこりと頭を下げて、長身のあとに付いていった。
良かった~。他にも人いたんだ。ふたりっきりになるのはマズイんじゃないかと思ってたから安心した。
それに、もしなにかされそうになってもきっぱり拒絶すれば問題ないよね?
黒澤君は無理やり女の子をどうこうするような人じゃないだろうし。
なんだか気が楽になってトントンと階段を上っていった。

120:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:37:23 LKJ1Xgqw
ところで書庫と書斎の違いってなに、という疑問は中に入って消し飛んだ。
うわー、床から天井までびっしりー。難しそうな本がいっぱいー。洋書がたくさんあるー。
前もって用意しておいてくれたのか、低いテーブルの上には古い映画雑誌が山積みにされていた。
黒澤君を振り返るとうなずき返されたので、さっそく手に取って読み始めた。

かちゃかちゃとポットとカップを並べる音で我に返る。
ごつい石の門柱を過ぎてからこっち、テンション上がりっぱなしだった。
自分の現金さにちょっと恥じる。訊きたいことがあるんだったっけ。
マサさんが入れてくれた薫り高い紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせた。
のんびりしてはいられない。こほんとひとつ咳払いをして、向かい側のソファに座っている黒澤君に話しかける。

「黒澤君、図書室でのことなんだけど……青山君になに言われたの? それと、協力ってなんのこと?」
「―いくつか確認したいことがある」
めずらしく即答をさける黒澤君に、あたしは先を促すようにうなずく。
「藤野は青山のことが好きなんだよな?」
しばし沈黙。真っ正面から見つめてくる黒澤君から顔をそらして、こくんとまたうなずく。
なんだろう……胸がざらざらする。
「俺と付き合ってるのは青山を忘れるためか?」
硬い声。黒澤君でも緊張することあるんだなと思ったら、込み上げてくるものがあった。
これは、なに? わかんないわかんない。わかりたくもない。
ぶんぶん頭を振っていたら、やっぱりな、という苦々しいつぶやきが耳に入る。
「そんなことだろうと思った。あいつ、人のものにしか興味持たないからな。彼氏効果が効いてきて満足してるんだろ、藤野。
けどまだ完全じゃないな。青山も言ってたぞ、まだしてなかったんだ、って。物足りなさそうだっだよ。
ふっ、ほんと人のものを奪うのが好きなんだな、あいつ。―協力してやるよ。俺も中途半端なことは嫌いなんだ」

ななななんなの!? 突然べらべらと。惚けたように見ていた。ひしひしと黒澤君の怒りが伝わってくる。 
嫌いなんだ、と吐き捨てながら立ち上がった黒澤君につられるように、あたしも立ち上がる。
かちゃんとカップが揺れた。ものすごく身の危険を感じる。逃げなくちゃ。
が、テーブルを一跨ぎした黒澤君にあっさり腕を掴まれてしまった。無言でもみ合った末、ソファに倒れ込む。
はあはあと荒い息をつきながらぶ厚いドアへ目をやるあたしに、黒澤君が言い放つ。
「手伝いに来てくれてる人はもう帰ったから、助けを呼んでも無駄。それに本が厚い壁替わりになって声も外に漏れないから」
「こ、これってレイプ!? やだッ! やめてよ。こんなの、こんなの……っ、黒澤君らしくない!」
「俺のなにを知ってるんだよ。藤野、おまえ俺の下の名前さえ知らないだろ」
ぎくっと引きつったあたしを見て、黒澤君が乾いた声で笑う。
……知ってるよ。武士みたいな名前。読めないんだって! 
訊けば簡単だけど、なんとなく自力で正解したくて奮闘中なんだよ。
「―俺の、ものにしてやる」
黒澤君は絞り出すように言って、シャツのボタンに手を伸ばしてきた。

121:はじめての彼(仮)
07/10/23 16:42:31 LKJ1Xgqw
まさかこんなことで黒澤君の赤い顔を見ることになるとは思いもしなかった。
冷たくて熱い目。こんなに怒るなんて……、バレても肩をすくめるくらいで済まされると軽く考えてた。
あたし、ひどいことしたんだ。息が苦しい。さっきも感じた、重くきりきりしたものが胸を襲う。
でも自業自得とはいえ、レイプは許せない。黒澤君もあとできっと悔やむ。苦しむ。

シャツの裾を引っ張り出されて、前をはだけられた。胸に視線が注がれる。
ほっぺたが燃えるように熱い。ブラの上から大きな手で包み込まれた。
「やっ! レイプなんてだめだめだめ。黒澤君、絶対あとで後悔するからっ。やめて!」
「さっきからレイプレイプって騒いでるけど、和姦にするつもりだから」
「はあァ? なに寝ぼけたこと言ってんのっ。あたし何度もやだって言ってるじゃないッ」
「こういう時のやめてはアテにならないだろ。だから体で判断することにした。濡れたら合意とみなすからな」
なにその傲慢な言い草ッ。そうこうしている間にも、黒澤君の手は縦横無尽に動きまわる。
髪を撫で、お腹を撫で、背中を探る指がホックを外す。無防備になった胸を下から持ち上げるように揉みしだく。
「いやああッ(なんか下のほうがもぞもぞする!)」
「乳首が硬くなってきてる。感じてるんだ?」
執拗に指でいじられ、赤く尖った先端が口に含まれようとしたその時、
あたしは思いっきり腕を突っぱねそれを阻止した。うがっと変な声がしたけれど気にしない。
「かか感じてなんかないもん! しつこく触るから、ただの条件反射だもん! 寒い時硬くなるのと一緒ッ。
濡れたら合意って、そんなの卑怯! 感じてなくても防衛本能で濡れるもんなのッ。だからだめ。そんなの認めない!」
黒澤君は体を起こして黙り込んだ。首をこきこき鳴らしている。なにやら難しい顔で思案中。
必死の抵抗が届いたのか。冷静になればわかってくれるはず、と期待したのも束の間。

「わかった。じゃあ、触らないで見てるだけにする。それで濡れたら問答無用で抱くからな。いいんだな」
「う、うん……は!?」
あまりにもストレートに抱くと断言されて、うなじの毛が逆立つ。
うそおォォ、あたしってば勢いに押されてとんでもない約束を! いまのなしなしッ。
慌てて起き上がったあたしを牽制するように、黒澤君は付け加えた。
「格好はそのままで。それと、さっきので濡れたんだったら一旦拭いておけば?」
「だからっ、感じてなんかないの! で、見てるってどのくらいよ。さっさと終わらせてよねッ」
売り言葉に買い言葉であとに引けなくなってしまった。迂闊さを呪ってももう遅い。
はたと気付くと、スカートはめくり上がりパンツが見えている。シャツもブラもずり下げられて半裸状態。
猛烈な羞恥に襲われたけれど、押し殺してソファに座り直す。
負けないもん。ぎゃふんと言わせるんだもん。その高い鼻をへし折ってやる!
「藤野の誕生日はいつ?」
意図はわからないものの、7月12日と仏頂面で答える。
足して19か、とぶつぶつ言いながら黒澤君はテーブルの上のものを片付けて、そこに座った。
テーブルとソファの間は50センチくらい。至近距離で対峙する。
「いまから19分。見てるから」
そう宣言して、馬鹿げた睨み合いがスタートした。


(つづく)

122:名無しさん@ピンキー
07/10/23 17:43:49 AaJcFsHZ
つ、続きを、続きをはやくっ!

123:名無しさん@ピンキー
07/10/23 19:34:53 L4ooJ1sj
イケイケ黒澤~!

124:名無しさん@ピンキー
07/10/23 22:14:06 g4U63Ocs
イイゾ黒澤~!


125:名無しさん@ピンキー
07/10/23 23:29:59 cHlau9rz
ゴーゴー黒澤~!

126:名無しさん@ピンキー
07/10/24 13:00:29 RKAroFTm
黒澤君がんばれ!

個人的には青山君派だけどな!!w

127:名無しさん@ピンキー
07/10/24 18:11:42 iNVJpfQg
はやく続きを………ッ
超支援

128:名無しさん@ピンキー
07/10/24 21:46:35 ZoM9RKkw
ま、まちきれない…!!

129:名無しさん@ピンキー
07/10/24 22:09:18 fBWyPkRr
足して19って、意味不明だからっ!
黒澤くん、頑張れ~!
続き、イイコで待ってます!

130:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:11:42 rLJzcOA4
あたしはできるだけ卑屈に見えないようにソファの上で姿勢を正し、
まっすぐ前を向いて黒澤君の後ろの壁にかかっている時計を睨み付けていた。
あれ、壊れてるんじゃないの? ちっとも針が進まない。

―やっと1分が経った! まだ18分もあるのかと思うと気が遠くなる。
19分は長い。てか、なんで足してんのよッ。つっこむタイミングを逃してしまった。
7分、せめて12分にしてとはいまさら言えない。なんか早々に音を上げるみたいでしゃくに障る。
しゃくといえば、余裕しゃくしゃくの黒澤君が憎たらしい。腕を組み、片方の手をあごに置いて見下ろしていた。
じりじりと、視線が肌の上を這い回る。まるで脳裏に焼き付けるかのごとく丹念に。
目の動きでどこを見られているのか、だいたいわかった。
尖ったままの乳首や脚の付け根。思わず手で隠したいのをぎゅっとこらえる。
そんなことしたら余計いやらしく映ってしまいそうだ。太ももの脇で、爪が食い込むほど拳を握る。
見られた箇所が熱を帯びて、煙が立ちのぼりそうだった。黒澤君の眼鏡は虫眼鏡かッ。
無理にでも怒ってないとくじけてしまいそうな気がした。

―あと13分。沈黙に押し潰されそう……。
相変わらず黒澤君は見続けている。一言も喋らず凝視。いったいなにを考えているのやら。
って、そんなの決まってる! すすすすごい、えっちなことされてる、いっぱい。頭の中で。
下腹部がしくんと蠢いた。さりげなく内股をこすり合わせる。なんかいま、違和感が。うそッ、まさか!?
ごくりと唾を飲み下す音がやたら耳につく。意識すればするほど呼吸は乱れた。
熱い。とにかく熱い。うっすらと汗がにじんでいる。喉がカラカラ。

「……黒澤君、紅茶飲んでもいい?」
「ああ」
ポットに残っていたお茶を黒澤君はカップに注ぎ、手渡してくれた。
ばかみたい。おっぱいを晒してお茶を飲んでいる自分がみっともなくてため息が出る。
口の中が苦くて涙がこぼれそうになった。

「藤野の体はきれいだな。他の―、男にも言われたことあるだろ?」
なんだ、その妙な間は。あたしが遊んでるとでも言いたいのか。失礼なッ。
「あるわけないでしょ! いままで誰にも見せたことないんだからッ」
叩きつけるように言い返す。自慢じゃないけどあたしは一途に想うタイプだったの! あれ、過去形?
それになんだかあたし、きれいだと褒められて喜んでるみたい……。
こんなおかしな状況に追い込まれたせいで、頭までおかしくなっちゃったじゃないのーっ。
どこか満足げな黒澤君に不審を抱きつつ、ぐびぐびと紅茶をあおった。

131:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:14:50 rLJzcOA4

「オナニーはどのくらいの頻度でしてるんだ?」
「ぷはあーーーッ!」
大道芸人ばりに紅茶を噴き出す。
幸い、そっぽを向いていたので黒澤君やテーブルの上の雑誌にはかからなかった。
黒澤君はやれやれといった感じで肩をすくめている。
「藤野はすぐ顔に出るからわかりやすいな。バイブを使ってるのか?」
「ばばばバイブなんか持ってるわけないでしょ! 家族と一緒に住んでるんだからッ」
「自分の手か。―青山のことを思い浮かべてしてるんだな」
それはもう質問でもなんでもなくて、断定口調だった。
最近はしてないもん! あ……ほんとだ。あたし、最後にオナニーしたのいつだったっけ?
口を開けば開くほどドツボに嵌っていくのがわかったので、黙っていることにした。
黒澤君がじっと手を見つめているのに気付き、太ももの下にさっと隠す。
動揺ばればれだけど、必要以上に意地を張るのはもうやめた。神経消耗するだけだ。
どうせ黒澤君はなんでもお見通しなんでしょっ。半ば逆ギレ気味に時計を見る。

―やった! あと7分。
黒澤君も腕時計で時間を確認していた。
顔を上げた彼と視線が絡み合う。決意漲る表情にどきりとする。
な、なによ今度は。狂ったように心臓が打ち始めた。
「途中経過見せて」
意味がわからないふりをしていると、黒澤君が膝を立てて脚を開くようにと指示してきた。
いやッ。だってさっき変な違和感があったもん。中からなんか出たような出ないような……。

黒澤君はあたしの知らない間に催眠術でもかけたんじゃないの!?
じゃなきゃ説明がつかない。いやだという意識はあるのに、あたしの体は勝手に動き出す。
そろそろと踵が持ち上がってきた。ソファがぎしっと音を立てる。
右足。続いて左足。だめだったらだめーッ。
ぴったりと合わさった膝はがくがくと震えている。なにも考えられない。
開いて、と少しかすれた低い声。あたしは魅入られたように両脚の力をほどいていった。

132:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:17:40 rLJzcOA4
―見られている。吸い付くような眼差し。こめかみから汗が一筋流れた落ちた。
そんなに見ないでッ。布に隔てられてるとはいえ、恥ずかしさに変わりはない。
ましてやシミができてるかもしれないと思うと気が気じゃない。
きつく口を結んでないとうめき声が漏れてしまいそうだった。
黒澤君はなにも言わない。あ、あたしの勘違い? 取り越し苦労? う、こっち向いた。
かすかに口元を緩ませているのを見て、不安と焦燥が渦巻く。

「藤野の細い指じゃ3本入れても想像つかなかっただろ。実物に触ってみるか?」

はあァァああああああ!? じーつーぶーつーーーーッッ!? さささ触ってみるうううううう!?
心の中で絶叫するのみ。突拍子もない発言になすすべなし。止めるひまもなかった。
固まってるあたしを尻目に、てきぱきとズボンとパンツを脱ぎ出す黒澤君。
え、あ、ちょ……っ! シャツの裾から突き出たものに絶句する。うそでしょ!? 
だってあれ、指3本(てか、1本しか入れたことないって!)どころかあたしの手首くらいない?
それにあの動きはなに? わざと? 陸に上げられた魚みたいにびちびちびちびち。

「―や、来ないでッ」
ぼうっと観察しているうちに実物が目の前に迫ってきていた。
すっかり下を脱ぎ捨てた黒澤君はソファの背に両手をつき、あたしを腕の中に閉じ込める。
「触って」
熱い息がおでこにかかった。
ひやぁと情けない声を上げ、押しやるつもりで胸板に手を当てたとたん、はっとする。
黒澤君の体は硬く、やけどしそうなくらい熱かった。掌からどくどくと鼓動が伝わってくる。
その力強い響きに、なぜか落ち着きを取り戻す。優位に立った気さえした。
軽くM字に開いた膝の間にある実物に目をやる。不思議と嫌悪感は湧いてこない。
ちょ、ちょっとだけなら触ってもいい、かな。ちょっとだけなら……。

好奇心に負けたあたしは、恐る恐る手を伸ばす。
不規則に跳ねる実物の根元をそっと押さえて、先端を触ってみる。
なんでこんな形をしてるんだろう。奇妙としか言いようがない。松茸みたい……ストップストップ! 
食べ物に譬えるのはなしッ。めったに口にしないとはいえ、あとで困ったことになりそうだ。
気を取り直して、先端の割れ目や浮き出た血管を指で撫でさする。
うっと苦しげな声が頭上から聞こえて、ぱっと手を引っ込めた。い、痛かったかな?
指先がぬるぬると光っている。思うより先に行動していた。
くんくんと匂いをかぎ、あろうことかその指をぱくりと咥える。少ししょっぱ、あ、やっちゃった!? 
黒澤君の驚いた気配に正気に戻る。引かれたっ、と思った次の瞬間には押し倒されていた。

133:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:21:40 rLJzcOA4
反則! とっさに浮かんだのはそれだった。
残り時間あと1分というところで黒澤君はあたしの体に触った。
見てるだけという約束を破ったんだから、抱く宣言は無効なんじゃない?
重い体をばしばし叩きながらそう訴える。黒澤君の肩が小刻みに揺れている。笑っていた。

「途中チェックした時に、もう濡れてたよ。自分でもわかってただろ。藤野こそちゃんと約束守れよ」
「そ、そんなこと……ないもん。あ、汗じゃない?」
苦しい言い訳だった。その証拠に言い返す口調は弱しく、黒澤君を正視できない。
往生際が悪いな、と黒澤君はあたしの手を掴んで股間に強く押し当てた。
そして重ねた手をゆっくりと動かしながら耳元で囁く。
「ほら、びしょびしょだろ。藤野は見られただけでこんなに濡らしたんだよ。入れて欲しくて仕方ないんだろ」
「やめ……んっ、やあぁ……きら、い……黒澤くん、なんかっ……大っ嫌い!」
手がほどけて、めちゃくちゃ振り回した拍子に黒澤君の眼鏡が飛んだ。
カシャンと落ちた場所に見向きもせず、黒澤君は足からパンツを抜き取り、顔の前にかざす。
「嫌いな相手にこんなことされて悔しいだろ。言うこと聞かない体が情けないだろ。
―たまんないな、その顔。もっと泣かせたくなる。別の意味でも、だな」

なにかのスイッチを押してしまったのか、黒澤君の様子が豹変した。眼鏡のせい? 
かけてる時とない時では全然印象が違う。さっきまでは興奮していてもからかう余裕があったようだったのに、
いまは激情が抑えられないといった感じだった。とにかく、いじわるモード全開。
着ていたものは瞬く間に剥ぎ取られて、素っ裸にされてしまった。黒澤君も全裸になってる。
見ないで、と言えば全身をじっくり舐めるように眺め回し、
触らないで、と言えば敏感なところを指で責め立て唇がそのあとを追ってくる。

「ああッ、だめえぇぇ……そんなとこ! 恥ずか、やあっ、舐めないで!」
「少しは学習しろよ」
黒澤君はがっちりと抱え込んだ脚の間から顔を覗かせ、小ばかにしたように鼻を鳴らす。
ひどいッ。なに言ってもやめないくせにーーーっ! し、ししし舌があああ!?
ぴかぴかにでも磨くつもりなのか、黒澤君はあそこを何度も何度も舐め上げてくる。
しまいには唇を密着させ、液体を吸い込む下品な音まで聞こえてきた。
やめてーッ。ほんとやめて! おかしくなっちゃううう。助けてえぇぇえええっ!
背中を大きく仰け反らせて、いやいやとすすり泣く。
「あ、あ、あ、やあぁぁあああああ!」

134:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:25:40 rLJzcOA4
クンニでイかされた。悔し涙があふれる。自分の体に裏切られた気分。
茫然と天井を見上げる。もうやだ……なにも考えたくない。
ぐったり虚脱していると、黒澤君が体を重ねてきた。
入れるぞ、と怒っているような泣いているような声がして、硬いものがめり込んでくる感触が走った。
「だ、だめえええっ。ああ赤ちゃんができちゃう!」
「大丈夫。ちゃんと付けてるから」
……そうなんだ、いつの間に。や、そうじゃなくてそうじゃなくて! なんか間違ってる。あたしも黒澤君もなんか間違ってるッ。
暗い目で見下ろしてくる黒澤君がすごく悲しい。胸が張り裂けそうだ。

「はぁはぁ、黒澤く……んあっ、こんなことして……た、楽しい?」
「―ああ」
「うそッ! だったら.……はぁ、なんでそんな……つらそうな顔っ! いたぁっ」
「……出そうなんだよ、食いしばってないと。藤野のここ、熱くてぬるぬるしてて……こんなに気持ちいいとは思わなかった」
ぎゅっと黒澤君に抱きしめられたのと同時に、あたしの中がいっぱいになる。
太ももから肩までぴったり。ふたりの境目がわからないくらいくっついたまま、10秒、20秒―
繋がってる部分に意識が高まる。目を閉じると、さっき目にした魚のように跳ねていたものが脳裏に浮かび、体が打ち震えた。

「―青山のこと、思い浮かべてるのか?」
ぱちっとまぶたを開くと、黒澤君が鬼のような形相でねめつけていた。
悲鳴を飲み込む。怖いけど、どきどきする。
いつも冷静沈着な黒澤君がこんな風に激しい感情をぶつけてくるの、あたし……嫌いじゃないかも。
「……だったら、なに。やめてくれるの?」
思ってもいない言葉が口をついて出てくる。ひゃあああ、なに挑発してんのー!?
絞め殺さんばかりの憤怒の色を浮かべる黒澤君に、痺れるような快感を覚える。
いままでやられっぱなしだったから、一矢報いてほくそ笑んだ。のも一瞬で、首に腕を回され肝を冷やす。
ここ殺されるううう、と思いきや体を引き寄せられただけだった。
なななによッ。混乱するあたしに、黒澤君はいたぶるように腰を突き出して言う。

「見ろよ、ほら。しっかり咥え込んでる。好きでもない奴に処女奪われるのは、どんな気持ち?」
「―! い、いたい……よ。すっごく痛い……やぁ、抜いて……抜いてったらッ!」
「いやだ。それより力抜いて」
くうぅぅ……何度も瞬きを繰り返す。
そんなことをしても、濡れそぼった局部や抜き差しされる肉の棒は消えない。
その事実に打ちのめされる。ばかだ。ふたりともばか。
お互い相手の傷つくようなことをわざわざ口にして、取り返しのつかないことに。
痛い痛いと叫ぶ。黒澤君に突かれるたび、ぼこぼこと心に穴が空くようでたまらなかった。

135:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:29:05 rLJzcOA4
どのくらい時間が経ったのか。気が付いたらすべてが終わっていた。
ずるりとあたしの体から離れた黒澤君は、背中を向けてなにかごそごそやっている。
―パンツ。とりあえずパンツが穿きたい。素っ裸は居た堪れない。
黒澤君はいったいどこへ投げ捨てたのか。よろよろと立ち上がったあたしの手首を掴む者がいる。
……なんなの。力なく振り向いて、ぎょっと目を剥く。
黒澤君は臨戦状態だった。

「誰が一回でやめるって言った?」
「はあァ~!? いい加減にしてよッ。もう気が済んだでしょ!」
「まだだ。藤野がイクまでやめない。初体験は痛かっただけだと記憶されるのは許さない」
「……い、いいから。あたしが許すから、やめて……」
黒澤君は真顔だ。この調子ではなにがなんでもやり通すつもりなんだろうな……。
しゅるしゅると全身から抗う力が抜けていく。つつーっと粘液が内股を伝っていった。
ただ手首を強く握り締められてるだけなのに、あたしの体はソファのほうへと傾き始める。
そして黒澤君の上に座る形で、後ろから貫かれた。

どう考えても、はじめてとは思えない。
首筋に唇を這わせながら両手で胸を撫で回し、その上座った状態で腰まで動かすなんて芸当、初心者のすることォォ!?
「黒澤く……あんッ、童貞って、うそでしょ! な、慣れてるもん……ほかの、ほかの……っ、なんでもないッ!」
この、胸がぎゅーっと締め付けられる感じ。覚えがある痛み。……嫉妬?
後ろを向けていて、吐きそうな顔を見られなくて良かった。
自分でもよくわかってないのに、なにを見透かされるかわかったもんじゃない。
「―他の子としたことはないよ。藤野がはじめてだ……ずっと前から、こうしたかったんだ。
本当は鏡の前でしたかった。繋がってるところや、藤野の乱れた姿を鏡越しに眺めながらしたかった」
「ヘヘヘヘンタイ! やらしいこと言うのやめてよっ、ばか!」
「しょうがないだろ。やらしいことしてるんだし、藤野の体がやらしすぎるんだ……ここ、勃起してるな」
「いやあぁぁんっ!」
黒澤君は片方の手を下に滑らせ、充血したクリトリスを指でこすった。
信じらンない。黒澤君がこんなすけべだったなんて! むっつりすけべってやつだっ。
もっと信じらンないのは、あたしもどうやらすけべだったってこと。そんなの知りたくなんてなかった!
黒澤君のすることなすことに、いちいち反応するあたしの体。どうしてくれんのーっ!?
物欲しそうに揺れるお尻がいやッ。どっから出してんだかわかんない鼻にかかった甘ったるい声がいやッ。

「そこ、だめなのォ……触っちゃ、やぁああ……へ、へんになっちゃうのおォォ……いやあああああっ!」

136:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:32:30 rLJzcOA4
月並みな表現だけど、体中に電流が走った。どこかへ飛んでいってしまいそうな感覚に襲われた。
口が裂けても自分から言うつもりはないけど、確かにあたしはイった。
自分でするより何倍もの恍惚感に包まれた。
黒澤君にそのことを指摘されるのは死ぬほどやだけど、なにか言ってくれないと動くきっかけがつかめない。
もどかしく重苦しい空気が流れるなか、突然あたしのケータイが鳴った。
びくっと鞄を見つめるものの、出る元気がない。
ほっといていると軽快な着信音は止み、それが合図になったかのように黒澤君が喋り出した。

「いまのは……だめだ」
意味不明の顔をしていると、ここでイっただろ、と指先で軽くクリトリスを弾かれた。
「きゃっ!」
「だめだ。俺ので感じないと……俺のでイクところが見たい」
黒澤君の思いつめたような切ない眼差しに、胸がつまってなにも言えなくなってしまった。

ど、どんだけ黒澤君は頑固なの……、どんだけあたしは押しに弱いの!?
みたびたくましい体を迎え入れた時、再び場違いな着信音が鳴り響いた。
誰からだろう、うちでなんかあったとか? 千明? まさか、青山君……?
わずかに見せた狼狽になにかを察知したのか、黒澤君が鞄を手元に引き寄せた。
「ち、ちょっとなに……やめてっ。人のケータイ勝手に、あっ……!」
黒澤君は着信名を一瞥するや否や、素早く開いて通信ボタンを押してしまった。
目を見開き口をつぐんでいるあたしを見据えながら、黒澤君はケータイに耳を澄ませている。
その顔がみるみるいつもの、というかいつも以上の冷淡なものに変化していくのを、かたずを呑んで見守った。
黒澤君が無言でケータイをあたしの耳に押し当ててくる。

『―あれ、おかしいな。繭ちゃん、聞こえてる? もしもーし……』

青山君の明るいのんきな声が耳朶を打つ。
最悪の事態だ。こ、こういう場合はどうすれば……電話。とにかく電話を切らなくちゃ。
かたんと横のテーブルに置かれたケータイに手を伸ばす。
が、当然のごとく黒澤君に阻まれる。
両手を頭の上に押さえつけられ、下半身は釘付けにされていて身動きが取れない。
懸命に体をよじるも、それは単に性器をこすり付ける淫らな行為なだけだと悟り、抵抗をあきらめた。

137:はじめての彼(仮)
07/10/25 00:37:24 rLJzcOA4

「やらしい声、聞かせてやれよ。その方があいつも燃えるだろ」
黒澤君は特に声をひそめることもなく言った。
楽になるぞと言わんばかりのやさしい声音とは反対に、表情は冷ややかそのもの。
なんでこんないじわるするのッ! 泣きわめきたい心境だった。
ケータイと黒澤君を交互に見やりながら、電話切れてますようにとひたすら願い、
やめてよばかばか光線を送り続ける。早く終わってと念じることしかあたしにはできなかった。

黒澤君がぐちゃっぐちゅっとわざと卑猥な音を立てながら腰を使い始めた。
反射的に胸を反らす。ああッ、だめ! そんなことしたら吸って欲しいとおねだりしてるようなもんじゃないっ。
果たして、黒澤君がおっぱいにむしゃぶりついてくる。腰同様に、わざと音を聞かせるように舐めたり吸ったりしている。
足の先からなんともいえない熱い痺れが這い上がってきた。
「―ッ!」
食いしばった歯の間からくぐもった声が漏れる。
声出せよ、と黒澤君が呪文のように繰り返す。あたしは目に涙をためて、首を振り続けた。
「我慢してる姿がどれだけそそるか、わかってないだろ。声出さないと、その顔撮ってあいつに送るぞ」
「や、やめてえぇぇ!」
本気でしそうな勢いに、大声を張り上げて制止する。
一声発して緊張の糸が切れてしまったのか、ぼろぼろと泣き出す。
「うっ、ぐすっ……ひどいよぉ、こんな……うう、いじわる……も、もう知らないッ……ひっく、あ、やあぁんッ」
泣き声があえぎ声に変わっていくのに、そう時間はかからなかった。
あたし……ボロ負けじゃん。完膚なきまでにやられて、逆らってたのがばからしく思えてくる。
もうどうにでもなれという気持ちで黒澤君の動きに合わせて腰を振り始めた。
黒澤君が片脚を肩に担いで、奥まで深く突き刺す。摩擦のスピードが激しくなってきた。
ああッ、えぐるようにこすり付けられるのがたまらないッ! 体がびくびくと痙攣して大きく跳ね上がる。

「あぁっ!? な、なんかくるっ……やあぁ、怖いぃ……あっ、あっ、あっ、あぁあぁぁああああああーーーっ!!」
「まゆっ、―だ!」
……なんかいま、下の名前を呼ばれたような? あとに続いた言葉もよく聞き取れなかった。
だ、だめ……部屋の景色がぐるぐる回ってる。頭が重い……複雑なことは考えらンない。
暗くなっていく視界のなかに、黒澤君の姿が浮かぶ。なんだろう……しまったって顔してる。
うっかりミスはあたしの専売特許だと思ってたけど、なにかしでかしたらしい……うろたえぶりが半端じゃない。
く、くそぉぉ……せっかく黒澤君の弱みを握れそうだったのに……意識が、薄れてきた……む、無念。


(おわり)

138:名無しさん@ピンキー
07/10/25 00:38:19 rLJzcOA4
ラブラブなふたりも書きたいところですが、いかんせん疲れてしまいました。
充電後、つづき書くつもりですが当分先になりそうです。ではまた。

139:名無しさん@ピンキー
07/10/25 02:14:07 teIJW5Yb
GJ!!!超GJ!!!!黒澤くん萌え
続き楽しみにしてるよ
ゆっくり休んでください

140:名無しさん@ピンキー
07/10/25 08:46:56 qAtSsoFD
黒澤くん中出しかw
つーか青山くんどうでるんだろう。
続きすごく気になるけどまったり待ってます。
投下乙でした。

141:名無しさん@ピンキー
07/10/25 09:40:15 7ILuwTb5
>>140
つけてる描写あるよ

乙でしたー。すごく良かった!

142:名無しさん@ピンキー
07/10/25 10:36:31 qAtSsoFD
あれ、そうか。一回め終わったあとの
背中を向けてごそごそやってる…のところで外したのかと思ってた。
じゃあ何にうろたえたんだろう。ますます気になるな~。

143:名無しさん@ピンキー
07/10/25 10:54:16 7ILuwTb5
うろたえたのは、自分がつい言ってしまった言葉に対してだと思われ

144:名無しさん@ピンキー
07/10/25 13:10:45 klGGHakT
GJ! 充電終わるまで待ってるよ!

145:名無しさん@ピンキー
07/10/25 13:42:56 wp8fsf3g
黒澤君頑張れ~!!
書き手さん超GJ!!!

146:名無しさん@ピンキー
07/10/25 23:10:28 iceawEAC
燃えた…ss読んで久々に燃えたよ!!
黒澤君の鬼畜デレぶりがたまらん!
十分に充電してから続き投下して下さい。正座で待ってる

147:名無しさん@ピンキー
07/10/26 07:57:32 aFkzQuNZ
個人的にはお互いが好き合ってないと、もえられないな……
今後の展開によっては結果オーライになるかもしれないけどw

148:名無しさん@ピンキー
07/10/26 11:06:03 PthzLK+v
えー、繭タンにも何かは芽生え始めてると思ったよ。
まだ自覚以前の段階みたいだけど…

作者さん超GJ!夢中で読んだよ!
初めてこのスレ覗いたけどこんな萌え&燃えに出会えて凄く嬉しい
続き自分のペースで頑張って下さい!

149:名無しさん@ピンキー
07/10/26 15:23:40 u5OcELS1
>>148タンに激同!繭タンも嫉妬?って自問自答してたし♡
んも~すげーGJ!!
携帯で青山くんは当然聞いてたワケで、今後どう出てくるのか楽しみっす!
続き、いつまででも待ってますので、ゆっくり書いてくださいね(^^)


150:名無しさん@ピンキー
07/10/26 16:32:21 Xtx+FucU
このSS読んでスレをお気に入り登録してしまったほどに萌えた


151:名無しさん@ピンキー
07/10/26 17:12:52 aFkzQuNZ
>>148
いや、だから自覚してんだかしてないんだか分かんない状態で処女奪われたくねええぇ
…と私は思ったわけで。

152:名無しさん@ピンキー
07/10/26 17:15:43 W+IJBOzi
まあ、そこは人それぞれだよな

153:名無しさん@ピンキー
07/10/26 19:48:51 b9JwGsMF
ネ申SSを読んだ…GJすぐる
天才だよ、おま

154:名無しさん@ピンキー
07/10/30 01:33:46 L6MpzGSt
黒澤くんGJ
繭タソGJ
作者さんGJ

ゆっくり休んで
是非シリーズ化を!

155:名無しさん@ピンキー
07/10/30 06:21:52 LN3bEJms
SS超大作

156:名無しさん@ピンキー
07/10/30 22:11:35 r8FzPa/G
マンセーレスが多いとちょっと引く

157:名無しさん@ピンキー
07/10/30 22:42:22 i1G/s9ke
いいものはいい

158:名無しさん@ピンキー
07/10/31 14:52:56 StqQpDb+
あんまりマンセーが過ぎると、作者さんが今後来にくくなっちゃうよ

159:名無しさん@ピンキー
07/10/31 17:03:19 r0XWHa9E
半年ぶりにこのスレに来た。377氏も繭子たんもGJ。

160:名無しさん@ピンキー
07/10/31 18:46:01 6J8muJNy
つ 【好みはひとそれぞれ】
キャラ名が黒澤じゃなければな、とオモタw
脳内で好きな名前に変換してくる

161:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 20:57:49 /ulSQ3lQ
test

162:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:01:00 /ulSQ3lQ
前スレで『Baroque』『teacup illusion』を書いた者です。
何か陵辱ネタの話が出ていたので、チャレンジしてみました。

あと、HNを付けてみました。トリップも今後これで固定です。
まとめサイトの方には、よろしくお願いします。

163:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:02:53 /ulSQ3lQ
『NO REFUGE, BE PRAYING』

 従兄との、傷つけ合うような、貪り合うような、危険な情事の記憶。

 色恋沙汰も知らない子供のころは、従兄のことが、単に物静かで優しい
親戚のお兄ちゃんだとしか思っていなかった。
 私は昔からわがままで意地っ張りで怒りっぽくて落ち着きがなくて、
今でもそんな自分が嫌いなのだが、従兄はいつもそんな私に少し困ったような笑顔で
付き合ってくれていた。そして私は、そんな彼に最大限甘えきっていた。
 母も叔母も、そんな私たちを見て、仲のいいことだとか、お嫁さんになっちゃえとか、
そんな色んなことを言ってきた。私はそういうことを言われるのが嫌で、いつも癇癪を起こしていた。
そして従兄はそんな私を見て、また困ったような顔で笑うのだった。

164:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:04:50 /ulSQ3lQ
 従兄が高校に入ったとき、寮に入ったため、しばらく会う機会がなかった。
二年間何があったのかはよく知らない。久々に会った彼は、相変わらず物静かだったが、
何となく近寄りがたい雰囲気を持っていた。
「久しぶりだな」
「う、うん」
「しばらく会わないうちに大きくなったな……あ、いや、きれいになったな」
「あー。今、一瞬、子供扱いしたでしょ」
「はは、済まん済まん」
 何か、背の高さといい、声の質といい、喋り方といい、昔とずいぶん変わって見えた。
「なあに、大人ぶっちゃってさあ?」
「そうか? そうかあ。そう見えるのかあ」
 一人で何か難しそうな顔で小首を傾げる。
「ぶっちゃけ、おっさん臭いよ、色々と」
「ははははは、酷いことをいうなあ」
 心なしか、余裕ぶってあしらわれているように感じる。
少し、むっとしたところで、母が割って入ってきた。
「まあまあ、しばらく会わないうちに、大きくなっちゃって」
「お久しぶりです、伯母さん」
「大学受験はどう? 大変でしょ?」
「いやあ、キツイです。できれば一発で受かりたいんですけどねえ」
「ケーキがあるから食べてね。ほら、あんたの分もあるわよ」
「あ、じゃ、いただきます」
「はーい」
 私は母と従兄を追って台所に向かった。小さなしこりを、胸の奥に感じながら。

165:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:08:06 /ulSQ3lQ
 母と叔母が台所で長話に入っている間、ケーキを食べ終えた私たちは所在なく、
居間のソファに並んで座っていた。
 何となく、会話もなく、やや重苦しい空気が流れていた。
「寮は……」
 不意にそんな言葉が口をついて出た。
「どうなの?」
「んー、毎日楽しいよ。食堂はあるし、浴場は広いし、何より個室だし」
「学校は?」
「楽しいね。勉強は大変だけど、バドミントン部は準優勝って実績を残せたし、
図書室は本が一度に五冊も借りられるし」
「じゃあ、勉強は?」
「うーん、それが、だいたい十位以内……二年のときは。
五位以内に入れたり入れなかったりする。最近は二位」
 あまり満足していないような口ぶりだった。高望みしすぎだ、と心の中で思った。
「何よ、一位じゃないんだ?」
「ああ。そこまでくるともう、いかにパーフェクトをキープするかって世界だからなあ。
神経の消耗っぷりも尋常じゃないね」
 目に光がなかった。私もほんの少し前高校受験を経験した身だが、
いくら大変だったとはいえ、ここまで疲れ果ててはいなかったと思う。
 従兄が、深く、溜息をついた。
「もう、老けて見えるよ、本当に」
「うわ酷いことを言われた! ショックだ!」
 おどけてみせている。どこからどう見ても自然に振舞っているところが逆に作りっぽかった。
どうもさっきから気になる。一体何なんだろうか。

166:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:09:33 /ulSQ3lQ
 お茶を台所に取りに行って湯呑茶碗を二つ持って帰ってきたら、
従兄が目を閉じて静かな息を立てていた。
(ああ、なるほど)
 疲れているのだろうと思い、黙って茶碗を置いて横に座った。
 従兄の寝顔は安らかだった。さっきまでの微妙に張りつめた雰囲気が、今はない。
(そうか、親戚付き合いだから、無理して頑張ってたのかな)
 気力だけで極力普通の振りを装っていたのだろうか。だとしたら、あのわずかに感じられた
わざとらしさも分からなくはない。本当は勉強でヘトヘトになっていて、だから目を離した隙に
寝落ちしちゃったりするのだ。
 口の端から少しよだれが垂れている。
(もう、仕方ないなあ)
 人差し指で拭ってあげると、従兄の表情が変わった。やや苦しげに眉をひそめて、
うう、と唸っている。起こしてしまったかと驚いて指を離したが、そのままうなされ続けていた。
悪夢でも見ているのだろうか。
(大変なんだなあ)
 従兄のこんな辛そうな様子は今まで見たことがない。胸がうずいた。
気丈に振舞っているが、本当はいつも気力の限界ぎりぎりのところで生きていて、
夢の中でも安らぐことすらできないのだろうか。
 そっと、従兄の手の甲に、自分の手を重ねた。彼のうめき声が、わずかに小さくなった。
私はそのまま、何も考えずに、しばらくじっとしていた。

167:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:11:50 /ulSQ3lQ
 次に気がついたときには、自分もすうすうと息を立てて、従兄にもたれかかって寝ていた。
眠気が伝染ってしまっていたらしい。
 ふと彼の顔を見ると、彼は目を開けて、ぽかんとした表情で私の顔を見つめていた。
(……あれ?)
 妙なことになっている。私もつられて彼の目を見返してしまった。彼の手が、びくん、と
わずかに強張ったのを感じた。
 そのまま、また、何となく気まずい空気が流れた。
 従兄の方が先に耐え切れずに目をそらせた。私たちの手を見た。肩と肩が触れ合い、
密着しているのを見た。彼の全身が大きく強張るのを、私は体越しに感じていた。
 そのまま、途方もなく気まずい雰囲気が、ずっしりとのしかかってきた。
(な、何か……何かしなきゃ。何か言わなきゃ)
 私も動転していた。飛びのいて離れるのが、この場合最も自然な反応なのだろう。
しかし、私はぎゅっと彼の手の甲に力を込めると、彼の腕をぐいっと自分の腕に絡ませていた。
「お前……」
 従兄が呆れたような声で言う。私はそこでやっと、自分が何をしているのかに気づいた。
「な、何よ、そそそ、そんなんじゃないんだからね!」
「そんなんって、お前……どんなんだよ」
「ななな、何よ、そ、そんなこと、私に言わせるつもりなの、このムッツリスケベ! 変態!」
「へ、変態って何だ! というか、マジで何なんだ一体!」
 自分でもよく分からない。既に混乱の最中にいた。
 彼の表情が私の目に映った。狼狽、困惑、焦燥、悶絶、そうしたものが入り混じった顔。
でも、彼の瞳はただ一つの感情を私に示していた。
 呆れている。
(私に呆れている)
 そういうことだった。それはそうだろう。私にだって分かる。でも、

 いつの間にか私は泣いていた。声を上げずに、ただ涙だけが止めどなく流れていた。

168:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:13:55 /ulSQ3lQ
 従兄は、一瞬歯を食い縛った。苦虫を噛み潰しているのとは違う。
何か、どうしようもない運命を、仕方無い、と黙って受け止めたような顔だった。
 そのまま唇をぐっとへの字に閉じると、空いていた腕を伸ばし、私の背に回した。
 私は、ずるずると身を崩すと、そのまま顔を彼の胸に埋めた。
(何やってるんだろう、私。馬鹿みたい)
 声を出すような真似はしなかった。母や叔母に聞かせる訳にはいかない。
上手に事情を説明できる自信がなかった。
 しばらく彼の胸の中で泣いているうちに、頭が少しずつ冷静さを取り戻してきた。
(本当に、何がどうなって、こんなことになっちゃったんだろう)
 今まで全然意識していなかった。彼は私の行動に動揺したし、私は彼の反応に動揺したことになる。
 どう動揺したのか?
 答えは私が自分で言っていた。性的な意味で、だ。彼は私を異性として認識して、
それで当惑したのだ。そして私は、
(私は?)
 異性として見られて、恥ずかしかったのは確かだ。
(でも、何で私、泣いてたんだっけ)
 恥ずかしくて泣いたんじゃない。悔しくて泣いたんだ。じゃあ、何で悔しいと思ったんだろう?
(彼の目だ)
 私が醜態を晒した後、彼は呆れたような目で私を見ていた。そのとき、私は異性ではなく、
ただの癇癪持ちの変な子供でしかなかったということになる。
 子供として見られるのと、異性として見られるのと、どっちが悔しいか?
逆に言えば、どっちがより嬉しいのか?
(私は子供じゃない)
 異性として見て欲しいかと言われても困るのだが、自分も無意識のうちに彼を異性として
求めてしまっていたのは確かだ。私は彼の手を取って、腕を絡ませた。
 それが、偽らざる本心なのだ。多分。

169:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:17:18 /ulSQ3lQ
 私は彼の胸から顔を起こすと、一つ大きく深呼吸をした。
「大丈夫か?」
 彼が小声で心配そうに訊いてくる。
 私は答えず立ち上がった。そのまま階段まで歩く。
 階段の半ばで振り向いた。彼がまた、困惑の極みのような表情で、
こっちを見ているのが分かった。
 私は無言で彼を手招きした。彼はさらに困惑を極めたような顔になったが、
それもせいぜい三秒くらいで、意外と素直についてきた。

 そのまま、二人して、足音も立てずに二階に上った。

 二階の私の部屋に入ると、私は内鍵をかけた。そんな私の手元を、
彼がまた呆れたような目で見つめた。
 だが、すぐに顔を引き締め、厳粛な表情になった。
「……で、何だ?」
 何だろう。
 二人っきりになりたかったのは確かだ。人の来ない閉鎖された場所で、特に何より私の部屋で。
 で、その後、私は一体何をどうしたいんだ?
(危ないことをしてるな)
 こんな状況を自ら作って、どういうことが起こりうるか、分かっているつもりだった。
 危ないこと。
 私にとって、途方もなく危険なこと。
 痛いかも知れない。傷つくかも知れない。後悔するかも知れない。
取り返しがつかない、何か途方もないことが起きるかも知れない。
 そんなことを、本当に私は望んでいるのか。
 私は、今、おかしくなっている。

 でも。

 私は彼に向き合うと、目と目で見つめ合い、顔と顔を近づけた。
そのまま、唇と唇がくっつく大分手前で、ぴた、と止まった。

170:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:18:35 /ulSQ3lQ
 彼の目の色が変わった。またしても、覚悟を決めたような色だった。
そのまま、息をゆっくりと吐きながら、不思議なくらい安らかな瞳に変わっていった。
 私のあごに優しく手を添えると、唇を半開きにして、私の唇に重ねた。
(わ……)
 私はぎゅっと目をつぶった。これが私のファーストキスになる。
 彼が私の唇をつまむようにして吸う。音が耳元に響くたびに、私の体は硬くなり、
同時に頭は霧がかかったように曖昧になっていった。
 何か、大きなものが、失われていくのを感じた。
(もう、戻れない、かな)
 怖いのに、これから起きるであろう色んなことを、受け入れてしまっている自分がいた。
 唇の端を舐めたり、舌を軽く入れて私の舌をかき回したりして、彼が私のことを求めてくる。
何か、ものすごいファーストキスになっている。
 うっすらと目を開けて彼の瞳を見ると、相変わらず不思議なくらい穏やかだった。
 私は昔読んだ漫画のことを思い出していた。獲物を見つけた獣は、決して唸ることなく、
穏やかな目をするという。
(獣なんだ)
 私の方が唸っていた。苦しいような、切ないような、そんな鼻声だった。

 気がつくと、彼が私の背中をがっちりと抱き締めていた。痛くないが動けないぎりぎりの加減で、
ゆっくりと力を込めてくる。
 ぐい、と傾く感じがあった。彼が体重をかけて、私をベッドに押し倒しているのだ。
 彼の瞳が私の瞳をじっと見据えている。私の反応を慎重にうかがっているような、そんな感じだった。
 また、漫画のことを思い出した。コタツから追い出されようとしている年老いた重い雄猫が、
人間の手を噛んで抵抗する。血が出ないように、ゆっくりと、ゆっくりと力を込めて。
その瞳は、自分の方が人間より偉いのだ、人間が本当に怒る直前のぎりぎりのところまで
そのことを思い知らせてやるという、ご主人様の目だったと書いてあった。
 その年老いた重い雄猫と、従兄とが、かぶって見える。

 少し肩に痛みが走る。そこで私は、自分の体がガチガチに硬くなっていることに気づいた。
彼は私の目を見ながら、少し半眼になって、わずかだが明らかに力を抜いた。
(ずいぶん優しいご主人様だなあ)
 私も体の力を軽く抜いた。そのまま、私の背中が、とさり、とベッドに倒れ込む音を聞いた。

171:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:20:10 /ulSQ3lQ
 手慣れていないが、それでもてきぱきとした手順で、彼はあっという間に私を裸にした。
私の裸体を見て、彼が大きく溜息をつく。
「ほーう……」
「な……何よ」
「きれいだ」
「なっ!」
 恥ずかしくなって、胸と股を手で覆った。
「何言い出すのよ、こ、この、ド変態!」
「いや、かわいいな、その隠す仕草もさ」
「う、うるさい! このムッツリスケベ! エロオヤジ!」
「うん。まあ、否定はしない」
 うんうんと神妙な顔でうなずいている。またあしらわれている、と感じた。
「まあ、いいや。とにかく」
 彼は私の耳たぶに顔を近づけると、はむ、と唇で挟んだ。
「きゃっ!」
 そのままあちこちを、ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて強く吸った。
跡をつけているのだ、と理解するのに、十数秒程度の時間が必要だった。
(こいつ……マーキングしてる)
 ますます獣だ、と思った。人の体を縄張り扱いするな、とも思った。
 不意に、胸を隠している腕と、股を覆っている手の甲に口づけをされた。
「わっ! そこはやだっ!」
「んー?」
 彼は無理に手をはぎ取るようなことはしなかった。ただ、手の甲をひたすら
音を立てて吸っていた。
 妙に抵抗する気にもなれずに、しばらくされるがままになっていたが、
次第に腕と掌に妙な感覚を覚え、その正体に気づいて愕然とした。

 胸の先が尖って、腕に当たる。
 隠している場所が、しっとりと潤っていく。

172:A-K ◆pQ0puWyYi.
07/11/01 21:21:35 /ulSQ3lQ
(嘘っ!)
 恥ずかしくなってつい手を離して、べたついた掌をまじまじと見つめてしまった。
「これは……」
「ち、違う! そんなはずは……」
「嬉しいね。反応してくれてるんだ」

 信じられなかった。それほど激しい愛撫ではなかったはずなのに、濡れている。
なぜだ。ひょっとして、信じたくはないが、この状況下で私も興奮しているのか。
(……て、いうか、いいのか、私)
 さっきから、一方的にされるがままになっている。今の姿を冷静に考えると、
男の欲望に屈して流されている形になる。そんなことが果たして許されていいものか。
 まして、こんな状況下で興奮している私は、一体何なんだ。マゾか。マゾなのか。
そういう変態さんなのか、私は。

「初めて見るが、こんなんなってるのか。じゃあ……」
 彼が股間に顔を突っ込もうとしていたので、反射的にチョップで沈めた。
「うがっ!」
「ば、馬鹿馬鹿馬鹿! そんなバッチイところ舐めるなっ!」
「舐めるなってお前……舐めないと、後で大変だよ?」
 何が大変なのかは聞きたくなかった。従兄の頭を全力で押し返すと、
意外にも彼は素直に頭を引いた。
 そのかわり、私の体の上にかぶさってきた。
「うわっ!」
「……本当に分かってるのか?」
 体重で潰れない程度に体を浮かせて、私の耳元で真面目な顔で言う。
「わ、分かってるわよ……ていうか、本気?」
「既に俺の中ではそういうモードなんだが」
 彼の目が据わっていた。穏やかだが、何かに酔っているようでもある。
「それに、言い訳っぽいが、誘ってくれたのはお前だ。それは本当に有難う。
で、俺はそれに乗りかかった船だ。最後まで行くよ」
「ううっ……」
 正直、ここまで来ると、怖さの方が強くなっている。
 だが、もう止められない。ものすごい勢いで、雰囲気に流されている感じがあった。
 それに、丁重に感謝までされてしまった。酷い男だ。これじゃ、断れないじゃないか。
「……好きに、すれば」
 私の方も、無責任ながら、そう覚悟を決めた。


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