07/07/08 14:05:44 nnf8brCg
【七不思議(美術室)】
「悪魔の壺」
私達がそう呼ぶ奇妙な壺は、美術室の片隅に置かれている。中からヒゲの大魔王でも飛び出しそうな(実際、あの壺によく似ている)この壺には、妙な伝説がある。
深夜になると壺の中は異次元につながり、手を入れると引き込まれる、というのだ。
これは、わが紫ヶ沼高校七不思議のひとつでもある。
今、件の壺が私の目の前にある。美術室の窓から見える外は暗い。
今頃、私のほかに6人が、この暗い学校のあちこちに居るはず。
つまり、私達7人は、肝試しを行っているのだ。
各人が同じ日の深夜、七不思議の各場所に一人で向かう。そして、問題の場所や物に印をつけ、そこに行った印とする。
翌日、明るくなったら全員でひとつずつ場所を回り、各自が体験したことを話そう、というイベントなのだ。
そういった訳で、今、私は深夜の美術室で、変てこな壺と対面している。
深夜に女子高生が家を抜けだし、高校に来るのはちょっと大変だったが、これまでのところ、特に怪異はない。後は、壺の中に手を入れて、底に印をつけるだけだ。
壺は側面いっぱいに笑い顔が描かれていて、上部がくびれて、その上に壺口がある。壺の口狭くは無いが、くびれのせいで、片手しか入らないだろう。
壺を上から覗き込む。壺の大きさ自体は、たいした事は無い。手を入れても、ひじの上辺りまでしか入らないだろう。
だけど、今、壺の口から見える内部は、とてもその程度の深さには見えない。暗闇が内を満たし、底は完全に隠されてしまっている。
…さすがに、少し怖い。
だけど、そうもいっていられない。深く息を吸い込んで、吐き出す。右手にチョークを持ち、壺の口へと近づける。