07/11/09 02:08:08 eLjj8+Vx
求導女は、慶の陰茎を口に含んで愛撫するのを好んだ。
「慶ちゃんのは綺麗で匂いもきつくないし、大きさが程よいからしゃぶり易いのよ」
求導女のこの言葉を、賞賛と取るべきかどうか慶は迷う。
だが実際問題、こんなにも心地好い行為を彼女から進んでしてくれること自体には、
異論があろうはずもない。
口淫は大抵、交接の合間に行われた。
求導女の肉体を散々責め立てた後。慶が小休止を取って微睡んでいる時。
慶の陰茎を掌で玩んでいた彼女の躰は下にずれ、
未だ淫液に塗れたままのその部分に優しい口付けを始めるのだ。
「八尾さん……くすぐったいよ……」
夢うつつで呟く慶をよそに。
求導女は棒飴でも舐めるように慶の陰嚢の裏側から茎全体、そして裏筋を通って鈴口まで、
丹念に舐り廻す。
そうする内に慶の陰茎は頭をもたげ、ぴくんぴくんと物欲しそうに蠢き出す訳だが、
そうなってからが口淫の本番なのである。
求導女は人差し指と親指で輪をつくり、ぱんと張り出したカリ首を囲む。
そうして亀頭を支えてから、舌を伸ばし、艶々とした肉の表側のみを舐め廻すのだ。
敏感になった部分に甘い刺激を延々と受け続け、
慶の亀頭の裂け目からは透明な粘液がとろりと溢れ出る。
「うう……八尾さん」
焦らすような舌の動きに耐えかねて、慶は腰を捩って逃げようとした。
「駄目よ慶ちゃん。少し我慢して」
求導女が静かな声で言い含める。
「じっと横になってなさい。大人しくいい子でいたら」
「……いたら?」
「この世のものとは思えない、とても気持ちのいい思いが出来るのよ」
そう言って微笑んだ求導女の顔は、男に淫夢を見せる夢魔のように美しかった―。
101:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:18:16 eLjj8+Vx
赤いベールの頭が、慶の股間で小刻みに揺れている。
求導女は今、亀頭だけに舌を絡める口淫を行っていた。
――大人しくいい子でいなさい。
これまで、求導女の教えを範とし、求導女の言葉に従い続けて生きてきた慶は、
求導女に言いつけられたことには決して逆らうことはなかった。
当然この、耐え難く寧ろ苦しみさえ感じさせるほどの、求導女の奉仕に対しても―。
「ああぅ……う……ああ……や、八尾さん……八尾さん!」
あの時―
もう、かれこれ二時間以上も亀頭のみを責め立てられて、慶は悶絶しかけていた。
陰茎がぐずぐずと崩れ落ちそうな凄まじい恍惚感の中、
不意にカリ首や、裏筋の辺りにほんの僅かな指先の刺激が加えられる。
その度ごとに慶は、絶頂感の伴わないまま、だらだらと精液を漏らし続けていた。
「ああ……ああ……あ」
快楽に眼が霞む。
脚を突っ張り、腰の脇でシーツを両手に掴み、淫欲地獄に耐えながら慶は、
このきりのない快感の連続に、自分が女になってしまったような錯覚を起こしていた。
口淫の合間に乳首をそっと弄くられたり、
肛門の辺りをもにょもにょと摩られたりして声を裏返らせている内に、
慶は、自分の男としての自我が崩壊してしまいそうな危機を感じた。
でも―気持ちいい。
もう―どうなったって構わない。
とろんとぼやけた瞳で、舌を蠢かせている求導女を見下ろす。
その卑猥な口元の動きと、伏せられた長い睫毛の高貴な美しさとに魅せられながら、
慶の意識は、温かい波に飲み込まれるようにゆっくりと遠のいて行った―。
102:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:18:57 eLjj8+Vx
この特別な口淫は、いつもいつも為される訳ではない。
これは快感の大きさの分、奉仕する側もされる側も、非常に消耗が激しいからだ。
それに、時間も掛かる。
いつしかこの口淫は、日曜日の―午前中に行われる礼拝以外は教会が休みになる日限定の、
特別な愉しみとして取って置かれることになった。
いま求導女が行おうとしている口淫は、まさにその“特別な口淫”なのである。
――此処であれを……そんな……。
畏れ多いことだと思った。
眞魚教の教えを司る立場に在りながらの、この瀆神行為。
だが心は畏れを抱いていても、躰の方が言うことをきかない。
たくし上げた法衣の裾を持ち上げ、
ずっきんずっきん筋張りながら先走りを滲ませる慶の陰茎は、
すでに求導女に責められることを欲していた。
――いけないよ八尾さん……このまま続けられたら僕、どうなってしまうか……。
鈴口の割れ目を抉るように、舌先が割り込んでくる。
慶は息を荒げ、がくがくと震えだす足で必死になって躰を支える。
尿道口の裂け目は、慶の一番の泣き所である。
此処を指で摩られたり舌でほじくられたりすると、慶はもう逆らえない。
――あああ、八尾さん……もっと……もっと!
慶の心の声が聞こえたのだろうか?
求導女は、つと顔を上げると、ゆったりとした笑みを浮かべた。
「慶ちゃん……もっともっと気持ちよくしてあげる」
103:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:19:31 eLjj8+Vx
求導女がこう言ったのを耳にした途端、慶の中に不可解な衝動が起こった。
それは慶に取って、あまりに馴染みのない衝動―。
押さえる間も訝る間もなく、慶はその衝動に従っていた。
「きゃあっ?!」
ばちん、と激しく肉を打つ音がした。
掌に熱い感覚。
ふと見ると、慶の足元から50センチほど離れた床に、求導女の裸身がひっくり返っていた。
――僕は……八尾さんを、ぶったのか?
信じられない思いであった。
混乱と、何に対してとも知れぬ憤りで胸が高鳴る。
だが、そんな慶の心を無視するように、慶の躰はヒリつく掌を握り締め、
ゆっくりと歩き出していた。
「……慶ちゃん?」
おずおずと身を起こした求導女は、虚ろな表情で慶を仰いでいた。
赤いベールの下、打たれた頬には慶の指の痕が残り、紅く痛々しく腫れ上がっている。
慶は求導女の前にしゃがみ込んだ。
真正面から見る求導女の顔は、虚ろな中にも怯えの色が見え隠れしている。
その表情に、何故かときめきのようなものを感じながら―
慶は、彼女の震える顎を掴んで、引き寄せた。
「求導師様、だろ?」
「え?」
「求導師様だ。ちゃんとそう言ってみろ」
「き……求導師様……」
慶は愕然としていた。
――僕の口が……勝手に喋っている……。
躰ばかりでなく、言動までも。これはいったい、どういうことなのだろうか?
慶ははっきりとした意識をもっているにも関わらず、
まるで誰かに肉体を乗っ取られてしまったように自由を失ってしまっている現状に、
ようやく気が付いた。
この礼拝堂で求導女と抱き合っていたのは、自分の意志ではなかったのか?
――何故だ?! どうしてこんな……?!
しかも、慶が己の意思でもって行動しようとすると、
躰に拒絶され、精神が引き剥がされてしまうのだ。
これでは―成す術がない。
何でこんなことになったのかは判らないが、今の慶はまさしく手も足も出ない状態だ。
一方、混乱と焦慮のどん底でもがき苦しむ慶を封じる肉体は、
独りでに、自分勝手に動き出していた。
「立て」
「あぁっ……」
黒い袖が、白い細腕をぐっと掴み上げる。
――そんな乱暴にしたら、八尾さんが可哀想じゃないか……。
慶の心の声は、躰に届かない。
慶の躰は、求導女の腕を強引に引っ張って祭壇の前まで連れて行った。
104:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:20:16 eLjj8+Vx
「ふん。求導師に仕える立場でありながら、馴れ馴れしく名前を呼んでくるとはな。
生意気な女だ……」
慶は、求導女の躰を祭壇に押し倒した。
壇上に立てられていたマナ字架が、けたたましい音と共に倒れて、落ちる。
両脇に供えられている火の消えた燭台も同様だった。
求導女は、周りを散らかしてしまったことを気に病む様子を見せつつも、
呆然とした表情で祭壇に横たわったままだった。
己の身に起こっている事態が理解できずにいるのかも知れない。
無理からぬことだと慶は思った。
実際、彼女をこんな目に合わせている慶自身にさえ、
何が起こっているのか判らない有様なのだから―。
「お前には罰が必要だ」
無機質な声で慶は言う。
「そうだ。お前はただの、求導師のしもべに過ぎないんだ……
今からそれを、その躰に思い知らせてやる」
慶は床に落ちた燭台を起こし、祭壇の下に並べて置くと蝋燭に火を点けた。
月明かりだけしかなかった暗い堂内が、頼りない灯りに照らされる。
「お赦しください……」
虚ろに天井を見上げたまま、求導女は呟いた。
慶は祭壇の真横に立つ。すると彼女は、緩慢な動作で首を傾けて彼を見た。
膜が掛かったように曖昧な眼差しには、
困惑と恐怖の表情が、先ほどよりもはっきりと浮かんでいる。
慶の背筋に戦慄が走った。
何故だろう? 今夜の慶は、求導女の笑顔より、恐怖や苦痛の表情の方に気をそそられがちだ。
――馬鹿な。僕は、八尾さんのことが好きなはずなのに……。
慶は己の嗜虐的な行いや、それに伴う気持ちの昂ぶりを否定する。
しかし、躰の方は正直だった。
たくし上げた裾の下から顔を出している陰茎の膨らみ方はますます物凄く、
硬直しきった茎に絡む血管の有様といい、“怒張”という言葉をそのままに体現している。
慶は、燭台を一つ持って求導女の肢体を照らした。
打たれた痕を残し、微かに腫れた頬から蒼ざめた乳房、
そして、黒く翳った股の合わせ目の辺りまで、小さな炎で舐めるように辿ってゆく。
燭台を傾け過ぎた所為だろうか?
蝋燭の先から融けた蝋がひと滴、大理石めいた内腿に零れ落ちた。
求導女が甲高い悲鳴を上げる。慶の胸に、蒼白い炎が点った。
「熱いか?」
慶はわざと燭台を傾け、更に二、三滴、柔らかな太腿に蝋を垂らす。
祭壇の赤い掛布の上で、求導女の肢体が苦しげにうねった。
「ふふ、暴れるなよ……大事な処を火傷しても知らないぞ」
慶は我知らず口の端が歪むのを感じていた―つまり、笑っているのだ。
「ああ……熱い……熱い!」
内腿に、下腹部に。求導女の柔肌に、熱した蝋を垂らし続ける。
遂に耐え切れなくなった求導女は、祭壇から転げ落ちた。
立ち上がろうとして―腰から崩れ落ちてしまう。
105:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:20:58 eLjj8+Vx
「あ……あ……」
「身体にも効いてきたか」
慶は、横座りのまま腰を躙らせて逃れようとする求導女の前に立ち塞がる。
「思ったより遅かったな……やはり本に載っていた用量では、少し足りなかったのか」
自分でもよく理解出来ない言葉を口にしながら、慶は求導女の眼の前に蝋燭の火をかざした。
「ひいっ」
聖なるともし火に怯える悪魔のように。
求導女は引き攣れた悲鳴を上げて慶を避け、床を這って逃げ惑う。
慶は低い笑い声を漏らしつつ、それを追った。
――まるで、鬼ごっこをしてるみたいだ。
木の長椅子の狭間を縫って逃げる白い尻を追う慶は、場違いに愉快な気分になっていた。
何故か求導女は腰が立たないらしく、こけつまろびつ、泥酔したような千鳥足なので、
追って捕らえるのに何ら苦労はない。
だが慶は、わざとのんびり歩いてそれを引き伸ばした。
追いつきそうになると、ベールの下の背中や尻たぶに蝋を垂らしてやる。
すると彼女はびくんと腰を跳ね上げ、ひいひいと息を漏らしながら逃げる速度を上げるのだ。
そうして堂内を徘徊するさなか、求導女の手が、最前列の長椅子の上で何かを捉えた。
「そいつに興味があるのか?」
求導女が手にしたもの。それは、一本のロープだった。
随分と使い込まれたもののようで、ロープというよりも殆ど荒縄に近い状態になっている。
慶はその毛羽立ったロープを求導女の手からひったくると、
びしりと扱いて、伸ばして見せた。
「これを使って貰いたい訳か? くくっ、いいだろう……。
もう少し後で使うつもりだったんだけどなあ……あんたが、どうしてもって言うんなら」
慶の言葉の意味をなんとなく察したのか、求導女は虚ろな眼を微かに見開く。
慶は笑った。
いったいこれから何が為されるのか。
不安と、密やかな期待に胸を焦がしつつ、慶の頬は勝手に笑顔を模っていた―。
「けい……求導師様……お赦し下さい……求導師様……」
求導女は、再び祭壇の上に身を投げ出していた。さっきとは違い、今度はうつ伏せの姿勢だ。
それも、ただうつ伏せているだけではない。
求導女の両腕は、頑丈なロープによって後ろ手に縛められていた。
腕を束ねて巻きついたロープは、首元を通って胸の方にも廻り、
乳房を捻ってきつく締め上げてもいる。
「本当は、股の方も縛ってやりたかったんだけどな」
一仕事を終え、両手を払いながら慶は言う。
「股座に縄を通すと使えなくなっちまうもんな……此処が」
慶は尻の谷間に指を差し挿れ、奥まった場所で息づいている陰門をぐりぐりといたぶった。
「はぁ……うっ」
「なんだ。少し濡れてるんじゃないのか? 縄で感じるのかこの淫売め」
淡々とした声音で責め立てながら、慶は求導女の膝に手を添え、バッと股を開かせた。
紅い洞穴の入口が、闇の中に現れる。
慶は燭台を傍に引き寄せ、曝け出された部分を凝視する。
もうすっかり見慣れた求導女の秘所であったが、
こうして蝋燭の幽し灯りにゆらゆらと浮かび上がる様は、また格別だと思った。
しかもこんな風に裸で縛り上げられた、憐れな姿態で―。
106:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:22:16 eLjj8+Vx
慶の精神は、肉体の暴走に順応しつつあった。
さすがに愛しい求導女を淫売呼ばわりする冷徹さには、まだ馴染めていなかったが―。
これまで慶が思いつきもしなかったこのやり方に、慶は興味を覚え始めていたのだ。
祭壇の後ろに控えている岩窟のことも、すでにあまり気にならなくなっている。
――仕方ないんだ。だって、僕の意思ではどうすることもできないのだから……。
「ふうん。使い込んでる割には、綺麗な色してるじゃないか」
心に言い訳をする一方で、慶は祭壇の前に座り込み、求導女の性器を覗き込んでいた。
「女の躰って、本当に判らないもんだ。
子供を産んだ女でも、ピンク色で小陰唇も小さい、妙に可愛いアソコをしている場合があるし、
そうかと思えば、処女のガキの癖に乳首もアソコも焦げたように真っ黒な奴もいるし」
そんなことを喋りながら、慶は見ているだけでは飽き足らず、
求導女の陰部に指先を伸ばしていた。
広がった陰唇の中の膣口を広げ、突っつき、ずぶりと人差し指を根元まで突っ込むと、
くちゃくちゃ音を立てて掻き廻す。
「あ……んっ」
求導女の尻がぴくっと震え、陰門の上に座する小さな肛門が、磯巾着のようにきゅっと窄まる。
「ふふ……」
慶はヒクつく肛門の膨らみを見て微笑むと、挿れる指に中指も足して、
いっそう激しい抜き挿しを始めた。
それは、ふだん慶がするのよりずっと激しい―ほとんど暴力的ですらある動作であった。
――こんなにして……膣に傷でもつかなければいいが。
危惧する慶の眼の前で、求導女の陰部は見る見る内に紅く色づいてゆく。
膣内部の熱と潤滑さも増してきた―と、思う間もなく膣口から、
白濁した淫液がどばっと溢れ出した。
「はあぁん……あは……あはあぁん……」
求導女は背筋を反らし、ねっとりと咽喉に絡みつくような声で喘ぎ出す。
腰から下を、前後左右にくねらせて―
割れた尻肉の中心部で、会陰と、薔薇色の肛門が、物欲しそうにもぐもぐと収縮した。
「気持ちいいのか? こうか? くっく、じゃあ……これはどうだ?」
慶は親指で陰核を弾いた。
硬く膨らんだ肉豆に強い刺激を受けて、求導女は甲高く嘶いた。
そして膣の縁肉で、二本の指をぎゅうぎゅう締め付け出した。
――オーガズムの前兆だ。
慶は、今しも達してしまいそうになっている求導女の女の部分に、熱の篭った視線を向けた。
ところが。そこまでした処で慶の指は、求導女の膣からぬるりと抜かれてしまった。
「あ……ああぁ」
性器の快楽を中断されて、求導女は切ない声を漏らす。
「どうした? もっと欲しいのか?」
慶は大陰唇から腿の付け根にまで飛び散ったよがり汁を指で掬い、
肛門の皺襞に塗りつけながら聞いた。
「……ほ……しい……」
「何だって? もっとちゃんと言ってみろ」
「欲、しい……欲しいです……求導師……様……お、願、い……」
求導女の懇願の言葉を、慶はわくわくしながら聞いていた。
もう気の毒に思ったり、物怖じするような気持ちも湧かない。
次々に発せられる嗜虐的な台詞も、
もはや自分の意志で言っているような錯覚を起こし始めていた。
「続けて欲しいか。だったら……鍵の在り処を教えろ」
107:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:22:56 eLjj8+Vx
出し抜けな問いに、求導女の腰の蠢きが止まる。慶自身、おや? と首を傾げる思いだ。
「鍵、ですか……?」
「そう、鍵だ。お前が持っているんだろう?」
求導女は首を傾け、虚ろな眼を慶に向けた。
「……教会の鍵の置き場所なら、あなたも全てご存知のはずよ」
「嘘だ。俺に隠している鍵が一つあるはずだ。その在り処を言え」
求導女の瞳が、惑い気味に揺らぐ。
「そう言われましても、いったい何処の鍵のことを……まさか」
求導女は、伏した頭を上げて祭壇の奥―鉄格子の扉に閉ざされた岩窟を見上げた。
求導女の目線を追い、慶も岩窟の扉に眼を遣る。
「何故、此処の鍵が必要なんですか……?」
「何故? そんなのは俺の勝手だ。貴様まだ判っていないようだな。
この教会の主は誰だ? お前の仕える主人は誰なんだ?」
慶は、求導女の躰をひっくり返した。
縛り上げられた両腕に縄目が食い込み、求導女は苦悶の呻きを上げる。
「さあ言え。この扉の鍵は何処にある?!」
慶は再び燭台を手にしていた。
そして今度は、ロープに挟まれぎゅっと盛り上がった乳房に、ぽたぽたと蝋を垂らした。
「あ! ああっ! あ……つ……熱!」
「早く言わないと、もっと下から垂らすぞ」
「ああぁ止め……ひい! い、言います! 言いますから……あああっ!」
低い位置から零れ落ちる蝋は、膨れ上がった乳房の丸みだけでなく、
その頂点でぽつんと隆起した乳首にまで零されていた。
その責め苦に耐えあぐね、求導女は脚を突っ張らせてはあはあと肩息を吐く。
乳首に垂らされた蝋は、溢れ出た母乳のように乳房に流れ、白く固まりかけていた。
慶はそれを、指で擦ってこそげ落とした。
「よし言ってみろ。鍵は何処だ?」
「ああぁ……か、掛け軸、の……」
「掛け軸?」
「か、掛け軸の、後ろ……」
慶は、礼拝堂の岩壁に掛けられている聖画の掛け軸を見上げた。
掛け軸は、岩窟を挟んで二つ飾られている。
求導女の眼は左側の、三角形の赤い池のほとりに佇む人が描かれた方の絵を見上げていた。
慶は、祭壇横にあるオルガンの椅子の上にあがり、掛け軸を捲って見た。
掛け軸の後ろには20平方センチメートルくらいの小さな穴が開いていた。
覗き込むと、中には粗末な木の小箱が仕舞われている。
慶はそれを取り出して、蓋を開けた。
ぼろぼろになった古い帳面と共に、錆の浮いた鍵が現れた。
「これか……」
慶は鍵を手に取り、まじまじと見つめる。
大きさといい材質といい、これこそ岩窟の鍵に間違いないだろう。
「それを……どうなさるおつもりですか……」
求導女が、祭壇の上から弱々しく問うた。
108:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:23:54 eLjj8+Vx
「さあ……な」
慶はズボンのポケットに鍵を突っ込み、半笑いで求導女を見下ろす。
「いけません……勝手に、鍵を開けて遂道に足を踏み入れるなど……
いくら求導師様とはいえ、それだけは」
「何故だ」
「禁忌の場所だからです」
求導女の澱んだ瞳が、慶を見据えた。
「罪の牢獄に土足で踏み込むのは、誰にも許されぬこと。お願いします。
どうか、考え直して下さい……」
求導女は、必死になって訴え掛ける。
しかし彼女の言葉は、慶の耳には入っていなかった。
慶の気持ちが、他のことに奪われていたからだ。
「……おい。何だこれは」
慶は木箱の中の古い帳面を取り出していた。
彼の気を引いたのは、触れただけでばらけてしまいそうなその帳面ではない。
帳面の下に隠されていた、黒い革製の―鞭の方であった。
細く編み上げられた一本鞭は、箱の中でしなやかに折り畳まれていた。
慶は全長1メートル程のそれを取り出すと、興味深げに眺め廻した。
振り上げて、祭壇の端を軽く叩いてみる。
びしり! と鋭い音が堂内に響き渡った。
それを耳元で聞かされた求導女は、恐怖に慄き乳房を震わせる。
「それは……鞭です」
「そんなのは見れば判る。何故教会に鞭なんかがあるのかと訊いてるんだよ、俺は」
「そ、それは……うぅ」
慶は求導女の傍らに立ち、ばらけた革の先の方で、
彼女の乳房から陰裂までをそっと辿っていた。
その刺激に耐えながら、求導女は掠れる声で言葉を継いだ。
「それは……昔、教えに背く信者を、この教会で罰していたからです……」
それを聞いた途端、慶の瞳は鋭く光った。
「教会でそんなことを? それは初耳だ」
「はい……村に病院が出来てから、そういったことは病院の役目になりましたから」
陰唇の上を革でさわさわと嬲られて、ぼんやりした様子で求導女は呟く。
慶の中で、得体の知れない情動がふつふつと沸き起こり始めていた。
慶は鞭を握り締める。
「そうか……つまり、昔は求導師様がお手ずから、この鞭で村人達を調教していたって訳だ」
「いいえ、求導師様は……ひぃっ!」
再び鞭が唸りを上げた。今度の鞭は、求導女の耳たぶすれすれを掠めた。
「求導師様は……なんだ?」
「求導師様は……そんなことは致しません。それは、求導女の仕事でした……」
「求導女の?」
慶の静かな声。
「ふうん……じゃあ世が世なら、お前がこの鞭を村の奴等に振るっていたかも知れないんだな。
こうやって……!」
一際鋭い音と共に、鞭の先端が求導女の二の腕を打った。
「ぎゃあっ」
白い肌に、紅い筋が浮かび上がる。
高鳴る胸を押さえつつ、慶はその傷跡に触れた。
「うう……」
「痛むか? ふん、でも大した傷じゃあないぞ……
これだったら、もう少し強い力で打っても大丈夫そうだな……これぐらいまでは!」
慶は鞭を振り上げると、ロープに絞られ膨れ上がった蒼白な乳房に、容赦のない一撃を与えた。
109:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:24:34 eLjj8+Vx
「……!」
落雷に打たれたかの如く。求導女の肢体が跳ね躍る。
そこに畳み掛けるように、慶の鞭は、二発、三発と打撃を加える。
白く美しい乳房は、見る見るうちに紅い、むごたらしい有様に引き裂かれてゆく。
「か……はっ……」
求導女は今しも絶え入りそうな様子で、声にならない悲鳴をあげた。
見開かれた眼の眦からは涙がぼろぼろと零れ落ち、祭壇の赤い掛布に染み渡る。
そして求導女の躰が痛手を負い、苦しみを露わにしてゆくのに比例して、
慶の興奮は凄まじいものになっていた。
今や慶の顔貌に、日頃の穏やかさは片鱗もさえも見られない。
紅潮した額に血管を浮き上がらせ、眼を吊り上げ、
半開きの唇から餓えた獣さながらに荒い息を吐き続けるその形相は、鬼畜生そのものだ。
露出させた股間の逸物も禍々しい憤怒の相を表し、
反り返り鎌首もたげて贄の女を威嚇する呈である。
――酷い……。こんな……僕は……僕はどうしてこんなに……。
激しい昂ぶりのさなかにあって、慶の心は千々に乱れていた
求導女をこんな風に傷つけることなど、望んだことはない筈なのに。
――だったら今、こんなにも欲情しているのは何故だ?
――判らない……知らないよ! だって僕……僕は……。
混乱の極みで自問自答する慶の心を取り残し、慶の躰はますます熾烈な残虐行為を、
求導女の肉体に施してゆく。
数え切れないほどの鞭の雨は、求導女の乳房を隈なく嬲り、その皮膚を裂いた。
ミミズ腫れと、裂けた皮膚から滲み出る血で真っ赤に染まった乳房に、
慶は舐りつき、歯を立てる。
「ううぅ……ぐっ……」
美しい咽喉から、獣じみた呻きが漏れる。
熱を持った乳房は微かに震え、怯えるように強張っていた。
――なんて可愛らしいんだろう……。
締め上げられた血まみれの乳房に口づけながら、慶は夢のような恍惚感に引き込まれる。
紅い乳房の頂点で、乳首が心細げに隆起している様がまた何ともいえない。
慶は背筋がぞくぞくする感覚に耐えながら、そのいたいけな乳首を鞭の先で打ち据えた。
「ぎゃはっ?! ……あ……あ、ぐぅっ……」
敏感な器官を襲う激痛に、求導女は苦悶の叫び声を上げた。
白眼を剥き―口の端から泡を吹いてひくひくと痙攣している。
横たわった女の下半身から、微かな気配を感じた。
求導女の股間に眼を向ける。仰向けに反り返った性器から、小水が零れているのが見えた。
「こいつ、小便漏らしやがった」
慶は口元を歪め、求導女の頬を平手で―これはさすがに鞭を使わず―平手で打った。
鞭の衝撃による反射的なものなのだろう。求導女の失禁は、大した量ではなかった。
それでも。
溢れ出した小水は内腿から祭壇の掛布に流れ、
祭壇の縁から、すんなり伸びた脚を伝って床の上にまで染みを作ってしまっていた。
「求導女の身で在りながら、神聖なる礼拝堂を己の排泄物で穢すとはな」
「ああぁ……お、お赦しください……」
「駄目だ赦さん。お前にはもっと……徹底的な仕置きをしてやる」
110:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:25:10 eLjj8+Vx
求導女の躰が、再びごろんと裏返された。
うつ伏せになれば当然、ふっくらと盛り上がった尻の丸みが露わにされる。
慶はその、つやつやと輝く見事な臀部を撫で廻した。
「やっぱり鞭をくれるのに一番適しているのは、ここなんだろうな。
肉が分厚いから、かなりきついのを食らわせてやっても耐えられる筈だ」
言うやいなや、慶は鞭を振り上げる。
「うあぁっ!」
女の叫びと共に、乳房を打った時以上の派手な肉音が、堂の天井に木霊した。
二つの膨らみを繋ぐようにつけられた、紅い鞭の軌跡。
びしり、びしりと鞭が尻たぶを打つ度に、
その痕跡は無数の紅い蛇のように求導女の尻をのたくり、まだらに埋め尽くしていった。
求導女の尻肉が傷付いてゆく様を眺めながら、慶は無心で鞭を振るい続ける。
鞭打ちは、意外に重労働だった。
息が切れて、額も、黒い法衣の下の躰も汗でぐっしょり濡れている。
――法衣なんて、脱いでしまえばいいのに。
そもそも色事を行おうという時に、求導師の姿で在り続ける必要などないのだ。
だがこれを脱ごうとすれば、また肉体から精神が離れてしまうのが眼に見えていた。
乱れてやたらと額に落ち掛かってくる髪の毛を払いあげながら、
慶は大息を吐いてそのまま仕事を続けた。
そんな慶の努力の甲斐あって、求導女の尻は、
今や乳房とは比べ物にならないほどの惨状を示していた。
先ほどまで白い無垢の輝きを放っていた彼女の尻は、真紅に近い色に変じており、
脹れあがって一廻りほども大きくなっているように見えた。
裂けた皮膚のあちこちからは鮮血が飛び散っていたが、
祭壇に掛けられた布が赤い色をしている為、こちらはそれほど露骨には悲惨さを表していない。
「あ……あぁ……は……」
後ろ手に縛られた求導女は肩で息をしながら、半ば悶絶しつつあった。
捲れ上がったベールの下からは、華奢な肩甲骨や、縛られ鬱血した手首が痛ましく覗いている。
そして、鞭で傷つけられた紅い臀部。
これら淫虐の美を前に、慶の陰茎は張り裂けんばかりの勃起に苦しめられていた。
もはや一刻の猶予もないといった様子で鞭を捨て、慶は求導女の股を割った。
「う……ぐぅっ?!」
尻に触れられるだけでも痛いのだろう。
すでに気を失ったかに見えた求導女の背筋は、慶の行為にぴくりと反応した。
だが慶の手は、求導女の苦しみをまるで気に留めず、無慈悲に尻の割れ目を開き、
中の性器を探った。
「…………」
指先に、くちゃりと粘りを帯びた液体の手触り。慶は言葉も無くその熱い蜜を掬い取った。
それは無論、尿ではない。更に言えば、鞭打ちの前に漏らしていた淫水でもない。
「お前……鞭で打たれて濡らしたのか」
慶の声は震えていた。あまりにも激しい興奮の為であった。
「よっぽど痛めつけられるのがお好きなんだな、求導女様は……なあ、そうなんだろう?」
慶は、眼下で紅い段だら模様に染まっている尻たぶを両手で掴み、捻り上げた。
「あああっ……」
求導女の頭が大きく仰け反る。
111:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:26:06 eLjj8+Vx
慶はそのまま尻の肉を左右に広げ、腰を押し付け、ぬめる穴に脈動する杭を打ち込んだ。
再び、求導女の潤み声が上がる。
苦痛と快楽の入り混じった感覚に翻弄される女の悩ましい声音は、
赤い闇の中で途轍もなく淫猥に響き渡った。
慶は、頭の芯がじいんと痺れて眩暈を起こす。
灼熱の粘膜にくるまれて、陰茎が気持ちよくて堪らない。
「う……あぁっ! くそ、駄目だ、まだだ! まだ……うううっ!」
堪えようもなく。陰茎は膣の中で爆ぜ、固練りの精液を大量に噴出させてしまった。
根元の奥から、重たい快楽の塊が転げ落ちるような感覚に、
慶は脳天までも直撃されて、脚をがくがく震わせる。
「は……はぁ、あぁ……畜生……」
射精の余韻も覚めやらぬまま、悪態と共に膣から陰茎を引き抜く。
ぽっかり開いた膣口から、白濁液がとろりと溢れ出した。
「あ……ああぁ……」
胎内を満たしていたものを失って、求導女が切ないため息をついた。
「……まだ食い足りないか」
物欲しげにひくひくと蠢く膣口を見下ろし、慶は呟いた。
――そりゃあそうだろう。
心の中で慶は独りごちる。
こんなに早く精を漏らしてしまったことは、久しく無かった。
性行為にはもう、随分と慣れたつもりでいたのに。
それにこの精液の濃いこと。まるで、二日や三日射精を我慢した後のようではないか。
ぶりぶりと音を立てて膣から押し出される精液を見て、慶は奇妙な感慨に耽った。
気は昂ぶっているものの、慶の陰茎が完全に回復するのには、少し時間が掛かりそうだった。
鞭打ちやなんかで体力を消耗している所為かも知れない。
だが躰を煮えたぎらせているこの女を、このまま放っておくのも口惜しい気がした。
――何か、どうにかしてもっと虐めてやりたい……。
もじもじと揺すられている尻や、その奥でぱくぱく収縮し続けている膣口の動きを、
慶は無性に苛立った気持ちで見つめた。
「そんなに欲しいんなら、こいつでも咥えていろ」
取りあえず慶は蝋燭を一本吹き消し、
燭台から引き抜いて、求導女の膣穴に捻じ込んでやることにした。
「ああっ……うぅん」
蝋燭は慶のものより幾分か細身ではあったが、
それでも求導女の淫乱な膣を慰めるくらいの役には立つようであった。
奥まで挿し込んで膣壁をぐりぐり掻き廻すと、求導女の腰はねっとりとした動きで上下し、
その異物感を躰全体で味わおうとする。
「おうっ、おぉっ、おぉう……っ」
――いやらしい女だ。
縛られて、虐げられながらも肉の快楽に耽溺し、動物めいたよがり声をあげる求導女の姿に、
慶の陰茎はすぐさま活力を取り戻した。
慶は膣に突っ込んだ蝋燭をずっこんずっこん、派手な音が鳴るように勢いよく出し挿れする。
それは、膣の奥に残った精液を掻き出す作用をした。
おかげで求導女の内腿も、祭壇の上も濁った淫水にまみれてしまい、
むせ返るほどの性臭で周囲を満たしていった。
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07/11/09 02:26:48 eLjj8+Vx
「おああ……あは、い、いい! 気持ちっ、いい……ううぅんっ!」
慶は蠢動する膣穴を蝋燭で攪拌する傍ら、祭壇に押し付けられた陰核を指で揉みほぐしたり、
溢れ出た淫液を指に絡め、膣につられてもごもご蠢いている肛門の皺に、
それをなすり付けたりしていた。
「そんなにいいか?」
「あぁ、は、はい……いいぃ、ですぅ……」
「くっく……いきそうになったら、ちゃんとそう言うんだぞ」
「あひ……あ、ああ、求導師……さま……」
不意に求導女は、肩越しの目線を送ってきた。
「求導師様…………して」
淫悦に澱んだ瞳が、ぬらぬら輝いて慶の―陰茎を見つめている。
「して、とは?」
判りきっているのに慶は訊ねた。
慶の冷たい眼差しを見上げ、求導女は、喘ぎ喘ぎ唇を動かす。
「お、お願い、です……はぁっ、こ、こんな蝋燭なんかじゃなくて……あ、貴方様のものを……」
「俺の? 俺の何が欲しい? はっきり言って見ろ」
「お……ちん……ぽ」
「何?」
「……おちんぽを」
求導女は、紅い唇からはあはあと大息を吐き、眉根を寄せて慶の下腹部を見遣る。
そして意を決した様子で息を吸い込み―礼拝堂に轟き渡る大音声で、言い放った。
「……ああ! 貴方のおちんぽ! その、大きくてびくびくしてるおちんぽ……下さいぃっ!」
その声は、彼女が普段発している、静かでありながらも澄みきってよく通る声とは、
まるで違っていた。
情欲の虜と成り果てた―理知の欠片もない発情牝が、雄を求める声に過ぎなかった。
その卑猥な声音を聞き、慶は邪悪な笑みを浮かべる。
「俺のちんぽが欲しいのか。くく、いいよ。じゃあくれてやるさ……お望みどおりに、な」
慶は法衣の裾を胸の上までたくし上げ、ズボンを脱ぎ去った。
ぱん、と張り切って上向いた陰茎を捧げ持ち―求導女の尻の谷間に、ぐっと押し当てる。
「は……」
慶の腹の下、求導女の下肢が僅かに緊張した。
「き……求導師様……?!」
「くっくくくく……そら、お前の欲しがってたものだ」
亀頭で性器の周辺をまさぐり、粘液を万遍なくまぶした後―
慶は、尖りきった陰茎を求導女に突き立てた。
「あぎ……ぎゃああああああああああ!!」
求導女は絶叫した。
慶の陰茎が、肛門を貫いた激痛の為であった。
――あ……ああっ?!
あまりのことに慶自身、動揺を禁じえない。
慶の陽根は、排泄の目的でしか使われぬはずの不浄の穴に、深々と突き刺さっていた。
粘膜に覆われ、尚且つ、前の門から伸ばしてきた淫液に浸かってぬかるんでいたとはいえ―
本来何物をも迎え入れることのない窮屈な肉穴は、
慶の剛直に犯されて、張り裂けんばかりになっていた。
「あああ……きゅ、求導師様……! 違う! そこ、違います……」
「違うって、何がさ」
「そ、そこは、お尻……う……あああっ!」
隙間なく充溢した肉茎が、肛門の奥でずるずると動き始めていた。
113:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:27:26 eLjj8+Vx
「まんこに、挿れるなんて、言わなかっただろう?」
分厚い筋肉の束にぎっちりと挟み込まれ、鬱血しそうなほどに絞られながら、
慶は無理矢理、褪せた粘膜を掘り起こす。
「いぎっ! い……た……痛、痛たっ……ああっ」
「あーっ、きついな……俺の方も、ちょっと痛むよ……」
そんなことを言いながらも、慶はずんずん腰を打ちつけ、熱を持った肛門の皮膚を、
引っ張ったり、押し込んだりする動きを繰り返す。
抽送をすれば、傷付いた尻肉に慶の下腹部が打ちつけられて、
柔肌も痛めつけられているはずである。
しかし求導女は、あまりそのことに頓着していないように見える。
つまり―それどころではないほどに、肛門の苦痛が凄まじいということであろう。
一方、慶の方はといえば、地獄の苦しみの只中にある求導女とは対照的な処にいた。
――ああっ……す……ごい……これ……これが八尾さんの……お尻の、穴……。
かつてない激しい締め付けに意識も絶え絶えになりながら、慶の心は呟く。
今まで、戯れに触れてみる事こそあったものの、
こんな風に陰茎で姦すことなどは、考えても見なかった。
一瞬よぎった嫌悪感を乗り越えてみれば、そこは素晴しい悦楽の世界。
根元を強く食い締める肉の輪と、その奥に鎮座するふんわりと温かい内膜の感触が織り成す、
めくるめく性の楽園であった。
「どうした? これが、欲しかったんだろう? もっと喜べよ。感謝して、ケツを振って見せろ」
快楽に囚われた慶の責め言葉は切れ切れだ。
それでも彼は、強く、強く、腰を打ちたて続ける。
「あぁくそ……よく締め付けやがる……それに、なんか段々中も濡れてきてるぞ……」
慶は、肛門粘膜をにちゃにちゃさせている液体を指に取って見る。
眼の前にかざした指が、赤く染まっていた。
――きっと、直腸か肛門内壁のどこかを傷つけたに違いない。
そう思った途端、慶の心は異様な激情に囚われた。
頭の中の何処かが千切れて―慶は、狂ったように笑い出した。
――苦しめ! 苦しめ! もっと、もっと、もっと……。
慶は求導女の尻たぶを掴み、力いっぱい抓り上げた。
求導女の甲高い悲鳴を聞きながらもそれだけでは飽き足らず、
床に捨て置いた鞭を取って、ベールの下の肩を打った。
「ぎゃあああああーーーーーーっ……あう、あぐ……うあああ……ぐ……」
この世のものとも思われないような求導女の叫声が、慶を夢幻の境地へと導いてゆく。
狂おしいまでの陶酔に、慶は涙さえ流していた。
泣きながら、笑いながら、慶は求導女の肛門を犯し、鞭で打つ。
打った傷跡を舐め、齧り、あまつさえそこに蝋燭も垂らして、また鞭打った。
もう、滅茶苦茶だった。
求導女の玉の肌は簾のようにぼろぼろで、血にまみれて見る影もなかった。
陰茎にごしごし擦られる肛門の皮膚は脱肛気味に盛り上がり、
だらしなく広がったその様子は、眼を背けたくなるほどに、酷い。
けれど、慶の眼にはそうは映っていなかった。
血と、ミミズ腫れと、荒縄で飾り立てられた求導女の姿は、
慶に取って愛おしく、この上なく美しいものであった。
――僕の手で、僕の躰で八尾さんは……こんな風になったのだから……。
114:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:28:18 eLjj8+Vx
「いいよ……いい……八尾さん、すごく綺麗だ……」
いつしか慶は、完全に自分の言葉でそう呟いていた。
ずっと借り物のように利かなかった躰の動きも、なんとなく自由を取り戻している気がする。
慶は思い切って法衣の掛け釦を外してみた。
予想通り、躰はちゃんと慶の意のままに動いた。
――駄目だ。これを脱いじゃあ、意味がない。
心の奥底で、何故かこんな声が聞こえた。
だが慶はそれを意に介さず、さっさと法衣を脱ぎ捨ててしまった。
法衣を脱いでしまうと、今までよりもずっと身軽に動くことが出来る。
慶はもうすっかり大人しくなった求導女の尻を抱え込み、
渾身の力を込めて肛門への抽送を再開した。
「八尾さん……気持ちいいよ八尾さん……僕は……もう…………くっ!」
慶は、締めつけまとい付く肉の中で、陰茎の快楽の弁を解放した。
どっくんどっくん迸り出る欲望の滾りは止まる処を知らず、
恍惚のあまり、慶は眼の廻る思いだ。
果てしなく続く射精を終えた慶は、ほうっと満足げなため息をついて、
ゆっくりと求導女の肛門から離れた。
慶が遠慮会釈もなく掘り返した肛門は、肉が爛れ、処々破けて血が滲んでいた。
「あーあ。こんなになっちゃった……」
すっかり荒れ果てた肛門の皺襞に、慶は優しく舌を這わせた。
鉄を思わせる血の味に、なんともいい難い苦味が混じっている。
――腸液が漏れてるんだ。
心の声に慶は、ああそうか。と納得する。そして勿論、その腸液も舐め取った。
開き気味の肛門からは、慶の出した精液も駄々漏れになっていたが、
彼は、それを舐めることすら厭わなかった。
何しろこれは、愛する求導女の躰から出たものなのだから。躊躇する理由など、まるで無い。
だがこの、慶の甲斐甲斐しい奉仕に対して、求導女は完璧な無反応を貫いていた。
「八尾さん? もしかして……怒ってます、よね」
当たり前のことである。
これほどまでに痛めつけられ、おもちゃにされて怒らない方がおかしい。
慶は、恐る恐る求導女の伏せた顔を覗き込んだ。
求導女の顔の下は、流された汗や涙で湿っていた。
おとがいを持って顔を上げてみる。白い顔は、何の抵抗も無く慶の方を向いた。
――気絶してるのか。
求導女の瞼は静かに閉ざされていた。
青みを帯びた瞼と長いまつげを眺めつつ、慶は、口の端に溢れた泡の跡を拭ってやった。
指先が、違和感を捉えた。
何の違和感だろうかと一瞬考え込む。
――冷たすぎる。
そうだ。半開きの唇からも、鼻孔からも、温かい呼気が全く感じられないのだ。
背筋に冷たいものが走った。
首筋に手を宛がってみた。瞼を引っ張り、頬を叩いて名前を呼んでもみた。
でも駄目だった。
求導女は―否、求導女の亡骸は―慶の呼びかけに答えることは、なかった。
115:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:29:11 eLjj8+Vx
どれくらいの時間が経ったのだろう?
いつしか慶は、求導女と並んで祭壇の上に横たわっていた。
あれから―慶は慌てて求導女の縛めを解き、聞きかじりの知識を総動員して、
胸骨を押したり、鼻をつまんで口に呼気を送り込んでみたりと、考えうる限りの蘇生法を試みた。
そしてそれらは、ことごとく失敗に終わった訳である。
「これじゃあ、とても医者にはなれそうにないな……」
視線を天井に向けたまま、虚ろな声で慶は呟く。
――医者?
自分は何を言っているのか。慶は奇怪に思う。
だがそれも、今の彼にはどうでもいいことだった。
――死んじゃったね。
「…………死んじゃったね」
慶の心と慶の口は、同時に同じ台詞を言った。
――これからどうしよう……。
傍らの、傷だらけの乳房に手を置いて、慶はぼんやり考える。
「さあ……どうしようか?」
頼りなげな呟き。そのまま、暫く無言の間が続く。
――まあ何にしても、死人が出たら弔いをしないと。
慶はむっくり起き上がる。
「そうだよな……求導師なんだから」
のろのろと祭壇を降り、慶は脱ぎ捨てた法衣を身に着け始めた。
116:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:29:49 eLjj8+Vx
数十分後。
慶は葬儀の仕度を整え、祭壇の前に跪いていた。
倒れたマナ字架は元通り祭壇上に戻し、その前に、求導女の亡骸を供えてある。
弔われるべき死者を“供える”というのもおかしな話ではある。
しかし、全裸のままでひっくり返り、尻を高く掲げて、
陰門と肛門を丸出しの状態でロープによって固定され、
更にその二つの門に、燭台よろしく蝋燭を突き挿されているとあってはもう、
供え物といった方がしっくりくるのも確かなことだ。
――変な葬式だなあ……。
愛する女性を常世に送るのに、これではあんまりなような気もしたが、
この後のことを思えば、この方が手っ取り早いのには違いない。
「でも、蝋燭をぶっ挿すのはちょっとやり過ぎだったかな」
――やり過ぎだよ! 何考えてんだ!
慶の心はそう叫んだが、かといって今さら蝋燭を元に戻すのも面倒くさい。
「じゃあ取りあえず……祈りを捧げようか」
慶は胸の前で手を組み合わせて眼を閉じた。
「ええっと……」
――失われし者は我々の血と肉の中に生き続ける……。
言い澱む口に反し、慶の心はすらすらと祈りの言葉を連ねてゆく。
慶の躰は心が伝えるその文句を辿るように、ぎこちなく祈りを捧げていった。
一通りの儀式を終えてしまえば、残る問題は死体の後始末である。
「先に鍵の在り処を訊いておいて正解だったな」
慶は、祭壇の向こうにある鉄格子を見据えて言った。
この岩窟の向こうには、長い地下遂道が続いている。
何人たりとも近付くことの赦されない、畏れ多い禁足の墓所。
死体を隠すのに、これ以上ふさわしい場所もないだろう。
――けど、八尾さんをこんな処に閉じ込めるだなんて……。
慶の柔弱な精神はためらい続けているが、無鉄砲な肉体はさっさと祭壇を乗り越え、
鉄格子の鍵を開けようとしていた。
「……よし、開いたぞ!」
嬉しそうな声。その口調とは裏腹に、緊張で鼓動が早くなっている。
慶は慄く指先で、鉄格子を開けた。
冷たい風が、岩窟の向こう側から吹きつけてきた。
「?!」
――今まで、此処からこんな風が吹いてきたことなんてないのに!
慶の心は恐怖で凍りつく。
だが躰の方は割りあい冷静に岩窟を覗き込み、奥の様子を見定めようとしている。
――いけない、これ以上は……!
慶の心がそう叫んだ途端。
117:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:30:29 eLjj8+Vx
「求導師様」
背後から聞き慣れた声がした。
驚いて振り向くと、すぐ後ろに、求導女が立っていた。
つい今しがた、冷たい骸となって惨めな姿に縛り上げられていたはずの求導女。
その彼女が平然と、何事もなかったかのように微笑を浮かべて佇んでいる。
元通りに赤いベールを被った、清らかな尼僧姿で、だ。
「……あんた」
慶の声は掠れていた。
わなわなと震えだした慶を前に、求導女は慈愛に満ちた微笑を浮かべたまま、言った。
「もう遅いから。遊ぶのはここまでにして、お家に帰りなさい……××君」
最後の部分が上手く聞き取れなかった。
慶の意思に反し、慶の意識が肉体から引き剥がされようとしている為だった。
「……! …………!!」
悲鳴とも、うわ言とも取れない何かを口にしながら、肉体が求導女から後ずさっている。
視界が乱れて歪んでゆく。意識も、感覚も、確かな形を失ってゆく。
これ以上、自我を肉体に繋ぎ留めておくことは、不可能だった。
砂嵐と雑音の波に飲み込まれ―慶の世界は、ゆっくりと閉ざされていった。
118:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:31:31 eLjj8+Vx
翌朝。慶は自室の寝台で意識を取り戻した。
きちんと寝間着を着込み、何事も無く普通に眠っていた様子だ。
何事も無かったのは、求導女もまた同様であった。
「久しぶりに独り寝をして、寂しくなかった?」
悪戯っぽく笑って言った求導女は健康そのもので、
首筋にも、捲り上げた両腕にも、縄目や鞭の痕跡などはひとつも残されていなかった。
――あれは全部、夢だったんだろうか……?
そう考えるのが自然に思えた。
あの不可解さ不条理さ。あんなことは、夢でなければ有り得るはずもない。
――なんだ。そうだったんだ……。
ほっとしつつも、何故か少しばかり名残惜しいような気持ちもあった。
朝食の席に着きながら慶は、複雑な思いで求導女を見つめる。
「ん? どうかした?」
求導女はいつもの優しい笑顔。
「いえ……別に」
慶もいつも通りに柔和な笑みを返す。
空が高かった。
食堂の窓から見える山々も、緑が褪せて、寂しい秋の色に変わる準備を始めている。
――そろそろ、天窓を閉めて寝た方がいいかな。
求導女から御飯茶碗を受け取りながら、慶は移ろいゆく季節に思いを馳せていた―。
119:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:32:08 eLjj8+Vx
そして時は過ぎ―。
慶の中で、あの摩訶不思議な夜の記憶は曖昧になっていた。
あの夜以来、あんな凶暴な衝動に駆られたこともないし、
砂嵐と共に意識が宙に飛ぶ、幻視に似た奇妙な感覚も―
あれっきり、慶を苦しめることは無かった。
けれど、あの夜は確かに存在していたのだ。
慶はあの後、求導女が居ない隙を狙ってこっそりと掛け軸の裏を探ってみた。
やはり秘密の穴はあった。もちろん、例の木の箱も―。
ただし。中には古い信者名簿と思しき帳面が入っていたものの、
黒革の鞭と鉄格子の鍵は何処かに消え失せてしまっていた。
密かにそれらしい場所をあちこち探してみたが、結局見つけることは出来ずじまいであった。
120:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:32:57 eLjj8+Vx
更に。
あの夜の記憶は、慶と求導女の生活に微妙な変化を及ぼしていた。
「……あ、ああぁあっ!」
深夜。慶の寝室から淫靡な牝の声が聞こえてくる。
「はあん……き、求導師様……もう……もう駄目、げ、限界です……!」
「いいやまだまだ……もう少し頑張れるはずですよ、八尾さん」
机に向かって本を読む慶の椅子の後ろに、なまめかしい肉塊がへばり付いている。
よくよく見るとそれは、椅子の後ろ脚に曲げた両腕を縛り付けられ、
高く持ち上がった尻は椅子の背もたれに括り付けられた状態で、
逆さまに固定されている求導女なのである。
彼女の真上を向いた尻の間からは、蝋燭が一本伸びている。
「あぁ熱! あんもう……無理よ私……ああ、ほら見て、蝋が……蝋がこんなに垂れて……」
尻の穴に突き立てられたその蝋燭には火が灯っており、溶けた蝋が垂れ落ちて、
肛門から性器、そして恥毛に覆われた陰阜の辺りまで、残酷な蝋責めに苛んでいた。
「蝋以外のものもいっぱい垂れてるんじゃないですか?」
慶は椅子を動かさないように注意深く振り返り、
白い蝋が溜まっている求導女の性器を見下ろした。
「いや……ご、後生です求導師様……どうかこの蝋燭を……蝋燭を消してえ……!」
求導女が涙混じりに訴えた途端、またひと滴、蝋が零れた。
肛門の襞がびくんと震え―蝋燭の先が、僅かに傾ぐ。
このままだと倒れるかも知れない。
危険を感じた慶は急いで蝋燭を吹き消し、肛門から引き抜いた。
窓を閉ざす季節になってから、慶は度々こんな遊びを求導女に仕掛けていた。
温和な慶は、女を鞭で打ったりするのはさほど好まなかったが、
女体を縛って自由を奪い、玩弄する行為に関しては、まんざらでもなかった。
それにこれは、求導女の好みにも適っている行為なのである。
「そうら。やっぱり一杯出してたじゃないですか」
電気スタンドの灯りしかない薄暗がりの中、慶の忍び声と求導女の息遣い、
そして、密やかな粘液の音が響く。
こんな新しい悦びを見付けられたのだから、あの夜の記憶もそう悪いものじゃない。
適度な時間を置いた今、慶はそんな風に考えられるようになっていた。
ただ―ひとつだけ、慶の生活に悪く作用したこともある。
「あはあぁ……きゅ……どうし、さまぁ……求導師、様あぁ……お赦し下さいぃ
求導師様、求導師様、求導師様! あぁ……あああああああ……いっ……く……」
あの夜を境にして、求導女はけっして慶のことを“慶ちゃん”とは呼んでくれなくなった。
慶はそれをとても寂しく、残念に思うのだ。
【了】
121:名無しさん@ピンキー
07/11/09 20:58:34 245j7gnt
すげぇ……
GJでした。
122:名無しさん@ピンキー
07/11/09 22:48:46 b8l/qs82
やべぇなこれ。えろすぎだろ。
ごちそうさまでした。
123:名無しさん@ピンキー
07/11/09 22:50:12 V+6GJGaR
何このレベルの高さ。すごく面白淫ですけど!
124:名無しさん@ピンキー
07/11/09 23:41:56 a6lChFa0
読んでるだけでイキそうになるなほんとこのスレはやべぇ。
125:名無しさん@ピンキー
07/11/11 00:11:43 hqDYAuHt
新しいのキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
126:名無しさん@ピンキー
07/11/11 23:23:49 Amh/8ngJ
耕運機ってのがイイネ。おれもしてー
127:名無しさん@ピンキー
07/11/13 00:24:40 V7T/qq3V
大作を乙です!
湿った隠微な雰囲気の表現が毎回すごいっす。
128:名無しさん@ピンキー
07/11/14 00:13:31 VKiaEkrF
実はSIRENやったことなかったけど、このSSのせいで買ってしまったぞ畜生
129:名無しさん@ピンキー
07/11/14 01:35:50 zj9s3CL6
>>128どうあがいても絶望の世界へようこそ。
130:名無しさん@ピンキー
07/11/16 22:47:23 gL4QSKn6
毎日PCの電源つけるの面倒だからケータイに送っていつでも使えるようにした。
131:名無しさん@ピンキー
07/11/19 00:20:34 xr3DEctJ
>>128のその後が気になる
無事に村から脱出出来るのだろうか?
132:名無しさん@ピンキー
07/11/20 13:36:02 WLDtPbot
返事が無い ただの屍人のようだ
133:名無しさん@ピンキー
07/11/24 01:19:21 mDfztMVC
今北
素晴らしい作品ばかり投下されてるね!!
書き手さんお疲れさまです
134:名無しさん@ピンキー
07/11/26 01:28:56 cqEgFTau
ここの作品はレベル高過ぎだろ
八尾が八尾として記憶を取り戻すとこ鳥肌たった!エロ怖えー
135:名無しさん@ピンキー
07/11/28 07:08:03 R9PU3Ao7
>>134
一瞬、レベル高遠に見えた。
136:名無しさん@ピンキー
07/12/03 23:57:26 x+BDyb2N
つい全部読んでしまった…プロだろ。
新作もwktk
137:名無しさん@ピンキー
07/12/04 14:10:50 G8e7OOFc
何だここのカス女共は・・・
138:名無しさん@ピンキー
07/12/05 00:17:49 634aj7+G
あ
139:名無しさん@ピンキー
07/12/06 07:11:11 5D8IHZNi
毎度読んで下さる方の感想にとても力づけられております。
3が出る日まで頑張って生き延びましょう。
一樹×ともえ
ややレイプです。そんなにエロくないかも知れませんが、よろしくお頼もうします。
140:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:07:30
07/12/06 07:12:02 5D8IHZNi
金鉱採掘所の施設は、うら寂しい廃墟に成り果てていた。
そこに操業時の喧騒の面影はなく、錆びついた機械や朽ち果てた部屋の数々が、
見る者の寂寥をただいたずらに煽るばかりであった。
かつて、採掘された金の運搬に使用されていたトロリー電車。
そしてそれを動かすためのインクラインも、今は眠るような沈黙のさなかにある。
一樹守は、インクライン制御室に迷い込んでいた。
確かにこの夜見島金鉱も、取材の予定に入ってはいた。
オカルト雑誌「アトランティス」の新米編集者として―
彼は夜見島の数多あるミステリースポットを探索し、記事に仕立て上げねばならないのだ。
しかし実際の話、彼は今、それどころではなかった。
漁船で渡航中、赤い津波に飲まれながらも何とか辿り着いた夜見島。
二十九年前に突如として島民全員が消失して以来、
ずっと無人島と化していたはずの夜見島は、生ける屍のような化け物どもに占拠されていた。
訳も判らぬままに―襲ってくる化け物の群れから逃げ惑う途中、
再び赤い津波が押し寄せて―気付くと彼は、更なる怪異に巻き込まれていたのだ。
「後はもう……ここしかない」
インクライン制御室は、二階建ての粗末な掘っ立て小屋だった。
小屋の中央に鎮座する大仰な機械を横目で見やり、一樹は二階へと続く階段を見上げた。
彼は、島で出逢って同行していた少女を捜していた。
化け物に追われていた謎の美少女。
赤い服に長い黒髪。透けるように白い肌を持つ彼女は、岸田百合と名乗った。
「島に幽閉されている母親を助けて欲しい」と訴えかける百合にいざなわれるまま、
一樹は島の中央に向かっていたのだが―。
「くそっ……なんだって俺は、こんな物に気を取られたんだ!」
胸ポケットから赤い髪飾りを取り出し、苛立ちを押さえきれない声音で一樹は呟く。
小屋の二階は物置になっているようだった。
物置、とはいってもダンボールの空き箱が壁に沿って積み上げられているだけの、
殺風景この上ない部屋だ。
津波に飲まれ気を失った後、目覚めた一樹は百合と共に採掘所までやってきた。
ここを通り抜け、百合の母親が閉じ込められているという場所へ向かうつもりだった。
道中、ふと思うところがあってインクラインを辿り、下の階層を調べてみた。
化け物に対抗するための武器でも見付かれば。
漠然とそんな考えを抱いて辺りを見廻していた一樹は、
微かな光を放つ小さな物体を見つけた。
「これは……さっきの」
通風ダクトに引っかかっているのを苦心して取り出してみれば、それは女物の髪飾りだった。
五枚の花弁からなる赤い花を模ったそれには、見覚えがある。
(そうだ。これは確か、あの女が)
一樹は髪飾りを拾い上げ、それを着けていた女のことを思い出した。
141:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:07:30
07/12/06 07:12:38 5D8IHZNi
その時突然、百合の悲鳴が上がった。
二人はいつの間にか、黒い霊体のような化け物に包囲されていたのだ。
一樹は悪霊の群れを排除するため、慌てて火掻き棒を振り回した。
どうにか全てを片付け終えた時には、すでに百合を見失ってしまっていた。
一樹は百合の姿を求め、採掘所を捜し廻った。
(もう、あと見てないのは、ここだけだ)
一樹は祈るような気持ちで物置をライトで照らす。
―が、ここにも百合は居なかった。一樹は、落胆のため息をつく。
「どこへ行ったんだ……」
硝子のない窓から外を見下ろした。
ライトを向けると、雨に打たれる採掘所の屋根が、ぼんやりと浮かび上がる。
その向こう側は、闇に沈んで何も見えない。
どれほど眼を凝らしても、暗闇の向こうに何も見ることは出来なかった。
闇の中、ライトを反射してチラチラ光る雨粒を、途方に暮れてただ見つめた。
(とにかく、もう一度下に降りて捜してみよう)
一樹は下り階段へ向かおうと振り返る。
階段に向けたライトの中に―小さな人影が映った。
「……君は」
息を飲む一樹の前で、その人影は肩を震わせ立ち尽くしていた。
桜色の着物に身を包んだ、おかっぱ頭の若い女。
この場におよそ似つかわしくない風体の女は、両手に黒い筒状の何かを携え、
その先端をこちらに向けているようだった。
その黒い筒が何であるのか―
気付くのに間があったのは、それがあまりに突飛な、非日常的な物であったからだ。
そして、気付いた時にはもう遅かった。
女の震える細腕が真っ直ぐに伸び、白い指先が、筒の根元を探るように動く。
桃色の唇から喘ぐような息が漏れ―室内に、銃声が轟いた。
142:太田ともえ/夜見島/瓜生ヶ森/0:01:08
07/12/06 07:13:36 5D8IHZNi
「誰か! 誰か来てー!」
あの女が、男と共に逃げてゆく。
ともえは声を限りに手下の漁師達を呼んだが―応える声は、無かった。
夜見島灯台前の崖道で、島を丸飲みにする規模の大津波が迫り来るのを見たのは、
つい先ほどのことだ。
島に仇成す魔女の最期を見届け安堵したのも束の間、島を襲った異変―。
(一体何が起こったというの……?)
気が付くとともえは、森の中にいた。
草むらに倒れていた躰を起こす。少し離れた樹木の向こう側に人影が見えた。
「アッ! あれは……!」
暗闇に浮かび上がる白い横顔に、ともえの表情が険しくなる。
それもそのはず。
そこに居たのは、先刻崖から落ちて死んだはずの憎き魔女―加奈江だったのだ。
駆け寄って掴みかかるともえは、加奈江の連れていた男に振り払われた。
「おのれ、しぶとい化け物女め!」
ともえは忌々しい思いで加奈江と男の逃げた先を見据える。
彼らの逃げた先には、金鉱の採掘所があったはずだ。
誰も助けが来ないので、ともえは仕方なく独りで後を追って行った。
泥道を着物に下駄履きで走るともえは、
なかなか加奈江達に追いつくことが敵わなかった。
息を切らせ大汗を掻きながら、ともえはますます加奈江に対する憎しみを募らせていった。
「化け物女……絶対、許さないんだから!」
さっき島を襲ったかに見えた。禍々しい赤い津波。
あれもきっと、あの女が見せたまやかしに違いない。ともえはそう信じ込んでいる。
やはりあの女は邪悪な化け物だったのだ。
人心を惑わし島に災いを呼び寄せる、忌まわしい闇の使い女―。
143:太田ともえ/夜見島/瓜生ヶ森/0:01:08
07/12/06 07:14:09 5D8IHZNi
(あの一緒にいた男……あいつも、妖力でたぶらかして仲間にしたのに違いない)
それにしても、よくもまあこの短時間で男を見つけてたらし込めたものだ。
化け物女というのは、破廉恥なあばずれ女でもあるものなのか。
ともえは生娘らしい潔癖さで、加奈江の悪女ぶりに嫌悪の情を催す。
(私だったら……とてもじゃないけど、出来ないわ。
あいつみたいに次々と男の人を騙して、手玉に取るなんてこと)
そう。女に生まれてきたからには、たった一人の愛する男に生涯かけて尽くすのが、
本懐というものではないか。
ともえは、最近読んだ恋愛小説の筋を思い出しながらそう考える。
(いつかは私もあのヒロインのように……大切な人に、み、操を…………)
と、場違いに浮ついた気持ちに囚われたともえは、足もとの石にけつまずいて、こけた。
「痛っ! ち、ちくしょう……」
ぬかるんだ地面に突っ伏したともえは、己を転ばせた石ころに憎しみの眼を向けた。
が。よく見るとそれは、石ころではなかった。
「これって……まさか」
それは、拳銃だった。
鈍い光沢を放つ黒い銃身を、ともえは恐る恐る拾い上げる。
ずっしりとした手ごたえ。どうやら、弾も入っているらしい。
「でも、何でこんな物が……?」
よくよく見れば、辺りには血糊の付いたリュックサックや、
兵隊が被るようなヘルメットなんかが散らばっている。
戦争中でもあるまいに。ともえは訳が判らなくなった。
だがしかし、この武器は化け物退治に使えそうだ。
拳銃など触ったことも無いが、
こんな小さな物ならば、自分でも扱えるのではないだろうか?
ともえは拳銃を手に持ち、立ち上がった。
「化け物女……待っておいで。今に眼にもの見せてあげるから!」
銃の重みを手の平に感じていると、自分がとても強くなったような気がする。
――今度こそきっと、あやつを仕留めてくれよう。
ともえは決意を新たにし、再び、採掘所へ向かって走り出した。
144:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:07:52
07/12/06 07:15:50 5D8IHZNi
「はあ、はあ、ど、どうなってんのよ全く!」
粗末な小屋の戸を後ろ手に閉め、ともえは荒い息と共に独りごちた。
採掘所の内部には、気持ちの悪い化け物どもがひしめいていた。
ともえは生まれてこの方ずっとこの島で暮らしているが、
あんなのは今まで一度も見たことが無い。
(きっとあれも、あの化け物女の仕業なんだわ!)
襲い来る化け物から逃げ隠れしつつ、ともえは、この現状も加奈江のせいと断定した。
小屋を目指してきたのは、ここの二階の窓に揺らめく光を見つけたからだ。
――化け物女は、ここに居るのに違いない!
途中、黒い煙のような化け物の群れに襲われながらも、
ともえは執念で持ち堪え、やっとの思いでここまで辿り着いたのだ。
「やっつけてやる……あいつ、絶対に」
木の階段を、音を立てぬようにゆっくりと上る。
果たしてそこには、さっきの男が佇んでいた。
背の高い、格子柄のシャツを着た男。どうやら窓の外を眺めているらしい。
だが、なぜか傍に加奈江の姿がない。
(化け物女。一体どこに?)
用済みになった男を捨てて、一人で逃げたのだろうか?
そんな風に考えるともえの前で、男が急に振り返った。
「……君は」
男は驚いた様子でともえを見つめている。
驚いたのはともえも同様だ。
考える間も無くともえの手はあがり、銃口を男に向けていた。
――化け物女に魅入られたこの男を、生かして置いてはならない。
この場に父が居たならば、おそらくはこう言った筈である。
ともえは、震える指先で拳銃の引き金を探り当てた。
緊張と恐怖で足が竦んでいるのが判る。
心臓は早鐘を打ち、呼吸は荒く、まるで獣の唸り声のようだ。
それでもともえは決然と男を見据え、腕に力を入れる。
そして―。
――お父様! 御力を!
ともえはぎゅっと眼をつぶり、銃の引き金を、引いた。
145:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:08:19
07/12/06 07:16:58 5D8IHZNi
つんざくような轟音は、耳元をかすめて通り過ぎた。
頬に焼け付く痛みを感じるのは、弾丸に擦られた為だろうか?
その痛みにより、一樹の肉体は急速に興奮状態に入る。
女は予想を超えた発砲の衝撃に耐え切れず、よろめいて床にひっくり返っていた。
起き上がろうとする女の躰を、一樹は上から押さえつけた。
「やっ……放して! 放しなさい!!」
一樹は、暴れる女の手から拳銃をもぎ取ろうとする。
抗う女と揉み合いになった。二人は無言のまま、暫し床を転げ廻って格闘を続けた。
和服姿の華奢な女は、二十歳の青年からすれば赤子のように非力であった。
彼さえその気になれば、その白魚の指から拳銃を引き剥がすことも、
あるいは細い首筋に手を廻し、絞め殺してしまうのだって容易いことであっただろう。
一樹が女に手こずっているのは、彼が手加減をしているからだ。
この女は―風体は異質であるものの、今まで見てきた化け物の類とは違う、
普通の女なのだ。
――何とか落ち着かせて、話を聞き出せないものだろうか?
一樹は、この女が夜見島のことをよく知っているのではないかと考えていた。
それにさっき森で出逢った時、女が百合に言った台詞も気に掛かる。
――化け物女! なんであんた生きてんのよ! 変なまやかし使いやがって!
おそらくこの女は、百合の素性も知っている。
そしてそれは、今の一樹に取って最も大きな関心事の一つでもあるのだ。
「お、落ち着けって……ちょっとは、こっちの話も……」
腕を女の爪に引っ掻かれ、歯で噛み付かれながらも、一樹は拳銃を少しずつ、
女の指先から引き剥がしつつあった。
女は「うぅー」と、まるで癇癪を起こした子供のような声を上げ、
一樹の躰の下で滅茶苦茶に身をよじる。
(も、もう少しだ)
すでに拳銃は、ほとんど一樹の手中にあった。
だが、安心が僅かな油断を誘ったのか。
二人の手の間にある拳銃が、突如、暴発した。
一樹と女は、一瞬にして凍りつく。
鼻先に、火薬の匂いを強く感じた。
今度の銃弾は一樹の顔の真ん前をかすめ、天井に食い込んでいた。
一樹は、カッと躰が熱くなるのを感じた。
全身の毛が逆立つような感覚に襲われながら―
彼は思わず、女の手から拳銃をむしり取っていた。
驚愕に開かれる女の眼を見下ろす。
そのまま拳銃を取り上げた手を振り下ろし―女の頬を、強かに打った。
146:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:08:19
07/12/06 07:17:54 5D8IHZNi
「ぎゃっ」
女はぶたれた勢いで部屋の奥―窓枠の下の方まで吹っ飛ばされる。
一樹は女の前に仁王立ちで立ち塞がり、上から拳銃を突きつけた。
「ひ……いぃっ」
女は銃口に怯え後ろに下がろうとするも、壁に突き当たり逃げようが無い。
わななく両腕を顔の前にかざし、弱々しく悲鳴を上げ続けるしかなかった。
一樹は、そんな女の惨めな有様を無言で見つめていた。
荒々しく肩で息をしながら―。
二人は、最前までと全く逆の状態に成り代わっていた。
一樹は異様に昂ぶり、興奮しきっていた。
彼は元来、大人しい性質の男だった。
日頃から、大抵の事柄には冷静に対処出来ると自負していた。
こんな風に見ず知らずの女を殴り、銃で威しつけることなど、
普段の彼には考えられないことだった。
だからこそ、彼は興奮していたのかも知れない。
一樹守という上っ面の仮面を取り払い、真の自分を曝け出すような快感がそこにはあった。
そしてまた、眼の前の女の怯える姿も彼の興奮を煽っていた。
よくよく見れば、女は案外美しかった。
LEDライトの明かりしかない暗い部屋の中とはいえ、
此処まで至近であれば、その容貌をはっきり見ることが出来る。
百合のあの、魂までも吸い寄せられるような妖艶さこそないものの―
ぱっちりとした瞳は愛くるしく、顔の作りも整っていて品がある。
その雰囲気は勝気で高慢そうではあるが、
どこか猫を思わせるコケットさも持ち合わせていた。
そしてこの着物姿。
着物のことなど全く知らない一樹の眼にも、
女の纏っているものが高級な品であることは明確だった。
(きっと、由緒正しい家のご令嬢なんだろうなあ)
そんな彼女が自分のような男に打ち倒され、銃で威され憐れな悲鳴を漏らしているのだ。
そう考えると暴力的な衝動の他に、妙な劣情までもが沸いて来る。
一樹は百合のことを思い出し、なんとかそれらの衝動を押さえ込んだ。
「あ、暴れるな! 撃ち殺すぞ」
一樹は拳銃を持ち直すと、女の眉間の辺りに銃口を突き付けた。
女の動きが、ぴたっと止まる。
掲げていた手が、手の平を上に向けた状態で顔の両脇に下ろされた。
「よぉし……そのまま、手を上げたまま起き上がるんだ」
そう言って一樹は、小さく万歳をしたような格好の女に銃を突き付けたまま、
後ろへ退いた。
女は一樹を上目遣いに見上げ、おずおずと身を起こす。
恐怖と反感が綯い交ぜになったその表情は、何故だか少し笑っているようにも見えた。
147:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:08:19
07/12/06 07:21:41 5D8IHZNi
「名前は?」
床に横座りになった女の前にしゃがみ込み、一樹は問いかける。
だが女は険悪な眼で一樹を見つめるだけで、返答しなかった。
「答えられないのか?」
「……下郎。お前のような誰とも知れぬ余所者に、名乗る名前は無い」
女はそう言ったきり、プイッと一樹から眼を逸らした。
一樹は、女の気位の高さに驚き呆れる思いだ。仕方なく彼は自分から名乗ることにした。
「……僕は一樹守。アトランティスという雑誌の編集をやってる」
「雑誌の?」
女の顔つきがよりいっそう険しくなった。
その表情に、島へ渡航する際、本土の漁港で出会った漁師たちの姿が重なる。
彼らは皆一様に、都会から来た余所者である自分に対する不信感を剥き出しにしていて、
それを隠そうともしなかった。
(ただでさえ排他的な土地柄の人に対して、
マスコミの人間だ、なんて名乗り上げるべきではなかったかも知れない……)
すっかり警戒心を強めてしまった女を前に、一樹は幾許かの後悔の念を覚える。
そして懸念したとおり、その後女の態度が軟化することはなかった。
「今、この島でいったい何が起きているんだ?」
「君は何者だ? どうして此処に居る?」
「僕と例の彼女を襲った理由は何だ? 君は、あの子のことを知ってるのか?」
一樹は女に質問の数々を浴びせたが、
彼女は口を閉ざしたまま、一言たりとも答えようとはしない。
148:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:08:19
07/12/06 07:22:30 5D8IHZNi
暗い室内を、憂鬱な雨音ばかりが満たしてゆく。
この膠着状態に、一樹は次第に苛立ち始めていた。
「……こんなことをしたって、無駄なんだから」
ふいに、女が独り言のように呟いた。
「この島に居る限り、逃げ場なんてないのよ。あんたも、あの化け物女もね。
此処だって、すぐに私の手下が見つけに来るわ。
そうなればあんたはもう終わり。この私をこんな目に合わせたんだから。
絶対、生きて帰ることなんて出来やしない……」
一樹に打たれた頬を撫ぜ、女は薄笑いを浮かべた。
女の言葉に、一樹は拳銃を構えた自分の手を見下ろす。
(このままでは……敵視されたままでは駄目だ。話が進まない)
一刻の躊躇の後、一樹はひとり頷き、その手を収めようとした―。
だがそこで、彼の視界は窓の外に黒い靄を捉えた。
一樹の腕は真っ直ぐに伸ばされ、黒い銃口が火花を散らす。
「きゃあっ!」
耳を塞いで縮こまる女の肩の後ろで、黒い靄が掻き消えた。
靄の中心部の白い顔が、苦悶の叫びを上げて消滅する―。
黒い悪霊を退治した一樹は、ため息をついて女を見た。
「大丈夫か?」
気遣う言葉と共に、伏せられた顔を覗き込もうとした。
そして―彼は見た。
俯いた女の口元が、邪悪な笑みに歪んでいるのを。
冷たい気配に、一樹は思わず小さな悲鳴を漏らす。
女は、パッと顔を上げて一樹を見た。
蒼白な顔の中、異様に大きな瞳がぎょろりと一樹を見据えていた。
――こいつは……この女は、まさか……。
一樹の中で、ひとつの結論が導かれようとしていた。
自らたどり着いたその結論の恐ろしさに―彼は戦慄し、微かに震え出した―。
149:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:12:09
07/12/06 07:24:00 5D8IHZNi
急に顔色を失って震えだした男を、ともえは引き攣った表情のままで見上げていた。
男がこちらに銃口を向けてきた時、ともえは一瞬、死を覚悟した。
しかし彼が撃ったのは、知らぬ間に背後に迫っていた例の化け物の方だった。
黒煙の塊のような、気持ちの悪い化け物。
そういえば―と、ともえは考える。
異変が起きる前、化け物女が海へ追い払っていたのは、あの黒い塊ではなかったか?
―それはさて置き、眼の前の男はどうやら自分を救ってくれたようである。
(こいつ……それほど悪い奴でもないのかも)
胡散臭い余所者には違いないが、少なくとも、か弱い女を守る分別くらいはあるらしい。
ともえの気持ちは、ほんの僅かではあるが和らいでいた。
(……やはり、礼ぐらいは言っておくべきかしら?)
男の眼鏡のレンズに散った雨粒を眺め、ともえはぼんやりと考える。
そして軽く咳払いをし、居住まいを直そうとした―。
「お前の仕業だったんだな」
ともえが言葉を発しようとした途端、突然男が口をきいた。
重苦しく暗い声。蒼ざめた顔で、彼は言葉を続ける。
「この島に居る化け物達を操っていたのは……お前だったんだ!」
突拍子もない台詞。
あまりに奇天烈な男の言いように、ともえはぽかんと口を開けて男を見返した。
(こいつ……何を言ってるの?)
男は大真面目であるらしかった。その見当違いな真剣さに、ともえは思わず失笑してしまう。
「な、何がおかしい?!」
男はともえに拳銃を向けてわめき散らした。
銃口を前にしながらも、ともえはもう、それに怯えることはなかった。
今ともえの心にあるのは、男に対する侮蔑と、僅かばかりの憐憫だけだ。
「ふふふ……この私が化け物の親玉だと言いたいの?」
「ち、違うのか?!」
「馬鹿をお言いでないよ!」
ともえの声が、ビンと辺りの空気を震わせた。
「全く、余所者というのはどうしようもないわねえ!
この私を、よりにもよって化け物呼ばわりするなんて……。
あんた、その眼は飾りなのかい?! そんなに役に立たない目玉なら、
くり抜いてビー玉でもはめ込んでおいたらどうなのさ!」
ともえの物凄い剣幕に、男は微かにうろたえる。
そこに畳み掛けるように、彼女は罵声を浴びせ続けた。
「冗談じゃあないってんだ! 大体あんた、敵と味方の区別もつかないで……
いいかい、よおくお聞き。本当に化け物を操っているのは、あいつなのよ!
あの化け物女……あんたはあいつにたぶらかされているのさ。
ふん! どんな汚らわしい手管でまるめ込まれたのか知らないが、
いい加減に眼をお覚ましよ、みっともない!」
150:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:12:09
07/12/06 07:24:39 5D8IHZNi
ともえのまくし立てる言葉の中には、彼女自身も気付いてはいない、
加奈江に対する嫉妬心が含まれている。
類まれなる美貌と、十八の小娘とは思われぬほどの色香でもって、
次々と男を篭絡してゆく加奈江。
その姿はともえに嫌悪感ばかりでなく、
密かな憧れのようなものも同時に感じさせていたのだ。
――あいつのように、男共を自分の思い通りにすることが出来たなら……。
ともえの加奈江に対する憎悪には、そんな、複雑な女の欲が混ざり込んでいたのである。
が、そんなともえの心の澱など、ついぞあずかり知らぬ男は、
彼女の罵倒にあからさまな反感を示した。
「あの子が化け物の仲間だって言うのか? そんな訳あるか!
あの子は、その化け物に襲われてたんだぞ!」
「そんなの知らないわよ! とにかく、化け物はあの女の方なんだから!」
「嘘だ!」
「嘘じゃない!」
いつしかともえは立ち上がり、背の高い男を真下から仰ぐようにして睨み付けていた。
男の方も、手にした拳銃のことなど忘れ、
自分の胸ぐらいまでしかない小柄な女を見下ろして、睨み返す。
二人はそうして暫しの間、互いの視線をかち合わせた。
「証拠はあるのか?」
男が言う。
「君が真実を言っているという証拠が、何かあるのか?
君が化け物の一味ではなくて、あの子がそうだという証拠が」
「証拠だなんて……わ、私の何処をどうすれば化け物に見えるというのよ!」
「あの子だって化け物には見えない」
ともえは口惜しそうに唇を噛み締めた。
俯きかけて―でもすぐに顎を上げ、男に食って掛かる。
「だったら……確かめてみればいいじゃない!」
ともえは両腕を広げた。
桜色の着物の袖も広がって、寂寞とした景色を花のように彩る。
「ほら、もっと傍まで寄ってよおく見てご覧。この私が、化け物かどうか」
本当は、着物を脱いで見せようかとも思った。
しかし、生娘のともえはそこまで思い切ることは出来ず、
ただ手を広げて、無防備な躰を男に任せるのが精一杯だったのだ。
ともえの行動に、男は虚を付かれた様子であった。
どうすべきか迷い、考えた挙句彼は―ともえの顔を覗き込んだ。
顎を掴み、つぶらな瞳をまじまじと見つめる。
ともえは男に顔を、眼を見つめられて、
何とも居たたまれない、落ち着きのない気持ちになった。
頬が紅潮し、瞳が潤みを帯びてきたのが、自分でも判る。
恥らう気持ちが先立ち、瞼を伏せて、顔を背けてしまいそうになる―。
だがともえはその衝動を堪えた。
(眼を逸らしたりすれば、余計に疑われてしまう……)
このままこの男に化け物だと思われ続けるのは、癪だ。
ともえ自身、何故自分がそんな風に思うのかはよく判っていない。
――きっと理由なんかないのだわ。
誰だって、化け物呼ばわりされるのは嫌なことに決まっているもの……。
151:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:12:09
07/12/06 07:25:23 5D8IHZNi
そう考えながら男の眼を見つめ返すともえの頬に、男の指先が触れた。
小さな肩が、ぴくりと跳ねる。
いつの間にか顎を離れた男の指が、そっと頬を辿っている。
「う……」
むず痒いような感触に、ともえは咽喉の奥底で微かに呻いた。
すると男の指先は、頬から首筋に落ちて、その咽喉の辺りをまさぐった。
奇妙な感覚だった。
男の指が肌の上を動いてゆくにつれ、触れられている箇所とはまるで無関係な躰の中心部、
腹の底よりもっと下がった部分から、もやもやとした得体の知れない何かが湧いてきて、
ともえの鼓動を、体温を、勝手に高めてゆく。
呼吸も乱れ、瞼が重くなって、眼を開けているのが困難になってくる。
立っているのもままならない。このまま頽れてしまいそうだ。
ともえが、その心までも揺らぐような感覚に苦しめられていたその時である。
不意に、男のもうひとつの手がともえの背中を支えた。
拳銃は何処かへ置くか仕舞うかしたのだろうか?
とにかく彼の手は武器を捨て、ともえの躰を抱いていた。
「な、何? 何を……?」
ともえは驚愕と共に本能で危機を察知し、顔を強張らせる。
男は彼女の見開かれた眼を避けるように顔を背け―ぐっとその身を引き寄せた。
「あ……?!」
ともえの小さく華奢な躰は、大柄な男の胸にすっぽりとうずまってしまった。
「……見るだけじゃ、判らないから」
頭の上で、男の掠れた声が言い訳するように呟いている。
微かに震えるその声音には、獣じみた息遣いも混じっていた。
「……いや!」
如何に初心な乙女であろうとも。
こんな風に息を荒げて抱きすくめてくる男が何を望んでいるのか、判らぬ筈はない。
男の腕の中でともえはもがき、渾身の力を込めて引き離そうとする。
が。それは全くもって無駄な努力であった。
男の大きな手の平は、丸太のような腕はともえをしっかりと絡め取っており、
どうあがいても抜け出せそうにはなかった。
「大人しくしろ! ……何もしない。何も、しないから……」
男はぎこちない口調で宥めながら、
ともえの背中を、そして、帯の下の腰の辺りを手で探った。
――な……何て馴れ馴れしい!
屈辱感でともえの躰はカッと燃え上がる。
どくんどくんと音を立てているのは己の鼓動か、はたまたこの男のそれであるのか―。
それでも彼女が腕の中から抜けられないのをいいことに、
男の手は傍若無人にともえの肉体を這いずり始めていた。
「ああいや! よしてよ……よして」
襟の後ろ側から。脇の下の身八ツ口から。
じわじわと潜り込んでくる汗ばんだ指はともえの敏感になった肌を責め立て、苦しめる。
やがて男の手は、帯に掛かった。
おたいこの結び目を探し出そうとしたが―
結局見つけられず、ついには帯止めごとぐいぐいと引っ張り始めた。
「ちょっと! やめ……や……あああっ!」
力ずくで帯が緩められるのと同時に、身八ツ口に深々と手が侵入してきた。
襦袢越しに、乳房の膨らみが手の平に包まれる。
152:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:12:09
07/12/06 07:26:03 5D8IHZNi
襦袢越しだというのに。
「あんっ……あ、あ、あ!」
生まれて初めて味わう男の手の感触を、
密やかに実った乳房は―その先端で息づく乳頭は、浅ましいほど貪欲にむさぼっていた。
特に乳頭は、鋭いアンテナとなって荒々しい触感を捕らえ、
全身に痺れるほどの快美感を行き渡らせた。
その衝撃に、ともえの腰からは力が抜けてしまう。
ただでさえ立っているのもやっとの状態だった躰が、足元から崩れ落ちる。
へなへなと倒れこんだともえの肢体に重なって、男の躰も床に落ちた。
「……」
「……」
とうとう床の上で抱き合う形になったともえと男は、
暗闇の中で互いの光る眼を見つめ合った。
ともえは眼を大きく開き、強張った小さな顔を左右に振っている。
――駄目。いけない。これ以上はもう……。
男の眼を見つめ、精一杯の拒絶の意を示した。
でも本当は、心の何処かで判っていた。
そして、心の何処かで待ちわびてもいた―。
そんなともえを眼鏡の向こう側から見返しながら、男は、乱れた襟元に手を差し入れた。
「あ……!」
彼は素肌に触れていた。
ついに襦袢の下にまで潜り込んだ手が、長い指先が、
ともえの柔肌を滑り、ぷりんと膨らんだ乳房の丸みを押し潰して、
その中心で尖りしこっている可憐な蕾を摘み取ろうとしていた。
「嫌! お願い……か、堪忍! かんにん……して……」
ともえは身悶え、躰をよじって男の狼藉から逃れようとする。
だがそれがいけなかった。
身をくねらせた途端、着崩れていた着物の裾がぱっくり割れて、
ともえの脚が―脚の付け根までもが、すっかり露わになってしまったのである。
「あぁっ」
ともえは慌てて裾前を掻き合わせようとする。
しかしその直前に、男の膝が白い腿の間に分け入っていた。
男の膝は、無防備な股間に強くぶつかった。
甘い感覚が、そこからじんわり広がった。
「あぁ……あはあぁ……ん」
仰け反る咽喉から牝そのものの声が絞り出され、
ともえは―眼も眩むような恍惚の世界へ、乱暴に放り出されてしまった―。
153:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:21:09
07/12/06 07:27:35 5D8IHZNi
女がこれまでにない程のなまめいた声を上げて、身を反り返らせている。
その扇情的な声音を耳元で聞かされながら、
一樹は、激しい情欲の渦に巻き込まれて、抜け出せなくなっている自分を感じていた。
最初に女が腕を広げて身を投げ出してきた時、
彼はすでに、女が化け物であるという考えが誤りであることを理解しかけていた。
この女の、呆れ返るくらいに真っ直ぐな態度からは、
あの化け物ども醸しているような邪悪さが、微塵も感じられないのだ。
(やっぱりここは、己の非を認めて詫びるべきなんだろうか……)
一樹は、女の眼を見つめながら困惑気味に考えていた。
女の、雨露に濡れた黒スグリのような瞳。微かに甘い吐息―。
考える頭とは裏腹に、指が勝手に動いていた。
女の顎を引き寄せ、頬を撫ぜて、首筋に触れた。
女は小さな声を漏らした。
とろんと落ちかけた瞼の下から、潤んだ瞳が見上げていた。
女の吐息に顎の辺りをくすぐられている内に―
いつしか彼は、躰の奥からふつふつと沸き上がる衝動を感じていた。
それに引きずられるように、一樹は女を抱き締めた。
――俺は、何をする気なんだ……。
疑問を差し挟む余地もなく。
抵抗を示す女を宥めつつもその自由を奪い、押さえつけて、しなる躰をまさぐった。
「ああいや! よしてよ……よして」
女が発する抗いの言葉が、一樹の興奮をいっそう煽る。
すでにジーンズの中では陰茎が硬直し、熱を持って膨らんでいた。
――そうか……そうなんだ。
一樹は心に呟いた。
これは……調査であると。
女が、この嫋やかな肉体が普通の人間であることを知る手段。
その本性を暴くのに、これ以上によい方法はあるまい。
欲情にのぼせ上がった一樹の脳は、この、酷く身勝手な理論を得て調子づいた。
まずは乳房を刺激してみる。
女は少々過敏すぎるほどの反応を示した。
(下着の上からなのに……)
薄い布地の中では、柔らかい膨らみの中心で、
こりこりとした突起がわなないているようだ。
床に転がり、更にそこを責め立てた。
女は全身で抵抗を示したが、これは調査なのだから仕方がない。
傍らに落ちたLEDライトが、女の蠢く様を映し出していた。
艶のある黒髪が、白い手首が、桜色の布地が、白い明かりにゆらゆら揺らめく。
(もっと……もっとよく調べなくては)
一樹は女の着物を剥ぎ取ろうとした。
帯を解こうと手を掛けたものの、
それは着物の扱いなど知らぬ若者には困難な仕事であった。
結局、強引に引っ張って僅かに緩めることしか出来なかった。
しかしそうして着付けを崩し、襟元や裾前を乱した姿も、それはそれで悩ましい。
154:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:21:09
07/12/06 07:28:36 5D8IHZNi
一樹は開き気味になった襟元に手を突き挿し、中の乳房をまさぐらんとする。
すると案の定、女はさかんに躰をねじり、彼の手を避けようとした。
意識が乳に集中した所為なのか。
無心にばたつかせた脚から着物の裾が滑り落ち、
眩い純白の太ももが、一樹の眼の前にまともに突き出された。
女はすぐに気付いて脚を仕舞おうとした。
無論、一樹はそれを許さない。
すぐさま腿の隙間に膝を割り込ませ、その先の行為に都合のいい体勢を取ろうとした。
そして―。
「あぁ……はぁ、はぁ……う」
長く尾を引く声を出し終えて、女の躰はがっくりと力を抜いた。
一樹の膝を挟み込んで締め付けていた腿の緊張も解けて、
着物の上にしどけなく投げ出されていた。
――まさか……。
一樹はごくりと唾を飲み込むと、物も言わずに女の股間に手を挿し入れた。
「う……!」
眼を閉ざしていた女が、呻き声を上げる。
彼女の女の部分は―熱いしたたりを振り零し、指が滑るほどぬかるんでいた。
一樹は自分の膝を見下ろした。
女の股に触れた部分に、小さな染みがついている。
(触れただけで達してしまった……なんてことはないんだろうけど)
それでも、この女の肉体が性欲の海の中に居ることには、変わりなさそうである。
「ああいやぁ……やめて。いや。いや。いや……」
一樹が着物の合わせ目の奥で指先をひらめかせれば、
女は見も世もないといった風情ですすり泣き、もじもじと尻を動かす。
指先に、ねっとりと蜜に浸かった小陰唇が、繊細な陰門の粘膜が絡みつき、
ぴくぴくと物欲しげに蠢いていた。
一樹は「ふう」と大きなため息をつき、腰を据えて女の股間に集中し始めた。
赤い下駄を突っ掛けた、白足袋の足首をぐいっと持ち上げ、
開かれて剥き出しになった部分にLEDライトを向けた。
「ひいぃっ」
秘すべき場所を晒された衝撃に、女は真ん丸く眼を見開いて悲鳴を漏らす。
一樹はそれに構わず、割れた股の奥で紅くぬめっている箇所に、再び指を宛がった。
小柄な女の生殖器はその容姿に相応しく、ちんまりと可愛らしいものであった。
紅色に濡れ光る小陰唇は慎ましく、
それを縁取る、紫がかった大陰唇に生えそろった恥毛もまた、ささやかなものである。
(ここはどうかな?)
一樹は、女の割れ目の頂点を探り―
そこで、ぽつんと起き上がっている陰核に指を這わせた。
「はうっ!」
女の内腿の筋が、くっ、と浮き上がる。
ころころと硬く、弾力のある肉の豆を摩ったり揉んだりする度毎に、
臀部から太腿、ふくらはぎにかけてまでもがわななき痙攣する。
155:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:21:09
07/12/06 08:29:40 s19KZzzb
「ああぁ……あぅっ、はぅんっ……くうっ」
女の性器の中でも最も鋭敏な陰核を玩ばれて、女はすっかり興奮しているようである。
熱を帯び、桃色に染まった肌は何処もかしこもじっとりと汗に濡れ、
乱れ髪は頬に張り付き、半眼に開いたまなこは虚ろで、何も映していないように見える。
弾む息には喘ぎ声が混ざり、艶めいた唇から絶えることなく溢れ出していた。
一樹は、女が性悦に我を失ってゆく様を、黙って観察し続けていた。
その指先ひとつでもって女を熱狂させる一方で、彼自身もまた、
女の姿に魅入られ、惹き込まれつつあった。
「あ……あぁ、あ、ああ、もう、あは……は……はあ……あぁんっ」
女が、一際高く声を上げた。
掴まれた足首の腱が強張り―その緊張がくるぶしを通ってふくらはぎ、
内腿へと伝わってゆき、真っ赤になった会陰の肉をぐっ、ぐっ、と収縮させた。
その性器の蠢動に合わせ、断末魔のように開かれた唇からは、
「ああーっ」
と、快楽にむせぶ声が後を引き、八の字に歪んだ眉の間には深い皺が刻み込まれる。
苦悶に満ちた喜悦の表情を浮かべる女を前にして、
一樹の頭はもう、何も考えてはいなかった。
ぐったりと四肢を投げ出した彼女を見下ろしながら、彼は素早くジーンズの釦を外し、
ファスナーを引き下ろした。
そして、下着と一緒にジーンズを膝まで押し下げてしまう。
赤黒い肉の棹が、ぴいんと跳ねて躍り出る。
「う……」
気付いた女が、怯えた呻き声を出した。
が、別に逃げようともしない。
細く開いた眼で、一樹の陰茎をぼんやり見つめるだけである。
一樹は膝でにじり寄り、女の両脚を掻い込んで、引き寄せた。
片手で亀頭を持ち添え、濡れた陰唇の間に宛がって、中の粘液をぬるぬるとまぶした。
「いや……」
女は、ほとんど形ばかりの拒絶を口にする。
その弱々しい声音に、一樹は何故か愛おしさのようなものを感じた。
心が和み、我知らず微笑みが零れ出す。
そうして笑いながら―彼は女の膣口に、ゆっくりと陰茎をめり込ませていった―。
156:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:25:19
07/12/06 08:30:58 s19KZzzb
「あ……あぁ、あ、ああ、もう、あは……は……はあ……あぁんっ」
あられもない嬌声と共に、ともえは果てた。
生まれて初めて、男の手によって為された陰核への手淫。
(信じられない……こんなに……いいなんて……)
己で触れた時の比ではない。
世の人々が夢中になり、その人生さえも変えてしまうほどの男女の営みの凄さを、
ともえはほんの僅かばかり、自身の躰で理解した。
(触れられただけでこんなに良いものならば、本当のあれをしたら、一体、どんなにか)
この、見ず知らずの余所者の男に、惚れている訳ではない。
それでもともえは、もうこの男に最後まで許してしまっても構わない気持ちになっていた。
ここまでされてしまったら同じことだから、というのも勿論ある。
でもそればかりではなかった。
――あの化け物女が虜にしたこの男を、私は奪い取ってやるんだ……。
絶頂の余韻に微睡みながら思いを巡らすともえの耳に、金属の擦れあう音、
そして、密やかな衣擦れの音が響いてきた。
薄っすらと開いたともえの眼に飛び込んできたのは、直立した男の陰茎だった。
「う……」
初めて眼にする勃起した陰茎の怖ろしげな姿に、ともえは思わず呻き声を上げる。
そんなともえの様子を男は全く気に留めず、さっさと躰を繋ごうと腰を抱え込んできた。
――ああー……ついに私の操が奪われてしまうのね……。
悲劇のヒロインにでもなったような心持ちで、ともえはひそかに涙ぐむ。
二十四年もの間、守り通してきた処女性。それが今、まさに失われようとしている。
ともえは、そっと男の顔を見上げてみた。
闇の中、眼鏡の奥の瞳がどんな風に自分を見ているのかは、よく判らない。
だがその口元は、微かに綻んでいた。
(……笑ってる)
奇妙な感じだった。それはこの状況下にそぐわない、牧歌的な微笑みに思えた。
(どうして……?)
その疑問は、一瞬で消し飛んだ。
男のものが、ともえの膣を貫いたからである。
「いっ…………!」
刃物で切り裂かれたかと思った。
狭い場所を太い剛直が無理矢理こじ開ける激痛に、ともえは悲鳴を上げるゆとりすらない。
それに反して男の方は、心地好さげなため息をついている。
――い……た……あ……!
痛みの余り、ともえの顔はくしゃくしゃに崩れてしまう。
膣も硬直し、胎内の異物を排除しようとして強く締め付け、押し返す動きをした。
「ううっ……」
男が呻き声を漏らしている。
彼は膣の押し返しを堪えるように、少しのあいだ静止していたが―
いきなり猛然と、陰茎の抜き挿しを開始した。
157:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:25:19
07/12/06 08:31:31 s19KZzzb
「あ痛っ! 痛い……痛い! 痛いぃっ!!」
ともえは手足を突っ張り、涙を流して苦痛を訴えた。
男の胸板に腕をつき、シャツの上から爪を立てても見た。
けれど、それらの抵抗は全て徒労に終わった。
男は、そこに根が生えているもののように、びくとも動かなかった。
決してともえの上から退こうとしない―
ただ一心に腰を上下動させて、陰茎で穿った傷口を掘り返すのであった。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」
挿して。抜いて。挿して。抜いて。
律動的な呼吸と共に、素早く、規則正しい運動が繰り返される。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
男の運動に合わせ、ともえの咽喉からも独りでに声が漏れる。
頬が。肩が。腰が。膝が。つま先に突っ掛けた下駄の鼻緒が。
揺れて震えて、ともえの意識を夢幻の境地に引きずり込む。
すでに痛みは通り越していた。
陰部はただ燃え盛るように熱く、膣口が引き攣れる違和感のみが、
彼女を責めて、苛んでいた。
「あああ」
――熱い。なんて火のように激しい。強い。壊れる。私。ばらばらに壊れてしまう。
動物めいた呻き声と共に、取り留めのない思考が浮かんでは、消える。
不意に、襟前がぐっと寛げられた。
剥き出された乳房を、ぬるい夜気がさっと撫でる。
次いでそこに荒々しい吐息が降りかかったかと思うと―
乳房の谷間に、重たい頭が圧し掛かってくる気配を感じた。
「あ……はぁ」
眼鏡の冷たさ。乳首を、ちゅっと吸われる感覚。
汗ばんだ乳房が、同じくらいに汗ばんだ手の平に揉みしだかれて―。
腰の動きは、ますます熾烈になっていた。
ぐいぐい押される。姿勢が不安定になる。
ともえの腕が、男の頭を抱え込んだ。
乳を吸う幼子を抱くように。
肘の上まで捲くれ上がった着物の袖が邪魔だった。
もっと、もっと強く抱き締めたいのに。
深く、深く繋がりたいのに―。
158:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:25:19
07/12/06 08:32:12 s19KZzzb
両脚はすでに男の腕から解放されていたが、
ともえは自らそれを掲げ、男の尻に巻き付けていた。
苦痛に耐えて腰を上げると、繋がった部分からぐちゃぐちゃと液体にまみれた音が聞こえた。
――もうすぐ、ひとつの決着がつく……。
狂ったような震動に揉まれながら、ともえの心は予感する。
その予感は的中した。
「うっ……おぉ」
ともえの胸の中、滅茶苦茶な呼吸と動作を繰り返していた男が、
搾り出すような呻き声を出した。
激しい動きがぴたっと治まり―
膣の奥で、何かがぐっ、ぐっと自律的に躍動しているのを感じた。
やがて、ともえのふくらはぎの下でびくびく震えていた臀部の筋肉から、
ふっと力が抜けた。
被さっていた大きな躰が、さらに重みを増してともえを押し潰そうとする。
その重みに耐えながら、ともえは脚を下ろした。
熱を持った躰は全身で早鐘を打ち、
汗を、灼熱の呼気を放って、未だ激情の余韻に火照っている。
それは男も同様だった。
静けさを取り戻した室内で余熱を発する二人の肉体は、
重なり合ったまま動くことはなかった。
仰向いたともえは霞んだ眼を天井に向けていたが、心の中は虚ろで、
その瞳は、何も見ていないのと同じであった。
――終わった。
がらんどうの胸の中、小さな言葉が浮かび上がる。
安堵と、幾許かの悔しさが込み上げてきたが―
それは徐々に引いてゆく躰の熱と共に、ゆっくりと意識の底に沈んで、消えた。
159:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:26:26
07/12/06 08:33:04 s19KZzzb
「あ痛っ! 痛い……痛い! 痛いぃっ!!」
女が悲痛な声で叫んだ。
(やっぱり、処女だったんだ)
どうりで挿入する際、異様なまでの狭窄感があったはずだ。
一樹は、半ば無理矢理に貫いた膣の感触に酔い痴れ、
その初開の場所に陰茎を擦りつけ始めていた。
処女の性器の味は素晴しいものであった。
挿れたり出したりする度に、膣口がきつく収縮し、中の方ではぶよぶよとした柔肉が、
吸い付いてねっちり絡みつく。
――ああっ、す、凄い……!
女に火の息を吐きかけながら、一樹は憑かれたように抽送を繰り返した。
姦されている女は押したり引っ掻いたり、やたらに暴れて儚い抵抗を示していたが、
そのうちそれも弱まって、段々と一樹の為すがままになってゆく。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
全身を揺さぶられながら、機械的な声を上げ続ける女の表情は虚ろで、
ぼろぼろと零していた涙も枯れ果て、全ての感情は失われてしまったかに見えた。
しかしそうした一方で、陰茎を抉り込まれている膣の方は、
実に生き生きと一樹の動きに応え、濃密な肉の快楽を伝え続けてくるのだ。
一樹は女の姿を見おろした。
彼の腹の下、女は憐れな肉人形に成り果てていた。
それは信じ難い光景であった。
勝気で、気位の高かったあの女が。
髪はざんばらに振り乱し、はだけられた着物を床に押し広げ、
素足も二の腕も晒した無残な有様で―。
しかも彼女のししむらは、こんな状況であるのにじっとりと濡れそぼち、
あまつさえ彼の陰茎を淫らに食い締め、ぬらぬらと舐りついてさえもいた。
そんな変わり果てた女の姿を見るにつけ、堪え難い衝動に駆られた一樹は、
彼女の脚を手放し、桜色の着物の襟をぐっと引き開けた。
真白く愛らしい膨らみが、ぷるんと震えて零れ出た。
女は切なげに咽喉をそらす。
一樹は荒い呼吸をしながら、その柔らかそうな二つの乳に顔を埋めた。
「あ……はぁ」
眼鏡がずれるのも構わず、小粒の乳頭に音を立てて吸い付き、
手の平で、乳房全体をいたわり深く揉みほぐした。
160:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:26:26
07/12/06 08:33:43 s19KZzzb
乳房を愛撫した途端、女の様子に変化が起こった。
されるがまま、投げ出されたままになっていた手足が勢いよく動き、
一樹の躰にしがみ付いてきたのである。
細い腕は、乳房にすり寄せた頭を抱きかかえ、
下駄履きの脚は腰に絡んで、しっかりと組み付いた。
ことこと打たれる女の鼓動を耳で聞き、甘酸っぱいような匂いに包まれながら、
一樹はいっそう激しく、ありったけの力を込めて腰を使い始めた。
女の躰が、嵐の中の小船のように揺れ動く。
乳房の下、腹の奥では膣がきゅうきゅう窄まって、
亀頭冠に、裏筋に、いやというほど秘肉を纏わりつかせて扱き上げた。
頭の中で、幾つもの閃光が火花を散らして、炸裂した。
腰の奥から堪らない快感が陰茎の先に集まり、そして―。
「うっ……おぉ」
突然、深い穴に落ち込むような感じで、一樹は精を漏らし出していた。
一樹は息を詰め、精液が押し出される感覚に耐えた。
全て出し終わると一樹はぐったり力を抜いて、女の上に倒れた。
それを待っていたかのように、尻に絡み付いていた女の脚も床に落ちる。
下駄が、からんと乾いた音を立て―それを最後に、快楽の刻は、終わりを告げた。
「……」
一刻の余韻から覚めた一樹は、起き上がって眼鏡を掛け直した。
女から身を離し―そこでようやく気付く。
――これって、レイプじゃないか!
乱れた着物から胸と股間を曝け出し、呆然と天井を見上げて横たわった女の姿。
だらしなく広げっぱなしの脚の間で、くちゃりと割れた陰唇の下の方に、
僅かな赤い色が見える。
生々しい、処女の血痕―。
一樹は急に怖ろしくなり、小刻みに震えながら後ずさりを始めた。
大急ぎでジーンズを引き上げ、拳銃とライトを拾い―
そのまま、一目散にその場を逃げ出した。
もつれる足で階段を駆け下り、制御室の戸を開けて出て行こうとする。
そこで彼は立ち止まった。
開きかけた引き戸から手を離して、二階を見上げる。
――逃げてどうする!
彼女は、人間だ。
彼女の言ったとおり。それは完璧に証明されたのだ。
――だったら……あのまま放っておく訳には……。
今は非常事態なのだ。
こんな化け物が跋扈する危険な場所に、か弱い女を捨てて行くことは出来ない。
一樹は、女の元へ戻る決意をした。
161:一樹守/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:26:26
07/12/06 08:34:17 s19KZzzb
ところが。
引き戸が開いて、湿った外気が部屋に流れ込んできた。
「あ……」
そこには、百合が立っていた。
雨に濡れた長い黒髪。赤いカーディガンも、雨水を含んで重そうに濡れている。
「……もう、済んだんでしょ?」
掠れた声で、百合は言った。
「え……」
何が? と、聞き返す勇気はない。百合は、言い澱む一樹の腕を取った。
「行こう? 時間、ないから」
冷たい腕を絡ませてくる百合は、黒々とした瞳で一樹を見つめる。
すると彼はその輝きに惹き寄せられて―
もうひとつの気掛かりのことなど、瞬く間に忘れてしまった。
百合に引っ張られるように制御室を後にする一樹の胸ポケットで、
花の髪飾りが微かに揺れる。
――これ、返してあげればよかったかな……。
鉄階段の途中で、そっと制御室を振り返る。
「どうかした?」
傍らで百合が見上げている。
その、自分を一心に頼り続ける、いたいけな瞳―。
「……なんでもないよ。行こう」
あの女には悪いが、この子を見棄てることなど出来はしない。
一樹は胸に小さな痛みを残したまま、
百合を伴い、採掘所からの脱出口へと向かって行った―。
162:太田ともえ/夜見島金鉱採掘所/インクライン制御室/0:33:20
07/12/06 08:35:09 s19KZzzb
男が逃げるようにともえの元から去って行く。
後に残されたともえは独り、外から吹き込む雨風をその身に受けながら、
ぼんやりと天井を見上げていた。
(寒い……)
熱の引いた肌がすっかり冷たくなっている。
ともえは重たい躰をのろのろと起こし、着物の着崩れを直そうとする。
立ち上がる時、陰部に鈍い痛みが走った。
それは躰を動かす度に、いつまでもいつまでも残ってともえを憂鬱な気分に陥れた。
(忌々しいね、本当に)
つまらない男。
身八ツ口に手を入れて襟を正しながら、ともえは、己の処女を破った男のことを考えていた。
余所者で。臆病で。思い込みが激しくて。あんな―甘ったれた笑顔を見せて。
――それに……あんな化け物女なんかに騙されて。
ふっと涙が湧いて、視界がぼやけた。
ともえは慌ててそれを拭う。
「おおいやだ。まだあそこが痛みやがる……」
忘れてしまおう。ともえは心にそう呟いた。
どうってことない。どうってことない。こんなの、犬に噛まれたも同じこと。
(お父様だってきっと……判って下さるわ……)
誰よりも頼みにしている父を想い、ともえは髪の毛に手をやる。
頭の後ろの髪飾りに触れようとして―それがないことに、初めて気がついた。
「……お父様に貰った、髪飾り」
今までにない深刻な表情で、ともえは呟いた。
163:一樹守/夜見島/離島線4号機鉄塔/22:33:44
07/12/06 08:36:36 s19KZzzb
「ちょっと待ってて」
郁子の肩から手を離し、一樹は座敷へと戻って行った。
鉄塔の只中に、何故在るのか判らない奇妙な座敷。
まあこの鉄塔自体、捻くれ曲がった大樹と融合している処といい、
頂上が異界と現世の接点になっている処といい、奇妙以外の何ものでもない訳ではあるが。
あれから―。
あの着物の女との出逢いから、様々なことがあった。
結局あの女の言っていたことは、正しかった。
岸田百合は諸悪の根源ともいうべき化け物であり、
彼女を信用していいように操られた自分は、救いがたい大馬鹿者であったのだ。
そのことに気付いたのは、自らの手で、事態を更に悪い方へと進めてしまった後だった。
だからこそ―だからこそ彼は、この悪夢を、
同じく自らの手でもって収束させねばならないと意気込んでいた。
幸い、彼には心強い協力者もいた。
彼がこの怖ろしい鉄塔を此処まで登ってこられたのは、
彼女の助けもあってこその事なのである。
――今度こそ……見棄てていったりはしない。
優しくて口の悪い郁子。
大事なパートナーである彼女を表に待たせて一樹は―
たった今座敷に生えた、小さな木の前に立っていた。
あの女は―あれから度々、一樹の前に立ち塞がってきた。
すでに人では無くなってしまった姿で。
彼女が忌み嫌っていた化け物の眷属と成り下がってしまった彼女を、
一樹は何度も何度も打ち倒さねばならなかった。
何度撃退しても起き上がって一樹に向かってくるその執拗さは、
あたかも、彼の不実を責め立てているようでもあった。
しかしついに、その腐れ縁に決着のつく時が来たのだった。
『太田ともえ』と銘打たれた呪具を使い、彼は異形と化した女を滅することに成功した。
――これでもう、君が起き上がることは無い。
小さな木―否、大樹の枝となった女を見つめ、一樹は心に呟く。
そして、胸ポケットから花の髪飾りを取り出した。
美しい赤い花を模った髪飾りを、枝の先端に挿し挟む。
朽ちかけたような色合いの木に、たった一輪の可憐な花が咲いた。
「……」
一樹は言葉もなく暫し花を、木を見下ろした。
綺麗な髪飾りはきっと、人であった頃の女によく似合ったことだろう。
「ねえ、どうかしたの?」
座敷の玄関先で郁子が呼んでいる。
「ああ……何でもないよ。もう行こう」
一樹は木を一瞥し、郁子の元へ戻っていった。
彼が立ち去った後の座敷には、赤い花をつけた木が、静かに座するのみであった。
【了】
164:名無しさん@ピンキー
07/12/06 10:01:12 rexS61BB
乙、素晴らしい!
165:名無しさん@ピンキー
07/12/06 14:22:16 U/bA2c2w
オリジナル小説というのがどうにも信じられん程の完成度
そ、そうか貴方は製作者だなGJ!
166:名無しさん@ピンキー
07/12/12 23:00:49 9KOYqhYH
すごいクオリティage
167:名無しさん@ピンキー
07/12/14 15:33:37 SsxU/rzo
宮田が人気かと思ってたけどそうでもないんだね
168:名無しさん@ピンキー
07/12/18 17:33:54 Ss41ZBzA
宮田×美耶子ってないね
169:名無しさん@ピンキー
07/12/24 03:00:56 jXh9jDra
>>168
診察中にあれやこれや?
…いいじゃぁないか!
170:名無しさん@ピンキー
07/12/24 16:32:48 1DrC1pgQ
美耶子ってパンツ何色だろ?
171:名無しさん@ピンキー
07/12/24 18:42:08 WpiOkaW1
ベージュで真ん中が黒
172:名無しさん@ピンキー
07/12/25 12:01:34 sc5c6AJM
ノーパン?
173:名無しさん@ピンキー
07/12/26 23:08:05 M+useQKk BE:137400252-2BP(1000)
hssh
174:名無しさん@ピンキー
07/12/27 13:47:04 kbbq8542
誰か職人さん来ないかな
175: 【中吉】 【1803円】
08/01/01 00:35:37 mS0oh6i7
あけおめ
176:名無しさん@ピンキー
08/01/04 10:35:54 FCvbrcPh
あけおめ
177:名無しさん@ピンキー
08/01/05 16:11:18 DxDMMOmX
竹内×安野が読みたい…
178:名無しさん@ピンキー
08/01/21 17:02:12 CQpfC/bD
保守
179:名無しさん@ピンキー
08/01/26 21:42:56 Qr18mXFD
良すれ保守
180:名無しさん@ピンキー
08/02/04 22:52:56 R2sS8y6p
保守
181:名無しさん@ピンキー
08/02/05 02:28:06 qyK2aQsa
ちょwここのエロパロ素晴らしすぎだろ。
一樹、永井×百合は神
182:名無しさん@ピンキー
08/02/05 03:42:25 ZUJCxixl
サイレンはサイレンでもサイレンの方のサイレンと勘違いしてた
183:名無しさん@ピンキー
08/02/05 17:23:44 eexKPguE
182は何と勘違いしてるんだよww