07/09/23 01:21:56 AsgDQw7n
慶は、寝台の上に正座をして求導女の乳房に見入った。
眉根を寄せ、半開きの唇で浅い呼吸を繰り返すその表情は、砂漠で渇きに苦しむ人の顔の様である。
彼の震える指先は眼の前の、したたる様に熟れた、甘そうな果実に伸ばされる……
「まだ下が残ってるわよ」
求導女の声が慶の動きを止めた。
「下」と鸚鵡返しに繰り返し、慶は目線を下に落とした。
そこには、ベージュの薄いパンティーに包まれた下腹部がある。
その中心部には、黒い翳りが幽かに透けて見えていた。
慶は、ぐっ、と生唾を飲み込み、パンティーの両脇に手を掛ける。
指の背に彼女の肌の温かさを感じつつ、綿の布を、そろそろと下ろす。
すると白い肌に囲まれて、ひときわ黒く輝く草むらが現れた。
縮れの少ない和毛は逆三角形に生え揃い、求導女のおんなの部分を、奥床しく包み込んでいた。
慶の手がパンティーをするり、と、腿の途中まで引き降ろすと、彼女は膝を片方ずつ上げ、
彼の仕事を手伝った。
足首からそれが抜け落ちると、もう求導女の躰を隠すものは、何も無い。
無防備で、何処か挑発的でもある美しい裸身を眼の前にして、慶は軽い眩暈を覚えた。
こんな姿になって、彼女が自分に何をさせようとしているのか――考えるだけで、躰が煮えたぎる。
それは、あまりに現実味の無い事だった。
(これは、夢なんじゃないだろうか)
そう考えた方が、辻褄が合う様な気もする。
これはきっと、有り余る性欲に悶々とする己の脳が見せている淫夢。
八尾さんと抱き合って―これから、という処で眼が覚めるのに違いない。
下着の中の、生温く濡れた感覚と共に―――。
「これでもう、どれだけ濡らされても大丈夫だわ」
尻の下が少し揺らいだかと思うと、求導女が寝台に上がって来ていた。
隅で縮こまっている慶の隣に腰を据え、ゆっくりとその身を横たえる。そして、慶を見上げて微笑んだ。
「さ、求導師様。どうぞ」
「はい?」
どうぞと言われても、女を知らぬ慶には何をどうすればいいものやら、さっぱり判らない。
「……そっか。初めてだから、やり方が判らないよね」
内気な慶の困惑を察し、求導女は身を起こした。
寝台の足元の方に蹲る慶と向き合う様にして坐り、枕元のスタンドの笠を手前に傾けて、
シーツの上を明るく照らした。
そして慶は見た。
彼女のしなやかに伸びた脚がスッと開き、白い、大理石の様な内腿と、
その中で密やかに息衝いていた、肉の裂け目が露わになるのを。
更に。
彼女は膝を立て、太腿を大きく広げ、その裂け目に指を宛がい―其処も、ぱっくりと広げた。
「求導師様……見て」
求導女の静かな声。慶の眼が見開かれる。
慶がずっと、求め続けていたものが、其処にあった。
こんなに間近く。生々しく。
慶は息をするのも忘れ、求導女の、その部分を見詰め続けた。
51:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:22:44 AsgDQw7n
夜の帳に包まれた暗い寝室。
寝台の辺りだけが、スタンドの灯りにぼんやり浮かび上がっている。
その幽かな光に照らされ、求導女の生殖器は、その妖しく淫猥な全貌を曝け出していた。
「八尾、さ……ん」
牡丹の花みたいだ。それが、第一印象だった。
高く盛り上がった陰阜の下、黒い繊毛に薄く縁取られた大陰唇の中に、肉厚な、濃い紅色の陰唇があり、
指で寛げられた其の陰唇の中には、色味の淡い、繊細な感じのする粘膜が、
複雑で内臓めいた姿を現していた。
菱形に割られたその頂点に、豆状の突起がぽつんとくっ付いているのが不思議な感じだ。
慶は、もう逆らえない気持ちになり、求導女の性器ににじり寄って行く。
其処に顔を近付けると、香ばしい様な生臭い様な―甘ったるい様な、何とも形容し難い匂いがした。
「ふふっ……可笑しなモノでしょう?」
かぶりつきで見入っている慶に、求導女が声を掛ける。
慶は何と言っていいのか判らず、ただ曖昧な空返事をするだけだ。
「いい? 求導師様」
しっとりとした眼差しで慶の顔を見詰め、求導女は、己の性器を指し示す。
「これが、女の陰部です。求導師様のとは全然違うでしょう?男の人のものを受け入れる為に、
こういう形になっているのよ」
それは普段、慶に勉強を教える時と同じ、淡々とした口調であった。
「……この、ひらひらした鶏のトサカみたいな部分は、小陰唇といいます。
普通の時は此処が合わさって、中の粘膜を隠しているの。で、これを広げると……」
求導女は其処を指先で摘まみ、ピラッと捲って見せた。
「ね。此処の、下の方……ちょっと判りづらいかもしれないけど、此処が膣の入口……
男の人のおちんちんを挿れる為の、穴の入口よ。赤ちゃんも、此処から産まれます」
おちんちん。という単語を聞いて、慶は僅かな反応を示す。
それに気付いているのかいないのか―。
淫らな女教師は、自ら指し示した膣口をグッと開き、小さな穴をひくひくと収縮させて、
慶の目線を強く其処に吸い寄せた。
顔を突き出し、シーツの上で前屈みに丸く蹲って、求導女の生殖器に見入っている慶は、
眼の前のいやらしい膣穴の蠢きに頬を紅潮させ、呼吸を荒げて行く。
ずきずき脈打つ陰茎は、腿の間で圧迫されて疼き、
もうこのまま扱き上げて射精したい衝動に駆られてしまうが、慶は、その衝動に耐え続けていた。
そして、求導女による濃密な性教育の授業を、息詰めて聴講し続ける。
そんな慶に向かって、求導女は、更に詳しく女の性器の解説を行った。
「この膣の穴の下には、お尻の穴があります……ほら、これね。
これは求導師様にもあるから、判るわよね。
で、上の方。此処に尿道口があるのだけど……見えるかしら?膣よりずっと小さいから……
……そう。女は性器の穴と、おしっこの穴が、別になっているの。
複雑よね。うふふ……」
桃色の粘膜の中心部。
求導女が尿道口だと説明した箇所には、ぽつんと小さな窪みがあった。
(これが……八尾さんのおしっこの、穴?)
ぼおっと欲情に逆上せた頭で、慶は其処を凝視する。
ふと、その穴が微かに広がって、檸檬色の小水を噴き出す映像が頭に浮かんだ。
自らの卑猥な妄想に興奮し、慶はふう、と大きな溜息を吐く。
勃起が、酷い。
陰茎に血液の全てを持って行かれてしまったみたいに、頭がクラクラする。
52:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:23:42 AsgDQw7n
求導女が美しい女である事に気が付いたのは、いつの頃からだったろう?
それは先代のマナ字架を譲り受け、求導師と呼ばれるようになってからだった様な気がする。
とても複雑な心境であった。
母に等しい女性であり、汚してはならない清らかな求導女である彼女に、女を感じてしまう自分。
気が付くと、彼女の乳房の膨らみや後姿の腰の線を眼で追って、
尼僧服の下の肉体に思いを馳せてしまう不埒な自分。
嫌だ。不潔だ。気持ちが悪い。
そんな気持ちで我と我が身を叱って見るも、その衝動はどうにも抑え難いものであった。
そして或る晩―慶は求導女の夢を見て、生まれて初めての射精を経験したのだ―――。
「それでね、求導師様」
求導女の講釈が続く。
「この一番上にくっ付いているお豆のようなものなんだけど……」
と言って女は、割れ目の頂点で紅色に輝いている、大豆ほどの突起を指し示す。
「これが、女の躰で一番敏感な部分なの。陰核。おさね……
ああ。今の若い人には、クリトリスって言った方が、通りがいいのかしらね? ふふ」
求導女は自らの指先でその突起をつついたり、そっと撫で廻したりする。
「ここはね、求導師様のおちんちんの尖端と同じくらい……
いえ、もしかするとそれ以上に、敏感な処なのよ。ここをこうやって優しく触れれば……
快感を得ない女は、いない……あぁ」
求導女は、自身の言葉を実証するかのように紅い豆状突起に指を這わせ、切なげな溜息を吐いた。
腰が、何かの衝動に耐えかねているようにもじもじとくねり出し――。
そして―其処までが、慶の限界であった。
「や……八尾さんっ!」
「きゃっ? 求導師さま?!」
とつぜん慶は、求導女にしがみ付いた。
求導女の腰に喰らいつき、彼女の股間に顔を埋める。
恥毛のしゃりしゃりした感触―両手は、たわわな乳房を力いっぱい握り締めている。
「ああっ、求導師様……い、痛いわ……」
慶に乳房を捻り上げられ、求導女は苦痛の呻きと共に顔を歪めた。
慶の手を取り、乳房から外そうとする。
だが慶はそれに抗い、尚も強い力で女の乳房を揉みしだいた。
「八尾さん……八尾さん……八尾さん!」
求導女の性器に顔を押し付けながら、慶はくぐもった声で女の名を呼び続ける。
(これがクリトリス……これが尿道……これが……膣…………)
唇で、舌で、慶は教わったばかりの女性器の各器官を確かめるように舐り廻す。
酸味と塩味の入り混じったような、奇妙な、それでいて男心を引き付ける淫らな味―。
掌にはもちもちとした乳房があり、彼の手の動きによってその形を千変万化させている。
乳房の中心の突起が、陰部の頂点にある突起が、慶の刺激を受けてシコシコと硬く尖ってゆく。
「ああぁ……求導師様、ちょっと、お、落ち着いて」
慶のあまりに性急で乱暴な行為は、求導女の肉体に苦痛を与えていた。
求導女は何度となく少年に自制を促したが、彼女の言葉は彼の耳には入らなかった。
慶の理性は、極度に昂ぶった肉欲の前に、完全に消失していた。
灼熱の閃光に眩んだように視界は霞み、
沸騰しきった脳髄は、眼下の女体を貪ること以外、何も考えられなくなっていた。
乳房から、女陰から、目茶苦茶に揉み、摩り、舐め廻して歯を立てる。
それは愛撫などと呼べるような代物ではなく、
求導女は、まるで荒波に揉まれているような心地で苦悶の呻きを漏らし続ける。
53:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:24:31 AsgDQw7n
「ひぃっ! やめ……求導師様やめて! 求導師様……」
慶が乳首をきつく抓った処で、耐えかねた求導女は、本格的に制止の言葉を口にし始めた。
だがのぼせ上がった慶は、相変わらずその訴えを無視し続ける。
自らの欲情に翻弄される慶は、求導女の内腿に硬直しきった亀頭を擦り付けるのに夢中だった。
尿道口からは先走りの液が駄々漏れになっていて、
ぬるぬるした感触に、陰茎がもう、ふやけてしまいそうだ。
「求導師様! ちょっと待って、きゅ……ああぁっ、駄目! 駄目です、求導師様……
……慶ちゃん!!」
慶の動きがピタリと止んだ。
先代が急逝し、求導師となってから四年。慶は村で“求導師様”と呼ばれ続けてきた。
今や彼を“牧野慶”という個人名で呼ぶ者はほとんど居ない。
それは求導女も同様であった。
先代の死亡が確認されたその日から、求導女は慶を“求導師様”と呼んだ。
求導女に求導師と呼ばれた瞬間から、慶は村の教会の求導師となり、
本人の意思とは係わりなく、村の権力の一端を担う存在として祭り上げられてしまったのである。
それに伴い、慶自身もその役目に相応しくあるように“求導師”の仮面を被って生活するようになった。
村の信仰を司る者。
それは村中の尊敬と期待を一身に浴びる存在で在らねばならない。
求導師の仮面は慶の精神に重苦しく張り付き、常に重圧を与え続けていた。
しかし。
その仮面は慶の無意識に、特権者としての自負と驕りをもたらしていたのも、また事実である。
偉い求導師様。ご立派な求導師様。
村人達の賞賛と敬愛の言葉が、知らず知らずの内に慶の自尊心を高めていった。
そんな慶の儚い自尊心を、求導女の言葉は容易く粉砕してしまったのだ。
“慶ちゃん”という幼少時の呼び名で叱責されたことで、慶は子供時代の無力な自分に―
求導女の庇護なしには何も出来ない、今以上に無力な自分自身に立ち帰り、
冷水を浴びせられたように正気を取り戻した。
――慶ちゃん。爪を噛んでは駄目と言ったでしょう? もう、めっ! よ……。
幼子の頃―求導女に叱られて泣きべそを掻いていた時の気持ちを思い出した慶は、
おずおずとその身を引いた。
起き上がり、そして寝台の隅で、背中を向けて首をすくめる。
求導女もまた、正座をしている慶の後ろでゆっくりと身を起こした。
ちらと振り返ると、慶の唾液でぬらぬらと光る女の乳房が見えた。
乳房には、慶の指で握り締められた痕が、赤く痛々しく残っている。
「慶ちゃん……」
求導女は、すっかりしょげ返ってしまった慶の肩に手を置いた。
慶は肩越しに、彼女の白い指先を見下ろす。
求導女は、慶の肩を撫で摩りながら耳元に唇を寄せて、言った。
「慶ちゃんも脱ぐのよ」
54:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:25:13 AsgDQw7n
慶は求導女に言われるまま、寝間着の釦を上から順に外し始めた。
上着を肩から抜き取る。求導女のものより少し大振りなマナ字架が、胸元に鈍く光って現れる。
着衣の時は幾分華奢に見える慶だったが、その肉体はすでに青年期の逞しさを備えつつあった。
求導女は慶の、自分のものより一まわり以上も広くなった肩幅を―
厚みを増した胸板を、眼を細めて見遣った。
彼女の見つめる中、足首の辺りに溜まっていたズボンと下穿きを脱ぎ去ってしまうと、
慶はもう完全な裸体になった。
反り返ったものを手で押さえている慶の前で、求導女は再び仰臥した。
「慶ちゃん。こっちにいらっしゃい」
求導女に促され、慶は彼女の躰に覆い被さるような姿勢を取る。
彼女の開いた腿の間に膝をつき、真上から白い顔を見下ろした。
「おっぱいはね」と求導女は慶の手を取り、乳房に宛がう。
「おっぱいは……さっきみたいに乱暴に掴んじゃあ、駄目。これくらいの力で、優しく揉んで……」
求導女は慶の手に己の掌を重ね、柔らかい力で乳房を揉ませた。
慶は求導女の手の動きに合わせ、注意深く乳房を愛撫する。
彼女の手が離れてからも、慶はゆっくりと乳房を捏ね廻し続けた。
胸の谷間にあるマナ字架が傾いて、光る。
揉んでいる人差し指の辺りに乳首が当たるので、それもそっと転がしてみた。
「あ……」
求導女が微かな吐息を漏らした。慶は、不安げに女の様子を覗う。
「あぁ……それ、いいのよ慶ちゃん。もっと、続けて……」
慶は求導女の言葉に安堵し、そのまま乳首に戯れ続けた。
転がしたり摘まんだりしているだけでは物足りなく思い、そこに唇を寄せてもみた。
舌先で舐めて、軽く吸いつく。そしてまた、舌で弾く。
そうしながら、片方の手ではもう一方の乳房を撫でた。
(ああ、八尾さんの、おっぱい……)
豊かな乳房に顔を埋め、その感触を五感で味わう。
慶の行為に求導女の吐息も熱くなり、それは次第に、切ない喘ぎに変わりつつあった。
「慶ちゃん、こっちも……」
やがて、求導女は慶の手を、己の陰部に導いた。
其処はすでに、温かい粘液で溢れ返っていた。
「これは……」
内腿までも濡らしている液体の量の多さに驚き、慶は思わず声を上げる。
「欲しがっているからよ」
求導女は、陶酔に潤んだ瞳を慶に向けて言った。
「慶ちゃんのおちんちんが欲しいから……ここ、慶ちゃんを迎え入れる為に、濡れているのよ」
――八尾さんの躰が、僕を、欲している……。
慶は激しい興奮で動悸が上がった。
耳の奥で己の血管が脈打つ音を聞き―亀頭の裂け目からは、透明な液体がじわりと滲み出た。
「八尾さん……」
慶は、渇いた咽喉から掠れた声を出した。
「僕も、もう……欲しいです。八尾さんの、ここに……」
慶は指先で、求導女の膣口に触れた。本当に、軽い力で触れた。
ところが――。
55:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:26:01 AsgDQw7n
「あ……」
「あはぁ……ん」
二人は同時に声を出した。
求導女の膣口は、軽く添えられただけの慶の指先を、ぐずぐずと飲み込んでしまったのだ。
慶の中指は、瞬く間に第二関節の辺りまでも膣に埋没してしまった。
初めて触れる膣の内部―ぬめぬめと熱く、硬いような、柔らかいような、妙なる肉襞の感触――。
慶は其処から、素早く指を抜き去った。
糸を引くその指で、求導女のものに負けず劣らずぬめりを帯びた自分の性器を掲げ持つ。
求導女は、待ちかねたように自ら陰唇を寛げた。
慶は息を弾ませながら、ぎこちなく膣口に亀頭を宛がう―此処だ。この辺りが、入口の筈――。
「ああぁ、そう、其処よ、そのまま、挿し入れて……乗っかって構わないから!
ああ、は、早く……う」
求導女に懇願され、慶は思い切って細い肢体に圧し掛かり、陰茎を、開いた膣穴に推し進めた。
――う……あ、す、凄い…………。
雁首を半ば覆っていた包皮が翻転し―
むにゅっ、と亀頭が包み込まれたと思う間もなく、慶の陰茎は温かく濡れた膣内に潜り込んでいった。
ずぶずぶずぶずぶと狭い肉穴を分け入り、夥しい数の肉襞に、ぴったりと吸い付かれて――。
「あ、あ、あああっ!」
眼球の奥を、白い閃光が駆け抜けた。
脳天から尾骶骨にかけて電流に貫かれるような衝撃を受け―慶は、女の膣の中に射精をしていた。
「あ、あ、あ……」
彼は虚ろに眼を見開いたまま、全身をビクンビクンと震わせた後、
力を失って求導女の乳房に突っ伏してしまう。
だが、それだけでは終わらなかった。
求導女の甘美な襞のざわめきは、達したばかりの慶の陰茎を容赦なく擽り続けていた。
波打つように茎を締め付け、陰唇も、しっとりと絡み付いて離そうとしない。
あっという間に硬度を取り戻した陰茎を、慶は小刻みに腰を揺すって女の膣壁に擦り付けた。
(選鉱所で……確か、こんな風にしていた筈だ)
慶は昼間見た弟の行為を思い出し、懸命に腰を上下させた。
すると、慶の腹の下で求導女が尻を蠢かせ始めた。
最初は小さく細波のように―やがてそれは大波となり、慶の陰茎を粘膜で激しく扱きあげた。
「あっ、はっ、いっ、いいわ……あぁ、響く! 奥に、響くわ……」
求導女の淫声に混じり、繋がった箇所からはぐっちゃぐっちゃといやらしい結合音が鳴り響く。
ジュクジュクと膣から掻き出される液体は己の漏らした精液なのか、
それとも、求導女の快楽の証の汁であるのか――。
そうして二人で腰を絡みつかせて揉み合っているうちに、求導女の内部が急激に狭窄感を増してきた。
膣の入口から中心付近、そして奥の方の弾力のある器官にかけて、きゅーっと強く締まってくる。
「あ……慶ちゃん、あぁ、あああぁぁ……」
求導女は黒髪を枕に散らし、紅く脈打つ首筋を仰け反らせる。
額には玉のような汗が浮かび、恍惚の為か、眦に涙まで滲ませている。
――八尾さんが……! ぼくが、八尾さんを…………。
慶は何とも形容し難い、達成感にも似た感動を覚えた。
背筋がぞくぞくとして―またもや、精液を弾け出させてしまった。
56:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:26:53 AsgDQw7n
求導女は、呻き声と共に凭れ掛かってくる慶の頭を抱きかかえて、労わるように撫ぜた。
「出たのね……判るわ。おなかの中、慶ちゃんの精液で一杯になってる……」
求導女の静かな声を聞きながら、慶は、初めて味わう快楽の余韻に微睡んだ――。
求導女の中で果てた慶は、暫く彼女の中に潜り込んだまま、その豊胸に抱かれて横たわっていた。
眼を閉じ、乳房の温かさ柔らかさ、それに甘ったるい匂いに浸っていると、
何とも言えない狂おしい切なさが胸に込み上げてきて、慶は何故か、泣きたい様な気持ちになった。
「これで落ち着いて眠れそう?」
頭の上から求導女の声がする。見上げると、求導女の黒く輝く瞳が慶を見ていた。
慶は、気恥ずかしさを感じて瞼を伏せた。
初めての夢精を経験して以来、慶は求導女を自分の意識から遠ざけるようにしてきた。
必要以外、なるべく彼女の傍には近寄らないようにしたし、
それまで彼女が手伝ってくれていた日常の些末な作業―着替えだとか入浴だとかも、
自分一人で片付けるようにした。
求導女に対する言動も素っ気なく、余所余所しいものになっていった。
それもこれも、慶が己の中の欲望を押さえ込む為にしてきた努力なのであった。
求導女を女として認識することは、どこか近親相姦めいた罪悪感を生じさせるものだったからだ。
忌まわしい、不自然な欲望。
その他の少年らしい様々な欲求と同様に、彼は、秘めた感情にも蓋をした。
そうして数年の時が経ち、慶は、求導女に対する欲望を完全に克服しつつあった。
過剰な性欲に苛まれてはいたものの―それは求導女に対してのものでは無かった。
求導女は、求導女でしかない。教会を運営していく為に必要な存在ではあるが、それだけだ。
村で他に気になる少女も現れた。慶は、求導女からの精神的な自立を果たそうとしていた。
全て彼の望み通り――それなのに。
「八尾さん」
求導女の胸の中で、慶は呟いた。
「お願いがあるんですけど」
慶は、求導女の胸のマナ字架を弄りながら言った。
まだ幼児の頃。
慶は求導女に何かをおねだりをする時、いつもこうして彼女のマナ字架に触れたものだった。
慶も求導女も、そのことは覚えていなかったが――。
「あの、ぼく……今日のことおさらいしておきたいんです」
恥じ入るように小さな声で言う。
求導女は一瞬きょとんとして慶を見たが、すぐに彼の本意を理解し、穏やかに微笑んだ。
つまり慶は、もう一度性交をしたいと言ったのだ。
今宵、求導女に教わったことのおさらいとして行為をせがんで来るとは。
何とも慶らしい言い様だと求導女は微笑ましく思った。
それは一見、生真面目に思える言い様だ。賢くて―でも、少し小ずるい言い廻し。
「勿論、私は構いませんよ。……では、このまま?」
求導女は、外れかけていた慶の陰茎の根元に手を添える。
だが慶はその手を遮り、求導女の中から引き抜いてしまった。
「いいえ。あの、最初からやってみたいんです。いいですか?」
57:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:27:37 AsgDQw7n
夜が深まるのにつれ、少しは風が出て来たようだ。
気温も幾分低くなり、冷たい夜風が、慶の裸の背をひんやりとなぞる。
それでも慶は、その冷たさを全くといっていい程に感じていなかった。
体内から湧き上がる交接欲で、全身が燃え上がっている為だ。
慶は今夜、すでに四度に及ぶ射精を行っていたが、まだ充分な満足を得られてはいなかった。
理由ははっきりしている。
それらの絶頂のほぼ全てが、求導女から一方的にもたらされたものであったからだ。
当然、自慰に比べればそれらは途方も無い快感を慶に与えていたが―
性に目覚めて以来、押さえ付けられ鬱屈しきっていた欲望は、この程度の快楽では治まり様も無かった。
慶は、女にも性の絶頂があることを書物などで見知っていた。
それがどういったものであるかまでは、彼の拙い性知識からは見当もつかなかいものの―
さっき、求導女はその兆候を見せていた気がするのだ。
――あの時、僕がもう少し射精を我慢出来ていたら……
八尾さんも、達していたのではないだろうか?
慶は、求導女が性の絶頂を極める姿を見たいと思った。
己が陰茎でのたうち廻り、憐れによがり泣く求導女の悩ましい姿を、慶は心の底から欲していた。
「じゃあ、いきますよ」
慶は求導女に覆い被さり、唇に軽い接吻をする。
次いで首筋に。
耳朶にも、擽るように唇を這わせる。
くすくすと笑う求導女の肌の匂いに心をざわめかせながら、慶は隆起した乳房を丸く撫で廻した。
求導女の唇から、溜息が漏れる。
「はぁ……気持ちいいわ慶ちゃん。とっても上手……」
求導女に誉められて気をよくしたのか、慶は、更に大胆に彼女の躰をまさぐり始めた。
「八尾さん……さっき、此処が一番いいって言ってましたよね?」
慶は指先を滑らせ、求導女の陰部の割れ目の頂点をぐりぐりと捏ね廻す。
そこには、陰唇に埋もれる陰核があった。
揉まれ、摩られするうちに、柔らかだった突起は硬さを増し、慶の指先をこりこりと押し返した。
求導女は呻き、身を捩る。
彼女の陰部は最前の性交の名残りで、未だぬるぬると濡れそぼっていた。
その為、尖った陰核の上で慶の指先は滑り、時折思いがけず強くその部分を弾いたり、押し潰したりした。
その度に求導女は小さく身を震わせ、細い叫び声を上げる。
だが慶は、求導女のこの反応が苦痛を訴えてのものではない事を、すでに理解していた。
「ああ慶ちゃん……あなたは飲み込みが早いわ……本当に……凄く……くぅっ」
陰核を弄る一方で、慶は空いた指を女の膣口にめり込ませる。
熱く蕩けたようになっているその肉穴は、慶の指先を抱き締めるように強く、優しく包み込んだ。
「ああっ、あはぁっ、あ……いい。いいわとっても……ああ、ああぁ……」
求導女は甘ったるく鼻に掛かった声を出し、くねくねと尻をくねらせた。
そして、もっと弄ってとでも言うように両手を大陰唇の脇に添え、グッと大きく陰裂を寛げた。
パックリと開いた貝状の粘膜が、物欲しげにひくひくと蠢く。
(八尾さん……)
慶は、眼の前に差し出された、求導女の発情しきった生殖器に尚も追い討ちをかける。
「あ……あぁあああっ!」
慶は求導女の股座に顔を寄せると、陰核を指で弄くるのを止めて舌先を其処に近づけた。
下から上に。ちろちろと舌を動かしながら、膣の内部を指先で探る。
掻き廻すようにまさぐっていると、入口から少し入った辺りの上方に、
少し出っ張った箇所があるのに気が付いた。
弾力のあるその肉の塊を慶はぐっ、ぐっ、と押さえつけてみた。
58:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:28:33 AsgDQw7n
「あ…………あ、あ、あぁ……あぁああぁーっ」
途端、求導女の腰がびくんと跳ね上がった。
躰が強張り、膣が、指先を硬く食い締めてくる。
そして、痛みを感じるほどに締め付ける膣口から、等間隔の痙攣が始まった。
「あう……うぅううぅぅ……」
二回、三回、四回―。
絶え入るような呻き声と共に、ぴくりぴくりと膣口から性器全体、下腹部までが大きく蠢いて、
熱した蜜がどろどろと溢れ出る。
慶は濁った粘液で掌を濡らしながら、真っ赤に膨れ上がった膣穴の収縮の回数を数えていた。
十回を超え、収縮の力が弱まってきた処で慶は指を引き抜き、躰を起こして求導女を見下ろす。
求導女は力尽きたようにパタンとシーツに尻を落とし、荒く呼吸を弾ませていた――。
「よかったわ」
慶の視線に気付いた求導女は薄く瞼を開き、桜色に上気した顔を綻ばせた。
その表情は、平素彼女が見せている気品ある笑顔に比べるとどこかしどけなく、
少し生々しい印象を与えるものであったが、今の慶にはこの上なく美しく感じられた。
「八尾さん。あの……」
「なあに?」
慶は求導女が気を遣ったのか聞いてみようとしたが、それは何となく無粋に思えて、途中で止めた。
その代わり―彼女の両脚を抱え上げ、豊かな腰を、膝の上に引き寄せた。
ぐっと反り返った平らな腹の下、紅く色づいた性器から、その更に下の、
濃い薔薇色に翳り、絞るように窄まった肛門の辺りまでもがむき出しになる。
求導女は、照れ臭そうに笑うと片手で眼を覆った。慶もつられて小さく微笑む。
「いいですか?」
すでに勃ち上がっている陰茎の先を膣口に押し当てて訊ねる。
求導女は、額に手をかざしたまま頷いた。
彼女の両脚を抱え上げたまま、慶は腰を上げてぐっと女陰を貫いた。
たった今まで弄くられていた為か、其処はさっきよりも柔らかくなっている感じだ。
だが、内部の熱は先ほどの比ではない。
「八尾さん……なんか、奥の方が凄く熱いです」
慶は思ったままを口にした。そして、膣の内部を亀頭で探るように掻き廻す。
求導女は、深く息を吐いた。
「奥……いいの」
「奥……ですか?」
慶は一旦膝の上から求導女の尻を下ろし、真上から膣に陰茎を挿れ直した。
ずん、と勢いよく嵌めたのが効いたのか、求導女は低い唸り声を上げて躰を震わせた。
そのまま腰を沈め、陰茎を根元の毛際まで、挿れられるだけ挿れてみる。
確かに、膣の奥の方に行けば行くほど熱っぽさが増しているような気がした。
慶は、そうして限界まで陰茎を突き挿れた状態でぐりぐりと腰を上下させた。
「おお……」
求導女の美しい咽喉から、思いのほか低い声が漏れ出る。
(攻める場所によって、声音も変わるものなんだな)
そんなことを考えつつ、慶はもっともっと深く求導女に這入り込むべく、下腹部を密着させた。
求導女の膣の最深部と思われる辺りには、何か弾力に富んだ器官があって、
慶が突き挿れる毎に鈴口にこつこつと打つかった。
その跳ね返される感覚と、ぬめぬめとした肉襞が四方から茎や雁首に絡みつく感覚。
そして、求導女の腰の動きにつれて膣の筋肉がきゅっきゅっと締め付けてくる感覚が、
慶の官能に例えようもない快美感を伝えてやまない。
59:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:29:32 AsgDQw7n
「おぉ……おおっ、うぅ……ふう……う……うぅん!」
「はあっ、はあっ、はっ、はっ、はっ……」
二人の男女の、火の様な吐息が交錯する。
腰と腰をぴったりと重ね合わせ、きつく抱き締めあいながら躰を揺さぶる。
触れ合った二人の胸のマナ字架が、かちゃかちゃと金属質の音を立てて擦れあう。
慶は求導女のむっちりとした腿に尻を挟まれ、
柔肌に埋もれながら激しく女の胎内の臓物を抉り続ける。
――深く。もっと深く……。
体液にまみれる二人の躰は、そのこと以外に何も望んではいなかった。
慶は、求導女の首筋に火照った頬を擦り付けながら、
何とかしてこの女の躰の、更に奥底に潜り込めないものかと画策していた。
(この状態では限界がある。もう少し……そうだ、姿勢を変えれば)
慶は、求導女と腰を揉み合わせる一方で膝をつき、上体をゆっくりと起こし始めた。
尻に求導女の白いふくらはぎを纏いつかせたまま、ぐいぐいと押し籠めてみるが、
細い肢体が押されてずれていくだけで、大した変化は無かった。
(動かないように固定しなくっちゃ)
慶は、己の腰を挟み込むなめらかな腿を掬い上げて両脇に抱えた。
そして、それをもう一段階高く持ち上げ、肩の上に担ぎ上げてしまった。
「あああっ! はぁっ……あぁあっ!」
尻を持ち上げられ、躰を真ん中から折り曲げられた求導女が、快楽とも苦悶ともつかない声で呻く。
慶も僅かに呻いた。
姿勢を変える時、膣がひしゃげて慶の陰茎を捻り上げたのだ。
(ああっ、な、何だか、狭くなったみたいだ……)
体勢を変えたことにより、求導女の膣の様相が変化したように思われた。
膣内部の襞やおうとつの在りようが変わり、慶の陰茎に新たな刺激を与えている。
それだけではない。
膣穴が浅くなった所為で、その奥底にある例の器官に、亀頭が余計に当たるようになっていた。
「ひいぃ……っ」
求導女が、感電したように身を強張らせる。
濡れそぼつ膣穴がきゅんと窄まり、中の肉が、ひくひくと痙攣しながら慶のものを揉み扱く。
慶は眉間に皺を寄せて唸りつつも、手心を加えることなく亀頭の先で求導女の奥をまさぐった。
「はっ、あはっ、あっ、あはぁっ、だめ……それ、駄目!」
突然、求導女は慶を押し返そうと悶き始めた。その様相は、何か差し迫ったものを感じさせる。
慶は一瞬怯んで動きを止めた。
が。
――違う。
ぐちゃぐちゃと粘液を吐き出す膣口の蠢動が、慶の本能に真実を訴え掛ける。
慶は、肩から外れた求導女の両脚を再び抱え込むと、前以上に熾烈な抽送を始めた。
60:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:30:27 AsgDQw7n
「ああぁあああああっ! あっ、あぁ、あ、あ、あ、あ、あ……」
求導女は眼を見開き、上半身を海老のように仰け反らせて絶叫した。
寝台のスプリングが、軋んで嘶く。
慶も、最早なんの技巧も計算もなく、ただただ求導女の最深部に亀頭を擦りつけた。
あたかもそれは女の膣をも突き破り、子宮から臓腑から、
一緒くたにして混ぜ合わせてしまおうとしているかのようだ。
いや、寧ろ彼は、求導女の子宮の中に潜り込もうとしているのか――。
――子宮! 子宮! 八尾さんの、これが……!
慶はこの、最深部にあり、求導女を狂乱の極致に追い込んでいるものが、
彼女の子宮の入口であることを確信していた。
求導女の中の、女の源である場所。
そこに自分は直に触れ、愛撫を加えているのだ。
自分の、最も男である器官でもって。
快感と、言いようのない感動に酔い痴れる慶の鈴口に向かい、求導女の子宮がせり上がってくる。
球体同士を揉み合せるうちに、求導女のそれは、限界を超えたかのように唐突に柔らかく解けた。
そして、膣の奥底で、微かに開いた肉厚の花弁が、慶の亀頭にちゅっと吸い付いて――。
「あ…………あああぁぁあぁああああああああああああああああああああぁ!」
亀頭に吸い付いた粘膜の中から、熱く粘りのある液体がどっと噴出して慶の肉を包み込んだ。
膣全体がどくんどくんと自発的な痙攣を起こし、慶を、その胎内に取り込もうとしているかのようだ。
慶の脳髄を、びいんと痺れるような快感が駆け抜けた。
耐え難いほどの激しい射精感が、淫液にまみれた陰嚢から臀部、そして背中までをも律動させる。
慶は、咆哮した。
二人の聖職者は二匹の獣となり、理性の欠片もない叫びを上げて、
互いの躰にがっしりとしがみ付きあった。
彼らは、全く同時に性の絶頂に到達していた。
「あぁ……あはぁ……あああぁ……」
眼の前が暗くなり、泥のように崩れ落ちた慶の耳元で、
未だ続いている求導女の断末魔の喘ぎ声が聞こえていた。
鼓動と、しっとりと汗に濡れた乳房の熱と、マナ字架の硬さを頬に感じながら―
慶は、望みを果たした満足感に、陶然と揺蕩った。
開いた天窓を、小さな風がガタンと鳴らした――。
61:牧野慶/刈割/不入谷教会求導師居室/1993年/21:16:45
07/09/23 01:31:18 AsgDQw7n
額にひんやりとした指先が触れる。
眼を開けると、求導女が汗でへばり付いた慶の髪の毛を、そっと梳っている処であった。
ぼんやりとした灯りの中で、黒い瞳同士が見詰め合う。
二人は、どちらからともなく唇を重ね合わせていた。
慶は、求導女の舌を吸った。
柔らかく、少しざらざらした筋肉質の粘膜を取り込み、口一杯に味わう。
暫くそうしていると、今度は求導女が慶の舌を吸ってきた。
求導女は、慶の舌に舌を絡めて舐り廻す。
すると今度は、慶がそれを真似て求導女の舌に絡みつく。
舌の応酬に飽きると、慶は求導女の乳房に手を伸ばした。
「もう……駄目よ慶ちゃん。今夜はもう休みましょう。ね?」
求導女は、慶の手を取り払って窘める。
慶は、彼女の広がった髪の毛に顔を埋め、尚もしつこく求導女の乳房を弄る。
「こぉら!」
求導女は、ぴしゃんと慶の手の甲をはたいた。
「……くっ。くく……ふふふふふ……」
黒髪に埋もれたまま、慶は突然笑い出した。
求導女は不思議そうに見守る。慶の笑いは、なかなか収まらなかった。
「どうしたの慶ちゃん? 何がそんなにおかしいの?」
「ふふふ、くっくくくく……だって」
慶は笑い続けた。おかしくてならなかった。
数時間前の自分が。
無意味な苦しみに沈み込んでいた自分。
打ちひしがれて―それでも、肉欲の疼きに悶々とすることを止められずにいた、惨めな自分。
山を吹き渡る風が、屋根をばたばたと鳴らす音が響いた。
「八尾さん」
慶は顔を上げると、求導女の躰に圧し掛かった。
「慶ちゃんたら……全く、何回すれば気が済むの?」
求導女は呆れ顔で溜息を吐く。だが、拒絶するつもりもなさそうだった。
慶は、求導女の額に口づけた。
「八尾さんごめんなさい。でもぼく……取り返したいんです。今までの分を」
「今までの分って?」
慶は黙って微笑む。そして、小さな乳首に吸い付いた。
後ろ頭を撫でられながら、慶は、深い深い安らぎに充たされていた。
それはこの四年間、慶が失っていたものだ。
――もう離れない。
優しい二の腕に抱かれて、慶は心に呟いた。
もう二度と、求導女の中から出て行こうなどとは思うまい。
求導女さえ傍に居れば―求導師として、自分は生きていける。
村娘に気を取られたり、病院の弟に怯えたりすることもなく――。
――そうだ。これからは、ずっと、ずっと……。
求導女の手が、慶の陰茎にやんわりと添えられた。
その手が動き出すのを快く感じながら―慶は、求導女の白い裸身をしっかりと抱き締めた。
62:宮田司郎/刈割/不入谷教会/1993年/23:45:13
07/09/23 01:36:17 AsgDQw7n
黒い木々の狭間に、小さな赤い火がぽつんと灯っている。
宮田司郎は煙草を銜え、眼下に広がる陰気な風景を見据えていた。
午後に雨を降らせていた雲は未だ留まったままでいるらしく、今夜は星もなく月も朧だ。
そんな暗い空の下、山に囲まれた村は闇に沈みこんでいた。
司郎の立つ崖の上からは、棚田の湛える水が微かな外灯の光を映しているのが、
申し訳程度に見えているだけだ。
司郎は、物憂げに煙を吐き出した。
視線を落とすと、足元には教会の屋根が見えている。
崖に張り付くようにして建てられた礼拝堂の三角屋根と、それに続く教会の母屋の屋根。
司郎は母屋の方に眼を向けて、昼間の出来事を思い返していた――。
――今のは、確かにあの人だった。
選鉱所から立ち去っていく足音を聞きながら、司郎は呆然とした頭で考えていた。
連れ込んだ少女が、自分に取り縋って何事かを喚き立ててくるのが疎ましい。
彼女は、見られた相手が誰なのかまでは理解していない様子だ。
しかし、司郎にははっきりと判っていた。
こんな天気の日に、眞魚教の求導師たるお方が、
こんな場所をほっつき歩いていた理由までは判らないが――。
四年前。司郎の双子の兄は、求導師という村の名誉職ともいうべきものに就いた。
そしてその日を境に、彼は司郎に取って完全に手の届かない、別次元の人間になってしまった。
それまでとて、兄は司郎の近寄る隙などない人ではあったのだが。
光と影。清と汚濁。教会と、病院――。
双子の運命は、その誕生の瞬間からはっきりと分かれていたのかも知れない。
でもそれは何故? 何を基準にして自分らは選別されたのか?
幼少の頃より、己の中で無限に繰り返してきた問いかけ。無論それに答える者はいない。
司郎は、弱冠十七歳にして人生に疲弊しきっていた。
同胞から切り離された孤独。自分の置かれている閉塞的な環境。
そして、一層の苦渋と泥濘にまみれているであろう、未来の自分。
己が運命に対する絶望感は、司郎の精神をささくれたものにしていった。
狂気じみた執着心でもって彼を支配し、がんじがらめに縛りつけようとする養母。
司郎はそんな母の眼を盗み、母がしてはいけないと言う事ばかりを選んでやるようになった。
反抗や自立などは許されない立場にある、貰われ児の自分。
そんな意識の働く中、司郎の非行は、いびつで醜悪な形を取るようになっていた。
村の女達に片っ端から手をつけ始めたのも、その一端であった。
――汚らしい虫けらの誘いに乗るんじゃありませんよ。
母が害虫呼ばわりをする村娘達を、司郎は自ら進んで誘惑するように努めた。
本当に際限なく彼は漁色に耽った。それは、殆ど病的ですらあった。
幸い、と言うべきなのか?
司郎は案外女に好まれる性質らしく、相手に不自由することはなかった。
同年代の娘達は勿論―病院の看護婦や若い人妻でさえ、司郎が望めば靡かない女はいなかった。
だが。
近頃彼は、そんな放蕩三昧の日々にも食傷していた。
結局の処、女達との交わりが虚しい泡沫でしかないことに、気付いてしまったからだ。
女達が見ているのはあくまでも“病院の子”であり“宮田のぼっちゃん”である自分。
誰一人として、生身の自分を見てはくれない。
自分の感じている痛みや孤独を、共有してくれる訳ではない。
63:宮田司郎/刈割/不入谷教会/1993年/23:45:13
07/09/23 01:37:23 AsgDQw7n
――自分に取って女達がそうであるように、彼女らに取っても、
自分は一時の気晴らしの相手に過ぎないのだ。
その認識は司郎の自尊心を傷付け、彼の精神をますます荒廃させていった。
件の少女に誘いをかけたのは、そんな、司郎が苛立ちのさなかにある時のことであった。
―あの子、求導師様に気があるらしいよ。
情事の後、女達が決まって聞かせるくだらない四方山話の数々。
司郎は大概それらを聞き流していたが、その、求導師を懸想しているという少女の名前だけは、
はっきりと記憶していた。
人気のない山道で少女とすれ違った時、司郎は思い切って声を掛けてみた。
兄を想っている少女を誘惑すること―それは司郎をして、かつてない勇気を要する行動であった。
それは兄に対し、刃を向けるにも等しいことだからだ。
女を誘うのに、これほど緊張したことはない。
脇の下がじっとりと汗ばみ、声の震えを抑えるのに懸命だった。
それほどまでに―司郎は、兄に恋しているこの少女を、奪い取ってやりたかったのだ。
そんなことで自分が兄に勝る存在になれる訳ではないことは、重々承知していた。
でも、それでも。
司郎は、己の内から沸きあがる衝動に抗えなかった。
少女は清楚で大人しく、いかにも兄とは似合いの風情であったから、尚更だった。
だが少女に声を掛けた直後、司郎は早くも後悔を覚えることになる。
少女が、いともあっさりと司郎の誘いに乗ったからだ。
(あんなことは、すべきじゃなかったんだ……)
司郎は苦い煙を肺まで吸い込み、冷たく光る瞳を闇に向ける。
逢ったばかりだというのに、少女は司郎の言いなりになって後に付いて来た。
雨宿りと称してあの選鉱所に連れ込んでも、全く警戒の様子を見せないどころか、
寧ろ何かを期待している節さえあった。
そんな少女の態度を見て、司郎は遠慮するのを止め、普段通りに振舞うことにした。
小さな躰を引き寄せて、強引に唇を吸い、取り出した陰茎を握らせてやった。
少女は、硬く尖ったものが手に触れた時には、さすがに驚いて手を引いたものの、
それでも、その場から逃げ出したりはしなかった。
「いいのか?」
司郎の問いに、少女は真っ赤に染めた顔を縦に振って答えた。
後はもう―彼女は、司郎の為すがままであった。
恥じらいを示しつつも、臆することなく肉体を差し出す少女を前にして、
司郎は戸惑いを禁じえなかった。
初々しい硬さが眼につく乳房も、夥しい蜜に濡れながら、ぴったりと合わさったままの陰唇も、
未だ処女であることを如実に表しているのに――。
たどたどしい吸茎を始めた少女に、司郎は「後悔しないか?」と重ねて問うてみた。
「しません」
司郎の陰茎と唾液の糸で繋がった唇で、少女は答えた。
少女は、司郎から誘われたことを心底喜んでいるようだった。
司郎のことは前から知っていたと言い、ずっと気になっていた、というようなことも言った。
そして、こうも言った。
処女でいるのは嫌だった。早く捨ててしまいたかったのだ―と。
64:宮田司郎/刈割/不入谷教会/1993年/23:45:13
07/09/23 01:38:20 AsgDQw7n
――こいつ……要するに、誰でもよかったってことか。
どす黒い憎悪の炎が、司郎の胸で燃え上がる。
司郎は、少女を突き飛ばして汚れた床に伏させた。
前戯もそこそこに、背後から乱暴に貫く。
少女はか細い泣き声を上げたが、構わずに突き捲ってやった。
――お前のようなメス犬は、こうして姦されるのがお似合いだ。
蔑みに満ちた瞳で少女を見下ろし、司郎は血の滲んだ陰部を無体に抉り続けた。
兄の気配を感じたのは、その交接がまさに佳境に入った時のことであった。
板張りの窓の隙間に人影を見た、と思う間もなく床の軋む音がして―。
少女の悲鳴と、床板を踏み鳴らす喧しい響きと――。
その後のことは、はっきりと覚えていない。
ショックの為か、泣きながら騒ぎ立てている少女を何とか宥めすかし、
身支度を整えて別々に帰路に着いた頃には、もうすっかり陽は落ちていた。
あの人は、あそこであんなことをしていたのが誰であるか、はっきりと見ただろう。
あんな廃屋の片隅で―
野良犬のように女と交わっていた自分を見て、一体あの人はどう思ったことだろうか?
司郎は濡れた地面に煙草を吐き捨てると、水溜りの中の吸殻を執拗に踏み躙る。
そして、今いちど教会の母屋に眼を遣った。
そう。司郎がこんな深夜に自室を抜け出してここまで来たのは、
この下にある屋根の天窓から、兄の様子を確かめる為だったのだ。
崖の縁から教会の屋根までは1,8メートル弱程の段差になっている。
少年は崖っぷちに生えている立ち木を利用して、音もなく屋根の上に飛び降りた。
此処は、司郎の秘密の場所だった。
此処から教会の屋根に飛び移れることを発見したのは、彼がまだ、ほんの子供の頃のことだ。
傾斜のきつい屋根のてっぺんを屈んで渡りながら司郎は、当時のことを、昨日のように思い出す。
あの頃―子供らしい好奇心と、自分の片割れに近付きたい思いから、
司郎はよくこの場所をうろついていた。
半ば偶然屋根に降りることに成功し、屋根の一番端に付いている天窓が、
兄の部屋のものであることを知った。
初めて部屋を覗いた夜―真上から見えた兄の寝顔は、今でも胸に焼き付いて離れない。
何故かほの青く発光して見える寝台の上、真っ直ぐに仰臥している兄の安らかな寝顔。
静かで、穢れを寄せ付けない清潔さを感じさせる兄の寝姿に、司郎は暫し見とれたものだった。
それ以来、司郎は深夜、この天窓を度々訪れるようになった。
眠れない夜や、悪夢に目覚めた夜。
水鏡を覗き込むように―ここから兄の寝顔を覗き込むと、奇妙に心が安らいだ。
あそこに居るのは、自分だ。
司郎は、穏やかな表情で眠りに就く兄の姿に自分を重ね合わせていた。
あの清らかな少年こそが、真実の自分なのだ。
いま此処で、薄汚れて苦しみに喘いでいる自分は、あそこで寝ている少年の悪夢に過ぎないのだ。
朝になればきっと―
明るい日向の存在として自分は目覚める。誰からも愛されて、誰をも、愛して――。
此処へ来る度に司郎は、そんな、ありもしない空想に、止め処もなく耽るのが常だった。
だが今夜は、そんなに長居をするつもりはない。
ただ、兄がいつもと変わらぬ様子で眠っていることを確かめたい。ただ、それだけだ。
それを確かめた処でどうにもなる訳ではなかったが、こうでもしなければ眠れそうにないのだ。
65:宮田司郎/刈割/不入谷教会/1993年/23:45:13
07/09/23 01:40:01 AsgDQw7n
そうして足早に天窓を目指していた司郎だったが、ふとその足を止めた。
(部屋が、明るい……?)
夏季は大抵開け放されている天窓。
いつもは暗い影になっている窓の中から、淡い光が零れ出ているのが見えた。
教会の夜は早く、兄も、どんなに遅くとも十一時頃には寝てしまっている筈なのに。
(こんな時間まで……一体何をやっているんだ)
司郎は、注意深くしゃがみ歩きで窓の桟に近付く。
そして、中を覗いた。
『おぉ……おおっ、うぅ……ふう……う……うぅん!』
『はあっ、はあっ、はっ、はっ、はっ……』
窓の下では、二つの肉体が絡み合っていた。
橙色の灯りに肌色の濃淡が淫らにうねり、なまめかしく浮かび上がる。
司郎は、驚きに眼を見張った。
そこにいつもの青い静謐はなかった。
司郎がそこに見たのは、二人の男女が性の交歓に耽る姿。
黒い闇の中から現れた、赤味がかった妖しい世界。
ぬめりを帯びた灯りに満たされた、水槽のような部屋の底を、司郎は言葉も無く凝視する。
寝台に横たわり、喘ぎ身悶えている女は、教会の求導女のようだ。
そして彼女を組み敷いている男は―顔は見えないが、兄に間違いないだろう。
――これは……何だ?
寝台の派手な軋みに混じり、淫らな吐息と嬌声が微かに聞こえてくる。
枕灯の弱々しい光の中、彼らはきつく抱きあい、解け、そしてまたもつれ合う。
微妙に姿態を変えて絡まりあうその様は、まるで万華鏡のようだ。
司郎は、その美しくも淫猥な光景に飲み込まれてしまっていた。
頭の奥がじいんと痺れ、思考が上手く廻らない。
眼も眩むような衝撃―それでいて、股間がずきずきと熱を帯びる。
脈打ち起き上がる陰茎が、ズボンに抑えられて痛みを覚える。
昼間の性交は中途半端なまま終わってしまったから、勃起の激しさもひとしおだ。
躰の渇きに苦しみながらも、司郎は眼を凝らして兄達の交接を見つめ続ける。
すでに行為は、最高潮に達しているらしい。
求導女の身のくねりも兄の腰使いも凄まじく、荒々しい息吹きや濁った体液の匂いまでもが
此処まで伝わってくる錯覚を覚える。
兄は、女の扱いにかなり長けているようだった。
脚を高く抱え上げられ、白い乳房をゆさゆさと跳ね躍らせて啼き叫ぶ求導女の反応から、
司郎はそう判断する。
――あの人達はきっと……ずっと前からこうやって、していたに違いない。
昼間は清廉な聖職者の仮面を被りながら、
夜になると、こうして淫獣のように交わりあっていたというのか。
虫唾が走る程の嫌悪感に、司郎は眉をしかめる。
しかし同時に、心の奥底で妬けつくような羨望の念が沸き起こるのも感じていた。
66:宮田司郎/刈割/不入谷教会/1993年/23:45:13
07/09/23 01:40:59 AsgDQw7n
司郎は、村の女達と数え切れない程の性行為を交わしてきたが、
それはいつも人目と時間を気にしながらの、慌しく落ち着かない作業であった。
虫のように、鳥のように躰を繋ぎ、性器同士を擦り合わせるだけの下等な交わり。
今、下で繰り広げられているような濃密な交わりは経験がない。
――裏切られた……裏切られた…………!
白く靄のかかったような頭の中で、司郎は兄への怨言を繰り返す。
そんな司郎の、情念の篭った暗い眼差しを余所に、二人の営みは益々激しさを増して行く。
そして――。
『あ…………あああぁぁあぁああああああああああああああああああああぁ!』
一際大きな女の声と、追い縋るような兄の声。
それまでの無軌道な震動がぴたっと止まる。
硬直する二人。天井に向かって伸ばされた女の足の親指が、ぴくりぴくりと痙攣する。
兄の、小さく締まった臀部の筋肉が、細かく震える―。
「あ……」
唐突に、膝から力が抜けた。
体勢を崩し、窓枠をガタンと鳴らしてしまう。が、部屋に居る二人は気に留める様子も無い。
司郎は、安堵と共に混乱を覚える。
司郎は、彼らが快感の頂点を極める姿を眺めながら、自身も射精してしまっていた。
陰茎をまったく刺激せずに精を漏らすなど、初めての体験だ。
全力疾走をした後のように胸が高鳴り、息が上がっている。
ズボンの中で、精液の溜まった下着が重く濡れているのを感じた。
司郎は額の汗を手の甲で拭い、腹の底から溜息を吐く。
発熱したように潤んだ瞳は、ぐったりと折り重なる男女から離せないでいた。
下着の汚れにも構わず座り込んだ司郎の心は、虚ろだった。
兄に対する複雑な思いの何もかもが、精液と共に尿道から射出されてしまったみたいだ。
――これは、夢なんじゃないだろうか?
現実感を喪失したまま、司郎はぼんやりと考える。
今の感覚は、以前夢精をした時の感覚に似ている気がしたのだ。
一瞬の快感の強烈さと、反比例するような濡れた下着の気持ち悪さがそっくりだ。
そうだ。きっと全ては夢なんだ。こんな馬鹿げたことは有り得ない。
教会で、求導師と求導女がこんな風に激しくまぐわっているなんてこと――。
67:宮田司郎/刈割/不入谷教会/1993年/23:45:13
07/09/23 01:41:42 AsgDQw7n
『……くっ。くく……ふふふふふ……』
下から、低い笑い声が響いてきた。
火照っていた司郎の躰から、スウッと血の気が引いてゆく。
――あの人が……俺を笑ってる。
笑い声は、長く後を引いて続いていた。
冷えた精液の中で、己の陰茎が怯えて縮こまるのを感じながら、司郎はガタガタと震えだした。
兄に笑われている。
窃視も、射精も、劣等感も。
一切合財を見透かした求導師に自分は蔑まれ、嘲笑を浴びせられているのだ。
司郎は、逃げ出した。
足音を忍ばせる余裕などは無かった。
叫び出しそうになる口元を手で押さえ、力の入らない足を懸命に動かして。
ただひたすらに、その場を離れることだけを目指した。
司郎の背中を追って、生ぬるい風が屋根の上を吹き抜ける。
風音までもが、司郎を哂っていた。
――やめろ! やめろ! やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!
よろめきながら司郎は走る。
視界がぼやけるのは、涙が溢れている所為か。
司郎を追い越した風が、山の木々をざわめかせる。
それは闇に向かって走る少年を迎え入れる、地獄の亡者どもの拍手の音だ。
それでも彼は走り続けるしかないのだ。
例えその先に、絶望しかないことが判っていたとしても。
そして司郎は暗闇の中に消え去った。
静寂を取り戻した屋根の上、
天窓から漏れる灯りは何事も無かったかのように揺らめき、瞬き続けていた。
【了】
68:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:57:08 7NtjxoxS
す、すげぇ………
GJ!そして乙!
宮田が不憫なのも新鮮でいいな。
69:名無しさん@ピンキー
07/09/23 02:09:22 RU5+KXJo
すげえなあ。このまま公式だと言われても信じてしまいそうな出来だ
しかもしっかりエロいし
70:名無しさん@ピンキー
07/09/23 18:02:56 da+MtYbi
はじめて来たけど力作ばかりで感動したよ。
職人さん超乙!次の作品も期待してます。
71:名無しさん@ピンキー
07/09/24 02:53:18 rkNTDGyD
SIREN知らないけど、ここのSSはエロくて好きだ。
72:名無しさん@ピンキー
07/09/28 01:14:27 P/fCdHaE
みんな凄いや
73:名無しさん@ピンキー
07/09/30 15:00:12 cAQf1AtL
すげぇ 文章を仕事にしてる人?
見事すぎる
74:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:46:06 sUwLYaDc
前スレだけど、百合の話がやばかった。たまにふと思い出してチンコたってしまう。
75:名無しさん@ピンキー
07/10/03 13:39:19 YONAaMGx
73のレス見て過去ログ倉庫見てきたんだが
あの百合ssを投下してくれた人と
このスレで加奈江ssを投下してくれた人は
同じ人なのかな?
エロいのは勿論だが、原作のエピソードやキャラクターを
うまく消化してくれている所がとてもいい。
76:名無しさん@ピンキー
07/10/03 13:39:59 YONAaMGx
73じゃなくて74のレスだった、すまん。
77:名無しさん@ピンキー
07/10/05 01:21:19 X6jO8ths
なんだか悶々としてしまうな。
78:名無しさん@ピンキー
07/10/15 13:50:33 kMByN3Fu
好きなスレなので保守
79:名無しさん@ピンキー
07/10/23 19:09:15 cU7pH1ZD
なんというハイレベル
80:名無しさん@ピンキー
07/10/26 03:08:52 nb3/4BzO
a
81:名無しさん@ピンキー
07/10/26 13:52:06 KoGKgV6j
まちがっ
82:名無しさん@ピンキー
07/10/26 22:24:44 obrDt7n2
街?
あの名作ゲームかい
83:名無しさん@ピンキー
07/10/26 23:30:47 x8AILPSl
街は市川文靖編が一番好きだった
そんなことよりSIRENしようぜ!
84:名無しさん@ピンキー
07/10/27 00:03:26 dskAwDDq
あの恐ろしいゲームでおしっこチビらずにエロ萌え出来る勇者が集うスレはここですか?
85:名無しさん@ピンキー
07/10/28 13:57:06 5xPNSioK
ごめん、俺は途中で怖くなってやめた
86:名無しさん@ピンキー
07/11/09 01:56:22 eLjj8+Vx
スレと書き手が見捨てられていなかったことに感謝しつつ、投下します。
前回の牧野×八尾の続編にあたるSSです。
同じ様なのばかりで申し訳ないです。
次は絶対違うキャラでやりますので、ご容赦下さい。
かなり長い上、いろいろと調子に乗りすぎた面も多々ありますが、
寛容な気持ちで愉しんでいただけたら幸いです。
注意事項:放尿、露出、SM(鞭、蝋燭等)
よろしくお願いします。
87:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 01:57:30 eLjj8+Vx
止め処ない接吻を繰り返していた。
いつからこうしていたのか―女の舌と唇に酔い痴れる慶の頭は、はっきりと思い出せない。
一日の勤めを終えて寝所に戻った途端、不思議な甘い匂いを嗅いだ。
眼の前がぼやけて―上から何か重い物が落ちてくるような音を聞きながら、意識を失った。
そして気付いた時には、求導女と唇を重ね合わせていたのだ。
辺りに漂う深い夜の気配。
求導女の熱っぽさを増してゆく吐息を口腔に感じながら、慶は、
ほとんど反射的に彼女のくびれた腰へ腕を廻す。
――そうか……今から八尾さんを抱くんだっけ。
仄々とした悦びに心を充たされ、慶は静かに微笑む。
が、ふとその笑顔が曇った。
自分らの抱き合っている場所が、教会の礼拝堂であることに気付いたからだ。
羽生蛇村から、短い夏が過ぎ去ろうとしていた。
日中を賑わせていた蝉の声に代わり、近頃は、宵から始まる鈴虫やコオロギの音がかまびすしい。
十七歳の夏。この夏の慶に取って、夜こそが生活の全てであった。
村人達の為に開け放されている教会も、日が暮れればかんぬきを下ろして扉を閉ざしてしまう。
そうなればもう、此処を訪れる者はいない。
山奥にあるこの教会は、慶と求導女だけの世界になるのだ。
「あら、駄目よ慶ちゃん。お夕飯の支度をしないと……」
「そんなの後でいいじゃないですか。僕もう、待ちきれないんです」
初めて求導女と交わった夜以来、慶は一晩も欠かすことなく彼女の肉体を貪り続けていた。
昼間の、清潔で生真面目な求導師の仮面を取り去れば。
慶は発情期の雄の獣と成り果て、飽くことなく眼の前の雌に挑みかかるばかりであった。
寝所で。居間で。浴室で。台所で。
処構わず躰を求めてくる慶を、求導女もまた、貪欲なまでに受け入れた。
慶がどれ程の数の性交を望もうと、どれ程、女に取って恥ずかしい行為を要求しようとも―
求導女は決して、それを拒むようなことはしなかった。
それをいいことに、慶は欲望の赴くまま、考え付く限りの淫事を求導女に仕掛けた。
夕餉の膳を用意している彼女の尼僧服の裾を捲り上げ、
背後から陰茎で挿し貫くなどは当たり前。
食事が済めば済んだで、腹ごなしとばかりに一番や二番は交接をせねば収まらない。
そうして慶が人心地ついた処で求導女はようやくひととき開放され、
夕飯の後片付けや風呂の用意をする訳であったが、この間も油断がならない。
特に風呂掃除などは尻を絡げての作業であるから、慶が触発されやすいので注意が必要だった。
それから、二人は入浴する。
慶が思春期を迎えてから数年来。絶たれてきた二人での入浴は、夜の同衾と共に復活していた。
かつてそうしていたように―求導女は慶の頭を洗い、背中を流す。
子供時代と違うのは、入浴の世話がそれに留まらない処である。
今の求導女は慶の躰の隅々まで―陰茎から肛門の内部に至るまで、丁寧に洗い上げてくれる。
時には手拭いを使わず手だけで洗ったり―泡立てた陰毛を使うことすらあった。
88:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 01:58:11 eLjj8+Vx
そんな目に合って、慶が大人しくしている訳がない。
始めの内は辛抱堪らず、泡だらけのまま、
簀の子の上に求導女を押しこかしてしまったものだった。
最近では多少ゆとりが出て、そこまで性急な行為に及ぶことはなくなったものの、
その分、やることが入念になってきていた。
「八尾さん……今度は僕が洗ってあげますよ」
「あ……ん。慶ちゃんったら。そんなこと言って、いつもちゃんと洗ってくれないじゃない」
「そんなことないですよ。ほら、こんな処だって……」
尻の割れ目に手を廻し、肛門にぬるりと指を挿し入れると、求導女は笑い混じりの悲鳴を上げる。
逃げる躰を捕らえようとするが、石鹸の泡でつるつる滑って上手くいかない。
泡にまみれて戯れあっている内に、結局は二人とも催情してしまい、
なしくずしのままに性交にもつれ込む、というのが今や定石となってしまっていた。
このように、肌と肌とを擦り合わせて快感を得るやり方を、慶はこれで知った。
他にも、浴室では他の場所では出来ない様々な淫戯が試された。
汚れを伴うような行為でも、浴室ならばすぐに洗い流せるので、気軽に出来るのだ。
そう。浴室ならば―求導女の躰を精液まみれにしようとも、
逆に、自分が女の淫水で顔中どろどろになったとて、後始末は簡単だ。
求導女に放尿をさせたのも、風呂場でのことだった。
女の性器からどうやって小水が出るのか見てみたい。と言う慶の頼みに、
さすがの求導女も始めは難色を示した。
しかし慶の縋るような甘えた視線にほだされたのか、終いには彼の言いなりになったのである。
「それじゃあ……出すね」
浴槽の縁に腰掛け、彼女は片足を上げる。
中指と人差し指を逆さVの字に添えて陰唇を広げ、下腹部に、クッと力を入れる。
ショロショロと微かな水音が鳴り始め―間もなく温かい小水が、弧を描いて噴き出してきた。
自分が出すものと違い、少し末広がりに迸り出る小水。
慶は興奮の余り、飛沫が掛かるのも構わず前に廻り、求導女の開かれた尿道口を覗き込んだ。
「ああぁ、嫌よ慶ちゃん……」
排尿する姿を間近で見られる恥ずかしさと、
慶に小水を引っ掛けてしまうことへの居たたまれなさに、求導女は激しく身悶える。
だが、一度出始めた小水を止めることも出来ずに、求導女は最後までそれを出し切ってしまう。
全てを排出し、檸檬色の雫を垂らす求導女の女陰は―赤く火照っていた。
「八尾さん。此処……おしっこ以外のものも出て来ているみたいですけど」
「あんっ、ちょっと! 駄目よ、ちゃんと洗い流してからじゃないと汚い……あぁん!」
求導女の困惑を余所に、慶は、尿で汚れた彼女の陰部を舐め廻す。
塩気の強い小水の味に混じり、もはや少年に取って馴染みの、
粘り気のある液体が舌に絡み付いてくる。
「八尾さんってもしかして……好きなんですか? こういうの」
「はぁ、あう……そ、そんなこと……な…………あぁっ」
尿道口を、舌先で抉り込むように突付き廻されて、求導女は仰け反り、
あられもない声を浴室に響かせる。
最近、性生活において慶は求導女を圧倒することが多くなっていた。
元々は、初心な童貞少年である慶に、
求導女が手ほどきをする形で始まった関係であった筈なのに。
一回の交合で、慶が射精に至るまでに、
求導女が先に二度三度四度と達してしまうことも、今や珍しくない。
慶の若さと思いもよらぬ精力を前に、求導女の熟れた躰は、成す術もなく翻弄されつつあった。
それは、風呂の後から始まる本格的な営みにおいて、更に顕著であった。
89:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 01:58:53 eLjj8+Vx
「慶ちゃん。今日はどっちで寝るの?」
「八尾さんの部屋にしましょう。今夜も蒸しますから……」
求導女の部屋は、慶の寝所からずっと離れた廊下の端にあった。
四畳半の和室。勝手口に近い質素なこの部屋は、使用人部屋と言った方が正確かも知れない。
廊下とは襖で仕切られているだけのこの部屋に窓は無い。
だが、襖を開けて廊下のサッシを開けば、
天窓しかない慶の部屋よりも、ずっと風が入って過ごしやすかった。
それに慶は、求導女の部屋が好きだった。
小さな鏡台以外に家具らしい家具もない、殺風景な求導女の寝室。
でも、部屋に立ち込めている女の匂い―畳や柱にまで染み込んでいるような求導女の匂いは、
慶の心を日頃の憂さから開放し、優しく包み込んでくれるのだ。
慶には子供の頃より、繰り返し見続けている悪夢があったが、
求導女の部屋で眠ると、何故かそれも見ずに済んだ。
ただし。
それは単純に、求導女の部屋では殆どまともに睡眠を取っていないから。
というだけのことなのかも知れないが。
この部屋で慶は、何度求導女と夜明けを見たことだろう。
汗と、互いの体液の染み込んだ布団の上で。快楽の余韻に夢うつつの眼で。
途切れることなき絶頂の叫びに声を枯らした、求導女の胸の中で。
寝ずの泊まりが三晩ほども続いた折には、求導女も慶の躰を案じ、
自室で大人しく眠るように切々と諭したものだった。
しかしそんな彼女の母心を余所に、慶は心身ともに、以前よりもずっと健康になっていた。
睡眠不足や荒淫による疲労がない訳ではなかったが、
若い慶に取って、それは大した負担ではない。
それどころか、求導女との夜の生活は、求導師としての慶によい影響すら与えていた。
「求導師様はこの処なんといいますか、落ち着きというか、
威厳みたいなのが身に付いてきましたなあ。結構なことですよ」
女を知った所為であろうか?
村人の称した如く、慶は確かに、以前とは少し変わったようである。
慶自身に余り実感はなかったが―。
そう言われて見れば、前は若い女性と対面すると、
何か物怖じするような気持ちで落ち着かなかったが、今はそんなことも無くなった気がする。
誰に対しても―あの、慶に取って威圧感の塊のような病院の弟に対してさえ、
おどおどと眼を逸らしたりせずに、割合普通に接することが可能になっていた。
「村の人達の前で堂々とした態度で居られるのは、いいことね。
その方がみんなの尊敬を得られるもの」
求導女は、膝に乗せた慶の頭を撫でて賞賛してくれる。慶にはそれがくすぐったくて、嬉しい。
「では、ご褒美を下さい」
慶の望むご褒美は、いつも決まっている。
教会の勤めの間中、慶は求導女の女陰のことばかり考えて過ごしていた。
夜になったら、あの粘膜をどんな風にいたぶってくれようか―。
それらの妄想は全て、その日のうちに実現されたものだった。
90:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 01:59:36 eLjj8+Vx
更に。彼の性幻想が実現されるのは、何も夜だけに限られたことではなかった。
朝。例え夜を徹して性交に耽った直後であろうとも、求導女は日の出と同時に起き出し、
掃除と洗濯を始めるのが常である。
ある時慶は、それを裸体のままで行うようにと命じたことがある。
せめて前掛けだけでも着けさせて下さい、と求導女は懇願したが、結局この時も、
根負けする形で彼の命に従ったのだ。
朝日の下で見る求導女の裸身は、まさに神々しいばかりの代物であった。
煌めく光を浴びて、くっきりと浮かび上がる躰の曲線も。つややかに輝く陰毛も。
暁色の空が明るさを増し、目の覚めるような青色に変わってゆくのに従って、
求導女の肌の白さも鮮やかに際立ってゆく。
その光景の美しさに慶は暫し情欲を忘れ、求導女の立ち働く姿を、
絵画のように見入ったものであった。
だが、そんな慶の崇高なまでの感動も、
求導女が尻を突き出して廊下の雑巾がけを始めた辺りから、
妖しい官能の疼きに飲み込まれ、どろどろと溶解してしまう。
「あっ?! 慶ちゃん、何をするの?」
慶は、床に這いつくばる求導女の背に覆い被さっていた。
「だって……八尾さんがそんな格好するから……」
尻たぶに腰を押し付け、硬い陰茎をその狭間に割り込ませつつ、慶は熱い息を吐く。
そのままずるりと女陰に挿入してしまうと、突き出された尻を背後から押した。
「あ、あはあっ……! け、慶ちゃんよして……拭き掃除が、出来なくなっちゃう」
慶の下肢に押し潰されるように。
廊下の板目に突っ伏した求導女が、憐れな声を上げる。
もくもくと白く盛り上がった尻の肉と、そこから続く細腰を見下ろす慶は、
その打ちひしがれたような声音にふと悪戯心を覚えた。
「拭き掃除……だったら僕、手伝いますよ」
慶は床で潰れた求導女の腰に手を添えて、ゆっくりと起き上がった。
むっちりと肉付きのいい腿を両脇に抱えて立ち上がる。
そうして彼女の脚を持ったまま、慶は歩き出した。
「ああぁっ! あうっ、あっ、やめて慶ちゃんっ! あっ、あっ、あっ!」
「八尾さん、ちゃんと雑巾の上に手を置かないと……それじゃあ床が拭けませんよ」
「あぁんっ! 駄目よこんな……だってこんなの……ああっ! いやあぁあん……」
腕を突っ張っていないと姿勢が崩れてしまう。
しかし、慶に陰茎で膣を抉られながらしっかりと手を突いているのは、至難の業だった。
最終的に、求導女は雑巾を敷いた上半身を床に伏し、尻から下だけ慶に抱え上げられた状態で、
ずるずると這いずり廻ることと相成った。
その姿はあたかも、農夫が耕運機を使って畑を耕している様、そのものだ。
慶はその、淫らな耕運機の脚を交互に上下させ、膣への刺激を巧みに御する。
「ああぁー…………」
結果、自然と気ざした求導女の陰部はじゅくじゅくとぬかるみ、慶が足を進める度に、
ねちゃねちゃぐちゃぐちゃと淫液の音を鳴らした。
しかもこのやり方だと、求導女の弱点である膣の最深部に、
亀頭の先がコツコツとよくぶつかるものだから、堪らない。
朝日の射し込む廊下を往復しながら、求導女ははしたない嬌声を上げ続け、
結局二度もの絶頂にむせび泣いたのである。
91:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:00:17 eLjj8+Vx
が。寛容な求導女もこの時ばかりはさすがに、度を越えた慶の所業が腹に据えかねたらしい。
彼女は思いも寄らぬ方法で、慶に仕返しをしてきたのだ。
それは、眞魚教の信者である村の老人が、教会を訪れた時のことであった。
老人は、長年世話をし続けていた畑を手放すのだと、慶と求導女に話していた。
曰く。自分も年を取ってすっかり足腰が弱くなったし、
後継者となるべく子や孫達も都会へ働きに出てしまい、畑仕事を出来る者が居ないので、
いっそ手放してしまうのが妥当であるのだ。と。
そう言って寂しそうに笑う老人に、ならば求導師様に野良仕事の手伝いをさせればいい、
と求導女は微笑んだのだった。
彼女は言った。
「求導師様は、耕運機を扱うのがなかなかお上手なんですよ」
慶はこれを聞き、飲んでいた麦茶が咽喉につかえてむせ返りそうになった。
どうにか取り繕いつつ彼は、「耕運機の種類にもよります」とだけ返した。
その日以来、二人の間で“耕運機”という言葉は秘密の符丁となった。
それから暫くは、慶も多少は身を慎むようになっていた。
あまり奇異な行為にばかり及んで求導女に嫌われるのも怖かったし、
何より、彼女の躰のことも心配であったからだ。
慶は求導女と交わるようになってから、一度も避妊の類を行って来なかった。
これまでの夥しい数の性交で、夥しい量、子宮に注ぎ込まれてきた精液。
求導女が求導師の子種を孕む。などという怖ろしい事態になりでもしたら―。
だが恐る恐る問うてみた慶に対し、求導女の返事は呆気ないものであった。
「大丈夫よ慶ちゃん。私は子供が出来ない躰なの」
――子を孕むことの出来ない躰。
夕刻。久方ぶりに早めに湯を使い、浴衣姿で縁側に腰掛けた慶は、
洗濯物を取り込む求導女の豊饒そうな腰廻りに、複雑な目線を送る。
幾ら精を放っても妊娠しない求導女の躰は、慶に取って非常に都合が良いと言えるだろう。
それなのに。
その事実を噛み締める度に、慶は何故かしら少し寂しいような―虚しいような心境に陥った。
眞魚教の求導師は元来、世襲制が習わしである。
慶の義父のように、養子を跡取りにして生涯独身を通すのは稀な事例だ。
このまま時が過ぎれば。
数年後、求導師・牧野慶に取って、最大の試練である儀式を、
無事に成し遂げることが出来たなら。
おそらく慶は、神代の親戚筋辺りから妻を娶ることになるだろう。
そしていずれは子を成し、次世代の求導師として育んでゆくのだ。
それは今の慶に取って到底受け入れ難い、およそ現実味の無い話である。
――僕が結婚してしまったら……。
八尾さんはもう、僕に抱かれてはくれなくなるのかな……。
「なあに慶ちゃん?」
いつの間にやらのっそりと後ろに立っていた慶を、求導女は肩越しにちらりと振り返る。
処暑を迎え、めっきり日の落ちるのが早くなった昨日今日。
すでに辺りは、薄暗くなり始めている。
92:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:00:54 eLjj8+Vx
慶は物干し竿に掛けられた大きな白いシーツの陰で、求導女の背中を抱き締めた。
裏庭に立ち込める蚊遣火の香に混じり、求導女の甘い香りが慶の胸をかき乱した。
「まあ、あなたはまた……こんな処じゃ駄目。誰かに見られたらどうするの?」
「……」
慶は何も答えなかった。
背後から求導女を抱きすくめ、尼僧服の立ち襟に顔を埋めながら乳房の膨らみをまさぐる。
「ちょっと慶……んっ」
押し返そうとした女の手を掴み、諭す言葉を口にしようとした唇を、唇で塞ぐ。
舌を舌でぞろりと掻き廻し、尼僧服の襟の釦も手早く外してしまう。
果物の皮を剥くように。生身の肉体を包み隠す尼僧の装束を剥いでしまえば。
求導女の、求導女としての理知も分別も、地面に落ちる赤い衣のように、
脆く儚くその身から剥がれ落ちてしまうものなのだと、慶は彼女との生活の中で学んでいた。
「ああー……いや。恥ずかしいわ、こんな、表でなんて……」
「恥ずかしい方が好きでしょう? 八尾さんは」
垂れ幕のようなシーツの陰で。慶と求導女は瞬く間に全裸になり、火照った躰を絡ませあう。
黄昏の風が肌をくすぐり、立ったまま交接を行う二人の汗を、流すそばから乾かしてくれた。
「ああ慶ちゃん……いい。気持ちいい……」
「僕もです。こうしていると本当に……嫌なこと、何もかも忘れてしまえる……」
物干し竿の柱にしがみ付いて尻をくねらせる求導女と、後ろ取りで求導女の蠢く尻を抱え込み、
深く浅くと緩急つけて求導女の胎内を陰茎でほじくり廻す慶は、共に歓喜の声を上げる。
鬱蒼と生い茂る草木と崖とに囲まれたこの陰鬱な裏庭は今、
二人の男女のささやかな楽園と化していた。
ぱん、ぱん、と肉を打ち付けあう音は木々のざわめきに吸い込まれ、
求導女の発するいやらしいよがり声も、夕風と共に何処かへ飛んで行ってしまう。
そこには普段の性交とは違う、からりと爽やかな快味があった。
「八尾さん……!」
慶は求導女の、粉をはたいたようにさらさらした背中に胸板を押し付け、
性の絶頂に向かって力強く腰を使い始めた。
求導女も慶の意思に従い、上下左右に腰を捻くり、
肉襞をぐっと締め付けて快楽の階段を駆け上ろうとする。
「ああん、あん、慶ちゃん堪らない……だめ! いく、いく、もう、いっちゃうぅ……」
求導女のいつになくあけすけな睦言が、慶の欲情を加速させる。
慶は射精の予感を覚え、求導女の尻の割れ目にぐっと腰を押し付けた。
ところが。
風の音に乗って、微かなエンジン音が聞こえてきた。
空耳か? そう思う間もなくそれは大きく確かなものになり―
やがて、裏庭に通じる勝手門の前で停まった。
淫欲に飲み込まれつつあった二人の躰が、すっと冷え固まる。
未だ夢の中にあるように呆然とした求導女に対し、
いち早く冷静さを取り戻した慶が、彼女の躰を背中から抱きかかえる。
そして干されたまま微かな風に揺らいでいるシーツの裏に、そっと身を潜めた。
『き、求導師様……!』
『しっ! 静かに』
93:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:01:38 eLjj8+Vx
慶が後ろから求導女の口を手で塞ぐのとほぼ同時に、裏庭に小さな人影が飛び込んできた。
「きゅーどーしさまー! きゅーどーめさまー!」
「ほら知子。そんなに走っちゃ危ないじゃないか……ごめん下さーい」
突然の来客の正体。
それは、村役場の職員の前田隆信と、確か今年で四歳になるその娘の知子であった。
「おるすですかあー?」
知子の無邪気な声に、慶と求導女は生きた心地もしない。
大人と違い、子供の行動は突飛で予測がつかない。
ここに隠れていることがばれてしまったら―
全裸の破戒僧達は繋がりあったまま、息を殺して隠れ続ける。
「おとーさん、せんたくものほしたまま」
「駄目だよ知子。そっちは求導師様のおうちだから勝手に入っちゃいけないの。
……すいませーん、村役場の前田ですけどー」
前田は裏庭の隅にある勝手口の戸に向かい、しきりに呼びかけていた。
「……居ないみたいだ。おかしいなあ、教会はもう閉まってるし、こっちに居るはずなんだが」
勝手口の前で困惑している様子の前田を余所に、
知子は落ち着き無くそこいらをぱたぱたと駆け廻っている。
(頼むからこっちには来ないでくれよ……)
過度の緊張で荒くなる呼吸を必死に抑えながら、慶は祈る気持ちで心に呟く。
そんな慶の祈りが通じぬのか、前田はぐずぐずと勝手口に居続け、
一向に立ち去る気配はなかった。
何か、役場から教会へ至急伝えねばならぬ事柄でもあるのだろうか?
庭の隅をうろうろしている前田の足音と、
ぱたぱたぱたぱた、近付いたり遠のいたりする知子の足音。
そんな怖ろしい音を聞いているうちに、慶は凍りつくような緊張感に身を竦める一方、
頭のどこかが麻痺してしまったような―
一種異様な興奮に、じわじわと心を侵食されつつあった。
娘の足音が遠のいた隙を見計らうように、慶は求導女の膝を背後から掬い上げた。
求導女が驚いたように身を震わせるのを感じ取りながら慶は―
求導女の口を塞いだまま、小刻みに抽送を再開していた。
『……! …………!!』
求導女は声を上げることも慶を引き剥がすことも出来ず、
ただ身を強張らせてこの所業に耐え忍ぶしかない。
暫くして急に、求導女の唇の隙間に入り込んだ慶の指先が、きりりと噛まれた。
それを合図とするように―じっと慶にされるがままになっていた求導女の下半身が、
彼の動きに呼応して、もじもじと蠢きだす。
(八尾さん……)
慶は、彼女の口を押さえていた手をサッと下ろして、陰毛の下の陰門の周囲をまさぐってみた。
陰茎で感じている通りそこは、大量の淫水に濡れそぼっていた。
しかもそれだけではない。
(これは……)
慶は密かに驚嘆する。
慶の指の下、求導女の陰核はこれまで感じたことも無いほどに勃起し、
かちこちに硬直して反り返っていたのだ。
「……っはあっ」
陰核の裏つらをそろりと撫で上げると、求導女は鋭く息を吐いた。
慶は慌てて掌を彼女の口元に戻す。
どうせなら陰核も愛撫してやりたいが、この状況ではどうにもできない。
日が落ち、辺りが夕闇に沈み視界が効かなくなってゆく中、
慶は求導女のくっきりと起き上がった陰核を想い、ますます大胆に腰を動かした。
94:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:02:47 eLjj8+Vx
「……駄目だな。こりゃあ完全にお留守だ。しょうがない。知子、出直そう」
ようやく前田が諦めたらしい。
性交の快感に酔い痴れながら、慶と求導女は、ほっと安堵の息を吐く。
だが其の時。
「おるすじゃないよ」
怪訝そうな声で言ったのは、知子だった。
「おるすじゃないもん。ちゃんといるよほら」
知子が、こちらに向かってそう言った。
『…………』
前田親子が庭の、こちらの方角に注目する気配を感じ、慶はぴたりと腰の動きを止めた。
――もう駄目だ……。
絶望感が胃の腑の底をずんと重くするのと同時に、膣の中の陰茎が、
おぞましいまでの快感に襲われていた。
快感は尿道の奥底を刺し貫き、精巣どころか、
膀胱までもが圧縮されて尿管から吸い出されそうな凄まじい感覚と共に、
慶の視覚は赤い閃光の中に眩む。
「ほらだって、蚊取り線香ついてるもん。ぶたさんの」
じいんと痺れた聴覚の片隅に、娘の声が聞こえてくる。
その後、父親の方が何事かを娘に返答し、立ち去ろうとしている気配の中、
慶は、間欠的な射精を行った。
「ううう……」
あまりに激しい射精の快感が、慶の足元をふらつかせる。
よろめいた拍子に、共に転びかけた求導女が眼の前のシーツを掴んだ。彼女は小さく呻く。
「あぁ……あ!」
垂れ幕が落ちるように。
シーツがするりと、音も無く地面に落ちた。
急に拓けた視界に、庭から去って行く前田の横顔と、その後に続く知子の姿が映る。
出口の手前で、知子が、こちらを向いた。
強い風が、庭を吹き渡った。
「あ!」
「うぅっ……」
「あはぁー……っ」
知子と慶と、求導女の叫びが重なり合う。
白い布がひらめいて飛んでゆき―轟音に包まれながら、求導女が、絶頂の声を上げた。
「おとーさあん……目にごみがはいったあ……みえないよお」
「そうなのかぁ? こっちへ来なさい。此処じゃ暗いから車ん中で取ってあげよう……」
親子の声が遠ざかる。
残された二人は狂おしいほどのオルガスムスの余韻に性器をひくつかせ、
蕩けた部分を繋ぎ合わせたまま、地べたに崩れ落ちた。
慶の脱ぎ捨てた浴衣が敷布のように彼らを受け止め、
外れた性器からどろりと漏れ出る二人の淫液を吸い取った。
「…………」
「…………」
95:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:03:37 eLjj8+Vx
それから彼らは、暫し呆然と庭の真ん中に座り込み、互いを見つめ合っていた。
慶の陰茎は初めての晩のように勃起したまま収まらず、求導女の陰核は、
根元から勃ち上がって淫猥な自己主張をし続けていた。
「……見られたの?」
「……判りません。あの様子だと多分、気付いてないと思うけど……」
藤色に翳った空の下、求導女の頬は紅潮し、黒く潤んだ瞳が宝石のように輝いている。
隆起した乳房が呼吸と共にせわしなく上下する様を見下ろして―
慶は、乳房の頂点に乗って息づく二つの乳頭を両手で摘まんだ。
「はぁ……う」
「でも、もしかしたら……見られたかも知れませんね。八尾さん、すごく大きな声出してたし」
言いながら慶は、求導女の尖りきった陰核をも片手で捻る。
「ああいや……」
「此処だって、見られたかも知れません。此処、こんなに大きく勃起させてたら……
眼につきますよ。しかも、こんなにひくひくさせちゃって」
「ああん。だ、だって、だって……あああっ」
求導女は我慢が出来なくなった様子で仰け反り、土で汚れるのも構わずに地面に仰臥した。
慶は求導女の躰を追い、腰をあげて上から覆い被さってゆく。
「本当は……見られたかったんでしょう?
あんな小さな子供の前であんなに派手に気を遣るなんて……
八尾さんって、本当に助平な躰をしてるんですね。求導女の癖に……」
「あはぁ……あ、あなたこそ! 求導師様の癖に、こんな、こんな場所でこんな……ああっ!」
慶は求導女の脚を目いっぱいに広げ、股間を限界まで押し付けて亀頭を押し込み、
奥の子宮頚管を小突き、揉み込んだ。
夕暮れが夜になり、夜が夜更けへと移り変わるまで。
慶と求導女は庭先で、獣のようなまぐわいを続けた。
夜になったとはいえ、屋根のない屋外である。
最前のように急に人が訪ねてくるかも知れないし、あるいは崖上や傍の木陰から、
人の目に覗かれないとも限らない。
それなのに―いや、それだからこそ。
二人は異常なまでに発情し、物狂いのように盛りまくってしまったのであろうか。
「ああああっ……いい! いいっ!
慶ちゃんの……おちんちんの先が、おまんこの奥に届いて……あああ、溶ける……
おまんこ、蕩けちゃうぅ……」
「八尾……さん……あぁ、そ、そんなにおまんこでちんぽを締め付けたら……!
うううっ……! 出……る、出る! 出る! 出ます! 僕出ます! 精……液……出る!」
慶と求導女は、常日ごろ口にすることのない淫辞を捲し立てながら、
際限なく恥知らずな交合を繰り返し、絶頂の痙攣に生殖器をわななかせた。
開放感と、敏感になった皮膚を外気に嬲られ続ける快感も相まって、
それは途方もない快楽を二人に与えた。
尚、彼らはその快楽に夢中になったものの、
その後、表で素っ裸になっての交接が日常化することはなかった。
危険なのは勿論のことであったが、それより何より快楽の代償として、
二人ともあらぬ処を虫に食われてしまい、暫くの間往生する羽目に陥ってしまったからである。
96:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:04:53 eLjj8+Vx
かようにして慶は、求導女との性の快楽に耽溺し続けてきた。
まさしく、虜になっていたと言っていい。
――人の世に、これほどの悦びがあったとは……。
慶は目の前がパッと啓けたような気分だった。
今や性交の為に生きている慶は、
機会さえあればいつでも、何処ででもそれを行う準備が出来ていた。
ただし。
今居る此処だけは―教会の礼拝堂だけは、いけない。
礼拝堂―否。正確にいえば礼拝堂の祭壇の奥にある秘密の洞窟。
此処が畏れ多い場所であることは求導師となるずっと前から―
物心が付くか付かないかのほんの幼い時分から、骨身に沁みて理解していた。
今は亡き義父が、あの傲慢な神代家の人々が、
そして、他ならぬ求導女さえもが畏れて崇め奉る、村の暗黒。
求導師の職に就いてからというもの、慶はこの礼拝堂に入らない日は無かった。
朝な夕なと祈りを捧げ、信者を前に説教を行う慶の職場。
慶に取ってはもう一つの住まいともいうべき場所であるのに―
未だに、どうしても馴染むことが出来ずにいた。
日当たりの悪い谷間に位置するこの教会にあって、最も冷たく薄暗いこの礼拝堂。
崖面に張り付いて建てられ、祭壇の奥は、崖の岩壁が剥き出しのままにされている。
中央部の、人独りが屈んでやっと通れるほどの小さな岩窟は、鉄格子の扉で封じられていて、
その信仰の場所らしからぬ無骨で物々しい有様は、見る人全てに、
一種異様な威圧感を与えて止まない。
しかし慶は知っていた。
この鉄格子は―大仰な錠前は、岩窟の奥に眠る恐るべき村の真実を封印する為に、
是非とも必要なものである、ということを。
――村において最も尊ばれ、また愛されてもいる求導師の正体は、ただの墓守に過ぎない。
亡き義父が死の直前、自嘲気味に漏らしたその言葉は、ある意味真実であった。
岩窟の奥に続くのは、遥か昔にこの村を興し、現代に至るまで村を支配し続けてきた、
神代本家の墓所なのだ。
かつては禁足地であったこの墓所を見張り、何人をも近づけぬように隠し続けること。
それこそが、求導師の最も重大な使命なのである。
求導師には、村で秘密裡に行われる“聖婚の儀”を執り行なうという、
表向きの大任もある。
それは求導師自身のみならず、村そのものの命運を大きく揺るがしかねない、
いわば大きな賭けである。
しくじれば神の怒りを買い、村は大いなる災いに見舞われる。
求導師はその責任を問われ、
それまでとは一転し、その存在さえも否定され、疎まれながら惨めな余生を送らねばならない。
さきの儀式に失敗した先代求導師である、義父のように―だ。
そういったまさしく命がけの大仕事ではないにせよ。
求導師に取って、“祭壇裏の聖域”を守ることが重要な役割であることには違いない。
神代本家の血筋を連綿と受け継いできた、本家の奥方達。
彼女らの永い眠りを妨げさせることのなきよう、聖域を見守り、慰霊の祈りを捧げ続けること。
求導師たる慶は常にそれを肝に銘じ、祭壇を前にする折には威儀を正すのを忘れなかった。
自分らの始祖であり、最も神に近い畏れ多い方々を前にすると、
如何に多淫の日々を送っている慶とても、暫しその情欲を身の奥底に封じ、
真摯な聖職者としての意識を取り戻すことが出来た。
97:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
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求導女にした処でそれは同じである。
例え、ほんの数分前まで互いの陰部を弄くりあい、舐りあった直後であろうとも。
ひとたび礼拝堂に立ち入れば、そんな秘め事の余韻は綺麗に捨て去り、
双方眞魚教の師としての立場に乗っ取って、それぞれの役目を全うするのみであった。
無論、聖なる礼拝堂で性の匂いにまみれた接吻に耽るなど、もっての他だ。
――今すぐ止めなければ……。
慶は求導女の肩を抱き、そのまま引き離そうとする。
―引き離そうと、したのだが。
――あ?
不思議な現象が起こった。
求導女の肩を押そうとした途端。慶の視覚も、触覚も、聴覚も。
とにかく全ての感覚が、ぶれて歪んで、砂嵐と共に消え去ったのだ。
まるで、テレビのアンテナが風で倒れてしまったように―。
――何だこれは……?
突然全ての感覚を絶たれた慶は、混乱と不安に我を失いかける。
――戻らなくちゃ! とにかく……戻らなくちゃ!
これまでの人生において全く未曾有の異常事態にあって、
慶は何故か“元の位置に戻る”ことが、ただ一つの解決方法であることを信じて疑わなかった。
肝心の“元の位置に戻る”方法については、皆目見当がつかなかったが―。
――そういえば……。
慶の脳裏に、始めに気を失った時の記憶が微かに甦る。
あの時―倒れた瞬間、不意に慶は床に伏した自分の姿を見たのだった。
それもずっと高い位置―部屋の天井を越え、屋根の上辺りから、
天窓を通して見下ろしたのだ。
まるで、自分の意識が自分以外の何者かの中に入り込んでしまったような、あの感覚―。
あの時の感覚を思い出し、慶は自らの意識を揺るがして、中空を漂わせて見た。
雑音と灰色の闇の中、慶の意識は何処とも知れぬ場所を不器用に巡り続ける。
――早くしないと……僕は、永久にこのまま……。
奇妙な焦燥に急き立てられつつ意識を巡らす慶の視界が、唐突にぽっと啓けた。
――……?!
仄暗い礼拝堂に溶け込む、黒い法衣姿。
慶の眼の前にいるのは他ならぬ、慶自身であった。
妙に不安定な、乱れた感じのする視界の中で、
もう一人の自分は何事かをぼそぼそと語り掛けてくる。
もう一人の自分との対峙は、慶を言い知れぬ不吉な予感に陥れる。
己の分身に巡り逢う時、人は死ぬ。
以前聞いた古い言い伝えが、心に残っている所為だろうか―?
慶は自分と向き合う不快感に耐え切れず、意識を宙に飛ばした。
再び心許無く彷徨い始める―。
だが今度は、すぐに己を取り戻せた。
求導女を前にして立っているこの位置。
少し目線を落とすと、黒衣の胸元で鈍い光沢を放つマナ字架が見える。
――ああ、ようやく帰って来られた……。
98:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:06:39 eLjj8+Vx
安堵に胸を撫で下ろす慶の眼の前で、求導女は衣服を脱ぎ去ろうとしていた。
いつものように―尼僧服を。ブラジャーを。そして、パンティーを。
ただいつもと違い、頭から肩までを覆う赤いベールは着けたままだった。
――何故ベールを取らないんだろう?
不思議に思いながらも、全裸にベールだけを被った姿のなまめかしさに心を奪われ、
まあいいか。と慶はぼんやり納得する。
どうも、頭が上手く廻らない。
この場所で、こんな風にしていてはならないと思ってはいるのに。
己自身を律する言葉は、意識の遠い片隅に追いやられてしまっているようだ。
それは、聞こえていながらどうしても起きて手を伸ばすことが出来ない、
夢の中の目覚まし時計の音のように―。
ぼんやりとした困惑を胸に立ち尽くす慶の前に、求導女は跪いていた。
彼女の瞳は美しく濡れながらも何処か虚ろで、
その視線は慶を通り過ぎ、いずことも知れぬ遠い場所に思いを馳せている風情だ。
昔から求導女は、時折こんな眼を見せる。
この眼を見るたびに、慶は言い知れぬ心細さを感じていた。
このひとはいつか自分を置いて―
自分の手の届かぬ何処かへ去って行ってしまうのではないか。
そんな悲しい予感を催させるそれは、慶の嫌いな眼差しだった。
でも今見せているこの眼差しは、少し様子が違うように思える。
それは虚ろなのが目線だけに止まらず、
表情全体からその所作にまで及んでいる為なのかも知れない。
酒にでも酔っているかのように陶然とした気配を漂わせながら、
求導女は、慶の股間部分にそっと手を伸ばした。
――八尾さん……。
そんなことは、母屋でやってくれればいいのに。
求導女が跪いてしまったので、慶は彼女の頭越しに祭壇と、
その奥の岩窟とまともに向き合ってしまっている。
半円形に穿たれた黒い岩窟から眼を逸らし、慶は求導女の手を押し戻そうとする―。
すると、またもや慶の意識がぶれた。
――駄目だ!
雑音と共に意識が乖離しそうになるのを堪え、慶は自我を保つ為に動きを止めた。
その間に求導女は慶の長い法衣の裾を捲り上げ、ズボンの釦を外しに掛かる。
下着越しに陰茎を指で辿り、淫靡な笑みを浮かべた。
「硬くなってる……」
求導女のうっとりとした声音に、慶はまさかと己の股座を見下ろした。
求導女の、言う通りであった。
下穿きの上から握り締められている慶の陰茎は、びくびくと脈打ちながら瞬く間に膨張し、
硬度を増して反り返ってゆく。
求導女は慶の下穿きをずり下ろし、上向いた亀頭の先にぬめる桃色の舌を這わせた。
「う……」
慶の咽喉から、くぐもった呻き声が漏れる。
99:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:07:17 eLjj8+Vx
求導女が最初に陰茎を口で吸ってくれたのは、初交の翌日の晩のことであった。
共に入浴をした際「洗ってあげる」といって口に含まれた時には、
慶は驚いて思わず腰を引いてしまったものだった。
しかし求導女はそんな慶の逃げる陰茎を追い、
両手を下肢に絡ませ、根元まで銜え込んでしまった。
「わ……わ……うわぁっ」
初めて陰茎で味わう、女の口の中の感触。
膣とはまた違った趣のある粘膜は、膣よりも強い力で陰茎を締め上げ、なぶり、
瞬く間に慶を快楽の高みに追い上げた。
求導女の舌の動きは、素晴しかった。
長い舌がなめくじのように亀頭の裏筋を辿り、張り出した部分に絡みつき、
這いずり廻ってゆく毎に、慶は女のように甲高い嗚咽を漏らしてしまう。
「うぅ……! で、出ちゃう……出ちゃいますよ、そんなにしたら……」
陰茎が蕩け、麻痺するような感覚に苛まれながら慶は身悶え、求導女に許しを乞うた。
求導女はそんな慶の苦しげな表情を上目遣いに見上げ―
更に激しく舌を動かし、頬を窄めて口腔粘膜を摺りつけ、ずぼずぼと扱き上げた。
「うふぅっ! くっ……ふううぅっ……」
到底、堪えることは出来なかった。
いつの間にか根元の辺りに添えられていた指の締め付けに押し上げられて、
慶の陰茎は、求導女の口の中に熱い迸りを大量に放出してしまった。
絶頂の断末魔にある慶は求導女の頭を押さえつけ、髪の毛を強く掴む。
そうされている求導女の方は落ち着いたもので、慶に押さえ込まれ、
ごわごわ繁った陰毛に顔を埋めながらも、咽喉を鳴らして慶の放った精を飲み干した。
牛の乳を搾るように尿管に残った精液を搾り出し、それをもちゅっと吸い取ってしまうと、
求導女はようやく唇から陰茎を開放して微笑んだ。
「久しぶりに飲んだわ。こんなに濃いの」
100:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:08:08 eLjj8+Vx
求導女は、慶の陰茎を口に含んで愛撫するのを好んだ。
「慶ちゃんのは綺麗で匂いもきつくないし、大きさが程よいからしゃぶり易いのよ」
求導女のこの言葉を、賞賛と取るべきかどうか慶は迷う。
だが実際問題、こんなにも心地好い行為を彼女から進んでしてくれること自体には、
異論があろうはずもない。
口淫は大抵、交接の合間に行われた。
求導女の肉体を散々責め立てた後。慶が小休止を取って微睡んでいる時。
慶の陰茎を掌で玩んでいた彼女の躰は下にずれ、
未だ淫液に塗れたままのその部分に優しい口付けを始めるのだ。
「八尾さん……くすぐったいよ……」
夢うつつで呟く慶をよそに。
求導女は棒飴でも舐めるように慶の陰嚢の裏側から茎全体、そして裏筋を通って鈴口まで、
丹念に舐り廻す。
そうする内に慶の陰茎は頭をもたげ、ぴくんぴくんと物欲しそうに蠢き出す訳だが、
そうなってからが口淫の本番なのである。
求導女は人差し指と親指で輪をつくり、ぱんと張り出したカリ首を囲む。
そうして亀頭を支えてから、舌を伸ばし、艶々とした肉の表側のみを舐め廻すのだ。
敏感になった部分に甘い刺激を延々と受け続け、
慶の亀頭の裂け目からは透明な粘液がとろりと溢れ出る。
「うう……八尾さん」
焦らすような舌の動きに耐えかねて、慶は腰を捩って逃げようとした。
「駄目よ慶ちゃん。少し我慢して」
求導女が静かな声で言い含める。
「じっと横になってなさい。大人しくいい子でいたら」
「……いたら?」
「この世のものとは思えない、とても気持ちのいい思いが出来るのよ」
そう言って微笑んだ求導女の顔は、男に淫夢を見せる夢魔のように美しかった―。
101:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:18:16 eLjj8+Vx
赤いベールの頭が、慶の股間で小刻みに揺れている。
求導女は今、亀頭だけに舌を絡める口淫を行っていた。
――大人しくいい子でいなさい。
これまで、求導女の教えを範とし、求導女の言葉に従い続けて生きてきた慶は、
求導女に言いつけられたことには決して逆らうことはなかった。
当然この、耐え難く寧ろ苦しみさえ感じさせるほどの、求導女の奉仕に対しても―。
「ああぅ……う……ああ……や、八尾さん……八尾さん!」
あの時―
もう、かれこれ二時間以上も亀頭のみを責め立てられて、慶は悶絶しかけていた。
陰茎がぐずぐずと崩れ落ちそうな凄まじい恍惚感の中、
不意にカリ首や、裏筋の辺りにほんの僅かな指先の刺激が加えられる。
その度ごとに慶は、絶頂感の伴わないまま、だらだらと精液を漏らし続けていた。
「ああ……ああ……あ」
快楽に眼が霞む。
脚を突っ張り、腰の脇でシーツを両手に掴み、淫欲地獄に耐えながら慶は、
このきりのない快感の連続に、自分が女になってしまったような錯覚を起こしていた。
口淫の合間に乳首をそっと弄くられたり、
肛門の辺りをもにょもにょと摩られたりして声を裏返らせている内に、
慶は、自分の男としての自我が崩壊してしまいそうな危機を感じた。
でも―気持ちいい。
もう―どうなったって構わない。
とろんとぼやけた瞳で、舌を蠢かせている求導女を見下ろす。
その卑猥な口元の動きと、伏せられた長い睫毛の高貴な美しさとに魅せられながら、
慶の意識は、温かい波に飲み込まれるようにゆっくりと遠のいて行った―。
102:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:18:57 eLjj8+Vx
この特別な口淫は、いつもいつも為される訳ではない。
これは快感の大きさの分、奉仕する側もされる側も、非常に消耗が激しいからだ。
それに、時間も掛かる。
いつしかこの口淫は、日曜日の―午前中に行われる礼拝以外は教会が休みになる日限定の、
特別な愉しみとして取って置かれることになった。
いま求導女が行おうとしている口淫は、まさにその“特別な口淫”なのである。
――此処であれを……そんな……。
畏れ多いことだと思った。
眞魚教の教えを司る立場に在りながらの、この瀆神行為。
だが心は畏れを抱いていても、躰の方が言うことをきかない。
たくし上げた法衣の裾を持ち上げ、
ずっきんずっきん筋張りながら先走りを滲ませる慶の陰茎は、
すでに求導女に責められることを欲していた。
――いけないよ八尾さん……このまま続けられたら僕、どうなってしまうか……。
鈴口の割れ目を抉るように、舌先が割り込んでくる。
慶は息を荒げ、がくがくと震えだす足で必死になって躰を支える。
尿道口の裂け目は、慶の一番の泣き所である。
此処を指で摩られたり舌でほじくられたりすると、慶はもう逆らえない。
――あああ、八尾さん……もっと……もっと!
慶の心の声が聞こえたのだろうか?
求導女は、つと顔を上げると、ゆったりとした笑みを浮かべた。
「慶ちゃん……もっともっと気持ちよくしてあげる」
103:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:19:31 eLjj8+Vx
求導女がこう言ったのを耳にした途端、慶の中に不可解な衝動が起こった。
それは慶に取って、あまりに馴染みのない衝動―。
押さえる間も訝る間もなく、慶はその衝動に従っていた。
「きゃあっ?!」
ばちん、と激しく肉を打つ音がした。
掌に熱い感覚。
ふと見ると、慶の足元から50センチほど離れた床に、求導女の裸身がひっくり返っていた。
――僕は……八尾さんを、ぶったのか?
信じられない思いであった。
混乱と、何に対してとも知れぬ憤りで胸が高鳴る。
だが、そんな慶の心を無視するように、慶の躰はヒリつく掌を握り締め、
ゆっくりと歩き出していた。
「……慶ちゃん?」
おずおずと身を起こした求導女は、虚ろな表情で慶を仰いでいた。
赤いベールの下、打たれた頬には慶の指の痕が残り、紅く痛々しく腫れ上がっている。
慶は求導女の前にしゃがみ込んだ。
真正面から見る求導女の顔は、虚ろな中にも怯えの色が見え隠れしている。
その表情に、何故かときめきのようなものを感じながら―
慶は、彼女の震える顎を掴んで、引き寄せた。
「求導師様、だろ?」
「え?」
「求導師様だ。ちゃんとそう言ってみろ」
「き……求導師様……」
慶は愕然としていた。
――僕の口が……勝手に喋っている……。
躰ばかりでなく、言動までも。これはいったい、どういうことなのだろうか?
慶ははっきりとした意識をもっているにも関わらず、
まるで誰かに肉体を乗っ取られてしまったように自由を失ってしまっている現状に、
ようやく気が付いた。
この礼拝堂で求導女と抱き合っていたのは、自分の意志ではなかったのか?
――何故だ?! どうしてこんな……?!
しかも、慶が己の意思でもって行動しようとすると、
躰に拒絶され、精神が引き剥がされてしまうのだ。
これでは―成す術がない。
何でこんなことになったのかは判らないが、今の慶はまさしく手も足も出ない状態だ。
一方、混乱と焦慮のどん底でもがき苦しむ慶を封じる肉体は、
独りでに、自分勝手に動き出していた。
「立て」
「あぁっ……」
黒い袖が、白い細腕をぐっと掴み上げる。
――そんな乱暴にしたら、八尾さんが可哀想じゃないか……。
慶の心の声は、躰に届かない。
慶の躰は、求導女の腕を強引に引っ張って祭壇の前まで連れて行った。
104:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:20:16 eLjj8+Vx
「ふん。求導師に仕える立場でありながら、馴れ馴れしく名前を呼んでくるとはな。
生意気な女だ……」
慶は、求導女の躰を祭壇に押し倒した。
壇上に立てられていたマナ字架が、けたたましい音と共に倒れて、落ちる。
両脇に供えられている火の消えた燭台も同様だった。
求導女は、周りを散らかしてしまったことを気に病む様子を見せつつも、
呆然とした表情で祭壇に横たわったままだった。
己の身に起こっている事態が理解できずにいるのかも知れない。
無理からぬことだと慶は思った。
実際、彼女をこんな目に合わせている慶自身にさえ、
何が起こっているのか判らない有様なのだから―。
「お前には罰が必要だ」
無機質な声で慶は言う。
「そうだ。お前はただの、求導師のしもべに過ぎないんだ……
今からそれを、その躰に思い知らせてやる」
慶は床に落ちた燭台を起こし、祭壇の下に並べて置くと蝋燭に火を点けた。
月明かりだけしかなかった暗い堂内が、頼りない灯りに照らされる。
「お赦しください……」
虚ろに天井を見上げたまま、求導女は呟いた。
慶は祭壇の真横に立つ。すると彼女は、緩慢な動作で首を傾けて彼を見た。
膜が掛かったように曖昧な眼差しには、
困惑と恐怖の表情が、先ほどよりもはっきりと浮かんでいる。
慶の背筋に戦慄が走った。
何故だろう? 今夜の慶は、求導女の笑顔より、恐怖や苦痛の表情の方に気をそそられがちだ。
――馬鹿な。僕は、八尾さんのことが好きなはずなのに……。
慶は己の嗜虐的な行いや、それに伴う気持ちの昂ぶりを否定する。
しかし、躰の方は正直だった。
たくし上げた裾の下から顔を出している陰茎の膨らみ方はますます物凄く、
硬直しきった茎に絡む血管の有様といい、“怒張”という言葉をそのままに体現している。
慶は、燭台を一つ持って求導女の肢体を照らした。
打たれた痕を残し、微かに腫れた頬から蒼ざめた乳房、
そして、黒く翳った股の合わせ目の辺りまで、小さな炎で舐めるように辿ってゆく。
燭台を傾け過ぎた所為だろうか?
蝋燭の先から融けた蝋がひと滴、大理石めいた内腿に零れ落ちた。
求導女が甲高い悲鳴を上げる。慶の胸に、蒼白い炎が点った。
「熱いか?」
慶はわざと燭台を傾け、更に二、三滴、柔らかな太腿に蝋を垂らす。
祭壇の赤い掛布の上で、求導女の肢体が苦しげにうねった。
「ふふ、暴れるなよ……大事な処を火傷しても知らないぞ」
慶は我知らず口の端が歪むのを感じていた―つまり、笑っているのだ。
「ああ……熱い……熱い!」
内腿に、下腹部に。求導女の柔肌に、熱した蝋を垂らし続ける。
遂に耐え切れなくなった求導女は、祭壇から転げ落ちた。
立ち上がろうとして―腰から崩れ落ちてしまう。
105:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:20:58 eLjj8+Vx
「あ……あ……」
「身体にも効いてきたか」
慶は、横座りのまま腰を躙らせて逃れようとする求導女の前に立ち塞がる。
「思ったより遅かったな……やはり本に載っていた用量では、少し足りなかったのか」
自分でもよく理解出来ない言葉を口にしながら、慶は求導女の眼の前に蝋燭の火をかざした。
「ひいっ」
聖なるともし火に怯える悪魔のように。
求導女は引き攣れた悲鳴を上げて慶を避け、床を這って逃げ惑う。
慶は低い笑い声を漏らしつつ、それを追った。
――まるで、鬼ごっこをしてるみたいだ。
木の長椅子の狭間を縫って逃げる白い尻を追う慶は、場違いに愉快な気分になっていた。
何故か求導女は腰が立たないらしく、こけつまろびつ、泥酔したような千鳥足なので、
追って捕らえるのに何ら苦労はない。
だが慶は、わざとのんびり歩いてそれを引き伸ばした。
追いつきそうになると、ベールの下の背中や尻たぶに蝋を垂らしてやる。
すると彼女はびくんと腰を跳ね上げ、ひいひいと息を漏らしながら逃げる速度を上げるのだ。
そうして堂内を徘徊するさなか、求導女の手が、最前列の長椅子の上で何かを捉えた。
「そいつに興味があるのか?」
求導女が手にしたもの。それは、一本のロープだった。
随分と使い込まれたもののようで、ロープというよりも殆ど荒縄に近い状態になっている。
慶はその毛羽立ったロープを求導女の手からひったくると、
びしりと扱いて、伸ばして見せた。
「これを使って貰いたい訳か? くくっ、いいだろう……。
もう少し後で使うつもりだったんだけどなあ……あんたが、どうしてもって言うんなら」
慶の言葉の意味をなんとなく察したのか、求導女は虚ろな眼を微かに見開く。
慶は笑った。
いったいこれから何が為されるのか。
不安と、密やかな期待に胸を焦がしつつ、慶の頬は勝手に笑顔を模っていた―。
「けい……求導師様……お赦し下さい……求導師様……」
求導女は、再び祭壇の上に身を投げ出していた。さっきとは違い、今度はうつ伏せの姿勢だ。
それも、ただうつ伏せているだけではない。
求導女の両腕は、頑丈なロープによって後ろ手に縛められていた。
腕を束ねて巻きついたロープは、首元を通って胸の方にも廻り、
乳房を捻ってきつく締め上げてもいる。
「本当は、股の方も縛ってやりたかったんだけどな」
一仕事を終え、両手を払いながら慶は言う。
「股座に縄を通すと使えなくなっちまうもんな……此処が」
慶は尻の谷間に指を差し挿れ、奥まった場所で息づいている陰門をぐりぐりといたぶった。
「はぁ……うっ」
「なんだ。少し濡れてるんじゃないのか? 縄で感じるのかこの淫売め」
淡々とした声音で責め立てながら、慶は求導女の膝に手を添え、バッと股を開かせた。
紅い洞穴の入口が、闇の中に現れる。
慶は燭台を傍に引き寄せ、曝け出された部分を凝視する。
もうすっかり見慣れた求導女の秘所であったが、
こうして蝋燭の幽し灯りにゆらゆらと浮かび上がる様は、また格別だと思った。
しかもこんな風に裸で縛り上げられた、憐れな姿態で―。
106:牧野慶/刈割/不入谷教会/1993年/22:38:46
07/11/09 02:22:16 eLjj8+Vx
慶の精神は、肉体の暴走に順応しつつあった。
さすがに愛しい求導女を淫売呼ばわりする冷徹さには、まだ馴染めていなかったが―。
これまで慶が思いつきもしなかったこのやり方に、慶は興味を覚え始めていたのだ。
祭壇の後ろに控えている岩窟のことも、すでにあまり気にならなくなっている。
――仕方ないんだ。だって、僕の意思ではどうすることもできないのだから……。
「ふうん。使い込んでる割には、綺麗な色してるじゃないか」
心に言い訳をする一方で、慶は祭壇の前に座り込み、求導女の性器を覗き込んでいた。
「女の躰って、本当に判らないもんだ。
子供を産んだ女でも、ピンク色で小陰唇も小さい、妙に可愛いアソコをしている場合があるし、
そうかと思えば、処女のガキの癖に乳首もアソコも焦げたように真っ黒な奴もいるし」
そんなことを喋りながら、慶は見ているだけでは飽き足らず、
求導女の陰部に指先を伸ばしていた。
広がった陰唇の中の膣口を広げ、突っつき、ずぶりと人差し指を根元まで突っ込むと、
くちゃくちゃ音を立てて掻き廻す。
「あ……んっ」
求導女の尻がぴくっと震え、陰門の上に座する小さな肛門が、磯巾着のようにきゅっと窄まる。
「ふふ……」
慶はヒクつく肛門の膨らみを見て微笑むと、挿れる指に中指も足して、
いっそう激しい抜き挿しを始めた。
それは、ふだん慶がするのよりずっと激しい―ほとんど暴力的ですらある動作であった。
――こんなにして……膣に傷でもつかなければいいが。
危惧する慶の眼の前で、求導女の陰部は見る見る内に紅く色づいてゆく。
膣内部の熱と潤滑さも増してきた―と、思う間もなく膣口から、
白濁した淫液がどばっと溢れ出した。
「はあぁん……あは……あはあぁん……」
求導女は背筋を反らし、ねっとりと咽喉に絡みつくような声で喘ぎ出す。
腰から下を、前後左右にくねらせて―
割れた尻肉の中心部で、会陰と、薔薇色の肛門が、物欲しそうにもぐもぐと収縮した。
「気持ちいいのか? こうか? くっく、じゃあ……これはどうだ?」
慶は親指で陰核を弾いた。
硬く膨らんだ肉豆に強い刺激を受けて、求導女は甲高く嘶いた。
そして膣の縁肉で、二本の指をぎゅうぎゅう締め付け出した。
――オーガズムの前兆だ。
慶は、今しも達してしまいそうになっている求導女の女の部分に、熱の篭った視線を向けた。
ところが。そこまでした処で慶の指は、求導女の膣からぬるりと抜かれてしまった。
「あ……ああぁ」
性器の快楽を中断されて、求導女は切ない声を漏らす。
「どうした? もっと欲しいのか?」
慶は大陰唇から腿の付け根にまで飛び散ったよがり汁を指で掬い、
肛門の皺襞に塗りつけながら聞いた。
「……ほ……しい……」
「何だって? もっとちゃんと言ってみろ」
「欲、しい……欲しいです……求導師……様……お、願、い……」
求導女の懇願の言葉を、慶はわくわくしながら聞いていた。
もう気の毒に思ったり、物怖じするような気持ちも湧かない。
次々に発せられる嗜虐的な台詞も、
もはや自分の意志で言っているような錯覚を起こし始めていた。
「続けて欲しいか。だったら……鍵の在り処を教えろ」