07/08/26 00:43:02 c81gWwOj
保守のため、アベカテ投下します
エロなしですまそ
カテリーナは執務室で毎日のように送られてくる請求書に目を通しつつ、
海より深いため息をついた。
「カテリーナ様、新レシピを試して見たのですが、お茶になさいますか?」
カテリーナの憂鬱を悟り、良いタイミングでケイトが休憩を促す。
「そうね、お願いしようかしら。」
「もちろん今回のも自信作ですわ!では、少々お待ち下さいませ。」
ここのところ、体調が思わしくない。もともと病弱な体だったか、過労に加えて
心労も祟り、食欲も落ち、痩せ細っていく一方だった。
自分は何時まで生きられるのだろう、幼少の頃に思い描いていた決意は
実行できるのだろうかと、疲れていると、つい弱気な思いが頭を駆け巡る。
これではいけないと、気分転換のために窓を開けようと、目をやると
丁度、アベルが建物の中に入っていくところが見えた。
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ケイトの新作紅茶を美味しく飲み、良い気分転換になったわと、ケイトに
礼を言い、さて、執務の続きを、と思ったところに誰かがカテリーナの
執務室のドアをノックした。
コンコン
「失礼します。カテリーナさん、お仕事中ですか?」
声の主はアベルだった。
入ってきたら自分の執務室で、仕事以外何をするのかしら?と嫌味の一つでも
言ってやろうかしらと思ったが、あまりにおとな気ないと、思いとどまり、
アベルに「お入りなさい。」と声をかけた。
「お仕事中すみません、カテリーナさん。実はお願いがありまして…。」
入ってきた途端に申し訳なさそうにカテリーナを見つめるアベルに、
また、いつもの前借りかしらと思ったが、アベルの口から出た言葉に
死ぬ程驚かされた。
「えー、あのー、えー、…カテリーナさん!キスしましょう!」
「…………神父アベル。貴方はいつから起きたまま寝言を言うように
なったのかしら?それとも昨日、何か悪いものでも食べて?」
アベルの大胆不敵な発言に一瞬、思考が停止し、意識が遠のいた。
ふざけているのかとアベルを見やると、発言した本人は至って真剣そのものだ。
「あのですね、カテリーナさん。私は至って真剣です。
実は、朝配っていたフリーペーパーの誕生日占いの私の誕生日の所を
見ますとですね、なんと今日がラッキーデーで、更にラッキーにする行動が
【好きな人とキスをする】だったんですよ!」
「………。」
声もなく、ただアベルを見つめるカテリーナ。ここは上司として厳粛な態度で
臨んだ方が良いのか、それとも自分の気持ちに正直になった方が良いのか、
その二つの感情の狭間で、カテリーナの気持ちは荒海の木の葉のごとく、
揺れ動いていた。
「…カテリーナさん?」
小首を傾げ、捨て犬のような目でカテリーナを見つめるアベル。
「……ぷっ。ふふふっ…」
カテリーナはアベルに悪いなと思いつつも、思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、まったく、貴方って人は…。長年付き合ってきたけど、未だ
掴めないわね、貴方って人が。」
カテリーナは椅子からそっと立ちあがり、アベルに近づき、すいこまれそうな
彼の冬の湖色の瞳を見上げ、【Yes】の代わりにアベルの手を取り、自分の頬に
押し当てた。
それを合図に、アベルはカテリーナのあごを軽く押し上げ、優しく口付けた。
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アベルとの甘く熱いキスに、このまま時間が止まってしまえば良いのにと、
蕩けるような思いにとらわれたカテリーナだった。