撲殺天使ドクロちゃんエロパロスレッド5(゚∀゚)at EROPARO
撲殺天使ドクロちゃんエロパロスレッド5(゚∀゚) - 暇つぶし2ch1:名無しさん@ピンキー
07/06/04 11:46:55 dUFj3W3z
―これは、ドクロちゃんたちの、愛と友情と血みどろの物語。

おかゆまさき著の電波系ギャグ小説、
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪ な、撲殺天使ドクロちゃんのエロパロスレです。
おかゆまさき氏の作品である、びんかんサラリーマンや撲殺教師ドクロ先生なども、こちらへどうぞ。

【ドクロ先生とのおやくそく】
・SS投稿が無いときの雑談など、利用方法はなんでもOK。
・感想は、書き手さんの糧であり、明日への活力になります。できれば、SSには感想を書いてあげましょう。
・煽り、荒らしは、華麗にスルー。
・接着、溶接には、すべからく木工用ボンドを使用すべし。
・速乾タイプ、普通、夏用、冬用、安全対応住宅用ボンドは、常に手元に置くべし。
・木工ボンドの素晴らしさを、世界に広げるべし。

過去スレ、関連スレは>>2あたり。

2:名無しさん@ピンキー
07/06/04 12:42:03 0ACxFqwz
美智子

3:名無しさん@ピンキー
07/06/04 16:45:02 rkRymOmb
>>1
乙!!

4:名無しさん@ピンキー
07/06/04 18:50:31 HzIApSRl
>>1
乙カリボルグ

5:名無しさん@ピンキー
07/06/04 18:55:42 sXqfaELY
誰か保管を頼む。


6:名無しさん@ピンキー
07/06/04 21:52:53 7EfWi6gR
新スレ建て乙

7:名無しさん@ピンキー
07/06/04 22:13:40 pkICsNFd
>>1

略してDS

8:名無しさん@ピンキー
07/06/05 01:57:22 x5/T2DF9
(前スレ)
撲殺天使ドクロちゃんエロパロスレッド4(゚∀゚)
スレリンク(eroparo板)

(保管庫)
2chエロパロ板SS保管庫
URLリンク(red.ribbon.to)



9:名無しさん@ピンキー
07/06/05 23:16:41 BNOCiow4
初代スレ
スレリンク(eroparo板)

2代目スレ
スレリンク(eroparo板)

3代目スレ
スレリンク(eroparo板)

ライトノベル板(本スレ)
スレリンク(magazin板)
本スレには、関連スレがいっぱい貼ってあるんで、そこから飛んでくださいませ。

メディアワークス公式
URLリンク(www.mediaworks.co.jp)

アニメ公式
URLリンク(www.bin-kan.com)


10:名無しさん@ピンキー
07/06/07 00:18:22 xq3oMQxw
誰も来ないとはどういうことかね

11:名無しさん@ピンキー
07/06/07 20:32:08 tBUQ76BA
エロなしでもおk?
なら書けるかも。

12:名無しさん@ピンキー
07/06/07 20:38:40 BYyhUWIa
おk、書いてくれ

13:名無しさん@ピンキー
07/06/07 20:58:47 UlhQf26J
エロくなくとも萌えられりゃおk

14:名無しさん@ピンキー
07/06/07 22:50:49 tBUQ76BA
題名【ドクロちゃん】
こんにちは。
草壁桜です。

近頃、ドクロちゃんに撲殺される回数が多い気がしてなりません。今日の朝も…

「今日の朝ご飯はお姉さまの好きな赤いウインナーですよ」

「わーい、パクパク」

「ドクロちゃん、そんなに急がなくても…」
「あ!桜君、そのウインナーいらないの?」

「いるよ。食べるよ。って!なんで僕の分を食べてるの!?おかしいよ!
ねぇ?ドクロちゃん、人の物は勝手に盗っちゃいけないって教わらなかった?!しかもドクロちゃん、まだドクロちゃんの分のウインナー残ってるよね?」
「桜君は心がちっちゃいなー。そんなんじゃ立派な大人になれないよ」

僕だって大好物では、ないですが赤いウインナーは好きです。
なので僕はドクロちゃんのお皿に手を伸ばしその上に乗っているウインナーを僕の口に、ほうりこみました。

「あれぇ…桜クン?どうして僕のウインナーを食べているのかな?」

ドクロちゃんだって、僕のを食べたじゃないか! あぁ…なんで?なんでエスカリボルグを?間違ってないよね?僕は間違ってなよね? ねぇザクロちゃん…?え?何、その目は
まって…まって…ドクロちゃん!謝る謝るかグボベァ

好評なら続きを書くが…
駄文だな。

15:名無しさん@ピンキー
07/06/08 01:09:43 tMd3btCX
心意気は認めるが、まあ、アレだ。

16:名無しさん@ピンキー
07/06/08 21:13:07 M7atyiaK
僕の中で何かが変わりました。
あの日から僕はドクロちゃんのことを好きなってしまったのです。
静希ちゃんのことは…好きでした。
1日10回以上は静希ちゃんのことを考えていました。※ひとり交換日記
※(僕→静希ちゃん【になりきった僕】→僕→【静希ちゃんになった僕】
を中学1年の頃から続けてきたのです。
でも僕はドクロちゃんを好きになってしまった。
―そう、あの日から。



17:名無しさん@ピンキー
07/06/09 03:20:26 ux4bQOJW
ドクロちゃんと静希ちゃんの心がいれかわったあの日から

18:名無しさん@ピンキー
07/06/09 14:44:53 yFLrtbWY
>>17
何も変わっとらん…!w

19:名無しさん@ピンキー
07/06/09 17:57:37 D5lAFANP
いきなりだけど、ドクロちゃんの人気下がってるってホント?

20:名無しさん@ピンキー
07/06/09 18:08:17 jXFimFf5
いままでドクロちゃんのこと、あまり好きではなかった。
サバトちゃんが好きだったが9巻を読んでドクロちゃんを好きになりました。

21:名無しさん@ピンキー
07/06/09 23:24:55 ux4bQOJW
俺的には
ドクロちゃん>(嫁の壁)>南さん>田辺さん>サバトちゃん>ザクロちゃん>静希ちゃん>ベノムちゃん
って感じだな。
もとからドクロちゃんスキーだが、9巻でさらに愛が深まったのは間違いない。
「撲殺されるのにいいの?」とか言ってるやつはドクロちゃんのこと全く分かってない。

22:名無しさん@ピンキー
07/06/11 01:08:03 +XRVH0Tt
>>21
つまりもまえはドMだな

23:名無しさん@ピンキー
07/06/11 22:44:14 /vJnfmyn
保守

24:名無しさん@ピンキー
07/06/12 03:38:31 Duimnh/d
エロ入れるかは未定だが、今ドクロ×桜の純愛SS書いてる。
もしかしたら投下するかも。

25:名無しさん@ピンキー
07/06/12 07:44:16 SF1QSnTE
期待して待ってる。
エロパロ板とはいえ別にエロ無しでもおkだからがんがれ。

26:名無しさん@ピンキー
07/06/12 22:50:08 sEwR+D16
>>24
エロく無くてもパロければおk

27:名無しさん@ピンキー
07/06/13 17:34:37 mWiUoloI
照れ屋で寂しがり屋のドクロちゃんが出てくるなら、濡れは何でもおk
エロなくてもおk……けど原作ぐらいのお色気はいれてくれ。

28:ハァハァ
07/06/13 17:37:40 TdPjaX0/
私とチャットHしませんか??

29:ハァハァ
07/06/13 17:38:50 TdPjaX0/
いないの~??



30:名無しさん@ピンキー
07/06/13 22:53:56 jRJ1sc7+
>>29
市ね

31:名無しさん@ピンキー
07/06/13 23:29:26 E2/V6k1k
無論エロいに越したことはないが、エロくないても全くおk

32:24
07/06/13 23:38:39 /a94/CZi
>>27
分かった。参考になるから希望とか言ってくれると助かる。
もちろんうpしたあとも思う存分批判してくれると次回に続くかもしれないし。
今大学生なんだが、某陸の孤島と呼ばれる大学のヲタク系サークルに所属している…(って何か特定されそうで怖いな…)
んだが、その会誌に載せるかもしれんから、割とマジメに書く。つもり。
SSとか書くの初めてだけど、書き始めは快調。
何か長い文章になってスマン。

33:名無しさん@ピンキー
07/06/13 23:44:19 sepRVddg
ハンバーグ責めかそれともおはぎ責めか…

34:名無しさん@ピンキー
07/06/14 18:48:53 7oFfwg3t
マックフルーリー責めで

35:名無しさん@ピンキー
07/06/18 00:38:50 7vSO1GDO
>>19
まあ、南さんとザクロちゃんが2巻以降人気を伸ばしているから相対的にそう見えるかも知れん
でも俺は社会科のテストのネタでドクロちゃん嫌いになったがな

36:名無しさん@ピンキー
07/06/18 20:13:47 VcE0xFoZ
ふつーに馬鹿だよなぁ
あと、ライトノベル作品はほとんどが
キャラ設定を馬鹿や頭良いってにするには、学校の成績だよな

37:名無しさん@ピンキー
07/06/19 01:46:21 jkdjKOY4
>>35
何巻の話?

38:名無しさん@ピンキー
07/06/19 10:52:00 kWJGSdjc
このスレも結構前からあるけど、いまだにザクロちゃん×ドクロちゃん出てないな…
羞恥心丸出しのドクロちゃんを、冷静で淡々とした口調のザクロちゃんがエッケルザクスで責めたてる。
っていうやつ、誰か書いてくれ。……濡れタオルだし、ドクロちゃんも気持ちいいと思うんだ……

39:名無しさん@ピンキー
07/06/19 20:17:54 Gt2/Axvq
>>35-36
ドクロちゃんの魅力は、ああやって自分がやりたいことを何のためらいもなくやっちゃうとこだと思う。
それがあってこそ、ドクロちゃんの自分に素直な性格が引き立っわけだし。
それに桜くんに怒られたらちゃんと反省するし、根はいい子。
いい意味でも悪い意味でも放っておけないタイプ。

とドクロちゃんを擁護する意見を言ってみる。

40:名無しさん@ピンキー
07/06/20 19:53:32 Bv8IksOp
>>39
反省どころか逆切れの方が多いと思うんだが。
ドクロちゃんを表す言葉は「理不尽」ぐらいしか思いつかん。

41:名無しさん@ピンキー
07/06/20 20:29:12 68lDWyCl
だがそれがいい

42:名無しさん@ピンキー
07/06/21 18:52:53 PQyr/ZGI
>>37
何か忘れたけど、ドクロちゃんが桜君のテストと自分のテストと摩り替えて
ドクロちゃんが90点ぐらいで
桜君が10点以下だったという話。
ドクロちゃんは最悪だな。

しかし9巻を読んで良い子だなと思った。

43:名無しさん@ピンキー
07/06/21 21:18:54 ZVYVMZUu
>>42
テストすり替えるくらいいいじゃん。
可愛いげがあって。
それよりかは桜くんの右腕をトイレに流したときのが酷いと思ったけど。

44:名無しさん@ピンキー
07/06/22 20:29:18 2iirsW1A
よく考えりゃ2-Aでレベル高い女子は皆危険な状態に・・・・・

45:名無しさん@ピンキー
07/06/22 22:13:46 YRukP+EC
つまり本編でも南さんが黒く!?

46:名無しさん@ピンキー
07/06/22 23:19:46 fX+2FzUz
ヤンデレ静希ちゃんが出るのか!?

47:名無しさん@ピンキー
07/06/23 14:51:11 Fd3Srx6S
あんだけ欲望丸出しの2-A男子が何も手を出さないところに、パワーバランスを感じる・・・・・・

48:名無しさん@ピンキー
07/06/23 22:40:54 iVAaLgPh
「ドクロッポイ」って同人読んだら気分悪くなった。
好きなキャラが凌辱されると心が痛いなあ…

49:名無しさん@ピンキー
07/06/24 04:14:35 rV42KAgV
>>48
禿同
俺はそれを見て、ドクロちゃんにハマった。
しかしハマった後に見るとショックだな。何気に絵が上手いからな。


50:名無しさん@ピンキー
07/06/26 18:52:27 s7l3TO7J
クラスメイト陵辱モノも悪くないと思う今日この頃

51:名無しさん@ピンキー
07/06/26 19:46:20 VVTKR+XI
神よ降臨してくれ。

52:名無しさん@ピンキー
07/06/26 23:26:07 pYtdZTGf
かみはばらばらになった

53:名無しさん@ピンキー
07/06/27 08:07:48 A0bPn0TY
ぴぴるぴるぴるぴるるぴ~

54:名無しさん@ピンキー
07/06/27 13:14:45 6BOnrvcD
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~

55:名無しさん@ピンキー
07/06/27 20:49:44 mg2ZErkU
>>48
同人読んだ事ない

56:5-24
07/06/30 02:00:40 z9aVfjbj
>>24です。
書いてるSSが終盤に差し掛かりました。
もうすぐ完成。
今まで職人さんが書いてきたモノとはかなり毛色の違ったモノになると思う。
SS初体験ってこともあり、かなり色んなことが挑戦だ…
結局エロは入れることにしました。
んで、何が辛いって、実経験がないのが辛いです^^;
おっぱいってどんな感触がするの?!
女性器ってどんな構造なの?!それって気持ちいいの?!
誰か教えてー。

エロゲの濡れ場などを参考にしつつ頑張ってみる。

57:名無しさん@ピンキー
07/06/30 21:35:27 fNouoWz7
>実経験がないのが辛いです^^;

>>56よ、風俗という選択肢は無かったのか…
ちくしょう、目から>>57汁がでるぜ(つД`)

58:名無しさん@ピンキー
07/07/01 20:50:57 UCXnac5s
田辺さんモノって需要あり?

59:名無しさん@ピンキー
07/07/01 21:24:27 BN9QtEg0
>>58
ないわけがなかろう。
このスレでは割と上位。

60:名無しさん@ピンキー
07/07/02 02:23:14 6q6mjLeV
>>56

ガンガレ
桜総受けSSってないかn(ウワナニスルヤメr

61:名無しさん@ピンキー
07/07/02 17:16:35 5D6PKMES
濡れはドクロちゃんを全力で(ry

62:名無しさん@ピンキー
07/07/02 19:50:17 dsufp5+j
田辺さんて黒そうで結構純情っぽい

63:名無しさん@ピンキー
07/07/02 21:11:52 6q6mjLeV
ドクロちゃんもいいけど個人的には
桜×静希かな
桜×南×静希が一番すきだけど
>>61 ドクロちゃんよりザクロちゃ(Ry

64:名無しさん@ピンキー
07/07/03 20:24:34 5JDPkCsj
>>63
田辺さんは駄目か?

65:名無しさん@ピンキー
07/07/03 23:07:02 nOtbuO4W
>>64
田辺さんモノは、楽屋裏で田辺さんが嫉妬した静希ちゃんと南さんに地獄以上の恐怖を味わされることになるから…。
あと、宮本に手を出すと小野さんが(ry

66:5-24
07/07/03 23:10:20 pxLVNvU7
>>24です。今から投下します。

67:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 1/17
07/07/03 23:12:18 pxLVNvU7
〈カナカナカナカナ…〉

ひぐらしのなく夕暮れ。僕は一人の天使の少女を待っていました。
「ドクロちゃん遅いなー」
ここは僕が育った埼玉県からは遠い町の、家から通えない、ちょっと遠くの大学の広場のベンチ。
この大学はその広大な敷地と自然がとても多いのが特徴です。
まだ六月の後半だというのに、セミたちは早くも活動を開始しました。

ふと、気付けば、『光の桜くん』騒動から6年以上が経過していました。
あの頃がとても懐かしく感じられます。
あれから色々なことがありましたが、天使たちによる襲撃は、『光の桜くん』以降はこれといって大きなものはありませんでした。
今の僕がいるのも、あの天使のおかげ…と言えるのでしょうか。
それはサダカではありません。

しばらくすると、目の前を流れる人工の小川にかかった橋を渡ってくる、金色の輪っかを頭上に浮かべた少女が、その小さいながらも出ているところは出ている身体を揺らしながら、スキップでこっちにやってきました。
「あ、桜くん」
ドクロちゃんと並んで歩いていた長髪で黒髪な毒舌少女が僕に気付きました。
「こんにちは。南さん。そしてドクロちゃんキミってヤツは…」
「あれ?桜くん?もしかして待っててくれたの?」
「もーっ!ドクロちゃんが朝いっしょに帰ろうって言ったんでしょ?僕は6限に講義が終わるドクロちゃんを5限からずっと待ってるんですよ?!」
「もーっ!桜くんは寂しがり屋なんだからっ!えへへっ!いいよっ!いっしょに帰ろう?」
くそ、何でこの天使とはマトモに会話が成立しねぇんだ。
「あれ?南さんはドクロちゃんと講義いっしょだったの?」
そういえば南さんを見るのは久しぶりかもしれません。
南さんと西田とは、たまたま同じ大学なのです。
中学・高校時代、吹奏楽部で英語を得意とする彼女はてっきり、音楽系か外国語系の大学に入学するものと思っていた僕は、大学に入ってからいっしょだと気付いたときには少々びっくりしたものです。
「そんなわけないでしょう。生物と社会がいっしょの講義なんてそうないわ。中央図書館に本を返却しに行ったらドクロちゃんがいたから、いっしょに帰ろうって誘ったの」
「そうだったんだ…」

68:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 2/17
07/07/03 23:16:13 pxLVNvU7
この天使は、講義を途中で抜け出して図書館にいたようです。
「ドクロちゃん、図書館なんかで何してたの?」
「本読んでたのー!」
「何の?」
「『おとこのことおんなのこ からだの…」
「ストッォォォップ!言わなくていいから!大きな声で!なんか通行人の皆さんの動きが一瞬止まっちゃったでしょ?!
って大学図書館にもあったんだその本?!なんでその本ばっか読むのさドクロちゃんは!」
「でもボク生物学部だよ?」
「何か生々しいから言わないでよそういうことは!僕も生物学部なだけ余計にイヤだよ!」
考えてみれば、僕は得意の生物を活かしてこの学部に入ったのですが、それを天使たちが容認してくれたのは意外でした。
ドクロちゃんだってそうです。
てっきり彼女は僕をこの道から逸らすために僕といっしょにいるものと思っていましたが。
ていうか受験勉強が割とスムーズに行えたこと自体が奇跡です。
そりゃあちょっかいをかけてくるドクロちゃんという障害を乗り越えるための、聞くも涙、語るも涙の努力かいあって、ということを補足しておかねばなりませんが。
ドクロちゃんが何で入学できたか?
それは僕の口からは言うまいて(歯の神経とかの話になるので)
「じゃあ、わたしは宿舎に帰るから」
「あれ?南さん宿舎なんだ。僕たちはアパートなんだ」
「もしかして、いっしょに住んでるの?」
「え…あー…」
「うんっ!そうだよー」
僕が返答に窮しているとアホ天使があっさり言いやがりました。
「!(南さん)」
「あー!もうそういうこと軽々しく言わないで!何かあらぬ誤解を生みそうで怖いよ!特に南さんの場合は!
…ってアレ?南さん?どうしたのドクロちゃんのうしろに隠れて…え?何でドクロちゃんはエスカリボルグを構えてるの?
何かいつにも増して理不尽な展開じゃない?やめてやめて!そんなフルスイングなんかしたら僕ぅがっ!〈ズガァァ!〉」

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪

このとき初めて気付いたのですが、ここのところ、ドクロちゃんは撲殺する回数がめっきり減っていたのでした。

これは、天使の少女と人間の少年が繰り広げる愛の血みどろ物語の、その幸せな結末の物語。

   ★

「ただいまーっ!」
ドクロちゃんが何故か僕らの住まいであるアパートの一室の玄関を反復横跳びします。

69:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 3/17
07/07/03 23:17:44 pxLVNvU7
そんな天使の少女を見ていると、僕も思わず笑みがこぼれます。
「もう。大学生になってもドクロちゃんは全然変わらないね。大学楽しい?」
「うんっ!とっても楽しいよっ!…ねえねえそれより桜くぅん」
ドクロちゃんが甘い声を発します。
これはいつものアレをしろとの合図。
「今日は一緒に帰って来たのに何だか変だけど…うーん…しょうがないなあ」
そう言って僕が腰をかがめると、ドクロちゃんが飛びついてきて、軽く唇を重ねてきました。
〈ちゅっ〉
「んーっ。おかえりなさいのちゅー!えへへぇ」
そう言ってドクロちゃんは〈にへーっ〉と締まりのない笑顔をすると、僕の持っていたスーパーのレジ袋を持ってキッチンに駆けて行きました。
やっぱりキスをしてあげると機嫌が良くなるようです。

え?超展開すぎて話について行けない?
すいません。別にドクロちゃんと恋人に至るまでの過程をすっとばしたとかそういうのではないのです。
ていうかドクロちゃんとは一応同棲してはいますが、恋人でも何でもありません。
どちらかと言えば保護者と子供の関係と言ったほうが正しい気がします。
弁解するわけではありませんが、過去にこんなことがありまして…

【回想シーンスタート】
それは僕らが高校に入学して間もないある朝のことでした。
「はああああああああああああああああああああああーッ」
「もーッ、最近桜くんタメ息ばっかりー。ちっちゃい女の子に相手にされなくてもボクがいるんだからそんなに落ち込まなくてもいいのにー」
「突っ込むのもメンドクサイけど…違うからね…ていうか『タメ息』って書き方すると何だか鬱度が2割ほど増すね…どうでもいいけど…」
このときの僕は、静希ちゃんがアメリカに留学してしまい、さらには告白も叶わず、まさに人生のどん底を味わっている真っ最中。
これから僕は何を楽しみに生きていけば…
「桜くん?大丈夫?どこか痛いの?」
ドクロちゃんが悲しそうな顔で僕の顔を心配そうに覗きこみます。
ドクロちゃんと言えども、女の子に心配をかけるわけにはいきません。
そこまで落ちぶれてしまっては、草壁桜の名が廃るというものです。
「ありがとうドクロちゃん。でも、大丈夫だから」
僕が精一杯の笑みを返すと、天使の少女は本当に嬉しそうに
「よかったー。ボク、桜くんがもうボクと遊んでくれなくなると思うと夜も眠れなくて…」
ドクロちゃんがよそ見をしながら横断歩道を渡ろうとしたとき、僕の目に飛び込んできたのは、赤信号と天使の少女に突っ込んでくるダンプカー。

70:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 4/17
07/07/03 23:19:28 pxLVNvU7
「なっ…!」
〈ぷあああん!〉
「っ…ドクロちゃんっ!」
とっさに僕はドクロちゃんの体を僕のほうに抱き寄せました。
〈がきん!〉
〈ごおおおぅっ!〉
僕とドクロちゃんの前歯がかちあったのとダンプカーがドクロちゃんの後ろ髪をかすって通り過ぎたのはほぼ同時。
「ぃ痛アアアアッ!HAGAアアアッ!…ってドクロちゃん大丈夫?!怪我とかしてない?!」
「うん・・・桜く…ん」
何故かドクロちゃんの頬は赤くて
「ドクロちゃんっ!高校生タル者信号くらいキチンと見なさってんんん?!」
気づくと再びドクロちゃんの潤んだ瞳が目の前にあってッ!?
「んっ…ちゅ…こえきもひいい…」
「んっ、ちょっ、ろふろひゃんッ?!にゃにおしゅりゅー!」
【回想シーンおわり】

あれ以来ドクロちゃんはキスの気持ちよさを覚えてしまって、ことあるごとに僕にキスしてくるのです…
僕も「こういうことは軽々しい気持ちでしちゃイケナイんだよ?」と何度か諭したのですが、あの頃の僕の精神状態も相成り、結局「僕以外の人にしちゃダメ」なのと「人前でしない」のを条件に、(エスカリボルグで脅迫され)許してしまい、今にいたるというわけなのです。
まあキスが気持ちいのは否定しませんが。
計らずもアレが僕のファーストキスだったのですが(何も言うな)、何というか脳を溶かされるような感じがしまして、体がジンジン熱くなってくる感じなのです。
まさに麻薬のような気持ちよさです。
こうやって人は快楽に身を委ねていくのですね。
何というコトでしょう。

   ★

〈トゥルルルルルルルー〉
「桜くーん!南さんから電話ー」
「ん?南さんから?何だろ?」
僕が未だ残るドクロちゃんとのキスの感触に集中力を削られながらもレポート作成に精を出していたとき、ドクロちゃんが受話器を持って〈ペタペタ〉と裸足で走ってやって来ました。
「もしもし。僕だけど。南さんどうしたの?…え?明日?」
話し中だというのに、パンティにぶかぶかのTシャツを着ただけのドクロちゃんが背中によじ登ってくるものですから胸が背中に押し当てられてロクに会話に集中出来ません。
「う…うん…分かった」

71:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 5/17
07/07/03 23:21:19 pxLVNvU7
〈ガチャリ〉と僕が受話器を置くと
「南さん何だって?」
ドクロちゃんが興味ありげに聞いてきました。
「ちょっと学校関係で連絡がね。それでちょっと明日は出かけるから、お留守番頼めるかな?」
「えー!ヤダー!明日は桜くんと『二人ごせろトーナメント』をやろうと思ってたのにー!」
「そのお誘いは謹んで辞退させてもらうよ。あ、この前借りたビデオ、ドクロちゃんまだ見てないよね?あれでも見てれば?」
「うーん」
「あ、それよりそろそろ夕飯の支度しなきゃ。ドクロちゃん手伝って?」
「うんっ!(冷蔵庫を覗きこみながら)マヨネーズと冷やし木工ボンドとびんかんサラリーマンソーセージで何か一品作れるかなー?」
「それはもはや料理ではない何かだよ…」
大学生になって、少し嘘が上手くなったような気がします。

   ★

「桜くん遅い」
会うなり彼女はそう言いました。
「ご、ごめん…朝からドクロちゃんが駄々こねて…結局ごせろ一回付き合わされて…」
朝から全力疾走で僕は息も絶え絶えですよ。
「会うなりそんな話だなんて無粋ね」
「え?」
「何でもない。行きましょう」
僕は昨日電話をくれた南さんから「いっしょに出かけよう」というお誘いを受けました。
いわゆるデートとのお誘いというやつです。
ドクロちゃんとどこかに遊びに行くのを除けば、女のコと二人きりのおでかけは静希ちゃんと映画を観に行って以来です。
しかもアレは結局ドクロちゃんに邪魔されましたし。
今回も邪魔に現れる可能性は無きにしもアラズ。
ですが、何だかんだで彼女ももう大学生。空気を読むことも大分覚えました。そう信じます。
それよりも僕は南さんが僕をデートに誘ったその意図が未だに掴めません。
今までの態度からして、どちらかと言えば嫌われているとばかり思っていましたが。
「南さん、今日は誘ってくれてとても嬉しいんだけど…あの…こんなこと聞くのも無粋かもしれないけど、どうして僕を?」
「桜くん。切符。七百円」
「え、あ、ハイ」
僕が切符を買うのを見届けると、相変わらずのポーカーフェイスで〈スタスタ〉と歩いて行ってしまうものですから
「あ、ちょっ、まっ」
僕が小走りで後を追うハメに。
一応男というのもあって、情けない気分になります。
「…桜くんは、嫌なの?」
早足で歩いていた南さんが唐突に口を開きました。
「…え?」
「わたしとデートするのは、嫌?」

72:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 6/17
07/07/03 23:25:16 pxLVNvU7
「え…あ、いや、デートかどうかはともかく、南さんとは最近会ってなかったし。特に大学に入ってからは・・・だから、久しぶりに会えたから、いっしょに出かけられるのは、嫌じゃないよ。いや、むしろ嬉しいな。あ、嬉しい、です」
南さんは目を丸くして驚いたような表情を見せると
「ふふっ」
〈くしゃっ〉と顔を綻ばせて、小さく笑いました。
久しぶりということもあるのでしょうが、彼女のこんな表情は本当に珍しいと思います。
南さんもやはり女の子、というか、一般基準からすればかなりの美人に類するのでしょうが、笑った顔は素直に可愛いと思いました。
「桜くんはやっぱり面白いわね。変わらない。でも、嘘でもわたしとのデート、嬉しいって言うくらいの気遣いはないのかしら」
「あ、ご、ごめん…」
そういう南さんも、やっぱり昔のまんまで。
何だか中学の頃を思い出して切なくなりました。
「それで、今日はどこに行くの?」
考えてみればデートコースは聞かされていません。
というかこういうのは普通男がエスコートするものなのでしょうか?
早くもマイナスポイントでショックでかいです。
しっかりしなさい!草壁桜!もう大学生でしょ!
「とりあえず東京に行きましょうか。見たい展示会があるの」
南さんが主導権を握るようで安心したような不安が増幅するような。
「そう言えば南さん、絵とか好きなんだよね?」
「よく知ってるわね」
「昔誰かに聞いた気がしてね。あ、それに中学のとき、みんなで美術館行ったじゃん。あの時、南さん、少し嬉しそうにしてたから」
「そうかしら。本当はわたしは桜くんと二人で行きたかったんだけど」
「え?」
ちょうどその時、ホームに電車が入ってきて、彼女の言ったことが聞き取れませんでした。

電車に乗ると、当然隣同士の席に腰を落ち着かせるわけですが、ドクロちゃん以外の女性とこんなに近い距離にいるのは本当に久しぶりな気がします。
ていうかさっきから何かにつけてドクロちゃんと関連づけてしまいます・・・
ドクロちゃん以外の女性との付き合いがないせいでしょうか。
そういえばドクロちゃん、ちゃんと家で大人しくしてるかなあ…
少し心配です。
「桜くん?」
「へ?あ、ごめん。何?」
そんなことを考えていたら、少しぼーっとしてしまっていたようです。
「ドクロちゃんと暮らしてるって聞いたけど、何か変なことしてないでしょうね」
ちょうど似たようなコトを考えていただけに、心を読まれたようでドキッとしますよ?!
彼女は読心術でも持っているのでしょうか。

73:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 7/17
07/07/03 23:28:02 pxLVNvU7
「いや全然。何だかんだでドクロちゃんガード固いからねー…っていや、別にやましい気持ちはありまセンヨ?!」
「あら意外。スケベな桜くんがドクロちゃんといっしょに暮らして何もしないなんてね。相当溜まってるんじゃない?体に悪いわよ?」
「公衆の面前でスゴイこと言いますねアナタは…」

   ★

そんな下らないことを喋りつつも、目的地の美術館に到着し、「この絵、三回見ると死ぬらしいわよ」とか言いながら南さんは僕に強制的に美術館を三周させたり、
クレヨンで描かれた『ブラックホール』なる絵を発見して僕は内心背筋が寒くなったりしつつ午前中を過ごし、南さんチョイスのオシャレなカフェテラスでお昼を頂くことにしました。
「南さん楽しそうだね。こう言っちゃなんだけど、南さんって中学のときはもっと寡黙なイメージがあったケド」
「あら、わたしは今も昔も寡黙なままよ」
そう言って南さんは少し頬を赤らめると
「わたしはね、桜くんとのデートだから、楽しいの」
「ぇ」
何でしょう。
何か今胸がキュンキュンしましたよ?!
「そ、そうなの?そう言えば、まだ聞いてなかったけど、どうして南さんは今日、僕を…?」
「女の子が男の子をデートに誘う理由って、そんなに沢山あるかしら。…少なくともわたしは、遊びで恋愛はしたくないから。真剣よ」
「え、それはどういう…」
「だから、わたしが桜くんを好きってコトよ」
南さんが上目づかいで僕の反応を窺がっています。
…………というか全くの予想外の緊急ニュースですよ?!
一応南さんとは長い付き合いですが、全くそんな素振りは…いや僕が鈍感だっただけか?!
僕に静希ちゃんという思い人がいたために盲点だったのかも知れません。
何にせよこの場の男としてどんな行動をとればいいのでしょう?!
ここまで0.2秒間の思考です。
「桜くん、わたし、このあとはここらへんで買い物したいんだけど。普段東京なんて来ないし…付き合ってくれる?」
「あ、も、もちろん。むしろ喜んでッ?!」
ていうか僕、女の子からマトモに告白されたの初めてだよ?!きゃーどーしよー
落ち着け。落ち着いて素数を数え
「桜くん?おいて行くわよ?」
「あ、スイマセン」

   ★

そんなこんなで時間は過ぎ、駅に着いたときには、日も落ちかけていました。
「今日は本当にありがとう。桜くん。付き合ってくれて。楽しかったわ」
「ううん。こっちこそ、誘ってくれてありがとう。また何かあったら連絡してよ。今度はドクロちゃんもいっしょに。じゃあ、南さんは宿舎だったよね?」

74:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 8/17
07/07/03 23:29:57 pxLVNvU7
そう言って僕が南さんとは違う方向に行こうとしたとき
「待って」
南さんが呼び止めました。
「え?何?」
「わたし、桜くんのコト、好きって言ったわよね」
そういえば、そうでした。
…正直僕は迷っていました。
南さんのことは嫌いではありません。
むしろ好きかもしれません。
中学のときから彼女とは知りあいですが、彼女のクールビューティな容姿は男子から絶大な人気を誇っています。
いつもは寡黙に振る舞っていますが、今日見せたような女のコらしい一面も持っていたりします。
でも、安易に彼女のキモチを受け止めてしまっていいのでしょうか。
「桜くんは、わたしのコト、どう思ってるの?」
「南さんのコトは、もちろん嫌いじゃないよ。でも…」
二人が沈黙してから、ずいぶん長い時間が経ったように感じました。
駅から出てくる通行人に少し邪魔そうな顔をされます。
「はあ…」
南さんが、重いため息をつきました。
「聞くまでもなかったかしらね。…桜くん、今日わたしといてあんまり楽しそうじゃなかったし」
「そんなことはないよ!今日は南さんといっしょで、楽しかった」
今日、僕はつまんなそうな顔をしていたのでしょうか?
今日、南さんといて楽しかったのは事実です。
「それでも、もしかしたら、って思ってね」
南さんが言葉を続けます。
「本当は、昨日会ったとき、分かってたの。でも、こうでもしないと納得できなくて。ごめんね、桜くん、迷惑だったよね?」
南さんが泣きそうな顔をします。
「南さん…」
一瞬気まずい沈黙が流れたあと、

―僕は納得できないよ―

どこからともなく、声がしました。
気がつくと、僕たちのすぐそばに、西田が薄笑いを浮かべながら、佇んでいました。
「に、西田くん…」
南さんが驚いた声を発します。
全く気配がしませんでした。いつの間に近寄ったのでしょうか。
「女性は執念深いって聞いたケド、南さんの彼への愛は、そんなモノだったの?たったの六年で薄らいでしまうモノだったの?」
「…違う。六年でも、百年でも、わたしが桜くんを好きであることに変わりはない。でも、桜くんがわたしのこと、見てくれないんだから、しょうがないじゃない…」

75:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 9/17
07/07/03 23:33:03 pxLVNvU7
最後のほうはほとんど涙声でした。
突然の西田の登場にとまどいつつも、僕は南さんに何と声をかけていいものやら困ってしまいました。
「僕は諦めない。今一度言うよ。桜くん、好きだ」
「だから何度も言うように西田は男でしょ?!僕もこう見えて男だよ!日本では男同志の結婚は認められていませんっ!」
「それは法律上での話だよ。全く下らないな。『愛する』という行為に男も女も関係ないよ」
「本気なのか…」
「もちろん。ずっと言ってきたと思うけど」
どうやら西田の気持ちは本物のようです。
そうでないとしたら大した演技です。
どうでもいいけど一度に二人の男女に告白されて、僕の頭は大パニックですよ!
あああ、何か南さんは道に座り込んで泣き出しちゃうし!
誰かフォローを入れてー。
「だから、ドクロちゃんは邪魔だったんだよ」
「え?」
ふいに西田が声を発しました。
聞き捨てならないことを聞いたような気がします。
不穏な空気が、流れ始めます。
「知ってると思うけど、天使がこの世界に存在を繋ぎ止めておくための大きな要素の一つとして、魔法のアイテムの使用ってのがあるんだけどね?」
「えええ?!知らないよそんな新設定は?!ダメだよ原作者に無断でそういう設定追加したら!」
「試しに“あんまり撲殺すると、いつか桜くんが復活出来なくなっちゃうよ?”って言ってみたんだ。ドクロちゃん、こういうコトに関しては、素直だからね。彼女、最近撲殺しないでしょ?」
「なっ…!」
そういえば最近撲殺の回数が目に見えて落ちている気はしていました。
…どうして、そんなことを。
「で、でもそれなら『天使の憂鬱』が発症するんじゃ…?それに『ルルティエ温泉』もあるし…!」
西田はその女の子みたいな整った美少年顔で満面の笑みを作ると
「『天使の憂鬱』っていうのは、存在消滅の本当に初期状態らしいね。『魔法のアイテムの使用停止』は、人間で言えば呼吸を止めるのと同じようなものなんだってよ。
消滅の進行度合いが速すぎて、『天使の憂鬱』は通り越しちゃうみたい。『ルルティエ温泉』の効能も、ほぼ気休め程度のものなんだって。
辛かっただろうね。魔法のアイテムってのは、ほとんど無意識に発動するものらしいから、制御は難しいんだ」
「お、おい…何で…お前…そんなこと…」
「何で知ってるのか?そんなこと、魔法のアイテムのエキスパートのザン・・・」
「そんなことを言ってるんじゃない!」
力の限り叫びました。
西田がわざとらしく驚いた表情を作ります。
「どうしてドクロちゃんにそんなことをするのかって聞いてんだよ!どういうつもりだ!西田!」
一気にまくし立てて、ハッとします。
「まさか、また洗脳されてるのか…?!ヒルドスレイフが・・・」

76:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 10/17
07/07/03 23:35:15 pxLVNvU7
すると西田は肩をすくめて
「残念ながら、僕はいたって正気だよ。桜くん」
西田は口の端を三日月のように持ち上げると
「ねぇ、桜くん」
目尻を怪しく歪ませて
「僕のコト、見て…」
何だコレ。吐き気がする。
「そうそう。僕の計算からして『タイムリミット』は今日の六時ジャスト。今は五分過ぎだね」
「くっ…!」
それを聞いて、僕は西田を殴りたい衝動を抑えつつも、あらん限りの力で走り出しました。

そして駅前には二人の男女が、同じ男を愛した二人が、残されました。
「どうしてそんなことを…」
「どうしてそんなことを?愚問だね南さん。桜くんが好きだからに決まってるじゃないか」

   ★

「はあっ、はあっ…」
走りながら、僕は考えていました。
「っ…どうしてあのアホ天使はっ、…はっ…、迷惑ばっかりかけるんだっ…」
あの天使は、地球は自分中心に回ってて、何でも自分の思い通りになると思っているし、僕を誘惑するし、コトあるごとに撲殺するし、迷惑ばっかりかけるし反省もしないし。
「ドコもいいとこなんてないじゃないかっ…」
なのに、何で今、僕はこんな苦しい思いをしながら走っているのでしょうか。
何だかずいぶん前にも似たようなことがあった気がします。
あんな天使、いなくなってせいせいするのに。
どうして…ッ!

どうして今日、南さんをフったのか。
あんな魅力的な女性は、なかなかいないでしょう。
大学生にもなって、彼女いない歴=年齢ですよ。くそっ!
静希ちゃんにまだ未練があるからでしょうか。
…多分、違う。
思い出してみます。
今日僕は一日何を考えていたか。

―ドクロちゃん、僕がいなくて寂しくないかな―

そんなことばかり考えていました。
いつの間にか、ドクロちゃんのことが頭から離れなくなってました。

―ボクね、大学にも、桜くんと行きたいの―

―ねえねえ桜くん?―

―もー桜くーんっ―

―えへへっ、さーくらくんっ―


77:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 11/17
07/07/03 23:36:43 pxLVNvU7
ドクロちゃんと、ずっといっしょにいたい。
他に、理由なんかない。
「うっ…くぅっ…はっう」
気づくと、僕は走りながら泣いてました。
何て情けない。
自分の気持ちに初めて気がつきました。
嫌だ。ドクロちゃんがいなくなるのは、嫌だ。

僕はアパートの階段を三段飛ばしで一気に駆け上り、自分の部屋のドアを勢いよく開け放ちました。
「ドクロちゃんっ!」

―おかえりーっ!どうしたの桜くん?そんなに息を切らして―

ですが、期待していた声は聞こえてきませんでした。
「ドクロちゃん?」
その家は、気味が悪いくらい静かで
「ドクロちゃん、ドコ?」
冷蔵庫の低い機械音だけが、冷たく響き渡り
「帰ったよ?ドクロちゃん?…………あ、そっか。いないフリでしょ?もうドクロちゃんはー。ははは。今日はずっと留守番させて、僕が悪かったよ。参った。降参。分かったからもう出てきて?ドクロちゃん」
…何でこの家、こんなに静かなんだよ。
「あ!おみやげがないから怒ってるんでしょ?実はどら焼き買ってきたんだよ!ホラ…」
どうして、いないの?
返事を、してよ。
いなくてもいいときだっているのくらいなのに。
「ねえ。ドクロちゃん。ねえ。ねえってばああああああああああああああああ!」

   ★

「・・・桜・・・くん?」
天使の少女はどこかも分からない、色のない海を漂流していました。
彼女はエスカリボルグの使用頻度を抑えてから、自分の存在が急激に薄れていくのを感じていました。
でも、それもいいとも思いました。
自分は天使なのに、天使による神域戒厳会議、ルルティエの一員なのに、神様の言うことを無視して、六年間も好き放題やってこれたんだから、十分すぎるほど楽しい人生だったじゃないか、と。
「…桜くん…」
草壁桜。彼のことを思うと胸が温かくなりました。
そのまま、溶けてなくなりそうなほどに。
「桜くん…怒ってるかな…ボク、ちゃんとお留守番、できなかった…えへへ…桜くんの声…もう一度…聞きたかったな…」
薄らいでいく意識の中で、彼の温かい声を聞いた気がしました。

   ★

「議長!」
「どうしたザクロ」
ここは、人間が犯すことのできない領域、天界。

78:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 12/17
07/07/03 23:39:47 pxLVNvU7
ここは、人間が犯すことのできない領域、天界。
彼女、喪服に身を包んだ漆黒の長髪の天使、バベル議長が治める機関、ルルティエ。
「お姉さまの存在が…ッ!」
「分かっておる」
「ルルティエの、仕業なんですか?草壁桜の抹殺に、お姉さまが邪魔だから…?」
「今回の件には我々は一切関与しておらぬ。『パンドラの言葉』は、しばらくはドクロと草壁桜を共に行動させ、様子を見よ、と命令を下しているからの。
…ふむ…恋慕、というやつじゃろうな。人間とは複雑怪奇な生き物じゃのう…」
「ど、どうすれば…」
「人間であれ、天使であれ、『存在する』ということは『認識される』ということじゃ。それは『思われる』と言い換えても良い。
ドクロに最も近しい人間が、どれほどドクロのことを『思って』おるのか。『言霊』じゃよ。『言葉』には、『力』が宿る。『力』はいかなる世の法則をも、覆そう」
「お姉さまは、このまま消えるのですか…?」
「それは草壁桜しだいじゃろうな」

   ★

もう一度だけ、奇跡を起こして下さい。
まだドクロちゃんといっしょにいたい。
まだドクロちゃんに言いたいことが沢山あるんだ。
彼女ともっと話したい。
彼女の笑う顔をもっと見たい。
どうか、どうか、もう一度、夢を、見させて下さい。

ドクロちゃんに、会いたい。

僕が育った埼玉県からは遠い町の、家から通えない、ちょっと遠くの大学。
その広大な敷地と自然がとても多いのが特徴です。
いつか、天使の少女が、少年と二人で通いたいと言ったそんな大學の近くに建つ、あるアパートのある一室に、細い光の筋が幾本、空から降りて来ました。
そして、ふいに白い羽が無数に舞い、揺れ、光に溶け、

―少女の姿を、象りました―

そんな光景に、僕は膝をついて泣いていました。
「天使だ…」

ある日を境に、平凡だった僕の生活は一変しました。
机の中から飛び出してきたのは、頭の上に金色のわっかを載せた、自分の妄想から抜け出したような、とびっきり可愛い、女の子。

彼女の名は―

「ドクロちゃん!」

「ぅ…桜くん…?」
「ドクロちゃん!ドクロちゃん!どこ行ってたの!心配しましたよ!?」
全力で駆け寄って、天使の少女を優しく抱きあげます。

79:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 13/17
07/07/03 23:41:14 pxLVNvU7
「どうしてボク、ここに?」
「何言ってるの!ここがドクロちゃんと僕のお家でしょ?!」
「でも、西田くんが、これ以上桜くん撲殺したらダメだって…ボク、必死に我慢して…」
ドクロちゃんが瞳を潤ませます。
「いい!好きなだけ撲殺して下さい!もういい加減撲殺は慣れたよ!」
「でも、撲殺したら桜くんに嫌われるって…」
「そんなわけないでしょ!もしそんなことでいちいち嫌ってたら、もうとっくに愛想つかして未来に強制送還してますよ!」
「え?」
「ドクロちゃんのことが好きだから、許せるんだよ」
僕の本心を、言いました。
「え…桜くん…今…何て…もう一回、言って…」
天使の少女は涙目です

「ドクロちゃんのことが、大スキ」

ハッキリと言ってあげました。すると、その可愛らしい顔が、〈くしゃっ〉と崩れて
「うっ…うっうっうっ…うーっうっうっ」
ドクロちゃんが、嗚咽を漏らして泣き出しました。
「もう、何泣いてるのドクロちゃん。こんな恥ずかしいこと言わせといて、ちゃんとドクロちゃんの気持ちも、教えてよ」
「桜くんが…ひっく…好き…っく…いつも言ってるのにーっ!!…今日だって、今日だってずっと一人で寂しかったんだからねっ!桜くんのバカーっ!」
そしてドクロちゃんが取り出したトゲつきバット・エスカリボルグの先端が音壁を破壊し、〈ぃぱぁん!〉と気持ちのいい音とともに、僕の身体は血煙りと化します。
「あっ!桜くん!」
びっくりした天使がその無骨な神具で舞を踊ります。
すると優しい光が部屋中に満ちて

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪

魔法の擬音でアイシャルリターンした僕は、ドクロちゃんのその小さな体を抱きしめ
「ドクロちゃん…もう、どこにも行かないで…」
「うんっ!桜くんも、だよっ!」
そして自然にお互いの唇を重ねます。
「んっ…んんーっ…ちゅっ…」
これがディープキスというやつなのでしょうか。
お互いの舌が、貪るように口内を蹂躙します。
「ん…ちゅぱ…んっ…ひゃくらくん…ひゅき…ん…」
「んっ…んっ…ぷはっ」
お互いが唇を離すと、銀色の橋が二人の口を結びました。
「さ、桜くん…ボク、何だかヘンな気分に…」
ドクロちゃんが真赤になってモジモジしています。
「うん…僕もそんな感じ…」
少しの間の沈黙があって、

80:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 14/17
07/07/03 23:42:39 pxLVNvU7
「ボクね、ずっと、初めては桜くんがいいって、思ってて、ね」
「う、うん…」
「桜くんは、ボクじゃ、イヤ?」
「イヤなわけ、ないじゃん。ドクロちゃん・・・っ!」
「んっ…」
再び、天使の少女の唇を奪います。
いっつも僕を誘惑するようなことをしていますが、ドクロちゃんもきっとこういうコトは経験はないでしょう。
不思議と、がっつくような気持ちは起こりませんでした。
キスを続行しながらも、服の上から、そっとドクロちゃんの膨らみにに手をおいてみます。
「んっ!?…あっ…」
ドクロちゃんが可愛らしい反応を示し、堅く目を閉じます。
そっと指先に力を入れてみると、〈ふにゅっ〉と埋もれてしまいます。
さすがは八十五センチというだけはあります。
何だか柔らかいんですけど、弾力といいますか、少し抵抗がありまして、全く未知の感触です。
まさにミクロコスモス。
「あっ…はっ…やぁん」
何だかドクロちゃんが気持ちよさそうな声を上げます。
胸を揉まれると気持ちいいんでしょうか。
「ドクロちゃん、コレ、気持ちいいの?」
耳元で囁いて聞いてみます。
「うん、うんっ。あっ、あっ…桜くんもっと…」
ドクロちゃんが気持ちよさそうにしてると達成感というか満足感というか充足感というか、何だかとても嬉しい気持ちになります。
そういうわけで僕はもう少し激しくドクロちゃんの双丘(丘というか山だけど)をこねくり回してみます。
「あっ、はっ、これ気持ちいい…んんっ」
何だかドクロちゃんばっかり気持ち良くてもズルイ気がするので唇を奪って彼女の口内を蹂躙します。

81:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 15/17
07/07/03 23:44:44 pxLVNvU7
やっぱりキスは気持ちいいです。
特にディープは半端ないです。思考がフッとびそうです。
「んんーっ…ぷはっ、桜くん、ちょっと待って…」
「ん?何?どうしたのドクロちゃん」
キスを途中で止められて僕はちょっとがっかりです。
「胸がね、服に擦れてちょっと痛いの。服、脱ぐから、ちょっと待ってて?」
「あ、ご、ごめん」
「桜くんも、服、脱いで?」
「う、うん…どうせなら部屋に行こうか…よく考えたらここダイニングだし…」
「それじゃあお部屋にゴー!」
ドクロちゃんが急に元気な声を出します。
「ド、ドクロちゃん恥ずかしいよ…」
「もーっ!男のコが恥ずかしがってどうするのーっ?ボクがリードするからはやくはやくぅ」
「いや、流石にこういうときぐらいは僕にリードさせて…」

部屋に入ると、六月といえど、少しムッとした空気が。
「じゃ、じゃあ脱ぐね?桜くんも…」
「うん…」
二人がぎこちなく服を脱ぎ始めます。
心臓がバクバクいってます。
ドクロちゃんが愛しい、というのもあるのですが、女のコの目の前で服を脱ぐのがこんなに恥ずかしいとは。


そして僕とドクロちゃんは生まれたままの姿になりました。
何だかドクロちゃんは驚いたような顔をして、興味ありげにジロジロと僕を(主に下半身付近を)見ていますが、僕はすっかり目を奪われていました。
美しい。
素直にそう思います。
ドクロちゃんのスタイルがズバ抜けていいというのもありますが、女性の肌がこうもきれいなものとは知りませんでした。
古来より裸婦が美の象徴として描かれるのも納得がいきました。
いっぽう僕は、絵に描かれるような筋骨隆々とした肉体ではありませんでした。タハー
「ドクロちゃん…きれい…」
「あんまり見ないでよぅ…恥ずかしいよ桜くぅん…」
そんな恥ずかしがるドクロちゃんがただひたすらに愛しくて、僕はゆっくり彼女に歩み寄ると
「んっ」
キスをしました。
そして、そのまま二人で倒れこむようにベッドに寝転び、ドクロちゃんの下半身の秘裂に手をそっと触れました。
「んひゃっ?!」
ドクロちゃんが素っ頓狂な声をあげます。
「さ、桜くん…」
ドクロちゃんは涙目です。

82:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 16/17
07/07/03 23:46:07 pxLVNvU7
「ドクロちゃん、僕のも触ってみて…」
ドクロちゃんが恐る恐る、といった様子で僕の怒張に手を触れます。
「あ…何か脈打ってるー…ちょっと怖いー…」
ドクロちゃんが不安そうな顔をします。
「大丈夫だよ、ドクロちゃん。んっ…」
ドクロちゃんの頭を撫でながら、キスをすると、少し安心したような顔します。
僕はドクロちゃんの秘裂と胸を愛撫しながら、
「大丈夫?」
と聞いてみます。
「うん、大丈夫、だと思う…」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ど、どうするの?」
「ボクに言われてもわかんないよーっ」
「うーん…ドクロちゃんはどうしたいの?」
「じゃあボクが上―っ!」
「ええええ?!そうなの?!普通ハジメは僕が…」
「ボクが上なのーっ!」
「ぃぃぃぃぃぃぃい痛い痛いイタイイタイイタイ!分かった分かった!分かったから全裸で寝技は勘弁して下さい!」

僕がしぶしぶベッドの上に仰向けになると、ドクロちゃんが僕の上に仁王立ちします。
「何だかなあ…」
初めてがこんなんでいいんでしょうか。
でもこのアングルはドクロちゃんのアレがバッチリ見えるので、考えようによってはこっちがリードすることも可能です。
しかし改めて見ると、やっぱりドクロちゃんはきれいです。
何だか興奮してきました。
心臓が再び高鳴ります。
「じゃ、じゃあ、行くよ?」
ドクロちゃんが覚悟の眼差しで頬を上気させつつ、ゆっくり腰を降ろしてきます。
〈つぷ〉と怒張の先端が秘裂に埋もれました。
「ぃぎっ」
ドクロちゃんの表情に苦痛が見られます。
「ド、ドクロちゃん?!大丈夫?!」
「う、うん…ちょっとびっくりしただけ…んっ…」
〈ずぶずぶ〉と怒張が埋まって行きます。
ドクロちゃんは歯を食いしばって耐えているようです。
やっぱり初めてでこんな体位はおかしいのでしょうか。
ドクロちゃんに手が届かないので安心させてあげることもできません。
「んんんーっ」というドクロちゃんの声とともに僕とドクロちゃんは完全に一つになりました。
荒い呼吸をするドクロちゃんがぐったりと僕の胸に倒れこんできました。
「ドクロちゃん大丈夫?よく頑張ったね」
ドクロちゃんの頭を優しく撫でてあげます。
「えへへぇ…疲れたぁ…」
「ドクロちゃん…好きだよ…愛してる…」

83:テイルズ オブ ドクロちゃん ―幸せな結末― 17/17
07/07/03 23:47:20 pxLVNvU7
「うん…ボクも。嬉しい…んっ」
その天使の可愛い顔を引きよせて、精一杯の愛を込めて、キスをしました。

   ★

……大きな空と、銀色に光る一面のフェンス。
「楽しみだなぁ」
ふと、そんなことを呟いていました。
私は水上静希。
中学の卒業式の日、私はそのままアメリカへと渡りました。
「間もなく、本機は着陸態勢に入ります。シートベルトをお締めになって―」
あれからずいぶん経ちましたが、今日は中学のときの友達が空港に会いに来てくれるそうです。
「桜くん、か…」
一人の少年が、いました。
草壁桜。
彼はどうしてるだろうか。
彼のコトを、私はどう思っていたのだろうか。
彼は普通の男のコと違って、とても輝いて見えました。
それは、きっとあの天使の少女が来てから。
「やっぱり、天使なんだよね。ドクロちゃんは」
あの少女のことを思い出して、思わず微笑ましい気持ちになりました。

飛行機と空港を繋ぐ長いエプロンを歩き、待ちあいスペースに出て、みんなの姿を探します。
「あっ!静希ちゃんだーっ!」
クリクリのロリータボイスが響き渡ります。
「みんな。久しぶり(静希ちゃん)」
「水上さん、久しぶりね(南さん)」
「水上、久しぶりだなー(宮本)」
「し、静希ちゃん…お帰りなさい…(ちえりちゃん)」

「静希ちゃん。お帰り」

「あっ……」
桜くん、と言おうとして、一瞬、言葉がつまります。
「もう。みんな彼氏が出来てるなんてひどいよー。あ、南さんはまだかな?」
「え?宮本の野郎と小野さんは中学のときはもうカップルじゃなかったっけ?ドクロちゃんが僕にくっついてるのはいつものことだと思うケド…」
「分かるわよ。何か二人とも、初々しいカンジ。ズルイんだー」
桜くんとドクロちゃんが二人そろって真赤になります。
そのまま見つめあってしまいます。
「何かつまんないの。私もこの夏新しい出会いないかな?南さん誰か紹介してよー」
「あ、それよりもし疲れてなかったら、このあと行こうと思ってるトコがあるんだけど…」
歩きながらふと、みんなの姿を見渡してみます。
みんな変わってないなぁ…
桜くんはやっぱり面白い。
ドクロちゃんは相変わらず元気みたい。
宮本くんとちえりちゃんは、そういえば私と桜くんが間を取り持ったんだっけ。すっかり理想のカップルになっちゃってる。
南さんは、昔から思ってたけど、堂々としてて、とっても綺麗な女性だ。これからもっと女性らしさに磨きがかかるのかな。
でも、一つだけ気付いたことがある。
みんな、歩き出してる。

「もーっ!人前でイチャつくのはダメって言ったでしょーっ!少し自重しなさいドクロちゃんっ!」
「えー?でもー」
静希ちゃんが帰ってきたこの夏休み、いや、これからの人生、僕たちは、色々なことをして色々なことを想うのでしょう。
そんな時間を、この天使の少女とずっといっしょに過ごせたらいいな。そんなことを、思いました。

84:5-24
07/07/03 23:52:10 pxLVNvU7
以上です。自分の中にあるドクロちゃんの愛を吐き出してみました。
要望があれば続編書きます。多分恋人同士になったドクロちゃんと桜くんの夏休みになると思います。
不評だったら…修行してきます。
何せ初めてなので至らないとこだらけでしょうけど、感想あればよろしくお願いします。

85:名無しさん@ピンキー
07/07/04 00:39:25 2W9rCVuO
コーヒー噴いたwww

86:名無しさん@ピンキー
07/07/04 01:14:33 2P/9nWbe
GJ!

87:名無しさん@ピンキー
07/07/04 01:40:36 c+xGU1jS
コーヒーどころか血涙g(

それでも俺はザクロちゃんのほうg(

>>64
田辺さんは結構レアだからGJ(

88:名無しさん@ピンキー
07/07/04 01:55:17 MWOX1r09
GJ!そう俺の中の全米が叫んだ。

89:名無しさん@ピンキー
07/07/04 12:08:00 dVAqfCWK
西田が出てきたときは思わず吹いてしまったw
だけどうん、いいよ。GJ!
元がライトノベルなだけに、文章を書くにも気を遣うと思うけど
続編も期待!


90:5-24
07/07/04 12:37:53 +s6JM+v+
西田はホモなだけに、僕の中では●ヴァのカヲルくんのイメージがあったんで、悪役になっていただきました^^;
西田好きな方、もしいたらごめんなさい。

あと自分で気になったのは、フられた南さんへのフォローがないままエピローグにも出演していただいてるあたりでしょうか…

基本的にドクロちゃんスキーによるドクロちゃんスキーのためのSSなので、他のキャラ好きの方は楽しめないかも…

悪いとこでもいいので感想いただけると嬉しいです。

91:名無しさん@ピンキー
07/07/04 18:19:19 oTHZD3ib
やばいな・・・超久しぶりにGJだ・・・西田黒い・・・だがまたそれがいい・・・

これで田辺さん書いてくr(yr

92:名無しさん@ピンキー
07/07/05 13:27:05 gL4kxduh
あまりにも早く、挿入にいってしまったと思う。

ドクロちゃんはせっかく巨乳キャラなんだから、
そこを生かした胸責めををもっと入れるべき。

まあ、読み専が色々勝手なこといってしまったが、スルーしてくれておk

93:名無しさん@ピンキー
07/07/05 15:02:24 iiw6lPSP
なんか、それぞれのキャラのよさが出ている気がした。
そのノリで、南さん書いてくれないものだろうか

94:名無しさん@ピンキー
07/07/05 22:22:34 b48hBdGh
田辺さん派の同志結構いるな・・・・・コレを期にどなたか・・・・・・

95:名無しさん@ピンキー
07/07/07 17:19:44 4ErIfRcO
幸せ桜ドクGJ。
読後感がいいね。

同じくドクロスキーなんで触発されて私も書いてみたくなったよ。
読後感悪い感じのを。

96:名無しさん@ピンキー
07/07/07 23:42:09 0oaALwES
>>95
ドクロちゃんです ~谷川流の場合・完全版~
を期待してもいい、ということですか先生!?

97:名無しさん@ピンキー
07/07/08 13:43:49 Y/Qv0UYX
ドクロちゃんです ~谷川流の場合・完全版~
あれは途中で終わるのはおしい話だった…

98:5-24
07/07/09 16:21:27 /I+AC5Xh
恋人桜&ドクロの夏休みを書き始めた。
二回目ということもあって筆の進みが速いの何の。
今回は田辺さん&ザクロちゃんにも登場してもらおうと思ってる。

最近9巻の最後の
「ドクロちゃんが僕の前から姿を消してしまう三日前の物語」
って煽りが気になってしょうがない。
おかゆ先生はドクロちゃんそろそろ完結させるつもりなのかな。
ドクロちゃん終わったら俺は何を生きがいに生きていけば…

99:名無しさん@ピンキー
07/07/09 19:25:06 xolE50VH
ドクロちゃんが終わったら陸上少女静希ちゃんが始まり、
静希ちゃん視点で大切な愛しい幼なじみが、未来からやってきた泥棒猫に奪われていく様子が描かれる。
スピンオフとか本当に出ないかな。サバトちゃんや南さんで

100:名無しさん@ピンキー
07/07/09 20:48:34 FgGU58GA
>>98
田辺さんキタwもうその名前が出るだけで嬉かったりする俺は病気
期待してるッス!!

101:名無しさん@ピンキー
07/07/10 02:36:14 8ovigSMd
>>99
南さんスピンオフ=ぼくたちのみなみさん
では?

102:名無しさん@ピンキー
07/07/10 17:25:09 28Jfs356
>>101
もう南さんのスピンオフが出てるなんて!電撃読んでないから知らなかった。
もし、新刊に載らなさそうなら是非kwsk教えて下さい。
しかし、南さん4巻からすごい出世したなぁ…とりしもさんに気に入られると出番も増えるらしいし、挿し絵も結構多いし…
弓島さんや田辺さんの出番をもっと

103:名無しさん@ピンキー
07/07/10 23:06:39 8ovigSMd
>>102
電撃hpで連載してる南さんが主人公の四コマ漫画。
主に田辺さんにからかわれて照れた南さんが桜くんをイジメる。

前に掲載された「応答せよ!びんかんサラリーマン!」とか「ふたりはなめこじる」とかは単行本化の予定はないのだろうか。

104:名無しさん@ピンキー
07/07/11 08:05:50 W8zGd28Y
>>103
ありがとうございます。
しかし、桜くんは普通に格好良いな。ラノベにありがちな鈍感主人公でも桜くんなら全然違和感ない。

105:名無しさん@ピンキー
07/07/11 18:03:33 Qu5pHCn8
つーか、あの年でいじめられてるのに好意に気づけたら凄いw

106:名無しさん@ピンキー
07/07/11 23:35:30 5y82VGGW
桜くん「いぢめる?」

107:名無しさん@ピンキー
07/07/15 03:28:45 7tnqmO6r
やっぱ時代は南さんだな。

108:名無しさん@ピンキー
07/07/15 08:27:12 Q/kStqKd
今更だが9巻読了。
バベルちゃんの添い寝イラストで鼻血が止まらない……www

ナコトケブルで淫夢とか、バベルちゃんの肉布団とか、前スレでネタになってたのか気になる

109:名無しさん@ピンキー
07/07/16 18:14:09 Hz6X/FoA
>>108
前スレでは、ザンスにスレ止められたり、黒南さんの犠牲者が多発したり光の桜くんとか田辺さんの方がネタになってたと思う。

淫夢とかの発想はなかった、今考えると極上のネタだよ。

110:名無しさん@ピンキー
07/07/19 03:04:58 Lv03r3F8
ドクロちゃん、ザクロちゃん、サバトちゃん、静希ちゃん、南さん、弓島さん、(田辺さん、西田、バベルちゃん、ベノムちゃんetc、etc)
桜君は何気に凄いハーレム築いてるな。

111:名無しさん@ピンキー
07/07/19 03:13:18 TPtDr4Sd
>>110
その半数から被殺害経験有りというMハーレムだな

112:名無しさん@ピンキー
07/07/21 03:50:31 eMQr4TKf
ゲーム版ドクロちゃんおもすれー^^
好きなキャラ以外攻略する気が起きないのはデフォですか?

113:名無しさん@ピンキー
07/07/21 15:09:58 xw5pm5Hl
ゲームは恋愛感情があるかどうかわからないザクロちゃんが攻略できて、
恋愛感情があるとハッキリわかってる南さんが攻略できなかったのが疑問だった。

いや、ザクロちゃんは好きだけどね。

114:名無しさん@ピンキー
07/07/24 15:17:44 mvWzdOb0
ボイスのないキャラを攻略するのもどうかと

115:名無しさん@ピンキー
07/07/24 21:53:54 OoRkk/Ns
うん、やっぱりドクロちゃんでしょ。

星座占いもドクロちゃんだったし

116:名無しさん@ピンキー
07/07/27 00:04:58 /2+xvEtM
保守

117:名無しさん@ピンキー
07/07/27 03:48:00 WxunGR18
ゲームスレがないのでここで言うけど
ゲーム版ドクロのドクロちゃんEDに感動した。
「桜くんもずっとボクといっしょにいてくれる?」
に萌え死にそうになった。

あとボーナスルートの12歳の世界ワロタw
12歳のドクロちゃん&ザクロちゃん&南さん&田辺さん可愛いw

118:名無しさん@ピンキー
07/07/27 11:12:18 UDD8UD//
>>117
そのゲームやってないからよく知らんが、それじゃザクロちゃん成長しちゃってるな。

119:名無しさん@ピンキー
07/07/27 12:14:50 WxunGR18
>>118
外見年齢が12歳

120:名無しさん@ピンキー
07/07/28 15:56:08 gVKrDWZ/
文才あまりなくて、経験も未熟な俺だけど……

なんか過疎ってるし、俺自身ドクロちゃん好きだからしばらく書き続けてみるよ。

ネット繋がってなくて、投下出来るチャンス少ないけど……

121:名無しさん@ピンキー
07/07/28 23:06:09 EUCcCK7K
>>120
どなた?

122:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 13:44:03 NncTXPwJ
>>121
昔そこそこ盛りがってた頃にちまちま投下してた者です

田辺さんのリクが多いのでそっちの路線で書いています。

123:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 19:41:16 EEjEXyLP
新世界の神となるんだ

124:名無しさん@ピンキー
07/07/30 00:03:22 ECNUnKt50
『そっちの路線』に一票

125:名無しさん@ピンキー
07/07/30 22:57:28 JRsvb2Te
”そっち”というと…
田辺さん男体化→アッー!

126:名無しさん@ピンキー
07/07/31 11:55:38 j91Ilz5t
投下します。
時間がなくてエロ無しの段階ですが。

どうも、最近唐突に現れた「光の桜くん」に存在を脅かされるも、クラスメートとの「絆」により、存在を取り戻したナイス☆ガイ、草壁桜です。
今言ったとおり、僕は「光の桜くん」に存在を抹消寸前にまで追い込まれました。―しかし。
僕とクラスメートとの間に蓄積されていた「友情」という名の絆。そして、僕をギリギリで現世に繋ぎとめた、ドクロちゃんとの「愛情」という名の絆。
これにより、僕は「光の桜くん」を打ち倒し、日々に復帰することができたのです。
この事件により、僕はみんなとの絆を再確認することになりました(でも何故か目から鼻水が出るのは単行本9巻参照)。
いつも僕を撲殺していた、理不尽な天使ドクロちゃんも。僕の周りで最も常識人且つ、僕が想いを寄せてる静希ちゃんも。
なんだかんだいっていつも僕の見方な宮本も。いつもクールで僕を虐げる南さんも。何を考えているか分からない田辺さんも。
挙げていればキリがありません。とにかく、僕は周囲と想像以上に強い絆で結ばれていたのです。
そして、そのことを改めて強く感じさせる出来事が勃発したのは、そう遠くもない一週間前。
僕の「絆」は、自分で想像していたよりも複雑で、見えない所で絡み合っているということを強く認識させられる出来事。
その日を境に、僕の平穏な日常は少しずつ狂っていくのでした。
―これは、明日を掴み取るために必死に手を伸ばし、やがて朽ちる物語。



127:名無しさん@ピンキー
07/07/31 11:57:26 j91Ilz5t

「光の桜くん」との死闘を終え日常に回帰してから、三日後の出来事。
三日前のことなどみんな忘れたように、各々話に華を咲かせている明るいクラスに、僕は挨拶をしながら入ります。
「おはよう!」
続いてドクロちゃんも、
「おはよう♪」
そういいながら自分の机へと向かいます。ドクロちゃんと隣の、結構居心地のいい席。
天使が邪魔してくるので、授業に集中などできませんが、それでも楽しい席です。
「日常とは、尊きモノ也」と思いながら席に座ると、話の輪から外れてこちらに近づいてくる一人の少女。
見間違える筈もありません。彼女なら200ヤード離れてたって認識できます。
何故なら、何故なら、彼女は僕の大好きな、静希ちゃんだからですッ!(ひゅーひゅー!熱いぞ!草壁桜ぁ!)
頭の中のもう一人の僕が囃し立てるなか、挨拶されて最も心地がよいとされる、自分から半径3m内に入ったその瞬間ッ!もう既に行動は終わっているんだッ!
「おはよう!静希ちゃん!」
決まったァッ!クリティカル!パーソナルスペースを尊重し、かつ親近感の得られる絶妙な距離かつ、相手の返しやすい距離!ナイス☆桜!
僕の華麗な挨拶が決まった静希ちゃんは案の上、笑顔で軽く右手を振りながら、
「ふふ。おはよう、桜くん」
いいぃー笑顔頂きましたァ!もうこれで今日一日は絶好調!朝の占いで11位で開運☆アドバイスが貰えなかったことなど頭の中から削除です。
どうでもいいことなど吹き飛ぶ彼女の笑顔。汚れが、汚れが落ちていくよぉ……。
しかし、いつまでもデレデレしてると天使に悟られます。朝の幸せタイムはコンマ1秒で済ませます。
「桜くん、体の調子は大丈夫?ほら、前あんなことがあったばかりだから。……私、桜くんが居なくなったら、生きていけない、から」
ああ、神様。僕はどうしてこんなに幸せなんでしょう。静希ちゃんに体の調子を心配して貰えるなんて……ッ!
しかも、3日前のことで。彼女は本当に優しいです。優しすぎます。
まあ、「……」からあとは僕の頭の中で静希ちゃんが恥ずかしくて言えない言葉を代弁してあげたものですが(てへっ☆)。
ふと、背後に気配。失念していました。僕としたことがクラスの空間認識を怠るなんて。速く、速く挨拶をッ!
「静希ちゃんには挨拶をして、私には無し?酷いのね、桜くん」
「あはははは!酷いなー、桜くんは!」
この声は、南さんと、田辺さん!唐突に接近してきては僕を打ちのめす毒舌コンビ!まずい、速く対応をッ!
「お、おはよう!二人とも。いい、天気だね!AHAHAHAHAHA!」
その瞬間。南さんが拳を振り上げ、そのまま下へ振り下ろすッ!

128:名無しさん@ピンキー
07/07/31 11:58:16 j91Ilz5t
僕は南さんの腕を傷つけないように配慮しつつ、自分のダメージを最低限に抑えること意識しながら、腕をクロスさせ十字受けの構えッ!
しかし、いつまでたっても僕の腕に衝撃は訪れません。油断して、ガードを緩めた瞬間。
<ズドンッ!!>
南さんの腕が机に叩きつけられます。僕、彼女に何かしたっけ……?
机の上からゆっくりと手をどかす南さん。手のあった場所には、一枚の紙。
<ビックンビックン>怯える僕を指差し、田辺さんはさぞ可笑しそうに、
「あはははは!何してるの?桜くん!」
そんな彼女と対照的に、凍りつくような表情で僕を睨みながら南さんは言います。
「……手紙。後で読んで」
……え?それだけ?
きょとんとした僕は、咄嗟に、
「え、あ、ああ!後で読んでおくよ!」
そう返します。
そのとき、僕は何で彼女はこんなことをするんだろうな、位の軽い疑問しか持っていませんでした。
だって、僕は知る由もないのです。静希ちゃんが普段見せないような表情で南さんを睨んでいることなど。
気まずい空気が流れていることなどまったく気付かない僕を、田辺さんが嘲笑します。
ですが、僕は彼女が嘲笑しているということにさえ気付かないのです。
そのとき。教室のスピーカーからチャイムが鳴ります。その音を合図に、皆は話を中断し、各々の席に戻ります。
教室が完全な沈黙に包まれるまで、僅か1秒。リバースエンドを使ってないのにこのタイムは非常に優秀です。
ドアががらがらと開き、先生が入ってきました。―また今日も日常が始まったんだな、とこの頃になってようやく思うのは何故でしょうか?

~そして、放課後~
最後の授業、「6限」を終え、学校の束縛から解放されました。
「桜くん、帰ろ!」
さっきまで熟睡していた天使が目を覚まし、無邪気に微笑みかけてきます。
「あ、うん。じゃあ、静希ちゃんを呼んで……ッ!?」
僕が静希ちゃんと一緒に帰宅しようと誘おうとした、その瞬間。
冷たく、黒い、殺気が僕を背後から貫きます。それは紛れもなく、「恐怖」。
後ろをみると、そこにいたのは……南さんッ!?
ありえません!僕は彼女に何もしてないのに、この殺気はありえません!何?僕が何?ホワッツ!?
必死に思考する僕。彼女とあったつい最近の接触記録を遡ります。すると、脳の電気回路はあるものにたどり着きます。
それは、
「そうだ、て、手紙……ッ!」
思い出した瞬間、「手紙のことを忘れてなんかいないよ?ほら、女の子から貰った手紙を人前で読むなんて紳士じゃないしね☆」という顔をして、何気なく手紙を読みます。
そこに書いてあったのは、シャーペンによる走り書き。内容は、
「放課後、可及的速ヤカニ体育館倉庫ヘ移動。後、待機。」

129:名無しさん@ピンキー
07/07/31 11:59:16 j91Ilz5t
僕が、深い深い眠りから目を覚まして最初に見たものは、
「知らない、天井だ……」
ここは何処だろう。まだ眠気のさめない脳で必死に考えます。
そうして気付いたのは、今僕はベッドにいるということ。しかも、知らない、誰かのベッド。
だんだん脳が覚醒してきて、いつもと匂いも違うということに気付きます。
―それは、嗅いでいると無理やり興奮させられるような、艶やかしい匂い。
僕は、焦りました。何故なら、いつの間にか知らない人のベッドで寝ていたということ。
そして、この匂い。普通のシャンプーとかの匂いなら問題ないのですが、明らかに変です。
呼吸をする度に、頭が朦朧とし、鼓動が高まり、それに、息子が……。
何故か以上に興奮している頭で必死に考えますが、まったく記憶の整理ができません。
確か僕は、南さんに体育館倉庫に呼ばれて、ドクロちゃんをうまく丸め込んで……
そうだ!ドクロちゃん!
いつまでも家に帰らないと、不審に思ったドクロちゃんはどんな行動を取るか。そう考えると、少し頭が冴えてきます。
とりあえず、状況を確認しないと。
そう思った僕は、まず布団から出……れませんでした。
「うわぁっ!?」
膝を曲げ、手で体を支えながら体を起こす。こんな簡単なことが出来ませんでした。
何故なら、右手は左手と、右足は左足と縛られていたからです。
「な、なに、これ……」
しかし。僕はうろたえませんでした。―そう。僕は、縄抜けのスキルを持っているッ!
両手両足の縄抜けなんて、初歩の初歩!異常な精神状態でも朝飯前です。
手を数回捻ると、縄の緩みが出てきます。その緩みから手を通して、片手完了。
片手の抜けた縛りなんて、何の意味もありません。手についてた縄をその辺に投げ、次は足の解除。
こちらも、手が使えれば楽勝です。同じ要領で……完了。
四肢の自由を得た僕は、ベッドから這い降ります。
僕は何故か、そこで違和感を覚えます。それは、
「あれ?ベッドから降りたのに、あの匂いが、まだ……」
そう。ベッドから降りたのに、まだあの匂いが続いているのです。速くこの部屋から脱出しないと……!

130:名無しさん@ピンキー
07/07/31 12:00:04 j91Ilz5t
部屋は、僕の部屋と同じ位の広さ。内装は、気取り過ぎないカジュアルでシンプル。
机の上に鏡やブラシなどが置いてあることから、女の子の部屋ではないかと予想されます。
速くここから出ようと、ドアノブに手をかけ、ドアを開きます。
ドアが45度位開いた所で、何かに詰まるような間隔。埃でも溜まっているんだろうか。
そう思い、僕は強く力を込めると、<ピンッ>と音が聞こえ、何かスプレーのようなものが散布されました。
それを僕は回避できる訳もなく、思い切り吸い込んでしまったその瞬間。
さっきから漂っていた不思議な匂いは、これのせいだったと気付きました。
恐らく、このスプレーのようなものから少しづつ漏れていたのだと思います。
そして、その匂いをモロに吸った僕は。平衡感覚を保ってられなくなり、思い切りぶっ倒れました。
倒れたときの音が下で反響しています。どうやらここは2階のようです。
僕の正常な思考は、そこで途切れました。それ以降の僕は、本能のままに生きる野獣とさして変わらない存在です。

~その頃の南さんと田辺さん~
「待ってて、お茶淹れてくるから」
南さんはそう言うと、キッチンの方へと消えていく。
私は、微妙に気まずい空気に萎縮しながら部屋に座る。私の後ろでは、覆面をした男達が直立している。
なんとなく邪魔だ。もう用は済んだし、日も沈む頃だ。帰らせてもいい。
「あ、もう皆は帰っていいよ。ご苦労様。また何かあったら頼むから、そのときは宜しく!」
私がそういうと、男達は肩の力を抜き、覆面を剥ぎながら玄関へと向かっていった。
あ、重要なことを忘れていた。彼を帰らせる前に、一仕事させなきゃ。
「あ、××××君は少し待って。最後に一仕事あるから」
名前を呼ばれた男が、一瞬で硬直し、周りの男達にもそれは一瞬伝染した。
しかしすぐに覆面を装着し、姿勢を正すと、
「何をすれば?」
私は部屋の電話を指差しながら、
「えっと、その電話を使って……あ、」
そうだ、勝手に人の電話を使ってはいけない。彼女に一言いわないと。
「南さん、電話借りるね!」
返事は無い。聞こえなかったのか、もしくは私が聞こえなかったのか。
まあいいや。電話をかけることは前から決まっていた、絶対必要なプロセスだから。
「そこの電話を使って桜くんの家に電話をかけて欲しいの。」
男は無言で頷き、親友の電話番号をプッシュする。

131:名無しさん@ピンキー
07/07/31 12:00:39 j91Ilz5t
速いスピードで聞こえる電子音が、彼と桜くんの仲の良さを物語っている。
「内容は、『桜くんは今日ウチに泊まります。』というような内容ね」
彼は返事をしない。もう電話が繋がったんだろう。
「もしもし、××××ですけど……、草壁さんのお宅ですか?」
電話の相手の声は聞こえない。でも、今の時間と桜くんの個性的すぎる家族構成を考えると、ザクロちゃんだろう。
「あ、ザクロちゃん。桜、今日さ。俺んちに泊まるから、桜の両親に伝えといてくれないかな」
当たりだ。あのザクロちゃんのことだ、しっかり伝えてくれるだろう。
これで両親は桜くんは××××君の家に泊まりに行ったと信じ込むだろう。
「はい、ありがとう。じゃあ、また」
電話を終えると、××××君はこちらを見てきた。帰宅許可を求めているのだろう。
「あ、もう帰っていいよ。お疲れ様」
そういうと、彼は踵を返し、玄関の方へと消えていった。
そのとき。つまらなく、単調な物音が部屋に響いた。
南さんにはどうやら聞こえていないらしい。それにしても南さんはお茶をいれるのに何分かかっているんだろう。
お湯を沸かして、カップを温めて……
まだ時間はかかりそうだ。私が見に行こう。
久しぶりに南さんの家の階段を上る。前お泊りにきたとき以来だ。
それにしても、さっきの音はなんだろう。何か、人が転んだような、そんな音。
桜くん、暴れすぎてベッドから落ちたかな?
ふと、2階が見えてきた所で漂ってくる、異様な匂い。
甘いような、酸っぱいような。それは2階に近づくにつれて、はっきりとしたものに変わっていく。
この匂いを嗅ぐたびに、私の意識は朦朧としてくる。だけど、とりあえず状況を確認しないと。
そして、2階に着いた私が最初に見たものは、床で呻いている、桜くん。
「え、え?な、何?どうなってるの?縄は?そして、この匂いは、は、ひ……」
息遣いがどんどん荒くなっていく。何故か異様に興奮し、アソコが熱くなる。
何が、どうなってるのか、分からない。もう、たってられない。自分のこの欲望を今すぐ満たしたい。
私は、もつれる足でなんとか窓を開け、ドアの開いている部屋の換気扇を回す。
そこで、緊張の糸が一瞬緩み、私は桜くんの横に倒れた。
~その頃の南さんと田辺さん、終り~


132:名無しさん@ピンキー
07/07/31 12:01:58 j91Ilz5t
僕は、何をしているんだろう。体が熱い。熱い。ひたすら熱い。
頭の中は、性欲で埋め尽くされている。おかしい。何故か性的なことしか考えられない。
それに、体の性感帯がびんかんになっている。足を動かして足掻く度に肉棒が太ももに擦れて、普段では考えられない快楽が僕を包む。
あ、ああ、駄目だ、この欲望の波に飲まれたら、取り返しのつかないことになる気がする。
速くここから抜け出さないと、そう思い、辺りを見回し、僕の目に留まったのは、
「田辺、さん……」
荒く息をしながら横たわる、ッ!
その時、僕の体に異変が起きました。田辺さんを見た、その瞬間。今まで朦朧としてた頭は、「田辺さんと性行為をする」
ということで埋め尽くされ、力の入らなかった足には、普段考えられないような力が宿ります。
背筋をバネにして飛び起き、田辺さんを抱えて、部屋の中へ。
どうして僕はこんなことを。そんなことは、頭に浮かんでさえきません。
田辺さん田辺さん田辺さん田辺さん田辺さん田辺さん…………。
目の前の少女が愛おしくてしょうがない。速く自分色に染めたい。自分一人のものにしたい。
息遣いの荒い少女を、ベッドに下ろします。そして、着ている邪魔な衣服に手をかけ……
そこで、田辺さんは目を覚ましました。


推敲してないので、お粗末な文章ですが。
読んでいただけたら幸いです。



133:名無しさん@ピンキー
07/07/31 12:48:51 GfkPE7Vi
桜総受けキターーーーーーー!!!!!
桜君視点のほのぼのした日常の裏では、ドロドロした桜君争奪戦があるという発想が今まで全然出てこなかった。
修羅場を愛する者としては、こんな極上のネタに今まで気付かなかったことが本当に悔やまれるよ。気付かせてくれて本当にありがとう。
桜君が皆に感じる絆と、皆が桜君に向ける感情とのギャップの違いが凄くイイ。

134:名無しさん@ピンキー
07/07/31 19:22:18 cep/nbQK
いいGJだ・・・(大塚ボイス

田辺さんモノを求め続けたかいがあった・・・・

135:5-24
07/08/01 00:04:39 Apgr6zxK
>>126-132
テラGJ。「お粗末な文章」?俺なんか足元にも及ばないような文才ジャマイカ。
でも田辺さん黒化&三日後ネタ、先にやられた・・・
俺が今書いてるのどうしようか。

次回予告的なコトすると、
ようやく手に入れたドクロちゃんとの日々に、怪しい影が見え隠れする。
楽しい夏の海でのバカンスで、彼女が本性を露にする!
「三日後」に一体何があったのか!
次回、「ドクロafter~season summer~」に、期待するな。

136:名無しさん@ピンキー
07/08/01 19:26:56 6ZgDpfmd
超期待×∞

田辺さんものは幾つあってもイイw

137:名無しさん@ピンキー
07/08/04 16:38:03 DKAVLkdA
誰か…南×桜を頼む。

138:名無しさん@ピンキー
07/08/05 06:01:21 1xns2JXK
桜×田辺書いてる者ですが、長編になると思います。
その間に希望するカプやシュチェなどあったらレス下さい。

139:名無しさん@ピンキー
07/08/05 08:09:46 bx/jVCE6
じゃあ、静希ちゃんに逆レイプされる桜君や、ドクロちゃんの一撃で記憶喪失になる桜君(こっちのカプは何でもいいです)とか。

140:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:21:51 q+r8RFbh
>>138
長編とわ・・・期待が40倍に膨れ上がりましたw

141:名無しさん@ピンキー
07/08/06 12:32:56 Ua7BuPci
田辺さんの長編は初めてだ。

クリスマス大会のプレゼント交換のときに、桜君のプレゼントを全力で狙うヒロイン達等の桜君総受けを希望します。
自分で書くとヤンデレ系になる。
エロ書ける人は、それだけで尊敬に値すると思うので、長編にしても短編にしてもエロがなくても全然構わない。

142:5-24
07/08/06 23:58:34 8eXiIF2t
投下開始

143:ドクロafter~season summer~ 1/12
07/08/07 00:00:35 8eXiIF2t
〈みゃんみゃんみゃんみゃんみゃんみゃー〉

今日も今日とてセミさんたちは元気です。
何故なら季節は『夏』!
悪意を感じるほど熱い日差しの熱射光線が僕を心地よい夢の世界から引きずり出しました。
「あっつぅ…」
苦言を漏らしながらもダルイ身体を覚醒させて、上半身を起こし、あくびをします。
平和な朝です。
しだいに五感がハッキリしてきます。
〈くちゃ〉
唐突に感じる下半身の滑り気。
この身に起こっている異常事態を認識します。
「あ、おひゃようひゃくらくん」
天使の少女が僕の布団の中からひょっこりと顔を出しました。
「ドクロちゃん?!」
彼女の名前はドクロちゃん。
未来からやってきた天使です。
何故か僕と同棲生活を送っていて、今では仲睦まじい恋人同士だったりするのです。
そんな彼女が朝も早よから僕の下半身にある突起物をうっすらと額に汗を流しながら口に含んでいるのです。
信じられますか?
僕は未だに信じられません。
「ドクロさん?!コレは一体何のマネ…」
「ひゃくらくん、きもひいい?」
そう言いながらもドクロちゃんは目を閉じてお口を〈ちゅぱちゅぱ〉と上下させるのです。
「うくっ…気持ちいいよドクロちゃん…と言うよりコレはむしろ快楽地獄でッ…!」
ウワサには聞いていましたがコレこんなに気持ちいいんデスカ?!
上目づかいで僕を見る幼い容姿のドクロちゃんは可愛くもエロさを秘めています。
口内の滑り気のあるひだが僕の朝立ちした怒張を擦り上げます。
病みつきになりそうな心地よさが下半身を包みます。
哀れなるかな世にはびこる童貞たちよ。
「んっ…んっ…ちゅぱ…ッ…ちゅ…ひゃくらくん、出すときは言ってね?」
そう言うとドクロちゃんは自分が着ているTシャツをたくしあげてその豊満な胸を露にします。
「わっ!ドクロちゃん?!」
「えへへー。行くよ桜くーん。んっ……んっ……」
ドクロちゃんは胸の間に僕の怒張を挟み、口にくわえると再び上下運動を開始します。
「うッ…ちょっ…コレ気持ちよすぎ…もう出ッ?!」
我ながら早いッ!早すぎるぞ少年ッ!
違います。断じて違います。ふい討ちにも近いこの攻撃がイケナイのです。

144:ドクロafter~season summer~ 2/12
07/08/07 00:02:08 7WzRFMkN
決して僕がハイスピードボーイなワケでは…
「ドクロちゃんッ!」
「ちゅっ…んちゅっ…んんーっ」
怒張が天使の口内に収まった状態のまま僕は子供の素を放出してしまいました。
それをドクロちゃんが〈んくんく〉と飲んでくれている辺りに彼女の愛を感じます。可愛い。
「ド、ドクロちゃん?!大丈夫?苦しくない?」
精液を飲むという行為がいかに苦しいかは男の僕でも想像に難くありません。
「うんっ!大丈夫。桜くんのならボク、平気だよっ!」
口端から精液をたらしながら、まさに天使という形容詞がふさわしい笑顔を僕に向けてくれます。
「もう、ビックリしたよ。朝からどうしたのドクロちゃん」
朝からニコニコ、元気一杯のドクロちゃんの頭を撫でながら口をティッシュで拭ってあげます。
「えへへっ。起きたら桜くんが隣で気持ちよさそうに寝てたから、ちょっとイタズラしたくなったのー!」
「最初のうちはもうちょっとソフトなのがいいなあ…お、お目覚めのキスとか……」
「じゃー、おめざめのちゅー!んちゅっ」
ドクロちゃんがふい討ちで僕の唇を奪います。
「うわっ、苦ッ?!」
甘いハズのキスはときどき苦かったりしたのでした。

これは、恋人同士な天使と人間が送る夏のワンシーンな物語。

   ★

皆さんは『夏』と聞いて真っ先に何を思い浮かべますか?
僕は海です!夏と言えば海なのです!
間違いありません!
「というワケでやって来ました宮本家」
「何か文句あんのか」
「さ、桜くん、ドクロちゃんおはよう…」
「おはようございまーす!」
ドクロちゃんが相変わらずのスマイル100%でちえりちゃんにご挨拶します。
今日はみんなで宮本所有のワゴン車に乗って海に行くのです。
大学とは言わば最後の学生としての思い出を作れる場所なのです。
今のうちに沢山思い出を作っておかなければきっと後悔するのです。
決して作者のことを言っているのではありません。
「おひゃー!みんな早いねー。待った?」
〈てけてけ〉と向こう側から歩いてくる6年経っても変わらない、イタズラ好きな子狐の様な雰囲気を持つ少女の名前は田辺さん。
隣にいる冷静沈着を守る寡黙な黒髪長髪毒舌少女は南さん。
「……何か今失礼な人物紹介が受けた気がするわね。桜くんは罰としてわたしの靴の裏を舐めなさい」

145:ドクロafter~season summer~ 3/12
07/08/07 00:03:44 7WzRFMkN
「重ッ!?僕の罪はそんなに重いの?!そして気持ちのいい朝の僕に対する第一声がソレ?!」
「じゃあ桜くんはボクにちゅーをする刑に処するー!」
「関係ない!キミには全くもって関係ない!可愛らしく言ったって人前でちゅーはダメなんだからー!って、ちょ、ドクロちゃんんんーっ?!」
ドクロちゃんが僕に飛びつき、腕を首に回すとその可愛らしい唇を僕の唇にあてがいます。
…無理やり奪われた…人前で…もうお婿に行けない…
「桜くんはボクがお婿にもらうのーっ!」
「ぎゃあああ!ギブギブ!例によって喉仏押さないでドクロちゃん!今度こそ物理的にお婿に行けなくなっちゃうううう!」
ドクロちゃんが僕に過激にじゃれついてきます。
恋人になってからというモノ、ドクロちゃんの僕に対するスキンシップはますます過激なモノになりつつあるのです。
というか何だか周りの視線が冷たい気がするのは気のせいでしょうか。気のせいではありませんね。
現に南さんが物凄い形相で僕を睨んでいます。
どす黒いオーラが見えて来ましたよ?
「痛ッ!南さんが小石をぶつけてきた?!」
そうこうしてるうちに
「すみません、皆さんの分のお弁当を作っていたら遅くなりました…」
「みんなおはよう」
凛とした二重音声が奏でられます。
春の女神が降臨したかのゴトキ優しくも厳しいたたずまいの、頭に輪っかを浮かべた軍服の女性はザクロちゃん。
そして、どこかのアホ天使とは似ても似つかない、正に日本男子の理想の女性像をこの世に再現したかのような女性は、静希ちゃん。

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪

「何でみんな僕のモノローグを勝手に読むの?!ヒドイ!プライバシーの侵害だ!セーフガードを発令します!」
「セーフガードは緊急輸入制限措置のコトでしょう。桜くんは難しいコトバをうろ覚えしないの」
「もーっ、桜くんにはボクがいるでしょーっ!」
「言いたいコトも言えないこんな世の中じゃ」
「ポイズン(南さん)」
「ぐはぁ!(毒を食らって倒れる僕)」
「これでみんな揃ったみてぇだな」
「それじゃあしゅっぱーつ!」
今回の物語はそんな8人でお送りして行きます。

   ★

〈ごうんごうんごうん〉イン宮本ワゴン。
ドクロちゃんは僕の膝の上に座ってご機嫌そうです。
僕は暑い上にそろそろ足が痺れてきたのですが。
「あーっ!海見えてきたー!」
興奮したドクロちゃんが僕の膝の上で〈ぎしぎし〉と跳ねます。

146:ドクロafter~season summer~ 4/12
07/08/07 00:06:49 7WzRFMkN
傍から見るとヒワイに見えないこともないですね。
「相変わらず桜さんと仲がよろしいんですね。おねえさま」
精神年齢がようやく十五歳に達したザクロちゃんが何の疑いもない純真で無垢な笑みをこちらに向けます。
「えへへへー」
ドクロちゃんが意味深な笑いをこぼします。
「ボクはねー桜くんとねー…(もじもじ)…ザクロちゃんにはちょっと刺激が強いかなっ!もーっ桜くんたらッ!」
「痛い痛い!せまい車内じゃ撲殺できないからって高速でひじ打ちしないでドクロちゃん!脇っ腹がなかんずく痛い!」
考えてみるとドクロちゃんとデートはまだしたことがありません。
今度は二人きりで海に来てみるのもいいかもしれません。
「それにしてもザクロちゃん、会うのは久しぶりだね。お母さんとお父さんは元気?」
僕とドクロちゃんが家を出たので、今家にいる家族は両親とザクロちゃんだけです。
お盆くらいは帰省しましょうか。
「ええ。お二人とも、お元気ですよ。不必要なくらいに」
「不必要なくらいに?!なに不必要って!僕とドクロちゃんがいないだけでそんなに開放的になってるのあの二人は?!」
「本当はサバトさんとザンスさんもお呼びしたかったのですが、お二人とも都合が悪いようです」
ザンスは呼ばなくていいです。
「そういえばサバトちゃんはいったん未来の世界に帰ったんだっけ。どうしてるのかな?」
「しばらくは他の任務に勤しんでいたのですが、最近『パンドラの言葉』が不調でして、天使たちの任務はここのところ停滞しています。今回もわたくしは本来なら短期の任務の予定が
あったのですが、キャンセルされました」
『パンドラの言葉』という単語に、背筋に嫌な汗が流れます。
「それは…まさか、またルルティエが動き出してるってこと?」
窓の外をご機嫌に眺めていたドクロちゃんもザクロちゃんに訝しげな表情を向けます。
「いえ、どういうわけか、『パンドラの言葉』は『あの騒動』以来桜さんの抹殺について『保留』といった命令を出し続けています。他の任務についても最近は同じような傾向が見ら
れます。『パンドラの言葉』に何らかの異常が起こったか、未来が著しく平和なものに変化したか……桜さんにしても、わたくしたちにしても、後者のほうが好ましいのですが、未来の世界
は現状として、とてもピリピリしています」
ほっと胸をなで下ろします。
「ふーん…大変なんだね。まあ僕が狙われないなら何よりかな。それよりそんなこと言ってもいいの?なんか機密事項っぽいけど」
「はい。わたくしはおねえさまと、桜さんの味方ですから。議長もそれを理解しています」

147:ドクロafter~season summer~ 5/12
07/08/07 00:08:21 7WzRFMkN
ザクロちゃんが味方というのは頼もしいですね。
いつ天使が僕の命を狙いにやってくるか分らない身としては、味方は多いに越したことはありません。
何より天使は力持ちです。
天使たちの上下関係はよく分りませんが、ドクロちゃんとザクロちゃんの家系である『ジャスティリア家』は相当の名家で、代々優秀な天使をルルティエに配しています。
それに加えて僕の抹殺任務は当時であれば優先度が相当高い任務です。
その任務に向かったドクロちゃん・サバトちゃん・ザクロちゃんは天使の中でもかなりのエリートであることがうかがい知れます。
そんなドクロちゃんと僕が恋人になったのは、奇跡とも言えます。
そう思うと自然と、膝の上に座るドクロちゃんにまわした腕に力が入ります。
「桜くん……」
ドクロちゃんが優しく僕の手を包みます。
「桜くんは、ボクが守るから」
「うん。ありがとう、ドクロちゃん、ザクロちゃん」
なら、僕もドクロちゃんを守れるように頑張らなきゃ。
ドクロちゃんが泣いてる顔は、見たくない。

   ★

澄み渡る青い、どこまでも青い空から〈にゃあにゃあ〉とカモメだかウミネコだかの鳴き声が聞こえます。
それに伴い潮の香りがする海風が頬をくすぐります。
見れば〈ざざんざーん〉と打ち寄せる波。
季節は夏。夏と言えば
「海だぁーっ!」
〈ぴょーん〉とワゴン車から飛び降りたドクロちゃんが言うが早いか、そう叫びます。
「きれいだねーっ!来て良かったかも(田辺さん)」
「本当、綺麗だね。日本の海水浴場って汚いイメージがあったけど(静希ちゃん)」
静希ちゃんが少し驚いた顔をします。
アメリカの海はどんな感じなんでしょうか。
「宮本くんが見つけた穴場…(ちえりちゃん)」
「じゃあ早速更衣室に行くか。考えてみれば今回男は俺と桜だけか。行くぞ桜。なに桜汁出してんだ。」

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪

「ありがとうドクロちゃん。危うく夏の海の魔力に飲まれるところだったよ」
「桜くん、ボクの水着楽しみにしててねーっ!」
そういうとちょっぴり頬の赤いドクロちゃんは女性陣五人の方に〈てててて〉と小走りして行きます。
正式に恋人になってから何だかドクロちゃんが可愛く見えます。
いえ、可愛いことは前から可愛いのですが、恋人補正がかかるというか、ひいきしちゃいますね。
女の子は水着姿を彼氏に見てもらいたいものなのでしょうか。
紳士の振舞いが大事ですね。

148:ドクロafter~season summer~ 6/12
07/08/07 00:09:34 7WzRFMkN
「宮本引きずるな!分かった!お前と二人きりになるのが嫌だと正直に言おう!だから引きずるのを止め…」

   ★

太陽に熱された浜辺にビーチパラソルを立てて、荷物を〈どさっ〉と置きます。
「ドクロちゃんたちはまだみたいだな。それにしても宮本、よくこんなとこ見つけたな。こんな綺麗なトコなのに割とすいてるし」
「小野さんと毎年来てるトコなんだよ。世間じゃまだ夏休み入ってないとこ多いからすいてんだろ。平日だしな」
宮本がバスタオルを砂の上に敷いて、その上に腰を降ろします。
その隣に僕も座ります。砂の熱さが伝わってきます。
最近ドクロちゃんが僕にべったりなので、オトコ二人で話すコトはなかなかありません。いい機会です。
「お前、小野さんと長いけど、そろそろプロポーズとかしないのか?」
二人は同居こそしていますが、まだ夫婦にはなっていません。
「まあぼちぼちな…………お前と水上には、感謝してるよ。……お前はドクロちゃんとどうなんだ?見たところ、付き合い始めたみたいだが」
宮本がクーラーボックスから缶ジュースを取り出して〈ぐいっ〉と煽ります。なんかオヤジ臭いなコイツ。
「僕も、ドクロちゃんとは長いからな。でも、これからはもっとドクロちゃんを大切にしようと思うよ」
「ハイハイ。のろけ話を聞きてぇんじゃねえよ。あれ以来『天使』は?」
「お前、一応僕の心配してくれてんのな」
「気がきくようになっただろ」
そう言って缶ジュースを一本僕に投げてよこします。
「特にねーよ。心配すんな」
女の子との会話では味わえない頼もしさを感じます。
たまには野郎とも話すものですね。
「桜くーんっ!」
「え?」
そのときでした。
音のドップラー効果をともなって聞こえるくりくりボイス。
振り向けば砂に突き刺さる旗をゲットする要領で、超光速で僕の胸に飛び込んでくるは頭に輪っかをのせた天使の少女。
光のドップラー効果、青方偏移で青い炎が見えますよ。
「ぐほぁっ!」
名投手がアンダースローした球のごとく僕は浜辺を低空飛行。
本来ではありえない距離を飛行したのち〈ずさささささー〉と頭で浜を削りながらようやく止まります。
「熱い熱い熱い!頭が熱い!(後頭部をさすりながら)ドクロちゃん?!バカンスだからってはしゃぎすぎだよーっ!」

149:ドクロafter~season summer~ 7/12
07/08/07 00:11:07 7WzRFMkN
「だってボク、桜くんに会えなくて寂しくって……」
「たかだか三十分やそこらで毎回こんな感動の再会をやってたら僕の身が持たないよ!もう、ドクロちゃんはー」
そう言うと僕の体に乗っかっているドクロちゃんの頭に腕をまわして引きよせて、軽くキスをします。
「このくらいで勘弁して?」
「も、もう桜くん…」
ドクロちゃんがぽーっとした顔をします。
ドクロちゃんを助け起こしてあげて、砂を払い落としてあげます。
「あっ!桜くん、ボクの水着見て見てー?可愛い?」
砂上でドクロちゃんが〈くるり〉と一回転します。
相変わらずあらゆる意味で危険なカラダですね。
ドクロちゃんの水着はツーピースの黄色いビキニ。
黄色は彼女のエネルギッシュさと夏の爽やかさと相まってとっても似合っています。
何より〈ボン・キュ・ボン〉な彼女のカラダの胸元に視線が行ってしまいます。
相変わらず、すごい。
ドクロちゃんの大げさな動きにあわせてその胸も過剰に上下するのです。
健康そうな白い肌が太陽に反射して眩しいです。
浜辺の男たちの視線が痛いですよ?
「うんっ、ドクロちゃんとっても可愛い。流石は僕の彼女なんだからっ!」
「えへへ、桜くんの水着も可愛いーっ!」
「僕の水着も可愛いの?!そこはかっこいいと言って欲しかった!」
「えへへー、桜くん大好きー」

「何か二人結界が一つ増えたわね…(南さん)」
更衣室から出てきた女性陣がビーチパラソルの下に〈どさどさ〉と荷物を置きます。
「南さん、わたしたちはわたしたちで楽しもうよー(田辺さん)」
「私とザクロちゃんも混ぜてよー(静希ちゃん)」
「混ぜてよー(ザクロちゃん)」
「ザクロちゃんキャラ違う……(田辺さん)」
「あれ?小野さんは?(宮本)」
「み、宮本くん……」
「お」
女性陣の背後よりおずおず出てきたのはちえりちゃん。
緑色のツーピース。
心なしか気合いの入った水着姿です。
瞬時に宮本とちえりちゃんの二人結界が発動します。
同時に女性陣四人からどす黒いオーラが立ち上ります。
「え?何?何でみんな僕を睨むの?い、いけないよ女の子四人で男の子一人を囲むなんてーっ!何でドクロちゃんまでそっちの包囲網に加わるの?!ちょ、やめ、くすぐっちゃ、やめるんだあーっ!」

   ★

いくら彼氏といえど体力には限界があるのです。

150:ドクロafter~season summer~ 8/12
07/08/07 00:12:37 7WzRFMkN
「恋人の定番と言えばコレ!」とドクロちゃんが提案した遊びはいたってシンプル。故に奥深い、『水をかけあう』といったモノでした。
最初は乗り気だった僕ですが、ドクロちゃんの満面の笑みを見た時点で気付くべきでした。
ドクロちゃんの手より噴射される水鉄砲は超水圧のハイドロカッター。
その手が海面をすくい上げればタイダルウェーブが発生します。
かくして林間学校やプールでの悪夢が再現されたのです。
そんな夏の陽気にますます元気がリミットブレイクなドクロちゃんの相手をするのに疲れ果てた僕は、静希ちゃんたちにドクロちゃんを任せてパラソル下のクーラーボックスに入った缶ジュースを取りに来ました。
「桜くん」
声がした方を向くと、そこにいたのは田辺さんでした。
「田辺さんもジュース取りに来たの?何がいい?」
「うーん、そうね。わたしはカルピス」
「えーと、ハイ、カルピス」
「ありがとう」
二人がパラソルの日陰に腰を降ろします。
隣で〈ぷしっ〉と缶のプルタブを上げる音が聞こえます。
―田辺さんですか。彼女とは中学以来なので大分久しぶりです。
昔話にでも花を咲かせましょうか?
「桜くんさ」
何を話せばいいものか、と逡巡していると、隣の彼女が先に言葉を発しました。
「彼女のコト、フったんだ」
「…………」
一瞬、何のことかと思いましたが、すぐに思い当たります。
「ドクロちゃんと、付き合い始めたんだね」
「うん。ドクロちゃんには、もういなくなって欲しくないから。ドクロちゃんに、そう言った」
「ふーん」
遠くに潮騒と、鳥の鳴き声、そして女の子たちが楽しそうに遊んでる声が聞こえます。
潮風が一陣、頬を撫でました。
「田辺さん、いつだったか、僕に『本当は誰が好きなの』って聞いたよね」
「うん、聞いたよ」
「その時に話していた女の子ってさ……」
「うん。わたし」
「……え?」
海はいつだって静かです。風に任せるまま。
事務的に繰り返される潮騒が聞こえます。
「そ、そうなんだ。てっきり、南さんのコトかと思ってたんだけど……その、何かごめんね」
「ううん。それは桜くんの決断だから。いいの」
田辺さんも、僕のことが好きだった。
中学時代、彼女はいつも南さんといっしょにいました。
僕のことについて、二人の間でどのような会話がなされていたのでしょうか。
全然そんな実感はないのですが、僕、意外にモテるのでしょうか。

151:ドクロafter~season summer~ 9/12
07/08/07 00:15:36 7WzRFMkN
複雑な気持ちです。
「ねえ、桜くん『三日後』のコト、覚えてる」
「え?『三日後』?」
唐突にそう言った田辺さんの方を向いた僕の表情が、凍りつきます。
海を眺める田辺さんの瞳は、冷たく無感情なものでした。
「み、『三日後』って、田辺さんが僕にその話をした、三日後ってコト……?」
「ううん。違う」
田辺さんの無機的な視線は自分の足元に移ります。
「上書きがなされるはずだった日の、『三日後』」
「…………え?」
硬直。田辺さんの言ってることは分かりませんが、『上書き』という言葉は僕を心の底から震え上がらせるのに、十分な力を持っていました。
機械的に繰り返される潮騒の音が、鼓膜に響き、不協和音を奏で始めます。
ざざーざざ、ざ、ざざざざざざざざざざざ
「た、田辺さん、ソレ、どういうこと……?あの日の三日後に、何かあったっけ……」
動揺を隠せません。呼吸が、荒い。
「やっぱ知らないか」
田辺さんが立ち上がります。
「ここは『三日後』がない世界だもんね」
立ち上がった田辺さんが振り向いて僕を見ます。
照りつける太陽に対して逆光で、影の差す彼女の顔を認識したその瞬間、恐怖という感情が体中を虫のように這って行きます。
「大丈夫よ」
その表情には見覚えがありました。
「まだ『彼女』は来てないから」
そう言うと田辺さんは海に走って行きました。

まるで、あの時の西田のような眼をしていました。

   ★

「輝け第一回…」
「はい、ビーチバレーやろうねー」
浜辺が思っていたより空いていたので、適当な場所を確保して、僕たちはビーチバレーをすることにしました。
僕の隣にはありあまるエネルギーを持余してうずうずしているドクロちゃん。
ネットの向こう側から南さんが不満そうな顔を僕に向けます。
「ねえ桜くん、『びーちばれー』って何?おいしい?」
「え?ドクロちゃんビーチバレー知らないの?!」
「うんっ!わかんない!」
ドクロちゃんは「おしえておしえて」とばかりに僕の腕を引っ張ります。
「いたたた!わかったわかった!えーと……簡単に説明すると、ビーチバレーは1チーム二人の選手で対戦するんだけど、室内のバレーボールみたいなポジションは定められてない
んだ。ボールへの接触は3回まで。相手コートにボールを返して、相手がボールを戻せなければ得点になるんだ。1セットごとに2点をリードして二十一点先取する3セットマッチで、2
セット先取した方のチームがその試合の勝者となるんだ。あ、3セット目は十五点先取だよ?第1・第2セットは、両チームの合計点が7の倍数になるごとに、第3セットは5の倍数ご
とにコートチェンジを行なうんだ。」

152:ドクロafter~season summer~ 10/12
07/08/07 00:17:17 7WzRFMkN
ちなみに組は僕とドクロちゃん、南さんと田辺さん、静希ちゃんとザクロちゃん、宮本と小野さんです。
まるで元から決まっていたかのような組み分けですが……
「ドクロちゃん、分かった?」
「わかんなーい!」
満面の笑みでお返事してくれます。
「ですよねー」
ドクロちゃんといっしょに「ねー!」なんて笑い合っていると
「今回はドクロちゃんにも分りやすいルールでやるから大丈夫だよ」
と田辺さん。
「題して『ゲルニカ☆ビーチバレー』」
南さんは満足げです。
「やっぱり名前つけるんだ……でも良よかったねドクロちゃん。ルール簡単だってよ」
「よかったー!」
ドクロちゃんがうれしそうに僕を見上げます。
何か小さい娘を可愛がる父親の気持ちになってきましたよ?
「それで、どんなルール?」
「トーナメント形式でコートチェンジはなし。五点先取」
「以上?」
「以上」
「ドクロちゃん分かった?」
「わかんなーい!」
「ですよねー」
このさいドクロちゃんにはこのゲームの趣旨さえ分かってくれればいいです。
「あのネットの向こう側に手首でボールをはじき返すんだよ。線の外にボールを出しちゃダメ」
「りょーかーい!」
とりあえずドクロちゃんは攻撃要員です。
捕球や指示は僕がやりましょう。
「じゃあゲームを始めるよー」
「よし子い!」
「誰?!」
田辺さんがゲーム開始を宣言します。
コートの外では静希ちゃんたちが固唾を飲んで……見守ってはいませんね。
ビーチパラソルの下でザクロちゃんのお弁当をいただいてます。
「ってああああ?!何で僕たちがやってるのに食べ始めちゃうの?!待ってよ僕も……」
「スキあり」
「え?」
振り返った瞬間目の前に上がるは砂煙?!
こ…これは…
「一点」
「何で南さんは僕が後ろ向いてる間にサーブしちゃうの?!ていうか今ボールの軌道が見えなかった!ナニコレ!」

153:ドクロafter~season summer~ 11/12
07/08/07 00:18:47 7WzRFMkN
「南さんすごーい」
みんなが南さんに称賛を送ります。
「この日のために血のにじむような特訓を……」
「してないでしょ?!いったいどこでバレーボールやったの南さん!白状なさい!」
「スキあり」
「あー!またサーブしたよこの人!くそう!早くも二点取られたッ……!」
南さんのサーブにスキはありません。
ボールが着地した音はもちろん、南さんの腕がボールに触れた音さえ聞こえません。
これはいったいどういうコトでしょうか。
「人間の五感のうちの一つ、『聴覚』はわたしたちの支配下にある。『いつ』サーブしたか分からなければボールの軌道を追うのは難しいわよ」
何ということでしょうか。
「これが吹奏楽部の力なのかッ……!」
「桜くーん!負けちゃうよー」
ドクロちゃんの『天使眼』でもボールの軌道を見極めるのは難しいのでしょうか。
こうなったら、奥の手です。
「桜くーん!死ぬ準備はできたー?」
田辺さんが勝ち誇った表情でニヤニヤしています。
「宮本!『アレ』をよこせ!」
僕はパラソルの下で小野さんと仲良くお弁当を食べている宮本に叫びます。
「ほらよ」
宮本がぞんざいに投げた『ソレ』をつかみ、目にあてがいます。
そう、それは『アイマスク』。
「あはははははは!桜くん自ら『視覚』までつぶしちゃったよー!もうウケ狙いに走ったの?罰ゲーム何にしようかなー?」
田辺さんが〈きゃたきゃた〉とお腹をかかえてこっちを指さしていますが
「『夜』を補足した」
僕は本気にならせていただきましょう。
「私は、夜の仮面。自らの視覚を食らい、自らを飼いならす」
「桜くん……?」
ドクロちゃんは不思議そうな顔で僕を見ています。
そう、『見える』。
五感が一つ、『触覚』をフル稼働。
否、限界突破。
『風』が『見える』!
「あはは!そろそろ死になって!アデュー桜くん」
田辺さんのサーブ。
南さんの『ソレ』と同様、サーブ時に音はしません。
「くたばれー!」
田辺さんが発する声さえも『空気の振動』として伝わってきます。
ボールを中心にうずまく風……そこかッ!
「拘束制御術式・第三号、第二号、第一号、解放」
僕が向かったのはドクロちゃんがいるコートの右側。
砂を蹴り、今この一瞬、風と同化します。
頭から飛び込み、右腕をめいっぱい伸ばすと、その手首にちょうどボールのランディングポイントが重なります。
「当たれえー!」

154:ドクロafter~season summer~ 12/12
07/08/07 00:21:12 7WzRFMkN
〈ばしん〉
右腕に衝撃。
ボールが激しく回転しながら宙を舞います。
「ドクロちゃーん!」
あとはドクロちゃんが、その人並み外れた怪力でボールを相手コートに叩きこめばフィナーレです。
「ってアレ?!ドクロちゃんがいない?」
見れば、ドクロちゃんはみんなと仲良くランチブレイクを楽しんでいるじゃないですか。
「うおおおおおおい!」
そうこう言ってるうちにボールは着地してしまいました。
かつてない脱力感が僕を襲います。
「あああああ?!ドクロちゃん?!僕のパートナーとしてそのテイタラクはどういうことなの?!……え?“ボクと桜くんは一心同体”?ダメだよ一心同体でも僕一人じゃあっ!くそう!
こうなったら次のサーブで挽回を……あれ?何で南さんも田辺さんもコートにいないの?ねえ、何で二人ともいっしょにお弁当食べてるの?“もう五回桜君のコートにボール落と
した”?何てことするのアナタたち!ダメだよこれはフェアじゃあないッ!もう一度だ!もう一度僕と勝負を……」

   ★

遊び疲れた僕がパラソルの下で休んでいると、やがて夕暮れが訪れます。
「桜くーん!」
聞こえるのは聞きなれたロリータボイス。
僕が大好きな、この世界で一番可愛い女の子の声です。
「桜くん、みんなもう着替えに行っちゃったよ?早く行こう?」
「え?みんなもう帰り支度始めちゃったの?ひどいよう僕に一言も言わないで……」
「桜くーん!早く来ないとおいていくよー!」
見れば天使の少女は笑顔でこっちに「はやくはやくー」と手を振っています。
「待ってよドクロちゃーん!」
急いで彼女を追いかけます。
「あははははは、桜くーん!こっちこっちー!」
「もー、ドクロちゃん速いよーっ!」
海の水平線には太陽が沈みかけ、海面を茜色に染め上げています。
海も、砂浜も、何もかもが輝いていました。
僕とドクロちゃん。
笑いあいながら夕闇の中を走って、じゃれあって。
このまま時が止まればいい。本当にそう思います。
「ドクロちゃん、つかまえたッ!」
天使の夕焼けに染まった、白い肩を抱き寄せます。
『あっ……』
お互いが言葉を失います。
愛は沈黙。
どこかでそんな言葉を聞いた気がします。
「んっ……」
ドクロちゃんを抱き寄せて、愛を確かめるように、深い口づけを交わしました。
「今度は、二人で来ようか。ドクロちゃん」
「うんっ!ボク、桜くんといっぱいおでかけしたい」
幸せは、当たり前じゃないから。
手に入れた幸せを、離さないように。
僕はドクロちゃんの手を、堅く握りました。


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